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「エロイーズとアベラールの手紙」から「エロイーズの手紙一」 |
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インターネットに公開されている「エロイーズとアベラールの手紙」の原文(ラテン語)とその英訳から「エロイーズの手紙一」を和訳してみました |
エロイーズからアベラール宛ての手紙は四通 アベラールからエロイーズ宛ての手紙は七通あります |
内容は二つの修道院に分かれて住む妻エロイーズが夫アベラールの友達宛ての手紙を読んで未だに続く不幸に涙を流し彼から便りをくれるように切に願う所から始まります |
和訳した文章を小段落に分け数字を添付しました *数字をクリックするとその段落に跳びます |
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内容 |
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*100 |
主人・父・夫・兄弟であるアベラールに婢・娘・妻・姉妹であるエロイーズから切なるお願い |
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*101 |
アベラールが友に送った手紙を偶々読んだエロイーズはその中に書かれているアベラールへの酷い迫害を一つ一つ思い出します |
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*102 |
手紙によって悲しみを新たにしたエロイーズはアベラールの危険が未だに増していることを知り便りをくれるように願います |
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*103 |
セネカは彼の友ルキリウスに書いています あなたの存在を私に戻すことが出来る唯一の方法はこの手紙です |
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*104 |
あなたは友を慰めるつもりでしたが私たちの上に悲しみの新たな傷を与えました 癒して下さい 私はあなたに懇い願います |
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*105 |
この荒野は人の住居のない獣の巣でした あなたがこの場所の唯一の創設者 この礼拝堂の単独の建築者 この宗教団体の唯一の創始者です |
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*106 |
あなたは神の雄弁という真珠を豚の前に空しく投げています あなただけの者である彼女に深く専念するようにして下さい |
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*107 |
あなたは結婚の秘跡の絆によって私に固く結び付けられています 私は限りない愛で常にあなたを愛しあなたが要求した全てを私は果たしました |
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*108 |
私があなた自身以外何もあなたに求めなかったことを神は知っています 私が結婚も持参金も希望しなかったことをあなたは知っています |
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*109 |
あなたは直ぐに全ての女の心を捕えることが出来る二つの特別な才能(作曲と歌う才能)を持ち私たちの愛を歌い多くの女が私を嫉妬しました |
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*110 |
私があなたに求めていることに注意を向けて下さい 私はあなたの為にあらゆることを実行しあなたに服従してずっと辛抱しているから |
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*111 |
お願いします 私の心があなたと共に幸せで居られように振る舞うことを 私に慰めを与える為に私に書くことであなたの存在を元に戻して下さい |
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Office Murakami |
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*100 |
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(Heloisae suae ad ipsum deprecatoria) |
(エロイーズの切なるお願い) |
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DOMINO suo immo patri, |
彼女の主人というよりは彼女の父に |
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coniugi suo immo fratri, |
彼女の夫というよりは彼女の兄弟に |
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ancilla sua immo fllia, |
彼の婢というよりは彼の娘から |
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ipsius uxor immo soror, |
彼の妻というよりは彼の姉妹から |
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Abaelardo Heloisa. |
アベラールにエロイーズから |
*101 |
友を慰める為にあなたが書いた手紙が |
私の最愛の人よ |
最近偶々私の手に入りました |
表書きから直ぐそれはあなたのものだと分かって |
その書き手に対する私の愛のように情熱を込めて私はそれを読み始めました |
その言葉によって私は元気付けられることを期待したから |
恰もお姿を見るように |
その人の関心を私は失いましたが |
その代わりに |
この手紙のほぼ全ての箇所が胆汁とニガヨモギの苦さに満ちていることを私は見出しました |
宗教生活への私たちの転向とあなたが受けている終わりなき苦痛の哀れな物語とあなたが話しているように |
私の唯一人愛する人よ |
あなたは書き始める時あなたの友に約束したことを本当にこの手紙で果たしました |
彼自身の厄介事はあなたのものに比べて小さいものか全くないものと彼は思うべきです |
あなたの教師たちによる以前の迫害とあなたの体に加えた最も陰険なあの暴行をあなたは書いた後 |
憎むべき嫉妬と冷酷な攻撃にあなたは筆を向けました |
あなたの同窓レイムのアルベリックとロンバルドのロチュルフの |
彼等の教唆によってあなたの有名な神学の著作になされたこともあなた自身に起きたこともあなたは書き落としませんでした |
あなたが |
言わば |
禁固刑の判決を受けた時 |
それからあなたの大修道院長と偽兄弟修道士たちの陰謀にあなたは筆を進めます |
所謂使徒たちによるあなたに対する非難中傷 |
あなたの敵たちが彼等を唆せてあなたに敵意を向けさせました |
そして聖霊の名に関する多くの告発によって齎された醜聞 |
慣習に反して |
あなたの礼拝堂にあなたが命名しました |
最後に |
あの残酷な暴君とあなたが息子たちと呼ぶ邪悪な修道士たちによるあなたの耐えられない迫害を書いた後 |
あなたの陰鬱な物語をあなたは終わらせました |
*102 |
誰も出来ないと |
私は信じます |
泣かずにこの話しを読んだり聞いたりすることは |
あなたがことごととくの詳細を完全に書き留めれば留めるほど |
あなたは私自身の悲しみを新たな鋭い悲しみに変えました |
それらは |
本当に |
大きくなりました |
あなたの危険は未だに増しているとあなたが言うから |
ここに居る私たちの全てはあなたの命について絶望に追いやられ |
心を震わせ胸をどきどきさせながらあなたの死の最後の噂を毎日私たちは待っています |
彼自身の為に何かにつけてあなたを未だに守っているキリストの名において |
彼とあなたの僕たちとして |
便りを屡々私たちにくれるようにあなたに私たちはお願いします |
あなたと未だにあなたを打つ嵐の便りを |
こうして |
少なくとも |
私たちは未だにあなたのものであり |
あなたの唯一の友達です |
あなたの悲しみも喜びも共有することで |
悲しみにおいて人と共に悲しむ者たちはいつも彼に喜びを与え |
幾人かで共有する重荷は軽くなって投げ捨てることさえ出来ます |
もしこの嵐が少し静まるなら |
あなたの手紙は歓迎されるので出来るだけ早くあなたは書いて下さい |
*103 |
何であれあなたが書くことは私たちを喜ばせます |
書くことによって |
少なくてもあなたが私たちのことを考えているとあなたは証明します |
分かれた友からの手紙が如何に喜びを与えるかセネカは彼自身の例によって私たちに示しています |
セネカは彼の友ルキリウスに書いています |
私に度々手紙を書いてくれて有難う |
あなたの存在を私に戻すことが出来る唯一の方法はこの手紙です |
私はあなたから手紙を受け取ると直ぐ私たちは一緒にいると感じます |
もし私たちの不在の友達の肖像が |
私たちの記憶を新たにして非現実的で空しい慰めによって彼等を待ち望むことを和らげて私たちを喜ばすなら |
遠くにいる友の真の印章が付いた手紙はどれだけ満足させるだろうか |
私は神に感謝します |
少なくともこの方法であなたの存在を私たちに戻すことを妨げる敵意がないことを |
そしてあなたの道に立つ障害がないことを |
どうか |
私はあなたにお願いします |
あなたの怠慢で遅らせないで下さい |
*104 |
表面上彼の不幸について |
本当は |
しかし正にあなた自身について |
あなたの難儀の詳細な説明によってあなたは明らかに彼を慰めるつもりでしたが |
あなたは私たちの上に悲しみの新たな傷を与えました |
そして私たちが前に受けたこれらの痛みを増し加えました |
癒して下さい |
私はあなたに懇い願います |
あなた自身が作ったこれらの傷を |
他の者たちによって齎された傷を癒すのに忙しいあなたが |
あなたはあなたの友と仲間に本当に善くしました |
あなたは交友関係と僚友関係の負債を弁済しました |
しかしあなたは大きな負債によって私たちに縛られています |
あなたが正しく呼ぶ者は単にあなたの友たちではなく |
あなたの最も親愛なる友たちです |
単に仲間たちではなく娘たちです |
或いは何かもっと優しくてもっと聖なる名前です |
もし何か思いつけるなら |
*105 |
示す証拠に不足はありません |
あなたを私たちに縛る負債が如何に大きいか |
全ての負債を取り除き |
他の全ての者が黙るとしても |
事実そのものが声高に語ります |
神に次いで |
あなたがこの場所の唯一の創設者 |
この礼拝堂の単独の建築者 |
この宗教団体の唯一の創始者です |
あなたは他に置かれた土台の上に何も建てませんでした |
ここの全てのものはあなたの創作です |
この荒野は |
野獣と盗賊たちだけに占められていて |
人の住居のない所として知られており |
ここには家がありませんでした |
まさに獣の巣に |
盗人の隠れ家に |
神の名が口にされない所に |
あなたは神の礼拝堂を建てて聖霊自身に一つの神殿を捧げました |
この神殿を建てる時にあなたは王たちや君主たちの財産から何も受け取りませんでした |
最も偉大で最も有力な人々からあなたは助力を得られたにも拘わらず |
何でも成し遂げられたことはあなただけに帰す為に |
あなたに教えられる為にここに群れ集まった聖職者たちと学生たちは生活必需品を全て提供しました |
聖職者の禄の上で生活していた人々は |
そしてどのように受け取るかだけ知っていてどのように提供するか知らなかった人々は |
彼等の手を与える為ではなく受け取る為に伸ばした人々は |
ここで彼等は提供する際気前よく与え惜しみなく与える者になりました |
*106 |
主の畑におけるこの新しい農場は真にあなたのものでありあなただけのものです |
そしてその幼い植物を育てる為に頻繁に水をかけることが必要です |
それが新しいものでなかったとして |
それは十分に脆いものです |
単に女性の弱さの故に |
それでもっと念入りでもっと絶え間ない手入れが必要です |
使徒が言うように |
私が種を蒔き |
☞一コリント3:6 |
アポロがそれに水を撒きました |
しかし育てたのは神でした |
使徒は彼が書き送ったコリント人たちに彼の伝道によって信仰を植えて根付けました |
その後で彼の弟子 |
アポロが |
聖なる説教で彼等に水を撒き |
彼等の徳は彼等の上に授けられた神の恩寵によって増し加えられました |
しかしあなたは |
あなたの無駄な訓戒と聖なる説教を空しく説くことによって |
今手入れしています |
あなたが植えていない葡萄園を |
あなたに厳しく敵対しているものを |
他人に属するものの世話をあなたが惜しげもなくしている間に |
あなたのものに対してあなあの負債を考えて下さい |
あなたは反逆者たちを教えて戒めます |
そしてそれによって何も得ていません |
あなたは神の雄弁という真珠を豚の前に空しく投げています |
あなたに敵対する者たちにあなたがそんなにも浪費している間に |
あなたに従う者たちに対するあなたの負債を考えて下さい |
あなたの敵たちにあなたがそんなに惜しげもなく与えている時 |
あなたの娘たちにあなたが負っていることを考慮して下さい |
他の全てを脇に置いて |
あなたを私に縛っている大きな負債を考えて下さい |
あなたは一般の信心深い女たちに負うことを |
あなただけの者である彼女に深く専念するようにして下さい |
*107 |
あなたはあなたの優れた学識によって私の乏しい学識より良く知っています |
如何に多くの重要な文章が聖なる教父たちによって書き記されたか |
聖女たちへの励ましと慰めが |
そして如何に念入りにこれらの著述が為されたか |
これ故に私たちの信仰生活の初めの脆い時にあなたが私を忘れたことは私を悩ませ驚かせました |
私が永く続く悲しみに揺らいで押し潰されている時 |
あなたは動かされませんでした |
神への崇拝によって |
或いは私への愛によって |
或いは聖なる教父たちの例によって |
私を慰めようとする為 |
私があなたと共に居た時は言葉によって |
私たちが離れていた時は手紙によって |
しかしあなたは知っています |
あなたが大きな負債によって私に縛られていることを |
何故ならあなたは結婚の秘跡の絆によって私に固く結び付けられているから |
そして如何にあなたはが私に尚一層固く結び付けられているかを |
何故なら |
皆が知るように |
私は限りない愛で常にあなたを愛してきたから |
あなたは知っています |
大好きなあなた |
皆が知るように |
私があなたに夢中だったことを |
私からあなたと私自身を共に奪ったあのこの上なく有名な裏切り行為が如何に私に災いを齎したか |
それ故に損失それ自身の故より私があなたを失った手段の故に私の悲しみは計り知れなく深いものです |
真に悲しみの元が大きいほど |
それに対応する慰めの治療は大きなものでなければなりません |
他の誰かによってではなく |
とにかく |
あなた自身によって |
何故ならあなたが私の悲しみの唯一の元であったから |
そしてあなただけが私に慰めの香油を齎すことが出来るから |
あなただけが私を悲しませることが出来ます |
あなただけが私を幸せにして慰めることが出来ます |
あなただけが私にこの大きな負債を負っています |
とりわけ |
あなたが要求した全てを私は果たしました |
どんな点でも |
何もあなたを拒めません |
あなたの命令で私の命を断念する強さを私は見出しました |
*108 |
その上にもっと重要で |
もっと不思議でもあることは |
私の愛が狂気の度合いに達し |
取り戻す希望なしにそれ(愛)が望む唯一の目的を生贄として捧げました |
あなたの命令によって躊躇なく |
私は私の習慣と私の心を変えました |
あなただけが私の体と私の魂を所有していることを示す為に |
神は知っています |
私があなた自身以外何もあなたに求めなかったことを |
私があなただけを欲したことを |
あなたのものではなく |
あなたは知っています |
私が結婚も持参金も希望しなかったことを |
私が私自身の喜びも望みも満たすことを求めず |
あなたのだけを求めたことを |
妻の名はより神聖でより印象的に見えるとしても |
私の耳には情婦の名が常に心地よく響きました |
あなたがそれを恥じるとしても |
妾或いは娼婦の名が |
何故なら私は考えたから |
あなたの為に私自身を卑しめれば卑しめるほど |
私は完全にあなたの愛を勝ち取ることが出来ると |
そしてこの方法であなたの大いなる名声を損なわないで済むと |
あなたはこの愛を完全に忘れました |
あなたの友を慰める為にあなたが書いた手紙の中で |
あなたはあなたの下にそれを報告することを考慮しなかった故に |
私たちの結婚をあなたに思い留まらせるように私が努めた様々な議論について |
不幸な始まりの結婚からあなたを守る為に |
しかしあなたは私の選んだ多くの理由に言及することを無視しました |
結婚より愛を |
束縛より自由を |
神が私の証人であるように |
たとえアウグストゥスが |
全地を支配した者が |
私を結婚の栄誉に値する者と考えて |
私に全世界を支配させても |
その方が私にはより心地よくより誇り高く思われました |
彼の皇后よりもあなたの情婦と呼ばれる方が |
人が富んで強力である事はその結果彼を良くしません |
一方は幸運に頼ります |
他方は人格に頼ります |
貧しい者より富んだ者と結婚する女は |
そしてその男自身より彼女の夫の所有物を望む女は |
彼女は彼女自身を売りに出しているだけと悟るべきです |
確かにこの種の貪欲によって結婚に導かれる女は誰でも |
彼女の夫によって愛されるより金を支払われる女に相応しいものです |
それは明らかです |
彼女が求めているものは男ではなく彼が所有するものであることは |
そして彼女は出来るなら |
金持ちに彼女の身を金の為に売ることは |
*109 |
この点は議論が為されています |
アイスキネス・ソクラテスが私たちに言うように |
賢人アスパシアがクセノフォンと彼の妻を納得させようと努めました |
この夫婦が互いに和解すべきものである理由を彼女は説明した後 |
これらの言葉で彼女の議論を締め括りました |
あなたたちの両方が理解するに至った時にのみ |
より良い男或いはより望ましい女はこの世に居ないことを |
あなたたちは何よりも互いに最上であると見えることを常に探し求めるでしょう |
一方は女たちの最上の夫であり |
他方は男たちの最上の妻であることを |
これは確かに聖なる言葉であり |
哲学的な言葉に優ります |
それは確かに言えるでしょう |
哲学より知恵から湧き出ると |
何故ならそれは敬虔者の誤りであり祝福された者の誤信であるから |
結婚している者の中でこう考えることは |
完全な愛が結婚の絆を壊さずに保つことが出来ると |
彼等の体の抑制は彼等の心の純潔の重大性ほどではないと |
しかし他の女たちが彼女たち自身を騙して考えていることは私の場合真理に他なりませんでした |
彼女たちが彼女たちの夫について真実であると信じていることを |
私は |
そして他の皆も同様に |
単に信じず |
あなたについて真実であることを知って |
真に私があなたを愛するば愛するほど |
私はあなたについて誤りの中に居ることが出来なくなりました |
どんな王或いは哲学者が名声において肩を並べることが出来たでしょうか? |
どんな王国或いは町或いは村があなたを見たいという熱望に焦がれなかったでしょうか? |
あなたが公に出た時誰があなたを見ようと急がなかったでしょうか? |
そしてあなたが出発する時誰が彼の首を伸ばして彼の目を見張ってあなたの後を追わなかったでしょうか |
あなたが立ち去る時どんな娘或いは女があなたに憧れなかったでしょうか |
そしてあなたが居る時欲望に燃えなかったでしょうか? |
どんな女王或いは高貴な婦人が私を私の喜びと私の寝床を羨まなかったでしょうか? |
あなたは持ちました |
私は認めます |
あなたは直ぐに全ての女の心を捕えることが出来る二つの特別な才能を |
作曲と歌う才能を |
その才能を他の哲学者たちは |
知っての通り |
めったに持っていません |
これらの音楽によって |
一種の遊びとして |
あなたの哲学研究の仕事から気分転換することをあなたは見出だしました |
そしてあなたが作曲した多くの愛の歌は繰り返し歌われました |
それらの言葉と調べの大いなる甘さ故に |
そしてそれらはあなたの名を常に万人の唇の上に留め続けました |
何故ならあなたの曲の魅力は読み書きの出来ない者でさえあなたを忘れさせなかったから |
これ故に |
とりわけ |
女たちはあなたへの愛の為にため息をつきました |
これらの歌のほとんどが私たちの愛の物語を語りました |
それらは直ぐに私の名声を多くの国に広げて多くの女が私を嫉妬しました |
如何なる心或いは体の美点があなたの青春を飾らなかったでしょうか? |
その時私を嫉妬した女の誰が今私の不幸に憐れみを余儀なくされていないでしょうか? |
そのような喜びを奪われた者(私)に |
男或いは女の誰が |
最初は私に友好的でなかったとしても |
今や私が受けるに値する憐れみによって心を和らげていないでしょうか? |
*110 |
私は大変罪の自覚がありますが |
私は又ほとんど罪がないことをあなたは知っています |
何故ならそれ(罪)は行為そのものではなく罪を犯す行為者の意向にあるから |
公平な秤は為されることを量らず |
どんな心でそれが為されるかを量ります |
あなただけが |
それらを知っていた者だから |
あなたに向けた私の意向を判断出来ます |
私はあらゆる事であなたの吟味に服従します |
私はあなたの判断に身を委ねます |
たった一つの事だけを私に言って下さい |
もしあなたが出来るなら |
それは何故なのか |
私たちが信仰生活に入って以来 |
それはあなただけで私たちはそうすべきだと決めたことです |
あなたは私を無視して忘れてしまって |
私があなたと共に居る時は言葉によって元気づけられることなく |
又私たちが離れている時は手紙によって慰められることもありません |
出来るなら私に言って下さい |
お願いします |
さもなければ私が感じることを言いましょう |
否むしろ |
皆が疑っていることを |
情欲が |
愛ではなく |
私に対してあなたの欲望の熱情を奮い立たせました |
それであなたの欲したことが終わりを迎えた後 |
この理由故にあなたが示した感情は全て同時に消えました |
これは |
私の最愛の人よ |
単に私の推測ではなく |
皆の疑いです |
それは私に独特のことではなく |
全てに共通なことです |
それは個人的ではなく |
人々の意見です |
このことが真に私にだけ(そう)見えたらいいのに |
そしてあなたの愛がそれの為に言い訳する誰かを見いだせたらいいのに |
それは私の悲しみを少し慰めるでしょう |
私が言い訳をでっち上げることが出来さえすればいいのに |
あなたを放免してそうすることで |
ある程度まで |
私自身の卑しさを隠すことによって |
どうか注意を向けて下さい |
お願いします |
私があなたに求めていることに |
あなたは分かるでしょう |
それがなんと些細な事であることか |
そしてそれがあなたにとっていかに容易であることも |
私があなたとの対面を奪われてる時 |
少なくても言葉であなたの美しい姿を私に贈ることを |
それをあなたは意のままに沢山持っています |
私は空しくあなたに願わなければなりません |
行為によって気前よくすることを |
もし私があなたの言葉の出し惜しみに耐えることを強いられるなら |
今まで |
私は本当に信じていました |
私はあなたからもっと益しなもの受けるに足ると |
何故なら私はあなたの為にあらゆることを実行しあなたに服従してずっと辛抱しているから |
それは信仰の献身ではなく単にあなたの命令です |
私の若い時に修道院生活に私を追いやったのは |
しかしもし私があなたから何の報酬も得られないなら |
私の努力は無駄であったとあなたは判断して下さい |
私は神から何の報酬も期待出来ません |
彼への愛の為に私が何もしなかったことは明白ですから |
*111 |
あなたが神に許に急いで行った時私はあなたに従いました |
否むしろ |
私はあなたに先んじて修道院の衣服を纏いました |
あなたがあなた自身を神に捧げる前に |
あなたは私を聖なる衣服と修道院の天職に引き渡しました |
まるであなたはロトの妻のことを考えていたかのように |
彼女は振り返って見ました |
私は告白します |
私は大いに悲しみ恥じたことを |
この一つのことによってあなたが私をほとんど信用していないと示したことに |
神は知っています |
私が一瞬も躊躇しなかったことを |
地獄の火の中にあなたに先んじて行くにしてもあなたについて行くにしても |
もしあなたが命令するなら |
何故なら私の心は私のものではなくあなたのものであるから |
今 |
以前より更に |
もしそれがあなたの許にないなら |
それはどこにも属していません |
あなた以外に |
それはどこにも場所を見出すことは出来ません |
しかし私はあなたにお願いします |
私の心があなたと共に幸せで居られように振る舞うことを |
そしてそれはあなたの思いやりを見出すならあなたと共に幸せで居られるでしょう |
あなたが愛に対して愛を報いるなら |
大量に対して少量を |
行為に対して言葉を |
私は望みます |
私の愛する人よ |
あなたの愛は私を信頼出来ないないものでした |
その為あなたは一層心配でした |
しかし過去に私があなたを大きく信頼していればいるほど |
それだけ現在あなたは私を無視しています |
思い出して下さい |
お願いします |
私がしたことを |
そしてあなたが私に負っていることを考えて下さい |
私があなたと共に肉の喜びを楽しんでいる間 |
多くの人々ははっきりしませんでした |
私が愛によって動かされているのか情欲によって動かされているのか |
しかし今や結果がはっきり示しています |
私がどんな心で始めたか |
あなたの意志に従って |
私は私自身にあらゆる喜びを禁じました |
私は私自身の為にこれだけしか残していません |
今まで以上にあなただけのものになること |
いかにあなたが不公平か考えて下さい |
もしあなたが少なく返すなら |
全く何も返さないなら |
多くのものを受ける価値のある者に |
特に私があなたに求めることはとても小さなことであなたにとって実行することが非常に容易であるのに |
あなたがあなた自身を捧げた神の名において |
私はあなたにお願いします |
あなたの存在を元に戻して下さい |
あなたに自由な方法によって |
つまり |
私に慰めを与える為に私に書くことで |
それで少なくとも私は心が再び満たされ宗教活動に更に喜んで参加出来るでしょう |
ずっと以前あなたが恥ずべき快楽の為に私を欲した時 |
あなたは手紙で私を攻めたてました |
そしてあなたの歌であなたはエロイーズの名を皆の唇の上に載せました |
全ての街がそれを鳴り響かせました |
全ての家の中でそれは響き渡りました |
今あなたは私を神に向けて励起させるべきではありませんか |
あなたが当時あなたを欲するように私を励起させたように |
考えて下さい |
お願いします |
あなたが私に負っていることを |
私があなたに求めていることを聞いて下さい |
そして私はこの長い手紙を短い言葉で終えます |
さようなら |
私の唯一の愛する人 |
完 |
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Office Murakami |