「コーラン經」 慈悲品 第五十五 【アル・ラーマン】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
慈悲品【アル・ラーマン】(1-78節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 慈悲~は(その奴僕に)可蘭をヘへたり、
二 人類を創造れり、
三 それに異りし言語を授けき。
四 太陽と太陰とは時を違へず、
五 草と木とは地を飾る。
六 ~はまた天を上げ、~は秤衡を定めて
七 爾曹をして秤衡を侵さしめず、
八 よりて正しき重量ありて量を損せず。
九 ~は生物の爲に地を設け、
 其處に果實あり、花く椰子あり、
一一 糠と葉とある物あり。
一二 されば爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
一三 ~は土の如く土より人を創造れり、
一四 されど煙なき火より妖を創造れり。
一五 されば爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとにや。
一六 渠は東の主なり
一七 また西の主なり。
一八 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
一九 渠は雨水を放ちて相會せしめ、
 その閧ノ超えき防障を設く。
二一 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
二二 渠は孰よりも大小の眞珠を出す。
二三 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
二四 渠また山の如く帆を掛けて上に船をらしむ。
二五 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
二六 地上の萬物凋落せざるは莫し、
二七 た光榮あり名譽ある上帝の面は長しへに在り。
二八 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
二九 天にあり地にある萬物は渠に屬し每日渠はその業をむ。
 さるに爾曹は恩を忘れて上帝の思惠の孰をか否まんとするや。
三一 われ(最後の日に)必ず爾を判せん、噫、人と妖と。
三二 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
三三 噫、爾曹、妖人閧フ群、若し能く天地の境を脫出し得ば脫出せよ、絶對力にあらざるよりは脫出し得じ。
三四 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
三五 煙なきなき煙は爾曹に下るべく、爾曹そを防ぐ能はず。
三六 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
三七 天は裂けて薔薇の如く紅く油の如く解けん。-- 
三八 さるに爾曹上帝の恩惠の孰をか否まんとにや。--
三九 その日人も妖もその罪に就きて問はれざらん。
 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
四一 惡人はその記號にて知られ額髮と兩脚とを執(りて地獄に投げ)られん。
四二 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
四三 これ惡人の虛妄として否みし地獄、
四四 渠等はそれと熱湯水の閧彷徨はん。
四五 さるに爾曹は恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
四六 然れども其上帝の廷を畏れしには兩園ありて、--
四七 さるに爾曹上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。--
四八 克蔭多し。
四九 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
 その孰にも兩泉湧出す。
五一 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
五二 その孰にも各色の果實の兩種あり。
五三 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
五四 錦の榻にはり兩園の果實を手にす。
五五 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
五六 其處に人も妖も未て破瓜せざる眼を牽く處女ありて--
五七 さるに爾曹上帝の恩惠の孰をか否まんとにや、--
五八 (面は)紅玉の如くまた眞珠の如し。
五九 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
 善行の果報は善事の外何かあらんや。
六一 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
六二 此等の外更に(他の)兩園あり。
六三 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
六四 国たり。
六五 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
六六 泉潺たり。
六七 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
六八 その孰にも果實椰子榴あり。
六九 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
 其處に快く美しき處女あり。
七一 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
七二 Kき明眸を有ち惟幕の中に在り(て人のるを避く)。
七三 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
七四 そは(その定まれる配偶の外)人も妖も未て破瓜せざる所なり。
七五 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
七六 翠帳紅閨に在りてはる。
七七 さるに爾曹恩を忘れて上帝の恩惠の孰をか否まんとするや。
七八 光榮あり名譽ある爾曹の上帝の名を頌揚せよ。
慈悲品【アル・ラーマン】(1-78節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
冒頭の慈悲~の名より名づく。各方面よりの~の頌なるも、就中天堂樂園を說くこと多し。蓋し可蘭中最信徒の好んで讀誦する所なり。その內容のためのみならず、また其頗詩的なる調格、亞剌比亞語の原文にては、音樂的聲律の快きに因る。
時代
時代には說あれども宣傳第四年頃と推定さる。
內容
~は可蘭をヘへ、~は造物主(一-一五)。
~は東西の主、洋の主(一六-二五)。
~獨り長生不壞(二六-三○)。
~は人と妖とを審判し惡人を地獄に投ず(三一-四五)。
天堂のス樂(四六-七八)。
慈悲品【アル・ラーマン】(1-78節)の註釋(文字の解釈)
一六 東西は原語二東二西とあり、夏冬に於ける日出日沒の地平點を指す。
三五 焰なき煙は熔銅。
三七 薔薇、原語にてはまた紅革の意あり。
三九 罪惡の徒は記號あれば問はずして知るるの義。
四六 兩園は、一說には人の天堂と妖精の天堂となし、他說には各人に兩樂園ありて甲は其所業の果報として得乙は~の恩惠として授けらるとなす。
五二 兩種の果實とは世間に知られしものと天堂にのみ生ずるものと。
六二 他の兩園は稍劣れる天堂の衆に授けらる。
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