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「コーラン經」 猶須布品 第十二 【アル・ユスフ】 默伽 |
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「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です |
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました |
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。 |
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します |
本文・解題・註釋の漢字・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました |
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猶須布品【アル・ユスフ】(1-111節)の本文 |
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大慈悲~の名に於て |
一 エリフ ラム ラ。 |
二 これ爾曹の解し易からんためにわが亞刺比亞語にて下せる明典の表徵なり。 |
三 此可蘭を爾曹に默示して爾曹が前に等閑に附せし最優れし往史を爾曹に語る。 |
四 ヨセフ其父に語るらく、噫、わが父、洵にわれ(夢に)十一の星辰と日月とを見き、われ其われを拜するを見きと。 |
五 ヤコブいへり、噫、わが兒よ、爾の夢を兄弟に勿告げそ、渠等爾にある謀を爲す可ければ、惡魔は明に人の敵なれば、 |
六 さて(爾の夢によれば)爾の上帝は爾を選び爾に隱れたる)語の解釋をヘふべし、爾の上に、而してヤコブの一家の上に、~眷を垂るべし、昔爾の祖先アブラハムとイサアクとの上にありしが如く。爾の上帝は智にして且賢なればと。 |
七 確にヨセフと其同胞と(の往史には好事者に對する~の表徵あり。 |
八 渠等は斯く相語れり、ヨセフと其弟とは多數の吾曹よりはわが父の愛を受く、わが父は確に悪しく判せり。 |
九 さればヨセフを殺さん、さらずば之をある地方に逐はん、さて爾曹の父の面は爾曹に向はん、さて爾曹は正しき者ならむと。 |
一〇 其一人はいへり、ヨセフを勿殺しそ、たゞ井底に投入れん、或旅人はそを救ひ去るべしと。 |
一一 渠等ヤコブにいへり、噫、わが父、何故に爾はヨセフを吾曹に託せざる、吾曹ヨセフに親切なるに。 |
一二 明日は吾曹とともに渠を出で遊ばしめよ、吾曹その保護者たるべしと。 |
一三 ヤコブ答へき、爾曹の渠を伴ひ去るはわが愁ふる所なり、爾曹等閑にして狼に渠を啖はれんことを恐ると。 |
一四 渠等いへり、吾曹斯く多勢なるに渠を狼に啖はしめんか洵に其罪に當らんと。 |
一五 渠等ヨセフを伴ひ出でゝ井底に陷るに決(し其企圖を實行)せる時われ渠に默示を下せり、(いへらく)爾のちに此企圖を渠等に告ぐることあるべし、而も渠等は(ヨセフたることを)認めざるべしと。 |
一六 渠等日暮に其父に來り泣きながらいへり、 |
一七 噫、わが父よ、吾曹は出で行きて競走し、ヨセフを物品と與に置きしに狼之を啖へり、吾曹眞を語るとも爾は吾曹を信ぜざるべしと。 |
一八 よりて佯りて血に汚せる其袗衣を示せり。かれ(ヤコブ)答へき、否とよ、たゞ爾曹自事を構へたり、されば堅忍を要す、爾曹の語る不幸(に就きてわれを助けん)には~の援助を求むべしと。 |
一九 ある旅客の一行あり、其一人をして水を求めしむ。瓶を井に下して、いへり、吉報かな、これ年少なりと。渠等は商品として(渠を賣るために)渠を隱せり、たゞ~は渠等の所業を知れり。 |
二〇 渠等は渠を廉價にて賣れり、重價を要せずして去れり。 |
二一 渠を購ひし埃及人は其妻にいへり、よく之を遇せよ、恐らく渠は吾曹の用たらん、あるは吾曹之を子として養ひ得んと。斯くてわれ地上にヨセフの地位を定め、われ之に(隱れたる)語の解釋をヘへたり、人多くは曉らざるも~は能く其目的を達し得れば。 |
二二 渠長ずるやわれ渠に智と識とを授けたり、斯くして正しき者に報ひ得れば。 |
二三 渠の在りし家の妻、渠にともに寢ねんことを求む。妻は戸を閉ぢて、此方へ來よといひしに、渠答へていへり、~の禁ずる所なり、洵にわが主はわれを此處に安處せしむ、忘恩は昌えざるなりと。 |
二四 されど妻は心裏に渠を(樂しまんと)欲したり、渠は渠女を(樂しまんと)欲せしならむ、其上帝の顯著なる諌止を見ざりせば。さればわれ渠より醜惡と濁穢とを除き去れり、渠はわが眞摯なる奴僕の一人なれば。 |
二五 渠等は(相踵ぎて)戸に奔れり、妻は渠の袗衣を後に殘さしめき。渠等戸前にて其主に會へり。妻はいへり、爾の家族に醜惡を遂げんとせし者をば如何に處すべき、囚禁か責罰かと。 |
二六 ヨセフはいへり、主婦はわれと陳せんと求めきと。家中の見し者また立證していへらく、渠の袗衣前より殘らば渠女の言は眞に渠の言は僞なり。 |
二七 されど渠の袗衣後より殘らば渠女は僞にて渠は眞を語る者なりと。 |
二八 (其夫)衣の後より裂けしを見ていへり、これ爾の奸策なり、實に爾の奸猾は大なり、 |
二九 噫、ヨセフ、之を心に勿掛けそ、而して爾、婦人、爾の罪を謝せよ、爾は罪人なればと。 |
三〇 ある婦人等は街上に公言せり、貴人の妻その奴僕に共枕を求めき、渠その戀を以て婦人の胸を焦せり、吾曹は婦人の誤過大なるを見ると。 |
三一 妻は狡獪なる行動を聞きて渠等を招き、爲に宴を設け、各人に小刀を授け、さて(ヨセフに)來れといふ。衆女渠を見るや大に之を賞め、自その手を傷けていへり、噫、~よ、これ人閧ノあらず、必ずや最尊き天使ならめと。 |
三二 妻いへり、爾曹のわれを辱しめしは此男のためなり、われ渠にともに寢ねんと求めしも渠常に拒みき。されど渠わが命ずるところを爲さざりしも必ず獄に投ぜらるべし、賤しき者たるべしと。 |
三三 ヨセフいへり、噫、上帝よ、囚獄は渠等のわれを誘はんとする罪惡よりも易し、されど爾われを渠等の誘惑より避けしめずば、われ渠等に誘はれん、愚者(の一人)となりつらんと。 |
三四 是に於て上帝は渠に聽きて衆女の誘惑を去れり、~は聞き且知ればなり。 |
三五 されど渠等は(無邪思の)表徵を見し後に(すら)、一時ヨセフを囚禁するを可しとしたりき。 |
三六 其時渠と與に獄に下りし(王の)臣二人あり。其一人はいへり、われ(夢に葡萄より)酒を絞るを見きと。他の一人はいへり、われ(夢に)頭上に麵麭を運びしに鳥之を啖ふを見き。吾曹の爲吾曹の夢を釋けよ、爾は善行の人と見ゆるにと。 |
三七 ヨセフ答へき、爾曹の食物毫も來らずされど其來らぬ前にわれ爾曹にそを釋くべし。こはわが上帝のわれにヘへし所(の一部)なり、何となればわれは~を信ぜざる來世を拒む民のヘを捨てゝ、 |
三八 わが祖先たるアブラハム、イサアク、ヤコブのヘを奉ぜり。ある者を~とするは吾曹の禁ぜらるゝ所なり。これ吾曹と人閧ニに對する~の慈惠なれども、人闡スく其恩を知らず。 |
三九 噫、わが同獄の二囚よ、種々雜多の~祇と唯一全能の眞~とは孰かよき。 |
四〇 ~の外に爾曹の禮拜するは~が何等の權威的證迹を下さゞる爾曹と爾曹の祖先とが名づけし所の名に外ならず、されど審判は~の外の何者をも禮拜する勿れと爾曹に命ずる~にのみ屬せり。これ正しきヘなり、されど人多くは之を知らず。 |
四一 噫わが同獄の囚人よ、洵に爾曹の一人は舊の如く此主のために酒を絞るべし、されど他の一人は礫殺され其頭が鳥に食はるべし、これ爾曹のわれに判定を請へる事實なりと。 |
四二 ヨセフは二人の中の遁るべきものにいへり、爾の主の前に於てわれを勿忘れそと。然るに惡魔は渠をして其主にヨセフを說くを忘れしめ、爲にヨセフは數年の闕沫に留まれり。 |
四三 埃及の王いへり、洵にわれ(夢に)七頭の肥えたる牝牛七頭の瘦せたる牝牛に食はれ、七本の高フ(穀物の)穗と枯れたる(七本の穗)とを見たり。噫、ゥ公、爾曹能く夢を釋かばわが爲に之を釋けよと。 |
四四 渠等は答へていへり、混亂せる夢なり、吾曹は斯る夢を釋く能はずと。 |
四五 此時嚮に救はれしヨセフの同囚は(時久しくして尙ヨセフを記憶せしかば)いへり、われ爾の爲にそを釋かんにわれをして行かしめよ(われにそを說明すべき人に)と。 |
四六(乃獄に赴きていはく、)噫、ヨセフ、爾は老實の人なり、われに(王が夢に見たる)七頭の疲牛の食へる七頭の肥牛と七本の高フ穗と枯れたる穗との繹法をヘへよ、われ(われを派せる者に)歸り告げて之を知らしめんにと。 |
四七 ヨセフ答へき、爾曹常の如く七年の闔子を下すべし、其收穫の中爾曹の食ふところを除きて穗のまゝに殘せ。 |
四八 然る後に悲しむべき七年の饑饉起り、その備へし所を殆んど盡くすに到らん。 |
四九 然る後に雨多き年來りて人は(酒と油とを)絞るべしと。 |
五〇 (此報を得るや)王は渠を徵し至れといへり。使者來りし時ヨセフいへり、爾の主に歸りて自手を傷けたる婦人の心如何を問へ、わが上帝は渠等の(わが爲に)謀るところを熟知すればと。 |
五一 (衆女王の前に集ひし時)王はいへり、爾曹不法の戀にヨセフを誘ひし時の企圖は如何にと。衆女答ふらく、~を頌めしめよ、吾曹は渠の惡しきを知らずと。貴人の妻はいへり、今や事實は明白となれり、われ共に寢ねんことを渠に求めき、渠は眞實を語る者(の一)なりと。 |
五二 (ヨセフ此事を聞きていへり)、主は(其)不在中にわが渠に不忠ならざりしを知り得ん、また~は虛妄者の企圖を成さゞるを知り得ん。 |
五三 而もわれ自(絶對に)正しと爲し得ず、わが上帝の仁慈を垂れずば人心は惡に陷ち易ければ。わが上帝は大度にして仁慈なりと。 |
五四 王いへり、渠を徴し至れ、われ帝に渠を用ひなんと。(ヨセフ王に至りしに)王之に語りて曰く、爾は今日吾曹と充分に理解し(吾曹の事を以て)信ョせらると。 |
五五 ヨセフ答へき、われに國の穀倉を司らしめよ、われ(其)熟練なる監吏たらんと。 |
五六 斯くしてわれヨセフを此土に居らせ其欲する所に住はせたり。われ欲するところに慈惠を垂れ、正しき者をして滅亡の酬を受けしめず、 |
五七 信じて~を畏るゝ者に來世の報償は更によきこと必せり。 |
五八 其時ヨセフの同胞は來りて渠に赴けり。渠は渠等を知れるも渠等は渠を知らざりき。 |
五九 渠は渠等に食物を給していへり、爾曹の父の子爾曹の兄弟をわれに致せ、爾曹わが充分に給與せるをわが客を好むを見ざるか。 |
六〇 されど爾曹若し渠を率ゐ來らずば爾曹われより毫も食穀を得ざるべくまたわが前に出づるを許さずと。 |
六一 渠等答へき、吾曹渠を其父に請ひ得て必(爾の求むるところを)行ふべしと。 |
六二 ヨセフ奴僕にいへり、(渠等が穀物の爲に拂へる)渠等の錢貨を其囊に入れよ、渠等其家に歸りしときそを見て恐らくまた(吾曹に)歸り來らんと。 |
六三 渠等其父に歸りし時いへり、噫吾曹の父よ、(わが兄弟ペンジァミンを伴ひ行かざれば)吾曹に穀を量るを許されず、故に吾曹と與に行かしめよ、吾曹をして穀を量らしめよ、吾曹必ず渠を守護すべしと。 |
六四 ヤコブ答へき、われ嘗て爾曹の兄弟(ヨセフ)を託せしよりもより多く渠を爾曹に託し得んや。されば~は至上の守護者なり、最上の慈悲者なりと。 |
六五 而して渠等その穀囊を開きしに錢貨を將て歸りしを見たり。渠等いへり、噫、父よ吾曹更に何をか望まんや。吾曹の錢貨は吾曹とともに歸れり、故に吾曹は歸りて家族の爲に穀物を得べし、吾曹は兄弟を守護すべし、(前度よりは)一頭の駱駝の負ふだけ多く得來る可し。こは少量なり。 |
六六 ヤコブいへり、われ決して渠を爾曹とともに遣らざるべし、爾曹われに嚴なる約を爲して、(我不可抗の故障によるの外は)必ず渠を伴ひて歸るべきを~かけて誓はざればと。よりて渠等嚴肅なる誓約をなせしとき渠は爾曹のいふ所を視るといへり。 |
六七 渠いへり、わがゥ子よ、同一の城門より(城中に)勿入りそ、たゞゥ門より入れ。此注意は~意に逆ひて爾曹に何等の利uを生ぜず、審判は唯~に屬すれば、~にわれ信ョすればと。 |
六八 渠等其父の命の如く(城中に)入りしに、果して~(の意)に逆ひて何等の利uを渠等に生ぜず、唯そは命ぜしヤコブの願意を滿足せしめしのみ、何となれば渠はわが授けし智を有せしも、人は多くそを解せざりしを以てなり。 |
六九 渠等ヨセフの前に至りし時、渠その弟(べンジァミン)を客とし迎へていへり、洵にわれは爾の兄弟なり。故に渠等が(吾曹に對して)爲せし所を勿怒りそと。 |
七〇 かくて渠、渠等に穀物を給せし時、盞を弟(ベンジァミン)の囊中に置きぬ。叫者其後より叫んでいへり、噫、隊商、爾曹は洵に盜賊なりと。 |
七一 渠等歸り近よりていへり、爾曹何をか失へる。 |
七二 渠等答へき、吾曹わが公の盞を失へり、そを出せる者には一頭の駱駝の穀を與ふべし、われ亦之を證せんと。 |
七三 渠等いへり、~かけて爾曹能く知らん、吾曹は此處にて惡事を爲さんとて來らず、また盜賊にもあらずと。 |
七四 渠等(埃及人)いへり、さらば何を以てか償はんとする、爾曹の言若し虛僞ならば。 |
七五 渠等(ヨセフの同胞)答へき、囊の中に其物ありし者は甘んじて奴僕たらん、かくして吾曹は(偸盜の罪を犯せる)不正を償はむと。 |
七六 斯くて渠、渠等の囊を採りてのち其弟の囊に及びて盞を引出せり。かくてわれヨセフに謀を授けたり。(埃及の)王法にては渠その弟を奴僕となす能はず、~(其弟の請によりてそを許すを)欲せずば。われわが欲する者に知識と榮譽との階級を授く、知識を授けられしすべての者の上に更に智ある者あり。 |
七七 ゥ兄弟いへり、若し渠(ベンジァミン)偸盜の罪あらば、其兄(ヨセフ)亦其罪ありきと。されどヨセフはこの事を心裏に隱くして渠等に示さず、自謂へらく、爾曹は吾曹二人よりは惡しゝ、~は爾曹のいふ所を熟く知れりと。 |
七八 渠等は(ヨセフに)いへり、尊き公よ、洵に此年少には年老ひし父あり、されば吾曹の一人を代にとれ、爾は善き人と思へばと。 |
七九 ヨセフ答へき、吾曹、吾曹が物品を得たる者より他の者をとらんは~の禁ずる所なり、そは確に不正たるべければと。 |
八〇 渠等(ベンジァミンを得るに)失望して退きて相議せり。其中の長老いへらく、爾曹、爾曹の父が~の名に於て嚴なる誓約を受けしを知らずや、爾曹嘗て如何に不信にヨセフを遇せしか。さればわれ決して埃及の地を離れざるべし、わが父(歸るを)許すまで、さては~の其心をわれに知らしむるまで、~は至上の判官なれば。 |
八一 爾曹父に歸りていへ、憶、父よ、洵に爾の子は盜を行へり、吾曹は自ら知るところの外證する能はず、吾曹は豫知せざることを防ぐ能はず。 |
八二 吾曹のありし城市に問へ、吾曹の與に來りし隊商に問へ、吾曹の言眞なるを知らんと。 |
八三 (渠等歸りて斯て其父に告げたるに)渠いへり、否とよ、爾曹こそ寧自かゝる事を爲すべけれ。されど堅忍を最重しとす。~はあらゆるものをわれに歸すべし、~は智にして賢なればと。 |
八四 渠は渠等より傍を顧みて、噫如何にわれヨセフの爲に嘆きしよといへり。其眼は嘆の爲に白くなれり、餘りに深く悲しみたれば。 |
八五 ゥ子はいへり、~かけて、爾は死の際に至るまでヨセフを忘れざるべし、いなとよ爾は實にその爲に亡びなんと。 |
八六 渠答ふらく、われ唯耐へ難き嘆とわが憂とを~に表はすのみ、されどわれ(默示によりて)~より爾曹の知らざるところを知る。 |
八七 噫わが子等、行け、 ヨセフと其弟とを搜せ、~の慈惠に失望なせそ、~の慈惠の望を失ふは唯不信の民のみなればと。 |
八八 (渠等埃及に歸りてヨセフの)前に出でしとき渠等はいへり、貴き公よ吾曹と吾曹の家族とは饑饉にあひ、少額の錢貨を以て來れり、さばれ充分の穀物を施與として吾曹に與へよ、~は施與者に報償すればと。 |
八九 (ヨセフ、渠等に)いへり、爾曹は如何にヨセフと其弟とを遇せしかを知るか、その後果を虞らずに。 |
九〇 渠等答へき、爾實にヨセフなりや。渠答へき、われはヨセフなり、こはわが弟なり。今や~は吾曹に惠を垂る。~を畏れて耐へ忍ぶ者なれば、~は正しき者の報償を亡ぼさゞればと。 |
九一 渠等いへり、~かけて、今や~は吾曹よりも爾曹を擇べり、吾曹は洵に罪人たりと。 |
九二 ヨセフ答へき、今や爾曹の上に咎を勿歸しそ。~は爾曹を赦す、~は最慈悲なれば。 |
九三 爾曹わがこの袗衣を持ち歸りてわが父の面に被けよ、渠の失明を復し得ん、さて後に爾曹の家族を擧げてわれに來れと。 |
九四 隊商の(埃及を出で、カナンに)出發せる時、その父は(傍人に向ひて)いへり、爾曹われを耄と爲せど、われはヨセフの香を聞くと。 |
九五 渠等、~かけて爾は老齡のために誤れりと答へき。 |
九六 されど(ヨセフの袗衣を將て)吉報の使者至り、衣を其面に被けし時、其明は復せり。 |
九七 (ヤコブ)いへり、われ爾曹の知らざるところを~より知れりと爾曹にいはざりしかと。 |
九八 渠等答ふらく、噫父よ、吾曹の爲に吾曹の罪を赦さんことを禱れ、吾曹實に罪人なればと。 |
九九 渠いへり、われ必ず爾曹の爲に赦をわが上帝に請ふべし、~は大度にして仁慈なればと。 |
一〇〇 (ヤコブ其一族と埃及に赴き)衆みなヨセフの前に出でし時、ヨセフ父母を迎へて、爾曹~の眷遇によりて無事に埃及に入れりといへり。 |
一〇一 渠父母に座を讓りしに、渠等(父母もともに)匍匐して渠に服從せり。渠いへり、噫、わが父、是(嘗てわが見たる)夢の解釋なり、今やわが上帝はそを實現せり。~は確にわれを惠みたりき、渠われを囚獄より出し、爾曹を漠地より此處に致したれば、惡魔のわれとわが同胞との閧割きしのち。わが上帝は其思ふところに仁慈なり、~は知り且賢なり。 |
一〇二 噫、上帝よ、爾はわれに王國(の一部)を授け、われに(隱れたる)詞の解釋をヘへたり。天地の創造主よ、爾は此世に於ける而して來世に於けるわが保護者たり。われをしてムスリムとして死せしめよ、正しき者と結ばしめよ。 |
一〇三 是わが爾に默示する祕史なり、(噫、麻訶末、)其(ヨセフに對する)企圖を行へるとき爾は(ヨセフの同胞とともに)在らざりしも。されど人多くは熱心に希ひながら信ずる能はず。 |
一〇四 爾(可蘭を公にするために)渠等に何等の報償をも求むべからず。そはあらゆる人類のヘ戒に外ならず。 |
一〇五 斯くて天と地とに於ける如何に多くの表徵渠等に下りしよ。 |
一〇六 而も渠等の多數は偶像禮拜の罪にも陷ちず、さりとて~をも信ぜず。 |
一〇七 渠等は~罰として或苦惱の其上に下るを信ぜず、また審判の日の不虞に至らんとも信ぜざるか。 |
一〇八 (いへ、メッカの衆に)。是わが道なり、われ明白なる論議を以て(爾曹を)~に招く、われとわれに從ふ者とともに。~を頌めよ、われは偶像信者にあらずと。 |
一〇九 われ爾の前に派せし豫言者はわが(意を)默示せる人、市城に住める人類の中より(わが選び)出せる人に外ならず。渠等は地上を旅行せざりしか、其前人の最後を見ざりしか。されど(~を)畏るゝ者には來世の居住こそ更によかるべけれ。されば渠等は理解せざるか。 |
一一〇 わが使徒は失望され、渠等より虛妄者と思はれし時、わが助下りてわれわが思ふところを救ふ。されどわが報復は惡人より去らざるべし。 |
一一一 洵に(ゥの豫言者と某氏との)往史の中には理會ある人の爲にヘ誨の例あり。(可蘭は)決して新創の寓言小說に非ず、前旣に默示せる聖典の確證にして、また(信仰と實行とに必要なる)萬事の細述なり、ヘを信ずる民の爲の示ヘにして慈惠なり。 |
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猶須布品【アル・ユスフ】(1-111節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説) |
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本品は大主ヘユスフ(ヨセフ)の傳を說く。一卷一審を説く點は可蘭中の他のゥ品と異なり。何故に斯る特殊の卷ありやに就きてはいふ、孤列種甞てある猶太先生の指嗾によりて麻訶末を困せんため、如何にヤコブの一家が埃及に下りしかヨセフ(ユスフ)の傳を說かんことを之に求めしにぞ麻訶末此一卷を爲せりとぞ。 |
時代 |
或は冒頭の三節を默コ那默示となす者あれども、全品の默伽に出でしは疑を容れず。一〇五−一一〇等に見ゆる孤列種に對する意氣は全卷に濔る調子と相待ちてヘジラの直前に出でしと推定さる。ムイアの麻訶末傳の附錄には此卷を第十一卷の前に置けり。 |
內容 |
豫言者にヨセフの往史を默示す(二−三)。 |
ヨセフの瑞夢(四−六)。 |
ヨセフの事は~の表徵(七)。 |
ヨゼフに對する兄弟の隱謀(八−一〇)。 |
ゥ子ヨセフと出遊せんと請ふ(一一−一二)。 |
ヤコブの躊躇(一三−一四)。 |
ヨセフの迫害(一五−一八)。 |
旅人ヨセフを救ふ(一九−二〇)。 |
埃及人の家に仕へしヨセフ(二一−二二)。 |
埃及人の妻ヨセフを誘ふ(二三−二四)。 |
妻の讒誣と夫の信用(二五−二八)。 |
衆女とヨセフ(三〇−三四)。 |
無辜にして獄に下りしヨセフ(三五)。 |
ヨセフ同獄者の爲に夢を釋く(三六−四一)。 |
同獄の一人ヨセフを王に勸むるを怠る(四二)。 |
埃及王の夢(四三−四四)。 |
ヨセフ王の夢を繹く(四五−四九)。 |
ヨセフの出獄(五〇)。 |
衆女誘惑の非を知る(五一)。 |
ヨセフの述懷(五二−五三)。 |
ヨセフ王の宰と爲る(五四−五七)。 |
ヨセフと同胞との邂逅(五八−六一)。 |
ヨセフ同胞の金をかへす(六二)。 |
ヤコブ、ベンジァミンを埃及に遺る(六三−六六)。 |
ゥ同胞埃及に至る(六七−六九)。 |
ヨセフ盜を以てベンジァミンを召す(七〇−七六)。 |
ヨセフ同胞の言を聽かず(七七−七九)。 |
ゥ子ヤコブに歸り訴ふ(八〇−八二)。 |
ヤコブ~に信ョす(八三)。 |
ヤコブ、ヨセフを搜らしむ(八四−八七)。 |
ヨセフ同胞にその己たるを告ぐ(八八−九〇)。 |
ヨセフ袗衣を送りて父の失明を癒さしむ(九一−九三)。 |
ヤコブ明を得ゥ子の爲に~に赦を禱る(九四−九九)。 |
ヤコブ一家ヨセフに埃及に歸す(一〇〇−一〇二)。 |
不信者は可蘭の表徵を信ぜず(一〇三−一〇七)。 |
默伽の偶像信者に眞信仰を勸む(一〇八)。 |
~の使を拒む不信者の處罰(一〇九−一一〇)。 |
可蘭は僞典にあらず前代ゥ豫言者の聖典と同じ(一一一)。 |
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猶須布品【アル・ユスフ】(1-111節)の註釋(文字の解釈) |
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一五 後にヨセフが埃及にて同胞に邂逅するの豫言なり。 |
三一 手を傷けしはヨセフの美貌に驚きて不思傷けしとなすと、その美を嘆美する婦人は自傷くる風ありしとなすとの兩說あり。 |
六五 「こば少量なり」の一句は何の意にや甚明ならず、或は以て駱駝の負ふ所はファラオより見れば少量なりと爲すと謂ひ、或はヤコブをしてその愛子と別れしむるには少量なりと爲すと謂ふ。また一說には旣に得たる穀は少量なれば再埃及に赴かんとすと爲す。 |
六七 一城門より入らずしてゥ門より入れといふは何の意にや。或註釋者は以て埃及人の嫌忌を避くとなせり。 |
七七 ヨセフ亦罪ありといふには、ヨセフはその父の妹に養はれて寵あり、父ヤコブ之を得んとせしも妹與へず、昔アブラハムに屬せし帶をとりてヨセフに纏ひ、そを失ひたりと陽言して百方搜索し、終に之をヨセフの身上に搜り得たりとなせしかば、ヨセフは終にその家法によりて父の妹に屬せりといふ譚あり、またヨセフは母の父の有せし金の偶像を偷みて之を毀ちたりといふ說もあり。 |
八〇 長者はリェベンなり。或は、年長の意にあらずして最分別ある者を指す、シメオンかユダ一なりと爲す說あり。 |
九四 ヨセフの香はその衣香なり、上に述べし袗衣の香遠く隔りてその父に聞ゆと爲すなり。 |
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