「コーラン經」 金裝品 第四十三 【アル・ヅクーラフ】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
金裝品【アル・ヅクーラフ】(1-89節)の本文
一 ハ ミム。明典によりて、
ニ 洵にわれそを亞剌比亞語の可蘭と爲せり、爾曹の理解し得るために。
三 そは原本に錄されてわれに在り、崇高に多智に。
四 さればわれ爾曹よりヘ戒を排奪すべきか、爾曹侵犯の民たるより。
五 如何に多數の豫言をわれ古の民に派せしか。
六 渠等に至りし豫言一人も渠等に嘲笑されざるなし。
七 よりてわれ勢力此よりも優れたる渠等(幾民族)を破滅せり。往例に此の如し。
八 爾曹、誰か天地を創造りしと渠等に問は渠等必ず答へん、偉大にして賢明なる~渠等を創造れりと。
九 そは爾曹の爲に大地を床として展べ、爾曹の向ふ處に道を設け、
 天より量りて雨を降し死地を甦らしめ--爾曹も亦斯く復活さるべし、--
一一 各種の事物を創造り、運搬の爲に船舶家畜を爾曹に授け、
一二 其上に爾曹を安坐せしめ、爾曹安坐するや上帝の眷遇を思ひて、吾曹の用に此等のを供せる~を頌めよ、吾曹(自力にて)そを左右し得ざれば、上帝に吾曹必ず復歸すべしといはしむ。
一四 さるに渠等は其奴僕の或者を犧牲として~に捧ぐ。洵に人は明白に忘恩なり。
一五 ~はその創造れるもの中より女兒を取り、爾曹の爲に子を擇ぶや。
一六 然るに渠等その~に配せると同じき(女兒を得たりとの)報を得れば面をKくして憂に沈む。
一七 何ぞ、渠等は粉飾の閧ノ生育する~に歸し、理由なくして爭ふや。
一八 渠等は大慈悲~の侍たる天使を婦人と爲すか。渠等はその創造に預りしか。渠等の證跡は錄せらるべし、(審判の日に)驗せられん。
一九 渠等いふ、若し慈悲~にして欲せば吾曹は渠等を禮拜せざりきと。渠等何の知識もなく、ただ虛妄を語る。
 われ前に渠等に(默示の)聖典を授けしに渠等それを守らず。
二一 たいふ吾曹は父のヘを見てその遺訓を守ると。
二二 わが以前に何れの城市に說ヘを派するもその地の勢力ある民、洵に吾曹は父のヘを見てその遺訓を守るといはざるなかりき。
二三 (時に說ヘは)答へき、何とや、われ爾曹に爾曹の父のヘよりも正しきものを齎らせるにと。渠等應ぜり、洵に吾曹は爾の說かんとする所を信ぜずと。
二四 此故にわれ渠等に報復せり、見よ、虛妄を以て(わが使徒を)謗りしの末路を。
二五 アブラハムその父とその民とにいへり、洵にわれは爾曹の禮拜する~祇を棄つ、
二六 われを創造りしを除きて、そは(正しく)われを導けばなりと。
二七 之を以てその後昆の法と定め渠等をして(偶像を去りて唯一眞~に)歸依せしめんとせり。
二八 洵にわれ此(默伽の)民とその父とは昌隆の生涯を許せり、眞理と明白なる使徒の至るまで。
二九 されど今眞理至るや渠等はいふ、これ左道のみ吾曹信ぜずと。
 渠等はいふ、この可蘭、兩市の(中の)ある大人に下りたらんには(吾曹信ぜしならん)と。
三一 渠等は上帝の慈惠を分配せしか。われこの現世に於て必要なる物資を渠等に分配し、その或を他より數階の上に置き、その一をして他に仕へしむ。爾曹の上帝の慈惠は渠等の畜積せる富資よりも尊し。
三二 全人類にして(不信の)一派たらざらん爲には、洵にわれ慈悲~を信ぜざるの爲にその家宅に銀の屋、その昇るに銀の階、
三三 その居室に銀の扉、その寢ぬるに銀の床、
三四 黃金の飾を與へたりけむ、總べてこは現世の物資たれば。されど上帝との來世は(そを)畏るゝ者の爲にあるべし。
三五 慈悲~のヘ戒より背く何人にもわれは惡魔を繫ぎてその離れざる侶伴とすべし。
三六--此等(惡魔)は渠等を(眞理の)道より誘惑するも、渠等は尙自正しく導かると想へり--
三七 渠(最後の日に)わが前に出で、われと爾との間には東西の距離あるを~に願ふ、
三八 噫、惡むべき侶伴なりしといふまで。されどそは此日に於て爾曹をuせず、爾曹不正なれば、爾曹は同じ責罰の伴たるべし。
三九 (噫、豫言)、爾は聾を聞かしめ盲を、明白なる迷謬にあるを導き能ふか。
 われ爾を取去るとも、われ必ず渠等に報復せん、
四一 さらずばわれ爾曹をしてわが渠等を威せる所(の責罰の實行さる)を見せしめん、われ必ず渠等に克つべし。
四二 されば爾に默示せる所へのヘ訓)を固持せよ、爾正しき道にあれば。
四三 そを爾と爾の民とによく記憶せしめよ、のち爾曹は(それに就きて)驗せられん。
四四 而してわが爾以前に派せるの使徒に問へ、われ渠等に慈悲~の外に~祇を禮拜すべしといひしや。
四五 われ嘗てモセにわが表徵を齎してファラオとその公とに派せり。渠いへり、洵にわれは萬有の主宰の使徒なりと。
四六 渠わが表徵を以て至りしに、見よ、渠等は之を嘲り笑へり。
四七 わが示せる表は一として他より大ならざるはなかりしに。われ渠等に責罰を加へしは渠等を歸依 せしめんとてなり。
四八 渠等(モセに)いへり、噫、魔術~が爾に結びし約に從ひて吾曹の爲に爾の上帝にれ、吾曹必ず導かれんにと。
四九 されどわれ渠等に疾疫を除きしに、見よ、渠等は約を破れり。
 ファラオはその民に宣命していへり、噫、わが民、埃及王國とわが下に流る江河はわが有にあらずや。爾曹見ずや。
五一 われは下賤にして殆んど
五二 明智の見るべきなきこの(モセ)に優らずや。
五三 されば金甲渠に在りや、天使列を爲して渠をるやと。
五四 ファラオはその民心を安んぜり、渠等は渠に從へり、惡しき民なればなり。
五五 渠等われを怒らせし時、われ渠等に報復せり、われ悉く渠等を溺らしたり、
五六 われ渠等を他のに對する先往例と爲せり。
五七 マリアの子例として出でし時、その民は背きていへり、
五八 吾曹の~祇や善き渠や善きと。是唯爭はんが爲に外ならず、さなり、渠等は下賤の民なり。
五九 耶蘇はわが(豫言の賚賜を以て)眷遇せる一奴僕に外ならず。われ之を以てイスラエルの子孫に例とせり。
--若しわれ欲せば地上に(爾曹に)代る可く洵に天使を生じ得ん、--
六一 渠は(最後の)時の(迫まれる)表徵、(たるべし)、故に勿疑ひそ。われに從へ、これ正道なり。
六二 惡魔をして爾を勿迷はしめそ、そは爾の公敵なり。
六三 耶蘇明證を以て至るやいへり、今われ知識を以て爾曹に來れり、爾曹の爭ふ所に就きて說明さんとす。されば~を畏れてわれに從へ、
六四 洵に~はわが上帝にして爾曹の主なり、故に~を禮拜せよ、これ正道なりと。
六五 連盟せる分派は相爭へり、されど不正を行ひしは不幸なり、悲しむべき日の責罰の爲に。
六六 渠(不信)はその(審判の)時の外何をか待つや、そは渠等豫想し得ざる間不意に渠等に來らん。
六七 その日親友は互に敵たるべし、敬虔なるの外。
六八 噫、わが奴僕、その日爾曹に畏怖なし憂愁なし、
六九 わが表を信じてムスリムたりしに。
 爾曹大歡喜を以て天堂に入れ、爾曹と爾曹の妻と。
七一 黃金の皿と無柄の盃とは渠等の周圍に運ばれん。其處に心の欲する目のスぶあらゆるものあらん。爾曹永久に其處に在らん。
七二 これ爾曹がその所業の爲に得し天堂なり。
七三 其處に爾曹は潤澤に果報を得て食はん。
七四 然れども惡人は永久に地獄の苦痛に留まるべし、
七五 そは渠等の爲に輕減されず、渠等は失望せん。
七六 われ不正を以て渠等を遇するに非ず、渠等自(その心を以て)致せるなり。
七七 渠等高く呼んでいはん、噫、マリク、上帝をして吾曹を全滅せしめよと。渠答へん、洵に爾曹(永久に)留まるべしと。
七八 われ從來爾曹に眞理を齎らしき、然るに爾曹多くは眞理を厭ひき。
七九 渠等(異端の徒はわが豫言を欺く)方法を定めしか。洵にわれ(渠等を欺く方法を)定むべし。
 われ渠等の密と私語とを聞かずと想ふか。さなり、我使は渠等に臨みてそを錄せり。
八一 いへ、若し慈悲~子を有たば洵にわれそを禮拜する第一人たらん。
八二 天地の主宰、寶座の上帝を頌めよ。
八三 されば渠等をして逍遙嬉せしめよ、その威されし所に逢着する日まで。
八四 天に在る~は亦地に在る~なり、~は賢明にして善知なり。
八五 天と地とその閧フ萬物の屬する~せよ、(最後の)時を知れる、爾曹のその前に徵さるゝ~を。
八六 渠等がその外に禮拜する~祇は(他の爲に)斡旋の力なし、眞理を證しそを知るを除きては。
八七 誰か渠等を創造りしと問は、渠等必ず~と答へん。さるを如何ぞ渠等は背きて他の~祇を禮拜するにや。
八八 渠(豫言)のいふ所(を~はまた聞けり)。噫、上帝、洵に此等は不信の民なりと。
八九 (~答へん)、されば渠等を避けよ、平和といへ、のち渠等は知らん(その愚妄を)。
金裝品【アル・ヅクーラフ】(1-89節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
三三、三四節に銀屋金裝の文字あるより名づく。經中基督ヘを說きて耶蘇の音を以てイスラムに同じと爲せり。
時代
宣傳の第四年、(ヘジラ前九年)或は其翌年と推定さる。
內容
亞剌比亞語可蘭は原、天上の經(一-四)。
古の民亦豫言を排す(五-七)。
~の創造を認めながら僞~を禮拜する偶像信(八-一四)。
女兒を惡みながら尙~に女ありと爲す亞剌比亞人(一五-一八)。
先傳襲に藉口する偶像信(一九-二四)。
先傳襲を排せしアブラハム (二五-二七)。
可蘭の賤人の手に下りしをいひて否認する孤列種と貴賤貧富の辨(二八-三四)。
不信の侶伴となりて之を破滅に導く惡魔(三五-三八)。
不信の國人中にて麻訶末へ信仰固持の勸(三九-四四)。
セとファラオ(四五-五六)。
不信は基督ヘ徒の耶蘇の禮拜を例として自辯するも、耶蘇は~にあらず(五七-六四)。
不信へ審判の警(六五-六七)。
ムスリムの受くる天堂の享樂(六八-七三)。
墮地獄の苦惱死滅を希ふて得ず(七四-七八)。
天使異端のを錄す(七九-八)。
~に子あらば麻訶末先之を禮拜せん(八一-八二)。
~偶像信の愚を知る(八三-八七)。
麻訶末に孤列種を避けよと命ず(八八-八九)。
金裝品【アル・ヅクーラフ】(1-89節)の註釋(文字の解釈)
 古來多くはイスラムヘの勢力を得しをヘの默伽に於ける門地勢力に歸するも、此を以て見れば然らざりしが如し。
五八 偶像信は基督ヘ徒の基督を禮拜するを例として~以外の禮拜を辯疏せるなり。
六一 最後の時の表徵といふは、イスラムヘ徒は、復活の前に耶蘇がダマスクス(或はアフィクAfikの靈地)に出現し非基督アンチクリストを殺すと信ぜるよりいふ。
六五 分派は耶蘇出時の猶太基督兩ヘ派とも見るべく、また後の耶蘇~格三位一體派の分裂相爭とも見るを得べし。
七七 マリクMalikは司地獄の天使。
八六 除外の例は耶蘇エヅラ天使。
八八 渠のいふ所云の文意稍通じく、學恐らく脫漏あらんと爲すあり。
Office Murakami