「コーラン經」 太陰品 第五十四 【アル・カムル】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
太陰品【アル・カムル】(1-55節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 (審判の)時は近けり、太陰は裂けたり。
二 されど渠等(不信)は表徵を見て他を向き、大なる魔術といへり。
三 渠等は欺瞞を以て(爾を)責む、その嗜慾に委せよ、事は定まれり。
四 今使命は渠等に至れり、その中に(頑迷なる不信の)威あり、
五 そは知識を盡くすも、警戒は(渠等を)uせず。されば爾は渠等より去れ。
六 徵(人類を)忘恩の事に徵すや、
七 渠等は蝗の四方に散ぜる如く(多く)面を伏せて(墓穴より)出で、
八 畏怖を懷きて徵に急ぐ。不信者はいふべし、これ困厄の日なりと。
九 ノアの民は(爾の民より)前に欺瞞を以て(その豫言を)責めき、渠等は欺瞞を以てわが奴僕を責めて狂人なりといへり。渠は誹謗を以て拒まれき。
 故に渠その上帝にりき、われ敗れぬ、されば報復せよと。
一一 よりてわれ天門を開きて水を決し
一二 地中より泉を湧かせ、斯くして(天地の)雨水を會せり、宣の旨命に應じて。
一三 われ渠に板と釘とを以て船を造らせ
一四 そをわが監の下に動かせり、恩を忘れて排斥せられし渠の爲に報償として。
一五 われそれを表徵とせり、然るに何人も警めずや。
一六 如何に(峻烈なりしよ)わが報復とわが威とは。
一七 今われ可蘭をヘ戒の爲に和解す、然るに何人も戒めずや。
一八 アドは欺瞞を以て(その豫言を)誹謗せり、されど如何に(峻烈なりしよ)わが報復とわが威とは。
一九 洵にわれ風を送りて不幸の日を續けき、
 そは人を奪ふこと猶椰子樹の根を拔くが如くなりき。
二一 如何に(峻烈なりしよ)わが報復と威とは。
二二 今われ可蘭をヘ戒の爲に和解せり、然るに何人も警めずや。
二三 タムドは虛妄を以て(その豫言の)ヘ戒を謗りて、
二四 いへり、吾曹は吾曹の中の一人に從ふべきか、さらば吾曹は洵に狂妄の罪あり、
二五 ヘ戒は吾曹の中(まづ)渠に與へられしか、否、渠は虛言なり無禮の奴なりと。
二六 (されど~はサリにいへり)誰か虛言無禮なるかを明日こそ知らめ、
二七 われ必ず試の爲に渠等に牝駱駝を送らん、爾は渠等をてその無禮を忍べよ、
二八 水は渠等の閧ノ分たれ互に飮まるべしと豫言せよと。
二九 渠等その友と相會せしとき渠劍を執りてそを殺せり。
 されど如何に(峻烈なりしよ)わが報復とわが威とは。
三一 われ渠等に(天使ガブリエルの)一吼を發するや、渠等は(家畜の)欄に用ひし枯木の如くなれり。
三二 今われ可蘭をヘ戒の爲に和解せり、さるに何人も戒めずや。
三三 ロトの民は虛妄を以てその說ヘを排せり。
三四 されどわれ渠等に石雨を(飛ばす風を)送れり、たロトの一家を早朝に救へり、
三五 わが眷遇を以て。斯くしてわれは謝恩に酬ひき。
三六 ロトは(責罰に就きて)わが峻烈を渠等に警めしも、渠等はそを疑ひき。
三七 渠等はその客を(恥しめんと)要せり、されどわれその眼を奪へり、わが報復とわが威とを味へと(いひて)。
三八 昧爽に責罰は渠等を驚かせり。
三九 さればわが報復とわが威とを味へ。
 今われ可蘭をヘ戒の爲に和解せり、さるに何人も警めざるや。
四一 モセの警戒も亦ファラオの民に至れり、
四二 されど渠等は欺瞞を以てわが表徵を逐一に排せり。さればわれ不可抗の大責罰を之に加へき。
四三 爾曹の不信は(噫、默伽の衆よ)此等よりもよきや。責罰の免除は聖典にて爾曹に約されしや。
四四 吾曹は(敵に)勝つに足る團體なりといひ得るにや。
四五 群集は必ず潰え奔らん。
四六 然れども(審判の)時は(責罰の)威の日なり、その時は(現世に於ける渠等の困厄よりも)更に悲しく更に痛まし(からむ)。
四七 洵に惡は迷妄に陷り火に燒かれん。
四八 その日渠等は面を烈火に曝らされん、(渠等にいはれん)爾曹地獄の味を味へと。
四九 われ定命を以て萬有を創造れり。
 わが命唯一語、轉瞬の如し。
五一 われ嘗て爾曹の如き(幾多の民)を破滅せり、されど(爾曹の)何人も警めざるや。
五二 渠等の所業は書に在り、
五三 一擧一動大小の別なく錄せらる。
五四 敬虔は樂園C流の閧ノ、
五五 眞理の集會に、最威力明王の前に在り。
太陰品【アル・カムル】(1-55節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
冒頭に太陰の裂くるを記せば名づく。第十一布度品に類すれば、或はその提要と稱せらるもこ、ネルデケは却りて此を以て古の豫言の事を記せる最夙きものと爲せば、布度品を以て太陰品の詳說とも見るべし。
時代
時代には異說あるも大抵ヘジラ前六、七年なり。
內容
審判の日の表徵たる太陰の決裂(一-二)。
麻訶末に不信を絶てとの勸(三-六)。
審判は不意に下る(六-八)。
ノアの民の往例(九-一七)。
アド族の往例(一八-二二)。
ムド族の往例(二三-三二)。
ソドムの往例(三三-四)。
ファラオの往例(四一-四二)。
往例を以て默伽の民に審判を豫警す(四三-四八)。
~宣は確實不可抗(四九-五一)。
行爲は~册に在り、敬虔は天堂に入る(五二-五五)。
太陰品【アル・カムル】(1-55節)の註釋(文字の解釈)
一 太陰の裂けたるは口碑に存する麻訶末の奇蹟となす說と、裂けたりを宜しく裂くべしと讀みて復活審判の日の豫言と解する說とあり。
六 徵は人を審判に呼び集むる天使イスラフイルIsrafil
一○ 此は他と異りて洪水はノアの報復とせり。
二八 渠等の間はタムド族と牝駱駝との間。
二九 その友はキダルイブンサリフKidar lbn Salif
 唯一語はクンKun(在れ)といふ語。之をいへば萬物立るに生ず。
Office Murakami