「コーラン經」 可布品 第五十 【アル・カフ】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
可布品【アル・カフ】(1-45節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 カフ。光榮ある可蘭によりて、
二 洵に渠等はその中より說ヘの出でしをしむ。不信はいふ、これ事なり、
三 吾曹死して灰塵と化せる後(復活せん)とは。これ遠き應酬なりと。
四 今われ大地は何を渠等の爲に費すかを知る。われにそを錄せる書典あり。
五 然るに渠等は眞理の到れるのちそれに僞妄を歸して迷へり。
六 渠等は上天を見て如何にわがそれを昇げそれを飾り微毫も痕跡を留めざるを見ざるや。
七 われ亦地を展げて山嶽を根ざし幾多の美しき草木を生じき、
八 考慮ある臣從歸依へのヘ戒として。
九 われ天よりとして雨水を降し、園圃を繁茂せしめ類を實らせ、
 樹幹高き椰子樹の枝に累たる果實を結ばせ、
一一 以て人類の食たらしめ、爲に死地を甦らしむ。斯くして復活は來るなり。
一二 ノアの民とアルラスに住める、タムド、
一三 アド、プァラオの衆は(默伽の衆より)前に僞瞞を以て(豫言を)責めたり、ロトの同胞、(ミヂアンに近き)森林の民、チュツバの民も亦。總べて虛妄を以て使徒を謗れり。故にわが威せし所(の審判)正しく下れり。
一四 わが力は最初の創造に盡きたりや。さなり渠等は(それに告ぐる復活)新創を以て混迷せり。
一五 われ人を創造り、その心のその中に私語く所を知る。われはその靜脈よりも渠に近し。
一六 兩天使人の左右に在りてその云爲を視、
一七 一語を發せずとも監視者の所錄あり。
一八 死の苦は眞に至らん、これ爾曹の避けんと欲する所。
一九 角は鳴らん、これ威されし日なり。
 心各至らん、其處に驅逐と證とあり。
二一 (前は不信にいはん)、爾曹從來この日を介意せず、されどわれ爾曹の被衣を除けり、爾曹今日明に見んと。
二二 その友いふべし、これ旣に吾曹にあり(て證されし所)と。
二三 (~いはん)、地獄に投ぜよ、あらゆる不信と邪の人とは、
二四 善を禁ぜる侵犯
二五 (眞の)~の外に他の~祇を崇めし、そを悲しむべき苦痛に投ぜよと。
二六 その友いふべし、噫、上帝、われ渠を誘惑せず、唯渠自誤れりと。
二七 ~いふべし、勿爭ひそわが前にて、われ旣に夙に爾曹を威したれば。
二八 われに於ては宣告は變易せず、また不正を以て(わが)奴僕を遇せずと。
二九 この日われ地獄にいふべし、爾旣に充てりや。そは應ふべし、尙他のものありやと。
 天堂は敬虔に齎らされん。
三一 (渠等にいはるべし)、これ爾曹の約されし所、歸依して(~の命を)守る何人にも。
三二 竊に慈悲~を畏れ心を改めて(~に)至る
三三 平和に之に入る。これ永劫の日なり。
三四 其處に渠等は欲する所を得べし、われと與に(の)溢加あらん。
三五 勢力渠等(默伽の衆)よりも超えし如何に多數の代をその前にわが破滅せしか。故にその地をぎりて避遁の地ありやを見よ。
三六 洵に此處に(理解の)心ありて耳を傾くるへのヘ戒あり。
三七 われ六日に天と地とその閧フ萬物を創造りて毫も疲れず。
三八 故に能く渠等のいふ所を忍び、日出の前と日沒の前に爾の上帝を頌揚せよ、
三九 夜中に頌揚せよ、更に禮拜を加へよ。
 呼の近き處より(人を審判に)呼ぶ日を聞け、
四一 渠等の眞に角聲を聞く日を。これ(墓穴より人の)起つ日なり。
四二 洵にわれ生を授け死を與へ、(萬有は)われに復歸すべし。
四三 大地の俄に崩裂する日に。これわれに(集るに)容易き集會なり。
四四 われ能く渠等(不信)のいふ所を知る。爾はそを(信仰に)强ふる要なし。
四五 可蘭によりてわが威を畏るゝ者を警戒めよ。
可布品【アル・カフ】(1-45節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
首にカフの一字あるより名づく。カフは全世界を圍繞せる山名なりとも、カドルアルアムル Qadr al amr の略字にて宣事の義なりともいへど詳ならず。
時代
ネルデケは第四十四煙氣品の次に出づと爲す。
內容
不信の復活をしむは不信のため(一-五)。
~業は復活の力める證(六-一一)。
豫言者排斥の古例を以て孤列種を戒む(一二-一三)。
~は創造に疲れて復活の力なきに非ず(一四)。
~は靜脈よりも人に近く、天使は人の云爲を監記錄す(一五-一七)。
死と審判とは萬人に至り天使は不信處罰の證たり(一八-二二)。
惡人の墜地獄(二三-二九)。
天堂は眞の信を迎ふ(三-三四)。
前代の破滅は默伽の警(三五-三六)。
不信を忍べと麻訶末への戒(三七-四三)。
麻訶末は信仰を强ひず唯警告す(四四-四五)。
可布品【アル・カフ】(1-45節)の註釋(文字の解釈)
一 光榮ある可蘭Quran al Majidとはイスラムヘ徒の常套語。
一二 アルラスの事は第二十五品の四、第十一品の二六−一〇〇參照。チュツバは第四十四品の三六參照。
一六 人善行あれば右側の天使は十び之を錄し、若し惡行あれば左側の天使に向ひて七時間之を錄するを待てその間に或は改峻赦をらんといふと。
 驅逐は人を審判に拉し去る天使、證はその善惡を證する天使。一說に、前は惡行を錄する、後は善行を錄すると爲す。
二六 その友は惡魔。
 近き處はあらゆるの均しくその徵呼を聞き得る處にて、普通にヱルサレムの高地を指すと爲す。
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