「コーラン經」 造化品 第三十五 [ウル・ファチル] 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
造化品[ウル・ファチル](1-45節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 ~を頌めよ、天地の創造主にして、二翼三翼四翼の天使をその使とせる~を。~はその欲する所をその造物に加ふるを得、~は全能なれば。
二 ~が自由に人閧ノ授け得る慈惠には何人も抗止し得ず、その抗止する所は~ならでは何人も授け得ず。~は偉大にして賢明なり。
三 噫、人、爾曹に對する~眷を記せよ、~の外に天地より爾曹に食物を給する造物主ありや。~の外には~なし、さるを如何ぞ爾曹は(その唯一を認めずして)背くや。
四 若し渠等虛妄を以て爾を誹るとも、爾より前のの使徒も亦虛妄を出て責められしなり、~にあらゆるは歸すべし。
五 噫、人、洵に~の約は眞實なり。されば現世の爲に爾曹勿迷ひそ、虛妄の爲に~に就きて勿欺かれそ、
六 惡魔は爾曹の敵なり、されば敵として之を見よ、そは唯その友を地獄に招くなり。
七 信ぜざるには峻罰あり、
八 されど信じて正しきを行ふには慈惠と果報のあるあり。
九 されば惡を行ひ若しくば善と見ゆるを(正を行ひ眞を信ずると同じくすべきやは)。洵に~はその欲する所を迷妄に欲する所を善導に致すべし。故に爾曹の心をして(頑迷によりて)その爲に嗟せしむる勿れ、~は能く渠等の所業を知れば。
 風を生じ雲を起すは~なり、われそを死地に驅りて旣死の地を甦らしむ。復活も亦此の如し。
一一 優秀を希ふはあらゆる優秀を~に歸す。善言嘉行は上りて~に歸すべし。されど惡業を謀るは峻罰を蒙り、その企謀は空しかるべし。
一二 ~はまづ塵土より爾曹を創造り、次に種より創造り、爾曹に男女を生ず。婦人は~の知識の外を受けずまた生れず。人壽は延びずまた縮まず、聖典にあり。洵に此は~に易し。
一三 雨水は比較さるべくもあらず、甲は鮮にして甘、飮むに可なるも、乙は鹹にして辛し、されど爾曹はその孰よりも魚を得て食ひ物を獲て飾る。爾曹はまた之に船舶を浮べて(通商の)利潤を(~より)求む、當にその恩を謝すべきなり。
一四 渠は夜を以て晝に、晝を以て夜に踵がしめ、太陽と太陰とを各その軌道に運行せしむ。これ爾曹の主たる~なり、~は王國なり。然るに爾曹が~の外に尊敬する所(の偶像)は棗核の皮に對してすら力なし。
一五 爾曹そを禮拜すともそは爾曹の祈を聽かざるべし、渠等聽かんと欲すとも爾曹に應ふる能はじ。復活の日に渠等は爾曹のそを(~に)配せしを拒むべく、何人も爾曹に熟知せる~の如く(眞理を)宣明し得じ。
一六 噫、人、爾曹は~を要す、されど~は自具足なり、頌めらるべし。
一七 欲せば~は爾曹を除きて(それに代へて)新なるを生じ得。
一八 こは~からず。
一九 負擔せる心は他の負擔を負ふ能はず。重負のものその一部を分たんことを(他に)請ふとも、假令近親たりともそを分擔せざるべし。爾は心にその上帝を恐れ常に禱するをヘ戒せざるべからず、自(不柔順の罪を)Cうするは何人にてもその心をCうするなり、あらゆるは(最後の日に)~の前に集めらるれば。
 盲者とは同じからず、冥暗と光明とも、蔭と暑風とも、
二一 生と死とも同じからず。~はその欲するをして聽かしむ、されど爾は墓穴に在るを聞かしめ得ず。爾は說ヘに外ならず。
二二 洵にわれは爾を眞理を齎らして吉報の持の宣として送れり。過去に於てその中に一の說ヘなき民なかりき。
二三 渠僞瞞を以て爾を誹るとも、渠等以前のも亦僞瞞を以て(その使徒を)誹れり。その使徒は明白なる表徵(奇蹟)を以て(~の)記錄と明典とを以て渠等に下れり。
二四 而る後われ信ぜざるを罪せり、如何(に峻烈)なりしよ、わが報復は。
二五 爾曹見ずや、~は天より雨を降らしわれそを以て各色の果實を生ぜるを。山嶽にはまた紅白あり深高り、人と獸畜とにはまた各色あり。~の奴僕の中~を畏るゝ者のみ理解を授けらる。洵に~は偉大にし赦すむ好めり。
二六 洵に~書を讀み禱を絶たずわが授けし物の中より公私の施與を爲すは不壞の物品を望み得、
二七 ~は充分にその報酬を拂ひその大を加ふべし、~は(その奴僕の過失を)赦し(その努力に)酬うべし。
二八 われ(可蘭の)聖典にて爾に默示せる所は以前(默示せる所)の聖典を確認する眞理なり、~はその奴僕を知り且敬へばなり。
二九 われ(可蘭の)聖典をわが奴僕の中の欲するに遺として授けき、奴僕の中には自心を害ふもの、また中道を守るものあり、~の許によりて善に優れしものあり。こは優秀なり。
 渠等は常住の樂園に致さるべし、其處に黃金珠玉の當を掛け、その衣は絹盾ネるべし、
三一 渠等はいふべし、吾曹の憂愁を除きし~を頌めよ、洵に吾曹の上帝は好んで(罪を犯せる者を)赦し(柔順なるを)酬う、
三二 その慈惠を以て吾曹を毫も勞役なく些の疲倦なき安定の境地に休息せしむと。
三三 然れども不信には地獄の火(の設備)あり、そは渠等を(再)死せしめず、またその責罰を(少しも)輕減せず、以て不信に酬うべし。
三四 渠等は(地獄にて)絶叫すべし、上帝、吾曹を救へ、吾曹は正に歸してまた前の如き行業を爲さじと。(されど渠等には答へられん)、われ爾曹に警戒されし何人も愼み得べき十分の一生を與へしにあらずや、說ヘ者は爾曹に至らざりしか、
三五 されば味へ(地獄の苦を)。不正には一の保護なし(と)。
三六 洵に~は天地の密を知れり、(人の)裡の奧を知ればなり。
三七 爾曹を地上に繼承せしむるは~なり。信ぜざるは己に對して信ぜざるなり、而してその不信は唯その上帝の前にu侮蔑を加ふるのみ、その不信は唯不信の滅亡を加ふるのみ。
三八 いへ、爾曹何とか思ふ、爾曹が~の外にれる~祇に就きて。大地の何(の部分)をか渠等の創造れるか、われに示せ。さては渠等は天の創造にや參りし。われ渠等(不信)にその何等かの證を得る(默示の)聖典を與へしことありや。否、不敬はた相互に僞約を爲すのみ。
三九 洵に~は天地を支へて墜崩せしめず、若し天地にして墜崩せんか、~ならずして誰か能く之を支へ得ん。~は大度にして仁慈なり。
四○ 渠等(孤列種)は最嚴なる誓盟を以て~かけて誓へり、若し說ヘ來らば必ず他の民よりも能く導かれんと(欲せしと)、然るに今や說ヘは至れるにそは唯渠等に(眞理の)嫌惡を加へしのみ、
四一 (その)地上に於ける傲慢と地獄に於ける謀略とを揩ケしのみ。而も姦謀詐略は唯その工夫を圍繞せん。渠等は往昔の不信に對せし責罰の外何事をか期せんとにや。爾曹~の命に何等の變化なきを見ん、
四二 爾曹~の命に何等の差異なきを見ん。
四三 渠等世界を行きてその前人の末路如何を見ざるにや、そは渠等よりも勢大なりしも。~は天に於ても地に於ても何事によりても敗るものならず、~は賢明にして有力なれば。
四四 若し~にしてその所業に應じて人を罰せんには地中の蟲をも剩さらん、されど~は定時の至るまで渠等を猶豫す、
四五 その時至れば洵に~はその奴僕を照覽せん。
造化品[ウル・ファチル](1-45節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
劈頭に造物主のことあれば名づく。また天使のことを說けば天使品とも名づく。
略、裟婆品と相似たり。時代も亦それと相近しといふの外なし。
內容
造物主の頌(一-二)。
孤列種に眞~禮拜の勸(三)。
豫言の欺滿と稱せらるしむに足らず(四)。
惡魔に欺かる勿れ(五-八)。
罪を犯せる~前に正たる能はず(九)。
雨澤は復活の標本(一)。
善行は天に歸し非謀は空し(一一)。
~力の表現と偶像信仰の空虛(一二-一五)。
人は~をョみ、~は自具足す(一六-一八)。
審判の日各人自己の負擔を負ふ(一九)。
不正の別、豫言を誹りしの罰(二-二四)。
~惠の表現(二五)。
禱慈善の果報(二六-二七)。
可蘭を受けしの種類と信不信の應報(二八-三五)。
不信(三六-三七)。
偶像の無力(三八)。
天地維持の~(三九)。
古例の責罰を受くべき孤列種(四-四三)。
~罰急ならば焦類なけん(四四-四五)。
造化品[ウル・ファチル](1-45節)の註釋(文字の解釈)
一 二翼三翼四翼等は必ずしも指示の數に限らず、唯天使の多翼を備ふるをいふなリ。例之ば麻訶末の夜遊の時にガブリエルの出現には六百翼以上を具せしといリ。
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