「コーラン經」 羅馬品 第三十 [ウル・ルム] 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
羅馬品[ウル・ルム](1-60節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 エリフ ラム ミム。
二 羅馬は最近の地に於て(波斯人に)勝たれき、されどこの一敗の後渠等は數年のうちに(他に)勝たん。
三 ~に過去將來の所轄は屬す。その日信~に許されし成功をスぶ、
四 ~はその欲する所に成功を授くればなり。~は偉大にして仁慈なり。
五 これ~の約なり。~はその約に反きて行はず。然るに人槪ね(~の信實を)知らず。
六 渠等は現世の外觀を知るも意を來世に致さず。
七 渠等心に思はずや、~は唯眞理によりて天地萬物を創造りその定命を定めしを。洵に人多くは(復活の日に)その上帝に會する信仰を拒む。
八 渠等は世界を行きて前代の終末如何を見ざるか。渠等は武力にても耕作にても昌隆にても渠等(默伽の衆)より優れたりき。その使徒は明白なる表徵(奇蹟)を以て渠等に下りき。~は不正を以て渠等を遇せざりしも渠等は自その心を害ひき。
九 惡を行ひしの最後は惡なり、渠等は虛妄を以て~の表徵を誹り嘲罵を以て之を笑ひたれば。
 ~は生物を創造し、のちそを復歸すべし、その時爾曹は渠に歸すべし。
一一 その日その時至らば惡人は失望して混迷すべし。
一二 渠等はその~と同列に配せるより一人の勸解を得ざるべし。渠等はその~に配せしものを拒まざるを得ず。
一三 その日その時至らば渠等(眞の信者と異端と)は分けらるべし。
一四 信じて正を行ひしは快き牧場に遊ぶべし、
一五 信ぜずしてわが表徵と來世の會合とを拒みしは責罰に附せらるべし。
一六 されば爾曹朝夕に~を頌めよ、
一七 天に地に~を尊べ、日沒と午時とに。
一八 ~は死より生を、生より死を出し、~は死せる大地を活かし、それと同じく爾曹を(その墓穴より)起すべし。
一九 ~の表徵(の一)は爾曹を塵土より創造れるなり。見よ、爾曹は人なり四方に散布せる。
 ~の表徵(の他)は爾曹の爲に爾曹より爾曹と同棲の妻を創造れるなり、爾曹の閧ノ愛憐の情を繫げるなり。洵に此處に理解あるへの表徵あり。
二一 ~の表徵には天地の創造爾曹の言語面貌の差異あり。洵に此處に理解あるへの表徵あり。
二二 ~の表徵には爾曹の晝夜の睡眠、爾曹の物資の欲求あり。洵に此處に聞く民に對する表徵あり。
二三 ~の表(の他のもの)に、~が爾曹に靈光を示して畏れしめ(降雨の)望を懷かしめ天より雨水を降し死せる地を活すことあり。洵に此處に理解ある民への表徵あり。
二四 ~の表(のまた一)に~命にて天地確立し、そののち~地中より爾曹を一呼すれば、見よ、爾曹の出來るあり。
二五 ~に天地にありとしあるものは屬し、萬物は~に服從す。
二六 生物を創造りてのち之を(生に)復するは~なり。そは~に最容易し。天地閧フ最上至高の例は~なり。~は偉大にして賢明なり。
二七 ~は爾曹の身より一譬諭を說けり。爾曹の奴隷の中にわが爾曹に與へたる物資の共有にして爾曹と對等のありや、將た爾曹相互に畏敬するが如く畏敬すべきありや。われ斯くわが表徵を理解ある民に解說すること明なり。
二八 然るに(~伴を配する)不正は無知にして己が私欲に任す。誰か能く~の迷はしめしを導かんや。渠等を救ふべき一人もなし。
二九 されば爾は正ヘたれ。人類を創造せる~の憲制たる(眞の)ヘに面を向けよ、~の創造りしものには毫も變化なし。これ正ヘなり。されど人槪ねそれを知らず。
 ~に向ひ~を畏れ禱を絶たず偶像信たる勿れ。
三一 そのヘの派を分ち流を異にすれば各流派はその自說をスぶ。
三二 困厄に會へば渠等はその上帝に向ひて禱る。渠その慈惠を垂るや、見よ、渠等の一部は他の~祇をその上帝の列に推す、
三三 これわが渠等に授けたる眷遇に對して自忘恩を示すなり。故に樂め(現世の虛榮を)、されど後知れ(その報を)。
三四 われ渠等にその~に配する僞~に就きて何等かの權威を下せることありや。
三五 われ人に慈惠を嘗めしむるや渠等之をスべども、その從前の所業の爲に渠等不幸に會へば乃望を失ふ。
三六 渠等見ずや、~はその欲する所に澤に與へ、その欲する所に愛しむを。洵に此處に信ずる民への表徵あり。
三七 その近親と貧と外人とに相應の義務を盡くせ。これ~の面を求むるによろし。渠等は昌ふべし。
三八 爾曹重利によりて人閧フ物資を揩キところは~(の)によりて加へられず、然るに爾曹~の爲に施與として施す所は二重の報償を得べし。
三九 爾曹を創造り爾曹に食を給し、後に爾曹を死せしめ、その後復爾曹を活かす~なり。爾曹の僞~に少しにても斯る事を爲し得るありや。~を頌めよ、渠等が~に配するより高く。
 人の爲せる罪惡の爲に唐は陸に生ぜり、爲に渠等をしてその所業の(果實の)一部を喫せしむ、恐らく渠等は(その惡しき道より)轉向し得む。
四一 いへ、世界を行きて爾等の前人の最後如何を見よ、その多數は偶像信なりきと。
四二 故に爾曹の面を正ヘに向けよ、何人も~より歸り得ぬ日の至る前に。其日には渠等二派に分たるべし、
四三 不信たりしにはその不信を責めらるべく、正を爲せしには(天堂の安息の床に)安臥すべく、
四四 信じて正を行ひしには澤なる報償あるべく、~は不信を愛せざればなり。
四五 ~の表徵(の一)に~は喜雨の吉報を齎らせる風を發して爾曹をしてその澤に浴せしむるとあり。また~命にて船をらせ爾曹をして商利を得せしむるとあり。爾曹そを感謝すべし。
四六 われ爾の前にそれぞれの民に使徒を派し、使徒は明白なる證を以て渠等に至れり。われ惡を爲せしに報復せり。眞の信を助くるはわが職責なり。
四七 風を起し雲を喚びてその欲するまに之を卷舒するは~なり。爾曹雨の其中より來るを見ん。~其奴僕の中の欲するにそを注ぐ時渠等は歡喜せり、
四八 その至らざる前には渠等失望せしも。
四九 故に~惠の跡を思へ、如何に渠は死地を復活せしかを。洵に死を復活するも亦同じ。~は全能なれば。
 然れどもわれ一陣の秋風を送れば、渠等黃凋を見て必ずや日の恩を忘れん。
五一 爾は死を生かしめ聾を聞かしめ得ず、渠等退き背くとき。
五二 爾は盲をその迷妄より救ひ得ず、爾はわが表徵を信ずるの外何人をも聞かしむる能はず、渠等は敬聽すればなり。
五三 爾曹を弱く創造り、後弱きを强め、而して後また弱く白髮ならしめしは~なり。~はその欲する所を創造る。~は賢明にして有力なり。
五四 最後の時の至るその日に惡人は誓ふべし、
五五 渠等一時閧謔阯P豫なきを。之と同じく渠等は(その生時に)虛妄を唱へたり。
五六 されど知識と信仰とを授かりしはいふべし、爾曹は~典に從ひて復活の日まで猶豫されきと。こは復活の日なれば、唯爾曹そを知らざるなり。
五七 その日渠等の謝罪はその行へる不正をuせず、渠等はまた(旣に~に)容れられざるべし。
五八 今われ此可蘭に於て各種の譬諭を人に說きたり。されど爾其一句を渠等にいは不信は必ずいはん、爾は虛妄を說くのみと。
五九 斯くして~は信ぜざるの心を封ぜり。
 されど爾は、噫、麻訶末、不斷に堅忍なれ~は眞實なれば。何等の知識なきをして爾を動かしむる勿れ。
羅馬品[ウル・ルム](1-60節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
譯本には希臘經とあれどもルムは羅馬なり。蓋し東羅馬帝國(世に所謂希臘帝國)の戰役に就きての豫言卷頭に在るが故に名づく。
時代
東羅馬の戰役の豫言はヘジラ前五、四、三年等學によりて說を異にす。或はヘジラ前六年の始に波斯軍が里亞を征服しパレスチナを徇へヱルサレムを取りし時の豫言にして、ヘジラ前四年なる六二五年に帝國大に波斯に勝ち以て此豫言の適中を見たりといふ。されど羅馬の敗挫は連年なれば必ずしもその孰の年に在りしやは確定し易からず。
或は卷頭の豫言は早くヘジラ前六、七年に在りとするも、爾餘のゥ節は遙に後年のものたりとの說あり。
內容
東羅馬の波斯擊破の豫言(一-五)。
~力を解せざる不信(六-七)。
~の警戒を顧みざる孤列種(八-九)。
復活に不信の失望(一-一二)。
審判の日正邪の區分(一三-一五)。
禮拜の時(一六-一七)。
復活を證する自然の變化(一八)。
~の全智の證(一九-二六)。
~と奴隷との譬諭(二七-二八)。
麻訶末に正ヘの勸(二九-三一)。
困厄には歸依し昌安には背離する偶像信の忘恩(三二-三五)。
博愛の勸(三六-三八)。
創人保生の力なき僞~(三九)。
~判は人の惡業に從ふ(四-四一)。
審判の日正邪の區分と賞罰(四二-四四)。
~の表徵の例(四五)。
豫言排斥の報(四六)。
膏雨活地は復活の例證(四七-五)。
麻訶末は盲を見せ聾を聞かせ得ず(五一-五二)。
人間の創造たる~(五三)。
復活の日不信者の虛妄(五四-五七)。
麻訶末に眞ヘ固持の奬勵(五八-六)。
羅馬品[ウル・ルム](1-60節)の註釋(文字の解釈)
三八 重利はまた賂賄とあり、要するに不當利得の義なリ。
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