「コーラン經」 軍衆品 第三十九 【アル・ザムル】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
軍衆品【アル・ザムル】(1-75節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 この聖典の默示は偉大賢明の~より出づ。
二 洵にわれ此聖典を眞理を以て爾に默示せり。よりて~に仕へてCヘを示せ。
三 ~のヘはCからずや。
四 されど~の外に他の恩主を戴き、吾曹は~に近づき得るためにのみ渠等を信ずといふには、~は渠等の相爭ふ所を裁くべし。
五 ~は必ず虛言若しくは忘恩を導かざるべし。
六 ~にして子を有たんと欲せば、必ずやその創造れるもの中より欲する所を擇びけむ。されど斯ることなし。渠は單一全能の~なり。
七 ~は天地を眞理を以て創造り、夜を以て晝に踵がせ、晝を以て夜に踵がせ、太陽と太陰とをしてその任務を行はせて各時を違へしめず。渠偉大にして赦罪にあらずや。
八 渠は爾曹を一人より創造り、のちその人よりその妻を創造り、家畜の四對を爾曹に授けたり。渠は爾曹を暗Kの三膜の裡に幾次の形成を經て母の胎內に創造れり。これ爾曹の上帝たる~なり、~は王國なり、その外に一の~なし。然るに爾曹背くは何ぞ。
九 爾曹若し恩を知らずば~は毫も爾曹を要せず、~は其奴僕の忘恩を好まず、されど爾曹恩を知らば~は爾曹をスぶべし。負擔あるは他の負擔を分たざるべし。今後爾曹は其主に歸復すべく、渠は爾曹に其所業を宣明(して應報を下)すべし。
 渠は(爾曹の)胸裡の奧を知ればなり。
一一 人困厄に際會すればその上帝にりて之に歸依す。されどのち~眷を得るに及ぴては前に禮拜せしものを忘れて~の外に人を惑はすものをその列に配す。いへ(斯る輩に)、暫く爾曹の不信のまに(此等を)享樂せよ、(されど後)必ず爾曹は地獄の火の住民ならんと。
一二 伏して立ちて夜の時を禱に捧ぐる、來世に意を致しその上帝の慈惠を希ふは、(不信と一列に論ずべきか)。いへ、(その義務を)知ると知らざるとを等しく待つべきか。洵に理 解あるのみ警戒さるべし。
一三 いへ、噫、わが信ずる奴僕、爾曹の上帝を畏れよ。現世に善行を修するは(來世に)善果を得べし。~の世界は博し。洵に堅忍のは無限の報償を得べしと。
一四 いへ、われは~を禮拜し至Cの宗ヘを宣傳するの命を受く、われは最初のムスリムたるべき命を受くと。
一五 いへ、若しわれわが上帝に服從せずば大なる日の責罰を畏ると。
一六 いへ、われ~を禮拜しわがヘの至純なるを~に示す、
一七 假令爾曹~の外にその欲する所を禮拜すとも。いへ、復活の日に自失ふのみならずその家族をも失ふは洵に亡失なり、こは明白なる亡失ならずや。
一八 渠等の上には火の屋あり、渠等の下には火の床あり。~そを以てその奴僕を畏れしむ、されば噫わが奴僕~を畏れよ。
一九 されど偶像の信仰を抛ちて、~に歸依せしは吉報を得べし。故にわが言を聽きその最優れたる所に從ふわが奴僕には吉報を齎せ。此等は~の導くものにて理解の人なり。
 されば(永久の)責罰の宣告の正しく宣せらるべきを(噫、麻訶末)爾は救ひ能ふや、(地獄の)火の人を。
二一 されど上帝を畏るゝ者には(天堂に)高き室あり、その上に更に高室を築く、その下に河流あり。これ~約なり。~は約を違へず。
二二 爾曹見ずや、~は天より雨水を降し地に入りてその利源となし以て各種の物を生ずるを。のち~はそを凋ましむ、爾曹その黃なるを見ん、のち~はそを塵芥と散ず。洵に此處に理解の人へのヘ訓あり。
二三 されば~がそのをイスラムに啓ける者、その上帝よりの光明に從へるは、(その心の閉されしの如くならんや)。されど心頑に~を思はざるは不幸なり、そは明白なる迷謬なり。
二四 ~は最優れたる~話を默示せり、愉き反復せる(ヘ戒の)聖典は。その上帝を畏るゝ者の肌膚は毛立つ、その上帝を思へばその肌膚柔らぎその心和らぐ。これ~の示導なり。之を以て~はその欲する所を導くべし、~の迷誤に委するには示導なし。
二五 故に復活の日に責罰の峻苛よりその面を掩ひ得ざるは、(それに安きと同じからんや)。不信にはいはるべし、爾曹の應報を味へと。
二六 渠等より前に僞瞞を以て(その使徒を)誹りしにはその豫期せざる所より責罰至れり。
二七 ~は渠等をしてこの現世に辱を受けしめき。されど來世の責罰は確により大なり。渠等理解の人ならんには(そを知るべかりき)。
二八 今われこの可蘭に於て人閧戒しめ得べきあらゆる譬諭を渠等に下せり、
二九 毫も晦澁なき亞利此亞語の可蘭は渠等をして(~を)畏れしめんためなり。
 ~は譬諭として、幾多の伴ありて互に相爭ふと全く一人に歸向するとを說けり。この兩は等しく較べ得るや。決して然らず。さるに渠等多くは悟らざるなり。
三一 洵に爾は(噫、麻訶末)死すべく、渠等も亦死せざるべからず。
三二 爾曹は復活の日爾曹の上帝の前に互に(この事を)論辯せざる可からず。
三三 誰か~に關きて虛妄を語り眞理を拒むより惡しきあらんや。不信の爲に地獄にその居なからんや。
三四 されど眞理を齎らしそを信ずるは(~を)畏るゝ者なり。
三五 そはその上帝の眼中にて何物にても欲する所を得べし、こは正しきの果報なり。
三六 ~は渠等よりその爲せる最惡を除きその爲せる至善の果報を授く。
三七 ~はその奴僕の爲に充分(の保護)ならずや。さるに渠等は爾をして~の外に(その禮拜する)僞~を畏れしめんとす。唯~の迷謬に委せるには示導なし、
三八 ~の示導するには誘惑なし。~は報復を能くする最偉大に非ずや。
三九 爾若し誰か天地を創造りしと渠等に問は渠等必ず~と答へん。いへ、さらば~われを苦しめんとする時爾曹の~の外に禮拜する能くわれを其苦より救ひ得可きか、また~われを惠まんとする時その惠を撤し得可しと爾曹は思ふや。いへ、~はわが充分なる支持なり、信ずるをして渠に信ョせしめよと。
 いへ、噫、わが民、爾曹は爾曹の力に應じて爲せ、われ亦わが力に應じて行はん。
四一 後、吾曹の孰か恥辱を以て掩はる可き責罰を蒙り、孰に永久の責罰の下るかを爾曹知るべし。
四二 洵にわれ爾に(可蘭の)聖典を默示せしは眞理を以て人類にヘへんためなり。何人にもあれ導かるゝ者は其心(の利u)に、迷ふは唯其心に逆ひて。爾は渠等の爲の保護ならず。
四三 ~は人の死に臨みてその心を己に收む、死せざるもその睡るや亦之を收む。死の宣告の下りしにはそを保持し、然らざるには定命至るまで之をへす。洵に此處に考慮ある民への表徵あり。
四四 渠等(孤列種)は~の外にその勸解として~祇をとるか。いへ、何ぞや、渠等は何事に對しても權力なく何事をも理解せざるにと。
四五 いへ、勸解は總べて~の所轄に在り、~は天地の王國なり、後に爾曹は~に復歸すべしと。
四六 唯一~を說くや來世を信ぜざるの心は畏れ怖く。されど~の外なる(僞の)~祇を說くや、渠等の心に喜スの滿つるを見る。
四七 いへ、噫、~よ、隱れたるをも顯はれしをも知る天地の創造よ、爾はその奴僕の爲に相爭ふ所を裁くべしと。
四八 若し不正を行ふ地上のあらゆると更に其他のもの主たらば、洵に渠等は復活の日それを以て責罰を購ひたりけむ。而も其處にはその決して想ひ得ざる畏怖~より顯はれん、
四九 その未得ざりし凶惡渠等に見はれん、渠等の嘲笑せしもの渠等を圍繞せん。
 人困厄に會へばわれを禱る、されどわれ之に眷遇を授くればいへり、われ唯~の知識によりて之を得たりと。否とよ、そは試なり、されど渠等多くは知らず。
五一 渠等以前のも亦之をいへり、されど渠等の得し所は渠等を利せずして、
五二 その招けるは渠等に下れり。不正を行はん此等(默伽の衆)の何人にも亦その招ける禍は下らん。渠等は(~の報復を)免る能はず。
五三 渠等知らずや、~はその欲する所に從ひて潤澤に與へまた約するを。洵に此處に信ずるへの表徵あり。
五四 いへ、自己の心に逆ひて侵せるわが奴僕、~があらゆる罪惡を赦すを見て~の慈惠に望を勿失ひそ、~は大度にして仁慈なれば。
五五 爾曹の上帝に歸依し之に敬聽せよ、責罰爾曹に下る前に、その時に及びては救はれざれば。
五六 爾曹の上帝より下されし最優れたる訓戒に從へ、責罰急に爾曹に下る前、爾曹未だ(その近づくを)見ざる前に。
五七 一心をしていはしめよ、鳴呼、われ~への義務を等閑にせしため洵にわれは嘲笑(の一人)たりきと、
五八 さてはいへ、若し~われを導かば洵にわれ敬虔の一たりけむと。
五九 さらずば責罰(の設)を見し時にいへ、われ再(世に)復るを得ばわれは正しき(の一人)たるべしと。
 (然れども~は答ふべし)、わが表徵は從來爾曹に至れり、爾曹虛妄を以てそれを謗り傲負を以てそれを排し不信(の一人)となれりと。
六一 復活の日に爾曹は~に就きて虛妄を語りしの面Kきを見ん、誇負に對して地獄に居處(の設)なからんや。
六二 されど~は畏るゝ者を救ひて安全の境に置くべし、惡は渠等に觸れず、渠等は憂ひざらん。
六三 ~は萬物の創造主にして萬物の支配たり。~に天地の鍵あり。~の表徵を信ぜざるは滅ぶべし。
六四 いへ、さるに爾曹われをして~の外を禮拜せしめんとや、噫、爾曹愚なり。
六五 默示によりて爾に、また從前の豫言に語られき、若し爾(~に)何等かの共治を配しなば、爾の業はともに利なからん爾は滅亡(の一人)たらん、
六六 故に~を畏れよ、謝恩(の一人)
六七 然るに渠等は~に正當の尊敬を爲さず、復活の日に大地は~の一握たり昊天は~の掌裡に轉ぶべきに。~を頌めよ、渠等が(それに)配せるよりも遙に高く。
六八 角はかん、天に在るものも地にあるも絶滅すべし、~の赦さんと欲するの外は、後角再鳴らん、見よ、渠等は起ちて仰がん。
六九 大地はその上帝の光明に照らさるべし、聖典は開かるべし、豫言と殉道とは(證として)徵さるべし、審判は眞理によりて行はるべく渠等は不正を以て待たれざらん。
 各の心はその所業に應じて充分に報償されん、~は渠等の所業を熟知すれば。
七一 不信は軍衆の爲に地獄に驅逐さるべし、其處に達すれば門開け門尹はいふべし、爾曹に爾曹の上帝の表徵を說きて此日の會を爾曹に戒しめし使徒は爾曹の閧謔闖oでざりしかと。渠等答ふべし、然り、されど(永久の)責罰の宣告は正しく不信に下れり。
七二 (渠等に)いはるべし、爾曹地獄の門を入れ、永久に其處に在るべく。地獄は傲慢の居處たるべしと。
七三 されど上帝を畏れしは軍衆によりて天堂に導かるべし、其處に達すれば門はに開け門尹はいふべし、爾曹平和にあれ、爾曹は善人なりき、故に(天堂に)入れ、永久に其處に在るべしと。
七四 渠等答ふべし、吾曹にその約を果たし吾曹に地上に繼承せしめ吾曹の希へる天堂に住ましむる~を頌めよ。如何に優れし果報よ正しかりし者にと。
七五 斯くて爾曹は天使列を爲してその上帝のコを頌めながら寶座を繞り行くを見ん、審判は眞理によりて行はるべし、渠等いふべし、~を頌めよ、萬物の主宰をと。
軍衆品【アル・ザムル】(1-75節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
七一-七三にヘ徒と異端とが軍衆によりて天堂に導かれ地獄に逐はること見ゆるより品に名づく。品中の特點は可蘭の默示を以て至純~ヘの宣傳の爲となすに在り。
時代
五四若しくばそれ以下の數を默コ那默示と爲す說あれども必ずしも然らざるに似たり。一三によりてヘジラの直前と時代を推定するあるも、此も亦必ず遁走を指せしとは斷言しく、寧平穩の語調全卷を通ずれば宣傳第四年(ヘジラ前九年)頃のものと推定せらる。
內容
C眞ヘの默示(一-五)。
~は子なき造物主(六-八)。
忘恩と負擔(九-一○)。
偶像信の忘恩(一一)。
正と不正の差別(一二)。
C眞ヘの宣傳(一三-二二)。
不信の差別(二三)。
先異怖せしめ次に慰撫する可蘭(二四)。
地獄に於ける惡人の重罰(二五)。
古の豫言を讒謗せしもの(二六-二七)。
可蘭に各種の譬諭あり(二八-三)。
不信の論辯と賞罰(三一-三六)。
麻訶末を威する默伽の異端(三七-三八)。
~の造物主たるを認めて尙麻訶末を信ぜず(三九-四二)。
睡より覺るが如き復活(四三)。
~の外に勵解なきに僞~をスぷ偶像信とその免れざる應報(四四-五三)。
改悛の勸(五四-五六)。
不信の辯解とその排斥(五七-六二)。
天地の主宰を信すべき麻訶末への勸(六三-六六)。
復活審判の光景(六七-七)。
不信を天堂地獄に導く軍衆(七一-七五)。
軍衆品【アル・ザムル】(1-75節)の註釋(文字の解釈)
四 他の恩主とは天使なり。
八 四對の畜は駱駝牛羊山羊の各雌雄なり。第六品の一四三參照。三膜は皮胎宮兒膀の三重、幾次の形成は第二十二品の四−七を見よ。
二五 を掩はずとは手は縛せられたればなり。
五一 また之をいへりの之は可蘭のいふ所と解すべし。
Office Murakami