「コーラン經」 詩人品 第二十六 [アル・シュアラ] 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文の漢字・ルビ・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
詩人品[アル・シュアラ](1-228節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 タ ミン シム。こは明典の表徵なり。
二 恐らく爾は渠等(默伽の衆)の信たらざるを死するまでにかむ。
三 われそを欲せば、渠等の首のるべき表徵を天より渠等に下し得ん。
四 されど其處に渠等に對して慈悲~より來るヘ戒は一として渠等を避けしめざるは莫し。
五 渠等は虛を以てそを誹り、渠等に至る使を嘲笑せざる莫し。
六 渠等地を見ずや、如何に多くのそれぞれに尊き植物をわれ其處に生ぜしよ。
七 洵に此處に表徵あり、而も渠等多くは信ぜず。
八 洵に上帝は有力仁慈(の~)なり。
九 爾曹の上帝はモセを徵せり、(かくいへり)不正の民に行け
 ファラオの民に、渠等(われを)畏れざるかと。
一一 渠(モセ)答へき、噫、上帝、洵にわれは渠等が虛妄を以てわれを罪し
一二 わが胸を狹めわが舌を語る能はざらしめんを恐る。故にアアロンを(わが輔佐として)送れ。
一三 渠等はわれに對して罪を論ぜり、われ渠等のわれを殺さんを畏るればと。
一四 ~いへり、決して(爾を殺し得ず)、爾わが表徵を以て行く處にはわれ爾と與に在りて (爾と渠等との閧ノ)起る所を聞けば。
一五 故にファラオに行きていへ、洵に吾曹は萬物の主宰の使徒なり、
一六 吾曹と與にイスラエルの子孫を致せと。
一七 (渠等その使命を傳ふるやファラオ)答へき、吾曹爾を幼少より吾曹の閧ノ致し、吾曹と與に住する旣に久しからずや、
一八 さるに爾は行ふ所を行ふ、爾は忘恩なりと。
一九 (モセ)答へき、われ實にそを行へり、われ誤れるなりき、
 故にわれ爾を恐れ爾より遁れき、されどわが上帝はわれに智を授けて使徒と爲せり。
二一 爾がわれに與へし眷遇はイスラエルの子孫を奴隷とせることなりきと。
二二 ファラオいへり、誰ぞや萬物の主宰とは。
二三 (モセ)答へき、天と地とその閧ノあるものとの上帝、爾若し明あらばと。
二四 (ファラオ)傍に在るに、爾曹聞かずやといへり。
二五 (モセ)いへり、爾曹の上帝、爾曹の先の上帝と。
二六 (ファラオ其處に在りし者に)いへり、爾曹に來れる使徒は洵に狂へりと。
二七 (モセ)いへり、東と西とその閧ノあるもの上帝よ、爾曹理解あらばと。
二八 (ファラオ)渠にいへり、洵に爾わが外に何等かの~を立てんには爾を囚へんと。
二九 (モセ)答へき、何とや、われ明白なる奇蹟を以て來れるに。
 (ファラオ)答へき、さらばそを示せ、いふ所眞ならばと。
三一 かくて渠杖を投げしに、見よ、そは明に蛇なり、
三二 手を(袖中より)出せしに、見よ、觀るに白かりき。
三三 (ファラオ)傍なる公にいへり、洵に此は熟なる魔術師なり、
三四 幻術を以て爾曹の國土を奪はんとす、さらば爾曹奈何にすべきと。
三五 渠等答へき、(一時甘言を用ひて)渠等兄弟を留めよ、城市に人を派して
三六 各處の熟なる魔術師を徵せよと。
三七 斯くて魔術師は定日の定刻に會せり。
三八 斯く民にいはれき、爾曹集まれりや、
三九 渠等捷たば恐らく吾曹それに從はんと。
 魔術來るやファラオに、吾曹勝たば報酬を得可きやと問へり。
四一 渠、然り、爾曹は必ずわれに近きなるべしと答へき。
四二 モセ渠等に、爾曹投げんとするものを投げよといへば、
四三 渠等はその繩と杖とを投げて、ファラオの力に依りて吾曹勝たざるべからずといへり。
四四 モセその杖を役ぜしに、見よ、そは渠等の詐り(て蛇に)變ぜる所を呑み盡くしき。
四五 是に於ての魔術師は身を地に伏して拜し
四六 吾曹萬物の上帝を
四七 モセとアアロンとの上帝を信ずといへり。
四八 (ファラオ渠等に)いへり、爾曹わが許可を待たずしてそを信ずるか、爾曹に魔術をヘへしはその主なり、さらば爾曹將に(わが力を)知らん。
四九 われ爾曹の手足を斷ち、悉く爾曹をせんと。
 渠等答へき、何ぞ(吾曹を)害すべき、吾曹は上帝に歸すべければ。
五一 吾曹は上帝の罪を赦さんを知る、吾曹は最初の信なればと。
五二 その時われモセに默示していへり、夜に乘じてわが奴僕を率ゐ發せよ、爾曹追はるべきかと。
五三 ファラオ人を城市に派して衆を徵していへり、
五四 洵に此等の衆は寡し、
五五 洵にそは吾曹を犯せり、
五六 されどわれに銳の大軍ありと。
五七 われ渠等をして田園泉池
五八 財寶第宅を抛たしめき、
五九 斯くして而して--われイスラエルの子孫をしてそを繼承せしめき。
 晨に渠等を追へり。
六一 兩軍相望むに及び、モセの衆は、吾曹必ず及ばれんといひしに、
六二 (モセ)答へき、決して、わが上帝われに在りてわれを導けばと。
六三 われ默示を以て、爾の杖にてを打てと命じき。(そを打つや)は分れ(て十二部となり其閧ノ十二路を現じその)各部は大山の如し。
六四 而してわれ此處に他を引けり。
六五 われモセとその衆とを救ひ
六六 他を溺らしき。
六七 洵に此處に表徵あり、然るに渠等多くは信ぜす。
六八 洵に爾曹の上帝は有力にして仁慈なり。
六九 渠等にアブラハムの往史を說け。
 渠その父と其民とに何をか爾曹は禮拜すといひしに、
七一 吾曹は偶像を禮拜し終日怠らずそれに仕ふと答へき。
七二 (アブラハム)いへり、爾曹(そを)禮拜する時渠等爾曹に聽くか
七三 爾曹をuし爾曹を害するかと。
七四 渠等は、唯吾曹の先の斯くするを見たりといへり。
七五 渠いへり、何とや思ふ爾曹は。
七六 爾曹の禮拜する、爾曹の先の禮拜せし(~祇)は
七七 わが敵なり、萬物の主宰の外は、
七八 われを創作りわれを導く
七九 われに飮食を與ふる
 病める時われを癒す
八一 われを死せしめてのち復活する
八二 審判の日にわが罪を赦さんことをわが希ふの外は。
八三 噫、上帝、われに知を授けよ、われに正しきを與へよ、
八四 わが最後の子孫の中に名譽を以て語らんことを許せ、
八五 われを園の繼嗣たらしめよ、
八六 道を失ひし(の一人)たりしわが父を赦せよ、
八七 復活の日にわれに恥辱を勿着せそ、
八八 財寶も子孫も、
八九 唯眞摯の心を以て~に來るの外力なく、
 天堂は敬虔に近く
九一 地獄は明に不信に見へ、
九二 何處に爾曹の仕へしありや
九三 ~の外に、渠等は爾曹を(責罰より)救ひ得るや否とよ渠等自己を救ひ得るやと不信にいはる日に。
九四 渠等は(その禮拜に)誘惑せしと與に其處に墮つべし、
九五 總べてイブリスの客たらん。
九六 渠等(誘惑されし)は其處に(その僞~と)爭ひていはん、
九七 ~かけて吾曹は明に迷誤たりき、
九八 爾曹を萬物の主宰と同列に推せしとき。
九九 吾曹を誘惑せるは惡人なり、
〇〇 吾曹(今や)一人の勸解なく、
一(吾曹の)爲に謀る一人の友なし。
二 吾曹再び(世に)復るを許されなば必ず眞の信たるべしと。
三 洵に此處に表徵ありしも渠等槪ね信ぜざりき。
四 上帝は有力にして仁慈なり。
五 ノアの民は欺瞞を以て~使を責めたり。
六 同胞たるノア渠等にいへり、爾曹(~を)畏れざるか、洵に
七 われは爾曹に對して忠誠なる使なり、
八 故に~を畏れわれに從へ。
九 われ(爾曹にヘふる)爲に爾曹より何等の報償をも求めず、わが(期する)報償は唯萬物の主宰より來る、
一一 故に~を畏れわれに從へと。
一一一 渠等答へき、最賤きのみ爾に從へるに吾曹爾を信ずべきやと。
一一二 (ノア)いへり、われ渠等の所業を知らず、
一一三 爾曹知るが如く渠等を裁くは唯~に在り、
一一四 さればわれ信を逐はず、
一一五 われは唯公の說ヘなりと。
一一六 渠等答ふらく、果して然らば、爾屈せずば、噫、ノア、爾は石殺されんと。
一一七 渠いへり、噫上帝、洵にわが民はわれを虛妄とせり。
一一八 故に公然われと渠等とを裁け、われとわが眞の信とを救へと。
一一九 よりてわれ渠とその徒とを(人と動物とを乘せたる)方舟に救ひて
一二 他を溺らしたり。
一二一 洵に此處に表徵ありしも、渠等槪ね信ぜぎりき。
一二二 爾曹の上帝は有力にして仁慈なり。
一二三 アド(族)は虛僞を以て~使を責めき。
一二四 その同胞フド渠等にいへり、爾曹(~を)畏れざるか、
一二五 洵にわれは爾曹に對して忠誠なる使なり、
一二六 故に~を畏れわれに從へ。
一二七 われ(爾曹にヘゆる)爲に爾曹より何等の報償をも求めず、わが(期する)報償は唯萬物の主宰より來る。
一二八 爾曹は樂の爲に高處に標目を作るや。
一二九 爾曹は永存せん爲に(莊麗なる)土木を起すや。
一三○ 爾曹その力を用ふる時酷虐を以てそを用ふるや。
一三一 (斯る事を捨て)~を畏れよ、われに從へ。
一三二 爾曹の知るところを爾曹に授けし~を畏れよ。
一三三 ~は爾曹に家畜と子孫と
一三四 田園とC泉とを援けたり。
一三五 われ洵に爾曹の爲に痛ましき日の責罰を畏ると。
一三六 渠等答へき、爾說くも說かざるも吾曹には同じ、
一三七 爾の說く所は古人の發明なり、
一三八 吾曹は(吾曹の所業の爲に)罰せらると。
一三九 かく渠等は虛妄を以て渠を責めたれば、われ渠等を滅ぼしたり。洵に此處に表徵あしに、渠等槪ね信ぜざりき。
一四 爾曹の~は有力仁慈なり。
一四一 タムド(族)も亦虛僞を以て~使を責めたり。
一四二 その同胞サリ渠等にいへり、爾曹(~を)畏れざるか、
一四三 洵にわれは爾曹に對して忠誠なる使なり、
一四四 故に~を畏れわれに從へ。
一四五 われ(爾曹にヘゆる)爲に爾曹より何等の報償をも求めず、わが(期する)報償は唯萬物の主宰より來る。
一四六 爾曹(永久に)此處にある事物を有すべきか、
一四七 園と泉と
一四八 物と花く椰子樹との中に。
一四九 爾曹暴慢にして山より(爾曹の)住家を斫り出し得んか。
一五 ~を畏れわれに從へ、
一五一 侵犯に勿從ひそ
一五二 地上に惡を行ひてそを改めざるにと。
一五三 渠等いへり、爾は洵に狂へり、
一五四 爾は吾曹の如き人に外ならず、爾の言果して眞ならば何等かの表を示せと。
一五五 (サリ)いへり、この牝駱駝(は爾曹への表徵たるべし)、そは其飮水を有し爾曹は爾曹の飮水を有す、互に定まりし日に。
一五六 そを勿犯しそ、恐るべき日の責罰爾曹に下らんにと。
一五七 然るに渠等はそを殺せり、翌日ひたり、
一五八 (威せし)責罰渠等に及びたれば。洵に此處に表徵ありしに渠等槪ね信ぜざりき。
一五九 爾曹の上帝は有力仁慈なり。
一六 ロトの民も亦僞瞞を以て~使を誹れり。
一六一 その同胞ロト渠等にいへり、爾曹(~を)畏れざるか。
一六二 洵にわれは爾曹に對して忠誠なる使なり、
一六三 故に~を畏れわれに從へ。
一六四 われ(爾曹にヘゆる)爲に爾等より何等の報償をも求めず、わが(期する)報償は唯萬物の主宰より來る。
一六五 爾曹人の男子に近き
一六六 爾曹の上帝が爾曹の爲に創作りし婦人を捨つ。洵に爾曹は犯せる民なりと。
一六七 渠等答へき、爾必ず止めずば、噫ロト、爾は放逐されんと。
一六八 渠いへり、洵にわれは爾曹の所業を惡むなり、
一六九 噫上帝、われとわが族とを渠等の所業より救へと。
一七 よりてわれ渠とその全家族とを救ひたり、
一七一 後に殘りしと與に死せる老婦(たる其妻)を除きて。
一七二 然る後われ他のを滅ぼしたり、
一七三 われ渠等に石を降らしたり、恐る可き雨は警戒されしに下れり。
一七四 洵に此處に表徵ありしに渠等槪ね信ぜざりき。
一七五 爾曹の上帝は有力仁慈なり。
一七六 森林の民も亦僞瞞を以て~使を誹れり。
一七七 その時シュアイブ渠等にいへり、爾曹(~を)畏れざるか。
一七八 洵にわれは爾曹に對して忠誠なる使なり、
一七九 故に~を畏れわれに從へ。
一八 われ(わが說ヘの爲に)毫も報償を爾曹に求めず、わが(期する)報償は萬物の主宰より來る。
一八一 正しく量れ、勿欺きそ、
一八二 正しき秤衡を用ひよ、
一八三 寸毫も人の物を勿減じそ、地上に惡を爲す莫れ。
一八四 爾曹と前代とを創作りし~を畏れよと。
一八五 渠等いへり、洵に爾は狂へり、
一八六 爾は吾曹と同じく人に外ならず、吾曹は確に爾を虛妄とす。
一八七 爾の言果して眞ならば、今天の一部を吾曹に落ちしめよと。
一八八 (シュアイブ)いへり、わが上帝は最よく爾曹の所業を知ると。
一八九 然るに渠等虛妄を以て渠を責めたれば暗雲の日の責罰は渠等に下れり、これ悲しき日の責罰なりき。
一九 洵に此處に表徵ありしに渠等槪ね信ぜざりき。
一九一 爾曹の上帝は有力にして仁慈なり。
一九二 この聖典は實に萬物の主宰の默示なり、
一九三 忠誠なる靈が齎らし下れるところ、
一九四 爾が(その民に對して)說ヘ者たり得るために爾の心に、
一九五 明快なる亞剌比亞語にて、
一九六 前代の經典の證明として。
一九七 イスラエルの子孫の中の學がそを知りしは渠等に對する表徵ならずや。
一九八 われ之を外人の或に默示し
一九九 渠それを渠等に讀誦せしも、渠等なほ信ずるを欲せざりき。
〇〇 斯くてわれ頑迷なる不信を惡人の心裡に入らしめ、
一 渠等痛ましき責罰を見るまでそを信ぜざるべし。
二 責罰は不虞に渠等に下るべく、渠等はそを豫見せずしていふべし、
三 吾曹猶豫さるべきかと。
四 さらば渠等はわが責罰の急ならんを希ふか。
五 何とか思ふ爾曹は。若しわれ渠等をして數年(現世の利uを)享樂せしめ、
六 然る後渠等を威せしものを渠等に下さしめなば
七 渠等の享樂せしところは何の利uぞ。
二○八 われ(まづ)說ヘを下さずして一城市をも滅ばさりき
九 その民をヘ化す可く。われまた不正を以て渠等を遇せざりき。
二一 惡魔は(不信の公言する如く可蘭の)聖典を以て下らず、
二一一 (斯る聖典を齎らさんは)そは渠等の目的にあらずまた能ふ所にあらず、
二一二 渠等は(天に於て天使の語を)聞き得ざればなり。
二一三 他の何の~をも(眞の)~と與に勿拜しそ、爾責罰を課せらる人たるを恐れなば。
二一四 爾の近親を戒しめよ。
二一五 爾に隨從する眞の信に溫和なれ。
二一六 若し渠等爾に柔順ならずば、洵にわれは爾曹の所業に明なりといへ。
二一七 最有力の仁慈の~に信ョせよ。
二一八 爾の起つとき爾を求め、
二一九 禮拜の中に爾の行狀を見る~に信ョせよ。
二二 ~は聞き且知れば。
二二一 われ惡魔の誰に下るべきを爾曹に宣るべきか。
二二二 惡魔は虛妄凶惡の各人に下る。
二二三 渠等は聞くところを傳ふ、されど槪ね虛妄なり。
二二四 誤れるものは詩人(の轍)に從ふ。
二二五 渠等が(その感覺を失ひて)谿谷を彷徨するを見ずや、
二二六 その爲せる所を爲さずといふを見ずや。
二二七 唯信じて善行を修し屢~を思ひ
二二八 虐遇されしのち自防するを除きては。不正を爲せるは今後その待遇さるべき待遇を知らむ。
詩人品[アル・シュアラ](1-228節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
末尾に詩人の譬諭あり。故に名づく。蓋し當時の詩人詩歌を以て麻訶末の新ヘを諷刺する多く、麻訶末も亦、ラビドイブンラビア、アブヅー・イブンラワハ、ハッサンイブンビト、兩カブ等の詩人を用ひて對抗辯明せり。麻訶末が狐列種の豫言排斥に對して往事故史を以て辯明說確せる點に於て此卷は殆んど第七品と擇ぶ所なし。唯此卷の特色は主として故豫言と之を排斥せるの談論を列擧せるに在り。
時代
故事往例は多く猶太人に出づればとて之を默コ那默示と爲す者あるも、そは必ずしも據りし。二一四以下、少くとも二一四は可蘭の最初に屬すべき近親說法なり。二一五-二一九は多少の信ありし證たり。ネルデケ一派は全卷を默伽宣傳の第七年頃のものとす。或は二二四以下を以て默コ那默示となすあれども確證なし。要するに默伽默示たるは疑なきに似たり。
內容
麻訶末を欺瞞となす者に封する辯明(二-八)。
セの譚、埃及に於けるモセ(九-五一)。
同、出埃及(五二-六八)。
アブラハムの譚(六九-一四)。
ノアの譚(一五-一二二)。
アドの譚(一二三-一四)。
ムド族の譚(一四一-一五九)。
ロトの譚(一六-一七五)。
ミヂアン族の譚(一七六-一九一)。
カブリエルの下せる亞剌比亞語可蘭は前代聖典によりて證せらる(一九二-二四)。
~の仁慈は不信恨を加ふ(二五-二七)。
~は豫戒なくして一城市を滅ぼさず(二八-二九)。
惡魔は可蘭の默示に與からず(二一-二一二)。
麻訶末に近親への說法の勸、眞の信待、不信容(二一三-二二)。
不信の心に入る惡魔(二二一-二二三)。
不信の詩人と信仰の詩人(二二四-二二八)。
詩人品[アル・シュアラ](1-228節)の註釋(文字の解釈)
一一 一一-六九は第二十二品の八—九八參照。
一三 罪は殺人罪なり。第二十二品の四一參照。
一七 モセ埃及に在ること十年にしてミヂアンにゆき留まること十年、のち埃及に歸りて居ること復三十年といふ。
二八 此ファラオの言に據れば埃及にてはファラオを~とせるなり。第二十八品の三八參照。
五九 此句によリて、或ものはファラオの死後イスラエル族埃及を得たりと爲せども、他の說にては是他國にて其捨てし所と同じ土地資財を得せしむるの意とせり。
一二八 星を見て旅程の標目と爲すを嘲るといひ、または標目は漠中に行旅のために方向を示す柱なりともいふ。
一五八 牝駱駝の飮む日は井水河水ともに空しく、人は日を異にして水を飮むといふ。第七品の七四參照。
一七一 此句のいふ所は創世記の所說と反せり。
一七六 森林の民云は第十五品の三八を見よ。
一八九 ~は七日間驕陽を以て水を枯渴せしめ、その後K雲を下し熱風火炎を吹きて全滅せしめきとぞ。
一九三 精靈はガブリエル。
二二四 古詩人の空談虛構狂妄を極むるをいふ。
Office Murakami