「コーラン經」 山嶽品 第五十二 【アル・ツル】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
山嶽品【アル・ツル】(1-49節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 (シナイの)山嶽によりて、
二 聖典によりて、
三 開ける卷物に錄されたる。
四 詣づる廟によりて、
五 高き屋(たる天)によりて、
六 漲れる太洋によりて、
七 洵に爾曹の上帝の責罰は下るべし、
八 そを制むる(何ものも)なし。
九 その日、天は震動しい?し、
 山嶽は動搖す。
一一 其日、不幸は僞瞞を以て(~の使徒を)謗りしに、
一二 娛樂の爲に爭論せしに下る。
一三 その日、渠等は地獄の火に逐はれ投げらるべし、
一四 (渠等にいはれん)、これ爾曹の虛構として否みし火なり、
一五 これ魔術か、爾曹見ざるか、
一六 入りて燒かれよ、忍ぶと忍ばざるとそは爾曹に等し、爾曹必ずその業報を受けざるべからずと。
一七 されど敬虔は樂園に享樂すべし、
一八 上帝の授くる所を樂しむべし、上帝はそを地獄の苦惱より救ふべし。
一九 (渠等にいはれん)、爾曹の所業によりて安易に飮食せよ。
 列べる榻にはりて。われ渠等に大なるKき眼を有てる處女を配せん。
二一 信じてその子孫も亦信仰にそれに從ふには、われ其子孫をも(天堂に)伴はん。われ寸毫も渠等の業功を減ぜじ。--各人はその所業の爲めに(~に)典當す。--
二二 われ渠等に其の欲する各種の果魚介を與へん。
二三 渠等互に酒盃を巡らさん、其處に空談なく罪惡なし。
二四 中の眞珠の如(く美し)き少年渠等に侍せん。
二五 渠等相近づき相語らん。
二六 渠等いはん、洵に吾曹嘗て家中に在りて(死後に就きて)太く畏れき、
二七 さるに~は吾曹に大なり、焦熱の苦を救へり、
二八 吾曹~りたれば。~は慈恩なりと。
二九 されば爾は(噫、麻訶末、爾の民に)示ヘせよ。爾は~の仁慈によりて左道にも狂人にもあらず。
 渠等はいはん、渠詩人なり、吾曹渠に就きて運命の轉變を待つと。
三一 いへ、待て爾曹(わが破滅を)、洵にわれ亦爾曹と(爾曹の破滅の時を)待たんと。
三二 渠等夢中にいふか、渠等邪なるか。
三三 渠(可蘭を)僞作せりと渠等いふか。洵に渠等は信ぜず。
三四 渠等をしてそれに類せるものを出さしめよ、渠等の言眞ならば。
三五 渠等何にも創造られざりしや、自創造れるや。
三六 渠等天地を創造れりや。洵に渠等は確ならず。
三七 上帝の貨その手に在りや。萬有の主宰たりや。
三八 (天に)昇る梯子を有てりや、(天使の談論を)聞き得るや。さらばそを聞けるをしてそれを證せしめよ。
三九 ~は女子を有ち爾曹は男子を有てりや。
 爾渠等に(その說ヘの爲に)報酬を求めしや。されど渠等は債を負へり。
四一 未來の密渠等に在りや、渠等そを(~命の記錄より)寫せりや。
四二 渠等(爾を)謀らんとするや。されど不信は謀らるべし。
四三 ~の外に~祇を有てりや。その配せる所よりも高く~を崇めよ。
四四 天の一部(その上に)落つるを見てはこれ密雲なりといはん。
四五 渠等畏怖を以て呻吟する日の至るまで捨てよ、
四六 その日渠等の種の謀計終に功なく渠等は救はれざらん。
四七 不正は必ず此外にまた責罰を蒙らん。さるに渠等ね悟らざるなり。
四八 爾忍びて(渠等に就きて)上帝の審判を待て、爾はわが眼中に在れば。爾起きる時爾の上帝を頌めよ、
四九 夜そを頌めよ、星の消ゆる時また。
山嶽品【アル・ツル】(1-49節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
品名は冒頭のシナイ山を誓にかけしに因る。この一篇もまた前後兩段に分ること散布品に同じ。
時代
ネルデケは直に前の後に出づと爲すも、ムイアは宣傳第六年乃至第十年の間とす。
內容
審判必至の誓(一-八)。
審判の日不信の畏怖(九-一六)。
天堂の祝(一七-二八)。
麻訶末を誹るに魔術、狂人、詩人、僞瞞を以てす(二九-三四)。
不信の無智と偶像崇拜、ヘ敵と麻訶末と(三五-四七)。
麻訶末に頌~歸信の勸(四八-四九)。
山嶽品【アル・ツル】(1-49節)の註釋(文字の解釈)
三 開ける卷物は、各人の行動を記せる書とも、~命の記錄とも、モセの法典とも、可蘭ともいふ。
四 廟は默伽の方廟。
四七 外の責罰は、審判の日のそれの外現世の困厄、例えばバドル戰の敗績七年の饑饉の類。
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