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マタイによる福音書の日本語訳を明治・大正・昭和の時代に沿って読み比べてみました |
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明治訳は英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)による文語訳です。シナ訳の影響が色濃く出ています。 |
大正訳は日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)による文語訳です。明治訳よりやさしい日本語に直していますが内村鑑三は大正改訳を優美すぎて弱いと評していました。 |
昭和訳は日本聖書協会「新約聖書」(昭和二十九年)による口語訳です。 |
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明治・大正訳は漢字・送り仮名とも明治・大正時代そのままの形を復刻できるように努めました。シフトJISにない漢字はUnicodeで捜しました。 |
明治・大正・昭和訳を一節ずつ縦に並べて記すことで時代に沿った訳の変化を読み取れるようにしました。 |
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全28章 |
☞1章 |
☞11章 |
☞21章 |
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☞2章 |
☞12章 |
☞22章 |
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☞3章 |
☞13章 |
☞23章 |
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☞4章 |
☞14章 |
☞24章 |
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☞5章 |
☞15章 |
☞25章 |
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☞6章 |
☞16章 |
☞26章 |
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☞7章 |
☞17章 |
☞27章 |
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☞8章 |
☞18章 |
☞28章 |
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☞9章 |
☞19章 |
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☞10章 |
☞20章 |
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<馬太傳iケ書>新約全書(明治訳:文語訳) |
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<マタイ傳iケ書>新約聖書(大正改訳:文語訳) |
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<マタイによる福音書>新約聖書(昭和訳:口語訳) |
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馬太傳iケ書 |
第一章 |
一 アブラハムの裔なるダビデの裔イエス キリストの系圖 |
マタイ傳iケ書 |
第一章 |
一 アブラハムの子、ダビデの子、イエス・キリストの系圖。 |
マタイによる福音書 |
第一章 |
一 アブラハムの子であるダビデの子、イエス・キリストの系図。 |
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二 アブラハム イサクを生イサク ヤコブを生ヤコブ ユダとその兄弟を生り |
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二 アブラハム、イサクを生み、イサク、ヤコブを生み、ヤコブ、ユダとその兄弟らとを生み、 |
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二 アブラハムはイサクの父であり、イサクはヤコブの父、ヤコブはユダとその兄弟たちとの父、 |
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三 ユダ タマルに由てパレスとザラを生パレス エスロンを生エスロン アラムを生 |
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三 ユダ、タマルによりてパレスとザラとを生み、パレス、エスロンを生み、エスロン、アラムを生み、 |
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三 ユダはタマルによるパレスとザラとの父、パレスはエスロンの父、エスロンはアラムの父、 |
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四 アラム アミナダブを生アミナダブ ナアソンを生ナアソン サルモンを生 |
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四 アラム、アミナダブを生み、アミナダブ、ナアソンを生み、ナアソン、サルモンを生み、 |
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四 アラムはアミナダブの父、アミナダブはナアソンの父、ナアソンはサルモンの父、 |
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五 サルモン ラハズに由てポアズを生ポアズ ルツに由てオベデを生オベデ エツサイを生 |
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五 サルモン、ラハブによりてボアズを生み、ボアズ、ルツによりてオベデを生み、オペデ、エッサイを生み、 |
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五 サルモンはラハブによるボアズの父、ボアズはルツによるオベデの父、オベデはエッサイの父、 |
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六 エツサイ ダビデ王を生タビデ王ウリヤの妻に由てソロモンを生 |
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六 エッサイ、ダビデ王を生めり。ダビデ、ウリヤの妻たりし女によりてソロモンを生み、 |
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六 エッサイはダビデ王の父であった。ダビデはウリヤの妻によるソロモンの父であり、 |
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七 ソロモン レハベアムを生レハベアム アビアを生アビア アサを生 |
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七 ソロモン、レハベアムを生み、レハベアム、アビヤを生み、アビヤ、アサを生み、 |
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七 ソロモンはレハベアムの父、レハベアムはアビヤの父、アビヤはアサの父、 |
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八 アサ ヨサパテを生ヨサパテ ヨラムを生ヨラム ウツズヤを生 |
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八 アサ、ヨサパテを生み、ヨサパテ、ヨラムを生み、ヨラム、ウジヤを生み、 |
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八 アサはヨサパテの父、ヨサパテはヨラムの父、ヨラムはウジヤの父、 |
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九 ウツズヤ ヨタムを生ヨタム アカズを生アカズ ヘゼキヤを生 |
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九 ウジヤ、ヨタムそ生み、ヨタム、アハズを生み、アハズ、ヒゼキヤを生み、 |
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九 ウジヤはヨタムの父、ヨタムはアハズの父、アハズはヒゼキヤの父、 |
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十 ヘゼキヤ マナセを生マナセアモンを生アモン ヨシアを生り |
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一〇 ヒゼキヤ、マナセを生み、マナセ、アモンを生み、アモン、ヨシヤを生み、 |
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一〇 ヒゼキヤはマナセの父、マナセはアモンの父、アモンはヨシヤの父、 |
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十一 バビロンに徙さるゝ時ヨシア エホヤキンと其兄弟を生 |
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一一 バビロンに移さるる頃、ヨシヤ、エコニヤとその兄弟らとを生めり。 |
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一一 ヨシヤはバビロンへ移されたころ、エコニヤとその兄弟たちとの父となった。 |
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十二 バビロンに徙されたる後エホヤキシ シアテルを生シアテル ゼルバベルを生 |
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一二 バビロンに移されて後、エコニヤ、サラテルを生み、サラテル、ゾロバベルを生み、 |
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一二 バビロンへ移されたのち、エコニヤはサラテルの父となった。サラテルはゾロバベルの父、 |
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十三 ゼルバベル アビウデを生アビウデ エリアキンを生エリアキン アゾルを生 |
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一三 ゾロバベル、アビウデを生み、アビウデ、エリヤキムを生み、エリヤキム、アゾルを生み、 |
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一三 ゾロバベルはアビウデの父、アビウデはエリヤキムの父、エリヤキムはアゾルの父、 |
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十四 アゾル ザドクを生ザドク アキムを生アキム エリウデを生 |
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一四 アゾル、サドクを生み、サドク、アキムを生み、アキム、エリウデを生み、 |
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一四 アゾルはサドクの父、サドクはアキムの父、アキムはエリウデの父、 |
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十五 エリウデ エリアザルを生エリアザル マツタンを生マツタン ヤコブを生 |
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一五 エリウデ、エレアザルを生み、エレアザル、マタンを生み、マタン、ヤコブを生み、 |
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一五 エリウデはエレアザルの父、エレアザルはマタンの父、マタンはヤコブの父、 |
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十六 ヤコブ マリアの夫ヨセフを生り此マリアよりキリストと稱るイエス生れ給ひき |
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一六 ヤコブ、マリヤの夫ヨセフを生めり。此のマリヤよりキリストと稱ふるイエス生れ給へり。 |
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一六 ヤコブはマリヤの夫ヨセフの父であった。このマリヤからキリストといわれるイエスがお生れになった。 |
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十七 其世系を數ればアブラハムよりダビデに至るまで十四代ダビデよりバビロンに徙さるゝ時まで十四代バビロンに徙されしよりキリストまで十四代なり |
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一七 されば總て世をふる事、アブラハムよりダビデまで十四代、ダビデよりバビロンに移さるるまで十四代、バビロンに移されてよりキリストまで十四代なり。 |
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一七 だから、アブラハムからダビデまでの代は合わせて十四代、ダビデからバビロンへ移されるまでは十四代、そして、バビロンへ移されてからキリストまでは十四代である。 |
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十八 それイエス キリストの生れ給ること左の如し其母マリアはヨセフと聘定を爲るのみにて未だ偕にならざりしとき聖靈に感じて孕しが其孕たること顯れければ |
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一八 イエス・キリストの誕生は左のごとし。その母マリヤ、ヨセフと許媳したるのみにて、未だ偕にならざりしに、聖靈によりて孕り、その孕りたること顯れたり |
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一八 イエス・キリストの誕生の次第はこうであった。母マリヤはヨセフと婚約していたが、まだ一緒にならない前に、聖霊によって身重になった。 |
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十九 夫ヨセフ義人なる故に之を辱しむることを願ず密に離緣せんと思へり |
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一九 夫ヨセフは正しき人にして之を公然にするを好まず、私に離緑せんと思ふ。 |
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一九 夫ヨセフは正しい人であったので、彼女のことが公けになることを好まず、ひそかに離縁しようと決心した。 |
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二十 斯て此事を思念せる時に主の使者かれが夢に現れて曰けるはダビデの裔ヨセフよ爾妻マリアを娶ことを懼るゝ勿その孕る所の者は聖靈に由なり |
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二〇 斯て、これらの事を思ひ囘らしをるとき、視よ、主の使、夢に現れて言ふ『ダビデの子ヨセフよ、妻マリヤを納るる事を恐るな。その胎に宿る者は聖靈によるなり。 |
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二〇 彼がこのことを思いめぐらしていたとき、主の使が夢に現れて言った、「ダビデの子ヨセフよ、心配しないでマリヤを妻として迎えるがよい。その胎内に宿っているものは聖霊によるのである。 |
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二一 かれ子を生ん其名をイエスと名くべし蓋その民を罪より救はんとすれば也 |
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二一 かれ子を生まん、汝その名をイエスと名づくべし。己が民をその罪より救ひ給ふ故なり』 |
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二一 彼女は男の子を産むであろう。その名をイエスと名づけなさい。彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」。 |
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二二 凡て此事は預言者に託て主の曰たまひし言に |
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二二 すべて此の事の起りしは、預言者によりて主の云ひ給ひし言の成就せん爲なり。曰く |
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二二 すべてこれらのことが起ったのは、主が預言者によって言われたことの成就するためである。すなわち、 |
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二三 處女はらみて子を生ん其名をインマヌエルと稱べしと有に應せん爲なり其名を譯ば~われらと偕に在との義なり |
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二三 『視よ、處女みごもりて子を生まん。その名はインマヌエルと稱へられん』之を釋けば、~われらと偕に在すといふ意なり。 |
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二三 「見よ、おとめがみごもって男の子を産むであろう。その名はインマヌエルと呼ばれるであろう」。これは、「神われらと共にいます」という意味である。 |
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二四 ヨセフ寢より起て主の使者の命ぜし言に遵ひ其妻を娶たれど |
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二四 ヨセフ寐より起き、主の使の命ぜし如くして妻を納れたり。 |
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二四 ヨセフは眠りからさめた後に、主の使が命じたとおりに、マリヤを妻に迎えた。 |
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二五 冢子の生るゝまで牀を同にせざりき其生れし子をイエスと名けたり |
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二五 されど子の生るるまでは、相知る事なかりき。斯てその子をイエスと名づけたり。 |
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二五 しかし、子が生れるまでは、彼女を知ることはなかった。そして、その子をイエスと名づけた。 |
馬太傳iケ書 |
第二章 |
一 夫イエスはヘロデ王の時ユダヤのベテレヘムに生れ給しが其とき博士たち東の方よりエルサレムに來り |
マタイ傳iケ書 |
第二章 |
一 イエスはへロデ王の時、ユダヤのベツレヘムに生れ給ひしが、視よ、東の博士たちエルサレムに來りて言ふ、 |
マタイによる福音書 |
第二章 |
一 イエスがヘロデ王の代に、ユダヤのベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、 |
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二 曰けるはユダヤ人の王とて生れ給る者は何處に在す乎われら東の方にて其星を見たれば彼を拜せん爲に來れり |
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二 『ユダヤ人の王とて生れ給へる者は、何處に在すか。我ら東にてその星を見たれば、拜せんために來れり』 |
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二 「ユダヤ人の王としてお生れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは東の方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。 |
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三 ヘロデ王これを聞て痛む又エルサレムの民もみな然り |
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三 へロデ王これを聞きて惱みまどふ、エルサレムも皆然り。 |
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三 ヘロデ王はこのことを聞いて不安を感じた。エルサレムの人々もみな、同様であった。 |
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四 凡の祭司の長と民の學者とを集てヘロデ問けるはキリストの生るべき處は何所なる乎 |
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四 王、民の祭司長・學者らを皆あつめて、キリストの何處に生るべきを問ひ質す。 |
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四 そこで王は祭司長たちと民の律法学者たちとを全部集めて、キリストはどこに生れるのかと、彼らに問いただした。 |
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五 答けるはユダヤのベテレヘムなり蓋預言者の錄されたる言に |
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五 かれら言ふ『ユダヤのベツレヘムなり。それは預言者によりて、 |
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五 彼らは王に言った、「それはユダヤのベツレヘムです。預言者がこうしるしています、 |
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六 ユダヤの地ベテレヘムよ爾はユダヤの郡中にて至小きものに非ず我イスラエルの民を牧ふべき君その中より出んと云ばなり |
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六 「ユダの地ベツレヘムよ、汝はユダの長等の中にて最小き者にあらず、汝の中より一人の君いでて、わが民イスラエルを牧せん」と錄されたるなり』 |
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六 『ユダの地、ベツレヘムよ、おまえはユダの君たちの中で、決して最も小さいものではない。おまえの中からひとりの君が出て、わが民イスラエルの牧者となるであろう』」。 |
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七 是に於てヘロデ密に博士等を召星の現れし時を詳に問て |
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七 ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細にし、 |
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七 そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、星の現れた時について詳しく聞き、 |
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八 彼等をベテレヘムに遣さんとして曰けるは往て嬰兒の事を細に尋これに遇ば我に吿よ我も亦ゆきて拜すべし |
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八 彼らをベツレヘムに遣さんとして言ふ『往きて幼兒のことを細にたづね、之にあはば我に吿げよ。我も往きて拜せん』 |
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八 彼らをベツレヘムにつかわして言った、「行って、その幼な子のことを詳しく調べ、見つかったらわたしに知らせてくれ。わたしも拝みに行くから」。 |
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九 かれも王の命を聞て往り前に東の方にて見たりし星かれらに先ちて嬰兒の居所にいたり其上に止りぬ |
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九 彼ら王の言をききて往きしに、視よ、前に東にて見し星、先だちゆきて、幼兒の在すところの上に止る。 |
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九 彼らは王の言うことを聞いて出かけると、見よ、彼らが東方で見た星が、彼らより先に進んで、幼な子のいる所まで行き、その上にとどまった。 |
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十 彼等この星を見て甚く喜び |
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一〇 かれら星を見て、歡喜に溢れつつ、 |
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一〇 彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。 |
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十一 既に室に入ければ嬰兒の其母マリアと偕に居を見ひれふして嬰兒を拜し寶の盒を開て黃金、乳香、沒藥など禮物を献たり |
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一一 家に入りて、幼兒のその母マリヤと偕に在すを見、平伏して拜し、かつ寳の匣をあけて、黃金・乳香・沒藥など禮物を獻げたり。 |
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一一 そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。 |
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十二 博士夢にヘロデへ返る勿との默示を蒙りて他の途より其國に歸れり |
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一二 斯て夢にてヘロデの許に返るなとの御吿を蒙り、ほかの路より己が國に去りゆきぬ。 |
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一二 そして、夢でヘロデのところに帰るなとのみ告げを受けたので、他の道をとおって自分の国へ帰って行った。 |
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十三 彼等が去るのち主の使者ヨセフの夢に現れて曰けるはヘロデ嬰兒を索て殺んとする故に起て嬰兒と其母とを挈へエジプトに逃て復わが爾に示さん時まで彼處に止れ |
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一三 その去り往きしのち、視よ、主の使、夢にてヨセフに現れていふ『起きて、幼兒とその母とを携へ、エジプトに逃れ、わが吿ぐるまで彼處に留れ。ヘロデ幼兒を索めて亡さんとするなり』 |
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一三 彼らが帰って行ったのち、見よ、主の使が夢でヨセフに現れて言った、「立って、幼な子とその母を連れて、エジプトに逃げなさい。そして、あなたに知らせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが幼な子を捜し出して、殺そうとしている」。 |
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十四 ヨセフ起て夜嬰兒と其母とを挈へエジプトに往 |
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一四 ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき、 |
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一四 そこで、ヨセフは立って、夜の間に幼な子とその母とを連れてエジプトへ行き、 |
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十五 ヘロデの死るまで某所に止れり是主預言者に託て我わが子をエジプトより召出せりと云給ひしに應せん爲也 |
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一五 ヘロデの死ぬるまで彼處に留りぬ。これ主が預言者によりて『我エジプトより我が子を呼び出せり』と云ひ給ひし言の成就せん爲なり。 |
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一五 ヘロデが死ぬまでそこにとどまっていた。それは、主が預言者によって「エジプトからわが子を呼び出した」と言われたことが、成就するためである。 |
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十六 是に於てヘロデ博士に欺かれたるをしり大にいかり人を遣して博士に詳く問たる時を度りベテレヘムと其境の内なる二歲以下の嬰兒を盡く殺せり |
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一六 爰にヘロデ、博士たちに賺されたりと悟りて、甚だしく憤ほり、人を遣し、博士たちに由りて詳細にせし時を計り、ベツレヘム及び凡てそり邊の地方なる二歲以下の男の兒をことごとく殺せり。 |
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一六 さて、ヘロデは博士たちにだまされたと知って、非常に立腹した。そして人々をつかわし、博士たちから確かめた時に基いて、ベツレヘムとその附近の地方とにいる二歳以下の男の子を、ことごとく殺した。 |
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十七 即ち預言者ヱレミヤの言に |
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一七 ここに預言者エレミヤによりて言はれたる言は成就したり。曰く、 |
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一七 こうして、預言者エレミヤによって言われたことが、成就したのである。 |
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十八 歎き悲み甚く憂る聲ラマに聞ゆラケル其兒子を歎き其兒子の無によりて慰を得ずと云しにし應へり |
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一八 『聲ラマにありて聞ゆ、慟哭なり、いとどしき悲哀なり。ラケル己が子らを歎き、子等のなき故に慰めらるるを厭ふ』 |
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一八 「叫び泣く大いなる悲しみの声が/ラマで聞えた。ラケルはその子らのためになげいた。子らがもはやいないので、慰められることさえ願わなかった」。 |
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十九 斯てヘロデ死しかば主の使者ヨセフの夢にエジプトにて現れ曰けるは |
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一九 ヘロデ死にてのち、視よ、主の使、夢にてエジプトなるヨセフに現れて言ふ、 |
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一九 さて、ヘロデが死んだのち、見よ、主の使がエジプトにいるヨセフに夢で現れて言った、 |
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二十 起て嬰兒とその母とを挈へイスラエルの地にゆけ嬰兒の生命を索る者は已に死り |
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二〇 『起きて、幼兒とその母とを携へ、イスラエルの地にゆけ。幼兒の生命を索めし者どもは死にたり』 |
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二〇 「立って、幼な子とその母を連れて、イスラエルの地に行け。幼な子の命をねらっていた人々は、死んでしまった」。 |
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二一 彼おきて嬰兒と其母とを挈へてイスラエルの地に至しが |
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二一 ヨセフ起きて、幼兒とその母とを携へ、イスラエルの地に到りしに、 |
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二一 そこでヨセフは立って、幼な子とその母とを連れて、イスラエルの地に帰った。 |
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二二 アケラヲ父ヘロデに代てユダヤの王たりと聞ければ彼處に往ことを懼る又夢に吿を蒙りてガリラヤの内に避 |
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二二 アケラオその父ヘロデに代りて、ユダヤを治むと聞き、彼處に往くことを恐る。また夢にて御吿を蒙り、ガリラヤの地方に退き、 |
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二二 しかし、アケラオがその父ヘロデに代ってユダヤを治めていると聞いたので、そこへ行くことを恐れた。そして夢でみ告げを受けたので、ガリラヤの地方に退き、 |
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二三 ナザレと云る邑に至りて居り彼はナザレ人と稱れんと預言者に託て云れたる言に應せん爲なり |
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二三 ナザレといふ町に到りて住みたり。これは預言者たちに由りて、彼はナザレ人と呼れん、と云はれたる言の成就せん爲なり。 |
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二三 ナザレという町に行って住んだ。これは預言者たちによって、「彼はナザレ人と呼ばれるであろう」と言われたことが、成就するためである。 |
馬太傳iケ書 |
第三章 |
一 當時バプテスマのヨハネ來りてユダヤの野に宣傳へて |
マタイ傳iケ書 |
第三章 |
一 その頃バプテスマのヨハネ來り、ユダヤの荒野にてヘを宣べて言ふ、 |
マタイによる福音書 |
第三章 |
一 そのころ、バプテスマのヨハネが現れ、ユダヤの荒野で教を宣べて言った、 |
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二 曰けるは天國は近けり悔改めよ |
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二 『なんぢら悔改めよ、天國は近づきたり』 |
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二 「悔い改めよ、天国は近づいた」。 |
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三 是は主の道を備その路線を直せよと野に呼る人の聲ありと預言者イザヤが言し人なり |
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三 これ預言者イザヤによりて、斯く云はれし人なり。曰く『荒野に呼はる者の聲す「主の道を備へ、その路すぢを直くせよ』 |
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三 預言者イザヤによって、「荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』」と言われたのは、この人のことである。 |
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四 此ヨハネは身に駱駝の毛衣をき腰に皮の帶をつかね蝗蟲と野蜜を食物とせり |
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四 このヨハネは駱駝の毛織衣をまとひ、腰に皮の帶をしめ、蝗と野蜜とを食とせり、 |
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四 このヨハネは、らくだの毛ごろもを着物にし、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。 |
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五 斯時エルサレム及びユダヤを擧またヨルダンの四方より人々 出てヨハネに就 |
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五 爰にエルサレム及びユダヤ全國またヨルダンの邊なる全地方の人々、ヨハネの許に出できたり、 |
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五 すると、エルサレムとユダヤ全土とヨルダン附近一帯の人々が、ぞくぞくとヨハネのところに出てきて、 |
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六 己が罪を悔わらはしヨルダンにて彼よりバプテスマを授られたり |
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六 罪を言ひ表し、ヨルダン川にてバプテスマを受けたり。 |
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六 自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。 |
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七 バプテスマを受んとてパリサイ及サドカイの人々の多く來れるを見て彼等に曰けるは蝮の裔よ誰なんぢらに來んとする怒を避べきことを告しや |
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七 ヨハネ、パリサイ人およびサドカイ人のバプテスマを受けんとて、多く來るを見て、彼らに言ふ『蝮の裔よ、誰が汝らに、來らんとする御怒を避くべき事を示したるぞ。 |
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七 ヨハネは、パリサイ人やサドカイ人が大ぜいバプテスマを受けようとしてきたのを見て、彼らに言った、「まむしの子らよ、迫ってきている神の怒りから、おまえたちはのがれられると、だれが教えたのか。 |
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八 然ば悔改に符ふ果を結べよ |
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八 さらば悔改に相應しき果を結べ。 |
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八 だから、悔改めにふさわしい実を結べ。 |
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九 爾曹われらが先祖にアブラハム有と云ことを意ふ勿れ我爾曹に告ん~は能この石をもアブラハムの子と爲しめ給ふなり |
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九 汝ら「われらの父にアブラハムあり」と心のうちに言はんと思ふな。我なんぢらに吿ぐ、~は此らの石よりアブラハムの子らを起し得給ふなり。 |
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九 自分たちの父にはアブラハムがあるなどと、心の中で思ってもみるな。おまえたちに言っておく、神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起すことができるのだ。 |
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十 今や斧を樹の根に置る故に凡て善果を結ざる樹は斫れて火に投入らるべし |
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一〇 斧ははや樹の根に置かる。されば凡て善き果を結ばぬ樹は、伐られて火に投げ入れらるべし。 |
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一〇 斧がすでに木の根もとに置かれている。だから、良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれるのだ。 |
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十一 我は爾曹を悔改させんとて水を以て爾曹にバプテスマを授く我より後に來者は我に勝て能力あり我は其履を提にも足ず彼は聖靈と火をもて爾曹にバプテスマを授ん |
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一一 我は汝らの悔改のために、水にてバブテスマを施す。されど我より後にきたる者は、我よりも能力あり、我はその鞋をとるにも足らず、彼は聖靈と火とにて汝らにバプテスマを施さん。 |
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一一 わたしは悔改めのために、水でおまえたちにバプテスマを授けている。しかし、わたしのあとから来る人はわたしよりも力のあるかたで、わたしはそのくつをぬがせてあげる値うちもない。このかたは、聖霊と火とによっておまえたちにバプテスマをお授けになるであろう。 |
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十二 手には箕を持て其禾塲を淨め麥は歛て其倉にいれ糠は熄ざる火こて燬べし |
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一二 手には箕を持ちて禾場をきよめ、その麥は倉に納め、殼は消えぬ火にて燒きつくさん』 |
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一二 また、箕を手に持って、打ち場の麦をふるい分け、麦は倉に納め、からは消えない火で焼き捨てるであろう」。 |
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十三 斯時イエス ヨハネにバプテスマを受んとてガリラヤよりヨルダンに來り給ふ |
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一三 爰にイエス、ヨハネにバプテスマを受けんとて、ガリラヤよりヨルダンに來り給ふ。 |
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一三 そのときイエスは、ガリラヤを出てヨルダン川に現れ、ヨハネのところにきて、バプテスマを受けようとされた。 |
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十四 ヨハネ辭て曰けるは我は爾よりバプテスマを受べき者なるに爾反て我に來る乎 |
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一四 ヨハネ之を止めんとして言ふ『われは汝にバプテスマを受くべき者なるに、反つて我に來り給ふか』 |
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一四 ところがヨハネは、それを思いとどまらせようとして言った、「わたしこそあなたからバプテスマを受けるはずですのに、あなたがわたしのところにおいでになるのですか」。 |
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十五 イエス答けるは暫く許せ如此すべての義き事は我儕盡す可なり是に於てヨハネ彼に訐せり |
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一五 イエス答へて言ひたまふ『今は許せ、われら斯く正しき事をことごとく爲遂ぐるは、當然なり』ヨハネ乃ち許せり。 |
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一五 しかし、イエスは答えて言われた、「今は受けさせてもらいたい。このように、すべての正しいことを成就するのは、われわれにふさわしいことである」。そこでヨハネはイエスの言われるとおりにした。 |
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十六 イエスバプテスマを受て水より上れるとき天忽ち之が爲にひらけ~の靈の鴿の如く降て其上に來るを見る |
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一六 イエス、バプテスマを受けて直ちに水より上り給ひしとき、視よ、天ひらけ、~の御靈の、鴿のごとく降りて己が上にきたるを見給ふ。 |
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一六 イエスはバプテスマを受けるとすぐ、水から上がられた。すると、見よ、天が開け、神の御霊がはとのように自分の上に下ってくるのを、ごらんになった。 |
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十七 又天より聲ありて此は我心に適わが愛子なりと云り |
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一七 また天より聲あり、曰く『これは我が愛しむ子、わがスぶ者なり』 |
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一七 また天から声があって言った、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。 |
馬太傳iケ書 |
第四章 |
一 偖イエス聖靈に導かれ惡魔に試られん爲に野に往り |
マタイ傳iケ書 |
第四章 |
一 爰にイエス御靈によりて荒野に導かれ給ふ、悪魔に試みられんと爲るなり。 |
マタイによる福音書 |
第四章 |
一 さて、イエスは御霊によって荒野に導かれた。悪魔に試みられるためである。 |
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二 四十日四十夜食ふ事をせず後うゑたり |
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二 四十日、四十夜、斷食して、後に飢ゑたまふ。 |
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二 そして、四十日四十夜、断食をし、そののち空腹になられた。 |
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三 試むる者かれに來りて曰けるは爾もし~の子ならば命じて此石をパンと爲よ |
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三 試むる者きたりて言ふ『なんぢ若し~の子ならば、命じて此等の石をパンと爲らしめよ』。 |
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三 すると試みる者がきて言った、「もしあなたが神の子であるなら、これらの石がパンになるように命じてごらんなさい」。 |
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四 イエス答けるは人はパンのみにて生るものに非ず唯~の口より出る凡の言に因と錄されたり |
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四 答へて言ひ給ふ『人の生くるはパンのみに由るにあらず、~の口より出づる凡ての言に由る」と錄されたり』 |
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四 イエスは答えて言われた、「『人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである』と書いてある」。 |
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五 是に於て惡魔かれを聖京に携へゆき殿の頂上に立せて曰けるは |
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五 ここに惡魔イエスを聖なるキにつれゆき、宮の頂上に立たせて言ふ、 |
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五 それから悪魔は、イエスを聖なる都に連れて行き、宮の頂上に立たせて |
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六 爾もし~の子ならば巳が身を下へ投よ蓋なんぢが爲に~その使等に命ぜん彼等手にて支へ爾が足の石に觸ざるやうすべしと錄されたり |
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六 『なんぢ若し~の子ならば己が身を下に投げよ。それは「なんぢの爲に御使たちに命じ給はん。彼ら手にて汝を支へ、その足を石にうち當つること勿らしめん」と錄されたるなり』 |
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六 言った、「もしあなたが神の子であるなら、下へ飛びおりてごらんなさい。『神はあなたのために御使たちにお命じになると、あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らはあなたを手でささえるであろう』と書いてありますから」。 |
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七 イエス彼に曰けるは主たる爾の~を試むべからずと亦錄せり |
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七 イエス言ひたまふ『主なる汝の~を試むべからず」と、また錄されたり』 |
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七 イエスは彼に言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』とまた書いてある」。 |
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八 惡魔また彼を最高き山に携へゆき世界のゥ國とその榮華とを見せて |
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八 惡魔またイエスを最高き山につれゆき、世のもろもろの國と、その榮華とを示して言ふ、 |
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八 次に悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せて |
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九 爾もし俯伏て我を拜せば此等を悉なんぢに與ふべしと曰 |
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九 『なんぢ若し平伏して我を拜せば、此等を皆なんぢに與へん』 |
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九 言った、「もしあなたが、ひれ伏してわたしを拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう」。 |
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十 イエス彼に曰けるはサタンよ退け主たる爾の~を拜し惟之にのみ事ふべしと錄されたり |
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一〇 爰にイエス言ひ給ふ『サタンよ、退け「主なる汝の~を拜し、ただ之にのみ事へ奉るべし」と錄されたろなり』 |
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一〇 するとイエスは彼に言われた、「サタンよ、退け。『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。 |
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十一 終に惡魔かれを離れ天使たち來り事ふ |
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一一 ここに惡魔は離れ去り、視よ、御使たち來り事へぬ。 |
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一一 そこで、悪魔はイエスを離れ去り、そして、御使たちがみもとにきて仕えた。 |
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十二 イエス ヨハネの囚れし事を聞てガリラヤに往 |
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一二 イエス、ヨハネの囚はれし事をききて、ガリラヤに退き、 |
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一二 さて、イエスはヨハネが捕えられたと聞いて、ガリラヤへ退かれた。 |
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十三 ナザレを去ゼブルンとナフタリとの界なる海邊のカペナウンに至て此に居り |
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一三 後ナザレを去りて、ゼブルンとナフタリとの境なる海邊のカペナウムに到りて住み給ふ。 |
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一三 そしてナザレを去り、ゼブルンとナフタリとの地方にある海べの町カペナウムに行って住まわれた。 |
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十四 これ預言者イザヤの言に |
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一四 これは預言者イザヤによりて云はれたる言の成就せん爲なり。曰く、 |
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一四 これは預言者イザヤによって言われた言が、成就するためである。 |
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十五 ゼブルンの地ナフタリの地海に沿たる地ヨルダンの外の地異邦人のガリラヤ |
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一五 『ゼブルンの地、ナフタリの地、海の邊、ヨルダンの彼方、異邦人のガリラヤ、 |
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一五 「ゼブルンの地、ナフタリの地、海に沿う地方、ヨルダンの向こうの地、異邦人のガリラヤ、 |
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十六 此等の幽暗にをる民は大なる光をみ死地と死陰に坐する者の上に光いでたりと云しに應せん爲なり |
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一六 暗に坐する民は、大なる光を見、死の地と死の蔭とに坐する者に、光のぼれり』 |
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一六 暗黒の中に住んでいる民は大いなる光を見、死の地、死の陰に住んでいる人々に、光がのぼった」。 |
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十七 斯時よりイエス始て道を宣傳へ天國は近けり悔改めよと曰たまへり |
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一七 この時よりイエスヘを宣べはじめて言ひ給ふ『なんぢら悔改めよ、天國は近づきたり』 |
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一七 この時からイエスは教を宣べはじめて言われた、「悔い改めよ、天国は近づいた」。 |
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十八 イエス ガリラヤの海邊を歩てペテロと云シモンその兄弟アンデレと二人にて海に網うてるを見たり彼等は漁者なり |
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一八 斯て、ガリラヤの海邊をあゆみて、二人の兄弟ペテロといふシモンとその兄弟アンデレとが、、海に網打ちをるを見給ふ、かれらは漁人なり。 |
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一八 さて、イエスがガリラヤの海べを歩いておられると、ふたりの兄弟、すなわち、ペテロと呼ばれたシモンとその兄弟アンデレとが、海に網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。 |
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十九 之に曰けるは我に從へ我爾曹を人を漁る者と爲ん |
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一九 これに言ひたまふ『我に從ひきたれ、然らば汝らを人を漁る者となさん』 |
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一九 イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。 |
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二十 彼等やがて網を棄てイエスに從ふ |
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二〇 かれら直ちに網をすてて從ふ。 |
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二〇 すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。 |
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二一 此より進けるに又外の兄弟二人即ちゼベダイの子ヤコブと其兄弟ヨハネ父ゼベダイと偕に舟にて網を補へるを見て之を召しに |
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二一 更に進みゆきて、又ふたりの兄弟、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、父ゼベダイとともに舟にありて網を繕ひをるを見て呼び給へば、 |
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二一 そこから進んで行かれると、ほかのふたりの兄弟、すなわち、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、父ゼベダイと一緒に、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。そこで彼らをお招きになると、 |
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二二 彼等も頓て舟と父とを置てイエスに從へり |
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二二 直ちに舟と父とを置きて從ふ。 |
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二二 すぐ舟と父とをおいて、イエスに従って行った。 |
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二三 イエスガリラヤを徧く巡り其會堂にて教をなし天國の音を宣傳かつ民の中なるゥの病もろもろの疾を醫しぬ |
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二三 イエス徧くガリラヤを巡り、會堂にてヘをなし、御國の音を宣べつたへ、民の中のもろもろの病、もろもろの疾患をいやし給ふ。 |
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二三 イエスはガリラヤの全地を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、民の中のあらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。 |
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二四 その聲名あまねくスリヤに播りしかば人々すべての患へる者萬殊の病また痛惱る者あるひは鬼に憑たるもの癲癇、癱瘋の病に罹れる者を彼に携來ければ之を醫せり |
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二四 その噂あまねくシリヤに廣まり、人々すべての惱めるもの、即ちさまざまの病と苦痛とに罹れるもの、惡鬼に憑かれたるもの、癲癎および中風の者などを連れ來りたれば、イエス之を醫したまふ。 |
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二四 そこで、その評判はシリヤ全地にひろまり、人々があらゆる病にかかっている者、すなわち、いろいろの病気と苦しみとに悩んでいる者、悪霊につかれている者、てんかん、中風の者などをイエスのところに連れてきたので、これらの人々をおいやしになった。 |
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二五 ガリラヤとデカポリス エルサレム ユダヤ ヨルダンの外より多の人々きたり從ふ |
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二五 ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ及びヨルダンの彼方より大なる群衆きたり從へり。 |
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二五 こうして、ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ及びヨルダンの向こうから、おびただしい群衆がきてイエスに従った。 |
馬太傳iケ書 |
第五章 |
一 イエス許多の人を見て山に登り坐し給ければ弟子等も其下に來れり |
マタイ傳iケ書 |
第五章 |
一 イエス群衆を見て、山にのぼり、坐し給へば、弟子たち御許にきたる。 |
マタイによる福音書 |
第五章 |
一 イエスはこの群衆を見て、山に登り、座につかれると、弟子たちがみもとに近寄ってきた。 |
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二 イエス口を啓て彼等に教へ曰けるは |
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二 イエス口をひらき、ヘへて言ひたまふ、 |
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二 そこで、イエスは口を開き、彼らに教えて言われた。 |
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三 心の貧き者はなり天国は卽ち其人の有なれば也 |
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三 『幸なるかな、心の貪しき者。天國はその人のものなり。 |
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三 「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。 |
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四 哀む者はなり其人は安慰を得べければ也 |
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四 幸なるかな、悲しむ者。その人は慰められん。 |
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四 悲しんでいる人たちは、さいわいである、彼らは慰められるであろう。 |
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五 柔和なる者はなり其人は地を嗣ことを得べければ也 |
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五 幸なるかな、柔和なる者。その人は地を嗣がん。 |
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五 柔和な人たちは、さいわいである、彼らは地を受けつぐであろう。 |
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六 饑渴ごとく義を慕者はなり其人は飽ことを得べければ也 |
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六 幸なるかな、義に飢ゑ渴く者。その人は飽くことを得ん。 |
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六 義に飢えかわいている人たちは、さいわいである、彼らは飽き足りるようになるであろう。 |
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七 矜恤ある者はなり其人は矜恤を得べければ也 |
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七 幸なるかな、憐憫ある者。その人は憐憫を得ん。 |
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七 あわれみ深い人たちは、さいわいである、彼らはあわれみを受けるであろう。 |
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八 心のCき者はなり其人は~を見ことを得べければ也 |
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八 幸なるかな、心のCき者。その人は~を見ん。 |
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八 心の清い人たちは、さいわいである、彼らは神を見るであろう。 |
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九 和平を求る者はなり其人は~の子と稱らる可ればなり |
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九 幸なるかな、平和ならしむる者。その人は~の子と稱へられん。 |
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九 平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろう。 |
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十 義ことの爲にらるゝ者はなり天國は即ち其人の有なれば也 |
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一〇 幸なるかな、義のために責められたる者。天國はその人のものなり。 |
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一〇 義のために迫害されてきた人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。 |
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十一 我ために人なんぢらを詬誶また迫害いつはりて各樣の惡言をいはん其時は爾曹なり |
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一一 我がために、人なんぢらを罵り、また責め、詐りて各樣の惡しきことを言ふときは、汝ら幸なり。 |
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一一 わたしのために人々があなたがたをののしり、また迫害し、あなたがたに対し偽って様々の悪口を言う時には、あなたがたは、さいわいである。 |
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十二 喜び樂め天に於て爾曹の報賞おほければ也そは爾曹より前の預言者をも如此せめたりき |
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一二 喜び喜べ、天にて汝らの報は大なり。汝等より前にありし預言者等をも、斯く責めたりき。 |
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一二 喜び、よろこべ、天においてあなたがたの受ける報いは大きい。あなたがたより前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。 |
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十三 爾曹は地の鹽なり鹽もし其味を失はゞ何を以か故の味に復さん後は用なし外に棄られて人に踐るゝ而已 |
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一三 汝らは地の鹽なり、鹽もし効力を失はば、何をもてか之に鹽すべき。後は用なし、外にすてられて人に蹈まるるのみ。 |
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一三 あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。 |
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十四 爾曹は世の光なり山の上に建られたる城は隱ることを得ず |
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一四 汝らは世の光なり。山の上にある町は隱るることなし。 |
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一四 あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。 |
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十五 燈を燃して斗の下におく者なし燭臺に置て家に在すべての物を照さん |
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一五 また人は燈火をともして升の下におかず、燈臺の上におく。斯て燈火は家にある凡ての物を照すなり。 |
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一五 また、あかりをつけて、それを枡の下におく者はいない。むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照させるのである。 |
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十六 此の如く人々の前に爾曹の光を耀かせ然れば人々なんぢらの善行を見て天に在す爾曹の父を榮むべし |
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一六 斯のごとく汝らの光を人の前にかがやかせ。これ人の汝らが善き行爲を見て、天にいます汝らの父を崇めん爲なり。 |
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一六 そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かし、そして、人々があなたがたのよいおこないを見て、天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。 |
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十七 われ律法と預言者を廢る爲に來れりと意ふ勿われ來て之を廢るに非ず成就せん爲なり |
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一七 われ律法また預言者を毀つために來れりと思ふな。毀たんとて來らず、反つて成就せん爲なり。 |
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一七 わたしが律法や預言者を廃するためにきた、と思ってはならない。廃するためではなく、成就するためにきたのである。 |
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十八 われ誠に爾曹に吿ん天地の盡ざる中に律法の一點一畵も遂つくさずして廢ることなし |
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一八 誠に汝らに吿ぐ、天地の過ぎ往かぬうちに、律法の一點、一畵も廢ることなく、悉とく全うせらるべし。 |
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一八 よく言っておく。天地が滅び行くまでは、律法の一点、一画もすたることはなく、ことごとく全うされるのである。 |
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十九 是故に人もし誠の至微き一を壞り又その如く人に教なば天國に於て至微き者と謂れん凡そ之を行ひ且人に教る者は天國に於て大なる者と謂るべし |
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一九 この故にもし此等のいと小き誡命の一つをやぶり、且その如く人にヘふる者は、天國にて最小き者と稱へられ、之を行ひ、かつ人にヘふる者は、天國にて大なる者と稱へられん。 |
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一九 それだから、これらの最も小さいいましめの一つでも破り、またそうするように人に教えたりする者は、天国で最も小さい者と呼ばれるであろう。しかし、これをおこないまたそう教える者は、天国で大いなる者と呼ばれるであろう。 |
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二十 我なんぢらに吿ん學者とパリサイの人の義よりも爾曹の義こと勝ずば必ず天國に入こと能じ |
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二〇 我なんぢらに吿ぐ、汝らの義、學者・パリサイ人に勝らずば、天國に入ること能はず。 |
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二〇 わたしは言っておく。あなたがたの義が律法学者やパリサイ人の義にまさっていなければ、決して天国に、はいることはできない。 |
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二一 古の人に吿て殺こと勿れ殺す者は審判に干らんと言ること有は爾曹が聞し所なり |
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二一 古への人に「殺すなかれ、殺す者は審判にあふべし」と云へることあるを汝等きけり。 |
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二一 昔の人々に『殺すな。殺す者は裁判を受けねばならない』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。 |
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二二 然ど我なんぢらに吿ん凡て故なくして其兄弟を怒る者は審判に干らん又その兄弟を愚者よといふ者は集議に干らん又狂妄よといふ者は地獄の火に干るべし |
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二二 然れど我は汝らに吿ぐ、すべて兄弟を怒る者は、審判にあふべし。また兄弟に對ひて、愚者よといふ者は、衆議にあふべし。また痴者よといふ者は、ゲへナの火にあふべし。 |
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二二 しかし、わたしはあなたがたに言う。兄弟に対して怒る者は、だれでも裁判を受けねばならない。兄弟にむかって愚か者と言う者は、議会に引きわたされるであろう。また、ばか者と言う者は、地獄の火に投げ込まれるであろう。 |
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二三 是の故に爾もし禮物を携へて壇に往たる時かしこにて兄弟に恨るゝことあるを憶起さば |
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二三 この故に汝もし供物を祭壇にささぐる時、そこにて兄弟に怨まるる事あるを思ひ出さば、 |
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二三 だから、祭壇に供え物をささげようとする場合、兄弟が自分に対して何かうらみをいだいていることを、そこで思い出したなら、 |
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二四 その禮物を壇の前に留まづ往て爾の兄弟と和ぎ後きたりて爾の禮物を獻よ |
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二四 供物を祭壇のまへに遺しおき、先づ往きて、その兄弟と和睦し、然るのち來りて、供物をささげよ。 |
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二四 その供え物を祭壇の前に残しておき、まず行ってその兄弟と和解し、それから帰ってきて、供え物をささげることにしなさい。 |
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二五 爾を訴ふる者と偕に途間にある時はやく和げよ恐くは訴ふる者なんぢを審官に付し審官また爾を下吏に付し遂に爾は獄に入られん |
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二五 なんぢを訴ふる者とともに途に在るうちに、早く和解せよ。恐くは、訴ふる者なんぢを審判人にわたし、審判人は下役にわたし、遂になんぢは獄に入れられん。 |
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二五 あなたを訴える者と一緒に道を行く時には、その途中で早く仲直りをしなさい。そうしないと、その訴える者はあなたを裁判官にわたし、裁判官は下役にわたし、そして、あなたは獄に入れられるであろう。 |
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二六 我まことに爾に吿ん分釐までも償はざれば必ず其所を出ること能ざる也 |
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二六 誠に、なんぢに吿ぐ、一厘も殘りなく償はずば、其處をいづること能はじ。 |
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二六 よくあなたに言っておく。最後の一コドラントを支払ってしまうまでは、決してそこから出てくることはできない。 |
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二七 古の人に吿て姦淫すること勿と言ることあるは爾曹が聞し所なり |
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二七 「姦淫するなかれ」と云へることあるを汝等きけり。 |
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二七 『姦淫するな』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。 |
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二八 然ど我なんぢらに吿ん凡そ婦を見て色情を起す者は中心すでに姦淫したる也 |
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二八 されど我は汝らに吿ぐ、すべて色情を懷きて女を見るものは、旣に心のうち姦淫したるなり。 |
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二八 しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである。 |
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二九 もし右の眼なんぢを罪に陷さば抉出して之を棄よ蓋五體の一を失ふは全身を地獄に投入らるゝよりは勝れり |
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二九 もし右の目なんぢを躓かせば、抉り出して棄てよ、五體の一つ亡びて、全身ゲヘナに投げ入れられぬはuなり。 |
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二九 もしあなたの右の目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に投げ入れられない方が、あなたにとって益である。 |
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三十 もし右の手なんぢを罪に陷さば之を斷て棄よ蓋五體の一を失ふは全身を地獄に投入らるゝよりは勝れり |
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三〇 もし右の手なんぢを躓かせば、切りて棄てよ、五體の一つ亡びて、全身ゲヘナに往かぬはuなり。 |
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三〇 もしあなたの右の手が罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に落ち込まない方が、あなたにとって益である。 |
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三二 また曰ることあり凡そ人その妻を出さんとせば之に離緣状を與ふべしと |
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三一 また「妻をいだす者は離緣狀を與ふべし」と云へることあり。 |
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三一 また『妻を出す者は離縁状を渡せ』と言われている。 |
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三二 然ど我爾曹に吿ん姦淫の故ならで其妻を出す者は之に姦淫をさしむる也又出されたる婦を娶る者も姦淫を行ふなり |
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三二 されど我は汝らに吿ぐ、淫行の故ならで其の妻をいだす者は、これに姦淫を行はしむるなり。また出されたる女を娶るものは、姦淫を行ふなり。 |
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三二 しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、不品行以外の理由で自分の妻を出す者は、姦淫を行わせるのである。また出された女をめとる者も、姦淫を行うのである。 |
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三三 また古の人に吿て僞の誓を立ること勿なんぢ誓ふ所は必ず主に遂べしと言ること有は爾曹が聞し所なり |
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三三 また古への人に「いつはり誓ふなかれ、なんぢの誓は主に果すべし」と云へる事あるを汝ら聞けり。 |
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三三 また昔の人々に『いつわり誓うな、誓ったことは、すべて主に対して果せ』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。 |
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三四 然ど我なんぢらに吿ん更に誓こと勿れ天を指て誓ふ勿れ是~の座位なれば也 |
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三四 されど我は汝らに吿ぐ、一切ちかふな、天を指して誓ふな、~の御座なればなり。 |
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三四 しかし、わたしはあなたがたに言う。いっさい誓ってはならない。天をさして誓うな。そこは神の御座であるから。 |
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三五 地を指て誓ふこと勿これ~の足なれば也エルサレムを指て誓ふこと勿これ大王の京城なれば也 |
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三五 地を指して誓ふな、~の足臺なればなり。エルサレムを指して誓ふな、大君のキなればなり。 |
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三五 また地をさして誓うな。そこは神の足台であるから。またエルサレムをさして誓うな。それは『大王の都』であるから。 |
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三六 爾の首を指て誓ふ勿そは一すぢの髮だに白しKすること能ざれば也 |
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三六 己が頭を指して誓ふな、なんぢ頭髪一筋だに白くし、またKくし能はねばなり。 |
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三六 また、自分の頭をさして誓うな。あなたは髪の毛一すじさえ、白くも黒くもすることができない。 |
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三七 爾曹たゞ是々否々といへ此より過るは惡より出るなり |
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三七 ただ然り然り、否否といへ、之に過ぐるは惡より出づるなり。 |
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三七 あなたがたの言葉は、ただ、しかり、しかり、否、否、であるべきだ。それ以上に出ることは、悪から来るのである。 |
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三八 目にて目を償ひ齒にて齒を償へと言ること有は爾曹が聞し所なり |
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三八 「目には目を、齒には齒を」と云へることあるを汝ら聞けり。 |
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三八 『目には目を、歯には歯を』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。 |
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三九 然ど我なんぢらに吿ん惡に敵すること勿れ人なんぢの右の頰を批ば亦ほかの頰をも轉して之に向よ |
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三九 されど我は汝らに吿ぐ、惡しき者に抵抗ふな。人もし汝の右の頰をうたば、左をも向けよ。 |
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三九 しかし、わたしはあなたがたに言う。悪人に手向かうな。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。 |
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四十 爾を訟て裏衣を取んとする者には外衣をも亦とらせよ |
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四〇 なんぢを訟へて下衣を取らんとする者には、上衣をも取らせよ。 |
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四〇 あなたを訴えて、下着を取ろうとする者には、上着をも与えなさい。 |
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四一 人なんぢに一里の公役を强なば之と偕に二里ゆけ |
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四一 人もし汝に一里ゆくことを强ひなば、共に二里ゆけ。 |
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四一 もし、だれかが、あなたをしいて一マイル行かせようとするなら、その人と共に二マイル行きなさい。 |
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四二 爾に求る者には予へ借んとする者を郤くる勿れ |
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四二 なんぢに請ふ者にあたへ、借らんとする者を拒むな。 |
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四二 求める者には与え、借りようとする者を断るな。 |
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四三 爾の隣を愛みて其敵を憾べしと言ること有は爾曹が聞し所なり |
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四三 「なんぢの隣を愛し、なんぢの仇を憎むべし」と云へることあるを汝等きけり。 |
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四三 『隣り人を愛し、敵を憎め』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。 |
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四四 然も我なんぢらに吿ん爾曹の敵を愛み爾曹を詛ふ者を祝し爾曹を憎む者を善視し虐遇迫害ものゝ爲に祈禱せよ |
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四四 されど我は汝らに吿ぐ、汝らの仇を愛し、汝らを責むる者のために祈れ。 |
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四四 しかし、わたしはあなたがたに言う。敵を愛し、迫害する者のために祈れ。 |
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四五 如此するは天に在す爾曹の父の子とならん爲なり夫天の父は其日を善者にも惡者にも照し雨を義き者にも義からざる者にも降せ給へり |
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四五 これ天にいます汝らの父の子とならん爲なり。天の父はその日を惡しき者のうへにも、善き者のうヘにも昇らせ、雨を正しき者にも、正しからぬ者にも降らせ給ふなり。 |
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四五 こうして、天にいますあなたがたの父の子となるためである。天の父は、悪い者の上にも良い者の上にも、太陽をのぼらせ、正しい者にも正しくない者にも、雨を降らして下さるからである。 |
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四六 爾曹おのれを愛する者を愛するは何の報賞かあらん稅吏も然せざらん乎 |
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四六 なんぢら己を愛する者を愛すとも何の報をか得べき、取稅人も然するにあらずや。 |
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四六 あなたがたが自分を愛する者を愛したからとて、なんの報いがあろうか。そのようなことは取税人でもするではないか。 |
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四七 安否を兄弟にのみ問は人より何の過たる事かあらん稅吏も然せざらん平 |
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四七 兄弟にのみ挨拶すとも何の勝ることかある、異邦人も然するにあらずや。 |
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四七 兄弟だけにあいさつをしたからとて、なんのすぐれた事をしているだろうか。そのようなことは異邦人でもしているではないか。 |
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四八 是故に天に在す爾曹の父の完全が如く爾曹も完全すべし |
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四八 然らば汝らの天の父の全きが如く、汝らも全かれ。 |
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四八 それだから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。 |
馬太傳iケ書 |
第六章 |
一 なんぢら人に見せん爲に其義を人の前に行ことを愼もし然ずば天に在す爾曹の父より報賞を得じ |
マタイ傳iケ書 |
第六章 |
一 汝ら見られんために己が義を人の前にて行はぬやうに心せよ。然らずば、天にいます汝らの父より報を得じ。 |
マタイによる福音書 |
第六章 |
一 自分の義を、見られるために人の前で行わないように、注意しなさい。もし、そうしないと、天にいますあなたがたの父から報いを受けることがないであろう。 |
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二 是故に施濟を行とき人の榮を得ん爲に會堂や街衢にて僞善者の如く箛を己が前に吹しむる勿れ我まことに爾曹に吿ん彼等は既にその報賞を得たり |
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二 さらば施濟をなすとき、僞著者が人に崇められんとて會堂や街にて爲すごとく、己が前にラッパを鳴すな。誠に汝らに吿ぐ、彼らは旣にその報を得たり。 |
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二 だから、施しをする時には、偽善者たちが人にほめられるため会堂や町の中でするように、自分の前でラッパを吹きならすな。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。 |
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三 なんぢ施濟をするとき右の手の爲ことを左の手に知する勿れ |
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三 汝は施濟をなすとき、右の手のなすことを左の手に知らすな。 |
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三 あなたは施しをする場合、右の手のしていることを左の手に知らせるな。 |
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四 如此するは其施濟の隱れんが爲なり然ば隱たるに鑒たまふ爾の父は明顯に報たまふべし |
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四 是はその施濟の隱れん爲なり。然らば隱れたるに見たまふ汝の父は報い給はん。 |
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四 それは、あなたのする施しが隠れているためである。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いてくださるであろう。 |
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五 なんぢ祈る時に僞善者の如する勿れ彼等は人に見られんが爲に會堂や街衢の隅に立て祈ことを好われ誠に爾曹に吿ん彼等は既にその報賞を得たり |
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五 なんぢら祈るとき、僞善者の如くあらざれ。彼らは人に顯さんとて、會堂や大路の角に立ちて祈ることを好む。誠に汝らに吿ぐ、かれらは旣にその報を得たり。 |
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五 また祈る時には、偽善者たちのようにするな。彼らは人に見せようとして、会堂や大通りのつじに立って祈ることを好む。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。 |
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六 なんぢ祈る時は嚴密なる室にいり戸を閉て隱微たるに在す爾の父に祈れ然ば隱微たるに鑒たまふ爾の父は明顯に報たまふべし |
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六 なんぢは祈るとき、己が部屋にいり、戸を閉ぢて、隱れたるに在す汝の父に祈れ。さらば隱れたるに見給ふなんぢの父は報い給はん。 |
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六 あなたは祈る時、自分のへやにはいり、戸を閉じて、隠れた所においでになるあなたの父に祈りなさい。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いてくださるであろう。 |
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七 爾曹祈る時は異邦人の如く重複語を言なかれ彼等は言おほきを以て聽れんと意へり |
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七 また祈るとき、異邦人のごとく徒らに言を反復すな。彼らは言多きにょりて聽かれんと思ふなり。 |
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七 また、祈る場合、異邦人のように、くどくどと祈るな。彼らは言葉かずが多ければ、聞きいれられるものと思っている。 |
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八 是故に彼等に效こと勿れ爾曹の父は求ざる先に其需用物を知たまへば也 |
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八 さらば彼らに效ふな、汝らの父は求めぬ前に、なんぢらの必要なる物を知りたまふ。 |
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八 だから、彼らのまねをするな。あなたがたの父なる神は、求めない先から、あなたがたに必要なものはご存じなのである。 |
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九 然ば爾曹かく祈るべし天に在ます我儕の父よ願くは爾名を尊崇させ給へ |
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九 この故に汝らは斯く祈れ。「天にいます我らの父よ、願くは、御名の崇められん事を。 |
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九 だから、あなたがたはこう祈りなさい、天にいますわれらの父よ、御名があがめられますように。 |
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十 爾國を臨らせ給へ爾旨の天に成ごとく地にも成せ給へ |
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一〇 御國の來らんことを。御意の天のごとく、地にも行はれん事を。 |
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一〇 御国がきますように。みこころが天に行われるとおり、地にも行われますように。 |
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十一 我儕の日用の糧を今日も與たまへ |
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一一 我らの日用の糧を今日もあたへ給へ。 |
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一一 わたしたちの日ごとの食物を、きょうもお与えください。 |
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十二 我儕に負債ある者を我儕がゆるす如く我儕の負債をも免し給へ |
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一二 我らに負債ある者を我らの免したる如く、我らの免債をも免し給へ。 |
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一二 わたしたちに負債のある者をゆるしましたように、わたしたちの負債をもおゆるしください。 |
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十三 我儕を試探に遇せず惡より拯出し給へ國と權と榮は窮りなく爾の有なればなりアメン |
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一三 我らを嘗試に遇せず、惡より救ひ出したまへ」 |
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一三 わたしたちを試みに会わせないで、悪しき者からお救いください。 |
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十四 爾曹もし人の罪を免さば天に在ます爾曹の父も亦なんぢらを免し給はん |
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一四 汝等もし人の過失を免さば、汝らの天の父も汝らを免し給はん。 |
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一四 もしも、あなたがたが、人々のあやまちをゆるすならば、あなたがたの天の父も、あなたがたをゆるして下さるであろう。 |
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十五 然どもし人の罪を免さずば爾曹の父も爾曹の罪を免し給はざるべし |
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一五 もし人を免さずば、汝らの父も汝らの過失を免し給はじ。 |
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一五 もし人をゆるさないならば、あなたがたの父も、あなたがたのあやまちをゆるして下さらないであろう。 |
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十六 なんぢら斷食するとき僞善者の如き憂容をする勿れ彼等は斷食を人に見ん爲に顏色を損ふ我まことに爾曹に吿ん彼等は既に其報賞を得たり |
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一六 なんぢら斷食するとき、僞善者のごとく、悲しき面容をすな。彼らは斷食することを人に顯さんとて、その顏色を害ふなり。誠に汝らに吿ぐ、彼らは旣にその報を得たり。 |
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一六 また断食をする時には、偽善者がするように、陰気な顔つきをするな。彼らは断食をしていることを人に見せようとして、自分の顔を見苦しくするのである。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。 |
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十七 なんぢ斷食する時は首に膏をぬり面を洗へ |
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一七 なんぢは斷食するとき、頭に油をぬり、顏をあらへ。 |
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一七 あなたがたは断食をする時には、自分の頭に油を塗り、顔を洗いなさい。 |
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十八 如此するは爾の斷食人に見ずして隱微たるに在す爾の父に現れんが爲なり然ば隠微たるに鑒たまふ爾の父は明顯に報たまふべし |
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一八 これ斷食することの人に顯れずして、隱れたるに在す汝の父にあらはれん爲なり。さらば隱れたるに見たまふ汝の父は報い給はん。 |
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一八 それは断食をしていることが人に知れないで、隠れた所においでになるあなたの父に知られるためである。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いて下さるであろう。 |
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十九 蠧くひ銹くさり盜うがらて竊む所の地に財を蓄ふること勿れ |
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一九 なんぢら己がために財寳を地に積むな、ここは蟲と錆とが損ひ、盜人うがちて盜むなり。 |
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一九 あなたがたは自分のために、虫が食い、さびがつき、また、盗人らが押し入って盗み出すような地上に、宝をたくわえてはならない。 |
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二十 蠹くひ銹くさり盜穿て竊ざる所の天に財を蓄ふべし |
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二〇 なんぢら己がために財寳を天に積め、かしこは蟲と錆とが損はず、盜人うがちて盜まぬなり。 |
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二〇 むしろ自分のため、虫も食わず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、宝をたくわえなさい。 |
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二一 蓋なんぢらの財の在ところに心も亦ある可れば也 |
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二一 なんぢの財寳のある所には、なんぢの心もあるべし。 |
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二一 あなたの宝のある所には、心もあるからである。 |
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二二 身の光は目なり若なんぢの目瞭かならば全身も亦明なるべし |
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二二 身の燈火は目なり。この故に汝の目ただしくば、全身あかるからん。 |
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二二 目はからだのあかりである。だから、あなたの目が澄んでおれば、全身も明るいだろう。 |
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二三 若なんぢの目眊らば全身暗かるべし是故に爾の中の光もし暗からば其暗こと如何に大ならず乎 |
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二三 然れど、なんぢの目あしくば、全身くらからん。もし汝の內の光、闇ならば、その闇いかばかりぞや。 |
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二三 しかし、あなたの目が悪ければ、全身も暗いだろう。だから、もしあなたの内なる光が暗ければ、その暗さは、どんなであろう。 |
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二四 人は二人の主に亊ること能ず蓋これを惡かれを愛み此を親み彼を踈べければ也なんぢら~と財に兼事ること能はず |
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二四 人は二人の主に兼事ふること能はず、或は、これを憎み、かれを愛し、或は、これに親しみ、かれを輕しむべければなり。汝ら~と富とに兼事ふること能はず。 |
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二四 だれも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。 |
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二五 是故に我なんぢらに吿ん生命の爲に何を食ひ何を飮また身體の爲に何を衣んと憂慮こと勿れ生命は糧より優り身體は衣よりも優れる者ならず乎 |
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二五 この故に我なんぢらに吿ぐ、何を食ひ、何を飮まんと生命のことを思ひ煩ひ、何を著んと體のことを思ひ煩ふな。生命は糧にまさり、體は衣に勝るならずや。 |
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二五 それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようか、何を飲もうかと、自分の命のことで思いわずらい、何を着ようかと自分のからだのことで思いわずらうな。命は食物にまさり、からだは着物にまさるではないか。 |
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二六 なんぢら天空の鳥を見よ稼ことなく穡ことを爲ず倉に蓄ふることなし然るに爾曹の天の父は之を養ひ給へり爾曹之よりも大に勝るゝ者ならず乎 |
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二六 空の鳥を見よ、播かず、刈らず、倉に收めず、然るに汝らの天の父は、これを養ひたまふ。汝らは之よりも遙に優るる者ならずや。 |
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二六 空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。 |
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二七 爾曹のうち誰か能おもひ煩ひて其生命を寸陰も延得んや |
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二七 汝らの中たれか思ひ煩ひて身の長一尺を加へ得んや。 |
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二七 あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。 |
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二八 また何故に衣のことを思わづらふや野の百合花は如何して長かを思へ勞ず紡がざる也 |
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二八 又なにゆゑ衣のことを思ひ煩ふや。野の百合は如何して育つかを思へ、勞せず、紡がざるなり。 |
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二八 また、なぜ、着物のことで思いわずらうのか。野の花がどうして育っているか、考えて見るがよい。働きもせず、紡ぎもしない。 |
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二九 われ爾曹に吿んソロモンの榮華の極の時だにも其装この花の一に及ざりき |
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二九 然れど我なんぢらに吿ぐ、榮華を極めたるソロモンだに、その服裝この花の一つにも及かざりき。 |
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二九 しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。 |
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三十 ~は今日野に在て明日爐に投入らるゝ草をも如此よそはせ給へば况て爾曹をや嗚呼信仰うすき者よ |
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三〇 今日ありて明日、爐に投げ入れらるる野の草をも、~はかく裝ひ給へば、まして汝らをや、ああ信仰うすき者よ。 |
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三〇 きょうは生えていて、あすは炉に投げ入れられる野の草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。 |
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三一 然ば何を食ひ何を飮なにを衣んとて思わづらふ勿れ |
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三一 さらば何を食ひ、何を飮み、何を著んとて思ひ煩ふな。 |
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三一 だから、何を食べようか、何を飲もうか、あるいは何を着ようかと言って思いわずらうな。 |
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三二 此みな異邦人の求る者なり爾曹の天の父は凡て此等のものゝ必需ことを知たまへり |
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三二 是みな異邦人の切に求むる所なり。汝らの天の父は凡てこれらの物の汝らに必要なるを知り給ふなり。 |
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三二 これらのものはみな、異邦人が切に求めているものである。あなたがたの天の父は、これらのものが、ことごとくあなたがたに必要であることをご存じである。 |
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三三 爾曹まづ~の國と其義とを求よ然ば此等のものは皆なんぢらに加らるべし |
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三三 まづ~の國と~の義とを求めよ、然らば凡てこれらの物は汝らに加へらるべし。 |
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三三 まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添えて与えられるであろう。 |
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三四 是故に明日の事を憂慮なかれ明日は明日の事を思わづらへ一日の苦勞は一日にて足り |
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三四 この故に明日のことを思ひ煩ふな、明日は明日みづから思ひ煩はん。一日の苦勞は一日にて足れり。 |
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三四 だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。 |
馬太傳iケ書 |
第七章 |
一 人を議すること勿れ恐くは爾曹もまた議せられん |
マタイ傳iケ書 |
第七章 |
一 なんぢら人を審くな、審かれざらん爲なり。 |
マタイによる福音書 |
第七章 |
一 人をさばくな。自分がさばかれないためである。 |
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二 爾曹が人を議する如く己も議せらるべし爾曹が人を量るごとく己も量らるべし |
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二 己がさばく審判にて己もさばかれ、己がはかる量にて己も量らるべし。 |
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二 あなたがたがさばくそのさばきで、自分もさばかれ、あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられるであろう。 |
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三 なんぢ兄弟の目にある物屑を視て己が目にある梁木を知らざるは何ぞや |
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三 何ゆゑ兄弟の目にある塵を見て、おのが目にある梁木を認めぬか。 |
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三 なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。 |
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四 己の目に梁木のあるに如何で兄弟にむかひて爾が目にある物屑を我に取せよと曰ことを得んや |
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四 視よ、おのが目に梁木のあるに、いかで兄弟にむかひて、汝の目より塵をとり除かせよと言ひ得んや。 |
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四 自分の目には梁があるのに、どうして兄弟にむかって、あなたの目からちりを取らせてください、と言えようか。 |
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五 僞善者よ先おのれの目より梁木をとれ然ば兄弟の目より物屑を取得るやう明かに見べし |
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五 僞善者よ、まづ己が目より梁木をとり除け、さらば明かに見えて兄弟の目より塵を取りのぞき得ん。 |
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五 偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけるがよい。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からちりを取りのけることができるだろう。 |
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六 犬に聖物を與ふる勿また豕の前に爾曹の眞珠を投與る勿れ恐くは足にて之を踐ふりかへりて爾曹を噬やぶらん |
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六 聖なる物を犬に與ふな。また眞珠を豚の前に投ぐな。恐くは足にて蹈みつけ、向き反りて汝らを嚙みやぶらん。 |
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六 聖なるものを犬にやるな。また真珠を豚に投げてやるな。恐らく彼らはそれらを足で踏みつけ、向きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。 |
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七 求よ然ば與られ尋よ然ばあひ門を叩よ然ば開かるゝことを得ん |
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七 求めよ、然らば與へられん。尋ねよ、さらば見出さん。門を叩け、さらば開かれん。 |
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七 求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば、見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。 |
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八 蓋すべて求る者はえ尋る者はあひ門を叩く者は開かる可ればなり |
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八 すべて求むる者は得、たづぬる者は見いだし、門をたたく者は開かるるなり。 |
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八 すべて求める者は得、捜す者は見いだし、門をたたく者はあけてもらえるからである。 |
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九 爾曹のうち誰か其子パンを求んに石を予んや |
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九 汝等のうち、誰かその子パンを求めんに石を與へ、 |
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九 あなたがたのうちで、自分の子がパンを求めるのに、石を与える者があろうか。 |
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十 また魚を求んに蛇を予んや |
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一〇 魚を求めんに蛇を與へんや。 |
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一〇 魚を求めるのに、へびを与える者があろうか。 |
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十一 然ば爾曹惡き者ながら善賜を其子に與ふるを知まして天に在す爾曹の父は求る者に善物を予ざらん乎 |
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一一 然らば、汝ら惡しき者ながら、善き賜物をその子らに與ふるを知る。まして天にいます汝らの父は、求むる者に善き物を賜はざらんや。 |
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一一 このように、あなたがたは悪い者であっても、自分の子供には、良い贈り物をすることを知っているとすれば、天にいますあなたがたの父はなおさら、求めてくる者に良いものを下さらないことがあろうか。 |
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十二 是故に凡て人に爲られんと欲ことは爾曹また人にも其ごとく爲よ是律法と預言者なる也 |
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一二 然らば凡て人に爲られんと思ふことは、人にも亦その如くせよ。これは律法なり、預言者なり。 |
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一二 だから、何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ。これが律法であり預言者である。 |
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十三 窄き門より入よ沈淪に至る路は濶その門は大なり此より入もの多し |
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一三 狹き門より入れ、滅にいたる門は大きく、その路は廣く、之より入る者おほし。 |
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一三 狭い門からはいれ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い。そして、そこからはいって行く者が多い。 |
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十四 命に至る路は窄その門は少し其路を得もの少なり |
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一四 生命にいたる門は狹く、その路は細く、之を見出すもの少なし。 |
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一四 命にいたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見いだす者が少ない。 |
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十五 僞の預言者を謹めよ彼等は綿羊の姿にて爾曹に來れども內は殘狼なり |
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一五 僞預言者に心せよ、羊の扮裝して來れども、內は奪ひ掠むる豺狼なり。 |
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一五 にせ預言者を警戒せよ。彼らは、羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、その内側は強欲なおおかみである。 |
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十六 是その果に由て知べし誰か荊棘より葡萄をとり蒺藜より無花果を採ことをせん |
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一六 その果によりて彼らを知るべし。茨より葡萄を、薊より無花果をとる者あらんや。 |
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一六 あなたがたは、その実によって彼らを見わけるであろう。茨からぶどうを、あざみからいちじくを集める者があろうか。 |
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十七 凡て善樹は善果を結び惡樹は惡果を結べり |
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一七 斯く、すべて善き樹は善き果をむすび、惡しき樹は惡しき果をむすぶ。 |
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一七 そのように、すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。 |
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十八 善樹は惡果を結ばず惡樹は善果を結ぶこと能ざる也 |
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一八 善き樹は惡しき果を結ぶこと能はず、惡しき樹はよき果を結ぶこと能はず。 |
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一八 良い木が悪い実をならせることはないし、悪い木が良い実をならせることはできない。 |
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十九 凡そ善果を結ざる樹は斫れて火に投入らる |
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一九 すべて善き果を結ばぬ樹は、伐られて火に投げ入れらる。 |
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一九 良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれる。 |
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二十 是故に其果に由て之を知べし |
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二〇 然らば、その果によりて彼らを知るべし。 |
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二〇 このように、あなたがたはその実によって彼らを見わけるのである。 |
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二一 我を召て主よ主よと曰もの盡く天国に入に非ず唯にれに入者は我天に在す父の旨に遵ふ者のみなり |
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二一 我に對ひて主よ主よといふ者、ことごとくは天國に入らず、ただ天にいます我が父の御意をおこなふ者のみ、之に入るべし。 |
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二一 わたしにむかって『主よ、主よ』と言う者が、みな天国にはいるのではなく、ただ、天にいますわが父の御旨を行う者だけが、はいるのである。 |
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二二 某日われに語て主よ主よ主の名に託てをしへ主の名に託て鬼をおひ主の名に託て多く異能を行しに非ずやと云もの多からん |
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二二 その日おほくの者、われに對ひて「主よ主よ、我らは汝の名によりて預言し、汝の名によりて惡鬼を逐ひいだし、汝の名によりて多くの能力ある業を爲ししにあらずや」と言はん。 |
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二二 その日には、多くの者が、わたしにむかって『主よ、主よ、わたしたちはあなたの名によって預言したではありませんか。また、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって多くの力あるわざを行ったではありませんか』と言うであろう。 |
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二三 其時かれらに告?われ甞て爾曹を知ず惡をなす者よ我を離去と曰ん |
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二三 その時われ明白に吿げん「われ斷えて汝らを知らず、不法をなす者よ、我を離れされ」と。 |
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二三 そのとき、わたしは彼らにはっきり、こう言おう、『あなたがたを全く知らない。不法を働く者どもよ、行ってしまえ』。 |
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二四 是故に凡て我この言を聽て行ふ者を磐の上に家を建たる智人に譬ん |
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二四 さらば凡て我がこれらの言をききて行ふ者を、磐の上に家をたてたる慧き人に擬へん。 |
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二四 それで、わたしのこれらの言葉を聞いて行うものを、岩の上に自分の家を建てた賢い人に比べることができよう。 |
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二五 雨ふり大水いで風ふきて其家を撞ども倒ることなし星磐を基礎と爲たれば也 |
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二五 雨ふり流漲り、風ふきて其の家をうてど倒れず、これ磐の上に建てられたる故なり。 |
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二五 雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけても、倒れることはない。岩を土台としているからである。 |
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二六 凡て我この言を聽て行はざる者を沙の上に家を建たる愚なる人に譬ん |
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二六 すべて我がこれらの言をききて行はぬ者を、沙の上に家を建てたる愚なる人に擬へん。 |
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二六 また、わたしのこれらの言葉を聞いても行わない者を、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に比べることができよう。 |
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二七 雨ふり大水いで風ふきて其家を撞ば終には倒てその傾覆おほいなり |
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二七 雨ふり流漲り、風ふきて其の家をうてば、倒れてその顚倒はなはだし』 |
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二七 雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまう。そしてその倒れ方はひどいのである」。 |
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二八 イエス此等の言を語竟たまへるとき集りたる人々其教を駭きあへり |
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二八 イエスこれらの言を語りをへ給へるとき、群衆そのヘに驚きたり。 |
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二八 イエスがこれらの言を語り終えられると、群衆はその教にひどく驚いた。 |
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二九 そは學者の如ならず權威を有る者のく教たまへば也 |
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二九 それは學者らの如くならず、權威ある者のごとくヘへ給へる故なり。 |
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二九 それは律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。 |
馬太傳iケ書 |
第八章 |
一 イエス山を下しとき多の人々これに從へり |
マタイ傳iケ書 |
第八章 |
一 イエス山を下り給ひしとき、大なる群衆これに從ふ。 |
マタイによる福音書 |
第八章 |
一 イエスが山をお降りになると、おびただしい群衆がついてきた。 |
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二 癩病の者きたり拜して曰けるは主もし旨に適ときは我を潔なし得べし |
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二 視よ、一人の癩病人みもとに來り、拜して言ふ『主よ、御意ならば、我を潔くなし給ふを得ん』 |
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二 すると、そのとき、ひとりの重い皮膚病にかかった人がイエスのところにきて、ひれ伏して言った、「主よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。 |
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三 イエス手を伸かれに按て我旨に適へり潔なれと曰ければ癩病たゞちに潔れり |
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三 イエス手をのべ、彼につけて『わが意なり、潔くなれ』と言ひ給へば、癩病ただちに潔れり。 |
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三 イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、重い皮膚病は直ちにきよめられた。 |
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四 イエス彼に曰けるは愼て人に吿る勿れ唯ゆきて己を祭司に見せ且モーセが命ぜし禮物を献て彼等に證據をせよ |
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四 イエス言ひ給ふ『つつしみて誰にも語るな、ただ往きて己を祭司に見せ、モーセが命じたる供物を獻げて、人々に證せよ』 |
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四 イエスは彼に言われた、「だれにも話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた供え物をささげて、人々に証明しなさい」。 |
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五 イエス カペナウムに入しとき百夫の長きたり願て曰けるは |
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五 イエス、カペナウムに入り給ひしとき、百卒長きたり、 |
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五 さて、イエスがカペナウムに帰ってこられたとき、ある百卒長がみもとにきて訴えて言った、 |
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六 主よ我僕癱瘋をやみ家に臥ゐて甚だ惱めり |
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六 請ひていふ『主よ、わが僕、中風を病み、家に臥しゐて甚く苦しめり』 |
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六 「主よ、わたしの僕が中風でひどく苦しんで、家に寝ています」。 |
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七 イエス曰けるは我ゆきて之を醫すべし |
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七 イエス言ひ給ふ『われ往きて醫さん』 |
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七 イエスは彼に、「わたしが行ってなおしてあげよう」と言われた。 |
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八 百夫の長こたへけるは主よ我なんぢを我が屋下に入奉るは恐れ多し唯一言を出し給はゞ我僕は愈ん |
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八 百卒長こたヘて言ふ『主よ、我は汝をわが屋根の下に入れ奉るに足らぬ者なり。ただ御言のみを賜へ、さらば我が僕はいえん。 |
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八 そこで百卒長は答えて言った、「主よ、わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。ただ、お言葉を下さい。そうすれば僕はなおります。 |
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九 蓋われ人の權威の下にある者なるに我下に亦兵卒ありて此に往と曰ばゆき彼に來れと曰ば來る我僕に此を行と曰ば即ち行が故なり |
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九 我みづから權威の下にある者なるに、我が下にまた兵卒ありて、此に「ゆけ」と言へば往き、彼に「きたれ」と言へば來り、わが僕に「これを爲せ」といへば爲すなり』 |
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九 わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。 |
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十 イエスこれを聞て奇み從へる人々に曰けるは我まことに爾曹に吿んイスラエルの中にだに未だ斯る篤信に遇ざる也 |
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一〇 イエス聞きて怪しみ、從へる人々に言ひ給ふ『まことに汝らに吿ぐ、斯る篤き信仰はイスラエルの中の一人にだに見しことなし。 |
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一〇 イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた人々に言われた、「よく聞きなさい。イスラエル人の中にも、これほどの信仰を見たことがない。 |
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十一 われ爾曹に吿ん多の人々東より西より來てアブラハム イサク ヤコブと偕に天國に坐し |
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一一 又なんぢらに吿ぐ、多くの人、東より西より來り、アブラハム、イサク、ヤコブとともに天國の宴につき、 |
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一一 なお、あなたがたに言うが、多くの人が東から西からきて、天国で、アブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席につくが、 |
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十二 國のゥ子は外の幽暗に逐出され其處にて哀哭切齒すること有ん |
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一二 御國の子らは外の暗に逐ひ出され、そこにて哀哭・切齒することあらん』 |
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一二 この国の子らは外のやみに追い出され、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう」。 |
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十三 イエス百夫の長に往なんぢが信仰の如く爾に成べしと曰たまへる是時に僕は愈たり |
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一三 イエス百卒長に『ゆけ、汝の信ずるごとく汝になれ』と言ひ給へば、このとき僕いえたり。 |
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一三 それからイエスは百卒長に「行け、あなたの信じたとおりになるように」と言われた。すると、ちょうどその時に、僕はいやされた。 |
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十四 イエス ペテロの家に入その岳母の熱を煩ひ臥ゐたるを見て |
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一四 イエス、ペテロの家に入り、その外姑の熱を病みて臥しをるを見、 |
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一四 それから、イエスはペテロの家にはいって行かれ、そのしゅうとめが熱病で、床についているのをごらんになった。 |
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十五 その手に捫ければ即ち熱されり婦おきて彼等に事ふ |
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一五 その手に觸り給へば、熱去り、女おきてイエスに事ふ。 |
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一五 そこで、その手にさわられると、熱が引いた。そして女は起きあがってイエスをもてなした。 |
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十六 日暮たるとき人々鬼に憑れたる者を多く携來ければイエス言にて鬼を逐出し病ある者を悉く醫せり |
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一六 夕になりて、人々、惡鬼に憑かれたる者をおはく御許につれ來りたれば、イエス言にて靈を逐ひいだし、病める者をことごとく醫し給へり。 |
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一六 夕暮になると、人々は悪霊につかれた者を大ぜい、みもとに連れてきたので、イエスはみ言葉をもって霊どもを追い出し、病人をことごとくおいやしになった。 |
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十七 預言者イザヤに托て自ら我儕の恙を受われらの病を負と曰たまひしに應せんが爲なり |
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一七 これは預言者イザヤによりて『かれは自ら我らの疾患をうけ、我らの病を負ふ』と云はれし言の成就せん爲なり。 |
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一七 これは、預言者イザヤによって「彼は、わたしたちのわずらいを身に受け、わたしたちの病を負うた」と言われた言葉が成就するためである。 |
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十八 偖イエス多の人々の己を環るを見て弟子に命じ向の岸に往んとし給しに |
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一八 さてイエス群衆の己を環れるを見て、ともに彼方の岸に往かんことを弟子たちに命じ給ふ。 |
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一八 イエスは、群衆が自分のまわりに群がっているのを見て、向こう岸に行くようにと弟子たちにお命じになった。 |
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十九 ある學者きたりて曰けるは師よ何處へ行給ふとも我從はん |
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一九 一人の學者きたりて言ふ『師よ何處にゆき給ふとも、我は從はん』 |
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一九 するとひとりの律法学者が近づいてきて言った、「先生、あなたがおいでになる所なら、どこへでも従ってまいります」。 |
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二十 イエス之に曰けるは狐は穴あり天空の鳥は巢あり然ど人の子は枕する所なし |
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二〇 イエス言ひたまふ『狐は穴あり、空の鳥は塒あり、然れど人の子は枕する所なし』 |
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二〇 イエスはその人に言われた、「きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。しかし、人の子にはまくらする所がない」。 |
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二一 また弟子の一人いひけるは主よ先ゆきて父を葬ることを我に容せ |
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二一 また弟子の一人いふ『主よ、先づ往きて我が父を葬ることを許したまへ』 |
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二一 また弟子のひとりが言った、「主よ、まず、父を葬りに行かせて下さい」。 |
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二二 イエス曰けるは我に從へ死たる者に其死し者を葬らせよ |
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二二 イエス言ひたまふ『我に從へ、死にたる者にその死にたる者を葬らせよ』 |
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二二 イエスは彼に言われた、「わたしに従ってきなさい。そして、その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい」。 |
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二三 イエス舟に登ければ弟子等も之に從ふ |
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二三 かくて舟に乗り給へば、弟子たちも從ふ。 |
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二三 それから、イエスが舟に乗り込まれると、弟子たちも従った。 |
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二四 此とき大なる颶風おこりて舟を蔽ばかりなる浪たちしにイエスは寢たり |
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二四 視よ、海に大なる暴風おこりて、舟、波に蔽はるるばかりなるに、イエスは眠りゐ給ふ。 |
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二四 すると突然、海上に激しい暴風が起って、舟は波にのまれそうになった。ところが、イエスは眠っておられた。 |
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二五 弟子等これに近きて醒し曰けるは主よ救たまへ我儕亡んとす |
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二五 弟子たち御許にゆき、起して言ふ『主よ、救ひたまへ、我らは亡ぶ』 |
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二五 そこで弟子たちはみそばに寄ってきてイエスを起し、「主よ、お助けください、わたしたちは死にそうです」と言った。 |
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二六 イエス彼等に曰けるは信仰うすき者よ何ぞ懼るや遂に起て風と海とを斥ければ大に平息になりぬ |
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二六 彼らに言ひ給ふ『なにゆゑ臆するか、信仰うすき者よ』乃ち起きて、風と海とを禁め給へば、大なる凪となりぬ。 |
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二六 するとイエスは彼らに言われた、「なぜこわがるのか、信仰の薄い者たちよ」。それから起きあがって、風と海とをおしかりになると、大なぎになった。 |
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二七 人々奇みて曰けるは此は如何なる人ぞ風も海も之に從ひたり |
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二七 人々あやしみて言ふ『こは如何なる人ぞ、風も海も從ふとは』 |
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二七 彼らは驚いて言った、「このかたはどういう人なのだろう。風も海も従わせるとは」。 |
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二八 イエス向の岸なるガダラ人の地に至れるとき鬼に憑れたる二人のもの墓より出て彼を迎ふ猛こと甚しくして其途を人の過ること能はざりしほど也 |
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二八 イエス彼方にわたり、ガダラ人の地にゆき給ひしとき、惡鬼に憑かれたる二人のもの、墓より出できたりて之に遇ふ。その猛きこと甚だしく、其處の途を人の過ぎ得ぬほどなり。 |
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二八 それから、向こう岸、ガダラ人の地に着かれると、悪霊につかれたふたりの者が、墓場から出てきてイエスに出会った。彼らは手に負えない乱暴者で、だれもその辺の道を通ることができないほどであった。 |
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二九 かれら呼叫て曰けるは~の子イエスよ我儕なんぢと何の與あらん乎いまだ時いたらざるに我儕を責んとて此處に來るか |
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二九 視よ、かれら叫びて言ふ『~の子よ、われら汝と何の關係あらん。未だ時いたらぬに、我らを責めんとて此處にきたり給ふか』 |
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二九 すると突然、彼らは叫んで言った、「神の子よ、あなたはわたしどもとなんの係わりがあるのです。まだその時ではないのに、ここにきて、わたしどもを苦しめるのですか」。 |
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三十 遙はなれて豕の多のむれ食し居ければ |
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三〇 遙にへだたりて多くの豚の一群、食しゐたりしが、 |
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三〇 さて、そこからはるか離れた所に、おびただしい豚の群れが飼ってあった。 |
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三一 鬼イエスに求て曰けるは若われらを逐出さんとならば豕の群に入ことを容せ |
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三一 惡鬼ども請ひて言ふ『もし我らを逐ひ出さんとならば、豚の群に遣したまへ』 |
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三一 悪霊どもはイエスに願って言った、「もしわたしどもを追い出されるのなら、あの豚の群れの中につかわして下さい」。 |
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三二 彼等に往と曰ければ鬼いでて豕の群に入しに總のむれ山坡より逸て海にいり水に死たり |
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三二 彼らに言ひ給ふ『ゆけ』惡鬼いでて豚に入りたれば、視よ、その群みな崖より海に駈け下りて、水に死にたり。 |
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三二 そこで、イエスが「行け」と言われると、彼らは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れ全体が、がけから海へなだれを打って駆け下り、水の中で死んでしまった。 |
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三三 牧者ども邑に逃走て此事と鬼に憑れたりし者の事を吿ければ |
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三三 飼ふ者ども逃げて町にゆき、凡ての事と惡鬼に憑かれたりし者の事とを吿げたれば、 |
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三三 飼う者たちは逃げて町に行き、悪霊につかれた者たちのことなど、いっさいを知らせた。 |
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三四 イエスに逢んとて邑の者擧て出きたり彼を見て此境を出んことを願へり |
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三四 視よ、町人こぞりてイエスに逢はんとて出できたり、彼を見て、この地方より去り給はんことを請へり。 |
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三四 すると、町中の者がイエスに会いに出てきた。そして、イエスに会うと、この地方から去ってくださるようにと頼んだ。 |
馬太傳iケ書 |
第九章 |
一 イエス舟に登わたりて故邑に至ければ |
マタイ傳iケ書 |
第九章 |
一 イエス舟にのり、渡りて己が町にきたり給ふ。 |
マタイによる福音書 |
第九章 |
一 さて、イエスは舟に乗って海を渡り、自分の町に帰られた。 |
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二 癱瘋にて床に臥たる者を人々舁來れりイエス彼等が信ずるを見て癱瘋の者に曰けるは子よ心安かれ爾の罪赦れたり |
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二 視よ、中風にて床に臥しをる者を、人々みもとに連れ來れり。イエス彼らの信仰を見て、中風の者に言ひたまふ『子よ、心安かれ、汝の罪ゆるされたり』 |
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二 すると、人々が中風の者を床の上に寝かせたままでみもとに運んできた。イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、しっかりしなさい。あなたの罪はゆるされたのだ」と言われた。 |
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三 ある學者たち心の中に謂けるは此人は褻瀆を言り |
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三 視よ、或る學者ら心の中にいふ『この人は~を瀆すなり』 |
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三 すると、ある律法学者たちが心の中で言った、「この人は神を汚している」。 |
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四 イエスその意を知て曰けるは爾曹いかなれば心に惡を懷ふや |
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四 イエスその思を知りて言ひ給ふ『何ゆゑ心に惡しき事をおもふか。 |
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四 イエスは彼らの考えを見抜いて、「なぜ、あなたがたは心の中で悪いことを考えているのか。 |
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五 爾の罪赦されたりと言と起て歩めと言と孰か易き |
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五 汝の罪ゆるされたりと言ふと、起きて歩めと言ふと、孰か易き。 |
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五 あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。 |
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六 それ人の子地にて罪を赦すの權あることを爾曹に知せんとて遂に癱瘋の者に起て床をとり家に歸れと曰ければ |
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六 人の子、地にて罪を赦す權威あることを汝らに知らせん爲に』lここに中風の者に言ひ給ふl『起きよ、床をとりて汝の家にかへれ』 |
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六 しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と言い、中風の者にむかって、「起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。 |
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七 起て其家に歸りぬ |
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七 彼おきて、その家にかへる。 |
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七 すると彼は起きあがり、家に帰って行った。 |
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八 人々これを見て奇み此の如き權を人に賜し~を崇たり |
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八 群衆これを見ておそれ、斯る能力を人にあたへ給へる~を崇めたり。 |
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八 群衆はそれを見て恐れ、こんな大きな権威を人にお与えになった神をあがめた。 |
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九 イエス此より進往マタイと名くる人の稅關に座し居けるを見て我に從へと曰ければ起て從へり |
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九 イエス此處より進みて、マタイといふ人の收稅所に坐しをるを見て『我に從へ』と言ひ給へば、立ちて從へり。 |
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九 さてイエスはそこから進んで行かれ、マタイという人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。 |
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十 イエス彼が家に食するとき稅吏罪ある人おほく來りてイエス及その弟子と偕に坐しければ |
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一〇 家にて食事の席につき居給ふとき、視よ、多くの取稅人・罪人ら來りて、イエス及び弟子たちと共に列る。 |
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一〇 それから、イエスが家で食事の席についておられた時のことである。多くの取税人や罪人たちがきて、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。 |
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十一 パリサイの人これを見て其弟子に曰けるは爾曹の師は何故稅吏や罪ある人と偕に食する乎 |
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一一 パリサイ人これを見て弟子たちに言ふ『なに故なんぢらの師は、取稅人・罪人らと共に食するか』 |
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一一 パリサイ人たちはこれを見て、弟子たちに言った、「なぜ、あなたがたの先生は、取税人や罪人などと食事を共にするのか」。 |
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十二 イエス聞て彼等に曰けるは康强なる者は醫者の助を需ず唯病ある者これを需 |
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一二 之を聞きて言ひたまふ『健かなる者は醫者を要せず、ただ病める者これを要す。 |
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一二 イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。 |
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十三 われ矜恤を欲て祭祀を欲ずといふ此は如何なる意か往て學ぶべし夫わが來るは義人を招ために非ず罪ある人を招きて悔改させんが爲なり |
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一三 なんぢら往きて學ベ「われ憐憫を好みて、犧牲を好まず」とは如何なる意ぞ。我は正しき者を招かんとにあらで、罪人を招かんとて來れり』 |
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一三 『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か、学んできなさい。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。 |
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十四 其時ヨハネの弟子イエスに來て曰けるは我儕とパリサイの人はしばしば斷食するに師の弟子の斷食せざるは何故ぞ |
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一四 爰にヨハネの弟子たち御許にきたりて言ふ『われらとパリサイ人とは斷食するに、何故なんぢの弟子たちは斷食せぬか』。 |
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一四 そのとき、ヨハネの弟子たちがイエスのところにきて言った、「わたしたちとパリサイ人たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。 |
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十五 イエス彼等に曰けるは新カの友その新カと偕に居うちは哀むことを得んや將來新カをひきとらるゝ日きたらん其時には斷食すべき也 |
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一五 イエス言ひたまふ『新カの友だち、新カと偕にをる間は、悲しむことを得んや。されど新カをとらるる日きたらん、その時には斷食せん。 |
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一五 するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいる間は、悲しんでおられようか。しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その時には断食をするであろう。 |
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十六 新き布を以て舊き衣を補ふ者はあらじ蓋つくろふ所のもの反て之を壞その綻び尤も甚だしからん |
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一六 誰も新しき布の裂を舊き衣につぐことは爲じ、補ひたる裂は、その衣をやぶりて、破綻さらに甚だしかるべし。 |
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一六 だれも、真新しい布ぎれで、古い着物につぎを当てはしない。そのつぎきれは着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなるから。 |
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十七 また新き酒を舊き革囊に盛る者はあらじ若しかせば囊はりさけ酒もれいでゝ其囊も亦壞らん新囊に新酒を盛なば兩ながら存べし |
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一七 また新しき葡萄酒をふるき革囊に入るることは爲じ。もし然せば囊はりさけ、酒ほどばしり出でて、囊もまた廢らん。新しき葡萄酒は新しき革囊にいれ、斯て兩ながら保つなり』 |
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一七 だれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、その皮袋は張り裂け、酒は流れ出るし、皮袋もむだになる。だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。そうすれば両方とも長もちがするであろう」。 |
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十八 イエス彼等に此事を言る時ある宰きたり拜して曰けるは我女いま既に死り來て彼に手を按たまはゞ生べし |
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一八 イエス此等のことを語りゐ給ふとき、視よ、一人の司きたり、拜して言ふ『わが娘いま死にたり。然れど來りて御手を之におき給はば活きん』 |
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一八 これらのことを彼らに話しておられると、そこにひとりの会堂司がきて、イエスを拝して言った、「わたしの娘がただ今死にました。しかしおいでになって手をその上においてやって下さい。そうしたら、娘は生き返るでしょう」。 |
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十九 イエス起て彼に從ひ其弟子と偕に往 |
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一九 イエス起ちて彼に伴ひ給ふに、弟子たちも從ふ。 |
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一九 そこで、イエスが立って彼について行かれると、弟子たちも一緒に行った。 |
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二十 十二年血漏を患へる婦うしろに來て其衣の裾に捫れり |
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二〇 視よ、十二年血漏を患ひゐたる女、イエスの後にきたりて、御衣の總にさはる。 |
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二〇 するとそのとき、十二年間も長血をわずらっている女が近寄ってきて、イエスのうしろからみ衣のふさにさわった。 |
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二一 蓋もし衣にだにも捫らば愈んと意へばなり |
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二一 それは御衣にだに觸らば救はれんと心の中にいへるなり。 |
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二一 み衣にさわりさえすれば、なおしていただけるだろう、と心の中で思っていたからである。 |
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二二 イエスふりかへり婦を見て曰けるは女よ心安かれ爾の信仰なんぢを愈せり即ち婦この時より愈 |
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二二 イエスふりかヘり、女を見て言ひたまふ『娘よ、心安かれ、汝の信仰なんぢを救へり』女この時より救はれたり。 |
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二二 イエスは振り向いて、この女を見て言われた、「娘よ、しっかりしなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです」。するとこの女はその時に、いやされた。 |
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二三 イエス宰の家に入しに笛ふく者および多の人の泣咷を見て |
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二三 斯てイエス司の家にいたり、笛ふく者と騷ぐ群衆とを見て言ひたまふ、 |
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二三 それからイエスは司の家に着き、笛吹きどもや騒いでいる群衆を見て言われた。 |
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二四 之に曰けるは退け女は死るに非ずたゞ寢たるのみ人々イエスを哂笑ふ |
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二四 『退け、少女は死にたるにあらず、寐ねたるなり』人々イエスを嘲笑ふ。 |
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二四 「あちらへ行っていなさい。少女は死んだのではない。眠っているだけである」。すると人々はイエスをあざ笑った。 |
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二五 彼等を出しゝ後いりて其手を執しに女起たり |
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二五 群衆の出されし後、いりてその手をとり給へば、少女おきたり。 |
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二五 しかし、群衆を外へ出したのち、イエスは内へはいって、少女の手をお取りになると、少女は起きあがった。 |
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二六 此聲名あまねく其地に播りぬ |
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二六 この聲聞あまねく其の地に弘まりぬ。 |
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二六 そして、そのうわさがこの地方全体にひろまった。 |
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二七 イエス此を去とき二人の瞽者したがひて呼曰けるはダビデの裔よ我儕を憐み給へ |
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二七 イエス此處より進みたまふ時、ふたりの盲人さけびて『ダビデの子よ、我らを憫みたまへ』と言ひつつ從ふ。 |
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二七 そこから進んで行かれると、ふたりの盲人が、「ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」と叫びながら、イエスについてきた。 |
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二八 イエス家に入しに瞽者きたりければ彼等に曰たまひけるは我此事を行得ると信ずるや答けるは主よ然り |
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二八 イエス家にいたり給ひしに、盲人ども御許に來りたれば、之に言ひたまふ『我この事をなし得と信ずるか』彼等いふ『主よ、然り』 |
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二八 そしてイエスが家にはいられると、盲人たちがみもとにきたので、彼らに「わたしにそれができると信じるか」と言われた。彼らは言った、「主よ、信じます」。 |
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二九 イエス彼等の目に手を按て爾曹の信ずる如く爾曹に成べしと曰ければ |
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二九 爰にイエスかれらの目に觸りて言ひたまふ『なんぢらの信仰のごとく汝らに成れ』 |
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二九 そこで、イエスは彼らの目にさわって言われた、「あなたがたの信仰どおり、あなたがたの身になるように」。 |
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三十 其目ひらけたりイエス嚴く戒て之に曰けるは、愼て人に知する勿れ |
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三〇 乃ち彼らの目あきたり。イエス嚴しく戒めて言ひたまふ『愼みて誰にも知らすな』 |
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三〇 すると彼らの目が開かれた。イエスは彼らをきびしく戒めて言われた、「だれにも知れないように気をつけなさい」。 |
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三一 然ども彼等いでゝ遍く其地にイエスの名を播めたり |
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三一 されど彼ら出でて、徧くその地にイエスの事をいひ弘めたり。 |
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三一 しかし、彼らは出て行って、その地方全体にイエスのことを言いひろめた。 |
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三二 瞽者の出るとき人々鬼に憑れたる暗啞をイエスに携來りしに |
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三二 盲人どもの出づるとき、視よ、人々、惡鬼に憑かれたる啞者を御許につれきたる。 |
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三二 彼らが出て行くと、人々は悪霊につかれて口のきけない人をイエスのところに連れてきた。 |
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三三 鬼おひ出されて暗啞ものいへり衆人あやしみ曰けるはイスラエルの中にも未だ斯る事は見ざりき |
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三三 惡鬼おひ出されて啞者ものいひたれば、群衆あやしみて言ふ『かかる事は未だイスラエルの中に顯れざりき』 |
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三三 すると、悪霊は追い出されて、口のきけない人が物を言うようになった。群衆は驚いて、「このようなことがイスラエルの中で見られたことは、これまで一度もなかった」と言った。 |
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三四 パリサイの人曰けるは彼鬼の王に籍て鬼を逐出せる也 |
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三四 然るにパリサイ人いふ『かれは惡鬼の首によりて惡鬼を逐ひ出すなり』 |
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三四 しかし、パリサイ人たちは言った、「彼は、悪霊どものかしらによって悪霊どもを追い出しているのだ」。 |
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三五 イエス遍く都邑を廻其會堂にて教をなし天國の音を宣傳へ民の中なるゥの病すべての疾を愈せり |
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三五 イエス徧く町と村とを巡り、その會堂にてヘへ、御國の音を宣べつたへ、ゥ般の病、もろもろの疾患をいやし給ふ。 |
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三五 イエスは、すべての町々村々を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。 |
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三六 牧者なき羊の如く衆人なやみ又流離になりし故に之を見て憫みたまふ |
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三六 また群衆を見て、その牧ふ者なき羊のごとく惱み、且たふるるを甚く憫み、 |
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三六 また群衆が飼う者のない羊のように弱り果てて、倒れているのをごらんになって、彼らを深くあわれまれた。 |
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三七 其とき弟子等に曰給けるは收稼は多く工人は少し |
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三七 遂に弟子たちに言ひたまふ『收穫はおはく勞動人はすくなし。 |
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三七 そして弟子たちに言われた、「収穫は多いが、働き人が少ない。 |
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三八 故に其稼主に工人を收稼塲に送んことを願ふべし |
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三八 この故に收穫の主に勞動人をその收穫場に遣し給はんことを求めよ』 |
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三八 だから、収穫の主に願って、その収穫のために働き人を送り出すようにしてもらいなさい」。 |
馬太傳iケ書 |
第十章 |
一 偖イエスその十二弟子をよび彼等に汚おる鬼を逐いだし又すべての病すべての疾ひを醫す權を賜へり |
マタイ傳iケ書 |
第一〇章 |
一 斯てイエスその十二弟子を召し、穢れし靈を制する權威をあたへて、之を逐ひ出し、もろもろの病、もろもろの疾患を醫すことを得しめ給ふ。 |
マタイによる福音書 |
第一〇章 |
一 そこで、イエスは十二弟子を呼び寄せて、汚れた霊を追い出し、あらゆる病気、あらゆるわずらいをいやす権威をお授けになった。 |
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二 その十二使徒の名は左の如とし首にはペテロと名け給ひしシモンその兄弟アンデレ ゼベダイの子ヤコブその兄弟ヨハネ |
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二 十二使徒の名は左のごとし。先づペテロといふシモン及びその兄弟アンデレ、ゼべダイの子ヤコブ及びその兄弟ヨハネ、 |
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二 十二使徒の名は、次のとおりである。まずペテロと呼ばれたシモンとその兄弟アンデレ、それからゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ、 |
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三 ピリポ バルトロマイ トマス稅吏マタイ アルパイの子なるヤコブ タツダイと名くるレツバイ |
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三 ピリポ及びバルトロマイ、トマス及び取稅人マタイ、アルパヨの子ヤコブ及びタダイ、 |
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三 ピリポとバルトロマイ、トマスと取税人マタイ、アルパヨの子ヤコブとタダイ、 |
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四 カナンのシモン イスカリオテのユダ是すなはちイエスを賣しゝ者なり |
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四 熱心黨のシモン及びイスカリオテのユダ、このユダはイエスを賣りし者なり、 |
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四 熱心党のシモンとイスカリオテのユダ。このユダはイエスを裏切った者である。 |
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五 イエスこの十二を遣さんとして命じ曰けるは異邦の途に往なかれ又サマリヤ人の邑にも入なかれ |
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五 イエスこの十二人を遣さんとて、命じて言ひたまふ、『異邦人の途にゆくな、又サマリヤ人の町に入るな。 |
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五 イエスはこの十二人をつかわすに当り、彼らに命じて言われた、「異邦人の道に行くな。またサマリヤ人の町にはいるな。 |
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六 惟イスラエルの家の迷へる羊に往 |
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六 寧ろイスラエルの家の失せたる羊にゆけ。 |
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六 むしろ、イスラエルの家の失われた羊のところに行け。 |
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七 往て天國近に在と宣傳よ |
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七 往きて宣べつたへ「天國は近づけり」と言へ。 |
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七 行って、『天国が近づいた』と宣べ伝えよ。 |
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八 病の者を醫し癩病を潔し死たる者を甦らせ鬼を逐出すことをせよ爾曹價なしに受たれば亦價なしに施すべし |
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八 病める者をいやし、死にたる者を甦へらせ、癩病人をきよめ、惡鬼を逐ひいだせ。價なしに受けたれば價なしに與へよ。 |
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八 病人をいやし、死人をよみがえらせ、重い皮膚病にかかった人をきよめ、悪霊を追い出せ。ただで受けたのだから、ただで与えるがよい。 |
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九 爾曹金または銀または錢を貯へ帶る勿れ |
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九 帶のなかに金・銀または錢をもつな。 |
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九 財布の中に金、銀または銭を入れて行くな。 |
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十 行囊二の裏衣履杖も亦然そは工人の其食物を得は宜なり |
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一〇 旅の囊も、二枚の下衣も、鞋も、杖ももつな。勞動人の、その食物を得るは相應しきなり。 |
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一〇 旅行のための袋も、二枚の下着も、くつも、つえも持って行くな。働き人がその食物を得るのは当然である。 |
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十一 凡そク邑に至らば其中の好人を訪て出るまでは其處に留れ |
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一一 何れの町、いづれの村に入るとも、その中にて相應しき者を尋ねいだして、立ち去るまでは其處に留れ。 |
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一一 どの町、どの村にはいっても、その中でだれがふさわしい人か、たずね出して、立ち去るまではその人のところにとどまっておれ。 |
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十二 人の家にいらば其平安を問 |
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一二 人の家に入らば平安を祈れ。 |
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一二 その家にはいったなら、平安を祈ってあげなさい。 |
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十三 その家もし平安を得べき者ならば爾曹の願ふ平安は其家に至らん若し平安を受べからざる者ならば爾曹の顧ふ平安は爾曹に歸るべし |
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一三 その家もし之に相應しくば、汝らの祈る平安は、その上に臨まん。もし相應しからずば、その平安は、なんぢらに歸らん。 |
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一三 もし平安を受けるにふさわしい家であれば、あなたがたの祈る平安はその家に来るであろう。もしふさわしくなければ、その平安はあなたがたに帰って来るであろう。 |
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十四 もし爾曹を接ず爾曹の言を聽ざる者あらば其家または其邑を去とき足の塵を拂へ |
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一四 人もし汝らを受けず、汝らの言を聽かずば、その家、その町を立ち去るとき、足の塵をはらへ。 |
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一四 もしあなたがたを迎えもせず、またあなたがたの言葉を聞きもしない人があれば、その家や町を立ち去る時に、足のちりを払い落しなさい。 |
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十五 われ誠に爾曹に吿ん審判の日到ばソドムとゴモラの地は此邑よりも却て易からん |
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一五 誠に汝らに吿ぐ、審判の日には、その町よりもソドム、ゴモラの他のかた耐へ易からん。 |
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一五 あなたがたによく言っておく。さばきの日には、ソドム、ゴモラの地の方が、その町よりは耐えやすいであろう。 |
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十六 われ爾曹を遣すは羊を狼の中に入るが如し故に蛇の如く智く鴿の如く馴良かれ |
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一六 視よ、我なんぢらを遣すは、羊を豺狼のなかに入るるが如し。この故に蛇のごとく慧く、鴒のごとく素直なれ。 |
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一六 わたしがあなたがたをつかわすのは、羊をおおかみの中に送るようなものである。だから、へびのように賢く、はとのように素直であれ。 |
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十七 愼て人に戒心せよ蓋人なんぢらを集議所に解し又その會堂にて鞭つべければ也 |
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一七 人々に心せよ、それは汝らを衆議所に付し、會堂にて鞭たん。 |
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一七 人々に注意しなさい。彼らはあなたがたを衆議所に引き渡し、会堂でむち打つであろう。 |
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十八 又わが緣故に因て侯伯および王の前に曳るべし是かれらと異邦人に證をなさんが爲なり |
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一八 また汝等わが故によりて、司たち王たちの前に曳かれん。これは彼らと異邦人とに證をなさん爲なり。 |
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一八 またあなたがたは、わたしのために長官たちや王たちの前に引き出されるであろう。それは、彼らと異邦人とに対してあかしをするためである。 |
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十九 人なんぢらを解さば如何なにを言んと思ひ煩らふ勿れ其とき言べき事は爾曹に賜るべし |
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一九 かれら汝らを付さば、如何なにを言はんと思ひ煩ふな、言ふべき事は、その時さづけらるべし。 |
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一九 彼らがあなたがたを引き渡したとき、何をどう言おうかと心配しないがよい。言うべきことは、その時に授けられるからである。 |
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二十 是なんぢら自ら言に非ず爾曹の父の靈その衷に在て言なり |
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二〇 これ言ふものは汝等にあらず、其の中にありて言ひたまふ汝らの父の靈なり。 |
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二〇 語る者は、あなたがたではなく、あなたがたの中にあって語る父の霊である。 |
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二一 兄弟は兄弟を死に付し父は子を付し子は兩親を訴へ且これを殺さしむべし |
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二一 兄弟は兄弟を、父は子を死に付し、子どもは親に逆ひて之を死なしめん。 |
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二一 兄弟は兄弟を、父は子を殺すために渡し、また子は親に逆らって立ち、彼らを殺させるであろう。 |
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二二 又なんぢら我名の爲に凡の人に憾れん然ぎ終まで忍ぶ者は救はるべし |
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二二 又なんぢら我が名のために凡ての人に憎まれん。されど終まで耐へ忍ぶものは救はるべし。 |
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二二 またあなたがたは、わたしの名のゆえにすべての人に憎まれるであろう。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。 |
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二三 この邑にて人なんぢらを責なば他の邑に逃れよ我まことに爾曹に告ん爾曹イスラエルのゥ邑を廻盡さゞる間に人の子は來るべし |
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二三 この町にて、責めらるる時は、かの町に逃れよ。誠に汝らに吿ぐ、なんぢらイスラエルの町々を巡り盡さぬうちに人の子は來るべし。 |
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二三 一つの町で迫害されたなら、他の町へ逃げなさい。よく言っておく。あなたがたがイスラエルの町々を回り終らないうちに、人の子は来るであろう。 |
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二四 弟子は師より優らず僕は主より優らざる也 |
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二四 弟子はその師にまさらず、僕はその主にまさらず、 |
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二四 弟子はその師以上のものではなく、僕はその主人以上の者ではない。 |
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二五 弟子は其師の如く僕は其主の如ならば足ぬべし若し人主を呼てベルゼブルと云ば况て其家の者をや |
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二五 弟子はその師のごとく、僕はその主の如くならば足れり。もし家主をベルゼブルと呼びたらんには、况てその家の者をや。 |
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二五 弟子がその師のようであり、僕がその主人のようであれば、それで十分である。もし家の主人がベルゼブルと言われるならば、その家の者どもはなおさら、どんなにか悪く言われることであろう。 |
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二六 是故に彼等を懼るゝこと勿そは掩れて露れざる者なく隱て知れざる者なければ也 |
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二六 この故に、彼らを懼るな。蔽はれたるものに露れぬはなく、隱れたるものに知られぬは無ければなり。 |
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二六 だから彼らを恐れるな。おおわれたもので、現れてこないものはなく、隠れているもので、知られてこないものはない。 |
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二七 われ幽暗に於て爾曹に告しことを光明に述よ耳をつけて聽しことを屋上に宣播めよ |
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二七 暗Kにて我が吿ぐることを光明にて言へ。耳をあてて聽くことを屋の上にて宣べよ。 |
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二七 わたしが暗やみであなたがたに話すことを、明るみで言え。耳にささやかれたことを、屋根の上で言いひろめよ。 |
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二八 身を殺して魂を殺すこと能はざる者を懼るゝ勿れ唯なんぢら塊と身とを地獄に滅し得る者を懼れよ |
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二八 身を殺して靈魂をころし得ぬ者どもを懼るな、身と靈魂とをゲヘナにて滅し得る者をおそれよ。 |
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二八 また、からだを殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、からだも魂も地獄で滅ぼす力のあるかたを恐れなさい。 |
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二九 二羽の雀に一錢にて售に非ずや然るに爾曹の父の許なくば其一羽も地に隕ること有じ |
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二九 二羽の雀は一錢にて賣るにあらずや、然るに汝らの父の許なくば、その一羽も地に落つること無からん。 |
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二九 二羽のすずめは一アサリオンで売られているではないか。しかもあなたがたの父の許しがなければ、その一羽も地に落ちることはない。 |
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三十 爾曹の頭の髮また皆かぞへらる |
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三〇 汝らの頭の髪までも皆かぞへらる。 |
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三〇 またあなたがたの頭の毛までも、みな数えられている。 |
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三一 故に懼るゝ勿れ爾曹は多の雀よりも優れり |
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三一 この故におそるな、汝らは多くの雀よりも優るるなり。 |
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三一 それだから、恐れることはない。あなたがたは多くのすずめよりも、まさった者である。 |
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三二 然ば凡そ人の前に我を識と言ん者を我も亦天に在す我父の前に之を識と言ん |
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三二 然れば凡そ人の前にて我を言ひあらはす者を、我もまた天にいます我が父の前にて言ひ顯さん。 |
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三二 だから人の前でわたしを受けいれる者を、わたしもまた、天にいますわたしの父の前で受けいれるであろう。 |
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三三 人の前に我を識ずと言ん者を我も亦天に在す我父の前に之を識ずと言べし |
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三三 されど人の前にて我を否む者を、我もまた天にいます我が父の前にて否まん。 |
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三三 しかし、人の前でわたしを拒む者を、わたしも天にいますわたしの父の前で拒むであろう。 |
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三四 地に泰平を出ん爲に我來れりと意なかれ泰平を出さんとに非ず刃を出さん爲に来れり |
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三四 われ地に平和を投ぜんために來れりと思ふな、平和にあらず、反つて劍を投ぜん爲に來れり。 |
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三四 地上に平和をもたらすために、わたしがきたと思うな。平和ではなく、つるぎを投げ込むためにきたのである。 |
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三五 夫わが來るは人を其父に背かせ女を其母に背かせ媳を其姑に背かせんが爲なり |
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三五 それ我が來れるは人をその父より、娘をその母より、媳をその姑嫜より分たん爲なり。 |
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三五 わたしがきたのは、人をその父と、娘をその母と、嫁をそのしゅうとめと仲たがいさせるためである。 |
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三六 人の敵は其家の者なるべし |
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三六 人の仇はその家の者なるベし。 |
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三六 そして家の者が、その人の敵となるであろう。 |
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三七 我よりも父母を愛む者は我に協ざる者なり我よりも子女を愛む者は我に協ざる者なり |
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三七 我よりも父または母を愛する者は、我に相應しからず。我よりも息子または娘を愛する者は、我に相應しからず。 |
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三七 わたしよりも父または母を愛する者は、わたしにふさわしくない。わたしよりもむすこや娘を愛する者は、わたしにふさわしくない。 |
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三八 その十字架を任て我に從はざる者も我に協ざる者なり |
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三八 又おのが十字架をとりて我に從はぬ者は、我に相應しからず。 |
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三八 また自分の十字架をとってわたしに従ってこない者はわたしにふさわしくない。 |
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三九 その生命を得る者は之を失ひ我ために生命を失ふ者は之を得べし |
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三九 生命を得る者は、これを失ひ、我がために生命を失ふ者は、これを得べし。 |
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三九 自分の命を得ている者はそれを失い、わたしのために自分の命を失っている者は、それを得るであろう。 |
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四十 爾曹を接る者は我を接る也また我を接る者は我を遣しゝ者を接るなり |
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四〇 汝らを受くる者は、我を受くるなり。我をうくる者は、我を遣し給ひし者を受くるなり。 |
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四〇 あなたがたを受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。わたしを受けいれる者は、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである。 |
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四一 預言者なるを以その預言者を接る者は預言者の報賞をうけ義人なるを以その義人を接る者は義人の報賞を受 |
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四一 預言者たる名の故に預言者をうくる者は、預言者の報をうけ、義人たる名のゆゑに義人をうくる者は、義人の報を受くべし。 |
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四一 預言者の名のゆえに預言者を受けいれる者は、預言者の報いを受け、義人の名のゆえに義人を受けいれる者は、義人の報いを受けるであろう。 |
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四二 わが弟子なるをもて小き一人の者に冷なる水一杯にても飮する者は誠に爾曹に吿ん必ず其報賞を失はじ |
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四二 凡そわが弟子たる名の故に、この小き者の一人に冷かなる水一杯にても與ふる者は、誠に汝らに吿ぐ、必ずその報を失はざるべし』 |
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四二 わたしの弟子であるという名のゆえに、この小さい者のひとりに冷たい水一杯でも飲ませてくれる者は、よく言っておくが、決してその報いからもれることはない」。 |
馬太傳iケ書 |
第十一章 |
一 イエスその十二弟子に示畢しとき此處をさり道をヘへ廣んが爲に彼等のゥ邑に往り |
マタイ傳iケ書 |
第一一章 |
一 イエス十二弟子に命じ終へてのち、町々にてヘへ、かつ宣傳へんとて、此處を去り給へり。 |
マタイによる福音書 |
第一一章 |
一 イエスは十二弟子にこのように命じ終えてから、町々で教えまた宣べ伝えるために、そこを立ち去られた。 |
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二 偖ヨハネ獄にてキリストの行し業を聞その弟子二人を彼に遣して |
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二 ヨハネ牢舍にてキリストの御業をきき、弟子たちを遣して、 |
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二 さて、ヨハネは獄中でキリストのみわざについて伝え聞き、自分の弟子たちをつかわして、 |
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三 曰せけるは來べき者は爾なるか又われら他に待べき乎 |
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三 イエスに言はしむ『來るべき者は汝なるか、或は他に待つべきか』 |
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三 イエスに言わせた、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか」。 |
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四 イエス彼等に答て曰けるは爾曹が聞ところ見ところの事をヨハネに往て吿よ |
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四 答へて言ひたまふ『ゆきて、汝らが見聞する所をヨハネに吿げよ。 |
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四 イエスは答えて言われた、「行って、あなたがたが見聞きしていることをヨハネに報告しなさい。 |
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五 瞽者はみ跛者はあゆみ癩病人は潔まり聾者はきゝ死たる者は復活され貧者は音を聞せらる |
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五 盲人は見、跛者はあゆみ、癩病人は潔められ、聾者はきき、死人は甦へらせられ、貧しき者は音を聞かせらる。 |
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五 盲人は見え、足なえは歩き、重い皮膚病にかかった人はきよまり、耳しいは聞え、死人は生きかえり、貧しい人々は福音を聞かされている。 |
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六 凡そ我ために躓かざる者はなり |
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六 おほよそ我に躓かぬ者は幸なり』 |
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六 わたしにつまずかない者は、さいわいである」。 |
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七 彼等の歸れる後イエス ヨハネの事を人々に曰けるは爾曹何を見んとて野に出しや風に動さるゝ葦なる乎 |
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七 彼らの歸りたるをり、ヨハネの事を群衆に言ひ出でたまふ『なんぢら何を眺めんとて野に出でし、風にそよぐ葦なるか。 |
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七 彼らが帰ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆に語りはじめられた、「あなたがたは、何を見に荒野に出てきたのか。風に揺らぐ葦であるか。 |
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八 然ば爾曹何を見んとて出しや美服を着たる人なるか美服を着たる者は王宮に在 |
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八 然らば何を見んとて出でし、柔かき衣を著たる人なるか。視よ、やはらかき衣を著たる者は王の家に在り。 |
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八 では、何を見に出てきたのか。柔らかい着物をまとった人か。柔らかい着物をまとった人々なら、王の家にいる。 |
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九 然ば何を見んとて出しや預言者なるか然われ爾曹に吿ん彼は預言者よりも卓越たる者なり |
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九 さらば何のために出でし、預言者を見んとてか。然り、汝らに吿ぐ、預言者よりも勝る者なり。 |
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九 では、なんのために出てきたのか。預言者を見るためか。そうだ、あなたがたに言うが、預言者以上の者である。 |
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十 夫なんぢに先ちて道を備る我が使者を我なんぢの前に遣んと錄されたるは即ち是なり |
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一〇 「視よ、わが使をなんぢの顔の前につかはす。彼は、なんぢの前に、なんぢの道をそなへん」と錄されたるは此の人なり。 |
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一〇 『見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの前に、道を整えさせるであろう』と書いてあるのは、この人のことである。 |
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十一 誠に爾曹に吿ん婦の生たる者の中いまだバプテスマのヨハネより大なる者は起らざりき然ど天國の最小き者も彼よりは大なる也 |
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一一 誠に汝らに吿ぐ、女の產みたる者のうち、バプテスマのヨハネより大なる者は起らぎりき。然れど天國にて小き者も、彼よりば大なり。 |
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一一 あなたがたによく言っておく。女の産んだ者の中で、バプテスマのヨハネより大きい人物は起らなかった。しかし、天国で最も小さい者も、彼よりは大きい。 |
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十二 バプテスマのヨハネの時より今に至るまで人々勵て天國を取んとす勵たる者は之を取り |
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一二 バプテスマのヨハネの時より、今に至るまで、天國は烈しく攻めらる、烈しく攻むる者は、これを奪ふ。 |
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一二 バプテスマのヨハネの時から今に至るまで、天国は激しく襲われている。そして激しく襲う者たちがそれを奪い取っている。 |
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十三 それ凡の預言者と律法の預言したるはヨハネの時までなれば也 |
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一三 凡ての預言者と律法との預言したるは、ヨハネの時までなり。 |
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一三 すべての預言者と律法とが預言したのは、ヨハネの時までである。 |
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十四 若なんぢら我言を承ることを好まば來べきエリヤは是なり |
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一四 もし汝等わが言をうけんことを願はば、來るべきエリヤは此の人なり、 |
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一四 そして、もしあなたがたが受けいれることを望めば、この人こそは、きたるべきエリヤなのである。 |
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十五 耳ありて聽ゆる者は聽べし |
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一五 耳ある者は聽くべし。 |
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一五 耳のある者は聞くがよい。 |
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十六 我この世を何に譬んや童子街に坐し其侶を呼て |
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一六 われ今の代を何に比へん、童子、市場に坐し、友を呼びて、 |
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一六 今の時代を何に比べようか。それは子供たちが広場にすわって、ほかの子供たちに呼びかけ、 |
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十七 われら笛ふけども爾曹をどらず哀をすれども爾曹胸うたずと云に似たり |
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一七 「われら汝等のために笛吹きたれど汝ら踊らず、歎きたれど汝ら胸うたざりき」と言ふに似たり。 |
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一七 『わたしたちが笛を吹いたのに、あなたたちは踊ってくれなかった。弔いの歌を歌ったのに、胸を打ってくれなかった』と言うのに似ている。 |
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十八 蓋ヨハネ來て食ふこと飮ことを爲ざれば鬼に憑れたる者なりと人々言り |
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一八 それはヨハネ來りて、飮食せざれば「惡鬼に憑かれたる者なり」といひ、 |
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一八 なぜなら、ヨハネがきて、食べることも、飲むこともしないと、あれは悪霊につかれているのだ、と言い、 |
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十九 人の子きたりて食ふことをし飮ことを爲れば又食を嗜み酒を好む人稅吏罪ある者の友也といふ然ども智慧は智慧の子に義と爲らるゝ也 |
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一九 人の子、來りて飮食すれば「視よ、食を貪り、酒を好む人、また取稅人・罪人の友なり」と言ふなり。されど智慧は己が業によりて正しとせらる』 |
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一九 また人の子がきて、食べたり飲んだりしていると、見よ、あれは食をむさぼる者、大酒を飲む者、また取税人、罪人の仲間だ、と言う。しかし、知恵の正しいことは、その働きが証明する」。 |
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二十 厥時イエス多の異能を行たまひたるゥ邑の悔改めざるに由て責いひけるは |
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二〇 爰にイエス多くの能力ある業を行ひ給へる町々の悔改めぬによりて、之を責めはじめ給ふ、 |
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二〇 それからイエスは、数々の力あるわざがなされたのに、悔い改めることをしなかった町々を、責めはじめられた。 |
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二一 あゝ禍なる哉コラジンよ噫禍なる哉ベテサイダよ爾曹の中に行し異能を若ツロとシドンに行しならば彼等は早く麻をき灰を蒙りて悔改しなるべし |
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二一 『禍害なる哉、コラジンよ、禍害なる哉、ベツサイダよ、汝らの中にて行ひたる能力ある業をツロとシドンとにて行ひしならば、彼らは早く荒布を著、灰の中にて悔改めしならん。 |
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二一 「わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちのうちでなされた力あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、彼らはとうの昔に、荒布をまとい灰をかぶって、悔い改めたであろう。 |
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二二 われ爾曹に吿ん審判の日にはツロとシドンの刑罪は爾曹よりも却て易からん |
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二二 されば汝らに吿ぐ、審判の日にはツロとシドンとのかた汝等よりも耐へ易からん。 |
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二二 しかし、おまえたちに言っておく。さばきの日には、ツロとシドンの方がおまえたちよりも、耐えやすいであろう。 |
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二三 既に天にまで舉られしカペナウムよ又陰府に落さるべし蓋なんぢに行し異能を若ソドムに行しならば今日までも尚保存しならん |
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二三 カペナウムよ、なんぢは天にまで擧げらるべきか、黃泉にまで下らん。汝のうちにて行ひたる能力ある業をソドムにて行ひしならば、今日までも、かの町は遺りしならん。 |
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二三 ああ、カペナウムよ、おまえは天にまで上げられようとでもいうのか。黄泉にまで落されるであろう。おまえの中でなされた力あるわざが、もしソドムでなされたなら、その町は今日までも残っていたであろう。 |
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二四 我なんぢらに吿ん審判の日にソドムの地は爾よりも却て易かるべし |
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二四 然れば汝らに吿ぐ、審判の日にはソドムの地のかた汝よりも耐へ易からん』 |
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二四 しかし、あなたがたに言う。さばきの日には、ソドムの地の方がおまえよりは耐えやすいであろう」。 |
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二五 其ときイエス答て曰けるは天地の主なる父よ此事を智者達者に隱して赤子に顯したまふを謝す |
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二五 その時イエス答へて言ひたまふ『天地の主なる父よ、われ感謝す、此等のことを智き者、慧き者にかくして嬰兒に顯し給へり。 |
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二五 そのときイエスは声をあげて言われた、「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を知恵のある者や賢い者に隠して、幼な子にあらわしてくださいました。 |
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二六 父よ然それ此の如ほ聖旨に適るなり |
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二六 父よ、然り、斯の如きは御意に適へるなり。 |
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二六 父よ、これはまことにみこころにかなった事でした。 |
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二七 父は我に萬物を予たまへり父の外に子を識もの無また子および子の顯す所の者の外に父を識者なし |
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二七 凡ての物は我わが父より委ねられたり。子を知る者は父の外になく、父をしる者は子また子の欲するままに顯すところの者の外になし。 |
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二七 すべての事は父からわたしに任せられています。そして、子を知る者は父のほかにはなく、父を知る者は、子と、父をあらわそうとして子が選んだ者とのほかに、だれもありません。 |
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二八 凡て勞たる者また重を負る者は我に來れ我爾曹を息ません |
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二八 凡て勞する者・重荷を負ふ者、われに來れ、われ汝らを休ません。 |
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二八 すべて重荷を負うて苦労している者は、わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。 |
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二九 我は心柔和にして謙遜者なれば我軛を負て我に學なんぢら心に平安を獲べし |
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二九 我は柔和にして心卑ければ、我が軛を負ひて我に學べ、さらば靈魂に休息を得ん。 |
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二九 わたしは柔和で心のへりくだった者であるから、わたしのくびきを負うて、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたの魂に休みが与えられるであろう。 |
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三十 蓋わが軛は易わが荷は輕ければ也 |
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三〇 わが軛は易く、わが荷は輕ければなり』 |
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三〇 わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからである」。 |
馬太傳iケ書 |
第十二章 |
一 當時イエス安息日に麥の畑を過しが其弟子たち飢て穗を摘食はじめたり |
マタイ傳iケ書 |
第一二章 |
一 その頃イエス安息日に麥畠をとほり給ひしに、弟子たち飢ゑて穗を摘み、食ひ始めたるを、 |
マタイによる福音書 |
第一二章 |
一 そのころ、ある安息日に、イエスは麦畑の中を通られた。すると弟子たちは、空腹であったので、穂を摘んで食べはじめた。 |
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二 パリサイの人これを見てイエスに曰けるは爾の弟子は安息日に爲まじき事を行り |
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二 パリサイ人、見てイエスに言ふ『視よ、なんぢの弟子は安息日に爲まじき等をなす』 |
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二 パリサイ人たちがこれを見て、イエスに言った、「ごらんなさい、あなたの弟子たちが、安息日にしてはならないことをしています」。 |
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三 之に答けるけダビデおよび從に在し者の饑しとき行し事を未だ讀ざる乎 |
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三 彼らに言ひ給ふ『ダビデがその伴へる人々とともに飢ゑしとき、爲しし事を讀まぬか。 |
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三 そこでイエスは彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが飢えたとき、ダビデが何をしたか読んだことがないのか。 |
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四 即ち~の殿に入て祭司の他に己および從になる者も食ふまじき供のパンを食へり |
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四 即ち~の家に入りて、祭司のほかは、己もその伴へる人々も食ふまじき供のパンを食へり。 |
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四 すなわち、神の家にはいって、祭司たちのほか、自分も供の者たちも食べてはならぬ供えのパンを食べたのである。 |
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五 また安息日に祭司は殿の內にて安息日を犯せども罪なき事を律法に於て讀ざる乎 |
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五 また安息日に祭司らは宮の內にて安息日を犯せども、罪なきことを律法にて讀まぬか。 |
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五 また、安息日に宮仕えをしている祭司たちは安息日を破っても罪にはならないことを、律法で読んだことがないのか。 |
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六 われ爾曹に吿ん殿より大なるもの玆に在 |
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六 われ汝らに吿ぐ、宮より大なる者ここに在り。 |
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六 あなたがたに言っておく。宮よりも大いなる者がここにいる。 |
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七 われ矜恤を欲て祭祀を欲ずとは如何なることか之を知ば罪なき者を罪せざるべし |
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七 「われ憐憫を好みて、犧牲を好まず」とは如何なる意かを、汝ら知りたらんには、罪なき者を罪せざりしならん。 |
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七 『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か知っていたなら、あなたがたは罪のない者をとがめなかったであろう。 |
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八 それ人の子は安息日の主たるなり |
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八 それ人の子は安息日の主たるなり』 |
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八 人の子は安息日の主である」。 |
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九 此を去て彼等の會堂に入しに |
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九 イエス此處を去りて、彼らの會堂に入り給ひしに、 |
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九 イエスはそこを去って、彼らの会堂にはいられた。 |
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十 一手なへたる人ありければ彼等イエスを訴へんとて之に問けるほ安息日には醫すことを行べき乎 |
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一〇 視よ、片手なえたる人あり。人々イエスを訴へんと思ひ、問ひていふ『安息日に人を醫すことは善きか』。 |
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一〇 すると、そのとき、片手のなえた人がいた。人々はイエスを訴えようと思って、「安息日に人をいやしても、さしつかえないか」と尋ねた。 |
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十一 彼等に曰けるは爾曹の中に一の羊を有る者あらんに若その羊安息日に坑に陷らば之を挈上ざる乎 |
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一一 彼らに言ひたまふ『汝等のうち一匹の羊をもてる者あらんに、もし安息日に穴に陷らば、之を取りあげぬか。 |
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一一 イエスは彼らに言われた、「あなたがたのうちに、一匹の羊を持っている人があるとして、もしそれが安息日に穴に落ちこんだなら、手をかけて引き上げてやらないだろうか。 |
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十二 人は羊より優ること幾何ぞや然ば安息日に善を行は宜 |
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一二 人は羊より優るること如何許ぞ。さらば安息日に善をなすは可し』 |
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|
一二 人は羊よりも、はるかにすぐれているではないか。だから、安息日に良いことをするのは、正しいことである」。 |
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十三 遂にその人に爾が手を伸よと曰ければ伸せり即ち他の手の如く愈 |
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一三 爰にかの人に言ひ給ふ『なんぢの手を伸べよ』かれ伸べたれば、他の手のごとく癒ゆ。 |
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一三 そしてイエスはその人に、「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、ほかの手のように良くなった。 |
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十四 パリサイの人いでゝィエスを殺さんと謀れり |
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一四 パリサイ人いでて如何してかイエスを亡さんと議る。 |
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一四 パリサイ人たちは出て行って、なんとかしてイエスを殺そうと相談した。 |
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十五 イエス之を知て此を去しに多の人々これに從ふ凡て疾病ある者をみな愈し |
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一五 イエス之を知りて此處を去りたまふ。多くの人、したがひ來りたれば、ことごとく之を醫し、 |
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一五 イエスはこれを知って、そこを去って行かれた。ところが多くの人々がついてきたので、彼らを皆いやし、 |
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十六 我を人に露すこと勿れと戒たり |
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一六 かつ我を人に知らすなと戒め給へり。 |
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一六 そして自分のことを人々にあらわさないようにと、彼らを戒められた。 |
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十七 これ預言者イザヤの云し言に |
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一七 これ預言者イザヤによりて云はれたる言の成就せんためなり。曰く、 |
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一七 これは預言者イザヤの言った言葉が、成就するためである、 |
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十八 視よ我が選し我僕すなはち我心に適たる我が愛む者われ之に我靈を賦ん彼異邦人に審判を示すべし |
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一八 『視よ、わが選びたる我が僕、わが心のスぶ我が愛しむ者、我わが靈を彼に與へん、彼は異邦人に正義を吿げ示さん。 |
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一八 「見よ、わたしが選んだ僕、わたしの心にかなう、愛する者。わたしは彼にわたしの霊を授け、そして彼は正義を異邦人に宣べ伝えるであろう。 |
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十九 彼は競ことなく喧ことなし人街に於て其聲を聞ことなし |
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一九 彼は爭はず、叫ばず、その聲を大路にて聞く者なからん。 |
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一九 彼は争わず、叫ばず、またその声を大路で聞く者はない。 |
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二十 審判をして勝とげしむるまでは傷る葦を折ことなく煙れる麻を熄ことなし |
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二〇 正義をして勝遂げしむるまでは、傷へる葦を折ることなく、煙れる亞麻を消すことなからん。 |
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二〇 彼が正義に勝ちを得させる時まで、いためられた葦を折ることがなく、煙っている燈心を消すこともない。 |
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二一 異邦人も亦その名にョべしと有に應せん爲なり |
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二一 異邦人も彼の名に望をおかん』 |
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二一 異邦人は彼の名に望みを置くであろう」。 |
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二二 爰に鬼に憑たる瞽の瘖なる者をイエスの所に携來りければ此瞽の瘖を醫して言ひ見るやうに爲り |
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二二 ここに惡鬼に憑かれたる盲目の啞者を御許に連れ來りたれば、之を醫して啞者の物言ひ、見ゆるやうに爲したまひぬ。 |
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二二 そのとき、人々が悪霊につかれた盲人で口のきけない人を連れてきたので、イエスは彼をいやして、物を言い、また目が見えるようにされた。 |
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二三 衆人みな奇みて曰けるは此はダビデの裔には非ざる乎 |
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二三 群衆みな驚きて言ふ『これはダビデの子にあらぬか』 |
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二三 すると群衆はみな驚いて言った、「この人が、あるいはダビデの子ではあるまいか」。 |
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二四 パリサイの人きゝて曰けるは此人は鬼の王ベルゼブルを役ふに非ざれば鬼を逐出ことなし |
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二四 然るにパリサイ人ききて言ふ『この人、惡鬼の首ベルゼブルによらでは惡鬼を逐ひ出すことなし』 |
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二四 しかし、パリサイ人たちは、これを聞いて言った、「この人が悪霊を追い出しているのは、まったく悪霊のかしらベルゼブルによるのだ」。 |
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二五 イエスその心を知て彼等に曰けるは凡て相爭ふ國は亡び凡て相爭ふ邑や家は立べからず |
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二五 イエス彼らの思を知りて言ひ給ふ『すべて分れ爭ふ國はほろび、分れ爭ふ町また家はたたず。 |
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二五 イエスは彼らの思いを見抜いて言われた、「おおよそ、内部で分れ争う国は自滅し、内わで分れ争う町や家は立ち行かない。 |
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二六 サタン若サタンを逐出さば自ら相爭ふなり然ば其國いかで立んや |
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二六 サタンもしサタンを逐ひ出さば、自ら分れ爭ふなり。然らばその國いかで立つべき。 |
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二六 もしサタンがサタンを追い出すならば、それは内わで分れ争うことになる。それでは、その国はどうして立ち行けよう。 |
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二七 若われベルゼブルに由て惡鬼を逐出さば爾曹の子弟は誰に由て之を逐出すや夫かれらは爾曹の裁判人となるべし |
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二七 我もしベルゼブルによりて惡鬼を逐ひ出さば、汝らの子は誰によりて之を逐ひ出すか。この故に彼らは汝らの審判人となるべし。 |
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二七 もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの仲間はだれによって追い出すのであろうか。だから、彼らがあなたがたをさばく者となるであろう。 |
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二八 若われ~の靈に由て鬼を逐出しゝならば~の國はもはや爾曹に至れり |
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二八 然れど我もし~の靈にょりて惡鬼を逐ひ出さば、~の國は旣に汝らに到れるなり。 |
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二八 しかし、わたしが神の霊によって悪霊を追い出しているのなら、神の国はすでにあなたがたのところにきたのである。 |
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二九 また勇士をまづ縛らざれば如何で其家に入その家具を奪ふことを得んや縛て後に其家を奪ふべし |
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二九 人まづ强き者を縛らずば、いかで强き者の家に入りて、その家財を奪ふことを得ん、縛りて後その家を奪ふべし。 |
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二九 まただれでも、まず強い人を縛りあげなければ、どうして、その人の家に押し入って家財を奪い取ることができようか。縛ってから、はじめてその家を掠奪することができる。 |
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三十 我と偕ならざる者は我に背き我と偕に斂ざる者は散すなり |
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三〇 我と偕ならぬ者は我にそむき、我とともに集めぬ者は散すなり。 |
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三〇 わたしの味方でない者は、わたしに反対するものであり、わたしと共に集めない者は、散らすものである。 |
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三一 是故に爾曹に吿ん人々の凡て犯す所の罪と~を瀆ことは赦れん然ど人々の聖靈を瀆ことは赦るべからず |
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三一 この故に汝らに吿ぐ、人の凡ての罪と瀆とは赦されん、されど御靈を瀆すことは赦されじ。 |
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三一 だから、あなたがたに言っておく。人には、その犯すすべての罪も神を汚す言葉も、ゆるされる。しかし、聖霊を汚す言葉は、ゆるされることはない。 |
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三二 言を以て人の子に背く者は赦るべし然ど言をもて聖靈に背く者は今世に於ても亦來世に於ても赦るべからず |
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三二 誰にても言をもて人の子に逆ふ者は赦されん、然れど言をもて聖靈に逆ふ者は、この世にても後の世にても赦されじ。 |
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三二 また人の子に対して言い逆らう者は、ゆるされるであろう。しかし、聖霊に対して言い逆らう者は、この世でも、きたるべき世でも、ゆるされることはない。 |
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三三 或は樹をも善とし其果をも善とせよ或は樹をも惡とし其果をも惡とせよ夫樹は其果に由て知るゝなり |
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三三 或は樹をも善しとし、果をも善しとせよ。或は樹をも惡しとし、果をも惡しとせよ。樹は果によりて知らるるなり。 |
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三三 木が良ければ、その実も良いとし、木が悪ければ、その実も悪いとせよ。木はその実でわかるからである。 |
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三四 あゝ蝮の裔よ爾曹惡にして何で善を言ことを得んや夫心に充るより口に言るゝ者なれば也 |
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三四 蝮の裔よ、なんぢら惡しき者なるに、爭で善きことを言ひ得んや。それ心に滿つるより口に言はるるなり。 |
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三四 まむしの子らよ。あなたがたは悪い者であるのに、どうして良いことを語ることができようか。おおよそ、心からあふれることを、口が語るものである。 |
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三五 善人は心の善庫より善ものを出し惡人はその惡庫より惡ものを出せり |
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三五 善き人は善き倉より善き物をいだし、惡しき人は悪しき倉より惡しき物をいだす。 |
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三五 善人はよい倉から良い物を取り出し、悪人は悪い倉から悪い物を取り出す。 |
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三六 われ爾曹に吿ん凡て人のいふ所の虛言は審判の日に之を訴へざるを得じ |
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三六 われ汝らに吿ぐ、人の語る凡ての虛しき言は、審判の日に糺さるべし。 |
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三六 あなたがたに言うが、審判の日には、人はその語る無益な言葉に対して、言い開きをしなければならないであろう。 |
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三七 それ爾その曰ところの言に由て義とせられ又其いふ言に由て罪ありとせらるゝ也 |
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三七 それは汝の言によりて義とせられ、汝の言によりて罪せらるるなり』 |
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三七 あなたは、自分の言葉によって正しいとされ、また自分の言葉によって罪ありとされるからである」。 |
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三八 此時ある學者とパリサイの人答て曰けるは師よ休徵をなして我儕に見せんことを爾に請ふ |
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三八 爰に或る學者・パリサイ人ら答へて言ふ『師よ、われら汝の徵を見んことを願ふ』 |
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三八 そのとき、律法学者、パリサイ人のうちのある人々がイエスにむかって言った、「先生、わたしたちはあなたから、しるしを見せていただきとうございます」。 |
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三九 答て彼等に曰けるは奸惡なる世は休徵を求されど預言者ヨナの休徵の外は之に休徵を與られじ |
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三九 答へて言ひたまふ『邪曲にして不義なる代は徵を求む、されど預言者ヨナの徵のほかに徵は與へられじ。 |
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三九 すると、彼らに答えて言われた、「邪悪で不義な時代は、しるしを求める。しかし、預言者ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう。 |
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四十 夫ヨナが三日三夜魚の腹の中に在し如く人の子も三日三夜地の中に在べし |
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四〇 即ち「ヨナが三日三夜、大魚の腹の中に在りし」ごとく、人の子も三日三夜、地の中に在るべきなり。 |
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四〇 すなわち、ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、地の中にいるであろう。 |
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四一 ニネベの人審判の日に共に起て今の世の罪を定めん彼等はヨナの誨に由て悔改たり夫ヨナより大なる者こゝに在 |
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四一 ニネベの人、審判のとき今の代の人とともに立ちて之が罪を定めん、彼らはヨナの宣ぶる言によりて悔改めたり。視よ、ヨナよりも勝るもの此處に在り。 |
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四一 ニネベの人々が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、ニネベの人々はヨナの宣教によって悔い改めたからである。しかし見よ、ヨナにまさる者がここにいる。 |
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四二 南の女王さばきの日に共に起て今の世の罪を定めん彼は地の極よりソロモンの智慧を聽んとて來れり夫ソロモンより大なるもの此にあり |
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四二 南の女王、審判のとき今の代の人とともに起きて之が罪を定めん、彼はソロモンの智慧を聽かんとて地の極より來れり。視よ、ソロモンよりも勝る者ここに在り。 |
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四二 南の女王が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果から、はるばるきたからである。しかし見よ、ソロモンにまさる者がここにいる。 |
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四三 惡鬼人より出て旱たる地を巡り安息を求れども得ずして曰けるは |
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四三 穢れし靈、人を出づるときは、水なき處を巡りて休を求む、而して得ず。 |
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四三 汚れた霊が人から出ると、休み場を求めて水の無い所を歩きまわるが、見つからない。 |
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四四 我が出し家に歸らん既に來しに空虛にして掃淨り飾れるを見 |
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四四 乃ち「わが出でし家に歸らん」といひ、歸りてその家の、空きて掃き淨められ、飾られたるを見、 |
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四四 そこで、出てきた元の家に帰ろうと言って帰って見ると、その家はあいていて、そうじがしてある上、飾りつけがしてあった。 |
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四五 遂に往て己よりも惡き七の惡鬼を携へ偕に入て此に居ばその人の後の患狀は前よりも更に惡かるべし此あしき世もまた此の如ならん |
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四五 遂に往きて己より惡しき他の七つの靈を連れきたり、共に入りて此處に住む。されば其の人の後の狀は前よりも惡しくなるなり。邪曲なる此の代も、また斯の如くならん』 |
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四五 そこでまた出て行って、自分以上に悪い他の七つの霊を一緒に引き連れてきて中にはいり、そこに住み込む。そうすると、その人ののちの状態は初めよりももっと悪くなるのである。よこしまな今の時代も、このようになるであろう」。 |
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四六 イエス人々に語をる時その母と兄弟かれに言はんとて外に立ければ |
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四六 イエスなほ群衆にかたり居給ふとき、視よ、その母と兄弟たちと、彼に物言はんとて外に立つ。 |
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四六 イエスがまだ群衆に話しておられるとき、その母と兄弟たちとが、イエスに話そうと思って外に立っていた。 |
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四七 或人イエスに曰けるは爾の母と兄弟なんぢに言はんとして外に立り |
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四七 或人イエスに言ふ『視よ、なんぢの母と兄弟たちと、汝に物言はんとて外に立てり』 |
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四七 それで、ある人がイエスに言った、「ごらんなさい。あなたの母上と兄弟がたが、あなたに話そうと思って、外に立っておられます」。 |
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四八 イエス吿し者に答て曰けるは我母は誰ぞ我兄弟は誰ぞや |
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四八 イエス吿げし者に答へて言ひたまふ『わが母とは誰ぞ、わが兄弟とは誰ぞ』 |
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四八 イエスは知らせてくれた者に答えて言われた、「わたしの母とは、だれのことか。わたしの兄弟とは、だれのことか」。 |
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四九 手を伸その弟子を指て曰けるは是わが母わが兄弟なり |
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四九 斯て手をのべ、弟子たちを指して言ひたまふ『視よ、これは我が母、わが兄弟なり。 |
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四九 そして、弟子たちの方に手をさし伸べて言われた、「ごらんなさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。 |
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五十 蓋すべて我が天に在す父の旨を行ふ者は是わが兄弟わが姊妹わが母なれば也 |
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五〇 誰にても天にいます我が父の御意をおこなふ者は、即ち我が兄弟、わが姊妹、わが母なり』 |
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五〇 天にいますわたしの父のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。 |
馬太傳iケ書 |
第十三章 |
一 當日イエス家を出て海邊に坐せしに |
マタイ傳iケ書 |
第一三章 |
一 その日イエス家を出でて、海邊に坐したまふ。 |
マタイによる福音書 |
第一三章 |
一 その日、イエスは家を出て、海べにすわっておられた。 |
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二 多の人々彼に集來ければイエスは舟に登て坐し凡の人々は岸に立り |
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二 大なる群衆みもとに集りたれば、イエスは舟に乘りて坐したまひ、群衆はみな岸に立てり。 |
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二 ところが、大ぜいの群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に乗ってすわられ、群衆はみな岸に立っていた。 |
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三 イエス譬を以て多端の言を人々に語ぬ種まく者播に出しが |
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三 譬にて數多のことを語りて言ひたまふ、『視よ、種播く者まかんとて出づ。 |
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三 イエスは譬で多くの事を語り、こう言われた、「見よ、種まきが種をまきに出て行った。 |
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四 播るとき路の旁に遺し種あり空中の鳥きたりて啄み盡せり |
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四 播くとき路の傍らに落ちし種あり、鳥きたりて啄む。 |
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四 まいているうちに、道ばたに落ちた種があった。すると、鳥がきて食べてしまった。 |
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五 また土うすき磽地に遺し種あり直に萌出たれど |
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五 土うすき磽地に落ちし種あり、土深かちぬによりて速かに萠え出でたれど、 |
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五 ほかの種は土の薄い石地に落ちた。そこは土が深くないので、すぐ芽を出したが、 |
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六 日の出しとき灼れしかば根なきが故に槁たり |
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六 日の昇りし時やけて根なき故に枯る。 |
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六 日が上ると焼けて、根がないために枯れてしまった。 |
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七 また棘の中に遺し種あり棘そだちて之も蔽げり |
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七 茨の地に落ちし種あり、茨そだちて之を塞ぐ。 |
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七 ほかの種はいばらの地に落ちた。すると、いばらが伸びて、ふさいでしまった。 |
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八 また沃壤に遺し種あり實を結べること或は百倍あるひは六十倍あるひは三十倍せり |
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八 良き地に落ちし種あり、或は百倍、或は六十倍、或は三十倍の實を結べり。 |
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八 ほかの種は良い地に落ちて実を結び、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。 |
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九 耳ありて聽ゆる者は聽べし |
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九 耳ある者は聽くべし』 |
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九 耳のある者は聞くがよい」。 |
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十 弟子等きたりて彼に曰けるは何故に譬をもて彼等に語り給ふや |
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一〇 弟子たち御許に來りて言ふ『なにゆゑ譬にて彼らに語り給ふか』 |
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一〇 それから、弟子たちがイエスに近寄ってきて言った、「なぜ、彼らに譬でお話しになるのですか」。 |
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十一 答て曰けるは爾曹には天國の奥義を知ことを予たまへど彼等には予へ給ざれば也 |
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一一 答へて言ひ給ふ『なんぢらは天國の奥義を知ることを許されたれど、彼らは許されず。 |
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一一 そこでイエスは答えて言われた、「あなたがたには、天国の奥義を知ることが許されているが、彼らには許されていない。 |
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十二 それ有る者は予られてなほ餘あり無有者はその有る者をも奪るゝ也 |
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一二 それ誰にても、有てる人は與へられて愈々豐ならん。然れど有たぬ人は、その有てる物をも取らるべし。 |
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一二 おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう。 |
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十三 彼等は視ても見ず聽ても聽ず悟ざるが故に我譬を以て彼等に語れり |
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一三 この故に彼らには譬にて語る、これ彼らは見ゆれども見ず、聞ゆれども聽かず、また悟らぬ故なり。 |
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一三 だから、彼らには譬で語るのである。それは彼らが、見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである。 |
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十四 イザヤの預言になんぢらは聽ども悟らず視ども見ず |
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一四 斯てイザヤの預言は、彼らの上に成就す。曰く、「なんぢら聞きて聞けども悟らず、見て見れども認めず。 |
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一四 こうしてイザヤの言った預言が、彼らの上に成就したのである。『あなたがたは聞くには聞くが、決して悟らない。見るには見るが、決して認めない。 |
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十五 蓋この民目にて見耳にて聞心にて悟り改めて我に醫されんことを恐その心を頑し耳を蔽ひ目を閉たりと云しに應へり |
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一五 此の民の心は鈍く、耳は聞くに懶く、目は閉ぢたればなり。これ目にて見、耳にて聽き、心にて悟り、飜へりて、我に醫さるる事なからん爲なり」 |
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一五 この民の心は鈍くなり、その耳は聞えにくく、その目は閉じている。それは、彼らが目で見ず、耳で聞かず、心で悟らず、悔い改めていやされることがないためである』。 |
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十六 然ど爾曹の目は見爾曹の耳は聞が故になり |
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一六 されど汝らの目、なんぢらの耳は、見るゆゑに、聞くゆゑに、幸なり。 |
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一六 しかし、あなたがたの目は見ており、耳は聞いているから、さいわいである。 |
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十七 われ誠に爾曹に吿ん多の預言者と義人は爾曹が見ところを見んとしたりしが見ことを得ず爾曹が聞ところを聞んとしたりしが聞ことを得ざりき |
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一七 誠に汝らに吿ぐ、多くの預言者・義人は、汝らが見る所を見んとせしが見ず、なんぢらが聞く所を聞かんとせしが聞かざりしなり。 |
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一七 あなたがたによく言っておく。多くの預言者や義人は、あなたがたの見ていることを見ようと熱心に願ったが、見ることができず、またあなたがたの聞いていることを聞こうとしたが、聞けなかったのである。 |
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十八 故に爾曹播種の譬を聽 |
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一八 然れば汝ら種播く者の譬を聽け。 |
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一八 そこで、種まきの譬を聞きなさい。 |
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十九 天國の教を聞て悟らざれば惡鬼きたりて其心に播れたる種を奪ふ是路の旁に播たる種なり |
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一九 誰にても天國の言をききて悟らぬときは、惡しき者きたりて、其の心に播かれたるものを奪ふ。路の傍らに播かれしとは斯る人なり。 |
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一九 だれでも御国の言を聞いて悟らないならば、悪い者がきて、その人の心にまかれたものを奪いとって行く。道ばたにまかれたものというのは、そういう人のことである。 |
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二十 磽地に播れたる種は是教を聽て速かに喜び受れども |
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二〇 磽地に播かれしとは、御言をききて、直ちに喜び受くれども、 |
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二〇 石地にまかれたものというのは、御言を聞くと、すぐに喜んで受ける人のことである。 |
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二一 己に根なければ暫時のみ教の爲に患難あるひは迫らるゝ事の起る時は忽ち道に礙く者なり |
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二一 己に根なければ暫し耐ふるのみにて、御言のために艱難、あるひは迫害の起るときは、直ちに躓くものなり。 |
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二一 その中に根がないので、しばらく続くだけであって、御言のために困難や迫害が起ってくると、すぐつまずいてしまう。 |
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二二 また棘の中に播れたる種は是教を聽ども此世の思慮と貨財の惑に教を蔽れて實らざる者なり |
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二二 茨の中に播かれしとは、御言をきけども、世の心勞と財貨の惑とに、御言を塞がれて實らぬものなり。 |
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二二 また、いばらの中にまかれたものとは、御言を聞くが、世の心づかいと富の惑わしとが御言をふさぐので、実を結ばなくなる人のことである。 |
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二三 沃壤に播れたる種は是教を聽て悟り實を結こと或は百倍あるひは六十倍あるひは三十倍する者なり |
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二三 良き地に播かれしとは、御言をききて悟り、實を結びて、或は百倍、あるひは六十倍、あるひは三十倍に至るものなり』 |
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二三 また、良い地にまかれたものとは、御言を聞いて悟る人のことであって、そういう人が実を結び、百倍、あるいは六十倍、あるいは三十倍にもなるのである」。 |
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二四 また譬を彼等に示して曰けるは天國は人畑に美種を播に似たり |
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二四 また他の譬を示して言ひたまふ『天國は良き種を畑にまく人のごとし。 |
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二四 また、ほかの譬を彼らに示して言われた、「天国は、良い種を自分の畑にまいておいた人のようなものである。 |
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二五 人々の寢たる間に其敵きたり麥の中に稗子を播て去り |
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二五 人々の眠れる間に、仇きたりて麥のなかに毒麥を播きて去りぬ。 |
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二五 人々が眠っている間に敵がきて、麦の中に毒麦をまいて立ち去った。 |
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二六 苗はえ出て實たるとき稗子も現れたり |
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二六 苗はえ出でて實りたるとき、毒麥もあらはる。 |
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二六 芽がはえ出て実を結ぶと、同時に毒麦もあらわれてきた。 |
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二七 主人の僕きたりて曰けるは主よ畑には美種を播ざりしか如何して稗子ある乎 |
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二七 僕ども來りて家主にいふ「主よ、畑に播きしは良き種ならずや、然るに如何して毒麥あるか」 |
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二七 僕たちがきて、家の主人に言った、『ご主人様、畑におまきになったのは、良い種ではありませんでしたか。どうして毒麦がはえてきたのですか』。 |
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二八 僕に曰けるは敵人これを行り僕主人に曰けるは然らば我儕ゆきて之を拔あつむるは宜か |
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二八 主人いふ「仇のなしたるなり」僕ども言ふ「さらば我らが往きて之を抜き集むるを欲するか」 |
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二八 主人は言った、『それは敵のしわざだ』。すると僕たちが言った『では行って、それを抜き集めましょうか』。 |
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二九 否おそらくは爾曹稗子を拔あつめんとて麥をも共に拔べし |
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二九 主人いふ「いな恐らくは毒麥を抜き集めんとて麥をも共に抜かん。 |
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二九 彼は言った、『いや、毒麦を集めようとして、麦も一緒に抜くかも知れない。 |
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三十 收穫まで二ながら長おけ我かりいれの時まづ稗子を拔集て焚ん爲に之を束ね麥をば我倉に收よと刈者に言ん |
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三〇 兩ながら收穫まで育つに任せよ。收穫のとき我かる者に「まづ毒麥を抜きあつめて、焚くために之を束ね、麥はあつめて我が倉に納れよ」と言はん』 |
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三〇 収穫まで、両方とも育つままにしておけ。収穫の時になったら、刈る者に、まず毒麦を集めて束にして焼き、麦の方は集めて倉に入れてくれ、と言いつけよう』」。 |
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三一 また譬を彼等に示し曰けるは天國は芥種の如し人これを取て畑に播ば |
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三一 また他の譬を示して言ひたまふ『天國は一粒の芥種のごとし、人これを取りてその畑に播くときは、 |
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三一 また、ほかの譬を彼らに示して言われた、「天国は、一粒のからし種のようなものである。ある人がそれをとって畑にまくと、 |
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三二 萬の種よりは小けれども長ては他の草より大にして天空の鳥きたり其枝に宿ほどの樹となる也 |
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三二 萬の種よりも小けれど、育ちては、他の野菜よりも大く、樹となりて空の鳥きたり、其の枝に宿るほどなり』 |
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三二 それはどんな種よりも小さいが、成長すると、野菜の中でいちばん大きくなり、空の鳥がきて、その枝に宿るほどの木になる」。 |
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三三 また譬を彼等に語けるは天國は麪酵の如し婦これをとり三斗の粉の中に藏せば悉く脹發すなり |
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三三 また他の譬を語りたまふ『天國はパンだねのごとし、女これを取りて、三斗の粉の中に入るれば、悉とく脹れいだすなり』 |
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三三 またほかの譬を彼らに語られた、「天国は、パン種のようなものである。女がそれを取って三斗の粉の中に混ぜると、全体がふくらんでくる」。 |
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三四 イエス譬をもて凡て此等の事を衆人に語たまへり譬にあらざれば語り給はず |
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三四 イエスすべて此等のことを、譬にて群衆に語りたまふ、譬ならでは何事も語り給はず。 |
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三四 イエスはこれらのことをすべて、譬で群衆に語られた。譬によらないでは何事も彼らに語られなかった。 |
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三五 これ預言者に託て我譬を設て口を啓き世の始より隱たる事を言出さんと云れたるに應せん爲なり |
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三五 これ預言者によりて云はれたる言の成就せん爲なり。曰く、『われ譬を設けて口を開き、世の創より隱れたる事を言ひ出さん』 |
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三五 これは預言者によって言われたことが、成就するためである、「わたしは口を開いて譬を語り、世の初めから隠されていることを語り出そう」。 |
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三六 遂にイエス衆人を歸して家に入り其弟子きたりて曰けるは畑の稗子の譬を我儕に解たまへ |
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三六 爰に群衆を去らしめて、家に入りたまふ。弟子たち御許に來りて言ふ『畑の毒麥の譬を我らに解きたまへ』 |
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三六 それからイエスは、群衆をあとに残して家にはいられた。すると弟子たちは、みもとにきて言った、「畑の毒麦の譬を説明してください」。 |
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三七 之に答て曰けるは美種を播者は人の子なり |
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三七 答へて言ひ給ふ『良き種を播く者は人の子なり、 |
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三七 イエスは答えて言われた、「良い種をまく者は、人の子である。 |
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三八 畑はこの世界なり美種は是天國のゥ子なり稗子は惡魔の子類なり |
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三八 畑は世界なり、良き種は天國の子どもなり、毒麥は惡しき者の子どもなり、 |
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三八 畑は世界である。良い種と言うのは御国の子たちで、毒麦は悪い者の子たちである。 |
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三九 之をまく敵は惡魔なり收穫は世の末なり刈者は天の使等なり |
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三九 之を播きし仇は惡魔なり、收穫は世の終なり、刈る者は御使たちなり、 |
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三九 それをまいた敵は悪魔である。収穫とは世の終りのことで、刈る者は御使たちである。 |
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四十 稗子の斂て火に焚る如く此世の末に於ても此の如くなるべし |
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四〇 されば毒麥の集められて火に焚かるる如く、世の終にも斯くあるべし。 |
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四〇 だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世の終りにもそのとおりになるであろう。 |
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四一 人の子その使者たちを遣して其國の中より凡て躓礙となる者また惡をなす人を斂て |
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四一 人の子、その使たちを遣さん。彼ら御國の中より凡ての顚躓となる物と不法をなす者とを集あて、 |
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四一 人の子はその使たちをつかわし、つまずきとなるものと不法を行う者とを、ことごとく御国からとり集めて、 |
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四二 之を爐の火に投入るべし其處にて哀哭切齒すること有ん |
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四二 火の爐に投げ入るべし、其處にて哀哭、切齒することあらん。 |
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四二 炉の火に投げ入れさせるであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。 |
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四三 此とき義人は其父の國に於て日の如く輝かん耳ありて聽ゆる者は聽べし |
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四三 其のとき義人は、父の御國にて日のごとく輝かん。耳ある者は聽くべし。 |
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四三 そのとき、義人たちは彼らの父の御国で、太陽のように輝きわたるであろう。耳のある者は聞くがよい。 |
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四四 また天國は畑に藏たる寳の如し人みいださば之わ秘し喜び歸り其所有を盡く賣てその畑を買ふなり |
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四四 天國は畑に隱れたる寳のごとし。人、見出さば之を隱しおきて、喜びゆき、有てる物をことごとく賣りて |
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四四 天国は、畑に隠してある宝のようなものである。人がそれを見つけると隠しておき、喜びのあまり、行って持ち物をみな売りはらい、そしてその畑を買うのである。 |
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四五 また天國は好眞珠を求んとする商人の如し |
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四五 また天國は良き眞珠を求むる商人のごとし。 |
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四五 また天国は、良い真珠を捜している商人のようなものである。 |
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四六 一の値たかき眞球を見出さばその所有を盡く賣て之を買なり |
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四六 價たかき眞珠、一つを見出さば、往きて有てる物をことごとく賣りて、之を買ふなり。 |
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四六 高価な真珠一個を見いだすと、行って持ち物をみな売りはらい、そしてこれを買うのである。 |
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四七 また天國は海に投て各樣の魚をとる網の如し |
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四七 また天國は海におろして、各樣のものを集むる網のごとし。 |
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四七 また天国は、海におろして、あらゆる種類の魚を囲みいれる網のようなものである。 |
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四八 旣に盈れば岸に曳あげ坐てその嘉ものを器にいれ惡ものを棄るなり |
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四八 充つれば岸にひきあげ、坐して良きものを器に入れ、惡しきものを棄つるなり。 |
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四八 それがいっぱいになると岸に引き上げ、そしてすわって、良いのを器に入れ、悪いのを外へ捨てるのである。 |
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四九 世の末に於ても此の如ならん天の便等いでゝ義者の中より惡者を取わけ |
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四九 世の終にも斯くあるべし、御使等いでて、義人の中より、惡人を分ちて、 |
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四九 世の終りにも、そのとおりになるであろう。すなわち、御使たちがきて、義人のうちから悪人をえり分け、 |
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五十 之を爐の火に投入べし其處にて哀哭切齒すること有ん |
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五〇 之を火の爐に投げ入るべし。其處にて哀哭・切齒することあらん。 |
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五〇 そして炉の火に投げこむであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。 |
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五一 イエス彼等に曰けるは此事を皆悟しや彼に曰けるは主よ然 |
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五一 汝等これらの事をみな悟りしか』彼等いふ『然り』 |
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五一 あなたがたは、これらのことが皆わかったか」。彼らは「わかりました」と答えた。 |
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五二 イエス彼等に曰けるは然ば天國について教られたる學者は新しさ物と舊き物とを其庫より出す家の主の如し |
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五二 また言ひ給ふ『この故に、天國のことをヘへられたる凡ての學者は、新しき物と舊き物とをその倉より出す家主のごとし』 |
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五二 そこで、イエスは彼らに言われた、「それだから、天国のことを学んだ学者は、新しいものと古いものとを、その倉から取り出す一家の主人のようなものである」。 |
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五三 イエス此譬を言畢て此を去ぬ |
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五三 イエスこれらの譬を終へて此處を去りたまふ。 |
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五三 イエスはこれらの譬を語り終えてから、そこを立ち去られた。 |
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五四 其故土にいたり會堂にて教しに人々奇み曰けるは此人の智慧と異なる能は何處より來るや |
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五四 己がクにいたり、會堂にてヘへ給へば、人々おどろきて言ふ『この人はこの智慧と此等の能力とを何處より得しぞ。 |
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五四 そして郷里に行き、会堂で人々を教えられたところ、彼らは驚いて言った、「この人は、この知恵とこれらの力あるわざとを、どこで習ってきたのか。 |
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五五 これ木匠の子にあらずや其母はマリア其兄弟はヤコブ ヨセ シモン ユダに非ずや |
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五五 これ木匠の子にあらずや、其の母はマリヤ、其の兄弟はヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダにあらずや。 |
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五五 この人は大工の子ではないか。母はマリヤといい、兄弟たちは、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。 |
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五六 其妹等は皆我儕と偕に在に非ずや然るに此人の凡て此等の事は何處より來しや |
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五六 又その姊妹も皆われらと共にをるに非ずや。然るに此等のすべての事は何處より得しぞ』 |
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五六 またその姉妹たちもみな、わたしたちと一緒にいるではないか。こんな数々のことを、いったい、どこで習ってきたのか」。 |
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五七 遂に厭て之を棄イエス彼等に曰けるは預言者は其故土其家の外に於て尊まれざることなし |
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五七 遂に人々かれに躓けり。イエス彼らに言ひたまふ『預言者はおのがク、おのが家の外にて尊ばれざる事なし』 |
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五七 こうして人々はイエスにつまずいた。しかし、イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里や自分の家以外では、どこででも敬われないことはない」。 |
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五八 彼等が信ずることなきに由て多の異なる能を此に行給はざりき |
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五八 彼らの不信仰によりて、其處にては多くの能力ある業を爲し給はざりき。 |
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五八 そして彼らの不信仰のゆえに、そこでは力あるわざを、あまりなさらなかった。 |
馬太傳iケ書 |
第十四章 |
一 其ころ分封の君ヘロデ イエスの聲名を聞て |
マタイ傳iケ書 |
第一四章 |
一 そのころ、國守ヘロデ、イエスの噂をききて、 |
マタイによる福音書 |
第一四章 |
一 そのころ、領主ヘロデはイエスのうわさを聞いて、 |
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二 その僕に曰けるは是バプテスマのヨハネなり彼死より甦りたり故に異なる能を行ふなり |
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二 侍臣どもに言ふ『これバプテスマのヨハネなり。かれ死人の中より甦へりたり、然ればこそ此等の能力その內に働くなれ』 |
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二 家来に言った、「あれはバプテスマのヨハネだ。死人の中からよみがえったのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」。 |
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三 前にヘロデその兄弟ピリポの妻ヘロデヤの事に由てヨハネを捕へ縛て獄に入たり |
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三 ヘロデ先に己が兄弟ピリポの妻へロデヤの爲にヨハネを捕へ、縛りて獄に入れたり。 |
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三 というのは、ヘロデは先に、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、ヨハネを捕えて縛り、獄に入れていた。 |
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四 此はヨハネ ヘロデに此婦を娶るは宜しからずと云しに因 |
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四 ヨハネ、ヘロデに『かの女を納るるは宣しからず』と言ひしに因る。 |
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四 すなわち、ヨハネはヘロデに、「その女をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。 |
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五 彼ヨハネを殺さんと欲ど民これを預言者とするにより彼等を懼たりしが |
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五 斯てヘロデ、ヨハネを殺さんと思へど、群衆を懼れたり。群衆ヨハネを預言者とすればなり。 |
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五 そこでヘロデはヨハネを殺そうと思ったが、群衆を恐れた。彼らがヨハネを預言者と認めていたからである。 |
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六 ヘロデ誕生の日を祝へる時ヘロデヤの女その座上にて舞をなしヘロデをスばせければ |
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六 然るにへロデの誕生日に當り、ヘロデヤの娘その席上に舞をまひてヘロデを喜ばせたれば、 |
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六 さてヘロデの誕生日の祝に、ヘロデヤの娘がその席上で舞をまい、ヘロデを喜ばせたので、 |
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七 何なる物にても求に任て予んとヘロデ之に誓たり |
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七 へロデ之に何にても求むるままに與へんと誓へり。 |
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七 彼女の願うものは、なんでも与えようと、彼は誓って約束までした。 |
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八 女その母の勸ありしに因バプテスマのヨハネの首を盆に載て此に賜れと曰 |
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八 娘その母に唆かされて言ふ『バプテスマのヨハネの首を盆に載せてここに賜はれ』 |
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八 すると彼女は母にそそのかされて、「バプテスマのヨハネの首を盆に載せて、ここに持ってきていただきとうございます」と言った。 |
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九 王憂けれども既に誓たると席に列れる者の爲に予ることを命じ |
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九 王、憂ひたれど、その誓と席に在る者とに對して、之を與ふることを命じ、 |
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九 王は困ったが、いったん誓ったのと、また列座の人たちの手前、それを与えるように命じ、 |
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十 即ち人を遣し獄に於てヨハネの首を斬せ |
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一〇 人を遣し獄にてヨハネの首を斬り、 |
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一〇 人をつかわして、獄中でヨハネの首を切らせた。 |
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十一 その首を盆に載て女に予ければ女は之を其母に捧たり |
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一一 その首を盆にのせて持ち來らしめ、之を少女に與ふ。少女はこれを母に捧ぐ。 |
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一一 その首は盆に載せて運ばれ、少女にわたされ、少女はそれを母のところに持って行った。 |
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十二 ヨハネの弟子等來りて屍を取これを葬り往てイエスに吿 |
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一二 ヨハネの弟子たち來り、屍體を取りて葬り、往きてイエスに吿ぐ。 |
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一二 それから、ヨハネの弟子たちがきて、死体を引き取って葬った。そして、イエスのところに行って報告した。 |
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十三 イエスこれを聞て人をさけ舟に登て其處を去さびしき處に往給ひしが衆人きゝて歩行にて彼に從へり |
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一三 イエス之を聞きて人を避け、其處より舟にのりて寂しき處に往き給ひしを、群衆ききて町々より徒歩にて從ひゆく。 |
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一三 イエスはこのことを聞くと、舟に乗ってそこを去り、自分ひとりで寂しい所へ行かれた。しかし、群衆はそれと聞いて、町々から徒歩であとを追ってきた。 |
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十四 イエス出て多の人を見て之を憫み其病る者を醫せり |
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一四 イエス出でて大なる群衆を見、これを憫みて、その病める者を醫し給へり。 |
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一四 イエスは舟から上がって、大ぜいの群衆をごらんになり、彼らを深くあわれんで、そのうちの病人たちをおいやしになった。 |
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十五 日くるゝ時其弟子きたりて曰けるは此は寂寞ところにして時もはや遲しゥ邑に往て自ら食を求させん爲に人々を去しめよ |
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一五 夕になりたれば、弟子たち御許に來りて言ふ『ここは寂しき處、はや時も晩し、群衆を去らしめ、村々に往きて、己が爲に食物を買はせ給へ』 |
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一五 夕方になったので、弟子たちがイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。群衆を解散させ、めいめいで食物を買いに、村々へ行かせてください」。 |
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十六 イエス彼等に曰けるは人々往ずとも可爾曹之に食を予よ |
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一六 イエス言ひ給ふ『かれら往くに及ばず、汝ら之に食物を與へよ』 |
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一六 するとイエスは言われた、「彼らが出かけて行くには及ばない。あなたがたの手で食物をやりなさい」。 |
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十七 答けるは我儕此にたゞ五のパンと二の魚あるのみ |
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一七 弟子たち言ふ『われらが此處にもてるは唯五つのパンと二つの魚とのみ』 |
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一七 弟子たちは言った、「わたしたちはここに、パン五つと魚二ひきしか持っていません」。 |
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十八 イエス曰けるは其を此に携來れ |
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一八 イエス言ひ給ふ『それを我に持ちきたれ』 |
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一八 イエスは言われた、「それをここに持ってきなさい」。 |
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十九 遂に衆人に命じて草の上に坐しめ五のパンと二の魚をとり天を仰て謝しパンを擘て弟子にあたふ弟子之を衆人に予ぬ |
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一九 斯て群衆に命じて、草の上に坐せしめ、五つのパンと二つの魚とを取り、天を仰ぎて祝し、パンを裂きて、弟子たちに與へ給へば、弟子たち之を群衆に與ふ。 |
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一九 そして群衆に命じて、草の上にすわらせ、五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさいて弟子たちに渡された。弟子たちはそれを群衆に与えた。 |
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二十 みな食て飽其餘たる屑を拾しに十二の筐に盈たり |
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二〇 凡ての人、食ひて飽く、裂きたる餘を集めしに十二の筐に滿ちたり。 |
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二〇 みんなの者は食べて満腹した。パンくずの残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。 |
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二一 食し者は婦と幼童の外凡そ五千人なりき |
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二一 食ひし者は、女と子供とを除きて凡そ五千人なりき。 |
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二一 食べた者は、女と子供とを除いて、おおよそ五千人であった。 |
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二二 頓てイエス衆人を歸さんとして其弟子を强て舟にのせ向の岸へ先に渡しむ |
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二二 イエス直ちに弟子たちを强ひて舟に乘らせ、自ら群衆をかへす間に、彼方の岸に先に往かしむ。 |
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二二 それからすぐ、イエスは群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸へ先におやりになった。 |
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二三 斯て衆人を歸しければ祈禱せんとて密に山に上り日暮て獨そこに在せり |
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二三 斯て群衆を去らしめてのち、祈らんとて窃に山に登り、夕になりて獨そこにゐ給ふ。 |
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二三 そして群衆を解散させてから、祈るためひそかに山へ登られた。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。 |
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二四 舟は海中に在て逆風の爲に浪に漂はさる |
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二四 舟ははや陸より數丁はなれ、風逆ふによりて波に難されゐたり。 |
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二四 ところが舟は、もうすでに陸から数丁も離れており、逆風が吹いていたために、波に悩まされていた。 |
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二五 夜の四時ごろイエス海の上を歩て之に至しに |
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二五 夜明の四時ごろ、イエス海の上を歩みて、彼らに到り給ひしに、 |
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二五 イエスは夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らの方へ行かれた。 |
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二六 弟子其海の上を歩るを見て驚き此は變化の物ならんと曰て懼れ叫たり |
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二六 弟子たち其の海の上を歩み給ふを見て心騷ぎ、變化の者なりと言ひて懼れ叫ぶ。 |
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二六 弟子たちは、イエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと言っておじ惑い、恐怖のあまり叫び声をあげた。 |
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二七 イエス頓て彼等に曰けるは心安かれ我なり懼るゝ勿れ |
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二七 イエス直ちに彼らに語りて言ひたまふ『心安かれ、我なり、懼るな』 |
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二七 しかし、イエスはすぐに彼らに声をかけて、「しっかりするのだ、わたしである。恐れることはない」と言われた。 |
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二八 ペテロ答て曰けるは主よ若し爾ならば我に命じ水を履て爾の所に至しめよ |
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二八 ペテロ答へて言ふ『主よ、もし汝ならば我に命じ、水を蹈みて、御許に到らしめ給へ』 |
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二八 するとペテロが答えて言った、「主よ、あなたでしたか。では、わたしに命じて、水の上を渡ってみもとに行かせてください」。 |
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二九 來と曰給ひければペテロ舟より下てイエスの所に至んとて浪の上を歩たれど |
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二九 『來れ』と言ひ給へば、ペテロ舟より下り、水の上を歩みてイエスの許に往く。 |
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二九 イエスは、「おいでなさい」と言われたので、ペテロは舟からおり、水の上を歩いてイエスのところへ行った。 |
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三十 風の烈きを見て懼れ沈かゝりければ主よ我を救たまへと曰 |
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三〇 然るに風を見て懼れ、沈みかかりければ叫びて言ふ『主よ、我を救ひたまへ』 |
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三〇 しかし、風を見て恐ろしくなり、そしておぼれかけたので、彼は叫んで、「主よ、お助けください」と言った。 |
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三一 イエス頓て手を伸之を執て曰けるは信仰うすき者よ何ぞ疑ふや |
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三一 イエス直ちに御手を伸べ、これを捉へて言ひ給ふ『ああ信仰うすき者よ、何ぞ疑ふか』 |
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三一 イエスはすぐに手を伸ばし、彼をつかまえて言われた、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」。 |
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三二 偕に舟に登ければ風しづまりぬ |
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三二 相共に舟に乘りしとき、風やみたり。 |
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三二 ふたりが舟に乗り込むと、風はやんでしまった。 |
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三三 舟に居し者ちかよりて彼を拜し曰けるは誠に爾は~の子なり |
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三三 舟に居る者どもイエスを拜して言ふ『まことに汝は~の子なり』 |
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三三 舟の中にいた者たちはイエスを拝して、「ほんとうに、あなたは神の子です」と言った。 |
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三四 遂に渡てゲネサレの地に到しかば |
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三四 遂に渡りてゲネサレの地に著きしに、 |
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三四 それから、彼らは海を渡ってゲネサレの地に着いた。 |
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三五 其處の人々イエスを識て遍く四方に人を遣L凡て病の者を携へ來らしむ |
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三五 その處の人々イエスを認めて、徧く四方に人をつかはし、又すべての病める者を連れきたり、 |
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三五 するとその土地の人々はイエスと知って、その附近全体に人をつかわし、イエスのところに病人をみな連れてこさせた。 |
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三六 只其衣の裾に捫らんことをイエスに願へり捫し者は即ちみな愈されたり |
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三六 ただ御衣の總にだに觸らしめ給はんことを願ふ、觸りし者は、みな醫されたり。 |
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三六 そして彼らにイエスの上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいとお願いした。そしてさわった者は皆いやされた。 |
馬太傳iケ書 |
第十五章 |
一 時にエルサレムの學者とパリサイの人イエスに來て曰けるは |
マタイ傳iケ書 |
第一五章 |
一 爰にパリサイ人・學者ら、エルサレムより來りてイエスに言ふ、 |
マタイによる福音書 |
第一五章 |
一 ときに、パリサイ人と律法学者たちとが、エルサレムからイエスのもとにきて言った、 |
|
|
二 爾の弟子古の人の遺傳を犯は何故ぞ蓋食する時に其手を洗ざれば也 |
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|
二 『なにゆゑ汝の弟子は、古への人の言傳を犯すか、食事のときに手を洗はぬなり』 |
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|
二 「あなたの弟子たちは、なぜ昔の人々の言伝えを破るのですか。彼らは食事の時に手を洗っていません」。 |
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|
三 答て彼等に曰けるは爾曹は亦なんぢらの遣傳によりて~の誡を犯は何故で |
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三 答へて言ひ給ふ「なにゆゑ汝らは、また汝らの言傳によりて~の誡命を犯すか。 |
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三 イエスは答えて言われた、「なぜ、あなたがたも自分たちの言伝えによって、神のいましめを破っているのか。 |
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|
四 それ~いましめて爾の父母を敬へ又父母を詈る者は殺さるべしと宣給へり |
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四 即ち~は「父母を敬へ」と言ひ「父また母を罵る者は必ず殺さるべし」と言ひたまへり。 |
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四 神は言われた、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。 |
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五 然るに爾曹は曰て凡て人父母に對なんぢを養ふ可ものは禮物なりと云ば |
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|
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五 然るに汝らは「誰にても父また母に對ひて我が負ふ所のものは、供物となりたりと言はば、 |
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五 それだのに、あなたがたは『だれでも父または母にむかって、あなたにさしあげるはずのこのものは供え物です、と言えば、 |
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|
六 その父母を敬はずとも可とす斯て爾曹遺傳により~の誡を廢くせり |
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六 父また母を敬ふに及ばず」と言ふ。斯くその言傳によりて~の言を空しうす。 |
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六 父または母を敬わなくてもよろしい』と言っている。こうしてあなたがたは自分たちの言伝えによって、神の言を無にしている。 |
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七 僞善者よイザヤは能なんぢらに就て預言し |
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七 僞善者よ、宜なる哉イザヤは汝らに就きて能く預言せり。曰く、 |
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七 偽善者たちよ、イザヤがあなたがたについて、こういう適切な預言をしている、 |
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八 此民は口にて我に近き唇にて我を敬へども其心は我に遠かり |
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八 「この民は口唇にて我を敬ふ、然れど其の心は我に遠ざかる。 |
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八 『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。 |
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九 人の誡を教となして徒らに我を拜すと云り |
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九 ただ徒らに我を拜む。人の訓誡をヘとしヘヘて」』 |
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九 人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』」。 |
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十 イエス人々を召て彼等に曰けるは聽て悟れ |
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一〇 斯て群衆を呼び寄せて言ひたまふ『聽きて悟れ。 |
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一〇 それからイエスは群衆を呼び寄せて言われた、「聞いて悟るがよい。 |
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十一 口に入ものは人を汚さず口より出るものは是人を汚すなり |
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一一 口に入るものは人を汚さず、然れど口より出づるものは、これ人を汚すなり』 |
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一一 口にはいるものは人を汚すことはない。かえって、口から出るものが人を汚すのである」。 |
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十二 弟子きたりてイエスに曰けるはパリサイの人この言を聞て厭棄るを爾知か |
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一二 爰に弟子たち御許に來りていふ『御言をききてパリサイ人の躓きたるを知り給ふか』 |
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一二 そのとき、弟子たちが近寄ってきてイエスに言った、「パリサイ人たちが御言を聞いてつまずいたことを、ご存じですか」。 |
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十三 答て曰けるは我が天の父の植ざる者はみな拔るべし |
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一三 答へて言ひ給ふ『わが天の父の植ゑ給はぬものは、みな抜かれん。 |
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一三 イエスは答えて言われた、「わたしの天の父がお植えにならなかったものは、みな抜き取られるであろう。 |
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十四 彼等を棄おけ瞽者の相する瞽者なり若めしひのもの瞽者を相せば二人とも溝に落べし |
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一四 彼らを捨ておけ、盲人を手引する盲人なり、盲人もし盲人を手引せば、二人とも穴に落ちん』 |
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一四 彼らをそのままにしておけ。彼らは盲人を手引きする盲人である。もし盲人が盲人を手引きするなら、ふたりとも穴に落ち込むであろう」。 |
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十五 ペテロ イエスに答て曰けるは此譬を我儕に解たまへ |
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一五 ペテロ答へて言ふ『その譬を我らに解き給へ』 |
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一五 ペテロが答えて言った、「その譬を説明してください」。 |
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十六 イエス曰けるは爾曹も未だ悟ざる乎 |
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一六 イエス言ひ給ふ『なんぢらも今なほ悟なきか。 |
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一六 イエスは言われた、「あなたがたも、まだわからないのか。 |
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十七 凡て口に入ものは腹を運て厠に落るを未だ知ざるか |
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一七 凡て口に入るものは腹にゆき、遂に厠に棄てらるる事を悟らぬか。 |
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一七 口にはいってくるものは、みな腹の中にはいり、そして、外に出て行くことを知らないのか。 |
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十八 口より出るものは心より出これ人を汚すもの也 |
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一八 然れど口より出づるものは心より出づ、これ人を汚すものなり。 |
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一八 しかし、口から出て行くものは、心の中から出てくるのであって、それが人を汚すのである。 |
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十九 蓋心より出る所の惡念 凶殺 姦淫 苟合 盜竊 妄證 謗讟 |
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一九 それ心より惡しき念いづ、即ち殺人・姦淫・淫行・竊盜・僞證・誹謗、 |
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一九 というのは、悪い思い、すなわち、殺人、姦淫、不品行、盗み、偽証、誹りは、心の中から出てくるのであって、 |
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二十 此等は人を汚ものなり然ども手を洗ずして食ふは人を汚さず |
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二〇 これらは人を汚すものなり、然れど洗はぬ手にて食する事は人を汚さず』 |
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二〇 これらのものが人を汚すのである。しかし、洗わない手で食事することは、人を汚すのではない」。 |
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二一 イエス此を去てツロとシドンの地に往けるに |
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二一 イエスここを去りてツロとシドンとの地方に往き給ふ。 |
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二一 さて、イエスはそこを出て、ツロとシドンとの地方へ行かれた。 |
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二二 其地に在るカナンの婦いでゝ呼はり曰けるは主よダビデの裔よ我を憫み給へ我むすめ鬼に憑れて甚く苦めり |
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二二 視よ、カナンの女、その邊より出できたり、叫びて『主よ、ダビデの子よ、我を憫み給へ、わが娘、惡鬼につかれて甚く苦しむ』と言ふ。 |
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二二 すると、そこへ、その地方出のカナンの女が出てきて、「主よ、ダビデの子よ、わたしをあわれんでください。娘が悪霊にとりつかれて苦しんでいます」と言って叫びつづけた。 |
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二三 イエス一言も彼に答ざりしかば其弟子きたり請て曰けるは我儕の後より呼はるが故に彼を去せ給へ |
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二三 されどイエス一言も答へ給はず。弟子たち來り請ひて言ふ『女を歸したまへ、我らの後より叫ぶなり』 |
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二三 しかし、イエスはひと言もお答えにならなかった。そこで弟子たちがみもとにきて願って言った、「この女を追い払ってください。叫びながらついてきていますから」。 |
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二四 答て曰けるはイスラエルの家の迷へる羊の外に我は遣されず |
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二四 答へて言ひたまふ『我はイスラエルの家の失せたる羊のほかに遣されず』 |
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二四 するとイエスは答えて言われた、「わたしは、イスラエルの家の失われた羊以外の者には、つかわされていない」。 |
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二五 婦きたり拜して曰けるは主よ我を助たまへ |
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二五 女きたり拜して言ふ『主よ、我を助けたまへ』 |
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二五 しかし、女は近寄りイエスを拝して言った、「主よ、わたしをお助けください」。 |
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二六 答けるは兒女のパンを取て犬に投與ふるは宜からず |
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二六 答へて言ひたまふ『子供のパンをとりて、小狗に投げ與ふるは善からず』 |
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二六 イエスは答えて言われた、「子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。 |
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二七 婦いひけるは主よ然されど犬もその主人の膳より落る屑を食なり |
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二七 女いふ『然り、主よ、小狗も主人の食卓よりおつる食屑を食ふなり』 |
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二七 すると女は言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、小犬もその主人の食卓から落ちるパンくずは、いただきます」。 |
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二八 遂にイエス答て曰けるは婦よ爾の信仰は大なり願の如く爾に成べし此時より其女いえたり |
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二八 爰にイエス答へて言ひたまふ『をんなよ、汝の信仰は大なるかな、願のごとく汝になれ』娘この時より瘉えたり。 |
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二八 そこでイエスは答えて言われた、「女よ、あなたの信仰は見あげたものである。あなたの願いどおりになるように」。その時に、娘はいやされた。 |
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二九 イエス此を去ガリラヤの海邊にゆき山に登りて坐せり |
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二九 イエス此處を去り、ガリラヤの海邊にいたり、而して山に登り、そこに坐し給ふ。 |
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二九 イエスはそこを去って、ガリラヤの海べに行き、それから山に登ってそこにすわられた。 |
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三十 多の人や跛者 瞽者 瘖者 殘缺者をよび各樣の疾病ある者を伴ひきたりイエスの足下に置ければ即ち之を醫しぬ |
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三〇 大なる群衆、跛者・不具・盲人・啞者および他の多くの者を連れ來りて、イエスの足下に置きたれば、醫し給へり。 |
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三〇 すると大ぜいの群衆が、足、手、目や口などが不自由な人々、そのほか多くの人々を連れてきて、イエスの足もとに置いたので、彼らをおいやしになった。 |
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三一 是に於て瘖者はものいひ殘疾はいえ跛者はあゆみ瞽者は見たるを人々見て奇みイスラエルの~を榮たり |
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三一 群衆は、啞者の物いひ、不具の瘉え、跛者の歩み、盲人の見えたるを見て之を怪しみ、イスラエルの~を崇めたり。 |
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三一 群衆は、口のきけなかった人が物を言い、手や足が不自由だった人がいやされ、盲人が見えるようになったのを見て驚き、そしてイスラエルの神をほめたたえた。 |
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三二 イエスその弟子を呼て曰けるは我この衆人を憫む彼等われと偕に居こと三日にして食ふものなし飢させて去しむることを欲ず恐くは途間にて惱ん |
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三二 イエス弟子たちを召して言ひ給ふ『われ比の群衆をあはれむ、旣に三日われと偕にをりて食ふべき物なし。飢ゑたるままにて歸らしむるを好まず、恐くは途にて疲れ果てん』 |
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三二 イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。しかし、彼らを空腹のままで帰らせたくはない。恐らく途中で弱り切ってしまうであろう」。 |
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三三 其弟子かれに曰けるは野にて此多くの人に飽するほどのパンを何處より得んや |
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三三 弟子たち言ふ『この寂しき地にて、斯く大なる群衆を飽かしむべき多くのパンを、何處より得べき』 |
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三三 弟子たちは言った、「荒野の中で、こんなに大ぜいの群衆にじゅうぶん食べさせるほどたくさんのパンを、どこで手に入れましょうか」。 |
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三四 イエス彼等に曰けるはパン幾何あるや答けるは七と些少の魚あり |
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三四 イエス言ひ給ふ『パン幾つあるか』彼らいふ『七つ、また小き魚すこしあり』 |
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三四 イエスは弟子たちに「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります。また小さい魚が少しあります」と答えた。 |
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三五 イエス人々に命じて地に坐しめ |
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三五 イエス群衆に命じて地に坐せしめ、 |
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三五 そこでイエスは群衆に、地にすわるようにと命じ、 |
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三六 七のパンと魚を取て謝し之を擘て其弟子に予しかば弟子これを人々に予ふ |
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三六 七つのパンと魚とを取り、謝して之をさき弟子たちに與ヘ給へば、弟子たち之を群衆に與ふ。 |
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三六 七つのパンと魚とを取り、感謝してこれをさき、弟子たちにわたされ、弟子たちはこれを群衆にわけた。 |
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三七 食てみな飽たり餘の屑を拾しに七の籃に盈り |
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三七 凡ての人くらひて飽き、裂きたる餘を拾ひしに、七つの籃に滿ちたり。 |
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三七 一同の者は食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七つのかごにいっぱいになった。 |
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三八 之を食るもの婦と孩子の外に四千人ありき |
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三八 食ひし者は、女と子供とを除きて四千人なりき。 |
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三八 食べた者は、女と子供とを除いて四千人であった。 |
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三九 イエス人々を去しめ舟に登てマグダラの境に至れり |
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三九 イエス群衆をかへし、舟に乘りてマガダンの地方に往き給へり. |
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三九 そこでイエスは群衆を解散させ、舟に乗ってマガダンの地方へ行かれた。 |
馬太傳iケ書 |
第十六章 |
一 パリサイとサドカイの人きたりてイエスを試んとて天の休徵を我儕に見せよと曰ければ |
マタイ傳iケ書 |
第一六章 |
一 パリサイ人とサドガイ人と來りてイエスを試み、天よりの徵を示さんことを請ふ。 |
マタイによる福音書 |
第一六章 |
一 パリサイ人とサドカイ人とが近寄ってきて、イエスを試み、天からのしるしを見せてもらいたいと言った。 |
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二 彼等に答けるは爾曹暮には夕紅に由て晴ならんと言 |
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二 答へて言ひたまふ『夕には汝ら「空あかき故に、晴ならん」と言ひ、 |
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二 イエスは彼らに言われた、「あなたがたは夕方になると、『空がまっかだから、晴だ』と言い、 |
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三 晨には朝紅また曇に由て今日は雨ならんといふ僞善者よ空の景色を別ことを知て時の休徵を別ち能はざる乎 |
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三 また朝には「そら赤くして曇る故に、今日は風雨ならん」と言ふ。なんぢら空の氣色を見分くることを知りて、時の徵を見分くること能はぬか。 |
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三 また明け方には『空が曇ってまっかだから、きょうは荒れだ』と言う。あなたがたは空の模様を見分けることを知りながら、時のしるしを見分けることができないのか。 |
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四 姦惡なる世は休徵を求るとも預言者ヨナの休徵のほか休徵を予られじ遂に彼等を離れて去ね |
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四 邪曲にして不義なる代は徵を求む、然れどヨナの徵の外に徵は與へられじ』斯て彼らを離れて去り給ひぬ。 |
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四 邪悪で不義な時代は、しるしを求める。しかし、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう」。そして、イエスは彼らをあとに残して立ち去られた。 |
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五 その弟子むかふの岸に到しにパンを携ふることを忘たり |
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五 弟子たち彼方の岸に到りしに、パンを携ふることを忘れたり。 |
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五 弟子たちは向こう岸に行ったが、パンを持って来るのを忘れていた。 |
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六 イエス彼等に曰けるは戒心してパリサイとサドカイの人の麪酵を愼めよ |
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六 イエス言ひたまふ『愼みてパリサイ人とサドカイ人とのパン種に心せよ』 |
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六 そこでイエスは言われた、「パリサイ人とサドカイ人とのパン種を、よくよく警戒せよ」。 |
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七 弟子たがひに論じて曰けるは是パンを携へざりし故ならん |
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七 弟子たち互に『我らはパンを携へぎりき』と語り合ふ。 |
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七 弟子たちは、これは自分たちがパンを持ってこなかったためであろうと言って、互に論じ合った。 |
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八 イエスこれを知て曰けるは信仰うすき者よ何ぞ互にパンを携へざりしことを論ずる乎 |
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八 イエス之を知りて言ひ給ふ『ああ信仰うすき者よ、何ぞパン無きことを語り合ふか。 |
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八 イエスはそれと知って言われた、「信仰の薄い者たちよ、なぜパンがないからだと互に論じ合っているのか。 |
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九 未だ悟らざるか五千人に五のパンを予しとき幾筐ひろひし乎 |
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九 未だ悟らぬか、五つのパンを五千人に分ちて、その餘を幾筐ひろひ、 |
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九 まだわからないのか。覚えていないのか。五つのパンを五千人に分けたとき、幾かご拾ったか。 |
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十 また四千人に七のパンを予しとき幾籃ひろひしや爾曹これを記ざるか |
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一〇 また七つのパンを四千人に分ちて、その餘を幾籃ひろひしかを覺えぬか。 |
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一〇 また、七つのパンを四千人に分けたとき、幾かご拾ったか。 |
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十一 パリサイとサドカイの人の麪酵を愼めとはパンにつきて言るに非るを何ぞ悟らざる |
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一一 我が言ひしはパンの事にあらぬを何ぞ悟らざる。唯パリサイ人とサドカイ人とのパンだねに心せよ』 |
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一一 わたしが言ったのは、パンについてではないことを、どうして悟らないのか。ただ、パリサイ人とサドカイ人とのパン種を警戒しなさい」。 |
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十二 是に於て弟子その麪酵にはあらでパリサイとサドカイの人の教を謹めと言るなるも悟れり |
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一二 爰に弟子たちイエスの心せよと言ひ給ひしは、パンの種にはあらで、パリサイ人とサドカイ人とのヘなることを悟れり。 |
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一二 そのとき彼らは、イエスが警戒せよと言われたのは、パン種のことではなく、パリサイ人とサドカイ人との教のことであると悟った。 |
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十三 イエス カイザリヤ ピリピの方に到しとき其弟子に問て曰けるは人々は人の子を誰と言や |
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一三 イエス、ピリポ・カイザリヤの地方にいたり、弟子たちに問ひて言ひたまふ『人々は人の子を誰と言ふか』 |
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一三 イエスがピリポ・カイザリヤの地方に行かれたとき、弟子たちに尋ねて言われた、「人々は人の子をだれと言っているか」。 |
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十四 彼等いひけるは或人はバプテスマのヨハネ或人はエリヤ或人はエレミヤまた預言者の一人なりと言り |
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一四 彼等いふ『或人はバプテスマのヨハネ、或人はエリヤ、或人はエレミヤ、また預言者の一人』 |
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一四 彼らは言った、「ある人々はバプテスマのヨハネだと言っています。しかし、ほかの人たちは、エリヤだと言い、また、エレミヤあるいは預言者のひとりだ、と言っている者もあります」。 |
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十五 彼等に曰けるは爾曹は我を言て誰とする乎 |
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一五 彼らに言ひたまふ『なんぢらは我を誰と言ふか』 |
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一五 そこでイエスは彼らに言われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。 |
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十六 シモン ペテロ答けるは爾はキリスト活~の子なり |
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一六 シモン・ペテロ答へて言ふ『なんぢはキリスト、活ける~の子なり』 |
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一六 シモン・ペテロが答えて言った、「あなたこそ、生ける神の子キリストです」。 |
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十七 イエス答て彼に曰けるはヨナの子シモン爾はなり蓋血肉なんぢに示せるに非ず天に在す吾父なり |
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一七 イエス答へて言ひ給ふ『バルヨナ・シモン、汝は幸なり、汝に之を示したるは血肉にあらず、天にいます我が父なり。 |
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一七 すると、イエスは彼にむかって言われた、「バルヨナ・シモン、あなたはさいわいである。あなたにこの事をあらわしたのは、血肉ではなく、天にいますわたしの父である。 |
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十八 我また爾に吿ん爾はペテロなり我が教會をこの磐の上に建べし陰府の門は之に勝べからず |
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一八 我はまた汝に吿ぐ、汝はペテロなり、我この磐の上に我がヘ會を建てん、黃泉の門はこれに勝たざるべし。 |
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一八 そこで、わたしもあなたに言う。あなたはペテロである。そして、わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てよう。黄泉の力もそれに打ち勝つことはない。 |
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十九 又われ天國の鑰を爾に予ん爾が地に於て繫ことは天に於ても繫なんぢが地に於て釋ことは天に於ても釋べし |
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一九 われ天國の鍵を汝に與へん、凡そ汝が地にて縛ぐ所は、天にても縛ぎ、地にて解く所は天にても解くなり』 |
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一九 わたしは、あなたに天国のかぎを授けよう。そして、あなたが地上でつなぐことは、天でもつながれ、あなたが地上で解くことは天でも解かれるであろう」。 |
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二十 遂に其弟子を戒めけるは我をキリストと人に吿ること勿れ |
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二〇 爰にイエス己がキリストなる事を誰にも吿ぐなと弟子たちを戒め給へり。 |
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二〇 そのとき、イエスは、自分がキリストであることをだれにも言ってはいけないと、弟子たちを戒められた。 |
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二一 此時よりイエス其弟子に己のエルサレムに往て長老祭司の長學者等より多の苦みを受かつ殺され第三日に甦る等なすべき事を示し始む |
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二一 この時よりイエス・キリスト、弟子たちに、己のエルサレムに往きて、長老・祭司長・學者らより多くの苦難を受け、かつ殺され、三日めに甦へるべき事を示し始めたまふ。 |
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二一 この時から、イエス・キリストは、自分が必ずエルサレムに行き、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受け、殺され、そして三日目によみがえるべきことを、弟子たちに示しはじめられた。 |
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二二 ペテロ イエスを援とめて主よ宜らず此事爾に來るまじと曰ければ |
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二二 ペテロ、イエスを傍にひき戒め出でて言ふ『主よ、然あらざれ、此の事なんぢに起らざるべし』 |
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二二 すると、ペテロはイエスをわきへ引き寄せて、いさめはじめ、「主よ、とんでもないことです。そんなことがあるはずはございません」と言った。 |
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二三 イエス反顧てペテロに曰たまひけるはサタンよ我後に退け爾は我に礙く者なり夫爾は~の事を思はず人の事を思へり |
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二三 イエス振反りてペテロに言ひ給ふ『サタンよ、我が後に退け、汝はわが躓物なり、汝は~のことを思はず、反つて人のことを思ふ』 |
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二三 イエスは振り向いて、ペテロに言われた、「サタンよ、引きさがれ。わたしの邪魔をする者だ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている」。 |
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二四 此時イエス其弟子に曰けるは若我に從はんと欲ふ者は己を棄その十字架を負て我に從へ |
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二四 爰にイエス弟子たちに言ひたまふ『人もし我に從ひ來らんと思はば、己をすて、己が十字架を負ひて、我に從へ。 |
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二四 それからイエスは弟子たちに言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。 |
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二五 蓋生命を保全せんとする者は之を失ひ我ために其生命を失ふ欲ふ者は己を棄その十字架を負て我に從へ |
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二五 己が生命を救はんと思ふ者は、これを失ひ、我がために、己が生命をうしなふ者は、之を得べし。 |
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二五 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのために自分の命を失う者は、それを見いだすであろう。 |
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二五 蓋生命を保全せんとする者は之を失ひ我ために其生命を失ふに易んや |
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二六 人、全世界を羸くとも、己が生命を損せば、何のuあらん、又その生命の代に何を與へんや。 |
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二六 たとい人が全世界をもうけても、自分の命を損したら、なんの得になろうか。また、人はどんな代価を払って、その命を買いもどすことができようか。 |
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二七 それ人の子は父の榮光を以て其使等と偕に來らん其時おのおのの行に由て報ゆべし |
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二七 人の子は父の榮光をもて、御使たちと共に來らん。その時おのおのの行爲に隨ひて報ゆべし。 |
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二七 人の子は父の栄光のうちに、御使たちを従えて来るが、その時には、実際のおこないに応じて、それぞれに報いるであろう。 |
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二八 誠に爾曹に吿ん人の子其國を以て來るを見までは此に立ものの中に死ざる者あるべし |
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二八 誠に汝らに吿ぐ、ここに立つ者のうちに、人の子のその國をもて來るを見るまでは、死を味はぬ者どもあり』 |
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二八 よく聞いておくがよい、人の子が御国の力をもって来るのを見るまでは、死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。 |
馬太傳iケ書 |
第十七章 |
一 六日の後イエス ペテロ ヤコブその兄弟ヨハネを伴ひ人を避て高山に登り給しが |
マタイ傳iケ書 |
第一七章 |
一 六曰の後、イエス、ペテロ、ヤコブ及びヤコブの兄弟ヨハネを率きつれ、人を避けて高き山に登りたまふ。 |
マタイによる福音書 |
第一七章 |
一 六日ののち、イエスはペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。 |
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二 彼等の前にて其容貌かはり其面日の如く輝き其衣は白く光れり |
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二 斯て彼らの前にて其の狀かはり、其の顔は日のごとく輝き、その衣は光のごとく白くなりぬ。 |
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二 ところが、彼らの目の前でイエスの姿が変り、その顔は日のように輝き、その衣は光のように白くなった。 |
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三 モーセとエリヤ現れてイエスと偕に語ぬ |
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三 視よ、モーセとエリヤとイエスに語りつつ彼らに現る。 |
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三 すると、見よ、モーセとエリヤが彼らに現れて、イエスと語り合っていた。 |
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四 ペテロ答てイエスに曰けるは主よ我儕こゝに居は善もし尊旨に適はゞ我儕に三の廬を建せたまへ一は主のため一はモーセのため一はエリヤの爲にせん |
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四 ペテロ差出でてイエスに言ふ『主よ、我らの此處に居るは善し。御意ならば我ここに三つの廬を造り、一つを汝のため、一つをモーセのため、一つをエリヤの爲にせん』 |
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四 ペテロはイエスにむかって言った、「主よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。もし、おさしつかえなければ、わたしはここに小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。 |
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五 如此いへる時かゞやける雲かれらを蔽ふ聲雲より出て言けるは此は我旨に適ふわが愛子なリ爾曹これに聽べし |
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五 彼なほ語りをるとき、視よ、光れる雲、かれらを覆ふ。また雲より聲あり、曰く『これは我が愛しむ子、わがスぶ者なり、汝ら之に聽け』 |
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五 彼がまだ話し終えないうちに、たちまち、輝く雲が彼らをおおい、そして雲の中から声がした、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である。これに聞け」。 |
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六 弟子これを聞て大におそれ倒れ伏たり |
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六 弟子たち之を聞きて倒れ伏し、懼るること甚だし。 |
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六 弟子たちはこれを聞いて非常に恐れ、顔を地に伏せた。 |
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七 イエス來りて彼等に手を按おきよ懼るゝ勿れと曰ければ |
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七 イエスその許にきたり之に觸りて『起きよ、懼るな』と言ひ給へば、 |
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七 イエスは近づいてきて、手を彼らにおいて言われた、「起きなさい、恐れることはない」。 |
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八 其目を擧しに惟イエスのほか一人をも見ざりき |
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八 彼ら目を擧げしに、イエス一人の他は誰も見えざりき。 |
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八 彼らが目をあげると、イエスのほかには、だれも見えなかった。 |
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九 山を下る時にイエス彼等に命じて人の子の死より甦るまでは爾曹の見し事を人に吿べからずと言り |
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九 山を下るとき、イエス彼らに命じて言ひたまふ『人の子の、死人の中より甦へるまでは、見たることを誰にも語るな』 |
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九 一同が山を下って来るとき、イエスは「人の子が死人の中からよみがえるまでは、いま見たことをだれにも話してはならない」と、彼らに命じられた。 |
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十 其弟子とふて曰けるは然ばエリヤは先に來るべしと學者の云るは何ぞや |
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一〇 弟子たち問ひて言ふ『さらば、エリヤ先づ來るべしと學者らの言ふは何ぞ』 |
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一〇 弟子たちはイエスにお尋ねして言った、「いったい、律法学者たちは、なぜ、エリヤが先に来るはずだと言っているのですか」。 |
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十一 イエス答て曰けるは實にエリヤは來て萬事を改むべし |
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一一 答へて言ひたまふ『實にエリヤ來りて萬の事をあらためん。 |
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一一 答えて言われた、「確かに、エリヤがきて、万事を元どおりに改めるであろう。 |
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十二 然ど我なんぢらに吿んエリヤは既に來しに人これを知ずたゞ意の任に彼を待へり此の如く人の子もまた彼等より苦難を受べし |
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一二 我なんぢらに吿ぐ、エリヤは旣に來れり。然れど人々これを知らず、反つて心のままに待へり。斯のごとく人の子もまた人々より苦しめらるべし』 |
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一二 しかし、あなたがたに言っておく。エリヤはすでにきたのだ。しかし人々は彼を認めず、自分かってに彼をあしらった。人の子もまた、そのように彼らから苦しみを受けることになろう」。 |
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十三 是に於て弟子バプテスマのヨハネを指て曰たまへるを悟れり |
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一三 爰に弟子たちバプテスマのヨハネを指して言ひ給ひしなるを悟れり。 |
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一三 そのとき、弟子たちは、イエスがバプテスマのヨハネのことを言われたのだと悟った。 |
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十四 彼等おほくの人の居ところに來しに或人イエスの所にきたり跪き |
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一四 かれら群衆の許に到りしとき、或人、御許にきたり跪づきて言ふ、 |
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一四 さて彼らが群衆のところに帰ると、ひとりの人がイエスに近寄ってきて、ひざまずいて、言った、 |
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十五 曰けるは主よ我子を憫みたまへ癲癇にて屢々火に倒れ水に倒れ甚だ苦めり |
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一五 『主よ、わが子を憫みたまへ。癲癎にて難み、しばしば火の中に、しばしば水の中に倒るるなり。 |
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一五 「主よ、わたしの子をあわれんでください。てんかんで苦しんでおります。何度も何度も火の中や水の中に倒れるのです。 |
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十六 之を爾の弟子に携往たれど醫すことを得ざりき |
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一六 之を御弟子たちに連れ來りしに、醫すこと能はざりき』 |
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一六 それで、その子をお弟子たちのところに連れてきましたが、なおしていただけませんでした」。 |
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十七 イエス答て曰けるは噫信なき曲れる世なる哉われ何時まで爾曹と偕に居んや我いつまで爾曹を忍んや彼を我もとに携來れ |
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一七 イエス答へて言ひ給ふ『ああ信なき曲れる代なるかな、我いつまで汝らと偕にをらん、何時まで汝らを忍ばん。その子を我に連れきたれ』 |
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一七 イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な、曲った時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか。いつまであなたがたに我慢ができようか。その子をここに、わたしのところに連れてきなさい」。 |
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十八 遂にイエス鬼を斥め給へば鬼いでゝ其子この時より愈たり |
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一八 遂にイエスこれを禁め給へば、惡鬼いでてその子この時より瘉えたり。 |
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一八 イエスがおしかりになると、悪霊はその子から出て行った。そして子はその時いやされた。 |
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十九 其とき弟子ひそかにイエスに來り曰けるは我儕これを逐出すこと能はざりしは何故ぞ |
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一九 爰に弟子たち窃にイエスに來りて言ふ『われらは何故に逐ひ出し得ざりしか』 |
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一九 それから、弟子たちがひそかにイエスのもとにきて言った、「わたしたちは、どうして霊を追い出せなかったのですか」。 |
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二十 イエス彼等に曰けるは爾曹信なきが故なり我まことに爾曹に吿んもし芥種の如き信あらば此山に此處より彼處に移れと命とも必ず移らん又なんぢらに能ざること無るべし |
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二〇 彼らに言ひ給ふ『なんぢら信仰うすき故なり。誠に汝らに吿ぐ、もし芥種一粒ほどの信仰あらば、この山に「此處より彼處に移れ」と言ふとも移らん、斯て汝ら能はぬこと無かるべし』 |
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二〇 するとイエスは言われた、「あなたがたの信仰が足りないからである。よく言い聞かせておくが、もし、からし種一粒ほどの信仰があるなら、この山にむかって『ここからあそこに移れ』と言えば、移るであろう。このように、あなたがたにできない事は、何もないであろう。 |
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二一 然ど此類は祈禱と斷食に非ざれば出ることなし |
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二一 |
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二一 〔しかし、このたぐいは、祈と断食とによらなければ、追い出すことはできない〕」。 |
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二二 ガリラヤを周流ときイエス彼等に曰けるは人の子人の手に解され |
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二二 彼らガリラヤに集ひをる時、イエス言ひたまふ『人の子は人の手に付され、 |
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二二 彼らがガリラヤで集まっていた時、イエスは言われた、「人の子は人々の手にわたされ、 |
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二三 かつ殺されて第三日に甦るべし弟子これを聞て甚だ哀めり |
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二三 人々は之を殺さん、斯て三日めに甦へるべし』弟子たち甚く悲しめり。 |
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二三 彼らに殺され、そして三日目によみがえるであろう」。弟子たちは非常に心をいためた。 |
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二四 彼等カペナウンに來れるとき納金を集る者どもペテロに來て曰けるは爾曹の師は納金を出さゞる乎 |
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二四 彼らカペナウムに到りしとき、納金を集むる者ども、ペテロに來りて言ふ『なんぢらの師は納金を納めぬか』 |
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二四 彼らがカペナウムにきたとき、宮の納入金を集める人たちがペテロのところにきて言った、「あなたがたの先生は宮の納入金を納めないのか」。 |
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二五 然ずと曰てペテロ家に入しときイエスまづ彼に曰けるはシモン爾は如何おもふや世界の王たちは稅および貢を誰より徵か己の子よりか他の者よりか |
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二五 ペテロ『納む』と言ひ、頓て家に入りしに、逸速くイエス言ひ給ふ『シモンいかに思ふか、世の王たちは稅または貢を誰より取るか、己が子よりか、他の者よりか』 |
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二五 ペテロは「納めておられます」と言った。そして彼が家にはいると、イエスから先に話しかけて言われた、「シモン、あなたはどう思うか。この世の王たちは税や貢をだれから取るのか。自分の子からか、それとも、ほかの人たちからか」。 |
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二六 ペテロ彼に曰けるは他の人より徵なりイエス彼に曰けるは然ば子は與ることなし |
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二六 ペテロ言ふ『ほかの者より』イエス言ひ給ふ『されば子は自由なり。 |
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二六 ペテロが「ほかの人たちからです」と答えると、イエスは言われた、「それでは、子は納めなくてもよいわけである。 |
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二七 然ど彼等を礙かせざる爲に爾海に往て釣を垂よ初につる魚を取てその口を啓かば金一を得べし其を取て我と爾の爲に彼等に納よ |
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二七 されど彼らを躓かせぬ爲に、海に往きて釣をたれ、初に上る魚をとれ、其の口をひらかば銀貨一つを得ん、それを取りて我と汝との爲に納めよ』 |
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二七 しかし、彼らをつまずかせないために、海に行って、つり針をたれなさい。そして最初につれた魚をとって、その口をあけると、銀貨一枚が見つかるであろう。それをとり出して、わたしとあなたのために納めなさい」。 |
馬太傳iケ書 |
第十八章 |
一 其とき弟子イエスに來て曰けるは天國に於て大なる者は誰ぞや |
マタイ傳iケ書 |
第一八章 |
一 そのとき弟子たち、イエスに來りて言ふ『しからば天國にて大なるは誰か』 |
マタイによる福音書 |
第一八章 |
一 そのとき、弟子たちがイエスのもとにきて言った、「いったい、天国ではだれがいちばん偉いのですか」。 |
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二 イエス嬰兒を召かれらの中に立て |
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二 イエス幼兒を呼び、彼らの中に置きて言ひ給ふ、 |
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二 すると、イエスは幼な子を呼び寄せ、彼らのまん中に立たせて言われた、 |
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三 曰けるは我まことに爾曹に吿んもし改まりて嬰兒の若くならずば天國に入ことを得じ |
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三 『まことに汝らに吿ぐ、もし汝ら飜へりて幼兒の如くならずば、天國に入るを得じ。 |
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三 「よく聞きなさい。心をいれかえて幼な子のようにならなければ、天国にはいることはできないであろう。 |
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四 然ば凡そこの嬰兒の若く自ら謙る者はこれ天國に於て大なる者なり |
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四 されば誰にても此の幼兒のごとく己を卑うする者は、これ天國にて大なる者なり。 |
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四 この幼な子のように自分を低くする者が、天国でいちばん偉いのである。 |
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五 又わが名の爲に此の如き一人の嬰兒を接る者は我を接るなり |
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五 また我が名のために、斯のごとき一人の幼兒を受くる者は、我を受くるなり。 |
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五 また、だれでも、このようなひとりの幼な子を、わたしの名のゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。 |
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六 然ど我を信ずる此小子の一人を礙かする者は磨石をその頸に懸られて海の深に沈られん方なほuなるべし |
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六 然れど我を信ずる此の小き者の一人を躓かする者は、寧ろ大なる碾臼を頸に懸けられ、海の深處に沈められんかたuなり。 |
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六 しかし、わたしを信ずるこれらの小さい者のひとりをつまずかせる者は、大きなひきうすを首にかけられて海の深みに沈められる方が、その人の益になる。 |
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七 此世は禍なる哉そは礙かする事をすればなり礙く事は必ず來らん然ど礙を來らす者は禍なる哉 |
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七 この世は躓物あるによりて禍害なるかな。躓物は必ず來らん、されど躓物を來らする人は禍害なるかな。 |
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七 この世は、罪の誘惑があるから、わざわいである。罪の誘惑は必ず来る。しかし、それをきたらせる人は、わざわいである。 |
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八 若し爾の手なんぢの足おのれを礙かさば斷て之を棄よ兩手兩足ありて盡ざる火に投入られんよりは跛または殘缺にて生に入は善なり |
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八 もし汝の手、または足、なんぢを躓かせば、切りて棄てよ。不具または蹇跛にて生命に入るは、兩手・兩足ありて永遠の火に投げ入れらるるよりも勝るなり。 |
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八 もしあなたの片手または片足が、罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。両手、両足がそろったままで、永遠の火に投げ込まれるよりは、片手、片足になって命に入る方がよい。 |
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九 もし爾の眼おのれを礙かさば拔出して之を棄よ兩眼ありて地獄の火に投入られんよりは一眼にて生に入は善なり |
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九 もし汝の眼、なんぢを躓かせば抜きて棄てよ。片眼にて生命に入るは、兩眼ありて火のゲヘナに投げ入れらるるよりも勝るなり。 |
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九 もしあなたの片目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。両眼がそろったままで地獄の火に投げ入れられるよりは、片目になって命に入る方がよい。 |
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十 爾曹この小子の一人をも愼みて輕視なかれ我なんぢらに吿ん彼等が天の使者は天にありて天に在す吾父の面を常に覿ばなり |
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一〇 汝ら愼みて此の小き者の一人をも侮るな。我なんぢらに吿ぐ、彼らの御使たちは天にありて、天にいます我が父の御顔を常に見るなり。 |
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一〇 あなたがたは、これらの小さい者のひとりをも軽んじないように、気をつけなさい。あなたがたに言うが、彼らの御使たちは天にあって、天にいますわたしの父のみ顔をいつも仰いでいるのである。 |
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十一 それ人の子は亡たる者を救はん爲に來れり |
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一一 |
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一一 〔人の子は、滅びる者を救うためにきたのである。〕 |
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十二 爾曹いかに意ふや人もし百匹の羊あらんに其一匹まよはゞ九十九を山に置ゆきて迷し一を尋ざる乎 |
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一二 汝等いかに思ふか、百匹の羊を有てる人あらんに、若しその一匹まよはば、九十九匹を山に遺しおき、往きて迷ヘるものを尋ねぬか。 |
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一二 あなたがたはどう思うか。ある人に百匹の羊があり、その中の一匹が迷い出たとすれば、九十九匹を山に残しておいて、その迷い出ている羊を捜しに出かけないであろうか。 |
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十三 若たづねて之に遇ば我まことに爾曹に吿ん迷ざる九十九の者よりも尙その一を喜ん |
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一三 もし之を見出さば、誠に汝らに吿ぐ、速はぬ九十九匹に勝りて此の一匹を喜ばん。 |
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一三 もしそれを見つけたなら、よく聞きなさい、迷わないでいる九十九匹のためよりも、むしろその一匹のために喜ぶであろう。 |
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十四 是の如くこの小子の一人の亡るは天に在す爾曹が父の尊旨に非ず |
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一四 斯のごとく此の小き者の一人の亡ぶるは、天にいます汝らの父の御意にあらず。 |
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一四 そのように、これらの小さい者のひとりが滅びることは、天にいますあなたがたの父のみこころではない。 |
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十五 もし兄弟なんぢに罪を犯ばその獨ある時に往て諌よもし爾の言を聽ばその兄弟を獲べし |
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一五 もし汝の兄弟、罪を犯さば、往きてただ彼とのみ、相對して諫めよ。もし聽かば其の兄弟を得たるなり。 |
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一五 もしあなたの兄弟が罪を犯すなら、行って、彼とふたりだけの所で忠告しなさい。もし聞いてくれたら、あなたの兄弟を得たことになる。 |
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十六 もし聽ずば両三人の口に由て證をなし凡の言を定んが爲に一人二人を伴ひ往 |
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一六 もし聽かずば一人・二人を伴ひ往け、これ二三の證人の口に由りて、凡ての事の慥められん爲なり。 |
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一六 もし聞いてくれないなら、ほかにひとりふたりを、一緒に連れて行きなさい。それは、ふたりまたは三人の証人の口によって、すべてのことがらが確かめられるためである。 |
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十七 もし彼等にも聽ずば教會に吿よもし教會に聽ずば之を異邦人かつ稅吏のごとき者とすべし |
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一七 もし彼等にも聽かずば、ヘ會に吿げよ。もしヘ會にも聽かずば、之を異邦人または取稅人のごとき者とすべし。 |
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一七 もし彼らの言うことを聞かないなら、教会に申し出なさい。もし教会の言うことも聞かないなら、その人を異邦人または取税人同様に扱いなさい。 |
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十八 我まことに爾曹に吿ん凡そ爾曹が地に於て繫ことは天に於もつなぎ爾曹が地に於て釋ことは天に於も釋べし |
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一八 誠に汝らに吿ぐ、すべて汝らが地にて縛ぐ所は天にても縛ぎ、地にて解く所は天にても解くなり。 |
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一八 よく言っておく。あなたがたが地上でつなぐことは、天でも皆つながれ、あなたがたが地上で解くことは、天でもみな解かれるであろう。 |
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十九 我また爾曹に吿んもし爾曹のうち二人のもの地にに於て心を合せ何事にても求ば天に在す吾父は彼等の爲に之を成たまふべし |
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一九 また誠に汝らに吿ぐ、もし汝等のうち二人、何にても求むる事につき地にて心を一つにせば、天にいます我が父は之を成し給ふべし。 |
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一九 また、よく言っておく。もしあなたがたのうちのふたりが、どんな願い事についても地上で心を合わせるなら、天にいますわたしの父はそれをかなえて下さるであろう。 |
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二十 蓋わが名の爲に二三人の集れる處には我も其中に在ばなり |
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二〇 二三人わが名によりて集る所には、我もその中に在るなり』 |
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二〇 ふたりまたは三人が、わたしの名によって集まっている所には、わたしもその中にいるのである」。 |
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二一 厥時ペテロ イエスに來りて曰けるは主よ幾次まで我兄弟の我に罪を犯を赦べきか七次まで乎 |
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二一 爰にペテロ御許に來りて言ふ『主よ、わが兄弟われに對して罪を犯さば幾たび赦すべきか、七度までか』 |
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二一 そのとき、ペテロがイエスのもとにきて言った、「主よ、兄弟がわたしに対して罪を犯した場合、幾たびゆるさねばなりませんか。七たびまでですか」。 |
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二二 イエス彼に曰けるは爾に七次とは言じ七次を七十倍せよ |
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二二 イエス言ひたまふ『否われ「七度まで」とは言はず「七度を七十倍するまで」と言ふなり。 |
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二二 イエスは彼に言われた、「わたしは七たびまでとは言わない。七たびを七十倍するまでにしなさい。 |
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二三 是故に天國は王その民と會計を調んとするが如し |
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二三 この故に天國はその家來どもと計算をなさんとする王のごとし。 |
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二三 それだから、天国は王が僕たちと決算をするようなものだ。 |
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|
二四 調べ始しとき千萬金の負債したる者を王に曳來りしに |
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二四 計算を始めしとき一萬タラントの負債ある家來つれ來られしが、 |
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二四 決算が始まると、一万タラントの負債のある者が、王のところに連れられてきた。 |
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二五 償ひ方なかりければ之に命じて其身その妻孥とあらゆる所有をみな鬻て償へと曰り |
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二五 償ひ方なかりしかば、其の主人、この者と、その妻子と凡ての所有とを賣りて償ふことを命じたるに、 |
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二五 しかし、返せなかったので、主人は、その人自身とその妻子と持ち物全部とを売って返すように命じた。 |
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二六 その臣俯伏て拜し曰けるは請われを寛し給はゞ皆償ふべし |
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二六 その家來ひれ伏し、拜して言ふ「寛くし給へ、さらば悉とく償はん」 |
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二六 そこで、この僕はひれ伏して哀願した、『どうぞお待ちください。全部お返しいたしますから』。 |
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二七 是に於てその臣の主憐みて之を釋その負債を免したり |
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二七 その家來の主人、あはれみて之を解き、その負債を免したり。 |
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二七 僕の主人はあわれに思って、彼をゆるし、その負債を免じてやった。 |
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二八 其臣いでゝ己より銀一百の負債したる友に遇ければ之を執へ喉をとり負債を返せと曰 |
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二八 然るに其の家來いでて、己より百デナリを負ひたる一人の同僚にあひ、之をとらへ、喉を締めて言ふ「負債を償へ」 |
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二八 その僕が出て行くと、百デナリを貸しているひとりの仲間に出会い、彼をつかまえ、首をしめて『借金を返せ』と言った。 |
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二九 その友足下に俯伏て求いひけるは我を寛し給はゞ皆償ふべし |
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二九 その同僚ひれ伏し、願ひて「寛くし給へ、さらば償はん」と言へど、 |
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二九 そこでこの仲間はひれ伏し、『どうか待ってくれ。返すから』と言って頼んだ。 |
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三十 然るに之を肯はずして往その負債を償ふまで彼を獄に入ぬ |
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三〇 肯はずして往き、その負債を償ふまで之を獄に入れたり。 |
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三〇 しかし承知せずに、その人をひっぱって行って、借金を返すまで獄に入れた。 |
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三一 外の友その爲る事を見て甚だ哀み往て此事を皆その主に吿しかば |
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三一 同僚ども有りし事を見て甚く悲しみ、往きて有りし凡ての事をその主人に吿ぐ。 |
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三一 その人の仲間たちは、この様子を見て、非常に心をいため、行ってそのことをのこらず主人に話した。 |
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三二 主かれを召て曰けるは惡き臣よ爾われに求しに因て我その負債を悉く免したり |
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三二 ここに主人かれを呼び出して言ふ「惡しき家來よ、なんぢ願ひしによりて、かの負債をことごとく免せり。 |
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三二 そこでこの主人は彼を呼びつけて言った、『悪い僕、わたしに願ったからこそ、あの負債を全部ゆるしてやったのだ。 |
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三三 我なんぢを憐みし如く爾も亦友を憐むべきに非ずや |
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三三 わが汝を憫みしごとく汝もまた同僚を憫むべきにあらずや」 |
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三三 わたしがあわれんでやったように、あの仲間をあわれんでやるべきではなかったか』。 |
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三四 その主いかりて負債をみな償ふまで彼を獄吏に付せり |
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三四 斯くその主人、怒りて、負債をことごとく償ふまで彼を獄卒に付せり。 |
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三四 そして主人は立腹して、負債全部を返してしまうまで、彼を獄吏に引きわたした。 |
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三五 若おのおの其心より兄弟を赦ずば我が天の父も亦なんぢらに此の如く行給ふべし |
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三五 もし汝等おのおの心より兄弟を赦さずば、我が天の父も亦なんぢらに斯のごとく爲し給ふべし』 |
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三五 あなたがためいめいも、もし心から兄弟をゆるさないならば、わたしの天の父もまたあなたがたに対して、そのようになさるであろう」。 |
馬太傳iケ書 |
第十九章 |
一 イエス此等の事を言畢りしときガリラヤを去てヨルダンの外ユダヤの境に至りけるに |
マタイ傳iケ書 |
第一九章 |
一 イエスこれらの言を語り終へてガリラヤを去り、ヨルダンの彼方なるユダヤの地方に來り給ひしに、 |
マタイによる福音書 |
第一九章 |
一 イエスはこれらのことを語り終えられてから、ガリラヤを去ってヨルダンの向こうのユダヤの地方へ行かれた。 |
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二 多の人々從ひしかば此處にて彼等を醫し給へり |
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二 大なる群衆、從ひたれば、此處にて彼らを醫し給へり。 |
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二 すると大ぜいの群衆がついてきたので、彼らをそこでおいやしになった。 |
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三 パリサイの人きたりてイエスを試み曰けるは人なにの故に係らず其妻を出すは宜か |
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三 パリサイ人ら來り、イエスを試みて言ふ『何の故にかかはらず、人その妻を出すは可きか』 |
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三 さてパリサイ人たちが近づいてきて、イエスを試みようとして言った、「何かの理由で、夫がその妻を出すのは、さしつかえないでしょうか」。 |
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四 答て彼等に曰けるは元始に人を造り給ひし者は之を男女に造れり |
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四 答へて言ひたまふ『人を造り給ひしもの、元始より之を男と女とに造り、而して、 |
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四 イエスは答えて言われた、「あなたがたはまだ読んだことがないのか。『創造者は初めから人を男と女とに造られ、 |
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五 是故に人父母を離れて其妻に合二人のもの一體と爲なりと云るを未だ讀ざるか |
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五 「斯る故に人は父母を離れ、その妻に合ひて、二人のもの一體となるべし」と言ひ給ひしを未だ讀まぬか。 |
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五 そして言われた、それゆえに、人は父母を離れ、その妻と結ばれ、ふたりの者は一体となるべきである』。 |
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六 然ばはや二には非ず一體なり~の合せ給へる者は人これを離すべからず |
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六 然れば、はや二人にはあらず、一體なり。この故に~の合せ給ひし者は人これを離すべからず』 |
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六 彼らはもはや、ふたりではなく一体である。だから、神が合わせられたものを、人は離してはならない」。 |
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七 イエスに曰けるは然ば離緣狀を予て妻を出せとモーセが命ぜしは何ぞや |
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七 彼らイエスに言ふ『さらば何故モーセは離緣狀を與ヘて出すことを命じたるか』 |
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七 彼らはイエスに言った、「それでは、なぜモーセは、妻を出す場合には離縁状を渡せ、と定めたのですか」。 |
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八 彼等に曰けるはモーセは爾曹の心の不情に因て妻を出すことを容したる也されど元始は如此あらざりき |
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八 彼らに言ひ給ふ『モーセは汝らの心、無情によりて妻を出すことを許したり。然れど元始より然にはあらぬなり。 |
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八 イエスが言われた、「モーセはあなたがたの心が、かたくななので、妻を出すことを許したのだが、初めからそうではなかった。 |
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九 我なんぢらに吿んもし姦淫の故ならで其妻を出し他の婦を娶る者は姦淫を行ふなり又いだされたる婦を娶る者も姦淫を行ふなり |
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九 われ汝らに吿ぐ、おほよそ淫行の故ならで其の妻をいだし、他に娶る者は姦淫を行ふなり』 |
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九 そこでわたしはあなたがたに言う。不品行のゆえでなくて、自分の妻を出して他の女をめとる者は、姦淫を行うのである」。 |
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十 弟子等イエスに曰けるは若し人妻に於て此の如くば娶らざるに若ず |
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一〇 弟子たちイエスに言ふ『人もし妻のことに於て斯のごとくば、娶らざるに如かず』 |
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一〇 弟子たちは言った、「もし妻に対する夫の立場がそうだとすれば、結婚しない方がましです」。 |
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十一 彼等に曰けるは此言は人みな受納ること能はず唯賦られたる者のみ之を爲うべし |
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一一 彼らに言ひたまふ『凡ての人この言を受け容るるにはあらず、ただ授けられたる者のみなり。 |
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一一 するとイエスは彼らに言われた、「その言葉を受けいれることができるのはすべての人ではなく、ただそれを授けられている人々だけである。 |
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十二 それ母の腹より生來たる寺人あり又人にせられたる寺人あり又天國の爲に自らなれる寺人あり之を受納ることを得ものは受納べし |
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一二 それ生れながらの閹人あり、人に爲られたる閹人あり、また天國のために自らなりたる閹人あり、之を受け容れうる者は受け容るべし』 |
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一二 というのは、母の胎内から独身者に生れついているものがあり、また他から独身者にされたものもあり、また天国のために、みずから進んで独身者となったものもある。この言葉を受けられる者は、受けいれるがよい」。 |
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十三 其とき人々イエスの手を按て祈らんことを求ひ嬰兒を彼に携來りければ弟子是を阻たり |
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一三 爰に人々イエスの手をおきて祈り給はんことを望みて、幼兒らを連れ來りしに、弟子たち禁めたれば、 |
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一三 そのとき、イエスに手をおいて祈っていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちは彼らをたしなめた。 |
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十四 イエス曰けるは嬰兒を容せ我に來ることを禁しむる勿れ天國にをる者は此の如き者なり |
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一四 イエス言ひたまふ『幼兒らを許せ、我に來るを止むな、天國は斯のごとき者の國なり』 |
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一四 するとイエスは言われた、「幼な子らをそのままにしておきなさい。わたしのところに来るのをとめてはならない。天国はこのような者の国である」。 |
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十五 即ち彼等に手を按て此を去ぬ |
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一五 斯て手を彼らの上におきて此處を去り給へり。 |
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一五 そして手を彼らの上においてから、そこを去って行かれた。 |
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十六 或人きたりて彼に曰けるは善師よ我かぎりなき生を得んが爲には何の善事を行べきか |
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一六 視よ、或人みもとに來りて言ふ『師よ、われ永遠の生命をうる爲には如何なる善き事を爲すべきか』 |
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一六 すると、ひとりの人がイエスに近寄ってきて言った、「先生、永遠の生命を得るためには、どんなよいことをしたらいいでしょうか」。 |
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十七 彼に曰けるは何故われを善と稱や一人の外に善者はなし即ち~なり若し生命に入んと欲はゞ誡を守るべし |
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一七 イエス言ひたまふ『善き事につきて何ぞ我に問ふか、善き者は唯ひとりのみ。汝もし生命に入らんと思はば誡命を守れ』 |
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一七 イエスは言われた、「なぜよい事についてわたしに尋ねるのか。よいかたはただひとりだけである。もし命に入りたいと思うなら、いましめを守りなさい」。 |
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十八 彼こたへけるは何かイエス曰けるは殺す勿れ姦淫する勿れ盜む勿れ妄りの證を立る勿れ |
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一八 彼いふ『孰れを』イエス言ひたまふ『「殺すなかれ」「姦淫するなかれ」「盜むなかれ」「僞證を立つる勿れ」 |
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一八 彼は言った、「どのいましめですか」。イエスは言われた、「『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証を立てるな。 |
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十九 爾の父と母を敬へ又己の如く爾の隣を愛すべし |
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一九 「父と母とを敬へ」また「己のごとく汝の隣を愛すべし」』 |
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一九 父と母とを敬え』。また『自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ』」。 |
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二十 少者かれに曰けるは是みな我いとけなきより守れるものなり何の虧たるところ我にある乎 |
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二〇 その若者いふ『我みな之を守れり、なは何を缺くか』 |
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二〇 この青年はイエスに言った、「それはみな守ってきました。ほかに何が足りないのでしょう」。 |
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二一 イエス彼に曰けるは全からん事を欲はゞ往て爾が所有を售て貧者に施せ然れば天に於て財あらん而して來り我に從へ |
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二一 イエス言ひたまふ『なんぢ若し全からんと思はば、往きて汝の所有を賣りて貧しき者に施せ、さらば財寳を天に得ん。かつ來りて我に從へ』 |
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二一 イエスは彼に言われた、「もしあなたが完全になりたいと思うなら、帰ってあなたの持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。 |
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二二 少者この言を聞て憂へ去ぬ彼の産業おほいなりければ也 |
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二二 この言をききて若者、悲しみつつ去りぬ。大なる資產を有てる故なり。 |
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二二 この言葉を聞いて、青年は悲しみながら立ち去った。たくさんの資産を持っていたからである。 |
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二三 イエスその弟子に曰けるは誠に爾曹に吿ん富者は天國に入こと難し |
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二三 イエス弟子たちに言ひ給ふ『まことに汝らに吿ぐ、富める者の天國に入るは難し。 |
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二三 それからイエスは弟子たちに言われた、「よく聞きなさい。富んでいる者が天国にはいるのは、むずかしいものである。 |
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二四 また爾曹に吿ん富者の~の國に入よりは駱駝の針の孔を穿るは却て易し |
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二四 復なんぢらに吿ぐ、富める者の~の國に入るよりは、駱駝の針の孔を通るかた反つて易し』 |
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二四 また、あなたがたに言うが、富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。 |
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二五 弟子之を聞て甚く驚き曰けるは然ば誰か救を受べき乎 |
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二五 弟子たち之をきき、甚だしく驚きて言ふ『さらば誰か救はるることを得ん』 |
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二五 弟子たちはこれを聞いて非常に驚いて言った、「では、だれが救われることができるのだろう」。 |
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二六 イエス彼等を見て曰けるは是人には能はざる所なり然ど~には能はざる所なし |
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二六 イエス彼らに目を注めて言ひ給ふ『これは人に能はねど~は凡ての事をなし得るなり』 |
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二六 イエスは彼らを見つめて言われた、「人にはそれはできないが、神にはなんでもできない事はない」。 |
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二七 此ときペテロ答てイエスに曰けるは我儕一切を棄て爾に從へり然ば何を得べき乎 |
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二七 爰にペテロ答へて言ふ『視よ、われら一切をすてて汝に從へり、然れば何を得べきか』 |
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二七 そのとき、ペテロがイエスに答えて言った、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを捨てて、あなたに従いました。ついては、何がいただけるでしょうか」。 |
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二八 イエス彼等に曰けるは我まことに爾曹に吿ん我に從へる爾曹は世あらたまり人の子榮光の位に坐する時なんぢらも十二の位に坐してイスラエルの十二の支派を鞫べし |
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二八 イエス彼らに言ひ給ふ『まことに汝らに吿ぐ、世あらたまりて人の子その榮光の座位に坐するとき、我に從へる汝等もまた十二の座位に坐してイスラエルの十二の族を審かん。 |
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二八 イエスは彼らに言われた、「よく聞いておくがよい。世が改まって、人の子がその栄光の座につく時には、わたしに従ってきたあなたがたもまた、十二の位に座してイスラエルの十二の部族をさばくであろう。 |
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二九 凡て我名の爲に家宅あるひは兄弟あるひは姉妹あるひは父あるひは母あるひは妻あるひは子あるひは田疇を棄る者は百倍を受かつ窮なき生を嗣ん |
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二九 また凡そ我が名のために或は家、或は兄弟、あるひは姊妹、あるひは父、或は母、或は子、或は田畑を棄つる者は數倍を受け、また永遠の生命を嗣がん。 |
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二九 おおよそ、わたしの名のために、家、兄弟、姉妹、父、母、子、もしくは畑を捨てた者は、その幾倍もを受け、また永遠の生命を受けつぐであろう。 |
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三十 多の先なる者は後になり後なる者は先になるべし |
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三〇 然れど多くの先なる者後に、後なる者先になるべし。 |
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三〇 しかし、多くの先の者はあとになり、あとの者は先になるであろう。 |
馬太傳iケ書 |
第二十章 |
一 それ天國は朝はやく出て葡萄園に工人を雇ふ主人の如し |
マタイ傳iケ書 |
第二〇章 |
一 天國は勞動人を葡萄園に雇ふために、朝早く出でたる主人のごとし。 |
マタイによる福音書 |
第二〇章 |
一 天国は、ある家の主人が、自分のぶどう園に労働者を雇うために、夜が明けると同時に、出かけて行くようなものである。 |
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二 工人には一日に銀一枚を予んと約束をなし彼等を葡萄園に遣せり |
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二 一日、一デナリの約束をなして、勞動人どもを葡萄園に遣す。 |
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二 彼は労働者たちと、一日一デナリの約束をして、彼らをぶどう園に送った。 |
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三 また九時ごろ出て街に徒く立る者を見て |
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三 また九時ごろ出でて市場に空しく立つ者どもを見て |
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三 それから九時ごろに出て行って、他の人々が市場で何もせずに立っているのを見た。 |
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四 爾曹も葡萄園にゆけ相當の價を予んと彼等に曰ければ則ち往り |
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四 「なんぢらも葡萄園に往け、相當のものを與へん」といへば、彼らも往く。 |
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四 そして、その人たちに言った、『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい。相当な賃銀を払うから』。 |
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五 また十二時と三時ごろ出て前の如く行り |
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五 十二時頃と三時頃とに復いでて前のごとくす。 |
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五 そこで、彼らは出かけて行った。主人はまた、十二時ごろと三時ごろとに出て行って、同じようにした。 |
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六 五時ごろ出て又ほかの立る者に遇て曰けるは何ゆへ終日こゝに徒く立や |
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六 五時頃また出でしに、なほ立つ者等のあるを見ていふ「何ゆゑ終日ここに空しく立つか」 |
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六 五時ごろまた出て行くと、まだ立っている人々を見たので、彼らに言った、『なぜ、何もしないで、一日中ここに立っていたのか』。 |
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七 之に答て曰けるは我儕を雇ふ者なきに因てなり彼等に曰けるは爾曹も葡萄園にゆけ相當の價を得べし |
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七 かれら言ふ「たれも我らを雇はぬ故なり」主人いふ「なんぢらも葡萄園に往け」 |
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七 彼らが『だれもわたしたちを雇ってくれませんから』と答えたので、その人々に言った、『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい』。 |
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八 日暮るとき葡萄園の主人その家宰に曰けるは勞力たる者等を呼て後に雇へる者を始とし先の者にまで價を給へよ |
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八 夕になりて葡萄園の主人その家司に言ふ「勞動人を呼びて、後の者より始め先の者にまで賃銀をはらへ」 |
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八 さて、夕方になって、ぶどう園の主人は管理人に言った、『労働者たちを呼びなさい。そして、最後にきた人々からはじめて順々に最初にきた人々にわたるように、賃銀を払ってやりなさい』。 |
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九 五時ごろに雇はれし者ども來りて銀一枚づゝを受たり |
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九 斯て五時ごろに雇はれしもの來りて、おのおの一デナリを受く。 |
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九 そこで、五時ごろに雇われた人々がきて、それぞれ一デナリずつもらった。 |
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十 先の者ども來りて我儕は多く受るならんと意ひしに亦銀一枚づゝを受 |
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一〇 先の者きたりて、多く受くるならんと思ひしに、之も亦おのおの一デナリを受く。 |
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一〇 ところが、最初の人々がきて、もっと多くもらえるだろうと思っていたのに、彼らも一デナリずつもらっただけであった。 |
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十一 これを受て主人を怨つぶやきけるは |
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一一 受けしとき、家主にむかひ呟きて言ふ、 |
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一一 もらったとき、家の主人にむかって不平をもらして |
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十二 この後至者の勞力たるは一時ばかりなるに終日くるしみを任あつさに當る我儕と均しく之をなせり |
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一二 「この後の者どもは僅に一時間はたらきたるに、汝は一日の勞と暑さとを忍びたる我らと均しく、之を遇へり」 |
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一二 言った、『この最後の者たちは一時間しか働かなかったのに、あなたは一日じゅう、労苦と暑さを辛抱したわたしたちと同じ扱いをなさいました』。 |
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十三 主人その一人に答て曰けるは友よ我なんぢに不義をせず爾と銀一枚の約束をなしたるに非ずや |
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一三 主人こたへて其の一人に言ふ「友よ、我なんぢに不正をなさず、汝は我と一デナリの約束をせしにあらずや。 |
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一三 そこで彼はそのひとりに答えて言った、『友よ、わたしはあなたに対して不正をしてはいない。あなたはわたしと一デナリの約束をしたではないか。 |
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十四 爾のものを取て往われ亦この後至者にも爾の如く予ふべし |
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一四 己が物を取りて往け、この後の者に汝とひとしく與ふるは、我が意なり。 |
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一四 自分の賃銀をもらって行きなさい。わたしは、この最後の者にもあなたと同様に払ってやりたいのだ。 |
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十五 我物を以て我おもふ如く行は宜らず乎わが善に因て爾の目あしき乎 |
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一五 わが物を我が意のままに爲るは可からずや、我よきが故に汝の目あしきか」 |
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一五 自分の物を自分がしたいようにするのは、当りまえではないか。それともわたしが気前よくしているので、ねたましく思うのか』。 |
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十六 此の如く後の者は先に先の者は後になるべし夫よばるゝ者は多しと雖も選るゝ者は少なし |
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一六 斯のごとく後なる者は先に、先なる者は後になるべし』 |
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一六 このように、あとの者は先になり、先の者はあとになるであろう」。 |
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十七 イエス エルサレムに上るとき途間にて人を離れ十二弟子を伴ひて彼等に曰けるは |
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一七 イエス、エルサレムに上らんと爲給ふとき、窃に十二弟子を近づけて、途すがら言ひ給ふ、 |
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一七 さて、イエスはエルサレムへ上るとき、十二弟子をひそかに呼びよせ、その途中で彼らに言われた、 |
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十八 我等エルサレムに上り人の子は祭司の長と學者等に賣されん彼等これを死罪に定め |
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一八 『視よ、我らエルサレムに上る、人の子は祭司長・學者らに付されん。彼ら之を死に定め、 |
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一八 「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子は祭司長、律法学者たちの手に渡されるであろう。彼らは彼に死刑を宣告し、 |
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十九 また凌辱鞭ち十字架に釘ん爲に異邦人に解すべし又第三日に甦へるべし |
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一九 また嘲弄し、鞭ち、十字架につけん爲に異邦人に付さん、斯て彼は三日めに甦へるべし』 |
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一九 そして彼をあざけり、むち打ち、十字架につけさせるために、異邦人に引きわたすであろう。そして彼は三日目によみがえるであろう」。 |
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二十 其時ゼベダイの子等の母その子と偕にイエスに來り拜して彼に求ること有ければ |
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二〇 爰にゼベダイの子らの母、その子らと共に御許にきたり、拜して何事か求めんとしたるに、 |
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二〇 そのとき、ゼベダイの子らの母が、その子らと一緒にイエスのもとにきてひざまずき、何事かをお願いした。 |
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二一 之に曰けるは何を欲ふかイエスに曰けるは此二人の我子を爾の國に於て一人は爾の右一人は爾の左に坐ることを命ぜよ |
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二一 イエス彼に言ひたまふ『何を望むか』かれ言ふ『この我が二人の子が汝の御國にて一人は汝の右に、一人は左に坐せんことを命じ給へ』 |
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二一 そこでイエスは彼女に言われた、「何をしてほしいのか」。彼女は言った、「わたしのこのふたりのむすこが、あなたの御国で、ひとりはあなたの右に、ひとりは左にすわれるように、お言葉をください」。 |
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二二 イエス答て曰けるは爾曹は求ところを知ず爾曹は我が飮んとする杯をのみ又わが受んとするバプテスマを受得るや彼等いひけるは能すべし |
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二二 イエス答へて言ひ給ふ『なんぢらは求むる所を知らず、我が飮まんとする酒杯を飮み得るか』かれら言ふ『得るなり』 |
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二二 イエスは答えて言われた、「あなたがたは、自分が何を求めているのか、わかっていない。わたしの飲もうとしている杯を飲むことができるか」。彼らは「できます」と答えた。 |
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二三 イエス彼等に曰けるは誠に爾曹は我が杯を飮また我うくるバプテスマを受べし然ど我が右左に座ることは我が賜べきに非ず只わが父に備られたる者は賜らるべし |
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二三 イエス言ひたまふ『實に汝らは我が酒杯を飮むべし、然れど我が右左に坐することは、これ我の與ふべきものならず、我が父より備へられたる人こそ與へらるるなれ』 |
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二三 イエスは彼らに言われた、「確かに、あなたがたはわたしの杯を飲むことになろう。しかし、わたしの右、左にすわらせることは、わたしのすることではなく、わたしの父によって備えられている人々だけに許されることである」。 |
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二四 十人の弟子これを聞て二人の兄弟を憤れり |
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二四 十人の弟子これを聞き、二人の兄弟の事によりて憤ほる。 |
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二四 十人の者はこれを聞いて、このふたりの兄弟たちのことで憤慨した。 |
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二五 イエス彼等を召て曰けるは異邦の領主はその民を主どり大人どもは彼等の上に權を操これ爾曹が知ところ也 |
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二五 イエス彼らを呼びて言ひたまふ『異邦人の君のその民を宰どり、大なる者の民の上に權を執ることは汝らの知る所なり。 |
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二五 そこで、イエスは彼らを呼び寄せて言われた、「あなたがたの知っているとおり、異邦人の支配者たちはその民を治め、また偉い人たちは、その民の上に権力をふるっている。 |
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二六 然ど爾曹の中にては然すべからず爾曹のうち大ならんと欲ふ者は爾曹に役るゝ者となるべし |
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二六 汝らの中にては然らず、汝らの中に大ならんと思ふ者は、汝らの役者となり、 |
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二六 あなたがたの間ではそうであってはならない。かえって、あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、仕える人となり、 |
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二七 また爾曹のうち首たらんと欲ふ者は爾曹の僕となるべし |
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二七 首たらんと思ふ者は汝らの僕となるべし。 |
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二七 あなたがたの間でかしらになりたいと思う者は、僕とならねばならない。 |
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二八 此の如く人の子の來るも人を役ふ爲には非ず反て人に役はれ又おほくの人に代て生命を予その贖とならん爲なり |
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二八 斯のごとく人の子の來れるも事へらるる爲にあらず、反つて事ふることをなし、又おほくの人の拯贖として己が生命を與へん爲なり』 |
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二八 それは、人の子がきたのも、仕えられるためではなく、仕えるためであり、また多くの人のあがないとして、自分の命を与えるためであるのと、ちょうど同じである」。 |
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二九 彼等エリコを出し時おほくの人々イエスに從へり |
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二九 彼らエリコを出づるとき、大なる群衆イエスに從へり。 |
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二九 それから、彼らがエリコを出て行ったとき、大ぜいの群衆がイエスに従ってきた。 |
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三十 二人の瞽者路の旁に坐をりしがイエスの過ると聞て呼叫いひけるはダビデの裔主よ我儕を憫み給へ |
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三〇 視よ、二人の盲人、路の傍らに坐しをりしが、イエスの過ぎ給ふことを聞き、叫びて言ふ『主よ、ダビデの子よ、我らを憫みたまへ』 |
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三〇 すると、ふたりの盲人が道ばたにすわっていたが、イエスがとおって行かれると聞いて、叫んで言った、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」。 |
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三一 衆人これに默れと戒むれども愈さけび曰けるはダビデの裔主よ我儕を憫みたまへ |
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三一 群衆かれらを禁めて默さしめんと爲たれど、愈々叫びて言ふ『主よ、ダビデの子よ、我らを憫み給へ』 |
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三一 群衆は彼らをしかって黙らせようとしたが、彼らはますます叫びつづけて言った、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」。 |
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三二 イエス立止て之を呼いひけるは爾曹われに何を爲られんと願ふや |
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三二 イエス立ち止り、彼らを呼びて言ひ給ふ『わが汝らに何を爲さんことを望むか』 |
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三二 イエスは立ちどまり、彼らを呼んで言われた、「わたしに何をしてほしいのか」。 |
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三三 イエスに曰けるは主よ我儕目の啓んことを願ふ |
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三三 彼ら言ふ『主よ、目の開かれんことなり』 |
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三三 彼らは言った、「主よ、目をあけていただくことです」。 |
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三四 イエス憫みて其目に手を按ければ直に見ことを得イエスに從へり |
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三四 イエスいたく憫みて彼らの目に觸り給へば、直ちに物見ることを得て、イエスに從へり。 |
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三四 イエスは深くあわれんで、彼らの目にさわられた。すると彼らは、たちまち見えるようになり、イエスに従って行った。 |
馬太傳iケ書 |
第二十一章 |
一 かれら橄欖山のベテパゲに至りエルサレムに近ける時イエス二人の弟子を遣さんとして |
マタイ傳iケ書 |
第二一章 |
一 彼らエルサレムに近づき、オリブ山の邊なるベテパゲに到りし時、イエス二人の弟子を遣さんとして言ひ給ふ、 |
マタイによる福音書 |
第二一章 |
一 さて、彼らがエルサレムに近づき、オリブ山沿いのベテパゲに着いたとき、イエスはふたりの弟子をつかわして言われた、 |
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二 彼等に曰けるは爾曹むかふの村に往やがて繫たる驢馬の其子と偕にあるに遇ん夫を解て我に牽きたれ |
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二 『向の村にゆけ、頓て繫ぎたる驢馬のその子とともに在るを見ん、解きて我に牽ききたれ。 |
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二 「向こうの村へ行きなさい。するとすぐ、ろばがつながれていて、子ろばがそばにいるのを見るであろう。それを解いてわたしのところに引いてきなさい。 |
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三 若なんぢらに何とか言ものあらば主の用なりと曰さらば直に之を遣すべし |
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三 誰かもし汝らに何とか言はば「主の用なり」と言へ、さらば直ちに之を遣さん』 |
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三 もしだれかが、あなたがたに何か言ったなら、主がお入り用なのです、と言いなさい。そう言えば、すぐ渡してくれるであろう」。 |
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四 預言者の言に視よ爾の王は柔和にして驢馬すなはち驢馬の子に乘なんぢに來るとシヲンの女に吿よと |
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四 此の事の起りしは預言者によりて云はれたる言の成就せん爲なり。曰く、 |
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四 こうしたのは、預言者によって言われたことが、成就するためである。 |
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五 云るに應せん爲に如此なせる也 |
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五 『シオンの娘に吿げよ、「視よ、汝の王、なんぢに怒り給ふ。柔和にして驢馬に乘り、軛を負ふ驢馬の子に乘りて」』 |
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五 すなわち、「シオンの娘に告げよ、見よ、あなたの王がおいでになる、柔和なおかたで、ろばに乗って、くびきを負うろばの子に乗って」。 |
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六 弟子ゆきてイエスの命ぜし如くなし |
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六 弟子たち往きて、イエスの命じ給へる如くして、 |
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六 弟子たちは出て行って、イエスがお命じになったとおりにし、 |
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七 驢馬と其子を牽きたり己の衣をその上に置ければイエスこれに乘り |
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七 驢馬とその子とを牽ききたり、己が衣をその上におきたれば、イエス之に乘りたまふ。 |
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七 ろばと子ろばとを引いてきた。そしてその上に自分たちの上着をかけると、イエスはそれにお乗りになった。 |
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八 衆人おほくは其衣を途に布あるひは樹枝を伐て途に布ぬ |
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八 群衆の多くはその衣を途にしき、或者は樹の枝を伐りて途に敷く。 |
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八 群衆のうち多くの者は自分たちの上着を道に敷き、また、ほかの者たちは木の枝を切ってきて道に敷いた。 |
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九 かつ前にゆき後に從ふ人々呼いひけるはダビデの裔ホザナよ主の名に託て來る者はなり至上處にホザナよ |
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九 かつ前にゆき後にしたがふ群衆よばはりて言ふ、『ダビデの子にホサナ、讚むべきかな、主の御名によりて來る者。いと高き處にてホサナ』 |
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九 そして群衆は、前に行く者も、あとに従う者も、共に叫びつづけた、「ダビデの子に、ホサナ。主の御名によってきたる者に、祝福あれ。いと高き所に、ホサナ」。 |
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十 イエス エルサレムに至れるときキ城こぞりて竦動いひけるは是誰ぞや |
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一〇 遂にエルサレムに入り給へば、キ擧りて騷立ちて言ふ『これは誰なるぞ』 |
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一〇 イエスがエルサレムにはいって行かれたとき、町中がこぞって騒ぎ立ち、「これは、いったい、どなただろう」と言った。 |
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十一 衆人いひけるは此はガリラヤのナザレより出たる預言者イエスなり |
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一一 群衆いふ『これガリラヤのナザレより出でたる預言者イエスなり』 |
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一一 そこで群衆は、「この人はガリラヤのナザレから出た預言者イエスである」と言った。 |
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十二 イエス~の殿に入て其中なる凡の賣買する者を逐出し兌銀者の案鴿をうる者の椅子を倒し |
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一二 イエス宮に入り、その內なる凡ての賣買する者を逐ひいだし、兩替する者の臺・鴿を賣る者の腰掛を倒して言ひ給ふ、 |
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一二 それから、イエスは宮にはいられた。そして、宮の庭で売り買いしていた人々をみな追い出し、また両替人の台や、はとを売る者の腰掛をくつがえされた。 |
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十三 彼等に曰けるは我家は祈禱の家と稱らるべしと錄さる然るに爾曹これを盜賊の巣?となせり |
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一三 『「わが家は祈の家と稱へらるべし」と錄されたるに汝らは之を强盜の巢となす』 |
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一三 そして彼らに言われた、「『わたしの家は、祈の家ととなえらるべきである』と書いてある。それだのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしている」。 |
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十四 瞽者跛者の人々殿に入てイエスに來りければ之を醫しぬ |
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一四 宮にて盲人・跛者ども御許に來りたれば、之を醫したまへり。 |
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一四 そのとき宮の庭で、盲人や足なえがみもとにきたので、彼らをおいやしになった。 |
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十五 祭司の長と學者たち其行たまへる奇事を見また兒童輩の殿にて呼はりダビデの裔ホザナよと云を聞て怒を含 |
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一五 祭司長・學者らイエスの爲し給へる不思議なる業と宮にて呼はり『ダビデの子にホサナ』と言ひをる子等とを見、憤ほりて、 |
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一五 しかし、祭司長、律法学者たちは、イエスがなされた不思議なわざを見、また宮の庭で「ダビデの子に、ホサナ」と叫んでいる子供たちを見て立腹し、 |
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十六 イエスに曰けるは彼等が言を聞やィエス答て曰けるは然り嬰兒乳哺者の口に讚美を備たりと錄されしを未だ讀ざる乎 |
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一六 イエスに言ふ『なんぢ彼らの言ふところを聞くか』イエス言ひ給ふ『然り「嬰兒・乳兒の口に讚美を備へ給へり」とあるを未だ讀まぬか』 |
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一六 イエスに言った、「あの子たちが何を言っているのか、お聞きですか」。イエスは彼らに言われた、「そうだ、聞いている。あなたがたは『幼な子、乳のみ子たちの口にさんびを備えられた』とあるのを読んだことがないのか」。 |
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十七 遂に彼等を離れキ城を出てベタニヤに往そこに宿れり |
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一七 遂に彼らを離れ、キを出でてベタニヤにゆき、其處に宿り給ふ。 |
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一七 それから、イエスは彼らをあとに残し、都を出てベタニヤに行き、そこで夜を過ごされた。 |
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十八 翌あさキ城へ返るとき飢ければ |
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一八 朝早く、キにかへる時イエス飢ゑたまふ。 |
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一八 朝はやく都に帰るとき、イエスは空腹をおぼえられた。 |
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十九 路の旁にある一の無花果の樹を見て其處に來りしに葉の他に何も見ざりしかば今よりのち永久も果を結ぶことを得ざれと之に曰たまひければ無花果立刻に枯ぬ |
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一九 路の傍なる一もとの無花果の樹を見て、その下に到り給ひしに、葉のほかに何をも見出さず、之に對ひて『今より後いつまでも果を結ばざれ』と言ひ給へば、無花果の樹たちどころに枯れたり。 |
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一九 そして、道のかたわらに一本のいちじくの木があるのを見て、そこに行かれたが、ただ葉のほかは何も見当らなかった。そこでその木にむかって、「今から後いつまでも、おまえには実がならないように」と言われた。すると、いちじくの木はたちまち枯れた。 |
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二十 弟子これを見て奇み曰けるは無花果の枯ること何に速や |
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二〇 弟子たち之を見、怪しみて言ふ、『無花果の樹の斯く立刻に枯れたるは何ぞや』 |
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二〇 弟子たちはこれを見て、驚いて言った、「いちじくがどうして、こうすぐに枯れたのでしょう」。 |
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二一 イエス答て彼等に曰けるは我まことに爾曹に吿んもし信仰ありて疑はずば此無花果に於るが如耳ならず此山に命じ此より移されて海に入よと云とも亦成ん |
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二一 イエス答へて言ひ給ふ『まことに汝らに吿ぐ、もし汝ら信仰ありて疑はずば、啻に此の無花果の樹にありし如きことを爲し得るのみならず、此の山に「移りて海に入れ」と言ふとも亦成るべし。 |
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二一 イエスは答えて言われた、「よく聞いておくがよい。もしあなたがたが信じて疑わないならば、このいちじくにあったようなことが、できるばかりでなく、この山にむかって、動き出して海の中にはいれと言っても、そのとおりになるであろう。 |
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二二 且なんぢら信じて祈らば求ふ所ことごとく得べし |
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二二 かつ祈のとき何にても信じて求めば、ことごとく得べし』 |
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二二 また、祈のとき、信じて求めるものは、みな与えられるであろう」。 |
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二三 イエス殿に入て教たるとき祭司の長および民の長老たち來り曰けるは何の權威を以て此事をなすや誰この權威を爾に予しや |
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二三 宮に到りてヘへ給ふとき、祭司長・民の長老ら御許に來りて言ふ『何の權威をもて此等の事をなすか、誰がこの權威を授けしか』 |
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二三 イエスが宮にはいられたとき、祭司長たちや民の長老たちが、その教えておられる所にきて言った、「何の権威によって、これらの事をするのですか。だれが、そうする権威を授けたのですか」。 |
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二四 イエス答て彼等に曰けるは我も一言なんぢらに問ん我にその事を吿なば我も何の權威をもて之を行といふことを爾曹に曰べし |
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二四 イエス答へて言ひたまふ『我も一言なんぢらに問はん、若し夫を吿げなば、我もまた何の權威をもて此等のことを爲すかを吿げん。 |
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二四 そこでイエスは彼らに言われた、「わたしも一つだけ尋ねよう。あなたがたがそれに答えてくれたなら、わたしも、何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言おう。 |
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二五 ヨハネのバプテスマは何處よりぞ天よりか人よりか彼等たがひに論じ曰けるは若し天よりと云ば然ば何ゆゑ信ぜざるかと云ん |
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二五 ヨハネのバプテスマは何處よりぞ、天よりか、人よりか』かれら互に論じて言ふ『もし天よりと言はば「何故かれを信ぜざりし」と言はん。 |
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二五 ヨハネのバプテスマはどこからきたのであったか。天からであったか、人からであったか」。すると、彼らは互に論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。 |
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二六 もし人よりと云ば我儕民を畏る蓋みなヨハネを預言者と爲ばなり |
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二六 もし人よりと言はんか、人みなヨハネを預言者と認むれば、我らは群衆を恐る』 |
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二六 しかし、もし人からだと言えば、群衆が恐ろしい。人々がみなヨハネを預言者と思っているのだから」。 |
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二七 遂に答て知ずと曰イエヌ彼等に曰けるは我も何の機威を以て之を行か爾曹に語らじ |
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二七 遂に答へて『知らず』と言へり。イエスもまた言ひたまふ『我も何の權威をもて此等のことを爲すか汝らに吿げじ。 |
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二七 そこで彼らは、「わたしたちにはわかりません」と答えた。すると、イエスが言われた、「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言うまい。 |
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二八 爾曹いかに意ふや或人二人の子ありしが長子に來りて曰けるは子よ今日わが葡萄園に往て働け |
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二八 なんぢら如何に思ふか、或人ふたりの子ありしが、その兄にゆきて言ふ「子よ、今日、葡萄園に往きて働け」 |
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二八 あなたがたはどう思うか。ある人にふたりの子があったが、兄のところに行って言った、『子よ、きょう、ぶどう園へ行って働いてくれ』。 |
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二九 答て否と曰しがのち悔て往たり |
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二九 答へて「主よ、我ゆかん」と言ひて終に往かず。 |
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二九 すると彼は『おとうさん、参ります』と答えたが、行かなかった。 |
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三十 また次子にも前の如く曰けるに答て君よ我往べしと曰しが遂に往ざりき |
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三〇 また弟にゆきて同じやうに言ひしに、答へて「往かじ」と言ひたれど、後くいて往きたり。 |
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三〇 また弟のところにきて同じように言った。彼は『いやです』と答えたが、あとから心を変えて、出かけた。 |
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三一 此二人のもの孰か父の旨に遵ひし彼等いひけるは長子なりイエス彼等に曰けるは誠に爾曹に吿ん稅吏および娼妓は爾曹より先に~の國に入べし |
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三一 この二人のうち孰か父の意を爲しし』彼らいふ『後の者なり』イエス言ひ給ふ『まことに汝らに吿ぐ、取稅人と遊女とは汝らに先だちて~の國に入るなり。 |
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三一 このふたりのうち、どちらが父の望みどおりにしたのか」。彼らは言った、「あとの者です」。イエスは言われた、「よく聞きなさい。取税人や遊女は、あなたがたより先に神の国にはいる。 |
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三二 夫ヨハネ義道をもて來りしに爾曹これを信ぜず稅吏娼妓は之を信じたり爾曹これを見てなほ悔改めず彼を信ぜざりき |
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三二 それヨハネ義の道をもて來りしに、汝らは彼を信ぜず、取稅人と遊女とは信じたり。然るに汝らは之を見し後もなほ悔改めずして信ぜざりき。 |
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三二 というのは、ヨハネがあなたがたのところにきて、義の道を説いたのに、あなたがたは彼を信じなかった。ところが、取税人や遊女は彼を信じた。あなたがたはそれを見たのに、あとになっても、心をいれ変えて彼を信じようとしなかった。 |
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三三 また一の譬を聞ある家の主人葡萄園を樹り離を環らし其中に酒榨をほり塔をたて農夫に貸て他の國へ往しが |
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三三 また一つの譬を聽け、ある家主、葡萄園をつくりて籬をめぐらし、中に酒槽を堀り、櫓を建て、農夫どもに貸して遠く旅立せり。 |
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三三 もう一つの譬を聞きなさい。ある所に、ひとりの家の主人がいたが、ぶどう園を造り、かきをめぐらし、その中に酒ぶねの穴を掘り、やぐらを立て、それを農夫たちに貸して、旅に出かけた。 |
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三四 果期ちかづきければ其果を收ん爲に僕を農夫のもとに遣せり |
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三四 果期ちかづきたれば、その果を受け取らんとて僕らを農夫どもの許に遣ししに、 |
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三四 収穫の季節がきたので、その分け前を受け取ろうとして、僕たちを農夫のところへ送った。 |
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三五 農夫ども其僕等を執へ一人を鞭ち一人を殺し一人を石にて擊り |
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三五 農夫どもその僕らを執へて一人を打ちたたき、一人をころし、一人を石にて擊てり。 |
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三五 すると、農夫たちは、その僕たちをつかまえて、ひとりを袋だたきにし、ひとりを殺し、もうひとりを石で打ち殺した。 |
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三六 また他の僕を前よりも多く遣しけるに之にも前の如くなせり |
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三六 復ほかの僕らを前よりも多く遣ししに、之をも同じやうに遇へり。 |
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三六 また別に、前よりも多くの僕たちを送ったが、彼らをも同じようにあしらった。 |
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三七 我子は敬ふならんと謂て終に其子を遣しゝに |
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三七 「わが子は敬ふならん」と言ひて、遂にその子を遣ししに、 |
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三七 しかし、最後に、わたしの子は敬ってくれるだろうと思って、主人はその子を彼らの所につかわした。 |
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三八 農夫等その子を見て互に曰けるは此は嗣子なり率これを殺して其產業をも奪べしと |
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三八 農夫ども此の子を見て互に言ふ「これは世嗣なり、いざ殺して、その嗣業を取らん」 |
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三八 すると農夫たちは、その子を見て互に言った、『あれはあと取りだ。さあ、これを殺して、その財産を手に入れよう』。 |
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三九 即ち之を執へ葡萄園より逐出して殺せり |
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三九 斯て之をとらへ葡萄園の外に逐ひ出して殺せり。 |
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三九 そして彼をつかまえて、ぶどう園の外に引き出して殺した。 |
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四十 然ば葡萄園の主人きたらん時にこの農夫に何を爲べき乎 |
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四〇 さらば葡萄園の主人きたる時、この農夫どもに何を爲さんか』 |
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四〇 このぶどう園の主人が帰ってきたら、この農夫たちをどうするだろうか」。 |
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四一 彼等イエスに曰けるは此等の惡人を甚く討滅し期に及てその果を納る他の農夫に葡萄園を貸予ふべし |
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四一 かれら言ふ『その惡人どもを飽くまで滅し、果期におよびて果を納むる他の農夫どもに葡萄園を貸し與ふべし』 |
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四一 彼らはイエスに言った、「悪人どもを、皆殺しにして、季節ごとに収穫を納めるほかの農夫たちに、そのぶどう園を貸し与えるでしょう」。 |
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四二 イエス彼等に曰けるは聖書に工匠の棄たる石は家の隅の首石となれり是主の行給ることにして我儕の目に奇とする所なりと錄されしを未だ讀ざる乎 |
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四二 イエス言ひたまふ『聖書に、「造家者らの棄てたる石は、これぞ隅の首石となれる、これ主によりて成れるにて、我らの目には奇しきなり」とあるを汝ら未だ讀まぬか。 |
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四二 イエスは彼らに言われた、「あなたがたは、聖書でまだ読んだことがないのか、『家造りらの捨てた石が/隅のかしら石になった。これは主がなされたことで、わたしたちの目には不思議に見える』。 |
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四三 是故に我なんぢらに吿ん~の國を爾曹より奪その果を結ぶ民に予らるべし |
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四三 この故に汝らに吿ぐ、汝らは~の國をとられ、其の果を結ぶ國人は、之を與へらるべし。 |
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四三 それだから、あなたがたに言うが、神の国はあなたがたから取り上げられて、御国にふさわしい実を結ぶような異邦人に与えられるであろう。 |
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四四 この石の上に墮るものは壞この石上に墜れば其もの碎かるべし |
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四四 この石の上に倒るる者はくだけ、又この石、人のうへに倒るれば、其の人を微塵とせん』 |
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四四 またその石の上に落ちる者は打ち砕かれ、それがだれかの上に落ちかかるなら、その人はこなみじんにされるであろう」。 |
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四五 祭司の長等およびパリサイの人かれの譬を聞おのれらを指て言るを識 |
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四五 祭司長・パリサイ人ら、イエスの譬をきき、己らを指して語り給へるを悟り、 |
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四五 祭司長たちやパリサイ人たちがこの譬を聞いたとき、自分たちのことをさして言っておられることを悟ったので、 |
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四六 イエスを執へんと欲ひ謀しかど唯民を畏たり蓋人々かれを預言者とすれば也 |
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四六 イエスを執へんと思へど群衆を恐れたり、群衆かれを預言者とするに因る。 |
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四六 イエスを捕えようとしたが、群衆を恐れた。群衆はイエスを預言者だと思っていたからである。 |
馬太傳iケ書 |
第二十二章 |
一 イエス彼等に答てまた譬を語りけるは |
マタイ傳iケ書 |
第二二章 |
一 イエスまた譬をもて答へて言ひ給ふ、 |
マタイによる福音書 |
第二二章 |
一 イエスはまた、譬で彼らに語って言われた、 |
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二 天國は或王その子の爲に婚筵を設るが如し |
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二 『天國は己が子のために婚筵を設くる王のごとし。 |
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二 「天国は、ひとりの王がその王子のために、婚宴を催すようなものである。 |
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三 婚筵に請おける者を迎ん爲に僕たちを遣しゝかど彼等きたることを好まず |
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三 婚筵に招きおきたる人々を迎へんとて僕どもを遣ししに、來るを肯はず。 |
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三 王はその僕たちをつかわして、この婚宴に招かれていた人たちを呼ばせたが、その人たちはこようとはしなかった。 |
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四 又ほかの僕を遣さんとして曰けるは我が筵すでに備れり我が牛また肥畜をも宰りて盡く備りたれば婚筵に來れと請たる者に言 |
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四 復ほかの僕どもを遣すとて言ふ「招きたる人々に吿げよ、視よ、晝餐は旣に備りたり。我が牛も肥えたる畜も屠られて、凡ての物備りたれば婚筵に來れと」 |
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四 そこでまた、ほかの僕たちをつかわして言った、『招かれた人たちに言いなさい。食事の用意ができました。牛も肥えた獣もほふられて、すべての用意ができました。さあ、婚宴においでください』。 |
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五 然ども彼等かへりみずして去ぬ其一人は己の田にゆき一人は己の貿易に往り |
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五 然るに人々顧みずして、或者は己が畑に、或者は己が商賣に往けり。 |
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五 しかし、彼らは知らぬ顔をして、ひとりは自分の畑に、ひとりは自分の商売に出て行き、 |
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六 他の者等はその僕を執へ辱しめて殺せり |
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六 また他の者は僕どもを執へて、辱しめ、かつ殺したれば、 |
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六 またほかの人々は、この僕たちをつかまえて侮辱を加えた上、殺してしまった。 |
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七 王これを聞て怒り軍勢を遣して其殺せる者を亡し又その邑を燒たり |
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七 王、怒りて軍勢を遣し、かの兇行者を滅して、其の町を燒きたり。 |
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七 そこで王は立腹し、軍隊を送ってそれらの人殺しどもを滅ぼし、その町を焼き払った。 |
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八 是に於てその僕等に曰けるは婚筵すでに備れども請たる者は客となるに堪ざる者なれば |
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八 斯て僕どもに言ふ「婚筵は旣に備りたれど、招きたる者どもは相應しからず。 |
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八 それから僕たちに言った、『婚宴の用意はできているが、招かれていたのは、ふさわしくない人々であった。 |
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九 衢に往て遇ほどの者を婚筵に請け |
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九 然れば汝ら街に往きて遇ふほどの者を婚筵に招け」 |
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九 だから、町の大通りに出て行って、出会った人はだれでも婚宴に連れてきなさい』。 |
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十 その僕途に出て善者をも惡者をも遇ほどの者を悉く集ければ婚筵の客充滿す |
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一〇 僕ども途に出でて善きも惡しきも遇ふほどの者をみな集めたれば、婚禮の席は客にて滿てり。 |
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一〇 そこで、僕たちは道に出て行って、出会う人は、悪人でも善人でもみな集めてきたので、婚宴の席は客でいっぱいになった。 |
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十一 王客を見んとて來りけるに茲に一人の禮服を着ざる者あるを見て |
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一一 王、客を見んとて入り來り、一人の禮服を著けぬ者あるを見て、 |
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一一 王は客を迎えようとしてはいってきたが、そこに礼服をつけていないひとりの人を見て、 |
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十二 之に曰けるは友よ如何なれば禮服を着ずして此處に來る乎かれ默然たり |
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一二 之に言ふ「友よ、如何なれば禮服を著けずして此處に入りたるか」かれ默しゐたり。 |
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一二 彼に言った、『友よ、どうしてあなたは礼服をつけないで、ここにはいってきたのですか』。しかし、彼は黙っていた。 |
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十三 遂に王僕に曰けるは彼の手足を縛りて外の幽暗に投いだせ基處にて哀哭また切齒すること有ん |
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一三 ここに王、侍者らに言ふ「その手足を縛りて外の暗Kに投げいだせ、其處にて哀哭・切齒することあらん」 |
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一三 そこで、王はそばの者たちに言った、『この者の手足をしばって、外の暗やみにほうり出せ。そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう』。 |
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十四 それ召るゝ者は多しと雖も選るゝ者は少なし |
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一四 それ招かるる者は多かれど、選ばるる者は少し』 |
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一四 招かれる者は多いが、選ばれる者は少ない」。 |
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十五 此時パリサイの人いでゝ如何してか彼を言誤らせんと相謀り |
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一五 爰にパリサイ人ら出でて如何してかイエスを言の羂に係けんと相議り、 |
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一五 そのときパリサイ人たちがきて、どうかしてイエスを言葉のわなにかけようと、相談をした。 |
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十六 その弟子とヘロデの黨を遣して云せけるは師よ爾は眞なる者なり眞をもて~の道を教また誰にも偏らざることを我儕は知そは貌に由て人を取ざれば也 |
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一六 その弟子らをヘロデ黨の者どもと共に遣して言はしむ『師よ、我らは知る、なんぢは眞にして眞をもて~の道をヘへ、かつ誰をも憚りたまふ事なし、人の外貌を見給はぬ故なり。 |
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一六 そして、彼らの弟子を、ヘロデ党の者たちと共に、イエスのもとにつかわして言わせた、「先生、わたしたちはあなたが真実なかたであって、真理に基いて神の道を教え、また、人に分け隔てをしないで、だれをもはばかられないことを知っています。 |
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十七 然ば貢をカイザルに納るは善や惡や爾いかに意ふか我儕に吿 |
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一七 されば我らに吿げたまへ、貢をカイザルに納むるは可きか、惡しきか、如何に思ひたまふ』 |
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一七 それで、あなたはどう思われますか、答えてください。カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか」。 |
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十八 イエスその惡を知て曰けるは僞善者よ何ぞ我を試むるや |
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一八 イエスその邪曲なるを知りて言ひたまふ『僞善者よ、なんぞ我を試むるか。 |
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一八 イエスは彼らの悪意を知って言われた、「偽善者たちよ、なぜわたしをためそうとするのか。 |
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十九 貢の銀錢を我に見せよ彼等デナリ一をイエスに携來りしに |
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一九 貢の金を我に見せよ』彼らデナリ一つを持ち來る。 |
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一九 税に納める貨幣を見せなさい」。彼らはデナリ一つを持ってきた。 |
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二十 之に曰けるは此像と號は誰か |
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二〇 イエス言ひ給ふ『これは誰の像、たれの號なるか』 |
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二〇 そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。 |
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二一 答てカイザル也といふ是に於てイエス彼等に曰けるは然ばカイザルの物はカイザルに歸しまた~の物は~に歸すべし |
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二一 彼ら言ふ『カイザルのなり』ここに彼らに言ひ給ふ『さらばカイザルの物はカイザルに、~の物は~に納めよ』 |
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二一 彼らは「カイザルのです」と答えた。するとイエスは言われた、「それでは、カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。 |
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二二 彼等之をきゝ奇としてイエスを去ゆけり |
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二二 彼ら之を聞きて怪しみ、イエスを離れて去り往けり。 |
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二二 彼らはこれを聞いて驚嘆し、イエスを残して立ち去った。 |
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二三 復生なしと言なせるサドカイの人この日イエスにきたり問て |
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二三 復活なしといふサドカイ人ら、その日、みもとに來り問ひて言ふ、 |
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二三 復活ということはないと主張していたサドカイ人たちが、その日、イエスのもとにきて質問した、 |
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二四 曰けるは師よモーセの云るに人もし子なくして死ば兄弟その妻を娶りて子をうみ兄弟の後を嗣すべしと |
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二四 『師よ、モーセは「人もし子なくして死なば、其の兄弟かれの妻を娶りて兄弟のために世嗣を擧ぐべし」と云へり。 |
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二四 「先生、モーセはこう言っています、『もし、ある人が子がなくて死んだなら、その弟は兄の妻をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。 |
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二五 茲に我儕の中に兄弟七人ありしが兄めとりて死子なきが故に其妻を次子に遣れ |
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二五 我らの中に七人の兄弟ありしが、兄めとりて死に、世嗣なくして其の妻を弟に遺したり。 |
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二五 さて、わたしたちのところに七人の兄弟がありました。長男は妻をめとったが死んでしまい、そして子がなかったので、その妻を弟に残しました。 |
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二六 その二その三その七まで皆然す |
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二六 その二、その三より、その七まで皆かくの如く爲し、 |
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二六 次男も三男も、ついに七人とも同じことになりました。 |
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二七 後つひに婦もまた死たり |
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二七 最後にその女も死にたり。 |
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二七 最後に、その女も死にました。 |
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二八 甦るときは此婦七人のうち誰の妻と爲べきか是みな彼を娶し者なれば也 |
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二八 されば復活の時その女は七人のうち誰の妻たるべきか、彼ら皆これを妻としたればなり』 |
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二八 すると復活の時には、この女は、七人のうちだれの妻なのでしょうか。みんながこの女を妻にしたのですが」。 |
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二九イエス答て彼等に曰けるは爾曹聖書をも~の能力をも知ざるに由て謬れり |
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二九 イエス答へて言ひ給ふ『なんぢら聖書をも~の能力をも知らぬ故に誤れり。 |
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二九 イエスは答えて言われた、「あなたがたは聖書も神の力も知らないから、思い違いをしている。 |
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三十 それ甦るときは娶らず嫁ず天にある~の使等の如し |
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三〇 それ人よみがへりの時は娶らず、媳がず、天に在る御使たちの如し。 |
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三〇 復活の時には、彼らはめとったり、とついだりすることはない。彼らは天にいる御使のようなものである。 |
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三一 死し者の甦ることに就ては爾曹に~の吿たまひし言に |
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三一 死人の復活に就きては~なんぢらに吿げて、 |
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三一 また、死人の復活については、神があなたがたに言われた言葉を読んだことがないのか。 |
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三二 我はアブラハムの~イサクの~ヤコブの~なりとあるを未だ讀ざる乎そもそも~は死し者の~に非ず生る者の~なり |
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三二 「我はアブラハムの~、イサクの~、ヤコブの~なり」と言ひ給へることを未だ讀まぬか。~は死にたる者の~にあらず、生ける者の~なり』 |
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三二 『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』と書いてある。神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である」。 |
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三三 人々これを聞て其訓を驚けり |
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三三 群衆これを聞きて其のヘに驚けり。 |
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三三 群衆はこれを聞いて、イエスの教に驚いた。 |
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三四 イエス サドカイの人をして口を塞がしめたりと聞てパリサイの人一處に集りけるが |
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三四 パリサイ人ら、イエスのサドカイ人らを默さしめ給ひしことを聞きて相集り、 |
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三四 さて、パリサイ人たちは、イエスがサドカイ人たちを言いこめられたと聞いて、一緒に集まった。 |
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三五 その中なる一人の教法師イエスを試みん爲に問て曰けるは |
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三五 その中なる一人のヘ法師、イエスを試むる爲に問ふ、 |
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三五 そして彼らの中のひとりの律法学者が、イエスをためそうとして質問した、 |
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三六 師よ律法のうち何の誡か大なる |
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三六 『帥よ、律法のうち孰の誡命か大なる』 |
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三六 「先生、律法の中で、どのいましめがいちばん大切なのですか」。 |
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三七 イエス答けるは爾心を盡し精~を盡し意を盡し主なる爾の~を愛すべし |
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三七 イエス言ひ給ふ『「なんぢ心を盡し、拐~を盡し、思を盡して主なる汝の~を愛すべし」 |
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三七 イエスは言われた、「『心をつくし、精神をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。 |
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三八 これ第一にして大たる誡なり |
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三八 これは大にして第一の誠命なり。 |
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三八 これがいちばん大切な、第一のいましめである。 |
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三九 第二も亦これに同じ己の如く爾の隣を愛すべし |
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三九 第二もまた之にひとし「おのれの如く、なんぢの隣を愛すべし」 |
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三九 第二もこれと同様である、『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ』。 |
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四十 凡の律法と預言者は此二の誡に因り |
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四〇 律法全體と預言者とは此の二つの誠命に據るなり』 |
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四〇 これらの二つのいましめに、律法全体と預言者とが、かかっている」。 |
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四一 パリサイの人の集れる時イエス彼等に問て曰けるは |
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四一 パリサイ人らの集りたる時、イエス彼らに問ひて言ひ給ふ、 |
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四一 パリサイ人たちが集まっていたとき、イエスは彼らにお尋ねになった、 |
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四二 爾曹キリストについて如何おもふ乎これ誰の子なるか彼等イエスに曰けるはダビデの裔なり |
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四二 「なんぢらはキリストに就きて如何に思ふか、誰の子なるか』かれら言ふ『ダビデの子なり』 |
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四二 「あなたがたはキリストをどう思うか。だれの子なのか」。彼らは「ダビデの子です」と答えた。 |
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四三 彼等に曰けるは然ばダビデ靈に感じて何故これを主と稱へし乎ダビデ言 |
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四三 イエス言ひ給ふ『さらばダビデ御靈に感じて何故かれを主と稱ふるか。曰く |
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四三 イエスは言われた、「それではどうして、ダビデが御霊に感じてキリストを主と呼んでいるのか。 |
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四四 主わが主に曰けるは我なんぢの敵を爾の足凳となすまで我みぎに坐すべしと |
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四四 「主、わが主に言ひ給ふ、われ汝の敵を汝の足の下に置くまでは、我が右に坐せよ」 |
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四四 すなわち『主はわが主に仰せになった、あなたの敵をあなたの足もとに置くときまでは、わたしの右に座していなさい』。 |
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四五 然ばダビデ既に之を主と稱たれば如何その子ならん乎 |
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四五 斯くダビデ彼を主と稱ふれば、爭でその子ならんや』 |
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四五 このように、ダビデ自身がキリストを主と呼んでいるなら、キリストはどうしてダビデの子であろうか」。 |
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四六 誰一言これに答ること能はず此日より敢て又とふ者なかりき |
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四六 誰も一言だに答ふること能はず、その日より敢て復イエスに問ふ者なかりき。 |
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四六 イエスにひと言でも答えうる者は、なかったし、その日からもはや、進んでイエスに質問する者も、いなくなった。 |
馬太傳iケ書 |
第二十三章 |
一 厥時イエス人々と弟子とに吿て曰けるは |
マタイ傳iケ書 |
第二三章 |
一 爰にイエス群衆と弟子たちとに語りて言ひ給ふ、 |
マタイによる福音書 |
第二三章 |
一 そのときイエスは、群衆と弟子たちとに語って言われた、 |
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二 學者とパリサイの人はモーセの位に坐す |
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二 『學者とパリサイ人とはモーセの座を占む。 |
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二 「律法学者とパリサイ人とは、モーセの座にすわっている。 |
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三 故に凡て彼等が爾曹に言ところを守て行ふべし然ざ彼等が行ふ所を爲こと勿れ蓋かれらは言のみにして行はざれば也 |
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三 されば凡てその言ふ所は、守りて行へ、されど、その所作には效ふな、彼らは言ふのみにて行はぬなり。 |
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三 だから、彼らがあなたがたに言うことは、みな守って実行しなさい。しかし、彼らのすることには、ならうな。彼らは言うだけで、実行しないから。 |
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四 また彼等は重かつ負がたき荷を括て人の肩に負せ己は一の指をもて之を動すことすら好ず |
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四 また重き荷を括りて人の肩にのせ、己は指にて之を動かさんともせず。 |
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四 また、重い荷物をくくって人々の肩にのせるが、それを動かすために、自分では指一本も貸そうとはしない。 |
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五 彼等の行は凡て人に見れんが爲にする也その佩經を幅濶し其衣の裾を大にし |
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五 凡てその所作は人に見られん爲にするなり。即ちその經札を幅ひろくし、衣の總を大くし、 |
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五 そのすることは、すべて人に見せるためである。すなわち、彼らは経札を幅広くつくり、その衣のふさを大きくし、 |
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六 また筵席の上座會堂の高座 |
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六 饗宴の上席、會堂の上座、 |
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六 また、宴会の上座、会堂の上席を好み、 |
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七 市上の問安人々よりラビ、ラビと稱られんことを好む |
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七 市場にての敬禮、また人にラビと呼ぼるることを好む。 |
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七 広場であいさつされることや、人々から先生と呼ばれることを好んでいる。 |
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八 爾曹はラビの稱を受ること勿れ蓋なんぢらの師は一人すなはちキリストなり爾曹はみな兄弟なり |
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八 されど汝らはラビの稱を受くな、汝らの師は一人にして、汝等はみな兄弟なり。 |
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八 しかし、あなたがたは先生と呼ばれてはならない。あなたがたの先生は、ただひとりであって、あなたがたはみな兄弟なのだから。 |
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九 また地にある者を父と稱ること勿れ爾曹の父は一人すなはち天に在す者なり |
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九 地にある者を父と呼ぶな、汝らの父は一人、すなはち天に在す者なり。 |
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九 また、地上のだれをも、父と呼んではならない。あなたがたの父はただひとり、すなわち、天にいます父である。 |
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十 また導師の稱を受ること勿れ蓋なんぢらの導師は一人すなはちキリストなり |
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一〇 また導師の稱を受くな、汝らの導師はひとり、即ちキリストなり。 |
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一〇 また、あなたがたは教師と呼ばれてはならない。あなたがたの教師はただひとり、すなわち、キリストである。 |
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十一 爾曹のうち大なる者は爾曹の僕と爲べし |
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一一 汝等のうち大なる者は、汝らの役者とならん。 |
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一一 そこで、あなたがたのうちでいちばん偉い者は、仕える人でなければならない。 |
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十二 凡そ自己を高する者は卑せられ自己を卑する者は高せられん |
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一二 凡そおのれを高うする者は卑うせられ、己を卑うする者は高うせらるるなり。 |
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一二 だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう。 |
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十三 噫なんぢら禍なるかな僞善なる學者とパリサイの人よ蓋なんぢら天國を人の前に閉て自ら入ず且いらんとする者の入をも許さゞれば也 |
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一三 禍害なるかな、僞善なる學者、パリサイ人よ、なんぢらは人の前に天國を閉して、自ら入らず、入らんとする人の入るをも許さぬなり。 |
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一三 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、天国を閉ざして人々をはいらせない。自分もはいらないし、はいろうとする人をはいらせもしない。 |
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十四 噫なんぢら禍なるかな僞善なる學者とパリサイの人よ蓋なんぢら嫠婦の家を呑いつはりて長き祈をなす之に由て爾曹最も重き審判を受べければ也 |
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一四 |
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一四 〔偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。だから、もっときびしいさばきを受けるに違いない。〕 |
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十五 あゝ禍なるかな僞善なる學者とパリサイの人よ蓋なんぢら徧く水陸を歷巡り一人をも己が宗旨に引入んとす既に引入れば之を爾曹よりも倍したる地獄の子と爲り |
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一五 禍害なるかな、僞善なる學者、パリサイ人よ、汝らは一人の改宗者を得んために海陸を經めぐり、旣に得れば、之を己に倍したるゲヘナの子となすなり。 |
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一五 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたはひとりの改宗者をつくるために、海と陸とを巡り歩く。そして、つくったなら、彼を自分より倍もひどい地獄の子にする。 |
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十六 噫なんぢら禍なるかな瞽者なる相よ爾曹はいふ人もし殿を指て誓はば事なし殿の金を指て誓はゞ背べからずと |
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一六 禍害なるかな、盲目なる手引よ、なんぢらは言ふ「人もし宮を指して誓はば事なし、富の黃金を指して誓はば果さざるべからず」と。 |
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一六 盲目な案内者たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは言う、『神殿をさして誓うなら、そのままでよいが、神殿の黄金をさして誓うなら、果す責任がある』と。 |
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十七 愚にして瞽なるものよ金と金を聖からしむる殿とは孰か尊き |
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一七 愚にして盲目なる者よ、黃金と黃金を聖ならしむる宮とは孰か貴き。 |
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一七 愚かな盲目な人たちよ。黄金と、黄金を神聖にする神殿と、どちらが大事なのか。 |
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十八 又いふ人もし祭の壇を指て誓はゞ事なし其上の禮物を指て誓はゞ背べからずと |
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一八 なんぢら又いふ「人もし祭壇を指して誓はば事なし、其の上の供物を指して誓はば果さざるべからず」と。 |
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一八 また、あなたがたは言う、『祭壇をさして誓うなら、そのままでよいが、その上の供え物をさして誓うなら、果す責任がある』と。 |
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十九 愚にして瞽なる者よ禮物と禮物を聖からしむる祭の壇とは孰か尊き |
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一九 盲目なる者よ、供物と供物を聖ならしむる祭壇とは執か貴き。 |
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一九 盲目な人たちよ。供え物と供え物を神聖にする祭壇とどちらが大事なのか。 |
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二十 それ祭の壇を指て誓ふ者は祭の壇および其上の凡の物を指て誓ふなり |
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二〇 されば祭壇を指して誓ふ者は、祭壇とその上の凡ての物とを指して誓ふなり。 |
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二〇 祭壇をさして誓う者は、祭壇と、その上にあるすべての物とをさして誓うのである。 |
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二一 また殿を指て誓ふ者は殿および其中に在す者を指て誓ふなり |
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二一 宮を指して誓ふ者は、宮とその內に住みたまふ者とを指して誓ふなり。 |
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二一 神殿をさして誓う者は、神殿とその中に住んでおられるかたとをさして誓うのである。 |
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二二 また天を指て誓ふ者は~の寳座および其上に坐する者を指て誓ふなり |
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二二 また天を指して誓ふ者は、~の御座とその上に坐したまふ者とを指して誓ふなり。 |
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二二 また、天をさして誓う者は、神の御座とその上にすわっておられるかたとをさして誓うのである。 |
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二三 噫なんぢら禍なるかな僞善なる學者とパリサイの人よ蓋なんぢら薄荷、茴香、馬芹の十分の一を取納て律法の最も重き義と仁と信とを爾曹は廢これ行ふ可もの也かれも亦廢べからざる者なり |
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二三 禍害なるかな、僞善なる學者、パリサイ人よ、汝らは薄荷・蒔蘿・クミンの十分の一を納めて、律法の中にて尤も重き公平と憐憫と忠信とを等閑にす。然れど之は行ふべきものなり、而して彼もまた等閑にすべきものならず。 |
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二三 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。はっか、いのんど、クミンなどの薬味の十分の一を宮に納めておりながら、律法の中でもっと重要な、公平とあわれみと忠実とを見のがしている。それもしなければならないが、これも見のがしてはならない。 |
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二四 瞽者なる相者よ爾曹は蠉を漉出して駱駝を呑もの也 |
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二四 盲目なる手引よ、汝らは蚋を漉し出して駱駝を呑むなり。 |
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二四 盲目な案内者たちよ。あなたがたは、ぶよはこしているが、らくだはのみこんでいる。 |
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二五 あゝ禍なる哉僞善なる學者とパリサイの人よ爾曹杯と盤の外を潔して內には貪欲と淫欲とを充せり |
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二五 禍害なるかな、僞善なる學者、パリサイ人よ、汝らは酒杯と皿との外を潔くす、然れど內は貪慾と放縱とにて滿つるなり。 |
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二五 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。杯と皿との外側はきよめるが、内側は貪欲と放縦とで満ちている。 |
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二六 瞽者なるパリサイの人よ爾曹まづ杯と盤の內を潔せよ然ばその外も亦きよまるべし |
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二六 盲目なるパリサイ人よ、汝まづ酒杯の內を潔めよ、然らば外も潔くなるべし。 |
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二六 盲目なパリサイ人よ。まず、杯の内側をきよめるがよい。そうすれば、外側も清くなるであろう。 |
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二七 噫なんぢら禍なる哉僞善なる學者とパリサイの人よ爾曹は白く塗たる墓に似たり外は美しく見れども內は骸骨とゥの汚穢にて充 |
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二七 禍害なるかな、僞善なる學者、パリサイ人よ、汝らは白く塗りたる墓に似たり、外は美しく見ゆれども內は死人の骨とさまざまの穢とにて滿つ。 |
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二七 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは白く塗った墓に似ている。外側は美しく見えるが、内側は死人の骨や、あらゆる不潔なものでいっぱいである。 |
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二八 此の如く爾曹もまた外は義く人に見れざも內は僞善と不法にて充 |
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二八 斯のごとく汝らも外は人に正しく見ゆれども、內は僞善と不法とにて滿つるなり。 |
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二八 このようにあなたがたも、外側は人に正しく見えるが、内側は偽善と不法とでいっぱいである。 |
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二九 噫なんぢら禍なるかな僞善なる學者とパリサイの人よ爾曹預言者の墓をたて義人の碑を飾れり |
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二九 禍害なるかな、僞善なる學者、パリサイ人よ、汝らは預言者の墓をたて、義人の碑を飾りて言ふ、 |
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二九 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは預言者の墓を建て、義人の碑を飾り立てて、こう言っている、 |
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三十 又いふ我儕もし先祖の時にあらば預言者の血を流すことに與せざりしをと |
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三〇 「我らもし先祖の時にありしならば、預言者の血を流すことに與せざりしものを」と。 |
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三〇 『もしわたしたちが先祖の時代に生きていたなら、預言者の血を流すことに加わってはいなかっただろう』と。 |
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三一 然ば爾曹は預言者を殺し者の裔なることを自ら證す |
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三一 かく汝らは預言者を殺しし者の子たるを自ら證す。 |
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三一 このようにして、あなたがたは預言者を殺した者の子孫であることを、自分で証明している。 |
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三二 なんぢら先祖の量を充せ |
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三二 なんぢら己が先祖の桝目を充せ。 |
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三二 あなたがたもまた先祖たちがした悪の枡目を満たすがよい。 |
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三三 蛇蝮の類よ爾曹いかで地獄の刑罰を免れんや |
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三三 蛇よ、蝮の裔よ、なんぢら爭でゲヘナの刑罰を避け得んや。 |
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三三 へびよ、まむしの子らよ、どうして地獄の刑罰をのがれることができようか。 |
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三四 是故に我爾曹に預言者と智者と學者を遣さんに或は之を殺し又十字架に釘或は其會堂にて之を鞭ち或は邑より邑へ逐苦めん |
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三四 この故に視よ、我なんぢらに預言者・智者・學者らを遣さんに、其の中の或者を殺し、十字架につけ、或者を汝らの會堂にて鞭ち、町より町に逐ひ苦しめん。 |
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三四 それだから、わたしは、預言者、知者、律法学者たちをあなたがたにつかわすが、そのうちのある者を殺し、また十字架につけ、そのある者を会堂でむち打ち、また町から町へと迫害して行くであろう。 |
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三五 そは義なるアベルの血より殿と祭の壇の間にて爾曹が殺しバラキアの子ザカリアの血に至るまで地に流したる義人の血は凡て爾曹に報來らんが爲なり |
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三五 之によりて義人アベルの血より、聖所と祭壇との間にて汝らが殺ししバラキヤの子ザカリヤの血に至るまで、地上にて流したる正しき血は、皆なんぢらに報い來らん。 |
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三五 こうして義人アベルの血から、聖所と祭壇との間であなたがたが殺したバラキヤの子ザカリヤの血に至るまで、地上に流された義人の血の報いが、ことごとくあなたがたに及ぶであろう。 |
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三六 われ誠に爾曹に吿ん此事みな此代に報來るべし |
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三六 誠に汝らに吿ぐ、これらの事はみな今の代に報い來るべし。 |
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三六 よく言っておく。これらのことの報いは、みな今の時代に及ぶであろう。 |
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三七 噫エルサレムよエルサレムよ預言者を殺し爾に遣さるゝ者を石にて擊ものよ母雞の雛を翼の下に集る如く我なんぢの赤子を集んとせしこと幾次ぞや然ど爾曹は好ざりき |
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三七 ああエルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、遣されたる人々を石にて擊つ者よ、牝雞のその雛を翼の下に集むるごとく、我なんぢの子どもを集めんと爲しこと幾度ぞや、然れど汝らは好まざりき。 |
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三七 ああ、エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、おまえにつかわされた人たちを石で打ち殺す者よ。ちょうど、めんどりが翼の下にそのひなを集めるように、わたしはおまえの子らを幾たび集めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは応じようとしなかった。 |
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三八 視よ爾曹の家は荒地となりて遺れん |
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三八 視よ、汝らの家は廢てられて汝らに遺らん。 |
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三八 見よ、おまえたちの家は見捨てられてしまう。 |
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三九 われ爾曹に吿ん主の名に託て來る者はなりと爾曹の云んとき至るまでは今より我を見ざるべし |
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三九 われ汝らに吿ぐ、「讚むべきかな、主の名によりて來る者」と、汝等のいふ時の至るまでは、今より我を見ざるべし』 |
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三九 わたしは言っておく、『主の御名によってきたる者に、祝福あれ』とおまえたちが言う時までは、今後ふたたび、わたしに会うことはないであろう」。 |
馬太傳iケ書 |
第二十四章 |
一 イエス殿より出ければ其弟子すゝみて殿の搆造を彼に觀せんとしたりしに |
マタイ傳iケ書 |
第二四章 |
一 イエス宮を出でてゆき給ふとき、弟子たち宮の建造物を示さんとて御許に來りしに、 |
マタイによる福音書 |
第二四章 |
一 イエスが宮から出て行こうとしておられると、弟子たちは近寄ってきて、宮の建物にイエスの注意を促した。 |
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二 イエス彼等に曰けるは爾曹すべて此等を見ざるか我まことに爾曹に吿ん此處に一の石も石の上に圯れずしては遣らじ |
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二 答へて言ひ給ふ『なんぢら此の一切の物を見ぬか。誠に汝らに吿ぐ、此處に一つの石も崩されずしては石の上に遺らじ』 |
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二 そこでイエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたは、これらすべてのものを見ないか。よく言っておく。その石一つでもくずされずに、そこに他の石の上に残ることもなくなるであろう」。 |
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三 イエス橄欖山に坐し給へるとき弟子ひそかに來りて曰けるは何の時このこと有や又爾の來る兆と世の末の兆は如何なるぞや我儕に吿たまへ |
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三 オリブ山に坐し給ひしとき、弟子たち窃に御許に來りて言ふ『われらに吿げ給へ、これらの事は何時あるか、又なんぢの來り給ふと世の終とには、何の兆あるか』 |
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三 またオリブ山ですわっておられると、弟子たちが、ひそかにみもとにきて言った、「どうぞお話しください。いつ、そんなことが起るのでしょうか。あなたがまたおいでになる時や、世の終りには、どんな前兆がありますか」。 |
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四 イエス答て彼等に曰けるは爾曹人に欺かれざるやう愼よ |
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四 イエス答へて言ひ給ふ『なんぢら人に惑されぬやうに心せよ。 |
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四 そこでイエスは答えて言われた、「人に惑わされないように気をつけなさい。 |
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五 蓋おほくの人わが名を冐きたり我はキリストなりと云て多の人を欺くべし |
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五 多くの者わが名を冐し來り「我はキリストなり」と言ひて多くの人を惑さん。 |
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五 多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がキリストだと言って、多くの人を惑わすであろう。 |
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六 又なんぢら戰と戰の風聲をきかん然ど愼て懼るゝ勿れ此等の事は皆ある可なり然ども末期は未だ至らず |
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六 又なんぢら戰爭と戰爭の噂とを聞かん、愼みて懼るな。斯る事はあるべきなり、然れど未だ終にはあらず。 |
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六 また、戦争と戦争のうわさとを聞くであろう。注意していなさい、あわててはいけない。それは起らねばならないが、まだ終りではない。 |
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七 民おこりて民をせめ國は國をせめ饑饉、疫病、地震ところどころに有ならん |
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七 即ち「民は民に、國は國に逆ひて起たん」また處々に饑饉と地震とあらん、 |
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七 民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。またあちこちに、ききんが起り、また地震があるであろう。 |
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八 是みな禍の始なり |
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八 此等はみな產の苦難の始なり。 |
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八 しかし、すべてこれらは産みの苦しみの初めである。 |
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九 其とき人なんぢらを患難に付し爾曹を殺すべし又なんぢら我名の爲に萬民に憎れん |
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九 そのとき人々なんぢらを患難に付し、また殺さん。汝等わが名の爲に、もろもろの國人に憎まれん。 |
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九 そのとき人々は、あなたがたを苦しみにあわせ、また殺すであろう。またあなたがたは、わたしの名のゆえにすべての民に憎まれるであろう。 |
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十 此とき許多のもの礙かつ互に付し互に憾むべし |
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一〇 その時おほくの人つまづき、且たがひに付し、互に憎まん。 |
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一〇 そのとき、多くの人がつまずき、また互に裏切り、憎み合うであろう。 |
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十一 また僞預言者おはく起て多の人を欺かん |
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一一 多くの僞預言者おこりて多くの人を惑さん。 |
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一一 また多くのにせ預言者が起って、多くの人を惑わすであろう。 |
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十二 また不法みつるに因て多の人の愛情ひやゝかに爲べし |
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一二 また不法の揩キによりて多くの人の愛、冷かにならん。 |
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一二 また不法がはびこるので、多くの人の愛が冷えるであろう。 |
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十三 然ど終まで忍ぶ者は救るゝことを得ん |
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一三 然れど終まで耐へしのぶ者は救はるべし。 |
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一三 しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。 |
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十四 又天國の此音を萬民に證せん爲に普く天下に宣傳られん然るのち末期いたるべし |
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一四 御國のこの音は、もろもろの國人に證をなさんため全世界に宣傳へられん、而して後、終は至るべし。 |
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一四 そしてこの御国の福音は、すべての民に対してあかしをするために、全世界に宣べ伝えられるであろう。そしてそれから最後が来るのである。 |
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十五 是故に預言者ダニエルに託て言れたる所の殘暴にくむべきもの聖處に立を見ば(讀者よく思ふべし) |
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一五 なんぢら預言者ダニエルによりて言はれたる「荒す惡むべき者」の聖なる處に立つを見ば(讀む者さとれ) |
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一五 預言者ダニエルによって言われた荒らす憎むべき者が、聖なる場所に立つのを見たならば(読者よ、悟れ)、 |
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十六 厥時ユダヤにをる者は山に遁れよ |
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一六 その時ユダヤに居る者どもは山に遁れよ。 |
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一六 そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。 |
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十七 屋上に在ものは其家の物を取んとて下る勿れ |
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一七 屋の上に居る者はその家の物を取り出さんとて下るな。 |
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一七 屋上にいる者は、家からものを取り出そうとして下におりるな。 |
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十八 田にをる者は其衣を取んとて歸る勿れ |
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一八 畑にをる者は上衣を取らんとて歸るな。 |
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一八 畑にいる者は、上着を取りにあとへもどるな。 |
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十九 其日には孕める者と乳を飮する婦は禍なる哉 |
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一九 その日には孕りたる者と乳を哺する者とは禍害なるかな。 |
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一九 その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。 |
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二十 爾曹冬または安息日に逃ることを免れん爲に祈れ |
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二〇 汝らの遁ぐることの冬または安息日に起らぬやうに祈れ。 |
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二〇 あなたがたの逃げるのが、冬または安息日にならないように祈れ。 |
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二一 其とき大なる患難あり此の如き患難は世の始より今に至るまで有ざりき又後にも有じ |
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二一 そのとき大なる患難あらん、世の創より今に至るまで斯る患難はなく、また後にも無からん。 |
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二一 その時には、世の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような大きな患難が起るからである。 |
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二二 若その日を少くせられずば一人だに救るゝ者なからん然ど選れし者の爲に其日は少くせらるべし |
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二二 その日もし少くせられずば、一人だに救はるる者なからん、されど選民の爲にその日少くせらるべし。 |
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二二 もしその期間が縮められないなら、救われる者はひとりもないであろう。しかし、選民のためには、その期間が縮められるであろう。 |
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二三 其時もしキリスト此處にあり彼處にありと爾曹に言ふ者あるとも信ずる勿れ |
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二三 その時あるひは「視よ、キリスト此處にあり」或は「此處にあり」と言ふ者ありとも信ずな。 |
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二三 そのとき、だれかがあなたがたに『見よ、ここにキリストがいる』、また、『あそこにいる』と言っても、それを信じるな。 |
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二四 そは僞キリスト僞預言者たち起て大なる休徵と異能を行ひ選れたる者をも欺くことを得ば之を欺く可れば也 |
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二四 僞キリスト・僞預言者おこりて大なる徵と不思議とを現はし、爲し得べくば選民をも惑はさんと爲るなり。 |
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二四 にせキリストたちや、にせ預言者たちが起って、大いなるしるしと奇跡とを行い、できれば、選民をも惑わそうとするであろう。 |
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二五 われ預じめ爾曹に之を吿 |
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二五 視よ、預じめ之を汝らに吿げおくなり。 |
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二五 見よ、あなたがたに前もって言っておく。 |
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二六 若キリスト野に在といふ者あるとも出る勿れ室に在と云もの有とも信ずる勿れ |
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二六 されば人もし汝らに「視よ、彼は荒野にあり」といふとも出で往くな「視よ、彼は部屋にあり」と言ふとも信ずな。 |
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二六 だから、人々が『見よ、彼は荒野にいる』と言っても、出て行くな。また『見よ、へやの中にいる』と言っても、信じるな。 |
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二七 そは電の東より出て西にまで閃くが如く人の子も來るべければ也 |
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二七 電光の東より出でて西にまで閃きわたる如く、人の子の來るも亦然らん。 |
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二七 ちょうど、いなずまが東から西にひらめき渡るように、人の子も現れるであろう。 |
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二八 それ屍のある處には鷲あつまらん |
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二八 それ死骸のある處には鷲あつまらん。 |
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二八 死体のあるところには、はげたかが集まるものである。 |
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二九 此等の日の患難の後たゞちに日は晦く月は光を失ひ星は空よりおち天の勢ひ震ふべし |
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二九 これらの日の患難ののち直ちに日は暗く、月は光を發たず、星は空より隕ち、天の萬象、ふるひ動かん。 |
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二九 しかし、その時に起る患難の後、たちまち日は暗くなり、月はその光を放つことをやめ、星は空から落ち、天体は揺り動かされるであろう。 |
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三十 其とき人の子の兆天に現るまた地上にあるゥ族は哭哀み且人の子の權威と大なる榮光をもて天の雲に乘來るを見ん |
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三〇 そのとき人の子の兆、天に現はれん。そのとき地上のゥ族みな嘆き、かつ人の子の能力と大なる榮光とをもて天の雲に乘り來るを見ん。 |
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三〇 そのとき、人の子のしるしが天に現れるであろう。またそのとき、地のすべての民族は嘆き、そして力と大いなる栄光とをもって、人の子が天の雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。 |
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三一 又その使等を遣し箛の大なる聲を出しめて天の此極より彼極まで四方より其選れし者を集むべし |
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三一 また彼は使たちを大なるラッパの聲とともに遣さん。使たちは天の此の極より彼の極まで四方より選民を集めん。 |
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三一 また、彼は大いなるラッパの音と共に御使たちをつかわして、天のはてからはてに至るまで、四方からその選民を呼び集めるであろう。 |
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三二 夫なんぢら無花果樹に由て譬を學べ其枝すでに柔かにして葉萌めば夏の近きを知 |
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三二 無花果の樹よりの譬をまなべ、その枝すでに柔かくなりて葉芽めげ、夏の近きを知る。 |
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三二 いちじくの木からこの譬を学びなさい。その枝が柔らかになり、葉が出るようになると、夏の近いことがわかる。 |
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三三 此の如く爾曹も凡て此等の事を見ば時ちかく門口に至ると知 |
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三三 斯のどとく汝らも此等のすべての事を見ば人の子すでに近づきて門邊に到るを知れ。 |
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三三 そのように、すべてこれらのことを見たならば、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。 |
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三四 われ誠に爾曹に吿ん此等の事ことごとく成まで此民は廢ざるべし |
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三四 誠に汝らに吿ぐ、これらの事ことごとく成るまで、今の代は過ぎ往くまじ。 |
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三四 よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起るまでは、この時代は滅びることがない。 |
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三五 天地は廢ん然ど我言は廢じ |
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三五 天地は過ぎゆかん、然れど我が言は過ぎ往くことなし。 |
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三五 天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は滅びることがない。 |
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三六 その日その時を知ものは唯わが父のみ天の使者も誰もしる者なし |
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三六 その日その時を知る者なし、天の使たちも知らず子も知らず、ただ父のみ知り給ふ。 |
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三六 その日、その時は、だれも知らない。天の御使たちも、また子も知らない、ただ父だけが知っておられる。 |
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三七 ノアの時の如く人の子の來るも亦然らん |
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三七 ノアの時のごとく人の子の來るも然あるべし。 |
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三七 人の子の現れるのも、ちょうどノアの時のようであろう。 |
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三八 それ洪水の前ノア方舟にいる日までは人々飮食嫁娶などして |
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三八 曾て洪水の前ノア方舟に入る日までは、人々飮み食ひ、娶り媳がせなどし、 |
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三八 すなわち、洪水の出る前、ノアが箱舟にはいる日まで、人々は食い、飲み、めとり、とつぎなどしていた。 |
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三九 洪水の來り悉く之を滅すまで知ざりき此の如く人の子も亦きたらん |
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三九 洪水の來りて悉とく滅すまでは知らざりき、人の子の來るも然あるべし。 |
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三九 そして洪水が襲ってきて、いっさいのものをさらって行くまで、彼らは気がつかなかった。人の子の現れるのも、そのようであろう。 |
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四十 其とき二人田に在んに一人は取れ一人は遺さるべし |
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四〇 その時ふたりの男、畑にをらんに、一人は取られ、一人は遺されん。 |
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四〇 そのとき、ふたりの者が畑にいると、ひとりは取り去られ、ひとりは取り残されるであろう。 |
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四一 二人の婦磨ひき居んに一人はとられ一人は遺さるべし |
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四一 二人の女、磨碾きをらんに、一人は取られ、一人は遺されん。 |
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四一 ふたりの女がうすをひいていると、ひとりは取り去られ、ひとりは残されるであろう。 |
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四二 是故に爾曹の主いづれの時きたるかを知ざれば怠らずして守れ |
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四二 されば目を覺しをれ、汝らの主のきたるは、何れの日なるかを知らざればなり。 |
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四二 だから、目をさましていなさい。いつの日にあなたがたの主がこられるのか、あなたがたには、わからないからである。 |
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四三 爾曹これを知もし家の主人ぬすびと何の時きたるかを知ば其家を守て破らすまじ |
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四三 汝等これを知れ、家主もし盜人いづれの時きたるかを知らば、目をさまし居て、その家を穿たすまじ。 |
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四三 このことをわきまえているがよい。家の主人は、盗賊がいつごろ来るかわかっているなら、目をさましていて、自分の家に押し入ることを許さないであろう。 |
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四四 然ば爾曹もまた預備せよ意ざる時に人の子きたらんと爲ばなり |
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四四 この故に汝らも備へをれ、人の子は思はぬ時に來ればなり。 |
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四四 だから、あなたがたも用意をしていなさい。思いがけない時に人の子が来るからである。 |
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四五 時に及て糧を彼等に予さする爲に主人がその僕等の上に立たる忠義にして智僕は誰なる乎 |
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四五 主人が時に及びて食物を與へさする爲に、家の者のうへに立てたる忠實にして慧き僕は誰なるか。 |
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四五 主人がその家の僕たちの上に立てて、時に応じて食物をそなえさせる忠実な思慮深い僕は、いったい、だれであろう。 |
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四六 その主人の來らん時かくの如く勤るを見るゝ僕はなり |
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四六 主人のきたる時かく爲し居るを見らるる僕は幸なり。 |
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四六 主人が帰ってきたとき、そのようにつとめているのを見られる僕は、さいわいである。 |
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四七 我まことに爾曹に吿ん其所有をみな彼に督らずべし |
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四七 誠に汝らに吿ぐ、主人すべての所有を彼に掌どらすべし。 |
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四七 よく言っておくが、主人は彼を立てて自分の全財産を管理させるであろう。 |
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四八 若その惡僕おのが心に我が主人の來るは遲らんと意ひ |
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四八 若しその僕、惡しくして心のうちに主人は遲しと思ひて、 |
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四八 もしそれが悪い僕であって、自分の主人は帰りがおそいと心の中で思い、 |
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四九 その朋輩を打撻きて酒に醉たる者どもと共に飮食し始なば |
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四九 その同輩を扑きはじめ、酒徒らと飮食を共にせば、 |
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四九 その僕仲間をたたきはじめ、また酒飲み仲間と一緒に食べたり飲んだりしているなら、 |
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五十 その僕の主人おもはざるの日しらざるの時に來りて |
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五〇 その僕の主人おもはぬ日しらぬ時に來りて、 |
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五〇 その僕の主人は思いがけない日、気がつかない時に帰ってきて、 |
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|
五一 之を斬殺し其報を僞善者と同うすべし其處にて哀哭切齒すること有ん |
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|
五一 之を烈しく笞ち、その報を僞善者と同じうせん。其處にて哀哭・切齒することあらん。 |
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|
|
五一 彼を厳罰に処し、偽善者たちと同じ目にあわせるであろう。彼はそこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。 |
馬太傳iケ書 |
第二十五章 |
一 其とき天國は燈を執て新郎を迎に出る十人の童女に比ふべし |
マタイ傳iケ書 |
第二五章 |
一 このとき天國は燈火を執りて、新カを迎へに出づる十人の處女に比ふべし。 |
マタイによる福音書 |
第二五章 |
一 そこで天国は、十人のおとめがそれぞれあかりを手にして、花婿を迎えに出て行くのに似ている。 |
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|
二 その中の五人は智く五人は愚なり |
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二 その中の五人は愚にして五人は慧し。 |
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|
|
二 その中の五人は思慮が浅く、五人は思慮深い者であった。 |
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|
三 愚なる者は其燈をとるに油を携へざりしが |
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三 愚なる者は燈火をとりて油を携へず、 |
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三 思慮の浅い者たちは、あかりは持っていたが、油を用意していなかった。 |
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|
四 智き者は其燈と兼に油を噐に携へたり |
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四 慧きものは油を器に入れて燈火とともに携へたり。 |
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四 しかし、思慮深い者たちは、自分たちのあかりと一緒に、入れものの中に油を用意していた。 |
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五 新郎おそかりければ皆假寐して眠れり |
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|
五 新カ、遲かりしかば、皆まどろみて寢ぬ。 |
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五 花婿の来るのがおくれたので、彼らはみな居眠りをして、寝てしまった。 |
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六 夜半ばに叫びて新郎きたりぬ出て迎よと呼聲ありければ |
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|
六 夜半に「やよ、新カなるぞ、出で迎へよ」と呼はる聲す。 |
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|
六 夜中に、『さあ、花婿だ、迎えに出なさい』と叫ぶ声がした。 |
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七 この童女ども皆おきて其燈を整へたるに |
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七 ここに處女みな起きてその燈火を整へたるに、 |
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七 そのとき、おとめたちはみな起きて、それぞれあかりを整えた。 |
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八 愚なるもの智き者に曰けるは我儕の燈熄んとす顧くは爾曹の油を我儕に分予よ |
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|
八 愚なる者は慧きものに言ふ「なんぢらの油を分けあたヘよ、我らの燈火きゆるなり」 |
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|
八 ところが、思慮の浅い女たちが、思慮深い女たちに言った、『あなたがたの油をわたしたちにわけてください。わたしたちのあかりが消えかかっていますから』。 |
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|
九 智きもの答て曰けるは我儕と爾曹とに恐くは足まじ爾曹賣者に往て己が爲に買 |
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九 慧きもの答へて言ふ「恐らくは我らと汝らとに足るまじ、寧ろ賣るものに往きて己がために買へ」 |
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|
九 すると、思慮深い女たちは答えて言った、『わたしたちとあなたがたとに足りるだけは、多分ないでしょう。店に行って、あなたがたの分をお買いになる方がよいでしょう』。 |
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|
十 かれら買んとて往しとき新郎きたりければ既に備たる者は之と偕に婚筵に入しかば門は閉られたり |
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一〇 彼ら買はんとて往きたる間に新カきたりたれば、備へをりし者どもは彼とともに婚筵にいり、而して門は閉されたり。 |
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一〇 彼らが買いに出ているうちに、花婿が着いた。そこで、用意のできていた女たちは、花婿と一緒に婚宴のへやにはいり、そして戸がしめられた。 |
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十一 斯て後その餘の童女きたりて曰けるは主よ主よ我儕の爲に開たまへ |
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一一 その後かの他の處女ども來りて「主よ、主よ、われらの爲にひらき給へ」と言ひしに、 |
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|
一一 そのあとで、ほかのおとめたちもきて、『ご主人様、ご主人様、どうぞ、あけてください』と言った。 |
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十二 答て我まことに爾曹に吿ん我は爾曹を知ずと曰り |
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一二 答へて「まことに汝らに吿ぐ、我は汝らを知らず」と言へり。 |
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一二 しかし彼は答えて、『はっきり言うが、わたしはあなたがたを知らない』と言った。 |
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十三 然ば怠らずして守れ爾曹その日その時を知ざれば也 |
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一三 されば目を覺しをれ、汝らは其の日その時を知らざるなり。 |
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一三 だから、目をさましていなさい。その日その時が、あなたがたにはわからないからである。 |
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十四 また天國は或人の旅行せんとして其僕をよび所有を彼等に預るが如し |
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一四 また或人とほく旅立せんとして其の僕どもを呼び、之に己が所有を預くるが如し。 |
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一四 また天国は、ある人が旅に出るとき、その僕どもを呼んで、自分の財産を預けるようなものである。 |
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十五 各人の智慧に從ひて或者には銀五千或者には二千或者には一千を予へをき直に旅行せり |
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一五 各人の能力に應じて或者には五タラント、或者には二タラント、或者には一タラントを與へ置きて旅立せり。 |
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一五 すなわち、それぞれの能力に応じて、ある者には五タラント、ある者には二タラント、ある者には一タラントを与えて、旅に出た。 |
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十六 五千の銀を受し者は往て之を貿易し他に五千を得たり |
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一六 五タラントを受けし者は、直ちに往き、之をはたらかせて他に五タラントを赢け、 |
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一六 五タラントを渡された者は、すぐに行って、それで商売をして、ほかに五タラントをもうけた。 |
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十七 二千を受し者もまた他に二千を得たり |
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一七 二タラントを受けし者も同じく他に二タラントを赢く。 |
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一七 二タラントの者も同様にして、ほかに二タラントをもうけた。 |
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十八 然るに一千を受し者は往て地を堀その主の金を藏せり |
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一八 然るに一タラントを受けし者は、往きて地を堀り、その主人の銀をかくし置けり。 |
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一八 しかし、一タラントを渡された者は、行って地を掘り、主人の金を隠しておいた。 |
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十九 曆久て後その僕等の主かへりて彼等と會計せしに |
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一九 久しうして後この僕どもの主人きたりて、彼らと計算したるに、 |
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一九 だいぶ時がたってから、これらの僕の主人が帰ってきて、彼らと計算をしはじめた。 |
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二十 五千の銀を受し者その他に五千の銀を携來りて主よ我に五千の銀を預しが他に五千の銀を儲たりと曰ければ |
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二〇 五タラントを受けし者は他に五タラントを持ちきたりて言ふ、「主よ、なんぢ我に五タラントを預けたりしが、視よ、他に五タラントを赢けたり」 |
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二〇 すると五タラントを渡された者が進み出て、ほかの五タラントをさし出して言った、『ご主人様、あなたはわたしに五タラントをお預けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに五タラントをもうけました』。 |
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二一 主かれに曰けるはあゝ善且忠なる僕ぞ爾寡なる事に忠なり我なんぢに多ものを督らせん爾の主人の歡樂に入よ |
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二一 主人いふ「宜いかな、善かつ忠なる僕、なんぢは僅なる物に忠なりき。我なんぢに多くの物を掌どらせん、汝の主人の歡喜に入れ」 |
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二一 主人は彼に言った、『良い忠実な僕よ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ』。 |
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二二 二千の銀を受し者きたりて主よ我に二千の銀を預しが他に二千の録を儲たりと曰ければ |
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二二 二タラントを受けし者も來りて言ふ「主よ、なんぢ我に二タラントを預けたりしが、視よ、他に二タラントを赢けたり」 |
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二二 二タラントの者も進み出て言った、『ご主人様、あなたはわたしに二タラントをお預けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに二タラントをもうけました』。 |
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二三 主かれに曰けるはあゝ善且忠なる僕ぞなんぢ寡なる事に忠なり我なんぢに多ものを督らせん爾の主人の歡樂に入よ |
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二三 主人いふ「宜いかな、善かつ忠なる僕、なんぢは僅なる物に忠なりき。我なんぢに多くの物を掌どらせん、汝の主人の歡喜にいれ」 |
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二三 主人は彼に言った、『良い忠実な僕よ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ』。 |
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二四 また一千の銀を受し者きたりて曰けるは主よ爾は嚴人にて播ざる處より穫ちらさゞる處より斂ることを我は知 |
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二四 また一タラントを受けし者もきたりて言ふ「主よ、我はなんぢの嚴しき人にて、播かぬ處より刈り、散らさぬ處より歛むることを知るゆゑに、 |
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二四 一タラントを渡された者も進み出て言った、『ご主人様、わたしはあなたが、まかない所から刈り、散らさない所から集める酷な人であることを承知していました。 |
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二五 故に我懼てゆき主の一千の銀を地に藏し置り今なんぢ爾の物を得たり |
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二五 懼れてゆき、汝のタラントを地に藏しおけり。視よ、汝はなんぢの物を得たり」 |
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二五 そこで恐ろしさのあまり、行って、あなたのタラントを地の中に隠しておきました。ごらんください。ここにあなたのお金がございます』。 |
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二六 その主こたへて曰けるは惡かつ惰れる僕ぞ爾わが播ざる處よりかり散さゞる處より斂ることを知か |
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二六 主人こたヘて言ふ「惡しく、かつ惰れる僕、わが播かぬ處より刈り、散らさぬ處より歛むることを知るか。 |
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二六 すると、主人は彼に答えて言った、『悪い怠惰な僕よ、あなたはわたしが、まかない所から刈り、散らさない所から集めることを知っているのか。 |
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二七 然らば我が金を兌換舖に預置べきなり然ば我が歸たるとき本と利とを受べし |
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二七 さらば我が銀を銀行にあづけ置くべかりしなり、我きたりて利子とともに我が物をうけ取りしものを。 |
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二七 それなら、わたしの金を銀行に預けておくべきであった。そうしたら、わたしは帰ってきて、利子と一緒にわたしの金を返してもらえたであろうに。 |
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二八 是故に彼の一千の銀を取て十千の銀ある者に予よ |
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二八 然れば彼のタラントを取りて十タラントを有てる人に與へよ。 |
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二八 さあ、そのタラントをこの者から取りあげて、十タラントを持っている者にやりなさい。 |
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二九 それ有る者は予られて尙あまりあり無有者はその有る物をも奪るゝ也 |
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二九 すべて有てる人は、與ヘられて愈々豐ならん。然れど有たぬ者は、その有てる物をも取らるべし。 |
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二九 おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう。 |
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三十 無uなる僕を外の幽暗に逐やれ其處にて哀哭切齒すること有ん |
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三〇 而して比の無uなる僕を外の暗Kに逐ひいだせ、其處にて哀哭・切齒することあらん」 |
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三〇 この役に立たない僕を外の暗い所に追い出すがよい。彼は、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう』。 |
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三一 人の子おのれの榮光をもてゥの聖使を率來る時はそり榮光の位に坐し |
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三一 人の子その榮光をもて、もろもろの御使を率ゐきたる時、その榮光の座位に坐せん。 |
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三一 人の子が栄光の中にすべての御使たちを従えて来るとき、彼はその栄光の座につくであろう。 |
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三二 萬國の民をその前に集め羊を牧者の綿羊と山羊とを別が如く彼等を別ち |
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三二 斯て、その前にもろもろの國人あつめられん、之を別つこと牧羊者が羊と山羊とを別つ如くして、 |
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三二 そして、すべての国民をその前に集めて、羊飼が羊とやぎとを分けるように、彼らをより分け、 |
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三三 綿羊をその右に山羊をその左に置べし |
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三三 羊をその右に、山羊をその左におかん。 |
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三三 羊を右に、やぎを左におくであろう。 |
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三四 斯て王その右になる者に云ん吾父に惠るゝ者よ來りて創世より以來なんぢらの爲に備られたる國を嗣 |
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三四 爰に王その右にをる者どもに言はん「わが父に祝せられたる者よ、來りて世の創より汝等のために備へられたる國を嗣げ。 |
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三四 そのとき、王は右にいる人々に言うであろう、『わたしの父に祝福された人たちよ、さあ、世の初めからあなたがたのために用意されている御国を受けつぎなさい。 |
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三五 蓋なんぢら我が飢し時われに食せ渴しとき我に飮せ旅せし時われを宿らせ |
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三五 なんぢら我が飢ゑしときに食はせ、渴きしときに飮ませ、旅人なりし時に宿らせ、 |
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三五 あなたがたは、わたしが空腹のときに食べさせ、かわいていたときに飲ませ、旅人であったときに宿を貸し、 |
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三六 裸なりし時われに衣せ病しとき我をみまひ獄に在しとき我に就ればなり |
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三六 裸なりしときに衣せ、病みしときに訪ひ、獄に在りしときに來りたればなり」 |
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三六 裸であったときに着せ、病気のときに見舞い、獄にいたときに尋ねてくれたからである』。 |
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三七 是に於て義者かれに答て云ん主よ何時なんぢの飢たるを見て食せまた渴たるに飲しゝ乎 |
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三七 爰に正しき者ら答へて言はん「主よ、何時なんぢの飢ゑしを見て食はせ、渴きしを見て飮ませし。 |
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三七 そのとき、正しい者たちは答えて言うであろう、『主よ、いつ、わたしたちは、あなたが空腹であるのを見て食物をめぐみ、かわいているのを見て飲ませましたか。 |
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三八 何時主の旅したるを見て宿らせ又裸なるに衣しや |
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三八 何時なんぢの旅人なりしを見て宿らせ、裸なりしを見て衣せし。 |
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三八 いつあなたが旅人であるのを見て宿を貸し、裸なのを見て着せましたか。 |
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三九 何時主の病また獄に在を見て爾に至りし乎 |
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三九 何時なんぢの病み、また獄に在りしを見て、汝にいたりし」 |
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三九 また、いつあなたが病気をし、獄にいるのを見て、あなたの所に参りましたか』。 |
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四十 王こたへて彼等に曰ん我まことに爾曹に吿ん既に爾曹わが此兄弟の最微者の一人に行へるは即ち我に行しなり |
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四〇 王こたへて言はん「まことに汝らに吿ぐ、わが兄弟なる此等のいと小き者の一人になしたるは、即ち我に爲したるなり」 |
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四〇 すると、王は答えて言うであろう、『あなたがたによく言っておく。わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』。 |
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四一 遂にまた左にをる者に曰ん罰せらるべき者よ我を離れて惡魔と其使者の爲に備たる熄ざる火に入よ |
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四一 斯てまた左にをる者どもに言はん「詛はれたる者よ、我を離れて惡魔とその使らとのために備へられたる永久の火に入れ。 |
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四一 それから、左にいる人々にも言うであろう、『のろわれた者どもよ、わたしを離れて、悪魔とその使たちとのために用意されている永遠の火にはいってしまえ。 |
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四二 蓋なんぢら我が飢し時われに食せず渴しとき我に飮せず |
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四二 なんぢら我が飢ゑしときに食はせず、渴きしときに飮ませず、 |
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四二 あなたがたは、わたしが空腹のときに食べさせず、かわいていたときに飲ませず、 |
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四三 旅せし時われを宿らせず裸なりし時われに衣ず病また獄に在し時われを顧ざれば也 |
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四三 旅人なりしときに宿らせず、裸なりしときに衣せず、病みまた獄に在りしときに訪はざればなり」 |
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四三 旅人であったときに宿を貸さず、裸であったときに着せず、また病気のときや、獄にいたときに、わたしを尋ねてくれなかったからである』。 |
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四四 是に於て彼等また答て曰ん主よ何時なんぢの飢また渴また旅し又裸また病また獄に在を見て主に事ざりし乎 |
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四四 爰に彼らも答へて言はん「主よ、いつ汝の飢ゑ、或は渴き、或は旅人、あるひは裸、あるひは病み、或は獄に在りしを見て事へざりし」 |
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四四 そのとき、彼らもまた答えて言うであろう、『主よ、いつ、あなたが空腹であり、かわいておられ、旅人であり、裸であり、病気であり、獄におられたのを見て、わたしたちはお世話をしませんでしたか』。 |
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四五 其とき王こたへて彼等にいはん我まことに爾曹に吿ん此最微者の一人に行はざるは即ち我に行はざりし也 |
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四五 ここに王こたへて言はん「誠になんぢらに吿ぐ、此等のいと小きものの一人に爲さざりしは、即ち我になさざりしなり」と。 |
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四五 そのとき、彼は答えて言うであろう、『あなたがたによく言っておく。これらの最も小さい者のひとりにしなかったのは、すなわち、わたしにしなかったのである』。 |
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四六 此等の者は窮なき刑罰にいり義者は窮なき生命に入べし |
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四六 斯て、これらの者は去りて永遠の刑罰にいり、正しき者は永遠の生命に入らん』 |
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四六 そして彼らは永遠の刑罰を受け、正しい者は永遠の生命に入るであろう」。 |
馬太傳iケ書 |
第二十六章 |
一 偖イエスこのゥの言を言竟りて其弟子に曰けるは |
マタイ傳iケ書 |
第二六章 |
一 イエスこれらの言をみな語りをへて、弟子たちに言ひ給ふ、 |
マタイによる福音書 |
第二六章 |
一 イエスはこれらの言葉をすべて語り終えてから、弟子たちに言われた。 |
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二 二日のゝち逾越節なるは爾曹が知ところ也それ人の子は十字架に釘られん爲に付さるべし |
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二 『なんぢらの知るごとく、二日の後は、過越の祭なり、人の子は十字架につけられん爲に賣らるべし』 |
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二 「あなたがたが知っているとおり、ふつかの後には過越の祭になるが、人の子は十字架につけられるために引き渡される」。 |
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三 此とき祭司の長および民の長老等カヤパと云る祭司の長の邸の庭に集り |
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三 そのとき祭司長・民の長老ら、カヤパといふ大祭司の中庭に集り、 |
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三 そのとき、祭司長たちや民の長老たちが、カヤパという大祭司の中庭に集まり、 |
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四 詭計をもてイエスを執へ殺さんと共々に謀いひけるは |
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四 詭計をもてイエスを捕へ、かつ殺さんと相議りたれど、 |
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四 策略をもってイエスを捕えて殺そうと相談した。 |
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五 祭の日には行べからず恐くは民の中に亂おこらん |
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五 又いふ『まつりの間は爲すべからず、恐らくは民の中に亂起らん』 |
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五 しかし彼らは言った、「祭の間はいけない。民衆の中に騒ぎが起るかも知れない」。 |
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六 イエス ベタニヤの癩病人シモンの家に居たまへる時 |
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六 イエス、べタニヤにて癩病人シモンの家に居給ふ時、 |
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六 さて、イエスがベタニヤで、重い皮膚病の人シモンの家におられたとき、 |
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七 ある婦蠟石の噐物に價たかき香膏を盛てイエスの食する所に携來り其首に斟しかば |
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七 ある女、石膏の壺に入りたる貴き香油を持ちて、近づき來り食事の席に就き居給ふイエスの首に注げり。 |
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七 ひとりの女が、高価な香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、イエスに近寄り、食事の席についておられたイエスの頭に香油を注ぎかけた。 |
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八 弟子等これを見て怒を含曰けるは此糜費のことを爲は何故ぞや |
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八 弟子たち之を見て憤ほり言ふ『何故かく濫なる費を爲すか。 |
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八 すると、弟子たちはこれを見て憤って言った、「なんのためにこんなむだ使をするのか。 |
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九 若これを賣ば多の金を得て貪者に施すことを得ん |
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九 之を多くの金に賣りて、貧しき者に施すことを得たりしものを』 |
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九 それを高く売って、貧しい人たちに施すことができたのに」。 |
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十 イエス知て彼等に曰けるは何ぞ此婦を惱すや彼は我に善事を行へる也 |
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一〇 イエス之を知りて言ひたまふ『何ぞこの女を惱すか、我に善き事をなせるなり。 |
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一〇 イエスはそれを聞いて彼らに言われた、「なぜ、女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。 |
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十一 貧者は常に爾曹と偕にあれど我は常に爾曹と偕に在ず |
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一一 貧しき者は常に汝らと偕にをれど、我は常に偕に居らず。 |
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一一 貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつも一緒にいるわけではない。 |
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十二 彼がこの香膏を我體に斟しは我の葬の爲に行る也 |
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一二 この女の我が體に香油を注ぎしは、わが葬りの備をなせるなり。 |
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一二 この女がわたしのからだにこの香油を注いだのは、わたしの葬りの用意をするためである。 |
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十三 われ誠に爾曹に吿ん天の下いづくにても此音の宣傳らるゝ處には此婦の行し事もその記念の爲に言傳らるべし |
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一三 誠に汝らに吿ぐ、全世界、何處にてもこの音の宣傳へらるる處には、この女のなしし事も、記念として語らるべし』 |
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一三 よく聞きなさい。全世界のどこででも、この福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」。 |
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十四 其とき十二弟子の一人なるイスカリオテのユダと云るもの祭司の長等の所に往て曰けるは |
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一四 ここに十二弟子の一人イスカリオテのユダといふ者、祭司長らの許にゆきて言ふ、 |
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一四 時に、十二弟子のひとりイスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところに行って |
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十五 我なんぢらに彼を賣さば幾何を與るか遂に銀三十にて約したり |
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一五 『なんぢらに彼を付さば、何ほど我に與へんとするか』彼ら銀三十を量り出せり。 |
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一五 言った、「彼をあなたがたに引き渡せば、いくらくださいますか」。すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。 |
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十六 此時よりイエスを賣さんと機を窺ひぬ |
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一六 ユダこの時よりイエスを付さんと好き機を窺ふ。 |
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一六 その時から、ユダはイエスを引きわたそうと、機会をねらっていた。 |
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十七 除酵節の首の日弟子イエスに來り曰けるは我儕すぎこしの食を爾の爲に何處に備ふべき乎 |
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一七 除酵祭の初の日、弟子たちイエスに來りて言ふ『過越の食をなし給ふために何處に我らが備ふる事を望み給ふか』 |
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一七 さて、除酵祭の第一日に、弟子たちはイエスのもとにきて言った、「過越の食事をなさるために、わたしたちはどこに用意をしたらよいでしょうか」。 |
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十八 イエス曰けるは京城にいり某に至ていへ師いふ我が時近きければ我弟子と偕に逾越の節筵を爾が家に行べしと |
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一八 イエス言ひたまふ『キにゆき、其のもとに到りて「師いふ、わが時近づけり。われ弟子たちと共に過越を汝の家にて守らん」と言へ』 |
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一八 イエスは言われた、「市内にはいり、かねて話してある人の所に行って言いなさい、『先生が、わたしの時が近づいた、あなたの家で弟子たちと一緒に過越を守ろうと、言っておられます』」。 |
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十九 弟子イエスに命ぜられし如して逾越の食を備ふ |
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一九 弟子たちイエスの命じ給ひし如くして、過越の備をなせり。 |
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一九 弟子たちはイエスが命じられたとおりにして、過越の用意をした。 |
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二十 日くるゝ時イエス十二弟子と偕に席に就 |
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二〇 日暮れて十二弟子とともに席に就きて、 |
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二〇 夕方になって、イエスは十二弟子と一緒に食事の席につかれた。 |
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二一 食する時いひけるは我まことに爾曹に吿ん爾曹のうち一人われを賣なり |
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二一 食するとき言ひ給ふ『まことに汝らに吿ぐ、汝らの中の一人、われを賣らん』 |
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二一 そして、一同が食事をしているとき言われた、「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」。 |
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二二 彼等いたく憂て各イエスに曰出りるは主よ我なる乎 |
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二二 弟子たち甚く憂ひて、おのおの『主よ、我なるが』と言ひいでしに、 |
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二二 弟子たちは非常に心配して、つぎつぎに「主よ、まさか、わたしではないでしょう」と言い出した。 |
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二三 答て曰けるは我と偕に手を盂に着る者は即ち我を賣す者なり |
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二三 答へて言ひたまふ『我とともに手を鉢に入るる者われを賣らん。 |
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二三 イエスは答えて言われた、「わたしと一緒に同じ鉢に手を入れている者が、わたしを裏切ろうとしている。 |
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二四 人の子は己について錄されたる如く逝ん然ビ人の子を賣す者は禍なる哉その人生れざりしならば反て幸なりしならん |
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二四 人の子は己に就きて錄されたる如く逝くなり。されど人の子を賣る者は禍害なるかな、その人は生れざりし方よがりしものを』 |
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二四 たしかに人の子は、自分について書いてあるとおりに去って行く。しかし、人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は生れなかった方が、彼のためによかったであろう」。 |
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二五 彼を賣すユダ答て曰けるはラビ我なるや之に曰けるは爾の言る如し |
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二五 イエスを賣るユダ答へて言ふ『ラビ、我なるか』イエス言ひ給ふ『なんぢの言へる如し』 |
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二五 イエスを裏切ったユダが答えて言った、「先生、まさか、わたしではないでしょう」。イエスは言われた、「いや、あなただ」。 |
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二六 かれら食する時イエス パンを取て祝し之をさき弟子に與て曰けるは取て食これは我身なり |
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二六 彼ら食しをる時イエス、パンをとり、祝してさき、弟子たちに與へて言ひ給ふ『取りて食へ、これは我が體なり』 |
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二六 一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「取って食べよ、これはわたしのからだである」。 |
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二七 また杯を取て謝し彼等に與て曰けるは爾曹みな此杯より飮 |
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二七 また酒杯をとりて謝し、彼らに與へて言ひ給ふ『なんぢら皆この酒杯より飮め。 |
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二七 また杯を取り、感謝して彼らに与えて言われた、「みな、この杯から飲め。 |
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二八 これ新約の我血にして罪を赦さんとて衆の人の爲に流所のもの也 |
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二八 これは契約のわが血なり、多くの人のために罪の赦を得させんとて、流す所のものなり。 |
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二八 これは、罪のゆるしを得させるようにと、多くの人のために流すわたしの契約の血である。 |
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二九 われ爾曹に吿ん今より後なんぢらと偕に新しき物を吾父の國に飮ん日までは再びこの葡萄にて造れる物を飮じ |
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二九 われ汝らに吿ぐ、わが父の國にて新しきものを汝らと共に飮む日までは、われ今より後この葡萄の果より成るものを飮まじ』 |
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二九 あなたがたに言っておく。わたしの父の国であなたがたと共に、新しく飲むその日までは、わたしは今後決して、ぶどうの実から造ったものを飲むことをしない」。 |
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三十 かれら歌を謳てのち橄欖山に往り |
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三〇 彼ら讚美を歌ひて後オリブ山に出でゆく。 |
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三〇 彼らは、さんびを歌った後、オリブ山へ出かけて行った。 |
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三一 其時イエス彼等に曰けるは今夜なんぢら皆われに就て礙かん蓋われ牧者を擊ば群の綿羊ちらんと錄されたれば也 |
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三一 ここにイエス弟子たちに言ひ給ふ『今宵なんぢら皆われに就きて躓かん「われ牧羊者を打たん、さらば群の羊散るべし」と錄されたるなり。 |
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三一 そのとき、イエスは弟子たちに言われた、「今夜、あなたがたは皆わたしにつまずくであろう。『わたしは羊飼を打つ。そして、羊の群れは散らされるであろう』と、書いてあるからである。 |
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三二 然ど我甦りて後爾曹に先ちガリラヤに往べし |
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三二 されど我よみがへりて後、なんぢらに先立ちてガリラヤに往かん』 |
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三二 しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先にガリラヤへ行くであろう」。 |
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三三 ペテロ答てイエスに曰けるは皆なんぢに就て礙くとも我は終に礙かじ |
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三三 ペテロ答へて言ふ『假令みな汝に就きて躓くとも我はいつまでも躓かじ』 |
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三三 するとペテロはイエスに答えて言った、「たとい、みんなの者があなたにつまずいても、わたしは決してつまずきません」。 |
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三四 イエス彼に曰けるは我まことに爾に吿ん今夜鷄なかざる前に爾三次われを知ずと言ん |
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三四 イエス言ひ給ふ『まことに汝に吿ぐ、今宵、鷄鳴く前に、なんぢ三たび我を否むべし』 |
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三四 イエスは言われた、「よくあなたに言っておく。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないというだろう」。 |
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三五 ペテロ彼に曰けるは我は主と偕に死るとも爾を知ずと言じ弟子みた如此いへり |
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三五 ペテロ言ふ『我なんぢと共に死ぬべき事ありとも汝を否まず』弟子たち皆かく言へり。 |
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三五 ペテロは言った、「たといあなたと一緒に死なねばならなくなっても、あなたを知らないなどとは、決して申しません」。弟子たちもみな同じように言った。 |
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三六 厥時イエス彼等と偕にゲッセマネといふ處に至て弟子等に曰けるは爾曹こゝに坐われ彼處に往て祈らん |
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三六 爰にイエス彼らと共にゲツセマネといふ處にいたりて、弟子たちに言ひ給ふ『わが彼處にゆきて祈る間、なんぢら此處に坐せよ』 |
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三六 それから、イエスは彼らと一緒に、ゲツセマネという所へ行かれた。そして弟子たちに言われた、「わたしが向こうへ行って祈っている間、ここにすわっていなさい」。 |
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三七 ペテロ及ゼベダイの二人の子を携へ憂へ哀みを催し |
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三七 斯てペテロとゼベダイの子二人とを伴ひゆき、憂ひ悲しみ出でて言ひ給ふ、 |
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三七 そしてペテロとゼベダイの子ふたりとを連れて行かれたが、悲しみを催しまた悩みはじめられた。 |
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三八 彼等に曰けるは我心いたく憂て死るばかり也こゝに待て我と偕に目を醒しをれ |
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三八 『わが心いたく憂ひて死ぬばかりなり。汝ら此處に止まりて我と共に目を覺しをれ』 |
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三八 そのとき、彼らに言われた、「わたしは悲しみのあまり死ぬほどである。ここに待っていて、わたしと一緒に目をさましていなさい」。 |
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三九 少し進往てひれふし祈いひけるは吾父よ若かなはゞ此杯を我より離ち給へ然ざ我心の從を成んとするに非ず聖旨に任せ給へ |
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三九 少し進みゆきて、平伏し祈りて言ひ給ふ『わが父よ、もし得べくぼ此の酒杯を我より過ぎ去らせ給へ。されど我が意の儘にとにはあらず、御意のままに爲し給へ』 |
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三九 そして少し進んで行き、うつぶしになり、祈って言われた、「わが父よ、もしできることでしたらどうか、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。しかし、わたしの思いのままにではなく、みこころのままになさって下さい」。 |
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四十 而て弟子に來り其寢たるを見てペテロに曰けるは如此一時も我と偕に目を醒をること能はざる乎 |
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四〇 弟子たちの許きにたり、その眠れるを見てペテロに言ひ給ふ『なんぢら斯く一時も我と共に目を覺し居ること能はぬか。 |
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四〇 それから、弟子たちの所にきてごらんになると、彼らが眠っていたので、ペテロに言われた、「あなたがたはそんなに、ひと時もわたしと一緒に目をさましていることが、できなかったのか。 |
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四一 惑に入ぬやう目を醒かつ祈その靈には願ふなれど肉體よわきなり |
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四一 誘惑に陷らぬやう目を覺し、かつ祈れ。實に心は熱すれども肉體よわきなり』 |
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四一 誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。心は熱しているが、肉体が弱いのである」。 |
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四二 二次ゆきて復いのり曰けるは吾父よ若われに此杯を飮さで離つこと能ずば聖旨に任せ給へ |
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四二 また二度ゆき祈りて言ひ給ふ『わが父よ、この酒坏もし我飮までは過ぎ去りがたくぼ、御意のままに成し給へ』 |
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四二 また二度目に行って、祈って言われた、「わが父よ、この杯を飲むほかに道がないのでしたら、どうか、みこころが行われますように」。 |
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四三 來りて又かれらの寢たるを見これ彼等の目疲たる也 |
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四三 復きたりて彼らの眠れるを見たまふ、是その目疲れたるなり。 |
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四三 またきてごらんになると、彼らはまた眠っていた。その目が重くなっていたのである。 |
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四四 彼等を離れて又ゆき第三次も同言をもて祈れり |
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四四 また離れゆきて三たび同じ言にて祈り給ふ。 |
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四四 それで彼らをそのままにして、また行って、三度目に同じ言葉で祈られた。 |
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四五 遂に其弟子に來りて曰けるは今は寢て休め時は近し人の子罪人の手に付されん |
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四五 而して弟子たちの許に來りて言ひ給ふ『今は眠りて休め。視よ、時近づけり、人の子は罪人らの手に付さるるなり。 |
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四五 それから弟子たちの所に帰ってきて、言われた、「まだ眠っているのか、休んでいるのか。見よ、時が迫った。人の子は罪人らの手に渡されるのだ。 |
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四六 起よ我儕往べし我を賣す者近きたり |
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四六 起きよ、我ら往くべし。視よ、我を賣るもの近づけり』 |
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四六 立て、さあ行こう。見よ、わたしを裏切る者が近づいてきた」。 |
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四七 如此いへるとき十二の一人たるユダ劔と棒とを持たる多の人々と偕に祭司の長と民の長老の所より來る |
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四七 なほ語り給ふほどに、視よ、十二弟子の一人なるユダ來る、祭司長・民の長老らより遣されたる大なる群衆、劍と棒とをもちて之に伴ふ。 |
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四七 そして、イエスがまだ話しておられるうちに、そこに、十二弟子のひとりのユダがきた。また祭司長、民の長老たちから送られた大ぜいの群衆も、剣と棒とを持って彼についてきた。 |
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四八 イエスを賣す者かれらに號をなして曰けるは我が接吻する者は夫なり之を執へよ |
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四八 イエスを賣るもの預じめ合圖を示して言ふ『わが接吻する者はそれなり、之を捕へよ』 |
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四八 イエスを裏切った者が、あらかじめ彼らに、「わたしの接吻する者が、その人だ。その人をつかまえろ」と合図をしておいた。 |
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四九 直にイエスに來りラビ安かと曰て彼に接吻す |
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四九 かくて直ちにイエスに近づき『ラビ、安かれ』といひて接吻したれば、 |
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四九 彼はすぐイエスに近寄り、「先生、いかがですか」と言って、イエスに接吻した。 |
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五十 イエス彼に曰けるは友よ何の爲に來るや遂に彼等すゝみ來り手をイエスに措て執へぬ |
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五〇 イエス言ひたまふ『友よ何とて來る』このとき人々すすみてイエスに手をかけて捕ふ。 |
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五〇 しかし、イエスは彼に言われた、「友よ、なんのためにきたのか」。このとき、人々は進み寄って、イエスに手をかけてつかまえた。 |
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五一 イエスと偕に在し者の一人手をのべ劔を抜て祭司の長の僕を擊その耳を削おとせり |
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五一 視よ、イエスと偕にありし者のひとり手をのべ、劍を拔きて、大祭司の僕をうちて、その耳を切り落せり。 |
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五一 すると、イエスと一緒にいた者のひとりが、手を伸ばして剣を抜き、そして大祭司の僕に切りかかって、その片耳を切り落した。 |
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五二 イエス彼に曰けるは爾の劔を故處に収よ凡て劔をとる者は劔にて亡ぶべし |
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五二 ここにイエス彼に言ひ給ふ『なんぢの劍をもとに收めよ、すべて劍をとる者は劍にて亡ぶるなり。 |
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五二 そこで、イエスは彼に言われた、「あなたの剣をもとの所におさめなさい。剣をとる者はみな、剣で滅びる。 |
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五三 我いま十二軍餘の天使を吾父に請て受ること能はずと爾曹おもふ乎 |
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五三 我わが父に請ひて十二軍に餘る御使を今あたへらるること能はずと思ふか。 |
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五三 それとも、わたしが父に願って、天の使たちを十二軍団以上も、今つかわしていただくことができないと、あなたは思うのか。 |
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五四 もし然せば如此あるべき事を錄し聖書に如何で應はん乎 |
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五四 もし然せば斯くあるべく錄したる聖書はいかで成就すべき』 |
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五四 しかし、それでは、こうならねばならないと書いてある聖書の言葉は、どうして成就されようか」。 |
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五五 此時イエス人々に曰けるは劔と棒とを持て盜賊を執ふる如して我を執にきたる乎われ日々爾曹と偕に殿に坐して誨しに爾曹われを執ざりし |
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五五 この時イエス群衆に言ひ給ふ『なんぢら强盜に向ふごとく劍と捧とをもち、我を捕へんとて出で來るか。我は日々宮に坐してヘへたりしに、汝ら我を捕へざりき。 |
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五五 そのとき、イエスは群衆に言われた、「あなたがたは強盗にむかうように、剣や棒を持ってわたしを捕えにきたのか。わたしは毎日、宮ですわって教えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。 |
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五六 然ど此の如なるは皆預言者の錄たる所に應成せん爲なり遂に弟子等みなイエスを離れて逃去ぬ |
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五六 されど斯の如くなるは、みな預言者たちの書の成就せん爲なり』爰に弟子たち皆イエスを棄てて逃げさりぬ。 |
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五六 しかし、すべてこうなったのは、預言者たちの書いたことが、成就するためである」。そのとき、弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。 |
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五七 イエスを執たる者これを曳て學者と長老の集れる所の祭司の長カヤパに携ゆく |
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五七 イエスを捕へたる者ども、學者・長老らの集り居る大祭司カヤパの許に曳きゆく。 |
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五七 さて、イエスをつかまえた人たちは、大祭司カヤパのところにイエスを連れて行った。そこには律法学者、長老たちが集まっていた。 |
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五八 ペテロ遠く離れてイエスに從ひ祭司の長の庭にまで至その結局を見んとて內にいり僕と偕に坐せり |
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五八 ペテロ遠く離れイエスに從ひて大祭司の中庭まで到り、その成行を見んとて、そこに入り下役どもと共に坐せり。 |
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五八 ペテロは遠くからイエスについて、大祭司の中庭まで行き、そのなりゆきを見とどけるために、中にはいって下役どもと一緒にすわっていた。 |
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五九 祭司の長等および長老すべての議員ともにイエスを殺さんとして妄證を求れども得ず |
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五九 祭司長らと全議會と、イエスを死に定めんとて、僞りの證據を求めたるに、 |
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五九 さて、祭司長たちと全議会とは、イエスを死刑にするため、イエスに不利な偽証を求めようとしていた。 |
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六十 多の妄りの證者きたれども亦えず後また妄りの證者二人きたりて曰けるは |
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六〇 多くの僞證者いでたれども得ず。後に二人の者いでて言ふ、 |
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六〇 そこで多くの偽証者が出てきたが、証拠があがらなかった。しかし、最後にふたりの者が出てきて、 |
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六一 この人曩に言ることあり我よく~の殿を毀ちて三日の內に之を建うべしと |
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六一 『この人は「われ~の宮を毀ち三日にて建て得べし」と言へり』 |
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六一 言った、「この人は、わたしは神の宮を打ちこわし、三日の後に建てることができる、と言いました」。 |
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六二 祭司の長たちてイエスに曰けるは爾こたふる言なき乎この人々の爾に立る證據は如何 |
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六二 大祭司たちてイエスに言ふ『この人々が汝に對して立つる證據に何をも答へぬか』 |
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六二 すると、大祭司が立ち上がってイエスに言った、「何も答えないのか。これらの人々があなたに対して不利な証言を申し立てているが、どうなのか」。 |
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六三 イエス默然たり祭司の長こたへて彼に曰けるは爾キリスト~の子なるか我なんぢを活~に誓せて之を吿しめん |
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六三 されどイエス默し居給ひたれば、大祭司いふ『われ汝に命ず、活ける~に誓ひて我らに吿げよ、汝はキリスト、~の子なるか』 |
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六三 しかし、イエスは黙っておられた。そこで大祭司は言った、「あなたは神の子キリストなのかどうか、生ける神に誓ってわれわれに答えよ」。 |
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六四イエス彼に曰けるは爾が言る如し且われ爾曹に吿ん此のち人の子大權の右に座し天の雲に乘て來るを爾曹みるべし |
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六四 イエス言ひ給ふ『なんぢの言へる如し。かつ我なんぢらに吿ぐ、今より後、なんぢら人の子の、全能者の右に坐し、天の雲に乘りて來るを見ん』 |
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六四 イエスは彼に言われた、「あなたの言うとおりである。しかし、わたしは言っておく。あなたがたは、間もなく、人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」。 |
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六五 是に於て祭司の長その衣を裂て曰けるは此人は褻瀆ことを言り何ぞ外に證據を求んや爾曹も今その褻瀆たることを聞 |
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六五 ここに大祭司おのが衣を裂きて言ふ『かれ瀆言をいへり、何ぞ他に證人を求めん。視よ、なんぢら今この瀆言をきけり。 |
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六五 すると、大祭司はその衣を引き裂いて言った、「彼は神を汚した。どうしてこれ以上、証人の必要があろう。あなたがたは今このけがし言を聞いた。 |
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六六 なんぢら如何おもふ乎かれら答て曰けるは彼は死に當れり |
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六六 いかに思ふか』答へて言ふ『かれは死に當れり』 |
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六六 あなたがたの意見はどうか」。すると、彼らは答えて言った、「彼は死に当るものだ」。 |
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六七 是に於て彼等その面に唾し且拳にて擊りまた或人かれを批いひけるは |
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六七 ここに彼等その御顏に唾し拳にて搏ち、或る者どもは手掌にて批きて言ふ、 |
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六七 それから、彼らはイエスの顔につばきをかけて、こぶしで打ち、またある人は手のひらでたたいて言った、 |
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六八 キリストよ爾を撃者は誰か我儕に預言せよ |
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六八 『キリストよ、我らに預言せよ、汝をうちし者は誰なるか』 |
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六八 「キリストよ、言いあててみよ、打ったのはだれか」。 |
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六九 ペテロ庭に坐ゐけるに或婢きたりて爾もガリラヤのイエスと偕なりと曰ければ |
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六九 ペテロ外にて中庭に坐しゐたるに、一人の婢女きたりて言ふ『なんぢも、ガリラヤ人イエスと偕にゐたり』 |
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六九 ペテロは外で中庭にすわっていた。するとひとりの女中が彼のところにきて、「あなたもあのガリラヤ人イエスと一緒だった」と言った。 |
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七十 ペテロ凡の人の前に此言を肯はずして我なんぢが言ところを知ずと曰り |
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七〇 かれ凡ての人の前に肯はずして言ふ『われは汝の言ふことを知らず』 |
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七〇 するとペテロは、みんなの前でそれを打ち消して言った、「あなたが何を言っているのか、わからない」。 |
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七一 出て門口に至れる時また他の婢これを見て其處にをる者に曰けるは此人もナザレのイエスと偕に在し |
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七一 かくて門まで出で往きたるとき他の婢女かれを見て、其處にをる者どもに向ひて『この人はナザレ人イエスと偕にゐたり』と言へるに、 |
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七一 そう言って入口の方に出て行くと、ほかの女中が彼を見て、そこにいる人々にむかって、「この人はナザレ人イエスと一緒だった」と言った。 |
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七二 ペテロまた肯はずして誓ふ我この人を知ずと |
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七二 重ねて肯はず契ひて『我はその人を知らず』といふ。 |
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七二 そこで彼は再びそれを打ち消して、「そんな人は知らない」と誓って言った。 |
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七三 暫くありて旁らに立たる者すゝみ近てペテロに曰けるは誠に爾もその黨の一人なり蓋なんぢの方言なんぢを顯せり |
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七三 暫くして其處に立つ者ども近づきてペテロに言ふ『なんぢも慥にかの黨與なり、汝の國詑なんぢを表せり』 |
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七三 しばらくして、そこに立っていた人々が近寄ってきて、ペテロに言った、「確かにあなたも彼らの仲間だ。言葉づかいであなたのことがわかる」。 |
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七四 此に於てペテロ詈り且誓て我その人を知ずと曰しが頓て鷄鳴ぬ |
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七四 爰にペテロ盟ひ、かつ契ひて『我その人を知らず』と言ひ出づるをりしも、鷄鳴をぬ。 |
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七四 彼は「その人のことは何も知らない」と言って、激しく誓いはじめた。するとすぐ鶏が鳴いた。 |
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七五 ペテロ イエスの鷄なかざる前なんぢ三次われを知ずといはんと云たまへる言を憶起し外に出て悲み哭り |
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七五 ペテロ『にはとり鳴く前に、なんぢ三度われを否まん』とイエスの言ひ給ひし御言を思ひ出し、外に出でて甚く泣けり。 |
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七五 ペテロは「鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、外に出て激しく泣いた。 |
馬太傳iケ書 |
第二十七章 |
一 平且になりて凡の祭司の長と民の長老ともに謀てイエスを殺さんとし |
マタイ傳iケ書 |
第二七章 |
一 夜明になりて凡ての祭司長・民の長老ら、イエスを殺さんと相議り、 |
マタイによる福音書 |
第二七章 |
一 夜が明けると、祭司長たち、民の長老たち一同は、イエスを殺そうとして協議をこらした上、 |
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二 既に彼を縛ひきゆきて方伯のポンテオピラトに解せり |
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二 遂に之を縛り、曳きゆきて總督ピラトに付せり。 |
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二 イエスを縛って引き出し、総督ピラトに渡した。 |
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三 是に於てイエスを賣しゝユダ彼の死に定られしを見て悔その銀三十を祭司の長長老等に返して |
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三 爰にイエスを賣りしユダ、その死に定められ給ひしを見て悔い、祭司長・長老らに、かの三十の銀をかへして言ふ、 |
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三 そのとき、イエスを裏切ったユダは、イエスが罪に定められたのを見て後悔し、銀貨三十枚を祭司長、長老たちに返して |
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四 曰けるは無辜の血を付し我は罪を犯しぬ彼等いひけるは我儕に於て何ぞ與らんや爾みづから當べし |
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四 『われ罪なきの血を賣りて罪を犯したり』彼らいふ『われら何ぞ干らん、汝みづから當るべし』 |
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四 言った、「わたしは罪のない人の血を売るようなことをして、罪を犯しました」。しかし彼らは言った、「それは、われわれの知ったことか。自分で始末するがよい」。 |
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|
五 ユダその銀を殿に投棄て其處を去ゆきて自ら縊たり |
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|
五 彼その銀を聖所に投げすてて去り、ゆきて自ら縊れたり。 |
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五 そこで、彼は銀貨を聖所に投げ込んで出て行き、首をつって死んだ。 |
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六 祭司の長等この銀を取て曰けるは此は血の價なれば賽錢の箱に入べからずとて |
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六 祭司長ら、その銀をとりて言ふ『これは血の値なれば宮の庫に納むるは可からず』 |
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|
六 祭司長たちは、その銀貨を拾いあげて言った、「これは血の代価だから、宮の金庫に入れるのはよくのない」。 |
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七 共に謀この銀をもて旅客を葬る爲に陶工の田を買り |
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七 斯て相議り、その銀をもて陶工の畑を買ひ、旅人らの墓地とせり。 |
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七 そこで彼らは協議の上、外国人の墓地にするために、その金で陶器師の畑を買った。 |
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八 故に其田は今に至るまで血田と稱らる |
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八 之によりて其の畑は、今に至るまで血の畑と稱へらる。 |
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八 そのために、この畑は今日まで血の畑と呼ばれている。 |
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九 是に於て預言者エレミヤに託いはれたる言にイスラエルの民に估られ估られし者の價の銀三十を取 |
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九 ここに預言者エレミヤによりて云はれたる言は成就したり。曰く『かくて彼ら値積られしもの、即ちイスラエルの子らが値積りし者の價の銀三十をとりて、 |
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九 こうして預言者エレミヤによって言われた言葉が、成就したのである。すなわち、「彼らは、値をつけられたもの、すなわち、イスラエルの子らが値をつけたものの代価、銀貨三十を取って、 |
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十 主の我に命ぜし如く陶工の田を買ぬと有に應へり |
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一〇 陶工の畑の代に之を與へたり。主の我に命じ給ひし如し』 |
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一〇 主がお命じになったように、陶器師の畑の代価として、その金を与えた」。 |
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十一 偖イエス方伯の前にたつ方伯イエスに問て曰けるは爾はユダヤ人の王なるかイエス之に曰けるは爾が言る如し |
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一一 。さてイエス、總督の前に立ち給ひしに、總督、問ひて言ふ『なんぢはユダヤ人の王なるか』イエス言ひ給ふ『なんぢの言ふが如し』 |
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一一 さて、イエスは総督の前に立たれた。すると総督はイエスに尋ねて言った、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは「そのとおりである」と言われた。 |
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十二 祭司の長長老たち彼を訴ふれども何の答もせず |
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一二 祭司長・長老ら訴ふれども、何をも答へ給はず。 |
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一二 しかし、祭司長、長老たちが訴えている間、イエスはひと言もお答えにならなかった。 |
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十三 是に於てピラト彼に曰けるは此人々なんぢに立る證のかく大なるを爾きかざる乎 |
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一三 爰にピラト彼にいふ『聞かぬか、彼らが汝に對して如何におほくの證據を立つるを』 |
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一三 するとピラトは言った、「あんなにまで次々に、あなたに不利な証言を立てているのが、あなたには聞えないのか」。 |
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十四 方伯の甚奇とするまでにイエス一言も答せざりき |
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一四 されど總督の甚く怪しむまで、一言をも答へ給はず。 |
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一四 しかし、総督が非常に不思議に思ったほどに、イエスは何を言われても、ひと言もお答えにならなかった。 |
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十五 この祭の日には方伯より民の願に任せて一人の囚人を釋の例あり |
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一五 祭の時には總督、群衆の望にまかせて、囚人一人を之に赦す例あり。 |
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一五 さて、祭のたびごとに、総督は群衆が願い出る囚人ひとりを、ゆるしてやる慣例になっていた。 |
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十六 時にバラバと云る一人の名高き囚人ありければ |
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一六 爰にバラバといふ隱れなき囚人あり。 |
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一六 ときに、バラバという評判の囚人がいた。 |
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十七 ピラト民の集りしとき彼等に曰けるはバラバか又はキリストと稱ふるイエスなる乎なんぢら誰を釋さんと欲ふや |
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一七 されば人々の集れる時、ピラト言ふ『なんぢら我が誰を赦さんことを願ふか。バラバなるか、キリストと稱ふるイエスなるか』 |
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一七 それで、彼らが集まったとき、ピラトは言った、「おまえたちは、だれをゆるしてほしいのか。バラバか、それとも、キリストといわれるイエスか」。 |
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十八 これ媢嫉に由てイエスを解したりと知ばなり |
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一八 これピラト彼らのイエスを付ししは嫉に因ると知る故なり。 |
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一八 彼らがイエスを引きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにはよくわかっていたからである。 |
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十九 方伯審判の座に坐すたる時その妻いひ遣しけるは此義人に爾干ること勿れ蓋われ今日夢の中に彼につきて多く憂たり |
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一九 彼なほ審判の座にをる時、その妻、人を遣して言はしむ『かの義人に係ることを爲な、我けふ夢の中にて彼の故にさまざま苦しめり』 |
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一九 また、ピラトが裁判の席についていたとき、その妻が人を彼のもとにつかわして、「あの義人には関係しないでください。わたしはきょう夢で、あの人のためにさんざん苦しみましたから」と言わせた。 |
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二十 祭司の長長老たちバラバを釋しイエスを殺さんことを求と民に唆む |
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二〇 祭司長・長老ら、群衆にバラバの赦されん事を請はしめ、イエスを亡さんことを勸む。 |
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二〇 しかし、祭司長、長老たちは、バラバをゆるして、イエスを殺してもらうようにと、群衆を説き伏せた。 |
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二一 方伯こたへて彼等に曰けるは二人のうち孰を我なんぢらに釋さんことを望むや彼等バラバと答ふ |
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二一 總督こたへて彼らに言ふ『二人の中いづれを我が赦さん事を願ふか』彼らいふ『バラバなり』 |
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二一 総督は彼らにむかって言った、「ふたりのうち、どちらをゆるしてほしいのか」。彼らは「バラバの方を」と言った。 |
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二二 ピラト曰けるは然ばキリストと稱ふるイエスに我なにを處べきか衆いふ十字架に釘よと |
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二二 ピラト言ふ『さらばキリストと稱ふるイエスを我いかに爲べきか』皆いふ『十字架につくべし』 |
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二二 ピラトは言った、「それではキリストといわれるイエスは、どうしたらよいか」。彼らはいっせいに「十字架につけよ」と言った。 |
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二三 方伯いひけるは彼なにの惡事を行しや彼等ますます喊叫て十字架に釘よと曰 |
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二三 ピラト言ふ『かれ何の惡事をなしたるか』彼ら烈しく叫びていふ『十字架につくべし』 |
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二三 しかし、ピラトは言った、「あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか」。すると彼らはいっそう激しく叫んで、「十字架につけよ」と言った。 |
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二四 ピラトその言のuなくして唯亂の起んとするをしり水を取て人々の前に手をあらひ曰けるは此義者の血に我は罪なし爾曹みづから之に當れ |
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二四 ピラトは何の効なく反つて亂にならんとするを見て、水をとり群衆のまへに手を洗ひて言ふ『この人の血につきて我は罪なし、汝等みづから當れ』 |
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二四 ピラトは手のつけようがなく、かえって暴動になりそうなのを見て、水を取り、群衆の前で手を洗って言った、「この人の血について、わたしには責任がない。おまえたちが自分で始末をするがよい」。 |
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二五 民みな答て曰けるは其血は我儕と我儕の子孫に係るべし |
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二五 民みな答へて言ふ『その血は、我らと我らの子孫とに歸すべし』 |
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二五 すると、民衆全体が答えて言った、「その血の責任は、われわれとわれわれの子孫の上にかかってもよい」。 |
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二六 是に於てバラバを彼等に釋しイエスを鞭ちて之を十字架に釘ん爲に付したり |
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二六 爰にピラト、バラバを彼らに赦し、イエスを鞭ちて十字架につくる爲に付せり。 |
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二六 そこで、ピラトはバラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。 |
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二七 方伯の兵卒イエスを携へ公廳に至り全營を其もとに集め |
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二七 ここに總督の兵卒ども、イエスを官邸につれゆき、全隊を御許に集め、 |
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二七 それから総督の兵士たちは、イエスを官邸に連れて行って、全部隊をイエスのまわりに集めた。 |
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二八 彼の衣を褫て綘色の袍を着せ |
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二八 その衣をはぎて、緋色の上衣をきせ、 |
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二八 そしてその上着をぬがせて、赤い外套を着せ、 |
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二九 棘にて冕を編其首に冠しめ又葦を右手に持せ且その前に跪づき嘲弄して曰けるはユダヤ人の王安かれ |
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二九 茨の冠冕を編みて、その首に冠らせ、葦を右の手にもたせ且その前に跪づき、嘲弄して言ふ『ユダヤ人の王、安かれ』 |
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二九 また、いばらで冠を編んでその頭にかぶらせ、右の手には葦の棒を持たせ、それからその前にひざまずき、嘲弄して、「ユダヤ人の王、ばんざい」と言った。 |
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三十 また彼に唾し其葦を取て其首を擊り |
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三〇 また之に唾し、かの葦をとりて其の首を叩く。 |
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三〇 また、イエスにつばきをかけ、葦の棒を取りあげてその頭をたたいた。 |
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三一 嘲弄し畢りて其袍をはぎ故 衣をきせ十字架に釘んとて彼を曳ゆく |
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三一 かく嘲弄してのち、上衣を剝ぎて、故の衣をきせ、十字架につけんとて曳きゆく。 |
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三一 こうしてイエスを嘲弄したあげく、外套をはぎ取って元の上着を着せ、それから十字架につけるために引き出した。 |
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三二 その出し時クレネ人のシモンといふ者に遇ければ强て之に十字架を負せたり |
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三二 その出づる時、シモンといふクレネ人にあひしかば、强ひて之にイエスの十字架をおはしむ。 |
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三二 彼らが出て行くと、シモンという名のクレネ人に出会ったので、イエスの十字架を無理に負わせた。 |
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三三 彼等ゴルゴタ譯ば即ち髑髏といへる處に來り |
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三三 斯てゴルゴタといふ處、即ち髑髏の地にいたり、 |
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三三 そして、ゴルゴタ、すなわち、されこうべの場、という所にきたとき、 |
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三四 醋に膽を和せてイエスに飮せんと爲たりしに甞て飮ことをせざりき |
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三四 苦味を混ぜたる葡萄酒を飮ませんとしたるに、嘗めて、飮まんとし給はず。 |
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三四 彼らはにがみをまぜたぶどう酒を飲ませようとしたが、イエスはそれをなめただけで、飲もうとされなかった。 |
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三五 斯てイエスを十字架に釘しのち鬮を拈て其衣を分これ預言者の言に彼等互に我が衣を分わが裏衣を鬮にすと云しに應へり |
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三五 彼らイエスを十字架につけてのち、籤をひきて其の衣をわかち、 |
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三五 彼らはイエスを十字架につけてから、くじを引いて、その着物を分け、 |
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三六 兵卒こゝに坐してイエスを守れり |
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三六 且そこに坐して、イエスを守る。 |
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三六 そこにすわってイエスの番をしていた。 |
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三七 また罪標に此はユダヤ人の王イエスなりと書して其首の上に置り |
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三七 その首の上に『これはユダヤ人の王イエスなり』と記したる罪標を置きたり。 |
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三七 そしてその頭の上の方に、「これはユダヤ人の王イエス」と書いた罪状書きをかかげた。 |
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三八 其とき二人の盜賊イエスと偖に一人は其右一人は其左に十字架に釘らる |
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三八 爰にイエスとともに二人の强盜、十字架につけられ、一人はその右に、一人はその左におかる。 |
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三八 同時に、ふたりの強盗がイエスと一緒に、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけられた。 |
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三九 往來の者イエスを詈り首を搖て曰けるは |
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三九 往來の者どもイエスを譏り、首を振りていふ、 |
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三九 そこを通りかかった者たちは、頭を振りながら、イエスをののしって |
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四十 殿を毀ちて三日に之を建る者よ自己を救へ爾もし~の子ならば十字架より下よ |
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四〇 『宮を毀ちて三日のうちに建つる者よ、もし~の子ならば己を救へ、十字架より下りよ』 |
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四〇 言った、「神殿を打ちこわして三日のうちに建てる者よ。もし神の子なら、自分を救え。そして十字架からおりてこい」。 |
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四一 祭司の長學者長老等も亦おなじく嘲弄して曰けるは |
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四一 祭司長らも、また同じく學者・長老らとともに、嘲弄して言ふ、 |
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四一 祭司長たちも同じように、律法学者、長老たちと一緒になって、嘲弄して言った、 |
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四二 人を救て己が身を救あたはず若イスラエルの王たらば今十字架より下るべし然ば我儕かれを信ぜん |
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四二 『人を救ひて己を救ふこと能はず。彼はイスラエルの王なり、いま十字架より下りよかし、然らば我ら彼を信ぜん。 |
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四二 「他人を救ったが、自分自身を救うことができない。あれがイスラエルの王なのだ。いま十字架からおりてみよ。そうしたら信じよう。 |
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四三 彼は~に依ョめり~もし彼を愛しまば今救ふべし蓋かれ我は~の子なりと云し也 |
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四三 彼は~に依りョめり、~かれを愛しまば今すくひ給ふべし「我は~の子なり」と云へり』 |
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四三 彼は神にたよっているが、神のおぼしめしがあれば、今、救ってもらうがよい。自分は神の子だと言っていたのだから」。 |
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四四 同に十字架に釘られたる盜賊も同くイエスを詈れり |
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四四 ともに十字架につけられたる强盜どもも、同じ事をもてイエスを罵れり。 |
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四四 一緒に十字架につけられた強盗どもまでも、同じようにイエスをののしった。 |
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四五 晝の十二時より三時に至るまで其地あまねくK暗となる |
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四五 晝の十二時より地の上あまねく暗くなりて、三時に及ぶ。 |
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四五 さて、昼の十二時から地上の全面が暗くなって、三時に及んだ。 |
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四六 三時ごろイエス大聲にエリ、エリ、ラマサバクタニと呼りぬ之を譯ば吾~わが~なんぞ我を遺たまふ乎と云る也 |
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四六 三時ごろイエス大聲に叫びて『エリ、エリ、レマ、サバクタニ』と言ひ給ふ。わが~、わが~、なんぞ我を見棄て給ひしとの意なり。 |
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四六 そして三時ごろに、イエスは大声で叫んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と言われた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。 |
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四七 旁らに立たる者のうち或人これを聞て彼はエリヤを呼るなりと曰 |
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四七 そこに立つ者のうち或る人々これを聞きて『彼はエリヤを呼ぶなり』と言ふ。 |
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四七 すると、そこに立っていたある人々が、これを聞いて言った、「あれはエリヤを呼んでいるのだ」。 |
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四八 其中の一人直に走り行て海絨をとり醋を含せ之を葦につけてイエスに飮しむ |
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四八 直ちにその中の一人はしりゆきて海綿をとり、酸き葡萄酒を含ませ、葦につけてイエスに飮ましむ。 |
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四八 するとすぐ、彼らのうちのひとりが走り寄って、海綿を取り、それに酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとした。 |
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四九 餘人曰けるは俟エリヤ來りて彼を救ふや否試べし |
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四九 その他の者ども言ふ『まて、エリヤ來りて彼を救ふや否や、我ら之を見ん』 |
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四九 ほかの人々は言った、「待て、エリヤが彼を救いに来るかどうか、見ていよう」。 |
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五十 イエスまた大聲に呼りて気絕たり |
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五〇 イエス再び大聲に呼はりて息絕えたまふ。 |
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五〇 イエスはもう一度大声で叫んで、ついに息をひきとられた。 |
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五一 殿の幔上より下まで裂て二となり又地ふるひ磐さけ |
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五一 視よ、聖所の幕、上より下まで裂けて二つとなり、また地震ひ、磐さけ、 |
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五一 すると見よ、神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。また地震があり、岩が裂け、 |
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五二 墓ひらけて既に寢たる聖徒の身おはく甦へりイエスの甦れる後 |
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五二 墓ひらけて、眠りたる聖徒の屍體おほく活きかへり、 |
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五二 また墓が開け、眠っている多くの聖徒たちの死体が生き返った。 |
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五三 墓を出て聖城に入おほくの人に現れたり |
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五三 イエスの復活ののち墓をいで、聖なるキに入りて、多くの人に現れたり。 |
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五三 そしてイエスの復活ののち、墓から出てきて、聖なる都にはいり、多くの人に現れた。 |
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五四 百夫の長と偕にイエスを守たるもの地震および其有し事を見て甚く懼れ此は誠に~の子なりと曰り |
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五四 百卒長および之と共にイエスを守りゐたる者ども、地震とその有りし事とを見て、甚く懼れ『實に彼は~の子なりき』と言へり。 |
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五四 百卒長、および彼と一緒にイエスの番をしていた人々は、地震や、いろいろのできごとを見て非常に恐れ、「まことに、この人は神の子であった」と言った。 |
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五五 此處に遙に望ゐたる多の婦ありし彼等はガリラヤよりイエスに從ひ事し者等なり |
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五五 その處にて遙に望みゐたる多くの女あり、イエスに事へてガリラヤより從ひ來りし者どもなり。 |
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五五 また、そこには遠くの方から見ている女たちも多くいた。彼らはイエスに仕えて、ガリラヤから従ってきた人たちであった。 |
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五六 其中に居し者はマグダラのマリアとヤコブ ヨセの母なるマリアとゼベダイの子等の母と也 |
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五六 その中には、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとの母マリヤ及びゼベダイの子らの母などもゐたり。 |
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五六 その中には、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとの母マリヤ、またゼベダイの子たちの母がいた。 |
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五七 日くれてイエスの弟子なるヨセフと云るアリマタヤの富人きたりてピラトに往イエスの屍を請しかば |
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五七 日暮れて、ヨセフと云ふアリマタヤの富める人きたる。彼もイエスの弟子なるが、 |
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五七 夕方になってから、アリマタヤの金持で、ヨセフという名の人がきた。彼もまたイエスの弟子であった。 |
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五八 ピラトその屍を付せと命ず |
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五八 ピラトに往きてイエスの屍體を請ふ。ここにピラト之を付すことを命ず。 |
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五八 この人がピラトの所へ行って、イエスのからだの引取りかたを願った。そこで、ピラトはそれを渡すように命じた。 |
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五九 ヨセフ屍を取て潔き枲布に裏み |
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五九 ヨセフ屍體をとりて淨き亞麻布につつみ、 |
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五九 ヨセフは死体を受け取って、きれいな亜麻布に包み、 |
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六十 之を磐に鑿たる己が新しき墓におき大なる石を墓の門に轉して去 |
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六〇 岩にほりたる己が新しき墓に納め、墓の入口に大なる石を轉ばしおきて去りぬ。 |
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六〇 岩を掘って造った彼の新しい墓に納め、そして墓の入口に大きい石をころがしておいて、帰った。 |
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六一 マダダラのマリアと他のマリアと墓に對て坐し其處に居り |
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六一 其處にはマグダラのマリヤと他のマリヤと墓に向ひて坐しゐたり. |
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六一 マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓にむかってそこにすわっていた。 |
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六二 預備日の翌曰祭司の長とパリサイの人等ピラトの所に集來り曰けるは |
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六二 あくる日、即ち準備日の翌日、祭司長らとパリサイ人らとピラトの許に集りて言ふ、 |
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六二 あくる日は準備の日の翌日であったが、その日に、祭司長、パリサイ人たちは、ピラトのもとに集まって言った、 |
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六三 主よ我儕憶起せり彼の僞者いきて在しとき三日のゝち甦らんと言し |
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六三 『主よ、かの惑すもの生き居りし時「われ三日の後に甦へらん」と言ひしを、我ら思ひいだせり。 |
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六三 「長官、あの偽り者がまだ生きていたとき、『三日の後に自分はよみがえる』と言ったのを、思い出しました。 |
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六四 是故に命じて三日に至まで墓を固守しめよ恐くは其弟子夜きたりて之を竊み死より甦りたりと民に言ん然ば後の惑は先よりも愈勝るべし |
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六四 されば命じて三日に至るまで墓を固めしめ給へ、恐らくはその弟子ら來りて之を盜み「彼は死人の中より甦へれり」と民に言はん。然らば後の惑は前のよりも甚だしからん』 |
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六四 ですから、三日目まで墓の番をするように、さしずをして下さい。そうしないと、弟子たちがきて彼を盗み出し、『イエスは死人の中から、よみがえった』と、民衆に言いふらすかも知れません。そうなると、みんなが前よりも、もっとひどくだまされることになりましょう」。 |
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六五 ピラト彼等に曰けるは守兵は爾曹にあり往て意のまゝに固守しめよ |
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六五 ピラト言ふ『なんぢらに番兵あり、往きて力限り固めよ』 |
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六五 ピラトは彼らに言った、「番人がいるから、行ってできる限り、番をさせるがよい」。 |
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六六 是に於て彼等ゆきて石に封印し守兵をして墓を固守しめたり |
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六六 乃ち彼らゆきて石に封印し、番兵を置きて墓を固めたり。 |
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六六 そこで、彼らは行って石に封印をし、番人を置いて墓の番をさせた。 |
馬太傳iケ書 |
第二十八章 |
一 安息日終てのち七日の首の日黎明にマグダヲのマリア及び他のマリアその墓を觀んとて來りしに |
マタイ傳iケ書 |
第二八章 |
一 さて安息日をはりて一週の初の日のほの明き頃、マグダラのマリヤと他のマリヤと墓を見んとて來りしに、 |
マタイによる福音書 |
第二八章 |
一 さて、安息日が終って、週の初めの日の明け方に、マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓を見にきた。 |
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二 大なる地震ありて主の使者天より降り墓の門より石を轉し其上に坐す |
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二 視よ、大なる地震あり、これ主の使、天より降り來りて、かの石を轉ばし退け、その上に坐したるなり。 |
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二 すると、大きな地震が起った。それは主の使が天から下って、そこにきて石をわきへころがし、その上にすわったからである。 |
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三 その容貌は閃電のごとく其衣服は雪のごとく白し |
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三 その狀は電光のごとく輝き、その衣は雪のごとく白し。 |
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三 その姿はいなずまのように輝き、その衣は雪のように真白であった。 |
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四 守兵かれを懼戰き死たる者の如くなりぬ |
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四 守の者ども彼を懼れたれば、戰きて死人の如くなりぬ。 |
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四 見張りをしていた人たちは、恐ろしさの余り震えあがって、死人のようになった。 |
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五 天使こたへて婦に曰けるは爾曹おそるゝ勿れ我なんぢらが十字架に釘られしイエスを尋ることを知 |
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五 御使、こたへて女たちに言ふ『なんぢら懼るな、我なんぢらが十字架につけられ給ひしイエスを尋ぬるを知る。 |
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五 この御使は女たちにむかって言った、「恐れることはない。あなたがたが十字架におかかりになったイエスを捜していることは、わたしにわかっているが、 |
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六 彼は此に在ず其言る如く甦りたり爾曹きたりて主の置れし處を見よ |
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六 此處には在さず、その言へる如く甦へり給へり。來りてその置かれ給ひし處を見よ。 |
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六 もうここにはおられない。かねて言われたとおりに、よみがえられたのである。さあ、イエスが納められていた場所をごらんなさい。 |
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七 且ゆきて其弟子に吿よ彼は死より甦り爾曹に先ちてガリラヤに往り彼處に於て爾曹かれを見べし我これを爾曹に吿 |
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七 かつ速かに往きて、その弟子たちに「彼は死人の中より甦へり給へり。視よ、汝らに先だちてガリラヤに往き給ふ、彼處にて謁ゆるを得ん」と吿げよ。視よ、汝らに之を吿げたり』 |
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七 そして、急いで行って、弟子たちにこう伝えなさい、『イエスは死人の中からよみがえられた。見よ、あなたがたより先にガリラヤへ行かれる。そこでお会いできるであろう』。あなたがたに、これだけ言っておく」。 |
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八 婦懼ながらも甚く喜びて急墓をさり其弟子に吿んと走り往り |
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八 女たち懼と大なる歡喜とをもて、速かに墓を去り、弟子たちに知らせんとて走りゆく。 |
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八 そこで女たちは恐れながらも大喜びで、急いで墓を立ち去り、弟子たちに知らせるために走って行った。 |
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九 弟子に吿んとて往ときイエス彼等に遇て安かれと曰給ひければ婦すゝみ其足を抱て拜しぬ |
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九 視よ、イエス彼らに遇ひて『安かれ』と言ひ給ひたれば、進みゆき、御足を抱きて拜す。 |
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九 すると、イエスは彼らに出会って、「平安あれ」と言われたので、彼らは近寄りイエスのみ足をいだいて拝した。 |
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十 イエス彼等に曰けるは懼るゝ勿れ去て我が兄弟にガリラヤに往と吿よ彼處にて我を見べし |
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一〇 爰にイエス言ひたまふ『懼るな、往きて我が兄弟たちに、ガリラヤにゆき、彼處にて我を見るべきことを知らせよ』 |
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一〇 そのとき、イエスは彼らに言われた、「恐れることはない。行って兄弟たちに、ガリラヤに行け、そこでわたしに会えるであろう、と告げなさい」。 |
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十一 婦の去しのも守兵のうち或者ども城に至り凡て有し事を祭司の長等に吿しかば |
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一一 女たちの往きたるとき、視よ、番兵のうちの數人、キにいたり、凡て有りし事どもを祭司長らに吿ぐ。 |
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一一 女たちが行っている間に、番人のうちのある人々が都に帰って、いっさいの出来事を祭司長たちに話した。 |
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十二 彼等と長老あつまりて共に議おほくの銀子を兵卒に給て曰けるは |
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一二 祭司長ら、長老らと共に集りて相議り、兵卒どもに多くの銀を與へて言ふ、 |
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一二 祭司長たちは長老たちと集まって協議をこらし、兵卒たちにたくさんの金を与えて言った、 |
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十三 爾曹いへ我儕が寢たる時その弟子夜きたりて彼を竊りと |
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一三 『なんぢら言へ「その弟子ら夜きたりて、我らの眠れる間に彼を盜めり」と。 |
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一三 「『弟子たちが夜中にきて、われわれの寝ている間に彼を盗んだ』と言え。 |
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十四 此事もし方伯に聞るとも我儕かれに勸て爾曹に憂慮なからしめん |
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一四 この事もし總督に聞えなば、我ら彼を宥めて汝らに憂なからしめん』 |
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一四 万一このことが総督の耳にはいっても、われわれが総督に説いて、あなたがたに迷惑が掛からないようにしよう」。 |
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十五 かれら銀子を取て囑められたる如したりし是に於て此の如き話今日に至るまでユダヤ人の中に傳播られたり |
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一五 彼ら銀をとりて言ひ含められたる如く爲たれば、此の話ユダヤ人の中にひろまりて、今日に至れり |
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一五 そこで、彼らは金を受け取って、教えられたとおりにした。そしてこの話は、今日に至るまでユダヤ人の間にひろまっている。 |
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十六 十一の弟子ガリラヤに往てイエスの彼等に命じ給ふ所の山に至り |
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一六 十一弟子たちガリラヤに往きて、イエスの命じ給ひし山にのぼり、 |
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一六 さて、十一人の弟子たちはガリラヤに行って、イエスが彼らに行くように命じられた山に登った。 |
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十七 イエスを見て拜せり然ど疑へる者もありき |
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一七 遂に謁えて拜せり。然れど疑ふ者もありき。 |
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一七 そして、イエスに会って拝した。しかし、疑う者もいた。 |
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十八 イエス進て彼等に語いひけるは天のうち地の上の凡の權を我に賜れり |
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一八 イエス進みきたり、彼らに語りて言ひたまふ『我は天にても地にても一切の權を與へられたり。 |
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一八 イエスは彼らに近づいてきて言われた、「わたしは、天においても地においても、いっさいの権威を授けられた。 |
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十九 是故に爾曹ゆきて萬國の民にパプテスマを施し之を父と子と聖靈の名に入て弟子とし |
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一九 然れば汝ら往きて、もろもろの國人を弟子となし、父と子と聖靈との名によりてバプテスマを施し、 |
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一九 それゆえに、あなたがたは行って、すべての国民を弟子として、父と子と聖霊との名によって、彼らにバプテスマを施し、 |
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二十 且わが凡て爾曹に命ぜし言を守れと彼等に教よ夫われは世の末まで常に爾曹と偕に在なりアメン |
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二〇 わが汝らに命ぜし凡ての事を守るべきをヘへよ。視よ、我は世の終まで常に汝らと偕に在るなり』 |
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二〇 あなたがたに命じておいたいっさいのことを守るように教えよ。見よ、わたしは世の終りまで、いつもあなたがたと共にいるのである」。 |
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