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「コーラン經」 布度品 第十一 【アル・フド】 默伽 |
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「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です |
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました |
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。 |
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します |
本文・解題・註釋の漢字・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました |
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布度品【アル・フド】(1-123節)の本文 |
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大慈悲~の名に於て |
一 ヱリフ ラム ラ。 |
二 此經典は辭句不壞にして意義明確に、賢明良智の~の默示なり。 |
三 此經典は、爾曹の(他の)~に仕へざることを、(洵にわれ~より爾曹に對する威嚇の宣明者にして吉兆の報使なれば、) |
四 爾曹の其上帝に赦を求めて之に歸向することを命ず。~は爾曹をして定時の豐澤なる生を樂しましめ、各人に(善業の)功コとして充分の應報を受けしむべし。されど爾曹若し背かば、洵にわれ爾曹の爲に大なる日の責罰を恐る。 |
五 ~に爾曹は歸る可し、~は全能なり。 |
六 渠等はその胸を摺みて(其企畫を)~に隱くさんとはせずや。渠等其衣を以て自掩ふとも、~は其隱くせるところとその顯せるところとを併せ知らずや。~は人心の奧祕を知ればなり。 |
七 ~その食を授けずば地上一生物なからむ。~は其退捿の場と安息の地とむ知る。事として其明典に錄されざるはなし。 |
八 天と地とを六日に創りしは~なり、(天地創造の前には)其寶座は水上に在りき。そは爾曹を試し爾曹の孰か最善く勞作するかを見んためなりき。爾曹、死後再び生ずといはゞ、不信者はいふべし、そは唯明白なる虛妄なりと。 |
九 洵にわれ一定の時期に渠等の責罰を遷延すれば、渠等必いはん、(其吾曹に下るを)妨ぐるものは何ぞと。渠等そを避くるによしなき日に至らば豈渠等に下らずや、渠等の嘲りしものは渠等を圍繞せずや。 |
一〇 洵にわれ人にわが慈惠を味はしめしのち之を奪ひ去らば、必ずや失望怨嗟せん。 |
一一 若しわれ人に困苦の後に眷遇を受けしめば、必ずや(わが苦みし)惡は去れりといひて、スび且樂しまん、 |
一二 能く忍びて正しきを行ひ、赦を受け報償を得るものを除きては。 |
一三 恐らく爾は爾曹に默示されし一部(を公表する)を畧し爾の心は狹まるべし、渠等のかくいふを恐れて、寶財下るか天使ともに下りて渠を證するにあらざれば(われ信ぜざるべし)と。洵に爾は(たゞ)說ヘ者たり、~は萬物の主宰たり。 |
一四 渠等はいふべきか、渠(可蘭を)僞作せりと。答へよ、さらば(爾曹の)僞作せる之に類せる十章を示せ、爾曹の言眞ならば、~の外に(爾曹を助け得る)何人にても祈れと。 |
一五 されど(爾曹が助を請へる)渠等にして爾曹に應ぜずば、知れ(此經典の)唯~の智力によりて默示されしを。~の外には~なりを。故に爾曹ムスリムたるべきか。 |
一六 現世をスびその榮華を喜ぶ者にはわれ其處に其所業の報償を授く可く、そを輕減せざるべし。 |
一七 斯る輩には來世に於ては(地獄の)火の外(何等の報償の期待せらるゝ)なし、其(現世の)事功は滅亡す可し、其勞作は空虛たるべし。 |
一八 故に渠を以て、其上帝の顯著なる宣明に從ひ~の證を受け、示ヘとして(默示され、人に對する)慈惠として(下されし)モーセの聖典を得しものと比すべきか。此徒は可蘭を信ず、されど異端と結びてそを信ぜざる者は(地獄の)火を以て嚇さる、(其威嚇は必ず實行されん)、故に是につきて疑を容るゝ勿れ、そは爾曹の上帝よりの眞理なればなり。然るに人多くは信ずる能はず。 |
一九 誰か~に關きて虛妄を懷ふ者より不正なる者あらんや。渠等は(復活の日に)上帝の前に置かるべし、證者はいふべし此徒は其上帝に對して虛妾を構へし者なりと。~の呪は不正者の上に下らざらんや、 |
二〇 (人を)~の道より惑はし、其正道を曲げんとし、來世を信ぜざる者の上に。 |
二一 此徒は地上に於て(責罰を免れんために~に對して)抗爭し得ず、此徒は~の外に何等の保護者をも有せず、その責罰は倍加せらるべし。渠等は聽く能はずまた視る能はざるべし。 |
二二 此徒は其心を失へるものなり、其虛妄に想像せる偶像は渠等を棄てたり。 |
二三 來世に於て其最悲慘なるべきは疑を容れず。 |
二四 されどヘを信じ善業を修し、其上帝の前に謙遜なる者は天堂に至るべし、(永久に)其處に在るべし。 |
二五 兩派の民は例へば盲にして聾なる者と見且聞く者との如し、之を同じと爲すべきや。故に爾曹思はざるを得じ。 |
二六 われ昔ノアを其民に下したり、(時に渠いへり)、洵にわれは爾曹に來れる公の說ヘ者なり、 |
二七 爾曹たゞ~を禮拜せよ、洵にわれ爾曹の爲に畏るべき日の責罰を畏ると。 |
二八 然るに信ぜざる民の首魁は答へき、われ爾を見るに吾曹に似たる人のみ、疎忽の判斷にて爾を信ぜる最卑賤の徒を除けば何人も爾に從ふを見ず、また爾の何等吾曹に優越せるを見ず、吾曹はたゞ爾を虛僞者たりと爲すと。 |
二九 ノアいへり、噫、わが民、われに告げよ、若しわれわが上帝の顯著なる宣明を受せ爾曹の知らざる~の慈惠を得るも、尙今までの如く爾曹われを排斥するか。 |
三〇 噫、わが民、われ(わが說ヘの爲に)爾曹に富を求めず、わが報償はたゞ~に在り。われ信ぜる者を逐はざるべし、洵に渠等は(復活に於て)其上帝と會ふべし、されどわれ爾曹の無智の人たるを見る。 |
三一 噫わが民、われ若し渠等を逐はゞ誰か~に對してわれを助くべき。されば爾曹思はざるか。 |
三二 われ爾曹に~の財寶わが力に在りとはいはじ、またわれ(~の)祕密を知れりとも(いはじ)、さては洵にわれは天使なりともいはじ、また爾曹の目して賤しむべしとなす者に~は決して善を授けざるべしともいはじ、(~は最よく人の心中を知れば)、さる時はわれ明に不正者(の一人)たるべければと。 |
三三 渠等答へき、噫、ノア、爾旣に吾曹と爭へり、吾曹との爭端を繁くせり、爾の言果して眞ならば、爾が以て吾曹を威嚇する其賞罰を今吾曹に致せと。 |
三四 ノアいへり、洵に~そを欲せば~獨り能く之を致さん、爾曹(そを免れんとするも)~に向ひて爭ひ得ず。 |
三五 ~にして爾曹を迷誤に導かんと欲せば、われ爾曹に正しく謀らんと力むともuなからん。渠はわが上帝なり渠に爾曹は歸すべしと。 |
三六 渠等いはんか、渠そを僞作せりと。答へき、若しわれ虛僞を設けなばわれに罪あらしめよ、されどわれ爾曹の罪する所を負はずと。 |
三七 ノアに默示あり(ていはく)、洵に爾曹の民は旣に信ぜる者の外一も信ぜざらむ、故に渠等の所業に就きて勿嘆きそ。 |
三八 されどわが(爾に)默示(せる形と大さと)に從ひてわが眼前にて方舟を造れ、不正を行へる者の爲にわれに勿請ひそ、渠等は溺るべき(運命)なればと。 |
三九 渠方舟を造れり、其民そを過る度にそれを嗤へり、(されど)渠いへり、(今)爾曹われを嘲るも、やがてわれ爾曹を笑はむ、 |
四〇 爾曹確に恥辱を以て渠を掩ふ責罰の誰に下るかむ知るべし、永劫の責罰の誰に歸せんかを知るべしと。(斯くして渠等は)わが命の實施され爐水の沸騰するに及べり。われ(ノアに)いへり、(動物)各種一對を方舟に運べ、(破滅の天命嚮に下れる者を除きて)爾の家族と信ずる者とを方舟に載せよと。されど少數の外は渠を信せざりき。 |
四一 ノアいへり、さらば開帆せよ~の名に於て、其前進し其靜止せる閧ノ、わが上帝は大度にして仁慈なればと。 |
四二 方舟は山の如き波濤の閧ノ浮び漂へり、ノアは別れし其子に向ひ、ともに行けわが兒、不信者と勿止まりそといへり。 |
四三 渠答へて、われは水の浸さゞる山上に上るべしといへば、ノアは、今日こそ~の慈惠あるべき者の外は其命を免るゝ能はずといへり。波浪は兩者の閧過ぎたり、渠は溺れたり。 |
四四 いへらく、噫、大地よ、爾の水を收めよ、噫、蒼天よ、爾の雨を止めよと。(忽然として)水は治まりて命は行はれぬ、(方舟は)アル・ジュヂの顚に止まれり、不敬の民を去れといはる。 |
四五 ノアその主に禱りていへり、噫、主よ、洵にわが兒はわが家族なり、爾の約は眞なり、爾は裁斷を行ふ最正しきものなればと。 |
四六 ~答へき、噫、ノア、洵に渠は爾の家族に非ず、(渠の爲にする爾の)この禱は正しき業にあらず、故に爾の知らざることに就きてわれに勿請ひそ、われ爾が無智の一たらざらんを戒しむと。 |
四七 (ノア)いはく、噫、上帝、われ爾に求めしはわが知らざる事の爲にあらず、爾われを赦して慈惠を垂れずばわれは亡はるゝ者(の一人)たるべしと。 |
四八 斯くいはれき、噫、ノア、(方舟より)降れ、われらよりは和平、爾と爾と與にありしものの上には祝を以て、されど其他の者にはわれ(現世の)享樂を得せしめしのち(來世の)責罰を課すべしと。 |
四九 是われ爾に默示する祕史なり。爾は之を知らず爾の民もまた從來之を知らず。故に忍び耐へよ、昌榮は敬虔に伴ふべければ。 |
五〇 而してアド(族)には(われ)其同胞フドを(送れり)。渠いへり、噫、わが民、~を禮拜せよ、爾曹~の外に~を有たねば、爾曹は(自偶像と勸解者とを立てゝ)たゞ虛僞を懷く。 |
五一 噫わが民、われ爾曹に(わが說法の爲に)何等の報償を求めず、わが報償は唯われを創りし~に(期す)。故に爾曹理會せずや。 |
五二 噫わが民、爾曹の上帝に禱れ、而して渠に歸れ。~は爾曹の上に豐に天雨を下し力を與ふ。故に他を向きて惡を爲す勿れと。 |
五三 渠等答へき、噫、フド、爾(その言ふところに就きて)毫も證を示さず、故に吾曹は爾の言のために吾曹の~祇を捨てざるべく、また爾を信ぜざるべし。 |
五四 吾曹の~祇の或ものは惡を以て爾を責めたりとの外、吾曹は何ごとをも語る能はずと。渠答ふらく、洵にわれ立證を~に禱る、爾曹も亦わが~の外に~を立てざるを立證すべし。 |
五五 されば爾曹總べてわれに對し企圖を爲せ、勿躊躇ひそ、 |
五六 われはわが主にしてまた爾曹の主たる~に信ョすれば。~の其額髮を握らざる動物なし。洵にわが上帝は正しき道に先立つ。 |
五七 されど爾曹若し背かば、われ旣に爾曹に致せるものを宣明せり、わが上帝は他の民を以て爾曹に代へん、而して爾曹終に渠を害ひ得ざるべし、わが上帝は萬物の守護者なればと。 |
五八 斯くてわが宣言の實行さゝるや、われフドとわが慈惠によりて渠を信ぜるものとを救へり、われ渠等を峻罰より救へり。 |
五九 かくしてアド(族)は故意に其上帝の表徵を拒めり、其使者に從はざりき、種々の惡しき者の命に從へり。 |
六〇 されば渠等は現世にては呪はれ復活の日にも亦(呪はれき)。アドは其上帝を信ぜずと爲さずや。フドの民アドを去れといはれざりしか。 |
六一 而してタームド(族)には(われ)其同胞サリーを(送れり)。渠は(渠等に)いへり、噫、わが民、~を禮拜せよ、爾曹~の外に~を有せず。土地より爾曹を創り出し其處に爾曹に住處を與へしは~なり。故に~に赦を請へ、而して~に向へ、わが上帝は近く且應じ易ければと。 |
六二 渠等答へき、噫、サリー、爾は今に至るまで吾曹の中の吾曹の希望を繫けし一人なりき、爾は吾曹の祖先の禮拜せしところを禮拜するを吾曹に禁ずるや。されど吾曹は爾が吾曹を招かんとする其ヘに關きて疑ふものなりと。 |
六三 サリーいへり。噫、わが民、われに語れ、若しわれ上帝より顯著なる宣明を受けその慈惠を蒙れるに、われそれに背かば誰か~(の報復)に對してわれを保護すべき。爾曹は破滅より外をわれに加へざるべし。 |
六四 (またいへり)、噫わが民、~の此牝駱駝は爾曹への表徵なり、そを自由に地上に育せしめて害を加ふる勿れ、速なる~罰の下らざるためにと。 |
六五 然るに渠等はそを殺せしかば、サリーはいへり、三日の闔「曹の住家に樂め、(のち爾曹は滅亡せん)、これ避け難き宿命なりと。 |
六六 わが命の實施さるる時、われサリーと渠を信ぜしものとに慈恩を加へ其日の滅亡より救ひたり、爾曹の上帝は强く全能なれば。 |
六七 されど恐ろしき(天の)響音は不正を行ひし者を襲ひ、翌朝渠等はその家に死してれるを見き、 |
六八 渠等初より其處に存在せざりしが如く。タームドは其上帝に不信を爲さゞりしか。タームドは遠く投げ去られざりしか。 |
六九 わが使者はまた嘗て吉報をアブラハムに齎らし至れり。渠等は平和(爾の上にあれ)といひしに、渠(而して爾曹に)平和と應へき。渠猶豫せず燒きたる犢を持來れり。 |
七〇 然るに渠等肉に手を觸れざれば、渠悦ばず且畏怖を懷けり。渠等いへり勿畏れそ、吾曹はロトの民に來れるなればと。 |
七一 時に其妻(サラー)傍に立ちて笑へり、われ之にイサアクを、イサアクの後ヤコブを約せり。 |
七二 妻いへり、噫、妾老ひ夫亦老ひしに子を產む可きか、洵にこれ異事なりと。 |
七三 天使答へき、爾は~(の命の後果)を異とするにや、~の仁慈と祝とは爾の上爾の家族の上にあらん、洵に~は頌むべく榮あればと。 |
七四 アブラハムの畏怖去り(イサアク生誕の)吉報達するや、渠はロトの民につきてわれと爭へりアブラハムは惻隱憐愛熱誠なれば。 |
七五 (天使は渠にいへり)、噫アブラハム、そを休めよ、(其宣告を實行すべき)~の命今や來り渠等の上に避け難き責罰の將に下らんとすればと。 |
七六 わが使者ロトに至るや渠は渠等の爲に悲しみしも、其腕は拘束されたり、これ憂の日なりといへり。其民は渠に突進せり。 |
七七 渠等は嚮に惡業に馴れたれば。ロト(渠等に)いへり、噫、わが民、此處にわがゥ女あり、爾曹の爲には更に適せり、故に~を畏れよ、わが客を侵してわれを勿耻しめそ、爾曹の中に細心の一人なきやと。 |
七八 渠等は、吾曹の爾のゥ女に需むる所なきは爾知らん、吾曹の得んとする所は爾能く知らんといへり。 |
七九 渠いへり、われに爾曹を防ぐ力あらば、さては强力なる後援あらば(必ず之を用ひん)と。 |
八〇 ゥ天使いへらく、噫、ロト、洵に吾曹は爾の上帝の使者なり、渠等決して爾を侵さじ、故に夜に乘じて家族と與に遁れよ、勿顧みそ、唯爾の妻には渠等に起るところと同じこと起らむ、洵に(渠等の責罰の)宿運は晨朝に定まらん、晨は近からずやと。 |
八一 わが命至るや、われ其城市を顚覆せり、其上に燒け土を投げたり、 |
八二 そは爾曹の~の表徵なり、是等は不正を行ふ者より遠からず。 |
八三 而してマヂアンには其同胞シュアイブを(送れり)。渠いへり、噫、わが民、~を禮拜せよ、爾曹~の外に~を有たず、量と重とを勿減しそ。洵にわれ爾曹を幸の境遇に(あるべく)見る、されどわれ爾曹の爲に(不敬の徒に)下る可き日の責罰を畏る。 |
八四 噫、わが民、充分の量と正しき重とを與へよ、人に其物質の何分をも勿減しそ、地に於て醜を行ひ不正を爲しそ。(他人に正義を行ひしのち) |
八五 ~の(施與として爾曹に殘る可き)殘剩は(欺瞞によりて得し所よりは)爾曹によりよかるべし、爾曹眞の信者ならば。 |
八六 われ爾曹の爲には保護者たらじと。 |
八七 渠等答へき、噫、シュアイブ、爾の祈禱は、吾曹をして吾曹の祖父の禮拜せし~祇を捨てしめんとか、吾曹の富資を奪はんとにか。爾獨り實に賢者の如く人を導くに耐ふるが如く見ゆと。 |
八八 渠いへり、噫、わが民、われに語れ、若しわれわが上帝より顯著なる宣明を受け、優越せる物資を得、わが爾曹に禁ずる所を爾曹に許さずば、われ力の能ふ限り(爾曹の)革新を求むる外何をか求むべき。わが支持は唯~にあり、~にわれ信ョし~にわれ歸依す。 |
八九 噫、わが民、われに對する(爾曹の)反抗をして爾曹に報復を招かしむる勿れ、嘗てノアの民にフドの民に、サリーの民に起りしが如く。またロトの民をして爾曹と相距る遠からざらしめそ。 |
九〇 故に爾曹の上帝に赦を請へ、渠に歸せよ、爾曹の上帝は仁慈親愛なれば。 |
九一 渠等答へき、噫、シュアイブ、吾曹は爾の語る所の多くを理解せず、吾曹は爾を以て吾曹の中の有力者と認めず、若しそは爾の一家の爲ならば吾爾は誓って爾を石殺す可く、爾は決して吾曹に勝つ能はじと。 |
九二 シュアイブいへり、噫、わが民、爾曹の說にてはわが一家は~よりも尊きか、爾曹は~を等閑に後に捨つるか。洵にわが上帝は爾曹の爲す所を熟知す。 |
九三 噫、わが民、爾曹は自己の事情に應じて爲せ、われ亦必ず(わが義務に從ひて)力めん。(而して)爾曹は耻辱を以て掩ふ責罰の誰に下るべきか、はた誰か虛妄者なるかを知らん。 |
九四 されば待て(その事を)、われ亦爾曹と與に(そを)待たんと。 |
九五 斯くしてわが宣命の(實行に)至りし時、われシュアイブと渠を信ぜし者とをわが慈惠によりて救へり、恐ろしき(天の)響音は不正を行ひし者を襲へり、翌朝渠等が其家に死してれるを見き、 |
九六 渠等初より其處に存在せざりしが如く。マヂアンは(地上より)消滅せざりしか、タームドの消滅せしが如く。 |
九七 われ嘗てモーセにわが表徵と顯著なる力とを授けてファラオと其ゥ公とに送れり、 |
九八 然るに渠等はファラオの命に從へり、ファラオは(渠等を)正しく導かざるに。 |
九九 ファラオは復活の日に其民に先つべし、渠等を(地獄の)火に導くべし、渠等の旅程は不幸なるべし。 |
一〇〇 渠等は此世にて呪はれ、復活の日にそれに與へらるゝ報償は不幸たるべし。 |
一〇一 以上はわが爾曹に復誦するゥ城市の往史の一部なり。渠等は立てるありまた苅り倒されしあり。 |
一〇二 われ不公正を以て渠等を待たざるも渠等自其心を待つに不正を以てせり、渠等が~の外に立てし~祇は上帝の宣明の(實行渠等に)下る時毫も渠等を利せず、唯渠等に損耗を招くの外なし。 |
一〇三 斯くして不正なる城市を罰せる時わが上帝の責罰は加へられたり、其責罰は悲痛に峻烈なり。 |
一〇四 洵に此處に最後の日の責罰を畏るゝ者に向つての表徵あり、そは(あらゆる)人類の集めらるゝ日、證據の齎らさるゝ日なり、 |
一〇五 われそを遲延せず、唯定まれる時なり。 |
一〇六 其日至らば、何人も~の允許による外は(自己の爲に赦を求め、他人の爲に救解を試みんと)語る能はず。渠等の中には悲しむあり、スぶあり。 |
一〇七 悲しむは(地獄の)火に役ぜらるゝ者なり、 |
一〇八 其處に渠等は號泣し哀愁すべし、其處に渠等は天地と與に永久に殘る可し、上帝が(其宣命を赦さんと)欲する者の外は。爾曹の上帝は其欲する所を遂ぐればなり。 |
一〇九 されどスぶ者は天堂に入るべし、其處に渠等は天地と與と永久に留まるべし、上帝が(其祝を加へんと)欲する者の外は其幸は中斷せざるべし。 |
一一〇 されば斯る人々の禮拜する所に關きて勿疑ひそ、渠等は昔其祖先が禮拜せし所の者の外は禮拜せず、われ渠等に其充分なる配分を授けて毫も減ずる所なけん。 |
一一− われ嘗てモーセに法典を授け、それに就きて(其民の中に)爭議起れり。前の宣命(此世を通じて渠等とともにあるべく)爾曹の上帝でずば、そは必ず渠等の閧ノ決したりけむ。洵に爾曹の民は(また可蘭に就きて)猜み且疑へり。 |
一一二 然れども渠等の各に爾曹の上帝は其所業の報償を授く可し、~は渠等の爲す所を熟知すれば。 |
一一三 故に爾曹、命ぜられし所に固執せよ、而して爾曹とともに改宗せし者も(亦固執せよ)、勿侵しそ、~は爾曹の爲すところを熟知すれば。 |
一一四 不正を行ひし者に勿ョりそ、(地獄の)火の爾曹に觸れんに。爾曹~の外に保護者なく、爾曹(~に逆ひて)決して助けられざれば。 |
一一五 晨に夕に正しく祷れ、而して夜の前半に、善業を以て惡業を攘ふために。これ思慮ある者に對するヘ戒なり、 |
一一六 故に能く忍べ。~は正しきものゝ報償を亡ぼさゞれば。 |
一一七 爾曹の前に理解ありコ性ありて地上に於て惡を爲すを禁ぜし者ありて、其少數をわれ救ひしが不正の徒は(現世の)享樂に耽りて惡を行ひき。 |
一一八 爾曹の上帝は正なくもゥ城市を破滅するものに非ず、其住民が正しき時に。 |
一一九 爾曹の上帝にして欲せば(あらゆる)人類を一のヘたらしむべし、されど渠等がその閧ノ相爭ふこと已まざるべし、爾曹の上帝が仁慈を垂れずば。これが爲に~は渠等を創造せり、爾曹の上帝が洵にわれ妖と人とを以て地獄を充滿さんといひし時其言を完うすべきが故に。 |
一二〇 われわがゥ使徒の往史を悉く爾に語るは、われ由て以て爾の心を確めんためなり。此處に眞理は爾に來る、眞の信者のヘ戒として警告として。 |
一二一 信ぜざる者にいへ、爾曹の事情報に應じて爲せ、われ亦必ず(われ義務に從ひて)力めん、 |
一二二 而して(後果を)待て、われ亦(そを)待つべければと。 |
一二三 天に於ても地に於ても祕せらるゝ所は~に知られあらゆる事物は~に歸す。されば~を禮拜せよ、爾曹の信を~に措け、爾曹の上帝は爾曹の所業を看過せざれば。 |
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布度品【アル・フド】(1-123節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説) |
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本品中にはノア、フド、サリー、アブラハムとロト、シュアイブ、モーセ等前賢古使徒の事を載す。恐らくその一たるフドの事によりて斯く名つけしならむ。蓋し孤列種が麻訶末を僞瞞者となし可蘭を僞典となすに對し、麻訶末以前の若干の豫言者使徒の徃例古史を擧げて鑑戒となせるなり。 |
時代 |
默示說法の時代は甚明ならず、たゞ默伽に說法せる麻訶末が孤列種の激烈なる反對排斥に遭遇せる時代と推定する而己。 |
內容 |
可蘭は~の默示、麻詞末は警戒者にして且說法者(二−五)。 |
異ヘ徒はその罪を隱くす能はず(六)。 |
復活を虛妄となす異端の賞罰(七−九)。 |
信者不信者の賞罰(一〇−一二)。 |
天の表徵を要求する不信者(一三)。 |
可蘭を僞典となすに對する辯(一四−一五)。 |
現世をのみスぶ者の不幸(一六ー一七)。 |
モーセと猶太族とは可蘭の眞を證す(一八)。 |
豫言者を讒謗する者の呪(一九−二三)。 |
信者の祝(二四)。 |
信者不信者の譬諭(二五)。 |
ノアの事蹟(二六−四九)。 |
フドの事蹟(五〇−六〇)。 |
サリーの事蹟(六一−六八)。 |
アブラハムとロトとの事蹟(六九−八二)。 |
シュアイブの事蹟(八三−九六)。 |
モーセの事蹟(九七−一〇〇)。 |
以上ゥ史を鑑戒とす(一〇一−一〇五)。 |
審判に於ける正否の事蹟(一〇六−一〇九)。 |
麻訶末は孤列種のヘを疑はず(一一〇)。 |
孤列種は可蘭を疑ふ(一一一)。 |
~はその惡行を罰す(一一二)。 |
堅忍固執の勸(一一二−一一三)。 |
祈禱の勸(一一五−一一六)。 |
不信者のゥ城市を滅却せる~は正し(一一七−一一八)。 |
不信者の責罰の宿運(一一九)。 |
ゥ豫言者の全史を麻訶末に語る(一二〇)。 |
不信者に對する威嚇(一二一−一二二)。 |
信~の勸(一二三)。 |
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布度品【アル・フド】(1-123節)の註釋(文字の解釈) |
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四〇 洪水の原因となりし此爐は、或はクファに、或は印度に、或はメソポタミアのアイン•ワルダAin Wardaにありとし、また或は往昔イヴが始めてその麵麭を燒きし爐なりといふ。基督ヘ側の傅說にも洪水は熱水なりしといヘり。波斯の聖師はザラ•クファZala Kufaといふ老媪の爐より洪水起るといへば、麻訶末傳は之より出でしにやとの說あり。また別說に、此に爐と譯せる原語タンヌルtannurは地面または湧泉の地さては滙水の場といふ意義あれば、此一節は必ずしも爐水の沸騰を指さず地水の湧濆ならんとする者あり。 |
一對といふ語はまた兩對と解せらる。則、牝牡雌雄各一對となすなり。創世記にも「ゥの潔き獸を牝牡七ツ宛潔からぬ獸も牝牡ニツ宛去々とあり。破滅の天命下れるものとはノアの不信の兒カナアンCanaan則ヤムYamのことなり。ヤムは或はノアの孫にて、ハムHamの子なりといひ、或はノアの妻の先夫の子なりといひ、或は唯その家に子とし養はれしものなりとす。またヤムの外にノアの一妻ワイラWailaも不信者にして破滅の命の下れる一人なりといふ。ノアを信ぜる少數者とはその一妻その三子シェム、ハム、ヤペテ其妻及び他の七十二人。 |
四四 アル・チュヂAl Judiはアルメニア、 メソポタミアの間なるクルド族の山地、則、力ルヅKardu山にてガルヅGarduといひ、希臘人はゴルヂエイGurdgaeiといふ。亞剌伯族訛りてジヨルヂJordiといふなり。 |
四六 「渠は爾の家族に非ず」とはその不敬不信の爲にいふ乎。 |
五六 「額髮を握る」は全權を握り死命を制するの義。稍牛耳を執るといふ語法に類する乎。 |
六四 牝駱駝のことは第七品の七九を見よ。 |
七六 ロトの民は男色を愛せるに、~使はみな美少年の風姿たりし故、 ロト憂へ畏れしなり。 |
八一 所謂殷鑑不遠の意にて、往例を以て不正者を戒しむるなり、特にメッカの異端に對する威嚇なり。 |
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Office Murakami |