「コーラン經」 奪魂品 第七十九 [アル・ナジアト] 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
奪魂品[アル・ナジアト](1-44節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 (人の心魂(タマシヒ)を)强奪(ガウダツ)する(天使)によりて、
二 (そを)靜に奪去するによりて、
三 (~命を(モツ)天空(ソラ)を)飛翔(トビカケ)によりて、
四 (正を天堂に)引接するによりて、
五 (現世の)事を處理するによりて、
六 その日(角聲(カクセイ)の)震動は(宇宙を)震動せん、
七 相踵(アヒツ)ぎて。
八 その日(人の)心は(ヲノノ)かん
九 (オモテ)()せられん。
 (不信は)いふ、吾曹必ず來れる處に歸らざるを得ざるか、
一一 吾曹枯骨(ココツ)となれる後にと。
一二 渠等いふ、さらばこれ滅亡に歸るなりと。
一三 洵にそれ(角の)唯一聲なり、
一四 見よ、渠等地の面に現はる。
一五 モセの(モノガタリ)爾曹に至らずや。
一六 上帝(キヨ)きツワの谷に渠を呼びて、
一七 ファラオに行け、渠は暴惡なり、
一八 いへ、爾は正しく(キヨ)からんとや、
一九 われ爾を上帝に導きて畏れしめんと。
 渠、渠に甚大(イトオホイ)なる表徵(シルシ)を示しき。
二一 されど渠は僞瞞を以てモセを(ソシ)りて~に叛けり。
二二 渠急ぎ(カヘ)りて
二三 渠等(の魔術師)を(ツド)へ、高く叫びていへり、
二四 われ爾曹の至上の上帝なりと。
二五 よりて~は渠に來世の責罰を下せり、またこの現世のそれを。
二六 洵に此處に畏るゝ者への往例あり。
二七 爾曹創造をしとや、さては~建設(タテ)し天か。
二八 ~はそを高く擧げ、そを完く形成(カタチヅク)れり。
二九 ~は夜を暗くして光明(ヒカリ)を生ぜり。
 その後~は地を開展(ヒラ)けり、
三一 それより其處に水を湧かし(マキ)を生じ
三二 山を置けり、
三三 爾曹のため、また爾曹の家畜の爲に。
三四 權力(チカラ)ある日大なる日の至るや、
三五 其日人はその故意に爲せし所を想記せん、
三六 地嶽は見るの目に露はされん。
三七 何人にても侵犯(オカ)せし
三八 此現世をスびし
三九 其居處は洵に地嶽たるべし。
 されど其上帝の前に出でんを畏れて心を快樂より制せし
四一 その居處は洵に天堂たるべし。
四二 渠等は(最後の)時に就きて問はん、其定まれる時は何時ぞと。
四三 如何に爾はそを知らすぞと。
四四 上帝に其時は屬す。渠等を見ん日は宛ら一朝一夕の遷延(センエン)に過ぎざるが如く(渠等に)見えん。
奪魂品[アル・ナジアト](1-44節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
冒頭に奪魂の天使のとあれば以て名とす。
一五−二六のモセのことを說くは默伽初期の默示としては言詳密に過ぐれば恐らく後出の他經の入かとの說あり。
時代
ネルデケは之を第七十七(~使)品の前に置くも、ムイアは宣傳第六年頃とせり。
始の一四はネルデケのいふが如く、二七以下は後のものか。
內容
奪魂~使をかけて復活審判の必來の誓、不信も尙復活す(一−一四)。
セとファラオの事(一五−二六)。
創世主は復活を能くす、審判の日の正邪徒の狀、審判の時は何人も知らざるも其至るや不信には太早し(二七−四六)。
奪魂品[アル・ナジアト](1-44節)の註釋(文字の解釈)
一 强奪するは惡人の心魂、靜に奪ふは善人の心魂。
 地は天より先に創造されしも其開展されしは後となせり。
三五 無意識は犯せる罪は假すればなり。
Office Murakami