「コーラン經」 雷電品 第十三 【アル・ラアド】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文・解題・註釋の漢字・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
雷電品【アル・ラアド】(1-43節)の本文
大慈悲~の名に於て
一 エリフ ラム ミム ラ。これ(可蘭の)此卷の表徵なり。爾曹の上帝より爾曹に下されしところは眞理なり、然るに人多くは之を信じ得ず。
二 眼に見ゆる支柱なくして蒼天を支ふるは~なり、さて其寶座に上りて太陽と太陰とをして其任務を爲さしむ、(天體は)孰も各定まれる軌道を奔る。~は(あらゆる)事物を命令す。~は明白に(その)表徵を示す、爾曹をして(最後の日に)其上帝に會すべきを自ら確め得せしむるために。
三 大地を開展げ山河を定むるは~なり、其處に各種の對の果實を生じ、夜を以て日につがしむ。此處に理解ある民にはある表徵あり。
四 地上には相接して(種の)地區あり、葡萄物椰子等或は同株より生じ或は異根より出づ。そはともに同じ水に養はるるもわれ其或ものを他のものよりも美味ならしむ。此處にも理解ある民には確に表徵あり。
五 爾曹は斯る驚くべき言を爲す(不信の復活の否拒)をしまざるか、吾曹塵土と化せるのち復新しき生物たるべき乎と。
六 此等はその上帝を信ぜざるなり。此等は頸に環を有す可し。此等は(地獄の)火の民たる可く、永久に其處に在る可し。
七 渠等は、其前に(~の報復の)往例多きに、なほ善よりは惡に奔らんことを爾に求む可し。爾曹の上帝は人の惡行に拘らず之に對して容なれど、其責罰も亦峻烈なり。
八 不信はいふ、上帝より表徵なければ(吾曹は信ずる能はず)と。爾はた說ヘ(として命ぜられし)なり、(奇蹟を行ふに非ず)、而して各の民には一指揮(の命ぜられたる)あり。
九 ~は各の婦人の(其胎內に)孕む所を知り、また胎內の(時期と所の數との)過不足を知る。あらゆる事物は~によりて一定の量に應じて規せらるればなり。
 ~は隱れたるをも顯はれたるをも知る。~は偉大にして至高なり。
一一 爾曹の中の其言を隱くすも、其言を公にするものも、夜暗に身をむるものも、白晝に公行するものも、(~の知る所にては)相等し。
一二 渠等の各には、其前に其後に互に相隨伴する天使ありて、~命によりてそを監す。洵に~は人に對する眷遇を變ぜざるべし、渠等(罪を犯して)自心(の中の性質)を變ずるまでは。若し~ある民に惡を欲せば、そを避くるの道なからむ、~の外には保護なからむ。
一三 爾曹に電光を見はし、爾曹をして畏(を懷か)しめ希望を生ぜしむるは~、幸ある雲を生ずるは~なり。
一四 雷霆は~の頌詞を顯はし、又天使をも表はす、~は雷霆を下して、渠等が~に關きて爭へる時、其欲するところを擊つ、~は偉大なる力を有すれば。
一五 當に禱らるべきは~なり。渠等が の外にる偶像は終に渠等に感應せざるべし、手を伸べて口に水をばんとするも其水をび得ざるが如し、不信禱は全く誤れり。
一六 天にあるものも地にあるものも、自進んでか强ひられてか、みな~を禮拜す、朝に夕に其影も亦。
一七 いへ、天と地との主は誰ぞやと。いへ、~と。いへ、さらば爾曹、助を與へ得ず害を防ぎ得ざるものを~の外に(爾曹の保護として)尊ぶべきかと。いへ、瞽者とを同じとすべきや、冥暗と光明とを均しとすべきや、~の外に其創造りし~伴となすべきやと。いへ、~は萬物の創造なり、そは唯一の捷利の~なりと。
一八 ~は天より雨水を下さしめ、小河を其量に應じて流れしめ、洪水をして泡を浮べしむ。渠等の火に熔く鑛物よりは(必要なる)裝飾さては皿を鑄出すとともにまた渣滓を生ず。斯くして~は眞理と妄とを分つ。渣滓は抛棄され、人閧ノ必要なるものは地上に殘る。斯くして~は譬喩を提出す。其上帝に從ふには最優れたる報償(與へらるべし)、されどそれに從はざるは、假令渠等は全世界に於ける何をも否更により多くを有すとも、償として(すべて)そを與へざるべからず。此等は恐るべきC算に致さるべし、其去處は地獄(たるべし)、不幸なる床(たるべし)。
一九 爾曹の上帝より爾曹に下る所の眞理なるを知る瞽者と同じとさるべきや。細心なるは唯よくそれを知らむ。
 ~の約を果たし、其約を破らざる
二一 ~の命ずる所に從ふ、其上帝を恐れ惡しきC算を恐る者、
二二 眞心を以て其上帝をスばさんとし、定時の禱を行ひ、わが與へし物資を密にも公然にも施與し、善を以て惡を攘ふ、此等の報償は天堂たるべし、
二三 渠等の入る所は永久の住處たる樂園なり、其父母、その妻妾、其子我、誰にても正しき行のは亦其處に入るべし、天使は各門より入りて斯くいはん、
二四 爾曹の上に平和あれ、爾曹は能く耐へたれば、如何に優れたる報賞よ此天堂はと。
二五 されど~の約を受けてのちに之を犯せる~の命ずる所に背ける、地上に惡を行ひし、渠等には呪下るべし、渠等には(地獄に於ける)憐れむべき棲所あるべし。
二六 ~はその欲する富なる食料を與へ、(其思ふところのものに)蓄ふ。(メッカの衆は)彿現世を樂しむ、されど現世は來に此すれば轉變の相に過ぎず。
二七 不信はいふ、其上帝より表徵下らざれば(吾曹は信ぜざるべし)と。答へよ、洵に~は其欲するを迷誤に導くべし、ひ改むるを己に導くべし、
二八 信ずる、其心の安らかに~の上に休むを。人の心は~の上に安らかに休まざるべきか。信じて而して正しきを行ふは幸なる復活のに與るべし。
二九 斯くてわれ爾を斯民に下せり、(他の國民に相似たる豫言を下せしが如く)、わが爾に默示せるところを爾渠等に復誦し得るために、假令渠等は慈悲~を信ぜずとも。いへ(渠等に)、渠はわが上帝なり、~の外に他の~なし、~にわれ信ョす、~にわれ歸らざるを得ずと。
 可蘭(の默示)によりて山岳は移さるべく大地は粉すべく死は語るべしとするも(そはuなし)。而も事物は全く~に在り。故に信~にして欲せばあらゆる人類を必ず導くべきを知らざらんや。
三一 驚くべき不幸は其所業の爲に不信を苦しめて已まざるべし、さては~約の到來するまでその傍を離れざるべし、~は其約を違へざれば。
三二 爾の前のの使徒は嘲り笑はれたり、而してわれ不信に永く幸ある生を樂しましめたり、されど後にわれ渠等を罰したり。如何に(峻烈に)ありしよ、(わが渠等に課せし)其責罰は。
三三 さらば其所業を見るために各人の心の上に照覽するは誰ぞや。渠等は~伴を設けたり。いへ、其名をげよ、爾曹、~の地上に於て知らざるところを~に告げ得るか、爾曹た空言を以て其名を列ね得るか。されど不信の虛妄の處理は渠等の爲に設けられ、渠等は正しき道より外れたり、~が迷誤に陷れしには嚮導なければなりと。
三四 渠等は現世にて責罰に苦しむべし、されど來世の責罰は更に悲しむべし、其處には~に逆ひて渠等を保護するものなければ。
三五 敬虔のに約されたる天堂の光景は(此の如し)。C流ありて流れ、食物はかに壕は凉し。是(~を)畏るゝ者の報償なり。されど不信の應報は(地獄の)火たるべし。
三六 わが聖典を與へしものは爾に默示せるところをスぶ。されど尙其一部を拒む或ものあり。いへ(渠等に)、洵にわれ唯~を禮拜せよと命ぜり、~に一人の伴をも許さず、~にわれ信ョし、~にわれ歸依すと。
三七 是が爲にわれ亞刺比亞の語に於て審判の則たる可蘭を下したり。爾之を知りながら尙渠等の私望に從は、洵に其處に~に逆ひて爾を保護し援助するなからむ。
三八 われ嘗て爾の前にの豫言を送れり、渠等に妻と子とを授けたり。何の豫言も表徵を以て至る(力)なし、~の免許によらざれば。それぞれの時代にはその(默示の)聖典あり。
三九 ~は其欲する所に應じて搆ク加除せざるを得ず。~とともに本典あり。
 われ爾をしてわが渠等を威する責罰の或部分を見せしめ、或はわれ爾をして(その渠等の 上に下る前に)死せしむるも、洵に爾には(唯)說法のみ(屬せり)、審判はわれに在り。
四一 渠等はわが(其)國土に臨みしを見ず(眞の信の征服によりて)その領境を狹めしを見ずや。~の判ずる時其審判を覆すものなし、~はC算に速なり。
四二 渠等の先は嘗て(其豫言に對して)種の企圖を爲せり、されど~はあらゆる妙計良策の主たり。~は各人の謀るところを知る。不信は必ず天堂の報償の誰の有たるかを知るべし。
四三 不信はいふべし、爾は~より遣されずと。應へよ、~はわれと爾との閧フ充分なり、渠は聖典を理解するなりと。
雷電品【アル・ラアド】(1-43節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
雷電品の名は一四の辭句による。載する所は主として麻訶末と孤列種との抗爭にして、ヘ敵が奇蹟を麻訶末に要求するに對しヘが辯解するものを多しとす。故に或は辯疏品と名づくべしといへるありき。
時代
四一の外は默伽默示と見ゆ。大約初半は何れの時代となすも可なれども、後半は麻訶末の默伽に說法せし末年のものと見ゆ。
內容
不信の可蘭排斥(一)。
~の證(二−四)。
不信と復活(五−七)。
不信は表徵を要む(八)。
~は全智なり(九−一二)。
雷電は~の禮拜の眞目的たるを示す(一三−一四)。
偶像信~祇を禱るの無用(一五)。
天地創造主の禮拜(一六−一七)。
不信の分離の譬諭(一八)。
眞の信とその報償(一九−二四)。
不信の最期(二五)。
富資は~眷の表徵に非ず(二六)。
偶像信の表徵の要求と~の眞信の指等(二七−二八)。
麻訶末は不信に下さる(二九)。
不信を信と化するに表徵は要なし(三)。
不信の罰(三一−三四)。
天堂(三五)。
猶太族中には麻訶末を信ずるあり、麻訶末は偶像信と結約せず(三六−三七)。
妻子は豫言を累せず、~は聖典の主たり(三八−三九)。
麻訶末はた說ヘ者たり(四)。
~判の必定(四一)。
ヘ敵の隱謀は~に知らる(四二)。
~は豫言の爲に證す(四三)。
雷電品【アル・ラアド】(1-43節)の註釋(文字の解釈)
三 對または兩種、甘酸K白大小をいふといヘり。
一三 亞剌比亞にては雷電を膏雨の前徵として喜ぶ。
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