「コーラン經」 鹿古曼品 第三十一 [ルクマン] 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
鹿古曼品[ルクマン](1-34節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 エリフ ラム ミム。是名典の表徵なり。
二 正への示ヘにして慈惠、
三 禱の時を違へず施與を爲し來世を確信する
四 こはその上帝によりて導かれて昌ふべし。
五 無智なる~の道より誘惑してそを嘲笑し得る滑稽の譚を求むるあり。此等は恥づべき責罪を蒙るべし。
六 わが表徵の渠等に至る時、渠聞かざるが若く背を向くると猶聾なるが如し。されば渠に痛むべき責罰を課す。
七 されど信じて正を爲すは樂園を得て
八 長しへに其處に在るべし。これ~の確約なり、~は偉大にして賢明なり。
九 ~は支柱なき蒼天を創造り根底固き山嶽を大地に置き、各種の禽獸を其處に充滿せしめき。われ天より雨水を降して其處に各色の植物を生ぜしめき。
 これ~の創造なり。今われに示せ、~の外の(禮拜さる)~祇の何をか創造りたるかを。洵に不敬~は顯なる迷妄なり。
一一 われ嘗てルクマンに智を授けて(命じて)いへり、~に謝せ、~に謝するは唯己の心に謝するなれば、されど謝せざるは--洵に~は具足して尊ぶきなり。
一二 ルクマンその子を戒めていへり、噫わが兒よ、~に共同を勿配しそ、多~は一大不敬なりと。
一三 われ人にその兩親に就きて命じていふ、--その母は孱弱なるをその胎內に藏し兒は二歲にて離乳すれば、--われにも爾曹の兩親にも感謝せよ。われに總べて歸すべし。
一四 されど兩親にして爾曹の毫も知らざるものをわれに配せんと說かば勿從ひそ、現世にて渠等に孝なれ、た眞摯にわれに歸依するの道に從へ。後、爾曹はわれに歸すべし。その時われ爾に爾曹の所業を宣明せん。
一五 噫、わが兒よ、洵に(善惡に論なく)假令芥子粒の微事も、また巖中に天上に地下に隱さるとも、~はそを照覽せん、~は明知にして智あれば。
一六 噫、わが兒よ、禱を怠らず、正を行ひ惡を禁じ、爾の上に起る困厄を忍べ、そは絶對に人の務むべき義務なれば。
一七 人に對して面を勿歪めそ、傲然と勿きそ、~は虛驕傲慢のを愛せざれば。
一八 徐にみ低く語れ、あらゆる聲の最不雅なるは確に驢聲なりと。
一九 爾曹見ずや、~は天地にありとあるものを爾曹の用に供し、內外ともにその眷遇を爾曹に垂るるを。然るに知識なく示ヘなく明典なくして~に就きて爭ふあり。
 渠等に向ひて、~の默示せる所に從へといへば、否、吾曹の先の爲せる所に從ふと答ふ。惡魔渠等を地獄の苦痛に致さば如何。
二一 正を行ひて~に向ふは强き把手を握る。萬事の後果は~に屬す。
二二 されど不信はその不信を爾曹に悲ましめず。渠等われに歸すべし、其時われ渠等に其所業を宣明すべし、~は心中の所を知ればなり。
二三 われ暫く渠等に(現世を)享樂せしめん、其後われ渠等を峻罰に逐ふべし
二四 爾曹、誰か天地を創造りしと渠等に問は、必ず、~と答へん。いへ、~を頌めよと。而も渠等の多數は解せず。
二五 天地にありとしあるものは~に屬す、~は自具足にして頌揚すべければ。
二六 地上にありとしある樹木を筆とし七の水をとするも、~の言は盡くし得ざらむ。~は偉大にして賢明なれば。
二七 爾曹の創造と爾曹の復活とは唯一心の(起伏の)如し。洵に~は聞き且見れば。
二八 爾曹見ずや、~は夜を以て晝に踵ぎ晝を以て夜に踵ぎ太陽と太陰とを運行せしめて爾曹の用と爲すを。星辰は各定時に運行す。~は爾曹の所業を熟知せり。
二九 ~は眞の實在なり、爾曹が~の外に禮拜するは虛妄なり、~は高き~大なる~なり。
 爾曹見ずや、船舶の~の眷遇によりて上をるは爾曹に~の表徵を示す所以なるを。洵に此處に堅忍謝恩の人への表徵あり。
三一 波浪暗雲の如く渠等を掩へば渠等眞ヘに歸向して~る。されど~之を安らかに陸に致せば渠等の中には(眞僞)兩ヘの閧ノ躊躇するあり。されば何人もわが表徵を拒まず、不信忘恩の人を除きては。
三二 噫、人、爾曹の上帝を畏れよ、父は子の爲に謀り得ず子は父の爲に盡し得ざるその日を畏れよ。
三三 ~約は確實なり。されば此現世をして爾曹を勿欺かしめそ、僞瞞をして~に就きて爾曹を勿欺かしめそ。
三四 洵に(審判の)時の知識は~に在り。~は(その定めし時に)雨を降らし、~は(婦人の)胎內に在るものを知る、一人も翌日の事を知らず、一人も何處に死すべきやを知らず。唯~知れり、よく知れり。
鹿古曼品[ルクマン](1-34節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
一一にルクマン(またロクマン)の事あるより名づく。蓋しルクマンは當代亞剌比亞人間に喧傳せる古名家なれば、之を眞ヘの信に數へしにて、なほ第十八品に亞歷山を假りしと同轍なり。
時代
麻訶末の默伽宣傳の第三期の始頃。
內容
可蘭は正への示ヘ(一-四)。
可蘭を蔑する不信と正(五-八)。
~は天地の創造(九-一)。
ルクマンのその子に對するヘ訓(一一-一二、一五-一八)。
兩親に對する子の義務(一三-一四)。
不信者の爭議(一九-二)。
不信の處罰(二一-二三)。
自具足の造物主(二四-二五)。
無量數の~言(二六)。
人の創造は~の統御の證(二七)。
天は~の光榮を示す(二八-二九)。
不信の忘恩(三-三一)。
審判の準備の勸(三二-三四)。
鹿古曼品[ルクマン](1-34節)の註釋(文字の解釈)
五 ヌダル•イブン•アル•ハリトNudhal Ibn al Harith波斯より其國の英雄ルスタムRustamイスファンヂヤルIsfandiyarの傳奇を獲來りて之を孤列種の會合の席に讀み、以て可蘭に說けるアド、タ一ムド、ダテ、ソロモン等の古譚より優れたりとし、また歌伎を伴ひ來リて歌謠によリて眞ヘの信を惑はさんとせしかば、此言ありといふ。
一一 ルクマンLuqman(Lokman)はジョブの妹の子、または叔母の孫パウラBauraの子にてダテの時世にありて之とパレスチナに相語れりといふ。其生涯は頗マキシムス•プラヌデスMaximus Planudesのエソップ傳に似たればとて、世人多くは以てエソップのこととなせリ。されど所謂エソップ傳の作は却リて東方民間に傳はりしルクマンの傳を採りてエソップ傳に用ひしといふ說あリ。
一三 一三、一四兩はルクマンの言にあらず。よりて八の後に在りしを錯入せしといふ說あり。
三四 此節なる~のみ能く知れる五事を亞剌比亞人は五~祕と稱す。
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