「コーラン經」 猶奈須品 第十 【アル・ユナス】 默伽
「コーラン經」は日本初のコーラン全文翻訳本です
「コーラン經」は<譯者・坂本健一>{上下二巻}として世界聖典全集刊行會から(大正九年)発行されました
「コーラン經」の構成は凡例、目次、114品(章)の本文、附録として各品(章)の解題と註釋、イスラム教とコーランについての詳細な後書きから成っています。
ここでは114品(章)別に本文と解題と註釋をまとめて紹介します
本文・解題・註釋の漢字・送り仮名は大正時代そのままの形を復刻できるように努めました
猶奈須品【アル・ユナス】(1-109節)の本文です
大慈悲~の名に於て
一 エリフ ラム ラ。これ聖典の表記なり。
二 われ渠等の中の一人に向ひ、信ぜざるを威せよ信ずるに吉報を傳へその眞摯のコは上帝と利害を有すと(いひて、わが意を)默示せんは、メッカの民には一異事なりや。不信はいふ、これ顯なる妖術なりと。
三 洵に爾の上帝は天と地とを六日に創りし~なり、而して萬物の支配を爲すべく(其)寶座に昇りし~なり。其處に一人の代訴勸解なし、唯~の許可あるのみ。これ~なり爾曹の上帝なり、故に之に禮拜せよ。爾曹心ぜずや。
四 ~に爾曹は總べて歸すべし~の約束に從ひて、~は一生物を生じ復之を收め得れば。信ずる正しきを行ふを公平に報償すれば。然れども不信は熱水を飮む可く悲しき責罰を受けざる可からず、其不信仰の故を以て。
五 晝は太陽を輝かし夜は太陰を照らし、爾曹として年の數を知り(時の)計算を爲し得るため、其地位を定めしは~なり。~は眞理を以て是を創造せり。~は理會する民に(其)表徵を明す。
六 加之ならず、晝夜の交替と~が天地の閧ノ創りしあらゆる物とに於て(~を)畏る人に確なる表徵あり。
七 洵に最後の日にわれに會ふを希はず、現世を以て滿足し之に樂み安んじわが表徵を等閑にするよ、
八 其棲所は(地獄の)火たるべし、渠等それに應ずれば。
九 然れども信じて正しきを行ふをば上帝は其信仰の故に導くべし、渠等は享樂の園中にC流を有すべし。
 渠等其處に禱るべし、爾を頌めしめよ噫~よと、其挨拶は平和たるべし、
一一 基禱辭の末尾は~を頌むべし萬物の主をといふべし。
一二 若し~、人に善に急ぐが如く惡に急がしめば、洵に渠等の終末は決定さる。われ(復活の日に)われに會するを希はざるをして其迷誤の閧ノ彷徨せしめん。
一三 凶事あれば人はわがその側に坐し或は立たんことを禱る、而もわれ渠を困より救へば、渠はその逢ひし凶事に對して(己を保護するため)われに禱らざりしが如く(從前の生を)續く。斯くして侵犯の行爲は自己の爲に準備せり。
一四 われ嘗て爾曹の前に(ありし)幾代を絶滅したり、(噫、メッカの衆よ)、渠等が惡事を行ひ、わが使徒顯なる奇蹟を以てそれに臨めるも渠等信せざりし時。斯くてわれ凶惡の民に酬ひたり。
一五 其後われ爾曹をして地上に渠等に代らしめしは、われ如何に爾曹の行動するかを見んがためなり。.
一六 わが顯なる表徵の渠等に復誦せらるや、(復活の日に)われに會ふむ希はざる渠等はいふ、別に一種の可蘭を下せ、さなくば其中を變へよと。答へよ、われはわが思ふまにそを變ふること能はず、われ唯われに默示されしところに從ふ、洵にわれは若しわが上帝に不從順ならば大なる日の責罰を畏ると。
一七 いへ、若し~にして欲せば、われそを爾曹に誦せざるべしまたそを爾曹にヘへざるべし。われ(之を受くる)前に旣に(四十年間)爾曹の中に住みたり。さるに爾曹理會せざるかと。
一八 誰か、~に對して虛妄を構へ~の表徵を僞瞞となすものよりも不正なるぞ。確に惡人は昌えざるべし。
一九 渠等は~の外に渠等を害し能はずまた利し能はざるものを禮拜していふ、これ~とのわが勸解なりと。答へよ、爾曹天に於て地に於て~の知らざるところを~に告げんとするかと。~を頌めよ、渠等が(~と)配せる所のものよりも遙に高く。
 人類はもと唯一ヘ法を持せり。然るに渠等は異論分派を生ぜり。若し(其責罰を裁斷するため)爾曹の上帝より豫宣告なからんには、渠等の爭事は渠等の閧ノ決せらる可し。
二一 渠等はいふ、上帝より表徵下らざれば(吾曹は信ぜざるべし)と。答へよ、洵に隱されしものは唯~にのみ(知らる)。故に待て(~の意を)。われまた爾曹とともに待たん。
二二 凶事の渠等に起りしのち、われ惠を(メッカの)衆に垂れしに、見よ、渠等はわが表徵に逆ひて策略を用ふるむ。いへ(渠等に)、~は策を用ふる(爾曹よりも)速なりと。洵にわが使は爾曹が用ふる策を錄す。
二三 陸にに旅行するに當りて爾曹に便宜を與ふるは~なり。爾曹船に搭じ良風に乘じて快するを得。されど風起り波濤湧きて危に陷るや眞の宗ヘ心を生じて~に禱る、洵に爾この危を救はば吾曹は謝恩を怠らざるべしと(いひて)。
二四 然れども~渠等を救へば、見よ、渠等は地上に傲慢に行ひて正義なし。噫、人よ、洵に爾曹の其心に逆ひて行ふ暴は唯現世の快樂のためなり。其後爾曹はわれに歸しわれ爾曹に其爲せる所業を明にすべし。
二五 洵に現世は、例之ばわが天より下す雨水に似たり。それによりて人も食ひ畜類も食ふ地上の所生じ、大地は爲に衣を着け(種の植物を以て)飾らるに至る。其時人は之を左右し得と想へり。されど晝夜の別なくわが命下らば、恰も前日(果實の)澤なかりしが如くそを刈奪し得べし。われ斯くして(わが)表徵を思慮ある民に說明す。
二六 ~はその欲するを平和の棲所に招き正しき道に導く。
二七 行正しきは最優良なる報償と澤なる追加とをせ受く可く、黎Kと恥辱とはその面を掩はざるべし。これ天堂の住人なり。(永久に)其處に在るべし。
二八 然れども行惡しきは恰もそれに均しき惡報を受く可し、渠等は恥辱を以て掩はる可し(渠等には~に對して何等の保護なければ)、其面は夜の深Kを以て塗らるべし。これ地獄の火の住人なり。(永久に)其處に在る可し。
二九 (復活の)其日、われ渠等を會すべし、さてわれ偶像信にいふべし、爾曹席に就け、爾曹とその伴と。而してわれ渠等を互に分つべし。渠等の伴はいふべし(渠等に)、爾曹の禮拜せしは吾曹にあらず、
 ~は吾曹と爾曹との閧フ證人たり、吾曹は爾曹の吾曹を禮拜せしを意とせずと。
三一 其處に各人は其前に送られし所を經驗すべし、渠等は其眞の主たる~の前に致さるべし、渠等が徒に想像せし僞~はその前より消散すべし。
三二 いへ、誰か爾曹に天と地とより食物を供せしか。また誰か聽の力を授けしか。誰か死より生を起し生より死を致せしか。誰かあらゆる物を支配するかと。渠等必ず答ふべし、~と。いへ、さらば爾曹(~を)畏れざるかと。
三三 是爾曹の眞の主たる~なり。眞理の後に殘るものは迷誤に非ずして何ぞや。されば爾曹如何ぞ(眞理より)背き去るや。
三四 是惡を行ひしの上に立證する爾曹の上帝の言なり、洵に渠等は之を信ぜず。
三五 いへ、爾曹の伴に生物を創り然る後それを(己に)歸らしめしありやと。いへ、~は生物を創り然る後それを(己に)歸らしめき。さらば爾曹如何に(~の禮拜より)外に轉ずるやと。
三六 いへ、爾曹の伴に眞理に導きしありやと。いへ、~は眞理に導けりと。さらば眞理に導きしと、他に導かるにあらざれば自導き得ざると、孰か從ふべき價値ありや。さらば爾曹何をか惱み、如何にか判斷する。
三七 渠等の大部分は唯(不確の)浮說に從ふ、浮說は何等の眞理に達せず。洵に~は渠等の爲すところを知れり。
三八 この可蘭は~の外何人にも作られしにあらず。こは其前に默示せしところを確定するものなり、聖典の說明なり。毫もそれに就きて疑を存せず。萬物の上帝より下されしなり。
三九 麻訶末これを僞作せりと渠等いふか。答へよ、さらばそれに似たる一卷を持來れ、能ふ可くんば爾曹~の外の何人をも(その助に)請へ、爾曹の言果して眞ならばと。
 されど渠等は虛妄を以てそれを誹る、其知識を理會せずその解釋を得ずして。其狀宛も嘗て僞瞞を以て(其豫言を)誹謗せる前人に似たり。而も見よ、其不正の最期の如何なりしかを。
四一 其處にそれを信ずる渠等の一部あり、また信ぜざる渠等の一部あり。爾曹の上帝は醜行をよく知れり。
四二 渠等若し僞瞞を以て爾を誹らばいへ、われにわが業あり爾曹に爾曹の業あり。爾曹わが爲すところを去れ、われ爾曹の爲すところと離れむと。
四三 渠等の中には爾に耳を傾くるあり、されど爾は聾をして聽かしむるか、渠等の理會なきに。
四四 渠等の中には爾を見るあり、されど爾は盲者をしてせしむるか、渠等の見得ざるに。
四五 洵に~は何れよりするも人を不正に遇せざるべし、唯人は自己の心を不正に持するなり。
四六 一定の日に於て~は渠等を集め會し一日の一時をも遲延せしめず。渠等は相互に知るべし。~との會合を虛妄となすは滅ぶべし、正しく導かれず。
四七 われ爾曹をしてわが渠等を威する責罰の一部を見せしむるも、また爾曹をして(そを見る前に)死せしむるも、渠等はわれに歸すべし、~は渠等の所業の證たるべし。
四八 各の民に一使徒は送られたり。其使徒至るや、渠等の閧ノ公平を以て事を斷じ、渠等は不正を以て遇せられざりき。
四九 不信はいふ、この(來るべき)威は何時證せらるか、爾の言果して眞ならばと。
 答へよ、われ自利を得るにあらず、また害を避くるにあらず、たゞ~の欲するところによる。各の民には定まりし年時あり、故に其時期盡くるや渠等は一時も遲延する能はず、また(其責罰を)豫知する能はずと。
五一 いへ、われに告げよ、晝夜を別たず~の責罰爾曹に下らんに其何の部分か不敬は急ならんを願ふかを。
五二 其(爾曹に)下るや共時爾曹そを信ずるか。而も爾曹嚮に願ひし如くその急なる今(爾曹信ずるか)。
五三 其時惡人に向ひていはるべし、永久の責罰を味へ、爾曹が所業の報償より外を得べきかと。
五四 渠等はこの眞たるかを爾に問はんとすべし。答へよ、然り、わが上帝をかけて、そは確に眞なり、爾曹(そを遁る可く~の力を)弱むる能はじと。
五五 洵に惡を行ひし各人は地上に於て如何のものを有するともそは(最後の日には)贖償として與へらるべし。而も渠等は責罰を見たらんのち尙(その)悟をかくさんとす。事は公正を以て渠等の閧ノ決せらるべし、渠等は不正を以て遇せられず。
五六 天に於ける地に於けるあらゆる物は~に屬せずや。~の約は眞にあらずや。然るに渠等の大部分は之を知らず。
五七 ~は生を與へ死を與ふ。~に爾曹は總べて歸るなり。
五八 噫、人、今やヘ戒は爾曹の上帝より爾曹に來れり、爾曹の胸中に在る疑惑の治方、其の信の示導慈惠。
五九 いへ、~の大度とその仁慈とによりて、そを渠等に樂ましめよ、こは世界的富資を悉く蓄積せしよりも尊かるべし。
 いへ、われに告げよ、~が食物として爾曹に下せしもの中爾曹は或ものを適法となし或ものを不適法となすかを。いへ、~は爾曹に(斯る差別をなすを)許せしか。さては爾曹~に關きて虛妄を設くるかを。
六一 其~に關きて虛妄を設くるは復活の日に就きて何の說かある。洵に~は人閧ノ對する慈恩を體す、然るに渠等の大多數は之を感謝せず。
六二 爾曹、可蘭(の何れの章句)を誦じながら何事をも爲す可らず、またある勞作に從ふべからず、われ爾曹を監すれば。天に於ても地に於ても爾曹の上帝より么麽もかくすべからず、明典に載錄されしものの外何事も大小なし。
六三 畏怖なく悲愁なき~の友に非ずや。
六四 信じて~を畏るゝ者
六五 現世に於てまた來世に於て吉報を得べし。~の言には變易なし。是大なる幸ならざるべからず。
六六 渠等の言を以て勿悲しみそ、あらゆるものは~に屬すれば、~は聞き且知れば。
六七 天に地に住める何れか~に服せざる。されば~の外に偶像を禱るは何に從ふにや。唯浮說の外從ふ所なく唯虛妄の外言ふところなし。
六八 爾曹の休息のために夜を命じ勞作のために晝を命ぜしは~なり。洵に聽從する民への表はその中に在り。
六九 渠等はいふ、~は子を有てりと、渠は否む。~は自具足なり。天にあり地にあるものは何ものも~に屬す、爾曹そを排する一の證迹をも有せず。爾曹、爾曹の知らざる~に逆ひて語り得るか。
 いへ、洵に~に關きて虛妄を懷くものは昌えざるべしと。
七一 此世に於ける物資(を渠等は享樂し得)。されどその後渠等はわれに歸る可し、われ渠等をして悲しむべき責罰を味はしむべし、其不信たるが故に。
七二 渠等にノアの史を說け、其民に向ひてかくいひし時。噫わが民、わが爾曹の閧ノ立ち(爾曹に)~の表徵を戒しむることは爾曹の憂ふる所たりとも、われは~に信ョす、故に(われに對する)爾曹の企圖を定め爾曹の僞~を集めよ、されど爾曹の企圖を暗中に勿行ひそ、而してわれに對して來れ、勿躊躇ひそ、
七三 若し爾曹(わがヘ戒より)背くともわれ(それに對して)爾曹より何等の報償も求めず、われ唯~よりわが報償を期す、われは(~に)敬聽する(の一人)たるべしと命ぜらると。
七四 然るに渠等は僞瞞を以て渠を責めき、故にわれ渠と渠と與に方舟にありしとを救ひて(洪水の後に)遺存せしめ、僞瞞を以てわが表徵を誹りしを溺らしたり。されば見よ、ノアによりて戒しめられしの終末の如何を。
七五 其時われ、渠の後に、其各の民にそれそれの使徒を送れり、使徒は顯明なる宣明を以て渠等に至れり、而も渠等は其前に虛妄として拒みし所を信ぜんとせざりき。斯くしてわれ侵犯の心を封じたり。
七六 其時われ、渠等の後に、モセとアアロンとをわが表徵を以てファラオとその公とに送れり、されど渠等は傲慢にして惡しき民なりき。
七七 わが眞理の渠等に至るや、渠等はいへり、洵にこれ顯なる左術なりと。
七八 モセ(渠等もいへり、眞理爾曹に至れるに爾曹かくいふか。これ左術か。左道妖術のは昌えざるべし。
七九 渠等はいへり、爾曹は吾曹の宗以來の宗ヘを改むるために來りしか、爾曹二人は此國土に號令せんとするか。而も吾曹は爾曹を信ぜざるべしと。
 ファラオはあらゆる老の魔術師を召せといへり。其集まるやモセは之に向ひて、爾曹の投げんと欲するものを投げよといふ。
八一 渠等(其杖と繩とを)投げしかばモセ(渠等に)、爾曹の行ひし眩惑は必ず~の爲に破れん、~は惡人の業を助けざればといへり。
八二 惡人はそを欲せざりしも~は其言の眞を證したり。
八三 而して其民の族の外はファラオと其公との怒を恐れて一人もモセを信ぜざりき。ファラオは地上に傲然たり、確に侵犯(の一人)たりき。
八四 モセいへり、噫わが民、爾曹若し~を信ぜば、その意に敬聽するが如く之に信ョせよと。
八五 渠等答へき、吾曹は信を~に繫く、噫、上帝、不正の民をして吾曹を虐げしむる勿れ、
八六 爾の慈惠によりて不信の民より吾曹を救へと。
八七 われ天啓によりてモセ兄弟に(示す)、埃及に於て爾曹の民の住家を作れ、爾曹の家を禮拜處と爲し、常に禱し、吉報を眞の信に傳へよと。
八八 モセいへり、噫、上帝、洵に爾はファラオと其民とに現世に於ける粉飾と富貴とを授けたり、噫、上帝、渠等を爾の道より誘惑するために。噫、上帝、渠等の富を空しくせよ、渠等の心を閉せよ、渠等がこの悲しき責罰を免るまで信仰し得ぬために。
八九 ~いへり、爾曹の請は聽許さる。故に爾曹正しかれ、無智なるの道を勿履みそと。
 斯くてわれイスラエルの子孫をして中を過ぎしめき。ファラオと其軍衆とは猛烈なる敵意を懷きて之を追せり、渠溺れんとして、實にやイスラエルの子孫が信ぜしもの外に~なきをわれ信ず、われ敬聽する(の一人)なりといひしまで。
九一 今(爾は信ずる)か、從來叛きて惡人の一たりしに。
九二 されど今日われ爾の骸を(底より)上ぐ、爾の後に出づるのために爾の表徵たり得るために。洵に人閧フ大數はわが表徵に等閑なり
九三 斯くてわれイスラエルの子孫に(カナンの地に於て)住居を定め、其支持のために善き物を供せり。知識の渠等に至るまで渠等は(ヘに就きて)爭はざりき。洵に爾曹の上帝は復活の日に於て渠等の爭ふところを裁くべし。
九四 わが爾曹に下せしところ(の何れの部分)に就きて疑あらば、爾曹の前に(聖法の)典籍を誦せしものに問へ。今や眞理は爾曹の上帝より爾曹に下れり、故に一人も疑ふあらしめそ、
九五 一人も~の表徵を僞瞞を以て誹らしめそ、爾曹滅亡の一人たる勿れ。
九六 洵に己に逆ひて~の言の宣明されしは信ぜざるべし、
九七 種の奇蹟渠等に下れども、(渠等の爲に設けられし)悲しき責罰を見るまでは。
九八 若し然らざれば(破滅せる幾多の市城の中の)ある市城は信じたりけむ、その城民の信仰は渠等に利uたりけむ、(然るに渠等の何もその宣告の實行さる前には信ぜざりき)、猶奈斯の民を除きては。此民信ぜしとき、われ渠等に現世の恥辱の苦罰を除き生(の生命と資財と)を享樂せしめき。
九九 然れども若し爾曹の上帝欲せば、洵に世界の總ては一般に信仰すべし。故に爾曹は眞の信たるべく人を强ひんと欲するにや。
〇〇 ~の允許なくして信仰するはあらず。~は理會なきに怒を下すべし。
一 いへ、天にあるものと地にあるものとを思へ、されど表徵は信仰なき民にuなく說ヘも亦利なし。
二 故に渠等は(ある恐るべき審判の外)何ものをか期待するか、渠等の前に出でし者(に下りし)の審判に類せるもの外と。いへ、爾曹(結果を)待て、われ亦爾曹と與に待たんと。
三 其時われわが使徒と信とを救ふべし。眞の信を救ふべきはわが當に爲すべき正義なり。
四 いへ、噫(メッカの)人、爾曹わがヘに關きて疑ふとも、洵にわれは~の外に爾曹の禮拜する所(の偶像)を禮拜せず、われは唯爾曹に死を下すべき~を禮拜す、われ眞の信(の一人)たるべく命ぜらると。
五 また、(かくわれにいはる)、爾の面を眞のヘの方に向けて正ヘたれ、決して~伴を配するもの(の一人)たる勿れ、
六 ~の外に、爾曹に利uをも障害をも與へ得ざるものを勿禱りそ、何となれば然らば爾曹は確に不正(の一人)たるべければと。
七 ~若し爾曹に害を下さば、~の外には一人も爾曹を救ひ能ふなし。~若し爾曹にを欲せば、~を除きては何人も之を奪ふこと能はず。~はそをその奴僕の中の欲するところに下すべし。~は大度にして仁慈なり。
八 いへ、噫、人、今や眞理は爾曹の上帝より爾曹に下れり。されば導かるゝ者は其心(の利u)に導かるべし。されど惑はさるものは亦唯其心に逆ひて惑はさるべし、われ爾曹の保護たらず。
九 噫、爾、豫言よ、爾に默示せる所に從へ、~の裁くまで忍び耐へよ、~は至上の判官たれば。
猶奈須品【アル・ユナス】(1-109節)の解題(題名の由来、啓示時期、内容解説)
九八に豫言猶奈須の事あるより品名生ず。
默伽默示たるは殆んど疑なきも尙四一−九四さては九四−九七さては四一−一九、甚しきは全部を默コ那默示と爲す學もあり。其理由は各部に見ゆる猶太族の默コ那の猶太族たりと見らるにあり。而も麻訶末の猶太族と相識り、さては默伽那の猶太族との通交は默伽時代より存すれば、之を以て本品を直に默コ那默示とは斷定しし、否その內容と句調とより明に默伽默示たるを證すべしといふ。
時代
の饑饉はヘジラを距る遠からぬ時と見ゆ。その他に至りては年時明ならず。
內容
默伽の民豫言の其市民たるによりて之を幻術左道と誹る(一−二)。
宇宙造物主は唯一眞~(三)。
と不信との死後の應報(四)。
總ての人に對する~の表(五−六)。
と不信との賞罰(七−一一)。
惡人昌榮の眞目的(一二)。
には~を禱り安泰には~を忘る人(一三)。
默伽の民を警しむる前代の往例(一四−一五)。
孤列種、別の可蘭を求むるに對し麻訶末の拒絶(一八)。
偶像信のョむ利害障害の力なき僞~(一九)。
全人類本來一ヘ(二)。
麻訶末に表徵を求むる人(二一)。
~裁を排するの重罰(二二)。
陸の危には~をョみ事罷めば~を志るる不信(二三−二四)。
人生は甘雨の如し(二五)。
ヘ徒には天堂異端には地獄(二六−二八)。
審判の日に偶像信を棄つる僞~(二九−三一)。
造物主保護主宰として~を禮拜すべき勸(三二−三七)。
可蘭は人爲に非ず、且前經典の旨を合す(三八)。
麻訶末を僞瞞と爲すもの經卷の要求(三九−四)。
可蘭を信ずると然らざる(四一)。
孤列種の排斥(四二−四七)。
各民族それぞれの使徒(四八)。
不信の豫言罵倒(四九)。
各民族の宿命の定期(五)。
責罰に臨みて信仰する異端(五一−五五)。
生死は~に在り(五六−五七)。
不信のヘ戒示導さる可蘭(五八−五九)。
禁ずべからざる適法の食物(六−六一)。
~の示ヘの下にある麻訶末(六二)。
~を信じ畏るゝ者(六三−六五)。
不信は豫言を害ふ能はず(六六−六八)。
~に子ありとなす說を排す(六九−七一)。
麻訶末はノア其他の豫言に似たり(七二−七五)。
ファラオに下りしモセ、アアロン兄弟(七六)。
兄弟の排斤(七七−八二)。
少し(八三)。
セ、アアロン等の~の信ョ(八四−八六)。
イスラエル族の~への禱(八七)。
セの~埃及を滅せとの納れらる(八八−八九)。
ファラオとその軍衆の溺沒(九)。
ファラオの改~の表徵(九−九二)。
住地を得しイスラエル族(九三)。
猶太基督ヘ徒の可蘭是認(九四−九五)。
奇蹟を信ぜざる民と猶奈須の民と(九六−九八)。
~は異端をして麻訶末を信ぜしめず(九九−一三)。
默伽の民に正ヘを勸む(一四−一七)。
麻訶末は民の信不信の責に住ぜず(一八)。
豫言堅忍の戒(一九)。
猶奈須品【アル・ユナス】(1-109節)の註釋(文字の解釈)
一三 此凶事はへジラの前直にメッカに起りし大饑饉を指すとの說あり。
一七 麻訶末は四十年間常人たりしに今や斯る宣ヘ傳道を行ふ。その從前の生活を以て今の說法に較ぷれば、その所說の~より來りしことは、自明ならんといふなり。
一九 ~は天地の間に何をもその同列伴と認めざるなり。
二二 ~の左右にムアキバトMuaqqibatといふ二天使ありて常に善惡兩面の事を錄す。これなり。
二八 善行にはその應報以外の善報を與ふるも、業に對しては唯それに相應するだけの惡報を下すに止まる。これ~の慈意に出づる所以。
ニ九 渠等の伴はその~祇として奉ぜる偶像其他の僞~。よりて「爾曹の禮拜せしは吾曹にあらず」とは、爾曹自己の嗜尙な禮拜して偶像信となりしのみ、自己の迷信より出でしにて吾曹のそを勸めしに非ずと、偶像自辯ずるなり。
九一 九一以下は天使ガブリエルの上のファラオの言に答ふるものと解せらる。
九三 「知譏の渠等に至るまで」とは~訓のモセに下るまでをいふ。
九八 猶奈須Yunasは希伯來のヨナJonahなり。マッタイMattai(イスラムヘ徒は母アミッタイAmittaiとなす)の子猶奈須といへるぺンジアミン族の~命を受けてヘ化の爲にニネベに至りしも民衆應ぜず。猶奈須天譴の日ならずして(或は三日とし或は四十日とす)必至らんことをいひて去る。其期に近づくや果して玄雲天を掩ひ煙火市城を掩ひ至る。城民大に畏れて野に奔り恨して赦を天に請ふ。~その眞に懺せるを知りて之を赦せり。
Office Murakami