「コーラン經」 王國品 第六十七 [アル・ムルク] 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
王國品[アル・ムルク](1-30節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 その掌裡に王國ある渠をせよ、渠は全能なれば。
二 そは死を與へ生を授け、爾曹の誰か最正しきかを爾曹に證し、偉大にして赦を愛す。
三 そは層七層の天を創造れり、爾曹は大慈悲~の創造に於て何等の不合式不均齊を認むる能はず。
四 爾曹再眼を(天に)擧げ(て見)よ、其處に瑕ありや、更に再見よ、爾曹のは倦み疲れて爾曹に歸らん。
五 更にわれ燈光を以て最下天を飾り、以て惡魔を射さしむ、われ爲に焦熱の苦惱を設けたる惡魔を。
六 上帝を信ぜざるにも地獄の苦惱あり、惡しき旅程かな。
七 渠等それに投ぜらるや、その驢鳴の如く鳴りて沸騰し
八 殆んど狂するを見ん。その徒其處に墮つる每に關尹問はん、爾曹に警告なかりしかと。
九 渠等答へん、左なり、警告は來れり、されど吾曹は欺瞞を以てそを責めき、~は何事をも默示せざりき爾は大なる迷謬に外ならずといへりと。
 渠等いはん、若し吾曹耳を傾けたらんには熟慮したらんには吾曹は焦熱の民たらざりけんと。
一一 渠等はその罪を懺せん、されど焦熱の民は(慈惠より)去れ。
一二 洵ににその上帝を畏るゝ者は赦を受くべし大なる報償を得べし。
一三 爾曹の談話を隱くせまたそを顯はせ、~は爾曹の胸裏の奧を知る。
一四 (萬物を)創造れる渠は(そを)知らざらんや、賢明にして能知なるに。
一五 爾曹の爲に大地を平げしは渠なり、さればその地方を行きその食を食へ、渠に復活するまで。
一六 天に在る大地をして爾曹を呑ましめざるを爾曹確保ふや、見よそは裂けん。
一七 天に在る爾曹に砂石を飛ばさじと爾曹確保ふや、さらば爾曹わが警戒の奈何なるかを見ん。
一八 爾曹の前に在りしは信ぜざりき、如何なりしよわが不滿は。
一九 渠等仰ぎて飛鳥の翅を開閉するを見ざるや。慈悲~の外そを支ふるなし、渠は萬象を見れば。
 また慈悲~に對して能く爾曹をは誰そや。洵に不信は迷妄の外なし。
二一 また~その食を絶たば爾曹に誰か能く食を供する。而も渠等は頑迷にして(眞理より)背く。
二二 されば面を伏せて行くは直立して正道を行くよりもよく導かるべきや。
二三 いへ、爾曹に存在を與へ、爾曹に聽とと理解とを授けしは渠なり、さるに爾曹の謝意何ぞそれ薄きやと。
二四 いへ、爾曹を地上に散じ悉く爾曹を曾すべきは渠なりと。
二五 渠等いふ、何時ぞや此威は、爾の言眞ならばと。
二六 答へよ、その知識は唯~に在り、われは唯公の警告なりと。
二七 されど渠等その迫るを見るに及んでは色悲し。(渠等に)いはるべし、これ爾曹の求めし所なりと。
二八 いへ、何とか思ふ爾曹は。~はわれとわれと與に在るとを破滅すべきか、はた不信を痛ましき責罰より保護せし吾曹を惠むべきかと。
二九 いへ、渠は慈悲なり、渠に吾曹は信じ渠に吾曹は據る。爾曹今後誰か明白なる迷妄にあるを知らんかと。
 いへ、何とか思ふ爾曹は。爾曹の水明日大地に吸はれんには誰か爾曹にCき流水を與ふべきかと。
王國品[アル・ムルク](1-30節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
冒頭の句に王國の文字あるを採りて題目とす。之を讀誦すれば墓穴の苦を免るとて或は稱して救濟品ともいふ。
時代
その默伽書たるは始んど衆說一致にて、時はヘジラ前八年。
內容
~の頌、~業の完全(一-五)。
不信の地獄の苦とその懺~の全智(六-一四)。
~は不信を滅す(一五-一八)。
不信は共生を支ふる~恩を知らず(一九-二四)。
不信は審判を迫るも實は之を恐れ、~はその日の唯一の保護者(二五-三)。
Office Murakami