「コーラン經」 商量品 第四十二 【アル・ショリ】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
商量品【アル・ショリ】(1-53節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 ハ ミム。アイン シン カフ。斯く偉大賢明の~は爾に默示せり、爾以前の渠(豫言)にも。
二 天と地とにありとしあるものは~に屬す。~は高く大なり。
三 天は(天帝の威嚴にて)殆んど上より分崩せんとせり。天使は上帝を頌揚し、地上のの爲に赦を請ふ。~は仁慈なる赦罪に非ずや。
四 然れども~の外に恩主(として~祇)を立つる~は某所業を照覽す。爾は渠等の宰たらず。
五 斯くてわれ爾に剌此亞語の可蘭を默示せしは爾が大都(默伽)と其附近のとを警戒しめ、疑なき集會の日を以て(渠等を)威せしめんとてなり。(其日)一部は天堂に一部は地獄に入らん。
六 若し~欲せば渠等を(悉く)一ヘに歸せしめん。されど~はその欲する所を慈惠に導き、不正には一の恩主も援助もなし。
七 渠等~の外に(他の)恩主を立つるや、~は(唯一正眞の)恩主なり、~は死を起し~は全能なるに。
八 何事にまれ爾曹の爭ふ所、その裁決は~に在り。これわが主たる~なり、~にわれ信ョし~にわれ歸依す、
九 天地の創造、渠は爾曹に同種の妻を授け牝牡の家畜を授け、それによりて爾曹を滋殖す、渠に比類なし、渠は聞き且見る。
 天地の鍵渠に在り、渠その欲する所に食物を給する澤にまた(欲する所に)約なり、渠は萬事を知れり。
一一 渠はノアに命ぜしヘを爾に命ぜり、わが爾に默示せし所を、(噫、麻訶末)、われアブラハムに、モセに、耶蘇に命ぜし所を、--そのヘを固持して分つなきを。
一二 爾が渠等に說く所(の唯一眞~の崇拜)は不信には悲しむべし。~は其處にその?する所を立て懺するを之に導くべし。
一三 (過去前代の)渠等は(~の唯一の)知識を得るまでその執拗の爲に分裂せざりき。前の宣旨の定時まで爾曹の上帝より出でしとせられずば洵にそは(反抗の破壞によりて)分裂したりけん。渠等の後に聖典を承けしはそれに就きて疑惑を懷けり。
一四 されば渠等を招き渠等に猛進せよ、爾の命ぜられし如く。渠等の私欲に勿從ひそ。いへ、われは~の下せる(あらゆる典を信ず、われは爾曹の中に正義の確立を命ぜらる、~は吾曹の上帝にして爾曹の主なり、吾曹に吾曹の爾曹に爾曹の業は歸す、吾曹と爾曹との閧ノ紛爭なからしめよ、~は(最後の日に悉く)吾曹を會し渠に吾曹は復歸すべければと。
一五 (そのヘを受けて)服從せしのち~に就きて爭ふよ、その爭は上帝の見る所にては空し、~譴渠等に在り渠等は峻罰を蒙るべし。
一六 眞理を以て聖典を下し(眞裁の)秤衡を授けしは~なり。爾をして時の迫まれるを知らしむるは何ぞや。
一七 そを信ぜざるは(嘲りて)その急ならんを願ふ、されど信ずるはそを畏れてその眞なるを知る。(最後の)時に就きて爭ふは太く誤らずや。
一八 ~はその奴僕に大なり、渠はその欲する所を給し、渠は强くして力あり。
一九 來世の稼穡を擇ぶにはわれその稼穡を加ふべし。現世の稼穡を擇ぶにはわれその收果を與ふべし。ただ後は來世に得る所なし。
 偶像信~の許さるヘを宣ぶる~祇ありや。(異端と眞の信と)分離の(日までその責罰を猶豫する)宣旨なかりせば、に早く渠等の裁斷ありしならむ。不正は必ず痛苦を蒙るべければ。
二一 (その日)爾曹はその過罪の爲に不正の太く畏怖するを見ん、そは渠等に下らざるべからず。然れども信じて善を行ひしは天堂の樂園に在り、その上帝と與にその欲する所の何ものをも得べし。これ大利なり。
二二 これ信じて善行を修せる~の約せる所なり。いへ、われ此(わが說ヘの)ために爾曹に何等の價報をも求めず、わが親緣の愛の外はと。何人にても善行を修せしにはわれそれと與に善を加ふべし、~は赦を好み報を好めば。
二三 渠等は渠(麻訶末)は~に就きて虛妄を構へしといふか。若し~欲せば渠は爾の心を封ずべし。~は絶對に虛榮を排しその語に眞理を立つべし、渠は人心の奧を知れば。
二四 その奴僕の懺を受け罪障を赦し爾曹の所業を知るは~なり。
二五 ~は信じて正を爲すに耳を傾け、渠等に(その請ひ若しくば價する以上に)恩賜を加ふべし、されど不信は峻罰を蒙るべし。
二六 若し~多くをその奴僕に與へなば渠等は必ず地上に怠慢ならん、されど渠はその欲する所を量りて(各人に)下す、渠は能くその奴僕(の情勢)を知り且見れば。
二七 渠等の失望せる後に雨を降しその慈惠を廣く布くものは~なり。~は正しく頌揚さるべき恩主なり。
二八 その表徵の中に天と地と其處に充滿せる生物との創造あり。渠は欲する時(その判廷に)悉く渠等を會するを得。
二九 爾曹に下る如何なる不幸も(~の致すところ)爾曹の所業に因る、されど渠は多くの事を赦す。
 爾曹地上に(~罰を)蔑如すべからず、爾曹~に對して何等の保護も援助も有せざらん。
三一 その表徵の中に高山の如くる(船舶)あり。若し渠欲せば風を止めてそを靜に水中に留むべし、--洵に此處に堅忍謝恩の人に表徵あり--、
三二 さらずばその(水手の)所業によりてそを破せしむ、假令渠は多くを赦すとも。
三三 されどわが表徵に對して爭ふものは(わが報復を)遁るに道なきを知らざるべからず。
三四 爾曹に與へしものは何にても此現世の物資なり。されど~と與にあるは信じて~にョるには更に善く更に久し、
三五 極惡汚染の罪業を避け怒れる時に能く赦すには、
三六 その上帝に聽き禱を怠らず相商量して事を行ひわが授けし物の中より施與を爲すには、
三七 迫害を受けて報復するには、
三八--惡の報償はその惡に相應すべし、--されど(その敵を)赦して和解する~より報償を受く、~は不正を好まざれば。
三九 さばれ迫害を受けて後報復するを(それが爲に)罰するは適法ならず、
 た人を害ひ暴威を地上に振ひ公正を蔑にするを罰するは正當なり、斯る輩は悲しき責罰を蒙るべし。
四一 能く(迫害を)忍びて赦すは洵に有要の行爲とす。
四二 ~が迷謬に委せるには後に一人の保護なし。爾曹、不信
四三 (その爲に設けられし)責罰を見て、(現世に)歸るに道なきかといふを見ん。
四四 爾曹その(地獄の火に)曝らさるを見ん、自爲せる)凌辱の爲に排せられて、渠等は斜に其火を偸み見ん。其の信はいはん洵に亡失なり復活の日に己の心と其一族とをせ失へる渠等はと。不敬は永久の苦惱を受けざらんや。
四五 渠等には~に對して己を保護する一人もなし。~の迷謬に委せるは(眞理に至る)道を得ず。
四六 爾曹の~に聽け、~の赦さる日の至る前に。その日に爾曹遁るに地なからん、また(爾曹の罪を)否むによしなからん。
四七 然れども(爾のヘを說く)渠等(爾のヘ戒に)背くとも、洵にわれ爾を渠等の守護として派せず。爾の義務は唯ヘを說くに在り。われ人をしてわが慈惠を味はしむるや渠そを樂しむ。されどその前業の報として害至れば則恩を忘る。
四八 ~に天地の王國は屬す。~はその欲する所を創造る。
四九 ~はその欲するに女兒を與へ、その欲するに男子を與へ、また男子と女兒とを合せて與へ、その欲するに子なからしむ。~は賢明にして有力なり。
 何人も直に~と語るべからず、默示によるか帳後よりせざれば、
五一 その許可によりて其欲する 所を默示の使として派せざれば。~は高くして賢なり。
五二 斯くしてわれわが命によりて爾に默示せり。爾(前には)聖典の何たるか信仰の何たるかを理解せざりき。然るにわれそれに光明を與へき。われそれによりてわが奴僕の中わが欲するを導くべし。爾は必ずそを正道に導かざるべからず、
五三 天と地とにありとあるもの屬せる~の道に。萬有は~に歸せずや。
商量品【アル・ショリ】(1-53節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
三六に相商量して事を行ふといふ句あれば名づく。麻訶末がク人の反抗、殊に猶太基督ヘ徒の反抗を受け、自アダム以降耶蘇に至る豫言と同信仰なりといひても、尙その攻擊を免れざりしこと此一卷に見らる。
時代
上述によりて默伽示ヘたるとは自明なり。ネルデケは時代を前品より稍後れたりと爲すも年時は推定しし。
內容
全能の~の麻訶末への啓示(一-二)。
天使の勸解(三)。
麻訶末は偶像信の宰たらず(四)。
亞剌比亞語の可蘭は默伽警告のため(五)。
~は唯一の授助、創造、擁護、全智(六-一)。
イスラムはあらゆる古來豫言のヘ麻訶末は基督ヘ聖書の信仰を說く(一一-一四)。
~と爭ふの峻罰(一五)。
~獨審判の時を知る(一六-一七)。
正者と惡人との應報(一八-一九)。
罪障は唯~に赦さる、不信不正の報償(二-二二)。
麻訶末虛妄を以て謗らる(二三)。
~は思ふまに赦し祝す(二四-二七)、
~力の表現(二八-三三)。
眞の信の性行(三四-四一)。
迷謬の不運(四二-四五)。
罪障の遲き恨(四六)。
麻訶末はた說ヘ(四七)。
~は自由に男女を創造る(四八-四九)。
~人は天啓默示にて相語り、麻訶末は可蘭より始めて信仰を知る(五-五三)。
商量品【アル・ショリ】(1-53節)の註釋(文字の解釈)
一三 聖典を承けしものは猶太基督ヘ徒。
一九 稼穡の語は現世に下種し來世に收穫するの意。
 五、五一兩は、何人も麻訶末の~意を承けしを見ずと駁せるへの辯解。
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