「コーラン經」 人間品 第七十六 [アル・インサン] 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
人間品[アル・インサン](1-31節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 人闡エ處に何等記すに足らざる時を過さるか。
二 洵にわれ兩性の精を合せて人を創造れり、そをわれ渠に證し得。われ渠をして聞き且見せしめき。
三 われその謝すると否とに論なく確に渠を道に導けり。
四 洵にわれ不信の爲に鎖と頸と烈火とを設けき。
五 されど正しきはカフルの水を混へし酒をむべし
六 ~の奴僕の飮むべき泉ある。そを渠等は欲する所に搬び得。
七 此等はその誓を完うし、その日をその惡の四方に傳はるるを畏れ、
八 貧と孤兒と奴隷とに食を與へ、
九 われ唯~の爲に爾曹を養ふ、爾曹より何等の報償をもまた何等の謝恩をも要せず、
 洵にわれ上帝より困厄の日を畏ると(いふ)。
一一 されば~は渠等をその日の惡凶より救ひ、渠等に愉色と歡樂とを與へん、
一二 その堅忍に酬ゆるに樂園と絹衣とを以てせん、
一三 其處に渠等は床に憩はん、渠等は太陽も太陰も見ざらん、
一四 樹蔭は近くその上を掩ひ果實は低く垂れてその取るに任せん、
一五 渠等(侍は)白銀の皿を執りて四邊にあらん、子は白銀にて輝かん。
一六 よりて渠等は(欲するに從ひて)量を測り得ん。
一七 其處に渠等はザンザビルを混へし酒盃を擧げ得ん、
一八 シルサビルと名づけし(天堂の)泉を。
一九 永久の年少はその邊に侍せん、爾曹そを見んに宛然眞珠を散らせるに似たり、
 爾曹見る時、基處にス樂と大王國とを見ん。
二一 渠等は告Fの絹金褸の衣を着白銀の飾を佩び、その上帝は至醇の飮料を與へていはん、
二二 洵にこれ曹の報償なり爾曹の努力は嘉納せられきと。
二三 洵にわれ爾曹に漸次に可蘭を默示せり。
二四 されば忍びて爾曹の上帝の審判を待て。渠等の中の惡人さては不信に勿從ひそ。
二五 朝に夕に上帝の名を記せよ、
二六 夜そを禮拜し夜を頌めよ。
二七 洵に此等の人は轉變(の生)を愛してその後に(審判の)重き日を殘す。
二八 われ渠等を創造り渠等の筋肉を固めたり、わが欲する時にその代に(他の)似たるを代へ得ん。
二九 洵にこれヘ戒なり。欲するはその上帝の道に向ふ。
 されど~欲せざれば爾曹欲せざらん。~は知り且賢なれば。
三一 ~はその欲するをその慈惠に導く。されど不正には悲しむべき責罰を設けたり。
人間品[アル・インサン](1-31節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
或は時間品 al Dahr と題す。ともに冒頭の文字による。
時代
或は之を以て麻訶末の兩孫ハッサン、フサインの病氣の時のものと爲す說あれど、學者賛せず。以て宣傳第五年頃のものとせり。
內容
受胎生~力による(一−四)。
天堂に於けるヘ徒の果報(五−二二)。
可蘭は漸次に默示され、麻訶末とヘ徒とは堅忍を要す(二三−二六)。
不信は現世を愛す(二七−二八)。
~の救はんと欲するのみ救はる(二九−三一)。
人間品[アル・インサン](1-31節)の註釋(文字の解釈)
一 甲說には、此時間を泥土より創造して四十年間乾かしたる後~の息を吹き入れしアダムのこととすれど、乙說にては人類一般にて胎內に在る時間と解す。
五 カフルKafurはカンプルなり。
一三 日月の光を借るを要せずして自明なるの意。或は太陰の原語Zamharirは廣寒の義なれば太陽の暖と相對して樂園には寒も知らざる義とも解せり。
一七 ザンジァビルZanjabilはジンジァなり。亞剌伯族は水にジンジァを混へて飮むを好めば、此泉ジンジァの味ありとせるなり。
一八 シルサビルSilsabilは徐に快く咽喉を下る意。
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