「コーラン經」 眞信者品 第四十 【アル・ムミン】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
眞信者品【アル・ムミン】(1-85節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 ハ ミム。聖典の默示は偉大の賢明の~よりす、
二 罪惡の赦免、懺の受納よりす、責罰に峻しく
三 苦惱に久しき。渠の外に一の~なし、渠の前に(最後の日の)集會あり。
四 不信の外は何人も~の表徵に對して爭はず。渠等の地上に於ける昌榮の爲に勿欺かれそ。
五 ノアの民と渠等以來(不信)の連盟は之より先に欺瞞を以て(その各自の豫言を)責めその使徒を謀りて之を屈せんとしたり、虛妄(の理論)を以て眞理を排滅せんとせり。故にわれ渠等を責めぬ、わが責罰の如何に峻烈なりしよ。
六 斯くて爾曹の上帝の宣告は正しく不信に下れり、渠等は(地獄の)火の民たり。
七 (~の)寶座を維持しそれに侍侯する天使はその上帝を頌めそを信じ、其の信の爲に赦を請ひていふ、噫、上帝、爾は慈惠と知識とを以て萬物を圍繞す、さればひて爾の道に從ふを赦しそを地嶽の苦痛より救へ。
八 噫、上帝、渠等をまた渠等とその父妻子の正しきを爲せるとに爾の約せる永久の居處たる樂園に導け、爾は偉大にして賢明なれば。
九 渠等を惡より守れ、爾が惡より守りしに此日爾は慈惠を示すべし、これ大なる濟度なり。
 然れども不信は(復活の日)斯くいふ聲を聞かん、洵に~憎惡は爾曹の自己に對する憎惡よりも甚し、爾曹信仰を願ひて信ぜざればと。
一一 渠等いふべし、噫、上帝、爾は吾曹に二び死を與へ二び生を與へ、吾曹は吾曹の罪を懺す、さるに(この火を)遁る路なきかと。
一二 (渠等に答へられん)、これ、唯一~のヘを說けるに爾曹信ぜずして~と與に他の~祇を配せる時に爾曹信ぜしが故なり。審判は高き大~に屬す。
一三 爾曹に表徵を示し爾曹に天より食物を授けしは渠なり、されど~に歸依するの外は何もヘ戒されざるべし。
一四 故に爾のヘの至純なるを示して~れ、假令異端はそを厭ふとも。
一五 尊位なり、寶座の主なり、その欲する奴僕にその命によりて聖靈を下し會日を警告するなり、
一六 渠等が(その墓穴より)出で渠等の何事も~に隱されざる日を。誰にかその日王國は屬すべき。唯一の全能の~に。
一七 その日各の心はその業に應じて酬はるべし、その日毫も不公なし。洵に~はC算に速なり。
一八 されば(噫、豫言)不意に至るべきその日を渠等に警戒めよ、その心は咽頭に塞りて渠等を苦しめんに。
一九 不敬は聽かるべき一人の友侶も勸解もなし。
 ~は詐れる眼とそのする所を知るべく、
二一 眞理を以て裁斷すべし。されど~の外に渠等の禮拜する所(の僞~)は終に判する能はず。~は聞き且見ればなり。
二二 渠等は世界を行きて前人の末路如何を見ざりしか。渠等は力に於て此等よりも優り地上にその迹を遺せり、而も~はその罪を以て之を責め、~より渠等を保護する者莫かりき。
二三 そは渠等の使徒明白なる表徵を以て至れるに渠等信ぜざりしが爲なり、それ故に~は渠等を責めたり、その責罰峻なりき。
二四 われ昔モセにわが表徵と明白なる力とを授けて
二五 ファラオ、ハマン、カルンに派したり。渠等いへり、渠は魔術なり虛言なりと。
二六 渠わが眞理を以て渠等に至りし時渠等は、渠と與に信ずるの子孫を殺せその婦女を助けよといへり。されど不信の企は空しからざるなし。
二七 ファラオいへり、われをして獨在らしめよモセを殺し得ん爲に。渠をして其上帝にらしめよ、洵にわれは渠が爾曹のヘを變ぜんを畏る、さては地上に暴擧せんを恐ると。
二八 モセ(その民に)いへり、洵にわれわが上帝爾曹の上帝にC算の日を信ぜざる暴戾の人より保護せんことを求むと。
二九 ファラオの族にてその信仰を隱せる眞の信いへり、爾は人が~はわが上帝なりといひし故にそを誅せんとや、渠上帝より明白なる表徵を齎して至れるに。渠若し虛妄ならば虛妄の罪は渠に在り、渠若し眞を語らばその爾をせる所(の裁判)は爾の上に來らん。洵に~は侵犯、虛妄を導かざれば。
 噫、わが民、今日王國は爾曹に在り、爾曹は此地に有力なり、されど~譴吾曹に下らば誰か能く之を防ぐぞと。ファラオいへり、われ唯わが見る所を爾に示し唯正しき道に爾を導くべしと。
三一 信ぜるいへり、噫、わが民、洵にわれは爾曹の爲に(往昔豫言に對抗かし)連盟のそれの如き日を畏る、
三二 ノアの民、アドとタムド(族)、
三三 渠等以降の民の如き。~は不正のその奴僕に爲さるを欲せざれば。
三四 噫、わが民、洵にわれは爾曹の爲に人の互に相喚ぶ日、
三五 爾曹の背を向けて遁れ~に對して爾曹を庇護するものなき日を畏る。~が迷妄に委せるには示導なければ。
三六 ヨセフ、モセの前に、明白なる表徵を以て爾曹に至れり、さるに爾曹その說くヘを疑ふて已まず、渠死して爾曹、~は決して渠の後に(他の)豫言を送らじといひしまで。斯くして~は侵犯懷疑を迷妄に陷れき。
三七 何等の權威なくして~の表徵に對して爭ふ~と信とは大に憎む。斯くして~は傲慢頑牢の心を閉ざすと。
三八 ファラオいへり、噫、ハマン、わが爲にその地方に達すべき高塔を築け
三九 天の地方に。われモセの~を見得ん。洵にわれ渠を虛言と思へばと。
 斯くしてその惡行はファラオの爲に構へられき。渠は正路より迷へり。ファラオの計は唯空し。
四一 信ぜるはいへり、噫、わが民、われに從へ、われ爾曹を正道に導かん。
四二 噫、わが民、洵にこの現世は唯一時の享樂のみ、されど來世は永劫なり。
四三 惡を行ふは唯それに應じて酬はるべし、されど善行は男女を論ぜず眞の信なれば天堂に入る可し、其處に潤澤の給供を受けん。
四四 噫、わが民、われ爾曹を濟度に招く、然るに爾曹われを(地獄の)火に招く、
四五 爾曹われをして~を拒ましめ、わが毫も知らざるものを~に配せしむ、然るにわれ爾曹を最大の~(罪の)赦免に招く。
四六 爾曹のわれを招く所(の僞~)は現世にてもはた來世にても禮拜の價値なきこと、吾曹は~に復歸せざる可からざること、侵犯は(地獄の)火の民たるべきこと、皆疑を容れず。
四七 (その時)爾曹わが(今)いふ所を記憶すべし。われわが事を~に委す、~はその奴僕を重んずればと。
四八 斯くて~は渠等のれる惡謀より渠を救ひ、悲しむべき責罰はファラオの民を圍繞せり。
四九 渠等は朝に夕に(地獄の)火に暴さるべし。その(審判の)時至らん日、(渠等にいはるべし)、入れ、爾曹、ファラオの民、最峻烈なる苦痛にと。
 その時渠等(不信)は(地獄の)火中に相爭ひ、弱きは傲慢なるにいふべし、洵に吾曹は爾曹に從へり、故に爾曹この火中より吾曹を救ふべきやと。
五一 傲に答ふべし、洵に吾曹は皆其處に在り、~は今奴僕を裁きたればと。
五二 火中の者は地獄の關尹にいはん、吾曹を一日この責罰より恕めんことを爾曹上帝にれと。
五三 渠等答へん、爾曹の使徒は明白なる表徵を以て至らざりしかと。渠等、然りといはん。渠等(關尹)答へん、さらば爾曹(~に)れと。而も不信禱は唯空しからん。
五四 われ必ずわが使徒と信ずるとを救ふ可し、現世に於て、また證の立つ日に、
五五 不信の辯解效なかるべく呪咀と惡しき居處の渠等に下るべき日に於て。
五六 われ嘗てモセに示ヘを垂れ、イスラエルの子孫に法典を繼承せしめき、理解ある人への示ヘとしてヘ戒として。
五七 されば爾は(噫、麻訶末)堅忍なれ、~の約は眞なれば。爾の過失を謝し、夕に朝に爾の上帝を頌めよ。
五八 渠等に默示されし何等の證迹なくして~の表徵を爭ふ裡には唯驕慢あるのみ。されど渠等はその欲する所を得ざるべし。故に~に遁れよ、~は聞き且見れば。
五九 洵に天地の創造は人閧フ創造よりもし。されど人多くは悟らざるなり。
 盲と視とは等しからす、信じて正を行ふと惡を爲すとも亦、さるにそを心に思ふの如何にきよ。
六一 (最後の)時は必ず來るべし、そは毫も疑なし、然るに人多くは信ぜず。
六二 爾曹の上帝はいへり、われに祈れわれ爾曹に聽くべし、されど傲慢にしてわれを蔑するものは辱を以て地獄に入るべしと。
六三 ~は爾曹に休息の爲に夜を光明の爲に晝を與ふ、洵に~は人閧ノ慈恩を授く、さるに人槪ね謝せず。
六四 これ爾曹の主、~なり、萬物の創造者なり、この外に~なし、然るに如何ぞ爾曹背くや。
六五 ~の表徵に反抗するは斯く背けり。
六六 爾曹に堅き床として大地を屋として昊天を授け、爾曹を創り爾曹の形を美くし爾曹に美食を與へしは~なり。これ爾曹の主、~なり。故に~を頌めよ、萬物の主宰を、
六七 渠は現~なり、この外に一の~なし。よりてそれにれ、C眞のヘを示してて。~を頌めよ、萬物の主宰を。
六八 いへ、洵にわれは爾曹が~の外に禮拜するを禮拜するを禁ぜらる、わが上帝より明證のわれに下りしのち。われ萬物の上帝に敬聽するを命ぜらる。
六九 始て塵土より、次に種より、後に凝血より爾曹を創造り、母の胎中より)兒として生れしめ、充分に生長せしめ、後老齡に至らせ、--唯あるはその前に死す--定壽に達せしむるは渠なり、そは恐らく爾曹知らん。
 生を與へ死を與ふるは渠なり、渠唯それに在れといへば則在り。
七一 爾曹見ずや、~の表徵を爭ふの如何に(眞の信仰より)背けるかを。
七二 虛妄を以て(可蘭の聖典とわが古の使徒に下せる所(の典默示のヘ)とを謗るは後必ず(その妄を)知らん、
七三 頸頸にあり縛にて地獄に引かる時、其處に渠等は火に燒かるべし。
七四 渠等にいはるべし、何處に爾曹の~の外の~祇ありやと。渠等答へん、渠等は吾曹より去れり、さなり曹は從來何ものをもらざりきと。斯くして~は不信を迷妄に委せり。
七五 これ爾曹が假幻の地上に享樂に耽りし故なり。
七六 地獄の門に入れ、(永久に)其處に留まるべし、傲慢なるの居處は不幸なり。
七七 故に堅忍なれ、(噫、麻訶末)、~の約は眞なれば。われ爾をしてわが渠等を威せる所(の責罰)の幾部を見せしむるも、また(そを見る前に)爾を死せしむるも、わが前に(最後の日に)渠等は集まるべし。
七八 われ爾の前に(多數の)使徒を派せり。それに就きて(或ものは)に爾に語り、それに就きて(或ものは)未だ爾に語らず。されどその一人も~の裁可なくして表徵を現ずる力なし。~の命下れば審判は眞理を以て行はるべく、その時~(の表徵)を蔑如せしは滅亡せん。
七九 爾曹の或は騎り或は食ふために家畜を爾曹に與へしは~なり。
 --爾曹はまた他の利uをそれより受く--、それによりて爾曹は心に懷ける用を便ず、(陸には)それにて、また(には)船にて。
八一 ~はその表徵を爾曹に示せり、さるに爾曹その孰をか拒まんとはする。
八二 渠等世界をゆきて前人の未路如何を見ざりしや。渠等は此等よりも多くして强く地上に(その權力の幾多の)遺蹟を殘せり、されど其得し所は毫も渠等を利せざりき。
八三 その使徒明證を以て至るやその有せる知識をスべり、されどその嘲りし所は渠等を圍繞せり。
八四 渠等わが報復を見し時いへり、吾曹は唯~を信ず、吾曹はそれに配せし~祇を棄つと。
八五 然れどもわが報復を見たる後その信仰は渠等をuせず。これ嘗て其奴僕に對して下れる~命なり、不信は滅亡したり。
眞信者品【アル・ムミン】(1-85節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
二九節にファラオの親族に一眞信ありといへるより名づく。此一卷にはしく麻訶末新ヘ派の熱烈の弛緩を見る評は之を以て孤列種派の連盟の强盛に歸せり。麻訶末が民的偶像に傾かんとせしは五七のその請赦にて、亦氣の揚らざる一因とせらる。
時代
宣傳の第五年、則、ヘジラ前七年の後半ならんと推定せらる。五八を默コ那默示と爲す說あれども、こは事實推定の誤信に出づ。
內容
可蘭は唯一眞~に出づ(一-四)。
不信連盟の昌榮恃むに足らず(五-六)。
天使は眞の信の爲に勸解す(七-九)。
地獄に於ける不信恨の無(一-一八)。
不敬の民に勸解なし(一九-二一)。
前代異端の破滅は後世への殷鑑(二二-二三)。
埃及に於けるモセとその爲に辯ぜる眞の信(二四-五三)。
~は現當兩世に使徒を助く(五四-五五)。
セ法典を受く(五六)。
麻訶末の堅忍と請赦その~への信ョ(五七-五八)。
~の創造、正と不正、審判の必至(五九-六二)。
不敬の眞~排斥(六三-六六)。
唯眞~を拜すべし(六七-六八)。
萬物の創造(六九-七)。
聖典否認の悲運(七一-七六)。
麻訶末へ堅忍の勸(七七)。
使徒は~許なくして奇蹟を行はず(七八)。
~業の默示(七九-八一)。
不信の爲に破滅せる古人、その恨の遲延(八二-八五)。
眞信者品【アル・ムミン】(1-85節)の註釋(文字の解釈)
四 地上の昌榮は特に商利を指す。ヘ徒の中に不信の商業の振ふを羨望せるあれば此句出づ。
七 寶座を維持するは天使の最高級。
一一 二死二生は、甲は最初生なく、のち生きて死し、また復活するをいひ、乙は初死し次に墓穴中に死し始墓中に生きのち復活すと爲せども、丙は二死を肉體の死と地獄に於ける心靈の死とし二生を現生と復活と見る。丙說最可し。
一五 聖靈は天使ガブリエル。
三一 三一以下の眞信の言は豫言の口吻にて埃及人に對して噫わが民といふ、蓋、麻訶末の孤列種に對するなり。
八五 不信は滅亡したりの一句はまた孤列種に當つるなり。
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