「コーラン經」 沙丘品 第四十六 【アル・アーカフ】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
沙丘品【アル・アーカフ】(1-35節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 ハ ミム。(この)聖典の默示は偉大賢明の~よりす。
二 われ眞理と定命とを以ての外天地とその閧フ萬有とを創造せず、然るに不信は與へたる警告より遁れ背く。
三 いへ、何をか思ふ爾曹は。爾曹が~の外に禮拜せる所(の~祇)は地の何(の部分)を創造れりやを示せ。さては渠等天(の創造)に參りしか。この前(に默示されし所)の聖典若しくは(往昔の)知識の遺影を持來れ、爾曹眞實の人たらば。
四 復活の日に至るまで答ふる能はず渠等の禱を顧みざる~の外に禮拜するよりも誤れるありや、
五 (審判に)集まるや渠等の敵となり忘恩にもその禮拜を否むものを禮拜するよりも甚しき迷誤あらんや。
六 わが明白なる表徵を渠等に說くや、不信はそれに下れる眞理に就きて、これ明白なる左道なりといふ。
七 渠等いはずや、渠(麻訶末)そを僞作せりと。答へよ、若しわれ僞作せば洵に爾曹はわが爲に~より何ものをも得ざらん、~はそれに就きて爾曹のいふ所を能く知れり、~はわれと爾曹との閧フ充分なる證たり、~は大度にして仁慈なり。
八 いへ、われは使徒中の孤獨ならず、またわれは(今後)われと爾曹との如何になるべきかを知らず、わが從ふ所は默示に外ならず、われは公の警戒のみと。
九 いへ、如何、爾曹の說は。此聖典~より出づるも爾曹之を信ぜず、イスラエルの子孫(其ヘ法との)一致を證して信ずるも爾曹傲然之を拒まば、(爾曹不正ならずや)。洵に~は不正の民を導かず
 然るに信ぜざるは眞の信に就きていふ、若しこれ良典ならば渠等は吾曹に先ちてそれに歸依せざるべしと。渠等それを以て導かれざればいふ、これ上世の虛譚なりと。
一一 されど之に先ちてモセの法典(默示せらる)あり、示ヘとして慈惠として。こは剌此亞語にて (下されて)そを確認するものとす、不正を行ふを威し正を行ふに吉報を齎らして。
一二 吾曹の上帝は~なりといふもの正を持するものには毫も畏怖なく憂愁なけん。
一三 そは天堂の民たり、永久に其處に在るべし、その所業の果報として。
一四 われ人に兩親に孝ならんを命ず。母は懷胎の苦分娩の痛に耐えき、懷胎より離乳に至りて三十箇月なり。長じて四十歲に達していふ、噫、上帝、天啓によりてわれを勵まし渠等の恩惠を謝せしめよ、われとわが兩親に眷遇を垂れよ、われをして正を行ひて爾をスばしめよ、われにわが子孫に恩澤あれ、われ爾に歸依してムスリムたればと。
一五 斯るはわがその善行を受納しその過失を看過するものなり、天堂の民の中たるべし、これ(現世にて)渠等に約する眞約なり。
一六 父母に向ひて、噫、爾曹、われ以前に幾世の過ぎたる(も一人の復活せるものなき)にわれ復活すべしと爾曹は約するやといふ、その兩親は~の援助をりて(いふ)、あはれ爾、信ぜよ、~の約は眞なればと。されど渠答ふ、そは古人の愚言のみと。
一七 斯の如きは渠等以前妖と人とに正しく當てられし宣言の宣せらるもの、渠等は必ず滅ぶべし。
一八 各人にはその所業に應じて(幸若しくは不幸の)若干の度ありて、~はその所業に酬ひ得。渠等は不正に遇せられざるべし。
一九 ある日不信は(地獄の)火の前に露さるべし。(渠等にいはるべし)爾曹世に在りし時善事を得たり、そを享樂せり、されば今日爾曹は不名譽の責罰を以て酬はるべし、爾曹現世にて暴慢に正義を守らず侵犯したれば。
 アドの同胞を思へ。渠アルカフにてその民に說ヘせり。--渠の前にも後にも若干の說ヘありき。-- (いへらく)、~の外何をも勿拜しそ、洵にわれ爾曹の爲に大なる日の責罰を畏ると。
二一 渠等答へき、爾の來るは吾曹の~祇(の崇敬)より吾曹を誘はんとにや。今直に爾の吾曹を威する所(の責罰)を齎らせ、爾眞實の人ならばと。
二二 渠いへり、洵に(爾曹の責罰の時に就きての)知識は~に在こり。われは唯ヘを說く爲に派せられしを爾曹に告ぐ、されど爾曹の愚民たるを見ると。
二三 渠等(其責罰の豫備として)行雲のその谷に近づくを望みていへり、これ雨を降す行雲なりと。(渠答へき)否とよ、爾曹が急がんを要せるもの是なり、風に峻烈なる報復あり、
二四 そは~命によりて萬物を破却すべしと。斯くて朝には空屋の外何ものも見られざりき。われ斯くして惡しき民に酬ひたり。
二五 われ渠等を確立せること猶爾曹に於けるが如くなりき(噫默伽の民よ)。われ渠等に耳と眼と心とを與へき。されどその耳もその眼もその心も渠等が~の表徵を拒みし時終に渠等をuせざりき、唯その嘲笑せしところ(の報復)渠等に落ちたり。
二六 われ嘗て爾曹の四邊なる城市を破滅せり。われ種に表徵を示して渠等に改めしめんとせり。
二七 渠等が~の外に~祇に立てしものその~に近しと爲せしもの渠等を保護せしか。否、そは渠等より引き去れり、而して(渠等を誘惑し渠等を欺瞞せし)そはその虛說妄語なりき。
二八 われ妖の或ものを爾曹より去りて可蘭に歸せしめき。渠等その(讀誦の)座に在るや(互に耳を假せといへり、その終るや渠等(その聞ける所を)說きながらその民に歸れり。
二九 渠等いへり、吾曹の民、洵にモセ以來默示されその前の聖典を確認し眞理と正道とを示す聖典(の讀誦)を吾曹は聞けり。
 吾曹の民、~の說ヘに從へ、そを信ぜよ、渠爾曹の罪を赦し痛ましき責罰より救ひ得んと。
三一 ~の說ヘに從はざりしは決して地上に於て~(の報復)を敗る能はじ、~の外に何等の保護を有たじ。斯る輩は明白に誤れり。
三二 渠等知らずや、天地を創造して疲れざる~は死に生を復し得るを。さなり、實に、~は全能なれば。
三三 ある日不信は(地獄の)火に露さるべし。(渠等はいはるべし)これ實ならずや。渠等答へん、然り、吾曹の上帝をかけて。渠(~)答へん、さらば(地獄の)責罰を味へ、爾曹の不信の爲にと。
三四 爾、堅忍なれ(噫、麻訶末)堅忍なりし使徒の如く、渠等に(その責罰を)急ぎなせそ。渠等が威されし所(の責罰)を見ん日
三五 渠等は(現世にて)僅に一日を猶豫されしが如く見へんに。(これ好)警戒。侵犯せるの外滅ぶべきや。
沙丘品【アル・アーカフ】(1-35節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
アド族の地をアルカフ al Ahqaf といふ。アルカフはア〃フの複數にて沙丘の義なり。今のタイフ Tayif の沙丘なり。
時代
ヘジヲの直前か。ネルデケは隔壁品の次に置く。
內容
可蘭は~の默示(一)。
創造は眞~の證左(二-五)。
可蘭の僞作を以て麻訶末を責む(六-七)。
麻訶末は他の使徒と同じく說ヘのみ(八)。
可蘭に對する猶太族の信不信は相半し、可蘭はモセの法典を認む(九-一一)。
眞の信の幸福(一二-一三)。
孝と不孝(一四-一七)。
因果の應報(一八-一九)。
沙丘(アルカフ)の民其他の例は默伽の民の警告(二-二七)。
麻訶末に聽きて歸依せる妖精(二八-三一)。
~は復活の力あり、麻訶末へ竪忍の勸(三二-三五)。
沙丘品【アル・アーカフ】(1-35節)の註釋(文字の解釈)
六 眞理は可蘭。
八 孤獨は、そのヘは古の使徒豫言の說ける所と異ならずの意。
 これ良典ならば云は、良典ならば之を信ずるに人後に落ちずの意。事實は、アブダルラの歸依せしとき猶太族の言なりとし、また麻訶末の初の信徒の下賤なるを見し孤列種の言ともなす。
一四 四十歲云はアブベクルの事なり。此人四十歲にて新ヘに歸依し、その父母ともに歸依せる唯一人なりき。或はいふ、此解はアブペクルの哈利發となりしより出でたりと。
 アド族の同胞はに屢出でしフドのこと。但し此處に其言とする處は實は麻訶末の言說なり。
二六 四邊の城市はタムド、ミヂアン、ソドム、ゴモラ等。
二八 此妖精は或は七人、或は九人、或はニシビス、或はエマン、或はニネとなし、麻訶末がタイフに居るや夜可蘭を讀誦し朝に禱を捧ぐるを聞きて歸依せりといふ。
三一 ~の說ヘは麻訶末。
三五 唯一日間は第二十三品の一一四を參照せよ。
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