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ルカによる福音書の日本語訳を明治・大正・昭和の時代に沿って読み比べてみました |
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明治訳は英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)による文語訳です。シナ訳の影響が色濃く出ています。 |
大正訳は日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)による文語訳です。明治訳よりやさしい日本語に直していますが内村鑑三は大正改訳を優美すぎて弱いと評していました。 |
昭和訳は日本聖書協会「新約聖書」(昭和二十九年)による口語訳です。 |
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明治・大正訳は漢字・送り仮名とも明治・大正時代そのままの形を復刻できるように努めました。シフトJISにない漢字はUnicodeで捜しました。 |
明治・大正・昭和訳を一節ずつ縦に並べて記すことで時代に沿った訳の変化を読み取れるようにしました。 |
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<路加傳iケ書>新約全書(明治訳:文語訳) |
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<ルカ傳iケ書>新約聖書(大正改訳:文語訳) |
リンク先 |
章 |
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<ルカによる福音書>新約聖書(昭和訳:口語訳) |
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↓ |
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☞1章 |
1章 |
一 我儕の中に篤く信ぜられたる事を始より親く見て道に役たる者の |
☞2章 |
一 我らの中に成りし事の物語につき、始よりの目擊者にして、 |
☞3章 |
一 わたしたちの間に成就された出来事を、最初から親しく見た人々であって、 |
☞4章 |
二 我儕に傳し如く記載んと多の人々これを手に執る故に貴きテヨピロよ |
☞5章 |
二 御言の役者となりたる人々の、我らに傳へし、其のままを、書き列ねんと、手を著けし者あまたある故に、 |
☞6章 |
二 御言に仕えた人々が伝えたとおり物語に書き連ねようと、多くの人が手を着けましたが、 |
☞7章 |
三 我も原より諸の事を詳細に考究たれば次第を爲て爾に書おくり |
☞8章 |
三 我も凡ての事を最初より詳細に推し尋ねたれば、 |
☞9章 |
三 テオピロ閣下よ、わたしもすべての事を初めから詳しく調べていますので、ここに、それを順序正しく書きつづって、閣下に献じることにしました。 |
☞10章 |
四 爾が教られし所の確實を曉せんと欲り |
☞11章 |
四 テオピロ閣下よ、汝のヘへられたる事の慥なるを悟らせん爲に、これが序を正して、書贈るは善き事と思はるるなり。 |
☞12章 |
四 すでにお聞きになっている事が確実であることを、これによって十分に知っていただきたいためであります。 |
☞13章 |
五 ユダヤの王ヘロデの時にアビアの班なる祭司ザカリアと云る者あり其妻はアロンの裔にて名をエリサベツと云 |
☞14章 |
五 ユダヤの王ヘロデの時、アビヤの組の祭司に、ザカリヤといふ人あり。その妻はアロンの裔にて名をエリサベツといふ。 |
☞15章 |
五 ユダヤの王ヘロデの世に、アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリサベツといった。 |
☞16章 |
六 共に~の前にて義人なり凡て主の誡命と禮儀を虧なく行へり |
☞17章 |
六 二人ながら~の前に正しくして、主の誠命と定規とを、みな缺なく行へり。 |
☞18章 |
六 ふたりとも神のみまえに正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな落度なく行っていた。 |
☞19章 |
七 ェリサベツ姙なきが故に彼等に子なし又二人とも年も老ぬ |
☞20章 |
七 エリサベツ石女なれば、彼らに子なし、また二人とも年邁みぬ。 |
☞21章 |
七 ところが、エリサベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。 |
☞22章 |
八 ザカリアその班次に値て~の前に祭司の職を行ふ時 |
☞23章 |
八 さてザカリヤその組の順番に當りて、~の前に祭司の務を行ふとき、 |
☞24章 |
八 さてザカリヤは、その組が当番になり神のみまえに祭司の務をしていたとき、 |
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九 祭司の例に從ひ籤を抽て主の殿にいり香を燒ことを得 |
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九 祭司の慣例にしたがひて、籤をひき主の聖所に入りて、香を燒くこととなりぬ。 |
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九 祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所にはいって香をたくことになった。 |
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十 香を燒ける時に衆の人々はみな外に居て祈れり |
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一〇 香を燒くとき民の群みな外にありて祈りゐたり。 |
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一〇 香をたいている間、多くの民衆はみな外で祈っていた。 |
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十一 主の使者香壇の右に立てザカリアに現れしかば |
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一一 時に主の使あらはれて、香壇の右に立ちたれば、 |
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一一 すると主の御使が現れて、香壇の右に立った。 |
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十二 ザカリア之を見て驚懼る |
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一二 ザカリヤ之を見て、心騷ぎ懼を生ず。 |
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一二 ザカリヤはこれを見て、おじ惑い、恐怖の念に襲われた。 |
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十三 天使彼に曰けるはザカリアよ懼るゝ勿れ爾の祈禱すでに聞たまへり爾の妻エリサベツ男子を生ん其名をヨハネと名くべし |
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一三 御使いふ『ザカリヤよ懼るな、汝の願は聽かれたり。汝の妻エリサベツ男子を生まん、汝その名をヨハネと名づくべし。 |
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一三 そこで御使が彼に言った、「恐れるな、ザカリヤよ、あなたの祈が聞きいれられたのだ。あなたの妻エリサベツは男の子を産むであろう。その子をヨハネと名づけなさい。 |
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十四 爾に喜と樂あらん多の人も亦その生るゝに因てスび有ん |
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一四 なんぢに喜スと歡樂とあらん、又おはくの人もその生るるを喜ぶべし。 |
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一四 彼はあなたに喜びと楽しみとをもたらし、多くの人々もその誕生を喜ぶであろう。 |
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十五 それ此子主の前に大ならん又葡萄酒と濃酒とを飮じ母の胎より生出て聖靈に充さる |
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一五 この子、主の前に大ならん、また葡萄酒と濃き酒とを飮まず、母の胎を出づるや聖靈にて滿されん。 |
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一五 彼は主のみまえに大いなる者となり、ぶどう酒や強い酒をいっさい飲まず、母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされており、 |
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十六 又イスラエルの民の多の人を主なる某~に歸す可れば也 |
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一六 また多くのイスラエルの子らを、主なる彼らの~に歸らしめ、 |
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一六 そして、イスラエルの多くの子らを、主なる彼らの神に立ち帰らせるであろう。 |
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十七 彼エリヤの心と才能を以て主の先に行ん是父の心に子を慈はせ逆れる者を義人の智に歸せ主の爲に新なる民を備んとなり |
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一七 且エリヤの靈と能力とをもて、主の前に往かん。これ父の心を子に、戾れる者を義人の聰明に歸らせて、整へたる民を主のために備へんとてなり』 |
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一七 彼はエリヤの霊と力とをもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるであろう」。 |
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十八 ザカリア天使に曰けるは我すでに年老妻もまた年老たれば何に因てか此事あるを知ん |
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一八 ザカリヤ御使にいふ『何に據りてか此の事あるを知らん、我は老人にて、妻もまた年邁みたり』 |
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一八 するとザカリヤは御使に言った、「どうしてそんな事が、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています」。 |
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十九 天使こたへて曰けるは我はガブリエルとて~の前に立者なり爾に語てこの喜の音を吿ん爲に遣されたれば |
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一九 御使こたへて言ふ『われは~の御前に立つガブリエルなり、汝に語りてこの嘉き音信を吿げん爲に遣さる。 |
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一九 御使が答えて言った、「わたしは神のみまえに立つガブリエルであって、この喜ばしい知らせをあなたに語り伝えるために、つかわされたものである。 |
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二十 其時いたりて必ず成べき我が言を信ぜざるに因なんぢ瘖となりて此事の成日まで言ふこと能はじ |
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二〇 視よ、時いたらば、必ず成就すべき我が言を信ぜぬに因り、なんぢ物言へずなりて、此らの事の成る日までは語ること能はじ』 |
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二〇 時が来れば成就するわたしの言葉を信じなかったから、あなたは口がきけなくなり、この事の起る日まで、ものが言えなくなる」。 |
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二一 民ザカリアを俟ゐて其殿の內に久を異む |
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二一 民はザカリヤを俟ちゐて、其の聖所の內に久しく留まるを怪しむ。 |
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二一 民衆はザカリヤを待っていたので、彼が聖所内で暇どっているのを不思議に思っていた。 |
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二二 ザカリア出て言ふこと能はざりしかば彼等その殿の內にて異象を見たる事を曉たりザカリア衆人に首を以て示し竟に瘖となれり |
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二二 遂に出で來りたれど語ること能はねば、彼らその聖所の內にて異象を見たることを悟る。ザカリヤは、ただ首にて示すのみ、なほ啞なりき、 |
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二二 ついに彼は出てきたが、物が言えなかったので、人々は彼が聖所内でまぼろしを見たのだと悟った。彼は彼らに合図をするだけで、引きつづき、口がきけないままでいた。 |
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二三 その職事の日滿ければ家に歸りぬ |
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二三 斯て務の日滿ちたれば、家に歸りぬ。 |
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二三 それから務の期日が終ったので、家に帰った。 |
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二四 此後その妻エリサベツ孕て隱をりしこと五ケ月にして |
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二四 此の後その妻エリサベツ孕りて五月ほど隱れをりて言ふ、 |
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二四 そののち、妻エリサベツはみごもり、五か月のあいだ引きこもっていたが、 |
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二五 曰けるは主わが耻を人の中に灑せん爲に眷顧たまふ時は此の若く我に爲り |
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二五 『主、わが恥を人の中に雪がせんとて、我を顧み給ふときは、斯く爲し給ふなり』 |
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二五 「主は、今わたしを心にかけてくださって、人々の間からわたしの恥を取り除くために、こうしてくださいました」と言った。 |
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二六 此六ケ月に當りガリラヤのナザレと名たる邑の |
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二六 その六月めに、御使ガブリエル、ナザレといふガリラヤの町にをる處女のもとに、~より遣さる。 |
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二六 六か月目に、御使ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。 |
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二七 ダビデの家のヨセフと云る人の聘定せし所の處女に~よりガブリエルといふ天使を遣されたり其處女の名はマリアと云り |
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二七 この處女はダビデの家のヨセフといふ人と許媳せし者にて、其の名をマリヤと云ふ。 |
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二七 この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。 |
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二八 天使この處女に來いひけるは慶し惠るゝ者よ主なんぢと偕に在す爾は女の中にてなる者なり |
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二八 御使、處女の許にきたりて言ふ『めでたし、惠まるる者よ、主なんぢと偕に在せり』 |
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二八 御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます」。 |
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二九 處女その言を訝この問安は何如なる事ぞと思へり |
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二九 マリヤこの言によりて、心いたく騷ぎ、斯る挨拶は如何なる事ぞと思ひらしたるに、 |
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二九 この言葉にマリヤはひどく胸騒ぎがして、このあいさつはなんの事であろうかと、思いめぐらしていた。 |
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三十 天使いひけるはマリアよ懼るゝ勿れ爾は~より惠を得たり |
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三〇 御使いふ『マリヤよ、懼るな、汝は~の御前に惠を得たり。 |
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三〇 すると御使が言った、「恐れるな、マリヤよ、あなたは神から恵みをいただいているのです。 |
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三一 爾孕て男子を生ん其名をイエスと名べし |
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三一 視よ、なんぢ孕りて男子を生まん、其の名をイエスと名づくべし。 |
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三一 見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。 |
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三二 かれ大なる者と爲て至上者の子と稱られん又主たる~その先祖ダビデ王の位を彼に予れば |
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三二 彼は大ならん、至高者の子と稱へられん。また主たる~、これに其の父ダビデの座位をあたへ給へば、 |
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三二 彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、 |
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三三 ヤコブの家を窮なく支配すべく且その國終ること有ざるべし |
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三三 ヤコブの家を永遠に治めん。その國は終ることながるべし』 |
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三三 彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう」。 |
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三四 マリア天使に曰けるは我いまだ夫に適ざるに何にして此事ある可や |
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三四 マリヤ御使に言ふ『われ未だ人を知らぬに、如何して此の事のあるべき』 |
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三四 そこでマリヤは御使に言った、「どうして、そんな事があり得ましょうか。わたしにはまだ夫がありませんのに」。 |
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三五 天使こたへて曰けるは聖靈なんぢに臨る至上者の大能なんぢを庇ん是故に爾が生ところの聖なる者は~の子と稱らるべし |
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三五 御使こたへて言ふ『聖靈なんぢに臨み、至高者の能力なんぢを被はん。此の故に汝が生むところの聖なる者は、~の子と稱へらるべし。 |
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三五 御使が答えて言った、「聖霊があなたに臨み、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに、生れ出る子は聖なるものであり、神の子と、となえられるでしょう。 |
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三六 それ爾の親戚エリサベツ彼も年老て男子を孕り素姙なき者と稱れたりしが今すでに孕て六ケ月になりぬ |
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三六 視よ、なんぢの親族エリサベツも、年老いたれど、男子を孕めり。石女といはれたる者なるに、今は孕りてはや六月になりぬ。 |
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三六 あなたの親族エリサベツも老年ながら子を宿しています。不妊の女といわれていたのに、はや六か月になっています。 |
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三七 蓋~に於は能ざる事なければ也 |
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三七 それ~の言には能はぬ所なし』 |
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三七 神には、なんでもできないことはありません」。 |
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三八 マリア曰けるは我は是主の使女なり爾の言る如く我に應かし天使つひに彼を去り |
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三八 マリヤ言ふ『視よ、われは主の婢女なり。汝の言のごとく、我に成れかし』つひに御使、はなれ去りぬ。 |
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三八 そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。 |
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三九 當時マリア起て亟かに山地なるユダの邑に往 |
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三九 その頃マリヤ立ちて、山里に急ぎ往き、ユダの町にいたり、 |
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三九 そのころ、マリヤは立って、大急ぎで山里へむかいユダの町に行き、 |
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四十 ザカリヤの家に入てエリサベツに問安したりしに |
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四〇 ザカリヤの家に入りてエリサベツに挨拶せしに、 |
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四〇 ザカリヤの家にはいってエリサベツにあいさつした。 |
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四一 エリサベツ マリアの問安を聞しかば其胎孕腹の內にて跳動たりエリサベツ聖靈に感され |
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四一 エリサベツ、その挨拶を聞くや、兒は胎內にて躍れり。エリサベツ聖靈にて滿され、 |
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四一 エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、その子が胎内でおどった。エリサベツは聖霊に満たされ、 |
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四二 大聲に呼いひけるは女の中にて爾はなる者なり亦孕る所の者もなり |
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四二 聲高らかに呼はりて言ふ『をんなの中にて汝は祝せられ、その胎の實もまた祝せられたり。 |
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四二 声高く叫んで言った、「あなたは女の中で祝福されたかた、あなたの胎の実も祝福されています。 |
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四三 わが主の母われに來われ何に由てか此事を得し |
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四三 わが主の母われに來る、われ何によりてか之を得し。 |
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四三 主の母上がわたしのところにきてくださるとは、なんという光栄でしょう。 |
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四四 夫なんぢの問安の聲わが耳に入しとき胎孕よろこびて我腹の中に跳れり |
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四四 視よ、なんぢの挨拶の聲、わが耳に入るや、我が兒、胎內にて喜びをどれり。 |
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四四 ごらんなさい。あなたのあいさつの声がわたしの耳にはいったとき、子供が胎内で喜びおどりました。 |
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四五 主の言を信ぜし者はなり蓋主の語たまひし如く必ず成べければ也 |
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四五 信ぜし者は幸なるかな、主の語り給ふことは必ず成就すべければなり』 |
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四五 主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女は、なんとさいわいなことでしょう」。 |
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四六 マリァ曰けるは我心主を崇め |
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四六 マリヤ言ふ『わが心、主を崇め、 |
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四六 するとマリヤは言った、「わたしの魂は主をあがめ、 |
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四七 我靈はわが救主なる~を喜ぶ |
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四七 わが靈は、わが救主なる~を喜び奉る。 |
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四七 わたしの霊は救主なる神をたたえます。 |
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四八 是その使女の卑微をも眷顧たまふが故なり今よりのち萬世までも我をなる者と稱べし |
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四八 その婢女の卑しきをも顧み給へばなり。視よ、今よりのち萬世の人、われを幸とせん。 |
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四八 この卑しい女をさえ、心にかけてくださいました。今からのち代々の人々は、わたしをさいわいな女と言うでしょう、 |
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四九 それ權能を有たまへる者われに大なる事を成り其名は聖 |
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四九 全能者、われに大なる事を爲し給へばなり。その御名は聖なり、 |
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四九 力あるかたが、わたしに大きな事をしてくださったからです。そのみ名はきよく、 |
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五十 その矜恤は世々かれを畏るゝ者に及ばん |
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五〇 その憐憫は代々、畏み恐るる者に臨むなり。 |
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五〇 そのあわれみは、代々限りなく/主をかしこみ恐れる者に及びます。 |
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五一 其臂の力を發して心の驕る者を散し |
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五一 ~は御腕にて、權力をあらはし、心の念に高ぶる者を散らし、 |
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五一 主はみ腕をもって力をふるい、心の思いのおごり高ぶる者を追い散らし、 |
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五二 權柄ある者を位より下し卑賤者を擧 |
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五二 權勢ある者を座位より下し、卑しき者を高うし、 |
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五二 権力ある者を王座から引きおろし、卑しい者を引き上げ、 |
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五三 飢たる者を美食に胞せ富る者を徒く返らせ給ふ |
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五三 飢ゑたる者を善きものに飽かせ、富める者を空しく去らせ給ふ。 |
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五三 飢えている者を良いもので飽かせ、富んでいる者を空腹のまま帰らせなさいます。 |
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五四 アブラハムと其子孫を窮なく憐むことを忘ずして |
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五四 また我らの先祖に吿げ給ひし如く、 |
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五四 主は、あわれみをお忘れにならず、その僕イスラエルを助けてくださいました、 |
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五五 其僕イスラエルを扶持たまへり是われらの先祖に言たまひしが如なり |
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五五 アブラハムと、その裔とに對する憐憫を、永遠に忘れじとて、僕イスラエルを助け給へり』 |
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五五 わたしたちの父祖アブラハムとその子孫とを/とこしえにあわれむと約束なさったとおりに」。 |
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五六 マリア エリサベツと居しこと三ケ月ばかりにて己が家に歸たりき |
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五六 斯てマリヤは、三月ばかりエリサベツと偕に居りて、己が家に歸れり。 |
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五六 マリヤは、エリサベツのところに三か月ほど滞在してから、家に帰った。 |
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五七 偖エリサベツ產期みちて男子を生り |
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五七 偖エリサベツ產む期みちて男子を生みたれば、 |
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五七 さてエリサベツは月が満ちて、男の子を産んだ。 |
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五八 その隣里の者また親戚のもの主がエリサベツに大なる慈悲を垂たまひし事を聞て偕に喜べり |
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五八 その最寄のもの親族の者ども主の大なる憐憫を、エリサベツに垂れ給ひしことを聞きて、彼とともに喜ぶ。 |
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五八 近所の人々や親族は、主が大きなあわれみを彼女におかけになったことを聞いて、共どもに喜んだ。 |
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五九 第八日に及ければ彼等子に割禮せんとて來り其父の名に因ザカリアと名んとせしに |
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五九 八日めになりて、其の子に割禮を行はんとて人々きたり、父の名に囚みてザカリヤと名づけんとせしに、 |
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五九 八日目になったので、幼な子に割礼をするために人々がきて、父の名にちなんでザカリヤという名にしようとした。 |
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六十 其母こたへて然す可らずヨハネと名べしと曰ければ |
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六〇 母こたへて言ふ『否、ヨハネと名づくべし』 |
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六〇 ところが、母親は、「いいえ、ヨハネという名にしなくてはいけません」と言った。 |
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六一 彼等エリサベツに對て曰けるは爾が親戚の中には此名を名し者なし |
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六一 かれら言ふ『なんぢの親族の中には此の名をつけたる者なし』 |
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六一 人々は、「あなたの親族の中には、そういう名のついた者は、ひとりもいません」と彼女に言った。 |
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六二 彼ら遂に其父に頭にて示いかに名んと欲か問たるに |
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六二 而して父に首にて示し、いかに名づけんと思ふか、問ひたるに、 |
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六二 そして父親に、どんな名にしたいのですかと、合図で尋ねた。 |
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六三 ザカリア寫字板を請て其名はヨハネと書しるしゝかば皆奇めり |
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六三 ザカリヤ書板を求めて『その名はヨハネなり』と書きしかば、みな怪しむ。 |
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六三 ザカリヤは書板を持ってこさせて、それに「その名はヨハネ」と書いたので、みんなの者は不思議に思った。 |
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六四 ザカリアの口たゞちに啓て舌とけ言ひて~を頌たり |
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六四 ザカリヤの口たちどころに開け、舌ゆるみ、物いひて~を讚めたり。 |
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六四 すると、立ちどころにザカリヤの口が開けて舌がゆるみ、語り出して神をほめたたえた。 |
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六五 その隣里に住たる人人みな懼ぬ又すべて此事を徧くユダヤの山地に傳播されしかば |
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六五 最寄に住む者みな懼をいだき、又すべて此等のこと徧くユダヤの山里に言ひ囃されたれば、 |
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六五 近所の人々はみな恐れをいだき、またユダヤの山里の至るところに、これらの事がことごとく語り伝えられたので、 |
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六六 聞もの皆これを心に藏て此子は如何なる者にか成んと曰り偖主の手かれと共に在き |
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六六 聞く者みな之を心にとめて言ふ『この子は如何なる者にか成らん』主の手かれと偕に在りしなり。 |
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六六 聞く者たちは皆それを心に留めて、「この子は、いったい、どんな者になるだろう」と語り合った。主のみ手が彼と共にあった。 |
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六七 父ザカリア聖靈に感され預言して曰けるは |
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六七 斯て父ザカリヤ聖靈にて滿され預言して言ふ |
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六七 父ザカリヤは聖霊に満たされ、預言して言った、 |
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六八 主なるイスラエルの~は讚美べき哉これ其民を眷顧て贖を爲し |
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六八 『讚むべきかな、主イスラエルの~、その民を顧みて贖罪をなし、 |
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六八 「主なるイスラエルの神は、ほむべきかな。神はその民を顧みてこれをあがない、 |
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六九 我儕の爲に拯救の角を其僕ダビデの家に挺たまへば也 |
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六九 我等のために救の角を、その僕ダビデの家に立て給へり。 |
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六九 わたしたちのために救の角を/僕ダビデの家にお立てになった。 |
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七十 古より聖なる預言者の口を以て言たまひしが如し |
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七〇 これぞ古へより聖預言者の口をもて言ひ給ひし如く、 |
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七〇 古くから、聖なる預言者たちの口によってお語りになったように、 |
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七一 即ち我儕を敵また凡て我儕を惡む者の手より脫す救なり |
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七一 我らを仇より、凡て我らを憎む者の手より、取り出したまふ救なる。 |
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七一 わたしたちを敵から、またすべてわたしたちを憎む者の手から、救い出すためである。 |
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七二 此は仁惠を我儕の先祖に施し又その聖約を忘じと也 |
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七二 我らの先祖に憐憫をたれ、その聖なる契約を思し、 |
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七二 こうして、神はわたしたちの父祖たちにあわれみをかけ、その聖なる契約、 |
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七三 是我儕の先祖祖アブラハムに立し所の誓にして |
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七三 我らの先祖アブラハムに立て給ひし御誓を忘れずして、 |
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七三 すなわち、父祖アブラハムにお立てになった誓いをおぼえて、 |
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七四 我儕を敵の手より救ひ我儕の生涯を |
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七四 我らを仇の手より救ひ、生涯、主の御前に、 |
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七四 わたしたちを敵の手から救い出し、 |
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七五 聖と義に於て懼なく主に事しめんと也 |
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七五 聖と義とをもて懼なく事へしめ給ふなり。 |
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七五 生きている限り、きよく正しく、みまえに恐れなく仕えさせてくださるのである。 |
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七六 嬰兒よ爾は至上者の預言者と稱られん蓋なんぢ主に先ちて行その路を備んと爲ばなり |
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七六 幼兒よ、なんぢは至高者の預言者と稱へられん。これ主の御前に先立ちゆきて其の道を備へ、 |
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七六 幼な子よ、あなたは、いと高き者の預言者と呼ばれるであろう。主のみまえに先立って行き、その道を備え、 |
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七七 ~の深き矜恤にョその罪を赦されて救れん事を其民に示さんため也 |
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七七 主の民に罪の赦による救を知らしむればなり。 |
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七七 罪のゆるしによる救を/その民に知らせるのであるから。 |
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七八 その矜恤にョて旭の光上より |
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七八 これ我らの~の深き憐憫によるなり。この憐憫によりて、朝の光、上より臨み、 |
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七八 これはわたしたちの神のあわれみ深いみこころによる。また、そのあわれみによって、日の光が上からわたしたちに臨み、 |
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七九 幽暗と死䕃に住る者を照し我儕の足を導きて平康なる路に至せんとて臨めり |
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七九 暗Kと死の蔭とに坐する者をてらし、我らの足を平和の路に導かん』 |
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七九 暗黒と死の陰とに住む者を照し、わたしたちの足を平和の道へ導くであろう」。 |
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八十 斯て嬰兒は漸成長し拐~ますます强健にしてイスラエルに顯るゝの日まで野に居り |
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八〇 斯て幼兒は漸に成長し、その靈强くなり、イスラエルに現るる日まで荒野にゐたり。 |
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八〇 幼な子は成長し、その霊も強くなり、そしてイスラエルに現れる日まで、荒野にいた。 |
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2章 |
一 當時天下の戸籍を査る詔命カイザル アウグストより出たり |
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一 その頃、天下の人を戶籍に著かすべき詔令カイザル・アウグストより出づ。 |
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一 そのころ、全世界の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た。 |
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二 この戸籍調査はクレニオ スリヤを管理し時の初次に行はれたりし也 |
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二 この戶籍登錄は、クレニオ、シリヤの總督たりし時に行はれし初のものなり。 |
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二 これは、クレニオがシリヤの総督であった時に行われた最初の人口調査であった。 |
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三 人みな戸籍に登んとて各その故邑に歸たり |
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三 さて人みな戶籍に著かんとて、各自その故クに歸る。 |
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三 人々はみな登録をするために、それぞれ自分の町へ帰って行った。 |
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四 ヨセフもダビデの宗族又血統なれば戸籍に登んとて |
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四 ヨセフもダビデの家系また血統なれば、旣に孕める許媳の妻マリヤとともに、戶籍に著かんとて、ガリラヤの町ナザレを出でてユダヤに上り、ダビデの町ベツレヘムといふ處に到りぬ。 |
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四 ヨセフもダビデの家系であり、またその血統であったので、ガリラヤの町ナザレを出て、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。 |
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五 已に孕る其聘定の妻マリアと共にガリラヤの邑ナザレより出てユダヤに上りダビデの邑ベテレヘムといふ所に至れり |
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五 ヨセフもダビデの家系また血統なれば、旣に孕める許媳の妻マリヤとともに、戶籍に著かんとて、ガリラヤの町ナザレを出でてユダヤに上り、ダビデの町ベツレヘムといふ處に到りぬ。 |
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五 それは、すでに身重になっていたいいなづけの妻マリヤと共に、登録をするためであった。 |
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六 此に居て產期滿ければ |
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六 此處に居るほどに、マリヤ月滿ちて、 |
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六 ところが、彼らがベツレヘムに滞在している間に、マリヤは月が満ちて、 |
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七 冢子を生それを布に裹て槽に臥せたり此は客舍は彼等の居處なかりしが故なり |
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七 初子をうみ之を布に包みて馬槽に臥させたり。旅舍にをる處なかりし故なり。 |
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七 初子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。客間には彼らのいる余地がなかったからである。 |
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八 近傍に羊を牧もの有けるが野に居て夜間その群を守たりしに |
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八 この地に野宿して夜、群を守りをる牧者ありしが、 |
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八 さて、この地方で羊飼たちが夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。 |
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九 主の天使きたりて主の榮光かれらを環照ければ牧者おほいに懼たり |
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九 主の使その傍らに立ち、主の榮光その周圍を照したれば、甚く懼る。 |
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九 すると主の御使が現れ、主の栄光が彼らをめぐり照したので、彼らは非常に恐れた。 |
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十 天使これに曰けるは懼ること勿れわれ萬民に關りたる大なる喜の音を爾曹に吿べし |
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一〇 御使かれらに言ふ『懼るな。視よ、この民、一般に及ぶべき、大なる歡喜の音信を我なんぢらに吿ぐ、 |
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一〇 御使は言った、「恐れるな。見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。 |
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十一 それ今日ダビデの邑に於て爾曹の爲に救主うまれ給へり是主たるキリストなり |
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一一 今日ダビデの町にて汝らの爲に救主うまれ給へり、これ主キリストなり。 |
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一一 きょうダビデの町に、あなたがたのために救主がお生れになった。このかたこそ主なるキリストである。 |
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十二 爾曹布にて裹し嬰兒の槽に臥たるを見ん是其徵なり |
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一二 なんぢら布にて包まれ、馬槽に臥しをる嬰兒を見ん、是その徵なり』 |
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一二 あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである」。 |
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十三 倏ち衆の天軍あらはれ天使と共に~を讚美て曰けるは |
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一三 忽ちあまたの天の軍勢、御使に加はり、~を讚美して言ふ、 |
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一三 するとたちまち、おびただしい天の軍勢が現れ、御使と一緒になって神をさんびして言った、 |
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十四 天上ところには榮光~にあれ地には平安人には恩澤あれ |
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一四 『いと高き處には榮光、~にあれ。地には平和、主のスび給ふ人にあれ』 |
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一四 「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように」。 |
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十五 天使等かれらを離て天に行ければ羊を牧もの互に曰けるは率ベテレヘムにゆき主の示し給へる其有し事を見んとて |
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一五 御使等さりて天に往きしとき、牧者たがひに語る『いざ、ベツレヘムにいたり、主の示し給ひし起れる事を見ん』 |
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一五 御使たちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼たちは「さあ、ベツレヘムへ行って、主がお知らせ下さったその出来事を見てこようではないか」と、互に語り合った。 |
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十六 急ぎ至りマリアとヨセフまた槽に臥たる嬰兒に尋遇り |
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一六 乃ち急ぎ往きて、マリヤとヨセフと、馬槽に臥したる嬰兒とに尋ねあふ。 |
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一六 そして急いで行って、マリヤとヨセフ、また飼葉おけに寝かしてある幼な子を捜しあてた。 |
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十七 既に見て此子につき天使の語し事を傳播ければ |
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一七 旣に見て、この子につき御使の語りしことを吿げたれば、 |
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一七 彼らに会った上で、この子について自分たちに告げ知らされた事を、人々に伝えた。 |
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十八 聞者みな羊を牧者の語る事を奇みたり |
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一八 聞く者はみな牧者の語りしことを怪しみたり。 |
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一八 人々はみな、羊飼たちが話してくれたことを聞いて、不思議に思った。 |
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十九 マリアは凡て是等の言を心に記て思想しぬ |
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一九 而してマリヤは凡て此等のことを心に留めて思ひ囘せり。 |
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一九 しかし、マリヤはこれらの事をことごとく心に留めて、思いめぐらしていた。 |
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二十 羊を牧者その見聞せる所みな己に語し所の如なるにより~を崇かつ讚美て返れり |
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二〇 牧者は御使の語りしごとく凡ての事を見聞せしによりて~を崇め、かつ讚美しつつ歸れり。 |
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二〇 羊飼たちは、見聞きしたことが何もかも自分たちに語られたとおりであったので、神をあがめ、またさんびしながら帰って行った。 |
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二一 子に割禮を行ふべき八日の日いたりければ其いまだ胎に寓ざる先に天の使者の稱し如く名をイエスと稱たり |
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二一 八日みちて幼兒に割禮を施すべき日となりたれば、未だ胎內に宿らぬ先に御使の名づけし如く、その名をイエスと名づけたり。 |
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二一 八日が過ぎ、割礼をほどこす時となったので、受胎のまえに御使が告げたとおり、幼な子をイエスと名づけた。 |
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二二 モーセの律法に循ひて潔の日滿ければ嬰兒を携て主に獻んが爲エルサレムに上れり |
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二二 モーセの律法に定めたる潔の日滿ちたれば、彼ら幼兒を携へて、エルサレムに上る。 |
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二二 それから、モーセの律法による彼らのきよめの期間が過ぎたとき、両親は幼な子を連れてエルサレムへ上った。 |
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二三 是主の例に初に生るゝ男子は主の聖者と稱べしと錄されたるが如し |
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二三 これは主の律法に『すべて初子に生るる男子は主につける聖なる者と稱へらるべし』と錄されたる如く、幼兒を主に獻げ、 |
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二三 それは主の律法に「母の胎を初めて開く男の子はみな、主に聖別された者と、となえられねばならない」と書いてあるとおり、幼な子を主にささげるためであり、 |
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二四 また主の律法に孰鳩一隻あるひは雛鴿二を献ふべしと言るに循ひて祭を行ん爲なり |
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二四 また主の律法に『山鳩一對あるひは家鴿の雛二羽』と云ひたるに遵ひて、犧牲を供へん爲なり。 |
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二四 また同じ主の律法に、「山ばと一つがい、または、家ばとのひな二羽」と定めてあるのに従って、犠牲をささげるためであった。 |
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二五 偖エルサレムにシメオンと云る人あり斯人は義かつ敬ありてイスラエルの民の慰められん事を俟る者なり聖靈その上に臨り |
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二五 視よ、エルサレムにシメオンといふ人あり。この人は義かつ敬虔にしてイスラエルの慰められんことを待ち望む。聖靈その上に在す。 |
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二五 その時、エルサレムにシメオンという名の人がいた。この人は正しい信仰深い人で、イスラエルの慰められるのを待ち望んでいた。また聖霊が彼に宿っていた。 |
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二六 また主のキリストを見ざる間は死じと聖靈にて示さる |
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二六 また聖靈に主のキリストを見ぬうちは死を見ずと示されたりしが、 |
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二六 そして主のつかわす救主に会うまでは死ぬことはないと、聖霊の示しを受けていた。 |
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二七 かれ聖靈に感じて~殿に入り兩親その子イエスを律法の例に循ひて行はんと携來りしに |
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二七 此のとき、御靈に感じて宮に入る。兩親その子イエスを携へ、この子のために律法の慣例に遵ひて、行はんとて來りたれば、 |
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二七 この人が御霊に感じて宮にはいった。すると律法に定めてあることを行うため、両親もその子イエスを連れてはいってきたので、 |
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二八 シメオン嬰兒を抱き~を讚美いひけるは |
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二八 シメオン、イエスを取りいだき、~を讚めて言ふ、 |
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二八 シメオンは幼な子を腕に抱き、神をほめたたえて言った、 |
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二九 主よ今その言に從ひて僕を安然に世をば逝せ給ふ |
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二九 『主よ、今こそ御言に循ひて僕を安らかに逝かしめ給ふなれ。 |
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二九 「主よ、今こそ、あなたはみ言葉のとおりに/この僕を安らかに去らせてくださいます、 |
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三十 我目すでに萬民の前に設たまひし救を見たり |
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三〇 わが目は、はや主の救を見たり。 |
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三〇 わたしの目が今あなたの救を見たのですから。 |
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三一 これ異邦人を照さん光なり |
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三一 是もろもろの民の前に備へ給ひし者、 |
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三一 この救はあなたが万民のまえにお備えになったもので、 |
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三一 また爾の民イスラエルの榮なり |
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三二 異邦人を照す光、御民イスラエルの榮光なり』 |
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三二 異邦人を照す啓示の光、み民イスラエルの栄光であります」。 |
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三三 その父母は嬰兒に就て語る事を奇をれり |
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三三 かく幼兒に就きて語ることを、其の父母あやしみ居たれば、 |
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三三 父と母とは幼な子についてこのように語られたことを、不思議に思った。 |
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三四 又シメオン彼等を祝て其母マリアに曰けるは此嬰兒はイスラエルの多の人の頽て且興らん事と誹駁を受ん其號に立らる |
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三四 シメオン彼らを祝して母マリヤに言ふ『視よ、この幼兒は、イスラエルの多くの人の或は倒れ、或は起たん爲に、また言ひ逆ひを受くる徵のために置かる。 |
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三四 するとシメオンは彼らを祝し、そして母マリヤに言った、「ごらんなさい、この幼な子は、イスラエルの多くの人を倒れさせたり立ちあがらせたりするために、また反対を受けるしるしとして、定められています。―― |
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三五 これ衆の心の念の露れんが爲なり又劔なんぢが心をも刺透べし |
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三五 ─劍なんぢの心をも刺し貫くべし─これは多くの人の心の念の顯れん爲なり』 |
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三五 そして、あなた自身もつるぎで胸を刺し貫かれるでしょう。――それは多くの人の心にある思いが、現れるようになるためです」。 |
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三六 アセルの支派パヌエルの女にアンナと云る預言者あり彼は甚老邁なり其處女なりしとき夫に適て七年ともに居たり |
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三六 爰にアセルの族パヌエルの娘に、アンナといふ預言者あり、年いたく老ゆ。處女のとき、夫に適きて七年ともに居り、 |
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三六 また、アセル族のパヌエルの娘で、アンナという女預言者がいた。彼女は非常に年をとっていた。むすめ時代にとついで、七年間だけ夫と共に住み、 |
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三七 この老女は齡おほよそ八十四歲の嫠なりしが殿を離ず夜も晝も斷食と祈禱を爲て~に事ふ |
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三七 八十四年寡婦たり。宮を離れず、夜も晝も、斷食と祈禱とを爲して~に事ふ。 |
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三七 その後やもめぐらしをし、八十四歳になっていた。そして宮を離れずに夜も昼も断食と祈とをもって神に仕えていた。 |
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三八 此時この老女も側に立て主を讚美し亦エルサレムにて贖を望る凡の人に此子の事を語れり |
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三八 この時すすみ寄りて、~に感謝し、また凡てエルサレムの拯贖を待ちのぞむ人に、幼兒のことを語れり。 |
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三八 この老女も、ちょうどそのとき近寄ってきて、神に感謝をささげ、そしてこの幼な子のことを、エルサレムの救を待ち望んでいるすべての人々に語りきかせた。 |
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三九 主の律法に循ひて悉く竟ければガリラヤの己が邑ナザレに歸たり |
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三九 さて主の律法に遵ひて、凡ての事を果したれば、ガリラヤに歸り、己が町ナザレに到れり。 |
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三九 両親は主の律法どおりすべての事をすませたので、ガリラヤへむかい、自分の町ナザレに帰った。 |
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四十 其子やゝ成長して精~强健に知慧みち~の恩寵その上に臨り |
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四〇 幼兒は漸に成長して健かになり、智慧みち、かつ~の惠その上にありき。 |
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四〇 幼な子は、ますます成長して強くなり、知恵に満ち、そして神の恵みがその上にあった。 |
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四一 偖その兩親每年に逾越の節筵にエルサレムに往しが |
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四一 斯てその兩親、過越の祭には年每にエルサレムに往きぬ。 |
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四一 さて、イエスの両親は、過越の祭には毎年エルサレムへ上っていた。 |
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四二 彼の十二歲の時また節筵の例に循ひエルサレムに上れり |
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四二 イエスの十二歲のとき、祭の慣例に遵ひて上りゆき、 |
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四二 イエスが十二歳になった時も、慣例に従って祭のために上京した。 |
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四三 節筵の日卒て返往けるに其子イエス エルサレムに留りぬ然るにヨセフと母これを知ず |
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四三 祭の日終りて歸る時、その子イエスはエルサレムに止りたまふ。兩親は之を知らずして、 |
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四三 ところが、祭が終って帰るとき、少年イエスはエルサレムに居残っておられたが、両親はそれに気づかなかった。 |
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四四 同行人の中に在ならんと意ひ一日程を行て親戚知音の者に尋しが |
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四四 道伴のうちに居るならんと思ひ、一日路ゆきて、親族・知邊のうちを尋ぬれど、 |
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四四 そして道連れの中にいることと思いこんで、一日路を行ってしまい、それから、親族や知人の中を捜しはじめたが、 |
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四五 遇ざりければ彼を尋てエルサレムに返り |
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四五 遇はぬに因りて復たづねつつエルサレムに歸り、 |
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四五 見つからないので、捜しまわりながらエルサレムへ引返した。 |
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四六 三日ののち殿にて遇かれ教師の中に坐し且聽かつ問ゐたり |
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四六 三日ののち、宮にてヘ師のなかに坐し、かつ聽き、かつ問ひゐ給ふに遇ふ。 |
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四六 そして三日の後に、イエスが宮の中で教師たちのまん中にすわって、彼らの話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。 |
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四七 聞者みな其知慧と其應對とを奇とせり |
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四七 聞く者は皆その聰と答とを怪しむ。 |
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四七 聞く人々はみな、イエスの賢さやその答に驚嘆していた。 |
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四八 兩親これを見て駭き母かれに曰けるは子よ何ぞ我儕に如此行たるや爾の父と我と憂て爾を尋たり |
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四八 兩親イエスを見て、いたく驚き、母は言ふ『兒よ、何故かかる事を我らに爲しぞ、視よ、汝の父と我と憂ひて尋ねたり』 |
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四八 両親はこれを見て驚き、そして母が彼に言った、「どうしてこんな事をしてくれたのです。ごらんなさい、おとう様もわたしも心配して、あなたを捜していたのです」。 |
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四九 イエス答けるは何故われを尋るや我は我父の事を務べきを知ざる乎 |
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四九 イエス言ひたまふ『何故われを尋ねたるか、我はわが父の家に居るべきを知らぬか』 |
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四九 するとイエスは言われた、「どうしてお捜しになったのですか。わたしが自分の父の家にいるはずのことを、ご存じなかったのですか」。 |
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五十 然ど兩親は其語る事を曉ず |
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五〇 兩親はその語りたまふ事を悟らず。 |
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五〇 しかし、両親はその語られた言葉を悟ることができなかった。 |
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五一 イエスこれと共に下りナザレに歸て彼等に順ひ居り其母これらの凡の事を心に藏ぬ |
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五一 斯てイエス彼等とともに下り、ナザレに往きて順ひ事へたまふ。其の母これらの事をことごとく心に藏む。 |
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五一 それからイエスは両親と一緒にナザレに下って行き、彼らにお仕えになった。母はこれらの事をみな心に留めていた。 |
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五二 イエス知慧も齡も彌揩~と人とにu愛せられたり |
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五二 イエス智慧も身のたけも彌揩~と人とにますます愛せられ給ふ。 |
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五二 イエスはますます知恵が加わり、背たけも伸び、そして神と人から愛された。 |
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3章 |
一 テベリオ カイザル在位の十五年ポンテオピラトはユダヤの方伯となりヘロデはガリラヤの分封の君と爲り其兄弟ピリポはイッリア及テラコニテの地の分封の君となりルサニアはアビレネの分封の君と爲り |
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一 テベリオ・カイザル在位の十五年ポンテオ・ピラトは、ユダヤの總督、へロデはガリラヤ分封の國守、その兄弟ピリポは、イツリヤ及びテラコニテの地の分封の國守、ルサニヤはアビレネ分封の國守たり、 |
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一 皇帝テベリオ在位の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟ピリポがイツリヤ・テラコニテ地方の領主、ルサニヤがアビレネの領主、 |
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二 アンナスとカヤパ祭司の長と爲たりし時ザカリアの子ヨハネ野に居て~の命令を受 |
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二 アンナスとカヤパとは大祭司たりしとき、~の言、荒野にてザカリヤの子ヨハネに臨む。 |
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二 アンナスとカヤパとが大祭司であったとき、神の言が荒野でザカリヤの子ヨハネに臨んだ。 |
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三 ヨルダンの邊なる四方の地に來り罪の赦を得させんが爲に悔 改のバプテスマを宜傳たり |
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三 斯てヨルダン河の邊なる四方の地にゆき、罪の赦を得さする悔改のバプテスマを宣傳ふ。 |
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三 彼はヨルダンのほとりの全地方に行って、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えた。 |
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四 預言者イザヤの言を載たる書に野に呼る人の聲あり云く主の道を備その徑を直せよ |
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四 預言者イザヤの言の書に『荒野に呼はる者の聲す。「主の道を備へ、その路すぢを直くせよ。 |
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四 それは、預言者イザヤの言葉の書に書いてあるとおりである。すなわち/「荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』。 |
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五 ゥの谷は埋られゥの山崗は夷られ屈曲たるは直く崎嶇は易せられ |
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五 もろもろの谷は埋められ、もろもろの山と岡とは平げられ、曲りたるは直く、嶮しきは坦かなる路となり、 |
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五 すべての谷は埋められ、すべての山と丘とは、平らにされ、曲ったところはまっすぐに、わるい道はならされ、 |
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六 人々みな~の救を見ことを得んと有が如し |
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六 人みな~の救を見ん」』と錄されたるが如し。 |
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六 人はみな神の救を見るであろう」。 |
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七 茲にバプテスマを受んとて來れる衆人にヨハネ曰けるは嗚呼蝮蛇の裔よ誰が爾曹に來らんとする怒を避べき事ふ吿しや |
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七 偖ヨハネ、バプテスマを受けんとて出できたる群衆にいふ『蝮の裔よ、誰が汝らに、來らんとする御怒を避くべき事を示したるぞ。 |
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七 さて、ヨハネは、彼からバプテスマを受けようとして出てきた群衆にむかって言った、「まむしの子らよ、迫ってきている神の怒りから、のがれられると、おまえたちにだれが教えたのか。 |
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八 然ば悔改に符る果を結べし爾曹心に我儕が先祖にアブラハム有と意こと勿われ爾曹に吿ん~は能この石をアブラハムの子と爲しむべし |
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八 さらば悔改に相應しき果を結べ。なんぢら「我らの父にアブラハムあり」と心のうちに言ひ始むな。我なんぢらに吿ぐ、~はよく此らの石よりアブラハムの子等を起し得給ふなり。 |
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八 だから、悔改めにふさわしい実を結べ。自分たちの父にはアブラハムがあるなどと、心の中で思ってもみるな。おまえたちに言っておく。神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起すことができるのだ。 |
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九 今や斧を樹の根に置る故に凡て善果を結ざる樹は伐れて火に投入らるゝ也 |
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九 斧ははや樹の根に置かる。然れば凡て善き果を結ばぬ樹は、伐られて火に投げ入れらるベし』 |
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九 斧がすでに木の根もとに置かれている。だから、良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれるのだ」。 |
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十 衆人ヨハネに問て曰けるは然ば我儕何を爲べき乎 |
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一〇 群衆ヨハネに問ひて言ふ『さらば我ら何を爲すべきか』 |
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一〇 そこで群衆が彼に、「それでは、わたしたちは何をすればよいのですか」と尋ねた。 |
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十一 答て曰けるは二の衣服を有る者は有ぬ者に分與よ食物を有る者も亦然すべし |
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一一 答へて言ふ『二つの下衣をもつ者は、有たぬ者に分與へよ。食物を有つ者もまた然せよ』 |
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一一 彼は答えて言った、「下着を二枚もっている者は、持たない者に分けてやりなさい。食物を持っている者も同様にしなさい」。 |
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十二 稅吏もバプテスマを受んとて來り曰けるは師よ我儕は何を爲べきか |
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一二 取稅人もバプテスマを受けんとて來りて言ふ『師よ、我ら何を爲すべきか』 |
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一二 取税人もバプテスマを受けにきて、彼に言った、「先生、わたしたちは何をすればよいのですか」。 |
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十三 答て曰けるは定例の稅銀の外に多く取こと勿れ |
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一三 答へて言ふ『定りたるものの外、なにをも促るな』 |
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一三 彼らに言った、「きまっているもの以上に取り立ててはいけない」。 |
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十四 兵卒も亦問て曰けるは我儕は何を爲べきや答て曰けるは人を强暴し或は誣訴ることを爲なかれ得ところの給料を以て足りと爲べし |
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一四 兵卒もまた問ひて言ふ『我らは何を爲すべきか』答へて言ふ『人を劫かし、また誣ひ訴ふな、己が給料をもて足れりとせよ』 |
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一四 兵卒たちもたずねて言った、「では、わたしたちは何をすればよいのですか」。彼は言った、「人をおどかしたり、だまし取ったりしてはいけない。自分の給与で満足していなさい」。 |
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十五 民懷望し時なれば衆人みな心にヨハネをキリストなるや否と忖度たりしに |
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一五 民、待ち望みゐたれば、みな心の中にヨハネをキリストならんかと論ぜしに、 |
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一五 民衆は救主を待ち望んでいたので、みな心の中でヨハネのことを、もしかしたらこの人がそれではなかろうかと考えていた。 |
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十六 ヨハネ之に答いひけるは我は水を以てバプテスマを爾曹に施へり我より能力ある者きたらん我は其履帶を解にも足ず彼は聖靈と火を以てバプテスマを爾曹に施はん |
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一六 ヨハネ凡ての人に答へて言ふ『我は水にて汝らにバプテスマを施す、されど我よりも能力ある者きたらん、我はその鞋の紐を解くにち足らず。彼は聖靈と火とにて汝らにバプテスマを施さん。 |
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一六 そこでヨハネはみんなの者にむかって言った、「わたしは水でおまえたちにバプテスマを授けるが、わたしよりも力のあるかたが、おいでになる。わたしには、そのくつのひもを解く値うちもない。このかたは、聖霊と火とによっておまえたちにバプテスマをお授けになるであろう。 |
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十七 手には箕を持て其禾場を潔め麥は斂て其藏にいれ殼は滅ざる火にて燒べし |
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一七 手には箕を持ちたまふ。禾場をきよめ、麥を倉に納めんとてなり。而して殼は消えぬ火にて焚きつくさん』 |
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一七 また、箕を手に持って、打ち場の麦をふるい分け、麦は倉に納め、からは消えない火で焼き捨てるであろう」。 |
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十八 ヨハネまた多端を以て勸をなし音を民に宣傳たり |
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一八 ヨハネこの他なほ、さまざまの勸をなして、民に音を宣傳ふ。 |
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一八 こうしてヨハネはほかにもなお、さまざまの勧めをして、民衆に教を説いた。 |
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十九 さて分封の君なるヘロデその兄弟ピリポの妻ヘロデヤの事および行ふ所の凡の惡事をヨハネに責られければ |
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一九 然るに國守ヘロデ、その兄弟の妻ヘロデヤの事につき、又その行ひたる凡ての惡しき事につきて、ヨハネに責められたれば、 |
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一九 ところで領主ヘロデは、兄弟の妻ヘロデヤのことで、また自分がしたあらゆる悪事について、ヨハネから非難されていたので、 |
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二十 猶も惡事を加へヨハネを獄に囚たり |
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二〇 更に復一つの惡しき事を加へて、ヨハネを獄に閉ぢこめたり。 |
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二〇 彼を獄に閉じ込めて、いろいろな悪事の上に、もう一つこの悪事を重ねた。 |
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二一 民みなバプテスマを受けるにイエスも亦バプテスマを受て祈るとき天ひらけ |
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二一 民みなバプテスマを受けし時、イエスもバプテスマを受けて祈りゐ給へば、天ひらけ、 |
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二一 さて、民衆がみなバプテスマを受けたとき、イエスもバプテスマを受けて祈っておられると、天が開けて、 |
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二二 聖靈鴿の如き狀にて其上に降ぬ又天より聲あり云なんぢは我愛子わが喜ぶ所の者なり |
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二二 聖靈形をなして鴿のごとく其の上に降り、かつ天より聲あり、曰く『なんぢは我が愛しむ子なり、我なんぢをスぶ』 |
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二二 聖霊がはとのような姿をとってイエスの上に下り、そして天から声がした、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。 |
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二三 時にイエス年おほよそ三十にして音を宣始む人々にヨセフの子と意れ給へりヨセフの父はヘリ |
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二三 イエスの、ヘを宣ベ始め給ひしは、年おほよそ三十の時なりき。人にはヨセフの子と思はれ給へり。ヨセフの父はヘリ、 |
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二三 イエスが宣教をはじめられたのは、年およそ三十歳の時であって、人々の考えによれば、ヨセフの子であった。ヨセフはヘリの子、 |
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二四 其父はマッタテ其父はレビ其父はメルキ其父はヤンナ其父はヨセフ二五 其父はマタテヤ其父はアモス其父はナオム其父はエスリ其父はナムガイ |
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二四 その先はマタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、 |
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二四 それから、さかのぼって、マタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、 |
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二五 其父はマタテヤ其父はアモス其父はナオム其父はエスリ其父はナムガイ |
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二五 マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、 |
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二五 マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、 |
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二六 其父はマアツ其父はマタテヤ其父はセメイ其父はヨセフ某父はユダ |
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二六 マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセク、ヨダ、 |
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二六 マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセク、ヨダ、 |
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二七 其父はヨハンナ其父はレサ其父はゼルバベル其父はシアテル某父はネリ |
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二七 ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、 |
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二七 ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、 |
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二八 其父はメルキ其父はアッデ其父はコサム其父はエルモダム其父はエル |
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二八 メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、 |
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二八 メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、 |
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二九 其父はヨセ其父はヱリヱゼル其父はヨオレム某父はマッタテ其父はレビ |
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二九 ヨセ、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、 |
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二九 ヨシュア、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、 |
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三十 其父はシメオン其父はユダ某父はヨセフ其父はヨナン其父はヱリアキム |
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三〇 シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナム、エリヤキム、 |
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三〇 シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナム、エリヤキム、 |
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三一 其父はメレア其父はマイナン其父はマタツタ某父はナタン其父はダビデ |
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三一 メレヤ、メナ、マタタ、ナタン、ダビデ、 |
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三一 メレヤ、メナ、マタタ、ナタン、ダビデ、 |
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三二 其父はエッサイ其父はオベデ其父はボアズ其父はサルモン其父はナアソン |
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三二 エツサイ、オベデ、ボアズ、サラ、ナアソン、 |
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三二 エッサイ、オベデ、ボアズ、サラ、ナアソン、 |
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三三 其父はアミナダブ其父はアラム其父はエスロン其父はパレス其父はユダ |
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三三 アミナダブ、アデミン、アルニ、エスロン、パレス、ユダ、 |
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三三 アミナダブ、アデミン、アルニ、エスロン、パレス、ユダ、 |
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三四 其父はヤコブ其父はイサク其父はアブラハム其父はテラ其父はナコル |
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三四 ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、 |
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三四 ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、 |
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三五 其父はサルク其父はラガヲ其父はパレク其父はヘベル其父はサラ |
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三五 セルグ、レウ、ペレグ、エベル、サラ、 |
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三五 セルグ、レウ、ペレグ、エベル、サラ、 |
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三六 其父はカイナン其父はアバザデ其父はセム其父はノア其父はラメク |
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三六 カイナン、アルパクサデ、セム、ノア、ラメク、 |
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三六 カイナン、アルパクサデ、セム、ノア、ラメク、 |
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三七 其父はマトサラ其父はエノク其父はヤレド其父はマレレヱル其父はカイナン其父はヱノス其父はセツ其父はアダム アダムは即ち~の子なり |
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三七 メトセラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、 |
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三七 メトセラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、 |
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三八 エノス、セツ、アダムに至る。アダムは~の子なり。 |
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三八 エノス、セツ、アダム、そして神にいたる。 |
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4章 |
一 偖イエス聖靈に感されてヨルダンより歸り靈に導かれ野に適て |
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一 偖イエス聖靈にて滿ち、ヨルダン河より歸り荒野にて、四十日のあひだ御靈に導かれ、 |
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一 さて、イエスは聖霊に満ちてヨルダン川から帰り、 |
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二 四十日惡魔に試らる此ゥ日なにをも食ず四十日畢てのち餓たり |
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二 惡魔に試みられ給ふ。この間なにをも食はず、日數滿ちてのち餓ゑ給ひたれば、 |
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二 荒野を四十日のあいだ御霊にひきまわされて、悪魔の試みにあわれた。そのあいだ何も食べず、その日数がつきると、空腹になられた。 |
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三 惡魔がれに曰けるは爾もし~の子ならば此石に命じてパンと爲せよ |
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三 惡魔いふ『なんぢ若し~の子ならば此の石に命じてパンと爲らしめよ』 |
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三 そこで悪魔が言った、「もしあなたが神の子であるなら、この石に、パンになれと命じてごらんなさい」。 |
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四 イエス答けるは人はパンのみにて生る者に非ず唯~の凡の言に由と錄されたり |
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四 イエス答へたまふ『「人の生くるはパンのみに由るにあらず」と錄されたり』 |
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四 イエスは答えて言われた、「『人はパンだけで生きるものではない』と書いてある」。 |
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五 惡魔また彼を高山に携ゆき一瞬間に天下の萬國を示して |
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五 惡魔またイエスを携へのぼりて瞬間に天下のもろもろの國を示して言ふ、 |
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五 それから、悪魔はイエスを高い所へ連れて行き、またたくまに世界のすべての国々を見せて |
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六 曰けるは此すべての權威と榮華を爾に予ん我これを委任たれば我が欲む者に之を予ふべし |
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六 『この凡ての權威と國々の榮華とを汝に與へん。我これを委ねられたれば、我が欲する者に與ふるなり。 |
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六 言った、「これらの国々の権威と栄華とをみんな、あなたにあげましょう。それらはわたしに任せられていて、だれでも好きな人にあげてよいのですから。 |
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七 故に若わが前に拜跪ば悉く爾の屬とならん |
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七 この故にもし我が前に拜せば、ことごとく汝の有となるべし』 |
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七 それで、もしあなたがわたしの前にひざまずくなら、これを全部あなたのものにしてあげましょう」。 |
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八 イエス答けるはサタンよ我後に退け獨主たる爾の~に拜跪これにのみ事べしと錄されたり |
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八 イエス答へて言ひたまふ『主なる汝の~を拜し、ただ之にのみ事ふべし」と錄されたり』 |
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八 イエスは答えて言われた、「『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。 |
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九 惡魔またイエスをエルサレムに携ゆき聖殿の頂に立て曰けるは爾もし~の子ならば此より己が身を投よ |
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九 惡魔またイエスをエルサレムに連れゆき、宮の頂上に立たせて言ふ、『なんぢ若し~の子ならば、此處より己が身を下に投げよ。 |
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九 それから悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、宮の頂上に立たせて言った、「もしあなたが神の子であるなら、ここから下へ飛びおりてごらんなさい。 |
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十 そは~その使者等に命じて爾を護せん |
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一〇 それは「なんぢの爲に御使たちに命じて守らしめ給はん」 |
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一〇 『神はあなたのために、御使たちに命じてあなたを守らせるであろう』とあり、 |
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十一 爾が足の石に觸ざるやう被等手にて扶べしと錄さる |
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一一 「かれら手にて汝を支へ、その足を石に打當つる事なからしめん」と錄されたるなり』 |
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一一 また、『あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らはあなたを手でささえるであろう』とも書いてあります」。 |
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十二 イエス答けるは主たる爾の~を試む可らずと云おけり |
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一二 イエス答へて言ひたまふ『主なる汝の~を試むベからず」と云ひてあり』 |
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一二 イエスは答えて言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』と言われている」。 |
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十三 惡魔この誘試みな畢て暫く彼を離たり |
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一三 惡魔あらゆる甞試を盡してのち暫くイエスを離れたり。 |
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一三 悪魔はあらゆる試みをしつくして、一時イエスを離れた。 |
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十四 イエス聖靈の能を以てガリラヤに歸しに其聲名あまねく四方の地に廣がりぬ |
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一四 イエス御靈の能力をもてガリラヤに歸り給へば、その聲聞あまねく四方の地に弘る。 |
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一四 それからイエスは御霊の力に満ちあふれてガリラヤへ帰られると、そのうわさがその地方全体にひろまった。 |
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十五 斯て奴等が會堂にて教を爲凡ての人々に榮を得たり |
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一五 期てゥ會堂にてヘをなし、凡ての人に崇められ給ふ。 |
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一五 イエスは諸会堂で教え、みんなの者から尊敬をお受けになった。 |
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十六 その長育し所なるナザレに來り常例の如く安息日に會堂に入て聖書を讀んとて立ければ |
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一六 偖その育てられ給ひし處の、ナザレに到り例のごとく、安息日に會堂に入りて聖書を讀まんとて立ち給ひしに、 |
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一六 それからお育ちになったナザレに行き、安息日にいつものように会堂にはいり、聖書を朗読しようとして立たれた。 |
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十七 預言者イザヤの書を予しにイエス其書を展て斯錄れたる所を見出せり |
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一七 預言者イザヤの書を與へたれば、其の書を繙きて、かく錄されたる所を見出し給ふ。 |
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一七 すると預言者イザヤの書が手渡されたので、その書を開いて、こう書いてある所を出された、 |
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十八 主の靈われに在す故に貧者に音を宣傳ん事を我に膏を沃て任じ心の傷る者を醫し又囚人に釋ん事と瞽者に見させん事を示し又壓制らるゝ者を縱ち |
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一八 『主の御靈われに在す。これ我に油を注ぎて貧しき者に音を宣べしめ、我を遣して囚人に赦を得ることと、盲人に見ゆる事とを吿げしめ、壓へらるる者を放ちて自由を與へしめ、 |
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一八 「主の御霊がわたしに宿っている。貧しい人々に福音を宣べ伝えさせるために、わたしを聖別してくださったからである。主はわたしをつかわして、囚人が解放され、盲人の目が開かれることを告げ知らせ、打ちひしがれている者に自由を得させ、 |
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十九 主の禧年を宣播んが爲に我を遣せり |
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一九 主の喜ばしき年を宣傳へしめ給ふなり』 |
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一九 主のめぐみの年を告げ知らせるのである」。 |
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二十 イエス書を捲その役者に予へて坐しければ會堂に在者みな目を注て視なせり |
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二〇 イエス書を卷き、係りの者に返して坐し給へば、會堂に居る者みな之に目を注ぐ。 |
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二〇 イエスは聖書を巻いて係りの者に返し、席に着かれると、会堂にいるみんなの者の目がイエスに注がれた。 |
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二一 イエス彼等に曰けるは此錄れたる事は今日なんぢらの前に應り |
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二一 イエス言ひ出でたまふ『この聖書は今日なんぢらの耳に成就したり』 |
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二一 そこでイエスは、「この聖句は、あなたがたが耳にしたこの日に成就した」と説きはじめられた。 |
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二二 衆かれを稱讚その口より出る所の恩惠の言を奇み曰けるは此はヨセフの子に非や |
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二二 人々みなイエスを譽め、又その口より出づる惠の言を怪しみて言ふ『これヨセフの子ならずや』 |
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二二 すると、彼らはみなイエスをほめ、またその口から出て来るめぐみの言葉に感嘆して言った、「この人はヨセフの子ではないか」。 |
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二三 イエス彼等に曰けるは爾曹かならず我に諺を引て醫者みづからを醫せ我儕が聞し所のカペナウンにて行し事を自己の家クなる此土にも行べしと云ん |
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二三 イエス言ひ給ふ『なんぢら必ず我に俚諺を引きて「醫者よ、みづから己を醫せ、カペナウムにて有りしといふ、我らが聞ける事どもを己がクなる此の地にても爲せ」と言はん』 |
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二三 そこで彼らに言われた、「あなたがたは、きっと『医者よ、自分自身をいやせ』ということわざを引いて、カペナウムで行われたと聞いていた事を、あなたの郷里のこの地でもしてくれ、と言うであろう」。 |
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二四 また曰けるは我まことに爾曹に吿ん預言者その家クにては敬重るゝ者に非ず |
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二四 また言ひ給ふ『われ誠に汝らに吿ぐ、預言者は己がクにて喜ぼるることなし。 |
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二四 それから言われた、「よく言っておく。預言者は、自分の郷里では歓迎されないものである。 |
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二五 われ誠を以て爾曹に吿んエリヤの時三年と六ケ月天とぢて徧地おほいなる饑饉なりし其時イスラエルの中に多の嫠ありしかど |
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二五 われ實をもて汝らに吿ぐ、エリヤのとき三年六个月、天とぢて、全地大なる饑饉なりしが、イスラエルの中に多くの寡婦ありたれど、 |
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二五 よく聞いておきなさい。エリヤの時代に、三年六か月にわたって天が閉じ、イスラエル全土に大ききんがあった際、そこには多くのやもめがいたのに、 |
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二六 エリヤは其一人へだに遣されず只シドンなるサレパタの一人の嫠に遣されたり |
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二六 エリヤは其の一人にすら遣されず、唯シドンなるサレブタの一人の寡婦にのみ遣されたり。 |
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二六 エリヤはそのうちのだれにもつかわされないで、ただシドンのサレプタにいるひとりのやもめにだけつかわされた。 |
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二七 また預言者エリシャの時にイスラエルの中に多の癩者ありしかど其一人だに潔られず惟スリヤのナーマンのみ潔られたり |
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二七 また預言者エリシヤの時、イスラエルの中に多くの癲病人ありしが、其の一人だに潔められず、唯シリヤのナアマンのみ潔められたり』 |
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二七 また預言者エリシャの時代に、イスラエルには多くの重い皮膚病にかかった多くの人がいたのに、そのうちのひとりもきよめられないで、ただシリヤのナアマンだけがきよめられた」。 |
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二八 會堂に在し者これを聞て大に憤ほり |
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二八 會堂にをる者みな之を聞きて憤恚に滿ち、 |
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二八 会堂にいた者たちはこれを聞いて、みな憤りに満ち、 |
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二九 起てイエスを邑の外に出し投下さんとて其邑の建たる山の崖にまで曳往り |
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二九 起ちてイエスを町より逐ひ出し、その町の建ちたる山の崖に引き往きて、投げ落さんとせしに、 |
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二九 立ち上がってイエスを町の外へ追い出し、その町が建っている丘のがけまでひっぱって行って、突き落そうとした。 |
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三十 然にイエス彼等の中を徑行て去ぬ |
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三〇 イエスその中を通りて去り給ふ。 |
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三〇 しかし、イエスは彼らのまん中を通り抜けて、去って行かれた。 |
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三一 ガリラヤのカペナウンと云る邑に至りて安息日ごとに衆人を教しに |
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三一 斯てガリラヤの町カペナウムに下りて、安息日ごとに人をヘへ給へば、 |
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三一 それから、イエスはガリラヤの町カペナウムに下って行かれた。そして安息日になると、人々をお教えになったが、 |
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三二 その言權威有ければ衆人その教に驚けり |
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三二 人々そのヘに驚きあへり。その言、權威ありたるに因る。 |
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三二 その言葉に権威があったので、彼らはその教に驚いた。 |
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三三 會堂に汚たる鬼の靈に憑れたる人あり大聲に喊叫いひけるは |
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三三 會堂に穢れし惡鬼の靈に憑かれたる人あり、大聲に叫びて言ふ、 |
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三三 すると、汚れた悪霊につかれた人が会堂にいて、大声で叫び出した、 |
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三四 噫ナザレのイエスよ我儕なんぢと何の與あらんや爾きたりて我儕を喪すか我なんぢは誰なる乎を知すなはち~の聖なる者なり |
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三四 『ああ、ナザレのイエスよ、我らは汝となにの關係あらんや。我らを亡さんとて來給ふか。我はなんぢの誰なるを知る、~の聖者なり』 |
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三四 「ああ、ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。 |
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三五 イエス之を責て曰けるは聲を出こと勿れ其處を出よ惡鬼つひに其人を衆人の中に仆し傷ずして出 |
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三五 イエス之を禁めて言ひ給ふ、『默せ、その人より出でよ』惡鬼その人を人々の中に倒し、傷つけずして出づ。 |
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三五 イエスはこれをしかって、「黙れ、この人から出て行け」と言われた。すると悪霊は彼を人なかに投げ倒し、傷は負わせずに、その人から出て行った。 |
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三六 衆人みな驚き互に語いひけるは權威と能力を有て汚たる鬼に命ぜしかば出去り是いかなる道ぞや |
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三六 みな驚き、語り合ひて言ふ『これ如何なる言ぞ、權威と能力とをもて命ずれば、穢れし惡鬼すら出で去る』 |
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三六 みんなの者は驚いて、互に語り合って言った、「これは、いったい、なんという言葉だろう。権威と力とをもって汚れた霊に命じられると、彼らは出て行くのだ」。 |
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三七 是に於てイエスの聲名徧く此四方の地に揚りぬ |
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三七 爰にイエスの噂あまねく四方の地に弘りたり。 |
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三七 こうしてイエスの評判が、その地方のいたる所にひろまっていった。 |
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三八 イエス會堂を出てシモンの家に入しにシモンの妻母おもき熱病を患ひ居たりき |
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三八 イエス會堂を立ち出でて、シモンの家に入り給ふ。シモンの外姑おもき熱を患ひ居たれば、人々これが爲にイエスに願ふ。 |
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三八 イエスは会堂を出てシモンの家におはいりになった。ところがシモンのしゅうとめが高い熱を病んでいたので、人々は彼女のためにイエスにお願いした。 |
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三九 衆人之が爲にイエスに求ければ其傍に立て熱を斥しに熱退けり婦直に起て彼等に事たり |
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三九 その傍らに立ちて熱を責めたまへば、熱去りて女たちどころに起きて彼らに事ふ。 |
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三九 そこで、イエスはそのまくらもとに立って、熱が引くように命じられると、熱は引き、女はすぐに起き上がって、彼らをもてなした。 |
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四十 日の入とき各樣の病を患たる者をもてる人々皆其をイエスに携來ければ一々其上に手を按て醫せり |
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四〇 日のいる時さまざまの病を患ふ者をもつ人、みな之をイエスに連れ來れば、一々その上に手を置きて醫し給ふ。 |
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四〇 日が暮れると、いろいろな病気になやむ者をかかえている人々が、皆それをイエスのところに連れてきたので、そのひとりびとりに手を置いて、おいやしになった。 |
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四一 惡鬼も亦多の人々を出さり喊叫て爾は~の子キリスト也と云り然に之を斥て言ふことを容ざりき惡鬼其キリストなるを識ば也 |
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四一 惡鬼もまた多くの人より出でて叫びつつ言ふ『なんぢは~の子なり』之を責めて物言ふことを免し給はず、惡鬼そのキリストなるを知るに因りてなり。 |
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四一 悪霊も「あなたこそ神の子です」と叫びながら多くの人々から出ていった。しかし、イエスは彼らを戒めて、物を言うことをお許しにならなかった。彼らがイエスはキリストだと知っていたからである。 |
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四二 明旦イエス出て人なき處に往ければ衆人尋來て其離去ことを止む |
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四二 明る朝イエス出でて寂しき處にゆき給ひしが、群衆たづねて御許に到り、その去り往くことを止めんとせしに、 |
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四二 夜が明けると、イエスは寂しい所へ出て行かれたが、群衆が捜しまわって、みもとに集まり、自分たちから離れて行かれないようにと、引き止めた。 |
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四三 イエス曰けるは我又他のク村にも~の國の音を宣傳ざるを得ず蓋我之が爲に遣るれば也 |
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四三 イエス言ひ給ふ『われ又ほかの町々にも~の國の音を宣傳ヘざるを得ず、わが遣されしは之が爲なり』 |
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四三 しかしイエスは、「わたしは、ほかの町々にも神の国の福音を宣べ伝えねばならない。自分はそのためにつかわされたのである」と言われた。 |
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四四 斯てガリラヤのゥ會堂にて道を宣傳たり |
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四四 斯てユダヤのゥ會堂にてヘを宣ベたまふ。 |
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四四 そして、ユダヤの諸会堂で教を説かれた。 |
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5章 |
一 衆人~の道を聽んとて擠擁ける時イエス ゲネサレの湖の濱に立て |
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一 群衆おし迫りて~の言を聽きをる時、イエス、ゲネサレの湖のほとりに立ちて、 |
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一 さて、群衆が神の言を聞こうとして押し寄せてきたとき、イエスはゲネサレ湖畔に立っておられたが、 |
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二 磯に二艘の舟あるを見る漁の者は舟を離て網を洗をれり |
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二 渚に二艘の舟の寄せあるを見たまふ、漁人は舟をいでて網を洗ひ居たり。 |
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二 そこに二そうの小舟が寄せてあるのをごらんになった。漁師たちは、舟からおりて網を洗っていた。 |
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三 其一艘はシモンの舟なりしがイエス之にのり請て岸より少許はなれ坐して舟中より衆人を教ふ |
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三 イエスその一艘なるシモンの舟に乘り、彼に請ひて陸より少しく押し出さしめ、坐して舟の中より群衆をヘへたまふ。 |
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三 その一そうはシモンの舟であったが、イエスはそれに乗り込み、シモンに頼んで岸から少しこぎ出させ、そしてすわって、舟の中から群衆にお教えになった。 |
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四 教竟てシモンに曰けるは澳へいで網を下して漁れ |
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四 語り終へてシモンに言ひたまふ『深處に乘りいだし、網を下して漁れ』 |
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四 話がすむと、シモンに「沖へこぎ出し、網をおろして漁をしてみなさい」と言われた。 |
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五 シモン答けるは師よわれら終夜はたらきしかど所得なかりき然ど爾の言に從ひて網を下さん |
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五 シモン答へて言ふ『君よ、われら終夜、勞したるに何をも得ざりき、然れど御言に隨ひて網を下さん』 |
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五 シモンは答えて言った、「先生、わたしたちは夜通し働きましたが、何も取れませんでした。しかし、お言葉ですから、網をおろしてみましょう」。 |
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六 既に下して魚を圍ること甚だ多く網さけかゝりければ |
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六 期て然せしに魚の夥多しき群を圍みて網裂けかかりたれば、 |
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六 そしてそのとおりにしたところ、おびただしい魚の群れがはいって、網が破れそうになった。 |
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七 いま一艘なる舟の侶を招きて來り助しめしに彼等が來し時其魚二艘の舟に牣て沈んばかりなりし |
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七 他の一艘の舟にをる組の者を差招きて來り助けしむ。來りて魚を二艘の舟に滿したれば、舟沈まんばかりになりぬ。 |
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七 そこで、もう一そうの舟にいた仲間に、加勢に来るよう合図をしたので、彼らがきて魚を両方の舟いっぱいに入れた。そのために、舟が沈みそうになった。 |
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八 シモンペテロ之を見てイエスの足下に俯て主よ我を離たまへ我は罪人なりと曰り |
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八 シモン・ペテロ之を見て、イエスの膝下に平伏して言ふ『主よ、我を去りたまへ。我は罪ある者なり』 |
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八 これを見てシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれ伏して言った、「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者です」。 |
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九 是シモンおよび偕に在し者みな漁し所の魚の夥しきに驚ける也 |
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九 これはシモンも偕に居る者もみな漁りし魚の夥多しきに驚きたるなり。 |
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九 彼も一緒にいた者たちもみな、取れた魚がおびただしいのに驚いたからである。 |
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十 シモンの侶なるゼベダイの子ヤコブとヨハネも亦然りイエス シモンに曰けるは懼るゝ勿れなんぢ今より人を獲べし |
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一〇 ゼベダイの子にしてシモンの侶なるヤコブもヨハネも同じく驚けり。イエス、シモンに言ひたまふ『懼るな。なんぢ今より後、人を漁らん』 |
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一〇 シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブとヨハネも、同様であった。すると、イエスがシモンに言われた、「恐れることはない。今からあなたは人間をとる漁師になるのだ」。 |
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十一 彼等舟を岸に寄おき一切を捨てイエスに從へり |
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一一 かれら舟を陸につけ、一切を棄ててイエスに從へり。 |
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一一 そこで彼らは舟を陸に引き上げ、いっさいを捨ててイエスに従った。 |
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十二 イエスある邑に居しとき身ことごとく癩病を患る者ありイエスを見て俯伏ねがひ曰けるは主もし聖旨にかなふときは我を潔なし得べし |
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一二 イエス或る町に居給ふとき、視よ、全身癩病をわづらふ者あり。イエスを見て平伏し、願ひて言ふ『主よ、御意ならば、我を潔くなし給ふを得ん』 |
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一二 イエスがある町におられた時、全身重い皮膚病にかかった人がそこにいた。イエスを見ると、顔を地に伏せて願って言った、「主よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。 |
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十三 イエス手を伸彼に按て我心にかなへり潔なれと曰ければ直に癩病愈たり |
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一三 イエス手をのべ彼につけて『わが意なり、潔くなれ』と言ひ給へば、直ちに癩病されり。 |
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一三 イエスは手を伸ばして彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、重い皮膚病がただちに去ってしまった。 |
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十四 イエス彼を戒めて曰けるは人に吿ること勿れたゞ往て己を祭司に示かつ潔られし爲にモーセが命ぜし如く獻物をなし證據を彼等に爲よ |
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一四 イエス之を誰にも語らぬやうに命じ、かつ言ひ給ふ『ただ往きて己を祭司に見せ、モーセが命じたるごとく汝の潔のために獻物して、人々に證せよ』 |
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一四 イエスは、だれにも話さないようにと彼に言い聞かせ、「ただ行って自分のからだを祭司に見せ、それからあなたのきよめのため、モーセが命じたとおりのささげ物をして、人々に証明しなさい」とお命じになった。 |
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十五 然どもイエスの聲名ますます揚りて許多の人々或は教を聽んとし或は病を醫れんとて集り來れり |
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一五 されど彌々イエスの事ひろまりて、大なる群衆あるひはヘを聽かんとし、或は病を醫されんとして集り來りしが、 |
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一五 しかし、イエスの評判はますますひろまって行き、おびただしい群衆が、教を聞いたり、病気をなおしてもらったりするために、集まってきた。 |
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十六 イエス常に人なき處に退きて祈り給ひき |
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一六 イエス寂しき處に退きて祈り給ふ。 |
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一六 しかしイエスは、寂しい所に退いて祈っておられた。 |
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十七 一日イエス教を爲せる時パリサイの人と教法師ガリラヤのゥクユダヤ エルサレムより來て此に坐しぬ彼等の病を醫すべき主の能顯はれたり |
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一七 或日イエスヘをなし給ふとき、ガリラヤの村々、ユダヤ及びエルサレムより來りしパリサイ人、ヘ法學者ら、そこに坐しゐたり、病を醫すべき主の能力イエスと偕にありき。 |
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一七 ある日のこと、イエスが教えておられると、ガリラヤやユダヤの方々の村から、またエルサレムからきたパリサイ人や律法学者たちが、そこにすわっていた。主の力が働いて、イエスは人々をいやされた。 |
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十八 或人癱瘋を患たる者を牀に載て舁來り之を家に入イエスの前に置んと欲ども |
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一八 視よ、人々、中風を病める者を、床にのせて擔ひきたり、之を家に入れて、イエスの前に置かんとすれど、 |
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一八 その時、ある人々が、ひとりの中風をわずらっている人を床にのせたまま連れてきて、家の中に運び入れ、イエスの前に置こうとした。 |
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十九 群集にて舁入べき方なかりければ屋上に升り瓦を取除て其人を牀のまゝ衆人の中へ縋下しイエスの前に置り |
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一九 群衆によりて擔ひ入るべき道を得ざれば、屋根にのぼり、瓦を取り除けて床のまま、人々の中にイエスの前に縋り下せり。 |
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一九 ところが、群衆のためにどうしても運び入れる方法がなかったので、屋根にのぼり、瓦をはいで、病人を床ごと群衆のまん中につりおろして、イエスの前においた。 |
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二十 イエスその信あるを見て患者に人よ爾の罪赦さると曰ければ |
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二〇 イエス彼らの信仰を見て言ひたまふ『人よ、汝の罪ゆるされたり』 |
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二〇 イエスは彼らの信仰を見て、「人よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。 |
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二一 學者とパリサイの人々心に思出けるは此瀆ことを言者は誰ぞ~より外に誰か罪を赦すことを得ん |
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二一 爰に學者。パリサイ人ら論じ出でて言ふ『瀆言をいふ此の人は誰ぞ、~より他に誰か罪を赦すことを得べき』 |
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二一 すると律法学者とパリサイ人たちとは、「神を汚すことを言うこの人は、いったい、何者だ。神おひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるか」と言って論じはじめた。 |
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二二 イエスその意を知て答いひけるは何を爾曹心の中に論ずるや |
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二二 イエス彼らの論ずる事をさとり、答へて言ひ給ふ『なにを心のうちに論ずるか。 |
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二二 イエスは彼らの論議を見ぬいて、「あなたがたは心の中で何を論じているのか。 |
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二三 爾の罪赦さるといふと起て行と言と孰か易き |
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二三 「なんぢの罪ゆるされたり」と言ふと「起きて歩め」と言ふと孰か易き、 |
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二三 あなたの罪はゆるされたと言うのと、起きて歩けと言うのと、どちらがたやすいか。 |
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二四 それ人の子地にて罪をゆるすの權威あることを爾曹に知せんとて遂に癱瘋の人に我なんぢに吿おきて牀をとり家に歸れと曰ければ |
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二四 人の子の地にて罪をゆるす權威あることを、汝らに知らせん爲に』l中風を病める者に言ひ給ふl『なんぢに吿ぐ、起きよ、床をとりて家に往け』 |
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二四 しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威を持っていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに対して言い、中風の者にむかって、「あなたに命じる。起きよ、床を取り上げて家に帰れ」と言われた。 |
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二五 その人衆の前にて直に起て臥居たる牀をとり~を崇て己が家に歸ぬ |
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二五 かれ立刻に人々の前にて起きあがり、臥しゐたる床をとりあげ、~を崇めつつ己が家に歸りたり。 |
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二五 すると病人は即座にみんなの前で起きあがり、寝ていた床を取りあげて、神をあがめながら家に帰って行った。 |
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二六 衆人みな駭きて~を崇かつ大に畏懼て曰けるは我儕今日奇異なる事を見たり |
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二六 人々みな甚く驚きて~をあがめ懼に滿ちて言ふ『今日われら珍しき事を見たり』 |
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二六 みんなの者は驚嘆してしまった。そして神をあがめ、おそれに満たされて、「きょうは驚くべきことを見た」と言った。 |
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二七 此後イエス出てレビと云る稅吏の税關に坐し居けるを見て我に從へと曰ければ |
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二七 この事の後イエス出でて、レビといふ取稅人の收稅所に坐しをるを見て『われに從へ』と言ひ給へば、 |
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二七 そののち、イエスが出て行かれると、レビという名の取税人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。 |
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二八 レビ一切を捨おき起て從へり |
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二八 一切を棄ておき、起ちて從へり。 |
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二八 すると、彼はいっさいを捨てて立ちあがり、イエスに従ってきた。 |
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二九 レビ己の家にてイエスの爲に豐盛なる筵を設しに稅吏また他の人々も共に筵に坐したる者多かりければ |
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二九 レビ己が家にて、イエスの爲に大なる饗宴を設けしに、取稅人および他の人々も多く、食事の席に列りゐたれば、 |
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二九 それから、レビは自分の家で、イエスのために盛大な宴会を催したが、取税人やそのほか大ぜいの人々が、共に食卓に着いていた。 |
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三十 其所の學者とパリサイの人イエスの弟子に怨言曰けるは爾曹稅吏また罪ある人々と共に飮食するは何故ぞ |
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三〇 パリサイ人および其の曹輩の學者ら、イエスの弟子たちに向ひ、呟きて言ふ『なにゆゑ汝らは取稅人・罪人らと共に飮食するか』 |
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三〇 ところが、パリサイ人やその律法学者たちが、イエスの弟子たちに対してつぶやいて言った、「どうしてあなたがたは、取税人や罪人などと飲食を共にするのか」。 |
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三一 イエス答て曰けるは康强なる者は醫者の助を需ず惟病ある者これを需む |
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三一 イエス答へて言ひたまふ『健康なる者は醫者を要せず、ただ病ある者、これを要す。 |
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三一 イエスは答えて言われた、「健康な人には医者はいらない。いるのは病人である。 |
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三二 わが來るは義人を召く爲に非ず罪ある人を召て悔改させんが爲なり |
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三二 我は正しき者を招かんとにあらで、罪人を招きて悔改めさせんとて來れり』 |
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三二 わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである」。 |
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三三 彼等イエスに曰けるはヨハネの弟子は屢斷食また祈禱をなすパリサイの弟子も亦然り然るに爾の弟子飮こと食ことを爲すは何故ぞ |
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三三 彼らイエスに言ふ『ヨハネの弟子等は、しばしば斷食し祈禱し、パリサイ人の弟子たちも亦然するに、汝の弟子たちは、飮食するなり』 |
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三三 また彼らはイエスに言った、「ヨハネの弟子たちは、しばしば断食をし、また祈をしており、パリサイ人の弟子たちもそうしているのに、あなたの弟子たちは食べたり飲んだりしています」。 |
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三四 イエス曰けるは新カの朋友その新カと一處に居間は之に斷食なさしむる事を得んや |
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三四 イエス言ひたまふ『新カの友だち新カと偕にをるうちは、彼らに斷食せしめ得んや。 |
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三四 するとイエスは言われた、「あなたがたは、花婿が一緒にいるのに、婚礼の客に断食をさせることができるであろうか。 |
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三五 將來新カと別るゝ日いたらん其日には斷食すべきなり |
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三五 然れど日來りて新カをとられん、その日には斷食せん』 |
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三五 しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう」。 |
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三六 譬を以て曰けるは新衣を裁取て舊衣も補ふ者わらじ若然せば新衣をも壞ひ且新より取たる布は舊ものと合ず |
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三六 イエスまた譬を言ひ給ふ『たれも新しき衣を切り取りて、舊き衣を繕ふ者はあらじ。もし然せば新しきものも破れ、かつ新しきものより取りたる裂も舊きものに合はじ。 |
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三六 それからイエスはまた一つの譬を語られた、「だれも、新しい着物から布ぎれを切り取って、古い着物につぎを当てるものはない。もしそんなことをしたら、新しい着物を裂くことになるし、新しいのから取った布ぎれも古いのに合わないであろう。 |
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三七 また新酒を舊革袋に盛る者あらじ若しかせば新酒は其袋をはりさき漏出かつ革袋も壞るべし |
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三七 誰も新しき葡萄酒を、ふるき革囊に入るることは爲じ。もし然せば葡萄酒は囊をはりさき漏れ出でて囊も廢らん。 |
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三七 まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、新しいぶどう酒は皮袋をはり裂き、そしてぶどう酒は流れ出るし、皮袋もむだになるであろう。 |
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三八 新酒は新革袋に盛べき者ぞ斯てこそ兩ながら存なれ |
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三八 新しき葡萄酒は、新しき革囊に入るべきなり。 |
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三八 新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。 |
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三九 舊酒を飮て立刻に新酒を欲者は有じ是舊は尤も好と云ばなり |
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三九 誰も舊き葡萄酒を飮みてのち、新しき葡萄酒を望む者はあらじ「舊きは善し」と云へばなり』 |
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6章 |
一 逾越節の二日ののち首の安息日イエス麥の畑を徑行しに其弟子麥の穗を摘これを手にて搏くらひしかば |
三九 まただれも、古い酒を飲んでから、新しいのをほしがりはしない。『古いのが良い』と考えているからである」。 |
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一 イエス安息日に麥畠を過ぎ給ふとき、弟子たち穗を摘み、手にて揉みつつ食ひたれば、 |
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一 ある安息日にイエスが麦畑の中をとおって行かれたとき、弟子たちが穂をつみ、手でもみながら食べていた。 |
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二 或パリサイの人かれらに曰けるは爾曹安息日に行まじき事を行は何故ぞ |
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二 パリサイ人のうち或者ども言ふ『なんぢらは何ゆゑ安息日に爲まじき事をするか』 |
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二 すると、あるパリサイ人たちが言った、「あなたがたはなぜ、安息日にしてはならぬことをするのか」。 |
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三 イエス答て曰けるはダビデおよび從に在し者の饑しとき行たる事を未だ讀ざる平 |
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三 イエス答へて言ひ給ふ『ダビデその伴へる人々とともに飢ゑしとき、爲しし事をすら讀まぬか。 |
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三 そこでイエスが答えて言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが飢えていたとき、ダビデのしたことについて、読んだことがないのか。 |
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四 即ち~の殿に入たゞ祭司の外は食まじき供物のパンを取て食かつ從に在し者にも予たり |
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四 即ち~の家に入りて、祭司の他は食ふまじき供のパンを取りて食ひ、己と偕なる者にも與へたり』 |
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四 すなわち、神の家にはいって、祭司たちのほかだれも食べてはならぬ供えのパンを取って食べ、また供の者たちにも与えたではないか」。 |
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五 又曰けるは人の子は安息日にも主たる也 |
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五 また言ひたまふ『人の子は安息日の主たるなり』 |
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五 また彼らに言われた、「人の子は安息日の主である」。 |
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六 また一の安息日にイエス會堂に入て教ふ此に右の手枯たる人ありければ |
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六 又ほかの安息日にイエス會堂に入りてヘをなし給ひしに、此處に人あり、其の右の手なえたり。 |
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六 また、ほかの安息日に会堂にはいって教えておられたところ、そこに右手のなえた人がいた。 |
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七 學者とパリサイの人イエスこれを安息日に醫ならんかと窺ひぬ蓋かれを訴んと欲ばなり |
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七 學者・パリサイ人ら、イエスを訴ふる廉を見出さんと思ひて、安息日に人を醫すや否やを窺ふ。 |
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七 律法学者やパリサイ人たちは、イエスを訴える口実を見付けようと思って、安息日にいやされるかどうかをうかがっていた。 |
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八 イエスその意を知て手なへたる人に起て中に立よと曰ければ其人おきて立り |
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八 イエス彼らの念を知りて手なえたる人に『起きて中に立て』と言ひ給へば、起きて立てり。 |
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八 イエスは彼らの思っていることを知って、その手のなえた人に、「起きて、まん中に立ちなさい」と言われると、起き上がって立った。 |
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九 イエス曰けるは我なんぢらに問ん安息日に善を行と惡を行と又生を救ると殺と孰をか行べき |
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九 イエス彼らに言ひ給ふ『われ汝らに問はん、安息日に善をなすと惡をなすと、生命を救ふと亡すと、孰かよき』 |
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九 そこでイエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたに聞くが、安息日に善を行うのと悪を行うのと、命を救うのと殺すのと、どちらがよいか」。 |
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十 遂に衆人を環視て其人に手を伸よと曰ければ彼その如せしに手すなはち愈て他の手の如くなれり |
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一〇 かくて一同を見まはして、手なえたる人に『なんぢの手を伸べよ』と言ひ給ふ。かれ然なしたれば、その手瘉ゆ。 |
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一〇 そして彼ら一同を見まわして、その人に「手を伸ばしなさい」と言われた。そのとおりにすると、その手は元どおりになった。 |
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十一 彼等大に怒て如何にイエスを處んと互に議あへり |
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一一 然るに彼ら狂氣の如くなりて、イエスに何をなさんと語り合へり。 |
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一一 そこで彼らは激しく怒って、イエスをどうかしてやろうと、互に話合いをはじめた。 |
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十二 當時イエス祈禱の爲に山に往て終夜~に祈れり |
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一二 その頃イエス祈らんとて山にゆき、~に祈りつつ夜を明したまふ。 |
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一二 このころ、イエスは祈るために山へ行き、夜を徹して神に祈られた。 |
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十三 夜明てイエス弟子を呼その中より十二人を選て之を使徒と稱く |
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一三 夜明になりて弟子たちを呼び寄せ、その中より十二人を選びて、之を使徒と名づけたまふ。 |
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一三 夜が明けると、弟子たちを呼び寄せ、その中から十二人を選び出し、これに使徒という名をお与えになった。 |
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十四 即ちペテロと名給ひしシモンその兄弟アンデレ及ヤコブとヨハネ ピリポとバルトロマイ |
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一四 即ちペテロと名づけ給ひしシモンと其の兄弟アンデレと、ヤコブとヨハネと、ピリポとバルトロマイと、 |
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一四 すなわち、ペテロとも呼ばれたシモンとその兄弟アンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、 |
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十五 マタイとトマス アルパイの子なるヤコブとゼロテと云るシモン |
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一五 マタイとトマスと、アルパヨの子ヤコブと熱心黨と呼ばるるシモンと、 |
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一五 マタイとトマス、アルパヨの子ヤコブと、熱心党と呼ばれたシモン、 |
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十六 ヤコブの兄弟のユダとイスカリオテのユダなり此ユダはイエスを賣たる者なり |
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一六 ヤコブの子ユダとイスカリオテのユダとなり。このユダはイエスを賣る者となりたり。 |
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一六 ヤコブの子ユダ、それからイスカリオテのユダ。このユダが裏切者となったのである。 |
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十七 イエス是等と共に下て平かなる地に立しに許多の弟子と夥しき人々ユダヤの四方またエルサレム及ツロ シドンの海邊より來集りて或は其教を聽んとし或は病を醫されん事を冀へり |
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一七 イエス此等とともに下りて、平かなる處に立ち給ひしに、弟子の大なる群衆およびユダヤ全國、エルサレム又ツロ、シドンの海邊より來りて或はヘを聽かんとし、或は病を醫されんとする民の大なる群も、そこにあり。 |
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一七 そして、イエスは彼らと一緒に山を下って平地に立たれたが、大ぜいの弟子たちや、ユダヤ全土、エルサレム、ツロとシドンの海岸地方などからの大群衆が、 |
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十八 又惡鬼に難されたる者あり咸く醫されたり |
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一八 穢れし靈に惱されたる者も醫さる。 |
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一八 教を聞こうとし、また病気をなおしてもらおうとして、そこにきていた。そして汚れた霊に悩まされている者たちも、いやされた。 |
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十九 衆みなイエスに捫らんとせり是能力の其身より出て彼等を咸く醫せば也 |
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一九 能力イエスより出でて、凡ての人を醫せば、群衆みなイエスに觸らん事を求む。 |
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一九 また群衆はイエスにさわろうと努めた。それは力がイエスの内から出て、みんなの者を次々にいやしたからである。 |
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二十 イエス目を擧弟子を見て曰けるは爾曹貧者はなり~の國は即ち爾曹の所有なれば也 |
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二〇 イエス目をあげ弟子たちを見て言ひたまふ『幸なるかな、貧しき者よ、~の國は汝らの有なり。 |
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二〇 そのとき、イエスは目をあげ、弟子たちを見て言われた、「あなたがた貧しい人たちは、さいわいだ。神の国はあなたがたのものである。 |
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二一 爾曹いま餓たる者はなり飽ことを得べければなり爾曹いま哭者はなり笑ことを得べければ也 |
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二一 幸なる哉、いま飢うる者よ、汝ら飽くことを得ん。幸なる哉、いま泣く者よ、汝ら笑ふことを得ん。 |
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二一 あなたがたいま飢えている人たちは、さいわいだ。飽き足りるようになるからである。あなたがたいま泣いている人たちは、さいわいだ。笑うようになるからである。 |
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二二 人の子の爲に人なんぢらを憎また絶け詈り爾曹の名を惡しとして棄なば爾曹なり |
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二二 人なんぢらを憎み、人の子のために遠ざけ謗り汝らの名を惡しとして棄てなば、汝ら幸なり。 |
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二二 人々があなたがたを憎むとき、また人の子のためにあなたがたを排斥し、ののしり、汚名を着せるときは、あなたがたはさいわいだ。 |
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二三 其日には欣び踊れ爾曹天に於て賞賜大なれば也その先祖が預言者に行たりしも是の如し |
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二三 その日には、喜び躍れ。視よ、天にて汝らの報は大なり、彼らの先祖が預言者たちに爲ししも、斯くありき。 |
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二三 その日には喜びおどれ。見よ、天においてあなたがたの受ける報いは大きいのだから。彼らの祖先も、預言者たちに対して同じことをしたのである。 |
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二四 爾曹富者は禍なる哉すでに安樂を受ばなり |
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二四 されど禍害なるかな、富む者よ、汝らは旣にその慰安を受けたり。 |
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二四 しかしあなたがた富んでいる人たちは、わざわいだ。慰めを受けてしまっているからである。 |
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二五 爾曹飽者は禍なるかな餓んとすればなり爾曹いま笑者は禍なるかな哀み哭んと爲ばなり |
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二五 禍害なる我、いま飽く者よ、汝らは飢ゑん。禍害なる哉、いま笑ふ者よ、汝らは悲しみ泣かん。 |
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二五 あなたがた今満腹している人たちは、わざわいだ。飢えるようになるからである。あなたがた今笑っている人たちは、わざわいだ。悲しみ泣くようになるからである。 |
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二六 凡の人なんぢらを譽なば爾曹禍なる哉その先祖が僞の預言者に行たりしも是り如し |
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二六 凡ての人、なんぢらを譽めなば、汝ら禍害なり彼らの先祖が虛僞の預言者たちに爲ししも、斯くありき。 |
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二六 人が皆あなたがたをほめるときは、あなたがたはわざわいだ。彼らの祖先も、にせ預言者たちに対して同じことをしたのである。 |
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二七 我に聽ところの爾曹に吿ん其仇を愛し爾曹を憎者を善し |
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二七 われ更に汝ら聽くものに吿ぐ、なんぢらの仇を愛し汝らを憎む者を善くし、 |
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二七 しかし、聞いているあなたがたに言う。敵を愛し、憎む者に親切にせよ。 |
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二八 詛者を祝し虐遇者の爲に祈禱せよ |
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二八 汝らを詛ふ者を祝し、汝らを辱しむる者のために祈れ。 |
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二八 のろう者を祝福し、はずかしめる者のために祈れ。 |
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二九 人なんぢの頰の右方を擊ば亦左方の頰を向よ爾の外服を奪ば裏衣をも禁ざれ |
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二九 なんぢの頬を打つ者には、他の頬をも向けよ。なんぢの上衣を取る者には下衣をも拒むな。 |
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二九 あなたの頬を打つ者にはほかの頬をも向けてやり、あなたの上着を奪い取る者には下着をも拒むな。 |
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三十 凡て爾に求ば之に與へ爾の物を奪ば其をまた索る勿れ |
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三〇 すべて求むる者に與へ、なんぢの物を奪ふ者に復索むな。 |
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三〇 あなたに求める者には与えてやり、あなたの持ち物を奪う者からは取りもどそうとするな。 |
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三一 己人に施れんとする事は亦人にも其如く施よ |
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三一 なんぢら人に爲られんと思ふごとく人にも然せよ。 |
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三一 人々にしてほしいと、あなたがたの望むことを、人々にもそのとおりにせよ。 |
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三二 己を愛する者を愛するは何の賞賜あらんや惡人にても己を愛する者は愛する也 |
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三二 なんぢら己を愛する者を愛せばとて、何の嘉すべき事あらん、罪人にても己を愛する者を愛するなり。 |
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三二 自分を愛してくれる者を愛したからとて、どれほどの手柄になろうか。罪人でさえ、自分を愛してくれる者を愛している。 |
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三三 己に善を行者に善を行は何の賞賜あらんや惡人もまた是の如く行なり |
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三三 汝等おのれに善をなす者に善を爲すとも、何の嘉すべき事あらん、罪人にても然するなり。 |
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三三 自分によくしてくれる者によくしたとて、どれほどの手柄になろうか。罪人でさえ、それくらいの事はしている。 |
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三四 爾曹償るゝ事を得んとおもふ人に借は何の賞賜あらんや惡人も其ごとく償を得んとて亦惡人に借なり |
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三四 なんぢら得る事あらんと思ひて人に貸すとも、何の嘉すべき事あらん、罪人にても均しきものを受けんとて罪人に貸すなり。 |
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三四 また返してもらうつもりで貸したとて、どれほどの手柄になろうか。罪人でも、同じだけのものを返してもらおうとして、仲間に貸すのである。 |
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三五 爾曹仇を愛し又善をなし何をも望ずして借與よ然ば其賞賜は大なり且至上者の子と爲ん夫上者は恩を志るゝ者及び不善者にまで慈愛を施せば也 |
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三五 汝らは仇を愛し、善をなし、何をも求めずして貸せ、然らば、その報は大ならん。かつ至高者の子たるべし。至高者は恩を知らぬもの、惡しき者にも仁慈あるなり。 |
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三五 しかし、あなたがたは、敵を愛し、人によくしてやり、また何も当てにしないで貸してやれ。そうすれば受ける報いは大きく、あなたがたはいと高き者の子となるであろう。いと高き者は、恩を知らぬ者にも悪人にも、なさけ深いからである。 |
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三六 是故に爾曹の父の憐憫の如く亦憐憫を爲べし |
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三六 汝らの父の慈悲なるごとく、汝らも慈悲なれ。 |
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三六 あなたがたの父なる神が慈悲深いように、あなたがたも慈悲深い者となれ。 |
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三七 人を議すること勿れ然ば爾曹も議せられず人を罪すること勿れ然ば爾曹も罪せられず人を恕せ然ば爾曹も恕さるべし |
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三七 人を審くな、然らば汝らも審かるる事あらじ。人を罪に定むな、然らば汝らも罪に定めらるる事あらじ。人を赦せ、然らば汝らも赦されん。 |
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三七 人をさばくな。そうすれば、自分もさばかれることがないであろう。また人を罪に定めるな。そうすれば、自分も罪に定められることがないであろう。ゆるしてやれ。そうすれば、自分もゆるされるであろう。 |
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三八 人に與よ然ば爾曹も予らるべし彼等量を嘉して搖いれ撼いれ溢るゝ迄にして爾曹の懷に納ん爾曹量る所の其量にて亦人に量るべし |
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三八 人に與ヘよ、然らば汝らも與へられん。人は量をよくし、押し入れ、搖り入れ溢るるまでにして、汝らの懷中に入れん。汝等おのが量る量にて量らるべし』 |
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三八 与えよ。そうすれば、自分にも与えられるであろう。人々はおし入れ、ゆすり入れ、あふれ出るまでに量をよくして、あなたがたのふところに入れてくれるであろう。あなたがたの量るその量りで、自分にも量りかえされるであろうから」。 |
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三九 また譬を彼等に曰けるは瞽は瞽の相者をなし得るや相共に溝壑に陷らざらん乎 |
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三九 また譬にて言ひたまふ『盲人は盲人を手引するを得んや、二人とも穴に落ちざらんや。 |
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三九 イエスはまた一つの譬を語られた、「盲人は盲人の手引ができようか。ふたりとも穴に落ち込まないだろうか。 |
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四十 弟子は其師に踰ず凡そ全備なる者は其師の如なるべし |
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四〇 弟子はその師に勝らず、凡そ全うせられたる者は、その師の如くならん。 |
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四〇 弟子はその師以上のものではないが、修業をつめば、みなその師のようになろう。 |
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四一 なんぢ兄弟の目にある物屑を見て己の目にある梁木を知ざるは何ぞや |
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四一 何ゆゑ兄弟の目にある塵を見て、己が目にある梁木を認めぬか。 |
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四一 なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。 |
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四二 如何で己の目にある梁木を見ずして兄弟に對ひ兄弟よ爾の目にある物屑を我に取せよと云ことを得んや僞善者よ先おのれの目より梁木をとれ然ば兄弟の目にある物屑を取こと明かに見べし |
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四二 おのが目にある梁木を見ずして爭で兄弟に向ひて「兄弟よ、汝の目にある塵を取り除かせよ」といふを得んや。僞善者よ、先づ己が目より梁木を取り除け。さらば明かに見えて兄弟の目にある塵を取りのぞき得ん。 |
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四二 自分の目にある梁は見ないでいて、どうして兄弟にむかって、兄弟よ、あなたの目にあるちりを取らせてください、と言えようか。偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけるがよい、そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目にあるちりを取りのけることができるだろう。 |
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四三 それ惡果を結は善樹に非ず又善果を結は惡樹に非ず |
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四三 惡しき果を結ぶ善き樹はなく、また善き果を結ぶ惡しき樹はなし。 |
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四三 悪い実のなる良い木はないし、また良い実のなる悪い木もない。 |
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四四 凡の樹はその果に因て識る荊棘より無花果を採ず亦藜より葡萄を採じ |
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四四 樹はおのおの其の果によりて知らる。茨より無花果を取らず、野荊より葡萄を收めざるなり。 |
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四四 木はそれぞれ、その実でわかる。いばらからいちじくを取ることはないし、野ばらからぶどうを摘むこともない。 |
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四五 善人は心の善庫より善を出し惡人はその惡庫より惡を出す蓋心に充るより口に言るゝ也 |
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四五 善き人は心の善き倉より善きものを出し、惡しき人は惡しき倉より惡しき物を出す。それ心に滿つるより、口は物言ふなり。 |
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四五 善人は良い心の倉から良い物を取り出し。悪人は悪い倉から悪い物を取り出す。心からあふれ出ることを、口が語るものである。 |
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四六 爾曹わが言ことを行はずして何ぞ我を主よ主よと稱るや |
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四六 なんぢら我を「主よ主よ」と呼びつつ何ぞ我が言ふことを行はぬか。 |
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四六 わたしを主よ、主よ、と呼びながら、なぜわたしの言うことを行わないのか。 |
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四七 凡て我に就り我言を聞て行者を譬て爾曹に示さん |
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四七 凡そ我にきたり我が言を聽きで行ふ者は、如何なる人に似たるかを示さん。 |
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四七 わたしのもとにきて、わたしの言葉を聞いて行う者が、何に似ているか、あなたがたに教えよう。 |
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四八 其人は家を建るに土を深く堀て基礎を磐上に置るが如し洪水のとき流その家を衝とも動すこと能ず是基礎を磐上に置ばなり |
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四八 即ち家を建つるに地を深く掘り岩の上に基を据ゑたる人のごとし。洪水いでて流その家を衝けども動かすこと能はず、これ固く建られたる故なり。 |
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四八 それは、地を深く掘り、岩の上に土台をすえて家を建てる人に似ている。洪水が出て激流がその家に押し寄せてきても、それを揺り動かすことはできない。よく建ててあるからである。 |
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四九 聽て行はざる者は基礎なく家を土の上に建たる人の如し流これを衝ときは某家たゞちに傾れ其頽壞また甚だし |
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四九 されど聽きて行はぬ者は、基なくして家を土の上に建てたる人のごとし。流その家を衝けば、直ちに崩れて、その破壞、甚だし』 |
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四九 しかし聞いても行わない人は、土台なしで、土の上に家を建てた人に似ている。激流がその家に押し寄せてきたら、たちまち倒れてしまい、その被害は大きいのである」。 |
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7章 |
一 イエス此すべての言を民に教畢てカペナウンに入しに |
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一 イエス凡て此らの言を民に聞かせ終へて後、カペナウムに入り給ふ。 |
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一 イエスはこれらの言葉をことごとく人々に聞かせてしまったのち、カペナウムに帰ってこられた。 |
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二 ある百夫の長その愛する僕やみて死ばかりなりければ |
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二 時に或る百卒長、その重んずる僕やみて死ぬばかりなりしかば、 |
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二 ところが、ある百卒長の頼みにしていた僕が、病気になって死にかかっていた。 |
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三 イエスの事を聞ユダヤの長老等を遣して來り僕を助け給んことを求り |
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三 イエスの事を聽きて、ユダヤ人の長老たちを遣し、來りて僕を救ひ給はんことを願ふ。 |
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三 この百卒長はイエスのことを聞いて、ユダヤ人の長老たちをイエスのところにつかわし、自分の僕を助けにきてくださるようにと、お願いした。 |
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四 彼等イエスに就り切に勸いひけるは此事を求る人は善人なり |
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四 彼らイエスの許にいたり、切に請ひて言ふ『かの人は、此の事を爲らるるに相應し。 |
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四 彼らはイエスのところにきて、熱心に願って言った、「あの人はそうしていただくねうちがございます。 |
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五 我民を愛し我儕の爲に會堂を建たり |
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五 わが國人を愛し、我らのために會堂を建てたり』 |
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五 わたしたちの国民を愛し、わたしたちのために会堂を建ててくれたのです」。 |
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六 イエス彼等と共に往て既や其家に近けるとき百夫の長朋友を遣して曰せけるは主よ自己を勞動こと勿れ我が家裏に入奉るは憚多し |
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六 イエス共に往き給ひて、その家はや程近くなりしとき、百卒長、數人の友を遣して言はしむ『主よ、自らを煩はし給ふな。我は汝をわが屋根の下に入れまつるに足らぬ者なり。 |
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六 そこで、イエスは彼らと連れだってお出かけになった。ところが、その家からほど遠くないあたりまでこられたとき、百卒長は友だちを送ってイエスに言わせた、「主よ、どうぞ、ご足労くださいませんように。わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。 |
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七 故に我なんぢの前に出も亦憚あり第一言を發たまはゞ我僕は愈ん |
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七 されば御前に出づるにも相應しからずと思へり、ただ御言を賜ひて我が僕をいやし給へ。 |
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七 それですから、自分でお迎えにあがるねうちさえないと思っていたのです。ただ、お言葉を下さい。そして、わたしの僕をなおしてください。 |
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八 蓋われ人の權威の下に属る者なるに我下に亦兵卒ありて此に往と命ば往かれに來と命ば來る我僕に之を行と命ば即ち行が故なり |
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八 我みづから權威の下に置かるる者なるに、我が下にまた兵卒ありて、此に「往け」と言へば往き、彼に「來れ」と言へば來り、わが僕に「これを爲せ」と言へば爲すなり』 |
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八 わたしも権威の下に服している者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。 |
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九 イエス聞て之を奇み從へる人々を顧て曰けるは我なんぢらに吿んイスラエルの中にても未だ斯る篤信に遇ざりき |
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九 イエス聞きて彼を怪しみ振反りて、從ふ群衆に言ひ給ふ『われ汝らに吿ぐ、イスラエルの中にだに斯るあつき信仰は見しことなし』 |
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九 イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた群衆の方に振り向いて言われた、「あなたがたに言っておくが、これほどの信仰は、イスラエルの中でも見たことがない」。 |
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十 遣されたる者家に歸て病たりし僕を見ば已に全快をなせり |
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一〇 遣されたる者ども家に歸りて、僕を見れば、旣に健康となれり。 |
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一〇 使にきた者たちが家に帰ってみると、僕は元気になっていた。 |
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十一 翌日イエス ナインと云る邑に往けるに許多の弟子および許多の人々も共に往り |
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一一 その後イエス、ナインといふ町にゆき給ひしに弟子たち及び大なる群衆も共に往く。 |
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一一 そののち、間もなく、ナインという町へおいでになったが、弟子たちや大ぜいの群衆も一緒に行った。 |
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十二 邑の門に近づきしとき舁出さるゝ死人あり其母は嫠にて此は獨の子なり邑の人々多これに伴ふ |
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一二 町の門に近づき給ふとき、視よ、舁き出さるる死人あり。これは獨息子にて母は寡婦なり、町の多くの人々これに件ふ。 |
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一二 町の門に近づかれると、ちょうど、あるやもめにとってひとりむすこであった者が死んだので、葬りに出すところであった。大ぜいの町の人たちが、その母につきそっていた。 |
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十三 主嫠を見て憫み哭なかれと曰て |
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一三 主、寡婦を見て、憫み『泣くな』と言ひて、 |
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一三 主はこの婦人を見て深い同情を寄せられ、「泣かないでいなさい」と言われた。 |
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十四 近より其櫬に手を按ければ舁る者ども止れりイエス曰けるは少者よ我なんぢに命おきよ |
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一四 近より柩に手をつけ給へば、舁くもの立ち止る。イエス言ひたまふ『若者よ、我なんぢに言ふ、起きよ』 |
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一四 そして近寄って棺に手をかけられると、かついでいる者たちが立ち止まったので、「若者よ、さあ、起きなさい」と言われた。 |
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十五 死たる者起て且言ひ始むイエス之を其母に予せり |
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一五 死人、起きかへりて物言ひ始む。イエス之を母に付したまふ。 |
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一五 すると、死人が起き上がって物を言い出した。イエスは彼をその母にお渡しになった。 |
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十六 衆人みな懼て~を崇いひけるは大なる預言者われらの中に興る~その民を眷顧たまへり |
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一六 人々みな懼をいだき、~を崇めて言ふ『大なる預言者、われらの中に興れり』また言ふ『~その民を顧み給へり』 |
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一六 人々はみな恐れをいだき、「大預言者がわたしたちの間に現れた」、また、「神はその民を顧みてくださった」と言って、神をほめたたえた。 |
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十七 イエスの此聲名ユダヤの全國また徧く四方に揚りぬ |
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一七 この事ユダヤ全國および最寄の地に徧くひろまりぬ。 |
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一七 イエスについてのこの話は、ユダヤ全土およびその附近のいたる所にひろまった。 |
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十八 ヨハネの弟子すべて是等の事を彼に吿ければ |
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一八 偖ヨハネの弟子たち、凡て此等のことを吿げたれば、 |
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一八 ヨハネの弟子たちは、これらのことを全部彼に報告した。するとヨハネは弟子の中からふたりの者を呼んで、 |
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十九 ヨハネ二人の弟子を召て言遣しけるは來るべき者は爾なるか亦われら他に俟べき乎 |
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一九 ヨハネ兩三人の弟子を呼び、主に遣して言はしむ『來るべき者は汝なるか、或は他に待つべきか』 |
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一九 主のもとに送り、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか」と尋ねさせた。 |
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二十 その二人イエスに來り曰けるはバプテスマのヨハネ我儕を爾に遣して言しむ來るべき者は爾なるか亦われら他に俟べきか |
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二〇 彼ら御許に到りて言ふ『バプテスマのヨハネ、我らを遣して言はしむ「來るべき者は汝なるか、或は他に待つべきか」』 |
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二〇 そこで、この人たちがイエスのもとにきて言った、「わたしたちはバプテスマのヨハネからの使ですが、『きたるべきかた』はあなたなのですか、それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか、とヨハネが尋ねています」。 |
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二一 此時イエス多の疾あるひは病および惡鬼に憑たる者を醫し且おほくの瞽に見ることを賜たり |
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二一 この時イエス多くの者の病・疾患を醫し、惡しき靈を逐ひいだし、又おほくの盲人に見ることを得しめ給ひしが、 |
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二一 そのとき、イエスはさまざまの病苦と悪霊とに悩む人々をいやし、また多くの盲人を見えるようにしておられたが、 |
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二二 イエス彼等に答曰けるは爾曹が見ところ聞ところをヨハネに往て吿よ夫瞽者は見跛者は行み癩者は潔り聾者はきゝ死し者は復活され貧者は音を聞せらる |
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二二 答へて言ひたまふ『往きて汝らが見聞せし所をヨハネに吿げよ。盲人は見、跛者はあゆみ、癩病人は潔められ、聾者はきき、死人は甦へらせられ、貧しき者は音を聞かせらる。 |
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二二 答えて言われた、「行って、あなたがたが見聞きしたことを、ヨハネに報告しなさい。盲人は見え、足なえは歩き、重い皮膚病にかかった人はきよまり、耳しいは聞え、死人は生きかえり、貧しい人々は福音を聞かされている。 |
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二三 凡そ我爲に躓かざる者はなり |
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二三 おほよそ我に躓かぬ者は幸なり』 |
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二三 わたしにつまずかない者は、さいわいである」。 |
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二四 ヨハネの使者さりし後イエス ヨハネの事を衆人に曰けるは何を見んとて野に出しや風に動さるゝ葦なる乎 |
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二四 ヨハネの使の去りたる後、ヨハネの事を群衆に言ひいで給ふ『なんぢら何を眺めんとて野に出でし、風にそよぐ葦なるか。 |
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二四 ヨハネの使が行ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆に語りはじめられた、「あなたがたは、何を見に荒野に出てきたのか。風に揺らぐ葦であるか。 |
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二五 然ば爾曹なにを見んとて出しや美服を衣たる人なるか文繡を衣て奢る者は王の宮に在 |
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二五 然らば何を見んとて出でし、柔かき衣を著たる人なるか。視よ、華美なる衣をきて奢り暮す者は王宮に在り。 |
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二五 では、何を見に出てきたのか。柔らかい着物をまとった人か。きらびやかに着かざって、ぜいたくに暮している人々なら、宮殿にいる。 |
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二六 然ば何を見んとて出しや預言者なるか然われ爾曹に吿ん是預言者よりも卓越たる者なり |
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二六 然らば何を見んとて出でし、預言者なるか。然り我なんぢらに吿ぐ、預言者よりも勝る者なり。 |
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二六 では、何を見に出てきたのか。預言者か。そうだ、あなたがたに言うが、預言者以上の者である。 |
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二七 それ爾に先ちて道を備る我使者を爾の前に遣んと錄されたるは即ち此なり |
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二七 「視よ、わが使を汝の顏のまへに遣す。かれは汝の前に汝の道をそなへん」と錄されたるは此の人なり。 |
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二七 『見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの前に、道を整えさせるであろう』と書いてあるのは、この人のことである。 |
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二八 我なんぢちに吿ん婦の生る者のうち未だバプテスマのヨハネより大なる預言者は無されど~の國の至微者も彼よりは大なる也 |
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二八 われ汝らに吿ぐ、女の產みたる者の中、ヨハネより大なる者はなし。然れど~の國にて小き者も、彼よりは大なり。 |
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二八 あなたがたに言っておく。女の産んだ者の中で、ヨハネより大きい人物はいない。しかし、神の国で最も小さい者も、彼よりは大きい。 |
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二九 ヨハネに聞る庶民また稅吏は其バプテスマを受て~を義とせり |
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二九 (凡ての民これを聞きて、取稅人までも~を正しとせり。ヨハネのバプテスマを受けたるによる。 |
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二九 (これを聞いた民衆は皆、また取税人たちも、ヨハネのバプテスマを受けて神の正しいことを認めた。 |
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三十 パリサイの人また教法師は其バプテスマを受ず自ら暴ひて~の旨に肯たり |
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三〇 然れどパリサイ人・ヘ法師らは、其のバプテスマを受けざりしにより、各自にかかはる~の御旨をこばみたり) |
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三〇 しかし、パリサイ人と律法学者たちとは彼からバプテスマを受けないで、自分たちに対する神のみこころを無にした。) |
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三一 然ば此世の人々を何に比へ又何に譬んや |
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三一 然れば、われ今の代の人を何に比へん。彼らは何に似たるか。 |
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三一 だから今の時代の人々を何に比べようか。彼らは何に似ているか。 |
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三二 童子市に坐し互に呼て我儕笛ふけども爾曹踊ず悲歌をすれども爾曹哭ずと云に似たり |
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三二 彼らは童、市場に坐し、たがひに呼びて「われら汝らの爲に笛吹きたれど、汝ら躍らず。歎きたれど、汝ら泣かざりき」と云ふに似たり。 |
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三二 それは子供たちが広場にすわって、互に呼びかけ、『わたしたちが笛を吹いたのに、あなたたちは踊ってくれなかった。弔いの歌を歌ったのに、泣いてくれなかった』と言うのに似ている。 |
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三三 蓋バプテスマのヨハネ來りてパンをも食ず酒をも飮ざれば惡鬼に憑たる者なりと爾曹いへり |
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三三 それはパブテスマのヨハネ來りて、パンをも食はず、葡萄酒をも飮まねば「惡鬼に憑かれたる者なり」と汝ら言ひ、 |
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三三 なぜなら、バプテスマのヨハネがきて、パンを食べることも、ぶどう酒を飲むこともしないと、あなたがたは、あれは悪霊につかれているのだ、と言い、 |
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三四 人の子きたりて食ふ事をし飮ことを爲ばまた食を嗜み酒を好の人稅吏罪ある人の友なりと爾曹いへり |
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三四 人の子きたりて飮食すれば「視よ、食を貧り、酒を好む人、また取稅人・罪人の友なり」と汝ら言ふなり。 |
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三四 また人の子がきて食べたり飲んだりしていると、見よ、あれは食をむさぼる者、大酒を飲む者、また取税人、罪人の仲間だ、と言う。 |
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三五 然ど智慧は智慧の子に義と爲らる |
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三五 然れど智慧は己が凡ての子によりて正しとせらる』 |
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三五 しかし、知恵の正しいことは、そのすべての子が証明する」。 |
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三六 或パリサイの人イエスを請て共に食せん事を願ければイエスパリサイの人の家に入て食に就り |
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三六 爰に或るパリサイ人ともに食せん事をイエスに請ひたれば、パリサイ人の家に入りて席につき給ふ。 |
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三六 あるパリサイ人がイエスに、食事を共にしたいと申し出たので、そのパリサイ人の家にはいって食卓に着かれた。 |
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三七 邑の中に惡行を爲る婦ありけるがイエスがパリサイの人の家に坐せるを知て蠟石の盒に香膏を携來り |
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三七 視よ、この町に罪ある一入の女あり。イエスのパリサイ人の家にて食事の席にゐ給ふを知り、香油の入りたる石膏の壺を持ちきたり、 |
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三七 するとそのとき、その町で罪の女であったものが、パリサイ人の家で食卓に着いておられることを聞いて、香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、 |
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三八 イエスの後にたち足下に哭き淚にて其足を濡し首の髮をもて之を拭かつ其足に口を接また香膏を之に抹り |
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三八 泣きつつ御足近く後にたち、淚にて御足をうるほし、頭の髪にて之を拭ひ、また御足に接吻して香油を抹れり。 |
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三八 泣きながら、イエスのうしろでその足もとに寄り、まず涙でイエスの足をぬらし、自分の髪の毛でぬぐい、そして、その足に接吻して、香油を塗った。 |
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三九 イエスを請たるパリサイの人これを見て心の中に謂けるは此人もし預言者ならば捫し者は誰なる乎又如何なる婦なる乎を知ん此婦は惡行を爲る者なり |
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三九 イエスを招きたるパリサイ人これを見て、心のうちに言ふ『この人もし預言者ならば觸る者の誰、如何なる女なるかを知らん、彼は罪人なるに』 |
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三九 イエスを招いたパリサイ人がそれを見て、心の中で言った、「もしこの人が預言者であるなら、自分にさわっている女がだれだか、どんな女かわかるはずだ。それは罪の女なのだから」。 |
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四十 イエス之に答て曰けるはシモン我たんぢに言事あり答けるは師よ言たまへ |
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四〇 イエス答へて言ひ給ふ『シモン、我なんぢに言ふことあり』シモンいふ『師よ言ひたまへ』 |
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四〇 そこでイエスは彼にむかって言われた、「シモン、あなたに言うことがある」。彼は「先生、おっしゃってください」と言った。 |
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四一 イエス曰けるは或債主に二人の負債人ありて一人は金五百一人は五十を負しに |
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四一 『或る債主に二人の負債者ありて、一人はデナリ五百、一人は五十の負債せしに、 |
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四一 イエスが言われた、「ある金貸しに金をかりた人がふたりいたが、ひとりは五百デナリ、もうひとりは五十デナリを借りていた。 |
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四二 償方なかりければ債主この二人を免たり然ば二人の者その債主を愛すること孰が多き我に聞せよ |
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四二 償ひかたなければ、債主この二人を共に免せり。されば二人のうち債主を愛すること孰か多き』 |
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四二 ところが、返すことができなかったので、彼はふたり共ゆるしてやった。このふたりのうちで、どちらが彼を多く愛するだろうか」。 |
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四三 シモン答けるは我おもふに免るゝ事の多き者ならんイエス曰けるは爾が意ところ違ざる也 |
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四三 シモン答へて言ふ『われ思ふに、多く免されたる者ならん』イエス言ひ給ふ『なんぢの判斷は當れり』 |
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四三 シモンが答えて言った、「多くゆるしてもらったほうだと思います」。イエスが言われた、「あなたの判断は正しい」。 |
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四四 遂に婦を顧みてシモンに曰けるは此婦を見か我なんぢの家に入に爾は我足に水を給ず此婦は淚にて我足を濡し首の髮をもて拭り |
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四四 斯て女の方に振向きてシモンに言ひ給ふ『この女を見るか。我なんぢの家に入りしに、なんぢは我に足の水を與へず、此の女は淚にて我が足を濡し、頭髪にて拭へり。 |
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四四 それから女の方に振り向いて、シモンに言われた、「この女を見ないか。わたしがあなたの家にはいってきた時に、あなたは足を洗う水をくれなかった。ところが、この女は涙でわたしの足をぬらし、髪の毛でふいてくれた。 |
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四五 爾は我に口を接ず此婦は我こゝに入し時より我足に口を接て已ず |
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四五 なんぢは我に接吻せず、此の女は我が入りし時より、我が足に接吻して止まず。 |
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四五 あなたはわたしに接吻をしてくれなかったが、彼女はわたしが家にはいった時から、わたしの足に接吻をしてやまなかった。 |
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四六 爾は我首に膏を抹ず此婦は我足に香膏を抹り |
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四六 なんぢは我が頭に油を抹らず、此の女は我が足に香油を抹れり。 |
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四六 あなたはわたしの頭に油を塗ってくれなかったが、彼女はわたしの足に香油を塗ってくれた。 |
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四七 是故に我なんぢに言ん此婦の多の罪は免れたり之に因て其愛も亦多なり赦るゝこと少き者は其愛も亦少し |
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四七 この故に我なんぢに吿ぐ、この女の多くの罪は赦されたり。その愛すること大なればなり。赦さるる事の少き者は、その愛する事もまた少し』 |
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四七 それであなたに言うが、この女は多く愛したから、その多くの罪はゆるされているのである。少しだけゆるされた者は、少しだけしか愛さない」。 |
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四八 是に於て其婦に曰けるは爾の罪赦さる |
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四八 遂に女に言ひ給ふ『なんぢの罪は赦されたり』 |
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四八 そして女に、「あなたの罪はゆるされた」と言われた。 |
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四九 同に坐せる者ども心の中に謂けるは此人は是何人なれば罪をも赦す乎 |
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四九 同席の者ども心の內に『罪をも赦す此の人は誰なるか』と言ひ出づ。 |
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四九 すると同席の者たちが心の中で言いはじめた、「罪をゆるすことさえするこの人は、いったい、何者だろう」。 |
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五十 イエス婦に曰けるは爾の信爾を救り安然にして往 |
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五〇 爰にイエス女に言ひ給ふ『なんぢの信仰、なんぢを救へり、安らかに往け』 |
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五〇 しかし、イエスは女にむかって言われた、「あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい」。 |
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8章 |
一 此後イエスク邑を周遊て~の國の音を宣傳ふ十二の弟子も偕に從ひぬ |
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一 この後イエスヘを宣べ、~の國の音を傳へつつ、町々村々をり給ひしに、十二弟子も伴ふ。 |
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一 そののちイエスは、神の国の福音を説きまた伝えながら、町々村々を巡回し続けられたが、十二弟子もお供をした。 |
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二 また前に惡鬼を患たりし者病を痊れたる婦等も從ひたり即ち七の惡鬼を逐出れたるマグダラと稱マリア |
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二 また前に惡しき靈を逐ひ出され、病を醫されなどせし女たち、即ち七つの惡鬼のいでしマグダラと呼ぼるるマリヤ、 |
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二 また悪霊を追い出され病気をいやされた数名の婦人たち、すなわち、七つの悪霊を追い出してもらったマグダラと呼ばれるマリヤ、 |
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三 又ヘロデの家令クーザの妻ヨハンナ又スザンナ此ほか多の婦ありて皆その所有を以てイエスに供事たりき |
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三 ヘロデの家司クーザの妻ヨハンナ及びスザンナ、此の他にも多くの女、ともなひゐて其の財產をもて彼らに事へたり。 |
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三 ヘロデの家令クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、そのほか多くの婦人たちも一緒にいて、自分たちの持ち物をもって一行に奉仕した。 |
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四 衆の人々ゥ邑より出てイエスの所に集りければ譬を以て曰り |
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四 大なる群衆むらがり町々の人、みもとに寄り集ひたれば、譬をもて言ひたまふ、 |
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四 さて、大ぜいの群衆が集まり、その上、町々からの人たちがイエスのところに、ぞくぞくと押し寄せてきたので、一つの譬で話をされた、 |
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五 種まく者種を播んとて出ぬ播るとき路旁に遺し種あり踐踏られ且天空の鳥これを食へり |
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五 『種播く者その種を播かんとて出づ。播くとき路の傍らに落ちし種あり、蹈みつけられ、又そらの鳥これを啄む。 |
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五 「種まきが種をまきに出て行った。まいているうちに、ある種は道ばたに落ち、踏みつけられ、そして空の鳥に食べられてしまった。 |
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六 また石上に遺し種あり萌出て槁たり是潤なきが故なり |
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六 岩の上に落ちし種あり、生え出でたれど潤澤なきによりて枯る。 |
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六 ほかの種は岩の上に落ち、はえはしたが水気がないので枯れてしまった。 |
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七 また棘の中に遺し種あり棘も同に生長て之を蔽り |
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七 茨の中に落ちし種あり、茨も共に生え出でて之を塞ぐ。 |
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七 ほかの種は、いばらの間に落ちたので、いばらも一緒に茂ってきて、それをふさいでしまった。 |
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八 また沃壤に遺し種あり生出て實を結べること百倍せり是を言畢て呼りけるは耳ありて聽ゆる者は聽べし |
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八 良き地に落ちし種あり、生え出でて百倍の實を結べり』これらの事を言ひて呼はり給ふ『きく耳ある者は聽くべし』 |
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八 ところが、ほかの種は良い地に落ちたので、はえ育って百倍もの実を結んだ」。こう語られたのち、声をあげて「聞く耳のある者は聞くがよい」と言われた。 |
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九 其弟子とふて曰けるは是いかなる譬ぞ |
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九 弟子たち此の譬の如何なる意なるかを問ひたるに、 |
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九 弟子たちは、この譬はどういう意味でしょうか、とイエスに質問した。 |
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十 答けるは~の國の奥義を爾曹には知ことを賜ど他の者には譬を以てす此は視ても見ず聽ても悟ざる爲なり |
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一〇 イエス言ひ給ふ『なんぢらは~の國の奥義を知ることを許されたれど、他の者は譬にてせらる。彼らの見て見ず、聞きて悟らぬ爲なり。 |
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|
一〇 そこで言われた、「あなたがたには、神の国の奥義を知ることが許されているが、ほかの人たちには、見ても見えず、聞いても悟られないために、譬で話すのである。 |
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十一 夫この譬の釋種は~の道なり |
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一一 譬の意は是なり。種は~の言なり。 |
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一一 この譬はこういう意味である。種は神の言である。 |
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十二 路の旁に遺しは聽し後惡魔の爲に其心より道を奪るゝ者なり彼は人の信じて救れんことを恐る |
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一二 路の傍らなるは、聽きたるのち、惡魔きたり、信じて救はるる事のなからんために御言をその心より奪ふ所の人なり。 |
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一二 道ばたに落ちたのは、聞いたのち、信じることも救われることもないように、悪魔によってその心から御言が奪い取られる人たちのことである。 |
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十三 石上に遺しは聽とき喜びて道を受れども根なければ信ずること暫のみ患難に遇時は道に背く者なり |
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一三 岩の上なるは聽きて御言を喜び受くれども、根なければ、暫く信じて嘗試のときに退く所の人なり。 |
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一三 岩の上に落ちたのは、御言を聞いた時には喜んで受けいれるが、根が無いので、しばらくは信じていても、試錬の時が来ると、信仰を捨てる人たちのことである。 |
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十四 棘の中に遺しは聽て往この世のゥ慮と財貨と宴樂とに蔽れて實ざる者なり |
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一四 茨の中に落ちしは、聽きてのち、過るほどに世の心勞と財貨と快樂とに塞がれて實らぬ所の人なり。 |
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一四 いばらの中に落ちたのは、聞いてから日を過ごすうちに、生活の心づかいや富や快楽にふさがれて、実の熟するまでにならない人たちのことである。 |
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十五 沃壤に遺しは正かつ善心にて道を聽これを守り忍て實を結ぶ者なり |
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一五 良き地なるは、御言を聽き、正しく善き心にて之を守り、忍びて實を結ぶ所の人なり。 |
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一五 良い地に落ちたのは、御言を聞いたのち、これを正しい良い心でしっかりと守り、耐え忍んで実を結ぶに至る人たちのことである。 |
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十六 燈を燃し器にて之を覆ひ或は床下におく者なし入來る者の其光を見ん爲に臺の上に置べL |
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一六 誰も燈火をともし器にて覆ひ、または寢臺の下におく者なし、入り來る者のその光を見んために之を燈臺の上に置くなり。 |
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一六 だれもあかりをともして、それを何かの器でおおいかぶせたり、寝台の下に置いたりはしない。燭台の上に置いて、はいって来る人たちに光が見えるようにするのである。 |
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十七 隱て現れざる者なく藏て知れず露出ざる者なし |
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一七 それ隱れたるものの顯れぬはなく、秘めたるものの知られぬはなく、明かにならぬはなし。 |
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一七 隠されているもので、あらわにならないものはなく、秘密にされているもので、ついには知られ、明るみに出されないものはない。 |
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十八 是故に爾曹聽ことを愼め有る者はなほ予られ無有者は有りと意ふ所の物をも奪るべし |
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一八 然れば汝ら聽くこと如何と心せよ、誰にても有てる人は、なほ與へられ、有たぬ人は、その有てりと思ふ物をも取らるべし』 |
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一八 だから、どう聞くかに注意するがよい。持っている人は更に与えられ、持っていない人は、持っていると思っているものまでも、取り上げられるであろう」。 |
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十九 此時イエスの母と兄弟きたりけれど群集に因て近くこと能ざりしかば |
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一九 さてイエスの母と兄弟と來りたれど、群衆によりて近づくこと能はず。 |
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一九 さて、イエスの母と兄弟たちとがイエスのところにきたが、群衆のためそば近くに行くことができなかった。 |
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二十 或人これをイエスに吿て曰けるは爾が母と兄弟なんぢに遇んとて外に立り |
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二〇 或人イエスに『なんぢの母と兄弟と汝に逢はんとて外に立つ』と吿げたれば、 |
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二〇 それで、だれかが「あなたの母上と兄弟がたが、お目にかかろうと思って、外に立っておられます」と取次いだ。 |
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二一 イエス答て曰けるは~の道を聽て之を行ふ者は乃ち我母わが兄弟なり |
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二一 答へて言ひたまふ『わが母、わが兄弟は、~の言を聽き、かつ行ふ此らの者なり』 |
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二一 するとイエスは人々にむかって言われた、「神の御言を聞いて行う者こそ、わたしの母、わたしの兄弟なのである」。 |
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二二 一日イエス弟子と共に舟に登て彼等に湖の前岸へ渡べしと曰ければ即る漕出せり |
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二二 或日イエス弟子たちと共に舟に乘りて『みづうみの彼方にゆかん』と言ひ給へば、乃ち船出す。 |
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二二 ある日のこと、イエスは弟子たちと舟に乗り込み、「湖の向こう岸へ渡ろう」と言われたので、一同が船出した。 |
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二三 舟の走る時イエス寢たり颶風湖に吹下し舟に水滿んとして危かりしかば |
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二三 渡るほどにイエス眠りたまふ。颶風みづうみに吹き下し、舟に水滿ちんとして危かりしかば、 |
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二三 渡って行く間に、イエスは眠ってしまわれた。すると突風が湖に吹きおろしてきたので、彼らは水をかぶって危険になった。 |
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二四 弟子きたりてィエスを醒し曰けるは師よ師よ我儕亡なんとすイエス起て風と浪とを斥めければ止て平穩になりぬ |
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二四 弟子たち御側により、呼び起して言ふ『君よ、君よ、我らは亡ぶ』イエス起きて風と浪とを禁め給へば、共に鎭まりて凪となりぬ。 |
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二四 そこで、みそばに寄ってきてイエスを起し、「先生、先生、わたしたちは死にそうです」と言った。イエスは起き上がって、風と荒浪とをおしかりになると、止んでなぎになった。 |
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二五 イエス曰けるは爾曹の信何所に在や彼等駭き且奇みて互に曰けるは此は何人なるぞや風と水とに命ぜしかば亦順へり |
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二五 斯て弟子たちに言ひ給ふ『なんぢらの信仰いづこに在るか』かれら懼れ怪しみて互に言ふ『こは誰ぞ、風と水とに命じ給へば順ふとは』 |
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二五 イエスは彼らに言われた、「あなたがたの信仰は、どこにあるのか」。彼らは恐れ驚いて互に言い合った、「いったい、このかたはだれだろう。お命じになると、風も水も従うとは」。 |
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二六 斯てガリラヤに對るガダラ人の地に着て |
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二六 遂にガリラヤに對へるゲラセネ人の地に著く。 |
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二六 それから、彼らはガリラヤの対岸、ゲラサ人の地に渡った。 |
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二七 岸に登し時ある一人邑より出てイエスに遇この者は久く惡鬼に憑れ衣をきず家に住ず惟塜にのみ居たりき |
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二七 陸に上りたまふ時、その町の人にて惡鬼に憑かれたる者きたり遇ふ。この人は久しきあひだ衣を著ず、また家に住まずして墓の中にゐたり。 |
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二七 陸にあがられると、その町の人で、悪霊につかれて長いあいだ着物も着ず、家に居つかないで墓場にばかりいた人に、出会われた。 |
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二八 イエスを見て喊叫その前に俯伏し大聲に呼りけるは至上~の子イエスよ我なんぢと何の與あらんや爾に求我を苦むること勿れ |
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二八 イエスを見てさけび、御前に平伏して大聲にいふ『至高き~の子イエスよ、我は汝と何の關係あらん、願くは我を苦しめ給ふな』 |
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二八 この人がイエスを見て叫び出し、みまえにひれ伏して大声で言った、「いと高き神の子イエスよ、あなたはわたしとなんの係わりがあるのです。お願いです、わたしを苦しめないでください」。 |
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二九 此惡鬼に人より出よとイエスが命じたるに因てなり彼の憑れたる事すでに久し鏈また桎梏にて繫守ども其を打碎き惡鬼の爲に野に逐ぬ |
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二九 これはイエス穢れし靈に、この人より出で往かんことを命じ給ひしに因る。この人けがれし靈にしばしば拘へられ、鏈と足械とにて繫ぎ守られたれど、その繫をやぶり、惡鬼に逐はれて、荒野に往けり。 |
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二九 それは、イエスが汚れた霊に、その人から出て行け、とお命じになったからである。というのは、悪霊が何度も彼をひき捕えたので、彼は鎖と足かせとでつながれて看視されていたが、それを断ち切っては悪霊によって荒野へ追いやられていたのである。 |
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三十 イエス之に問て曰けるは爾が名は何と稱や答けるはレギヨン是おほくの惡鬼の入たるが故なり |
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三〇 イエス之に『なんぢの名は何か』と問ひ給へば『レギオン』と答ふ、多くの惡鬼その中に入りたる故なり。 |
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三〇 イエスは彼に「なんという名前か」とお尋ねになると、「レギオンと言います」と答えた。彼の中にたくさんの悪霊がはいり込んでいたからである。 |
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三一 惡鬼イエスに求けるは命じて底なき所に往しむる勿れ |
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三一 彼らイエスに底なき所に往くを命じ給はざらんことを請ふ。 |
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三一 悪霊どもは、底知れぬ所に落ちて行くことを自分たちにお命じにならぬようにと、イエスに願いつづけた。 |
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三二 此に多の豕の羣山に草を食ゐたりしが彼等その豕に入んことを許せと求ければ之を許せり |
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三二 彼處の山に、多くの豚の一群、食し居たりしが、惡鬼ども其の豚に入るを許し給はんことを請ひたれば、イエス許し給ふ。 |
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三二 ところが、そこの山ベにおびただしい豚の群れが飼ってあったので、その豚の中へはいることを許していただきたいと、悪霊どもが願い出た。イエスはそれをお許しになった。 |
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三三 惡鬼その人より出て豕に入しかば其群はげしく馳下り山坡より湖に落て溺る |
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三三 惡鬼、人を出でて豚に入りたれば、その群、崖より湖水に駈け下りて溺れたり。 |
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三三 そこで悪霊どもは、その人から出て豚の中へはいり込んだ。するとその群れは、がけから湖へなだれを打って駆け下り、おぼれ死んでしまった。 |
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三四 牧者とも其有し事を見て逃ゆき之を邑またゥ村に吿たり |
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三四 飼ふ者ども此の起りし事を見て逃げ往きて、町にも里にも吿げたれば、 |
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三四 飼う者たちは、この出来事を見て逃げ出して、町や村里にふれまわった。 |
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三五 衆人その有し事を見んとて出てイエスの所に來れば惡鬼の離れし人衣を着たしかなる心にてイエスの足下に坐せるを見て懼あへり |
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三五 人々ありし事を見んとて出で、イエスに來りて惡鬼の出でたる人の、衣服をつけ、慥なる心にて、イエスの足下に坐しをるを見て懼れあへり。 |
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三五 人々はこの出来事を見に出てきた。そして、イエスのところにきて、悪霊を追い出してもらった人が着物を着て、正気になってイエスの足もとにすわっているのを見て、恐れた。 |
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三六 惡鬼に憑れたりし人の救れし狀を見たる者この事を彼等に吿ければ |
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三六 かの惡鬼に憑かれたる人の救はれし事柄を見し者ども之を彼らに吿げたれば、 |
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三六 それを見た人たちは、この悪霊につかれていた者が救われた次第を、彼らに語り聞かせた。 |
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三七 ガダラ四方の多の衆庶イエスに此を去んことを求り是大に懼しが故なりイエス舟に登て返ぬ |
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三七 ゲラセネ地方の民衆、みなイエスに出で去り給はんことを請ふ。これ大に懼れたるなり。爰にイエス舟に乘りて歸り給ふ。 |
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三七 それから、ゲラサの地方の民衆はこぞって、自分たちの所から立ち去ってくださるようにとイエスに頼んだ。彼らが非常な恐怖に襲われていたからである。そこで、イエスは舟に乗って帰りかけられた。 |
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三八 惡鬼の離たる人イエスと共に居んことを求けるにイエス之を去しめて |
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三八 時に惡鬼の出でたる人、ともに在らんことを願ひたれど、之を去らしめんとて、 |
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三八 悪霊を追い出してもらった人は、お供をしたいと、しきりに願ったが、イエスはこう言って彼をお帰しになった。 |
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三九 家にかへり~の爾に行し大なる事を人に吿よと曰ければ遂に去てイエスの己に行たまひし大なる事を遍邑に傳たり |
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三九 言ひ給ふ『なんぢの家に歸りて、~が如何に大なる事を汝になし給ひしかを具に吿げよ』彼ゆきて、イエスの如何に大なる事を、己になし給ひしかを徧くその町に言ひ弘めたり。 |
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三九 「家へ帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったか、語り聞かせなさい」。そこで彼は立ち去って、自分にイエスがして下さったことを、ことごとく町中に言いひろめた。 |
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四十 イエス返たるとき衆人みな佇望て之を喜び接ふ |
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四〇 斯てイエスの歸り給ひしとき、群衆これを迎ふ、みな待ちゐたるなり。 |
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四〇 イエスが帰ってこられると、群衆は喜び迎えた。みんながイエスを待ちうけていたのである。 |
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四一四二 ヤイロと云る人あり此は 會堂の宰なり年おほよそ十二歲なる一人の女ありて瀕死なりければ來イエスの足下に伏て我家に來り給んことを求りイエスの往とき衆人これに擁あへり |
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四一 視よ、會堂司にてヤイロといふ者あり、來りてイエスの足下に伏し、その家にきたり給はんことを願ふ。 |
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四一 するとそこに、ヤイロという名の人がきた。この人は会堂司であった。イエスの足もとにひれ伏して、自分の家においでくださるようにと、しきりに願った。 |
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四二 |
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四二 おほよそ十二歲ほどの一人娘ありて死ぬばかりなる故なり。イエスの往き給ふとき、群衆かこみ塞がる。 |
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四二 彼に十二歳ばかりになるひとり娘があったが、死にかけていた。ところが、イエスが出て行かれる途中、群衆が押し迫ってきた。 |
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四三 婦あり十二年血漏を患ひ醫者の爲に其業を盡く耗しけれど誰にも痊れ得ざりしが |
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四三 爰に十二年このかた血漏を患ひて醫者の爲に己が身代をことごとく費したれども、誰にも瘉され得ざりし女あり。 |
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四三 ここに、十二年間も長血をわずらっていて、医者のために自分の身代をみな使い果してしまったが、だれにもなおしてもらえなかった女がいた。 |
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四四 イエスの後に來て其衣の裾に捫ければ直に血の漏こと止ぬ |
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四四 イエスの後に來りて、御衣の總にさはりたれば、血の出づること立刻に止みたり。 |
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四四 この女がうしろから近寄ってみ衣のふさにさわったところ、その長血がたちまち止まってしまった。 |
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四五 イエス曰けるは我に捫る者は誰ぞや衆人はみな特に捫れる者なしと曰りペテロおよび偕に在者ども曰けるは師よ衆人なんぢに擁擠せまるに我に捫る者は誰ぞと曰たまふ乎 |
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四五 イエス言ひ給ふ『我に觸りしは誰ぞ』人みな否みたれば、ペテロ及び共にをる者ども言ふ『君よ、群衆なんぢを圍みて押し迫るなり』 |
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四五 イエスは言われた、「わたしにさわったのは、だれか」。人々はみな自分ではないと言ったので、ペテロが「先生、群衆があなたを取り囲んで、ひしめき合っているのです」と答えた。 |
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四六 イエス曰けるは我に捫る者あり能力の我身より出るを覺れば也 |
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四六 イエス言も給ふ『われに觸りし者あり、能力の我より出でたるを知る』 |
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四六 しかしイエスは言われた、「だれかがわたしにさわった。力がわたしから出て行ったのを感じたのだ」。 |
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四七 その婦みづから隱せぬを知をのゝき來て前に伏さはりし故と其ただちに愈たることを衆人の前に吿 |
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四七 女おのが隱れ得ぬことを知り、戰き來りて御前に平伏し、觸りし故と立刻に瘉えたる事とを、人々の前にて吿ぐ。 |
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四七 女は隠しきれないのを知って、震えながら進み出て、みまえにひれ伏し、イエスにさわった訳と、さわるとたちまちなおったこととを、みんなの前で話した。 |
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四八 イエス曰けるは女よ心安かれ爾の信なんぢを救へり安然にして往 |
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四八 イエス言ひ給ふ『むすめよ、汝の信仰なんぢを救へり、安らかに往け』 |
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四八 そこでイエスが女に言われた、「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい」。 |
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四九 かく言る時に會堂の宰の家より人きたりて宰に曰けるは爾が女はや死たり師を勞はす勿れ |
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四九 かく語り給ふほどに、會堂司の家より人きたりて言ふ『なんぢの娘は早や死にたり、師を煩はすな』 |
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四九 イエスがまだ話しておられるうちに、会堂司の家から人がきて、「お嬢さんはなくなられました。この上、先生を煩わすには及びません」と言った。 |
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五十 イエス之をきゝ答て宰に曰けるは懼るゝ勿たゞ信ぜよ女は痊べし |
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五〇 イエス之を聞きて會堂司に答へたまふ『懼るな、ただ信ぜよ。さらば娘は救はれん』 |
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五〇 しかしイエスはこれを聞いて会堂司にむかって言われた、「恐れることはない。ただ信じなさい。娘は助かるのだ」。 |
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五一 イエス家に入にペテロ ヤコブ ヨハネおよび女の父母の外たれにも偕に入ことを許さゞりき |
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五一 イエス家に到りて、ペテロ、ヨハネ、ヤコブ及び子の父母の他は、ともに入ることを誰にも許し給はず。 |
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五一 それから家にはいられるとき、ペテロ、ヨハネ、ヤコブおよびその子の父母のほかは、だれも一緒にはいって来ることをお許しにならなかった。 |
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五二 衆人みな女の爲に哭哀しかばイエス曰けるは哭なかれ死たるに非ず寢たる耳 |
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五二 人みな泣き、かつ子のために歎き居たりしが、イエス言ひたまふ『泣くな。死にたるにあらず、寢ねたるなり』 |
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五二 人々はみな、娘のために泣き悲しんでいた。イエスは言われた、「泣くな、娘は死んだのではない。眠っているだけである」。 |
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五三 彼等その死たるを知ば之を笑へり |
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五三 人々その死にたるを知れば、イエスを嘲笑ふ。 |
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五三 人々は娘が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑った。 |
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五四 イエス人々を皆いだして女の手をとり女起よと呼曰ければ |
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五四 然るにイエス子の手をとり、呼びて『子よ、起きよ』と言ひ給へば、 |
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五四 イエスは娘の手を取って、呼びかけて言われた、「娘よ、起きなさい」。 |
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五五 某魂かへりて忽ち起たりイエス命じて食を予しかば |
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五五 その靈かヘりて立刻に起く。イエス食物を之に與ふることを命じ給ふ。 |
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五五 するとその霊がもどってきて、娘は即座に立ち上がった。イエスは何か食べ物を与えるように、さしずをされた。 |
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五六 父母は駭異ぬイエスこの行しことを人を吿るを戒め給へり |
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五六 その兩親おどろきたり。イエス此の有りし事を誰にも語らぬやうに命じ給ふ。 |
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五六 両親は驚いてしまった。イエスはこの出来事をだれにも話さないようにと、彼らに命じられた。 |
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9章 |
一 イエス十二の弟子を召集め凡の惡鬼を出し病を醫す能力と權威を賜たり |
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一 イエス十二弟子を召し寄せて、もろもろの惡鬼を制し、病をいやす能力と權威とを與ヘ、 |
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一 それからイエスは十二弟子を呼び集めて、彼らにすべての悪霊を制し、病気をいやす力と権威とをお授けになった。 |
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二 また~の國を宣傳へ病者を醫せん爲に |
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二 また~の國を宣傳へしめ、人を醫さしむる爲に之を遣さんとして言ひ給ふ、 |
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二 また神の国を宣べ伝え、かつ病気をなおすためにつかわして |
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三 彼等を遣さんとして曰けるは路資に何をも携ざれ杖また旅囊糧金二の衣をも帶こと勿 |
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三 『旅のために何をも持つな、杖も袋も糧も銀も、また二つの下衣をも持つな。 |
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三 言われた、「旅のために何も携えるな。つえも袋もパンも銭も持たず、また下着も二枚は持つな。 |
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四 何の家に入とも其處に居りて亦其處より去 |
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四 いづれの家に入るとも、其處に留れ、而して其處より立ち去れ。 |
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四 また、どこかの家にはいったら、そこに留まっておれ。そしてそこから出かけることにしなさい。 |
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五 爾曹を不接者あらば其邑を出る時かれらに證のため足より塵を拂へ |
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五 人もし汝らを受けずば、その町を立ち去るとき證のために足の塵を拂へ』 |
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五 だれもあなたがたを迎えるものがいなかったら、その町を出て行くとき、彼らに対する抗議のしるしに、足からちりを払い落しなさい」。 |
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六 弟子いでゝ徧くゥクにゆき音を宣傳かつ病を醫せり |
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六 爰に弟子たち出でて村々を歷巡り徧く音を宣傳へ、醫すことを爲せり。 |
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六 弟子たちは出て行って、村々を巡り歩き、いたる所で福音を宣べ伝え、また病気をいやした。 |
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七 分封の君ヘロデ イエスの行しゥ事を聞て惑り或人は之をヨハネの甦れるなりと言 |
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七 さて國守ヘロデ、ありし凡ての事をききて周章てまどふ。或人はヨハネ死人の中より甦へりたりといひ、 |
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七 さて、領主ヘロデはいろいろな出来事を耳にして、あわて惑っていた。それは、ある人たちは、ヨハネが死人の中からよみがえったと言い、 |
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八 ある人はエリヤの現れたる也といひ又ある人は古の預言者の一人甦れる也と言ばなり |
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ハ 或人はエリヤ現れたりといひ、また或人は、古への預言者の一人よみがへりたりと言へばなり。 |
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八 またある人たちは、エリヤが現れたと言い、またほかの人たちは、昔の預言者のひとりが復活したのだと言っていたからである。 |
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九 ヘロデ曰けるは我ヨハネの首を斬り斯る事の聞ゆる者は誰なるかヘロデ之を見んと欲ふ |
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九 ヘロデ言ふ『ヨハネは我すでに首斬りたり、然るに斯かる事のきこゆる此の人は誰なるか』かくてイエスを見んことを求めゐたり。 |
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九 そこでヘロデが言った、「ヨハネはわたしがすでに首を切ったのだが、こうしてうわさされているこの人は、いったい、だれなのだろう」。そしてイエスに会ってみようと思っていた。 |
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十 使徒たち歸來りて其行しことをイエスに吿イエス彼等を携ひて潜にベテサイダと云る邑の邊なる野に退きしに |
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一〇 使徒たち歸りきて、其の爲しし事を具にイエスに吿ぐ。イエス彼らを携へて竊にベツサイダといふ町に退きたまふ。 |
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一〇 使徒たちは帰ってきて、自分たちのしたことをすべてイエスに話した。それからイエスは彼らを連れて、ベツサイダという町へひそかに退かれた。 |
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十一 衆人しりて從ければ之を接て~の國の事を語かつ醫を求る者を醫せり |
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一一 されど群衆これを知りて從ひ來りたれば、彼らを接けて、~の國の事を語り、かつ治療を要する人々を醫したまふ。 |
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一一 ところが群衆がそれと知って、ついてきたので、これを迎えて神の国のことを語り聞かせ、また治療を要する人たちをいやされた。 |
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十二 日昃くとき十二の弟子きたりてイエスに曰けるは此は野なれば衆人を去せ四圍のク村へゆきて宿をとり食を覓る事を爲たまへ |
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一二 日傾きたれば、十二弟子きたりて言ふ『群衆を去らしめ、周圍の村また里にゆき、宿をとりて食物を求めさせ給へ。我らは斯かる寂しき所に居るなり』 |
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一二 それから日が傾きかけたので、十二弟子がイエスのもとにきて言った、「群衆を解散して、まわりの村々や部落へ行って宿を取り、食物を手にいれるようにさせてください。わたしたちはこんな寂しい所にきているのですから」。 |
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十三 イエス曰けるは爾曹これに食を予へよ答けるは我儕たゞ五のパンと二の魚ある耳この許多の人の爲に往て買に非ざれば別に食物はなし |
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一三 イエス言ひ給ふ『なんぢら食物を與へよ』弟子たち言ふ『我らただ五つのパンと二つの魚とあるのみ、此の多くの人のために、往きて買はねば他に食物なし』 |
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一三 しかしイエスは言われた、「あなたがたの手で食物をやりなさい」。彼らは言った、「わたしたちにはパン五つと魚二ひきしかありません、この大ぜいの人のために食物を買いに行くかしなければ」。 |
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十四 此に居し男おほよそ五千人なりきイエス弟子に曰けるは衆人を五十人づゝ列べ坐せしめよ |
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一四 男おほよそ五千人ゐたればなり。イエス弟子たちに言ひたまふ『人々を組にして五十人づつ坐せしめよ』 |
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一四 というのは、男が五千人ばかりもいたからである。しかしイエスは弟子たちに言われた、「人々をおおよそ五十人ずつの組にして、すわらせなさい」。 |
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十五 弟子その如く行て彼等をみな坐せしめたり |
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一五 彼等その如くなして、人々をみな坐せしむ。 |
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一五 彼らはそのとおりにして、みんなをすわらせた。 |
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十六 イエス五のパンと二の魚をとり天を仰ぎ祝して之をわり弟子に予へ衆の前に陳しむ |
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一六 かくてイエス五つのパンと二つの魚とを取り、天を仰ぎて祝し、擘きて弟子たちに付し、群衆のまへに置かしめ給ふ。 |
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一六 イエスは五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福してさき、弟子たちにわたして群衆に配らせた。 |
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十七 みな食飽て餘の屑を十二の筐に拾たり |
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一七 彼らは食ひて皆飽く。擘きたる餘を集めしに十二筐ほどありき。 |
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一七 みんなの者は食べて満腹した。そして、その余りくずを集めたら、十二かごあった。 |
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十八 イエス衆の在ざりしとき祈禱したりしが弟子も偕に居りイエス之に問て曰けるは衆人は我を言て誰と爲か |
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一八 イエス人々を離れて祈り居給ふとき、弟子たち偕にをりしに、問ひて言ひたまふ『群衆は我を誰といふか』 |
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一八 イエスがひとりで祈っておられたとき、弟子たちが近くにいたので、彼らに尋ねて言われた、「群衆はわたしをだれと言っているか」。 |
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十九 答て言けるはバプテスマのヨハネ或はエリヤ或は古の預言者の一人の甦れる也と |
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一九 答へて言ふ『バブテスマのヨハネ、或人はエリヤ、或人は古への預言者の一人よみがえりたりと言ふ』 |
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一九 彼らは答えて言った、「バプテスマのヨハネだと、言っています。しかしほかの人たちは、エリヤだと言い、また昔の預言者のひとりが復活したのだと、言っている者もあります」。 |
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二十 イエス曰けるは爾曹は我を言て誰と爲かペテロ答けるは~のキリストなり |
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二〇 イエス言ひ給ふ『なんぢらは我を誰と言ふか』ペテロ答へて言ふ『~のキリストなり』 |
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二〇 彼らに言われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。ペテロが答えて言った、「神のキリストです」。 |
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二一 イエス彼等を戒て此事を何人にも吿る勿れと命じたり |
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二一 イエス彼らを戒めて、之を誰にも吿げぬやうに命じ、かつ言ひ給ふ。 |
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二一 イエスは彼らを戒め、この事をだれにも言うなと命じ、そして言われた、 |
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二二 又曰けるは人の子かならず多の苦を受て長老祭司の長學者どもに棄られ且殺され第三日に甦るべし |
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二二 『人の子は必ず多くの苦難をうけ、長老・祭司長・學者らに棄てられ、かつ殺され、三日めに甦へるべし』 |
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二二 「人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、また殺され、そして三日目によみがえる」。 |
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二三 又イエス衆人に曰けるは若われに從はんと欲ふ者は己に克て日々その十宇架を負て我に從へ |
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二三 また一同の者に言ひたまふ『人もし我に從ひ來らんと思はば、己をすて、日々おのが十字架を負ひて我に從へ。 |
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二三 それから、みんなの者に言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、日々自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。 |
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二四 その生命を保全せんと欲者は之を喪ひ我ために生命を喪ふ者は之を保全すべし |
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二四 己が生命を救はんと思ふ者は之を失ひ、我がために己が生命を失ふその人は之を救はん。 |
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二四 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのために自分の命を失う者は、それを救うであろう。 |
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二五 人もし全世界を利するとも自己を喪ひ自ら亡なば何のuあらん乎 |
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二五 人、全世界を赢くとも己をうしなひ己を損せば、何のuあらんや。 |
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二五 人が全世界をもうけても、自分自身を失いまたは損したら、なんの得になろうか。 |
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二六 我と我道を恥る者をば人の子も亦おのが榮光と父と聖使の榮光をもて來る時これを耻べし |
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二六 我と我が言とを恥づる者をば、人の子もまた己と父と聖なる御使たちとの榮光をもて來らん時に恥づべし。 |
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二六 わたしとわたしの言葉とを恥じる者に対しては、人の子もまた、自分の栄光と、父と聖なる御使との栄光のうちに現れて来るとき、その者を恥じるであろう。 |
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二七 われ誠に爾曹に吿ん此に立者の中に~の國を見までは死ざる者あり |
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二七 われ實をもて汝らに吿ぐ、此處に立つ者のうちに、~の國を見るまでは、死を味はぬ者どもあり』 |
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二七 よく聞いておくがよい、神の国を見るまでは、死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。 |
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二八 此事を言けるのち八日ばかり過てイエス ペテロ ヨハネ ヤコブを携ひ祈禱せんとて山に登れり |
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二八 これらの言をいひ給ひしのち八日ばかり過ぎて、ペテロ、ヨハネ、ヤコブを率きつれ、祈らんとて山に登り給ふ。 |
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二八 これらのことを話された後、八日ほどたってから、イエスはペテロ、ヨハネ、ヤコブを連れて、祈るために山に登られた。 |
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二九 祈れる時に其顔の貌つねと異り其衣服白く輝きぬ |
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二九 かくて祈り給ふほどに、御顔の狀かはり、其の衣白くなりて輝けり。 |
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二九 祈っておられる間に、み顔の様が変り、み衣がまばゆいほどに白く輝いた。 |
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三十 二人の人ありて之と言へり即ちモーセとエリヤなり榮光の內に現れて |
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三〇 視よ、二人の人ありてイエスと共に語る。これはモーセとエリヤとにて、 |
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三〇 すると見よ、ふたりの人がイエスと語り合っていた。それはモーセとエリヤであったが、 |
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三一 イエスのエルサレムにて既や世を逝んとする事を語る |
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三一 榮光のうちに現れ、イエスのエルサレムにて遂げんとする逝去のことを言ひゐたるなり。 |
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三一 栄光の中に現れて、イエスがエルサレムで遂げようとする最後のことについて話していたのである。 |
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三二 ペテロおよび偕に在し者等いたく寢たりしが已に醒てイエスの榮光また偕に立る二人を見たり |
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三二 ペテロ及び偕にをる者いたく睡氣ざしたれど、目を覺してイエスの榮光および偕に立つ二人を見たり。 |
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三二 ペテロとその仲間の者たちとは熟睡していたが、目をさますと、イエスの栄光の姿と、共に立っているふたりの人とを見た。 |
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三三 この二人のイエスと別るゝ時ペテロ イエスに曰けるは師よ此に居は善われらに三の廬を建せ給へ一は爾のため一はモーセのため一はエリヤの爲にせん此は其言ところを知ざりし也 |
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三三 二人の者イエスと別れんとする時、ペテロ、イエスに言ふ『君よ、我らの此處に居るは善し、我ら三つの廬を造り、一つを汝のため、一つをモーセのため、一つをエリヤの爲にせん』彼は言ふ所を知らざりき。 |
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三三 このふたりがイエスを離れ去ろうとしたとき、ペテロは自分が何を言っているのかわからないで、イエスに言った、「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。 |
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三四 かく言るとき雲きたりて彼等を蓋へり其雲に入しとき弟子たち懼ぬ |
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三四 この事を言ひ居るほどに、雲おこりて彼らを覆ふ。雲の中に入りしとき、弟子たち懼れたり。 |
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三四 彼がこう言っている間に、雲がわき起って彼らをおおいはじめた。そしてその雲に囲まれたとき、彼らは恐れた。 |
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三五 聲雲より出て曰けるは此は我愛子なり之に聽べし |
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三五 雲より聲出でて言ふ『これは我が選びたる子なり、汝ら之に聽け』 |
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三五 すると雲の中から声があった、「これはわたしの子、わたしの選んだ者である。これに聞け」。 |
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三六 聲寂たれば惟イエス一人を見たり弟子たる口を緘て見たりし事を當時は誰にも吿ざりき |
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三六 聲出でしとき、唯イエスひとり見え給ふ。弟子たち默して、見し事を何一つ其の頃たれにも吿げざりき。 |
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三六 そして声が止んだとき、イエスがひとりだけになっておられた。弟子たちは沈黙を守って、自分たちが見たことについては、そのころだれにも話さなかった。 |
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三七 翌日山より下りければ許多の人々イエスを迎ふ |
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三七 次の日、山より下りたるに、大なる群衆イエスを迎ふ。 |
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三七 翌日、一同が山を降りて来ると、大ぜいの群衆がイエスを出迎えた。 |
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三八 其中の或一人よばゝりて曰けるは師よ願くは我子を眷顧たまへ此は我獨子なるに |
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三八 視よ、群衆のうちの或人さけびて言ふ『師よ、願くは我が子を顧みたまへ、之は我が獨子なり。 |
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三八 すると突然、ある人が群衆の中から大声をあげて言った、「先生、お願いです。わたしのむすこを見てやってください。この子はわたしのひとりむすこですが、 |
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三九 惡鬼の爲に憑れては忽然さけび泡をふき拘攣られて傷み離るゝこと實に難し |
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三九 視よ、靈の憑くときは俄に叫ぶ、痙攣けて沫をふかせ、甚く害ひ、漸くにして離るるなり。 |
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三九 霊が取りつきますと、彼は急に叫び出すのです。それから、霊は彼をひきつけさせて、あわを吹かせ、彼を弱り果てさせて、なかなか出て行かないのです。 |
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四十 我これを逐出す事を爾の弟子に求しかど能ざりき |
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四〇 御弟子たちに之を逐ひ出すことを請ひたれど、能はざりき』 |
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四〇 それで、お弟子たちに、この霊を追い出してくださるように願いましたが、できませんでした」。 |
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四一 イエス答て曰けるは噫信なき悖逆世なる哉われ爾曹の中に爾曹を忍て幾何時あらんや爾が子を此に携來れ |
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四一 イエス答へて言ひ給ふ『ああ信なき曲れる代なる哉、われ何時まで汝らと偕にをりて、汝らを忍ばん。汝の子をここに連れ來れ』 |
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四一 イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な、曲った時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか、またあなたがたに我慢ができようか。あなたの子をここに連れてきなさい」。 |
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四二 來ば惡鬼かれを傾跌て拘攣ぬイエス汚たる鬼を斥て其子を醫し父に予へたり |
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四二 乃ち來るとき、惡鬼これを打ち倒し、甚く痙攣けさせたり。イエス穢れし靈を禁め、子を醫して、その父に付したまふ。 |
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四二 ところが、その子がイエスのところに来る時にも、悪霊が彼を引き倒して、引きつけさせた。イエスはこの汚れた霊をしかりつけ、その子供をいやして、父親にお渡しになった。 |
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四三 衆人みな~の大なる能を駭きイエスの行し事を異める時にイエス弟子に曰けるは |
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四三 人々みな~の稜威に驚きあヘり。人々みなイエスの爲し給ひし凡ての事を怪しめる時、イエス弟子たちに言ひ給ふ、 |
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四三 人々はみな、神の偉大な力に非常に驚いた。みんなの者がイエスのしておられた数々の事を不思議に思っていると、弟子たちに言われた、 |
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四四 此言を爾曹耳に藏めよ夫人の子は人の手に付されん |
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四四 『これらの言を汝らの耳にをさめよ。人の子は人々の手に付さるべし』 |
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四四 「あなたがたはこの言葉を耳におさめて置きなさい。人の子は人々の手に渡されようとしている」。 |
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四五 彼等この言を悟ざりし悟ざるやう隱されたる也彼等もまた懼て此事を問ざりき |
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四五 かれら此の言を悟らず、辧へぬやうに隱されたるなり。また此の言につきて問ふことを懼れたり。 |
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四五 しかし、彼らはなんのことかわからなかった。それが彼らに隠されていて、悟ることができなかったのである。また彼らはそのことについて尋ねるのを恐れていた。 |
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四六 弟子等のうち互に誰か大ならんとの爭論ありければ |
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四六 爰に弟子たちの中に、誰か大ならんとの爭論おこりたれば、 |
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四六 弟子たちの間に、彼らのうちでだれがいちばん偉いだろうかということで、議論がはじまった。 |
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四七 イエス其心の念を知て孩子をとり側にたてゝ |
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四七 イエスその心の爭論を知りて、幼兒をとり御側に置きて言ひ給ふ、 |
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四七 イエスは彼らの心の思いを見抜き、ひとりの幼な子を取りあげて自分のそばに立たせ、彼らに言われた、 |
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四八 彼等に曰けるは我名の爲に此孩子を接る者は即ち我を接るなり我を接る者は我を遣しゝ者を接るなり凡て爾曹がうち最も小者ぞ是大ならん |
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四八 『おほよそ我が名のために此の幼兒を受くる者は、我を受くるなり。我を受くる者は、我を遣しし者を受くるなり。汝らの中にて最も小き者は、これ大なるなり』 |
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四八 「だれでもこの幼な子をわたしの名のゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。そしてわたしを受けいれる者は、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである。あなたがたみんなの中でいちばん小さい者こそ、大きいのである」。 |
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四九 ヨハネ答て曰けるは師よ爾の名に托て鬼を逐出せる者を見たりしが我儕と共に從はざる故これを禁たり |
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四九 ヨハネ答へて言ふ『君よ、御名によりて惡鬼を逐ひいだす者を見しが、我等とともに從はぬ故に、之を止めたり』 |
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四九 するとヨハネが答えて言った、「先生、わたしたちはある人があなたの名を使って悪霊を追い出しているのを見ましたが、その人はわたしたちの仲間でないので、やめさせました」。 |
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五十 イエス曰けるは禁ること勿れ我儕に歒抗ざる者は我儕に屬者なり |
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五〇 イエス言ひ給ふ『止むな。汝らに逆はぬ者は、汝らに附く者なり』 |
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五〇 イエスは彼に言われた、「やめさせないがよい。あなたがたに反対しない者は、あなたがたの味方なのである」。 |
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五一 イエス天に升るの期いたりければエルサレムに往ことを確定めたり |
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五一 イエス天に擧げらるる時滿ちんとしたれば、御顔を堅くエルサレムに向けて進まんとし、 |
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五一 さて、イエスが天に上げられる日が近づいたので、エルサレムへ行こうと決意して、その方へ顔をむけられ、 |
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五二 使者等を先に遣しければ彼等ゆきてイエスに備んが爲サマリヤ人のクに入しに |
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五二 己に先だちて使を遣したまふ。彼ら往きてイエスの爲に備をなさんとて、サマリヤ人の或村に入りしに、 |
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五二 自分に先立って使者たちをおつかわしになった。そして彼らがサマリヤ人の村へはいって行き、イエスのために準備をしようとしたところ、 |
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五三 ク人そのエルサレムに向行さまなるが故にィエスを納ざりき |
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五三 村人そのエルサレムに向ひて往き給ふさまなるが故に、イエスを受けず。 |
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五三 村人は、エルサレムへむかって進んで行かれるというので、イエスを歓迎しようとはしなかった。 |
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五四 弟子のヤコブ ヨハネ此事を見て曰けるは主よ我儕エリヤの行し如く天より火を召降し彼等を滅さんとす可か |
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五四 弟子のヤコブ、ヨハネ、これを見て言ふ『主よ、我らが天より火を呼び下して彼らを滅すことを欲し給ふか』 |
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五四 弟子のヤコブとヨハネとはそれを見て言った、「主よ、いかがでしょう。彼らを焼き払ってしまうように、天から火をよび求めましょうか」。 |
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五五 イエス顧みて之を責め曰けるは爾曹の心如何なる乎を自ら知ざるなり |
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五五 イエス顧みて彼らを戒め、 |
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五五 イエスは振りかえって、彼らをおしかりになった。 |
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五六 人の子は人の命を滅す爲に來ず惟これを救ふ爲なり遂に他のクに往り |
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五六 遂に相共に他の村に往きたまふ。 |
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五六 そして一同はほかの村へ行った。 |
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五七 路を行とき或人イエスに曰けるは主よ何處に往たまふとも我從はん |
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五七 途を往くとき、或人イエスに言ふ『何處に往き給ふとも我は從はん』 |
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五七 道を進んで行くと、ある人がイエスに言った、「あなたがおいでになる所ならどこへでも従ってまいります」。 |
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五八 イエス彼に曰けるは狐は穴あり天空の鳥は巢あり然ども人の子は枕する所なし |
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五八 イエス言ひたまふ『狐は穴あり、空の鳥は塒あり、されど人の子は枕する所なし』 |
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五八 イエスはその人に言われた、「きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。しかし、人の子にはまくらする所がない」。 |
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五九 又ある一人に曰けるは我に從へ彼いひけるは主よ先ゆきて父を葬る事を我に容せ |
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五九 また或人に言ひたまふ『我に從へ』かれ言ふ『まづ往きて我が父を葬ることを許し給へ』 |
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五九 またほかの人に、「わたしに従ってきなさい」と言われた。するとその人が言った、「まず、父を葬りに行かせてください」。 |
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六十 イエス曰けるは死たる者に其死し者を葬らせ爾は往て~の國を宣よ |
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六〇 イエス言ひたまふ『死にたる者に、その死にたる者を葬らせ、汝は往きて~の國を言ひ弘めよ』 |
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六〇 彼に言われた、「その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい。あなたは、出て行って神の国を告げひろめなさい」。 |
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六一 又ある一人曰けるは主よ爾に從はん先ゆきて家人に別を吿ることを容せ |
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六一 また或人いふ『主よ、我なんぢに從はん、然れど先づ家の者に別を吿ぐることを許し給へ』 |
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六一 またほかの人が言った、「主よ、従ってまいりますが、まず家の者に別れを言いに行かせてください」。 |
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六二 イエス曰けるは手を犂に着て後を顧る者は~の國に當ざる者也 |
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六二 イエス言ひたまふ『手を鋤につけてのち、後を顧みる者は、~の國に適ふ者にあらず』 |
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六二 イエスは言われた、「手をすきにかけてから、うしろを見る者は、神の国にふさわしくないものである」。 |
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10章 |
一 此後主また七十人を立て之を兩個づゝに分ち自ら至んとするゥ邑ゥ地へ前に遣さんとて |
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一 この事ののち、主、ほかに七十人をあげて、自ら往かんとする町々處々へ、おのれに先立ち二人づつを遣さんとして言ひ給ふ、 |
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一 その後、主は別に七十二人を選び、行こうとしておられたすべての町や村へ、ふたりずつ先におつかわしになった。 |
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二 彼等に曰けるは収稼は多く工人は少し故にその稼主に工人を収稼所に遣んことを求べし |
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二 『收穫はおほく、勞動人は少し。この故に收穫の主に勞動人をその收穫場に遣し給はんことを求めよ。 |
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二 そのとき、彼らに言われた、「収穫は多いが、働き人が少ない。だから、収穫の主に願って、その収穫のために働き人を送り出すようにしてもらいなさい。 |
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三 往われ爾曹を遣すは羔を狼のなかに入るが如し |
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三 往け、視よ、我なんぢらを遣すは、羔羊を豺狼のなかに入るるが如し。 |
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三 さあ、行きなさい。わたしがあなたがたをつかわすのは、小羊をおおかみの中に送るようなものである。 |
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四 囊また旅袋履をも携こと勿れ途にて人に問候をもする勿れ |
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四 財布も袋も鞋も携ふな。また途にて誰にも挨拶すな。 |
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四 財布も袋もくつも持って行くな。だれにも道であいさつするな。 |
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五 人の家に入ば先其家の安全ならん事を求へ |
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五 孰の家に入るとも、先づ平安この家にあれと言へ。 |
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五 どこかの家にはいったら、まず『平安がこの家にあるように』と言いなさい。 |
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六 若こゝに安全の子あらば爾曹が祈る安全は其家に留らん若しからずば其祈る安全なんぢらに歸べし |
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六 もし平安の子、そこに居らば、汝らの祝する平安はその上に留らん。もし然らずば、其の平安は汝らに歸らん。 |
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六 もし平安の子がそこにおれば、あなたがたの祈る平安はその人の上にとどまるであろう。もしそうでなかったら、それはあなたがたの上に帰って来るであろう。 |
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七 其家に居りて供る所のものは之を飮食せよ蓋工人の其工錢を獲は宜なればなり家より家に移ることを爲ざれ |
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七 その家にとどまりて、與ふる物を食ひ飮みせよ。勞動人のその値を得るは相應しきなり。家より家に移るな。 |
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七 それで、その同じ家に留まっていて、家の人が出してくれるものを飲み食いしなさい。働き人がその報いを得るのは当然である。家から家へと渡り歩くな。 |
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八 邑に入んに接る者あらば其なんぢらの前に供る者を食せよ |
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八 孰の町に入るとも、人々なんぢらを受けなば、汝らの前に供ふる物を食し、 |
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八 どの町へはいっても、人々があなたがたを迎えてくれるなら、前に出されるものを食べなさい。 |
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九 邑の中なる病の者を醫せ亦衆人に~の國は爾曹に近けりと曰 |
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九 其處にをる病のものを醫し、また「~の國は汝らに近づけり」と言へ。 |
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九 そして、その町にいる病人をいやしてやり、『神の国はあなたがたに近づいた』と言いなさい。 |
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十 もし邑に入んに接る者なくば衢に出て曰 |
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一〇 孰の町に入るとも、人々なんぢらを受けずば、大路に出でて、 |
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一〇 しかし、どの町へはいっても、人々があなたがたを迎えない場合には、大通りに出て行って言いなさい、 |
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十一 我儕に沾たる爾が邑の塵は爾曹に對て拂ん然ども~の國の近けるを知 |
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一一 「我らの足につきたる汝らの町の塵をも汝らに對して拂ひ棄つ、されど~の國の近づけるを知れ」と言へ。 |
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一一 『わたしたちの足についているこの町のちりも、ぬぐい捨てて行く。しかし、神の国が近づいたことは、承知しているがよい』。 |
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十二 われ爾曹に吿ん其日いたらばソドムの刑罰は此邑よりも却て易かるべし |
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一二 われ汝らに吿ぐ、かの日にはソドムの方その町よりも耐へ易からん。 |
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一二 あなたがたに言っておく。その日には、この町よりもソドムの方が耐えやすいであろう。 |
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十三 あゝ禍なる哉コラジンよ噫禍なる哉ベテサイダよ爾曹の中に行し異能を若ツロとシドンに行しならば彼等は早く麻をき灰を蒙り坐して悔改しなるべし |
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一三 禍害なる哉、コラジンよ、禍害なる哉、ベツサイダよ、汝らの中にて行ひたる能力ある業を、ツロとシドンとにて行ひしならば、彼らは早く荒布をき、灰のなかに坐して、悔改めしならん。 |
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一三 わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちの中でなされた力あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、彼らはとうの昔に、荒布をまとい灰の中にすわって、悔い改めたであろう。 |
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十四 審判にはツロとシドンの刑罰は爾曹よりも却て易からん |
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一四 然れば審判にはツロとシドンとのかた汝等よりも、耐へ易からん。 |
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一四 しかし、さばきの日には、ツロとシドンの方がおまえたちよりも、耐えやすいであろう。 |
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十五 已に天にまで舉られたるカペナウンよ又陰府に落さるべし |
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一五 カペナウムよ、汝は天にまで擧げらるべきか、黃泉にまで下らん。 |
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一五 ああ、カペナウムよ、おまえは天にまで上げられようとでもいうのか。黄泉にまで落されるであろう。 |
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十六 爾曹に聽者は我に聽なり爾曹を棄る者は我を棄るなり我を棄る者は我を遣しゝ者を棄るなり |
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一六 汝らに聽く者は我に聽くなり、汝らを棄つる者は我を棄つるなり。我を棄つる者は我を遣し給ひし者を葉つるなり』 |
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一六 あなたがたに聞き従う者は、わたしに聞き従うのであり、あなたがたを拒む者は、わたしを拒むのである。そしてわたしを拒む者は、わたしをおつかわしになったかたを拒むのである」。 |
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十七 七十人喜び返りて曰けるは主よ惡鬼さへも爾の名に因て我儕に服せり |
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一七 七十人よろこび歸りて言ふ『主よ、汝の名によりて惡鬼すら我らに服す』 |
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一七 七十二人が喜んで帰ってきて言った、「主よ、あなたの名によっていたしますと、悪霊までがわたしたちに服従します」。 |
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十八 イエス曰けるはわれ電の如くサタンの天より隕るふ見し |
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一八 イエス彼らに言ひ給ふ『われ天より閃く電光のごとくサタンの落ちしを見たり。 |
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一八 彼らに言われた、「わたしはサタンが電光のように天から落ちるのを見た。 |
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十九 我なんぢらに蛇蠍を踐また敵のゥの權を制ふる權威を賜たり必ず爾曹を害ふ者なし |
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一九 視よ、われ汝らに蛇・蠍を蹈み、仇の凡ての力を抑ふる權威を授けたれば、汝らを害ふもの斷えてながらん。 |
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一九 わたしはあなたがたに、へびやさそりを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けた。だから、あなたがたに害をおよぼす者はまったく無いであろう。 |
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二十 然ども惡鬼の爾曹に服しゝ事は喜とする勿れ爾曹が名の天に錄されしを喜とすべし |
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二〇 然れど靈の汝らに服するを喜ぶな、汝らの名の天に錄されたるを喜べ』 |
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二〇 しかし、霊があなたがたに服従することを喜ぶな。むしろ、あなたがたの名が天にしるされていることを喜びなさい」。 |
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二一 此時イエス心に喜びて曰けるは天地の主なる父よ此事を智者と達者とに隱して赤子に顯し給ふを謝す父よ然それ是の如きは意旨に適るなり |
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二一 その時イエス聖靈により喜びて言ひたまふ『天地の主なる父よ、われ感謝す、此等のことを智きもの慧き者に隱して嬰兒に顯したまへり。父よ、然り、此のごときは御意に適へるなり。 |
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二一 そのとき、イエスは聖霊によって喜びあふれて言われた、「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を知恵のある者や賢い者に隠して、幼な子にあらわしてくださいました。父よ、これはまことに、みこころにかなった事でした。 |
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二二 父は萬物を我に賜ふ父の外に子は誰なると識者なく亦子および子の顯す所の者の外に父は誰なると識者なし |
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二二 凡ての物は我わが父より委ねられたり。子の誰なるを知る者は、父の外になく、父の誰なるを知る者は、子また子の欲するままに顯すところの者の外になし』 |
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二二 すべての事は父からわたしに任せられています。そして、子がだれであるかは、父のほか知っている者はありません。また父がだれであるかは、子と、父をあらわそうとして子が選んだ者とのほか、だれも知っている者はいません」。 |
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二三 イエス弟子を顧て竊に曰けるは爾曹が見ところの事を見るその目はなり |
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二三 斯て弟子たちを顧み窃に言ひ給ふ『なんぢらの見る所を見る眼は幸なり。 |
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二三 それから弟子たちの方に振りむいて、ひそかに言われた、「あなたがたが見ていることを見る目は、さいわいである。 |
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二四 我なんぢらに吿ん多の預言者および王も爾曹が見ところの事を見んとせしかども見ず爾曹が聞ところの事を聞んとせしかども聞ざりき |
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二四 われ汝らに吿ぐ、多くの預言者も、王も、汝らの見るところを見んと欲したれど見ず、汝らの聞く所を聞かんと欲したれど聞かざりき』 |
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二四 あなたがたに言っておく。多くの預言者や王たちも、あなたがたの見ていることを見ようとしたが、見ることができず、あなたがたの聞いていることを聞こうとしたが、聞けなかったのである」。 |
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二五 爰に一個の教法師あり起て彼を試み曰けるは師と我なにを爲ば永生を受べき乎 |
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二五 視よ、或るヘ法師、立ちてイエスを試みて言ふ『師よ、われ永遠の生命を嗣ぐためには何をなすべきか』 |
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二五 するとそこへ、ある律法学者が現れ、イエスを試みようとして言った、「先生、何をしたら永遠の生命が受けられましょうか」。 |
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二六 イエス曰けるは律法に錄されしは何ぞ爾いかに讀か |
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二六 イエス言ひたまふ『律法に何と錄したるか、汝いかに讀むか』 |
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二六 彼に言われた、「律法にはなんと書いてあるか。あなたはどう読むか」。 |
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二七 答て曰けるは爾心を盡し精~を盡し力を盡し意を盡して主なる爾の~を愛すべし亦己の如く鄰を愛すべし |
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二七 答へて言ふ『なんぢ心を盡し、拐~を盡し、力を盡し、思を盡して、主たる汝の~を愛すべし。また己のごとく汝の隣を愛すべし』 |
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二七 彼は答えて言った、「『心をつくし、精神をつくし、力をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。また、『自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ』とあります」。 |
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二八 イエス曰けるは爾の答へ然り之を行はゞ生べし |
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二八 イエス言ひ給ふ『なんぢの答は正し。之を行へ、さらば生くべし』 |
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二八 彼に言われた、「あなたの答は正しい。そのとおり行いなさい。そうすれば、いのちが得られる」。 |
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二九 彼みづからを罪なき者に爲んとてイエスに曰けるは我鄰とは誰なる乎 |
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二九 彼おのれを義とせんとしてイエスに言ふ『わが隣とは誰なるか』 |
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二九 すると彼は自分の立場を弁護しようと思って、イエスに言った、「では、わたしの隣り人とはだれのことですか」。 |
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三十 イエス答て曰けるはある人エルサレムよりエリコに下るとき强盜に遇り强盜その衣服を剝取て之を打擲き瀕死になして去ぬ |
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三〇 イエス答へて言ひたまふ『或人エルサレムよりエリコに下るとき、强盜にあひしが、强盜どもその衣を剝ぎ、傷を負はせ、半死半生にして棄て去りぬ。 |
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三〇 イエスが答えて言われた、「ある人がエルサレムからエリコに下って行く途中、強盗どもが彼を襲い、その着物をはぎ取り、傷を負わせ、半殺しにしたまま、逃げ去った。 |
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三一 斯る時に或祭司この路より下しが之を見過にして行り |
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三一 或る祭司たまたま此の途より下り、之を見てかなたを過ぎ往けり。 |
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三一 するとたまたま、ひとりの祭司がその道を下ってきたが、この人を見ると、向こう側を通って行った。 |
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三二 又レビの人も此に至り進み見て同く過行り |
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三二 又レビ人も此處にきたり、之を見て同じく彼方を過ぎ往けり。 |
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三二 同様に、レビ人もこの場所にさしかかってきたが、彼を見ると向こう側を通って行った。 |
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三三 或サマリアの人旅して此に來り之を見て憫み |
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三三 然るに或るサマリヤ人、旅して其の許にきたり、之を見て憫み、 |
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三三 ところが、あるサマリヤ人が旅をしてこの人のところを通りかかり、彼を見て気の毒に思い、 |
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三四 近よりて油と酒を其傷に沃これを裹て己が驢馬にのせ旅邸に携往て介抱せり |
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三四 近寄りて油と葡萄酒とを注ぎ傷を包みて己が畜にのせ、旅舍に連れゆきて介抱し、 |
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三四 近寄ってきてその傷にオリブ油とぶどう酒とを注いでほうたいをしてやり、自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。 |
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三五 次日いづるとき銀二枚を出し館主に予て此人を介抱せよ費もし揩ホ我かへりの時なんぢに償ふべしと曰り |
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三五 あくる日デナリ二つを出し、主人に與へて「この人を介抱せよ。費もし揩ウば我が歸りくる時に償はん」と云へり。 |
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三五 翌日、デナリ二つを取り出して宿屋の主人に手渡し、『この人を見てやってください。費用がよけいにかかったら、帰りがけに、わたしが支払います』と言った。 |
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三六 然ば此三人のうち誰か强盜に遇し者の鄰なると爾意ふや |
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三六 汝いかに思ふか、此の三人のうち、孰か强盜にあひし者の隣となりしぞ』 |
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三六 この三人のうち、だれが強盗に襲われた人の隣り人になったと思うか」。 |
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三七 彼いひけるは其人を矜恤たる者なりイエス曰けるは爾も往て其ごとく爲よ |
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三七 かれ言ふ『その人に憐憫を施したる者なり』イエス言ひ給ふ『なんぢも往きて其の如くせよ』 |
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三七 彼が言った、「その人に慈悲深い行いをした人です」。そこでイエスは言われた、「あなたも行って同じようにしなさい」。 |
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三八 かれら路を行る時イエス一クに入ければマルタと云る婦これを迎て自己の家に入ぬ |
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三八 斯て彼ら進みゆく間に、イエス或村に入り給へば、マルタと名づくる女おのが家に迎へ入る。 |
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三八 一同が旅を続けているうちに、イエスがある村へはいられた。するとマルタという名の女がイエスを家に迎え入れた。 |
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三九 その姉妹にマリアと去る者ありイエスの足下に坐りて其道を聽り |
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三九 その姊妹にマリヤといふ者ありて、イエスの足下に坐し、御言を聽きをりしが、 |
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三九 この女にマリヤという妹がいたが、主の足もとにすわって、御言に聞き入っていた。 |
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四十 マルタ供給のこと多して心いりみだれイエスに近よりて曰けるは主よ我が姊妹われを一人遺て勞動しむるを何とも意ざるか彼に命じて我を助しめよ |
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四〇 マルタ饗應のこと多くして心いりみだれ、御許に進みよりて言ふ『主よ、わが姊妹われを一人のこして働かするを、何とも思ひ給はぬか、彼に命じて我を助けしめ給へ』 |
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四〇 ところが、マルタは接待のことで忙がしくて心をとりみだし、イエスのところにきて言った、「主よ、妹がわたしだけに接待をさせているのを、なんともお思いになりませんか。わたしの手伝いをするように妹におっしゃってください」。 |
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四一 イエス答て曰けるはマルタよマルタよ爾多端により思慮ひて心勞せり |
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四一 主、答へて言ひ給ふ『マルタよ、マルタよ、汝さまざまの事により、思ひ煩ひて心勞す。 |
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四一 主は答えて言われた、「マルタよ、マルタよ、あなたは多くのことに心を配って思いわずらっている。 |
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四二 然ど無て叶ふまじき者は一なりマリアは既に善業を撰たり此は彼より奪べからざる者なり |
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四二 されど無くてならぬものは多からず、唯一つのみ、マリヤは善きかたを選びたり。此は彼より奪ふべからざるものなり』 |
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四二 しかし、無くてならぬものは多くはない。いや、一つだけである。マリヤはその良い方を選んだのだ。そしてそれは、彼女から取り去ってはならないものである」。 |
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11章 |
一 イエス某所にて祈禱しけるに畢しとき一人の弟子いひけるは主よヨハネ其弟子に教し如く我儕にも禱ることを教たまへ |
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一 イエス或處にて祈り居給ひしが、その終りしとき、弟子の一人いふ『主よ、ヨハネの其の弟子にヘへし如く、祈ることを我らにヘへ給へ』 |
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一 また、イエスはある所で祈っておられたが、それが終ったとき、弟子のひとりが言った、「主よ、ヨハネがその弟子たちに教えたように、わたしたちにも祈ることを教えてください」。 |
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二 イエス曰けるは祈る時は斯いふべし天に在す我儕の父よ願くは聖名を尊崇させ給へ爾國を臨らせ給へ爾旨の天に成ごとく地にも成せ給へ |
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二 イエス言ひ給ふ『なんぢら祈るときに斯く言へ「父よ、願くは御名の崇められん事を。御國の來らん事を。 |
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二 そこで彼らに言われた、「祈るときには、こう言いなさい、『父よ、御名があがめられますように。御国がきますように。 |
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三 我儕の日用の糧を每日に與たまへ |
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三 我らの日用の糧を日每に與ヘ給へ。 |
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三 わたしたちの日ごとの食物を、日々お与えください。 |
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四 我儕に罪を犯す者を凡て免せば我儕の罪をも免し給へ我儕を試探に遇せず惡より拯出し給へ |
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四 我らに負債ある凡ての者を我ら免せば、我らの罪をも免し給へ。我らを嘗試にあはせ給ふな』 |
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四 わたしたちに負債のある者を皆ゆるしますから、わたしたちの罪をもおゆるしください。わたしたちを試みに会わせないでください』」。 |
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五六 また彼等に曰けるは爾曹の中もし或人夜半に其友へ往て友よ我が朋輩旅より來しに供べき物なきゆゑ三のパンを借よと曰んに |
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五 また言ひ給ふ『なんぢらの中たれか友あらんに、夜半にその許に往きて「友よ、我に三つのパンを貸せ。 |
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五 そして彼らに言われた、「あなたがたのうちのだれかに、友人があるとして、その人のところへ真夜中に行き、『友よ、パンを三つ貸してください。 |
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五六 また彼等に曰けるは爾曹の中もし或人夜半に其友へ往て友よ我が朋輩旅より來しに供べき物なきゆゑ三のパンを借よと曰んに |
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六 わが友、旅より來りしに、之に供ふべき物なし」と言ふ時、 |
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六 友だちが旅先からわたしのところに着いたのですが、何も出すものがありませんから』と言った場合、 |
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七 內に居もの答て我を煩はす勿れ既や門は閉われと共に兒曹も牀に在ば起て予ること能ずといふ者あらん乎 |
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七 かれ內より答へて「われを煩はすな、戶ははや閉ぢ、子らは我と共に臥所にあり、起ちて、與へ難し」といふ事ありとも、 |
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七 彼は内から、『面倒をかけないでくれ。もう戸は締めてしまったし、子供たちもわたしと一緒に床にはいっているので、いま起きて何もあげるわけにはいかない』と言うであろう。 |
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八 我なんぢらに吿ん其友なるにより起て予ざれ雖ひたすら請が故に其需に從ひ起て予べし |
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八 われ汝らに吿ぐ、友なるによりては起ちて與ヘねど、求の切なるにより、起きて其の要する程のものを與へん。 |
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八 しかし、よく聞きなさい、友人だからというのでは起きて与えないが、しきりに願うので、起き上がって必要なものを出してくれるであろう。 |
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九 我なんぢらに吿ん求よ然ば予られ尋よ然ばあひ門を叩よ然ば啓るゝことを得ん |
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九 われ汝らに吿ぐ、求めよ、さらば與へられん。尋ねよ、さらば見出さん。門を叩け、さらば開かれん。 |
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九 そこでわたしはあなたがたに言う。求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。 |
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十 蓋すべて求る者は得たづぬる者はあひ門を叩者は啓るれば也 |
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一〇 すべて求むる者は得、尋ねる者は見出し、門を叩く者は開かるるなり。 |
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一〇 すべて求める者は得、捜す者は見いだし、門をたたく者はあけてもらえるからである。 |
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十一 爾曹のうち父たる者誰か其子のパンを求んに石を予んや魚を求んに其に代て蛇を予んや |
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一一 汝等のうち父たる者、たれか其の子、魚を求めんに、魚の代に蛇を與へ、 |
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一一 あなたがたのうちで、父であるものは、その子が魚を求めるのに、魚の代りにへびを与えるだろうか。 |
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十二 卵を求んに蠍を予んや |
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一二 卵を求めんに蠍を與へんや。 |
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一二 卵を求めるのに、さそりを与えるだろうか。 |
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十三 然ば爾曹惡者ながら善賜をその兒曹に予るを知まして天に在す爾曹の父は求る者に聖靈を予ざらん乎 |
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一三 さらば汝ら惡しき者ながら、善き賜物をその子らに與ふるを知る。まして天の父は求むる者に聖靈を賜はざらんや』 |
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一三 このように、あなたがたは悪い者であっても、自分の子供には、良い贈り物をすることを知っているとすれば、天の父はなおさら、求めて来る者に聖霊を下さらないことがあろうか」。 |
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十四 イエス瘖啞なる惡鬼を逐出しけるに惡鬼いでゝ瘖啞ものいひしかば人々駭けり |
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一四 さてイエス啞の惡鬼を逐ひいだし給へば、惡鬼いでて啞、物言ひしにより、群衆あやしめり。 |
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一四 さて、イエスが悪霊を追い出しておられた。それは、物を言えなくする霊であった。悪霊が出て行くと、口のきけない人が物を言うようになったので、群衆は不思議に思った。 |
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十五 其中なる者の曰けるは彼は惡鬼の王ベルゼブルに籍て惡鬼を逐出せる也 |
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一五 其の中の或者ども言ふ『かれは惡鬼の首ベルゼブルによりて惡鬼を逐ひ出すなり』 |
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一五 その中のある人々が、「彼は悪霊のかしらベルゼブルによって、悪霊どもを追い出しているのだ」と言い、 |
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十六 又ある人々イエスを試んとて天よりの休徵を求たり |
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一六 また或者どもは、イエスを試みんとて天よりの徵を求む。 |
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一六 またほかの人々は、イエスを試みようとして、天からのしるしを求めた。 |
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十七 イエスその意を知て曰けるは互に分爭ふ國は亡び互に分爭ふ家は傾るゝ也 |
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一七 イエスその思を知りて言ひ給ふ『すべて分れ爭ふ國は亡び、分れ爭ふ家は倒る。 |
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一七 しかしイエスは、彼らの思いを見抜いて言われた、「おおよそ国が内部で分裂すれば自滅してしまい、また家が分れ争えば倒れてしまう。 |
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十八 若サタンも自ら分爭はゞ其國いかで立んや其なんぢら我を言てベルゼブルに藉て惡鬼を逐出すとせり |
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一八 サタンもし分れ爭はば、其の國いかで立つべき。汝等わが惡鬼を逐ひ出すを、ベルゼブルに由ると言へばなり。 |
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一八 そこでサタンも内部で分裂すれば、その国はどうして立ち行けよう。あなたがたはわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出していると言うが、 |
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十九 若われベルゼブルに藉て惡鬼を逐出さば爾曹の子弟は誰に藉て惡鬼を逐出すや夫かれらは爾曹の裁判人と爲べし |
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一九 我もしベルゼブルによりて、惡鬼を逐ひ出さば、汝らの子は誰によりて之を逐ひ出すか。この故に彼らは汝らの審判人となるべし。 |
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一九 もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの仲間はだれによって追い出すのであろうか。だから、彼らがあなたがたをさばく者となるであろう。 |
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二十 若われ~の指をもて惡鬼を逐出たるならば~の國は既や爾曹に來れり |
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二〇 然れど我もし~の指によりて、惡鬼を逐ひ出さば、~の國は旣に汝らに到れるなり。 |
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二〇 しかし、わたしが神の指によって悪霊を追い出しているのなら、神の国はすでにあなたがたのところにきたのである。 |
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二一 勇者鎧を擐て邸を守るときは其所有安全なり |
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二一 强きもの武具をよろひて己が屋敷を守るときは、其の所有、安全なり。 |
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二一 強い人が十分に武装して自分の邸宅を守っている限り、その持ち物は安全である。 |
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二二 もし之より勇者きたりて其に勝ときは其恃とせる鎧を奪ひ且贓物を分べし |
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二二 然れど更に强きもの來りて、之に勝つときは、恃とする武具をことごとく奪ひて、分捕物を分たん。 |
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二二 しかし、もっと強い者が襲ってきて彼に打ち勝てば、その頼みにしていた武具を奪って、その分捕品を分けるのである。 |
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二三 我と偕ならざる者は我に叛き我と偕に斂ざる者は散すなり |
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二三 我と偕ならぬ者は我にそむき、我と共に集めぬ者は散らすなり。 |
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二三 わたしの味方でない者は、わたしに反対するものであり、わたしと共に集めない者は、散らすものである。 |
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二四 惡鬼人より出て旱たる所をめぐり安を求れども得ずして曰けるは我出し家に歸らん |
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二四 穢れし靈、人を出づる時は、水なき處を巡りて、休を求む。されど得ずして言ふ「わが出でし家に歸らん」 |
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二四 汚れた霊が人から出ると、休み場を求めて水の無い所を歩きまわるが、見つからないので、出てきた元の家に帰ろうと言って、 |
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二五 巳に來しに掃淨り飾れるを見 |
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二五 歸りて其の家の掃き淨められ、飾られたるを見、 |
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二五 帰って見ると、その家はそうじがしてある上、飾りつけがしてあった。 |
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二六 遂に往て己よりも惡き七の惡鬼を携へ入て此に居ば其人の後の患狀は前より更に惡かるべし |
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二六 遂に往きて己よりも惡しき他の七つの靈を連れきたり、共に入りて此處に住む。さればその人の後の狀は、前よりも惡しくなるなり』 |
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二六 そこでまた出て行って、自分以上に悪い他の七つの霊を引き連れてきて中にはいり、そこに住み込む。そうすると、その人の後の状態は初めよりももっと悪くなるのである」。 |
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二七 この話を言るとき群集の中より一婦聲を揚て曰けるは爾を孕し腹と爾の吭し乳はなり |
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二七 此等のことを言ひ給ふとき、群衆の中より或女、聲をあげて言ふ『幸なるかな、汝を宿しし胎、なんぢの哺ひし乳房は』 |
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二七 イエスがこう話しておられるとき、群衆の中からひとりの女が声を張りあげて言った、「あなたを宿した胎、あなたが吸われた乳房は、なんとめぐまれていることでしょう」。 |
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二八 イエス答けるは然されど~の道を聽て其を守る者のには若ず |
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二八 イエス言ひたまふ『更に宰なるかな、~の言を聽きて之を守る人は』 |
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二八 しかしイエスは言われた、「いや、めぐまれているのは、むしろ、神の言を聞いてそれを守る人たちである」。 |
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二九 人々擁集れる時イエス曰けるは今の世は惡し奇跡を求るとも預言者ヨナの奇跡の外に奇跡は予られじ |
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二九 群衆おし集まれる時、イエス言ひ出でたまふ『今の代は邪曲なる代にして徵を求む。されどヨナの徵のほかに徵は與へられじ。 |
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二九 さて群衆が群がり集まったので、イエスは語り出された、「この時代は邪悪な時代である。それはしるしを求めるが、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう。 |
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三十 蓋ヨナがニネベの人に奇跡と爲し如く人の子は今の世に奇跡と爲べし |
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三〇 ヨナがニネベの人に徵となりし如く、人の子もまた今の代に然らん。 |
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三〇 というのは、ニネベの人々に対してヨナがしるしとなったように、人の子もこの時代に対してしるしとなるであろう。 |
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三一 南方の女王審判の日に共に起て今の世の人の罪を斷めん彼は地の極よりソロモンの智慧を聽んとて來れり夫ソロモンより大なる者こゝに在 |
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三一 南の女王、審判のとき、今の代の人と共に起きて、之が罪を定めん。彼はソロモンの智慧を聽かんとて地の極より來れり。視よ、ソロモンよりも勝るもの此處に在り。 |
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三一 南の女王が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために、地の果からはるばるきたからである。しかし見よ、ソロモンにまさる者がここにいる。 |
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三二 ニネベの人審判の日に共に起て今の世の人の罪を斷めん彼等はヨナの勸言に因て悔改めたり夫ヨナより大なる者こゝに在 |
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三二 ニネベの人、審判のとき、今の代の人と共に立ちて之が罪を定めん。彼らはヨナの宣ぶる言によりて悔改めたり。視よ、ヨナよりも勝るもの此處に在り。 |
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三二 ニネベの人々が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、ニネベの人々はヨナの宣教によって悔い改めたからである。しかし見よ、ヨナにまさる者がここにいる。 |
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三三 燈を燃て隱たる處あるひは升の下におく者なし入來る者の其光を見ん爲に燭臺の上に置なり |
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三三 誰も燈火をともして、穴藏の中または升の下におく者なし。入り來る者の光を見んために、燈臺の上に置くなり。 |
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三三 だれもあかりをともして、それを穴倉の中や枡の下に置くことはしない。むしろはいって来る人たちに、そのあかりが見えるように、燭台の上におく。 |
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三四 身の燈は目なり爾の目暸かならば全身あかるく其目眊ければ爾の身も暗し |
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三四 汝の身の燈火は目なり、汝の目正しき時は、全身明からん。されど惡しき時は、身もまた暗からん。 |
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三四 あなたの目は、からだのあかりである。あなたの目が澄んでおれば、全身も明るいが、目がわるければ、からだも暗い。 |
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三五 故に爾にある光の暗らぬやう愼めよ |
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三五 この故に汝の內の光、闇にはあらぬか、省みよ。 |
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三五 だから、あなたの内なる光が暗くならないように注意しなさい。 |
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三六 もし爾の全身光明にして暗所なくば燈の輝きて爾を照す如く全く光明なるべし |
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三六 もし汝の全身明くして暗き所なくば、輝ける燈火に照さるる如く、その身全く明からん』 |
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三六 もし、あなたのからだ全体が明るくて、暗い部分が少しもなければ、ちょうど、あかりが輝いてあなたを照す時のように、全身が明るくなるであろう」。 |
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三七 イエス語れるとき或パリサイの人共に食せん事を請ければ入て食に就り |
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三七 イエスの語り給へるとき、或パリサイ人その家にて食事し給はん事を請ひたれば、入りて席に著きたまふ。 |
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三七 イエスが語っておられた時、あるパリサイ人が、自分の家で食事をしていただきたいと申し出たので、はいって食卓につかれた。 |
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三八 その食する前に洗ことを爲ざりしを見てパリサイの人異めり |
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三八 食事前に手を洗ひ給はぬを、此のパリサイ人見て怪しみたれば、 |
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三八 ところが、食前にまず洗うことをなさらなかったのを見て、そのパリサイ人が不思議に思った。 |
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三九 主これに曰けるは爾曹パリサイの人椀と盤の外を潔す然ど爾曹内は貪慾と惡にて充り |
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三九 主これに言ひたまふ『今や汝らパリサイ人は、酒杯と盆との外を潔くす、然れど汝らの內は貪慾と惡とにて滿つるなり。 |
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三九 そこで主は彼に言われた、「いったい、あなたがたパリサイ人は、杯や盆の外側をきよめるが、あなたがたの内側は貪欲と邪悪とで満ちている。 |
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四十 無知なる者よ外を造し者はまた内をも造ざりし乎 |
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四〇 愚なる者よ、外を造りし者は、內をも造りしならずや。 |
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四〇 愚かな者たちよ、外側を造ったかたは、また内側も造られたではないか。 |
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四一 なんぢら所有物を以て施せ然ば爾曹の爲に凡の物は潔れる也 |
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四一 唯その內にある物を施せ。さらば、一切の物なんぢらの爲に潔くなるなり。 |
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四一 ただ、内側にあるものをきよめなさい。そうすれば、いっさいがあなたがたにとって、清いものとなる。 |
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四二 禍なる哉なんぢらパリサイの人よ薄荷茴香および凡の野菜十分の一を取納て義と~を愛することを廢これ行ふべき事なり彼も亦廢べからざる者なり |
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四二 禍害なるかな、パリサイ人よ、汝らは薄荷・芸香その他あらゆる野菜の十分の一を納めて、公平と~に對する愛とを等閑にす、然れど之は行ふべきものなり。而して彼もまた等閑にすべきものならず。 |
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四二 しかし、あなた方パリサイ人は、わざわいである。はっか、うん香、あらゆる野菜などの十分の一を宮に納めておりながら、義と神に対する愛とをなおざりにしている。それもなおざりにはできないが、これは行わねばならない。 |
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四三 禍なる哉なんぢちパリサイの人よ會堂の高座市上の問安を好めり |
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四三 禍害なるかな、パリサイ人よ、汝らは會堂の上座、市場にての敬禮を喜ぶ。 |
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四三 あなたがたパリサイ人は、わざわいである。会堂の上席や広場での敬礼を好んでいる。 |
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四四 禍なる哉それ爾曹は隱沒たる墓の如し其上を行く人々これを知ざる也 |
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四四 禍害なるかな、汝らは露れぬ墓のごとし。其の上を歩む人これを知らぬなり』 |
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四四 あなたがたは、わざわいである。人目につかない墓のようなものである。その上を歩いても人々は気づかないでいる」。 |
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四五 ある教法師こたへて曰けるは師よ此言は我儕をも辱しむ |
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四五 ヘ法師の一人、答へて言ふ『師よ、斯ることを言ふは、我らをも辱しむるなり』 |
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四五 ひとりの律法学者がイエスに答えて言った、「先生、そんなことを言われるのは、わたしたちまでも侮辱することです」。 |
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四六 イエス曰けるは爾曹も禍なるかな教法師よ任がたき荷を人に負せ自ら指一をも其荷に按ず |
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四六 イエス言ひ給ふ『なんぢらヘ法師も禍害なる哉、なんぢら擔ひ難き荷を人に負せて、自ら指一つだに其の荷につけぬなり。 |
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四六 そこで言われた、「あなたがた律法学者も、わざわいである。負い切れない重荷を人に負わせながら、自分ではその荷に指一本でも触れようとしない。 |
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四七 禍なる哉なんぢらは預言者の墓を建なんぢらの先祖は之を殺せり |
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四七 禍害なるかな、汝らは預言者たちの墓を建つ、之を殺しし者は汝らの先祖なり。 |
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四七 あなたがたは、わざわいである。預言者たちの碑を建てるが、しかし彼らを殺したのは、あなたがたの先祖であったのだ。 |
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四八 實に爾曹先祖の爲る事ふこのむ證明を爲り夫かれらは之を殺し爾曹は其墓を建 |
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四八 げに汝らは先祖の所作を可しとする證人ぞ。それは彼らは之を殺し、汝らは其の基を建つればなり。 |
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四八 だから、あなたがたは、自分の先祖のしわざに同意する証人なのだ。先祖が彼らを殺し、あなたがたがその碑を建てるのだから。 |
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四九 是故に~の智慧いへる言あり我預言者および使徒を彼等に遣さんに其中の或者を殺し或者をば窘むべしと |
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四九 この故に~の智慧、いへる言あり、われ預言者と使徒とを彼らに遣さんに、その中の或者を殺し、また逐ひ苦しめん。 |
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四九 それゆえに、『神の知恵』も言っている、『わたしは預言者と使徒とを彼らにつかわすが、彼らはそのうちのある者を殺したり、迫害したりするであろう』。 |
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五十 創世より以來なかしゝ凡の預言者の血は此代に於て討さんと爲なり |
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五〇 世の創より流されたる凡ての預言者の血、 |
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五〇 それで、アベルの血から祭壇と神殿との間で殺されたザカリヤの血に至るまで、世の初めから流されてきたすべての預言者の血について、この時代がその責任を問われる。 |
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五一 即ちアベルの血より殿と祭壇の間に殺されたるザカリヤの血にまで至われ誠に爾曹に吿ん之を此代に討すべし |
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五一 即ちアベルの血より、祭壇と聖所との間にて殺されたるザカリヤの血に至るまでを、今の代に糺すべきなり。然り、われ汝らに吿ぐ、今の代は糺さるべし。 |
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五一 そうだ、あなたがたに言っておく、この時代がその責任を問われるであろう。 |
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五二 なんぢち禍なるかな教法師よ智識の鑰を奪て自ら入ず且入んとする者をも阻り |
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五二 禍害なるかな、ヘ法師よ、なんぢらは知識の鍵を取り去りて自ら入らず、入らんとする人をも止めしなり』 |
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五二 あなたがた律法学者は、わざわいである。知識のかぎを取りあげて、自分がはいらないばかりか、はいろうとする人たちを妨げてきた」。 |
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五三 此言を語るとき學者とパリサイの人々深く憤恨を含て多端の事を詰かけ |
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五三 此處より出で給へば、學者・パリサイ人ら烈しく詰め寄せて樣々のことを詰りはじめ、 |
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五三 イエスがそこを出て行かれると、律法学者やパリサイ人は、激しく詰め寄り、いろいろな事を問いかけて、 |
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五四 その口より出る言を何事か取へ訴んとして伺ひたり |
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五四 その口より何事をか捉へんと待構へたり。 |
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五四 イエスの口から何か言いがかりを得ようと、ねらいはじめた。 |
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12章 |
一 そのとき數萬の人々相踐あふ程に集れりイエス先弟子に曰けるは爾曹パリサイの人の麪酵を謹めよ是僞善なり |
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一 その時、無數の人あつまりて、群衆ふみ合ふばかりなり。イエスまづ弟子たちに言ひ出で給ふ『なんぢら、パリサイ人のパンだねに心せよ、これ僞善なり。 |
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一 その間に、おびただしい群衆が、互に踏み合うほどに群がってきたが、イエスはまず弟子たちに語りはじめられた、「パリサイ人のパン種、すなわち彼らの偽善に気をつけなさい。 |
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二 それ掩れて露れざる者はなく隱て知れざる者はなし |
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二 蔽はれたるものに露れぬはなく、隱れたるものに知られぬはなし。 |
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二 おおいかぶされたもので、現れてこないものはなく、隠れているもので、知られてこないものはない。 |
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三 是故に爾曹幽暗に語しことは光明に聞ゆべし密なる室にて耳に附言しことは屋上に播るべし |
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三 この故に汝らが暗きにて言ふことは、明きにて聞え、部屋の內にて耳によりて語りしことは、屋の上にて宣べらるべし。 |
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三 だから、あなたがたが暗やみで言ったことは、なんでもみな明るみで聞かれ、密室で耳にささやいたことは、屋根の上で言いひろめられるであろう。 |
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四 我友よ爾曹に吿ん身體を殺して後に何をも爲能ざる者を懼るゝ勿れ |
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四 我が友たる汝らに吿ぐ、身を殺して後に何をも爲し得ぬ者どもを懼るな。 |
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四 そこでわたしの友であるあなたがたに言うが、からだを殺しても、そのあとでそれ以上なにもできない者どもを恐れるな。 |
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五 われ懼べき者を爾曹に示さん殺したる後に地獄に投入る權威を有る者を懼よ我まことに爾曹に吿ん之を懼べし |
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五 懼るべきものを汝らに示さん、殺したる後ゲヘナに投げ入るる權威ある者を懼れよ。われ汝らに吿ぐ、げに之を懼れよ。 |
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五 恐るべき者がだれであるか、教えてあげよう。殺したあとで、更に地獄に投げ込む権威のあるかたを恐れなさい。そうだ、あなたがたに言っておくが、そのかたを恐れなさい。 |
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六 五の雀は二錢にて售に非ずや然るに~に於は其一をも忘れ給はず |
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六 五羽の雀は二錢にて賣るにあらずや、然るに其の一羽だに~の前に忘れらるる事なし。 |
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六 五羽のすずめは二アサリオンで売られているではないか。しかも、その一羽も神のみまえで忘れられてはいない。 |
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七 爾曹の首の髮また皆かぞへらる故に懼るゝ勿れ爾曹は多の雀よりも貴れり |
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七 汝らの頭の髪までもみな數へらる。懼るな、汝らは多くの雀よりも優るるなり。 |
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七 その上、あなたがたの頭の毛までも、みな数えられている。恐れることはない。あなたがたは多くのすずめよりも、まさった者である。 |
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八 又われ爾曹に吿ん我を人の前に識と言ん者をば人の子も亦~の使者の前に之を識と言ん |
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八 われ汝らに吿ぐ、凡そ人の前に我を言ひあらはす者を、人の子もまた~の使たちの前にて言ひあらはさん。 |
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八 そこで、あなたがたに言う。だれでも人の前でわたしを受けいれる者を、人の子も神の使たちの前で受けいれるであろう。 |
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九 我を人の前に識ずと言ん者は~の使者の前に彼も識ずと言るべし |
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九 されど人の前にて我を否む者は、~の使たちの前にて否まれん。 |
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九 しかし、人の前でわたしを拒む者は、神の使たちの前で拒まれるであろう。 |
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十 凡そ人の子を謗る者は赦さる可れど聖靈を褻す者は赦さる可らず |
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一〇 凡そ言をもて人の子に逆ふ者は赦されん。然れど聖靈を瀆すものは赦されじ。 |
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一〇 また、人の子に言い逆らう者はゆるされるであろうが、聖霊をけがす者は、ゆるされることはない。 |
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十一 人なんぢらを會堂また執政および權ある者の前に曳携なば如何こたへ何を言んと思ひ煩ふ勿れ |
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一一 人なんぢらを會堂、或は司、あるひは權威ある者の前に引きゆかん時、いかに何を答へ、または何を言はんと思ひ煩ふな。 |
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一一 あなたがたが会堂や役人や高官の前へひっぱられて行った場合には、何をどう弁明しようか、何を言おうかと心配しないがよい。 |
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十二 其時に說べき言は聖靈なんぢらに示すべし |
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一二 聖靈そのとき言ふべきことをヘへ給はん』 |
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一二 言うべきことは、聖霊がその時に教えてくださるからである」。 |
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十三 衆人の中より一人イエスに曰けるは師よ我が兄弟に遺業を我に分よと命たまへ |
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一三 群衆のうちの或人いふ『師よ、わが兄弟に命じて、嗣業を我に分たしめ給へ』 |
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一三 群衆の中のひとりがイエスに言った、「先生、わたしの兄弟に、遺産を分けてくれるようにおっしゃってください」。 |
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十四 イエス曰けるは人よ誰われを立て爾曹の裁判人また物を分つ者と爲しぞ |
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一四 之に言ひたまふ『人よ、誰が我を立てて汝らの裁判人また分配者とせしぞ』 |
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一四 彼に言われた、「人よ、だれがわたしをあなたがたの裁判人または分配人に立てたのか」。 |
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十五 イエス衆人に曰けるは戒心して貪心を愼めよ夫人の生命は所蓄の饒なるには因ざる也 |
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一五 斯て人々に言ひたまふ『愼みて凡ての慳貪をふせげ、人の生命は所有の豐なるには因らぬなり』 |
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一五 それから人々にむかって言われた、「あらゆる貪欲に対してよくよく警戒しなさい。たといたくさんの物を持っていても、人のいのちは、持ち物にはよらないのである」。 |
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十六 また譬を彼等に語て曰けるは或富人その田畑よく豐ければ |
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一六 また譬を語りて言ひ給ふ『ある富める人、その畑豐に實りたれば、 |
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一六 そこで一つの譬を語られた、「ある金持の畑が豊作であった。 |
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十七 自ら忖いひけるは我が作物を藏る所なきを如何せん |
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一七 心の中に議りて言ふ「われ如何にせん、我が作物を藏めおく處なし」 |
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一七 そこで彼は心の中で、『どうしようか、わたしの作物をしまっておく所がないのだが』と思いめぐらして |
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十八 又曰けるは我かく爲ん我倉を毁ち更に大なるを建すべて我が作物と貨を其所に藏べし |
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一八 遂に言ふ「われ斯く爲さん、わが倉を毀ち、更に大なるものを建てて、其處にわが穀物および善き物をことごとく藏めん。 |
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一八 言った、『こうしよう。わたしの倉を取りこわし、もっと大きいのを建てて、そこに穀物や食糧を全部しまい込もう。 |
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十九 斯て靈魂に對ひ靈魂よ多年を過ほどの許多の貨物を有たれば安心して食飮樂めよと言んとす |
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一九 斯てわが靈魂に言はん、靈魂よ、多年を過すに足る多くの善き物を貯へたれば、安んぜよ、飮食せよ、樂しめよ」 |
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一九 そして自分の魂に言おう。たましいよ、おまえには長年分の食糧がたくさんたくわえてある。さあ安心せよ、食え、飲め、楽しめ』。 |
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二十 然るに~これに曰けるは無知なる者よ今夜なんぢが靈魂とらるゝこと有べし然ば爾の備し物は誰が有になる乎 |
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二〇 然るに~かれに「愚なる者よ、今宵なんぢの靈魂とらるべし、然らば汝の備へたる物は、誰がものとなるべきぞ」と言ひ給へり。 |
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二〇 すると神が彼に言われた、『愚かな者よ、あなたの魂は今夜のうちにも取り去られるであろう。そしたら、あなたが用意した物は、だれのものになるのか』。 |
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二一 凡そ己の爲に財を積へ~に就て富ざる者は此の如なり |
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二一 己のために財を貯へ、~に對して富まぬ者は、斯のごとし』 |
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二一 自分のために宝を積んで神に対して富まない者は、これと同じである」。 |
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二二 イエスその弟子に曰けるは故に我なんぢらに吿ん爾曹生命の爲に何を食ひ身體の爲に何を着んとて思ひ煩ふ勿れ |
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二二 また弟子たちに言ひ給ふ『この故に、われ汝らに吿ぐ、何を食はんと生命のことを思ひ煩ひ、何を著んと體のことを思ひ煩ふな。 |
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二二 それから弟子たちに言われた、「それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようかと、命のことで思いわずらい、何を着ようかとからだのことで思いわずらうな。 |
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二三 生命は糧より優り身體は衣よりも優れり |
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二三 生命は糧にまさり、體は衣に勝るなり。 |
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二三 命は食物にまさり、からだは着物にまさっている。 |
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二四 鴉を思見よ稼ず穡ず倉をも納屋をも有ず然ども~はなほ此等を養ふ况て爾曹は鳥よりも貴きこと幾何ぞや |
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二四 鴉を思ひ見よ、播かず、刈らず、納屋も倉もなし。然るに~は之を養ひたまふ、汝ら鳥に優るること幾許ぞや。 |
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二四 からすのことを考えて見よ。まくことも、刈ることもせず、また、納屋もなく倉もない。それだのに、神は彼らを養っていて下さる。あなたがたは鳥よりも、はるかにすぐれているではないか。 |
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二五 爾曹のうち誰かよく思ひ煩ひて其生命を寸陰も延得んや |
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二五 汝らの中たれか思ひ煩ひて、身の長一尺を加へ得んや。 |
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二五 あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。 |
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二六 然ば最小事すら能ざるに何ぞ其他を思ひ煩ふや |
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二六 然れば最小き事すら能はぬに、何ぞ他のことを思ひ煩ふか。 |
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二六 そんな小さな事さえできないのに、どうしてほかのことを思いわずらうのか。 |
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二七 百合花は如何して生長かを思へ勞ず紡がざる也我爾曹に吿んソロモンの榮華の極の時だにも其装この花の一に及ざりき |
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二七 百合を思ひ見よ、紡がず、織らざるなり。然れど我なんぢらに吿ぐ、榮華を極めたるソロモンだに其の服裝この花の一つにも及かざりき。 |
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二七 野の花のことを考えて見るがよい。紡ぎもせず、織りもしない。しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。 |
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二八 ~は今日野に在て明日爐に投入らるゝ草をも如此よそはせ給へば况て爾曹をや吁信仰うすき者よ |
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二八 今日ありて、明日爐に投げ入れらるる野の草をも、~は斯く裝ひ給へば、况て汝らをや、ああ信仰うすき者よ。 |
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二八 きょうは野にあって、あすは炉に投げ入れられる草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。 |
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二九 爾曹何を食ひ何を飮んと求むる勿また思ひ惑ふこと勿れ |
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二九 なんぢら何を食ひ、何を飮まんと求むな、また心を動かすな。 |
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二九 あなたがたも、何を食べ、何を飲もうかと、あくせくするな、また気を使うな。 |
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三十 凡て是等の物は世界の邦人の求るもの也なんぢらの父は是等の物は爾曹に無て叶ぬ事を知 |
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三〇 是みな世の異邦人の切に求むる所なれど、汝らの父は此等の物の、なんぢらに必要なるを知り給へばなり。 |
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三〇 これらのものは皆、この世の異邦人が切に求めているものである。あなたがたの父は、これらのものがあなたがたに必要であることを、ご存じである。 |
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三一 たゞ~の國を求めよ然ば是等の物は爾曹に加らるべし |
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三一 ただ父の御國を求めよ。さらば此等の物は、なんぢらに加へらるべし。 |
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三一 ただ、御国を求めなさい。そうすれば、これらのものは添えて与えられるであろう。 |
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三二 小き羣よ懼るゝ勿れ爾曹の父は喜びて國を爾曹に予へ給はん |
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三二 懼るな小き群よ、なんぢらに御國を賜ふことは、汝らの父の御意なり。 |
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三二 恐れるな、小さい群れよ。御国を下さることは、あなたがたの父のみこころなのである。 |
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三三 爾曹の所有を售て施し己が爲に常に奮ざる財布すなはち盡ざる財寳を天に備よ其處は盜賊も近よらず蠧も壞はざる也 |
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三三 汝らの所有を賣りて施濟をなせ。己がために舊びぬ財布をつくり、盡きぬ財寳を天に貯へよ。かしこは盜人も近づかず、蟲も壞らぬなり、 |
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三三 自分の持ち物を売って、施しなさい。自分のために古びることのない財布をつくり、盗人も近寄らず、虫も食い破らない天に、尽きることのない宝をたくわえなさい。 |
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三四 爾曹の財寳の在ところには爾曹の心も亦そこに在べし |
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三四 汝らの財寳のある所には、汝らの心もあるべし。 |
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三四 あなたがたの宝のある所には、心もあるからである。 |
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三五 爾曹腰に帶し火燈を燃して居 |
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三五 なんぢら腰に帶し、燈火をともして居れ。 |
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三五 腰に帯をしめ、あかりをともしていなさい。 |
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三六 主人婚筵より歸來り門を叩ば速かに啓ん爲に彼を待人の如せよ |
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三六 主人、婚筵より歸り來りて戶を叩かば、直ちに開くために待つ人のごとくなれ。 |
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三六 主人が婚宴から帰ってきて戸をたたくとき、すぐあけてあげようと待っている人のようにしていなさい。 |
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三七 主人きたりて其目を醒し居を見なば此僕はなり誠に我なんぢらに吿ん主人みづから腰に帶し僕を食に就せ前て之に供事すべし |
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三七 主人の來るとき、目を覺しをるを見らるる僕どもは幸なるかな。われ誠に汝らに吿ぐ、主人帶して其の僕どもを食事の席に就かせ、進みて給事すべし。 |
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三七 主人が帰ってきたとき、目を覚しているのを見られる僕たちは、さいわいである。よく言っておく。主人が帯をしめて僕たちを食卓につかせ、進み寄って給仕をしてくれるであろう。 |
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三八 或は二更あるひは三更に主人きたりて然なせるを見なば此僕はなり |
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三八 主人、夜の半ごろ若くは夜の明くる頃に來るとも、斯の如くなるを見らるる僕どもは幸なり。 |
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三八 主人が夜中ごろ、あるいは夜明けごろに帰ってきても、そうしているのを見られるなら、その人たちはさいわいである。 |
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三九 爾曹これを知べし若し家の主人盜賊いづれの時に來かも知ば其家を守て破せまじ |
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三九 なんぢら之を知れ、家主もし盜人いづれの時來るかを知らば、その家を穿たすまじ。 |
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三九 このことを、わきまえているがよい。家の主人は、盗賊がいつごろ来るかわかっているなら、自分の家に押し入らせはしないであろう。 |
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四十 然ば爾曹も預じめ備せよ不意ときに人の子きたらんと爲ばなり |
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四〇 汝らも備へをれ。人の子は思はぬ時に來ればなり』 |
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四〇 あなたがたも用意していなさい。思いがけない時に人の子が来るからである」。 |
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四一 ペテロ曰けるは主よ此譬は我儕に言か又は凡の人に言か |
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四一 ペテロ言ふ『主よ、この譬を言ひ給ふは我らにか、また凡ての人にか』 |
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四一 するとペテロが言った、「主よ、この譬を話しておられるのはわたしたちのためなのですか。それとも、みんなの者のためなのですか」。 |
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四二 主いひけるは時に及て食物を給與しめん爲に主人がその僕等の上に立たる忠義にして智き家宰は誰なる乎 |
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四二 主いひ給ふ『主人が時に及びて僕どもに定の糧を與ヘさする爲に、その僕どもの上に立つる忠實にして慧き支配人は誰なるか、 |
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四二 そこで主が言われた、「主人が、召使たちの上に立てて、時に応じて定めの食事をそなえさせる忠実な思慮深い家令は、いったいだれであろう。 |
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四三 其主人きたる時に是の如く勤るを見らるゝ僕はなり |
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四三 主人のきたる時、かく爲し居るを見らるる僕は幸なるかな。 |
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四三 主人が帰ってきたとき、そのようにつとめているのを見られる僕は、さいわいである。 |
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四四 我まことに爾曹に吿ん其所有を皆かれに督らすべし |
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四四 われ實をもて汝らに吿ぐ、主人すべての所有を彼に掌どらすべし。 |
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四四 よく言っておくが、主人はその僕を立てて自分の全財産を管理させるであろう。 |
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四五 若その僕心の中に我が主人の來るは遲らんと思その僕婢を扑たゝき食飮して且酒に醉はじめば |
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四五 若しその僕、心のうちに主人の來るは遲しと思ひ、僕・婢女をたたき、飮み食ひして醉ひ始めなば、 |
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四五 しかし、もしその僕が、主人の帰りがおそいと心の中で思い、男女の召使たちを打ちたたき、そして食べたり、飲んだりして酔いはじめるならば、 |
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四六 其僕の主人おもはざるの日しらざるの時に來りて之を斬殺し其報を不信者と同うすべし |
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四六 その僕の主人おもはぬ日、知らぬ時に來りて、之を烈しく笞ち、その報を不忠者と同じうせん。 |
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四六 その僕の主人は思いがけない日、気がつかない時に帰って来るであろう。そして、彼を厳罰に処して、不忠実なものたちと同じ目にあわせるであろう。 |
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四七 僕主人の心を知ながら預備せず亦その心に從ざる者は扑るゝこと多らん |
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四七 主人の意を知りながら用意せず、又その意に從はぬ僕は、笞たるること多からん。 |
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四七 主人のこころを知っていながら、それに従って用意もせず勤めもしなかった僕は、多くむち打たれるであろう。 |
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四八 知ずして扑べき事を作し者は扑るゝ事も少からん多く予らるゝ者は多く求らるべし多く托れば之より多く求べし |
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四八 然れど知らずして、打たるベき事をなす者は、笞たるること少からん。多く與ヘらるる者は、多く求められん。多く人に托くれば、更に多くその人より請ひ求むベし。 |
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四八 しかし、知らずに打たれるようなことをした者は、打たれ方が少ないだろう。多く与えられた者からは多く求められ、多く任せられた者からは更に多く要求されるのである。 |
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四九 われ火を地に投入ん爲に來れり我なにをか欲む已に此火の燃たらん事なり |
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四九 我は火を地に投ぜんとて來れり。此の火すでに燃えたらんには、我また何をか望まん。 |
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四九 わたしは、火を地上に投じるためにきたのだ。火がすでに燃えていたならと、わたしはどんなに願っていることか。 |
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五十 われ受べきのバプテスマあり其成遂らるゝ迄は我痛いかばかりぞ乎 |
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五〇 されど我には受くべきバプテスマあり。その成し遂げらるるまでは思ひ逼ること如何許ぞや。 |
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五〇 しかし、わたしには受けねばならないバプテスマがある。そして、それを受けてしまうまでは、わたしはどんなにか苦しい思いをすることであろう。 |
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五一 我は安全を地に施んとて來ると意ふや我なんぢらに吿ん然ず反て分爭しむ |
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五一 われ地に平和を與へんために來ると思ふか。われ汝らに吿ぐ、然らず、反つて分爭なり。 |
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五一 あなたがたは、わたしが平和をこの地上にもたらすためにきたと思っているのか。あなたがたに言っておく。そうではない。むしろ分裂である。 |
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五二 今よりのち一家に五人あらば三人は二人に敵對し二人は三人に敵對して分るべし |
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五二 今より後、一家に五人あらば三人は二人に、二人は三人に分れ爭はん。 |
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五二 というのは、今から後は、一家の内で五人が相分れて、三人はふたりに、ふたりは三人に対立し、 |
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五三 父は子に子は父に母は女に女は母に姑は其婦に婦は其姑に敵對して分るべし |
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五三 父は子に、子は父に、母は娘に、娘は母に、姑嫜は媳に、媳は姑嫜に分れ爭はん』 |
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五三 また父は子に、子は父に、母は娘に、娘は母に、しゅうとめは嫁に、嫁はしゅうとめに、対立するであろう」。 |
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五四 イエスまた衆人に曰けるは雲の西より起るを見ば直に雨ふらんと爾曹いふ果て然り |
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五四 イエスまた群衆に言ひ給ふ『なんぢら雲の西より起るを見れば、直ちに言ふ「急雨きたらん」と、果して然り。 |
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五四 イエスはまた群衆に対しても言われた、「あなたがたは、雲が西に起るのを見るとすぐ、にわか雨がやって来る、と言う。果してそのとおりになる。 |
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五五 南より風ふけば暑からんと爾曹いふ果て然り |
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五五 また南風ふけば、汝等いふ「强き暑あらん」と、果して然り。 |
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五五 それから南風が吹くと、暑くなるだろう、と言う。果してそのとおりになる。 |
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五六 僞善者よ天地の色象を別ことを知て此時を別ち能ざるは何ぞや |
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五六 僞善者よ、汝ら天地の氣色を辨ふることを知りて、今の時を辨ふること能はぬは何ぞや。 |
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五六 偽善者よ、あなたがたは天地の模様を見分けることを知りながら、どうして今の時代を見分けることができないのか。 |
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五七 また何ぞ自ら公義を審ざる乎 |
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五七 また何故みづから正しき事を定めぬか。 |
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五七 また、あなたがたは、なぜ正しいことを自分で判断しないのか。 |
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五八 なんぢ訟る者と共に有司に往とき途中にて心を盡して彼より釋されんことを求めよ恐くは 訟る者なんぢを裁判人にひき裁判人なんぢを下吏に付し下吏なんぢを獄に入ん |
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五八 なんぢ訴ふる者とともに司に往くとき、途にて和解せんことを力めよ、恐くは訴ふる者、なんぢを審判人に引きゆき、審判人なんぢを下役にわたし、下役なんぢを獄に投げ入れん。 |
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五八 たとえば、あなたを訴える人と一緒に役人のところへ行くときには、途中でその人と和解するように努めるがよい。そうしないと、その人はあなたを裁判官のところへひっぱって行き、裁判官はあなたを獄吏に引き渡し、獄吏はあなたを獄に投げ込むであろう。 |
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五九 我なんぢに吿ん一錢も殘ず償ふまでは爾そこを出ことを得ざる也 |
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五九 われ汝に吿ぐ、一レプタも殘りなく償はずば、其處を出づること能はじ』 |
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五九 わたしは言って置く、最後の一レプタまでも支払ってしまうまでは、決してそこから出て来ることはできない」。 |
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13章 |
一 當時あつまりたる者の中にピラトがガリラヤ人の血を其供物に雜し事をイエスに吿る者あり |
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一 その折しも或る人々きたりてピラトがガリラヤ人らの血を彼らの犧牲にまじへたりし事をイエスに吿げたれば、 |
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一 ちょうどその時、ある人々がきて、ピラトがガリラヤ人たちの血を流し、それを彼らの犠牲の血に混ぜたことを、イエスに知らせた。 |
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二 イエス答て彼等に曰けるは爾曹此ガリラヤ人は是の如く害されし故に凡のガリラヤ人よりもuりて罪ある者と意ふや |
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二 答へて言ひ給ふ『かのガリラヤ人は斯ることに遭ひたる故に、凡てのガリラヤ人に勝れる罪人なりしと思ふか。 |
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二 そこでイエスは答えて言われた、「それらのガリラヤ人が、そのような災難にあったからといって、他のすべてのガリラヤ人以上に罪が深かったと思うのか。 |
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三 我なんぢらに吿ん然ず爾曹悔改めずば皆おなじく亡さるべし |
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三 われ汝らに吿ぐ、然らず、汝らも悔改めずば、皆おなじく亡ぶべし。 |
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三 あなたがたに言うが、そうではない。あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅びるであろう。 |
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四 シロアムの塔たふれて壓死されし十八人はエルサレムに住る凡の人々よりもuりて罪ある者と意ふや |
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四 又シロアムの櫓たふれて、壓し殺されし十八人は、エルサレムに住める凡ての人に勝りて罪の負債ある者なりしと思ふか。 |
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四 また、シロアムの塔が倒れたためにおし殺されたあの十八人は、エルサレムの他の全住民以上に罪の負債があったと思うか。 |
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五 われ爾曹に吿ん然ず爾曹悔改めずば皆おなじく亡さるべし |
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五 われ汝らに吿ぐ、然らず、汝らも悔改めずば、みな斯のごとく亡ぶべし』 |
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五 あなたがたに言うが、そうではない。あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅びるであろう」。 |
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六 又この譬を云り或人その葡萄園に植おきたる無花果樹ありしが來て之に果を求れども得ざりければ |
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六 又この譬を語りたまふ『或人おのが葡萄園に植ゑありし無花果の樹に來りて果を求むれども得ずして、 |
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六 それから、この譬を語られた、「ある人が自分のぶどう園にいちじくの木を植えて置いたので、実を捜しにきたが見つからなかった。 |
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七 其園丁に曰けるは我三年きたりて此無花果樹に果を求れざも得ず之を斫され何ぞ徒らに地を塞や |
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七 園丁に言ふ「視よ、われ三年きたりて此の無花果の樹に果を求むれども得ず。これを伐り倒せ、何ぞ徒らに地を塞ぐか」 |
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七 そこで園丁に言った、『わたしは三年間も実を求めて、このいちじくの木のところにきたのだが、いまだに見あたらない。その木を切り倒してしまえ。なんのために、土地をむだにふさがせて置くのか』。 |
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八 園丁こたへけるは主よ我その周圍を堀て之に糞するまで今年も容せ |
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八 答へて言ふ「主よ、今年も容したまへ、我その周圍を掘りて肥料せん。 |
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八 すると園丁は答えて言った、『ご主人様、ことしも、そのままにして置いてください。そのまわりを掘って肥料をやって見ますから。 |
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九 もし果を結ばゝ善もし結ずば後に之を斫べし |
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九 その後、果を結ばば善し、もし結ばずば伐り倒したまへ』 |
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九 それで来年実がなりましたら結構です。もしそれでもだめでしたら、切り倒してください』」。 |
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十 イエス安息日に或會堂にて教しに |
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一〇 イエス安息日に或る會堂にてヘへたまふ時、 |
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一〇 安息日に、ある会堂で教えておられると、 |
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十一 十八年鬼に患されたる婦あり傴僂て少も伸ること能ざりき |
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一一 視よ、十八年のあひだ、病の靈に憑かれたる女あり、屈まりて少しも伸ぶること能はず。 |
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一一 そこに十八年間も病気の霊につかれ、かがんだままで、からだを伸ばすことの全くできない女がいた。 |
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十二 イエス之を見てよび婦よ爾は其病より釋さるゝと曰て |
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一二 イエスこの女を見、呼び寄せて『女よ、なんぢは病より解かれたり』と言ひ、 |
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一二 イエスはこの女を見て、呼びよせ、「女よ、あなたの病気はなおった」と言って、 |
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十三 手を婦に按ければ直に伸て~を讚美たり |
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一三 之に手を按きたまへば、立刻に身を直ぐにして~を崇めたり。 |
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一三 手をその上に置かれた。すると立ちどころに、そのからだがまっすぐになり、そして神をたたえはじめた。 |
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十四 會堂の宰イエスの安息日に醫したる事を怒こたへて衆人に曰けるは事を爲べきの日六日あれば其中に來りて醫さるべし安息日に爲ざれ |
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一四 會堂司イエスの安息日に病を醫し給ひしことを憤ほり、答へて群衆に言ふ『働くべき日は六日あり、その間に來りて醫されよ。安息日には爲ざれ』 |
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一四 ところが会堂司は、イエスが安息日に病気をいやされたことを憤り、群衆にむかって言った、「働くべき日は六日ある。その間に、なおしてもらいにきなさい。安息日にはいけない」。 |
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十五 主かれに答て曰けるは僞善者よ爾曹おのおの安息日には其牛や驢をとき厩より牽出して水を飮さゞる乎 |
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一五 主こたへて言ひたまふ『僞善者らよ、汝等おのおの安息日には、己が牛または驢馬を小屋より解きいだし、水飼はんとて牽き往かぬか。 |
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一五 主はこれに答えて言われた、「偽善者たちよ、あなたがたはだれでも、安息日であっても、自分の牛やろばを家畜小屋から解いて、水を飲ませに引き出してやるではないか。 |
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十六 况て此婦はアブラハムの裔なり十八年サタンに縛られたる其結を安息日に解べからざらん乎 |
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一六 さらば長き十八年の間サタンに縛られたるアブラハムの娘なる此の女は、安息日にその繫より解かるべきならずや』 |
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一六 それなら、十八年間もサタンに縛られていた、アブラハムの娘であるこの女を、安息日であっても、その束縛から解いてやるべきではなかったか」。 |
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十七 イエス如此曰ければ敵對しゝ者みな慚ぬ又衆人みな其行し慈惠ことを喜べり |
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一七 イエス此等のことを言ひ給へば、逆ふ者はみな恥ぢ、群衆は擧りてその爲し給へる榮光ある凡ての業を喜べり。 |
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一七 こう言われたので、イエスに反対していた人たちはみな恥じ入った。そして群衆はこぞって、イエスがなされたすべてのすばらしいみわざを見て喜んだ。 |
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十八 イエスまた曰けるは~の國は何に比へ又なにゝ譬んや |
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一八 斯てイエス言ひたまふ『~の國は何に似たるか、我これを何に擬へん、 |
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一八 そこで言われた、「神の国は何に似ているか。またそれを何にたとえようか。 |
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十九 一粒の芥種の如し人これを取て其園に播ば長生て大なる樹となり天空の鳥その枝に捿なり |
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一九 一粒の芥種のごとし。人これを取りて己の園に播きたれば、育ちて樹となり、空の鳥その枝に宿れり』 |
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一九 一粒のからし種のようなものである。ある人がそれを取って庭にまくと、育って木となり、空の鳥もその枝に宿るようになる」。 |
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二十 又いひけるは我~の國を何に譬んや |
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二〇 また言ひたまふ『~の國を何に擬へんか、 |
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二〇 また言われた、「神の国を何にたとえようか。 |
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二一 麪酵の如し婦これを取て三斗の粉の中に納せば盡く發出すなり |
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二一 パン種のごとし。女これを取りて、三斗の粉の中に入るれば、ことごとく脹れいだすなり』 |
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二一 パン種のようなものである。女がそれを取って三斗の粉の中に混ぜると、全体がふくらんでくる」。 |
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二二 イエス教つゝ各城各クを過エルサレムに向て旅行り |
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二二 イエスヘへつつ町々村々を過ぎて、エルサレムに旅し給ふとき、 |
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二二 さてイエスは教えながら町々村々を通り過ぎ、エルサレムへと旅を続けられた。 |
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二三 或人いひけるは主よ救るる者は少き乎 |
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二三 或人いふ『主よ、救はるる者は少きか』 |
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二三 すると、ある人がイエスに、「主よ、救われる人は少ないのですか」と尋ねた。 |
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二四 イエス彼等に曰けるは窄門に入ために力を盡せ我なんぢらに吿ん入ん事を求て能ざる者おほし |
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二四 イエス人々に言ひたまふ『力を盡して狹き門より入れ。我なんぢらに吿ぐ、人らん事を求めて入り能はぬ者おほからん。 |
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二四 そこでイエスは人々にむかって言われた、「狭い戸口からはいるように努めなさい。事実、はいろうとしても、はいれない人が多いのだから。 |
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二五 家の主人おきて門を閉し後に爾曹外にたち門を叩て主よ主よ我に啓と曰んに主人こたへて我なんぢらは伺處より來しか知ずと曰ん |
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二五 家主おきて門を閉ぢたる後、なんぢら外に立ちて「主よ我らに開き給へ」と言ひつつ門を叩き始めんに、主人こたへて「われ汝らが何處の者なるかを知らず」と言はん。 |
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二五 家の主人が立って戸を閉じてしまってから、あなたがたが外に立ち戸をたたき始めて、『ご主人様、どうぞあけてください』と言っても、主人はそれに答えて、『あなたがたがどこからきた人なのか、わたしは知らない』と言うであろう。 |
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二六 然る時に我儕は爾の前に食飮し爾また我儕の衢に教たりしと言出さんに |
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二六 その時「われらは御前にて飮食し、なんぢは我らの町の大路にてヘへ給へり」と言ひ出でんに、 |
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二六 そのとき、『わたしたちはあなたとご一緒に飲み食いしました。また、あなたはわたしたちの大通りで教えてくださいました』と言い出しても、 |
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二七 主人こたへて我なんぢらに吿ん何處より來しか知ず皆惡を爲す者よ我を去と曰ん |
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二七 主人こたへて「われ汝らが何處の者なるかを知らず、惡をなす者どもよ、皆われを離れ去れ」と言はん。 |
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二七 彼は、『あなたがたがどこからきた人なのか、わたしは知らない。悪事を働く者どもよ、みんな行ってしまえ』と言うであろう。 |
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二八 爾曹アブラハム イサク ヤコブ及び凡の預言者は~の國に在て爾曹は外に投出さるゝを見ん時に哀哭切齒すること有べし |
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二八 汝らアブラハム、イサク、ヤコブ及び凡ての預言者の、~の國に居り、己らの逐ひ出さるるを見ば、其處にて哀哭・切齒する事あらん。 |
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二八 あなたがたは、アブラハム、イサク、ヤコブやすべての預言者たちが、神の国にはいっているのに、自分たちは外に投げ出されることになれば、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。 |
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二九 また人々西や東北や南より來りて~の國に坐するならん |
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二九 また人々、東より西より南より北より來りて、~の國の宴に就くべし。 |
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二九 それから人々が、東から西から、また南から北からきて、神の国で宴会の席につくであろう。 |
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三十 その後の者は先に先の者は後に爲べし |
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三〇 視よ、後なる者の先になり、先なる者の後になる事あらん』 |
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三〇 こうしてあとのもので先になるものがあり、また、先のものであとになるものもある」。 |
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三一 當日あるパリサイの人々來りてイエスに曰けるはヘロデ爾を殺さんとする故に此を離往 |
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三一 そのとき或るパリサイ人ら、イエスに來りて言ふ『いでて此處を去り給へ、ヘロデ汝を殺さんとす』 |
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三一 ちょうどその時、あるパリサイ人たちが、イエスに近寄ってきて言った、「ここから出て行きなさい。ヘロデがあなたを殺そうとしています」。 |
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三二 答て曰けるは爾曹ゆきて其狐に吿よ我今日明日惡鬼を逐出し病を醫し第三日に此事をはらん |
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三二 答へて言ひ給ふ『往きてかの狐に言へ。視よ、われ今日明日、惡鬼を逐ひ出し、病を醫し、而して三日めに全うせられん。 |
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三二 そこで彼らに言われた、「あのきつねのところへ行ってこう言え、『見よ、わたしはきょうもあすも悪霊を追い出し、また、病気をいやし、そして三日目にわざを終えるであろう。 |
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三三 然ども今日明白また次日は我かたらず行べし蓋預言者はエルサレムの外に殺るゝこと有ねば也 |
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三三 されど今日も明日も次の日も我は進み往くべし。それ預言者のエルサレムの外にて死ぬることは有るまじきなり。 |
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三三 しかし、きょうもあすも、またその次の日も、わたしは進んで行かねばならない。預言者がエルサレム以外の地で死ぬことは、あり得ないからである』。 |
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三四 噫エルサレムよエルサレムよ預言者を殺し爾に遣されし者を石にて擊る者よ母鷄の雛を翼の下に集むる如く我なんぢの赤子を集んと爲しこせ幾回ぞや爾曹は欲ず |
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三四 噫エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、遣されたる人々を石にて擊つ者よ、牝鶏の己が雛を翼のうちに集むるごとく、我なんぢの子どもを集めんとせしこと幾度ぞや。然れど汝らは好まざりき。 |
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三四 ああ、エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、おまえにつかわされた人々を石で打ち殺す者よ。ちょうどめんどりが翼の下にひなを集めるように、わたしはおまえの子らを幾たび集めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは応じようとしなかった。 |
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三五 視よ爾曹の家は墟と爲て遺さるべし誠に我なんぢらに吿ん主の名に託て來る者はなりと爾曹いはん時いたる迄は我を見ざるべし |
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三五 視よ、汝らの家は棄てられて汝らに遺らん。我なんぢらに吿ぐ、「讚むべきかな、主の名によりて來る者」と、汝らの言ふ時の至るまでは、我を見ざるべし』 |
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三五 見よ、おまえたちの家は見捨てられてしまう。わたしは言って置く、『主の名によってきたるものに、祝福あれ』とおまえたちが言う時の来るまでは、再びわたしに会うことはないであろう」。 |
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14章 |
一 イエス安息日に食事の爲ある宰なるパリサイの人の家に入しに人々かれを窺たり |
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一 イエス安息日に食事せんとて、或るパリサイ人の頭の家に入り給へば、人々これを窺ふ。 |
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一 ある安息日のこと、食事をするために、あるパリサイ派のかしらの家にはいって行かれたが、人々はイエスの様子をうかがっていた。 |
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二 其前に腹脹を患ひたる人ありしかば |
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二 視よ、御前に水腫をわづらふ人ゐたれば、 |
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二 するとそこに、水腫をわずらっている人が、みまえにいた。 |
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三 イエス應て教法師とパリサイの人々に曰けるは安息日に醫す事は宜や否 |
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三 イエス答へてヘ法師とパリサイ人とに言ひたまふ『安息日に人を醫すことは善しや否や』 |
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三 イエスは律法学者やパリサイ人たちにむかって言われた、「安息日に人をいやすのは、正しいことかどうか」。 |
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四 かれら默然たりイエスかの人を執へ醫して之を去しめ |
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四 かれら默然たり。イエスその人を執り、醫して去らしめ、 |
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四 彼らは黙っていた。そこでイエスはその人に手を置いていやしてやり、そしてお帰しになった。 |
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五 彼等に答て曰けるは爾曹のうち誰か驢あるひは牛などの阱に陷たらんに安息日には遽かに曳出さゞる乎 |
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五 且かれらに言ひ給ふ『なんぢらの中その子あるひは其の牛、井に陷らんに、安息日には直ちに之を引揚げぬ者あるか』 |
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五 それから彼らに言われた、「あなたがたのうちで、自分のむすこか牛が井戸に落ち込んだなら、安息日だからといって、すぐに引き上げてやらない者がいるだろうか」。 |
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六 彼等この言に就て對ること能ざりき |
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六 彼等これに對して物言ふこと能はず。 |
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六 彼らはこれに対して返す言葉がなかった。 |
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七 斯て其席に請れたる人々の首席を擇を見てイエス譬を以て彼等に曰けるは |
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七 イエス招かれたる者の、上席をえらぶを見、譬をかたりて言ひ給ふ、 |
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七 客に招かれた者たちが上座を選んでいる様子をごらんになって、彼らに一つの譬を語られた。 |
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八 なんぢ婚筵に請れんとき首座に坐すること勿れ恐くは爾より尊人まねかれなば |
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八 『なんぢ婚筵に招かるるとき、上席に着くな。恐らくは汝よりも貴き人の招かれんに、 |
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八 「婚宴に招かれたときには、上座につくな。あるいは、あなたよりも身分の高い人が招かれているかも知れない。 |
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九 彼と爾を請し者きたりて此人に座を讓れと曰ん然ば爾羞て末座に往べし |
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九 汝と彼とを招きたる者きたりて「この人に席を讓れ」と言はん。さらば其の時なんぢ恥ぢて末席に往きはじめん。 |
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九 その場合、あなたとその人とを招いた者がきて、『このかたに座を譲ってください』と言うであろう。そのとき、あなたは恥じ入って末座につくことになるであろう。 |
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十 是故に爾まねかれん時は往て未座に坐せよ請し者來りて友よ首座に進と爾に言ば同席の者の向に爾尊まるべし |
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一〇 招かるるとき、寧ろ往きて末席に著け、さらば招きたる者きたりて「友よ、上に進め」と言はん。その時なんぢ同席の者の前に譽あるべし。 |
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一〇 むしろ、招かれた場合には、末座に行ってすわりなさい。そうすれば、招いてくれた人がきて、『友よ、上座の方へお進みください』と言うであろう。そのとき、あなたは席を共にするみんなの前で、面目をほどこすことになるであろう。 |
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十一 凡そ自ら高ぶる者は卑され自ら卑だる者は高くせらるべし |
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一一 凡そおのれを高うする者は卑うせられ、己を卑うする者は高うせらるるなり』 |
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一一 おおよそ、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう」。 |
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十二 又かれを請る者に曰けるは爾午餐あるひは晩餐を設るとき朋友兄弟親戚また富る隣の人を請なかれ恐くは彼等また爾を請て其報答を爲ん |
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一二 また己を招きたる者にも言ひ給ふ『なんぢ晝餐または夕餐を設くるとき、朋友・兄弟・親族・富める隣人などをよぶな。恐らくは彼らも亦なんぢを招きて報をなさん。 |
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一二 また、イエスは自分を招いた人に言われた、「午餐または晩餐の席を設ける場合には、友人、兄弟、親族、金持の隣り人などは呼ばぬがよい。恐らく彼らもあなたを招きかえし、それであなたは返礼を受けることになるから。 |
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十三 爾筵を爲ば貧乏癈疾跛者瞽者などを請け |
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一三 饗宴を設くる時は、寧ろ貧しき者・不具・跛者・盲人などを招け。 |
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一三 むしろ、宴会を催す場合には、貧しい人、体の不自由な人、足の悪い人、目の見えない人などを招くがよい。 |
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十四 然ば爾なるべし蓋彼等は爾に報ること能ず義き人々の甦らん其時なんぢに報答あれば也 |
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一四 彼らは報ゆること能はぬ故に、なんぢ幸なるべし。正しき者の復活の時に報いらるるなり』 |
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一四 そうすれば、彼らは返礼ができないから、あなたはさいわいになるであろう。正しい人々の復活の際には、あなたは報いられるであろう」。 |
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十五 同に食せる者の一人之を聞てイエスに曰けるは~の國に食する者はなり |
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一五 同席の者の一人これらの事を聞きてイエスに言ふ『おほよそ~の國にて食事する者は幸なり』 |
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一五 列席者のひとりがこれを聞いてイエスに「神の国で食事をする人は、さいわいです」と言った。 |
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十六 イエス彼に曰けるは或人おほいなる筵を設て多賓を請けり |
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一六 之に言ひたまふ『或人、盛なる夕餐を設けて、多くの人を招く。 |
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一六 そこでイエスが言われた、「ある人が盛大な晩餐会を催して、大ぜいの人を招いた。 |
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十七 筵のとき僕を基請たる者に遣して百物はや備たれば來るべしと言せけるに |
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一七 夕餐の時いたりて、招きおきたる者の許に僕を遣して「來れ、旣に備りたり」と言はしめたるに、 |
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一七 晩餐の時刻になったので、招いておいた人たちのもとに僕を送って、『さあ、おいでください。もう準備ができましたから』と言わせた。 |
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十八 彼等みな同く辭ぬ其始の者かれに曰けるは我田地を買たれば往て視ざるを得ず顧くは我を允し給へ |
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一八 皆ひとしく辭りはじむ。初の者いふ「われ田地を買へり、往きて見ざるを得ず。請ふ、許されんことを」 |
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一八 ところが、みんな一様に断りはじめた。最初の人は、『わたしは土地を買いましたので、行って見なければなりません。どうぞ、おゆるしください』と言った。 |
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十九 又一人の者いひけるは我五耦の牛を買たれば之を試むる爲に往ん願くは我を允し給へ |
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一九 他の者いふ「われ五耦の牛を買へり、之を驗すために往くなり。請ふ、許されんことを」 |
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一九 ほかの人は、『わたしは五対の牛を買いましたので、それをしらべに行くところです。どうぞ、おゆるしください』、 |
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二十 又一人の者いひけるは我妻を娶たり是故に往ことを得ざる也 |
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二〇 また他の者いふ「われ妻を娶れり、此の故に往くこと能はず」 |
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二〇 もうひとりの人は、『わたしは妻をめとりましたので、参ることができません』と言った。 |
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二一 其僕かへりて此事を主人に吿ければ主人怒て其僕に曰けるは速かに邑の衢巷に往て貧者癈疾跛者瞽者などを此に引來れ |
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二一 僕かヘりて此等の事をその主人に吿ぐ、家主いかりて僕に言ふ「とく町の大路と小路とに往きて、貪しき者・不具者・盲人・跛者などを此處に連れきたれ」 |
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二一 僕は帰ってきて、以上の事を主人に報告した。すると家の主人はおこって僕に言った、『いますぐに、町の大通りや小道へ行って、貧しい人、体の不自由な人、目の見えない人、足の悪い人などを、ここへ連れてきなさい』。 |
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二二 僕曰けるは主よ命の如く行り然ざ尚あまりの座あり |
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二二 僕いふ「主よ、仰のごとく爲したれど、尙ほ餘の席あり」 |
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二二 僕は言った、『ご主人様、仰せのとおりにいたしましたが、まだ席がございます』。 |
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二三 主人僕に曰けるは道路や藩籬の邊にゆき强て人々を引來り我家に盈しめよ |
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二三 主人、僕に言ふ「道や籬の邊にゆき、人々を强ひて連れきたり、我が家に充たしめよ。 |
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二三 主人が僕に言った、『道やかきねのあたりに出て行って、この家がいっぱいになるように、人々を無理やりにひっぱってきなさい。 |
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二四 我なんぢらに吿ん彼まねきたる人々は一人だに我餐を甞ふ者なし |
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二四 われ汝らに吿ぐ、かの招きおきたる者のうち一人だに、我が夕餐を味ひ得る者なし』 |
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二四 あなたがたに言って置くが、招かれた人で、わたしの晩餐にあずかる者はひとりもないであろう』」。 |
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二五 多の人々イエスと偕に行しがイエス顧みて彼等に曰けるは |
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二五 さて大なる群衆イエスに伴ひゆきたれば、顧みて之に言ひたまふ、 |
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二五 大ぜいの群衆がついてきたので、イエスは彼らの方に向いて言われた、 |
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二六 凡そ我に來てその父母妻子兄弟姊妹また己の生命をも憎む者に非ざれば我弟子と爲ことを得ず |
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二六 『人もし我に來りて、その父母・妻子・兄弟・姊妹・己が生命までも憎まずば、我が弟子となるを得ず。 |
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二六 「だれでも、父、母、妻、子、兄弟、姉妹、さらに自分の命までも捨てて、わたしのもとに来るのでなければ、わたしの弟子となることはできない。 |
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二七 又その十字架を任ずして我に從ふ者は我弟子と爲ことを得ず |
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二七 また己が十字架を負ひて我に從ふ者ならでは、我が弟子と爲るを得ず。 |
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二七 自分の十字架を負うてわたしについて来るものでなければ、わたしの弟子となることはできない。 |
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二八 なんぢら誰か城を築かんに先坐して其費この事の竣までに足や否を計ざらん乎 |
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二八 汝らの中たれか櫓を築かんと思はば、先づ坐して其の費をかぞへ、己が所有、竣工までに足るか否かを計らざらんや。 |
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二八 あなたがたのうちで、だれかが邸宅を建てようと思うなら、それを仕上げるのに足りるだけの金を持っているかどうかを見るため、まず、すわってその費用を計算しないだろうか。 |
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二九 恐くは基を置て之を成能ずば見者みな嘲笑て |
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二九 然らずして基を据ゑ、もし成就すること能はずば、見る者みな嘲笑ひて、 |
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二九 そうしないと、土台をすえただけで完成することができず、見ているみんなの人が、 |
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三十 此人は築始て成遂ざりしと曰ん |
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三〇 「この人は築きかけて成就すること能はざりき」と言はん。 |
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三〇 『あの人は建てかけたが、仕上げができなかった』と言ってあざ笑うようになろう。 |
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三一 また王いでゝ他の王と戰はんに先坐して此一萬人をもて彼が二萬人に敵すべきや否を籌ざらん乎 |
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三一 又いづれの王か出でて他の王と戰爭をせんに、先づ坐して、此の一萬人をもて、かの二萬人を率ゐきたる者に對ひ得るか否か籌らざらんや。 |
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三一 また、どんな王でも、ほかの王と戦いを交えるために出て行く場合には、まず座して、こちらの一万人をもって、二万人を率いて向かって来る敵に対抗できるかどうか、考えて見ないだろうか。 |
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三二 もし及ずば敵なは遠れる時に使を遣して和睦を求べし |
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三二 もし及かずば、敵なほ遠く隔たるうちに使を遣して和睦を請ふべし。 |
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三二 もし自分の力にあまれば、敵がまだ遠くにいるうちに、使者を送って、和を求めるであろう。 |
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三三 然ば此の如く爾曹その所有を盡く捨ざる者は我弟子と爲ことを得ず |
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三三 斯のごとく汝らの中その一切の所有を退くる者ならでは、我が弟子となるを得ず。 |
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三三 それと同じように、あなたがたのうちで、自分の財産をことごとく捨て切るものでなくては、わたしの弟子となることはできない。 |
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三四 䀋は善物なり然ども䀋その味を失はゞ何をもて之に味を和んや |
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三四 鹽は善きものなり、然れど鹽もし効力を失はば、何によりてか味つけられん、 |
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三四 塩は良いものだ。しかし、塩もききめがなくなったら、何によって塩味が取りもどされようか。 |
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三五 田にも糞にもuなく外に棄らるゝなり耳ありて聽る者は聽べし |
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三五 土にも肥料にも適せず、外に棄てらるるなり。聽く耳ある者は聽くべし』 |
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三五 土にも肥料にも役立たず、外に投げ捨てられてしまう。聞く耳のあるものは聞くがよい」。 |
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15章 |
一 さて稅吏と罪ある者どもイエスに聽んとて近よりければ |
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一 取稅人.罪人等みな御言を聽かんとて近寄りたれば、 |
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一 さて、取税人や罪人たちが皆、イエスの話を聞こうとして近寄ってきた。 |
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二 パリサイの人と學者たち譏誚て曰けるは此人は罪ある人に接りて共に食せり |
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二 パリサイ人・學者ら呟きて言ふ、『この人は罪人を迎へて食を共にす』 |
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二 するとパリサイ人や律法学者たちがつぶやいて、「この人は罪人たちを迎えて一緒に食事をしている」と言った。 |
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三 イエス此譬を彼等に語て曰けるは |
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三 イエス之に譬を語りて言ひ給ふ、 |
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三 そこでイエスは彼らに、この譬をお話しになった、 |
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四 爾曹のうち誰か一百の羊あらんに若その一を失はゞ九十九を野におき往て其失し羊を獲までは尋ざらん乎 |
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四 『なんぢらの中たれか百匹の羊を有たんに、若その一匹を失はば、九十九匹を野におき、往きて失せたる者を見出すまでは尋ねざらんや。 |
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四 「あなたがたのうちに、百匹の羊を持っている者がいたとする。その一匹がいなくなったら、九十九匹を野原に残しておいて、いなくなった一匹を見つけるまでは捜し歩かないであろうか。 |
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五 尋得ば喜て之を己の肩に負 |
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五 遂に見出さば、喜びて之を己が肩にかけ、 |
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五 そして見つけたら、喜んでそれを自分の肩に乗せ、 |
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六 家に歸て其友と其隣の人々を召集て曰ん我と共に善べ我うしなへる羊を獲たれば也 |
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六 家に歸りて其の友と隣人とを呼び集めて言はん「我とともに喜べ、失せたる我が羊を見出せり」 |
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六 家に帰ってきて友人や隣り人を呼び集め、『わたしと一緒に喜んでください。いなくなった羊を見つけましたから』と言うであろう。 |
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七 われ爾曹に吿ん此の如く一人の罪ある人悔改なば悔改むるに及ざる九十九の義人よりは尙天に於て喜あらん |
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七 われ汝らに吿ぐ、斯のごとく悔改むる一人の罪人のためには、悔改の必要なき九十九人の正しき者にも勝りて、天に歡喜あるべし。 |
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七 よく聞きなさい。それと同じように、罪人がひとりでも悔い改めるなら、悔改めを必要としない九十九人の正しい人のためにもまさる大きいよろこびが、天にあるであろう。 |
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八 また婦のうち誰か金錢十枚をもち其一枚を失はんに燈火を燃て家を掃除し之を獲までは切に尋ざらん乎 |
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八 又いづれの女か銀貨十枚を有たんに、若しその一枚を失はば、燈火をともし、家を掃きて見出すまでは懇ろに尋ねざらんや。 |
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八 また、ある女が銀貨十枚を持っていて、もしその一枚をなくしたとすれば、彼女はあかりをつけて家中を掃き、それを見つけるまでは注意深く捜さないであろうか。 |
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九 尋得ば其友と其鄰の人々を召集て曰ん我と共に喜べ我うしなへる金錢を獲たれば也 |
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九 遂に見出さば、其の友と隣人とを呼び集めて言はん、「我とともに喜べ、わが失ひたる銀貨を見出せり」 |
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九 そして、見つけたなら、女友だちや近所の女たちを呼び集めて、『わたしと一緒に喜んでください。なくした銀貨が見つかりましたから』と言うであろう。 |
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十 われ爾曹に吿ん此の如く一人の罪ある人悔改めなば~の使の前に喜あるべし |
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一〇 われ汝らに吿ぐ、斯のごとく悔改むる一人の罪人のために、~の使たちの前に歡喜あるべし』 |
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一〇 よく聞きなさい。それと同じように、罪人がひとりでも悔い改めるなら、神の御使たちの前でよろこびがあるであろう」。 |
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十一 また曰けるは或人子二人あり |
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一一 また言ひたまふ『或人に二人の息子あり、 |
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一一 また言われた、「ある人に、ふたりのむすこがあった。 |
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十二 その季子父に曰けるは父よ我得べき業を我に分予よ父その產を彼等に分たれば |
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一二 おとうと父に言ふ「父よ、財產のうち我が受くべき分を我にあたへよ」父その身代を二人に分けあたふ。 |
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一二 ところが、弟が父親に言った、『父よ、あなたの財産のうちでわたしがいただく分をください』。そこで、父はその身代をふたりに分けてやった。 |
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十三 幾日も過ざるに季子その產を盡く集て遠國へ旅行せしが放蕩にして其分資を皆そこにて耗せり |
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一三 幾日も經ぬに、弟おのが物をことごとく集めて、遠國にゆき、其處にて放蕩にその財產を散せり。 |
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一三 それから幾日もたたないうちに、弟は自分のものを全部とりまとめて遠い所へ行き、そこで放蕩に身を持ちくずして財産を使い果した。 |
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十四 盡く耗しゝとき大なる饑饉その地に有て彼ともしく爲はじめければ |
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一四 ことごとく費したる後、その國に大なる饑饉おこり、自ら乏しくなり始めたれば、 |
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一四 何もかも浪費してしまったのち、その地方にひどいききんがあったので、彼は食べることにも窮しはじめた。 |
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十五 往て其地の一民に身を投たり其人豕を牧ために彼を野に遣せり |
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一五 往きて其の地の或人に依附りしに、其の人かれを畑に遣して豚をはしむ。 |
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一五 そこで、その地方のある住民のところに行って身を寄せたところが、その人は彼を畑にやって豚を飼わせた。 |
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十六 かれ豕の食する所の豆莢をもて己が腹を果さんと欲ふほどなれど何をも彼に予る人なし |
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一六 かれ豚の食ふ蝗豆にて、己が腹を充さんと思ふ程なれど何をも與ふる人なかりき。 |
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一六 彼は、豚の食べるいなご豆で腹を満たしたいと思うほどであったが、何もくれる人はなかった。 |
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十七 自ら省悟て曰けるは我父の所には食物あまれる傭人の許多か有に我は飢て死んとす |
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一七 此のとき我に反りて言ふ「わが父の許には食物あまれる雇人いくばくぞや、然るに我は飢ゑてこの處に死なんとす。 |
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一七 そこで彼は本心に立ちかえって言った、『父のところには食物のあり余っている雇人が大ぜいいるのに、わたしはここで飢えて死のうとしている。 |
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十八 起て我父に往て曰ん父よ我天と爾の前に罪を犯たれば |
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一八 起ちて我が父にゆき「父よ、われは天に對し、また汝の前に罪を犯したり。 |
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一八 立って、父のところへ帰って、こう言おう、父よ、わたしは天に対しても、あなたにむかっても、罪を犯しました。 |
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十九 爾の子と稱るに足ざる者なり爾の傭人の一人の如く我を爲たまへと |
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一九 今より汝の子と稱へらるるに相應しからず、雇人の一人のごとく爲し給へ」と言はん」 |
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一九 もう、あなたのむすこと呼ばれる資格はありません。どうぞ、雇人のひとり同様にしてください』。 |
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二十 即ち起て其父に往り尙とほく有しに其父かれを見て憫み趨往其頸を抱て接吻しぬ |
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二〇 乃ち起ちて其の父のもとに往く。なほ遠く隔りたるに、父これを見て憫み、走りゆき、其の頸を抱きて接吻せり。 |
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二〇 そこで立って、父のところへ出かけた。まだ遠く離れていたのに、父は彼をみとめ、哀れに思って走り寄り、その首をだいて接吻した。 |
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二一 子父に曰けるは父よ我天と爾の前に罪を犯たれば爾の子と稱るに足ざる也 |
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二一 子、父にいふ「父よ、我は天に對し又なんぢの前に罪を犯したり。今より汝の子と稱へらるるに相應しからず」 |
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二一 むすこは父に言った、『父よ、わたしは天に対しても、あなたにむかっても、罪を犯しました。もうあなたのむすこと呼ばれる資格はありません』。 |
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二二 父その僕等に曰けるは至も美服を携來りて之に衣せ其指に環をはめ其足に履を穿せよ |
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二二 然れど父、僕どもに言ふ「とくとく最上の衣を持ち來りて之に著せ、その手に指輪をはめ、其の足に鞋をはかせよ。 |
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二二 しかし父は僕たちに言いつけた、『さあ、早く、最上の着物を出してきてこの子に着せ、指輪を手にはめ、はきものを足にはかせなさい。 |
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二三 また肥たる犢を牽來りて宰れ我儕食して樂まん |
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二三 また肥えたる犢を牽ききたりて屠れ、我ら食して樂しまん。 |
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二三 また、肥えた子牛を引いてきてほふりなさい。食べて楽しもうではないか。 |
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二四 是わが子死て復生うしなひて復得たれば也とて彼等と共に樂み始む |
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二四 この我が子、死にて復生き、失せて復得られたり」斯て、かれら樂しみ始む。 |
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二四 このむすこが死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから』。それから祝宴がはじまった。 |
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二五 その兄田に在しが歸て家に近き樂と舞の音を聞 |
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二五 然るに其の兄、畑にありしが、歸りて家に近づきたるとき、音樂と舞蹈との音を聞き、 |
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二五 ところが、兄は畑にいたが、帰ってきて家に近づくと、音楽や踊りの音が聞えたので、 |
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二六 その僕の一人を召て是何事ぞやと問るに |
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二六 僕の一人を呼びてその何事なるかを問ふ。 |
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二六 ひとりの僕を呼んで、『いったい、これは何事なのか』と尋ねた。 |
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二七 僕曰けるは爾の弟歸りたり恙なく彼を得たりしに因て爾が父肥たる犢を宰たるなり |
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二七 答へて言ふ「なんぢの兄弟、歸りたり、その恙なきを迎へたれば、汝の父、肥えたる犢を屠れるなり」 |
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二七 僕は答えた、『あなたのご兄弟がお帰りになりました。無事に迎えたというので、父上が肥えた子牛をほふらせなさったのです』。 |
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二八 兄いかりて入ず是故に其父いでゝ彼に勸しかば |
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二八 兄、怒りて內に入ることを好まざりしかば、父いでて勸めLに、 |
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二八 兄はおこって家にはいろうとしなかったので、父が出てきてなだめると、 |
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二九 父に答て曰けるは我多年なんぢに事て未だ爾の命に背ず然ども我友と樂む爲に羔をも予し事なし |
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二九 答へて父に言ふ「視よ、我は幾歲も、なんぢに仕へて、未だ汝の命令に背きし事なきに、我には小山羊一匹だに與へて友と樂しましめし事なし。 |
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二九 兄は父にむかって言った、『わたしは何か年もあなたに仕えて、一度でもあなたの言いつけにそむいたことはなかったのに、友だちと楽しむために子やぎ一匹も下さったことはありません。 |
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三十 然に妓の爲に爾の業を耗したる此なんぢが子かへれば之が爲に肥たる犢を宰れり |
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三〇 然るに遊女らと共に、汝の身代を食ひ盡したる此の汝の子、歸り來れば、之がために肥えたる犢を屠れり」 |
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三〇 それだのに、遊女どもと一緒になって、あなたの身代を食いつぶしたこのあなたの子が帰ってくると、そのために肥えた子牛をほふりなさいました』。 |
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三一 父かれに曰けるは子よ爾は常に我と共に在また我所在は皆なんぢの屬なり |
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三一 父いふ「子よ、なんぢは常に我とともに在り、わが物は皆なんぢの物なり。 |
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三一 すると父は言った、『子よ、あなたはいつもわたしと一緒にいるし、またわたしのものは全部あなたのものだ。 |
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三二 爾の弟死て復生うしなひて復得たるが故に我儕喜て樂むは當然の事なり |
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三二 然れど此の汝の兄弟は死にて復生き、失せて復得られたれば、我らの樂しみ喜ぶは當然なり』 |
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三二 しかし、このあなたの弟は、死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから、喜び祝うのはあたりまえである』」。 |
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16章 |
一 イエス又その弟子に曰けるは或富る人に操會者ありけるが主の所有を耗しゝと主人へ訴へらる |
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一 イエスまた弟子たちに言ひ給ふ『或る富める人に一人の支配人あり、主人の所有を費しをりと訴へられたれば、 |
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一 イエスはまた、弟子たちに言われた、「ある金持のところにひとりの家令がいたが、彼は主人の財産を浪費していると、告げ口をする者があった。 |
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二 主人操會者を呼て曰けるは爾に就て我きゝたる事は何ぞや今後なんぢを操會者と爲えざれば其會計たる條件を我に辨よ |
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二 主人かれを呼びて言ふ「わが汝につきて聞く所は、これ何事ぞ、務の報吿をいだせ。汝こののち支配人たるを得じ」 |
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二 そこで主人は彼を呼んで言った、『あなたについて聞いていることがあるが、あれはどうなのか。あなたの会計報告を出しなさい。もう家令をさせて置くわけにはいかないから』。 |
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三 操會者みづから意るは主人我操會を奪なば何を爲ん我鋤を執には力なく施を乞は恥かしゝ |
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三 支配人、心のうちに言ふ「如何せん、主人わが職を奪ふ。われ土掘るには力なく、物乞ふは恥かし。 |
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三 この家令は心の中で思った、『どうしようか。主人がわたしの職を取り上げようとしている。土を掘るには力がないし、物ごいするのは恥ずかしい。 |
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四 われ操會を奪れん時は是等の家に迎らるべき所爲を知りとて |
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四 我なすべき事こそ知りたれ、斯く爲ば職を罷めらるるとき、人々その家に我を迎ふるならん」とて、 |
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四 そうだ、わかった。こうしておけば、職をやめさせられる場合、人々がわたしをその家に迎えてくれるだろう』。 |
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五 遂に主人の負債人を悉く召て其首の者に曰けるは爾わが主に負債なにほどある乎 |
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五 主人の負債者を一人一人呼びよせて。初の者に言ふ「なんぢ我が主人より負ふところ何程あるか」 |
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五 それから彼は、主人の負債者をひとりびとり呼び出して、初めの人に、『あなたは、わたしの主人にどれだけ負債がありますか』と尋ねた。 |
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六 答ていふ油百斗なり彼に曰けるは爾の券書を取いそぎ坐して五十と書よ |
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六 答へて言ふ「油、百樽」支配人いふ「なんぢの證書をとり、早く坐して五十と書け」 |
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六 『油百樽です』と答えた。そこで家令が言った、『ここにあなたの証書がある。すぐそこにすわって、五十樽と書き変えなさい』。 |
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七 又一人に曰けるは爾の負債幾何あるや答ていふ小麥百斛なり彼に曰けるは爾の券書を取て八十と書よ |
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七 又ほかの者に「麥、百石」支配人いふ「なんぢの證書をとりて八十と書け」 |
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七 次に、もうひとりに、『あなたの負債はどれだけですか』と尋ねると、『麦百石です』と答えた。これに対して、『ここに、あなたの証書があるが、八十石と書き変えなさい』と言った。 |
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八 主人その所爲の巧なるに因て此不義なる操會者を譽たり夫この世の子輩は此世に於は光の子輩よりも尤も巧なり |
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八 爰に主人、不義なる支配人の爲しし事の巧なるによりて、彼を譽めたり。この世の子らは己が時代の事には、光の子らよりも巧なり。 |
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八 ところが主人は、この不正な家令の利口なやり方をほめた。この世の子らはその時代に対しては、光の子らよりも利口である。 |
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九 我なんぢらに吿ん不義の財を以て己が友を得よ此は乏からん時彼ら爾曹を永遠宅に接んが爲なり |
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九 われ汝らに吿ぐ、不義の富をもて、己がために友をつくれ。然らば富の失する時、その友なんぢらを永遠の住居に迎へん。 |
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九 またあなたがたに言うが、不正の富を用いてでも、自分のために友だちをつくるがよい。そうすれば、富が無くなった場合、あなたがたを永遠のすまいに迎えてくれるであろう。 |
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十 小事に忠き者は大事にも忠く小事に忠からざる者は大事にも忠からず |
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一〇 小事に忠なる者は、大事にも忠なり。小事に不忠なる者は大事にも不忠なり。 |
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一〇 小事に忠実な人は、大事にも忠実である。そして、小事に不忠実な人は大事にも不忠実である。 |
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十一 故に若なんぢら不義の財に忠からずば誰か眞の財を爾曹に託んや |
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一一 然らば汝等もし不義の富に忠ならずば、誰か眞の富を汝らに任すべき。 |
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一一 だから、もしあなたがたが不正の富について忠実でなかったら、だれが真の富を任せるだろうか。 |
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十二 爾曹もし人の所有に不義ならば誰か爾曹の所有を爾曹に與んや |
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一二 また汝等もし人のものに忠ならずば、誰か汝等のものを汝らに與ふべき。 |
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一二 また、もしほかの人のものについて忠実でなかったら、だれがあなたがたのものを与えてくれようか。 |
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十三 一人の僕は二人の主人に事ること能ず蓋これを惡かれを愛し或は此を重んじ彼を輕んずれば也なんぢら~と財に兼事るを能ず |
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一三 僕は二人の主に兼事ふること能はず、或は之を憎み彼を愛し、或は之に親み彼を輕しむべければなり。汝ら~と富とに兼事ふること能はず』 |
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一三 どの僕でも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない」。 |
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十四 慾ふかきパリサイの人々此事を聞てイエスを嘲晒たり |
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一四 爰に慾深きパリサイ人等この凡ての事を聞きてイエスを嘲笑ふ。 |
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一四 欲の深いパリサイ人たちが、すべてこれらの言葉を聞いて、イエスをあざ笑った。 |
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十五 イエス彼等に曰けるは爾曹は人々の前に自己を義とする者なり然ども~は爾曹の心を知り夫人の崇ぶ所の者は~の前に惡るゝ者なり |
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一五 イエス彼らに言ひ給ふ『なんぢらは人のまへに己を義とする者なり。然れど~は汝らの心を知りたまふ。人のなかに尊ばるる者は、~のまへに憎まるる者なり。 |
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一五 そこで彼らにむかって言われた、「あなたがたは、人々の前で自分を正しいとする人たちである。しかし、神はあなたがたの心をご存じである。人々の間で尊ばれるものは、神のみまえでは忌みきらわれる。 |
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十六 律法と預言者はヨハネまでなり其のち~の國は宣傳らる皆用力て之に入んと爲なり |
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一六 律法と預言者とは、ヨハネまでなり、その時より~の國は宣傳へられ、人みな烈しく攻めて之に入る。 |
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一六 律法と預言者とはヨハネの時までのものである。それ以来、神の国が宣べ伝えられ、人々は皆これに突入している。 |
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十七 天地の廢るは律法の一畵の廢るよりも易し |
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一七 されど律法の一晝の落つるよりも天地の過ぎ往くは易し。 |
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一七 しかし、律法の一画が落ちるよりは、天地の滅びる方が、もっとたやすい。 |
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十八 凡そ其妻を出して他の者を娶ば姦淫を行ふ也また夫に出されたる婦を娶る者も姦淫を行ふなり |
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一八 凡てその妻を出して、他に娶る者は、姦淫を行ふなり。また夫より出されたる女を娶る者も姦淫を行ふなり。 |
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一八 すべて自分の妻を出して他の女をめとる者は、姦淫を行うものであり、また、夫から出された女をめとる者も、姦淫を行うものである。 |
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十九 爰に富る人あり紫袍と細布を衣て日々奢樂めり |
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一九 或る富める人あり、紫色の衣と細布とを著て、日々奢り樂しめり。 |
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一九 ある金持がいた。彼は紫の衣や細布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮していた。 |
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二十 亦ラザロと云る貧者あり甚く腫物を患て富る人の門に置れ |
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二〇 又ラザロといふ貧しき者あり、腫物にて腫れただれ、富める人の門に置かれ、 |
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二〇 ところが、ラザロという貧しい人が全身でき物でおおわれて、この金持の玄関の前にすわり、 |
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二一 其案より落る餘屑にて養はれんと欲へり又犬きたりて其腫物を舐 |
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二一 その食卓より落つる物にて飽かんと思ふ。而して犬ども來りて其の腫物を舐れり。 |
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二一 その食卓から落ちるもので飢えをしのごうと望んでいた。その上、犬がきて彼のでき物をなめていた。 |
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二二 貧者死たれば天の使者たちに依てアブラハムの懷に送れたり富る人も死て葬られしが |
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二二 遂にこの貧しきもの死に、御使たちに携へられてアブラハムの懷裏に入れり。富める人もまた死にて葬られしが、 |
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二二 この貧しい人がついに死に、御使たちに連れられてアブラハムのふところに送られた。金持も死んで葬られた。 |
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二三 陰府にて痛苦をうけ其目をあげ遙にアブラハムと其懷に在ラザロを見て |
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二三 黃泉にて苦惱の中より目を擧げて遙にアブラハムと其の懷裏にをるラザロとを見る。 |
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二三 そして黄泉にいて苦しみながら、目をあげると、アブラハムとそのふところにいるラザロとが、はるかに見えた。 |
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二四 喊叫いひけるは父アブラハムよ我を憐みラザロを遣して其指の尖を水に蘸わが舌を凉しめ給へ我この火燄の中に苦めばなり |
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二四 乃ち呼びて言ふ「父アブラハムよ、我を憫みて、ラザロを遣し、その指のさきを水に浸して我が舌を冷させ給へ、我はこの焰のなかに悶ゆるなり」 |
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二四 そこで声をあげて言った、『父、アブラハムよ、わたしをあわれんでください。ラザロをおつかわしになって、その指先を水でぬらし、わたしの舌を冷やさせてください。わたしはこの火炎の中で苦しみもだえています』。 |
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二五 アブラハム曰けるは子よ爾は生たりし時に爾のを受またラザロは其苦を受しを憶へ今かれは慰られ爾は苦めらるゝなり |
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二五 アブラハム言ふ「子よ、憶へ、なんぢは生ける間、なんぢの善き物を受け、ラザロは惡しき物を受けたり。今ここにて彼は慰められ、汝は悶ゆるなり。 |
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二五 アブラハムが言った、『子よ、思い出すがよい。あなたは生前よいものを受け、ラザロの方は悪いものを受けた。しかし今ここでは、彼は慰められ、あなたは苦しみもだえている。 |
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二六 斯耳ならず此より爾曹に渉んとするとも得ず彼より我儕に渉んとするとも亦えざる爲に我儕と爾曹との間に限おかれたる巨なる淵あり |
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二六 然のみならず此處より汝らに渡り往かんとすとも得ず、其處より我らに來り得ぬために、我らと汝らとの間に大なる淵定めおかれたり」 |
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二六 そればかりか、わたしたちとあなたがたとの間には大きな淵がおいてあって、こちらからあなたがたの方へ渡ろうと思ってもできないし、そちらからわたしたちの方へ越えて来ることもできない』。 |
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二七 答けるは然ば父よ願くは我父の家へラザロを遣たまへ |
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二七 富める人また言ふ「さらば父よ、願くは我が父の家にラザロを遣したまへ。 |
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二七 そこで金持が言った、『父よ、ではお願いします。わたしの父の家へラザロをつかわしてください。 |
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二八 蓋われに五人の兄弟あり亦かれらが此苦の所に來ざる爲にラザロを證據に爲しめよ |
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二八 我に五人の兄弟あり、この苦痛のところに來らぬやう、彼らに證せしめ給へ」 |
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二八 わたしに五人の兄弟がいますので、こんな苦しい所へ来ることがないように、彼らに警告していただきたいのです』。 |
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二九 アブラハム曰けるは彼等にはモーセと預言者あれば之に聽べし |
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二九 アブラハム言ふ「彼等にはモーセと預言者とあり、之に聽くべし」 |
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二九 アブラハムは言った、『彼らにはモーセと預言者とがある。それに聞くがよかろう』。 |
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三十 答けるは然ず父アブラハムよもし死より彼等に往者あらば悔改べし |
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三〇 富める人いふ「いな父アブラハムよ、もし死人の中より彼らに往く者あらば、悔改めん」 |
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三〇 金持が言った、『いえいえ、父アブラハムよ、もし死人の中からだれかが兄弟たちのところへ行ってくれましたら、彼らは悔い改めるでしょう』。 |
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三一 アブラハム曰けるは若モーセと預言者に聽ずば縦ひ死より甦る者ありとも其勸を受ざるべし |
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三一 アブラハム言ふ「もしモーセと預言者とに聽かずば、たとひ死人の中より甦へる者ありとも、其の勸を納れざるべし』 |
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三一 アブラハムは言った、『もし彼らがモーセと預言者とに耳を傾けないなら、死人の中からよみがえってくる者があっても、彼らはその勧めを聞き入れはしないであろう』」。 |
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17章 |
一 イエス弟子に曰けるは躓さるゝ事かならず來らん其を來らす者は禍なる哉 |
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一 イエス弟子たちに言ひ給ふ『躓物は必ず來らざるを得ず、されど之を來らする者は禍害なるかな。 |
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一 イエスは弟子たちに言われた、「罪の誘惑が来ることは避けられない。しかし、それをきたらせる者は、わざわいである。 |
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二 この小子の一人を躓するよりは磨石を頸に懸られて海に投入られんこと其人の爲に宜るべし |
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二 この小き者の一人を躓かするよりは、寧ろ碾臼の石を頸に懸けられて、海に投げ入れられんかた善きなり。 |
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二 これらの小さい者のひとりを罪に誘惑するよりは、むしろ、ひきうすを首にかけられて海に投げ入れられた方が、ましである。 |
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三 自己を謹愼よ若兄弟なんぢに罪を犯さば之を諌よ彼もし悔なば免せ |
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三 汝等みづから心せよ。もし汝の兄弟、罪を犯さば、これを戒めよ。もし悔改めなば之をゆるせ。 |
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三 あなたがたは、自分で注意していなさい。もしあなたの兄弟が罪を犯すなら、彼をいさめなさい。そして悔い改めたら、ゆるしてやりなさい。 |
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四 もし一日に七次罪を爾に犯して一日に七次なんぢに對われ悔と曰ば免すべし |
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四 もし一日に七度なんぢに罪を犯し、七度「くい改む」と言ひて、汝に歸らば之をゆるせ』 |
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四 もしあなたに対して一日に七度罪を犯し、そして七度『悔い改めます』と言ってあなたのところへ帰ってくれば、ゆるしてやるがよい」。 |
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五 使徒主に曰けるは我儕に信をuせよ |
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五 使徒たち主に言ふ『われらの信仰を揩オたまへ』 |
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五 使徒たちは主に「わたしたちの信仰を増してください」と言った。 |
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六 主いひけるは爾曹もし芥種一粒ほどの信あらば此桑樹に抜て海に植れと曰とも爾曹に從ふべし |
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六 主いひ給ふ『もし芥種一粒ほどの信仰あらば、此の桑の樹に「拔けて、海に植れ」と言ふとも汝らに從ふべし。 |
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六 そこで主が言われた、「もし、からし種一粒ほどの信仰があるなら、この桑の木に、『抜け出して海に植われ』と言ったとしても、その言葉どおりになるであろう。 |
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七 誰か爾曹の中に或は耕し或は畜を牧僕あらんに彼田より歸たる時亟かに往て食に就といふ者あらん乎 |
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七 汝等のうち誰か或は耕し、或は牧する僕を有たんに、その僕、畑より歸りたる時、これに對ひて「直ちに來り食に就け」と言ふ者あらんや。 |
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七 あなたがたのうちのだれかに、耕作か牧畜かをする僕があるとする。その僕が畑から帰って来たとき、彼に『すぐきて、食卓につきなさい』と言うだろうか。 |
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八 反て曰ずや我食を備わが食飮をはるまで帶を束われに事て後なんぢ食飮すべしと |
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八 反つて「わが夕餐の備をなし、我が飮食するあひだ、帶して給仕せよ、然る後に、なんぢ飮食すべし」と言ふにあらずや。 |
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八 かえって、『夕食の用意をしてくれ。そしてわたしが飲み食いするあいだ、帯をしめて給仕をしなさい。そのあとで、飲み食いをするがよい』と、言うではないか。 |
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九 僕主人の命ぜし事に從へばとて主人かれに謝すべきか然じと我は意り |
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九 僕、命ぜられし事を爲したればとて、主人これに謝すべきか。 |
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九 僕が命じられたことをしたからといって、主人は彼に感謝するだろうか。 |
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十 斯ば亦なんぢら命ぜられし事をみな行たる時も我儕は無uの僕なすべき事を行たるなりと謂 |
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一〇 斯のごとく汝らも命ぜられし事をことごとく爲したる時「われらは無uなる僕なり、爲すべき事を爲したるのみ」と言へ』 |
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一〇 同様にあなたがたも、命じられたことを皆してしまったとき、『わたしたちはふつつかな僕です。すべき事をしたに過ぎません』と言いなさい」。 |
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十一 イエス エルサレムに往ときサマリアとガリラヤの中を經 |
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一一 イエス、エルサレムに往かんとて、サマリヤとガリラヤとの間をとほり、 |
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一一 イエスはエルサレムへ行かれるとき、サマリヤとガリラヤとの間を通られた。 |
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十二 ある村に入しとき十人の癩者ありて彼にあひ遙に立て聲を揚いひけるは |
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一二 或村に入り給ふとき、十人の癩病人これに遇ひて、遙に立ち止まり、 |
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一二 そして、ある村にはいられると、重い皮膚病にかかった十人の人に出会われたが、彼らは遠くの方で立ちとどまり、 |
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十三 師イエスよ我儕を矜恤たまへ |
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一三 聲を揚げて言ふ『君イエスよ、我らを憫みたまへ』 |
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一三 声を張りあげて、「イエスさま、わたしたちをあわれんでください」と言った。 |
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十四 イエス之を見て曰けるは往て己を祭司に見せよ彼等ゆく間に潔られたり |
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一四 イエス之を見て言ひたまふ『なんぢら往きて身を祭司らに兒せよ』彼ら往く間に潔められたり。 |
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一四 イエスは彼らをごらんになって、「祭司たちのところに行って、からだを見せなさい」と言われた。そして、行く途中で彼らはきよめられた。 |
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十五 その一人己が醫されたるを見て返來り大聲に~を榮め |
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一五 その中の一人、おのが醫されたるを見て、大聲に~を崇めつつ歸りきたり、 |
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一五 そのうちのひとりは、自分がいやされたことを知り、大声で神をほめたたえながら帰ってきて、 |
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十六 イエスの足下に俯伏て謝せり彼はサマリヤ人なり |
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一六 イエスの足下に平伏して謝す。これはサマリヤ人なり。 |
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一六 イエスの足もとにひれ伏して感謝した。これはサマリヤ人であった。 |
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十七 イエス答て曰けるは潔られし者は十人に非や其九人は何處に在か |
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一七 イエス答へて言ひたまふ『十人みな潔められしならずや、九人は何處に在るか。 |
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一七 イエスは彼にむかって言われた、「きよめられたのは、十人ではなかったか。ほかの九人は、どこにいるのか。 |
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十八 この異邦人の外に~に榮を歸せんとて返たる者あらざる乎 |
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一八 この他國人のほかは、~に榮光を歸せんとて歸りきたる者なきか』 |
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一八 神をほめたたえるために帰ってきたものは、この他国人のほかにはいないのか」。 |
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十九 また彼に曰けるは起て往なんぢの信仰なんぢを救り |
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一九 斯て之に言ひたまふ『起ちて往け、なんぢの信仰なんぢを救へり』 |
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一九 それから、その人に言われた、「立って行きなさい。あなたの信仰があなたを救ったのだ」。 |
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二十 ~の國は何の時きたる乎とパリサイの人に問れければイエス答て曰けるは~の國は顯れて來ものに非ず |
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二〇 ~の國の何時きたるべきかをパリサイ人に問はれし時、イエス答へて言ひたまふ『~の國は見ゆべき狀にて來らず。 |
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二〇 神の国はいつ来るのかと、パリサイ人が尋ねたので、イエスは答えて言われた、「神の国は、見られるかたちで来るものではない。 |
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二一 此に視よ彼に視よと人の言べき者にも非ず夫~の國は爾曹の衷に在 |
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二一 また「視よ、此處に在り」「彼處に在り」と人々言はざるべし。視よ、~の國は汝らの中に在るなり』 |
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二一 また『見よ、ここにある』『あそこにある』などとも言えない。神の国は、実にあなたがたのただ中にあるのだ」。 |
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二二 また弟子に曰けるは爾曹人の子の一日を見たく欲ふ日來らん然ども見ざるべし |
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二二 かくて弟子たちに言ひ給ふ『なんぢら人の子の日の一日を見んを思ふ日きたらん、然れど見ることを得じ。 |
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二二 それから弟子たちに言われた、「あなたがたは、人の子の日を一日でも見たいと願っても見ることができない時が来るであろう。 |
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二三 人々なんぢらに此に見よ彼に見よと曰ん然ども往なかれ從ふ勿れ |
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二三 そのとき、人々なんぢらに「見よ彼處に、見よ此處に」と言はん、然れど往くな、從ふな。 |
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二三 人々はあなたがたに、『見よ、あそこに』『見よ、ここに』と言うだろう。しかし、そちらへ行くな、彼らのあとを追うな。 |
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二四 それ電光の天の彼處より閃き天の此處に光るが如く人の子も其日に如此あるべし |
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二四 それ電光の天の彼方より閃きて、天の此方に輝くごとく、人の子もその日には然あるべし。 |
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二四 いなずまが天の端からひかり出て天の端へとひらめき渡るように、人の子もその日には同じようであるだろう。 |
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二五 然ど人の子かならず先おほくの苦を受また此世の人に棄られん |
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二五 然れど人の子は先づ多くの苦難を受け、かつ今の代に棄てらるべきなり。 |
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二五 しかし、彼はまず多くの苦しみを受け、またこの時代の人々に捨てられねばならない。 |
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二六 ノアの時に有し如く人の子の時にも然あるべし |
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二六 ノアの日にありし如く、人の子の日にも然あるべし。 |
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二六 そして、ノアの時にあったように、人の子の時にも同様なことが起るであろう。 |
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二七 即ちノア方舟に入し日まで衆人食飮、嫁、娶など爲たりしが洪水きたりて彼等を滅せり |
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二七 ノア方舟に入る日までは、人々飮み食ひ娶り媳ぎなど爲たりしが、洪水きたりて彼等をことごとく滅せり。 |
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二七 ノアが箱舟にはいる日まで、人々は食い、飲み、めとり、とつぎなどしていたが、そこへ洪水が襲ってきて、彼らをことごとく滅ぼした。 |
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二八 又ロトの時にも如此ありき衆人食飮、貿易、樹藝、構造など爲たりしに |
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二八 ロトの日にも斯のごとく、人々飮み食ひ、賣り買ひ、植ゑつけ、家造りなど爲たりしが、 |
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二八 ロトの時にも同じようなことが起った。人々は食い、飲み、買い、売り、植え、建てなどしていたが、 |
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二九 ロト ソドムより出し日天より火と硫磺を雨せて彼等を皆滅せり |
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二九 ロトのソドムを出でし日に、天より火と硫黃と降りて、彼等をことごとく滅せり。 |
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二九 ロトがソドムから出て行った日に、天から火と硫黄とが降ってきて、彼らをことごとく滅ぼした。 |
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三十 人の子の顯るゝ日にも亦斯有べし |
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三〇 人の子の顯るる日にも、その如くなるべし。 |
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三〇 人の子が現れる日も、ちょうどそれと同様であろう。 |
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三一 其日には人屋上に在ば其器具室に在とも之を取んとて下なかれ亦田畑にある者も同く歸なかれ |
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三一 その日には人もし屋の上にをりて、器物、家の內にあらば、之を取らんとて下るな。畑にをる者も同じく歸るな。 |
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三一 その日には、屋上にいる者は、自分の持ち物が家の中にあっても、取りにおりるな。畑にいる者も同じように、あとへもどるな。 |
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三二 ロトの妻を憶へ |
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三二 ロトの妻を憶へ。 |
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三二 ロトの妻のことを思い出しなさい。 |
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三三 凡そ其生命を救んとする者は之を失ひ若その生命を矢はん者は之を存べし |
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三三 おほよそ己が生命を全うせんとする者は、これを失ひ、失ふ者は、これを保つべし。 |
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三三 自分の命を救おうとするものは、それを失い、それを失うものは、保つのである。 |
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三四 我なんぢらに吿ん其夜ふたり同床に在んに一人は執れ一人は遺さるべし |
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三四 われ汝らに吿ぐ、その夜ふたりの男、一つ寢臺に居らんに、一人は取られ、一人は遺されん。 |
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三四 あなたがたに言っておく。その夜、ふたりの男が一つ寝床にいるならば、ひとりは取り去られ、他のひとりは残されるであろう。 |
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三五 二人の婦ともに磨ひき居んに一人は執れ一人は遺さるべし |
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三五 二人の女ともに臼ひき居らんに、一人は取られ、一人は遺されん』 |
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三五 ふたりの女が一緒にうすをひいているならば、ひとりは取り去られ、他のひとりは残されるであろう。 |
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三六 かれら答て曰けるは主よ此事何處に有や彼等に曰けるは屍の在ところには鷲あつまらん |
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三六 〔ふたりの男が畑におれば、ひとりは取り去られ、他のひとりは残されるであろう〕」。 |
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三七 弟子たち答へて言ふ『主よ、それは何處ぞ』イエス言ひたまふ『屍體のある處には鷲も亦あつまらん』 |
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三七 弟子たちは「主よ、それはどこであるのですか」と尋ねた。するとイエスは言われた、「死体のある所には、またはげたかが集まるものである」。 |
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18章 |
一 イエスまた人の恒に祈禱して沮喪すまじき爲に譬を彼等に語けるは |
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一 また彼らに落膽せずして常に祈るべきことを、譬にて語り言ひ給ふ、 |
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一 また、イエスは失望せずに常に祈るべきことを、人々に譬で教えられた。 |
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二 或邑に~を畏れず人を敬はざる裁判人ありけるが |
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二 『或町に~を畏れず、人を顧みぬ裁判人あり。 |
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二 「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わぬ裁判官がいた。 |
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三 其邑に嫠婦ありて我を我仇より救たまへと曰て彼に至しに |
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三 その町に寡婦ありて、屢次その許にゆき「我がために仇を審きたまへ」と言ふ。 |
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|
三 ところが、その同じ町にひとりのやもめがいて、彼のもとにたびたびきて、『どうぞ、わたしを訴える者をさばいて、わたしを守ってください』と願いつづけた。 |
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|
四 かれ久く肯はざりしかど其のち心の中に思けるは我~を畏ず人をも敬はざれど |
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四 かれ久しく聽き入れざりしが、其ののち心の中に言ふ「われ~を畏れず、人を顧みねど、 |
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四 彼はしばらくの間きき入れないでいたが、そののち、心のうちで考えた、『わたしは神をも恐れず、人を人とも思わないが、 |
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五 此嫠われを煩せば彼が絶ず來て我を聒さゞる爲に之を救はん |
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五 此の寡婦われを煩はせば、我かれが爲に審かん、然らずば絕えず來りて我を惱さん」と』 |
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五 このやもめがわたしに面倒をかけるから、彼女のためになる裁判をしてやろう。そしたら、絶えずやってきてわたしを悩ますことがなくなるだろう』」。 |
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六 主いひけるは不義なる裁判人の言し事を聽 |
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六 主いひ給ふ『不義なる裁判人の言ふことを聽け、 |
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六 そこで主は言われた、「この不義な裁判官の言っていることを聞いたか。 |
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七 况て~は晝夜祈る所の選たる者を久く忍とも終に救ざらんや |
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七 まして~は夜晝よばはる選民のために、縱ひ遲くとも遂に審き給はざらんや。 |
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七 まして神は、日夜叫び求める選民のために、正しいさばきをしてくださらずに長い間そのままにしておかれることがあろうか。 |
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八 我なんぢらに吿ん~は速に彼等を救はん然ど人の子きたらんとき信を世に見んや |
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八 我なんぢらに吿ぐ、速かに審き給はん。然れど人の子の來るとき地上に信仰を見んや』 |
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八 あなたがたに言っておくが、神はすみやかにさばいてくださるであろう。しかし、人の子が来るとき、地上に信仰が見られるであろうか」。 |
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九 又みづから義と意ひ人を輕むる或人にイエス此譬を語れり |
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九 また己を義と信じ、他人を輕しむる者どもに此の譬を言ひたまふ、 |
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九 自分を義人だと自任して他人を見下げている人たちに対して、イエスはまたこの譬をお話しになった。 |
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十 二人祈んとて殿に登りしが其一人はパリサイの人一人は稅吏なりき |
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一〇 『二人のもの祈らんとて宮にのぼる、一人はパリサイ人、ひとりは取稅人なり。 |
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一〇 「ふたりの人が祈るために宮に上った。そのひとりはパリサイ人であり、もうひとりは取税人であった。 |
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十一 パリサイの人たちて自ら如此いのれり~よ我は他の人の如く强索、不義、姦淫せず亦此稅吏の如くにも有ざるを謝す |
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一一 パリサイ人、たちて心の中に斯く祈る「~よ、我はほかの人の、强奪・不義・姦淫するが如き者ならず、又この取稅人の如くならぬを感謝す。 |
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一一 パリサイ人は立って、ひとりでこう祈った、『神よ、わたしはほかの人たちのような貪欲な者、不正な者、姦淫をする者ではなく、また、この取税人のような人間でもないことを感謝します。 |
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十二 われ七日間に二次斷食し又すべて獲ものゝ十分の一を獻たり |
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一二 我は一週のうちに二度斷食し、凡て得るものの十分の一を獻ぐ」 |
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一二 わたしは一週に二度断食しており、全収入の十分の一をささげています』。 |
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十三 稅吏は遠に立て天をも仰ぎ見ず其胸を拊て~よ罪人なる我を憐み給と曰り |
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一三 然るに取稅人は遙に立ちて、目を天に向くる事だにせず、胸を打ちて言ふ「~よ、罪人なる我を憫みたまへ」 |
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一三 ところが、取税人は遠く離れて立ち、目を天にむけようともしないで、胸を打ちながら言った、『神様、罪人のわたしをおゆるしください』と。 |
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十四 我なんぢらに吿ん此人は彼人よりは義と爲れて家に歸たり夫すべて自己を高る者は卑られ自己を卑す者は高らるべし |
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一四 われ汝らに吿ぐ、この人は、かの人よりも義とせられて、己が家に下り往けり。おほよそ己を高うする者は卑うせられ、己を卑うする者は高うせらるるなり』 |
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一四 あなたがたに言っておく。神に義とされて自分の家に帰ったのは、この取税人であって、あのパリサイ人ではなかった。おおよそ、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう」。 |
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十五 イエスに按られんがため人々嬰孩を携來りしに弟子たち見て之を責たり |
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一五 イエスの觸り給はんことを望みて、人々嬰兒らを連れ來りしに、弟子たち之を見て禁めたれば、 |
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一五 イエスにさわっていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちはそれを見て、彼らをたしなめた。 |
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十六 イエス嬰孩を呼び弟子に曰けるは嬰孩を我に來せよ彼等を禁る勿れ~の國に居者は此の如き者なり |
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一六 イエス幼兒らを呼びよせて言ひたまふ『幼兒らの我に來るを許して止むな、~の國は斯のごとき者の國なり。 |
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一六 するとイエスは幼な子らを呼び寄せて言われた、「幼な子らをわたしのところに来るままにしておきなさい、止めてはならない。神の国はこのような者の国である。 |
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十七 誠に爾曹に吿ん凡そ嬰孩の如に~の國を承ざる者は之に入ことを得ざる也 |
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一七 われ誠に汝らに吿ぐ、おほよそ幼兒のごとくに、~の國をうくる者ならずば、之に入ること能はず』 |
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一七 よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受け入れる者でなければ、そこにはいることは決してできない」。 |
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十八 或宰とふて曰けるは善師よ永生を嗣ために我なにを行べき乎 |
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一八 或司、問ひて言ふ『善き師よ、われ何をなして永遠の生命を嗣ぐべきか』 |
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一八 また、ある役人がイエスに尋ねた、「よき師よ、何をしたら永遠の生命が受けられましょうか」。 |
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十九 イエス彼に曰けるは何ぞ我を善と稱や一の外に善者はなし即ち~なり |
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一九 イエス言ひ給ふ『なにゆゑ我を善しと言ふか、~ひとりの他に善き者なし。 |
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一九 イエスは言われた、「なぜわたしをよき者と言うのか。神ひとりのほかによい者はいない。 |
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二十 誡は爾が知ところなり姦淫する勿れ殺なかれ竊なかれ妄證を立る勿れ爾の父と母とを敬へ |
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二〇 誠命は、なんぢが知る所なり「姦淫するなかれ」「殺すなかれ」「盜むなかれ」「僞證を立つる勿れ」「なんぢの父と母とを敬へ」』 |
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二〇 いましめはあなたの知っているとおりである、『姦淫するな、殺すな、盗むな、偽証を立てるな、父と母とを敬え』」。 |
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二一 答けるは是みな我幼より守れる者なり |
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二一 彼いふ『われ幼き時より皆これを守れり』 |
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二一 すると彼は言った、「それらのことはみな、小さい時から守っております」。 |
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二二 イエス之を聞て曰けるは爾なほ一を虧その所有を悉く售て貧者に施せ然ば天に於て財あらん而して來り我に從へ |
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二二 イエス之をききて言ひたまふ『なんぢなほ足らぬこと一つあり、汝の有てる物を、ことごとく賣りて貧しき者に分ち與へよ、然らば財寳を天に得ん。かつ來りて我に從へ』 |
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二二 イエスはこれを聞いて言われた、「あなたのする事がまだ一つ残っている。持っているものをみな売り払って、貧しい人々に分けてやりなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。 |
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二三 かれ大に富る者なりしかば之を聞て甚く憂たり |
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二三 彼は之をききて甚く悲しめり、大に富める者なればなり。 |
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二三 彼はこの言葉を聞いて非常に悲しんだ。大金持であったからである。 |
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二四 イエスその甚く憂しを見て曰けるは富る者の~の國に入は如何に難かな |
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二四 イエス之を見て言ひたまふ『富める者の~の國に入るは如何に難いかな。 |
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二四 イエスは彼の様子を見て言われた、「財産のある者が神の国にはいるのはなんとむずかしいことであろう。 |
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二五 富る者の~の國に入より駱駝の針の孔を穿は却て易し |
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二五 富める者の~の國に入るよりは、駱駝の針の穴をとほるは反つて易し』 |
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二五 富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。 |
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二六 之を聞る者ども曰けるは然ば誰か救を受べき乎 |
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二六 之をきく人々いふ『さらば誰か救はるる事を得ん』 |
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二六 これを聞いた人々が、「それでは、だれが救われることができるのですか」と尋ねると、 |
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二七 イエス曰けるは人の爲得ざる所は~の爲得ところ也 |
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二七 イエス言ひたまふ『人のなし得ぬところは、~のなし得る所なり』 |
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二七 イエスは言われた、「人にはできない事も、神にはできる」。 |
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二八 ペテロ曰けるは我儕一切を捨て爾に從へり |
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二八 ペテロ言ふ『視よ我等わが物をすてて汝に從へり』 |
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二八 ペテロが言った、「ごらんなさい、わたしたちは自分のものを捨てて、あなたに従いました」。 |
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二九 イエス彼等に曰けるは誠に爾曹に吿ん凡そ~の國の爲に家あるひは父母あるひは兄弟あるひは妻あるひは兒女を捨る者は |
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二九 イエス言ひ給ふ『われ誠に汝らに吿ぐ、~の國のために、或は家、或は妻、或は兄弟、あるひは兩親、あるひは子を棄つる者は、誰にても、 |
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二九 イエスは言われた、「よく聞いておくがよい。だれでも神の国のために、家、妻、兄弟、両親、子を捨てた者は、 |
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三十 今世にて幾倍ふうけ來世には永生を受ざる者なし |
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三〇 今の時に數倍を受け、また後の世にて、永遠の生命を受けぬはなし』 |
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三〇 必ずこの時代ではその幾倍もを受け、また、きたるべき世では永遠の生命を受けるのである」。 |
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三一 イエス十二の弟子を携ひて之に曰けるは我儕エルサレムに上る人の子に就て預言者の錄されし事はみな應らるべし |
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三一 イエス十二弟子を近づけて言ひたまふ『視よ、我らエルサレムに上る。人の子につき預言者たちによりて錄されたる凡ての事は、成遂げらるべし。 |
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三一 イエスは十二弟子を呼び寄せて言われた、「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子について預言者たちがしるしたことは、すべて成就するであろう。 |
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三二 夫人の子は異邦人に解され戲弄凌辱られ唾せらるべし |
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三二 人の子は異邦人に付され、嘲弄せられ、辱しめられ、唾せられん。 |
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三二 人の子は異邦人に引きわたされ、あざけられ、はずかしめを受け、つばきをかけられ、 |
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三三 且かれら鞭撲て之を殺さん又第三日に甦るべし |
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三三 彼等これを鞭ち、かつ殺さん。斯て彼は三日めに甦へるべし』 |
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三三 また、むち打たれてから、ついに殺され、そして三日目によみがえるであろう」。 |
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三四 弟子この語を少も達ず亦この言る事かれらに隱たり亦その語れる言を知ざりき |
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三四 弟子たち此等のことを一つだに悟らず、此の言かれらに隱れたれば、その言ひ給ひしことを知らざりき。 |
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三四 弟子たちには、これらのことが何一つわからなかった。この言葉が彼らに隠されていたので、イエスの言われた事が理解できなかった。 |
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三五 イエス エリコに近よれる時ある瞽者道の旁に坐して乞たりしが |
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三五 イエス、エリコに近づき給ふとき、一人の盲人、路の傍らに坐して、物乞ひ居たりしが、 |
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三五 イエスがエリコに近づかれたとき、ある盲人が道ばたにすわって、物ごいをしていた。 |
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三六 大衆の過を聞て此は何事ぞと曰ければ |
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三六 群衆の過ぐるを聞きて、その何事なるかを問ふ。 |
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三六 群衆が通り過ぎる音を耳にして、彼は何事があるのかと尋ねた。 |
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三七 人々ナザレのイエスの過なりと吿 |
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三七 人々ナザレのイエスの過ぎたまふ由を吿げたれば、 |
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三七 ところが、ナザレのイエスがお通りなのだと聞かされたので、 |
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三八 瞽者よばゝり曰けるはダビデの裔イエスよ我を矜恤たまへ |
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三八 盲人、呼はりて言ふ『ダビデの子イエスよ、我を憫みたまへ』 |
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三八 声をあげて、「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんで下さい」と言った。 |
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三九 前だち行者ども默止と之を斥れざも愈ダビデの裔よ我を矜恤たまへと呼れり |
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三九 先だち往く者ども、彼を禁めて默さしめんと爲たれど、々さけびて言ふ『ダビデの子よ、我を憫みたまへ』 |
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三九 先頭に立つ人々が彼をしかって黙らせようとしたが、彼はますます激しく叫びつづけた、「ダビデの子よ、わたしをあわれんで下さい」。 |
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四十 イエス立止り彼を携來と命ず瞽者ちかよりければ |
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四〇 イエス立ち止り盲人を連れ來るべきことを命じ給ふ。かれ近づきたれば、 |
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四〇 そこでイエスは立ちどまって、その者を連れて来るように、とお命じになった。彼が近づいたとき、 |
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四一 イエス彼に問けるは爾われに何を爲れんと欲ふや答けるは主よ見なん事を欲ふ |
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四一 イエス問ひ給ふ『わが汝に何を爲さんことを望むか』彼いふ『主よ、見えんことなり』 |
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四一 「わたしに何をしてほしいのか」とおたずねになると、「主よ、見えるようになることです」と答えた。 |
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四二 イエス彼に曰けるは見ことを受し爾の信なんぢを救へり |
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四二 イエス彼に『見ることを得よ、なんぢの信仰なんぢを救へり』と言ひ給へば、 |
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四二 そこでイエスは言われた、「見えるようになれ。あなたの信仰があなたを救った」。 |
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四三 彼やがて見て~を榮てイエスに從ひぬ民みな之を見て~を讚美たり |
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四三 立刻に見ることを得、~を崇めてイエスに從ふ。民みな之を見て~を讚美せり。 |
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四三 すると彼は、たちまち見えるようになった。そして神をあがめながらイエスに従って行った。これを見て、人々はみな神をさんびした。 |
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19章 |
一 イエス エリコに入て經行とき |
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一 エリコに入りて過ぎゆき給ふとき、 |
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一 さて、イエスはエリコにはいって、その町をお通りになった。 |
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二 ザアカイと云る人あり稅吏の長にて富る者なり |
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二 視よ、名をザアカイといふ人あり、取稅人の長にて富める者なり。 |
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二 ところが、そこにザアカイという名の人がいた。この人は取税人のかしらで、金持であった。 |
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三 イエスは如何なる人なるか見んと欲ども身量ひくければ大衆なるに因て見ことを得ず |
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三 イエスの如何なる人なるかを見んと思へど、丈矮うして群衆のために見ること能はず、 |
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三 彼は、イエスがどんな人か見たいと思っていたが、背が低かったので、群衆にさえぎられて見ることができなかった。 |
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四 彼を見んとて趨ゆき桑樹に升れりイエスその道を過んとする故なり |
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四 前に走りゆき、桑の樹にのぼる。イエスその路を過ぎんとし給ふ故なり。 |
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四 それでイエスを見るために、前の方に走って行って、いちじく桑の木に登った。そこを通られるところだったからである。 |
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五 イエス此に來り仰て彼を見いひけるはザアカイよ速ぎ下れ我今日かならず爾の家に宿らん |
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五 イエス此處に至りしとき、仰ぎ見て言ひたまふ『ザアカイ、急ぎおりよ、今日われ汝の家に宿るべし』 |
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五 イエスは、その場所にこられたとき、上を見あげて言われた、「ザアカイよ、急いで下りてきなさい。きょう、あなたの家に泊まることにしているから」。 |
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六 彼いそぎ下り喜てイエスを迎たり |
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六 ザアカイ急ぎおり、喜びてイエスを迎ふ。 |
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六 そこでザアカイは急いでおりてきて、よろこんでイエスを迎え入れた。 |
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七 衆人これを見てみな怨言いひけるは彼は往て罪ある人の客と爲れり |
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七 人々みな之を見て呟きて言ふ『かれは罪人の家に入りて客となれり』 |
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七 人々はみな、これを見てつぶやき、「彼は罪人の家にはいって客となった」と言った。 |
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八 ザアカイ起て主よ我所有の半を貧者に施さん若われ誣訴て人より收たる所あらば四倍にして之を償のふべし |
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八 ザアカイ立ちて主に言ふ『主、視よ、わが所有の半を貧しき者に施さん、若し、われ誣ひ訴ヘて人より取りたる所あらば、四倍にして償はん』 |
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八 ザアカイは立って主に言った、「主よ、わたしは誓って自分の財産の半分を貧民に施します。また、もしだれかから不正な取立てをしていましたら、それを四倍にして返します」。 |
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九 イエス彼に曰けるは今日この家すくはるゝことを得たり蓋この人もアブラハムの裔なれば也 |
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九 イエス言ひ給ふ『けふ救はこの家に來れり、比の人もアブラハムの子なればなり。 |
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九 イエスは彼に言われた、「きょう、救がこの家にきた。この人もアブラハムの子なのだから。 |
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十 それ人の子は喪ひし者を尋て救ん爲に來れり |
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一〇 それ人の子の來れるは、失せたる者を尋ねて救はん爲なり』 |
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一〇 人の子がきたのは、失われたものを尋ね出して救うためである」。 |
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十一 衆人この言を聞る時また譬を設て曰り此はエルサレムに近かつ衆人~の國たゞちに顯明るべしと意が故なり |
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一一 人々これらの事を聽きゐたるとき、譬を加へて言ひ給ふ。これはイエス、エルサレムに近づき給ひ、~の國たちどころに現るべしと彼らが思ふ故なり。 |
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一一 人々がこれらの言葉を聞いているときに、イエスはなお一つの譬をお話しになった。それはエルサレムに近づいてこられたし、また人々が神の国はたちまち現れると思っていたためである。 |
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十二 ある貴者みづから領地を受て歸んとて遠國へ往とき |
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一二 乃ち言ひたまふ『或る貴人、王の權を受けて歸らんとて遠き國へ往くとき、 |
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一二 それで言われた、「ある身分の高い人が、王位を受けて帰ってくるために遠い所へ旅立つことになった。 |
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十三 十人の僕を召て彼等に金十斤を予て曰けるは我來まで商賣せよ |
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一三 十人の僕をよび、之に金十ミナを付して言ふ「わが歸るまで商賣せよ」 |
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一三 そこで十人の僕を呼び十ミナを渡して言った、『わたしが帰って来るまで、これで商売をしなさい』。 |
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十四 その國民かれを憾て後より使を遣し曰けるは我儕この人を王とする事を欲ず |
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一四 然るに其の地の民かれを憎み、後より使を遣して「我らは此の人の我らの王となることを欲せず」と言はしむ。 |
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一四 ところが、本国の住民は彼を憎んでいたので、あとから使者をおくって、『この人が王になるのをわれわれは望んでいない』と言わせた。 |
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十五 領地を受て歸し時おのおの商賣して幾何の利を得たるかを知んとて金を予おきたる僕等を召と命じぬ |
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一五 貴人、王の權をうけて歸り來りしとき、銀を付し置きたる僕どもの、如何に商賣せしかを知らんとて彼らを呼ばしむ。 |
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一五 さて、彼が王位を受けて帰ってきたとき、だれがどんなもうけをしたかを知ろうとして、金を渡しておいた僕たちを呼んでこさせた。 |
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十六 初の一人きたりて曰けるは主よ爾の一斤は十斤の利を得たり |
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一六 初のもの進み出でて言ふ「主よ、なんぢの一ミナは十ミナを赢けたり」 |
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一六 最初の者が進み出て言った、『ご主人様、あなたの一ミナで十ミナをもうけました』。 |
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十七 主人いひけるは兪善僕よ爾は少者に忠なれば十の邑を宰どるべし |
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一七 王いふ「善いかな、良き僕、なんぢは小事に忠なりしゆゑ、十の町を司どるべし」 |
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一七 主人は言った、『よい僕よ、うまくやった。あなたは小さい事に忠実であったから、十の町を支配させる』。 |
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十八 また次の一人きたりて曰けるは主よ爾の一斤は五斤の利を得たり |
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一八 次の者きたりて言ふ「主よ、なんぢの一ミナは五ミナを赢けたり」 |
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一八 次の者がきて言った、『ご主人様、あなたの一ミナで五ミナをつくりました』。 |
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十九 主人曰けるは爾も五の邑を宰どるべし |
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一九 王また言ふ「なんぢも五つの町を司どるべし」 |
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一九 そこでこの者にも、『では、あなたは五つの町のかしらになれ』と言った。 |
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二十 また一人きたりて曰けるは主よ爾の一斤は此に在われ手巾に裹て藏置たりき |
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二〇 また一人きたりて言ふ「主、視よ、なんぢの一ミナは此處に在り。我これを袱紗に包みて藏め置きたり。 |
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二〇 それから、もうひとりの者がきて言った、『ご主人様、さあ、ここにあなたの一ミナがあります。わたしはそれをふくさに包んで、しまっておきました。 |
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二一 蓋なんぢ嚴人なるが故に我おそれたり爾置ざる者をとり播ざる者をかる人なればなり |
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二一 これ汝の嚴しき人なるを懼れたるに因る。なんぢは置かぬものを取り、播かぬものを刈るなり」 |
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二一 あなたはきびしい方で、おあずけにならなかったものを取りたて、おまきにならなかったものを刈る人なので、おそろしかったのです』。 |
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二二 主人いひけるは惡僕よ我なんぢの口に因て爾を鞫べし爾われは嚴者にて置ざる者を取まかざる者を穫と知 |
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二二 王いふ「惡しき僕、われ汝の口によりて汝を審かん。我の嚴しき人にて、置かぬものを取り、播かぬものを刈るを知るか。 |
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二二 彼に言った、『悪い僕よ、わたしはあなたの言ったその言葉であなたをさばこう。わたしがきびしくて、あずけなかったものを取りたて、まかなかったものを刈る人間だと、知っているのか。 |
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二三 然に何ぞ我來るとき本と利を得んが爲に我金を兌錢肆に預ざりしや |
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二三 何ぞわが金を銀行に預けざりし、然らば我きたりて元金と利子とを請求せしものを」 |
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二三 では、なぜわたしの金を銀行に入れなかったのか。そうすれば、わたしが帰ってきたとき、その金を利子と一緒に引き出したであろうに』。 |
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二四 遂に傍に立る者に曰けるは此人の一片を取て十斤有る者に予よ |
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二四 斯て傍らに立つ者どもに言ふ「かれの一ミナを取りて十ミナを有てる人に付せ」 |
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二四 そして、そばに立っていた人々に、『その一ミナを彼から取り上げて、十ミナを持っている者に与えなさい』と言った。 |
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二五 衆人主人に曰けるは主よ其人すでに十斤を有り |
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二五 彼等いふ「主よ、かれは旣に十ミナを有てり」 |
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二五 彼らは言った、『ご主人様、あの人は既に十ミナを持っています』。 |
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二六 主人いひけるは我なんぢらに吿ん夫有者は予られ不有者は其所有ものまで取るべし |
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二六 「われ汝らに吿ぐ、凡て有てる人はなほ與へられ、有たぬ人は有てるものをも取らるべし。 |
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二六 『あなたがたに言うが、おおよそ持っている人には、なお与えられ、持っていない人からは、持っているものまでも取り上げられるであろう。 |
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二七 且わが敵すなはち我が支配を欲ざる者を此に曳來りて我前に誅せ |
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二七 而して我が王たる事を欲せぬ、かの仇どもを、此處に連れきたり我が前にて殺せ』 |
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二七 しかしわたしが王になることを好まなかったあの敵どもを、ここにひっぱってきて、わたしの前で打ち殺せ』」。 |
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二八 イエス此事を言しのち衆人に先だちてエルサレムに上れり |
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二八 イエス此等のことを言ひてのち、先だち進みてエルサレムに上り給ふ。 |
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二八 イエスはこれらのことを言ったのち、先頭に立ち、エルサレムへ上って行かれた。 |
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二九 橄欖と名る山に靠るベテパゲとベタニヤに近づける時その弟子二人を遣さんとて曰けるは |
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二九 オリブといふ山の麓なるベテパゲ及びベタニヤに近づきし時、イエス二人の弟子を遣さんとして言ひ給ふ、 |
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二九 そしてオリブという山に沿ったベテパゲとベタニヤに近づかれたとき、ふたりの弟子をつかわして言われた、 |
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三十 對面の村にゆけ彼處に入ば人の未だ乘ざる所の繫たる驢駒に遇べし其を解て牽來れ |
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三〇 『向ひの村にゆけ。其處に入らば一度も人の乘りたる事なき驢馬の子の繫ぎあるを見ん、それを解きて牽ききたれ。 |
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三〇 「向こうの村へ行きなさい。そこにはいったら、まだだれも乗ったことのないろばの子がつないであるのを見るであろう。それを解いて、引いてきなさい。 |
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三一 もし誰か爾曹に何ゆゑ解やと問者あらば如此こたふべし主の用なり |
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三一 誰かもし汝らに「なにゆゑ解くか」と問はば、斯く言ふべし「主の用なり」と』 |
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三一 もしだれかが『なぜ解くのか』と問うたら、『主がお入り用なのです』と、そう言いなさい」。 |
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三二 遣されたる者往ければ果て其語たまへる如く遇ぬ |
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三二 遣されたる者ゆきたれば、果して言ひ給ひし如くなるを見る。 |
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三二 そこで、つかわされた者たちが行って見ると、果して、言われたとおりであった。 |
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三二 かれら驢駒を解とき其主等かれらに何ぞ驢駒を解やと曰しかば |
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三三 かれら驢馬の子をとく時、その持主ども言ふ『なにゆゑ驢馬の子を解くか』 |
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三三 彼らが、そのろばの子を解いていると、その持ち主たちが、「なぜろばの子を解くのか」と言ったので、 |
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三四 答て主の用なりと曰て |
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三四 答へて言ふ『主の用なり』 |
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三四 「主がお入り用なのです」と答えた。 |
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三五 之をイエスに牽來り己が衣を驢駒に置ィエスを其上に乘 |
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三五 かくて驢馬の子をイエスの許に牽ききたり、己が衣をその上にかけて、イエスを乘せたり。 |
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三五 そしてそれをイエスのところに引いてきて、その子ろばの上に自分たちの上着をかけてイエスをお乗せした。 |
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三六 イエス往けるとき衆人その衣を路上に布り |
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三六 その往き給ふとき、人々おのが衣を途に敷く。 |
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三六 そして進んで行かれると、人々は自分たちの上着を道に敷いた。 |
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三七 イエス エルサレムに近づき橄欖山を下らんとする時大衆の弟子みな喜び其見し所の奇跡なる凡の能に因て大聲に~を讚て曰けるは |
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三七 オリブ山の下りあたりまで近づき來り給へば、群れゐる弟子等みな喜びて、その見しところの能力ある御業につき、聲高らかに~を讚美して言ひ始む、 |
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三七 いよいよオリブ山の下り道あたりに近づかれると、大ぜいの弟子たちはみな喜んで、彼らが見たすべての力あるみわざについて、声高らかに神をさんびして言いはじめた、 |
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三八 主の名に託て來る王はなり天に於ては和平に至上所には榮光あるべし |
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三八 『讚むべきかな、主の名によりて來る王。天には平和、至高き處には榮光あれ』 |
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三八 「主の御名によってきたる王に、祝福あれ。天には平和、いと高きところには栄光あれ」。 |
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三九 大衆の中より或パリサイの人イエスに曰けるは師よ爾の弟子を責めよ |
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三九 群衆のうちの或るパリサイ人ら、イエスに言ふ『師よ、なんぢの弟子たちを禁めよ』 |
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三九 ところが、群衆の中にいたあるパリサイ人たちがイエスに言った、「先生、あなたの弟子たちをおしかり下さい」。 |
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四十 彼等に答けるは我なんぢらに吿ん此輩もし默止なば石號呼べし |
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四〇 答へて言ひ給ふ『われ汝らに吿ぐ、此のともがら默さば、石叫ぶべし』 |
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四〇 答えて言われた、「あなたがたに言うが、もしこの人たちが黙れば、石が叫ぶであろう」。 |
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四一 既に近づけるとき城中を見て之が爲に哭いひけるは |
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四一 旣に近づきたるとき、キを見やり、之がために泣きて言ひ給ふ、 |
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四一 いよいよ都の近くにきて、それが見えたとき、そのために泣いて言われた、 |
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四二 もし爾だにも今この爾の日に於て爾の平安に關れる事を知ばなるに今なんぢの目に隱たり |
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四二 『ああ汝、なんぢも若しこの日の間に平和にかかはる事を知りたらんにはー然れど今なんぢの目に隱れたり。 |
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四二 「もしおまえも、この日に、平和をもたらす道を知ってさえいたら………しかし、それは今おまえの目に隠されている。 |
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四三 爾の敵なんぢの周邊に壘を築き四方より圍攻 |
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四三 日きたりて敵なんぢの周圍に壘をきづき、汝を取り圍みて四方より攻め、 |
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四三 いつかは、敵が周囲に塁を築き、おまえを取りかこんで、四方から押し迫り、 |
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四四 爾と其中なる兒女を擊滅し石をも石の上に遺ざる日きたらん是なんぢ其眷顧たまふの時を知ざれば也 |
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四四 汝と、その內にある子らとを地に打ち倒し、一つの石をも石の上に遺さざるべし。なんぢ眷顧の時を知らざりしに因る』 |
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四四 おまえとその内にいる子らとを地に打ち倒し、城内の一つの石も他の石の上に残して置かない日が来るであろう。それは、おまえが神のおとずれの時を知らないでいたからである」。 |
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四五 イエス殿に入その中にて貿易せる者を逐出し |
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四五 斯て宮に入り、商ひする者どもを逐ひ出しはじめ、 |
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四五 それから宮にはいり、商売人たちを追い出しはじめて、 |
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四六 彼等に曰けるは我室は祈禱の殿なりと錄されたるに爾曹これを盜の巢と爲り |
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四六 之に言ひたまふ『わが家は祈の家たるべし」と錄されたるに、汝らは之を强盜の巢となせり』 |
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四六 彼らに言われた、「『わが家は祈の家であるべきだ』と書いてあるのに、あなたがたはそれを盗賊の巣にしてしまった」。 |
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四七 イエス日々に殿にて教ふ祭司の長學者民の尊者ども彼を殺んと謀ども民みな心を傾けて其教を聽るが故に |
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四七 イエス日々宮にてヘへたまふ。祭司長・學者ら及び民の重立ちたる者ども之を殺さんと思ひたれど、 |
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四七 イエスは毎日、宮で教えておられた。祭司長、律法学者また民衆の重立った者たちはイエスを殺そうと思っていたが、 |
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四八 爲べき方を知ざりき |
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四八 民みな耳を傾けて、イエスに聽きたれば爲すべき方を知らざりき。 |
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四八 民衆がみな熱心にイエスに耳を傾けていたので、手のくだしようがなかった。 |
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20章 |
一 一日イエス殿にて民を教へ音を宣しに祭司の長學者長老共に近よりイエスに語て曰けるは |
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一 或日イエス宮にて民をヘへ、音を宣べゐ給ふとき、祭司長・學者らは、長老どもと共に近づき來り、 |
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一 ある日、イエスが宮で人々に教え、福音を宣べておられると、祭司長や律法学者たちが、長老たちと共に近寄ってきて、 |
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二 何の權威を以て此事を行か誰この權威を予たるか我儕に吿よ |
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二 イエスに語りて言ふ『なにの權威をもて此等の事をなすか、此の權威を授けし者は誰か、我らに吿げよ』 |
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二 イエスに言った、「何の権威によってこれらの事をするのですか。そうする権威をあなたに与えたのはだれですか、わたしたちに言ってください」。 |
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三 答て曰けるは我も一言なんぢらに問ん且われに告よ |
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三 答へて言ひ給ふ『われも一言なんぢらに問はん、答へよ。 |
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三 そこで、イエスは答えて言われた、「わたしも、ひと言たずねよう。それに答えてほしい。 |
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四 ヨハネのバプテスマは天よりか人よりか |
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四 ヨハネのバプテスマは、天よりか人よりか』 |
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四 ヨハネのバプテスマは、天からであったか、人からであったか」。 |
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五 彼等たがひに曰けるは若天よりと云ば然ば何故かれを信ぜざる乎と曰ん |
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五 彼ら互に論じて言ふ『もし「天より」と言はば「なに故かれを信ぜざりし」と言はん。 |
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五 彼らは互に論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。 |
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六 もし人よりと云ば民みなヨハネを預言者と信ずれば我儕を石にて擊んとて |
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六 もし「人より」と言はんか、民みなヨハネを預言者と信ずるによりて我らを石にて擊たん』 |
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六 しかし、もし人からだと言えば、民衆はみな、ヨハネを預言者だと信じているから、わたしたちを石で打つだろう」。 |
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七 遂に答て奚よりなるか知ずと曰り |
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七 遂に何處よりか知らぬ由を答ふ。 |
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七 それで彼らは「どこからか、知りません」と答えた。 |
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八 イエス彼等に曰けるは我も亦なにの權威を以て之を行かを爾曹に告ず |
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八 イエス言ひたまふ『われも何の權威をもて此等の事をなすか、汝らに吿げじ』 |
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八 イエスはこれに対して言われた、「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言うまい」。 |
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九 即ち此譬を民に語れり或人葡萄圃をつくり農夫に租與て久しく他國へ往しが |
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九 斯て次の譬を民に語りいで給ふ『ある人、葡萄園を造りて農夫どもに貸し、遠く旅立して久しくなりぬ。 |
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九 そこでイエスは次の譬を民衆に語り出された、「ある人がぶどう園を造って農夫たちに貸し、長い旅に出た。 |
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十 期いたりければ葡萄圃の果を受收ん爲に僕を農夫の所に遣しけるに農夫等これを撲たゝきて徒く返せたり |
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一〇 時至りて、葡萄園の所得を納めしめんとて、一人の僕を農夫の許に遺ししに農夫ども之を打ちたたき、空手にて歸らしめたり。 |
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一〇 季節になったので、農夫たちのところへ、ひとりの僕を送って、ぶどう園の収穫の分け前を出させようとした。ところが、農夫たちは、その僕を袋だたきにし、から手で帰らせた。 |
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十一 また他の僕を遣しゝに之をも撲たゝき辱しめて徒く返せたり |
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一一 又ほかの僕を遣ししに、之をも打ちたたき辱しめ、空手にて歸らしめたり。 |
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一一 そこで彼はもうひとりの僕を送った。彼らはその僕も袋だたきにし、侮辱を加えて、から手で帰らせた。 |
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十二 又三次僕を遣しゝに之をも傷けて逐出しければ |
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一二 なほ三度めの者を遺ししに、之をも傷つけて逐ひ出したり。 |
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一二 そこで更に三人目の者を送ったが、彼らはこの者も、傷を負わせて追い出した。 |
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十三 葡萄圃の主曰けるは我いかに爲ん我愛子を遣すべし之を見ば恭敬ならん |
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一三 葡萄園の主いふ「われ何を爲さんか。我が愛しむ子を遣さん、或は之を敬ふなるべし」 |
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一三 ぶどう園の主人は言った、『どうしようか。そうだ、わたしの愛子をつかわそう。これなら、たぶん敬ってくれるだろう』。 |
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十四 農夫ども之を見て互に議いひけるは此は嗣子なり率かれを殺さん業は我儕の所有になる可とて |
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一四 農夫ども之を見て互に論じて言ふ「これは世嗣なり。いざ殺して其の嗣業を我らの物とせん」 |
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一四 ところが、農夫たちは彼を見ると、『あれはあと取りだ。あれを殺してしまおう。そうしたら、その財産はわれわれのものになるのだ』と互に話し合い、 |
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十五 彼を葡萄圃の外に出して殺せり然ば葡萄圃の主いかに彼等を處べき乎 |
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一五 斯てこれを葡萄園の外に逐ひ出して殺せり。さらば葡萄園の主、かれらに何を爲さんか、 |
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一五 彼をぶどう園の外に追い出して殺した。そのさい、ぶどう園の主人は、彼らをどうするだろうか。 |
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十六 かれ來て此農夫等を滅し葡萄圃を他人に託べし人々これを聞て曰けるは然は有ざれ |
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一六 來りてかの農夫どもを亡し、葡萄園を他の者どもに與ふべし』人々これを聽きて言ふ『然はあらざれ』 |
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一六 彼は出てきて、この農夫たちを殺し、ぶどう園を他の人々に与えるであろう」。人々はこれを聞いて、「そんなことがあってはなりません」と言った。 |
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十七 イエス彼等を見て曰けるは匠人の棄たる石是こそ屋隅の首石となれと錄されしは何ぞや |
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一七 イエス彼らに目を注めて言ひ給ふ『されば「造家者らの棄てたる石は、これぞ隅の首石となれる」と錄されたるは何ぞや。 |
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一七 そこで、イエスは彼らを見つめて言われた、「それでは、『家造りらの捨てた石が/隅のかしら石になった』と書いてあるのは、どういうことか。 |
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十八 此石の上に墮るものは壞この石上に墮れば其もの碎るべし |
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一八 凡そその石の上に倒るる者は碎け、又その石、人の上に倒るれば、その人を微塵にせん』 |
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一八 すべてその石の上に落ちる者は打ち砕かれ、それがだれかの上に落ちかかるなら、その人はこなみじんにされるであろう」。 |
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十九 祭司の長學者等その己を指て此譬を語たるを知この時イエスを執へんと爲しかども民を畏たり |
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一九 此のとき學者・祭司長ら、イエスに手をかけんと思ひたれど、民を恐れたり。この譬の己どもを指して言ひ給へるを悟りしに因る。 |
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一九 このとき、律法学者たちや祭司長たちはイエスに手をかけようと思ったが、民衆を恐れた。いまの譬が自分たちに当てて語られたのだと、悟ったからである。 |
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二十 即ち之を窺ひその言を取て方伯の政事の權威に解さんとして自ら義人と僞れる間者を遣せり |
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二〇 かくて彼ら機を窺ひ、イエスを司の支配と權威との下に付さんとて、その言を捉ふるために義人の樣したる間諜どもを遣したれば、 |
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二〇 そこで、彼らは機会をうかがい、義人を装うまわし者どもを送って、イエスを総督の支配と権威とに引き渡すため、その言葉じりを捕えさせようとした。 |
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二一 就てイエスに問けるは師よ我儕なんぢの言ところ教るところ正くかつ偏らず誠を以て~の道を教るを知 |
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二一 其の者どもイエスに問ひて言ふ『師よ、我らは汝の正しく語り、かつヘへ、外貌を取らず、眞をもて~の道をヘへ給ふを知る。 |
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二一 彼らは尋ねて言った、「先生、わたしたちは、あなたの語り教えられることが正しく、また、あなたは分け隔てをなさらず、真理に基いて神の道を教えておられることを、承知しています。 |
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二二 われら稅をカイザルに納るは宜や否 |
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二二 われら貢をカイザルに納むるは、善きか、惡しきか』 |
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二二 ところで、カイザルに貢を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか」。 |
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二三 イエスその詭譎なるを知て曰けるは何ぞ我を試るや |
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二三 イエスその惡巧を知りて言ひ給ふ、 |
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二三 イエスは彼らの悪巧みを見破って言われた、 |
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二四 デナリを我に見せよ此像と號は誰なるか答てカイザルなりと曰 |
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二四 『デナリを我に見せよ。これは誰の像、たれの號なるか』『カイザルのなり』と答ふ。 |
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二四 「デナリを見せなさい。それにあるのは、だれの肖像、だれの記号なのか」。「カイザルのです」と、彼らが答えた。 |
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二五 イエス曰けるは然ばカイザルの物はカイザルに納め~の物は~に納よ |
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二五 イエス言ひ給ふ『さらばカイザルの物はカイザルに、~の物は~に納めよ』 |
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二五 するとイエスは彼らに言われた、「それなら、カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。 |
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二六 かれら民の前に其言を執得ず且その答を奇と意て默然たり |
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二六 かれら民の前にて其の言をとらへ得ず、且その答を怪しみて默したり。 |
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二六 そこで彼らは、民衆の前でイエスの言葉じりを捕えることができず、その答に驚嘆して、黙ってしまった。 |
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二七 甦る事なしと言サドカイの人きたりてイエスに聞けるは |
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二七 また復活なしと言ひ張るサドカイ人の或者ども、イエスに來り問ひて言ふ、 |
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二七 復活ということはないと言い張っていたサドカイ人のある者たちが、イエスに近寄ってきて質問した、 |
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二八 師よモーセ我儕に書遺は若人の兄弟妻あり子なくして死ば兄弟その妻を娶り子を生て其嗣を繼すべしと |
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二八 『師よ、モーセは人の兄弟、もし妻あり、子なくして死なば、其の兄弟かれの妻を娶りて、兄弟のために嗣子を擧ぐべしと、我らに書き遺したり。 |
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二八 「先生、モーセは、わたしたちのためにこう書いています、『もしある人の兄が妻をめとり、子がなくて死んだなら、弟はこの女をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。 |
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二九 然ば七人の兄弟あらんに長子妻を娶り子なくして死 |
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二九 さて玆に七人の兄弟ありて、兄、妻を娶り、子なくして死に、 |
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二九 ところで、ここに七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子がなくて死に、 |
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三十 第二の者この婦を娶り子なくして死 |
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三〇 第二、第三の者も之を娶り、 |
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三〇 そして次男、三男と、次々に、その女をめとり、 |
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三一 第三も之を娶り七人同く之を娶り子なくして死 |
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三一 七人みな同じく子を殘さずして死に、 |
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三一 七人とも同様に、子をもうけずに死にました。 |
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三二 終に婦も死たり |
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三二 後には其の女も死にたり。 |
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三二 のちに、その女も死にました。 |
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三三 然ば七人ともに此婦を妻とせし故に甦りたる時は誰の妻と爲べき乎 |
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三三 されば復活の時、この女は誰の妻たるべきか、七人これを妻としたればなり』 |
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三三 さて、復活の時には、この女は七人のうち、だれの妻になるのですか。七人とも彼女を妻にしたのですが」。 |
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三四 イエス答て曰けるは此世の子は娶嫁ことあり |
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三四 イエス言ひ給ふ『この世の子らは娶り媳ぎすれど、 |
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三四 イエスは彼らに言われた、「この世の子らは、めとったり、とついだりするが、 |
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三五 後世に入り死より復生に足ものは娶嫁ことなし |
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三五 『かの世に入るに、死人の中より甦へるに、相應しと爲らるる者は、娶り媳ぎすることなし。 |
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三五 かの世にはいって死人からの復活にあずかるにふさわしい者たちは、めとったり、とついだりすることはない。 |
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三六 是また死ること能ざるが故なり蓋天の使とrく復生の子にて~の子なれば也 |
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三六 彼等ははや死ぬること能はざればなり。御使たちに等しく、また復活の子どもにして、~の子供たるなり。 |
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三六 彼らは天使に等しいものであり、また復活にあずかるゆえに、神の子でもあるので、もう死ぬことはあり得ないからである。 |
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三七 さて死し者の甦ることに就てはモーセ棘中の篇に主をアブラハムの~イサクの~ヤコブの~と稱て之を明白せり |
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三七 死にたる者の甦へる事は、モーセも柴の條に、主を「アブラハムの~、イサクの~、ヤコブの~」と呼びて之を示せり。 |
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三七 死人がよみがえることは、モーセも柴の篇で、主を『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神』と呼んで、これを示した。 |
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三八 それ~は死たる者の~に非ず生る者の~なり蓋~の前には皆生る者なれば也 |
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三八 ~は死にたる者の~にあらず、生ける者の~なり。それ~の前には皆生けるなり』 |
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三八 神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。人はみな神に生きるものだからである」。 |
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三九 その學者等こたへ曰けるは師よ善いへり |
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三九 學者のうちの或者ども答へて『師よ、善く言ひ給へ。』と言ふ。 |
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三九 律法学者のうちのある人々が答えて言った、「先生、仰せのとおりです」。 |
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四十 此のち敢てイエスに問者なかりき |
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四〇 彼等ははや、何事をも問ひ得ざりし故なり。 |
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四〇 彼らはそれ以上何もあえて問いかけようとしなかった。 |
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四一 ィェス彼等に曰けるは人々如何なればキリストをダビデの裔と言や |
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四一 イエス彼らに言ひたまふ『如何なれば人々、キリストをダビデの子と言ふか。 |
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四一 イエスは彼らに言われた、「どうして人々はキリストをダビデの子だと言うのか。 |
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四二四三 ダビデ自ら詩の篇に主わが主に曰けるは我なんぢの敵を爾の足と爲まで我が右に坐すべしと言り |
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四二 ダビデ自ら詩篇に言ふ、「主わが主に言ひ給ふ、 |
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四二 ダビデ自身が詩篇の中で言っている、『主はわが主に仰せになった、 |
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四三 |
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四三 われ汝の敵を汝の足臺となすまでは、わが右に坐せよ」 |
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四三 あなたの敵をあなたの足台とする時までは、わたしの右に座していなさい』。 |
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四四 然ばダビデ之を主と稱たれば如何で某裔ならん乎 |
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四四 ダビデ斯く彼を主と稱ふれば、爭でその子ならんや』 |
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四四 このように、ダビデはキリストを主と呼んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの子であろうか」。 |
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四五 民みな之を聽る時その弟子にいひけるは |
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四五 民の皆ききをる中にて、イエス弟子たちに言ひ給ふ、 |
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四五 民衆がみな聞いているとき、イエスは弟子たちに言われた、 |
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四六 長服を衣て遊行ことを好み市上にて人の問安會堂の高坐筵間の上坐を喜ぶ學者を愼めよ |
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四六 『學者らに心せよ。彼らは長き衣を著て歩むことを好み、市場にての敬禮、會堂の上座、饗宴の上席を喜び、 |
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四六 「律法学者に気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩くのを好み、広場での敬礼や会堂の上席や宴会の上座をよろこび、 |
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四七 彼等は嫠婦の家を呑いつはりて長祈をなす審判るゝこと尤も重し |
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四七 また寡婦らの家を呑み、外見をつくりて長き祈をなす。其の受くる審判は更に嚴しからん』 |
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四七 やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。彼らはもっときびしいさばきを受けるであろう」。 |
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21章 |
一 イエス目をあげ富る人々の捐輸を賽錢箱に投るを見る |
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一 イエス目を擧げて、富める人々の納物を、賽錢函に投げ入るるを見、 |
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一 イエスは目をあげて、金持たちがさいせん箱に献金を投げ入れるのを見られ、 |
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二 又ある貧き嫠婦のレプタ二を投たるを見て曰けるは |
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二 また或る貧しき寡婦のレプタ二つを投げ入るるを見て言ひ給ふ、 |
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二 また、ある貧しいやもめが、レプタ二つを入れるのを見て |
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三 われ誠に爾曹に吿ん此貧き嫠は衆の者よりも多く投たり |
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三 『われ實をもて汝らに吿ぐ、この貧しき寡婦は、凡ての人よりも多く投げ入れたり。 |
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三 言われた、「よく聞きなさい。あの貧しいやもめはだれよりもたくさん入れたのだ。 |
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四 蓋かれらは皆その羨餘ある所より捐輸を~にさゝげ此婦は不足ところより其所有を盡く獻たれば也 |
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四 彼らは皆その豐なる內より納物の中に投げ入れ、この寡婦はその乏しき中より、己が有てる生命の料をことごとく投げ入れたればなり』 |
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四 これらの人たちはみな、ありあまる中から献金を投げ入れたが、あの婦人は、その乏しい中から、持っている生活費全部を入れたからである」。 |
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五 また或人殿の美石と奉納物を以て修飾ることを語しに |
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五 或る人々、美麗なる石と獻物とにて宮の飾られたる事を語りしに、イエス言ひ給ふ、 |
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五 ある人々が、見事な石と奉納物とで宮が飾られていることを話していたので、イエスは言われた、 |
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六 イエス曰けるは爾曹の見る所のもの石を石の上にも遺ず圯さるゝ日いたらん |
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六 『なんぢらが見る此等の物は、一つの石も崩されずして石の上に殘らぬ日きたらん』 |
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六 「あなたがたはこれらのものをながめているが、その石一つでもくずされずに、他の石の上に残ることもなくなる日が、来るであろう」。 |
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七 彼等とふて曰けるは師よ何の時この事あらん正に此の事の來らん時は如何なる兆あり乎 |
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七 彼ら問ひて言ふ『師よ、さらば此等のことは何時あるか、又これらの事の成らんとする時は如何なる兆あるか』 |
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七 そこで彼らはたずねた、「先生、では、いつそんなことが起るのでしょうか。またそんなことが起るような場合には、どんな前兆がありますか」。 |
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八 イエス曰けるは爾曹つゝしみて惑さるゝ事なかれ蓋おほくの者わが名を冐きたり我はキリストなり時は近よれりと云ん然ど爾曹從ふ勿れ |
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八 イエス言ひ給ふ『なんぢら惑されぬやうに心せよ、多くの者わが名を冒し來り「われは夫なり」と言ひ「時は近づけり」と言はん、彼らに從ふな。 |
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八 イエスが言われた、「あなたがたは、惑わされないように気をつけなさい。多くの者がわたし名を名のって現れ、自分がそれだとか、時が近づいたとか、言うであろう。彼らについて行くな。 |
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九 戰亂を聞とき懼るゝ勿れ此等の事の先に有は止を得ざること也然ざ末期は未だ速ならず |
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九 戰爭と騷亂との事を聞くとき、怖づな。斯ることは先づあるべきなり。然れど終は直ちに來らず』 |
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九 戦争と騒乱とのうわさを聞くときにも、おじ恐れるな。こうしたことはまず起らねばならないが、終りはすぐにはこない」。 |
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十 又曰けるは民は民をせめ國は國を攻 |
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一〇 また言ひたまふ『「民は民に、國は園に逆ひて起たん」 |
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一〇 それから彼らに言われた、「民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。 |
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十一 各處に大なる地震、饑饉、疫病おこり且おそるべき事と大なる休徵天より現るべし |
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一一 かつ大なる地震あり、處々に疫病・饑饉あらん。懼るべき事と天よりの大なる兆とあらん。 |
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一一 また大地震があり、あちこちに疫病やききんが起り、いろいろ恐ろしいことや天からの物すごい前兆があるであろう。 |
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十二 此事より先に人々爾曹を執へ苦め會堂および獄に解し我名の爲に王および侯の前に曳往べし |
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一二 すべて此等のことに先だちて、人々なんぢらに手をくだし、汝らを責めん、即ち汝らを會堂および獄に付し、わが名のために王たち司たちの前に曳きゆかん。 |
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一二 しかし、これらのあらゆる出来事のある前に、人々はあなたがたに手をかけて迫害をし、会堂や獄に引き渡し、わたしの名のゆえに王や総督の前にひっぱって行くであろう。 |
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十三 然ども爾曹が此事に遭は證と爲なり |
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一三 これは汝らに證の機とならん。 |
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一三 それは、あなたがたがあかしをする機会となるであろう。 |
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十四 故に爾曹まづ何を對んと思慮まじき事を心に定よ |
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一四 然れば汝ら如何に答へんと預じめ思慮るまじき事を心に定めよ。 |
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一四 だから、どう答弁しようかと、前もって考えておかないことに心を決めなさい。 |
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十五 蓋すべて爾曹に仇する者の辨駁また敵對ことを爲えざるべき口と智とを我なんぢらに賜へん |
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一五 われ汝らに凡て逆ふ者の、言ひ逆ひ、言ひ消すことをなし得ざる口と智慧とを與ふべければなり。 |
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一五 あなたの反対者のだれもが抗弁も否定もできないような言葉と知恵とを、わたしが授けるから。 |
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十六 又なんぢら父母、兄弟、親戚、朋友等より解され且汝らの中ある者は殺さるべし |
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一六 汝らは兩親・兄弟・親族・朋友にさへ付されん。又かれらは汝らの中の或者を殺さん。 |
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一六 しかし、あなたがたは両親、兄弟、親族、友人にさえ裏切られるであろう。また、あなたがたの中で殺されるものもあろう。 |
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十七 爾曹わが名の爲に人々に憾れん |
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一七 汝等わが名の故に凡ての人に憎まるべし。 |
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一七 また、わたしの名のゆえにすべての人に憎まれるであろう。 |
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十八 然ども爾曹の首髮一縷も喪はじ |
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一八 然れど汝らの頭の髭一すぢだに失せじ。 |
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一八 しかし、あなたがたの髪の毛一すじでも失われることはない。 |
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十九 なんぢら忍耐て其生命を全うせよ |
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一九 汝らは忍耐によりて其の靈魂を得べし。 |
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一九 あなたがたは耐え忍ぶことによって、自分の魂をかち取るであろう。 |
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二十 なんぢら軍勢にエルサレムの圍るゝを見なば其亡ちかきに在と知 |
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二〇 汝らエルサレムが軍勢に圍まるるを見ば、その亡近づけりと知れ。 |
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二〇 エルサレムが軍隊に包囲されるのを見たならば、そのときは、その滅亡が近づいたとさとりなさい。 |
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二一 その時ユダヤに在者は山に逃よエルサレムに在者は出よク下に在者はエルサレムに入なかれ |
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二一 その時ユダヤに居る者どもは山に遁れよ、キの中にをる者どもは出でよ、田舍にをる者どもはキに入るな、 |
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二一 そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。市中にいる者は、そこから出て行くがよい。また、いなかにいる者は市内にはいってはいけない。 |
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二二 これ刑罰の日にして錄されたる事のみな應らるゝ日なり |
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二二 これ錄されたる凡ての事の遂げらるべき刑罰の日なり。 |
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二二 それは、聖書にしるされたすべての事が実現する刑罰の日であるからだ |
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二三 其日には孕たる者と哺乳兒ある者は禍なる哉これ地に大なる災ありて怒この民に及べければ也 |
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二三 その日には孕りたる者と、乳を哺する者とは禍害なるかな。地に大なる艱難ありて、御怒この民に臨み、 |
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二三 その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。地上には大きな苦難があり、この民にはみ怒りが臨み、 |
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二四 人々刀刃に斃れ且とらはれてゥ國に曳れエルサレムは異邦人の時滿るまでは異邦人に蹂躝さるべし |
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二四 彼らは劍の刃に斃れ、又は捕はれてゥ國に曳かれん。而してエルサレムは異邦人の時滿つるまで異邦人に蹂躙らるべし。 |
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二四 彼らはつるぎの刃に倒れ、また捕えられて諸国へ引きゆかれるであろう。そしてエルサレムは、異邦人の時期が満ちるまで、彼らに踏みにじられているであろう。 |
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二五 また日月星に異象あるべし地にてはゥ國の人哀み海と波との漰湱に因て顚沛 |
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二五 また日・月・星に兆あらん。地にては國々の民なやみ、海と濤との鳴り轟くによりて狼狽へ、 |
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二五 また日と月と星とに、しるしが現れるであろう。そして、地上では、諸国民が悩み、海と大波とのとどろきにおじ惑い、 |
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二六 人々危懼つゝ世界に來んとする事を俟惱むべし是天の勢ひ震動すべければ也 |
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二六 人々おそれ、かつ世界に來らんとする事を思ひて膽を失はん。これ天の萬象、震ひ動けばなり。 |
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二六 人々は世界に起ろうとする事を思い、恐怖と不安で気絶するであろう。もろもろの天体が揺り動かされるからである。 |
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二七 其時人々は人の子の權威と大なる榮光を以て雲に乘來るを見るべし |
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二七 其のとき人々、人の子の能力と大なる榮光とをもて、雲に乘りきたるを見ん。 |
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二七 そのとき、大いなる力と栄光とをもって、人の子が雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。 |
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二八 此等の事の成初ん時には起て爾曹の首を翹よ蓋なんぢらの贖ちかづけば也 |
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二八 これらの事起り始めなば、仰ぎて首を擧げよ。汝らの贖罪、近づけるなり』 |
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二八 これらの事が起りはじめたら、身を起し頭をもたげなさい。あなたがたの救が近づいているのだから」。 |
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二九 イエス譬を彼等に語けるは無花果と凡の樹を見よ |
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二九 また譬を言ひたまふ『無花果の樹、また凡ての樹を見よ。 |
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二九 それから一つの譬を話された、「いちじくの木を、またすべての木を見なさい。 |
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三十 既に萌ば爾曹これを見て自ら夏ははや近と知 |
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三〇 旣に芽せば、汝等これを見てみづから夏の近きを知る。 |
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三〇 はや芽を出せば、あなたがたはそれを見て、夏がすでに近いと、自分で気づくのである。 |
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三一 此の如く爾曹も此等の事成を見ば~の國の近を知 |
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三一 斯のごとく此等のことの起るを見ば、~の國の近きを知れ。 |
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三一 このようにあなたがたも、これらの事が起るのを見たなら、神の国が近いのだとさとりなさい。 |
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三二 誠に我なんぢらに吿ん此事みな成までは此世は逝ざるべし |
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三二 われ誠に汝らに吿ぐ、これらの事ことごとく成るまで、今の代は過ぎゆくことなし。 |
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三二 よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起るまでは、この時代は滅びることがない。 |
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三三 天地は廢るべし然ども我言は廢る可らず |
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三三 天地は過ぎゆかん、然れど我が言は過ぎゆくことなし。 |
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三三 天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は決して滅びることがない。 |
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三四 爾曹みづからを愼よ恐くは飮食に耽り世事に累れ爾曹の心昏迷なりて慮よらざる時に此日なんぢらに臨ん |
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三四 汝等みづから心せよ、恐らくは飮食にふけり、世の煩勞にまとはれて心鈍り、思ひがけぬ時、かの日羂のごとく來らん。 |
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三四 あなたがたが放縦や、泥酔や、世の煩いのために心が鈍っているうちに、思いがけないとき、その日がわなのようにあなたがたを捕えることがないように、よく注意していなさい。 |
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三五 これ機檻の如く遍く地の上に居者に臨むべし |
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三五 これは徧く地の面に住める凡ての人に臨むべきなり。 |
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三五 その日は地の全面に住むすべての人に臨むのであるから。 |
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三六 是故に爾曹儆醒て此臨んとする凡の事を避また人の子の前に立得やうに常に祈れ |
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三六 この起るべき凡ての事をのがれ、人の子のまへに立ち得るやう、常に祈りつつ目を覺しをれ』 |
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三六 これらの起ろうとしているすべての事からのがれて、人の子の前に立つことができるように、絶えず目をさまして祈っていなさい」。 |
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三七 イエス晝は殿にて教へ夜は出て橄欖と云る山に宿ぬ |
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三七 イエス晝は宮にてヘへ、夜は出でてオリブといふ山に宿りたまふ。 |
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三七 イエスは昼のあいだは宮で教え、夜には出て行ってオリブという山で夜をすごしておられた。 |
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三八 民みな彼に聽んとて朝はやく殿に來れり |
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三八 民はみな御ヘを聽かんとて、朝とく宮にゆき、御許に集れり。 |
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三八 民衆はみな、み教えを聞こうとして、いつも朝早く宮に行き、イエスのもとに集まった。 |
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22章 |
一 逾越と云る除酵節近けり |
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一 さて過越といふ除酵祭、近づけり。 |
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一 さて、過越といわれている除酵祭が近づいた。 |
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二 祭司の長學者たち如何してかイエスを殺さんと窺ふ但民を畏たり |
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二 祭司長。學者らイエスを殺さんとし、その手段いかにと求む、民を懼れたればなり。 |
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二 祭司長たちや律法学者たちは、どうかしてイエスを殺そうと計っていた。民衆を恐れていたからである。 |
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三 偖サタン十二の中のイスカリオテと稱るユダに入ぬ |
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三 時にサタン、十二の一人なるイスカリオテと稱ふるユダに入る。 |
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三 そのとき、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれていたユダに、サタンがはいった。 |
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四 かれ祭司の長たちと殿司等に往如何してかイエスを付さんと語ければ |
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四 ユダ乃ち祭司長・宮守頭どもに往きて、イエスを如何して付さんと議りたれば、 |
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四 すなわち、彼は祭司長たちや宮守がしらたちのところへ行って、どうしてイエスを彼らに渡そうかと、その方法について協議した。 |
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五 彼等喜びて銀子を予んと約す |
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五 彼ら喜びて銀を與へんと約す。 |
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五 彼らは喜んで、ユダに金を与える取決めをした。 |
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六 ユダ諾ひて人々の居ざる時にイエスを付さんと機を窺へり |
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六 ユダ諾ひて群衆の居らぬ時にイエスを付さんと好き機をうかがふ。 |
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六 ユダはそれを承諾した。そして、群衆のいないときにイエスを引き渡そうと、機会をねらっていた。 |
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七 さて除酵節なる逾越の羔を殺べき日になりければ |
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七 過越の羔羊を屠るべき除酵祭の日、來りたれば、 |
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七 さて、過越の小羊をほふるべき除酵祭の日がきたので、 |
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八 イエス ペテロとヨハネを遣さんとて曰けるは往て我儕が食せん爲に逾越を備よ |
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八 イエス、ペテロとヨハネとを遣さんとして言ひたまふ『往きて我らの食せん爲に過越の備をなせ』 |
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八 イエスはペテロとヨハネとを使いに出して言われた、「行って、過越の食事ができるように準備をしなさい」。 |
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九 かれら答けるは何處に之を備んと爲か |
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九 彼ら言ふ『何處に備ふることを望み給ふか』 |
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九 彼らは言った、「どこに準備をしたらよいのですか」。 |
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十 イエス曰けるは城下に入ば水を盛たる瓶を挈る人なんぢらに遇べし其入ところの家に隨ひ往て |
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一〇 イエス言ひたまふ『視よ、キに入らば、水をいれたる瓶を持つ人なんぢらに遇ふべし、之に從ひゆき、その入る所の家にいりて、 |
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一〇 イエスは言われた、「市内にはいったら、水がめを持っている男に出会うであろう。その人がはいる家までついて行って、 |
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十一 家の主に師なんぢに云われ弟子と共に逾越を食すべき客房は何處に在やと曰 |
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一一 家の主人に「師なんぢに言ふ、われ弟子らと共に過越の食をなすべき座敷は何處なるか」と言へ。 |
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一一 その家の主人に言いなさい、『弟子たちと一緒に過越の食事をする座敷はどこか、と先生が言っておられます』。 |
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十二 然すれば彼そなへたる大なる樓房を示すべし其處に備よ |
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一二 さらば調へたる大なる二階座敷を見すべし。其處に備へよ』 |
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一二 すると、その主人は席の整えられた二階の広間を見せてくれるから、そこに用意をしなさい」。 |
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十三 彼等ゆきてイエスの曰給ひたる如く遇しかば逾越の備を爲り |
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一三 かれら出で往きて、イエスの言ひ給ひし如くなるを見て過越の設備をなせり。 |
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一三 弟子たちは出て行ってみると、イエスが言われたとおりであったので、過越の食事の用意をした。 |
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十四 時至ければイエス食に就ぬ又使徒も共に就たり |
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一四 時いたりてイエス席に著きたまひ、使徒たちも共に著く。 |
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一四 時間になったので、イエスは食卓につかれ、使徒たちも共に席についた。 |
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十五 イエス彼等に曰けるは我苦難を受る先に爾曹と共に此逾越を食すること大に願へり |
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一五 斯て彼らに言ひ給ふ『われ苦難の前に、なんぢらと共にこの過越の食をなすことを望みに望みたり。 |
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一五 イエスは彼らに言われた、「わたしは苦しみを受ける前に、あなたがたとこの過越の食事をしようと、切に望んでいた。 |
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十六 われ爾曹に吿ん之を~の國に成までは復これを食せじ |
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一六 われ汝らに吿ぐ、~の國にて過越の成就するまでは我復これを食せざるべし』 |
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一六 あなたがたに言って置くが、神の国で過越が成就する時までは、わたしは二度と、この過越の食事をすることはない」。 |
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十七 イエス杯をとり謝して曰けるは之を取て互に分よ |
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一七 かくて酒杯を受け、かつ謝して言ひ給ふ『これを取りて互に分ち飮め。 |
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一七 そして杯を取り、感謝して言われた、「これを取って、互に分けて飲め。 |
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十八 我なんぢらに吿ん~の國の來るまでは葡萄より造しものを飮じ |
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一八 われ汝らに吿ぐ、~の國の來るまでは、われ今よりのち葡萄の果より成るものを飮まじ』 |
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一八 あなたがたに言っておくが、今からのち神の国が来るまでは、わたしはぶどうの実から造ったものを、いっさい飲まない」。 |
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十九 またパンをとり謝して擘かれらに予て曰けるは此は爾曹の爲に予るわが身體なり我を記ん爲に此を行 |
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一九 またパンを取り謝してさき、弟子たちに與へて言ひ給ふ『これは汝らの爲に與ふる我が體なり。我が記念として之を行へ』 |
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一九 またパンを取り、感謝してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「これは、あなたがたのために与えるわたしのからだである。わたしを記念するため、このように行いなさい」。 |
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二十 また食してのち杯をとり曰けるは此杯は爾曹の爲に流す我血にして立る所の新約なり |
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二〇 夕餐ののち酒杯をも然して言ひ給ふ『この酒杯は汝らの爲に流す我が血によりて立つる新しき契約なり。 |
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二〇 食事ののち、杯も同じ様にして言われた、「この杯は、あなたがたのために流すわたしの血で立てられる新しい契約である。 |
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二一 夫われを賣す者の手は我と共に案にあり |
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二一 然れど視よ、我を賣る者の手、われと共に食卓の上にあり、 |
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二一 しかし、そこに、わたしを裏切る者が、わたしと一緒に食卓に手を置いている。 |
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二二 人の子は果して定られたる如く逝ん然ども人の子を賣す人は禍なる哉 |
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二二 實に人の子は、定められたる如く逝くなり。然れど之をうる者は禍害なるかな』 |
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二二 人の子は定められたとおりに、去って行く。しかし人の子を裏切るその人は、わざわいである」。 |
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二三 かれら此事を爲ん者は誰なる乎と互に問ぬ |
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二三 弟子たち己らの中にて此の事をなす者は、誰ならんと互に問ひ始む。 |
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二三 弟子たちは、自分たちのうちだれが、そんな事をしようとしているのだろうと、互に論じはじめた。 |
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二四 また彼等の中にて長たる者は誰なるかと互の爭ありき |
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二四 また彼らの間に己らの中たれか大ならんとの爭論おこりたれば、 |
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二四 それから、自分たちの中でだれがいちばん偉いだろうかと言って、争論が彼らの間に、起った。 |
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二五 イエス彼等に曰けるは異邦人の王は其民を支配す又その上に權を秉者は恩を施す者と稱らる |
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二五 イエス言ひたまふ『異邦人の王は、その民を宰どり、また民を支配する者は、恩人と稱へらる。 |
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二五 そこでイエスが言われた、「異邦の王たちはその民の上に君臨し、また、権力をふるっている者たちは恩人と呼ばれる。 |
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|
二六 然ども爾曹は如是すべからず爾曹のうち大なる者は幼が如く首たる者は役る者の如なるべし |
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二六 然れど汝らは然あらざれ、汝等のうち大なる者は若き者のごとく、頭たる者は事ふる者の如くなれ。 |
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二六 しかし、あなたがたは、そうであってはならない。かえって、あなたがたの中でいちばん偉い人はいちばん若い者のように、指導する人は仕える者のようになるべきである。 |
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二七 食に就る者と事る者と孰か大なる食に就る者ならずや然ども我は爾曹の中に事る者の如し |
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二七 食事の席に著く者と事ふる者とは、何れか大なる。食事の席に著く者ならずや、然れど我は汝らの中にて事ふる者のごとし。 |
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二七 食卓につく人と給仕する者と、どちらが偉いのか。食卓につく人の方ではないか。しかし、わたしはあなたがたの中で、給仕をする者のようにしている。 |
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二八 わが患難に於て我と偕に居し者は爾曹なり |
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二八 汝らは我が甞試のうちに絕えず我とともに居りし者なれば、 |
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二八 あなたがたは、わたしの試錬のあいだ、わたしと一緒に最後まで忍んでくれた人たちである。 |
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二九 我父の我に任ぜし如く我も爾曹に國を任ずべし |
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二九 わが父の我に任じ給へるごとく、我も亦なんぢらに國を任ず。 |
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二九 それで、わたしの父が国の支配をわたしにゆだねてくださったように、わたしもそれをあなたがたにゆだね、 |
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三十 これ爾曹わが國に於て我案に食飮し且位に坐してイスラエルの十二の支派を鞫んが爲也 |
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三〇 これ汝らの我が國にて我が食卓に飮食し、かつ座位に坐してイスラエルの十二の族を審かん爲なり。 |
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三〇 わたしの国で食卓について飲み食いをさせ、また位に座してイスラエルの十二の部族をさばかせるであろう。 |
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三一 主また曰けるはシモンよシモンよサタン爾曹を索めて麥の如く簸んとす |
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三一 シモン、シモン、視よ、サタン汝らを麥のごとく篩はんとて請ひ得たり。 |
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三一 シモン、シモン、見よ、サタンはあなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って許された。 |
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三一 然ども爾の信仰絶ざるやう爾の爲に祈れり爾歸ん時其兄弟を竪せよ |
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三二 然れど我なんぢの爲にその信仰の失せぬやうに祈りたり、なんぢ立ち歸りてのち兄弟たちを堅うせよ』 |
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三二 しかし、わたしはあなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈った。それで、あなたが立ち直ったときには、兄弟たちを力づけてやりなさい」。 |
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三三 シモン曰けるは主よ我獄にまでも死にまでも爾と共に往んと心を定たり |
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三三 シモン言ふ『主よ、我は汝とともに獄にまでも、死にまでも往かんと覺悟せり』 |
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三三 シモンが言った、「主よ、わたしは獄にでも、また死に至るまでも、あなたとご一緒に行く覚悟です」。 |
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三四 イエス曰けるはペテロ我なんぢに吿ん今日鷄なかざる前に爾三次われを識ずと言ん |
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三四 イエス言ひ給ふ『ペテロよ我なんぢに吿ぐ、今日なんぢ三度われを知らずと否むまでは雞鳴かざるべし』 |
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三四 するとイエスが言われた、「ペテロよ、あなたに言っておく。きょう、鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」。 |
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三五 又彼等に曰けるは我財布、旅袋、履をも帶せで爾曹を遣しゝとき事の缺たること有しや答けるは無りき |
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三五 斯て弟子たちに言ひ給ふ『財布・囊・鞋をも持たせずして、汝らを遣ししとき、缺けたる所ありしや』彼ら言ふ『無かりき』 |
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三五 そして彼らに言われた、「わたしが財布も袋もくつも持たせずにあなたがたをつかわしたとき、何かこまったことがあったか」。彼らは、「いいえ、何もありませんでした」と答えた。 |
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三六 イエス彼等に曰けるは今は財布ある者は之をとれ旅袋ある者も亦然り此等を有ぬ者は衣服を賣て刃を買べし |
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三六 イエス言ひ給ふ『されど今は財布ある者は之を取れ、囊ある者も然すべし。また劒なき者は衣を賣りて劒を買へ。 |
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三六 そこで言われた、「しかし今は、財布のあるものは、それを持って行け。袋も同様に持って行け。また、つるぎのない者は、自分の上着を売って、それを買うがよい。 |
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三七 我なんぢらに吿ん彼は罪人の中に算られて有しと錄されたる此言は我に於て應らるべし蓋われを指たる事は必ず成らる可れば也 |
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三七 われ汝らに吿ぐ「かれは愆人と共に數へられたり」と錄されたるは、我が身に成遂げらるべし。凡そ我に係はる事は成遂げらるればなり』 |
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三七 あなたがたに言うが、『彼は罪人のひとりに数えられた』としるしてあることは、わたしの身に成しとげられねばならない。そうだ、わたしに係わることは成就している」。 |
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三八 彼ら曰けるは主見よ此に二の刃ありイエス彼等に曰けるは足り |
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三八 弟子たち言ふ『主、見たまへ、玆に劒二振あり』イエス言ひたまふ『足れり』 |
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三八 弟子たちが言った、「主よ、ごらんなさい、ここにつるぎが二振りございます」。イエスは言われた、「それでよい」。 |
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三九 イエス出て例の如く橄欖の山に往けるに其弟子も從へり |
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三九 遂に出でて常のごとく、オリブ山に往き給へば、弟子たちも從ふ。 |
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三九 イエスは出て、いつものようにオリブ山に行かれると、弟子たちも従って行った。 |
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四十 其處に至て彼等に曰けるは誘惑に入ざるやう祈れ |
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四〇 其處に至りて彼らに言ひたまふ『誘惑に入らぬやうに祈れ』 |
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四〇 いつもの場所に着いてから、彼らに言われた、「誘惑に陥らないように祈りなさい」。 |
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四一 イエス彼等を離て石の投らるゝほど隔り曲膝いのり曰けるは |
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四一 斯て自らは石の投げらるる程かれらより隔たり、跪づきて祈り言ひたまふ、 |
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四一 そしてご自分は、石を投げてとどくほど離れたところへ退き、ひざまずいて、祈って言われた、 |
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四二 父よ若し聖旨に肯ば此杯を我より離ち給へ然ども我意に非たゞ聖旨のまゝに成たまへ |
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四二 『父よ、御旨ならば、比の酒杯を我より取り去りたまへ、然れど我が意にあらずして御意の成らんことを願ふ』 |
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四二 「父よ、みこころならば、どうぞ、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの思いではなく、みこころが成るようにしてください」。 |
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四三 使者天より彼に現れて健壯を添ぬ |
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四三 時に天より御使、現れて、イエスに力を添ふ。 |
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四三 そのとき、御使が天からあらわれてイエスを力づけた。 |
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四四 イエス痛く哀み切に祈れり某汗は血の滴りの如く地に下たり |
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四四 イエス悲しみ迫り、いよいよ切に祈り給へば、汗は地上に落つる血の雫の如し。 |
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四四 イエスは苦しみもだえて、ますます切に祈られた。そして、その汗が血のしたたりのように地に落ちた。 |
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四五 祈禱より起て弟子に來り彼等が憂て寢れるを見 |
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四五 祈を了へ、起ちて弟子たちの許にきたり、その憂によりて眠れるを見て言ひたまふ、 |
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四五 祈を終えて立ちあがり、弟子たちのところへ行かれると、彼らが悲しみのはて寝入っているのをごらんになって |
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四六 曰けるは何ぞ寢るや起て誘惑に入ざるやう祈れ |
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四六 『なんぞ眠るか、起て誘惑に入らぬやうに祈れ』 |
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四六 言われた、「なぜ眠っているのか。誘惑に陥らないように、起きて祈っていなさい」。 |
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四七 如此いへるとき許多の人々きたる又十二の一人なるユダと云る者其に先ちてイエスに接吻せんと近よれり |
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四七 なは語りゐ給ふとき、視よ、群衆あらはれ、十二の一人なるユダ先だち來り、イエスに接吻せんとて近寄りたれば、 |
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四七 イエスがまだそう言っておられるうちに、そこに群衆が現れ、十二弟子のひとりでユダという者が先頭に立って、イエスに接吻しようとして近づいてきた。 |
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四八 イエス曰けるはユダ爾は接吻をもて人の子を賣す乎 |
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四八 イエス言ひ給ふ『ユダ、なんぢは接吻をもて人の子を賣るか』 |
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四八 そこでイエスは言われた、「ユダ、あなたは接吻をもって人の子を裏切るのか」。 |
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四九 その側に居たる者等事の及んとするを見て曰けるは主よ我儕刃をもて擊べき乎 |
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四九 御側に居る者ども事の及ばんとするを見て言ふ『主よ、われら劒をもて擊つべきか』 |
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四九 イエスのそばにいた人たちは、事のなりゆきを見て、「主よ、つるぎで切りつけてやりましょうか」と言って、 |
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五十 其中の一人祭司の長の僕を擊て其右の耳を削落せり |
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五〇 その中の一人、大祭司の僕を擊ちて、右の耳を切り落せり。 |
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五〇 そのうちのひとりが、祭司長の僕に切りつけ、その右の耳を切り落した。 |
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五一 イエス答て之を釋せと曰その耳に捫て醫したり |
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五一 イエス答へて言ひたまふ『之にてゆるせ』而して僕の耳に手をつけて醫し給ふ。 |
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五一 イエスはこれに対して言われた、「それだけでやめなさい」。そして、その僕の耳に手を触れて、おいやしになった。 |
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五一 イエス此に來し祭司の長殿司および長老等に曰けるは爾曹刃と棒とを持來り强盜に當が如する乎 |
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五二 かくて己に向ひて來れる祭司長・宮守頭・長老らに言ひ給ふ『なんぢら强盜に向ふごとく劒と棒とを持ちて出できたるか。 |
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五二 それから、自分にむかって来る祭司長、宮守がしら、長老たちに対して言われた、「あなたがたは、強盗にむかうように剣や棒を持って出てきたのか。 |
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五三 われ日々に爾曹と偕に殿に在し時は我に手を措こと無りき然るに今は爾曹の時かつK暗の勢なり |
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五三 我は日々なんぢらと共に宮に居りしに我が上に手を伸べざりき。然れど今は汝らの時、また暗Kの權威なり』 |
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五三 毎日あなたがたと一緒に宮にいた時には、わたしに手をかけなかった。だが、今はあなたがたの時、また、やみの支配の時である」。 |
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五四 彼等イエスを執へ曳て祭司の長の家に携往りペテロ遙に從ひぬ |
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五四 遂に人々イエスを捕ヘて、大祭司の家に曳きゆく、ペテロ遠く離れて從ふ。 |
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五四 それから人々はイエスを捕え、ひっぱって大祭司の邸宅へつれて行った。ペテロは遠くからついて行った。 |
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五五 人々中庭のうちに火を燒て同に坐しければペテロも其中に坐したり |
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五五 人々、中庭のうちに火を焚きて、ゥ共に坐したれば、ペテロもその中に坐す。 |
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五五 人々は中庭のまん中に火をたいて、一緒にすわっていたので、ペテロもその中にすわった。 |
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五六 或婢かれが火の傍に坐せるを見これを熟視て曰けるは此人も彼と偕に在し |
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五六 或る婢女ペテロの火の光を受けて坐し居るを見、これに目を注ぎて言ふ『この人も彼と偕にゐたり』 |
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五六 すると、ある女中が、彼が火のそばにすわっているのを見、彼を見つめて、「この人もイエスと一緒にいました」と言った。 |
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五七 ペテロ承ずして女よ我これを識ずと云り |
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五七 ペテロ肯はずして言ふ『をんなよ、我は彼を知らず』 |
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五七 ペテロはそれを打ち消して、「わたしはその人を知らない」と言った。 |
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五八 頃刻して他の人も亦見て曰けるは爾も彼等の一人なりペテロ曰けるは人よ我は然ず |
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五八 暫くして他の者ペテロを見て言ふ『なんぢも彼の黨與なり』ペテロ言ふ『人よ、然らず』 |
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五八 しばらくして、ほかの人がペテロを見て言った、「あなたもあの仲間のひとりだ」。するとペテロは言った、「いや、それはちがう」。 |
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五九 約そ一時ほど過て復ほかの人力言けるは誠に此人も彼と偕に在し是ガリラヤの人なれば也 |
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五九 一時ばかりして又ほかの男、言ひ張りて言ふ『まさしく此の人も彼とともに在りき、是ガリラヤ人なり』 |
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五九 約一時間たってから、またほかの者が言い張った、「たしかにこの人もイエスと一緒だった。この人もガリラヤ人なのだから」。 |
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六十 ペテロ曰けるは人よ我なんぢの言ところを識ずと言も果ず忽ち鷄鳴ぬ |
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六〇 ペテロ言ふ『人よ、我なんぢの言ふことを知らず』なほ言ひ終へぬに頓て雞鳴きぬ。 |
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六〇 ペテロは言った、「あなたの言っていることは、わたしにわからない」。すると、彼がまだ言い終らぬうちに、たちまち、鶏が鳴いた。 |
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六一 主身を回てしペテロを見たまへり今日鷄なく前に三次われを識ずと言んと主の曰たまひし言をペテロ憶起し |
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六一 主、振反りてペテロに目をとめ給ふ。ここにペテロ主の『今日にはとり鳴く前に、なんぢ三度われを否まん』と言ひ給ひし御言を憶ひいだし、 |
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六一 主は振りむいてペテロを見つめられた。そのときペテロは、「きょう、鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われた主のお言葉を思い出した。 |
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六二 外へ出て痛く哭り |
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六二 外に出でて甚く泣けり。 |
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六二 そして外へ出て、激しく泣いた。 |
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六三 イエスを護れる者ども嘲弄して彼を撲 |
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六三 守る者どもイエスを嘲弄し、之を打ち、 |
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六三 イエスを監視していた人たちは、イエスを嘲弄し、打ちたたき、 |
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六四 某目を掩ひ問て曰けるは爾を撲者は誰なるか預言せよ |
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六四 その目を蔽ひ問ひて言ふ『預言せよ、汝を擊ちし者は誰なるか』 |
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六四 目かくしをして、「言いあててみよ。打ったのは、だれか」ときいたりした。 |
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六五 また多端の事を言て之を誚れり |
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六五 この他なほ多くのことを言ひて、譏れり。 |
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六五 そのほか、いろいろな事を言って、イエスを愚弄した。 |
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六六 平旦に民の長老、祭司の長、學者ども集りてイエスを集議所に曳往て |
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六六 夜明になりて民の長老・祭司長・學者ら相集り、イエスをその議會に曳き出して言ふ、 |
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六六 夜が明けたとき、人民の長老、祭司長たち、律法学者たちが集まり、イエスを議会に引き出して言った、 |
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六七 曰けるは爾もしキリストならば我儕に吿よイエス曰けるは假令われ爾曹に言とも信ぜざるべし |
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六七 『なんぢ若しキリストならば、我らに言へ』イエス言ひ給ふ『われ言ふとも汝ら信ぜじ、 |
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六七 「あなたがキリストなら、そう言ってもらいたい」。イエスは言われた、「わたしが言っても、あなたがたは信じないだろう。 |
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六八 又たとひ我なんぢらに詰とも答ざるべし |
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六八 又われ問ふとも汝ら答へじ。 |
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六八 また、わたしがたずねても、答えないだろう。 |
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六九 今より後人の子は大權ある~の右に坐せん |
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六九 然れど人の子は今よりのち~の能力の右に坐せん』 |
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六九 しかし、人の子は今からのち、全能の神の右に座するであろう」。 |
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七十 皆いひけるは然ば爾は~の子なるかイエス曰けるは爾曹が言る如く我は是なり |
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七〇 皆いふ『されば汝は~の子なるか』答へ給ふ『なんぢらの言ふごとく我はそれなり』 |
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七〇 彼らは言った、「では、あなたは神の子なのか」。イエスは言われた、「あなたがたの言うとおりである」。 |
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七一 彼等いひけるは猶證據を須んや我儕みづから某口より聞り |
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七一 彼ら言ふ『何ぞなほ他に證據を求めんや。我ら自らその口より聞けり』 |
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七一 すると彼らは言った、「これ以上、なんの証拠がいるか。われわれは直接彼の口から聞いたのだから」。 |
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23章 |
一 衆人みな起てイエスをピラトに携ゆき |
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一 民衆みな起ちて、イエスをピラトの前に曳きゆき、 |
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一 群衆はみな立ちあがって、イエスをピラトのところへ連れて行った。 |
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二 之を訟いひけるは我儕この人が民を惑し稅をカイザルに納ることを禁み自ら王なるキリストと稱るを見たり |
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二 訴へ出でて言ふ『われら此の人が、わが國の民を惑し、貢をカイザルに納むるを禁じ、かつ自ら王なるキリストと稱ふるを認めたり』 |
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二 そして訴え出て言った、「わたしたちは、この人が国民を惑わし、貢をカイザルに納めることを禁じ、また自分こそ王なるキリストだと、となえているところを目撃しました」。 |
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三 ピラト イエスに問て曰けるは爾はユダヤ人の王なるか答けるは爾が言る如し |
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三 ピラト、イエスに問ひて言ふ『なんぢはユダヤ人の王なるか』答へて言ひ給ふ『なんぢの言ふが如し』 |
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三 ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは「そのとおりである」とお答えになった。 |
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四 ピラト祭司の長等と衆人に曰けるは我この人に於て罪あるを見ず |
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四 ピラト祭司長らと群衆とに言ふ『われ此の人に愆あるを見ず』 |
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四 そこでピラトは祭司長たちと群衆とにむかって言った、「わたしはこの人になんの罪もみとめない」。 |
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五 彼等ますます極力いひけるは彼はガリラヤより始て遍くユダヤを教へ此處まで來て民を亂せり |
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五 彼等ますます言ひ募り『かれはユダヤ全國にヘをなして民を騷がし、ガリラヤより始めて、此處に至る』と言ふ。 |
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五 ところが彼らは、ますます言いつのってやまなかった、「彼は、ガリラヤからはじめてこの所まで、ユダヤ全国にわたって教え、民衆を煽動しているのです」。 |
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六 ピラト ガリラヤと聞て此人はガリラヤ人なる乎を問 |
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六 ピラト之を聞き、そのガリラヤ人なるかを問ひて、 |
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六 ピラトはこれを聞いて、この人はガリラヤ人かと尋ね、 |
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七 其ヘロデの所管なるを知て之をヘロデに遣る此時ヘロデもエルサレムに在しが |
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七 ヘロデの權下の者なるを知り、ヘロデ此の頃エルサレムに居たれば、イエスをその許に送れり。 |
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七 そしてヘロデの支配下のものであることを確かめたので、ちょうどこのころ、ヘロデがエルサレムにいたのをさいわい、そちらへイエスを送りとどけた。 |
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八 イエスを見て甚だ喜べり蓋各樣なる彼が風聲を聞て久く之を見んことを欲ひ且その奇異なる事を見んと望ゐたれば也 |
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八 ヘロデ、イエスを見て甚く喜ぶ。これは彼に就きて聞く所ありたれば、久しく逢はんことを欲し、何をか徵を行ふを見んと望み居たる故なり。 |
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八 ヘロデはイエスを見て非常に喜んだ。それは、かねてイエスのことを聞いていたので、会って見たいと長いあいだ思っていたし、またイエスが何か奇跡を行うのを見たいと望んでいたからである。 |
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九 是故に多言を以て問けれどもイエス何をも答ざりき |
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九 斯て多くの言をもて問ひたれど、イエス何をも答へ給はず。 |
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九 それで、いろいろと質問を試みたが、イエスは何もお答えにならなかった。 |
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十 祭司の長學者たち側に立て切に彼を訟ぬ |
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一〇 祭司長・學者ら起ちて激甚くイエスを訴ふ。 |
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一〇 祭司長たちと律法学者たちとは立って、激しい語調でイエスを訴えた。 |
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十一 ヘロデその士卒と共に彼を藐視嘲弄して華服を衣せ復ピラトに遣れり |
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一一 ヘロデその兵卒と共にイエスを侮り、かつ嘲弄し、華美なる衣を著せて、ピラトに返す。 |
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一一 またヘロデはその兵卒どもと一緒になって、イエスを侮辱したり嘲弄したりしたあげく、はなやかな着物を着せてピラトへ送りかえした。 |
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十二 ピラトとヘロデ先には仇たりしが當日たがひに親を爲り |
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一二 ヘロデとピラトと前には仇たりしが、此の日たがひに親しくなれり。 |
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一二 ヘロデとピラトとは以前は互に敵視していたが、この日に親しい仲になった。 |
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十三 ピラト祭司の長有司および民等を呼あつめて |
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一三 ピラト、祭司長らと司らと民とを呼び集めて言ふ、 |
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一三 ピラトは、祭司長たちと役人たちと民衆とを、呼び集めて言った、 |
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十四 曰けるは爾曹この人を我に携來りて民を亂したる者なりと爲せり我なんぢらが訟る所を以て爾曹の前に鞫ども其罪あるを見ず |
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一四 『汝らこの人を民を惑す者として曳き來れり。視よ、われ汝らの前にて訊したれど、其の訴ふる所に就きて、この人に愆あるを見ず。 |
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一四 「おまえたちは、この人を民衆を惑わすものとしてわたしのところに連れてきたので、おまえたちの面前でしらべたが、訴え出ているような罪は、この人に少しもみとめられなかった。 |
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十五 ヘロデも亦然り爾曹をヘロデに遣せど彼もイエスが行事の死罪に當を見ざりき |
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一五 ヘロデも亦然り、彼を我らに返したり。視よ、彼は死に當るべき業を爲さざりき。 |
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一五 ヘロデもまたみとめなかった。現に彼はイエスをわれわれに送りかえしてきた。この人はなんら死に当るようなことはしていないのである。 |
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十六 故にわれ笞ちて之を釋さん |
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一六 然れば懲しめて之を赦さん』 |
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一六 だから、彼をむち打ってから、ゆるしてやることにしよう」。 |
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十七 蓋この節期に必ず一人を釋こと有ばなり |
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一七 |
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一七 〔祭ごとにピラトがひとりの囚人をゆるしてやることになっていた。〕 |
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十八 彼等みな一齊よばはりて此人を除きバラバを我儕に釋せと曰 |
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一八 民衆ともに叫びて言ふ『この人を除け、我らにバラバを赦せ』 |
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一八 ところが、彼らはいっせいに叫んで言った、「その人を殺せ。バラバをゆるしてくれ」。 |
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十九 彼は城下に一揆を起し人を殺して獄に入し者なり |
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一九 此のバラバはキに起りし一揆と殺人との故によりて獄に入れられたる者なり。 |
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一九 このバラバは、都で起った暴動と殺人とのかどで、獄に投ぜられていた者である。 |
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二十 故にピラトはイエスを釋さんと欲ひ復かれらに曰しかど |
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二〇 ピラトはイエスを赦さんと欲して、再び彼らに吿げたれど、 |
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二〇 ピラトはイエスをゆるしてやりたいと思って、もう一度かれらに呼びかけた。 |
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二一 かれら呼りて之を十字架に釘よ十字架に釘よと曰 |
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二一 彼ら叫びて『十字架につけよ、十字架につけよ』と言ふ。 |
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二一 しかし彼らは、わめきたてて「十字架につけよ、彼を十字架につけよ」と言いつづけた。 |
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二二 ピラト三次いひけるは彼は何の惡事を行しや我いまだ彼の死罪あるを見ざれば笞ちて釋さん |
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二二 ピラト三度まで『彼は何の惡事を爲ししか、我その死に當るべき業を見ず、故に懲しめて赦さん』と言ふ。 |
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二二 ピラトは三度目に彼らにむかって言った、「では、この人は、いったい、どんな悪事をしたのか。彼には死に当る罪は全くみとめられなかった。だから、むち打ってから彼をゆるしてやることにしよう」。 |
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二三 彼等く聲をたてゝ彼を十字架に釘んと言募れり遂に彼等と祭司の長の聲勝たり |
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二三 されど人々、大聲をあげ迫りて、十字架につけんことを求めたれば、遂にその聲勝てり。 |
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二三 ところが、彼らは大声をあげて詰め寄り、イエスを十字架につけるように要求した。そして、その声が勝った。 |
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二四 ピラトその求の如く擬て |
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二四 爰にピラトその求のごとく爲べしと言ひわたし、 |
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二四 ピラトはついに彼らの願いどおりにすることに決定した。 |
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二五 彼等が求る一揆を起し人を殺して獄に入たる者を釋し其意に任せてイエスを付せり |
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二五 その求むる隨にかの一揆と殺人との故によりて、獄に入れられたる者を赦し、イエスを付して彼らの心の隨ならしめたり。 |
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二五 そして、暴動と殺人とのかどで獄に投ぜられた者の方を、彼らの要求に応じてゆるしてやり、イエスの方は彼らに引き渡して、その意のままにまかせた。 |
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二六 彼等イエスを曳往とき田間より出來れるクレネのシモンと云る者を執へ其に十字架を負せてイエスに從はせたり |
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二六 人々イエスを曳きゆく時、シモンといふクレネ人の田舍より來るを執へ、十字架を負はせてイエスの後に從はしむ。 |
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二六 彼らがイエスをひいてゆく途中、シモンというクレネ人が郊外から出てきたのを捕えて十字架を負わせ、それをになってイエスのあとから行かせた。 |
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二七 衆の民および婦等も從ふ婦等は彼を哭哀めり |
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二七 民の大なる群と歎き悲しめる女たちの群と之に從ふ。 |
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二七 大ぜいの民衆と、悲しみ嘆いてやまない女たちの群れとが、イエスに従って行った。 |
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二八 イエス彼等を顧いひけるはエルサレムの女子よ我爲に哭なかれ惟おのれと己が子の爲に哭 |
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二八 イエス振反りて女たちに言ひ給ふ『エルサレムの娘よ、わが爲に泣くな、ただ己がため、己が子のために泣け。 |
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二八 イエスは女たちの方に振りむいて言われた、「エルサレムの娘たちよ、わたしのために泣くな。むしろ、あなたがた自身のため、また自分の子供たちのために泣くがよい。 |
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二九 產ざる者いまだ孕ざるの胎いまだ哺せざるの乳はなりと曰ん日きたらん |
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二九 視よ「石婦・兒產まぬ腹・飮ませぬ乳は幸なり」と言ふ日きたらん。 |
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二九 『不妊の女と子を産まなかった胎と、ふくませなかった乳房とは、さいわいだ』と言う日が、いまに来る。 |
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三十 當時人々山に對て我儕の上に壓よ陵に對て我儕を掩へと曰ん |
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三〇 その時ひとびと「山に向ひて我らの上に倒れよ、岡に向ひて我らを掩へ」と言ひ出でん。 |
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三〇 そのとき、人々は山にむかって、われわれの上に倒れかかれと言い、また丘にむかって、われわれにおおいかぶされと言い出すであろう。 |
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三一 もし木にさへ如此なさば枯木は如何せられん |
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三一 もし樹に斯く爲さば、枯樹は如何にせられん』 |
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三一 もし、生木でさえもそうされるなら、枯木はどうされることであろう」。 |
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三二 又他に二人の罪人をイエスと偕に死罪に處はんとて曳往り |
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三二 また他に二人の惡人をも、死罪に行ほんとてイエスと共に曳きゆく。 |
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三二 さて、イエスと共に刑を受けるために、ほかにふたりの犯罪人も引かれていった。 |
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三三 彼等クラニオンと云る所に至りて此にイエス及び罪人を十字架に釘ぬ一人をイエスの右一人を左に置 |
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三三 髑髏といふ處に到りて、イエスを十字架につけ、また惡人の一人をその右、一人をその左に十字架につく。 |
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三三 されこうべと呼ばれている所に着くと、人々はそこでイエスを十字架につけ、犯罪人たちも、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけた。 |
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三四 イエス曰けるは父よ彼等を赦し給へ其爲ところを知ざるが故なり彼等鬮をしてイエスの衣服を分つ |
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三四 斯てイエス言ひたまふ『父よ、彼らを赦し給へ。その爲す所を知らざればなり』彼らイエスの衣を分ちて鬮取にせり、 |
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三四 そのとき、イエスは言われた、「父よ、彼らをおゆるしください。彼らは何をしているのか、わからずにいるのです」。人々はイエスの着物をくじ引きで分け合った。 |
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三五 人々立てイエスを見たり有司も亦嘲哂ふて曰けるは彼は他人を救へり若キリスト~の選たる者ならば自己を救べし |
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三五 民は立ちて見ゐたり。司たちも嘲りて言ふ『かれは他人を救へり、若し~の選び給ひしキリストならば巳をも救へかし』 |
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三五 民衆は立って見ていた。役人たちもあざ笑って言った、「彼は他人を救った。もし彼が神のキリスト、選ばれた者であるなら、自分自身を救うがよい」。 |
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三六 兵卒も亦かれを嘲弄し來り酢を予て |
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三六 兵卒どもも嘲弄しつつ近よりて酸き葡萄酒をさし出して言ふ、 |
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三六 兵卒どももイエスをののしり、近寄ってきて酢いぶどう酒をさし出して言った、 |
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三七 爾もしユダヤ人の王ならば自己を救へと曰り |
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三七 『なんぢ若しユダヤ人の王ならば、己を救へ』 |
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三七 「あなたがユダヤ人の王なら、自分を救いなさい」。 |
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三八 又ギリシヤ ロマ ヘブルの文字にて此はユダヤ人の王なりと書る罪標を其上に建たり |
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三八 又イエスの上には『此はユダヤ人の王なり』との罪標あり。 |
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三八 イエスの上には、「これはユダヤ人の王」と書いた札がかけてあった。 |
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三九 懸られたる罪人の一人イエスを譏て曰けるは爾もしキリストならば己と我儕を救へ |
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三九 十字架に懸けられたる惡人の一人、イエスを譏りて言ふ『なんぢはキリストならずや、己と我らとを救へ』 |
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三九 十字架にかけられた犯罪人のひとりが、「あなたはキリストではないか。それなら、自分を救い、またわれわれも救ってみよ」と、イエスに悪口を言いつづけた。 |
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四十 他の一人こたへて彼を責め曰けるは爾おなじく審判を受ながら~を畏ざる乎 |
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四〇 他の者これに答へ禁めて言ふ『なんぢ同じく罪に定められながら、~を畏れぬか。 |
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四〇 もうひとりは、それをたしなめて言った、「おまえは同じ刑を受けていながら、神を恐れないのか。 |
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四一 我儕は當然なり行との報を受なれど此人は何も不是事は行ざりし也 |
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四一 我らは爲しし事の報を受くるなれば當然なり。然れど此の人は何の不善をも爲さざりき』 |
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四一 お互は自分のやった事のむくいを受けているのだから、こうなったのは当然だ。しかし、このかたは何も悪いことをしたのではない」。 |
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四二 斯てイエスに曰けるは主よ爾國に來ん時我を憶たまへ |
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四二 また言ふ『イエスよ、御國に入り給ふとき、我を憶えたまへ』 |
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四二 そして言った、「イエスよ、あなたが御国の権威をもっておいでになる時には、わたしを思い出してください」。 |
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四三 イエス答けるは誠に我なんぢに吿ん今日なんぢは我と偕に樂園に在べし |
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四三 イエス言ひ給ふ『われ誠に汝に吿ぐ、今日なんぢは我と偕にパラダイスに在るべし』 |
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四三 イエスは言われた、「よく言っておくが、あなたはきょう、わたしと一緒にパラダイスにいるであろう」。 |
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四四 時約そ十二時ごろより三時に至まで遍く地のうへK暗と爲れり |
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四四 晝の十二時ごろ、日、光をうしなひ、地のうへ徧く暗くなりて、三時に及び、 |
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四四 時はもう昼の十二時ごろであったが、太陽は光を失い、全地は暗くなって、三時に及んだ。 |
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四五 日光くらみ殿の內の幔眞中より裂たり |
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四五 聖所の幕、眞中より裂けたり。 |
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四五 そして聖所の幕がまん中から裂けた。 |
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四六 イエス大聲に呼り曰けるは父よ我靈を爾の手に託く如此いひて氣絶ゆ |
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四六 イエス大聲に呼はりて言ひたまふ『父よ、わが靈を御手にゆだぬ』斯く言ひて息絕えたまふ。 |
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四六 そのとき、イエスは声高く叫んで言われた、「父よ、わたしの霊をみ手にゆだねます」。こう言ってついに息を引きとられた。 |
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四七 百夫の長この成し事を見て~を崇め曰けるは誠に此人は義人なりき |
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四七 百卒長この有りし事を見て、~を崇めて言ふ『實にこの人は義人なりき』 |
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四七 百卒長はこの有様を見て、神をあがめ、「ほんとうに、この人は正しい人であった」と言った。 |
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四八 之を觀んとて聚れる衆人みな此ありし事等を見て膺を拊て返れり |
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四八 これを見んとて集りたる群衆も、ありし事どもを見てみな胸を打ちつつ歸れり。 |
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四八 この光景を見に集まってきた群衆も、これらの出来事を見て、みな胸を打ちながら帰って行った。 |
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四九 イエスの相識の人々およびガリラヤより隨ひし婦ども遠く立て此等の事を見たり |
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四九 凡てイエスの相識の者およびガリラヤより從ひ來れる女たちも遙に立ちて此等のことを見たり。 |
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四九 すべてイエスを知っていた者や、ガリラヤから従ってきた女たちも、遠い所に立って、これらのことを見ていた。 |
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五十 議員たるヨセフと云る善かつ義なる人あり |
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五〇 議員にして善かつ義なるヨセフといふ人あり。 |
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五〇 ここに、ヨセフという議員がいたが、善良で正しい人であった。 |
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五一 彼等の評議と行爲を肯はざりき是はユダヤのアリマタヤの邑の人にて~の國を慕る者なり |
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五一 ─この人はかの評議と仕業とに與せざりき─ユダヤの町なるアリマタヤの者にて、~の國を待ちのぞめり。 |
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五一 この人はユダヤの町アリマタヤの出身で、神の国を待ち望んでいた。彼は議会の議決や行動には賛成していなかった。 |
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五二 此人ピラトに往イエスの屍を乞て |
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五二 此の人ピラトの許にゆき、イエスの屍體を乞ひ、 |
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五二 この人がピラトのところへ行って、イエスのからだの引取り方を願い出て、 |
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五三 之を取下し布にて裹いまだ人を葬し事なき石の鑿たる墓に置り |
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五三 これを取りおろし亞麻布にて包み巖に鑿りたる、未だ人を葬りし事なき墓に納めたり。 |
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五三 それを取りおろして亜麻布に包み、まだだれも葬ったことのない、岩を掘って造った墓に納めた。 |
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五四 此日は備節日なり且安息日近きぬ |
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五四 この日は準備日なり、かつ安息日近づきぬ。 |
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五四 この日は準備の日であって、安息日が始まりかけていた。 |
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五五 ガリラヤよりイエスと偕に來りし婦たち後に隨ひて其墓と屍の置れたる狀を見たり |
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五五 ガリラヤよりイエスと共に來りし女たち後に從ひ、その墓と屍體の納められたる樣とを見、 |
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五五 イエスと一緒にガリラヤからきた女たちは、あとについてきて、その墓を見、またイエスのからだが納められる様子を見とどけた。 |
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五六 彼等かへりて香物と香膏を備へ置て誡に從ひ安息日を休めり |
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五六 歸りて香料と香油とを備ふ。斯て誡命に遵ひて、安息日を休みたり。 |
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五六 そして帰って、香料と香油とを用意した。それからおきてに従って安息日を休んだ。 |
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24章 |
一 七日の首日の昧爽に此婦たち備置たる香物を携て墓に來しに他の婦等も偕に來れり |
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一 一週の初の日、朝まだき、女たち備へたる香料を携へて墓にゆく。 |
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一 週の初めの日、夜明け前に、女たちは用意しておいた香料を携えて、墓に行った。 |
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二 彼等石の墓より轉たりしを見て |
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二 然るに石の旣に墓より轉ばし除けあるを見、 |
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二 ところが、石が墓からころがしてあるので、 |
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三 入ければ主イエスの屍を見ず |
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三 內に入りたるに主イエスの屍體を見ず、 |
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三 中にはいってみると、主イエスのからだが見当らなかった。 |
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四 之が爲に躊躇をりしに輝る衣服を着たる二人その旁に立り |
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四 これが爲に狼狽へをりしに、視よ、輝ける衣を著たる二人の人その傍らに立てり。 |
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四 そのため途方にくれていると、見よ、輝いた衣を着たふたりの者が、彼らに現れた。 |
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五 かれら懼て面を地に伏ければ其人いひけるは爾曹何ぞ死たる者の中に生たる者を尋るや |
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五 女たち懼れて面を地に伏せたれば、その二人の者いふ『なんぞ死にし者どもの中に生ける者を尋ぬるか、 |
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五 女たちは驚き恐れて、顔を地に伏せていると、このふたりの者が言った、「あなたがたは、なぜ生きた方を死人の中にたずねているのか。 |
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六七 彼は此に在ず甦りたり彼ガリラヤに居しとき爾曹に語て人の子は必ず罪ある人の手に付され十字架に釘られ第三日に甦る可と云たりしを憶起よ |
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六 彼は此處に在さず、甦へり給へり。尙ガリラヤに居給へるとき、如何に語り給ひしかを憶ひ出でよ。 |
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六 そのかたは、ここにはおられない。よみがえられたのだ。まだガリラヤにおられたとき、あなたがたにお話しになったことを思い出しなさい。 |
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七 |
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七 即ち「人の子は必ず罪ある人の手に付され、十字架につけられ、かつ三日めに甦へるべし」と言ひ給へり』 |
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七 すなわち、人の子は必ず罪人らの手に渡され、十字架につけられ、そして三日目によみがえる、と仰せられたではないか」。 |
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八 彼等その言を憶いで |
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八 爰に彼らその御言を憶ひ出で、 |
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八 そこで女たちはその言葉を思い出し、 |
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九 墓より歸て此等の事をみな十一の弟子と他の弟子等に吿 |
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九 墓より歸りて、凡て此等のことを十一弟子および凡て他の弟子たちに吿ぐ。 |
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九 墓から帰って、これらいっさいのことを、十一弟子や、その他みんなの人に報告した。 |
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十 此等の事を使徒に吿たる者はマグダラのマリア ヨハンナ ヤコブの母なるマリア又他に偕に在し婦等なり |
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一〇 この女たちはマダダラのマリヤ、ヨハンナ及びヤコブの母マリヤなり、而して彼らと共に在りし他の女たちも、之を使徒たちに吿げたり。 |
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一〇 この女たちというのは、マグダラのマリヤ、ヨハンナ、およびヤコブの母マリヤであった。彼女たちと一緒にいたほかの女たちも、このことを使徒たちに話した。 |
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十一 使徒その語れるを虛誕と意ひて信ぜず |
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一一 使徒たちは其の言を妄語と思ひて、信ぜず。 |
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一一 ところが、使徒たちには、それが愚かな話のように思われて、それを信じなかった。 |
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十二 ペテロ起て趨り墓に往かゞまりて枲布のかたよせ在を見て其遇ところの事を奇みつゝ歸れり |
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一二 〔ペテロは起ちて墓に走りゆき、屈みて布のみあるを見、ありし事を怪しみつつ歸れり〕 |
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一二 〔ペテロは立って墓へ走って行き、かがんで中を見ると、亜麻布だけがそこにあったので、事の次第を不思議に思いながら帰って行った。〕 |
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十三 當日二人の弟子エルサレムより三里ばかり隔りたるヱマヲと云る村に往けるに |
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一三 視よ、この日二人の弟子、エルサレムより三里ばかり隔たりたるエマオといふ村に往きつつ、 |
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一三 この日、ふたりの弟子が、エルサレムから七マイルばかり離れたエマオという村へ行きながら、 |
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十四 互に此等の所遇どもを語あへり |
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一四 凡て有りし事どもを互に語りあふ、 |
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一四 このいっさいの出来事について互に語り合っていた。 |
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十五 語り論ずる時にイエス自ら近づきて偕に往り |
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一五 語り、かつ論じあふ程に、イエス自ら近づきて共に往き給ふ。 |
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一五 語り合い論じ合っていると、イエスご自身が近づいてきて、彼らと一緒に歩いて行かれた。 |
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十六 然ど彼等の目迷されて知ことを得ざりき |
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一六 されど彼らの目遮へられてイエスたるを認むること能はず。 |
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一六 しかし、彼らの目がさえぎられて、イエスを認めることができなかった。 |
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十七 イエス曰けるは爾曹行つゝ互に哀み談論ことは何ぞ乎 |
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一七 イエス彼らに言ひ給ふ『なんぢら歩みつつ互に語りあふ言は何ぞや』かれら悲しげなる狀にて立ち止り、 |
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一七 イエスは彼らに言われた、「歩きながら互に語り合っているその話は、なんのことなのか」。彼らは悲しそうな顔をして立ちどまった。 |
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十八 その一人のクレオパと云る者答けるは爾はエルサレムの旅人にして獨このごろ有し事を知ざる乎 |
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一八 その一人なるクレオパと名づくるもの答へて言ふ『なんぢエルサレムに寓り居て獨り此の頃かしこに起りし事どもを知らぬか』 |
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一八 そのひとりのクレオパという者が、答えて言った、「あなたはエルサレムに泊まっていながら、あなただけが、この都でこのごろ起ったことをご存じないのですか」。 |
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十九 答けるは何事ぞや之に曰けるはナザレのイエスの事なり此人は~と萬民の前に於て行と言に大なる能ある預言者なりしか |
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一九 イエス言ひ給ふ『如何なる事ぞ』答へて言ふ『ナザレのイエスの事なり、彼は~と凡ての民との前にて業にも言にも能力ある預言者なりしに、 |
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一九 「それは、どんなことか」と言われると、彼らは言った、「ナザレのイエスのことです。あのかたは、神とすべての民衆との前で、わざにも言葉にも力ある預言者でしたが、 |
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二十 祭司の長と有司等かれを死罪に解して十字架に釘たり |
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二〇 祭司長ら及び我が司らは、死罪に定めんとて之を付し遂に十字架につけたり。 |
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二〇 祭司長たちや役人たちが、死刑に処するために引き渡し、十字架につけたのです。 |
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二一 我儕イスラエルを贖はん者は此人なりと望たりし又それ而已ならず此等の事の成しより今日は第三日なるに |
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二一 我等はイスラエルを贖ふべき者は、この人なりと望みゐたり、然のみならず此の事の有りしより、今日ははや三日めなるが、 |
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二一 わたしたちは、イスラエルを救うのはこの人であろうと、望みをかけていました。しかもその上に、この事が起ってから、きょうが三日目なのです。 |
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二二 我儕の中なる或婦たち我儕を驚駭せり彼等朝はやく墓に往 |
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二二 なほ我等のうちの或女たち、我らを驚かせり、即ち彼ら朝夙く墓に往きたるに、 |
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二二 ところが、わたしたちの仲間である数人の女が、わたしたちを驚かせました。というのは、彼らが朝早く墓に行きますと、 |
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二三 その屍を見ずして來り天使あらはれて彼は甦れりと云るを見たりと吿 |
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二三 屍體を見ずして歸り、かつ御使たち現れてイエスは活き給ふと吿げたりと言ふ。 |
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二三 イエスのからだが見当らないので、帰ってきましたが、そのとき御使が現れて、『イエスは生きておられる』と告げたと申すのです。 |
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二四 また我儕と偕に在し者も墓に往たるに婦の言る如にて且かれを見ざりき |
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二四 我らの朋輩の數人もまた墓に往きて見れば、正しく女たちの言ひし如くにしてイエスを見ざりき』 |
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二四 それで、わたしたちの仲間が数人、墓に行って見ますと、果して女たちが言ったとおりで、イエスは見当りませんでした」。 |
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二五 イエス曰けるは預言者の凡て言たる事を信ずる心の遲き愚なる者よ |
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二五 イエス言ひ給ふ『ああ愚にして預言者たちの語りたる凡てのことを信ずるに心鈍き者よ。 |
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二五 そこでイエスが言われた、「ああ、愚かで心のにぶいため、預言者たちが説いたすべての事を信じられない者たちよ。 |
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二六 キリストは此等の難を受て其榮光に入べきに非や |
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二六 キリストは必ず此らの苦難を受けて、其の榮光に入るべきならずや』 |
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二六 キリストは必ず、これらの苦難を受けて、その栄光に入るはずではなかったのか」。 |
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二七 故にモーセより凡の預言者を始すべての聖書に於て己に就ての事は解明されたり |
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二七 斯てモーセ及び凡ての預言者をはじめ、己に就きて凡ての聖書に錄したる所を說き示したまふ。 |
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二七 こう言って、モーセやすべての預言者からはじめて、聖書全体にわたり、ご自身についてしるしてある事どもを、説きあかされた。 |
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二八 彼等ゆく所の村に近きけるに彼ゆき過んと爲る狀をなせば |
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二八 遂に往く所の村に近づきしに、イエスなほ進みゆく樣なれば、 |
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二八 それから、彼らは行こうとしていた村に近づいたが、イエスがなお先へ進み行かれる様子であった。 |
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二九 彼等勸め曰けるは日晨きて暮に及ぬ我儕と偕に止れ彼いりて止る |
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二九 强ひて止めて言ふ『我らと共に留れ、時夕に及びて、日も早や暮れんとす』乃ち留らんとて入りたまふ。 |
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二九 そこで、しいて引き止めて言った、「わたしたちと一緒にお泊まり下さい。もう夕暮になっており、日もはや傾いています」。イエスは、彼らと共に泊まるために、家にはいられた。 |
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三十 共に食に就る時パンをとり謝して擘かれらに予ければ |
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三〇 共に食事の席に著きたまふ時、パンを取りて祝し、擘きて與へ給へば、 |
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三〇 一緒に食卓につかれたとき、パンを取り、祝福してさき、彼らに渡しておられるうちに、 |
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|
三一 二人の者の目瞭かに爲て彼を識り又忽ち其目に見ず爲り |
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|
三一 彼らの目開けてイエスなるを認む、而してイエス見えずなり給ふ。 |
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|
三一 彼らの目が開けて、それがイエスであることがわかった。すると、み姿が見えなくなった。 |
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|
三二 彼等たがひに曰けるは途間にて我儕と語かつ聖書を解開ける時われらが心熱しに非ずや |
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三二 かれら互に言ふ『途にて我らと語り我らに聖書を說明し給へるとき、我らの心、內に燃えしならずや』 |
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|
三二 彼らは互に言った、「道々お話しになったとき、また聖書を説き明してくださったとき、お互の心が内に燃えたではないか」。 |
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三三 此時かれら起てエルサレムに歸り十一の弟子および同なる人の集り居に遇 |
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三三 斯て直ちに立ちエルサレムに歸りて見れば、十一弟子および之と偕なる者あつまり居て言ふ、 |
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三三 そして、すぐに立ってエルサレムに帰って見ると、十一弟子とその仲間が集まっていて、 |
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三四 その人等の曰けるは主實に甦りシモンに現れたり |
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三四 『主は實に甦へりて、シモンに現れ給へり』 |
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三四 「主は、ほんとうによみがえって、シモンに現れなさった」と言っていた。 |
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三五 二人の者も途間にて所遇とパンを擘たまへるに因て識たる事を語れり |
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三五 二人の者もまた途にて有りし事と、パンを擘き給ふによりてイエスを認めし事とを述ぶ。 |
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三五 そこでふたりの者は、途中であったことや、パンをおさきになる様子でイエスだとわかったことなどを話した。 |
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三六 此事を語れる時イエス自ら其中に立て曰けるは爾曹安かれ |
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三六 此等のことを語る程に、イエスその中に立ち〔『平安なんぢらに在れ』と言ひ〕給ふ。 |
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三六 こう話していると、イエスが彼らの中にお立ちになった。〔そして「やすかれ」と言われた。〕 |
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三七 かれら駭き懼れて見ところの者を靈ならんと意り |
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三七 かれら怖ぢ懼れて見る所のものを靈ならんと思ひしに、 |
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三七 彼らは恐れ驚いて、霊を見ているのだと思った。 |
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三八 イエス曰けるは爾曹何ぞ駭くや何ぞ心に疑ひ起るや |
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三八 イエス言ひ給ふ『なんぢら何ぞ心騷ぐか、何ゆゑ心に疑惑おこるか、 |
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三八 そこでイエスが言われた、「なぜおじ惑っているのか。どうして心に疑いを起すのか。 |
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三九 我手わが足を見て我なるを知われを摸て視よ靈は我が在を爾曹が見ごとく肉と骨は有ざる也 |
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三九 我が手わが足を見よ、これ我なり。我を撫でて見よ、靈には肉と骨となし、我にはあり、汝らの見るごとし』 |
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三九 わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしなのだ。さわって見なさい。霊には肉や骨はないが、あなたがたが見るとおり、わたしにはあるのだ」。 |
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四十 如此いひて其手足を示せしに |
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四〇 〔斯く言ひて手と足とを示し給ふ〕 |
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四〇 〔こう言って、手と足とをお見せになった。〕 |
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四一 彼等喜べども猶信ぜず異める時にイエス此に食物ある乎と曰ければ |
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四一 かれら歡喜の餘に信ぜずして怪しめる時、イエス言ひたまふ『此處に何か食物あるか』 |
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四一 彼らは喜びのあまり、まだ信じられないで不思議に思っていると、イエスが「ここに何か食物があるか」と言われた。 |
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四二 灸たる魚と蜜房を予ふ |
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四二 かれら炙りたる魚一片を捧げたれば、 |
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四二 彼らが焼いた魚の一きれをさしあげると、 |
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四三 之を取て其前に食せり |
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四三 之を取り、その前にて食し給へり。 |
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四三 イエスはそれを取って、みんなの前で食べられた。 |
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四四 また彼等に曰けるはモーセの例預言者の書また詩の篇に錄されたる我事につく凡の言の必らず應べきは我もと爾曹と偕に在しとき語れる所なり |
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四四 また言ひ給ふ『これらの事は我がなほ汝らと偕に在りし時に語りて、我に就きモーセの律法・預言者および詩篇に錄されたる凡ての事は、必ず遂げらるべしと言ひし所なり』 |
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四四 それから彼らに対して言われた、「わたしが以前あなたがたと一緒にいた時分に話して聞かせた言葉は、こうであった。すなわち、モーセの律法と預言書と詩篇とに、わたしについて書いてあることは、必ずことごとく成就する」。 |
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四五 是に於て聖書を悟せんとて其聰を啓き |
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四五 爰に聖書を悟らしめんとて、彼らの心を開きて言ひ給ふ、 |
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四五 そこでイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて |
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四六 曰けるは已に斯錄されたり此如キリストは苦難をうけ第三日に死より甦るべし |
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四六 『かく錄されたり、キリストは苦難を受けて、三日めに死人の中より甦へり、 |
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四六 言われた、「こう、しるしてある。キリストは苦しみを受けて、三日目に死人の中からよみがえる。 |
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四七 又その名に託て悔改と赦罪はエルサレムより始まり萬國の民に宣傳られん |
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四七 且その名によりて罪の赦を得さする悔改はエルサレムより始まりて、もみもろの國人に宣傳へらるべしと。 |
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四七 そして、その名によって罪のゆるしを得させる悔改めが、エルサレムからはじまって、もろもろの国民に宣べ伝えられる。 |
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四八 爾曹は此等の事の證人なり |
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四八 汝らは此等のことの證人なり。 |
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四八 あなたがたは、これらの事の証人である。 |
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四九 我わが父の誓のものを爾曹に遺らん爾曹上より權を授らるゝ迄はエルサレムに留れ |
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四九 視よ、我は父の約し給へるものを、汝らに贈る。汝ら上より能力を著せらるるまではキに留れ』 |
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四九 見よ、わたしの父が約束されたものを、あなたがたに贈る。だから、上から力を授けられるまでは、あなたがたは都にとどまっていなさい」。 |
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五十 イエス彼等を導きベタニヤに至り手を擧て彼等を祝す |
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五〇 遂にイエス彼らをベタニヤに連れゆき、手を擧げて之を祝したまふ。 |
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五〇 それから、イエスは彼らをベタニヤの近くまで連れて行き、手をあげて彼らを祝福された。 |
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五一 祝する時かれらを離れ天に擧られたり |
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五一 祝する間に、彼らを離れ〔天に擧げられ〕給ふ。 |
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五一 祝福しておられるうちに、彼らを離れて、〔天にあげられた。〕 |
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五二 彼等これを拜して甚く喜びエルサレムに歸り |
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五二 彼ら〔之を拜し〕大なる歡喜をもてエルサレムに歸り、 |
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五二 彼らは〔イエスを拝し、〕非常な喜びをもってエルサレムに帰り、 |
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五三 恒に殿に入て~を頌美また祝謝せりアメン |
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五三 常に宮に在りて、~を讚めゐたり。 |
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五三 絶えず宮にいて、神をほめたたえていた。 |
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Office Murakami |