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マルコによる福音書の日本語訳を明治・大正・昭和の時代に沿って読み比べてみました |
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明治訳は英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)による文語訳です。シナ訳の影響が色濃く出ています。 |
大正訳は日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)による文語訳です。明治訳よりやさしい日本語に直していますが内村鑑三は大正改訳を優美すぎて弱いと評していました。 |
昭和訳は日本聖書協会「新約聖書」(昭和二十九年)による口語訳です。 |
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明治・大正訳は漢字・送り仮名とも明治・大正時代そのままの形を復刻できるように努めました。シフトJISにない漢字はUnicodeで捜しました。 |
明治・大正・昭和訳を一節ずつ縦に並べて記すことで時代に沿った訳の変化を読み取れるようにしました。 |
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全16章 |
☞1章 |
☞11章 |
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☞2章 |
☞12章 |
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☞3章 |
☞13章 |
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☞4章 |
☞14章 |
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☞5章 |
☞15章 |
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☞6章 |
☞16章 |
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☞7章 |
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☞8章 |
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☞9章 |
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☞10章 |
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<馬可傳iケ書>新約全書(明治訳:文語訳) |
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<マルコ傳iケ書>新約聖書(大正改訳:文語訳) |
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<マルコによる福音書>新約聖書(昭和訳:口語訳) |
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↓ |
↓ |
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馬可傳iケ書 |
第一章 |
一 これ~の子イエスキリストの音の始なり |
マルコ傳iケ書 |
第一章 |
一 ~の子イエス・キリストの音の始。 |
マルコによる福音書 |
第一章 |
一 神の子イエス・キリストの福音のはじめ。 |
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二 預言者の錄して視よ我なんぢの面前に我使を遣さん彼なんぢの前に其道を設くべし |
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二 預言者イザヤの書に、『視よ、我なんぢの顔の前に、わが使を遣す、彼なんぢの道を設くべし。 |
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二 預言者イザヤの書に、「見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの道を整えさせるであろう。 |
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三 野に呼る人の聲あり云く主の道を備へ其經すぢを直せよと有が如く |
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三 荒野に呼はる者の聲す「主の道を備へ、その路すぢを直くせよ』と錄されたる如く、 |
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三 荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』」と書いてあるように、 |
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四 ヨハネ野に於てバプテスマを施し罪の赦を得させんが爲に悔改のバプテスマを宣傳たり |
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四 バプテスマのヨハネ出で荒野にて罪の赦を得さする悔改のバプテスマを宣傳ふ。 |
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四 バプテスマのヨハネが荒野に現れて、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えていた。 |
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五 ユダヤの全國およびエルサレムの人々かれに來りて各その罪を認はしヨルダンといふ河にてバプテスマを受 |
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五 ユダヤ全國またエルサレムの人々、みな其の許に出で來りて罪を言ひあらはし、ヨルダン川にてバプテスマを受けたり。 |
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五 そこで、ユダヤ全土とエルサレムの全住民とが、彼のもとにぞくぞくと出て行って、自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。 |
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六 ヨハネは駱駝の毛衣を着腰に皮帶をつかね蝗蟲と野蜜を食へり |
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六 ヨハネは駱駝の毛織を著、腰に皮の帶して、蝗と野蜜とを食へり。 |
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六 このヨハネは、らくだの毛ごろもを身にまとい、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。 |
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七 かれ宣傳けるは我より勝れる者わが後に來らん我は屈て某履の紐を解にも足ず |
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七 かれ宣傳へて言ふ『我よりも力ある者、わが後に來る。我は屈みて、その鞋の紐をとくにも足らず、 |
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七 彼は宣べ伝えて言った、「わたしよりも力のあるかたが、あとからおいでになる。わたしはかがんで、そのくつのひもを解く値うちもない。 |
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八 我は水をもて爾曹にバプテスマを施しゝが彼は聖靈をもて爾曹にバプテスマを施すべし |
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八 我は水にて汝らにバプテスマを施せり。されど彼は聖靈にてバブテスマを施さん』 |
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八 わたしは水でバプテスマを授けたが、このかたは、聖霊によってバプテスマをお授けになるであろう」。 |
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九 當時イエスガリラヤのナザレより來りヨルダンにてヨハネよりバプテスマを受 |
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九 その頃イエス、ガリラヤのナザレより來り、ヨルダンにてヨハネよりバプテスマを受け給ふ。 |
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九 そのころ、イエスはガリラヤのナザレから出てきて、ヨルダン川で、ヨハネからバプテスマをお受けになった。 |
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十 頓て水より上れるとき天開れ靈鴿の如く其上に降るを見たり |
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一〇 斯て水より上るをりしも、天さけゆき、御靈、鴿のごとく己に降るを見給ふ。 |
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一〇 そして、水の中から上がられるとすぐ、天が裂けて、聖霊がはとのように自分に下って来るのを、ごらんになった。 |
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十一 又天より聲ありて云なんぢは我が愛子わがスぶ所の者なりと |
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一一 かつ天より聲出づ『なんぢは我が愛しむ子なり、我なんぢをスぶ』 |
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一一 すると天から声があった、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。 |
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十二 斯て靈たゞちにイエスを野に往しむ |
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一二 斯て御靈ただちにイエスを荒野に逐ひやる。 |
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一二 それからすぐに、御霊がイエスを荒野に追いやった。 |
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十三 かれ四十日野に在てサタンに試られ獸と共にをれり天の使等これに事ぬ |
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一三 荒野にて四十日の間サタンに試みられ、獸とともに居給ふ、御使たち之に事へぬ。 |
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一三 イエスは四十日のあいだ荒野にいて、サタンの試みにあわれた。そして獣もそこにいたが、御使たちはイエスに仕えていた。 |
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十四 ヨハネの囚れし後イエスガリラヤに至り~の國の音を傳いひけるは |
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一四 ヨハネの囚れし後、イエス、ガリラヤに到り、~の音を宣傳へて言ひ給ふ、 |
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一四 ヨハネが捕えられた後、イエスはガリラヤに行き、神の福音を宣べ伝えて言われた、 |
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十五 期は滿り~の國は近けり爾曹悔改めて音を信ぜよ |
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一五 『時は滿てり、~の國は近づけり、汝ら悔改めて音を信ぜよ』 |
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一五 「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」。 |
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十六 イエスガリラヤの湖の邊を歩る時シモンと其兄弟アンデレの湖に網うてるを見る彼等は漁者なり |
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一六 イエス、ガリラヤの海にそひて歩みゆき、シモンと其の兄弟アンデレとが、海に網投ちをるを見給ふ。かれらは漁人なり。 |
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一六 さて、イエスはガリラヤの海べを歩いて行かれ、シモンとシモンの兄弟アンデレとが、海で網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。 |
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十七 イエス彼等に曰けるは我に從へ我爾曹を人を漁る者とせん |
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一七 イエス言ひ給ふ『われに從ひきたれ、汝等をして人を漁る者とならしめん』 |
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一七 イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。 |
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十八 彼等たゞちに其網を棄て之に從へり |
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一八 彼ら直ちに網をすてて從へり。 |
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一八 すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。 |
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十九 此より少し進行ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネの舟に在て網つくろふを見て |
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一九 少し進みゆきて、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとを見給ふ、彼らも舟にありて網を繕ひゐたり。 |
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一九 また少し進んで行かれると、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。 |
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二十 直に彼等を召給ひしかば其父ゼベダイを傭人と共に舟に遺て彼に從へり |
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二〇 直ちに呼び給へば、父ゼベダイを雇人とともに舟に遺して從ひゆけり。 |
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二〇 そこで、すぐ彼らをお招きになると、父ゼベダイを雇人たちと一緒に舟において、イエスのあとについて行った。 |
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二一 彼等カペナウムに至るイエス即ち安息日に會堂に入て教を爲しに |
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二一 斯て彼らカペナウムに到る、イエス直ちに安息日に會堂にいりて教へ給ふ。 |
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二一 それから、彼らはカペナウムに行った。そして安息日にすぐ、イエスは会堂にはいって教えられた。 |
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二ニ 人々その教を駭き合り蓋學者の如ならず權威を有る者の如く教たまへば也 |
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二二 人々その教に驚感きあへり。それは學者の如くならず、權威ある者のごとく教へ給ふゆゑなり。 |
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二二 人々は、その教に驚いた。律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。 |
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二三 其會堂に汚たる鬼に憑たる人ありて |
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二三 時にその會堂に、穢れし靈に憑かれたる人あり、叫びて言ふ、 |
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二三 ちょうどその時、けがれた霊につかれた者が会堂にいて、叫んで言った、 |
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二四 喊叫いひけるは唉ナザレのイエスよ我儕は爾と何の與り有んや爾きたりて我儕を滅すか我なんぢは誰なる乎を知即はち~の聖なる者なり |
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二四 『ナザレのイエスよ、我らは汝と何の關係あらんや、汝は我らを亡さんとて來給ふ。われは汝の誰なるを知る、~の聖者なり』 |
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二四 「ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。 |
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二五 イエス之を責て曰けるは聲を發すこと勿れ其處を出よ |
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二五 イエス禁めて言ひ給ふ『默せ、その人を出でよ』 |
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二五 イエスはこれをしかって、「黙れ、この人から出て行け」と言われた。 |
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二六 汚たる鬼その人を拘攣させ大聲に叫びて彼を出たり |
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二六 穢れし靈、その人を痙攣けさせ、大聲をあげて出づ。 |
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二六 すると、けがれた霊は彼をひきつけさせ、大声をあげて、その人から出て行った。 |
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二七 衆人みな驚き相問て曰けるは是何事ぞや是いかなる新しき教ぞや汚たる鬼さへ權威をもて命じければ從へり |
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二七 人々みな驚き相問ひて言ふ『これ何事ぞ、權威ある新しき教なるかな、穢れし靈すら命ずれば從ふ』 |
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二七 人々はみな驚きのあまり、互に論じて言った、「これは、いったい何事か。権威ある新しい教だ。けがれた霊にさえ命じられると、彼らは従うのだ」。 |
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二八 是に於てイエスの聲名徧くガリラヤの四方に播リぬ |
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二八 爰にイエスの噂あまねくガリラヤの四方に弘りたり。 |
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二八 こうしてイエスのうわさは、たちまちガリラヤの全地方、いたる所にひろまった。 |
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二九 彼等やがて會堂を出ヤコブ及ヨハネと共にシモンアンデレの家に至しに |
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二九 會堂をいで、直ちにヤコブとヨハネとを伴ひて、シモン及びアンデレの家に入り給ふ。 |
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二九 それから会堂を出るとすぐ、ヤコブとヨハネとを連れて、シモンとアンデレとの家にはいって行かれた。 |
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三十 シモンの岳母熱を病て臥ゐければ或人たゞちに之をイエスに吿 |
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三〇 シモンの外姑、熱をやみて臥しゐたれば、人々ただちに之をイエスに吿ぐ。 |
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三〇 ところが、シモンのしゅうとめが熱病で床についていたので、人々はさっそく、そのことをイエスに知らせた。 |
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三一 イエス往て其手をとり彼を起しければ熱たちまち去ぬ斯て其婦彼等に供事たり |
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三一 イエス往きて、その手をとり、起し給へば、熱さりて女かれらに事ふ. |
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三一 イエスは近寄り、その手をとって起されると、熱が引き、女は彼らをもてなした。 |
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三二 夕かた日の落とき人々すべての病を患へるもの鬼に憑たる者をイエスに携へ來る |
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三二 夕となり、日いりてのち人々すべての病ある者・惡鬼に憑かれたる者をイエスに連れ來り、 |
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三二 夕暮になり日が沈むと、人々は病人や悪霊につかれた者をみな、イエスのところに連れてきた。 |
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三三 その邑こぞりて門に集れり |
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三三 全町こぞりて門に集る。 |
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三三 こうして、町中の者が戸口に集まった。 |
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三四 イエス各樣の病を患へる多の人々を醫し又多の鬼を逐出し鬼の言ふ事を許さゞりき蓋鬼かれを識たるに因てなり |
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三四 イエスさまざまの病を患ふ多くの人をいやし、多くの惡鬼を逐ひいだし之に物言ふことを免し給はず、惡鬼イエスを知るに因りてなり。 |
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三四 イエスは、さまざまの病をわずらっている多くの人々をいやし、また多くの悪霊を追い出された。また、悪霊どもに、物言うことをお許しにならなかった。彼らがイエスを知っていたからである。 |
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三五 昧爽にイエス早く起人なき所にゆき其處にて祈禱せり |
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三五 朝まだき暗き程に、イエス起き出でて、寂しき處にゆき、其處にて祈りゐたまふ。 |
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三五 朝はやく、夜の明けるよほど前に、イエスは起きて寂しい所へ出て行き、そこで祈っておられた。 |
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三六 シモンおよび彼と共に在し者等その跡を慕ゆき |
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三六 シモン及び之と偕にをる者ども、その跡を慕ひゆき、 |
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三六 すると、シモンとその仲間とが、あとを追ってきた。 |
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三七 彼に遇て曰けるは衆人みな爾を尋ぬ |
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三七 イエスに遇ひて言ふ『人みな汝を尋ぬ』 |
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三七 そしてイエスを見つけて、「みんなが、あなたを捜しています」と言った。 |
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三八 イエス彼等に曰けるは我は教を宣傳る爲に爾曹と偕に附近のク村へ往ん我これが爲に來れば也 |
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三八 イエス言ひ給ふ『いざ最寄の村々に往かん、われ彼處にも教を宣ぶべし、我はこの爲に出で來りしなり |
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三八 イエスは彼らに言われた、「ほかの、附近の町々にみんなで行って、そこでも教を宣べ伝えよう。わたしはこのために出てきたのだから」。 |
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三九 イエス徧くガリラヤの國を經めぐり某會堂にて教を宣且鬼を逐出せり |
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三九 遂にゆきて、徧くガリラヤの會堂にて教を宣ベ、かつ惡鬼を逐ひ出し給へり。 |
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三九 そして、ガリラヤ全地を巡りあるいて、諸会堂で教えを宣べ伝え、また悪霊を追い出された。 |
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四十 癩病のもの一人かれに來りて跪き求ひ曰けるは爾もし聖意に適ときは我を潔く爲得べし |
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四〇 一人の癩病人、みもとに來り、跪づき請ひて言ふ『御意ならば我を潔くなし給ふを得ん』 |
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四〇 ひとりの重い皮膚病にかかった人が、イエスのところに願いにきて、ひざまずいて言った、「みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。 |
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四一 イエス憫みて手をのべ彼に按て我意に適へり潔なれと |
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四一 イエス憫みて、手をのべ彼につけて『わが意なり、潔くなれ』と言ひ給へば、 |
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四一 イエスは深くあわれみ、手を伸ばして彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。 |
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四二 言やいな直に癩病はなれ其人きよまれり |
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四二 直ちに癩病さりて、その人きよまれり。 |
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四二 すると、重い皮膚病が直ちに去って、その人はきよくなった。 |
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四三四四 イエス嚴く之を戒め愼みて何をも人に吿る勿れ但ゆきて己が身を祭司に見せ其潔られし爲にモーセが命ぜし所の物を獻て彼等に證據をなせと言て去しめたり |
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四三 頓て彼を去らしめんとて、嚴しく戒めて言ひ給ふ、 |
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四三 イエスは彼をきびしく戒めて、すぐにそこを去らせ、こう言い聞かせられた、 |
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四三四四 イエス嚴く之を戒め愼みて何をも人に吿る勿れ但ゆきて己が身を祭司に見せ其潔られし爲にモーセが命ぜし所の物を獻て彼等に證據をなせと言て去しめたり |
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四四 『つつしみて誰にも語るな、唯ゆきて己を祭司に見せ、モーセが命じたる物を汝の潔のために獻げて、人々に證せよ』 |
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四四 「何も人に話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた物をあなたのきよめのためにささげて、人々に証明しなさい」。 |
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四五 然ども彼いでゝ先この事を大に言つたへ語り廣めければイエス此後あらはに城に入がたく獨人なき所に居給ひしが人々四方より彼に來れり |
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四五 されど彼いでて此の事を大に述べつたへ、徧く弘め始めたれば、この後イエスあらはに町に入りがたく、外の寂しき處に留りたまふ。人々、四方より御許に來れり。 |
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四五 しかし、彼は出て行って、自分の身に起ったことを盛んに語り、また言いひろめはじめたので、イエスはもはや表立っては町に、はいることができなくなり、外の寂しい所にとどまっておられた。しかし、人々は方々から、イエスのところにぞくぞくと集まってきた。 |
馬可傳iケ書 |
第二章 |
一 數日の後イエス復カペナウムに來しに |
マルコ傳iケ書 |
第二章 |
一 數日の後、またカペナウムに入り給ひしに、その家に在すことを聞きて、 |
マルコによる福音書 |
第二章 |
一 幾日かたって、イエスがまたカペナウムにお帰りになったとき、家におられるといううわさが立ったので、 |
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二 彼の室に居こと聞えければ直に多の人々集きたり門に立べき塲處さへもなき程なりきイエス彼等に教を宣 |
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二 多くの人あつまり來り、門口すら隙間なき程なり。イエス彼らに御言を語り給ふ。 |
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二 多くの人々が集まってきて、もはや戸口のあたりまでも、すきまが無いほどになった。そして、イエスは御言を彼らに語っておられた。 |
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三 此に癱瘋を病たる者を四人に舁せイエスに來れる者ありしが |
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三 ここに四人に擔はれたる中風の者を人々つれ來る。 |
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三 すると、人々がひとりの中風の者を四人の人に運ばせて、イエスのところに連れてきた。 |
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四 群集によりて近づき難かりければ彼の居ところの屋蓋を取除き癱瘋の人を床のまゝ縋下せり |
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四 群衆によりて御許にゆくこと能はざれば、在す所の屋根を穿ちあけて、中風の者を床のまま縋り下せり。 |
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四 ところが、群衆のために近寄ることができないので、イエスのおられるあたりの屋根をはぎ、穴をあけて、中風の者を寝かせたまま、床をつりおろした。 |
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五 イエス其信仰を見て*瘋の人に曰けるは子よ爾の罪赦されたり |
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五 イエス彼らの信仰を見て、中風の者に言ひたまふ『子よ、汝の罪ゆるされたり』 |
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五 イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。 |
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六 數人の學者こゝに坐し居しが心中に謂けるは |
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六 ある學者たち其處に坐しゐたるが、心の中に、 |
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六 ところが、そこに幾人かの律法学者がすわっていて、心の中で論じた、 |
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七 斯人は何故かく惡口を言か~にあらずして誰か罪を赦すことを得ん |
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七 『この人なんぞ斯く言ふか、これは~を瀆すなり、~ひとりの外は誰か罪を赦すことを得べき』と論ぜしかば、 |
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七 「この人は、なぜあんなことを言うのか。それは神をけがすことだ。神ひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるか」。 |
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八 イエス直に彼等が心中に斯の如き事を論ずるを自ら其心に知て彼等に曰けるは爾曹なんぞ心中に斯る事を論ずる乎 |
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八 イエス直ちに彼等がかく論ずるを心に悟りて言ひ給ふ『なにゆゑ斯ることを心に論ずるか、 |
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八 イエスは、彼らが内心このように論じているのを、自分の心ですぐ見ぬいて、「なぜ、あなたがたは心の中でそんなことを論じているのか。 |
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九 癱瘋の人に爾の罪は赦されたりと言と起て爾の床を取て行と言と孰れ易や |
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九 中風の者に「なんぢの罪ゆるされたり」と言ふと「起きよ、床をとりて歩め」と言ふと、孰か易き。 |
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九 中風の者に、あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きよ、床を取りあげて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。 |
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十 それ人の子地にて罪を赦すの權威あることを爾曹に知せんとて遂に癱瘋の人に |
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一〇 人の子の地にて罪を赦す權威ある事を、汝らに知らせん爲に』l中風の者に言ひ給ふl |
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一〇 しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに言い、中風の者にむかって、 |
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十一 我なんぢに告おきて床を取なんぢの家に歸れと曰ければ |
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一一 『なんぢに吿ぐ、起きよ、床をとりて家に歸れ』 |
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一一 「あなたに命じる。起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。 |
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十二 その人ただちに起て床をとり衆人の前にいづ衆人みな駭き~を崇て曰けるは我儕いまだ斯の如きことを見しことなし |
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一二 彼おきて直ちに床をとりあげ、人々の眼前いで往けば、皆おどろき、かつ~を崇めて言ふ『われら斯の如きことは斷えて見ざりき』 |
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一二 すると彼は起きあがり、すぐに床を取りあげて、みんなの前を出て行ったので、一同は大いに驚き、神をあがめて、「こんな事は、まだ一度も見たことがない」と言った。 |
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十三 イエスまた海邊に往しに人々みな彼に來ければ是等を教ふ |
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一三 イエスまた海邊に出でゆき給ひしに、群衆みもとに集ひ來りたれば、之をヘへ給へり。 |
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一三 イエスはまた海べに出て行かれると、多くの人々がみもとに集まってきたので、彼らを教えられた。 |
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十四 此より進てアルパヨの子レビといふ者の稅吏の役所に坐し居けるを見て我に從へと曰ければ彼たちて從ヘり |
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一四 斯て過ぎ往くとき、アルパヨの子レビの、收稅所に坐しをるを見て『われに從へ』と言ひ給へば、立ちて從へり。 |
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一四 また途中で、アルパヨの子レビが収税所にすわっているのをごらんになって、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。 |
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十五 斯てイエスその家にて食する時おはくの稅吏罪ある人々イエス及び弟子と共に坐せり是等の者許多ありてイエスに從ひぬ |
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一五 而して其の家にて食事の席につき居給ふとき、多くの取稅人・罪人ら、イエス及び弟子たちと共に席に列る、これらの者おほく居て、イエスに從へるなり。 |
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一五 それから彼の家で、食事の席についておられたときのことである。多くの取税人や罪人たちも、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。こんな人たちが大ぜいいて、イエスに従ってきたのである。 |
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十六 學者とパリサイの人かれが稅吏および罪ある人と共に食するを見て其弟子に曰けるは何ゆゑ稅吏罪ある人と共に食飮する乎 |
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一六 パリサイ人の學者ら、イエスの罪人・取稅人とともに食し給ふを見て、その弟子たちに言ふ『なにゆゑ取稅人・罪人とともに食するか』 |
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一六 パリサイ派の律法学者たちは、イエスが罪人や取税人たちと食事を共にしておられるのを見て、弟子たちに言った、「なぜ、彼は取税人や罪人などと食事を共にするのか」。 |
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十七 イエス聞て彼等に曰けるは康强なる者は醫者の助を需ず唯病ある者これを需わが來しは義人を召ために非ず罪ある人を召て悔改させんが僞なり |
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一七 イエス聞きて言ひ給ふ『健かなる者は、醫者を要せず、ただ病ある者、これを要す。我は正しき者を招かんとにあらで、罪人を招かんとて來れり』 |
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一七 イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。 |
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十八 ヨハネの弟子及びパリサイの人つねに斷食する事ありければ彼等イエスに來いひけるはヨハネの弟子とパリサイの弟子は斷食するに爾の弟子は何ゆゑ斷食せざる乎 |
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一八 ヨハネの弟子とパリサイ人とは、斷食しゐたり。人々イエスに来りて言ふ『なにゆゑヨハネの弟子とパリサイ人の弟子とは斷食して、汝の弟子は斷食せぬか』 |
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一八 ヨハネの弟子とパリサイ人とは、断食をしていた。そこで人々がきて、イエスに言った、「ヨハネの弟子たちとパリサイ人の弟子たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。 |
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十九 イエス彼等に曰けるは新カの朋友その新カと共にをる間に斷食することを得べき乎かれら新カと共にをる間は斷食することを得じ |
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一九 イエス言ひ給ふ『新カの友だち、新カと偕にをるうちは斷食し得べきか、新カと偕にをる間は、斷食するを得ず。 |
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一九 するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいるのに、断食ができるであろうか。花婿と一緒にいる間は、断食はできない。 |
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二十 將來かれら新カをとらるゝ日きたらん某日には斷食すべき也 |
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二〇 然れど新カをとらるる日きたらん、その日には斷食せん。 |
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二〇 しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう。 |
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二一 新しき布を舊衣に縫つくる者あらじ若し然せば其新に補へるもの舊を綻ばして其破かへつて惡なるべし |
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二一 誰も新しき布の裂を舊き衣に縫ひつくることは爲じ。もし然せば、その補ひたる新しきものは、舊き物をやぶり、破綻さらに甚だしからん。 |
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二一 だれも、真新しい布ぎれを、古い着物に縫いつけはしない。もしそうすれば、新しいつぎは古い着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなる。 |
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二二 亦あたらしき酒を舊き革囊にいるゝ者あらじ若し然せば新酒は其囊を破裂て酒もれいで革囊も亦壞るべし新酒は新しき革囊に盛べきもの也 |
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二二 誰も新しき葡萄酒を、ふるき革囊に入るることは爲じ。もし然せば、葡萄酒は囊をはりさきて、葡萄酒も囊も廢らん。新しき葡萄酒は、新しき革囊に入るるなり』 |
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二二 まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそうすれば、ぶどう酒は皮袋をはり裂き、そして、ぶどう酒も皮袋もむだになってしまう。〔だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである〕」。 |
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二三 偖イエス安息日に麥の畠を過りしに其弟子あゆみつゝ麥の穗を摘はじめければ |
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二三 イエス安息日に麥畠をとほり給ひしに、弟子たち歩みつつ穗を摘み始めたれば、 |
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二三 ある安息日に、イエスは麦畑の中をとおって行かれた。そのとき弟子たちが、歩きながら穂をつみはじめた。 |
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二四 パリサイの人彼に曰けるは彼等安息日に爲まじき事をするは何故ぞ |
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二四 パリサイ人、イエスに言ふ『視よ、彼らは何ゆゑ安息日に爲まじき事をするか』 |
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二四 すると、パリサイ人たちがイエスに言った、「いったい、彼らはなぜ、安息日にしてはならぬことをするのですか」。 |
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二五 イエス答けるはダビデ及び從に在し者*の乏くして飢しとき行たる事を未だ讀ざる乎 |
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二五 答へ給ふ『ダビデその伴へる人々と共に乏しくして飢ゑしとき爲しし事を未だ讀まぬか。 |
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二五 そこで彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが食物がなくて飢えたとき、ダビデが何をしたか、まだ読んだことがないのか。 |
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二六 即ち祭司の長アビアタルのとき~殿に入て唯祭司の外は食まじき供物のパンを食かつ從に在し者にも與たり |
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二六 即ち大祭司アビアタルの時、ダビデ~の家に入りて、祭司のほかは食ふまじき供のパンを取りて食ひ、おのれと偕なる者にも與へたり』 |
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二六 すなわち、大祭司アビアタルの時、神の家にはいって、祭司たちのほか食べてはならぬ供えのパンを、自分も食べ、また供の者たちにも与えたではないか」。 |
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二七 また彼等に曰けるは安息日は人の爲に設られたる者にして人は安息日の爲に設られたる者に非ず |
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二七 また言ひたまふ『安息日は人のために設けられて、人は安息日のために設けられず。 |
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二七 また彼らに言われた、「安息日は人のためにあるもので、人が安息日のためにあるのではない。 |
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二八 然ば人の子は安息日にも主たる也 |
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二八 然れば人の子は安息日にも主たるなり』 |
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二八 それだから、人の子は、安息日にもまた主なのである」。 |
馬可傳iケ書 |
第三章 |
一 イエスまた會堂に入しに一手枯たる人ありけるが |
マルコ傳iケ書 |
第三章 |
一 また會堂に入り給ひしに、片手なえたる人あり。 |
マルコによる福音書 |
第三章 |
一 イエスがまた会堂にはいられると、そこに片手のなえた人がいた。 |
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二 衆人イエスを訟んとして彼は此人を安息日に醫すや否や窺へり |
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二 人々イエスを訴へんと思ひて、安息日にかの人を醫すや否やと窺ふ。 |
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二 人々はイエスを訴えようと思って、安息日にその人をいやされるかどうかをうかがっていた。 |
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三 イエス手枯たる人に曰けるは中に立よ |
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三 イエス手なえたる人に『中に立て』といひ、 |
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三 すると、イエスは片手のなえたその人に、「立って、中へ出てきなさい」と言い、 |
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四 また衆人に曰けるは安息日には善を行と惡を行と生るを救ると殺すと孰をか爲べき彼等默然たり |
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四 また人々に言ひたまふ『安息日に善をなすと惡をなすと、生命を救ふと殺すと、孰かよき』彼ら默然たり。 |
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四 人々にむかって、「安息日に善を行うのと悪を行うのと、命を救うのと殺すのと、どちらがよいか」と言われた。彼らは黙っていた。 |
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五 イエス怒を含て環視し彼等が心の頑硬なるを憂へ手枯たる人に爾の手を伸よと曰ければ彼その手を伸しゝに即ち他の手のごとく愈たり |
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五 イエスその心の頑固なるを憂ひて、怒り見囘して、手なえたる人に『手を伸べよ』と言ひ給ふ。かれ手を伸べたれば癒ゆ。 |
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五 イエスは怒りを含んで彼らを見まわし、その心のかたくななのを嘆いて、その人に「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、その手は元どおりになった。 |
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六 パリサイの人いでゝ如何してかイエスを殺さんと直にヘロデの黨に相謀りぬ |
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六 パリサイ人いでて、直ちにへロデ黨の人とともに、如何にしてかイエスを亡さんと議る。 |
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六 パリサイ人たちは出て行って、すぐにヘロデ党の者たちと、なんとかしてイエスを殺そうと相談しはじめた。 |
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七 イエスその弟子と共に海邊に退しに多の人々ガリラヤより彼に從へり又ユダヤ |
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七 イエスその弟子とともに、海邊に退き給ひしに、ガリラヤより來れる夥多しき民衆も從ふ。又ユダヤ、 |
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七 それから、イエスは弟子たちと共に海べに退かれたが、ガリラヤからきたおびただしい群衆がついて行った。またユダヤから、 |
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八 エルサレム イドマヤ ヨルダンの外またツロとシドンの邊より多の人々イエスの行し事を聞て彼に群り來る |
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八 エルサレム、イドマヤ、ヨルダンの向の地およびツロ、シドンの邊より夥多しき民衆その爲し給へる事を聞きて、御許に來る。 |
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八 エルサレムから、イドマヤから、更にヨルダンの向こうから、ツロ、シドンのあたりからも、おびただしい群衆が、そのなさっていることを聞いて、みもとにきた。 |
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九 イエス人々の群集に因て擁なやまさるゝ事なからん爲に小舟を我に備おけと其弟子に曰り |
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九 イエス群衆のおしなやますを逃れんとて、小舟を備へ置くことを弟子に命じ給ふ。 |
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九 イエスは群衆が自分に押し迫るのを避けるために、小舟を用意しておけと、弟子たちに命じられた。 |
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十 是イエス數多の人々を愈しゝに因て凡て疾ある人々手にて彼に捫んとて擁逼しが故なり |
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一〇 これ多くの人を醫し給ひたれば、凡て病に苦しむもの、御體に觸らんとて押迫る故なり。 |
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一〇 それは、多くの人をいやされたので、病苦に悩む者は皆イエスにさわろうとして、押し寄せてきたからである。 |
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十一 また汚たる鬼かれを見て某前に俯伏さけびて爾は~の子なりと曰しを |
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一一 また穢れし靈イエスを見る每に、御前に平伏し、叫びて『なんぢは~の子なり』と言ひたれば、 |
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一一 また、けがれた霊どもはイエスを見るごとに、みまえにひれ伏し、叫んで、「あなたこそ神の子です」と言った。 |
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十二 イエス彼等に我を揚すこと勿れと嚴く戒めたり |
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一二 我を顯すなとて、嚴しく戒め給ふ。 |
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一二 イエスは御自身のことを人にあらわさないようにと、彼らをきびしく戒められた。 |
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十三 イエス山に登其意に適ふ所の者を召しかば來りて彼に就り |
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一三 イエス山に登り、御意に適ふ者を召し給ひしに、彼ら御許に來る。 |
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一三 さてイエスは山に登り、みこころにかなった者たちを呼び寄せられたので、彼らはみもとにきた。 |
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十四 是に於て十二人を立て己と偕に置また教を宣傳る爲に遣し |
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一四 爰に十二人を擧げたまふ。是かれらを御側におき、またヘを宣べさせ、 |
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一四 そこで十二人をお立てになった。彼らを自分のそばに置くためであり、さらに宣教につかわし、 |
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十五 かつ病を醫し鬼を逐出すの權威を授く |
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一五 惡鬼を逐ひ出す權威を用ひさする爲に、遣さんとてなり。 |
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一五 また悪霊を追い出す権威を持たせるためであった。 |
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十六 乃ちシモンをペテロと名け |
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一六 此の十二人を擧げて、シモンにペテロといふ名をつけ、 |
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一六 こうして、この十二人をお立てになった。そしてシモンにペテロという名をつけ、 |
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十七 ゼベダイの子ヤコブと其兄弟ヨハネこの二人をボアネルゲと名く之を譯ば雷の子なり |
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一七 ゼベダイの子ヤコブ、その兄弟ヨハネ、此の二人にボアネルゲ、即ち雷霆の子といふ名をつけ給ふ。 |
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一七 またゼベダイの子ヤコブと、ヤコブの兄弟ヨハネ、彼らにはボアネルゲ、すなわち、雷の子という名をつけられた。 |
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十八 又アンデレ ピリポ バルトロマイ マタイ トマス アルパヨの子ヤコブ タッダイ カナンのシモン |
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一八 又アンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの子ヤコブ、タダイ、熱心黨のシモン、 |
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一八 つぎにアンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの子ヤコブ、タダイ、熱心党のシモン、 |
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十九 又イスカリオテのユダ此はイエスを賣しゝ者なり |
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一九 及びイスカリオテのユダ、このユダはイエスを賣りしなり。斯てイエス家に入り給ひしに、 |
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一九 それからイスカリオテのユダ。このユダがイエスを裏切ったのである。イエスが家にはいられると、 |
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二十 此等の者家に入しに多の人々又來り集りければ食する暇もなかりき |
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二〇 群衆また集り來りたれば、食事する暇もなかりき。 |
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二〇 群衆がまた集まってきたので、一同は食事をする暇もないほどであった。 |
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二一 其親屬きゝて彼は狂氣せりと言て之を拏んとて來る |
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二一 その親族の者これを聞き、イエスを取り押へんとて出で來る、イエスを狂へりと謂ひてなり。 |
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二一 身内の者たちはこの事を聞いて、イエスを取押えに出てきた。気が狂ったと思ったからである。 |
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二二 又エルサレムより下れる學者等も彼はベルゼブルに憑れたり且鬼の王に藉て鬼を逐出すなりと曰り |
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二二 又エルサレムより下れる學者たちも『彼はベルゼブルに憑かれたり』と言ひ、かつ『惡鬼の首によりて惡鬼を逐ひ出すなり』と言ふ。 |
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二二 また、エルサレムから下ってきた律法学者たちも、「彼はベルゼブルにとりつかれている」と言い、「悪霊どものかしらによって、悪霊どもを追い出しているのだ」とも言った。 |
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二三 イエス彼等を召び譬を以て曰けるはサタンは何でサタンを逐出し得んや |
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二三 イエス彼らを呼びよせ、譬にて言ひ給ふ『サタンは、いかでサタンを逐ひ出し得んや。 |
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二三 そこでイエスは彼らを呼び寄せ、譬をもって言われた、「どうして、サタンがサタンを追い出すことができようか。 |
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二四 もし國おのれに悖て分爭はゞ其國立べからず |
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二四 もし國分れ爭はば、其の國立つこと能はず。 |
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二四 もし国が内部で分れ争うなら、その国は立ち行かない。 |
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二五 また家おのれに悖て分爭はゞ其家立べからず |
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二五 もし家分れ爭はば、其の家立つこと能はざるべし。 |
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二五 また、もし家が内わで分れ争うなら、その家は立ち行かないであろう。 |
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二六 若サタン己に悖り起て分爭はゞ彼たつ可からず反て終るなるべし |
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二六 若しサタン己に逆ひて分れ爭はば、立つこと能はず、反つて亡び果てん。 |
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二六 もしサタンが内部で対立し分争するなら、彼は立ち行けず、滅んでしまう。 |
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二七 誰にても勇士の家に入て其家具を奪んとせば先勇士を縛らざれば奪ふこと能はじ縛て後その家を奪ふべし |
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二七 誰にても先づ强き者を縛らずば、强き者の家に入りて其の家財を奪ふこと能はじ、縛りて後その家を奪ふべし。 |
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二七 だれでも、まず強い人を縛りあげなければ、その人の家に押し入って家財を奪い取ることはできない。縛ってからはじめて、その家を略奪することができる。 |
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二八 われ誠に爾曹に告ん人の凡の罪と瀆す所の褻瀆は赦るべけれど |
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二八 誠に汝らに吿ぐ、人の子らの凡ての罪と、けがす瀆とは赦されん。 |
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二八 よく言い聞かせておくが、人の子らには、その犯すすべての罪も神をけがす言葉も、ゆるされる。 |
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二九 聖靈を瀆す者は限なく赦さる可らず限なき刑罰に干らん |
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二九 然れど聖靈をけがす者は、永遠に赦されず、永遠の罪に定めらるべし』 |
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二九 しかし、聖霊をけがす者は、いつまでもゆるされず、永遠の罪に定められる」。 |
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三十 斯いへるは人々イエスを惡鬼に憑たりと言しが故なり |
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三〇 これは彼らイエスを『穢れし靈に憑かれたり』と云ヘるが故なり。 |
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三〇 そう言われたのは、彼らが「イエスはけがれた霊につかれている」と言っていたからである。 |
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三一 その兄弟と母と來りて戸外にたち人を遣してイエスを呼しむ |
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三一 爰にイエスの母と兄弟と來りて外に立ち、人を遣してイエスを呼ばしむ。 |
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三一 さて、イエスの母と兄弟たちとがきて、外に立ち、人をやってイエスを呼ばせた。 |
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三二 多の人々イエスを環て坐したりしが彼に曰けるは視よ爾の母と兄弟戸外に在て爾を尋ぬ |
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三二 群衆イエスを環りて坐したりしが、或者いふ『視よ、なんぢの母と兄弟・姊妹と外にありて汝を尋ぬ』 |
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三二 ときに、群衆はイエスを囲んですわっていたが、「ごらんなさい。あなたの母上と兄弟、姉妹たちが、外であなたを尋ねておられます」と言った。 |
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三三 イエス答て曰けるは我母わが兄弟は誰ぞや |
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三三 イエス答へて言ひ給ふ『わが母、わが兄弟とは誰ぞ』 |
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三三 すると、イエスは彼らに答えて言われた、「わたしの母、わたしの兄弟とは、だれのことか」。 |
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三四 斯て側に坐する人々を環視して曰けるは我母わが兄弟を見よ |
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三四 斯て周圍に坐する人々を見囘して言ひたまふ『視よ、これは我が母、わが兄弟なり。 |
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三四 そして、自分をとりかこんで、すわっている人々を見まわして、言われた、「ごらんなさい、ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。 |
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三五 それ~の旨に從ふ者は是わが兄弟わが姊妹わが母なり |
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三五 誰にても~の御意を行ふものは、是わが兄弟、わが姊妹、わが母なり』 |
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三五 神のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。 |
馬可傳iケ書 |
第四章 |
一 イエスまた海濱にて教訓を始しに多の人々かれに集りければ彼舟に乘て坐し凡の人々は海に沿て岸に立り |
マルコ傳iケ書 |
第四章 |
一 イエスまた海邊にてヘへ始めたまふ。夥多しき群衆、みもとに集りたれば、舟に乘り海に泛びて坐したまひ、群衆はみな海に沿ひて陸にあり。 |
マルコによる福音書 |
第四章 |
一 イエスはまたも、海べで教えはじめられた。おびただしい群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に乗ってすわったまま、海上におられ、群衆はみな海に沿って陸地にいた。 |
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二 かれ譬をもて多の事を彼等に教ふ教て曰けるは |
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二 譬にて數多の事ををしへ、ヘの中に言ひたまふ、 |
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二 イエスは譬で多くの事を教えられたが、その教の中で彼らにこう言われた、 |
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三 聽よ種播もの播んとて出 |
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三 『聽け、種播くもの、播かんとて出づ。 |
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三 「聞きなさい、種まきが種をまきに出て行った。 |
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四 播るとき或種は路の傍に遺しが空の鳥きたりて之を食へり |
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四 播くとき、路の傍らに落ちし種あり、鳥きたりて啄む。 |
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四 まいているうちに、道ばたに落ちた種があった。すると、鳥がきて食べてしまった。 |
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五 或種は土うすき磽地に遺しが土深からねば直に萌出たれど |
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五 土うすき磽地に落ちし種あり、土深からぬによりて、速かに萠え出でたれど、 |
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五 ほかの種は土の薄い石地に落ちた。そこは土が深くないので、すぐ芽を出したが、 |
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六 日出しかば曝れ根なきが故に枯たり |
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六 日出でてやけ、根なき故に枯る。 |
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六 日が上ると焼けて、根がないために枯れてしまった。 |
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七 或種は棘の中に遺しが棘そだちて之を蔽ければ實を結ばざりき |
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七 茨の中に落ちし種あり、茨そだち塞ぎたれば、實を結ばず。 |
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七 ほかの種はいばらの中に落ちた。すると、いばらが伸びて、ふさいでしまったので、実を結ばなかった。 |
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八 また或種は沃壤に遺しが其苗はえいでゝ蕃り實を結ること或は三十倍或は六十倍或は百倍せり |
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八 良き地に落ちし種あり、生え出でて茂り、實を結ぶこと、三十倍、六十倍、百倍せり』 |
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八 ほかの種は良い地に落ちた。そしてはえて、育って、ますます実を結び、三十倍、六十倍、百倍にもなった」。 |
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九 また彼等に曰けるは耳ありて聽ゆる者は聽べし |
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九 また言ひ給ふ『きく耳ある者は聽くべし』 |
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九 そして言われた、「聞く耳のある者は聞くがよい」。 |
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十 衆人の居ざりし時イエスの側に在し者と十二弟子と此譬を問しかば |
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一〇 イエス人々を離れ居給ふとき、御許にをる者ども、十二弟子とともに、此等の譬を問ふ。 |
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一〇 イエスがひとりになられた時、そばにいた者たちが、十二弟子と共に、これらの譬について尋ねた。 |
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十一 イエス彼等に曰けるは~の國の奥義を爾曹には知ことを賜へど他の者には凡て譬を以てす |
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一一 イエス言ひ給ふ『なんぢらには~の國の奥義を與ふれど、外の者には、凡て譬にてヘふ。 |
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一一 そこでイエスは言われた、「あなたがたには神の国の奥義が授けられているが、ほかの者たちには、すべてが譬で語られる。 |
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十二 是かれら視とき視ても見ず聽とき聽ても聰らず心を改めて其罪の赦を得ざらん爲なり |
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一二 これ「見るとき見ゆとも認めず、聽くとき聞ゆとも悟らず、飜へりて赦さるる事なからん」爲なり』 |
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一二 それは/『彼らは見るには見るが、認めず、聞くには聞くが、悟らず、悔い改めてゆるされることがない』ためである」。 |
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十三 また彼等に曰けるは爾曹この譬を知ざるか然ば如何して凡の譬を識ことを得んや |
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一三 また言ひ給ふ『なんぢら此の譬を知らぬか、然らば爭でもろもろの譬を知り得んや。 |
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一三 また彼らに言われた、「あなたがたはこの譬がわからないのか。それでは、どうしてすべての譬がわかるだろうか。 |
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十四 それ播者は教を播なり |
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一四 播く者は御言を播くなり。 |
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一四 種まきは御言をまくのである。 |
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十五 道の播れて路の傍に遺しものは人道を聽しとき直にサタン來て其心に播れたる道を奪取なり |
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一五 御言の播かれて路の傍らにありとは、斯る人をいふ、即ち聞くとき、直ちにサタン來りて、その播かれたる御言を奪ふなり。 |
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一五 道ばたに御言がまかれたとは、こういう人たちのことである。すなわち、御言を聞くと、すぐにサタンがきて、彼らの中にまかれた御言を、奪って行くのである。 |
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十六 また磽地に播れたるものは人道を聽とき直に喜びて之を受 |
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一六 同じく播かれて磽地にありとは、斯る人をいふ、即ち御言をききて、直ちに喜び受くれども、 |
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一六 同じように、石地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くと、すぐに喜んで受けるが、 |
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十七 然ども己の根なきが故たゞ暫時のみ後道の爲に患難あるひは迫害に遇ときは忽ち礙く者なり |
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一七 その中に根なければ、ただ暫し保つのみ、御言のために、患難また迫害にあふ時は、直ちに躓くなり。 |
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一七 自分の中に根がないので、しばらく続くだけである。そののち、御言のために困難や迫害が起ってくると、すぐつまずいてしまう。 |
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十八 又棘の中に播れたるものは人ことばを聽ども |
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一八 また播かれて茨の中にありとは、斯る人をいふ、 |
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一八 また、いばらの中にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くが、 |
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十九 此世の思慮と貨財の惑また各樣の情欲いり來りて道を蔽により終に實を結ざる者なり |
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一九 即ち御言をきけど、世の心勞、財貨の惑、さまざまの慾いりきたり、御言を塞ぐによりて、遂に實らざるなり。 |
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一九 世の心づかいと、富の惑わしと、その他いろいろな欲とがはいってきて、御言をふさぐので、実を結ばなくなる。 |
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二十 沃壞に播れたるものは人道を聽て之をうけ或は三十倍あるひは六十倍あるひは百倍の實を結ぶ者なり |
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二〇 播かれて良き地にありとは、斯る人をいふ、即ち御言を聽きて受け、三十倍、六十倍、百倍の實を結ぶなり』 |
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二〇 また、良い地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞いて受けいれ、三十倍、六十倍、百倍の実を結ぶのである」。 |
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二一 また彼等に曰けるは燈を持來りて斗の下あるひは牀の下に置もの有んや之を燭臺の上に置ならず乎 |
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二一 また言ひたまふ『升のした、寢臺の下におかんとて、燈火をもち來るか、燈臺の上におく爲ならずや。 |
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二一 また彼らに言われた、「ますの下や寝台の下に置くために、あかりを持ってくることがあろうか。燭台の上に置くためではないか。 |
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二二 隱て明瞭にならざるはなく藏て露れざる者はなし |
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二二 それ顯はるる爲ならで、隱るるものなく、明かにせらるる爲ならで、秘めらるるものなし。 |
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二二 なんでも、隠されているもので、現れないものはなく、秘密にされているもので、明るみに出ないものはない。 |
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二三 耳ありて聽ゆる者は聽べし |
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二三 聽く耳ある者は聽くべし』 |
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二三 聞く耳のある者は聞くがよい」。 |
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二四 また彼等に曰けるは聽ところを愼めよ爾曹が度る所の量をもて爾曹も度らるべし聽たる爾曹にはなほ加られん |
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二四 また言ひ給ふ『なんぢら聽くことに心せよ、汝らが量る量にて量られ、更に。揩オ加へらるべし。 |
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二四 また彼らに言われた、「聞くことがらに注意しなさい。あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられ、その上になお増し加えられるであろう。 |
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二五 それ有る者はなほ與られ無有者は有る者をも取るゝ也 |
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二五 それ有てる人は、なは與ヘられ、有たぬ人は、有てる物をも取らるべし』 |
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二五 だれでも、持っている人は更に与えられ、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう」。 |
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二六 また曰けるは~の國は人種を地に播が如し |
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二六 また言ひたまふ『~の國は、或人、たねを地に播くが如し、 |
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二六 また言われた、「神の国は、ある人が地に種をまくようなものである。 |
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二七 日夜起臥する問に種はえいでゝ成長ども其然る故を知ず |
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二七 日夜起臥するほどに、種はえ出でて育てども、その故を知らず。 |
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二七 夜昼、寝起きしている間に、種は芽を出して育って行くが、どうしてそうなるのか、その人は知らない。 |
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二八 それ地は自から實を結ぶものにして初には苗つぎに穗いで穗の中に熟したる糓を結ぶ |
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二八 地はおのづから實を結ぶものにして、初には苗、つぎに穗、つひに穗の中に充ち足れる穀なる。 |
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二八 地はおのずから実を結ばせるもので、初めに芽、つぎに穂、つぎに穂の中に豊かな実ができる。 |
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二九 既に熟ば穫時いたるに因て直に鎌を入さする也 |
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二九 實、熟れば直ちに鎌を入る、收穫時の到れるなり』 |
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二九 実がいると、すぐにかまを入れる。刈入れ時がきたからである」。 |
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三十 また曰けるは~の國は何に比へ何の譬を以て之を喩ん |
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三〇 また言ひ給ふ『われら~の國を何になずらへ、如何なる譬をもて示さん。 |
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三〇 また言われた、「神の国を何に比べようか。また、どんな譬で言いあらわそうか。 |
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三一 一粒の芥種のごとし之を地に播ときは百樣の種より微けれど |
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三一 一粒の芥種のごとし、地に播く時は、世にある萬の種よりも小けれど、 |
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三一 それは一粒のからし種のようなものである。地にまかれる時には、地上のどんな種よりも小さいが、 |
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三二 既に播て萌出れば百樣の野菜よりは大くかつ巨たる枝を出して空の鳥その蔭に棲ほどに及なり |
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三二 旣に播きて生え出づれば、萬の野菜よりは大く、かつ大なる枝を出して、空の鳥その蔭に棲み得るほどになるなり』 |
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三二 まかれると、成長してどんな野菜よりも大きくなり、大きな枝を張り、その陰に空の鳥が宿るほどになる」。 |
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三三 イエス彼等の聽得ところに循ひ多かかる譬をもて教を彼等に語れり |
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三三 斯のごとき數多の譬をもて、人々の聽きうる力に隨ひて、御言を語り、 |
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三三 イエスはこのような多くの譬で、人々の聞く力にしたがって、御言を語られた。 |
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三四 譬に非ざれば彼等に語らずイエスその弟子と共に居るとき彼等に悉く之を解聽せり |
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三四 譬ならでは語り給はず、弟子たちには、人なき時に凡ての事を釋き給へり。 |
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三四 譬によらないでは語られなかったが、自分の弟子たちには、ひそかにすべてのことを解き明かされた。 |
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三五 偖その日の夕暮イエス彼等に向の岸に濟れと曰ければ |
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三五 その日、夕になりて言ひ給ふ『いざ彼方に柱かん』 |
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三五 さてその日、夕方になると、イエスは弟子たちに、「向こう岸へ渡ろう」と言われた。 |
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三六 弟子たち衆人を歸らせイエスの舟に在しを其まゝ之と偕に濟れり又他の小舟もともに往り |
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三六 弟子たち群衆を離れ、イエスの舟にゐ給ふまま共に乘り出づ、他の舟も從ひゆく。 |
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三六 そこで、彼らは群衆をあとに残し、イエスが舟に乗っておられるまま、乗り出した。ほかの舟も一緒に行った。 |
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三七 時に颶風おこり浪うちこみて殆ど舟に滿 |
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三七 時に烈しき颶風おこり、浪うち込みて、舟に滿つるばかりなり。 |
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三七 すると、激しい突風が起り、波が舟の中に打ち込んできて、舟に満ちそうになった。 |
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三八 イエス艄のかたに枕して寢たりしが弟子かれの目を醒して曰けるは師よ我儕が溺るゝをも顧み給はざる乎 |
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三八 イエスは艫の方に茵を枕として寢ねたまふ。弟子たち呼び起して言ふ『師よ、我らの亡ぶるを顧み給はぬか』 |
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三八 ところが、イエス自身は、舳の方でまくらをして、眠っておられた。そこで、弟子たちはイエスをおこして、「先生、わたしどもがおぼれ死んでも、おかまいにならないのですか」と言った。 |
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三九 イエス起て風を斥め且海に靜りて穩かに爲と曰ければ風やみて大に和たり |
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三九 イエス起きて風をいましめ、海に言ひたまふ『默せ、鎭れ』乃ち風やみて、大なる凪となりぬ。 |
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三九 イエスは起きあがって風をしかり、海にむかって、「静まれ、黙れ」と言われると、風はやんで、大なぎになった。 |
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四十 斯て彼等に曰けるは何故かく懼るゝや爾曹何ぞ信なき乎 |
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四〇 斯て弟子たちに言ひ給ふ『なに故かく臆するか、信仰なきは何ぞ』 |
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四〇 イエスは彼らに言われた、「なぜ、そんなにこわがるのか。どうして信仰がないのか」。 |
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四一 彼等甚しく懼れ互に曰けるは風と海さへも順ふ是誰なるぞ耶 |
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四一 かれら甚く懼れて互に言ふ『こは誰ぞ、風も海も順ふとは』 |
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四一 彼らは恐れおののいて、互に言った、「いったい、この方はだれだろう。風も海も従わせるとは」。 |
馬可傳iケ書 |
第五章 |
一 かれら海を濟てガダラ人の地に着 |
マルコ傳iケ書 |
第五章 |
一 斯て海の彼方なるゲラセネ人の地に到る。 |
マルコによる福音書 |
第五章 |
一 こうして彼らは海の向こう岸、ゲラサ人の地に着いた。 |
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二 舟よりイエスの上れるとき惡鬼に憑れたる人たゞちに墓間より出て彼に遇 |
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二 イエスの舟より上り給ふとき、穢れし靈に憑かれたる人、墓より出でて、直ちに遇ふ。 |
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二 それから、イエスが舟からあがられるとすぐに、けがれた霊につかれた人が墓場から出てきて、イエスに出会った。 |
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三四 この人は墓間を居處とせり屢次桎梏と鏈をもて繫ども鏈をうちきり桎梏を打碎により之を繫うる者なく亦誰も之を制し得もの無りき |
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三 この人、墓を住處とす、鏈にてすら今は誰も繫ぎ得ず。 |
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三 この人は墓場をすみかとしており、もはやだれも、鎖でさえも彼をつなぎとめて置けなかった。 |
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三四 この人は墓間を居處とせり屢次桎梏と鏈をもて繫ども鏈をうちきり桎梏を打碎により之を繫うる者なく亦誰も之を制し得もの無りき |
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四 彼はしばしば足械と鏈とにて繫がれたれど、鏈をちぎり、足械をくだきたり、誰も之を制する力なかりしなり。 |
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四 彼はたびたび足かせや鎖でつながれたが、鎖を引きちぎり、足かせを砕くので、だれも彼を押えつけることができなかったからである。 |
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五 夜も晝も恆に山と墓間に於て喊叫また石をもて己が身に傷つけぬ |
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五 夜も晝も、絕えず墓あるひは山にて叫び、己が身を石にて傷けゐたり。 |
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五 そして、夜昼たえまなく墓場や山で叫びつづけて、石で自分のからだを傷つけていた。 |
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六 彼はるかにイエスを見て趨より之を拜し |
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六 かれ遙にイエスを見て、走りきたり、御前に平伏し、 |
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六 ところが、この人がイエスを遠くから見て、走り寄って拝し、 |
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七 大聲に呼りけるは至上~の子イエスよ我なんぢと何の與り有んや我~に託て求ふ我を苦むること勿れ |
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七 大聲に叫びて言ふいと高き~の子イエスよ、我は汝と何の關係あらん、~によりて願ふ、我を苦しめ給ふな』 |
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七 大声で叫んで言った、「いと高き神の子イエスよ、あなたはわたしとなんの係わりがあるのです。神に誓ってお願いします。どうぞ、わたしを苦しめないでください」。 |
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八 是イエス惡鬼に人より出よと曰しに困てなり |
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八 これはイエス『穢れし靈よ、この人より出で往け』と言ひ給ひしに因るなり。 |
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八 それは、イエスが、「けがれた霊よ、この人から出て行け」と言われたからである。 |
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九 イエス彼に爾の名は何と問しに答けるは我儕おほきが故に我名をレギヨンと云 |
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九 イエスまた『なんぢの名は何か』と問ひ給へば『わが名はレギオン、我ら多きが故なり』と答へ、 |
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九 また彼に、「なんという名前か」と尋ねられると、「レギオンと言います。大ぜいなのですから」と答えた。 |
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十 切に此土地より我儕を逐出す勿れとイエスに求たり |
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一〇 また己らを此の地の外に逐ひやり給はざらんことを切に求む。 |
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一〇 そして、自分たちをこの土地から追い出さないようにと、しきりに願いつづけた。 |
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十一 茲に多の豕の群山に草を食ゐたりしが |
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一一 彼處の山邊に豚の大なる群、食しゐたり。 |
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一一 さて、そこの山の中腹に、豚の大群が飼ってあった。 |
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十二 凡の惡鬼かれに求て我臍を遣て豕に入せよと曰ければ |
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一二 惡鬼どもイエスに求めて言ふ『われらを遣して豚に入らしめ給へ』 |
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一二 霊はイエスに願って言った、「わたしどもを、豚にはいらせてください。その中へ送ってください」。 |
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十三 イエス直に彼等を許せり汚たる鬼その人より出て豕に入しかば約そ二千匹ほどの群はげしく馳くたり山坡より海に落て海に溺ぬ |
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一三 イエス許したまふ。穢れし靈いでて、豚に入りたれば、二千匹ばかりの群、海に向ひて、崖を駈けくだり、海に溺れたり。 |
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一三 イエスがお許しになったので、けがれた霊どもは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れは二千匹ばかりであったが、がけから海へなだれを打って駆け下り、海の中でおぼれ死んでしまった。 |
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十四 牧者ども逃ゆきて此事を邑またク村に告ければ衆人其ありし事を視んとて出 |
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一四 ふ者ども逃げ往きて、町にも里にも吿げたれば、人々何事の起りしかを見んとて出つ。 |
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一四 豚を飼う者たちが逃げ出して、町や村にふれまわったので、人々は何事が起ったのかと見にきた。 |
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十五 イエスに來りて惡鬼に憑れたる者すなはちレギヨンを持たりし人の衣服をつけ慥なる心にて坐し居けるを見て懼あへり |
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一五 斯てイエスに來り、惡鬼に憑かれたりし者、即ちレギオンをもちたりし者の、衣服をつけ、慥なる心にて坐しをるを見て、懼れあへり。 |
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一五 そして、イエスのところにきて、悪霊につかれた人が着物を着て、正気になってすわっており、それがレギオンを宿していた者であるのを見て、恐れた。 |
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十六 此事を見し者ども惡鬼に憑れたりし者の事と豕の事を彼等に告ければ |
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一六 かの惡鬼に憑かれたる者の上にありし事と、豚の事とを見し者ども、之を具に吿げたれば、 |
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一六 また、それを見た人たちは、悪霊につかれた人の身に起った事と豚のこととを、彼らに話して聞かせた。 |
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十七 頓てイエスに其境を出んことを求ぬ |
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一七 人々イエスにその境を去り給はん事を求む。 |
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一七 そこで、人々はイエスに、この地方から出て行っていただきたいと、頼みはじめた。 |
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十八 イエス舟に登んとせしとき惡鬼に憑たりし者ともに居んことを求けれども |
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一八 イエス舟に乘らんとし給ふとき、惡鬼に憑かれたりしもの偕に在らん事を願ひたれど、 |
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一八 イエスが舟に乗ろうとされると、悪霊につかれていた人がお供をしたいと願い出た。 |
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十九 イエス許ずして彼に曰けるは爾の家に歸り親屬に往て主の爾に行し大なる事と爾を恤みし事を告よ |
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一九 許さずして言ひ給ふ『なんぢの家に、親しき者に歸りて、主がいかに大なる事を汝に爲し、いかに汝を憫み給ひしかを吿げよ』 |
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一九 しかし、イエスはお許しにならないで、彼に言われた、「あなたの家族のもとに帰って、主がどんなに大きなことをしてくださったか、またどんなにあわれんでくださったか、それを知らせなさい」。 |
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二十 彼ゆきてイエスの己に行たまへる大なる事をデカポリスに言揚しければ衆人みな駭きあへり |
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二〇 彼ゆきてイエスの如何に大なる事を己になし給ひしかをデカポリスに言ひ弘めたれば、人々みな怪しめり。 |
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二〇 そこで、彼は立ち去り、そして自分にイエスがしてくださったことを、ことごとくデカポリスの地方に言いひろめ出したので、人々はみな驚き怪しんだ。 |
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二一 イエス舟に乘て復海の彼岸に濟しに大勢の人々彼に集るイエスは海に近をれり |
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二一 イエス舟にて、復かなたに渡り給ひしに、大なる群衆みもとに集る、イエス海邊に在せり。 |
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二一 イエスがまた舟で向こう岸へ渡られると、大ぜいの群衆がみもとに集まってきた。イエスは海べにおられた。 |
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二二 會堂の宰ヤイロといふ人きたりイエスを見て其足下に伏 |
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二二 會堂司の一人、ヤイロといふ者きたり、イエスを見て、その足下に伏し、 |
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二二 そこへ、会堂司のひとりであるヤイロという者がきて、イエスを見かけるとその足もとにひれ伏し、 |
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二三 切々に求いひけるは我いとけなき女死る瀕になりぬ之を救ん爲に來りて手を彼に按たまへ然ば女は生べし |
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二三 切に願ひて言ふ『わが稚なき娘、いまはの際なり、來りて手をおき給へ、さらば救はれて活くべし』 |
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二三 しきりに願って言った、「わたしの幼い娘が死にかかっています。どうぞ、その子がなおって助かりますように、おいでになって、手をおいてやってください」。 |
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二四 イエス彼と共に往とき衆多の人々彼に從ひて擁あへり |
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二四 イエス彼と共にゆき給へば、大なる群衆したがひつつ御許に押迫る。 |
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二四 そこで、イエスは彼と一緒に出かけられた。大ぜいの群衆もイエスに押し迫りながら、ついて行った。 |
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二五 爰に十二年血漏を患たる婦あり |
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二五 爰に十二年、血漏を患ひたる女あり。 |
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二五 さてここに、十二年間も長血をわずらっている女がいた。 |
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二六 此婦おはくの醫者の爲に甚だ苦められ其所有をも盡く費しけれども何のuもなく轉て惡かりしが |
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二六 多くの醫者に多く苦しめられ、有てる物をことごとく費したれど、何の効なく、反つて々惡しくなりたり。 |
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二六 多くの医者にかかって、さんざん苦しめられ、その持ち物をみな費してしまったが、なんのかいもないばかりか、かえってますます悪くなる一方であった。 |
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二七 イエスの事を聞て群集の中より彼の後に來その衣に捫れり |
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二七 イエスの事をききて、群衆にまじり、後に來りて、御衣にさはる、 |
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二七 この女がイエスのことを聞いて、群衆の中にまぎれ込み、うしろから、み衣にさわった。 |
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二八 是その衣にだに捫らば愈るべしと曰ばなり |
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二八 『その衣にだに觸らば救はれん』と自ら謂へり。 |
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二八 それは、せめて、み衣にでもさわれば、なおしていただけるだろうと、思っていたからである。 |
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二九 斯て血の漏ること直にとまり既に疾いえしと其身に覺たり |
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二九 斯て血の泉、ただちに乾き、病のいえたるを身に覺えたり。 |
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二九 すると、血の元がすぐにかわき、女は病気がなおったことを、その身に感じた。 |
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三十 イエス自ら能力の己より出たるを知おほぜいの人々を顧みて曰けるは我衣に捫りし者は誰なる乎 |
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三〇 イエス直ちに能力の己より出でたるを自ら知り、群衆の中にて、振反り言ひたまふ『誰が我の衣に觸りしぞ』 |
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三〇 イエスはすぐ、自分の内から力が出て行ったことに気づかれて、群衆の中で振り向き、「わたしの着物にさわったのはだれか」と言われた。 |
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三一 弟子かれに曰けるは群集の人々の爾に擁あふを見て我に捫りし者は誰ぞと曰たまふ乎 |
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三一 弟子たち言ふ『群衆の押迫るを見て、誰が我に觸りしぞと言ひ給ふか』 |
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三一 そこで弟子たちが言った、「ごらんのとおり、群衆があなたに押し迫っていますのに、だれがさわったかと、おっしゃるのですか」。 |
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三二 イエスこの事を行る婦を見んと環視しければ |
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三二 イエスこの事を爲しし者を見んとて見囘し給ふ。 |
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三二 しかし、イエスはさわった者を見つけようとして、見まわしておられた。 |
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三三 婦おそれ戰慄おのが身にせられし事をしり來て彼の前に俯伏ことごとく實情を告 |
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三三 女おそれ戰き、己が身になりし事を知り、來りて御前に平伏し、ありしままを吿ぐ。 |
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三三 その女は自分の身に起ったことを知って、恐れおののきながら進み出て、みまえにひれ伏して、すべてありのままを申し上げた。 |
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三四 イエス彼に曰けるは女よ爾の信なんぢを救り安然にして往なんぢの疾いゆべし |
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三四 イエス言ひ給ふ『娘よ、なんぢの信仰なんぢを救へり、安らかに往け、病いえて健かになれ』 |
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三四 イエスはその女に言われた、「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい。すっかりなおって、達者でいなさい」。 |
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三五 イエスこの事を言をるうちに會堂の宰の家より人々來りて曰けるは爾の女すでに死たり何ぞ師を煩はす乎 |
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三五 かく語り給ふほどに、會堂司の家より人々きたりて言ふ『なんぢの娘は早や死にたり、爭でなほ師を煩はすべき』 |
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三五 イエスが、まだ話しておられるうちに、会堂司の家から人々がきて言った、「あなたの娘はなくなりました。このうえ、先生を煩わすには及びますまい」。 |
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三六 イエス直に其告る所の言をきゝ會堂の宰に曰けるは懼るゝ勿たゞ信ぜよ |
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三六 イエス其の吿ぐる言を傍より聞きて、會堂司に言ひたまふ『懼るな、ただ信ぜよ』 |
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三六 イエスはその話している言葉を聞き流して、会堂司に言われた、「恐れることはない。ただ信じなさい」。 |
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三七 イエス ペテロとヤコブ及その兄弟ヨハネの外は誰にも共に往ことを許さゞりき |
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三七 斯てペテロ、ヤコブその兄弟ヨハネの他は、ともに往く事を誰にも許し給はず。 |
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三七 そしてペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟ヨハネのほかは、ついて来ることを、だれにもお許しにならなかった。 |
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三八 既に會堂の宰の家に來りて人々の忙亂いたく哭泣を見る |
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三八 彼ら會堂司の家に來る。イエス多くの人の、甚く泣きつ叫びつする騷を見、 |
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三八 彼らが会堂司の家に着くと、イエスは人々が大声で泣いたり、叫んだりして、騒いでいるのをごらんになり、 |
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三九 入て彼等に曰けるは何ぞ忙亂かつ哭や女は死るに非たゞ寢たる耳 |
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三九 入りて言ひ給ふ『なんぞ騷ぎ、かつ泣くか、幼兒は死にたるにあらず、寐ねたるなり』 |
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三九 内にはいって、彼らに言われた、「なぜ泣き騒いでいるのか。子供は死んだのではない。眠っているだけである」。 |
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四十 彼等イエスを哂笑ふイエス凡の人々を出し女の父母とその從へる者等を率つれ女の臥たる所に入 |
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四〇 人々イエスを嘲笑ふ。イエス彼等をみな外に出し、幼兒の父と母と己に伴へる者とを率きつれて、幼兒のをる處に入り、 |
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四〇 人々はイエスをあざ笑った。しかし、イエスはみんなの者を外に出し、子供の父母と供の者たちだけを連れて、子供のいる所にはいって行かれた。 |
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四一 女の手を執て之に曰けるはタリタクミ之を譯ば女よ我なんぢに命ず起よといふ義なり |
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四一 幼兒の手を執りて『タリタ、クミ』と言ひたまふ。少女よ、我なんぢに言ふ、起きよ、との意なり。 |
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四一 そして子供の手を取って、「タリタ、クミ」と言われた。それは、「少女よ、さあ、起きなさい」という意味である。 |
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四二 直に女おきて行めり彼は年十二歲なり彼等はなはだ駭きぬ |
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四二 直ちに少女たちて歩む、その歲十二なりければなり。彼ら直ちに甚く驚きおどろけり。 |
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四二 すると、少女はすぐに起き上がって、歩き出した。十二歳にもなっていたからである。彼らはたちまち非常な驚きに打たれた。 |
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四三 イエスこの事を人に知する勿れと嚴く戒め又女に食物を與よと命じたり |
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四三 イエス比の事を誰にも知れぬやうにせよと、堅く彼らを戒め、また食物を娘に與ふることを命じ給ふ。 |
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四三 イエスは、だれにもこの事を知らすなと、きびしく彼らに命じ、また、少女に食物を与えるようにと言われた。 |
馬可傳iケ書 |
第六章 |
一イエス此を去て故クに到しに其弟子も彼に從ひぬ |
マルコ傳iケ書 |
第六章 |
一 斯て其處をいで、己がクに到り給ひしに、弟子たちも從へり。 |
マルコによる福音書 |
第六章 |
一 イエスはそこを去って、郷里に行かれたが、弟子たちも従って行った。 |
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二 安息日に及ければ會堂にて教をはじむ衆人これを聞て奇み曰けるは如何して此人に斯のごとき事あるか誰より此智慧を授られて如此ふしぎなる事をも其手より行か |
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二 安息日になりて、會堂にてヘへ始め給ひしに、聞きたる多くのもの驚きて言ふ『この人は此等のことを何處より得しぞ、此の人の授けられたる知憲は何ぞ、その手にて爲す斯のごとき能力あるわざは何ぞ。 |
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二 そして、安息日になったので、会堂で教えはじめられた。それを聞いた多くの人々は、驚いて言った、「この人は、これらのことをどこで習ってきたのか。また、この人の授かった知恵はどうだろう。このような力あるわざがその手で行われているのは、どうしてか。 |
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三 彼は木匠に非ずやマリアの子ヤコブ ヨセ ユダとシモンの兄弟にして其姊妹も此に我儕と共に在に非ずや遂に人々彼に礙けり |
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三 此の人は木匠にして、マリヤの子、またヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ならずや、其の姊妹も此處に我らと共にをるに非ずや』遂に彼に躓けり。 |
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三 この人は大工ではないか。マリヤのむすこで、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではないか。またその姉妹たちも、ここにわたしたちと一緒にいるではないか」。こうして彼らはイエスにつまずいた。 |
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四 イエス彼等に曰けるは預言者はその故クその親戚その室家の外に於は尊ばれざることなし |
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四 イエス彼らに言ひたまふ『預言者は、おのがク、おのが親族、おのが家の外にて尊ばれざる事なし』 |
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四 イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里、親族、家以外では、どこででも敬われないことはない」。 |
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五 イエス彼處にて患者に手を按たゞ數人を醫しゝ外ふしぎなる事を行こと能ざりき |
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五 彼處にては、何の能力ある業をも行ひ給ふこと能はず、ただ少數の病める者に、手をおきて醫し給ひしのみ。 |
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五 そして、そこでは力あるわざを一つもすることができず、ただ少数の病人に手をおいていやされただけであった。 |
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六 また彼等の信ぜざるを奇み遂にゥクを經巡て教をなせり |
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六 彼らの信仰なきを怪しみ給へり。斯て村々を歷巡りてヘヘ給ふ。 |
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六 そして、彼らの不信仰を驚き怪しまれた。それからイエスは、附近の村々を巡りあるいて教えられた。 |
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七 イエス十二の弟子を召て彼等を二人づゝ遣さんとして之に惡鬼を逐出す權威を授け |
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七 また十二弟子を召し、二人づつ遣しはじめ、穢れし靈を制する權威を與へ、 |
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七 また十二弟子を呼び寄せ、ふたりずつつかわすことにして、彼らにけがれた霊を制する権威を与え、 |
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八 且かれらに命じけるは一の杖の外は旅の用意に何をも携なかれ旅袋糧食また金をも携ず |
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八 かつ旅のために、杖一つの他は、何をも持たず、糧も囊も帶の中に錢をも持たず、 |
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八 また旅のために、つえ一本のほかには何も持たないように、パンも、袋も、帯の中に銭も持たず、 |
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九 たゞ履をはき二の衣をきる勿れ |
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九 ただ草鞋ばかりをはきて、二つの下衣をも著ざることを命じ給へり。 |
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九 ただわらじをはくだけで、下着も二枚は着ないように命じられた。 |
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十 また彼等に曰けるは何處にても人の家に入ばその所を去までは其處に居 |
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一〇 斯て言ひたまふ『何處にても人の家に人らば、その地を去るまで其處に留れ。 |
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一〇 そして彼らに言われた、「どこへ行っても、家にはいったなら、その土地を去るまでは、そこにとどまっていなさい。 |
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十一 凡て爾曹を接ずなんぢらに聽ざる者には其處を去とき證のため足下の塵を拂へ我まことに爾曹に告ん審判の日いたらばソドムとゴモラは此邑よりも却て易かるべし |
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一一 何地にても汝らを受けず、汝らに聽かずば、其處を出づるとき、證のために足の裏の塵を拂へ』 |
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一一 また、あなたがたを迎えず、あなたがたの話を聞きもしない所があったなら、そこから出て行くとき、彼らに対する抗議のしるしに、足の裏のちりを払い落しなさい」。 |
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十二 弟子たち出て人々に悔改む可ことを宣傳へ |
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一二 爰に弟子たち出で往きて、悔改むべきことを宣傳へ、 |
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一二 そこで、彼らは出て行って、悔改めを宣べ伝え、 |
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十三 また多の惡鬼を逐出し又多の病る者に膏を沃て醫しぬ |
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一三 多くの惡鬼を逐ひいだし、多くの病める者に油をぬりて醫せり。 |
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一三 多くの悪霊を追い出し、大ぜいの病人に油をぬっていやした。 |
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十四 イエスの名播りければヘロデ王これを聞て曰けるはバプテスマを施しゝヨハネ死より甦れる故に奇異なる能をなす也 |
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一四 斯てイエスの名顯れたれば、ヘロデ王ききて言ふ『バプテスマのヨハネ、死人の中より甦へりたり。この故に此等の能力その中に働くなり』 |
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一四 さて、イエスの名が知れわたって、ヘロデ王の耳にはいった。ある人々は「バプテスマのヨハネが、死人の中からよみがえってきたのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」と言い、 |
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十五 或人は之をエリヤなりといひ或は往昔の預言者の如き預言者なりと曰 |
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一五 或人は『エリヤなり』といひ、或人は『預言者、いにしへの預言者のごとき者なり』といふ。 |
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一五 他の人々は「彼はエリヤだ」と言い、また他の人々は「昔の預言者のような預言者だ」と言った。 |
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十六 ヘロデ之を聞て曰けるは是わが首斬し所のヨハネ也かれ死より甦りたる也 |
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一六 ヘロデ聞きて言ふ『わが首斬りしヨハネ、かれ甦へりたるなり』 |
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一六 ところが、ヘロデはこれを聞いて、「わたしが首を切ったあのヨハネがよみがえったのだ」と言った。 |
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十七 曩にヘロデその兄弟ピリポの妻ヘロデヤの事に困て人を遺しヨハネを捕て獄に繫げり蓋ヘロデが彼の婦を娶しを |
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一七 ヘロデ先にその娶りたる己が兄弟ピリポの妻ヘロデヤの爲に、みづから人を遣し、ヨハネを捕へて獄に繫げり。 |
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一七 このヘロデは、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤをめとったが、そのことで、人をつかわし、ヨハネを捕えて獄につないだ。 |
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十八 ヨハネ諫て爾兄弟の妻を納は宜からずと曰るに因てなり |
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一八 ヨハネ、ヘロデに『その兄弟の妻を納るるは、宜しからず』と言へるに因る。 |
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一八 それは、ヨハネがヘロデに、「兄弟の妻をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。 |
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十九 ヘロデヤ彼を怨て殺さんと欲しかど能ざりき |
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一九 ヘロデヤ、ヨハネを怨みて殺さんと思へど能はず。 |
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一九 そこで、ヘロデヤはヨハネを恨み、彼を殺そうと思っていたが、できないでいた。 |
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二十 ヘロデはヨハネを義かつ善なる人と知て彼を敬ひ彼を保護かれに聞て多の事を行ひ且喜びて彼に聽ことをせり |
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二〇 それはヘロデ、ヨハネの義にして聖なる人たるを知りて、之を畏れ、之を護り、且そのヘをききて、大に惱みつつも、なは喜びて聽きたる故なり。 |
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二〇 それはヘロデが、ヨハネは正しくて聖なる人であることを知って、彼を恐れ、彼に保護を加え、またその教を聞いて非常に悩みながらも、なお喜んで聞いていたからである。 |
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二一 斯てヘロデその誕生の日もろもろの大臣千人の長およびガリラヤの尊き人々に享宴をなせる機會の日いたりければ |
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二一 然るに機よき日來れり。ヘロデ己が誕生日に大臣・將校・ガリラヤの貴人たちを招きて饗宴せしに、 |
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二一 ところが、よい機会がきた。ヘロデは自分の誕生日の祝に、高官や将校やガリラヤの重立った人たちを招いて宴会を催したが、 |
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二二 ヘロデヤの女きたりて舞をなしヘロデと其席に列れる人々を樂ましむ王その女に曰けるは何にても我に求へ爾が望ところの者は我なんぢに與ふべし |
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二二 かのヘロデヤの娘いり來りて、舞をまひ、ヘロデと其の席に列れる者とを喜ばしむ。王、少女に言ふ『何にても欲しく思ふものを求めよ、我あたへん』 |
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二二 そこへ、このヘロデヤの娘がはいってきて舞をまい、ヘロデをはじめ列座の人たちを喜ばせた。そこで王はこの少女に「ほしいものはなんでも言いなさい。あなたにあげるから」と言い、 |
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二三 又彼に凡そ爾が求るものは我が領分の半に至るとも爾に與んと誓ふ |
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二三 また誓ひて言ふ『なんぢ求めば、我が國の半までも與へん』 |
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二三 さらに「ほしければ、この国の半分でもあげよう」と誓って言った。 |
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二四 女いでゝ某母に何を求べき乎と曰ければ母乃ちバプテスマのヨハネが首と曰り |
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二四 娘いでて母にいふ『何を求むべきか』母いふ『バプテスマのヨハネの首を』 |
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二四 そこで少女は座をはずして、母に「何をお願いしましょうか」と尋ねると、母は「バプテスマのヨハネの首を」と答えた。 |
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二五 女たゞちに急ぎ王にきたり求てバプテスマのヨハネが首を盆に載て即時に我に賜へと曰 |
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二五 娘ただちに急ぎて王の許に入りきたり、求めて言ふ『ねがはくは、バプテスマのヨハネの首を盆に載せて速かに賜はれ』 |
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二五 するとすぐ、少女は急いで王のところに行って願った、「今すぐに、バプテスマのヨハネの首を盆にのせて、それをいただきとうございます」。 |
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二六 王甚だ憂けれども既に誓たると同席の者の故とをもて之を拒むことを欲ず |
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二六 王いたく憂ひたれど、その誓と席に在る者とに對して拒むことを好まず、 |
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二六 王は非常に困ったが、いったん誓ったのと、また列座の人たちの手前、少女の願いを退けることを好まなかった。 |
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二七 王たゞちにヨハネの首を携來れと命じて兵卒を遣しければ彼ゆきて獄に於て之を斬 |
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二七 直ちに衛兵を遣し、之にヨハネの首を持ち來ることを命ず。衛兵ゆきて獄にて、ヨハネを首斬り、 |
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二七 そこで、王はすぐに衛兵をつかわし、ヨハネの首を持って来るように命じた。衛兵は出て行き、獄中でヨハネの首を切り、 |
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二八 其首を盆にのせ携來りて女に與ふ女は之を其母に與たり |
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二八 その首を盆にのせ、持ち來りて少女に與ふ、少女これを母に與ふ。 |
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二八 盆にのせて持ってきて少女に与え、少女はそれを母にわたした。 |
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二九 ヨハネの弟子等この事を聞て來り其屍を取て墓に葬りぬ |
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二九 ヨハネの弟子たち聞きて來り、その屍體を取りて墓に納めたり。 |
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二九 ヨハネの弟子たちはこのことを聞き、その死体を引き取りにきて、墓に納めた。 |
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三十 使徒等イエスに集りて行へる事と教し事とを悉く彼に告 |
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三〇 使徒たちイエスの許に集りて、その爲ししこと、ヘへし事をことごとく吿ぐ。 |
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三〇 さて、使徒たちはイエスのもとに集まってきて、自分たちがしたことや教えたことを、みな報告した。 |
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三一 イエス彼等に曰けるは爾曹衆を避て我と偖に暫く寂寞ところに往て休むべし是往來のもの多して食する暇も無りしが故なり |
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三一 イエス言ひ給ふ『なんぢら人を避け、寂しき處に、いざ來りて暫し息へ』これは往來の人おほくして、食する暇だになかりし故なり。 |
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三一 するとイエスは彼らに言われた、「さあ、あなたがたは、人を避けて寂しい所へ行って、しばらく休むがよい」。それは、出入りする人が多くて、食事をする暇もなかったからである。 |
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三二 かれら人を避舟にて寂寞ところに往り |
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三二 斯て人を避け、舟にて寂しき處にゆく。 |
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三二 そこで彼らは人を避け、舟に乗って寂しい所へ行った。 |
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三三 其往を見て衆人おほくイエスをしりゥ邑より歩行にて趨り彼等の往んとする所へ先ち往てイエスに集れり |
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三三 其の往くを見て、多くの人それと知り、その處を指して、町々より徒歩にてともに走り、彼等よりも先に往けり。 |
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三三 ところが、多くの人々は彼らが出かけて行くのを見、それと気づいて、方々の町々からそこへ、一せいに駆けつけ、彼らより先に着いた。 |
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三四 イエス出て多の人を見に彼等は牧者なき羊の如き者なるに因て之を憫み許多の事を教はじめぬ |
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三四 イエス出でて、大なる群衆を見、その牧ふ者なき羊の如くなるを甚く憫みて、多くの事をヘへはじめ給ふ。 |
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三四 イエスは舟から上がって大ぜいの群衆をごらんになり、飼う者のない羊のようなその有様を深くあわれんで、いろいろと教えはじめられた。 |
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三五 時すでに暮景になりければ其弟子かれに來いひけるは此は寂寞ところにして時も既晩し |
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三五 時すでに晩くなりたれば、弟子たち御許に來りていふ『ここは寂しき處、はや時も晩し。 |
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三五 ところが、はや時もおそくなったので、弟子たちはイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。 |
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三六 衆人の食ふべき物なきが故に其自ら四周のク村に往てパンを市んが爲に彼等を去しめ給へ |
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三六 人々を去らしめ、周圍の里また村に往きて、己がために食物を買はせ給へ』 |
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三六 みんなを解散させ、めいめいで何か食べる物を買いに、まわりの部落や村々へ行かせてください」。 |
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三七 イエス答けるは爾曹これに食を與よ弟子かれに曰けるは我儕ゆきて銀二百のパンを市かれらに與て食しむ可か |
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三七 答へて言ひ給ふ『なんぢら食物を與へよ』弟子たち言ふ『われら往きて二百デナリのパンを買ひ、これに與ヘて食はすべきか』 |
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三七 イエスは答えて言われた、「あなたがたの手で食物をやりなさい」。弟子たちは言った、「わたしたちが二百デナリものパンを買ってきて、みんなに食べさせるのですか」。 |
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三八 イエス彼等に曰けるはパンは幾何ある往て視よ彼等みて某數をしり五のパンと二の魚ありと答ふ |
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三八 イエス言ひ給ふ『パン幾つあるか、往きて見よ』彼ら見ていふ『五つ、また魚二つあり』 |
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三八 するとイエスは言われた。「パンは幾つあるか。見てきなさい」。彼らは確かめてきて、「五つあります。それに魚が二ひき」と言った。 |
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三九 イエス衆の人を組々にして草の上に坐しめよと命じければ |
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三九 イエス凡ての人の組々となりて、草の上に坐することを命じ給へば、 |
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三九 そこでイエスは、みんなを組々に分けて、青草の上にすわらせるように命じられた。 |
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四十 或は百人或は五十人づゝ列坐せり |
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四〇 或は百人、あるひは五十人、畝のごとく列びて坐す。 |
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四〇 人々は、あるいは百人ずつ、あるいは五十人ずつ、列をつくってすわった。 |
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四一 イエスその五のパンと二の魚をとり天を仰ぎ謝してパンをわり弟子に與て人々の前に陳しむ又二の魚を每人に分與ぬ |
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四一 斯てイエス五つのパンと二つの魚とを取り、天を仰ぎて祝しパンをさき、弟子たちに付して人々の前に置かしめ、二つの魚をも人每に分け給ふ。 |
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四一 それから、イエスは五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさき、弟子たちにわたして配らせ、また、二ひきの魚もみんなにお分けになった。 |
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四二 衆人みな食て飽 |
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四二 凡ての人、食ひて飽きたれば、 |
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四二 みんなの者は食べて満腹した。 |
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四三 そのパンと魚の餘屑を拾しに十二の筐に盈たり |
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四三 パンの餘、魚の殘を集めしに、十二の筐に滿ちたり。 |
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四三 そこで、パンくずや魚の残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。 |
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四四 パンを食たる男およそ五千人なりき |
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四四 パンを食ひたる男は五千人なりき。 |
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四四 パンを食べた者は男五千人であった。 |
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四五 直にイエスその弟子を强て舟に乘むかふの岸なるベテサイダへ先わたらしめ己は衆人を歸しむ |
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四五 イエス直ちに、弟子たちを强ひて舟に乘らせ、自ら群衆を返す間に、彼方なるベツサイダに先に往かしむ。 |
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四五 それからすぐ、イエスは自分で群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸のベツサイダへ先におやりになった。 |
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四六 衆人を歸しゝのち祈禱の爲に山に往り |
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四六 群衆に別れてのち、祈らんとて山にゆき給ふ。 |
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四六 そして群衆に別れてから、祈るために山へ退かれた。 |
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四七 日暮て舟は海の中に在イエスは獨り陸に居り |
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四七 夕になりて、舟は海の眞中にあり、イエスはひとり陸に在す。 |
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四七 夕方になったとき、舟は海のまん中に出ており、イエスだけが陸地におられた。 |
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四八 風逆ふに因て弟子等の舟を掉に勞たるを見て暁の四時ごろイエス海の上を履きたり彼等を過んとせしに |
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四八 風逆ふに因りて、弟子たちの漕ぎ煩ふを見て、夜明の四時ごろ、海の上を歩み、その許に到りて、往慧過ぎんとし給ふ。 |
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四八 ところが逆風が吹いていたために、弟子たちがこぎ悩んでいるのをごらんになって、夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らに近づき、そのそばを通り過ぎようとされた。 |
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四九 弟子その海を履るを見て變化の物ならんと意ひ叫びたり |
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四九 弟子たち其の海の上を歩み給ふを見、變化の者ならんと思ひて叫ぶ。 |
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四九 彼らはイエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと思い、大声で叫んだ。 |
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五十 蓋弟子みな之を見て懼しが故なりイエス直に彼等に語りて曰けるは心安かれ我なり懼るゝこと勿れ |
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五〇 皆これを見て心騷ぎたるに因る。イエス直ちに彼らに語りて言ひ給ふ『心安かれ、我なり、懼るな』 |
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五〇 みんなの者がそれを見て、おじ恐れたからである。しかし、イエスはすぐ彼らに声をかけ、「しっかりするのだ。わたしである。恐れることはない」と言われた。 |
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五一 遂に舟に登しかば風やみぬ彼等心の中に駭き異めること甚だし |
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五一 斯て弟子たちの許にゆき、舟に登り給へば、風やみたり。弟子たち心の中にて甚く驚く、 |
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五一 そして、彼らの舟に乗り込まれると、風はやんだ。彼らは心の中で、非常に驚いた。 |
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五二 是其心の愚頑に因てパンの奇跡をも覺ざりし也 |
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五二 彼らは先のパンの事をさとらず、反つて其の心鈍くなりしなり。 |
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五二 先のパンのことを悟らず、その心が鈍くなっていたからである。 |
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五三 既に濟ゲネサレといふ地に到て舟泊せり |
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五三 遂に渡りてゲネサレの地に著き、舟がかりす。 |
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五三 彼らは海を渡り、ゲネサレの地に着いて舟をつないだ。 |
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五四 彼等舟より出しに頓て人々イエスを知て |
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五四 舟より上りしに、人々ただちにイエスを認めて、 |
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五四 そして舟からあがると、人々はすぐイエスと知って、 |
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五五 徧く其四方の地へ馳ゆき病る者を床の儘にて舁ひイエスの在す處々を聞出して之に就り |
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五五 徧くあたりを馳せまはり、その在すと聞く處々に、患ふ者を床のままつれ來る。 |
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五五 その地方をあまねく駆けめぐり、イエスがおられると聞けば、どこへでも病人を床にのせて運びはじめた。 |
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五六 凡そィエスの至るとこる或はクあるひは邑あるひは村その街市に病る者を置て彼に其衣の裾にだに捫らせ給へと求り乃ち捫るほどの者はみな愈たり |
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五六 その到りたまふ處には、村にても、町にても、里にても、病める者を市場におきて、御衣の總にだに觸らしめ給はんことを願ふ。觸りし者は、みな醫されたり. |
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五六 そして、村でも町でも部落でも、イエスがはいって行かれる所では、病人たちをその広場におき、せめてその上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいと、お願いした。そしてさわった者は皆いやされた。 |
馬可傳iケ書 |
第七章 |
一 パリサイの人と或學者たちエルサレムより來りてイエスの前に集り |
マルコ傳iケ書 |
第七章 |
一 パリサイ人と或る學者らとエルサレムより來りてイエスの許に集る。 |
マルコによる福音書 |
第七章 |
一 さて、パリサイ人と、ある律法学者たちとが、エルサレムからきて、イエスのもとに集まった。 |
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二 彼の弟子の中に潔らざる手即ち盥ざる手にてパンを食する者ありしを見て之を責めたり |
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二 而して、その弟子たちの中に、潔からぬ手、即ち洗はぬ手にて食事する者のあるを見たり。 |
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二 そして弟子たちのうちに、不浄な手、すなわち洗わない手で、パンを食べている者があるのを見た。 |
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三 蓋パリサイの人とユダヤの人々はみな古の人の遺傳を守りて其手を潔あらはざれば食せず |
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三 パリサイ人および凡てのユダヤ人は、古への人の言傳を固く執りて、懇ろに手を洗はねば食はず。 |
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三 もともと、パリサイ人をはじめユダヤ人はみな、昔の人の言伝えをかたく守って、念入りに手を洗ってからでないと、食事をしない。 |
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四 市より歸きたりて盥ざれば亦食せず此ほか杯椀鍋および牀を洗など多端の遺傳を受守れり |
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四 また市場より歸りては、まづ禊がざれば食はず。このほか酒杯・鉢・銅の器を濯ぐなど多くの傳を承けて固く執りたり。 |
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四 また市場から帰ったときには、身を清めてからでないと、食事をせず、なおそのほかにも、杯、鉢、銅器を洗うことなど、昔から受けついでかたく守っている事が、たくさんあった。 |
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五 是に於てパリサイの人と學者等イエスに問けるは爾の弟子は何ゆゑ古の人の遺傳に遵はずして盥ざる手を以てパンを食する乎 |
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五 パリサイ人および學者らイエスに問ふ『なにゆゑ汝の弟子たちは、古への人の言傳に遵ひて歩まず、潔からぬ手にて食事するか』 |
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五 そこで、パリサイ人と律法学者たちとは、イエスに尋ねた、「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人の言伝えに従って歩まないで、不浄な手でパンを食べるのですか」。 |
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六 イエス答て彼等に曰けるはイザヤは僞善者なる爾曹を指てよく預言せり其錄しゝ言に此民は唇にて我を敬へども其心は我に遠かり |
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六 イエス言ひ給ふ『イザヤは汝ら僞善者につきて能く預言せり。「この民は口唇にて我を敬ふ、然れど、その心は我に遠ざかる。 |
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六 イエスは言われた、「イザヤは、あなたがた偽善者について、こう書いているが、それは適切な預言である、『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。 |
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七 人の誡を教と爲て徒らに我を拜すと曰り |
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七 ただ徒らに我を拜む、人の訓誡をヘとしヘへて」と錄したり。 |
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七 人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』。 |
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八 夫爾曹は~の誡を棄て人の遺傳を守れり即ち鍋杯を洗おほく此の如き事を行ふ |
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八 汝らは~の誡命を離れて人の言傳を固く執る』 |
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八 あなたがたは、神のいましめをさしおいて、人間の言伝えを固執している」。 |
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九 また彼等に曰けるは爾曹は實に己の遺傳を守んとて能も~の誡を棄る者なり |
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九 また言ひたまふ『汝等はおのれの言傳を守らんとて、能くも~の誡命を棄つ。 |
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九 また、言われた、「あなたがたは、自分たちの言伝えを守るために、よくも神のいましめを捨てたものだ。 |
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十 モーセ曰けるは爾の父母を敬へ又父あるひは母を詈る者は殺るべしと |
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一〇 即ちモーセは「なんぢの父、なんぢの母を敬へ」といひ「父また母を詈る者は、必ず殺さるべし」といへり。 |
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一〇 モーセは言ったではないか、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。 |
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十一 然ど爾曹は曰もし人父あるひは母に對て爾を養ふべき物はコルバン即ち禮物なりと曰ば事ずとも可と |
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一一 然るに汝らは「人もし父また母にむかひ我が汝に對して負ふ所のものは、コルバン即ち供物なりと言はば可し」と言ひて、 |
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一一 それだのに、あなたがたは、もし人が父または母にむかって、あなたに差上げるはずのこのものはコルバン、すなわち、供え物ですと言えば、それでよいとして、 |
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十二 而して人の其父あるひは母の爲に何をも行事を爾曹許ず |
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一二 そののち人をして、父また母に事ふること勿らしむ。 |
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一二 その人は父母に対して、もう何もしないで済むのだと言っている。 |
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十三 斯なんぢらは其教る所の遺傳をもて~の道を廢うす又おほく此類の事を行ふ |
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一三 かく汝らの傳へたる言傳によりて、~の言を空しうし、又おはく此の類の事をなしをるなり』 |
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一三 こうしてあなたがたは、自分たちが受けついだ言伝えによって、神の言を無にしている。また、このような事をしばしばおこなっている」。 |
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十四 イエスまた衆庶を召て彼等に曰けるは爾曹みな我言を聞て悟れ |
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一四 更に群衆を呼び寄せて言ひ給ふ『なんぢら皆われに聽きて悟れ。 |
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一四 それから、イエスは再び群衆を呼び寄せて言われた、「あなたがたはみんな、わたしの言うことを聞いて悟るがよい。 |
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十五 外より人に入ものは人を汚すこと能はず然ど人より出るものは人を汚す也 |
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一五 外より人に入りて、人を汚し得るものなし、然れど人より出づるものは、これ人を汚すなり』 |
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一五 すべて外から人の中にはいって、人をけがしうるものはない。かえって、人の中から出てくるものが、人をけがすのである。 |
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十六 聽ゆる耳ある者は聽べし |
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一六 |
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一六 〔聞く耳のある者は聞くがよい〕」。 |
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十七 イエス衆庶を離れて室に入しに其弟子たとへの意を問ければ |
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一七 イエス群衆を離れて家に入り給ひしに、弟子たち其の譬を問ふ。 |
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一七 イエスが群衆を離れて家にはいられると、弟子たちはこの譬について尋ねた。 |
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十八 彼等に曰けるは爾曹もなほ悟ざるか凡そ外より人に入ものゝ人を汚し能はざる事を知ざる乎 |
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一八 彼らに言ひ給ふ『なんぢらも然か悟なきか、外より人に入る物の、人を汚しえぬを悟らぬか、 |
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一八 すると、言われた、「あなたがたも、そんなに鈍いのか。すべて、外から人の中にはいって来るものは、人を汚し得ないことが、わからないのか。 |
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十九 蓋その心に入ず腹に入て厠に遺すなはち食ふ所のもの潔れり |
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一九 これ心には入らず、腹に入りて厠におつるなり』かく凡ての食物を潔しとし給へり。 |
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一九 それは人の心の中にはいるのではなく、腹の中にはいり、そして、外に出て行くだけである」。イエスはこのように、どんな食物でもきよいものとされた。 |
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二十 又曰けるは人より出るものは是人を汚す |
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二〇 また言ひたまふ『人より出づるものは、これ人を汚すなり。 |
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二〇 さらに言われた、「人から出て来るもの、それが人をけがすのである。 |
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二一 人の心より出るものは惡念、姦淫、苟合、兇殺、 |
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二一 それ內より、人の心より、惡しき念いづ、即ち淫行・竊盜・殺人、 |
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二一 すなわち内部から、人の心の中から、悪い思いが出て来る。不品行、盗み、殺人、 |
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二二 盜竊、貪婪、惡慝、詭譎、好色、嫉妒、謗讟、驕傲、狂妄なり |
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二二 姦淫・慳貧・邪曲・詭計・好色・嫉妬・誹謗・傲慢・愚痴。 |
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二二 姦淫、貪欲、邪悪、欺き、好色、妬み、誹り、高慢、愚痴。 |
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二三 是等の惡行はみな内より出て人を汚すもの也 |
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二三 すべて此等の惡しき事は內より出でて人を汚すなり』 |
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二三 これらの悪はすべて内部から出てきて、人をけがすのである」。 |
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二四 イエス此を去てツロとシドンの境にゆき家に入て人に知れざらん事を欲しが隱れ得ざりき |
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二四 イエス起ちて此處を去り、ツロの地方に往き、家に入りて人に知られじと爲給ひたれど、隱るること能はざりき。 |
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二四 さて、イエスは、そこを立ち去って、ツロの地方に行かれた。そして、だれにも知れないように、家の中にはいられたが、隠れていることができなかった。 |
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二五 そは惡鬼に憑たる幼き女を有る婦イエスの事を聞て來り其足下に伏たるに因てなり |
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二五 爰に穢れし靈に憑かれたる稚なき娘をもてる女、直ちにイエスの事をきき、來りて御足の許に平伏す。 |
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二五 そして、けがれた霊につかれた幼い娘をもつ女が、イエスのことをすぐ聞きつけてきて、その足もとにひれ伏した。 |
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二六 この婦はサイロピニケに生まれしギリシヤの者なりしが惡鬼を其女より逐出し給はん事をイエスに求り |
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二六 この女はギリシヤ人にて、スロ・フェニキヤの生なり。その娘より惡鬼を逐ひ出し給はんことを請ふ。 |
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二六 この女はギリシヤ人で、スロ・フェニキヤの生れであった。そして、娘から悪霊を追い出してくださいとお願いした。 |
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二七 イエス彼に曰けるは先兒女に飽しむべし兒女のパンを取て犬に投るは善らず |
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二七 イエス言ひ給ふ『まづ子供に飽かしむべし、子供のパンをとりて小狗に投げ與ふるは善からず』 |
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二七 イエスは女に言われた、「まず子供たちに十分食べさすべきである。子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。 |
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二八 婦こたへて曰けるは主よ然されど犬も案の下に在て兒女の遺屑を食ふ也 |
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二八 女こたヘて言ふ『然り主よ、食卓の下の小狗も小供の食屑を食ふなり』 |
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二八 すると女は答えて言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、食卓の下にいる小犬も、子供たちのパンくずは、いただきます」。 |
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二九 イエス婦に曰けるは此言に困て歸れ惡鬼は爾の女より出たり |
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二九 イエス言ひ給ふ『なんぢ此の言によりて〔安んじ〕往け、惡鬼は旣に娘より出でたり』 |
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二九 そこでイエスは言われた、「その言葉で、じゅうぶんである。お帰りなさい。悪霊は娘から出てしまった」。 |
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三十 婦その家に歸しに惡鬼既に出て牀に女の臥たるを見る |
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三〇 女、家に歸りて見るに、子は寢臺の上に臥し、惡鬼は旣に出でたり。 |
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三〇 そこで、女が家に帰ってみると、その子は床の上に寝ており、悪霊は出てしまっていた。 |
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三一 イエス ッロとシドンの地を去てデカポリスの地を過ガリラヤの海に至れり |
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三一 イエス又ツロの地方を去りて、シドンを過ぎ、デカポリスの地力を經て、ガリラヤの海に來り給ふ。 |
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三一 それから、イエスはまたツロの地方を去り、シドンを経てデカポリス地方を通りぬけ、ガリラヤの海べにこられた。 |
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三二 人々聾の訥る者をイエスに携來りて手を按給はん事を求ければ |
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三二 人々、耳聾にして物言ふこと難き者を連れ來りて、之に手をおき給はんことを願ふ。 |
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三二 すると人々は、耳が聞えず口のきけない人を、みもとに連れてきて、手を置いてやっていただきたいとお願いした。 |
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三三 イエス衆人を離れ之を外へ携ゆき指を其耳にさしいれ又唾して其舌に捫り |
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三三 イエス群衆の中より、彼をひとり連れ出し、その兩耳に指をさし入れ、また唾して其の舌に觸り、 |
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三三 そこで、イエスは彼ひとりを群衆の中から連れ出し、その両耳に指をさし入れ、それから、つばきでその舌を潤し、 |
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三四 且天を仰て嘆じ其人に對てエツパタと曰これを譯ば啓よとの義なり |
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三四 天を仰ぎて嘆じ、その人に對ひて『エパタ』と言ひ給ふ、ひらけよとの意なり。 |
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三四 天を仰いでため息をつき、その人に「エパタ」と言われた。これは「開けよ」という意味である。 |
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三五 直に其耳ひらけ舌の絡ゆるみて正く言へり |
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三五 斯てその耳ひらけ、舌の縺ただちに解け、正しく物いへり。 |
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三五 すると彼の耳が開け、その舌のもつれもすぐ解けて、はっきりと話すようになった。 |
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三六 イエス之を人に告る勿れと彼等を戒むれば戒むるほどu言揚しぬ |
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三六 イエス誰にも吿ぐなと人々を戒めたまふ。然れど戒むるほど反つて愈々言ひ弘めたり。 |
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三六 イエスは、この事をだれにも言ってはならぬと、人々に口止めをされたが、口止めをすればするほど、かえって、ますます言いひろめた。 |
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三七 衆人はなはだしく駭きて曰けるは此人の行し所ことごとく善あるひは聾を聽えさせ或は啞者を言はしめたり |
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三七 また甚だしく打驚きて言ふ『かれの爲しし事は皆よし、聾者をも聞えしめ、啞者をも物いはしむ』 |
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三七 彼らは、ひとかたならず驚いて言った、「このかたのなさった事は、何もかも、すばらしい。耳の聞えない者を聞えるようにしてやり、口のきけない者をきけるようにしておやりになった」。 |
馬可傳iケ書 |
第八章 |
一 當時あつまれる人々甚だ多りしが何の食物も有ざりければイエス其弟子を召て曰けるは |
マルコ傳iケ書 |
第八章 |
一 その頃また大なる群衆にて食ふべきものなかりしかば、イエス弟子たちを召して言ひ給ふ、 |
マルコによる福音書 |
第八章 |
一 そのころ、また大ぜいの群衆が集まっていたが、何も食べるものがなかったので、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、 |
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二 我この多の人々を憐む既に三日われと共に居しゆゑ今なにも食物なし |
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二 『われ此の群衆を憫む、旣に三日われと偕にをりて食ふべき物なし。 |
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二 「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。 |
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三 もし飢しまゝ其家に歸さば途間にて憊ん其中に遠處より來れる者あれば也 |
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三 飢ゑしままにて、其の家に歸らしめば、途にて疲れ果てん。其の中には遠くより來れる者あり』 |
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三 もし、彼らを空腹のまま家に帰らせるなら、途中で弱り切ってしまうであろう。それに、なかには遠くからきている者もある」。 |
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四 その弟子かれに答けるは此野にて何處よりパンを得この人々を飽しめん乎 |
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四 弟子たち答へて言ふ『この寂しき地にては、何處よりパンを得て、この人々を飽かしむべき』 |
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四 弟子たちは答えた、「こんな荒野で、どこからパンを手に入れて、これらの人々にじゅうぶん食べさせることができましょうか」。 |
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五 イエス彼等に問けるはパン幾何あるや七と答ふ |
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五 イエス問ひ給ふ『パン幾個あるか』答へて『七つ』といふ。 |
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五 イエスが弟子たちに、「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります」と答えた。 |
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六 イエス人々に命じて地に坐せしめ七のパンを取て謝し之をわり人々の前に陳しめんが爲その弟子に與ければ即ち人々の前に陳り |
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六 イエス群衆に命じて地に坐せしめ、七つのパンを取り、謝して之を裂き、弟子たちに與へて群衆の前におかしむ。弟子たち乃ちその前におく。 |
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六 そこでイエスは群衆に地にすわるように命じられた。そして七つのパンを取り、感謝してこれをさき、人々に配るように弟子たちに渡されると、弟子たちはそれを群衆に配った。 |
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七 また小き魚を些須もてり之をも祝して人々の前に陳と曰 |
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七 また小き魚すこしばかりあり、祝して之をも、その前におけと言ひ給ふ。 |
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七 また小さい魚が少しばかりあったので、祝福して、それをも人々に配るようにと言われた。 |
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八 人々これを食て飽その餘屑を七の籃に拾り |
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八 人々、食ひて飽き、擘きたる餘を拾ひしに、七つの籃に滿ちたり。 |
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八 彼らは食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七かごになった。 |
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九 之を食る者おほよそ四千人なり乃ちイエス之を歸しぬ |
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九 その人おほよそ四千人なりき。イエス彼らを歸し、 |
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九 人々の数はおよそ四千人であった。それからイエスは彼らを解散させ、 |
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十 イエス直に其弟子と共に舟に乘てダルマヌタの方に往しに |
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一〇 直ちに弟子たちと共に舟に乘りて、ダルマヌタの地方に往き給へり。 |
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一〇 すぐ弟子たちと共に舟に乗って、ダルマヌタの地方へ行かれた。 |
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十一 パリサイの人いでゝ彼を試んがため天よりの休徵を求めて詰はじむ |
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一一 パリサイ人いで來りて、イエスと論じはじめ、之を試みて天よりの徵をもとむ。 |
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一一 パリサイ人たちが出てきて、イエスを試みようとして議論をしかけ、天からのしるしを求めた。 |
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十二 イエス心の中に深く嘆息して曰けるは此世の人なんぞ休徵を求るや誠に我なんぢらに告ん休徵は此世の人に必ず興られじ |
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一二 イエス心に深く歎じて言ひ給ふ『なにゆゑ今の代は徵を求むるか、誠に汝らに吿ぐ、徵は今の代に斷えて與へられじ』 |
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一二 イエスは、心の中で深く嘆息して言われた、「なぜ、今の時代はしるしを求めるのだろう。よく言い聞かせておくが、しるしは今の時代には決して与えられない」。 |
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十三 イエス彼等を離れて復舟に乘むかふの岸に濟れり |
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一三 斯て彼らを離れ、また舟に乘りて彼方に往き給ふ。 |
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一三 そして、イエスは彼らをあとに残し、また舟に乗って向こう岸へ行かれた。 |
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十四 さて弟子パンを携ふることを忘たゞ一のパンのみ舟に有き |
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一四 弟子たちパンを携ふることを忘れ、舟には唯一つの他パンなかりき。 |
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一四 弟子たちはパンを持って来るのを忘れていたので、舟の中にはパン一つしか持ち合わせがなかった。 |
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十五 イエス彼等を戒めて曰けるは戒心してパリサイの人の麪酵とヘロデの麪酵を愼めよ |
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一五 イエス彼らを戒めて言ひたまふ『愼みてバリサイ人のパンだねと、ヘロデのパンだねとに心せよ』 |
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一五 そのとき、イエスは彼らを戒めて、「パリサイ人のパン種とヘロデのパン種とを、よくよく警戒せよ」と言われた。 |
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十六 弟子たがひに論じて曰けるは是パンを携へざりし故ならん |
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一六 弟子たち互に、これはパン無き故ならんと語り合ふ。 |
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一六 弟子たちは、これを自分たちがパンを持っていないためであろうと、互に論じ合った。 |
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十七 イエス之を知て彼等に曰けるは何ぞ互にパンを携へざりし事を論ずるや未だ悟ざるか爾曹の心なほ頑か |
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一七 イエス知りて言ひたまふ『何ぞパン無き故ならんと語り合ふか、未だ知らぬか、悟らぬか、汝らの心なほ鈍きか。 |
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一七 イエスはそれと知って、彼らに言われた、「なぜ、パンがないからだと論じ合っているのか。まだわからないのか、悟らないのか。あなたがたの心は鈍くなっているのか。 |
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十八 日ありて視ざるか耳ありて聽えざる乎また覺ざる乎 |
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一八 目ありて見ぬか、耳ありで聽かぬか。又なんぢら思ひ出でぬか、 |
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一八 目があっても見えないのか。耳があっても聞えないのか。また思い出さないのか。 |
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十九 我五千人に五のパンを擘あたへし時その餘屑を幾筐ひろひしや答けるは十二なり |
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一九 五つのパンを擘きて、五千人に與へし時、その餘を幾筐ひろひしか』弟子たち言ふ『十二』 |
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一九 五つのパンをさいて五千人に分けたとき、拾い集めたパンくずは、幾つのかごになったか」。弟子たちは答えた、「十二かごです」。 |
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二十 又四千人に七のパンを擘あたへし時その餘屑を幾籃ひろひしや答けるは七なり |
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二〇 『七つのパンを擘きて四千人に與へし時、その餘を幾籃ひろひしか』弟子たち言ふ『七つ』 |
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二〇 「七つのパンを四千人に分けたときには、パンくずを幾つのかごに拾い集めたか」。「七かごです」と答えた。 |
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二一 イエス彼等に曰けるは何ぞ悟ざる乎 |
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二一 イエス言ひたまふ『未だ悟らぬか』 |
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二一 そこでイエスは彼らに言われた、「まだ悟らないのか」。 |
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二二 イエス ベテサイダに至ければ人々瞽者を携來りて之に手を按たまはん事を求り |
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二二 彼ら遂にベツサイダに到る。人々、盲人をイエスに連れ來りて、觸り給はんことを願ふ。 |
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二二 そのうちに、彼らはベツサイダに着いた。すると人々が、ひとりの盲人を連れてきて、さわってやっていただきたいとお願いした。 |
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二三 イエス瞽者の手を執て村の外へ携出その目に唾して手を彼に按とひけるは何か視るや |
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二三 イエス盲人の手をとりて、村の外に連れ往き、その目に唾し、御手をあてて『なにか見ゆるか』と問ひ給へば、 |
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二三 イエスはこの盲人の手をとって、村の外に連れ出し、その両方の目につばきをつけ、両手を彼に当てて、「何か見えるか」と尋ねられた。 |
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二四 瞽者目を擧て曰けるは我この人々の歩行を見に樹の如し |
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二四 見上げて言ふ『人を見る、それは樹の如き物の歩くが見ゆ』 |
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二四 すると彼は顔を上げて言った、「人が見えます。木のように見えます。歩いているようです」。 |
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二五 遂にイエスまた兩手を彼の目に按その目を擧させければ乃ち愈て庶物あきらかに視たり |
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二五 また御手をその目にあて給へば、視凝めたるに、瘉えて凡てのもの明かに見えたり。 |
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二五 それから、イエスが再び目の上に両手を当てられると、盲人は見つめているうちに、なおってきて、すべてのものがはっきりと見えだした。 |
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二六 イエス彼を其家に歸らせ曰けるは此村に入なかれ且この村人にも告る勿れ |
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二六 斯て『村にも入るな』と言ひて、その家に歸し給へり。 |
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二六 そこでイエスは、「村にはいってはいけない」と言って、彼を家に帰された。 |
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二七 イエスその弟子と共にカイザリヤピリピのゥ村へゆく途間にて其弟子に問て曰けるは衆人は我を曰て誰とする乎 |
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二七 イエス其の弟子たちとピリポ・カイザリヤの村々に出でゆき、途にて弟子たちに問ひて言ひたまふ『人々は我を誰と言ふか』 |
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二七 さて、イエスは弟子たちとピリポ・カイザリヤの村々へ出かけられたが、その途中で、弟子たちに尋ねて言われた、「人々は、わたしをだれと言っているか」。 |
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二八 答けるは或人はバプテスマのヨハネ或人はエリヤ或人は預言者の一人なりと曰り |
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二八 答へて言ふ『バプテスマのヨハネ、或人はエリヤ、或人は預言者の一人』 |
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二八 彼らは答えて言った、「バプテスマのヨハネだと、言っています。また、エリヤだと言い、また、預言者のひとりだと言っている者もあります」。 |
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二九 イエス彼等に曰けるは爾曹は我を曰て誰とする平ペテロ答けるは爾はキリストなり |
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二九 また問ひ給ふ『なんぢらは我を誰と言ふか』ペテロ答へて言ふ『なんぢはキリストなり』 |
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二九 そこでイエスは彼らに尋ねられた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。ペテロが答えて言った、「あなたこそキリストです」。 |
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三十 イエス彼等を戒めて我事を誰にも告る勿れと命じたり |
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三〇 イエス己がことを誰にも吿ぐなと彼らを戒め給ふ。 |
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三〇 するとイエスは、自分のことをだれにも言ってはいけないと、彼らを戒められた。 |
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三一 また人の子の必ず多の苦難をうけ長老祭司の長學者どもに棄られ且殺されて三日の後に甦ることを彼等に示し始たまへり |
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三一 斯て人の子の必ず多くの苦難をうけ、長老・祭司長・學者らに棄てられ、かつ殺され、三日の後に甦ヘるべき事をヘへはじめ、 |
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三一 それから、人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、また殺され、そして三日の後によみがえるべきことを、彼らに教えはじめ、 |
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三二 明に之を示し給しかばペテロ イエスを援て諫んとせしに |
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三二 此の事をあらはに語り給ふ。爰にペテロ、イエスを傍にひきて戒め出でたれば、 |
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三二 しかもあからさまに、この事を話された。すると、ペテロはイエスをわきへ引き寄せて、いさめはじめたので、 |
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三三 イエス回顧その弟子を見てペテロを戒め曰けるはサタンよ我後に退け爾は~の情を思ず反て人の情を思ふ |
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三三 イエス振反りて弟子たちを見、ペテロを戒めて言ひ給ふ『サタンよ、わが後に退け、汝は~のことを思はず、反つて人のことを思ふ』 |
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三三 イエスは振り返って、弟子たちを見ながら、ペテロをしかって言われた、「サタンよ、引きさがれ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている」。 |
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三四 衆人と其弟子を共に召て彼等に曰けるは若し彼に從はんと欲ふ者は己を棄その十字架を負て我に從へ |
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三四 斯て群衆を弟子たちと共に呼び寄せて言ひたまふ『人もし我に從ひ來らんと思はば、己をすて、己が十字架を負ひて我に從へ。 |
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三四 それから群衆を弟子たちと一緒に呼び寄せて、彼らに言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。 |
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三五 そは生命を全ふせんとする者は之を喪ひ我ため且音の爲に生命を喪ふ者は之を得べければ也 |
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三五 己が生命を救はんと思ふ者は、これを失ひ、我が爲また音の爲に己が生命をうしなふ者は、之を救はん。 |
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三五 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのため、また福音のために、自分の命を失う者は、それを救うであろう。 |
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三六 もし人全世界を得とも其生命を喪はゞ何のuあらん乎 |
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三六 人、全世界を羸くとも、己が生命を損せば、何のuあらん、 |
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三六 人が全世界をもうけても、自分の命を損したら、なんの得になろうか。 |
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三七 また人何をもて其生命に易んや |
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三七 人その生命の代に何を與へんや。 |
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三七 また、人はどんな代価を払って、その命を買いもどすことができようか。 |
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三八 姦惡なる此世に於て我と我道を耻る者をば人の子も亦聖使と共に父の榮光をもて來る時之を耻べし |
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三八 不義なる、罪深き今の代にて、我または我が言を恥づる者をば、人の子もまた、父の榮光をもて、聖なる御使たちと共に來らん時に恥づべし』 |
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三八 邪悪で罪深いこの時代にあって、わたしとわたしの言葉とを恥じる者に対しては、人の子もまた、父の栄光のうちに聖なる御使たちと共に来るときに、その者を恥じるであろう」。 |
馬可傳iケ書 |
第九章 |
一 イエスまた彼等に曰けるは我まことに爾曹に告ん此に立ものゝ中に~の国の權威をもて來るを見までは死ざる者あり |
マルコ傳iケ書 |
第九章 |
一 また言ひ給ふ『まことに汝らに吿ぐ、此處に立つ者のうちに、~の國の、權能をもて來るを見るまでは、死を味ははぬ者どもあり』 |
マルコによる福音書 |
第九章 |
一 また、彼らに言われた、「よく聞いておくがよい。神の国が力をもって来るのを見るまでは、決して死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。 |
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二 さて六日の後イエス ペテロ ヤコブ ヨハネを伴ひ人を避て高山に登り給ひしか彼等の前にて其容貌かはり |
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二 六日の後、イエスただペテロ、ヤコブ、ヨハネのみを率きつれ、人を避けて高き山に登りたまふ。斯て彼らの前にて其の狀かはり、 |
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二 六日の後、イエスは、ただペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。ところが、彼らの目の前でイエスの姿が変り、 |
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三 其衣かゞやき白こと甚だしくして雪の如く世上の布漂も期しろくは爲彼はざるべし |
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三 其の衣かがやきて甚だ白くなりぬ、世の晒布者も爲し得ぬほど白し。 |
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三 その衣は真白く輝き、どんな布さらしでも、それほどに白くすることはできないくらいになった。 |
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四 エリヤとモーセと共に彼等に現れてイエスと語をれり |
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四 エリヤ、モーセともに彼らに現れて、イエスと語りゐたり。 |
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四 すると、エリヤがモーセと共に彼らに現れて、イエスと語り合っていた。 |
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五 ペテロ答てイエスに曰けるはラビ我儕ここに居は善われらに三の廬を建せ給へ一は主のたみ一はモーセのため一はエリヤの爲にせん |
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五 ペテロ差出でてイエスに言ふ『ラビ、我らの此處に居るは善し。われら三つの廬を造り、一つを汝のため、一つをモーセのため、一つをエリヤのためにせん』 |
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五 ペテロはイエスにむかって言った、「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。 |
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六 此は其謂ところを知ざりしなり彼等いたく懼しに因 |
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六 彼等いたく懼れたれば、ペテロ何と言ふべきかを知らざりしなり。 |
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六 そう言ったのは、みんなの者が非常に恐れていたので、ペテロは何を言ってよいか、わからなかったからである。 |
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七 斯て雲彼等を蔽ひ聲雲より出て曰けるは此は我が愛子なり之に聽べし |
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七 斯て雲おこり、彼らを覆ふ。雲より聲出づ『これは我が愛しむ子なり、汝ら之に聽け』 |
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七 すると、雲がわき起って彼らをおおった。そして、その雲の中から声があった、「これはわたしの愛する子である。これに聞け」。 |
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八 頓て弟子環視ければイエスと己の外は一人をも見ざりき |
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八 弟子たち急ぎ見囘すに、イエスと己らとの他には、はや誰も見えざりき。 |
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八 彼らは急いで見まわしたが、もはやだれも見えず、ただイエスだけが、自分たちと一緒におられた。 |
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九 山を下る時にイエス彼等に命じて人の子の死より甦る迄は爾曹の見し事を人に告る勿れと曰り |
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九 山をくだる時、イエス彼らに、人の子の、死人の中より甦へるまでは、見しことを誰にも語るなと戒め給ふ。 |
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九 一同が山を下って来るとき、イエスは「人の子が死人の中からよみがえるまでは、いま見たことをだれにも話してはならない」と、彼らに命じられた。 |
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十 弟子等この言を守かつ互に論じ曰けるは死より甦ると云は何の事か |
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一〇 彼ら此の言を心にとめ『死人の中より甦へる』とは、如何なる事ぞと互に論じ合ふ。 |
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一〇 彼らはこの言葉を心にとめ、死人の中からよみがえるとはどういうことかと、互に論じ合った。 |
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十一 彼等イエスに問て曰けるはエリヤは前に來るべしと學者の曰るは何ぞや |
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一一 斯てイエスに問ひて言ふ『學者たちは、何故エリヤまづ來るべしと言ふか』 |
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一一 そしてイエスに尋ねた、「なぜ、律法学者たちは、エリヤが先に来るはずだと言っているのですか」。 |
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十二 イエス答て曰けるは實にエリヤは前に來りて萬事を復振また人の子に就ては其各樣の苦難を受かつ輕慢らるる事を書しるされたり |
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一二 イエス言ひ給ふ『實にエリヤ先づ來りて、萬の事をあらたむ。然らば人の子につき、多くの苦難を受け、かつ蔑せらるる事の錄されたるは何ぞや。 |
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一二 イエスは言われた、「確かに、エリヤが先にきて、万事を元どおりに改める。しかし、人の子について、彼が多くの苦しみを受け、かつ恥ずかしめられると、書いてあるのはなぜか。 |
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十三 然ど我なんぢらに告んエリヤ既に來しに彼に就て錄されたりし如く人々意の任に之を待へり |
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一三 されど我なんぢらに吿ぐ、エリヤは旣に來れり。然るに彼に就きて錄されたる如く、人々心のままに之を待へり』 |
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一三 しかしあなたがたに言っておく、エリヤはすでにきたのだ。そして彼について書いてあるように、人々は自分かってに彼をあしらった」。 |
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十四 イエス弟子等の所にきたり多の人々の彼等を環圍ると學者たちの彼等と論じをりしを見たり |
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一四 相共に弟子たちの許に來りて、大なる群衆の之を環り、學者たちの之と論じゐたるを見給ふ。 |
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一四 さて、彼らがほかの弟子たちの所にきて見ると、大ぜいの群衆が弟子たちを取り囲み、そして律法学者たちが彼らと論じ合っていた。 |
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十五 衆人たゞちに彼を見て駭き趨よりて禮をなせり |
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一五 群衆みなイエスを見るや否や、いたく驚き、御許に走り往きて禮をなせり。 |
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一五 群衆はみな、すぐイエスを見つけて、非常に驚き、駆け寄ってきて、あいさつをした。 |
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十六 イエス學者に問けるは弟子と何事を論ずる乎 |
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一六 イエス問ひ給ふ『なんぢら何を彼らと論ずるか』 |
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一六 イエスが彼らに、「あなたがたは彼らと何を論じているのか」と尋ねられると、 |
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十七 衆人のうち一人こたへけるは師よ我ものいはぬ惡鬼に憑れたる我子を爾に携來れり |
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一七 群衆のうちの一人こたふ『師よ、啞の靈に憑かれたる我が子を御許に連れ來れり。 |
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一七 群衆のひとりが答えた、「先生、口をきけなくする霊につかれているわたしのむすこを、こちらに連れて参りました。 |
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十八 惡鬼の憑時は彼傾跌され沫をふき齒を切て疲勞はつる也これを逐出さんことを我なんぢの弟子に請しかど彼等能ざりき |
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一八 靈いづこにても彼に憑けば、痙攣け泡をふき、齒をくひしばり、而して瘦せ衰ふ。御弟子たちに之を逐ひ出すことを請ひたれど能はざりき』 |
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一八 霊がこのむすこにとりつきますと、どこででも彼を引き倒し、それから彼はあわを吹き、歯をくいしばり、からだをこわばらせてしまいます。それでお弟子たちに、この霊を追い出してくださるように願いましたが、できませんでした」。 |
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十九 イエス彼等に答て曰けるは噫信なき世なる哉いつまで我なんぢらと共に在んや何時まで我なんぢらを忍んや彼を我に携來れ |
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一九 爰に彼らに言ひ給ふ『ああ信なき代なるかな、我いつまで汝らと偕にをらん、何時まで汝らを忍ばん。その子を我が許に連れきたれ』 |
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一九 イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか。いつまで、あなたがたに我慢ができようか。その子をわたしの所に連れてきなさい」。 |
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二十 彼等その子を携來りしに惡鬼イエスを見て忽ち彼を拘攣しむ彼地に仆れ輾轉て沫を出ぬ |
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二〇 乃ち連れきたる。彼イエスを見しとき、靈ただちに之を痙攣けたれば、地に倒れ、泡をふきて轉び廻る。 |
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二〇 そこで人々は、その子をみもとに連れてきた。霊がイエスを見るや否や、その子をひきつけさせたので、子は地に倒れ、あわを吹きながらころげまわった。 |
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二一 イエスその父に問けるは幾何時より如此なりしや父いひけるは少時より也 |
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二一 イエスその父に問ひ給ふ『いつの頃より斯くなりしか』父いふ『をさなき時よりなり。 |
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二一 そこで、イエスが父親に「いつごろから、こんなになったのか」と尋ねられると、父親は答えた、「幼い時からです。 |
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二二 惡鬼しばしば之を火の中あるひは水の中に投入て殺んとせり爾もし爲ことを得ば我儕を憫みて助よ |
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二二 靈しばしば彼を火のなか水の中に投げ入れて亡さんとせり。然れど汝なにか爲し得ば、我らを憫みて助け給へ』 |
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二二 霊はたびたび、この子を火の中、水の中に投げ入れて、殺そうとしました。しかしできますれば、わたしどもをあわれんでお助けください」。 |
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二三 イエス彼に曰けるは爾もし信ずる事を得ば信ずる者に於て爲あたはざる事なし |
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二三 イエス言ひたまふ『爲し得ばと言ふか、信ずる者には、凡ての事なし得らるるなり』 |
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二三 イエスは彼に言われた、「もしできれば、と言うのか。信ずる者には、どんな事でもできる」。 |
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二四 其子の父たゞちに聲をあげ涙を流して曰けるは主よ我信ず我が信なきを助たまへ |
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二四 その子の父ただちに叫びて言ふ『われ信ず、信仰なき我を助け給へ』 |
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二四 その子の父親はすぐ叫んで言った、「信じます。不信仰なわたしを、お助けください」。 |
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二五 イエス衆人の趨集るを見て惡鬼を叱いひけるは啞にして聾なる惡鬼よ我なんぢに命ず出て再び之に入なかれ |
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二五 イエス群衆の走り集るを見て、穢れし靈を禁めて言ひたまふ『啞にて耳聾なる靈よ、我なんぢに命ず、この子より出でよ、重ねて入るな』 |
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二五 イエスは群衆が駆け寄って来るのをごらんになって、けがれた霊をしかって言われた、「言うことも聞くこともさせない霊よ、わたしがおまえに命じる。この子から出て行け。二度と、はいって来るな」。 |
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二六 惡鬼さけびて大に彼を拘攣しめて出しかば彼死たる者の如なりぬ人々これを巳に死りと云 |
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二六 靈さけびて甚だしく痙攣けさせて出でしに、その子、死人の如くなりたれば、多くの者これを死にたりと言ふ。 |
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二六 すると霊は叫び声をあげ、激しく引きつけさせて出て行った。その子は死人のようになったので、多くの人は、死んだのだと言った。 |
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二七 イエスその手を執て扶ければ彼たてり |
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二七 イエスその手を執りて起し給へば立てり。 |
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二七 しかし、イエスが手を取って起されると、その子は立ち上がった。 |
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二八 イエス家に入しに其弟子ひそかに問けるは我儕これを逐出すこと能ざりしは何故ぞ |
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二八 イエス家に入り給ひしとき、弟子たち窃に問ふ『我等いかなれば逐ひ出し得ざりしか』 |
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二八 家にはいられたとき、弟子たちはひそかにお尋ねした、「わたしたちは、どうして霊を追い出せなかったのですか」。 |
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二九 イエス彼等に曰けるは此族は祈禱と斷食に非れば逐出すこと能ざる也 |
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二九 答へ給ふ『この類は祈に由らざれば、如何にすとも出でざるなり』 |
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二九 すると、イエスは言われた、「このたぐいは、祈によらなければ、どうしても追い出すことはできない」。 |
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三十 彼等こゝを去てガリラヤを過この事をイエス人の知を欲ざりき |
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三〇 此處を去りて、ガリラヤを過ぐ。イエス人の此の事を知るを欲し給はず。 |
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三〇 それから彼らはそこを立ち去り、ガリラヤをとおって行ったが、イエスは人に気づかれるのを好まれなかった。 |
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三一 蓋その弟子に教て人の子は人の手に付され彼等に殺され殺されてのち第三日に甦るべしと曰たまふが故なり |
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三一 これは弟子たちにヘをなし、かつ『人の子は人々の手にわたされ、人々これを殺し、殺されて、三日ののち甦へるべし』と言ひ給ふが故なり。 |
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三一 それは、イエスが弟子たちに教えて、「人の子は人々の手にわたされ、彼らに殺され、殺されてから三日の後によみがえるであろう」と言っておられたからである。 |
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三二 其とき弟子等この言を曉らず亦問ことを恐たり |
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三二 弟子たちは、その言を悟らず、また問ふ事を恐れたり。 |
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三二 しかし、彼らはイエスの言われたことを悟らず、また尋ねるのを恐れていた。 |
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三三 偖イエス カペナウンに至り室に居て弟子に問けるは爾曹途間にて何を互に論ぜし乎 |
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三三 斯てカペナウムに到る。イエス家に入りて、弟子たちに問ひ給ふ『なんぢら途すがら何を論ぜしか』 |
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三三 それから彼らはカペナウムにきた。そして家におられるとき、イエスは弟子たちに尋ねられた、「あなたがたは途中で何を論じていたのか」。 |
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三四 弟子默然たり是途間にて互に論じ誰か大ならんとの爭ありければ也 |
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三四 弟子たち默然たり、これは途すがら、誰か大ならんと、互に爭ひたるに因る。 |
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三四 彼らは黙っていた。それは途中で、だれが一ばん偉いかと、互に論じ合っていたからである。 |
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三五 イエス坐して其十二を召かれらに曰けるは若し首たらんと欲ふ者は凡の人の後となり且すべての人の使役とならん |
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三五 イエス坐して、十二弟子を呼び、之に言ひたまふ『人もし頭たらんと思はば、凡ての人の後となり、凡ての人の役者となるべし』 |
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三五 そこで、イエスはすわって十二弟子を呼び、そして言われた、「だれでも一ばん先になろうと思うならば、一ばんあとになり、みんなに仕える者とならねばならない」。 |
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三六 また孩提を取て彼等の中に立て之を抱き彼等に曰けるは |
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三六 斯てイエス幼兒をとりて、彼らの中におき、之を抱きて言ひ給ふ、 |
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三六 そして、ひとりの幼な子をとりあげて、彼らのまん中に立たせ、それを抱いて言われた。 |
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三七 凡そ我名の爲に斯のごとき孩提の一人を接る者は即ち我を接るなり又われを接る者は即ち我を接るに非ず我を遣しゝ者を接るなり |
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三七 『おほよそ我が名のために斯る幼兒の一人を受くる者は、我を受くるなり。我を受くる者は、我を受くるにあらず、我を遣しし者を受くるなり』 |
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三七 「だれでも、このような幼な子のひとりを、わたしの名のゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。そして、わたしを受けいれる者は、わたしを受けいれるのではなく、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである」。 |
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三八 ヨハネ彼に答て曰けるは師よ我儕に從はざる者の爾の名に托て惡鬼を逐出せるを見しが我儕に從はざる故これを禁たり |
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三八 ヨハネ言ふ『師よ、我らに從はぬ者の、御名によりて惡鬼を逐ひ出すを見しが、我らに從はぬ故に、之を止めたり』 |
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三八 ヨハネがイエスに言った、「先生、わたしたちについてこない者が、あなたの名を使って悪霊を追い出しているのを見ましたが、その人はわたしたちについてこなかったので、やめさせました」。 |
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三九 イエス曰けるは其人を禁る勿れ蓋わが名により異なる能を行ひて輕易しく我を誹得る者はあらじ |
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三九 イエス言ひたまふ『止むな、我が名のために能力ある業をおこなひ、俄に我を譏り得る者なし。 |
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三九 イエスは言われた、「やめさせないがよい。だれでもわたしの名で力あるわざを行いながら、すぐそのあとで、わたしをそしることはできない。 |
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四十 我儕に敵たはざる者は我儕に屬者なり |
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四〇 我らに逆はぬ者は、我らに附く者なり。 |
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四〇 わたしたちに反対しない者は、わたしたちの味方である。 |
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四一 爾曹をキリストに屬者として我名の爲に一杯の水にても爾曹に飮する者は我まことに爾曹に告ん其人は賞を矢はざる也 |
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四一 キリストの者たるによりて、汝らに一杯の水を飮まする者は、我まことに汝らに吿ぐ、必ずその報を失はざるべし。 |
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四一 だれでも、キリストについている者だというので、あなたがたに水一杯でも飲ませてくれるものは、よく言っておくが、決してその報いからもれることはないであろう。 |
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四二 また凡そ我を信ずる小子の一人を礙する者は其首に磨を懸られて海に投入られん方その人の爲になほ善るべし |
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四二 また我を信ずる此の小き者の一人を躓かする者は、寧ろ大なる碾臼を頸に懸けられて、海に投げ入れられんかた勝れり。 |
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四二 また、わたしを信じるこれらの小さい者のひとりをつまずかせる者は、大きなひきうすを首にかけられて海に投げ込まれた方が、はるかによい。 |
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四三 若し爾の一手なんぢを礙かさば之を斷され兩手ありて地獄すなはち滅ざる火に往んよりは殘缺にて永生に入は爾の爲に善こと也 |
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四三 もし汝の手なんぢを躓かせば、之を切り去れ、不具にて生命に入るは、兩手ありて、ゲヘナの消えぬ火に往くよりも勝るなり。 |
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四三 もし、あなたの片手が罪を犯させるなら、それを切り捨てなさい。両手がそろったままで地獄の消えない火の中に落ち込むよりは、片手になって命に入る方がよい。 |
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四四 彼處に入ものゝ蟲つきず火きえず |
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四四 |
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四四 〔地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。〕 |
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四五 若なんぢの一足なんぢを礙かさば之を斷され兩足ありて地獄すなはち滅ざる火に投入られんよりは跛にて永生に入は爾の爲に善なり |
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四五 もし汝の足なんぢを躓かせば、之を切り去れ、蹇跛にて生命に入るは、兩足ありてゲヘナに投げ入れらるるよりも勝るなり。 |
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四五 もし、あなたの片足が罪を犯させるなら、それを切り捨てなさい。両足がそろったままで地獄に投げ入れられるよりは、片足で命に入る方がよい。 |
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四六 彼處に入ものゝ蟲つきず火きえず |
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四六 |
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四六 〔地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。〕 |
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四七 もし爾の一眼なんぢを礙かさば之を拔いだせ兩眼ありて地獄の火に投入られんよりは一眼にて~の國に入は爾の爲に善なり |
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四七 もし汝の眼なんぢを躓かせば、之を抜き出だせ、片眼にて~の國に入るは、兩眼ありてゲヘナに投げ入れらるるよりも勝るなり。 |
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四七 もし、あなたの片目が罪を犯させるなら、それを抜き出しなさい。両眼がそろったままで地獄に投げ入れられるよりは、片目になって神の国に入る方がよい。 |
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四八 彼處に入ものゝ蟲つきず火きえず |
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四八 「彼處にては、その蛆つきず、火も消えぬなり」 |
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四八 地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。 |
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四九 蓋すべての人は鹽をつくる如く火を以せられ凡の祭物は鹽をもて鹽つけらる |
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四九 それ人は、みな火をもて鹽つけらるべし。 |
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四九 人はすべて火で塩づけられねばならない。 |
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五十 鹽は善ものなり然ど鹽もし其味を失はゞ何をもて之に味を加んや爾曹心の中に鹽を有て又たがひに睦み和ぐべし |
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五〇 鹽は善きものなり、然れど鹽もし其の鹽氣を失はば、何をもて之に味つけん。汝ら心の中に鹽を保ち、かつ互に和くべし』 |
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五〇 塩はよいものである。しかし、もしその塩の味がぬけたら、何によってその味が取りもどされようか。あなたがた自身の内に塩を持ちなさい。そして、互に和らぎなさい」。 |
馬可傳iケ書 |
第十章 |
一 イエス此を去ヨルダンの外を經てユダヤの境の内に來しに多の人々また彼に集りければ恒の如く彼等に教誨を爲たまへり |
マルコ傳iケ書 |
第一〇章 |
一 イエス此處をたちて、ユダヤの地方およびヨルダンの彼方に來り給ひしに、群衆またも御許に集ひたれば、常のごとくヘへ給ふ。 |
マルコによる福音書 |
第一〇章 |
一 それから、イエスはそこを去って、ユダヤの地方とヨルダンの向こう側へ行かれたが、群衆がまた寄り集まったので、いつものように、また教えておられた。 |
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二 パリサイの人來て彼を試み問けるは人その妻を出すは可か |
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二 時にパリサイ人ら來り試みて問ふ『人その妻を出すはよきか』 |
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二 そのとき、パリサイ人たちが近づいてきて、イエスを試みようとして質問した、「夫はその妻を出しても差しつかえないでしょうか」。 |
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三 答て曰けるはモーセは爾曹に何と命せし乎 |
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三 答へて言ひ給ふ『モーセは汝らに何と命ぜしか』 |
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三 イエスは答えて言われた、「モーセはあなたがたになんと命じたか」。 |
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四 彼等曰けるはモーセは離緣狀を書與へて之を出すことを許せり |
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四 彼ら言ふ『モーセは離緑狀を書きて出すことを許せり』 |
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四 彼らは言った、「モーセは、離縁状を書いて妻を出すことを許しました」。 |
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五 イエス答て彼等に曰けるはモーセ爾曹の心つれなきに因て此命を爲たる也 |
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五 イエス言ひ給ふ『なんぢらの心、無情によりて、此の誡命を錄ししなり。 |
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五 そこでイエスは言われた、「モーセはあなたがたの心が、かたくななので、あなたがたのためにこの定めを書いたのである。 |
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六 然ど開闢のはじめ~人を男女に造り給へり |
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六 然れど開闢の初より「人を男と女とに造り給へり」 |
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六 しかし、天地創造の初めから、『神は人を男と女とに造られた。 |
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七 是故に人はその父母を離その妻に合て |
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七 「斯る故に人はその父母を離れて、 |
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七 それゆえに、人はその父母を離れ、 |
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八 二人のもの一體と成べし然ば二には非ず一體なり |
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八 二人のもの一體となるべし」然ればはや二人にはあらず、一體なり。 |
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八 ふたりの者は一体となるべきである』。彼らはもはや、ふたりではなく一体である。 |
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九 是故に~の耦せ給へる者は人これを離すべからず |
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九 この故に~の合はせ給ふものは、人これを離すべからず』 |
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九 だから、神が合わせられたものを、人は離してはならない」。 |
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十 室に在て弟子等また此事を問ければ |
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一〇 家に入りて弟子たち復この事を問ふ。 |
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一〇 家にはいってから、弟子たちはまたこのことについて尋ねた。 |
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十一 イエス彼等に曰けるは凡そ其妻を出して他の婦を娶る者は其妻に對して姦淫を行ふなり |
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一一 イエス言ひ給ふ『おほよそ其の妻を出して、他に娶る者は、その妻に對して姦淫を行ふなり。 |
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一一 そこで、イエスは言われた、「だれでも、自分の妻を出して他の女をめとる者は、その妻に対して姦淫を行うのである。 |
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十二 また婦もし其夫を出して他に嫁がば此婦も姦淫を行ふなり |
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一二 「また妻もし其の夫を棄てて他に媳がば、姦淫を行ふなり』 |
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一二 また妻が、その夫と別れて他の男にとつぐならば、姦淫を行うのである」。 |
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十三 イエスに撫れんがため人々孩提を携來ければ弟子等その携來れる者を責めたり |
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一三 イエスの觸り給はんことを望みて、人々幼兒らを連れ來りしに、弟子たち禁めたれば、 |
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一三 イエスにさわっていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちは彼らをたしなめた。 |
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十四 イエス之を見て怒を含かれらに曰けるは孩堤を我に來せよ彼等を禁る勿れ~の國に居ものは斯の如き者なり |
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一四 イエス之を見、いきどほりて言ひたまふ『幼兒らの我に來るを許せ、止むな、~の國は斯のごとき者の國なり。 |
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一四 それを見てイエスは憤り、彼らに言われた、「幼な子らをわたしの所に来るままにしておきなさい。止めてはならない。神の国はこのような者の国である。 |
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十五 誠に我なんぢらに告ん凡そ孩提の如くに~の國を承ざる者は之に入ことを得ざる也 |
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一五 誠に汝らに吿ぐ、凡そ幼兒の如くに~の國をうくる者ならずば、之に入ること能はず』 |
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一五 よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受けいれる者でなければ、そこにはいることは決してできない」。 |
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十六 即ち彼等を抱て手をその上に按これを祝せり |
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一六 斯て幼兒を抱き、手をその上におきて祝し給へり。 |
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一六 そして彼らを抱き、手をその上において祝福された。 |
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十七 イエス途に出けるに一人はしり來りて跪き問けるは善師よ我かぎりなき生命を嗣ために何を行べき乎 |
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一七 イエス途に出で給ひしに、一人はしり來り跪づきて問ふ『善き師よ、永遠の生命を嗣ぐためには、我なにを爲すべきか』 |
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一七 イエスが道に出て行かれると、ひとりの人が走り寄り、みまえにひざまずいて尋ねた、「よき師よ、永遠の生命を受けるために、何をしたらよいでしょうか」。 |
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十八 イエス彼に曰けるは何ぞ我を善と稱や一人の外に善者はなし即ち~なり |
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一八 イエス言ひ給ふ『なにゆゑ我を善しと言ふか、~ひとりの他に善き者なし。 |
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一八 イエスは言われた、「なぜわたしをよき者と言うのか。神ひとりのほかによい者はいない。 |
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十九 誡は爾が識とこるなり姦淫する勿れ殺なかれ盜なかれ妄の證を立る勿れ拐騙なかれ爾の父と母を敬へ |
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一九 誡命は汝が知るところなり「殺すなかれ」「姦淫するなかれ」「盜むなかれ」「僞證を立つるなかれ」「欺き取るなかれ」「汝の父と母とを敬へ」』 |
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一九 いましめはあなたの知っているとおりである。『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証を立てるな。欺き取るな。父と母とを敬え』」。 |
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二十 答て曰けるは師よ是みな我が幼きより守れるもの也 |
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二〇 彼いふ『師よ、われ幼き時より皆これを守れり』 |
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二〇 すると、彼は言った、「先生、それらの事はみな、小さい時から守っております」。 |
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二一 イエス彼を見て愛み曰けるは爾なは一を虧ゆきて其所有をうり貧者に施せ然げ天に於て財あらん而して來り十字架を操て我に從へ |
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二一 イエス彼に目をとめ、愛しみて言ひ給ふ『なんぢ尙ほ一つを缺く、往きて汝の有てる物を、ことごとく賣りて、貧しき者に施せ、さらば財寳を天に得ん。且きたりて我に從へ』 |
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二一 イエスは彼に目をとめ、いつくしんで言われた、「あなたに足りないことが一つある。帰って、持っているものをみな売り払って、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。 |
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二二 彼この言に因て哀み憂て去ぬ彼は大なる產業を有る者なればなり |
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二二 この言によりて、彼は憂を催し、悲しみつつ去りぬ、大なる資產をもてる故なり。 |
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二二 すると、彼はこの言葉を聞いて、顔を曇らせ、悲しみながら立ち去った。たくさんの資産を持っていたからである。 |
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二三 イエス環視てその弟子に曰けるは財を有る者の~の國に入は如何難かな |
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二三 イエス見囘して弟子たちに言ひたまふ『富ある者の~の國に入るは如何に難いかな』 |
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二三 それから、イエスは見まわして、弟子たちに言われた、「財産のある者が神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう」。 |
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二四 弟子この言を駭けりイエス復こたへて彼等に曰けるは小子よ財を恃む者の~の國に入は如何に難かな |
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二四 弟子たち此の御言に驚く。イエスまた答へて言ひ給ふ『子たちよ、~の國に入るは、如何に難いかな、 |
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二四 弟子たちはこの言葉に驚き怪しんだ。イエスは更に言われた、「子たちよ、神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう。 |
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二五 富者の~の國に入よりは駱駝の針の孔を穿るは却て易し |
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二五 富める者の~の國に入るよりは、駱駝の針の孔を通るかた、反つて易し』 |
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二五 富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。 |
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二六 弟子たち甚く駭き互に曰けるは然ば誰か救を受べき乎 |
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二六 弟子たち甚く驚きて互に言ふ『さらば誰か救はるる事を得ん』 |
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二六 すると彼らはますます驚いて、互に言った、「それでは、だれが救われることができるのだろう」。 |
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二七 イエス彼等を見て曰けるは是人には能ざる所なれど~に於ては然らず~は能ざる所なければ也 |
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二七 イエス彼らに目を注めて言ひたまふ『人には能はねど、~には然らず、夫れ~は凡ての事をなし得るなり』 |
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二七 イエスは彼らを見つめて言われた、「人にはできないが、神にはできる。神はなんでもできるからである」。 |
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二八 是に於てペテロ彼に曰けるは我儕一切を舍て爾に從へり |
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二八 ペテロ、イエスに對ひて『我らは一切をすてて汝に從ひたり』と言ひ出でたれば、 |
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二八 ペテロがイエスに言い出した、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを捨てて、あなたに従って参りました」。 |
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二九 イエス答て曰けるは誠に爾曹に告ん我と音の爲に家宅あるひは兄弟あるかは姉妹あるひは父あるひは母あるひは妻あるひは兒女あるひは田疇を舍る者は |
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二九 イエス言ひ給ふ、『まことに汝らに吿ぐ、我がため、音のために、或は家、或は兄弟、あるひは姊妹、或は父、或は母、或は子、或は田畑をすつる者は、 |
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二九 イエスは言われた、「よく聞いておくがよい。だれでもわたしのために、また福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子、もしくは畑を捨てた者は、 |
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三十 この世にて百倍を受ざる者なし即ち家宅、兄弟、姊妹、母、兒女、田疇を迫害と共に受又後の世には窮なき生を受ん |
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三〇 誰にても今、今の時に百倍を受けぬはなし。即ち家・兄弟・姊妹・母・子・田畑を迫害と共に受け、また後の世にては、永遠の生命を受けぬはなし。 |
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三〇 必ずその百倍を受ける。すなわち、今この時代では家、兄弟、姉妹、母、子および畑を迫害と共に受け、また、きたるべき世では永遠の生命を受ける。 |
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三一 然ど多の先なる者は後になり後なる者は先になるべし |
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三一 然れど多くの先なる者は後に、後なる者は先になるべし』 |
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三一 しかし、多くの先の者はあとになり、あとの者は先になるであろう」。 |
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三二 扨彼等エルサレムに上る途間イエス弟子に先ち行ければ彼等おどろき且おそれて從へりイエス十二を伴ひて將に己に及んとする事を彼等に告給ひけるは |
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三二 エルサレムに上る途にて、イエス先だち往き給ひしかば、弟子たち驚き、隨ひ往く者ども懼れたり。イエス再び十二弟子を近づけて、己が身に起らんとする事どもを語り出で給ふ、 |
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三二 さて、一同はエルサレムへ上る途上にあったが、イエスが先頭に立って行かれたので、彼らは驚き怪しみ、従う者たちは恐れた。するとイエスはまた十二弟子を呼び寄せて、自分の身に起ろうとすることについて語りはじめられた、 |
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三三 我儕エルサレムに上り人の子は祭司の長と學者等に付れん彼等これを死罪に定め異邦人に付し |
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三三 『視よ、我らエルサレムに上る。人の子は祭司長・學者らに付されん。彼ら死に定めて、異邦人に付さん。 |
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三三 「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子は祭司長、律法学者たちの手に引きわたされる。そして彼らは死刑を宣告した上、彼を異邦人に引きわたすであろう。 |
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三四 又これを嘲弄し鞭ち唾し且これを殺ん斯て第三日に甦るべし |
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三四 異邦人は嘲弄し、唾し、鞭ち、遂に殺さん、斯て彼は三日の後に甦へるべし』 |
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三四 また彼をあざけり、つばきをかけ、むち打ち、ついに殺してしまう。そして彼は三日の後によみがえるであろう」。 |
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三五 ゼベダイの子ヤコブとヨハネ イエスに來りて曰けるは師よ我儕が求る事を願くは我儕に成たまへ |
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三五 爰にゼベダイの子ヤコブ、ヨハネ御許に來りて言ふ『師よ、願くは我らが何にても求むる所を爲したまへ』 |
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三五 さて、ゼベダイの子ヤコブとヨハネとがイエスのもとにきて言った、「先生、わたしたちがお頼みすることは、なんでもかなえてくださるようにお願いします」。 |
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三六 彼等に曰けるは爾曹に我が何を成ん事を欲ふや |
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三六 イエス言ひ給ふ『わが汝らに何を爲さんことを望むか』 |
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三六 イエスは彼らに「何をしてほしいと、願うのか」と言われた。 |
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三七 彼等いひけるは爾榮を得んとき我儕の一人を其右に一人を其左に坐せしめよ |
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三七 彼ら言ふ『なんぢの榮光の中にて、一人をその右に、一人をその左に坐せしめ給へ』 |
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三七 すると彼らは言った、「栄光をお受けになるとき、ひとりをあなたの右に、ひとりを左にすわるようにしてください」。 |
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三八 イエス彼等に曰けるは爾曹は求ふ所を知ず爾曹わが飮ところの杯を飮わが受る所のバプテスマを受得るや |
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三八 イエス言ひ給ふ『なんぢらは求むる所を知らず、汝等わが飮む酒杯を飮み、我が受くるバプテスマを受け得るか』 |
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三八 イエスは言われた、「あなたがたは自分が何を求めているのか、わかっていない。あなたがたは、わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けることができるか」。 |
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三九 彼等いひけるれ能すべしイエス彼等に曰けるは爾曹は實に我が飮ところの杯を飮また我が受る所のバプテスマを受べし |
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三九 彼等いふ『得るなり』イエス言ひ給ふ『なんぢら我が飮む酒杯を飮み、また我が受くるバプテスマを受くべし。 |
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三九 彼らは「できます」と答えた。するとイエスは言われた、「あなたがたは、わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けるであろう。 |
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四十 然ど我が右左に坐する事は我が予ふべきに非たゞ備られたる者は予らるべし |
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四〇 然れど我が右左に坐することは、我の與ふべきものならず、ただ備へられたる人こそ與へらるるなれ』 |
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四〇 しかし、わたしの右、左にすわらせることは、わたしのすることではなく、ただ備えられている人々だけに許されることである」。 |
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四一 十人の弟子これを聞てヤコブとヨハネを憤れり |
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四一 十人の弟子これを聞き、ヤコブとヨハネとの事により憤ほり出でたれば、 |
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四一 十人の者はこれを聞いて、ヤコブとヨハネとのことで憤慨し出した。 |
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四二 イエス彼等を召て曰けるは異邦人の君と見る者は其民を治また大なる者どもは彼等の上に權を執これ爾曹が知ところ也 |
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四二 イエス彼らを呼びて言ひたまふ『異邦人の者と認めらるる者の、その民を宰どり、大なる者の、民の上に權を執ることは、汝らの知る所なり。 |
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四二 そこで、イエスは彼らを呼び寄せて言われた、「あなたがたの知っているとおり、異邦人の支配者と見られている人々は、その民を治め、また偉い人たちは、その民の上に権力をふるっている。 |
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四三 然ど爾曹の中にては然す可らず爾曹のうち大ならんと欲ふ者は爾曹に役るゝ者とならん |
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四三 然れど汝らの中にては然らず、反つて大ならんと思ふ者は、汝らの役者となり、 |
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四三 しかし、あなたがたの間では、そうであってはならない。かえって、あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、仕える人となり、 |
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四四 また爾曹のうち首たらんと欲ふ者は凡の人の僕とならん |
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四四 頭たらんと思ふ者は、凡ての者の僕となるべし。 |
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四四 あなたがたの間でかしらになりたいと思う者は、すべての人の僕とならねばならない。 |
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四五 蓋人の子の來るも人を役ふ爲に非ず反て人に役はれ且おほくの人に代その命を予て贖とならん爲なり |
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四五 人の子の來れるも、事へらるる爲にあらず、反つて事ふることをなし、又おほくの人の贖償として己が生命を與へん爲なり』 |
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四五 人の子がきたのも、仕えられるためではなく、仕えるためであり、また多くの人のあがないとして、自分の命を与えるためである」。 |
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四六 斯て彼等エリコに至りイエスその弟子と大なる群集の人々と共にエリコを出る時テマイの子なるバルテマイといふ瞽者路の旁に坐して乞ゐけるが |
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四六 斯て彼らエリコに到る。イエスその弟子たち及び大なる群衆と共に、エリコを出でたまふ時、テマイの子バルテマイといふ盲目の乞食、路の傍に坐しをりしが、 |
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四六 それから、彼らはエリコにきた。そしてイエスが弟子たちや大ぜいの群衆と共にエリコから出かけられたとき、テマイの子、バルテマイという盲人のこじきが、道ばたにすわっていた。 |
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四七 ナザレのイエスなりと聞て呼り曰けるはダビデの裔イエスよ我を恤み給へ |
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四七 ナザレのイエスなりと聞き、叫び出して言ふ『ダビデの子イエスよ、我を憫みたまへ』 |
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四七 ところが、ナザレのイエスだと聞いて、彼は「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんでください」と叫び出した。 |
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四八 多の人々これに緘默と戒めけれども愈よばゝりてダビデの裔よ我を恤み給へと曰ければ |
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四八 多くの人かれを禁めて默さしめんとしたれど、々叫びて『ダビデの子よ、我を憫みたまへ』と言ふ。 |
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四八 多くの人々は彼をしかって黙らせようとしたが、彼はますます激しく叫びつづけた、「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんでください」。 |
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四九 イエス立止りて披を召と命じければ人々瞽者を召て彼に曰けるは心を安んぜよ起イエス爾を召 |
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四九 イエス立ち止りて『かれを呼べ』と言ひ給へば、人々盲人を呼びて言ふ『心安かれ、起て、なんぢを呼びたまふ』 |
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四九 イエスは立ちどまって、「彼を呼べ」と命じられた。そこで、人々はその盲人を呼んで言った、「喜べ、立て、おまえを呼んでおられる」。 |
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五十 瞽者その表衣を棄たちてイエスに來れり |
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五〇 盲人うはぎを脫ぎ捨て、躍り上りて、イエスの許に來りしに、 |
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五〇 そこで彼は上着を脱ぎ捨て、踊りあがってイエスのもとにきた。 |
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五一 イエス答て彼に曰けるは爾われに何を爲れんと欲ふや瞽者いひけるは主よ見なん事を欲ふ |
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五一 イエス答へて言ひ給ふ『わが汝に何を爲さんことを望むか』盲人いふ『わが師よ、見えんことなり』 |
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五一 イエスは彼にむかって言われた、「わたしに何をしてほしいのか」。その盲人は言った、「先生、見えるようになることです」。 |
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五二 イエス彼に曰けるは往なんぢの信仰なんぢを救へり直に彼見ることを得イエスに從ひて路を行り |
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五二 イエス彼に『ゆけ、汝の信仰なんぢを救へり』と言ひ給へば、直ちに見ることを得、イエスに從ひて途を往けり。 |
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五二 そこでイエスは言われた、「行け、あなたの信仰があなたを救った」。すると彼は、たちまち見えるようになり、イエスに従って行った。 |
馬可傳iケ書 |
第十一章 |
一 かれら橄欖山のベテパケとベタニヤに至りエルサレムに近ける時イエス二人の弟子を遣さんとして |
マルコ傳iケ書 |
第一一章 |
一 彼らエルサレムに近づき、オリブ山の麓なるベテパゲ及びベタニヤに到りし時、イエス二人の弟子を遣さんとして言ひ給ふ、 |
マルコによる福音書 |
第一一章 |
一 さて、彼らがエルサレムに近づき、オリブの山に沿ったベテパゲ、ベタニヤの附近にきた時、イエスはふたりの弟子をつかわして言われた、 |
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二 彼等に曰けるは爾曹對面の村に往かしこに入ば頓て人の未だ乘ざる所の繫げる驢馬の子を見べし其を解て牽來れ |
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二 『むかひの村にゆけ、其處に入らば、頓て人の未だ乘りたることなき驢馬の子の繫ぎあるを見ん、それを解きて牽き來れ。 |
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二 「むこうの村へ行きなさい。そこにはいるとすぐ、まだだれも乗ったことのないろばの子が、つないであるのを見るであろう。それを解いて引いてきなさい。 |
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三 もし誰か爾曹に何ゆゑ然する乎といふ者あらば主の用なりと曰さらば直に其を此に遣るべし |
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三 誰かもし汝らに「なにゆゑ然するか」と言はば「主の用なり、彼ただちに返さん」といへ』 |
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三 もし、だれかがあなたがたに、なぜそんな事をするのかと言ったなら、主がお入り用なのです。またすぐ、ここへ返してくださいますと、言いなさい」。 |
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四 彼等ゆきて門の外の岐路に繋げる驢馬の子を見て之を解ければ |
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四 弟子たち往きて、門の外の路に驢馬の子の繫ぎあるを見て解きたれば、 |
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四 そこで、彼らは出かけて行き、そして表通りの戸口に、ろばの子がつないであるのを見たので、それを解いた。 |
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五 其處に立る人々のうち或人かれらに曰けるは此驢馬の子を解て如何する乎 |
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五 其處に立つ人々のうちの或者『なんぢら驢馬の子を解きて何とするか』と言ふ。 |
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五 すると、そこに立っていた人々が言った、「そのろばの子を解いて、どうするのか」。 |
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六 弟子イエスの命ぜし如く曰しかば遂に許たり |
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六 弟子たちイエスの吿げ給ひし如く言ひしに、彼ら許せり。 |
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六 弟子たちは、イエスが言われたとおり彼らに話したので、ゆるしてくれた。 |
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七 弟子驢馬の子をイエスに牽きたりて己が衣を其上に置ければイエスこれに乘り |
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七 斯て弟子たち驢馬の子をイエスの許に牽ききたり、己が衣をその上に置きたれば、イエス之に乘り給ふ。 |
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七 そこで、弟子たちは、そのろばの子をイエスのところに引いてきて、自分たちの上着をそれに投げかけると、イエスはその上にお乗りになった。 |
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八 人々おほくは其衣を路上に布あるひは樹の枝を伐て路上に布 |
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八 多くの人は己が衣を、或人は野より伐り取りたる樹の枝を途に敷く。 |
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八 すると多くの人々は自分たちの上着を道に敷き、また他の人々は葉のついた枝を野原から切ってきて敷いた。 |
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九 かつ前にゆき後に從ふ人々呼り曰けるはホザナよ主の名に託て來る者はなり |
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九 かつ前に往き後に從ふ者ども呼はりて言ふ、『ホサナ、讚むべきかな、主の御名によりて來る者」 |
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九 そして、前に行く者も、あとに従う者も共に叫びつづけた、「ホサナ、主の御名によってきたる者に、祝福あれ。 |
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十 主の名に託て來る我儕の父なるダビデの國はなり至上處にホザナよ |
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一〇 讚むべきかな、今し來る我らの父ダビデの國。「いと高き處にてホサナ』 |
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一〇 今きたる、われらの父ダビデの国に、祝福あれ。いと高き所に、ホサナ」。 |
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十一 イエス エルサレムに至り聖殿に入て悉くみまはし時すでに暮に及ければ十二と偕にベタニヤに出往り |
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一一 遂にエルサレムに到りて宮に入り、凡ての物を見囘し、時はや暮に及びたれば、十二弟子と共にベタニヤに出で往きたまふ。 |
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一一 こうしてイエスはエルサレムに着き、宮にはいられた。そして、すべてのものを見まわった後、もはや時もおそくなっていたので、十二弟子と共にベタニヤに出て行かれた。 |
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十二 明日かれらベタニヤより出し時イエス饑たり |
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一二 あくる日かれらベタニヤより出で來りし時、イエス飢ゑ給ふ。 |
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一二 翌日、彼らがベタニヤから出かけてきたとき、イエスは空腹をおぼえられた。 |
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十三 遙に葉ある無花果の樹を見てその樹に何か有んとて來しに葉の他なにも見ざりき是無花果樹の時に非れば也 |
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一三 遙に葉ある無花果の樹を見て、果をや得んと其のもとに到り給ひしに、葉のほかに何をも見出し給はず、是は無花果の時ならぬに因る。 |
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一三 そして、葉の茂ったいちじくの木を遠くからごらんになって、その木に何かありはしないかと近寄られたが、葉のほかは何も見当らなかった。いちじくの季節でなかったからである。 |
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十四 イエス此樹に對て今よりのち永久も爾の果を食ふ人あらざれといふ弟子これを聞り |
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一四 イエスその樹に對ひて言ひたまふ『今より後いつまでも、人なんぢの果を食はざれ』弟子たち之を聞けり。 |
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一四 そこで、イエスはその木にむかって、「今から後いつまでも、おまえの実を食べる者がないように」と言われた。弟子たちはこれを聞いていた。 |
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十五 彼等エルサレムに至りイエス殿に入てその中にをる賣買する者を殿より逐出し兌銀者の案、鴒を鬻者の椅子を倒し |
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一五 彼らエルサレムに到る。イエス宮に入り、その內にて賣買する者どもを逐ひ出し、兩替する者の臺、鴒を賣るものの腰掛を倒し、 |
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一五 それから、彼らはエルサレムにきた。イエスは宮に入り、宮の庭で売り買いしていた人々を追い出しはじめ、両替人の台や、はとを売る者の腰掛をくつがえし、 |
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十六 かつ器具を以て殿を過ることを許さず |
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一六 また器物を持ちて宮の內を過ぐることを免し給はず。 |
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一六 また器ものを持って宮の庭を通り抜けるのをお許しにならなかった。 |
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十七 また彼等に諭て曰けるは我室は萬國の人の祈禱の室と稱らるべしと錄されたるに非や然るに爾曹は之を盜賊の巢と爲り |
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一七 かつヘへて言ひ給ふ『わが家は、もろもろの國人の祈の家と稱へらるべし」と錄されたるにあらずや、然るに汝らは之を「强盜の巢」となせり』 |
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一七 そして、彼らに教えて言われた、「『わたしの家は、すべての国民の祈の家ととなえらるべきである』と書いてあるではないか。それだのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしてしまった」。 |
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十八 學者と祭司の長これを聞て如何してかイエスを喪さんと謀しが彼を懼たり蓋人々みな其教に駭きたれば也 |
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一八 祭司長・學者ら之を聞き、如何にしてかイエスを亡さんと謀る、それは群衆みな其のヘに驚きたれば、彼を懼れしなり。 |
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一八 祭司長、律法学者たちはこれを聞いて、どうかしてイエスを殺そうと計った。彼らは、群衆がみなその教に感動していたので、イエスを恐れていたからである。 |
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十九 日くれてイエス城邑を出行り |
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一九 夕になる每に、イエス弟子たちと共にキを出でゆき給ふ。 |
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一九 夕方になると、イエスと弟子たちとは、いつものように都の外に出て行った。 |
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二十 翌朝かれら無花果の樹を過る時その根より盡く枯たるを見る |
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二〇 彼ら朝早く路をすぎしに、無花果の樹の根より枯れたるを見る。 |
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二〇 朝はやく道をとおっていると、彼らは先のいちじくが根元から枯れているのを見た。 |
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二一 ペテロ憶出てイエスに曰けるはラビ見よ詛し所の無花果樹は枯たり |
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二一 ペテロ思ひ出して、イエスに言ふ『ラビ見給へ、詛ひ給ひし無花果の樹は枯れたり』 |
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二一 そこで、ペテロは思い出してイエスに言った、「先生、ごらんなさい。あなたがのろわれたいちじくが、枯れています」。 |
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二二 イエス答て彼等に曰けるは~を信ぜよ |
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二二 イエス答へて言ひ給ふ『~を信ぜよ。 |
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二二 イエスは答えて言われた、「神を信じなさい。 |
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二三 誠に我なんぢらに告ん誰にても其心に疑ふ事なく其いふ所の言は必ず成べしと信じ此山に移て海に入といはゞ其言の如く成べし |
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二三 誠に汝らに吿ぐ、人もし此の山に「移りて海に入れ」と言ふとも、其の言ふところ必ず成るべしと信じて、心に疑はずば、その如く成るべし。 |
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二三 よく聞いておくがよい。だれでもこの山に、動き出して、海の中にはいれと言い、その言ったことは必ず成ると、心に疑わないで信じるなら、そのとおりに成るであろう。 |
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二四 是故に我なんぢちに告ん凡そ祈禱の時その求ふ所のものは必ず得べしと信ぜば必ず得べし |
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二四 この故に汝らに吿ぐ、凡て祈りて願ふ事は、すでに得たりと信ぜよ、然らば得べし。 |
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二四 そこで、あなたがたに言うが、なんでも祈り求めることは、すでにかなえられたと信じなさい。そうすれば、そのとおりになるであろう。 |
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二五 又なんぢら立て祈禱する時もし人を憾こと有ば之を免せ葢天に在す爾曹の父に爾曹も亦その過を免されん爲なり |
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二五 また立ちて祈るとき、人を怨むる事あらば免せ、これは天に在す汝らの父の、汝らの過失を免し給はん爲なり』 |
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二五 また立って祈るとき、だれかに対して、何か恨み事があるならば、ゆるしてやりなさい。そうすれば、天にいますあなたがたの父も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださるであろう。 |
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二六 もし爾曹免さずば天に在す爾曹の父も亦なんぢらの過を免し給はじ |
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二六 |
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二六 〔もしゆるさないならば、天にいますあなたがたの父も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださらないであろう〕」。 |
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二七 彼等またエルサレムに至りイエス殿を行るとき祭司の長學者および長老等きたりて |
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二七 かれら又エルサレムに到る。イエス宮の內を歩み給ふとき、祭司長・學者・長老たち御許に來りてに、 |
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二七 彼らはまたエルサレムにきた。そして、イエスが宮の内を歩いておられると、祭司長、律法学者、長老たちが、みもとにきて言った、 |
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二八 彼に曰けるは何の權威を以て此事を行や誰が此事を行べき爲に爾に此權威を與しや |
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二八 『何の權威をもて此等の事をなすか、誰が此等の事を爲すべき權威を授けしか』と言ふ。 |
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二八 「何の権威によってこれらの事をするのですか。だれが、そうする権威を授けたのですか」。 |
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二九 イエス答て彼等に曰けるは我も一言なんぢらに問ん我に答よ然ば我なんぢらに何の權威を以て之を行といふ事を告べし |
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二九 イエス言ひ給ふ『われ一言、なんぢらに問はん、答へよ、然らば我も何の權威をもて、此等の事を爲すかを吿げん。 |
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二九 そこで、イエスは彼らに言われた、「一つだけ尋ねよう。それに答えてほしい。そうしたら、何の権威によって、わたしがこれらの事をするのか、あなたがたに言おう。 |
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三十 ヨハネのバプテスマは天よりか人よりか我に答よ |
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三〇 ヨハネのバプテスマは、天よりか、人よりか、我に答へよ』 |
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三〇 ヨハネのバプテスマは天からであったか、人からであったか、答えなさい」。 |
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三一 彼等たがひに論じ曰けるは若し天よりと云ば然ば何故かれを信ぜざるかと曰ん |
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三一 彼ら互に論じて言ふ『もし天よりと言はば「何故かれを信ぜざりし」と言はん。 |
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三一 すると、彼らは互に論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。 |
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三二 もし人よりと云ば彼等民を懼たる也蓋民みなヨハネを預言者と爲に因 |
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三二 然れど人よりと言はんか……』彼ら群衆を恐れたり、人みなヨハネを實に預言者と認めたればなり。 |
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三二 しかし、人からだと言えば……」。彼らは群衆を恐れていた。人々が皆、ヨハネを預言者だとほんとうに思っていたからである。 |
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三三 遂に答て知ずと曰イエス答て曰けるは我も何の權威を以て之を行か爾曹に語じ |
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三三 遂にイエスに答へて『知らず』と言ふ。イエス言ひ給ふ『われも何の權威をもて此等の事を爲すか、汝らに吿げじ』 |
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三三 それで彼らは「わたしたちにはわかりません」と答えた。するとイエスは言われた、「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言うまい」。 |
馬可傳iケ書 |
第十二章 |
一 イエス譬をもて彼等に語れり或人葡萄園を樹り籬を環し酒榨をほり塔をたて農夫に租與て他の國へ往しが |
マルコ傳iケ書 |
第一二章 |
一 イエス譬をもて彼らに語り出で給ふ『ある人、葡萄園を造り、籬を環らし、酒槽の穴を掘り、櫓をたて、農夫どもに貸して、遠く旅立せり。 |
マルコによる福音書 |
第一二章 |
一 そこでイエスは譬で彼らに語り出された、「ある人がぶどう園を造り、垣をめぐらし、また酒ぶねの穴を掘り、やぐらを立て、それを農夫たちに貸して、旅に出かけた。 |
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二 期いたりければ葡萄園の果を収取ん爲に僕を農夫の所に遣しけるに |
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二 時いたりて農夫より葡萄園の所得を受取らんとて、僕をその許に遣ししに、 |
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二 季節になったので、農夫たちのところへ、ひとりの僕を送って、ぶどう園の収穫の分け前を取り立てさせようとした。 |
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三 農夫等これを執へ打撲きて徒く返しめたり |
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三 彼ら之を執へて打ちたたき、空手にて歸らしめたり。 |
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三 すると、彼らはその僕をつかまえて、袋だだきにし、から手で帰らせた。 |
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四 また他の僕を彼等に遣しゝに農夫等これを石にてうら首に傷つけ辱しめて返しむ |
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四 又ほかの僕を遣ししに、その首に傷つけ、かつ辱しめたり。 |
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四 また他の僕を送ったが、その頭をなぐって侮辱した。 |
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五 又ほかの者を遣しゝに之をも殺せり又ほかに多く遣しゝに或は撲あるひは殺しぬ |
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五 また他の者を遣ししに、之を殺したり。又ほかの多くの僕をも、或は打ち或は殺したり。 |
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五 そこでまた他の者を送ったが、今度はそれを殺してしまった。そのほか、なお大ぜいの者を送ったが、彼らを打ったり、殺したりした。 |
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六 爰に一人の愛子ありけるが此わが子は敬ふならんと曰て遂に其子を遣しゝに |
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六 なほ一人あり、即ち其の愛しむ子なり「わが子は敬ふならん」と言ひて、最後に之を遣ししに、 |
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六 ここに、もうひとりの者がいた。それは彼の愛子であった。自分の子は敬ってくれるだろうと思って、最後に彼をつかわした。 |
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七 農夫等たがひに曰けるは此は嗣子なり率これを殺きん然ば産業は我儕の有とならん |
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七 かの農夫ども互に言ふ「これは世嗣なり、いざ之を殺さん、然らばその嗣業は、我らのものとなるべし」 |
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七 すると、農夫たちは『あれはあと取りだ。さあ、これを殺してしまおう。そうしたら、その財産はわれわれのものになるのだ』と話し合い、 |
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八 乃ち執へて之を殺し葡萄園の外に棄たり |
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八 乃ち執へて之を殺し、葡萄園の外に投げ棄てたり。 |
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八 彼をつかまえて殺し、ぶどう園の外に投げ捨てた。 |
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九 然ば葡萄園の主人なにを爲べきか彼きたりて農夫等を打滅し葡萄園を他の人に託ふべし |
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九 然らば葡萄園の主、なにを爲さんか、來りて農夫どもを亡ぼし、葡萄園を他の者どもに與ふべし。 |
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九 このぶどう園の主人は、どうするだろうか。彼は出てきて、農夫たちを殺し、ぶどう園を他の人々に与えるであろう。 |
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十 工匠の棄たる石は屋の隅の首石と成り |
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一〇 汝ら聖書に「造家者らの棄てたる石は、これぞ隅の首石となれる。 |
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一〇 あなたがたは、この聖書の句を読んだことがないのか。『家造りらの捨てた石が/隅のかしら石になった。 |
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十一 これ主の成たまへる事にして我儕の目に奇とする所なりと錄されしを未だ讀ざる乎 |
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一一 これ主によりて成れるにて、我らの目には奇しきなり」とある句をすら讀まぬか』 |
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一一 これは主がなされたことで、わたしたちの目には不思議に見える』」。 |
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十二 彼等この譬は己等を指て語れりと知イエスを執んとせしかども衆人を懼てイエスを去ゆけり |
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一二 ここに彼等イエスを執へんと思ひたれど、群衆を恐れたり、この譬の己らを指して言ひ給へるを悟りしに因る。遂にイエスを離れて去り往けり |
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一二 彼らはいまの譬が、自分たちに当てて語られたことを悟ったので、イエスを捕えようとしたが、群衆を恐れた。そしてイエスをそこに残して立ち去った。 |
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十三 彼等イエスを其言に由て陷いれんとしてパリサイの人とヘロデの黨の中より數人を遣せり |
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一三 かくて彼らイエスの言尾をとらへて陷入れん爲に、パリサイ人とヘロデ黨との中より、數人を御許に遣す。 |
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一三 さて、人々はパリサイ人やヘロデ党の者を数人、イエスのもとにつかわして、その言葉じりを捕えようとした。 |
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十四 遣されし者等イエスの所に來り曰けるは師よ爾は眞なる者なり又誰にも偏らざる事を我儕は知そは貌に依て人を取ず誠を以て~の道を教ればなり貢をカイザルに納るは宜や否われら納べきか納ざる可が |
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一四 その者ども來りて言ふ『師よ、我らは知る、汝は眞にして、誰をも憚りたまふ事なし、人の外貌を見ず、眞をもて~の道をヘへ給へばなり。我ら貢をカイザルに納むるは、宜きか、惡しきか、納めんか、納めざらんか』 |
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|
一四 彼らはきてイエスに言った、「先生、わたしたちはあなたが真実なかたで、だれをも、はばかられないことを知っています。あなたは人に分け隔てをなさらないで、真理に基いて神の道を教えてくださいます。ところで、カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか。納めるべきでしょうか、納めてはならないのでしょうか」。 |
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十五 イエスその實ならざるを知て彼等に曰けるは何ぞ我を試るやデナリを携來りて我に觀よ |
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一五 イエス其の詐僞なるを知りて『なんぞ我を試むるか、デナリを持ち來りて我に見せよ』と言ひ給へば、 |
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一五 イエスは彼らの偽善を見抜いて言われた、「なぜわたしをためそうとするのか。デナリを持ってきて見せなさい」。 |
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十六 かれら携來りければイエス彼等に曰けるは此像と號は誰か答てカイザルなりと曰 |
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一六 彼ら持ち來る。イエス言ひ給ふ『これは誰の像、たれの號なるか』『カイザルのなり』と答ふ。 |
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一六 彼らはそれを持ってきた。そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。彼らは「カイザルのです」と答えた。 |
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十七 イエス曰けるはカイザルの物はカイザルに歸し又~の物は~に歸すべし彼等これを奇とせり |
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一七 イエス言ひ給ふ『カイザルの物はカイザルに、~の物は~に納めよ』彼らイエスに就きて甚だ怪しめり。 |
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一七 するとイエスは言われた、「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。彼らはイエスに驚嘆した。 |
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十八 復生なしと曰をせるサドカイの人きたりてイエスに問けるは |
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一八 また復活なしと云ふサドカイ人ら、イエスに來り問ひて言ふ、 |
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一八 復活ということはないと主張していたサドカイ人たちが、イエスのもとにきて質問した、 |
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十九 師よ我儕にモーセが書遺るには人の兄弟もし子なくして妻を留し死ばその兄弟この妻を娶て兄弟の裔を立べしとまた然す |
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一九 『師よ、モーセは、人の兄弟もし子なく妻を遺して死なば、その兄弟、かれの妻を娶りて、兄弟のために嗣子を擧ぐべしと、我らに書き遺したり。 |
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一九 「先生、モーセは、わたしたちのためにこう書いています、『もし、ある人の兄が死んで、その残された妻に、子がない場合には、弟はこの女をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。 |
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二十 爰に七人の兄弟ありしが長子妻をめとり子なくして死 |
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二〇 爰に七人の兄弟ありて、兄、妻を娶り、嗣子なくして死に、 |
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二〇 ここに、七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子がなくて死に、 |
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二一 第二の者これを娶また子なくして死第三もまた然す |
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二一 第二の者その女を娶り、また嗣子なくして死に、第三の者もまた然なし、 |
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二一 次男がその女をめとって、また子をもうけずに死に、三男も同様でした。 |
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二二 七人みな之を娶たれど子なく終には此婦も死り |
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二二 七人とも嗣子なくして死に、終には其の女も死にたり。 |
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二二 こうして、七人ともみな子孫を残しませんでした。最後にその女も死にました。 |
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二三 復生の時かれら甦らば此婦は誰の妻と爲べきか蓋七人おなじく之を娶たれば也 |
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二三 復活のとき彼らみな甦へらんに、この女は誰の妻たるべきか、七人これを妻としたればなり』 |
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二三 復活のとき、彼らが皆よみがえった場合、この女はだれの妻なのでしょうか。七人とも彼女を妻にしたのですが」。 |
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|
二四 イエス答て彼等に曰けるは爾曹は聖書をも~の能をも知ざるに因て謬れるならず乎 |
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二四 イエス言ひ給ふ『なんぢらの誤れるは、聖書をも、~の能力をも、知らぬ故ならずや。 |
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二四 イエスは言われた、「あなたがたがそんな思い違いをしているのは、聖書も神の力も知らないからではないか。 |
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二五 それ死より甦る時は娶ず嫁がず天にある使者等の如し |
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二五 人、死人の中より甦へる時は、娶らず、媳がず、天に在る御使たちの如くなるなり。 |
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二五 彼らが死人の中からよみがえるときには、めとったり、とついだりすることはない。彼らは天にいる御使のようなものである。 |
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二六 死し者の甦る事に就てはモーセの書棘中の篇に~かれに語て我はアブラハムの~イサクの~ヤコブの~なりと曰たまひしを爾曹讀ざる乎 |
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二六 死にたる者の甦へる事に就きては、モーセの書の中なる柴の條に、~モーセに「われはアブラハムの~、イサクの~、ヤコブの~なり」と吿げ給ひし事あるを、未だ讀まぬか。 |
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二六 死人がよみがえることについては、モーセの書の柴の篇で、神がモーセに仰せられた言葉を読んだことがないのか。『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』とあるではないか。 |
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二七 ~は死し者の~に非ず生る者の~なり爾曹大に謬れり |
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二七 ~は死にたる者の~にあらず、生ける者の~なり。なんぢら大に誤れり』 |
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二七 神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。あなたがたは非常な思い違いをしている」。 |
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二八 學者の一人彼等の議論を聞てイエスの善これに應しを知きたり彼に問けるはゥ誡のうち何れ首なる乎 |
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二八 學者の一人、かれらの論じをるを聞き、イエスの善く答へ給へるを知り、進み出でて問ふ『すべての誠命のうち、何か第一なる』 |
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二八 ひとりの律法学者がきて、彼らが互に論じ合っているのを聞き、またイエスが巧みに答えられたのを認めて、イエスに質問した、「すべてのいましめの中で、どれが第一のものですか」。 |
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二九 イエス彼に答けるはゥ誡の首はイスラエルよ聽け主なる我儕の~は即ち一の主なり |
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二九 イエス答へたまふ『第一は是なり「イスラエルよ聽け、主なる我らの~は唯一の主なり。 |
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二九 イエスは答えられた、「第一のいましめはこれである、『イスラエルよ、聞け。主なるわたしたちの神は、ただひとりの主である。 |
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三十 なんぢ心を盡し拐~を盡し意を盡し力を盡し主なる爾の~を愛すべし是誡の首なり |
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三〇 なんぢ心を盡し、拐~を盡し、思を盡し、力を盡して、主なる汝の~を愛すべし」 |
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三〇 心をつくし、精神をつくし、思いをつくし、力をつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。 |
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三一 第二も亦これに同じ己の如く爾の隣を愛すべし斯より大なる誡なし |
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三一 第二は是なり「おのれの如く汝の隣を愛すべし」此の二つより大なる誡命はなし』 |
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三一 第二はこれである、『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ』。これより大事ないましめは、ほかにない」。 |
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三二 學者イエスに曰けるは善かな師よ爾~は即ち一にして他に~なしと曰しは誠なり |
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三二 學者いふ『善きかな師よ「~は唯一にして他に~なし」と言ひ給へるは眞なり。 |
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三二 そこで、この律法学者はイエスに言った、「先生、仰せのとおりです、『神はひとりであって、そのほかに神はない』と言われたのは、ほんとうです。 |
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三三 また心を盡し智慧を盡し拐~を盡し力を盡して之を愛し又おのれの如く隣を愛するはゥの燔祭と禮物よりも愈なり |
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三三 「ことろを盡し、智慧を盡し、力を盡して~を愛し、また己のごとく隣を愛する」は、もろもろの燔祭および犧牲に勝るなり』 |
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三三 また『心をつくし、知恵をつくし、力をつくして神を愛し、また自分を愛するように隣り人を愛する』ということは、すべての燔祭や犠牲よりも、はるかに大事なことです」。 |
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三四 イエス彼が道理を知る答を見て之に曰けるは爾~の國より遠からず此のち敢てイエスに問者なかりき |
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三四 イエスその聰く答へしを見て言ひ給ふ、『なんぢ~の國に遠からず』此の後たれも敢てイエスに問ふ者なかりき。 |
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三四 イエスは、彼が適切な答をしたのを見て言われた、「あなたは神の国から遠くない」。それから後は、イエスにあえて問う者はなかった。 |
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三五 イエス殿に在て教誨を爲る時かれらに答て曰けるは何ぞ學者はキリストをダビデの裔といふ乎 |
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三五 イエス宮にてヘふるとき、答へて言ひ給ふ『なにゆゑ學者らはキリストをダビデの子と言ふか。 |
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三五 イエスが宮で教えておられたとき、こう言われた、「律法学者たちは、どうしてキリストをダビデの子だと言うのか。 |
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三六 夫ダビデ聖靈に感じて自いふ主わが主に曰けるは我なんぢの敵を爾の足凳となすまで我右に坐せよと |
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三六 ダビデ聖靈に感じて自らいへり「主わが主に言ひ給ふ、我なんぢの敵を汝の足の下に置くまでは、我が右に坐せよ」と。 |
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三六 ダビデ自身が聖霊に感じて言った、『主はわが主に仰せになった、あなたの敵をあなたの足もとに置くときまでは、わたしの右に座していなさい』。 |
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三七 如此ダビデ自ら彼を主と稱たり然ば如何で其裔ならんや多の人々喜びてイエスに聞ことを爲り |
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三七 ダビデ自ら彼を主と言ふ、されば爭でその子ならんや』大なる群衆は喜びてイエスに聽きたり。 |
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三七 このように、ダビデ自身がキリストを主と呼んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの子であろうか」。大ぜいの群衆は、喜んでイエスに耳を傾けていた。 |
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三八 イエス教をなせる時かれらに曰けるは長き衣服を衣てあるき市上にて人の問安 |
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三八 イエスそのヘのうちに言ひたまふ『學者らに心せよ、彼らは長き衣を著て歩むこと、市場にての敬禮、 |
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三八 イエスはその教の中で言われた、「律法学者に気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩くことや、広場であいさつされることや、 |
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三九 會堂の高坐筵の上座を好 |
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三九 會堂の上座、饗宴の上席を好み、 |
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三九 また会堂の上席、宴会の上座を好んでいる。 |
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四十 また嫠婦の家を呑いつはりて長き祈をする學者を謹防よ彼等の審判るること尤も重し |
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四〇 また寡婦らの家を呑み、外見をつくりて長き祈をなす。その受くる審判は更に嚴しからん』 |
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四〇 また、やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。彼らはもっときびしいさばきを受けるであろう」。 |
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四一 イエス賽錢の箱に對て坐し人々の錢を箱に入るを見たまひしに多の富者は多く投入たり |
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四一 イエス賽錢函に對ひて坐し、群衆の錢を賽錢函に投げ入るるを見給ふ。富める多くの者は、多く投げ入れしが、 |
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四一 イエスは、さいせん箱にむかってすわり、群衆がその箱に金を投げ入れる様子を見ておられた。多くの金持は、たくさんの金を投げ入れていた。 |
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四二 一人の貧き嫠婦きたりてレプタ二を投入る此は四厘ほどに直れり |
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四二 一人の貧しき寡婦きたりて、レプタ二つを投げ入れたり、即ち五厘ほどなり。 |
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四二 ところが、ひとりの貧しいやもめがきて、レプタ二つを入れた。それは一コドラントに当る。 |
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四三 イエスその弟子を召て彼等に曰けるは誠に我なんぢらに告ん箱に投入し凡の人々よりも此貧き嫠婦は多く投入たり |
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四三 イエス弟子たちを呼び寄せて言ひ給ふ『まことに汝らに吿ぐ、この貧しき寡婦は、賽錢函に投げ入るる凡ての人よりも多く投げ入れたり。 |
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四三 そこで、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、「よく聞きなさい。あの貧しいやもめは、さいせん箱に投げ入れている人たちの中で、だれよりもたくさん入れたのだ。 |
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四四 そは彼等は皆その餘れる所を以て入この婦はその不足ところより其すべての所有すなはち全業を盡く入たれば也 |
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四四 凡ての者は、その豐なる內よりなげ入れ、この寡婦は其の乏しき中より、凡ての所有、即ち己が生命の料をことごとく投げ入れたればなり』 |
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四四 みんなの者はありあまる中から投げ入れたが、あの婦人はその乏しい中から、あらゆる持ち物、その生活費全部を入れたからである」。 |
馬可傳iケ書 |
第十三章 |
一 イエス聖殿より出ければ一人の弟子かれに曰けるは師よ觀たまへ此石この殿宇いかに盛んならず乎 |
マルコ傳iケ書 |
第一三章 |
一 イエス宮を出で給ふとき、弟子の一人いふ『師よ、見給へ、これらの石、これらの建造物、いかに盛ならずや』 |
マルコによる福音書 |
第一三章 |
一 イエスが宮から出て行かれるとき、弟子のひとりが言った、「先生、ごらんなさい。なんという見事な石、なんという立派な建物でしょう」。 |
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二 イエス答て曰けるは爾曹この大なる殿宇を見か一の石も石の上に圮れずしては遺じ |
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二 イエス言ひ給ふ『なんぢ此等の大なる建造物を見るか、一つの石も崩されずしては石の上に殘らじ』 |
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二 イエスは言われた、「あなたは、これらの大きな建物をながめているのか。その石一つでもくずされないままで、他の石の上に残ることもなくなるであろう」。 |
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三 イエス橄欖山にて殿に對ひ坐し給しにペテロ ヤコブ ヨハネ アンデレ竊に問けるは |
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三 オリブ山にて宮の方に對ひて坐し給へるに、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレ窃に問ふ、 |
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三 またオリブ山で、宮にむかってすわっておられると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、ひそかにお尋ねした。 |
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四 何の時此事あるや又すべて此事の成ん時は如何なる兆あるや我儕に告たまへ |
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四 『われらに吿げ給へ、これらの事は何時あるか、又すべて此等の事の成し遂げられんとする時は、如何なる兆あるか』 |
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四 「わたしたちにお話しください。いつ、そんなことが起るのでしょうか。またそんなことがことごとく成就するような場合には、どんな前兆がありますか」。 |
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五 イエス答て彼等に曰けるは人に欺かれざるやう愼めよ |
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五 イエス語り出で給ふ『なんぢら人に惑されぬやうに心せよ。 |
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五 そこで、イエスは話しはじめられた、「人に惑わされないように気をつけなさい。 |
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六 蓋おほくの人わが名を冐來り我はキリストなりと曰て多の人を欺くべし |
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六 多くの者わが名を冐し來り「われは夫なり」と言ひて多くの人を惑さん。 |
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六 多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がそれだと言って、多くの人を惑わすであろう。 |
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七 爾曹戰と戰の風聲を聞とき懼るゝ勿れ是等の事はみな有べきなり然ども未期は未だ至らず |
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七 戰爭と戰爭の噂とを聞くとき懼るな、斯る事はあるべきなり。然れど未だ終にはあらず。 |
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七 また、戦争と戦争のうわさとを聞くときにも、あわてるな。それは起らねばならないが、まだ終りではない。 |
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八 民は起て民をせめ國は國を攻また隨在に地震あり饑饉、變亂あり是等は苦難の始なり |
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八 即ち「民は民に、國は國に逆ひて起たん」また處々に地震あり、饑饉あらん、これらは產の苦難の始なり。 |
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八 民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。またあちこちに地震があり、またききんが起るであろう。これらは産みの苦しみの初めである。 |
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九 爾曹みづから愼めよ蓋なんぢら集議所に付され又會堂にて撻たれ且證を爲んため我事に因て侯および王の前に曳立らるべし |
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九 汝等みづから心せよ、人々なんぢらを衆議所に付さん。なんぢら會堂に曳かれて打たれ、且わが故によりて、司たち及び王たちの前に立てられん、これは證をなさん爲なり。 |
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九 あなたがたは自分で気をつけていなさい。あなたがたは、わたしのために、衆議所に引きわたされ、会堂で打たれ、長官たちや王たちの前に立たされ、彼らに対してあかしをさせられるであろう。 |
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十 而して音はまづ萬民に宣傳ざるを得ず |
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一〇 斯て音は先もろもろの國人に宣傳へらるべし。 |
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一〇 こうして、福音はまずすべての民に宣べ伝えられねばならない。 |
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十一 人なんぢらを曳解さば以前より何を言んと慮また思煩ふ勿れ惟なんぢら其とき賜ふ所の言を曰べし蓋ものいふ者は爾曹に非ず聖靈なり |
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一一 人々なんぢらを曳きて付さんとき、何を言はんと預じめ思ひ煩ふな、唯そのとき授けらるることを言へ、これ言ふ者は汝等にあらず聖靈なり。 |
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一一 そして、人々があなたがたを連れて行って引きわたすとき、何を言おうかと、前もって心配するな。その場合、自分に示されることを語るがよい。語る者はあなたがた自身ではなくて、聖霊である。 |
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十二 兄弟は兄弟を死に付し父は子を付し亦子はその父母に逆ひて之を死しめ |
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一二 兄弟は兄弟を、父は子を死にわたし、子らは親たちに逆ひ立ちて死なしめん。 |
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一二 また兄弟は兄弟を、父は子を殺すために渡し、子は両親に逆らって立ち、彼らを殺させるであろう。 |
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十三 又なんぢらは我名に緣て凡の人に憎るべし然ど終まで忍ぶ者は救るゝことを得ん |
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一三 又なんぢら我が名の故に凡ての人に憎まれん、然れど終まで耐へ忍ぶ者は救はるべし。 |
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一三 また、あなたがたはわたしの名のゆえに、すべての人に憎まれるであろう。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。 |
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十四 預言者ダニエルが言し所の殘暴にくむ可ものゝ立べからざる所に立を見ば(讀者よく思べし)其時ユダヤにをる者は山に避れよ |
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一四 「荒す惡むべき者」の立つべからざる所に立つを見ば(讀むもの悟れ〕その時ユダヤにをる者どもは、山に遁れよ。 |
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一四 荒らす憎むべきものが、立ってはならぬ所に立つのを見たならば(読者よ、悟れ)、そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。 |
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十五 屋上にをる者は室に下る勿れ又物を取んとて其家に入なかれ |
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一五 屋の上にをる者は、內に下るな。また家の物を取り出さんとて內に入るな。 |
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一五 屋上にいる者は、下におりるな。また家から物を取り出そうとして内にはいるな。 |
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十六 田にをる者は其衣服を取んとて歸る勿れ |
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一六 畑にをる者は上衣を取らんとて歸るな。 |
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一六 畑にいる者は、上着を取りにあとへもどるな。 |
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十七 其日には孕る者と乳を哺する婦は禍なる哉 |
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一七 其の日には孕りたる女と、乳を哺する女とは禍害なるかな。 |
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一七 その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。 |
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十八 なんぢら冬にぐることを免れん爲に祈れ |
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一八 この事の、冬おこらぬやうに祈れ、 |
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一八 この事が冬おこらぬように祈れ。 |
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十九 其日に患難あらん此の如き患難は~の物を創造たまひし開闢より今に至るまで有ざりき亦後にも有じ |
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一九 その日は患難の日なればなり。~の萬物を造り給ひし開闢より今に至るまで、斯る患難はなく、また後にもなからん。 |
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一九 その日には、神が万物を造られた創造の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような患難が起るからである。 |
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二十 もし主その日を喊少し給すば一人だに頼るゝ老なし然ど主の選たまへる所の選れし者の爲に其日を减少し給ふべし |
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二〇 主その日を少くし給はずば、救はるる者、一人だになからん。然れど其の選び給ひし選民の爲に、その日を少くし給へり。 |
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二〇 もし主がその期間を縮めてくださらないなら、救われる者はひとりもないであろう。しかし、選ばれた選民のために、その期間を縮めてくださったのである。 |
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二一 其時もしキリスト此にあり彼に在と爾曹にいふ者あるとも信ずる勿れ |
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二一 其の時なんぢらに「視よ、キリスト此處にあり」「視よ、彼處にあり」と言ふ者ありとも信ずな。 |
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二一 そのとき、だれかがあなたがたに『見よ、ここにキリストがいる』、『見よ、あそこにいる』と言っても、それを信じるな。 |
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二二 そは僞キリスト僞預言者おこりて休徵と奇能を行ひ選れたる者をも欺くことを得ば欺くべければ也 |
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二二 僞キリスト・僞預言者ら起りて、徵と不思議とを行ひ、爲し得べくば、選民をも惑さんとするなり。 |
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二二 にせキリストたちや、にせ預言者たちが起って、しるしと奇跡とを行い、できれば、選民をも惑わそうとするであろう。 |
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二三 なんぢら愼よ我預じめ爾曹に盡く之を告 |
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二三 汝らは心せよ、預じめ之を皆なんぢらに吿げおくなり。 |
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二三 だから、気をつけていなさい。いっさいの事を、あなたがたに前もって言っておく。 |
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二四 厥時この患難のゝち日は晦く月は光を失ひ |
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二四 其の時、その患難ののち、日は暗く、月は光を發たず。 |
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二四 その日には、この患難の後、日は暗くなり、月はその光を放つことをやめ、 |
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二五 天の星はおち天の勢ひ震ふべし |
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二五 星は空より隕ち、天にある萬象、震ひ動かん。 |
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二五 星は空から落ち、天体は揺り動かされるであろう。 |
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二六 其とき人々は人の子の大なる權威と榮光を以て雲の中に現れ來るを見ん |
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二六 其のとき人々、人の子の大なる能力と榮光とをもて、雲に乘り來るを見ん。 |
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二六 そのとき、大いなる力と栄光とをもって、人の子が雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。 |
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二七 また其とき人の子その使者等を遣して地の極より天の極まで四方より其選れし者を集むべし |
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二七 その時かれは使者たちを遣して、地の極より天の極まで、四方より、其の選民をあつめん。 |
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二七 そのとき、彼は御使たちをつかわして、地のはてから天のはてまで、四方からその選民を呼び集めるであろう。 |
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二八 夫なんぢら無花果樹に由て譬を學その枝すでに柔かにして葉めぐめば夏の近を知 |
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二八 無花果の樹よりの譬を學べ、その枝すでに柔かくなりて葉芽めば、夏の近きを知る。 |
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二八 いちじくの木からこの譬を学びなさい。その枝が柔らかになり、葉が出るようになると、夏の近いことがわかる。 |
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二九 此の如く爾曹も凡て是等の事を見ば時ちかく門口に至ると知 |
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二九 斯のごとく此等のことの起るを見ば、人の子すでに近づきて門邊にいたるを知れ。 |
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二九 そのように、これらの事が起るのを見たならば、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。 |
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三十 われ誠に爾曹に告ん是等の事ことごとく成までは此民は逝ざるべし |
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三〇 誠に汝らに吿ぐ、これらの事ことごとく成るまで、今の代は過ぎ逝くことなし。 |
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三〇 よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起るまでは、この時代は滅びることがない。 |
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三一 天地は廢ん然ど我言は廢じ |
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三一 天地は過ぎゆかん、然れど我が言は過ぎ逝くことなし。 |
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三一 天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は滅びることがない。 |
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三二 其日その時を知者は惟わが父のみなり天にある使者も子も誰も知者なし |
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三二 その日その時を知る者なし。天にある使者たちも知らず、子も知らず、ただ父のみ知り給ふ。 |
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三二 その日、その時は、だれも知らない。天にいる御使たちも、また子も知らない、ただ父だけが知っておられる。 |
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三三 此日いづれの時きたる乎を知ざれば爾曹つゝしみて目を醒し祈禱せよ |
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三三 心して目を覺しをれ、汝等その時の何時なるかを知らぬ故なり。 |
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三三 気をつけて、目をさましていなさい。その時がいつであるか、あなたがたにはわからないからである。 |
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三四 それ人の子は遠行せんとして其權を僕等に委ね各に爲べき事を任け又閽者に怠らず守れと命じて家をさる人の如し |
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三四 例へば家を出づる時その僕どもに權を委ねて、各自の務を定め、更に門守に、目を覺しをれと、命じ置きて遠く旅立したる人のごとし。 |
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三四 それはちょうど、旅に立つ人が家を出るに当り、その僕たちに、それぞれ仕事を割り当てて責任をもたせ、門番には目をさましておれと、命じるようなものである。 |
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三五 是故に爾曹も怠らずして守れ蓋家の主人あるひは夕あるひは夜半あるひは鷄鳴時あるひは早晨に歸るかを知ざれば也 |
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三五 この故に目を覺しをれ、家の主人の歸るは、夕か、夜半か、鷄鳴くころか、夜明か、いづれの時なるかを知らねばなり。 |
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三五 だから、目をさましていなさい。いつ、家の主人が帰って来るのか、夕方か、夜中か、にわとりの鳴くころか、明け方か、わからないからである。 |
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三六 恐くは不意の時きたりて爾曹が眠るを見ん |
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三六 恐らくは俄に歸りて、汝らの眠れるを見ん。 |
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三六 あるいは急に帰ってきて、あなたがたの眠っているところを見つけるかも知れない。 |
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三七 われ怠らずして守れと爾曹に告るは即ち凡の人に告るなり |
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三七 わが汝らに吿ぐるは、凡ての人に吿ぐるなり。目を覺しをれ』 |
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三七 目をさましていなさい。わたしがあなたがたに言うこの言葉は、すべての人々に言うのである」。 |
馬可傳iケ書 |
十四章 |
一 さて逾越即ち除酵節の二日前に祭司の長と學者たち詭計を以てイエスを執へ殺さんとし |
マルコ傳iケ書 |
第一四章 |
一 さて過越と除酵との祭の二日前となりぬ。祭司長・學者ら詭計をもてイエスを捕へ、かつ殺さんと企てて言ふ、 |
マルコによる福音書 |
第一四章 |
一 さて、過越と除酵との祭の二日前になった。祭司長たちや律法学者たちは、策略をもってイエスを捕えたうえ、なんとかして殺そうと計っていた。 |
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二 曰けるは祭の日には爲べからず恐くは民の中に亂起らん |
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二 『祭の間は爲すべからず、恐らくは民の亂あるべし』 |
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二 彼らは、「祭の間はいけない。民衆が騒ぎを起すかも知れない」と言っていた。 |
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三 イエスベタニヤの癩病人シモンの家にて食し居たまへる時ある婦蠟石の盒に價貴きナルドの香膏を盛て携來り其盒を裂りイエスの頭に膏を沃たり |
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三 イエス、ベタニヤに在して、癩病人シモンの家にて食事の席につき居給ふとき、或女、價高き混なきナルドの香油の入りたる石膏の壺を持ち來り、その壺を毀ちてイエスの首に注ぎたり。 |
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三 イエスがベタニヤで、重い皮膚病の人シモンの家にいて、食卓についておられたとき、ひとりの女が、非常に高価で純粋なナルドの香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、それをこわし、香油をイエスの頭に注ぎかけた。 |
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四 或人々互に怒を含いひけるは此膏を糜すは何故ぞや |
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四 ある人々、憤ほりて互に言ふ『なに故かく濫に油を費すか、 |
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四 すると、ある人々が憤って互に言った、「なんのために香油をこんなにむだにするのか。 |
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五 之を鬻ば三百有奇のデナリを得て貧者に施すことを得んと此婦を言咎む |
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五 この油を三百デナリ餘に賣りて、貧しき者に施すことを得たりしものを』而して甚く女を咎む。 |
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五 この香油を三百デナリ以上にでも売って、貧しい人たちに施すことができたのに」。そして女をきびしくとがめた。 |
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六 イエス曰けるは彼に係る勿れ何ぞ此婦を擾すや我に善事を行へる也 |
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六 イエス言ひ給ふ『その爲すに任せよ、何ぞこの女を惱ますか、我に善き事をなせり。 |
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六 するとイエスは言われた、「するままにさせておきなさい。なぜ女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。 |
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七 貧者は常に爾曹と偕に在ば爾曹意に隨せて彼等を濟ることを得べし我は常に爾曹と偕に在ず |
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七 貧しき者は、常に汝らと偕にをれば、何時にても心のままに助け得べし、然れど我は常に汝らと偕にをらず。 |
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七 貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるから、したいときにはいつでも、よい事をしてやれる。しかし、わたしはあなたがたといつも一緒にいるわけではない。 |
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八 此婦は力を盡して作り蓋あらかじめ我を葬る爲わが身に膏を沃しなり |
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八 此の女は、なし得る限をなして、我が體に香油をそそぎ、預じめ葬りの備をなせり。 |
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八 この女はできる限りの事をしたのだ。すなわち、わたしのからだに油を注いで、あらかじめ葬りの用意をしてくれたのである。 |
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九 我まことに爾曹に吿ん天の下いづくにても此音を宣傳らるゝ處には此婦の行し事も亦その記念の爲にに言傳らるべし |
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九 誠に汝らに吿ぐ、全世界、何處にても、音の宣傳へらるる處には、この女の爲しし事も記念として語らるべし』 |
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九 よく聞きなさい。全世界のどこででも、福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」。 |
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十 さて十二の一人なるイスカリオテのユダ イエスを付さんとて祭司の長に往しに |
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一〇 爰に十二弟子の一人なるイスカリオテのユダ、イエスを賣らんとて祭司長らの許にゆく。 |
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一〇 ときに、十二弟子のひとりイスカリオテのユダは、イエスを祭司長たちに引きわたそうとして、彼らの所へ行った。 |
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十一 彼等これを聞てスび銀子を予んと約せしかばユダはイエスを付さんと機を窺へり |
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一一 彼等これを聞きて喜び、銀を與へんと約したれば、ユダ如何してか機好くイエスを付さんと謀る。 |
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一一 彼らはこれを聞いて喜び、金を与えることを約束した。そこでユダは、どうかしてイエスを引きわたそうと、機会をねらっていた。 |
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十二 除酵節の首の日すなはち逾越の羔を殺すべき日弟子イエスに曰けるは逾越の食を何處へ往て我儕備ふべき乎 |
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一二 除酵祭の初の日、即ち過越の羔羊を屠るべき日、弟子たちイエスに言ふ『過越の食をなし給ふために、我らが何處に往きて備ふることを望み給ふか』 |
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一二 除酵祭の第一日、すなわち過越の小羊をほふる日に、弟子たちがイエスに尋ねた、「わたしたちは、過越の食事をなさる用意を、どこへ行ってしたらよいでしょうか」。 |
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十三 イエス二人の弟子を遣さんとして之に曰けるは京城に往さらば水を盛たる瓶を挈る人に遇べし之に從へ |
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一三 イエス二人の弟子を遣さんとして言ひたまふ『キに往け、然らば水をいれたる瓶を持つ人、なんぢらに遇ふべし。之に從ひ往き、 |
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一三 そこで、イエスはふたりの弟子を使いに出して言われた、「市内に行くと、水がめを持っている男に出会うであろう。その人について行きなさい。 |
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十四 その入ところの家の主人に師いふ我弟子と偕に逾越を食すべき客房は安に在やと曰 |
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一四 その入る所の家主に「師いふ、われ弟子らと共に過越の食を爲すべき座敷は何處なるか」と言へ。 |
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一四 そして、その人がはいって行く家の主人に言いなさい、『弟子たちと一緒に過越の食事をする座敷はどこか、と先生が言っておられます』。 |
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十五 然れば彼陳設たる大なる樓房を爾曹に示べし我儕の爲に其處に備よ |
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一五 然らば調へ備へたる大なる二階座敷を見すべし。其處に我らのために備へよ』 |
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一五 するとその主人は、席を整えて用意された二階の広間を見せてくれるから、そこにわたしたちのために用意をしなさい」。 |
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十六 弟子ゆさて京城に入しにイエスの曰たまへる如く遇しかば逾越の備をなせり |
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一六 弟子たち出で往きてキに入り、イエスの言ひ給ひし如くなるを見て過越の設備をなせり |
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一六 弟子たちは出かけて市内に行って見ると、イエスが言われたとおりであったので、過越の食事の用意をした。 |
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十七 日暮てイエス十二の弟子と偕に來れり |
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一七 日暮れてイエス十二弟子とともに往き、 |
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一七 夕方になって、イエスは十二弟子と一緒にそこに行かれた。 |
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十八 かれら席に就て食する時イエス曰けるは誠に我なんぢらに吿ん我と偕に食する爾曹のうち一人われを賣すべし |
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一八 みな席に就きて食するとき言ひ給ふ『まことに汝らに吿ぐ。我と共に食する汝らの中の一人、われを賣らん』 |
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一八 そして、一同が席について食事をしているとき言われた、「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたの中のひとりで、わたしと一緒に食事をしている者が、わたしを裏切ろうとしている」。 |
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十九 改等憂て各イエスに言出けるは我なる乎また他の一人も曰けるは我なる乎 |
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一九 弟子たち憂ひて一人一人『われなるか』と言ひ出でしに、 |
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一九 弟子たちは心配して、ひとりびとり「まさか、わたしではないでしょう」と言い出した。 |
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二十 イエス答て曰けるは十二の中の一人われと共に手を盂に着る者是なり |
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二〇 イエス言ひたまふ『十二のうちの一人にて我と共にパンを鉢に浸す者は夫なり。 |
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二〇 イエスは言われた、「十二人の中のひとりで、わたしと一緒に同じ鉢にパンをひたしている者が、それである。 |
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二一 人の子は己に就て錄されたる如く逝ん然ど人の子を賣す者は禍なる哉その人は生ざりしならば幸なりし爲ん |
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二一 實に人の子は己に就きて錄されたる如く逝くなり。然れど人の子を賣る者は禍害なるかな、その人は生れざりし方よがりしものを』 |
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二一 たしかに人の子は、自分について書いてあるとおりに去って行く。しかし、人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は生れなかった方が、彼のためによかったであろう」。 |
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二二 かわら食する時イエス パンを取て祝し之を擘かれらに予て曰けるは取て食へ此は我身なり |
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二二 彼ら食しをる時、イエス、パンを取り、祝してさき、弟子たちに與へて言ひたまふ『取れ、これは我が體なり』 |
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二二 一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「取れ、これはわたしのからだである」。 |
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二三 また杯を取て謝し彼等に予ければ皆この杯より飮り |
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二三 また酒杯を取り、謝して彼らに與へ給へば、皆この酒杯より飮めり。 |
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二三 また杯を取り、感謝して彼らに与えられると、一同はその杯から飲んだ。 |
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二四 イエス曰けるは此は新約の我血にして衆の人の爲に流す所のもの也 |
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二四 また言ひ給ふ『これは契約の我が血、おほくの人の爲に流す所のものなり。 |
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二四 イエスはまた言われた、「これは、多くの人のために流すわたしの契約の血である。 |
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二五 我まことに爾曹に告ん今よりのち新しきものを~の國にて飮ん日までは葡萄にて製るものを飮じ |
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二五 誠に汝らに吿ぐ、~の國にて新しきものを飮む日までは、われ葡萄の果より成るものを飮まじ』 |
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二五 あなたがたによく言っておく。神の国で新しく飲むその日までは、わたしは決して二度と、ぶどうの実から造ったものを飲むことをしない」。 |
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二六 彼等歌を詠て橄欖山に往り |
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二六 かれら讚美をうたひて後、オリブ山に出でゆく。 |
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二六 彼らは、さんびを歌った後、オリブ山へ出かけて行った。 |
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二七 イエス彼等に曰けるは今夜なんぢら皆われに就て礙かん蓋われ牧者を擊ん其とき綿羊散べしと錄されたれば也 |
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二七 イエス弟子たちに言ひ給ふ『なんぢら皆躓かん、それは「われ牧羊者を打たん、然らば羊、散るべし」と錄されたるなり。 |
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二七 そのとき、イエスは弟子たちに言われた、「あなたがたは皆、わたしにつまずくであろう。『わたしは羊飼を打つ。そして、羊は散らされるであろう』と書いてあるからである。 |
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二八 然ど我よみがへりて後なんぢらに先ちガリラヤに往べし |
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二八 然れど我よみがへりて後、なんぢらに先だちてガリラヤに往かん』 |
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二八 しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先にガリラヤへ行くであろう」。 |
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二九 ペテロ イエスに曰けるは假令みな礙くとも我は然らず |
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二九 時にペテロ、イエスに言ふ『假令みな躓くとも我は然らじ』 |
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二九 するとペテロはイエスに言った、「たとい、みんなの者がつまずいても、わたしはつまずきません」。 |
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三十 イエス彼に曰けるは我まことに爾に告ん今日この夜鷄二次鳴まへに爾三次われを知ずと曰ん |
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三〇 イエス言ひ給ふ『まことに汝に吿ぐ、今日この夜、鷄ふたたび鳴く前に、なんぢ三たび我を否むべし』 |
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三〇 イエスは言われた、「あなたによく言っておく。きょう、今夜、にわとりが二度鳴く前に、そう言うあなたが、三度わたしを知らないと言うだろう」。 |
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三一 彼また力言いひけるは我は爾と偕に死るとも爾を知ずと曰じ弟子みな如此いへり |
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三一 ペテロ力をこめて言ふ『われ汝とともに死ぬべき事ありとも汝を否まず』弟子たち皆かく言へり。 |
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三一 ペテロは力をこめて言った、「たといあなたと一緒に死なねばならなくなっても、あなたを知らないなどとは、決して申しません」。みんなの者もまた、同じようなことを言った。 |
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三二 斯て彼等ゲツセマネといふ所に至りイエスその第子に曰けるは祈る間こゝに坐せよ |
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三二 彼らゲツセマネと名づくる處に到りし時、イエス弟子たちに言ひ給ふ『わが祈る間、ここに坐せよ』 |
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三二 さて、一同はゲツセマネという所にきた。そしてイエスは弟子たちに言われた、「わたしが祈っている間、ここにすわっていなさい」。 |
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三三 遂にペテロ ヤコブ ヨハネを伴ひゆき甚しく憂へ哀を催し |
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三三 斯てペテロ、ヤコブ、ヨハネを件ひゆき、甚く驚き、かつ悲しみ出でて言ひ給ふ、 |
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三三 そしてペテロ、ヤコブ、ヨハネを一緒に連れて行かれたが、恐れおののき、また悩みはじめて、彼らに言われた、 |
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三四 彼等に曰けるは我心いたく憂て死ばかりなり爾曹こゝに待て目を醒し居 |
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三四 『わが心いたく憂ひて死ぬばかりなり、汝ら此處に留りて目を覺しをれ』 |
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三四 「わたしは悲しみのあまり死ぬほどである。ここに待っていて、目をさましていなさい」。 |
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三五 イエス少し進行て地にふし祈り曰けるは若かなはゞ此時を去しめ給へ |
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三五 少し進みゆきて、地に平伏し、若しも得べくば此の時の己より過ぎ往かんことを祈りて言ひ給ふ、 |
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三五 そして少し進んで行き、地にひれ伏し、もしできることなら、この時を過ぎ去らせてくださるようにと祈りつづけ、そして言われた、 |
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三六 また曰けるはアバ父よ爾に於ては凡の事能ざるなし此杯を我より取たまへ然ざ我が欲ふ所を成んとするに非ず爾が欲ふ所に任せ給へ |
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三六 『アバ父よ父には能はぬ事なし、此の酒杯を我より取り去り給へ。されど我が意のままを成さんとにあらず、御意のままを成し給へ』 |
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三六 「アバ、父よ、あなたには、できないことはありません。どうか、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの思いではなく、みこころのままになさってください」。 |
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三七 イエス來りて彼等の寢たるを見ペテロに曰けるはシモンなんぢ寢たるか一時も目を醒し居こと能ざる乎 |
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三七 來りて、その眠れるを見、ペテロに言ひ給ふ『シモンよ、なんぢ眠るか、一時も目を覺しをること能はぬか。 |
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三七 それから、きてごらんになると、弟子たちが眠っていたので、ペテロに言われた、「シモンよ、眠っているのか、ひと時も目をさましていることができなかったのか。 |
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三八 誘惑に入ぬやう目を醒かつ祈その心~は願なれど肉體よわき也 |
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三八 なんぢら誘惑に陷らぬやう目を覺し、かつ祈れ。實に心は熱すれども肉體よわきなり』 |
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三八 誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。心は熱しているが、肉体が弱いのである」。 |
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三九 復ゆきて同言を曰て祈れり |
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三九 再びゆき、同じ言にて祈り給ふ。 |
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三九 また離れて行って同じ言葉で祈られた。 |
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四十 返りて復彼らの寢たるを見る此は彼等その目倦たるなりイエスに何と對ふ可やを知ざりき |
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四〇 また來りて彼らの眠れるを見たまふ、是その目、いたく疲れたるなり、彼ら何と答ふべきかを知らざりき。 |
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四〇 またきてごらんになると、彼らはまだ眠っていた。その目が重くなっていたのである。そして、彼らはどうお答えしてよいか、わからなかった。 |
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四一 三次きたりて彼等に曰けるは今は寢て安め充分なり時いたれり人の子は罪人の手に賣さるゝ也 |
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四一 三度來りて言ひたまふ『今は眠りて休め、足れり、時きたれり。視よ、人の子は罪人らの手に付さるるなり。 |
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四一 三度目にきて言われた、「まだ眠っているのか、休んでいるのか。もうそれでよかろう。時がきた。見よ、人の子は罪人らの手に渡されるのだ。 |
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四二 起よ我儕ゆくべし我を賣す者近けり |
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四二 起て、われら往くべし。視よ、我を賣る者ちかづけり』 |
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四二 立て、さあ行こう。見よ。わたしを裏切る者が近づいてきた」。 |
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四三 斯いへる時たゞちに十二の一人なるユダ刃と棒とを携たる多の人々と共に祭司の長學者及び長老の所より來る |
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四三 なは語りゐ給ふほどに、十二弟子の一人なるユダ、やがて近づき來る、祭司長・學者・長老らより遣されたる群衆、劒と棒とを持ちて之に伴ふ。 |
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四三 そしてすぐ、イエスがまだ話しておられるうちに、十二弟子のひとりのユダが進みよってきた。また祭司長、律法学者、長老たちから送られた群衆も、剣と棒とを持って彼についてきた。 |
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四四 イエスを賣者かれらに號をなして曰けるは我が接吻する者は其なり之を執て愼と曳去よ |
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四四 イエスを賣るもの、預じめ合圖を示して言ふ『わが接吻する者はそれなり、之を捕へて確と引きゆけ』 |
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四四 イエスを裏切る者は、あらかじめ彼らに合図をしておいた、「わたしの接吻する者が、その人だ。その人をつかまえて、まちがいなく引っぱって行け」。 |
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四五 即ち來りてイエスに近よりラビ、ラビと曰て接吻せり |
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四五 斯て來りて直ちに御許に往き『ラビ』と言ひて接吻したれば、 |
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四五 彼は来るとすぐ、イエスに近寄り、「先生」と言って接吻した。 |
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四六 人々手をイエスに措て執ふ |
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四六 人々イエスに手をかけて捕ふ。 |
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四六 人々はイエスに手をかけてつかまえた。 |
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四七 傍に立る者の一人刃を拔て祭司の長の僕を擊その耳を削り |
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四七 傍らに立つ者のひとり、劒を拔き、大祭司の僕を擊ちて、耳を切り落せり。 |
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四七 すると、イエスのそばに立っていた者のひとりが、剣を抜いて大祭司の僕に切りかかり、その片耳を切り落した。 |
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四八 イエス答て彼等に曰けるは刃と棒とをもち盜賊を執る如くして我を執に來る乎 |
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四八 イエス人々に對ひて言ひ給ふ『なんぢら强盜にむかふ如く劒と棒とを持ち、我を捕へんとて出で來るか。 |
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四八 イエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたは強盗にむかうように、剣や棒を持ってわたしを捕えにきたのか。 |
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四九 われ日々なんぢらと共に殿にて教しに爾曹われを執ざりき然ど此は聖書に應せんが爲なり |
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四九 我は日々なんぢらと偕に宮にありてヘへたりしに、我を執へざりき、然れど是は聖書の言の成就せん爲なり』 |
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四九 わたしは毎日あなたがたと一緒に宮にいて教えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。しかし聖書の言葉は成就されねばならない」。 |
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五十 弟子みなイエスを離て奔去ぬ |
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五〇 其のとき弟子みなイエスを棄てて逃げ去る。 |
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五〇 弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。 |
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五一 一少者その身にたゞ麻の夜具を蔽てイエスに從ひたりしが逮捕の者等これを執ければ |
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五一 ある若者、素肌に亞麻布を纏ひて、イエスに從ひたりしに、人々これを捕へければ、 |
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五一 ときに、ある若者が身に亜麻布をまとって、イエスのあとについて行ったが、人々が彼をつかまえようとしたので、 |
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五二 かれ麻の夜具をすて裸にて逃去り |
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五二 亞麻布を棄て裸にて逃げ去れり。 |
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五二 その亜麻布を捨てて、裸で逃げて行った。 |
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五三 衆人イエスを祭司の長に携往けるに祭司の長長老および學者等ことごとく彼の所に集れり |
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五三 人々イエスを大祭司の許に曳き往きたれば、祭司長・長老・學者ら皆あつまる。 |
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五三 それから、イエスを大祭司のところに連れて行くと、祭司長、長老、律法学者たちがみな集まってきた。 |
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五四 ペテロ遠く離れてイエスに從ひ祭司の長の庭の内まで入僕と共に坐して火に燠まり居り |
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五四 ペテロ遠く離れてイエスに從ひ、大祭司の中庭まで入り、下役どもと共に坐して火に煖まりゐたり。 |
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五四 ペテロは遠くからイエスについて行って、大祭司の中庭まではいり込み、その下役どもにまじってすわり、火にあたっていた。 |
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五五 祭司の長および議員みなイエスを殺んとして證を求れども得ず |
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五五 さて祭司長ら及び全議會、イエスを死に定めんとて、證據を求むれども得ず。 |
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五五 さて、祭司長たちと全議会とは、イエスを死刑にするために、イエスに不利な証拠を見つけようとしたが、得られなかった。 |
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五六 多の人々イエスに妄の證を言出せども其證あはず |
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五六 夫はイエスに對して僞證する者、多くあれども其の證據あはざりしなり。 |
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五六 多くの者がイエスに対して偽証を立てたが、その証言が合わなかったからである。 |
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五七 或人々たちて妄の證を言出しけるは |
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五七 遂に或者ども起ちて僞證して言ふ、 |
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五七 ついに、ある人々が立ちあがり、イエスに対して偽証を立てて言った、 |
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五八 かれ手を以て作たる此聖殿を毀ち三日の間に手を以て作ざる別の殿を建んと言しを我儕は聞り |
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五八 『われら此の人の「われは手にて造りたる此の宮を毀ち、手にて造らぬ他の宮を三日にて建つべし」と云へるを聞けり』 |
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五八 「わたしたちはこの人が『わたしは手で造ったこの神殿を打ちこわし、三日の後に手で造られない別の神殿を建てるのだ』と言うのを聞きました」。 |
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五九 如此いひしが其證また符ず |
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五九 然れど尙この證據もあはぎりき。 |
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五九 しかし、このような証言も互に合わなかった。 |
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六十 祭司の長中に立てイエスに問いひけるは爾答る言なき乎この人々の爾に立る證據は如何 |
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六〇 爰に大祭司、中に立ちイエスに問ひて言ふ『なんぢ何をも答へぬか、此の人々の立つる證據は如何に』 |
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六〇 そこで大祭司が立ちあがって、まん中に進み、イエスに聞きただして言った、「何も答えないのか。これらの人々があなたに対して不利な証言を申し立てているが、どうなのか」。 |
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六一 イエス默然として何も答ざりければ祭司の長また彼に問て曰けるは爾は頌べき者の子キリストなる乎 |
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六一 然れどイエス默して何をも答へ給はず。大祭司ふたたび問ひて言ふ『なんぢは頌むべきものの子キリストなるか』 |
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六一 しかし、イエスは黙っていて、何もお答えにならなかった。大祭司は再び聞きただして言った、「あなたは、ほむべき者の子、キリストであるか」。 |
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六二 イエス曰けるは然り人の子大權の右に坐し天の雲の中に現れ來るを爾曹みるべし |
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六二 イエス言ひ給ふ『われは夫なり、汝ら人の子の、全能者の右に坐し、天の雲の中にありて來るを見ん』 |
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六二 イエスは言われた、「わたしがそれである。あなたがたは人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」。 |
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六三 是に於て祭司の長その衣を裂て曰けるは我儕なんぞ復ほかに證據を求んや |
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六三 此のとき大祭司おのが衣を裂きて言ふ『なんぞ他に證人を求めん。 |
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六三 すると、大祭司はその衣を引き裂いて言った、「どうして、これ以上、証人の必要があろう。 |
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六四 その褻瀆たる言は爾曹も聞る所なり爾曹如何に意ふや彼等擧てイエスを死に當るべき者と擬たり |
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六四 なんぢら此の瀆言を開けり、如何に思ふか』かれら擧りてイエスを死に當るべきものと定む。 |
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六四 あなたがたはこのけがし言を聞いた。あなたがたの意見はどうか」。すると、彼らは皆、イエスを死に当るものと断定した。 |
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六五 或者は彼に唾し又その面を掩ひ拳にて擊いひけるは預言せよ亦僕等も手の掌にて彼を批り |
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六五 而して或者どもはイエスに唾し、又その顏を蔽ひ、拳にて搏ちなど爲始めて言ふ、『預言せよ』下役どもイエスを受け、手掌にてうてり。 |
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六五 そして、ある者はイエスにつばきをかけ、目隠しをし、こぶしでたたいて、「言いあててみよ」と言いはじめた。また下役どもはイエスを引きとって、手のひらでたたいた。 |
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六六 ペテロ下庭に在しに祭司の長のある婢きたりて |
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六六 ペテロ下にて中庭にをりしに、大祭司の婢女の一人きたりて、 |
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六六 ペテロは下で中庭にいたが、大祭司の女中のひとりがきて、 |
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六七 其火に燠まり居を見つらつら彼を視て曰けるは爾もナザレのイエスと偕に在し |
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六七 ペテロの火に煖まりをるを見、これに目を注めて『なんぢも、かのナザレ人イエスと偕に居たり』と言ふ。 |
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六七 ペテロが火にあたっているのを見ると、彼を見つめて、「あなたもあのナザレ人イエスと一緒だった」と言った。 |
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六八 ペテロ肯はずして曰けるは我これを知ず亦なんぢが言ところの事を識得ざるなり斯て庭門に出ければ鷄鳴ぬ |
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六八 ペテロ肯はずして『われは汝の言ふことを知らず、又その意をも悟らず』と言ひて庭口に出でたり。 |
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六八 するとペテロはそれを打ち消して、「わたしは知らない。あなたの言うことがなんの事か、わからない」と言って、庭口の方に出て行った。 |
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六九 その婢かれを見て傍に立る者に又いひけるは此人もかの黨の一人なり |
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六九 婢女かれを見て、また傍らに立つ者どもに『この人は、かの黨與なり』と言ひ出でしに、 |
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六九 ところが、先の女中が彼を見て、そばに立っていた人々に、またもや「この人はあの仲間のひとりです」と言いだした。 |
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七十 ペテロまた肯はず少頃して傍に立る者またペテロに曰けるは爾誠に彼の黨の一人なり蓋爾はガリラヤの人なり其方言これに合り |
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七〇 ペテロ重ねて肯はず。暫くしてまた傍らに立つ者どもペテロに言ふ『なんぢは慥に、かの黨與なり、汝もガリラヤ人なり』 |
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七〇 ペテロは再びそれを打ち消した。しばらくして、そばに立っていた人たちがまたペテロに言った、「確かにあなたは彼らの仲間だ。あなたもガリラヤ人だから」。 |
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七一 是に於てペテロ誓て我~の崇を受るとも爾曹が曰その人を我は識ざる也と曰しが |
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七一 此の時ペテロ盟ひ、かつ誓ひて『われは汝らの言ふ其の人を知らず』と言ひ出づ。 |
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七一 しかし、彼は、「あなたがたの話しているその人のことは何も知らない」と言い張って、激しく誓いはじめた。 |
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七二 此とき鷄二次鳴ければペテロ イエスの鷄二次なく前に三次我を識ずと曰んと言たまひし事を憶起し且これを思反して哭悲めり |
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七二 その折しも、また鷄鳴きぬ。ペテロ『にはとり二度なく前に、なんぢ三度われを否まん』とイエスの言ひ給ひし御言を思ひいだし、思ひ反して泣きたり。 |
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七二 するとすぐ、にわとりが二度目に鳴いた。ペテロは、「にわとりが二度鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、そして思いかえして泣きつづけた。 |
馬可傳iケ書 |
第十五章 |
一 平旦に及び直に祭司の長長老學者たち凡の議員と共に議てイエスを繫り曳携てピラトに解せり |
マルコ傳iケ書 |
第一五章 |
一 夜明るや直ちに、祭司長・長老・學者ら、即ち全議會ともに相議りて、イエスを縛り曳きゆきて、ビラトに付す。 |
マルコによる福音書 |
第一五章 |
一 夜が明けるとすぐ、祭司長たちは長老、律法学者たち、および全議会と協議をこらした末、イエスを縛って引き出し、ピラトに渡した。 |
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二 ピラト彼に問けるは爾はユダヤ人の王なるやイエス答けるは爾が言る如し |
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二 ビラト、イエスに問ひて言ふ『なんぢはユダヤ人の王なるか』答へて言ひ給ふ『なんぢの言ふが如し』 |
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二 ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは、「そのとおりである」とお答えになった。 |
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三 祭司の長多端をもて彼を訟ふ |
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三 祭司長ら、さまざまに訴ふれば、 |
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三 そこで祭司長たちは、イエスのことをいろいろと訴えた。 |
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四 ピラト復イエスに問て曰けるは何も答ざるか彼等が爾について證を立しこと幾何かりぞ乎 |
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四 ピラトまた問ひて言ふ『なにも答へぬか、視よ、如何に多くの事をもて訴ふるか』 |
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四 ピラトはもう一度イエスに尋ねた、「何も答えないのか。見よ、あなたに対してあんなにまで次々に訴えているではないか」。 |
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五 ピラトの奇と爲までにイエス何をも答ざりき |
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五 されどピラトの怪しむばかりイエス更に何をも答へ給はず。 |
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五 しかし、イエスはピラトが不思議に思うほどに、もう何もお答えにならなかった。 |
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六 偖この節筵には彼等が求に任せて一人の囚人を赦すの例なり |
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六 さて祭の時には、ピラト民の願に任せて、囚人ひとりを赦す例なるが、 |
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六 さて、祭のたびごとに、ピラトは人々が願い出る囚人ひとりを、ゆるしてやることにしていた。 |
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七 時にバラバと云る者あり己と共に謀叛せし黨と同く繫れ居たりしが彼等はその謀叛のとき人を殺しゝ者等なり |
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七 爰に一揆を起し、人を殺して繫がれをる者の中に、バラバといふ者あり。 |
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七 ここに、暴動を起し人殺しをしてつながれていた暴徒の中に、バラバという者がいた。 |
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八 人々聲を揚て呼り恒例の如せん事を求り |
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八 群衆すすみ來りて、例の如くせんことを願ひ出でたれば、 |
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八 群衆が押しかけてきて、いつものとおりにしてほしいと要求しはじめたので、 |
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九 ピラト彼等に答て曰けるはユダヤ人の王を爾曹に我が釋さん事を欲むや |
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九 ピラト答へて言ふ『ユダヤ人の王を赦さんことを願ふか』 |
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九 ピラトは彼らにむかって、「おまえたちはユダヤ人の王をゆるしてもらいたいのか」と言った。 |
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十 是ピラト祭司の長等の嫉に因てイエスを解したりと知ばなり |
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一〇 これピラト、祭司長らのイエスを付ししは、嫉に因ると知る故なり。 |
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一〇 それは、祭司長たちがイエスを引きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにわかっていたからである。 |
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十一 祭司の長民どもにバラバを釋さん事を求と唆む |
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一一 然れど祭司長も群衆を唆かし、反つてバラバを赦さんことを願はしむ。 |
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一一 しかし祭司長たちは、バラバの方をゆるしてもらうように、群衆を煽動した。 |
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十二 ピラトまた答て彼等に曰けるは然ばユダヤ人の王と爾曹が稱る者には何を我が處ん事をなんぢら欲むや |
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一二 ピラトまた答へて言ふ『さらば汝らがユダヤ人の王と稱ふる者を我いかに爲べきか』 |
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一二 そこでピラトはまた彼らに言った、「それでは、おまえたちがユダヤ人の王と呼んでいるあの人は、どうしたらよいか」。 |
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十三 彼等また叫びて之を十字架に釘よと曰 |
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一三 人々また叫びて言ふ『十字架につけよ』 |
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一三 彼らは、また叫んだ、「十字架につけよ」。 |
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十四 ピラト彼等に曰けるは彼なんの惡事を行しや彼等ますます叫びて之を十字架に釘よと曰 |
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一四 ピラト言ふ『そも彼は何の惡事を爲したるか』かれら烈しく叫びて『十學架につけよ』と言ふ。 |
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一四 ピラトは言った、「あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか」。すると、彼らは一そう激しく叫んで、「十字架につけよ」と言った。 |
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十九 ピラト民の懽びを取んとしてバラバを彼等に釋しイエスを鞭ちて之を十字架に釘ん爲に付せり |
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一五 ピラト群衆の望を滿さんとて、バラバを釋し、イエスを鞭ちたるのち、十字架につくる爲にわたせり。 |
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一五 それで、ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。 |
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十六 兵卒等これを公廳に携ゆき全營を呼集め |
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一六 兵卒どもイエスを官邸の中庭に連れゆき、全隊を呼び集めて、 |
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一六 兵士たちはイエスを、邸宅、すなわち総督官邸の内に連れて行き、全部隊を呼び集めた。 |
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十七 彼に紫の袍をきせ棘にて冕を編て冠しめたり |
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一七 彼に紫色の衣を著せ、茨の冠冕を編みて冠らせ、 |
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一七 そしてイエスに紫の衣を着せ、いばらの冠を編んでかぶらせ、 |
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十八 斯て曰けるはユダヤ人の王安かれ |
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一八 『ユダヤ人の王、安かれ』と禮をなし始め、 |
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一八 「ユダヤ人の王、ばんざい」と言って敬礼をしはじめた。 |
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十九 また葦を以て其首を擊かつ唾し跪きて拜しぬ |
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一九 また葦にて、其の首をたたき、唾し、跪づきて拜せり。 |
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一九 また、葦の棒でその頭をたたき、つばきをかけ、ひざまずいて拝んだりした。 |
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二十 嘲弄し畢て紫の衣をはぎ故の衣をきせて十字架に釘んとて曳往しが |
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二〇 かく嘲弄してのち、紫色の衣を剝ぎ、故の衣を著せ十字架につけんとて曳き出せり。 |
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二〇 こうして、イエスを嘲弄したあげく、紫の衣をはぎとり、元の上着を着せた。それから、彼らはイエスを十字架につけるために引き出した。 |
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二一 アレキサンデルとルフの父なるクレネのシモンと云るもの田間より來りて其處を經過りければ强て之にイエスの十字架を負せたり |
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二一 時にアレキサンデルとルポスとの父シモンといふクレネ人、田舍より來りて通りかかりしに、强ひてイエスの十字架を負はせ、 |
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二一 そこへ、アレキサンデルとルポスとの父シモンというクレネ人が、郊外からきて通りかかったので、人々はイエスの十字架を無理に負わせた。 |
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二二 イエスをゴルゴダ譯ば即ち髑髏と云る所に携來り |
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二二 イエスをゴルゴタ、釋けば髑髏といふ處に連れ往けり。 |
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二二 そしてイエスをゴルゴタ、その意味は、されこうべ、という所に連れて行った。 |
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二三 沒藥を酒に和て飮せんと爲りしに之を受ざりき |
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二三 斯て沒藥を混ぜたる葡萄酒を與へたれど、受け給はず。 |
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二三 そしてイエスに、没薬をまぜたぶどう酒をさし出したが、お受けにならなかった。 |
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二四 イエスを十字架に釘しのち誰が何を取んと鬮を拈てその衣服を分てり |
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二四 彼らイエスを十字架につけ、而して誰が何を取るべきと、鬮を引きて其の衣を分つ、 |
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二四 それから、イエスを十字架につけた。そしてくじを引いて、だれが何を取るかを定めたうえ、イエスの着物を分けた。 |
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二五 朝の第九時にイエスを十字架に釘 |
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二五 イエスを十字架につけしは、朝の九時頃なりき。 |
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二五 イエスを十字架につけたのは、朝の九時ごろであった。 |
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二六 その罪標をユダヤ人の王と書つく |
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二六 その罪標には『ユダヤ人の王』と書せり。 |
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二六 イエスの罪状書きには「ユダヤ人の王」と、しるしてあった。 |
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二七 二人の盜賊かれと共に一人は其右一人は其左に十宇架に釘らる |
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二七 イエスと共に、二人の强盜を十字架につけ、一人をその右に、一人をその左に置く。 |
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二七 また、イエスと共にふたりの強盗を、ひとりを右に、ひとりを左に、十字架につけた。 |
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二八 これ聖書に彼は罪人と共に算られたりと云しに應り |
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二八 |
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二八 〔こうして「彼は罪人たちのひとりに数えられた」と書いてある言葉が成就したのである。〕 |
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二九 往來の者イエスを詬り首を搖て曰けるは噫聖殿を毀て之を三日に建る者よ |
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二九 往來の者どもイエスを譏り、首を振りて言ふ『ああ宮を毀ちて三日のうちに建つる者よ、 |
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二九 そこを通りかかった者たちは、頭を振りながら、イエスをののしって言った、「ああ、神殿を打ちこわして三日のうちに建てる者よ、 |
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三十 自己を效て十字架を下よ |
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三〇 十字架より下りて己を救へ』 |
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三〇 十字架からおりてきて自分を救え」。 |
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三一 祭司の長學者等も同く嘲弄して互に曰けるは人を救て自己を救ひ能ず |
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三一 祭司長らも亦同じく學者らと共に嘲弄して互に言ふ『人を救ひて、己を救ふこと能はず、 |
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三一 祭司長たちも同じように、律法学者たちと一緒になって、かわるがわる嘲弄して言った、「他人を救ったが、自分自身を救うことができない。 |
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三二 イスラエルの王キリストは今十字架より下るべし然ば我儕見て之を信ぜん又ともに十字架に釘られたる者等も彼を詬れり |
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三二 イスラエルの王キリスト、いま十守架より下りよかし、然らば我ら見て信ぜん』共に十字架につけられたる者どもも、イエスを罵りたり。 |
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三二 イスラエルの王キリスト、いま十字架からおりてみるがよい。それを見たら信じよう」。また、一緒に十字架につけられた者たちも、イエスをののしった。 |
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三三 第十二時より三時に至るまで徧く地のうへ暗なりぬ |
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三三 晝の十二時に、地のうへ徧く暗くなりて、三時に及ぶ。 |
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三三 昼の十二時になると、全地は暗くなって、三時に及んだ。 |
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三四 第三時にイエス大聲に呼りエリ、エリ、ラマサバクタニと曰これを譯ば吾~わが~何ぞ我を遺たまふ乎と云るなり |
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三四 三時にイエス大聲に『エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ』と呼り給ふ。之を釋けば、わが~、わが~、なんぞ我を見棄て給ひし、との意なり。 |
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三四 そして三時に、イエスは大声で、「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ」と叫ばれた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。 |
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三五 傍らに立たる者のうち或人これを聞て彼はエリヤを呼なりと曰 |
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三五 傍らに立つ者のうち或る人々これを聞きて言ふ『視よ、エリヤを呼ぶなり』 |
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三五 すると、そばに立っていたある人々が、これを聞いて言った、「そら、エリヤを呼んでいる」。 |
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三六 一人はしり往て海絨をとり醋を漬せ之を葦に束て彼に飮しめ曰けるは俟エリヤ來りて彼を救ふや否こゝろむべし |
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三六 一人はしり往きて、海綿に酸き葡萄酒を含ませて葦につけ、イエスに飮しめて言ふ『待て、エリヤ來りて、彼を下すや否や、我ら之を見ん』 |
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三六 ひとりの人が走って行き、海綿に酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとして言った、「待て、エリヤが彼をおろしに来るかどうか、見ていよう」。 |
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三七 イエス大なる聲を發て氣絶 |
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三七 イエス大聲を出して息絕え給ふ。 |
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三七 イエスは声高く叫んで、ついに息をひきとられた。 |
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三八 殿の幔上より下まで裂て二と爲り |
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三八 聖所の幕、上より下まで裂けて二つとなりたり。 |
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三八 そのとき、神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。 |
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三九 イエスに對て立たる百夫の長かく呼り氣絶しを見て曰けるは誠に此人は~の子なり |
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三九 イエスに向ひて立てる百卒長、かかる樣にて息絕え給ひしを見て言ふ『實にこの人は~の子なりき』 |
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三九 イエスにむかって立っていた百卒長は、このようにして息をひきとられたのを見て言った、「まことに、この人は神の子であった」。 |
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四十 また遙に望ゐたる婦ありし其中に在し者はマグダラのマリアおよび年少ヤコブとヨセの母なるマリア又サロメなり |
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四〇 また遙に望み居たる女等あり、その中にはマグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセとの母マリヤ及びサロメなども居たり。 |
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四〇 また、遠くの方から見ている女たちもいた。その中には、マグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセとの母マリヤ、またサロメがいた。 |
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四一 彼等はイエスのガリラヤに居たまひし時これに從ひ事し者等なり亦この他にも彼と共にエルサレムに上りし多の婦ゐたりき |
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四一 彼らはイエスのガリラヤに居給ひしとき、從ひ事へし者どもなり。此の他イエスと共にエルサレムに上りし多くの女もありき。 |
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四一 彼らはイエスがガリラヤにおられたとき、そのあとに従って仕えた女たちであった。なおそのほか、イエスと共にエルサレムに上ってきた多くの女たちもいた。 |
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四二 是日は備節日にて安息日の前の日なりし故 |
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四二 日旣に暮れて、準備日、即ち安息日の前の日となりたれば、 |
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四二 さて、すでに夕がたになったが、その日は準備の日、すなわち安息日の前日であったので、 |
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四三 日暮るとき尊き議員なるアリマタヤのヨセフと云る者きたれり此人は~の國を慕る者なり彼はゞからずピラトに往てイエスの屍を求たり |
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四三 貴き議員にして、~の國を待ち望める、アリマタヤのヨセフ來りて、憚らずピラトの許に往き、イエスの屍體を乞ふ。 |
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四三 アリマタヤのヨセフが大胆にもピラトの所へ行き、イエスのからだの引取りかたを願った。彼は地位の高い議員であって、彼自身、神の国を待ち望んでいる人であった。 |
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四四 ピラト イエスの已に死るを奇み百人の長を呼て彼は死てより時を經たるや否やを問 |
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四四 ピラト、イエスは早や死にしかと訝り、百卒長を呼びて、その死にしより時經しや否やを問ひ、 |
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四四 ピラトは、イエスがもはや死んでしまったのかと不審に思い、百卒長を呼んで、もう死んだのかと尋ねた。 |
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四五 百夫の長より聞て之をしり屍をヨセフに予ふ |
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四五 旣に死にたる事を百卒長より聞き知りて、屍體をヨセフに與ふ。 |
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四五 そして、百卒長から確かめた上、死体をヨセフに渡した。 |
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四六 ヨセフ枲布を買求め而してイエスを取下し之をその枲布にて裹み磐に鑿たる墓におき石を墓の門に轉し置り |
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四六 ヨセフ亞麻布を買ひ、イエスを取下して之に包み、岩に鑿りたる墓に納め、墓の入口に石を轉ばし置く。 |
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四六 そこで、ヨセフは亜麻布を買い求め、イエスをとりおろして、その亜麻布に包み、岩を掘って造った墓に納め、墓の入口に石をころがしておいた。 |
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四七 マグダラのマリア及ヨセの母なるマリア其屍を葬し處を見たり |
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四七 マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとイエスを納めし處を見ゐたり。 |
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四七 マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとは、イエスが納められた場所を見とどけた。 |
馬可傳iケ書 |
第十六章 |
一 安息日過てマグダヲのマリアとヤコブの母なるマリア及サロメ香料を買とゝのへイエスに抹んとて來れり |
マルコ傳iケ書 |
第一六章 |
一 安息日終りし時、マグダラのマリヤ、ヤコブの母マリヤ及びサロメ往きて、イエスに抹らんとて香料を買ひ、 |
マルコによる福音書 |
第一六章 |
一 さて、安息日が終ったので、マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤとサロメとが、行ってイエスに塗るために、香料を買い求めた。 |
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二 七日の首の日いと早く日の出る時彼ら墓に來り |
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二 一週の首の日、日の出でたる頃いと早く墓にゆく。 |
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二 そして週の初めの日に、早朝、日の出のころ墓に行った。 |
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三 互に曰けるは誰か我儕の爲に石を墓の門より轉し取もの有んか是その石はなはだ巨大なれば也 |
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三 誰か我らの爲に墓の入口より石を轉ばすべきと語り合ひしに、 |
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三 そして、彼らは「だれが、わたしたちのために、墓の入口から石をころがしてくれるのでしょうか」と話し合っていた。 |
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四 斯て彼等目を擧れば石の已に轉あるを見る |
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四 目を擧ぐれば、石の旣に轉ばしあるを見る。この石は甚だ大なりき。 |
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四 ところが、目をあげて見ると、石はすでにころがしてあった。この石は非常に大きかった。 |
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五 墓に入しに白衣をきたる少者の右の方に坐せるを見て駭き異めり |
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五 墓に入り、右の方に白き衣を著たる若者の坐するを見て甚く驚く。 |
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五 墓の中にはいると、右手に真白な長い衣を着た若者がすわっているのを見て、非常に驚いた。 |
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六 小者かれらに曰けるは駭き異む勿れ爾曹は十字架に釘られしナザレのイエスを尋ぬ彼は甦りて此に居ず彼を葬し處を觀よ |
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六 若者いふ『おどろくな、汝らは十字架につけられ給ひしナザレのイエスを尋ぬれど、旣に甦へりて、此處に在さず。視よ、納めし處は此處なり。 |
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|
六 するとこの若者は言った、「驚くことはない。あなたがたは十字架につけられたナザレ人イエスを捜しているのであろうが、イエスはよみがえって、ここにはおられない。ごらんなさい、ここがお納めした場所である。 |
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七 且ゆきて其弟子とペテロに吿よ彼は爾曹に先ちてガリラヤに往り爾曹かしこにて彼を見べし即ち其なんぢらに言しが如し |
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七 然れど往きて、弟子たちとペテロとに吿げよ「汝らに先だちてガリラヤに往き給ふ、彼處にて謁ゆるを得ん、曾て汝らに言ひ給ひしが如し」』 |
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七 今から弟子たちとペテロとの所へ行って、こう伝えなさい。イエスはあなたがたより先にガリラヤへ行かれる。かねて、あなたがたに言われたとおり、そこでお会いできるであろう、と」。 |
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八 彼等いでゝ墓より奔れり且戰慄かつ駭き亦一言をも人に語ざりき是懼しが故なり |
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八 女等いたく驚きをののき、墓より逃出でしが、懼れたれば一言をも人に語らざりき。 |
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八 女たちはおののき恐れながら、墓から出て逃げ去った。そして、人には何も言わなかった。恐ろしかったからである。 |
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九 イエス七日の首の日よあけごろ甦りて先マグダラのマリアに現る曩にイエス彼より七の惡鬼を逐出せり |
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九 〔一週の首の日の拂曉、イエス甦へりて先づマグダラのマリヤに現れたまふ、前にイエスが七つの惡鬼を逐ひいだし給ひし女なり。 |
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九 〔週の初めの日の朝早く、イエスはよみがえって、まずマグダラのマリヤに御自身をあらわされた。イエスは以前に、この女から七つの悪霊を追い出されたことがある。 |
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十 イエスと共に在し者の哭哀める時に此婦きたりて是等の事を吿 |
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一〇 マリヤ往きて、イエスと偕にありし人々の、泣き悲しみ居るときに之に吿ぐ。 |
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一〇 マリヤは、イエスと一緒にいた人々が泣き悲しんでいる所に行って、それを知らせた。 |
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十一 彼等イエスの活て此の婦に見ゑ給ひしことを聞しが信ぜざりき |
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一一 彼らイエスの活き給へる事と、マリヤに見え給ひし事とを聞けども信ぜざりき。 |
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一一 彼らは、イエスが生きておられる事と、彼女に御自身をあらわされた事とを聞いたが、信じなかった。 |
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十二 此後かれらの中二人の者ク村へ往けるが路を行ときイエス變たる貌にて彼等に現る |
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一二 此の後その中の二人、田舍に往く途を歩むほどに、イエス異りたる姿にて現れ給ふ。 |
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一二 この後、そのうちのふたりが、いなかの方へ歩いていると、イエスはちがった姿で御自身をあらわされた。 |
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十三 この二人の者ゆきて他の弟子等に吿けれども亦これをも信ぜざりき |
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一三 此の二人ゆきて、他の弟子たちに之を吿げたれど、なほ信ぜざりき。 |
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一三 このふたりも、ほかの人々の所に行って話したが、彼らはその話を信じなかった。 |
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十四 又その後十一の弟子の食しをる時に現れて彼等が信なきと其心の頑とを責め給へり是かれらイエスの甦り給るのち其を見し者の言ところを信ぜざりし故なり |
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一四 其ののち十一弟子の食しをる時に、イエス現れて、己が甦へりたるを見し者どもの言を信ぜざりしにより、其の信仰なきと、共の心の頑固なるとを責め給ふ。 |
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一四 その後、イエスは十一弟子が食卓についているところに現れ、彼らの不信仰と、心のかたくななことをお責めになった。彼らは、よみがえられたイエスを見た人々の言うことを、信じなかったからである。 |
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十五 イエス彼等に曰けるは徧く世界を廻て凡の人に音を宣傳よ |
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一五 斯て彼らに言ひたまふ『全世界を巡りて凡ての造られしものに音を宣傳へよ。 |
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一五 そして彼らに言われた、「全世界に出て行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えよ。 |
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十六 信じてバプテスマを受る者は救れ信ぜざる者は罪に定らるゝ也 |
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一六 信じてバプテスマを受くる者は救はるべし、然れど信ぜぬ者は罪に定めらるべし。 |
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一六 信じてバプテスマを受ける者は救われる。しかし、不信仰の者は罪に定められる。 |
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十七 信ずる者には左の如き奇跡したがふべし我名に託て惡鬼を逐出し異邦の方言をいひ |
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一七 信ずる者には此等の徵、ともなはん。即ち我が名によりて惡鬼を逐ひいだし、新しき言をかたり、 |
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一七 信じる者には、このようなしるしが伴う。すなわち、彼らはわたしの名で悪霊を追い出し、新しい言葉を語り、 |
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十八 また蛇を操へ毒を飮とも害なく又手を病の者に按なば即ち愈ん |
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一八 蛇を握るとも、毒を飮むとも、害を受けず、病める者に手をつけなば瘉えん』 |
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一八 へびをつかむであろう。また、毒を飲んでも、決して害を受けない。病人に手をおけば、いやされる」。 |
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十九 期て主は彼等に語しのち天に擧られ~の右に坐しぬ |
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一九 語り終へてのち、主イエスは天に擧げられ、~の右に坐し給ふ。 |
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一九 主イエスは彼らに語り終ってから、天にあげられ、神の右にすわられた。 |
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二十 弟子たち徧く音を宣傳ふ主も亦かれらに力を協せ其從ふ所の奇跡によりて道を堅うしたまへりアメン |
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二〇 弟子たち出でて、徧く音を宣傳へ、主も亦ともに働き、伴ふところの徵をもて、御言を確うし給へり〕 |
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二〇 弟子たちは出て行って、至る所で福音を宣べ伝えた。主も彼らと共に働き、御言に伴うしるしをもって、その確かなことをお示しになった。〕 |
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