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ヨハネによる福音書の日本語訳を明治・大正・昭和の時代に沿って読み比べてみました |
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明治訳は英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)による文語訳です。シナ訳の影響が色濃く出ています。 |
大正訳は日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)による文語訳です。明治訳よりやさしい日本語に直していますが内村鑑三は大正改訳を優美すぎて弱いと評していました。 |
昭和訳は日本聖書協会「新約聖書」(昭和二十九年)による口語訳です。 |
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明治・大正訳は漢字・送り仮名とも明治・大正時代そのままの形を復刻できるように努めました。シフトJISにない漢字はUnicodeで捜しました。 |
明治・大正・昭和訳を一節ずつ縦に並べて記すことで時代に沿った訳の変化を読み取れるようにしました。 |
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<約翰傳iケ書>新約全書(明治訳:文語訳) |
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<ヨハネ傳iケ書>新約聖書(大正改訳:文語訳) |
リンク先 |
章 |
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<ヨハネによる福音書>新約聖書(昭和訳:口語訳) |
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↓ |
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↓ |
☞1章 |
1章 |
一 太初に道あり道は~と偕にあり道は即ち~なり |
☞2章 |
一 太初に言あり、言は~と偕にあり、言は~なりき。 |
☞3章 |
一 初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。 |
☞4章 |
二 この道は大初に~と偕に在き |
☞5章 |
二 この言は太初に~とともに在り、 |
☞6章 |
二 この言は初めに神と共にあった。 |
☞7章 |
三 萬物これに由て造らる造れたる者に一として之に由らで造れしは無 |
☞8章 |
三 萬の物これに由りて成り、成りたる物に一つとして之によらで成りたるはなし。 |
☞9章 |
三 すべてのものは、これによってできた。できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった。 |
☞10章 |
四 之に生あり此生は人の光なり |
☞11章 |
四 之に生命あり、この生命は人の光なりき。 |
☞12章 |
四 この言に命があった。そしてこの命は人の光であった。 |
☞13章 |
五 光は暗に照り暗は之を曉らぎりき |
☞14章 |
五 光は暗Kに照る、而して暗Kは之を悟らざりき。 |
☞15章 |
五 光はやみの中に輝いている。そして、やみはこれに勝たなかった。 |
☞16章 |
六 偖こゝに~の遣し給へるヨハネと云る者あり |
☞17章 |
六 ~より遣されたる人いでたり、その名をヨハネといふ。 |
☞18章 |
六 ここにひとりの人があって、神からつかわされていた。その名をヨハネと言った。 |
☞19章 |
七 その來りしは證の爲なり即ち光に就て證を作すべての人をして己に因て信ぜしめんが爲なり |
☞20章 |
七 この人は證のために來れり、光に就きて證をなし、また凡ての人の彼によりて信ぜん爲なり。 |
☞21章 |
七 この人はあかしのためにきた。光についてあかしをし、彼によってすべての人が信じるためである。 |
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八 彼は光に非ず光に就て證を作ん爲に來れり |
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八 彼は光にあらず、光に就きて證せん爲に來れるなり。 |
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八 彼は光ではなく、ただ、光についてあかしをするためにきたのである。 |
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九 夫すべての人を照す眞の光は世に來れり |
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九 もろもろの人をてらす眞の光ありて、世にきたれり。 |
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九 すべての人を照すまことの光があって、世にきた。 |
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十 かれ世にあり世は彼に造れたるに世これも識ず |
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一〇 彼は世にあり、世は彼に由りて成りたるに、世は彼を知らざりき。 |
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一〇 彼は世にいた。そして、世は彼によってできたのであるが、世は彼を知らずにいた。 |
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十一 かれ己の國に來しに其民これを接ざりき |
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一一 かれは己の國にきたりしに、己の民は之を受けざりき。 |
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一一 彼は自分のところにきたのに、自分の民は彼を受けいれなかった。 |
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十二 彼を接その名を信ぜし者には權を賜ひて此を~の子と爲り |
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一二 「されど之を受けし者、即ちその名を信ぜし者には、~の子となる權をあたへ給へり。 |
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一二 しかし、彼を受けいれた者、すなわち、その名を信じた人々には、彼は神の子となる力を与えたのである。 |
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十三 斯る人は血脈に由に非ず情慾に由に非ず人の意に由に非ず唯~に由て生れし也 |
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一三 斯る人は血脈によらず、肉の欲によらず、人の欲によらず、ただ~によりて生れしなり。 |
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一三 それらの人は、血すじによらず、肉の欲によらず、また、人の欲にもよらず、ただ神によって生れたのである。 |
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十四 それ道肉體と成て我儕の間に寄れり我儕その榮を見に實に父の生たまへる獨子の榮にして恩寵と眞理にて充り |
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一四 言は肉體となりて我らの中に宿りたまへり、我らその榮光を見たり、實に父の獨子の榮光にして恩惠と眞理とにて滿てり。 |
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一四 そして言は肉体となり、わたしたちのうちに宿った。わたしたちはその栄光を見た。それは父のひとり子としての栄光であって、めぐみとまこととに満ちていた。 |
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十五 ヨハネ之が證を作て呼いひけるは我さきに我に後れ來らん者は我より優れる者なり蓋我より先に在し者なれば也と言しは此人なり |
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一五 ヨハネ彼につきて證をなし、呼はりて言ふ『「わが後にきたる者は我に勝れり、我より前にありし故なり」と、我が曾ていへるは此の人なり』 |
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一五 ヨハネは彼についてあかしをし、叫んで言った、「『わたしのあとに来るかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりも先におられたからである』とわたしが言ったのは、この人のことである」。 |
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十六 我儕みな彼に充滿たる其中より受て恩寵に恩寵を加らる |
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一六 我らは皆その充ち滿ちたる中より受けて、恩惠に恩惠を加へらる。 |
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一六 わたしたちすべての者は、その満ち満ちているものの中から受けて、めぐみにめぐみを加えられた。 |
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十七 律法はモーセに由て傳り恩寵と眞理はイエスキリストに由て來れり |
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一七 律法はモーセによりて與へられ、恩惠と眞理とはイエス・キリストによりて來れるなり。 |
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一七 律法はモーセをとおして与えられ、めぐみとまこととは、イエス・キリストをとおしてきたのである。 |
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十八 未だ~を見し人あらず惟うみ給へる獨子すなはち父の懷に在者のみ之を彰せり |
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一八 未だ~を見し者なし、ただ父の懷裡にいます獨子の~のみ之を顯し給へり。 |
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一八 神を見た者はまだひとりもいない。ただ父のふところにいるひとり子なる神だけが、神をあらわしたのである。 |
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十九 ユダヤ人祭司とレビの人をエルサレムよりヨハネの所に遣し爾は誰ぞと問しめけるとき證せること左の如し |
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一九 さてユダヤ人、エルサレムより祭司とレビ人とをヨハネの許に遣して『なんぢは誰なるか』と問はせし時、ヨハネの證は斯のごとし。 |
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一九 さて、ユダヤ人たちが、エルサレムから祭司たちやレビ人たちをヨハネのもとにつかわして、「あなたはどなたですか」と問わせたが、その時ヨハネが立てたあかしは、こうであった。 |
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二十 かれ諱す所なく言顯して我はキリストに非ずと明かに曰り |
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二〇 乃ち言ひあらはして諱まず『我はキリストにあらず』と言ひあらはせり。 |
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二〇 すなわち、彼は告白して否まず、「わたしはキリストではない」と告白した。 |
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二一 また問けるは然ば爾は誰ぞエリヤなるか否と答ふ又なんぢは彼の預言者なる乎と問しに然らずと答たり |
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二一 また問ふ『さらば何、エリヤなるか』答ふ『然らず』問ふ『かの預言者なるか』答ふ『いな』 |
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二一 そこで、彼らは問うた、「それでは、どなたなのですか、あなたはエリヤですか」。彼は「いや、そうではない」と言った。「では、あの預言者ですか」。彼は「いいえ」と答えた。 |
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二二 是に於て彼等また問けるは爾は誰なるか我儕を遣しゝ者に我儕が答を爲得るやう我儕に告よ爾みづから如何に謂や |
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二二 ここに彼ら言ふ『なんぢは誰なるか、我らを遣しし人々に答へ得るやうに爲よ、なんぢ己につきて何と言ふか』 |
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二二 そこで、彼らは言った、「あなたはどなたですか。わたしたちをつかわした人々に、答えを持って行けるようにしていただきたい。あなた自身をだれだと考えるのですか」。 |
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二三 ヨハネ曰けるは我は即ち主の道を直せよと野に呼る人の聲なり預言者イザヤの言るが如し |
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二三 答へて言ふ『我は預言者イザヤの云へるが如く「主の道を直くせよと、荒野に呼はる者の聲」なり』 |
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二三 彼は言った、「わたしは、預言者イザヤが言ったように、『主の道をまっすぐにせよと荒野で呼ばわる者の声』である」。 |
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二四 その遣されたる人々はパリサイの人なりき |
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二四 かの遣されたる者は、パリサイ人なりき。 |
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二四 つかわされた人たちは、パリサイ人であった。 |
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二五 彼等又ヨハネに問て曰けるは然ば爾はキリストに非ずエリヤに非ず彼の預言者にも非ずして何ぞバプテスマを施すや |
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二五 また問ひて言ふ『なんぢ若しキリストに非ず、またエリヤにも、かの預言者にも非ずば、何故バプテスマを施すか』 |
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二五 彼らはヨハネに問うて言った、「では、あなたがキリストでもエリヤでもまたあの預言者でもないのなら、なぜバプテスマを授けるのですか」。 |
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二六 ヨハネ答曰けるは我は水を以てバプテスマを授く然ど爾曹が知ざる所のもの一人爾曹の中に立り |
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二六 ヨハネ答へて言ふ『我は水にてバプラスマを施す。なんぢらの中に汝らの知らぬもの一人たてり。 |
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二六 ヨハネは彼らに答えて言った、「わたしは水でバプテスマを授けるが、あなたがたの知らないかたが、あなたがたの中に立っておられる。 |
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二七 我に後れ來りて我に優れる者とは是なり我は其履の紐を解にも足ざる者なり |
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二七 即ち我が後にきたる者なり、我はその鞋の紐を解くにも足らず』 |
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二七 それがわたしのあとにおいでになる方であって、わたしはその人のくつのひもを解く値うちもない」。 |
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二八 此事はヨハネのバプテスマを施しゝヨルダンの外なるベタニヤにて有し也 |
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二八 これらの事は、ヨハネのバプテスマを施しゐたりしヨルダンの向なるベタニヤにてありしなり。 |
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二八 これらのことは、ヨハネがバプテスマを授けていたヨルダンの向こうのベタニヤであったのである。 |
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二九 明日ヨハネ イエスの己に來るを見て曰けるは世の罪を任ふ~の羔を觀よ |
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二九 明くる日ヨハネ、イエスの己が許にきたり給ふを見ていふ『視よ、これぞ世の罪を除く~の羔羊。 |
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二九 その翌日、ヨハネはイエスが自分の方にこられるのを見て言った、「見よ、世の罪を取り除く神の小羊。 |
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三十 我に後れ來らん者は我より優れる者*なり蓋我より以前に在し者なれば也と我言しは此人なり |
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三〇 われ曾て「わが後に來る人あり、我にまされり、我より前にありし故なり」と云ひしは、此の人なり。 |
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三〇 『わたしのあとに来るかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりも先におられたからである』とわたしが言ったのは、この人のことである。 |
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三一 われ素より此人を識ず然ど我來て水にてバプテスマを施すは彼をイスラエルの民に顯さんが爲なり |
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三一 我もと彼を知らざりき。然れど彼のイスラエルに顯れんために、我きたりて水にてバプテスマを施すなり』 |
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三一 わたしはこのかたを知らなかった。しかし、このかたがイスラエルに現れてくださるそのことのために、わたしはきて、水でバプテスマを授けているのである」。 |
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三二 ヨハネまた證して曰けるはわれ靈の鴿の如く天より降りて其上に止れるを見たり |
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三二 ヨハネまた證をなして言ふ『われ見しに御靈、鴿のごとく天より降りて、その上に止れり。 |
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三二 ヨハネはまたあかしをして言った、「わたしは、御霊がはとのように天から下って、彼の上にとどまるのを見た。 |
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三三 我は彼を識ざれど我を遣し水にてバプテスマを施さしめし者われに曰けるは爾靈くだりて其上に止るを見ん彼は聖靈を以てバプテスマをなす者なり |
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三三 我もと彼を知らざりき。然れど我を遣し、水にてバプテスマを施させ給ふもの、我に吿げて「なんぢ御靈くだりて或人の上に止るを見ん、これぞ聖靈にてバプテスマを施す者なる」といひ給へり。 |
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三三 わたしはこの人を知らなかった。しかし、水でバプテスマを授けるようにと、わたしをおつかわしになったそのかたが、わたしに言われた、『ある人の上に、御霊が下ってとどまるのを見たら、その人こそは、御霊によってバプテスマを授けるかたである』。 |
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三四 我これを見て其~の子たるを證せり |
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三四 われ之を見て、その~の子たるを證せしなり』 |
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三四 わたしはそれを見たので、このかたこそ神の子であると、あかしをしたのである」。 |
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三五 明日またヨハネ二人の弟子と偕に立 |
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三五 明くる日ヨハネまた二人の弟子とともに立ちて、 |
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三五 その翌日、ヨハネはまたふたりの弟子たちと一緒に立っていたが、 |
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三六 イエスの行を見て~の羔を觀よと曰 |
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三六 イエスの歩み給ふを見ていふ『視よ、これぞ~の羔羊』 |
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三六 イエスが歩いておられるのに目をとめて言った、「見よ、神の小羊」。 |
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三七 如此いへるを弟子聞てイエスに從ひ往り |
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三七 かく語るをききて二人の弟子イエスに從ひゆきたれば、 |
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三七 そのふたりの弟子は、ヨハネがそう言うのを聞いて、イエスについて行った。 |
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三八 イエス彼等の從へるを回顧て爾曹なにを求るやと彼等に問こたへてラビ何處に住るやと曰ラビを譯ば師と云の義なり |
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三八 イエス振反りて、その從ひきたるを見て言ひたまふ『何を求むるか』彼等いふ『ラビ(釋きていへば師)いづこに留り給ふか』 |
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三八 イエスはふり向き、彼らがついてくるのを見て言われた、「何か願いがあるのか」。彼らは言った、「ラビ(訳して言えば、先生)どこにおとまりなのですか」。 |
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三九 イエス彼等に來り觀よと曰たまひければ遂に往て其住り給ふ處を見て是日ともに住れり時は晝の四時ごろなりき |
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三九 イエス言ひ給ふ『きたれ、然らば見ん』彼ら往きてその留りたまふ所を見、この日ともに留れり、時は第十時ごろなりき。 |
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三九 イエスは彼らに言われた、「きてごらんなさい。そうしたらわかるだろう」。そこで彼らはついて行って、イエスの泊まっておられる所を見た。そして、その日はイエスのところに泊まった。時は午後四時ごろであった。 |
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四十 ヨハネの曰し言を聞てイエスに從へる二人の者の其一人はシモンペテロの兄弟アンデレなり |
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四〇 ヨハネより聞きてイエスに從ひし二人のうち一人は、シモン・ペテロの兄弟アンデレなり。 |
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四〇 ヨハネから聞いて、イエスについて行ったふたりのうちのひとりは、シモン・ペテロの兄弟アンデレであった。 |
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四一 かれ先その兄弟シモンに遇て曰けるは我儕メツシヤに遇りメツシヤを譯ばキリストなり |
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四一 この人まづ其の兄弟シモンに遇ひ『われらメシヤ(釋けばキリスト)に遇へり』と言ひて、 |
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四一 彼はまず自分の兄弟シモンに出会って言った、「わたしたちはメシヤ(訳せば、キリスト)にいま出会った」。 |
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四二 即ち彼をイエスに携往しにイエス視て之に曰けるは爾はヨナの子シモンなり爾はケパと稱らるべしケパを譯ばペテロなり |
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四二 彼をイエスの許に連れきたれり。イエス之に目を注めて言ひ給ふ『なんぢはヨハネの子シモンなり、汝ケパ(釋けばペテロ)と稱へらるべし』 |
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四二 そしてシモンをイエスのもとにつれてきた。イエスは彼に目をとめて言われた、「あなたはヨハネの子シモンである。あなたをケパ(訳せば、ペテロ)と呼ぶことにする」。 |
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四三 明日イエス ガリラヤに往んとしてピリポにあひ我に從へと曰り |
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四三 明くる日イエス、ガリラヤに往かんとし、ピリポにあひて言ひ給ふ『われに從へ』 |
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四三 その翌日、イエスはガリラヤに行こうとされたが、ピリポに出会って言われた、「わたしに従ってきなさい」。 |
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四四 ピリポはアンデレとペテロの住るベテサイダと云る邑の人なり |
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四四 ピリポはアンデレとペテロとの町なるベツサイダの人なり。 |
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四四 ピリポは、アンデレとペテロとの町ベツサイダの人であった。 |
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四五 ピリポ ナタナエルに遇て曰けるは我儕律法の中にモーセか載たるところ預言者等の記しゝ所の者に遇り即ちヨセフの子ナザレのイエスなり |
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四五 ピリポ、ナタナエルに遇ひて言ふ『我らはモーセが律法に錄ししところ、預言者たちが錄しし所の者に遇へり、ヨセフの子ナザレのイエスなり』 |
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四五 このピリポがナタナエルに出会って言った、「わたしたちは、モーセが律法の中にしるしており、預言者たちがしるしていた人、ヨセフの子、ナザレのイエスにいま出会った」。 |
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四六 ナタナエル曰けるはナザレより何の善者いでん乎ピリポ彼に曰けるは來て觀よ |
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四六 ナタナエル言ふ『ナザレより何の善き者かいづべき』ピリポいふ『來りて見よ』 |
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四六 ナタナエルは彼に言った、「ナザレから、なんのよいものが出ようか」。ピリポは彼に言った、「きて見なさい」。 |
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四七 イエス ナタナエルの己が所に來るを見かれを指て曰けるは視よ眞のイスラエルの人にして其心詭譎なき者ぞ |
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四七 イエス、ナタナエルの己が許にきたるを見、これを指して言ひたまふ『視よ、これ眞にイスラエル人なり、その衷に虛僞なし』 |
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四七 イエスはナタナエルが自分の方に来るのを見て、彼について言われた、「見よ、あの人こそ、ほんとうのイスラエル人である。その心には偽りがない」。 |
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四八 ナタナエル イエスに曰けるは如何にして我を知たまふ乎イエス之に答て曰けるはピリポが爾を召ざる先に無花果樹の下に爾の居るを見たり |
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四八 ナタナエル言ふ『如何して我を知り給ふか』イエス答へて言ひたまふ『ピリボの汝を呼ぶまへに我なんぢが無花果の樹の下に居るを見たり』 |
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四八 ナタナエルは言った、「どうしてわたしをご存じなのですか」。イエスは答えて言われた、「ピリポがあなたを呼ぶ前に、わたしはあなたが、いちじくの木の下にいるのを見た」。 |
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四九 ナタナエル答て曰けるはラビ爾は~の子なり爾はイスラエルの王なり |
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四九 ナタナエル答ふ『ラビ、なんぢは~の子なり、汝はイスラエルの王なり』 |
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四九 ナタナエルは答えた、「先生、あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です」。 |
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五十 イエス答て曰けるは爾が無花果樹の下に居るを我見しと言るに因て爾信ずるか此よりも大なる事を爾みるべし |
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五〇 イエス答へて言ひ給ふ『われ汝が無花果の樹の下にをるを見たりと言ひしに因りて信ずるか、汝これよりも更に大なる事を見ん』 |
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五〇 イエスは答えて言われた、「あなたが、いちじくの木の下にいるのを見たと、わたしが言ったので信じるのか。これよりも、もっと大きなことを、あなたは見るであろう」。 |
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五一 又いひけるは我まことに實に爾曹に吿ん天ひらけて~の使等人の子の上に陟降するを見ん |
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五一 また言ひ給ふ『まことに誠に汝らに吿ぐ、天ひらけて人の子のうへに~の使たちの昇り降りするを汝ら見るべし』 |
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五一 また言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。天が開けて、神の御使たちが人の子の上に上り下りするのを、あなたがたは見るであろう」。 |
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2章 |
一 第三日にガリラヤのカナにて婚筵ありしがイエスの母も此に居り |
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一 三日めにガリラヤのカナに婚禮ありて、イエスの母そこに居り、 |
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一 三日目にガリラヤのカナに婚礼があって、イエスの母がそこにいた。 |
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二 イエスと其弟子も婚筵に請る |
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二 イエスも弟子たちと共に婚禮に招かれ給ふ。 |
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二 イエスも弟子たちも、その婚礼に招かれた。 |
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三 葡萄酒罄ければ母イエスに曰けるは彼等に葡萄酒なし |
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三 葡萄酒つきたれば、母、イエスに言ふ『かれらに葡萄酒なし』 |
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三 ぶどう酒がなくなったので、母はイエスに言った、「ぶどう酒がなくなってしまいました」。 |
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四 イエス彼に曰けるは婦よ爾と我と何の與あらんや我時は未だ至ず |
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四 イエス言ひ給ふ『をんなよ、我と汝となにの關係あらんや、我が時は未だ來らず』 |
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四 イエスは母に言われた、「婦人よ、あなたは、わたしと、なんの係わりがありますか。わたしの時は、まだきていません」。 |
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五 その母僕等に向て彼が爾曹に命ずる所の事を行よと曰おけり |
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五 母、僕どもに『何にても其の命ずる如くせよ』と言ひおく。 |
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五 母は僕たちに言った、「このかたが、あなたがたに言いつけることは、なんでもして下さい」。 |
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六 ユダヤ人の潔の例に從ひて四五斗盛の石甕かしこに備有しが |
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六 彼處にユダヤ人の潔の例にしたがひて四五斗入りの石甕六個ならべあり。 |
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六 そこには、ユダヤ人のきよめのならわしに従って、それぞれ四、五斗もはいる石の水がめが、六つ置いてあった。 |
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七 イエス僕等に水を甕に滿せよと曰ければ彼等口まで滿せたり |
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七 イエス僕に『水を甕に滿せ』といひ給へば、口まで滿す。 |
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七 イエスは彼らに「かめに水をいっぱい入れなさい」と言われたので、彼らは口のところまでいっぱいに入れた。 |
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八 又これを今挹取て持ゆき筵を司る者に與せと曰ければ彼等わたせり |
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八 また言ひ給ふ『いま汲み取りて饗宴長に持ちゆけ』乃ち持ちゆけり。 |
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八 そこで彼らに言われた、「さあ、くんで、料理がしらのところに持って行きなさい」。すると、彼らは持って行った。 |
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九 筵を司る者酒に變し水を甞て其何處より來しを知ず然ど水を挹し僕は知り |
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九 饗宴長、葡萄酒になりたる水を甞めて、その何處より來りしかを知らざれば(水を汲みし僕どもは知れり)新カを呼びて言ふ、 |
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九 料理がしらは、ぶどう酒になった水をなめてみたが、それがどこからきたのか知らなかったので、(水をくんだ僕たちは知っていた)花婿を呼んで |
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十 筵を司る者新カを呼て彼に曰けるは凡そ人はまづ旨酒を進し酒酣なるに及て魯酒を進に爾ほ旨酒を今まで留おけり |
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一〇 『おほよそ人は先よき葡萄酒を出し、醉のまはる頃ほひ劣れるものを出すに、汝はよき葡萄酒を今まで留め置きたり』 |
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一〇 言った、「どんな人でも、初めによいぶどう酒を出して、酔いがまわったころにわるいのを出すものだ。それだのに、あなたはよいぶどう酒を今までとっておかれました」。 |
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十一 此事をイエスがガリラヤのカナにて行るは休徵の始にして其榮を顯せり弟子かれを信ず |
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一一 イエス此の第一の徵をガリラヤのカナにて行ひ、その榮光を顯し給ひたれば、弟子たち彼を信じたり。 |
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一一 イエスは、この最初のしるしをガリラヤのカナで行い、その栄光を現された。そして弟子たちはイエスを信じた。 |
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十二 此後イエスその母兄弟および弟子等カペナウンに下り其處 に居こと久からずして |
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一二 この後イエス及びその母・兄弟・弟子たちカペナウムに下りて、そこに數日留りたり。 |
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一二 そののち、イエスは、その母、兄弟たち、弟子たちと一緒に、カペナウムに下って、幾日かそこにとどまられた。 |
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十三 ユダヤ人の逾越節ちかづきければイエス エルサレムに上り |
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一三 斯てユダヤ人の過越の祭ちかづきたれば、イエス、エルサレムに上り給ふ。 |
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一三 さて、ユダヤ人の過越の祭が近づいたので、イエスはエルサレムに上られた。 |
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十四 殿にて牛羊鴿を賣者と兌銀する者の坐せるとを見 |
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一四 宮の內に牛・羊・鴿を賣るもの、兩替する者の坐するを見て、 |
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一四 そして牛、羊、はとを売る者や両替する者などが宮の庭にすわり込んでいるのをごらんになって、 |
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十五 繩をもて鞭をつくり彼等および羊牛を殿より逐出し兌銀する者の金を散し其案を倒し |
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一五 繩を鞭につくり、羊をも牛をもみな宮より逐ひ出し、兩替する者の金を散し、その臺を倒し、 |
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一五 なわでむちを造り、羊も牛もみな宮から追いだし、両替人の金を散らし、その台をひっくりかえし、 |
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十六 鴿を賣者に曰けるは此物を取て往わが父の室を貿易の家とする勿れ |
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一六 鴿をうる者に言ひ給ふ『これらの物を此處より取り去れ、わが父の家を商賣の家とすな』 |
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一六 はとを売る人々には「これらのものを持って、ここから出て行け。わたしの父の家を商売の家とするな」と言われた。 |
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十七 弟子等なんぢの室の爲に熱心われを蝕んと錄されたるを憶起せり |
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一七 弟子たち『なんぢの家をおもふ熱心われを食はん』と錄されたるを憶ひ出せり。 |
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一七 弟子たちは、「あなたの家を思う熱心が、わたしを食いつくすであろう」と書いてあることを思い出した。 |
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十八 此にユダヤ人こたへてイエスに曰けるは爾これらの事を爲からには我儕に何の休徵を示るや |
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一八 ここにユダヤ人こたへてイエスに言ふ『なんぢ此等の事をなすからには、我らに何の徵を示すか』 |
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一八 そこで、ユダヤ人はイエスに言った、「こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに見せてくれますか」。 |
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十九 イエス答て爾曹この殿を毀て我三日にて之を建んと曰ければ |
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一九 答へて言ひ給ふ『なんぢら此の宮をこぼて、われ三日の間に之を起さん』 |
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一九 イエスは彼らに答えて言われた、「この神殿をこわしたら、わたしは三日のうちに、それを起すであろう」。 |
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二十 ユダヤ人いひけるは此殿を建るには四十六年を経しに爾三日にて之を建るか |
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二〇 ユダヤ人いふ『この宮を建つるには四十六年を經たり、なんぢは三日のうちに之を起すか』 |
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二〇 そこで、ユダヤ人たちは言った、「この神殿を建てるのには、四十六年もかかっています。それだのに、あなたは三日のうちに、それを建てるのですか」。 |
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二一 イエスの如此いへるは其身の殿を指るなり |
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二一 これはイエス己が體の宮をさして言ひ給へるなり。 |
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二一 イエスは自分のからだである神殿のことを言われたのである。 |
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二二 死より甦り給へる後弟子たちイエスの此事を語しを噫起し聖書と彼の曰し言を信ぜり |
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二二 然れば死人の中より甦へり給ひしのち、弟子たち斯く言ひ給ひしことを憶ひ出して聖書とイエスの言ひ給ひし言とを信じたり。 |
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二二 それで、イエスが死人の中からよみがえったとき、弟子たちはイエスがこう言われたことを思い出して、聖書とイエスのこの言葉とを信じた。 |
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二三 偖イエス逾越節にエルサレムに在しに多の人かれの行し休徵を見て其名を信ぜり |
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二三 過越のまつりの間、イエス、エルサレムに在すほどに、多くの人々その爲し給へる徵を見て御名を信じたり。 |
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二三 過越の祭の間、イエスがエルサレムに滞在しておられたとき、多くの人々は、その行われたしるしを見て、イエスの名を信じた。 |
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二四 イエス自己を彼等に托ず蓋すべての人を知 |
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二四 然れどイエス己を彼らに任せ給はざりき。それは凡ての人を知り、 |
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二四 しかしイエスご自身は、彼らに自分をお任せにならなかった。それは、すべての人を知っておられ、 |
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二五 また人の心の中を知が故に人について證を立る者を求ざれば也 |
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二五 また人の衷にある事を知りたまへば、人に就きて證する者を要せざる故なり。 |
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二五 また人についてあかしする者を、必要とされなかったからである。それは、ご自身人の心の中にあることを知っておられたからである。 |
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3章 |
一 ユダヤ人の宰にてパリサイのニコデモと云る人あり |
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一 爰にパリサイ人にて名をニコデモといふ人あり、ユダヤ人の宰なり。 |
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一 パリサイ人のひとりで、その名をニコデモというユダヤ人の指導者があった。 |
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二 かれ夜イエスに來て曰けるはラビ我儕なんぢは~より來し師なりと知そは~もし人と偕ならずば爾が行るこの休徵は人これを行こと能ざれば也 |
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二 夜イエスの許に來りて言ふ『ラビ、我らは汝の~より來る師なるを知る。~もし偕に在さずば、汝が行ふこれらの徵は誰もなし能はぬなり』 |
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二 この人が夜イエスのもとにきて言った、「先生、わたしたちはあなたが神からこられた教師であることを知っています。神がご一緒でないなら、あなたがなさっておられるようなしるしは、だれにもできはしません」。 |
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三 イエス答て曰けるは誠に實に爾に吿ん人もし新に生ずば~の國を見こと能はじ |
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三 イエス答へて言ひ給ふ『まことに誠に汝に吿ぐ、人あらたに生れずば、~の國を見ること能はず』 |
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三 イエスは答えて言われた、「よくよくあなたに言っておく。だれでも新しく生れなければ、神の国を見ることはできない」。 |
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四 ニコデモ彼に曰けるは人はや老ぬれば如何で復生るゝ事を得んや再び母の腹に入て生る可んや |
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四 ニコデモ言ふ『人はや老いぬれば、爭で生るる事を得んや、再び母の胎に入りて生るることを得んや』 |
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四 ニコデモは言った、「人は年をとってから生れることが、どうしてできますか。もう一度、母の胎にはいって生れることができましょうか」。 |
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五 イエス答けるは誠に實に爾に吿ん人は水と靈とに由て生ざれば~の國に入こと能ざる也 |
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五 イエス答へ給ふ『まことに誠に汝に吿ぐ、人は水と靈とによりて生れずば、~の國に入ること能はず。 |
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五 イエスは答えられた、「よくよくあなたに言っておく。だれでも、水と霊とから生れなければ、神の国にはいることはできない。 |
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六 肉に由て生るゝ者は肉なり靈に由て生るゝ者は靈なり |
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六 肉によりて生るる者は肉なり、靈によりて生るる者は靈なり。 |
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六 肉から生れる者は肉であり、霊から生れる者は霊である。 |
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七 我なんぢに新に生るべき事を言しを奇と爲なかれ |
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七 なんぢら新に生るべしと我が汝に言ひしを怪しむな。 |
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七 あなたがたは新しく生れなければならないと、わたしが言ったからとて、不思議に思うには及ばない。 |
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八 風は己が任に吹なんぢ其聲を聞ども何處より來り何處へ往を知ず凡て靈に由て生るゝ者も此の如し |
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八 風は己が好むところに吹く、汝その聲を聞けども、何處より來り何處へ往くを知らず。すべて靈によりて生るる者も斯のごとし』 |
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八 風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞くが、それがどこからきて、どこへ行くかは知らない。霊から生れる者もみな、それと同じである」。 |
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九 ニコデモ答て如何で此事あらん乎と曰 |
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九 ニコデモ答へて言ふ『いかで斯る事どものあり得べき』 |
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九 ニコデモはイエスに答えて言った、「どうして、そんなことがあり得ましょうか」。 |
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十 イエス答て曰けるは爾はイスラエルの師なるに猶この事を知ざる乎 |
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一〇 イエス答へて言ひ給ふ『なんぢはイスラエルの師にして猶かかる事どもを知らぬか。 |
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一〇 イエスは彼に答えて言われた、「あなたはイスラエルの教師でありながら、これぐらいのことがわからないのか。 |
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十一 誠に實に爾に吿ん我儕知し事をいひ見し事を證するに爾曹は我儕の證を受ず |
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一一 誠にまことに汝に吿ぐ、我ら知ることを語り、また見しことを證す、然るに汝らその證を受けず。 |
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一一 よくよく言っておく。わたしたちは自分の知っていることを語り、また自分の見たことをあかししているのに、あなたがたはわたしたちのあかしを受けいれない。 |
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十二 若われ地の事を言に爾曹信ぜずば况て天の事を言んには何で信ずることを爲んや |
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一二 われ地のことを言ふに汝ら信ぜずば、天のことを言はんには爭で信ぜんや。 |
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一二 わたしが地上のことを語っているのに、あなたがたが信じないならば、天上のことを語った場合、どうしてそれを信じるだろうか。 |
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十三 天より降り天にをる人の子の外に天に升し者なし |
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一三 天より降りし者、即ち人の子の他には、天に昇りしものなし。 |
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一三 天から下ってきた者、すなわち人の子のほかには、だれも天に上った者はない。 |
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十四 モーセ野に蛇を擧し如く人の子も擧らるべし |
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一四 モーセ荒野にて蛇を擧げしごとく、人の子もまた必ず擧げらるべし。 |
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一四 そして、ちょうどモーセが荒野でへびを上げたように、人の子もまた上げられなければならない。 |
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十五 凡て之を信ずる者に亡ること無して永生を受しめんが爲なり |
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一五 すべて信ずる者の彼によりて永遠の生命を得ん爲なり』 |
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一五 それは彼を信じる者が、すべて永遠の命を得るためである」。 |
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十六 それ~は其生たまへる獨子を賜ほどに世の人を愛し給へり此は凡て彼を信ずる者に亡ること無して永生を受しめんが爲なり |
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一六 それ~はその獨子を賜ふほどに世を愛し給へり、すべて彼を信ずる者の亡びずして永遠の生命を得んためなり。 |
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一六 神はそのひとり子を賜わったほどに、この世を愛して下さった。それは御子を信じる者がひとりも滅びないで、永遠の命を得るためである。 |
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十七 ~の其子を世に遣し給へるは世を審判んとに非ず彼に由て世を救んが爲なり |
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一七 ~その子を世に遣したまへるは、世を審かん爲にあらず、彼によりて世の救はれん爲なり。 |
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一七 神が御子を世につかわされたのは、世をさばくためではなく、御子によって、この世が救われるためである。 |
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十八 彼を信ずる者は審判れず信ぜざる者は既に審判れたり蓋~の生たまへる獨子の名を信ぜざるに因 |
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一八 彼を信ずる者は審かれず、信ぜぬ者は旣に審かれたり。~の獨子の名を信ぜざりしが故なり。 |
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一八 彼を信じる者は、さばかれない。信じない者は、すでにさばかれている。神のひとり子の名を信じることをしないからである。 |
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十九 罪の定まる所以は光世に臨しに人その行の惡に因て光を愛せず反て暗を愛すれば也 |
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一九 その審判は是なり。光、世にきたりしに、人その行爲の惡しきによりて、光よりも暗Kを愛したり。 |
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一九 そのさばきというのは、光がこの世にきたのに、人々はそのおこないが悪いために、光よりもやみの方を愛したことである。 |
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二十 凡て惡をなす者は光を惡み其行を責られざらんが爲に光に就らず |
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二〇 すべて惡を行ふ者は光をにくみて光に來らず、その行爲の責められざらん爲なり。 |
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二〇 悪を行っている者はみな光を憎む。そして、そのおこないが明るみに出されるのを恐れて、光にこようとはしない。 |
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二一 眞理を行ふ者に其行の顯れんが爲に光に就る蓋~に遵て行へば也 |
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二一 眞をおこなふ者は光にきたる、その行爲の~によりて行ひたることの顯れん爲なり。 |
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二一 しかし、真理を行っている者は光に来る。その人のおこないの、神にあってなされたということが、明らかにされるためである。 |
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二二 此後イエス弟子とユダヤの地に至り偕に彼處に留りてバプテスマを施す |
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二二 この後イエス、弟子たちとユダヤの地にゆき、其處にともに留りてバプテスマを施し給ふ。 |
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二二 こののち、イエスは弟子たちとユダヤの地に行き、彼らと一緒にそこに滞在して、バプテスマを授けておられた。 |
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二三 ヨハネも亦サリムに近きアイノムに在てバプテスマを施す彼處に水おほきが故なり人々來りてバプテスマを受たり |
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二三 ヨハネもサリムに近きアイノンにてバプテスマを施しゐたり、其處に水おほくある故なり。人々つどひ來りてバプテスマを受く。 |
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二三 ヨハネもサリムに近いアイノンで、バプテスマを授けていた。そこには水がたくさんあったからである。人々がぞくぞくとやってきてバプテスマを受けていた。 |
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二四 此時ヨハネは未だ獄に入られざりき |
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二四 ヨハネは未だ獄に入れられざりしなり。 |
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二四 そのとき、ヨハネはまだ獄に入れられてはいなかった。 |
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二五 ヨハネの弟子とユダヤ人と潔事に就て爭辨ありけるが |
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二五 爰にヨハネの弟子たちと一人のユダヤ人との間に、潔につきて論起りたれば、 |
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二五 ところが、ヨハネの弟子たちとひとりのユダヤ人との間に、きよめのことで争論が起った。 |
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二六 彼等ヨハネに來りて曰けるはラビ視し爾と偕にヨルダンの外に在て爾が證せし者バプテスマを施すに皆かれに來れり |
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二六 彼らヨハネの許に來りて言ふ『ラビ、視よ、汝とともにヨルダンの彼方にありし者、なんぢが證せし者、バプテスマを施し、人みなその許に往くなり』 |
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二六 そこで彼らはヨハネのところにきて言った、「先生、ごらん下さい。ヨルダンの向こうであなたと一緒にいたことがあり、そして、あなたがあかしをしておられたあのかたが、バプテスマを授けており、皆の者が、そのかたのところへ出かけています」。 |
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二七 ヨハネ答て曰けるは人は天より賜ふに非ざれば受ること能ざる也 |
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二七 ヨハネ答へて言ふ『人は天より與へられずば、何をも受くること能はず。 |
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二七 ヨハネは答えて言った、「人は天から与えられなければ、何ものも受けることはできない。 |
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二八 我はキリストに非ず惟その先に遣されし者なりと言し事を證する者は爾曹なり |
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二八 「我はキリストにあらず」唯「その前に遣されたる者なり」と我が言ひしことに就きて證する者は、汝らなり。 |
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二八 『わたしはキリストではなく、そのかたよりも先につかわされた者である』と言ったことをあかししてくれるのは、あなたがた自身である。 |
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二九 新婦をもてる者は新カなり新カの友たちて其聲を聞ば之に縁て喜び多し我いま此喜び滿ることを得たり |
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二九 新婦をもつ者は新カなり、新カの友は、立ちて新カの聲をきくとき、大に喜ぶ、この我が歡喜いま滿ちたり。 |
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二九 花嫁をもつ者は花婿である。花婿の友人は立って彼の声を聞き、その声を聞いて大いに喜ぶ。こうして、この喜びはわたしに満ち足りている。 |
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三十 彼は必ず盛んになり我は必ず衰ふべし |
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三〇 彼は必ず盛になり、我は衰ふべし』 |
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三〇 彼は必ず栄え、わたしは衰える。 |
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三一 天上より來る者は萬物の上にあり地より出る者は地に屬その言ところも地の事なり天より來る者は萬物の上に在 |
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三一 上より來るものは凡ての物の上にあり、地より出づるものは地の者にして、その語ることも地の事なり。天より來るものは凡ての物の上にあり。 |
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三一 上から来る者は、すべてのものの上にある。地から出る者は、地に属する者であって、地のことを語る。天から来る者は、すべてのものの上にある。 |
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三二 彼は自ら其見しところ聞し所の事を證と爲に其證を受る者なし |
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三二 彼その見しところ、聞きしところを證したまふに、誰もその證を受けず。 |
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三二 彼はその見たところ、聞いたところをあかししているが、だれもそのあかしを受けいれない。 |
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三三 その證を受し者は印をもて~の眞なる事を證す |
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三三 その證を受くる者は、印して~を眞なりとす。 |
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三三 しかし、そのあかしを受けいれる者は、神がまことであることを、たしかに認めたのである。 |
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三四 ~の遣しゝ者は~の言を語る蓋~これに靈を賜ひて限量なければ也 |
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三四 ~の遣し給ひし者は~の言をかたる、~、御靈を賜ひて量りなければなり。 |
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三四 神がおつかわしになったかたは、神の言葉を語る。神は聖霊を限りなく賜うからである。 |
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三五 父は子を愛して萬物を其手に授たり |
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三五 父は御子を愛し、萬物をその手に委ね給へり。 |
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三五 父は御子を愛して、万物をその手にお与えになった。 |
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三六 子を信ずる者は窮なき生命をえ子に從はざる者は生命を見ことを得じ且~の怒その上に留らん |
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三六 御子を信ずる者は永遠の生命をもち、御子に從はぬ者は生命を見ず、反つて~の怒その上に止るなり。 |
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三六 御子を信じる者は永遠の命をもつ。御子に従わない者は、命にあずかることがないばかりか、神の怒りがその上にとどまるのである」。 |
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4章 |
一 主おのれの弟子を収ること又バプテスマを施せることヨハネよりも多しとパリサイの人の聞しを知 |
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一 主、おのれの弟子を造り、之にバプテスマを施すこと、ヨハネよりも多しとパリサイ人に聞えたるを知り給ひし時、 |
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一 イエスが、ヨハネよりも多く弟子をつくり、またバプテスマを授けておられるということを、パリサイ人たちが聞き、それを主が知られたとき、 |
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|
二 然ど其實はイエス自らバプテスマを施せるに非ず弟子これを行るなり |
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二 (その實イエス自らパブテスマを施ししにあらず、その弟子たちなり) |
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二 (しかし、イエスみずからが、バプテスマをお授けになったのではなく、その弟子たちであった) |
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三 其時ユダヤを去て復ガリラヤに往 |
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三 ユダヤを去りて復ガリラヤに往き給ふ。 |
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三 ユダヤを去って、またガリラヤへ行かれた。 |
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四 サマリアを經ずして行こと能ず |
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四 サマリヤを經ざるを得ず。 |
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四 しかし、イエスはサマリヤを通過しなければならなかった。 |
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五 遂にサマリアのスカルと云る邑に至れり此邑はヤコブその子ヨセフに予し地に近し |
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五 サマリヤのスカルといふ町にいたり給へるが、この町はヤコブその子ヨセフに與へし土地に近くして、 |
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五 そこで、イエスはサマリヤのスカルという町においでになった。この町は、ヤコブがその子ヨセフに与えた土地の近くにあったが、 |
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六 此にヤコブの井ありイエス行途の疲倦にて其井の傍に坐せり時は晝の十二時ごろなりき |
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六 此處にヤコブの泉あり。イエス旅路に疲れて泉の傍らに坐し給ふ、時は第六時頃なりき。 |
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六 そこにヤコブの井戸があった。イエスは旅の疲れを覚えて、そのまま、この井戸のそばにすわっておられた。時は昼の十二時ごろであった。 |
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七 一人のサマリアの婦水を汲んとて來りければイエスその婦に向て我に飮せよと曰 |
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七 サマリヤの或女、水を汲まんとて來りたれば、イエス之に『われに飮ませよ』と言ひたまふ。 |
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七 ひとりのサマリヤの女が水をくみにきたので、イエスはこの女に、「水を飲ませて下さい」と言われた。 |
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八 蓋弟子たち食物を買んために邑へ往て在ざりし故なり |
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八 弟子たちは食物を買はんとて町にゆきしなり。 |
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八 弟子たちは食物を買いに町に行っていたのである。 |
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九 サマリアの婦いひけるは爾はユダヤ人にして何ぞサマリアの婦なる我に飮ことを求るや此はユダヤ人とサマリアの人とは交際を爲ざれば也 |
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九 サマリヤの女いふ『なんぢはユダヤ人なるに、如何なればサマリヤの女なる我に、飮むことを求むるか』これはユダヤ人とサマリヤ人とは交りせぬ故なり。 |
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九 すると、サマリヤの女はイエスに言った、「あなたはユダヤ人でありながら、どうしてサマリヤの女のわたしに、飲ませてくれとおっしゃるのですか」。これは、ユダヤ人はサマリヤ人と交際していなかったからである。 |
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十 イエス答て曰けるは爾もし~の賜と我に飮せよといふ者の誰なるを知ば爾われに求めん然ば活水を爾に予ふべし |
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一〇 イエス答へて言ひ給ふ『なんぢ若し~の賜物を知り、また「我に飮ませよ」といふ者の誰なるを知りたらんには、之に求めしならん、然らば汝に活ける水を與へしものを』 |
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一〇 イエスは答えて言われた、「もしあなたが神の賜物のことを知り、また、『水を飲ませてくれ』と言った者が、だれであるか知っていたならば、あなたの方から願い出て、その人から生ける水をもらったことであろう」。 |
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十一 婦イエスに曰けるは主よ汲器なく井も亦深し爾何處より汲て其活水を有るか |
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一一 女いふ『主よ、なんぢは汲む物を持たず、井は深し、その活ける水は何處より得しぞ。 |
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一一 女はイエスに言った、「主よ、あなたは、くむ物をお持ちにならず、その上、井戸は深いのです。その生ける水を、どこから手に入れるのですか。 |
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十二 この井に我儕の先祖ヤコブの予し所なり彼も其子も亦畜までも皆これを飮たり爾は彼よりも勝れし者ならん乎 |
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一二 汝はこの井を我らに與へし我らの父ヤコブよりも大なるか、彼も、その子らも、その家畜も、これより飮みたり』 |
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一二 あなたは、この井戸を下さったわたしたちの父ヤコブよりも、偉いかたなのですか。ヤコブ自身も飲み、その子らも、その家畜も、この井戸から飲んだのですが」。 |
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十三 イエス答て曰けるは凡て此水を飮者はまた渴ん |
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一三 イエス答へて言ひ給ふ『すべて此の水をのむ者は、また渴かん。 |
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一三 イエスは女に答えて言われた、「この水を飲む者はだれでも、またかわくであろう。 |
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十四 然ど我あたふる水を飮者は永遠かわく事なし且わが予る水は其中にて泉となり湧出て永生に至るべし |
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一四 然れど我があたふる水を飮む者は、永遠に渴くことなし。わが與ふる水は彼の中にて泉となり、永遠の生命の水湧きいづべし』 |
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一四 しかし、わたしが与える水を飲む者は、いつまでも、かわくことがないばかりか、わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠の命に至る水が、わきあがるであろう」。 |
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十五 婦いひけるは主よ我が渴ことなく亦この處に水を汲に來らぬ爲その水を我に予へよ |
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一五 女いふ『主よ、わが渴くことなく、又ここに汲みに來ぬために、その水を我にあたへよ』 |
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一五 女はイエスに言った、「主よ、わたしがかわくことがなく、また、ここにくみにこなくてもよいように、その水をわたしに下さい」。 |
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十六 イエス曰けるは爾ゆきて夫を呼來れ |
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一六 イエス言ひ給ふ『ゆきて夫をここに呼びきたれ』 |
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一六 イエスは女に言われた、「あなたの夫を呼びに行って、ここに連れてきなさい」。 |
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十七 婦こたへて曰けるは我に夫なしイエス曰けるは夫なしと言るほ理なり |
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一七 女こたへて言ふ『われに夫なし』イエス言ひ給ふ『夫なしといふは宜なり。 |
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一七 女は答えて言った、「わたしには夫はありません」。イエスは女に言われた、「夫がないと言ったのは、もっともだ。 |
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十八 蓋なんぢ曩に五人の夫ありて今ある者は爾の夫に非ず爾の言しは眞なり |
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一八 夫は五人までありしが、今ある者は、なんぢの夫にあらず。無しと云へるは眞なり』 |
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一八 あなたには五人の夫があったが、今のはあなたの夫ではない。あなたの言葉のとおりである」。 |
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十九 婦いひけるは主よ我なんぢを預言者と知り |
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一九 女いふ『主よ、我なんぢを預言者とみとむ。 |
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一九 女はイエスに言った、「主よ、わたしはあなたを預言者と見ます。 |
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二十 我儕の列祖は此山にて拜しゝに爾曹は拜すべき所はエルサレムなりと曰 |
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二〇 我らの先祖たちは此の山にて拜したるに、汝らは拜すべき處をエルサレムなりと言ふ』 |
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二〇 わたしたちの先祖は、この山で礼拝をしたのですが、あなたがたは礼拝すべき場所は、エルサレムにあると言っています」。 |
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二一 イエス曰けるは婦よ我を信ぜよ唯に此山のみに非ず亦エルサレム而已にも非ずして爾曹父を拜すべき時きたらん |
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二一 イエス言ひ給ふ『をんなよ、我が言ふことを信ぜよ、此の山にもエルサレムにもあらで、汝ら父を拜する時きたるなり。 |
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二一 イエスは女に言われた、「女よ、わたしの言うことを信じなさい。あなたがたが、この山でも、またエルサレムでもない所で、父を礼拝する時が来る。 |
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二二 爾曹の拜する者を爾曹は知ず我儕の拜する者を我儕は知そは救はユダヤ人より出るが故なり |
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二二 汝らは知らぬ者を拜し、我らは知る者を拜す、救はユダヤ人より出づればなり。 |
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二二 あなたがたは自分の知らないものを拝んでいるが、わたしたちは知っているかたを礼拝している。救はユダヤ人から来るからである。 |
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二三 眞の拜する者靈と眞を以て父を拜する時きたらん今その時になれり夫父は是の如く拜する者を要め給ふ |
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二三 されど眞の禮拜者の、靈と眞とをもて父を拜する時きたらん、今すでに來れり。父は斯のごとく拜する者を求めたまふ。 |
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二三 しかし、まことの礼拝をする者たちが、霊とまこととをもって父を礼拝する時が来る。そうだ、今きている。父は、このような礼拝をする者たちを求めておられるからである。 |
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二四 ~は靈なれば拜する者もまた靈と眞を以て之を拜すべき也 |
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二四 ~は靈なれば、拜する者も靈と眞とをもて拜すべきなり』 |
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二四 神は霊であるから、礼拝をする者も、霊とまこととをもって礼拝すべきである」。 |
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二五 婦いひけるはキリストと稱るメッシヤの來らん事を知かれ來らん時凡の事を我儕に吿ん |
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二五 女いふ『我はキリストと稱ふるメシヤの來ることを知る、彼きたらば、ゥ般のことを我らに吿げん』 |
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二五 女はイエスに言った、「わたしは、キリストと呼ばれるメシヤがこられることを知っています。そのかたがこられたならば、わたしたちに、いっさいのことを知らせて下さるでしょう」。 |
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二六 イエス曰けるは爾と語る所の我は其なり |
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二六 イエス言ひ給ふ『なんぢと語る我はそれなり』 |
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二六 イエスは女に言われた、「あなたと話をしているこのわたしが、それである」。 |
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二七 時に弟子きたりて彼の婦と語れるを奇みけれど其何を求るや又なに故これと語れるか問る者も無りき |
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二七 時に弟子たち歸りきたりて、女と語り給ふを怪しみたれど、何を求め給ふか、何故かれと語り給ふかと問ふもの誰もなし。 |
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二七 そのとき、弟子たちが帰って来て、イエスがひとりの女と話しておられるのを見て不思議に思ったが、しかし、「何を求めておられますか」とも、「何を彼女と話しておられるのですか」とも、尋ねる者はひとりもなかった。 |
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二八 婦その水瓶を遺して邑にゆき人々に曰けるは |
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二八 爰に女その水瓶を遺しおき、町にゆきて人々にいふ、 |
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二八 この女は水がめをそのままそこに置いて町に行き、人々に言った、 |
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二九 我すべて行し事を我に吿し人を來りて觀よ此はキリストならず乎 |
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二九 『來りて見よ、わが爲しし事をことごとく我に吿げし人を。この人、或はキリストならんか』 |
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二九 「わたしのしたことを何もかも、言いあてた人がいます。さあ、見にきてごらんなさい。もしかしたら、この人がキリストかも知れません」。 |
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三十 是に於て人々邑を出てイエスの所に來る |
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三〇 人々町を出でてイエスの許にゆく。 |
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三〇 人々は町を出て、ぞくぞくとイエスのところへ行った。 |
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三一 その間に弟子かれに請てラビ食し給へと曰ければ |
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三一 この間に弟子たち請ひて言ふ『ラビ、食し給へ』 |
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三一 その間に弟子たちはイエスに、「先生、召しあがってください」とすすめた。 |
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三二 イエス彼等に曰けるは我に爾曹の知ざる食物あり |
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三二 イエス言ひたまふ『我には汝らの知らぬ我が食する食物あり』 |
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三二 ところが、イエスは言われた、「わたしには、あなたがたの知らない食物がある」。 |
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三三 弟子たがひに曰けるは食物を彼に饋し者は誰なる乎 |
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三三 弟子たち互にいふ『たれか食する物を持ち來りしか』 |
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三三 そこで、弟子たちが互に言った、「だれかが、何か食べるものを持ってきてさしあげたのであろうか」。 |
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三四 イエス彼等に曰けるは我を遣しゝ者の旨に遵ひ其工を成畢る是わが糧なり |
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三四 イエス言ひ給ふ『われを遣し給へる者の御意を行ひ、その御業をなし遂ぐるは、是わが食物なり。 |
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三四 イエスは彼らに言われた、「わたしの食物というのは、わたしをつかわされたかたのみこころを行い、そのみわざをなし遂げることである。 |
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三五 なんぢら穫時になるには猶四ケ月ありと云ずや我なんぢらに吿ん目を舉て觀よはや田は熟て穫時になれり |
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三五 なんぢら收穫時の來るには、なは四月ありと言はずや。我なんぢらに吿ぐ、目をあげて畑を見よ、はや黃みて收穫時になれり。 |
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三五 あなたがたは、刈入れ時が来るまでには、まだ四か月あると、言っているではないか。しかし、わたしはあなたがたに言う。目をあげて畑を見なさい。はや色づいて刈入れを待っている。 |
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三六 穫者は其工錢を受て永生に至るべき實を積む期て播者と穫者と同に喜ばん |
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三六 刈る者は、價を受けて永遠の生命の實を集む。播く者と刈る者とともに喜ばん爲なり。 |
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三六 刈る者は報酬を受けて、永遠の命に至る実を集めている。まく者も刈る者も、共々に喜ぶためである。 |
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三七 彼は播これは穫と云るは之に就て眞なり |
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三七 俚諺に彼は播き、此は刈るといへるは、斯において眞なり。 |
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三七 そこで、『ひとりがまき、ひとりが刈る』ということわざが、ほんとうのこととなる。 |
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三八 我たんぢらの勞せざりし所を穫せんとして爾曹を遣せり他の人々勞せしにより爾曹は其勞したる果を受たり |
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三八 我なんぢらを遣して勞せざりしものを刈らしむ。他の人々さきに勞し、汝らはその勞を收むるなり』 |
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三八 わたしは、あなたがたをつかわして、あなたがたがそのために労苦しなかったものを刈りとらせた。ほかの人々が労苦し、あなたがたは、彼らの労苦の実にあずかっているのである」。 |
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三九 かの婦わが行し凡の事を彼われに吿しと證せし言に因て其邑のサマリア人おほくイエスを信ぜり |
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三九 此の町の多くのサマリヤ人、女の『わが爲しし事をことごとく吿げし』と證したる言によりてイエスを信じたり。 |
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三九 さて、この町からきた多くのサマリヤ人は、「この人は、わたしのしたことを何もかも言いあてた」とあかしした女の言葉によって、イエスを信じた。 |
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四十 是に於てサマリアの人イエスの所に來りて偕に留り給はん事を求しかばイエス此に二日留れり |
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四〇 斯てサマリヤ人、御許にきたりて此の町に留らんことを請ひたれば、此處に二日とどまり給ふ。 |
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四〇 そこで、サマリヤ人たちはイエスのもとにきて、自分たちのところに滞在していただきたいと願ったので、イエスはそこにふつか滞在された。 |
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四一 彼の言に困て信ぜし者前よりも多かりき |
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四一 御言によりて猶もおほくの人、信じたり。 |
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四一 そしてなお多くの人々が、イエスの言葉を聞いて信じた。 |
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四二 かれら婦に曰けるは今なんぢの言し事に因て信ずるに非ず我儕みづから聞て此は誠に世の救主と知たれば也 |
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四二 かくて女に言ふ『今われらの信ずるは汝のかたる言によるにあらず、親しく聽きて、これは眞に世の救主なりと知りたる故なり』 |
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四二 彼らは女に言った、「わたしたちが信じるのは、もうあなたが話してくれたからではない。自分自身で親しく聞いて、この人こそまことに世の救主であることが、わかったからである」。 |
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四三 二日すぎてイエス此を去ガリラヤに往り |
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四三 二日の後イエスここを去りてガリラヤに往き給ふ。 |
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四三 ふつかの後に、イエスはここを去ってガリラヤへ行かれた。 |
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四四 蓋かれ自ら預言者に本土にて尊ばるゝ事なしと言しに因 |
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四四 イエス自ら證して預言者は己がクにて尊ばるる事なしと言ひ給へり。 |
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四四 イエスはみずからはっきり、「預言者は自分の故郷では敬われないものだ」と言われたのである。 |
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四五 ガリラヤに至りし時ガリラヤの人々彼を接たり蓋さきに節筵の時イエスのエルサレムにて行ひし凡の事を彼等もその節筵に往て之を見たれば也 |
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四五 斯てガリラヤに往き給へば、ガリラヤ人これを迎へたり。前に彼らも祭に上り、その祭の時にエルサレムにて行ひ給ひし事を見たる故なり。 |
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四五 ガリラヤに着かれると、ガリラヤの人たちはイエスを歓迎した。それは、彼らも祭に行っていたので、その祭の時、イエスがエルサレムでなされたことをことごとく見ていたからである。 |
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四六 イエス復ガリラヤのカナに至る此は曩に水を酒に爲し處なり時に王の大臣その子病に係てカペナウンに在ければ |
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四六 イエス復ガリラヤのカナに往き給ふ、ここは前に水を葡萄酒になし給ひし處なり。時に王の近臣あり、その子カペナウムにて病みゐたれば、 |
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四六 イエスは、またガリラヤのカナに行かれた。そこは、かつて水をぶどう酒にかえられた所である。ところが、病気をしているむすこを持つある役人がカペナウムにいた。 |
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四七 イエスのユダヤよりガリラヤに來れる事をきゝ即ちイエスの所に往てカペナウンに下り其子を醫し給はんことを請りそは瀕死なりければ也 |
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四七 イエスのユダヤよりガリラヤに來り給へるを聞き、御許にゆきてカペナウムに下り、その子を醫し給はんことを請ふ、子は死ぬばかりなりしなり。 |
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四七 この人が、ユダヤからガリラヤにイエスのきておられることを聞き、みもとにきて、カペナウムに下って、彼の子をなおしていただきたいと、願った。その子が死にかかっていたからである。 |
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四八 イエス彼に曰けるは爾曹休徵と異能を見ずば信ぜじ |
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四八 爰にイエス言ひ給ふ『なんぢら徵と不思議とを見ずば、信ぜじ』 |
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四八 そこで、イエスは彼に言われた、「あなたがたは、しるしと奇跡とを見ない限り、決して信じないだろう」。 |
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四九 彼曰けるは主よ我子の死ざる先に下り給へ |
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四九 近臣いふ『主よ、わが子の死なぬ間にくだり給へ』 |
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四九 この役人はイエスに言った、「主よ、どうぞ、子供が死なないうちにきて下さい」。 |
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五十 イエス曰けるは往なんぢの子は生るなり其人イエスの曰し言を信じて去ぬ |
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五〇 イエス言ひ給ふ『かへれ、汝の子は生くるなり』彼はイエスの言ひ給ひしことを信じて歸りしが、 |
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五〇 イエスは彼に言われた、「お帰りなさい。あなたのむすこは助かるのだ」。彼は自分に言われたイエスの言葉を信じて帰って行った。 |
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五一 下る時その僕等かれに遇て吿けるは爾の子は生るなり |
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五一 下る途中、僕ども往き遇ひて、その子の生きたることを吿ぐ。 |
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五一 その下って行く途中、僕たちが彼に出会い、その子が助かったことを告げた。 |
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五二 彼その愈はじめし時を彼等に問けれげ答て昨日の晝の一時に熱さめたりと曰 |
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五二 その瘉えはじめし時を問ひしに『昨日の第七時に熱去れり』といふ。 |
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五二 そこで、彼は僕たちに、そのなおりはじめた時刻を尋ねてみたら、「きのうの午後一時に熱が引きました」と答えた。 |
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五三 父はイエスの爾が子は生る也と言たまひし時と其時の同きことを知て己と其全家ことごとく皆信ぜり |
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五三 父その時の、イエスが『なんぢの子は生くるなり』と言ひ給ひし時と同じきを知り、而して己も家の者もみな信じたり。 |
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五三 それは、イエスが「あなたのむすこは助かるのだ」と言われたのと同じ時刻であったことを、この父は知って、彼自身もその家族一同も信じた。 |
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五四 この第二の奇跡はイエス ユダヤよりガリラヤに至て行るなり |
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五四 是はイエス、ユダヤよりガリラヤに往きて爲し給へる第二の徵なり。 |
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五四 これは、イエスがユダヤからガリラヤにきてなされた第二のしるしである。 |
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5章 |
一 厥後ユダヤ人の節筵ありければイエス エルサレムに上れり |
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一 この後ユダヤ人の祭ありて、イエス、エルサレムに上り給ふ。 |
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一 こののち、ユダヤ人の祭があったので、イエスはエルサレムに上られた。 |
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二 エルサレムの羊門の邊にヘブルの方言にてベテスダといふ池あり此池に五の廊あり |
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二 エルサレムにある羊門のほとりにヘブル語にてベテスダといふ池あり、之にそひて五つの廊あり。 |
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二 エルサレムにある羊の門のそばに、ヘブル語でベテスダと呼ばれる池があった。そこには五つの廊があった。 |
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三 その中に病者、瞽者、跛者また衰たる者など多く臥ゐて水の動を待り |
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三 その內に病める者・盲人・跛者・瘦せ衰へたる者ども夥多しく臥しゐたり。(水の動くを待てるなり。 |
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三 その廊の中には、病人、盲人、足なえ、やせ衰えた者などが、大ぜいからだを横たえていた。〔彼らは水の動くのを待っていたのである。 |
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四 そは天の使時々池に下て水を動すとあり水の動るのち先ちて池に人し者は何の病によらず愈たり |
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四 それは御使のをりをり降りて水を動かすことあれば、その動きたるのち最先に池にいる者は、如何なる病にても瘉ゆる故なり) |
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四 それは、時々、主の御使がこの池に降りてきて水を動かすことがあるが、水が動いた時まっ先にはいる者は、どんな病気にかかっていても、いやされたからである。〕 |
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五 三十八年病たる者一人かしこに在 |
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五 爰に三十八年、病になやむ人ありしが、 |
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五 さて、そこに三十八年のあいだ、病気に悩んでいる人があった。 |
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六 イエス彼が臥をるを見て其病の久を知これに曰けるは愈んことを欲ふや |
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六 イエスその臥し居るを見、かつその病の久しきを知り、之に『なんぢ瘉えんことを願ふか』と言ひ給へば、 |
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六 イエスはその人が横になっているのを見、また長い間わずらっていたのを知って、その人に「なおりたいのか」と言われた。 |
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七 病る者こたへけるは主よ水の動るとき我を扶て池に入る人なし我いらんとする時は他の人くだりて我より先に入 |
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七 病める者こたふ『主よ、水の動くとき、我を池に入るる者なし、我が往くほどに他の人、さきだち下るなり』 |
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七 この病人はイエスに答えた、「主よ、水が動く時に、わたしを池の中に入れてくれる人がいません。わたしがはいりかけると、ほかの人が先に降りて行くのです」。 |
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八 イエス彼に曰けるは起よ床を取収て行め |
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八 イエス言ひ給ふ『起きよ、床を取りあげて歩め』 |
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八 イエスは彼に言われた、「起きて、あなたの床を取りあげ、そして歩きなさい」。 |
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九 その人立刻に愈すなはち床を取収て行めり此日は安息日なりき |
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九 この人ただちに瘉え、床を取りあげて歩めり。その日は安息日に當りたれば、 |
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九 すると、この人はすぐにいやされ、床をとりあげて歩いて行った。その日は安息日であった。 |
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十 ユダヤ人いえし者に曰けるは今日は安息日なれば爾床を取収は宜からず |
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一〇 ユダヤ人、醫されたる人にいふ『安息日なり、床を取りあぐるは宜しからず』 |
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一〇 そこでユダヤ人たちは、そのいやされた人に言った、「きょうは安息日だ。床を取りあげるのは、よろしくない」。 |
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十一 彼等に答けるは我を愈しゝ者われに床を取収て行めと言り |
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一一 答ふ『われを醫ししその人「床を取りあげて歩め」と言へり』 |
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一一 彼は答えた、「わたしをなおして下さったかたが、床を取りあげて歩けと、わたしに言われました」。 |
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十二 かれら問けるは爾に牀を取収て行めと言し人は誰なるぞ乎 |
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一二 かれら問ふ『「取りあげて歩め」と言ひし人は誰なるか』 |
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一二 彼らは尋ねた、「取りあげて歩けと言った人は、だれか」。 |
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十三 愈し者その誰なるを知ざりき蓋かしこに多の人をりし故イエス避たれば也 |
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一三 されど醫されし者は、その誰なるを知らざりき、そこに群衆ゐたればイエス退き給ひしに因る。 |
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一三 しかし、このいやされた人は、それがだれであるか知らなかった。群衆がその場にいたので、イエスはそっと出て行かれたからである。 |
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十四 厥後イエス殿にて其人に遇いひけるは視よ爾すでに愈たり復罪を犯こと勿れ恐くは前に勝る災禍なんぢに罹ん |
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一四 この後イエス宮にて彼に遇ひて言ひたまふ『視よ、なんぢ癒えたり。再び罪を犯すな、恐らくは更に大なる惡しきこと汝に起らん』 |
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一四 そののち、イエスは宮でその人に出会ったので、彼に言われた、「ごらん、あなたはよくなった。もう罪を犯してはいけない。何かもっと悪いことが、あなたの身に起るかも知れないから」。 |
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十五 其人ゆきてユダヤ人に己を愈しゝ者はイエスなりと吿 |
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一五 この人ゆきてユダヤ人に、おのれを醫したる者のイエスなるを吿ぐ。 |
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一五 彼は出て行って、自分をいやしたのはイエスであったと、ユダヤ人たちに告げた。 |
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十六 是に於てユダヤ人イエスを窘迫て殺さんと謀る蓋かれが此事を行しは安息日なりければ也 |
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一六 ここにユダヤ人かかる事を安息日になすとて、イエスを責めたれば、 |
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一六 そのためユダヤ人たちは、安息日にこのようなことをしたと言って、イエスを責めた。 |
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十七 イエス彼等に答けるは我父は今に至るまで働き給ふ我もまた働くなり |
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一七 イエス答へ給ふ『わが父は今にいたるまで働き給ふ、我もまた働くなり』 |
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一七 そこで、イエスは彼らに答えられた、「わたしの父は今に至るまで働いておられる。わたしも働くのである」。 |
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十八 此に因てユダヤ人いよいよイエスを殺さんと謀るそは安息日を犯すのみならず~を己が父といひ己を~と齊すればなり |
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一八 此に由りてユダヤ人いよいよイエスを殺さんと思ふ。それは安息日を破るのみならず、~を我が父といひて己を~と等しき者になし給ひし故なり。 |
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一八 このためにユダヤ人たちは、ますますイエスを殺そうと計るようになった。それは、イエスが安息日を破られたばかりではなく、神を自分の父と呼んで、自分を神と等しいものとされたからである。 |
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十九 是故にイエス彼等に答て曰けるは誠に實に爾曹に吿ん子は父の行ふ事を見て行ふの外は何事をも行ふこと能ず蓋すべて父の行ふ事を子も亦行へばなり |
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一九 イエス答へて言ひ給ふ『まことに誠に汝らに吿ぐ、子は父のなし給ふことを見て行ふほかは自ら何事をも爲し得ず、父のなし給ふことは子もまた同じく爲すなり。 |
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一九 さて、イエスは彼らに答えて言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。子は父のなさることを見てする以外に、自分からは何事もすることができない。父のなさることであればすべて、子もそのとおりにするのである。 |
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二十 父は子を愛し凡て己の行ふ所の事を彼に示す爾曹をして奇ましめん爲にかの事等より更に大なる事を彼に示さん |
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二〇 父は子を愛してその爲す所をことごとく子に示したまふ。また更に大なる業を示し給はん、汝等をして怪しましめん爲なり。 |
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二〇 なぜなら、父は子を愛して、みずからなさることは、すべて子にお示しになるからである。そして、それよりもなお大きなわざを、お示しになるであろう。あなたがたが、それによって不思議に思うためである。 |
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二一 そは父の死し者を甦らせて生しむるが如く子も己の意に從ひて人を生しむべし |
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二一 父の死にし者を起して活し給ふごとく、子もまた己が欲する者を活すなり。 |
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二一 すなわち、父が死人を起して命をお与えになるように、子もまた、そのこころにかなう人々に命を与えるであろう。 |
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二二 それ父は誰をも鞫ず審判は凡て子に委たり |
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二二 父は誰をも審き給はず、審判をさへみな子に委ね給へり。 |
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二二 父はだれをもさばかない。さばきのことはすべて、子にゆだねられたからである。 |
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二三 是すべての人をして父を敬ふ如く子をも敬はしめんが爲なり子を敬はざる者は之を遣しゝ父を敬はず |
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二三 これ凡ての人の父を敬ふごとくに子を敬はん爲なり。子を敬はぬ者は之を遣し給ひし父をも敬はぬなり。 |
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二三 それは、すべての人が父を敬うと同様に、子を敬うためである。子を敬わない者は、子をつかわされた父をも敬わない。 |
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二四 誠に實に爾曹に吿ん我言をきゝ我を遣しゝ者を信ずる者は永生を有かつ審判に至らず死より生に遷れり |
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二四 誠にまことに汝らに吿ぐ、わが言をききて我を遣し給ひし者を信ずる人は、永遠の生命をもち、かつ審判に至らず、死より生命に移れるなり。 |
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二四 よくよくあなたがたに言っておく。わたしの言葉を聞いて、わたしをつかわされたかたを信じる者は、永遠の命を受け、またさばかれることがなく、死から命に移っているのである。 |
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二五 誠に實に爾曹に吿ん死し者~の子の聲を聞とき來らん今その時になれり之を聞者は生べし |
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二五 誠にまことに汝らに吿ぐ、死にし人、~の子の聲をきく時きたらん、今すでに來れり、而して聞く人は活くべし。 |
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二五 よくよくあなたがたに言っておく。死んだ人たちが、神の子の声を聞く時が来る。今すでにきている。そして聞く人は生きるであろう。 |
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二六 それ父は自ら生を有り其如く子にも賜て自ら生を有たせたり |
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二六 これ父みづから生命を有ち給ふごとく、子にも自ら生命を有つことを得させ、 |
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二六 それは、父がご自分のうちに生命をお持ちになっていると同様に、子にもまた、自分のうちに生命を持つことをお許しになったからである。 |
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二七 また人の子たるに因て之に審判するの權威を賜へり |
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二七 また人の子たるに因りて審判する權を與へ給ひしなり。 |
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二七 そして子は人の子であるから、子にさばきを行う権威をお与えになった。 |
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二八 之を奇と爲こと勿そは墓に在者みな其聲を聞て出るとき來んとすれば也 |
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二八 汝ら之を怪しむな、墓にある者みな~の子の聲をききて出づる時きたらん。 |
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二八 このことを驚くには及ばない。墓の中にいる者たちがみな神の子の声を聞き、 |
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二九 善事を行し者は生を得に甦り惡事を行し者は審判を得るに甦るべし |
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二九 善をなしし者は生命に甦へり、惡を行ひし者は審判に甦へるべし。 |
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二九 善をおこなった人々は、生命を受けるためによみがえり、悪をおこなった人々は、さばきを受けるためによみがえって、それぞれ出てくる時が来るであろう。 |
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三十 われ何事をも自ら行ふこと能ず聞ところに遵ひて審判す我審判は公平そは我わが意を行ふことを求ず我を遣しゝ父の意を行ふことを求ればなり |
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三〇 我みづから何事もなし能はず、ただ聞くままに審くなり。わが審判は正し、それは我が意を求めずして、我を遣し給ひし者の御意を求むるに因る。 |
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三〇 わたしは、自分からは何事もすることができない。ただ聞くままにさばくのである。そして、わたしのこのさばきは正しい。それは、わたし自身の考えでするのではなく、わたしをつかわされたかたの、み旨を求めているからである。 |
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三一 もし我事を我みづから證せば我證は眞ならず |
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三一 我もし己につきて證せば、我が證は眞ならず。 |
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三一 もし、わたしが自分自身についてあかしをするならば、わたしのあかしはほんとうではない。 |
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三二 別に我事を證する者あり我その我事を證する證の眞なるを知 |
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三二 我につきて證する者は、他にあり、その我につきて證する證の眞なるを我は知る。 |
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三二 わたしについてあかしをするかたはほかにあり、そして、その人がするあかしがほんとうであることを、わたしは知っている。 |
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三三 なんぢら曩に人をヨハネに遣しゝに彼眞理の爲に證を作り |
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三三 なんぢら前に人をヨハネに遣ししに、彼は眞につきて證せり。 |
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三三 あなたがたはヨハネのもとへ人をつかわしたが、そのとき彼は真理についてあかしをした。 |
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三四 然どわれ人の證を受ず此事を言は爾曹の救れんが爲なり |
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三四 我は人よりの證を受くる事をせねど、唯なんぢらの救はれん爲に之を言ふ。 |
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三四 わたしは人からあかしを受けないが、このことを言うのは、あなたがたが救われるためである。 |
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三五 ヨハネは燃て光れる燈なり爾曹このみて暫く其光を喜べり |
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三五 かれは燃えて輝く燈火なりしが、汝等その光にありて暫時よろこぶ事をせり。 |
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三五 ヨハネは燃えて輝くあかりであった。あなたがたは、しばらくの間その光を喜び楽しもうとした。 |
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三六 我はヨハネより大なる證あり蓋父の我に賜て成遂しむる事すなはち我行ふ所の事は是父の我を遣しゝことを證すればなり |
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三六 然れど我にはヨハネの證よりも大なる證あり。父の我にあたへて成し遂げしめ給ふわざ、即ち我がおこなふ業は、我につきて父の我を遣し給ひたるを證し、 |
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三六 しかし、わたしには、ヨハネのあかしよりも、もっと力あるあかしがある。父がわたしに成就させようとしてお与えになったわざ、すなわち、今わたしがしているこのわざが、父のわたしをつかわされたことをあかししている。 |
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三七 且われを遣しゝ父も我ことを證せり爾曹いまだ其聲を聞ず未だ其形を見ず |
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三七 また我をおくり給ひし父も、我につきて證し給へり。汝らは未だその御聲を聞きし事なく、その御形を見し事なし。 |
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三七 また、わたしをつかわされた父も、ご自分でわたしについてあかしをされた。あなたがたは、まだそのみ声を聞いたこともなく、そのみ姿を見たこともない。 |
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三八 その道は爾曹の心に存ざりき蓋なんぢら其遣しゝ者を信ぜざるに因て知るゝ也 |
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三八 その御言は汝らの衷にとどまらず、その遣し給ひし者を信ぜぬに因りて知らるるなり。 |
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三八 また、神がつかわされた者を信じないから、神の御言はあなたがたのうちにとどまっていない。 |
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三九 なんぢら聖書に永生ありと意て之を探索この聖書は我について證する者なり |
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三九 汝らは聖書に永遠の生命ありと思ひて之を査ぶ、されどこの聖書は我につきて證するものなり。 |
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三九 あなたがたは、聖書の中に永遠の命があると思って調べているが、この聖書は、わたしについてあかしをするものである。 |
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四十 爾曹わが所に生を得んがため來るを欲ず |
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四〇 然るに汝ら生命を得んために我に來るを欲せず。 |
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四〇 しかも、あなたがたは、命を得るためにわたしのもとにこようともしない。 |
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四一 われ人の榮を受ず |
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四一 我は人よりの譽をうくる事をせず、 |
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四一 わたしは人からの誉を受けることはしない。 |
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四二 われ爾曹を知なんぢらは其心に~を愛するの愛あらざる也 |
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四二 ただ汝らの衷に~を愛する事なきを知る。 |
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四二 しかし、あなたがたのうちには神を愛する愛がないことを知っている。 |
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四三 我は吾父の名に靠て來しに爾曹われを接ずもし他の人おのが名に靠て來ば爾曹これを接ん |
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四三 我はわが父の名によりて來りしに、汝等われを受けず、もし他の人おのれの名によりて來らば之を受けん。 |
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四三 わたしは父の名によってきたのに、あなたがたはわたしを受けいれない。もし、ほかの人が彼自身の名によって来るならば、その人を受けいれるのであろう。 |
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四四 爾曹は互に人の榮を受て~より出る榮を求ざる者なるに何で能信ずることを得んや |
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四四 互い譽をうけて唯一の~よりの譽を求めぬ汝らは、爭で信ずることを得んや。 |
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四四 互に誉を受けながら、ただひとりの神からの誉を求めようとしないあなたがたは、どうして信じることができようか。 |
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四五 爾曹を父に訴る者と我を意ふ勿れ爾曹を訴るもの一人あり即ち爾曹が恃ところのモーセなり |
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四五 われ父に汝らを訴へんとすと思ふな、訴ふるもの一人あり、汝らがョとするモーセなり。 |
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四五 わたしがあなたがたのことを父に訴えると、考えてはいけない。あなたがたを訴える者は、あなたがたが頼みとしているモーセその人である。 |
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四六 若モーセを信ぜば我を信ずべし蓋モーセ我事を書たればなり |
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四六 若しモーセを信ぜしならば、我を信ぜしならん、彼は我につきて錄したればなり。 |
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四六 もし、あなたがたがモーセを信じたならば、わたしをも信じたであろう。モーセは、わたしについて書いたのである。 |
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四七 若モーセの書しゝ事を信ぜずば何で我言しことを信ぜんや |
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四七 されど彼の書を信ぜずば、爭で我が言を信ぜんや』 |
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四七 しかし、モーセの書いたものを信じないならば、どうしてわたしの言葉を信じるだろうか」。 |
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6章 |
一 此後イエス ガラリヤの湖すなはちチベリヤの湖の前岸へ濟しに |
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一 この後イエス、ガリラヤの海、即ちテベリヤの海の彼方にゆき給へば、 |
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一 そののち、イエスはガリラヤの海、すなわち、テベリヤ湖の向こう岸へ渡られた。 |
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二 許多の人々これに隨ふ蓋彼が病し者に行し休徵を見しが故なり |
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二 大なる群衆これに從ふ、これは病みたる者に行ひたまへる徵を見し故なり。 |
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二 すると、大ぜいの群衆がイエスについてきた。病人たちになさっていたしるしを見たからである。 |
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三 イエス山に上り弟子と偕に其處に坐せり |
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三 イエス、山に登りて、弟子たちと共にそこに座し給ふ。 |
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三 イエスは山に登って、弟子たちと一緒にそこで座につかれた。 |
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四 時ユダヤ人の踰越の節に邇し |
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四 時はユダヤ人の祭なる過越に近し。 |
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四 時に、ユダヤ人の祭である過越が間近になっていた。 |
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五 イエス目を擧て多の人の來れるを見てピリポに曰けるは何慮よりパンを市て彼等に食しむ可か |
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五 イエス眼をあげて大なる群衆のきたるを見てピリボに言ひ給ふ『われら何處よりパンを買ひて、此の人々に食はすべきか』 |
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五 イエスは目をあげ、大ぜいの群衆が自分の方に集まって来るのを見て、ピリポに言われた、「どこからパンを買ってきて、この人々に食べさせようか」。 |
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六 自ら其爲んとする事を知ど彼を試んが爲に如此いへる也 |
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六 かく言ひ給ふはピリポを試むるためにて、自ら爲さんとする事を知り給ふなり。 |
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六 これはピリポをためそうとして言われたのであって、ご自分ではしようとすることを、よくご承知であった。 |
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七 ピリポ答けるは銀二百のパンも人ごとに少づつ予てなは足ざるべし |
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七 ピリポ答へて言ふ『二百デナリのパンありとも、人々すこしづづ受くるになほ足らじ』 |
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七 すると、ピリポはイエスに答えた、「二百デナリのパンがあっても、めいめいが少しずついただくにも足りますまい」。 |
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八 弟子の一人卽ちシモンペテロの兄弟アンデレ イエスに曰けるは |
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八 弟子の一人にてシモン・ペテロの兄弟なるアンデレ言ふ |
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八 弟子のひとり、シモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った、 |
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九 此に一人の童子あり麰麥のパン五と小き魚二を有り然どこの許多の人に如何すべきぞ |
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九 『ここに一人の童子あり、大麥のパン五つと小き肴二つとをもてり、然れど此の多くの人には何にか爲らん』 |
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九 「ここに、大麦のパン五つと、さかな二ひきとを持っている子供がいます。しかし、こんなに大ぜいの人では、それが何になりましょう」。 |
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十 イエス曰けるは人々を坐せよ其處に多の草あり約そ五千人ほど坐ぬ |
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一〇 イエス言ひたまふ『人々を坐せしめよ』その處に多くの草ありて人々坐せしが、その數おほよそ五千人なりき。 |
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一〇 イエスは「人々をすわらせなさい」と言われた。その場所には草が多かった。そこにすわった男の数は五千人ほどであった。 |
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十一 イエス パンをとり祝謝て弟子に予へ弟子これを坐し人に予ふ又此の如にして小き魚をも人々の欲に隨ひて彼等に與たり |
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一一 爰にイエス、パンを取りて謝し、坐したる人々に分ちあたへ、また肴をも然なして、その欲するほど與へ給ふ。 |
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一一 そこで、イエスはパンを取り、感謝してから、すわっている人々に分け与え、また、さかなをも同様にして、彼らの望むだけ分け与えられた。 |
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十二 みな飽たる後イエス弟子に曰けるは少も廢はざるやうに其餘の屑を拾集めよ |
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一二 人々の飽きたるのち弟子たちに言ひたまふ『廢るもののなきやうに擘きたる餘をあつめよ』 |
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一二 人々がじゅうぶんに食べたのち、イエスは弟子たちに言われた、「少しでもむだにならないように、パンくずのあまりを集めなさい」。 |
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十三 彼等が食せし彼五の麰麥のパンの餘遺の屑を拾集ければ十二の筐に盈り |
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一三 乃ち集めたるに、五つの大麥のパンの擘きたるを食ひしものの餘、十二の筐に滿ちたり。 |
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一三 そこで彼らが集めると、五つの大麦のパンを食べて残ったパンくずは、十二のかごにいっぱいになった。 |
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十四 人々イエスの行し奇跡を見て此は誠に世に臨るべき預言者なりと曰 |
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一四 人々その爲し給ひし徵を見ていふ『實にこれは世に來るべき預言者なり』 |
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一四 人々はイエスのなさったこのしるしを見て、「ほんとうに、この人こそ世にきたるべき預言者である」と言った。 |
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十五 是に於てイエス彼等が來り己を執て王に爲んとするを知たゞ獨にて之を避ふたゝび山に入たり |
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一五 イエス彼らが來りて已をとらへ、王となさんとするを知り、復ひとりにて山に遁れたまふ。 |
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一五 イエスは人々がきて、自分をとらえて王にしようとしていると知って、ただひとり、また山に退かれた。 |
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十六 日の暮るころ弟子海に下て |
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一六 夕になりて弟子たち海にくだり、 |
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一六 夕方になったとき、弟子たちは海ベに下り、 |
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十七 舟に登カペナウンに向て海を濟る既に暮けれどもイエス彼等に就ず |
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一七 船にのり海を渡りて、カペナウムに往かんとす。旣に暗くなりたるに、イエス未だ来りたまはず。 |
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一七 舟に乗って海を渡り、向こう岸のカペナウムに行きかけた。すでに暗くなっていたのに、イエスはまだ彼らのところにおいでにならなかった。 |
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十八 狂風ふくに因て漸に海あれいだせり |
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一八 大風ふきて海ややに荒出づ。 |
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一八 その上、強い風が吹いてきて、海は荒れ出した。 |
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十九 一里十町ばかり漕出せる時イエスの海を行み舟に近くを見て弟子たち懼たり |
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一九 かくて四五十丁こざ出でしに、イエスの海の上をあゆみ、船に近づき給ふを見て懼れたれば、 |
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一九 四、五十丁こぎ出したとき、イエスが海の上を歩いて舟に近づいてこられるのを見て、彼らは恐れた。 |
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二十 イエス曰けるは我なり懼るゝ勿れ |
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二〇 イエス言ひたまふ『我なり、懼るな』 |
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二〇 すると、イエスは彼らに言われた、「わたしだ、恐れることはない」。 |
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二一 是に於て弟子喜びて彼をうけ舟に登ければ直に其往んとする所の地に着ぬ |
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二一 乃ちイエスを船に歡び迎へしに、船は直ちに往かんとする地に著けり。 |
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二一 そこで、彼らは喜んでイエスを舟に迎えようとした。すると舟は、すぐ、彼らが行こうとしていた地に着いた。 |
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二二 明日かなたの海岸に立し人々昨日弟子の登し舟の外には舟なく且イエスは弟子と偕に舟に登ず弟子のみ往るを知 |
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二二 明くる日、海のかなたに立てる群衆は、一艘のほかに舶なく、又イエスは弟子たちと共に乘りたまはず、弟子等のみ出でゆきしを見たり。 |
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二二 その翌日、海の向こう岸に立っていた群衆は、そこに小舟が一そうしかなく、またイエスは弟子たちと一緒に小舟にお乗りにならず、ただ弟子たちだけが船出したのを見た。 |
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二三 此時テベリアより外の舟きたり主の祈りて人々にパンを食しゝ所の近に着り |
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二三 (時にテべリヤより數艘の船、主の謝して人々にパンを食せ給ひし處の近くに來る) |
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二三 しかし、数そうの小舟がテベリヤからきて、主が感謝されたのちパンを人々に食べさせた場所に近づいた。 |
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二四 人々イエスの此に在ず弟子も亦在ざるを見て彼等も舟に登イエスを尋ん爲にカペナウンに至れり |
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二四 ここに群衆はイエスも居給はず、弟子たちも居らぬを見てその船に乘り、イエスを尋ねてカペナウムに往けり。 |
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二四 群衆は、イエスも弟子たちもそこにいないと知って、それらの小舟に乗り、イエスをたずねてカペナウムに行った。 |
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二五 湖の前岸にて彼に遇曰けるはラビ何時こゝに來り給ひし乎 |
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二五 遂に海の彼方にてイエスに遇ひて言ふ『ラビ、何時ここに來り給ひしか』 |
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二五 そして、海の向こう岸でイエスに出会ったので言った、「先生、いつ、ここにおいでになったのですか」。 |
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二六 イエス答て曰けるは誠に實に爾曹に吿ん爾曹の我を尋るは休徵を見し故に非たゞパンを食して飽たるが故なり |
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二六 イエス答へて言ひ給ふ『まことに誠に汝らに吿ぐ、汝らが我を尋ぬるは、徵を見し故ならでパンを食ひて飽きたる故なり。 |
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二六 イエスは答えて言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたがわたしを尋ねてきているのは、しるしを見たためではなく、パンを食べて満腹したからである。 |
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二七 なんぢら壞る糧の爲に勞かずして永生に至る糧すなはち人の子の予る糧の爲に勞くべし蓋父の~かれに印して證すれば也 |
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二七 朽つる糧のためならで永遠の生命にまで至る糧のために働け。これは人の子の汝らに與へんと爲るものなり、父なる~は印して彼を證し給ひたるに因る』 |
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二七 朽ちる食物のためではなく、永遠の命に至る朽ちない食物のために働くがよい。これは人の子があなたがたに与えるものである。父なる神は、人の子にそれをゆだねられたのである」。 |
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二八 是に因て人々イエスに曰けるは我儕如何なる事を行ば~の工に爲べき乎 |
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二八 ここに彼ら言ふ『われら~の業を行はんには何をなすべきか』 |
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二八 そこで、彼らはイエスに言った、「神のわざを行うために、わたしたちは何をしたらよいでしょうか」。 |
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二九 イエス答て彼等に曰けるは~の遣しゝ者を信ずるは即ち其工なり |
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二九 イエス答へて言ひたまふ『~の業はその遣し給へる者を信ずる是なり』 |
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二九 イエスは彼らに答えて言われた、「神がつかわされた者を信じることが、神のわざである」。 |
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三十 彼等いひけるは我儕をして爾を信ぜしむる爲に何の休徵を爲して我儕に示るや何の工を行ふや |
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三〇 彼ら言ふ『さらば我らが見て汝を信ぜんために、何の徵をなすか、何を行ふか。 |
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三〇 彼らはイエスに言った、「わたしたちが見てあなたを信じるために、どんなしるしを行って下さいますか。どんなことをして下さいますか。 |
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三一 我儕の先祖野にてマナを食へり錄して天よりパンを彼等に賜へて食しむと有が如し |
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三一 我らの先祖は荒野にてマナを食へり、錄して「天よりパンを彼らに與へて食はしめたり」と云へるが如し』 |
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三一 わたしたちの先祖は荒野でマナを食べました。それは『天よりのパンを彼らに与えて食べさせた』と書いてあるとおりです」。 |
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三二 イエス曰けるは誠に實に爾曹に吿ん天よりパンを爾曹に賜し者はモーセに非ず今わが父は天より眞のパンをもて爾曹に賜ふ |
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三二 イエス言ひ給ふ『まことに誠に汝らに吿ぐ、モーセは天よりのパンを汝らに與ヘしにあらず、然れど我が父は天よりの眞のパンを與ヘたまふ。 |
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三二 そこでイエスは彼らに言われた、「よくよく言っておく。天からのパンをあなたがたに与えたのは、モーセではない。天からのまことのパンをあなたがたに与えるのは、わたしの父なのである。 |
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三三 ~のパンは天より降りて生命を世に賜るもの也 |
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三三 ~のパンは天より降りて生命を世に與ふるものなり』 |
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三三 神のパンは、天から下ってきて、この世に命を与えるものである」。 |
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三四 彼等いひけるは主よ恒に其パンを我儕に予よ |
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三四 彼等いふ『主よ、そのパンを常に與へよ』 |
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三四 彼らはイエスに言った、「主よ、そのパンをいつもわたしたちに下さい」。 |
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三五 イエス曰けるは我は生命のパンなり我に就る者は餓ず我を信ずる者は恒に渴ことなし |
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三五 イエス言ひ給ふ『われは生命のパンなり、我にきたる者は飢ゑず、我を信ずる者はいつまでも渴くことなからん。 |
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三五 イエスは彼らに言われた、「わたしが命のパンである。わたしに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者は決してかわくことがない。 |
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三六 然ど我なんぢらが我を見ても信ぜざる事を爾曹に吿たりき |
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三六 然れど汝らは我を見てなほ信ぜず、我さきに之を吿げたり。 |
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三六 しかし、あなたがたに言ったが、あなたがたはわたしを見たのに信じようとはしない。 |
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三七 凡て父の我に賜し者に我に就らん我に就る者は我かならず之を棄ず |
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三七 父の我に賜ふものは皆われに來らん、我にきたる者は、我これを退けず。 |
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三七 父がわたしに与えて下さる者は皆、わたしに来るであろう。そして、わたしに来る者を決して拒みはしない。 |
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三八 わが天より降しは己の意の任を行はん爲に非ず我を遣しゝ者の意のまゝを行はん爲なり |
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三八 夫わが天より降りしは我が意をなさん爲にあらず、我を遣し給ひし者の御意をなさん爲なり。 |
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三八 わたしが天から下ってきたのは、自分のこころのままを行うためではなく、わたしをつかわされたかたのみこころを行うためである。 |
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三九 凡て父の我に賜し者をわれ一をも失はず末日に之を甦らすは即ち我を遣しゝ父の意なり |
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三九 我を遣し給ひし者の御意は、すべて我に賜ひし者を、我その一つをも失はずして終の日に甦へらする是なり。 |
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三九 わたしをつかわされたかたのみこころは、わたしに与えて下さった者を、わたしがひとりも失わずに、終りの日によみがえらせることである。 |
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四十 凡そ子を見て之を信ずる者は永生を得われ復これを末の日に甦らすべし是われを遣しゝ者の意なればなり |
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四〇 わが父の御意は、すべて子を見て信ずる者の永遠の生命を得る是なり。われ終の日にこれを甦へらすべし』 |
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四〇 わたしの父のみこころは、子を見て信じる者が、ことごとく永遠の命を得ることなのである。そして、わたしはその人々を終りの日によみがえらせるであろう」。 |
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四一 是に於てユダヤ人等イエスの我は天より降しパンなりと言しことにつき |
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四一 爰にユダヤ人ら、イエスの『われは天より降りしパンなり』と言ひ給ひしにより、 |
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四一 ユダヤ人らは、イエスが「わたしは天から下ってきたパンである」と言われたので、イエスについてつぶやき始めた。 |
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四二 譏いひけるは彼が父母は我儕の識ところならずや即ち彼はヨセフの子イエスに非ずや然るに何ぞ我は天より降しと言や |
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四二 呟きて言ふ『これはヨセフの子イエスならずや、我等はその父母を知る、何ぞ今「われは天より降れり」と言ふか』 |
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四二 そして言った、「これはヨセフの子イエスではないか。わたしたちはその父母を知っているではないか。わたしは天から下ってきたと、どうして今いうのか」。 |
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四三 イエス答て曰けるは爾曹たがひに譏こと勿れ |
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四三 イエス答へて言ひ給ふ『なんぢら呟き合ふな、 |
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四三 イエスは彼らに答えて言われた、「互につぶやいてはいけない。 |
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四四 我を遣しゝ父もし引ざれば人よく我に就るなし我に就し人は末日に我これを甦らすべし |
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四四 我を遣しし父ひき給はずば、誰も我に來ること能はず、我これを終の日に甦へらすべし。 |
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四四 わたしをつかわされた父が引きよせて下さらなければ、だれもわたしに来ることはできない。わたしは、その人々を終りの日によみがえらせるであろう。 |
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四五 預言者の書に人みな教を~に受んと錄されたり是故に凡て父より聽て學し者は我に就る |
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四五 預言者たちの書に「彼らみな~にヘへられん」と錄されたり。すべて父より聽きて學びし者は我にきたる。 |
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四五 預言者の書に、『彼らはみな神に教えられるであろう』と書いてある。父から聞いて学んだ者は、みなわたしに来るのである。 |
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四六 然ど父を見し者はなし惟~より來る者のみ之を見たり |
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四六 これは父を見し者ありとにあらず、ただ~よりの者のみ父を見たり。 |
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四六 神から出た者のほかに、だれかが父を見たのではない。その者だけが父を見たのである。 |
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四七 誠に實に我なんぢらに吿ん我を信ずる者は永生あり |
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四七 誠に誠に、なんぢらに吿ぐ、信ずる者は永遠の生命をもつ。 |
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四七 よくよくあなたがたに言っておく。信じる者には永遠の命がある。 |
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四八 我は生命のパンなり |
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四八 我は生命のパンなり。 |
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四八 わたしは命のパンである。 |
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四九 爾曹の先祖は野にてマナを食しかど死り |
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四九 汝らの先祖は荒野にてマナを食ひしが死にたり。 |
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四九 あなたがたの先祖は荒野でマナを食べたが、死んでしまった。 |
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五十 凡て食者をして死ざらしむる者は天より降れるパンなり |
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五〇 天より降るパンは、食ふ者をして死ぬる事なからしむるなり。 |
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五〇 しかし、天から下ってきたパンを食べる人は、決して死ぬことはない。 |
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五一 我は天より降し生るパンなり若人此パンを食はゞ窮なく生べし我あたふるパンは我肉なり世の生命の爲に我これを賜へん |
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五一 我は天より降りし活けるパンなり、人このパンを食はば永遠にCくべし。我が與ふるパンは我が肉なり、世の生命のために之を與へん』 |
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五一 わたしは天から下ってきた生きたパンである。それを食べる者は、いつまでも生きるであろう。わたしが与えるパンは、世の命のために与えるわたしの肉である」。 |
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五二 爰にユダヤ人たがひに爭ひ曰けるは此人いかで其肉を我儕に賜て食はしむる事を得ん乎 |
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五二 爰にユダヤ人、たがひに爭ひて言ふ『この人はいかで己が肉を我らに與ヘて食はしむることを得ん』 |
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五二 そこで、ユダヤ人らが互に論じて言った、「この人はどうして、自分の肉をわたしたちに与えて食べさせることができようか」。 |
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五三 イエス曰けるは誠に實に爾曹に吿ん若し人の子の肉を食ず其血を飮ざれば爾曹に生命なし |
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五三 イエス言ひ給ふ『まことに誠に、なんぢらに吿ぐ、人の子の肉を食はず、その血を飮まずば、汝らに生命なし。 |
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五三 イエスは彼らに言われた、「よくよく言っておく。人の子の肉を食べず、また、その血を飲まなければ、あなたがたの内に命はない。 |
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五四 わが肉を食わが血を飮者は永生あり我末の日に之を甦らすべし |
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五四 わが肉をくらひ、我が血をのむ者は、永遠の生命をもつ、われ終の日にこれを甦ヘらすべし。 |
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五四 わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者には、永遠の命があり、わたしはその人を終りの日によみがえらせるであろう。 |
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五五 夫わが肉は誠の食物また我血は誠の飮物なり |
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五五 夫わが肉は眞の食物、わが血は眞の飮物なり。 |
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五五 わたしの肉はまことの食物、わたしの血はまことの飲み物である。 |
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五六 わが肉を食ひ我血を飮者は我にをり我も亦かれに居 |
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五六 わが肉をくらひ、我が血をのむ者は、我に居り、我もまた彼に居る。 |
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五六 わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者はわたしにおり、わたしもまたその人におる。 |
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五七 生る父われを遣す父に由て我生る如く我を食ふ者も我に由て生べし |
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五七 活ける父の我をつかはし、我の父によりて活くるごとく、我をくらふ者も我によりて活くべし。 |
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五七 生ける父がわたしをつかわされ、また、わたしが父によって生きているように、わたしを食べる者もわたしによって生きるであろう。 |
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五八 これ天より降れるパンなり爾曹の先祖が食たれど尚死しマナの如きものに非ず此パンを食ふ者は窮なく生べし |
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五八 天より降りしパンは、先祖たちが食ひてなほ死にし如きものにあらず、此のパンを食ふものは永遠に活きん』 |
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五八 天から下ってきたパンは、先祖たちが食べたが死んでしまったようなものではない。このパンを食べる者は、いつまでも生きるであろう」。 |
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五九 此等の事はイエス カペナウンの會堂にて教を爲るとき言し所なり |
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五九 此等のことはイエス、カペナウムにてヘふるとき、會堂にて言ひ給ひしなり。 |
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五九 これらのことは、イエスがカペナウムの会堂で教えておられたときに言われたものである。 |
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六十 弟子等のうち多の人これを聞て曰けるは此は甚しき言なり誰か能これを聽んや |
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六〇 弟子たちの中おほくの者これを聞きて言ふ『こは甚だしき言なるかな、誰か能く聽き得べき』 |
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六〇 弟子たちのうちの多くの者は、これを聞いて言った、「これは、ひどい言葉だ。だれがそんなことを聞いておられようか」。 |
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六一 弟子の此言について譏をイエス自ら知て彼等に曰けるは此言に因て礙く乎 |
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六一 イエス弟子たちの之に就きて呟くを自ら知りて言ひ給ふ『このことは汝らを躓かするか。 |
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六一 しかしイエスは、弟子たちがそのことでつぶやいているのを見破って、彼らに言われた、「このことがあなたがたのつまずきになるのか。 |
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六二 もし人の子の故の處に升を見ば如何 |
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六二 さらば人の子の原居りし處に昇るを見ば如何。 |
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六二 それでは、もし人の子が前にいた所に上るのを見たら、どうなるのか。 |
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六三 生命を賜る者は靈なり肉はuなし我なんぢらに曰し言は靈なり生命なり |
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六三 活すものは靈なり、肉はuする所なし、わが汝らに語りし言は、靈なり生命なり。 |
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六三 人を生かすものは霊であって、肉はなんの役にも立たない。わたしがあなたがたに話した言葉は霊であり、また命である。 |
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六四 然ど爾曹の中に信ぜざる者あり夫イエスの如此いへるは信ぜざる者は誰おのれを賣す者は誰といふ事を元始より知ばなり |
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六四 されど汝らの中に信ぜぬ者どもあり』イエス初より信ぜぬ者どもは誰、おのれを賣る者は誰なるかを知り給へるなり。 |
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六四 しかし、あなたがたの中には信じない者がいる」。イエスは、初めから、だれが信じないか、また、だれが彼を裏切るかを知っておられたのである。 |
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六五 イエスまた曰けるは是故に我さきに我父あたへざれば人よく我に就るなしと言しなり |
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六五 斯て言ひたまふ『この故に我さきに汝らに吿げて父より賜はりたる者ならずば我に來るを得ずと言ひしなり』 |
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六五 そしてイエスは言われた、「それだから、父が与えて下さった者でなければ、わたしに来ることはできないと、言ったのである」。 |
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六六 此後その弟子おほく返往てイエスと偕に行かざりき |
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六六 斯において弟子等のうち多くの者、かへり去りて、復イエスと共に歩まざりき。 |
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六六 それ以来、多くの弟子たちは去っていって、もはやイエスと行動を共にしなかった。 |
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六七 之に因てイエス十二の弟子に曰けるは爾曹も亦去んと意ふや |
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六七 イエス十二弟子に言ひ給ふ『なんぢらも去らんとするか』 |
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六七 そこでイエスは十二弟子に言われた、「あなたがたも去ろうとするのか」。 |
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六八 シモンペテロ答けるは主よ我儕は誰に往んや永生の言を有る者は爾なり |
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六八 シモン・ペテロ答ふ『主よ、われら誰にゆかん、永遠の生命の言は汝にあり。 |
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六八 シモン・ペテロが答えた、「主よ、わたしたちは、だれのところに行きましょう。永遠の命の言をもっているのはあなたです。 |
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六九 又われら信じて知なんぢは活る~の子キリストなり |
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六九 又われらは信じ、かつ知る、なんぢは~の聖者なり』 |
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六九 わたしたちは、あなたが神の聖者であることを信じ、また知っています」。 |
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七十 イエス彼等に答けるは我なんぢら十二人を簡しに非ずや然ど其中の一人は惡魔なり |
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七〇 イエス答へ給ふ『われ汝ら十二人を選びしにあらずや、然るに汝らの中の一人は惡魔なり』 |
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七〇 イエスは彼らに答えられた、「あなたがた十二人を選んだのは、わたしではなかったか。それだのに、あなたがたのうちのひとりは悪魔である」。 |
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七一 此はシモンの子イスカリオテのユダを指て言るなり彼は十二の一人にしてイエスを賣さんとする者なり |
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七一 イスカリオテのシモンの子ユダを指して言ひ給へるなり、彼は十二弟子の一人なれど、イエスを賣らんとする者なり。 |
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七一 これは、イスカリオテのシモンの子ユダをさして言われたのである。このユダは、十二弟子のひとりでありながら、イエスを裏切ろうとしていた。 |
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7章 |
一 斯事の後イエス ガリラヤを經行りユダヤの中を巡ることを欲ざりき蓋ユダヤ人かれを殺さんと謀れば也 |
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一 この後イエス、ガリラヤのうちを巡りゐ給ふ、ユダヤ人の殺さんとするに因りてユダヤのうちを巡ることを欲し給はぬなり。 |
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一 そののち、イエスはガリラヤを巡回しておられた。ユダヤ人たちが自分を殺そうとしていたので、ユダヤを巡回しようとはされなかった。 |
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二 偖ユダヤ人の構廬の節ちかづけり |
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二 ユダヤ人の假廬の祭ちかづきたれば、 |
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二 時に、ユダヤ人の仮庵の祭が近づいていた。 |
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三 是に於てイエスの兄弟かれに曰けるは爾の行ふ所の事を弟子等に見せんが爲此を去てユダヤに往 |
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三 兄弟たちイエスに言ふ『なんぢの行ふ業を弟子たちにも見せんために、此處を去りてユダヤに往け。 |
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三 そこで、イエスの兄弟たちがイエスに言った、「あなたがしておられるわざを弟子たちにも見せるために、ここを去りユダヤに行ってはいかがです。 |
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四 蓋己を顯さんとして隱に事をなす者あらず爾これらの事を行はゞ己を世に顯せよ |
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四 誰にても自ら顯れんことを求めて隱に業をなす者なし。汝これらの事を爲すからには己を世にあらはせ』 |
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四 自分を公けにあらわそうと思っている人で、隠れて仕事をするものはありません。あなたがこれらのことをするからには、自分をはっきりと世にあらわしなさい」。 |
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五 是その兄弟もなほ彼を信ぜざるが故なり |
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五 是その兄弟たちもイエスを信ぜぬ故なり。 |
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五 こう言ったのは、兄弟たちもイエスを信じていなかったからである。 |
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六 イエス彼等に曰けるは我時いまだ至ず爾曹の時は恒に傭れり |
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六 爰にイエス言ひ給ふ『わが時はいまだ到らず、汝らの時は常に備れり。 |
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六 そこでイエスは彼らに言われた、「わたしの時はまだきていない。しかし、あなたがたの時はいつも備わっている。 |
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七 世は爾曹を惡こと能ず我を惡そは彼等が行ふ所は惡しと我證すればなり |
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七 世は汝らを憎むこと能はねど我を憎む、我は世の所作の惡しきを證すればなり。 |
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七 世はあなたがたを憎み得ないが、わたしを憎んでいる。わたしが世のおこないの悪いことを、あかししているからである。 |
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八 爾曹この節に上れ我時いまだ至らざれば我いま此節に上らじ |
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八 なんぢら祭に上れ、わが時いまだ滿たねば、我は今この祭にのぼらず』 |
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八 あなたがたこそ祭に行きなさい。わたしはこの祭には行かない。わたしの時はまだ満ちていないから」。 |
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九 如此いひてガリラヤに留れり |
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九 かく言ひて尙ガリラヤに留り給ふ。 |
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九 彼らにこう言って、イエスはガリラヤにとどまっておられた。 |
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十 その兄弟の往し後イエスも昭然ならずして隱に節に上る |
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一〇 而して兄弟たちの、祭にのぼりたる後、あらはならで潜びやかに上り給ふ。 |
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一〇 しかし、兄弟たちが祭に行ったあとで、イエスも人目にたたぬように、ひそかに行かれた。 |
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十一 節の時ユダヤ人イエスを尋て曰けるは彼は何處に在や |
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一一 祭にあたりユダヤ人等イエスを尋ねて『かれは何處に居るか』と言ふ。 |
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一一 ユダヤ人らは祭の時に、「あの人はどこにいるのか」と言って、イエスを捜していた。 |
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十二 衆多の中にて彼につき各樣のことを言爭へり或人は彼を善人なりといひ或人は否民を惑す者なりと曰 |
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一二 また群衆のうちに囁く者おほくありて、或は『イエスは善き人なり』といひ或は『いな群衆を惑はすなり』と言ふ。 |
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一二 群衆の中に、イエスについていろいろとうわさが立った。ある人々は、「あれはよい人だ」と言い、他の人々は、「いや、あれは群衆を惑わしている」と言った。 |
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十三 然どもユダヤ人を懼るに因て明に彼が事をいふ人なし |
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一三 然れどユダヤ人を懼るるに因りて誰もイエスのことを公然に言はず。 |
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一三 しかし、ユダヤ人らを恐れて、イエスのことを公然と口にする者はいなかった。 |
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十四 節筵の半ごろイエス殿に上りて教誨ければ |
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一四 祭も、はや半となりし頃イエス宮にのぼりてヘへ給へば、 |
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一四 祭も半ばになってから、イエスは宮に上って教え始められた。 |
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十五 ユダヤ人これを奇み曰けるは此人は未だ學ばず如何して書を識や |
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一五 ユダヤ人あやしみて言ふ『この人は學びし事なきに、如何して書を知るか』 |
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一五 すると、ユダヤ人たちは驚いて言った、「この人は学問をしたこともないのに、どうして律法の知識をもっているのだろう」。 |
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十六 イエス彼等に答て曰けるは我教る所は我教に非ず我を遣しゝ者の教なり |
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一六 イエス答へて言ひ給ふ『わがヘはわがヘにあらず、我を遣し給ひし者のヘなり。 |
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一六 そこでイエスは彼らに答えて言われた、「わたしの教はわたし自身の教ではなく、わたしをつかわされたかたの教である。 |
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十七 人もし我を遣しゝ者の旨に從はゞ此教の~より出るか又己に由て言なるかを知べし |
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一七 人もし御意を行はんと欲せば、此のヘの~よりか、我が己より語るかを知らん。 |
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一七 神のみこころを行おうと思う者であれば、だれでも、わたしの語っているこの教が神からのものか、それとも、わたし自身から出たものか、わかるであろう。 |
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十八 己に由て言者は己の榮を求るなり己を遣しゝ者の榮を求る者は眞なり其衷に不義なし |
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一八 己より語るものは己の榮光をもとむ、己を遺しし者の榮光を求むる者は眞なり、その中に不義なし。 |
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一八 自分から出たことを語る者は、自分の栄光を求めるが、自分をつかわされたかたの栄光を求める者は真実であって、その人の内には偽りがない。 |
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十九 モーセ爾曹に律法を與しに非ずや然ど爾曹の中には之を守る者なし爾曹なにゆゑ我を殺んと謀るや |
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一九 モーセは汝らに律法を與へしにあらずや、然れど汝等のうちに律法を守る者なし。汝ら何ゆゑ我を殺さんとするか』 |
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一九 モーセはあなたがたに律法を与えたではないか。それだのに、あなたがたのうちには、その律法を行う者がひとりもない。あなたがたは、なぜわたしを殺そうと思っているのか」。 |
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二十 衆人答へて曰けるは爾鬼に憑たり誰か爾を殺すことを謀らん乎 |
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二〇 群衆こたふ『なんぢは惡鬼に憑かれたり、誰が汝を殺さんとするぞ』 |
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二〇 群衆は答えた、「あなたは悪霊に取りつかれている。だれがあなたを殺そうと思っているものか」。 |
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二一 イエス答て彼等に曰けるは我さきに一事を行しに爾曹みな奇とせり |
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二一 イエス答へて言ひ給ふ『われ一つの業をなしたれば汝等みな怪しめり。 |
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二一 イエスは彼らに答えて言われた、「わたしが一つのわざをしたところ、あなたがたは皆それを見て驚いている。 |
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二二 モーセ爾曹に割禮を授しは其己より出しに非して先祖より出し者なるが故なり之に因て爾曹割禮を安息日に行ふ |
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二二 モーセは汝らに割禮を命じたり(これはモーセより起りしとにあらず、先祖より起りしなりしこの故に汝ら安息日にも人に割禮を施す。 |
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二二 モーセはあなたがたに割礼を命じたので、(これは、実は、モーセから始まったのではなく、先祖たちから始まったものである)あなたがたは安息日にも人に割礼を施している。 |
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二三 人もしモーセの律法を破ざらんがため安息日に割禮を受る時は何ぞ我安息日に人の全身を愈しゝ事を怒るや |
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二三 モーセの律法の廢らぬために安息日に人の割禮を受くる事あらば、何ぞ安息日に人の全身を健かにせしとて我を怒るか。 |
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二三 もし、モーセの律法が破られないように、安息日であっても割礼を受けるのなら、安息日に人の全身を丈夫にしてやったからといって、どうして、そんなにおこるのか。 |
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二四 外貌によりて審判する勿れ義審判をもて審判せよ |
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二四 外貌によりて審くな、正しき審判にて審け』 |
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二四 うわべで人をさばかないで、正しいさばきをするがよい」。 |
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二五 此時エルサレムの或人曰けるは此は人々の殺んと謀る者に非ずや |
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二五 爰にエルサレムの或る人々いふ『これは人々の殺さんとする者ならずや。 |
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二五 さて、エルサレムのある人たちが言った、「この人は人々が殺そうと思っている者ではないか。 |
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二六 今かれ明にいふ而して之を尤る者なし有司等は彼を誠にキリストなりと知ならん乎 |
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二六 視よ、公然に語るに之に對して何をも言ふ者なし、司たちは此の人のキリストたるを眞に認めしならんか。 |
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二六 見よ、彼は公然と語っているのに、人々はこれに対して何も言わない。役人たちは、この人がキリストであることを、ほんとうに知っているのではなかろうか。 |
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二七 然ど我儕は此人の何處より來しを知もしキリストの來らん時は誰も其何處より來るを知者なからん |
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二七 然れど我らは此の人の何處よりかを知る、キリストの來る時には、その何處よりかを知る者なし』 |
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二七 わたしたちはこの人がどこからきたのか知っている。しかし、キリストが現れる時には、どこから来るのか知っている者は、ひとりもいない」。 |
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二八 此時イエス殿にて教をりしが大聲に呼いひけるは爾曹われを知また我いづこより來るを知されど我は己に由て來しに非ず我を遣しゝ者は眞なる者にて爾曹の知ざる所なり |
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二八 爰にイエス宮にてヘへつつ呼はりて言ひ給ふ『なんぢら我を知り、亦わが何處よりかを知る。されど我は己より來るにあらず、眞の者ありて我を遣し給へり。汝らは彼を知らず、 |
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二八 イエスは宮の内で教えながら、叫んで言われた、「あなたがたは、わたしを知っており、また、わたしがどこからきたかも知っている。しかし、わたしは自分からきたのではない。わたしをつかわされたかたは真実であるが、あなたがたは、そのかたを知らない。 |
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二九 我は彼を知そは我は彼より出彼は我を遣しゝ者なれば也 |
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二九 我は彼を知る。我は彼より出で、彼は我を遣し給ひしに因りてなり』 |
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二九 わたしは、そのかたを知っている。わたしはそのかたのもとからきた者で、そのかたがわたしをつかわされたのである」。 |
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三十 是に於て彼等イエスを執へんと謀れり然ど其時いまだ至ざるが故に措手する者なかりき |
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三〇 爰に人々イエスを捕へんと謀りたれど、彼の時いまだ到らぬ故に手出する者なかりき。 |
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三〇 そこで人々はイエスを捕えようと計ったが、だれひとり手をかける者はなかった。イエスの時が、まだきていなかったからである。 |
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三一 民の中おほくの人かれを信じ曰けるはキリストの來らん時その行ところの休徵この人より多らん乎 |
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三一 斯て群衆のうち多くの人々イエスを信じて『キリスト來るとも、此の人の行ひしより多く徵を行はんや』と言ふ。 |
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三一 しかし、群衆の中の多くの者が、イエスを信じて言った、「キリストがきても、この人が行ったよりも多くのしるしを行うだろうか」。 |
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三二 パリサイの人民等のイエスに就て如此ひそかに語あふを聞すなはち祭司の長等とパリサイの人と彼を執んとて下吏を遣せり |
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三二 イエスにつきて群衆のかく囁くことパリサイ人の耳に入りたれば、祭司長・パリサイ人ら彼を捕へんとて下役どもを遣ししに、 |
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三二 群衆がイエスについてこのようなうわさをしているのを、パリサイ人たちは耳にした。そこで、祭司長たちやパリサイ人たちは、イエスを捕えようとして、下役どもをつかわした。 |
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三三 是に於てイエス曰けるは我なほ片時なんぢらと偕にをり而して後われを遣しゝ者に往ん |
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三三 イエス言ひ給ふ『我なほ暫く汝らと偕に居り、而してのち我を遣し給ひし者の御許に往く。 |
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三三 イエスは言われた、「今しばらくの間、わたしはあなたがたと一緒にいて、それから、わたしをおつかわしになったかたのみもとに行く。 |
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三四 なんぢら我を尋るとも遇べからず我をる所へ爾曹きたること能ざるべし |
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三四 汝ら我を尋ねん、されど逢はざるべし、汝等わが居る處に往くこと能はず』 |
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三四 あなたがたはわたしを捜すであろうが、見つけることはできない。そしてわたしのいる所に、あなたがたは来ることができない」。 |
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三五 ユダヤ人相互に曰けるは我儕の遇ざらん爲に彼に何處へ往んとする乎ギリシャに散し者に往てギリシャの人を教んとする乎 |
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三五 爰にユダヤ人ら互に言ふ『この人われらの逢ひ得ぬいづこに往かんとするか、ギリシヤ人のうちに散りをる者に往きてギリシヤ人をヘへんとするか。 |
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三五 そこでユダヤ人たちは互に言った、「わたしたちが見つけることができないというのは、どこへ行こうとしているのだろう。ギリシヤ人の中に離散している人たちのところにでも行って、ギリシヤ人を教えようというのだろうか。 |
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三六 彼が語て爾曹われを尋るとも遇べからず又わが在所へ爾曹來ること能ざる可と曰し言は何ぞや |
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三六 その言に「なんぢら我を尋ねん、然れど逢はざるべし、汝ら我がをる處に往くこと能はず」と云へるは何ぞや』 |
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三六 また、『わたしを捜すが、見つけることはできない。そしてわたしのいる所には来ることができないだろう』と言ったその言葉は、どういう意味だろう」。 |
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三七 節筵の末の大日にイエス立て呼り曰けるは人もし渴ば我に來て飮 |
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三七 祭の終の大なる日にイエス立ちて呼はりて言ひたまふ『人もし渴かば我に來りて飮め。 |
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三七 祭の終りの大事な日に、イエスは立って、叫んで言われた、「だれでもかわく者は、わたしのところにきて飲むがよい。 |
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三八 我を信ずる者は聖書に錄しゝ如く其腹より活る水川の如に流出べし |
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三八 我を信ずる者は、聖書に云へるごとく、その腹より活ける水、川となりて流れ出づべし』 |
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三八 わたしを信じる者は、聖書に書いてあるとおり、その腹から生ける水が川となって流れ出るであろう」。 |
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三九 如此いへるは彼を信ずる者の受んとする靈を指るなり蓋イエス未だ榮を受ざるに因て靈いまだ降ざればなり |
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三九 これは彼を信ずる者の受けんとする御靈を指して言ひ給ひしなり。イエス未だ榮光を受け給はざれば、御靈いまだ降らざりしなり。 |
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三九 これは、イエスを信じる人々が受けようとしている御霊をさして言われたのである。すなわち、イエスはまだ栄光を受けておられなかったので、御霊がまだ下っていなかったのである。 |
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四十 民の中にて多の人この言を聞て此は誠に彼預言者なりと曰 |
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四〇 此等の言をききて群衆のうちの或人は『これ眞にかの預言者なり』といひ、 |
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四〇 群衆のある者がこれらの言葉を聞いて、「このかたは、ほんとうに、あの預言者である」と言い、 |
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四一 或は斯はキリストなりと曰あるひはキリストはガリラヤより出べけんや |
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四一 或人は『これキリストなり』と言ひ、又ある人は『キリスト爭でガリラヤより出でんや、 |
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四一 ほかの人たちは「このかたはキリストである」と言い、また、ある人々は、「キリストはまさか、ガリラヤからは出てこないだろう。 |
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四二 聖書にキリストはダビデの裔にてダビデの住しクベテレヘムより出んと錄しゝに非ずやと曰 |
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四二 聖書にキリストはダビデの裔またダビデの居りし村ベツレヘムより出づと云へるならずや』と言ふ。 |
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四二 キリストは、ダビデの子孫から、またダビデのいたベツレヘムの村から出ると、聖書に書いてあるではないか」と言った。 |
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四三 是に於て民ども彼に緣て爭ひ別たり |
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四三 斯くイエスの事によりて、群衆のうちに紛爭おこりたり。 |
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四三 こうして、群衆の間にイエスのことで分争が生じた。 |
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四四 その中に彼を執んとする者も有けれど措手せし者なかりき |
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四四 その中には、イエスを捕へんと欲する者もありしが、手出する者なかりき。 |
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四四 彼らのうちのある人々は、イエスを捕えようと思ったが、だれひとり手をかける者はなかった。 |
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四五 下吏ども祭司の長とパリサイの人等の所に返ければ彼等下吏に曰けるは何ぞ彼を曳來らざる乎 |
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四五 而して下役ども、祭司長・パリサイ人らの許に歸りたれば、彼ら問ふ『なに故かれを曳き來らぬか』 |
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四五 さて、下役どもが祭司長たちやパリサイ人たちのところに帰ってきたので、彼らはその下役どもに言った、「なぜ、あの人を連れてこなかったのか」。 |
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四六 下吏こたへて曰けるは未だ斯人の如く言し人あらず |
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四六 下役ども答ふ『この人の語るごとく語りし人は未だなし』 |
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四六 下役どもは答えた、「この人の語るように語った者は、これまでにありませんでした」。 |
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四七 パリサイの人いひけるは爾曹も亦惑されし乎 |
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四七 パリサイ人等これに答ふ『なんぢらも惑はされしか、 |
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四七 パリサイ人たちが彼らに答えた、「あなたがたまでが、だまされているのではないか。 |
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四八 有司またパリサイの人の中に彼を信ずる者あらんや |
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四八 司たち又はパリサイ人のうちに一人だに彼を信ぜし者ありや、 |
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四八 役人たちやパリサイ人たちの中で、ひとりでも彼を信じた者があっただろうか。 |
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四九 律法を識ざる此衆の人は罰すべき者なり |
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四九 律法を知らぬこの群衆は詛はれたる者なり』 |
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四九 律法をわきまえないこの群衆は、のろわれている」。 |
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五十 その中の一人にて夜イエスに就しニコデモと云る者かれらに曰けるは |
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五〇 彼等のうちの一人にて曩にイエスの許に來りしニコデモ言ふ、 |
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五〇 彼らの中のひとりで、以前にイエスに会いにきたことのあるニコデモが、彼らに言った、 |
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五一 其人に聽ず其行を知ざる 先に之を審判は我儕の律法ならん乎 |
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五一 『われらの律法は先その人に聽き、その爲すところを知るにあらずば、審く事をせんや』 |
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五一 「わたしたちの律法によれば、まずその人の言い分を聞き、その人のしたことを知った上でなければ、さばくことをしないのではないか」。 |
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五二 彼等こたへて曰けるは爾も亦ガリラヤより出し者なるか考見よ預言者はガリラヤより出ることなし |
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五二 かれら答へて言ふ『なんぢもガリラヤより出でしか、査べ見よ、預言者はガリラヤより起る事なし』 |
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五二 彼らは答えて言った、「あなたもガリラヤ出なのか。よく調べてみなさい、ガリラヤからは預言者が出るものではないことが、わかるだろう」。 |
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五三 是に於て各人家に歸れり |
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五三 〔斯ておのおの己が家に歸れり。 |
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五三 〔そして、人々はおのおの家に帰って行った。 |
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8章 |
一 イエス橄欖山に往り |
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一 イエス、オリブ山にゆき給ふ。 |
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一 イエスはオリブ山に行かれた。 |
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二 昧爽また聖殿に入けるが民みな彼に來ければ坐て彼等を教ふ |
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二 夜明ごろ、また宮に入りしに、民みな御許に來りたれば、坐してヘへ給ふ。 |
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二 朝早くまた宮にはいられると、人々が皆みもとに集まってきたので、イエスはすわって彼らを教えておられた。 |
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三 爰に姦淫を爲るとき執られし婦ありけるが學者とパリサイの人これをイエスの所に曳來り群集の中に置いひけるは |
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三 爰に學者・パリサイ人ら、姦淫のとき捕へられたる女を連れきたり、眞中に立ててイエスに言ふ、 |
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三 すると、律法学者たちやパリサイ人たちが、姦淫をしている時につかまえられた女をひっぱってきて、中に立たせた上、イエスに言った、 |
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四 師よ此婦は奸淫を爲をる時そのまゝ執られL者なり |
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四 『師よ、この女は姦淫のをり、そのまま捕へられたるなり。 |
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四 「先生、この女は姦淫の場でつかまえられました。 |
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五 此の如き者を石にて擊殺すべしとモーセ律法の中に命じたり汝は如何に言や |
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五 モーセは律法に斯る者を石にて擊つべき事を我らに命じたるが、汝は如何に言ふか』 |
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五 モーセは律法の中で、こういう女を石で打ち殺せと命じましたが、あなたはどう思いますか」。 |
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六 如此いへるはイエスを試て訟の由を引出さんと欲るなりイエス身を屈め指にて地に畵り |
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六 斯く云へるはイエスを試みて訴ふる種を得んとてなり。イエス身を屈め、指にて地に物書き給ふ。 |
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六 彼らがそう言ったのは、イエスをためして、訴える口実を得るためであった。しかし、イエスは身をかがめて、指で地面に何か書いておられた。 |
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七 彼等が切に問によりイエス起て之に曰けるは爾曹のうち罪なき者まづ彼を石にて擊べしと曰 |
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七 かれら問ひて止まざれば、イエス身を起して「なんぢらの中、罪なき者まづ石を擲て』と言ひ、 |
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七 彼らが問い続けるので、イエスは身を起して彼らに言われた、「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」。 |
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八 また身を屈て地に畵り |
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八 また身を屈めて地に物書きたまふ。 |
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八 そしてまた身をかがめて、地面に物を書きつづけられた。 |
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九 彼等これを聞て其良心に責られ老者をはじめ少者まで一々に出往たゞイエス一人のこる婦は集の中に立り |
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九 彼等これを聞きて良心に責められ、老人をはじめ若き者まで一人一人いでゆき、唯イエスと中に立てる女とのみ遺れり。 |
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九 これを聞くと、彼らは年寄から始めて、ひとりびとり出て行き、ついに、イエスだけになり、女は中にいたまま残された。 |
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十 イエス起て婦に曰けるは婦よ爾を訟し者は何處へ往しや爾の罪を定る者なきか乎 |
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一〇 イエス身を起して、女のほかに誰も居らぬを見て言ひ給ふ『をんなよ、汝を訴へたる者どもは何處にをるぞ、汝を罪する者なきか』 |
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一〇 そこでイエスは身を起して女に言われた、「女よ、みんなはどこにいるか。あなたを罰する者はなかったのか」。 |
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十一 婦曰けるは主よ誰もなしイエス彼に曰けるは我も爾の罪を定ず往て再び罪を犯す勿れ |
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一一 女いふ『主よ、誰もなし』イエス言ひ給ふ『われも汝を罪せじ、往け、この後ふたたび罪を犯すな』 |
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一一 女は言った、「主よ、だれもございません」。イエスは言われた、「わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように」。〕 |
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十二 イエスまた人々に語て曰けるは我は世の光なり我に從ふ者は暗中を行ず生の光を得たり |
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一二 斯てイエスまた人々に語りて言ひ給ふ『われは世の光なり、我に從ふ者は暗き中を歩まず、生命の光を得べし』 |
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一二 イエスは、また人々に語ってこう言われた、「わたしは世の光である。わたしに従って来る者は、やみのうちを歩くことがなく、命の光をもつであろう」。 |
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十三 是に於てパリサイの人いひけるは爾は自ら己の證をなせり爾の證は眞ならず |
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一三 パリサイ人ら言ふ『なしぢは己につきて證す、なんぢの證は眞ならず』 |
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一三 するとパリサイ人たちがイエスに言った、「あなたは、自分のことをあかししている。あなたのあかしは真実ではない」。 |
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十四 イエス答て曰けるは我みづから己の證するとも我證は眞なり蓋われ何處より來り何處へ往を知ばなり爾曹わが何處より來り何處へ往を知ざるなり |
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一四 イエス答へて言ひ給ふ「われ自ら己につきて證すとも我が證は眞なり、我は何處より來り何處に往くを知る故なり。汝らは我が何處より來り、何處に往くを知らず。 |
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|
一四 イエスは彼らに答えて言われた、「たとい、わたしが自分のことをあかししても、わたしのあかしは真実である。それは、わたしがどこからきたのか、また、どこへ行くのかを知っているからである。しかし、あなたがたは、わたしがどこからきて、どこへ行くのかを知らない。 |
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|
十五 爾曹は肉に循て人を審判く我は人を審判かず |
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|
一五 なんぢらは肉によりて審く、我は誰をも審かず。 |
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一五 あなたがたは肉によって人をさばくが、わたしはだれもさばかない。 |
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十六 我もし審判ば我審判は眞なり蓋われ獨あるに非ず我を遣しゝ父と同に在ばなり |
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一六 されど我もし審かば、我が審判は眞なり、我は一人ならず、我と我を遣し給ひし者と偕なるに因る。 |
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一六 しかし、もしわたしがさばくとすれば、わたしのさばきは正しい。なぜなら、わたしはひとりではなく、わたしをつかわされたかたが、わたしと一緒だからである。 |
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十七 二人の證は眞なりと爾曹の律法に錄されたり |
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一七 また汝らの律法に、二人の證は眞なりと錄されたり。 |
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一七 あなたがたの律法には、ふたりによる証言は真実だと、書いてある。 |
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十八 わが證をする者は我なり我を遣しゝ父も亦わが證を爲なり |
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一八 我みづから己につきて證をなし、我を遣し給ひし父も我につきて證をなし給ふ』 |
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|
一八 わたし自身のことをあかしするのは、わたしであるし、わたしをつかわされた父も、わたしのことをあかしして下さるのである」。 |
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十九 彼等いひけるは爾の父は何處に在やイエス答けるは爾曹は我を識ず亦わが父をも識ざるなり若われを識たるならば我父をも識たるならん |
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一九 ここに彼ら言ふ『なんぢの父は何處にあるか』イエス答へ給ふ『なんぢらは我をも我が父をも知らず、我を知りしならば、我が父をも知りしならん』 |
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|
一九 すると、彼らはイエスに言った、「あなたの父はどこにいるのか」。イエスは答えられた、「あなたがたは、わたしをもわたしの父をも知っていない。もし、あなたがたがわたしを知っていたなら、わたしの父をも知っていたであろう」。 |
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|
二十 イエス此等のことを殿のうち賽錢の箱を置る處にて語けど彼の時いまだ至ざれば誰も手を出す者なかりき |
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二〇 イエス宮の內にてヘへし時これらの事を賽錢函の傍らにて語り給ひしが、彼の時いまだ到らぬ故に、誰も捕ふる者なかりき。 |
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|
二〇 イエスが宮の内で教えていた時、これらの言葉をさいせん箱のそばで語られたのであるが、イエスの時がまだきていなかったので、だれも捕える者がなかった。 |
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二一 イエス復いひけるは我ゆかん爾曹は我を尋べし爾曹おのれの罪に死ん我ゆく所へは爾曹きたること能ざるなり |
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二一 斯てまた人々に言ひ給ふ『われ往く、なんぢら我を尋ねん。されど己が罪のうちに死なん、わが往くところに汝ら來ること能はず』 |
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|
二一 さて、また彼らに言われた、「わたしは去って行く。あなたがたはわたしを捜し求めるであろう。そして自分の罪のうちに死ぬであろう。わたしの行く所には、あなたがたは来ることができない」。 |
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二二 之に由てユダヤ人いひけるは我ゆく所へ爾曹きたること能ずと言り彼は自殺せんとする乎 |
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二二 ユダヤ人ら言ふ『「わが往く處に汝ら來ること能はず」と云へるは、自殺せんとてか』 |
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二二 そこでユダヤ人たちは言った、「わたしの行く所に、あなたがたは来ることができないと、言ったのは、あるいは自殺でもしようとするつもりか」。 |
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二三 イエス彼等に曰けるは爾曹は下より出われは上より出なんぢらは此世より出われは此世より出ず |
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二三 イエス言ひ給ふ『なんぢらは下より出で、我は上より出づ、汝らは此の世より出で、我はこの世より出でず。 |
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二三 イエスは彼らに言われた、「あなたがたは下から出た者だが、わたしは上からきた者である。あなたがたはこの世の者であるが、わたしはこの世の者ではない。 |
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|
二四 是故に爾曹は己の罪に死んと我いひしなり爾曹もし我の彼なるを信ぜずば己の罪に死ん |
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二四 之によりて我なんぢらは己が罪のうちに死なんと云へるなり。汝等もし我の夫なるを信ぜずば、罪のうちに死ぬべし』 |
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二四 だからわたしは、あなたがたは自分の罪のうちに死ぬであろうと、言ったのである。もしわたしがそういう者であることをあなたがたが信じなければ、罪のうちに死ぬことになるからである」。 |
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二五 彼等いひけるは爾は誰なるやイエス曰けるは我は實に我なんぢらに吿る所の者たり |
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二五 彼ら言ふ『なんぢは誰なるか』イエス言ひ給ふ『われは正しく汝らに吿げ來りし所の者なり。 |
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二五 そこで彼らはイエスに言った、「あなたは、いったい、どういうかたですか」。イエスは彼らに言われた、「わたしがどういう者であるかは、初めからあなたがたに言っているではないか。 |
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二六 我なんぢらに就て語る可ことと審判く可こと多端あり我を遣しゝ者は眞なり彼に聞し事を我世に吿 |
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二六 われ汝らに就きて語るべきこと審くべきこと多し、而して我を遣し給ひし者は眞なり、我は彼に聽きしその事を世に吿ぐるなり』 |
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二六 あなたがたについて、わたしの言うべきこと、さばくべきことが、たくさんある。しかし、わたしをつかわされたかたは真実なかたである。わたしは、そのかたから聞いたままを世にむかって語るのである」。 |
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二七 此は父を指て言るなれど彼等は知ざりき |
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二七 これは父をさして言ひ給へるを、彼らは悟らざりき。 |
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二七 彼らは、イエスが父について話しておられたことを悟らなかった。 |
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二八 是故にイエス彼等に曰けるは爾曹人の子を擧しのち我の彼なるを知また我みづから何事をも行ず惟わが父の教に從ひて此等の事を言るを知べし |
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二八 爰にイエス言ひ給ふ『なんぢら人の子を擧げしのち、我の夫なるを知り、又わが己によりて何事をも爲さず、ただ父の我にヘへ給ひしごとく、此等のことを語りたるを知らん。 |
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|
二八 そこでイエスは言われた、「あなたがたが人の子を上げてしまった後はじめて、わたしがそういう者であること、また、わたしは自分からは何もせず、ただ父が教えて下さったままを話していたことが、わかってくるであろう。 |
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|
二九 我を遣しゝ者我と同にあり父は我を獨遣たまはず蓋われ恒に彼の心に適ふ事を行へばなり |
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二九 我を遣し給ひし者は、我とともに在す。我つねに御意に適ふことを行ふによりて、我を獨おき給はず』 |
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二九 わたしをつかわされたかたは、わたしと一緒におられる。わたしは、いつも神のみこころにかなうことをしているから、わたしをひとり置きざりになさることはない」。 |
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三十 イエス此事を言るとき多の人かれを信ぜり |
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三〇 此等のことを語り給へるとき、多くの人々イエスを信じたり。 |
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三〇 これらのことを語られたところ、多くの人々がイエスを信じた。 |
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三一 イエス己を信ぜしユダヤ人に曰けるは爾曹もし我道に居ば誠に我弟子なり |
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三一 爰にイエス己を信じたるユダヤ人に言ひたまふ『汝等もし常に我が言に居らば、眞にわが弟子なり。 |
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三一 イエスは自分を信じたユダヤ人たちに言われた、「もしわたしの言葉のうちにとどまっておるなら、あなたがたは、ほんとうにわたしの弟子なのである。 |
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三二 かつ眞理を識ん眞理は爾曹に自由を得さすべし |
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三二 また眞理を知らん、而して眞理は汝らに自由を得さすべし』 |
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三二 また真理を知るであろう。そして真理は、あなたがたに自由を得させるであろう」。 |
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三三 彼等こたへけるは我儕はアブラハムの裔なり未だ人の奴隷と爲しことなし爾曹に自由を得さすべしと爾の言しは如何なる事ぞ |
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三三 かれら答ふ『われらはアブラハムの裔にして未だ人の奴隷となりし事なし。如何なれば「なんぢら自由を得べし」と言ふか』 |
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三三 そこで、彼らはイエスに言った、「わたしたちはアブラハムの子孫であって、人の奴隷になったことなどは、一度もない。どうして、あなたがたに自由を得させるであろうと、言われるのか」。 |
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三四 イエス彼等に曰けるは誠に實に爾曹に吿ん凡て惡を行ふ者は惡の奴隷たり |
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三四 イエス答へ給ふ『まことに誠に汝らに吿ぐ、すべて罪を犯す者は罪の奴隷なり。 |
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三四 イエスは彼らに答えられた、「よくよくあなたがたに言っておく。すべて罪を犯す者は罪の奴隷である。 |
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|
三五 奴隷は恒に家に居ず子は恒に居 |
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|
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三五 奴隷はとこしへに家に居らず、子は永遠に居るなり。 |
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三五 そして、奴隷はいつまでも家にいる者ではない。しかし、子はいつまでもいる。 |
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三六 是故に子もし爾曹に自由を賜なば爾曹誠に自由を得べし |
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三六 この故に子もし汝らに自由を得させば、汝ら實に自由とならん。 |
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三六 だから、もし子があなたがたに自由を得させるならば、あなたがたは、ほんとうに自由な者となるのである。 |
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三七 我なんぢらがアブラハムの裔なるを知されども我を殺さんと謀る蓋わが道なんぢらの衷に在ざれば也 |
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三七 我は汝らがアブラハムの裔なるを知る、されど我が言なんぢらの衷に留らぬ故に、我を殺さんと謀る。 |
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|
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三七 わたしは、あなたがたがアブラハムの子孫であることを知っている。それだのに、あなたがたはわたしを殺そうとしている。わたしの言葉が、あなたがたのうちに根をおろしていないからである。 |
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三八 我は我父と偕に在て見しことを言なんぢらは爾曹の父と偕に在て見しことを行ふ |
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三八 我はわが父の許にて見しことを語り、汝らは又なんぢらの父より聞きしことを行ふ』 |
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三八 わたしはわたしの父のもとで見たことを語っているが、あなたがたは自分の父から聞いたことを行っている」。 |
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三九 彼等こたへてイエスに曰けるは我儕の父はアブラハムなりイエス曰けるは爾曹もしアブラハムの子ならばアブラハムの行をおこなふべし |
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三九 かれら答へて言ふ『われらの父はアブラハムなり』イエス言ひ給ふ『もしアブラハムの子ならば、アブラハムの業をなさん。 |
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三九 彼らはイエスに答えて言った、「わたしたちの父はアブラハムである」。イエスは彼らに言われた、「もしアブラハムの子であるなら、アブラハムのわざをするがよい。 |
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四十 然るに今なんぢらは~に聞し眞理を吿る我を殺さんと謀る是アブラハムの行に非ず |
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四〇 然るに汝らは今、~より聽きたる眞理を汝らに吿ぐる者なる我を殺さんと謀る。アブラハムは斯ることを爲さざりき。 |
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四〇 ところが今、神から聞いた真理をあなたがたに語ってきたこのわたしを、殺そうとしている。そんなことをアブラハムはしなかった。 |
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四一 爾曹は爾曹の父の行をおこなふ也かれら曰けるは我儕は奸淫に由て生れず只一人の父あり即ち~なり |
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四一 汝らは汝らの父の業を爲すなり』かれら言ふ『われら淫行によりて生れず、我らの父はただ一人、即ち~なり』 |
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四一 あなたがたは、あなたがたの父のわざを行っているのである」。彼らは言った、「わたしたちは、不品行の結果うまれた者ではない。わたしたちにはひとりの父がある。それは神である」。 |
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四二 イエス彼等に曰けるは~もし爾曹の父ならば爾曹われを愛すべし我は~より出て來ればなり夫われは己に由て來るに非ず~われを遣し給へるなり |
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四二 イエス言ひたまふ『~もし汝らの父ならば、汝ら我を愛せん、われ~より出でて來ればなり。我は己より來るにあらず、~われを遣し給へり。 |
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四二 イエスは彼らに言われた、「神があなたがたの父であるならば、あなたがたはわたしを愛するはずである。わたしは神から出た者、また神からきている者であるからだ。わたしは自分からきたのではなく、神からつかわされたのである。 |
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四三 爾曹なんぞ我いふ言を知ざるや蓋わが道を聽ことを得ざれば也 |
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四三 何故わが語ることを悟らぬか、是わが言をきくこと能はぬに因る。 |
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四三 どうしてあなたがたは、わたしの話すことがわからないのか。あなたがたが、わたしの言葉を悟ることができないからである。 |
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四四 爾曹己が父なる惡魔より出また其父の慾を行ふことを欲む彼は始より人を殺す者なり又眞理に居ず蓋かれの衷に眞理なければ也かれが誑を言ときは己より出して言なり蓋かれは誑者また誑者の父なれば也 |
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四四 汝らは己が父、惡魔より出でて己が父の慾を行はんことを望む。彼は最初より人殺なり、また眞その中になき故に眞に立たず、彼は虛僞をかたる每に己より語る、それは虛僞者にして虛僞の父なればなり。 |
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四四 あなたがたは自分の父、すなわち、悪魔から出てきた者であって、その父の欲望どおりを行おうと思っている。彼は初めから、人殺しであって、真理に立つ者ではない。彼のうちには真理がないからである。彼が偽りを言うとき、いつも自分の本音をはいているのである。彼は偽り者であり、偽りの父であるからだ。 |
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四五 われ眞理を言に因て爾曹われを信ぜず |
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四五 然るに我は眞を吿ぐるによりて、汝ら我を信ぜず、 |
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四五 しかし、わたしが真理を語っているので、あなたがたはわたしを信じようとしない。 |
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四六 爾曹のうち誰か我を罪に定る者ある乎われ爾曹に眞理を語るに何故われを信ぜざる乎 |
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四六 汝等のうち誰か我を罪ありとして責め得る。われ眞を吿ぐるに、我を信ぜぬは何故ぞ。 |
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四六 あなたがたのうち、だれがわたしに罪があると責めうるのか。わたしは真理を語っているのに、なぜあなたがたは、わたしを信じないのか。 |
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四七 ~より出し者は~の言を聽なんぢらの聞ざるは~より出ざるに因てなり |
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四七 ~より出づる者は~の言をきく、汝らの聽かぬは~より出でぬに因る』 |
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四七 神からきた者は神の言葉に聞き従うが、あなたがたが聞き従わないのは、神からきた者でないからである」。 |
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四八 ユダヤ人こたへて曰けるは爾はサマリヤの人にて鬼に憑たる者なりと我儕が言るは宜ならず乎 |
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四八 ユダヤ人こたへて言ふ『なんぢはサマリヤ人にて惡鬼に憑かれたる者なりと、我らが云へるは宜ならずや』 |
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四八 ユダヤ人たちはイエスに答えて言った、「あなたはサマリヤ人で、悪霊に取りつかれていると、わたしたちが言うのは、当然ではないか」。 |
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四九 イエス答て曰けるは我は鬼に憑たる者に非ず我は吾父を尊び爾曹は我を輕んずる也 |
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四九 イエス答へ給ふ『われは惡鬼に憑かれず、反つて我が父を敬ふ、なんぢらは我を輕んず。 |
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四九 イエスは答えられた、「わたしは、悪霊に取りつかれているのではなくて、わたしの父を重んじているのだが、あなたがたはわたしを軽んじている。 |
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五十 我は自己の榮を求めず之を求かつ審判する所の者あり |
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五〇 我はおのれの榮光を求めず、之を求め、かつ審判し給ふ者あり、 |
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五〇 わたしは自分の栄光を求めてはいない。それを求めるかたが別にある。そのかたは、またさばくかたである。 |
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五一 われ誠に實に爾曹に吿ん人もし我道を守らば窮なく死を見ざるべし |
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五一 誠にまことに汝らに吿ぐ、人もし我が言を守らば、永遠に死を見ざるべし』 |
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五一 よくよく言っておく。もし人がわたしの言葉を守るならば、その人はいつまでも死を見ることがないであろう」。 |
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五二 ユダヤ人かれに曰けるは今われらは爾が鬼に憑たる者なるを知アブラハム既に死また預言者も死り然るに爾いふ人もし我道を守らば窮なく死じと |
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五二 ユダヤ人いふ『今ぞ、なんぢが惡鬼に憑かれたるを知る。アブラハムも預言者たちも死にたり、然るに汝は「人もし我が言を守らば、永遠に死を味はざるべし」と云ふ。 |
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五二 ユダヤ人たちが言った、「あなたが悪霊に取りつかれていることが、今わかった。アブラハムは死に、預言者たちも死んでいる。それだのに、あなたは、わたしの言葉を守る者はいつまでも死を味わうことがないであろうと、言われる。 |
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五三 爾は我儕の先祖アブラハムよりも優れる者ならん乎アブラハム既に死預言者たちも死り爾みづからを誰と爲か |
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五三 汝われらの父アブラハムよりも大なるか、彼は死に、預言者たちも死にたり。汝はあのれを誰とするか』 |
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五三 あなたは、わたしたちの父アブラハムより偉いのだろうか。彼も死に、預言者たちも死んだではないか。あなたは、いったい、自分をだれと思っているのか」。 |
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五四 イエス答けるは我もし自ら榮をなさば我榮は虛し我を榮る者は我父すなはち爾曹の我~と 稱る所の者なり |
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五四 イエス答へたまふ『我もし己に榮光を歸せば、我が榮光は空し。我に榮光を歸する者は我が父なり、即ち汝らが己の~と稱ふる者なり。 |
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五四 イエスは答えられた、「わたしがもし自分に栄光を帰するなら、わたしの栄光は、むなしいものである。わたしに栄光を与えるかたは、わたしの父であって、あなたがたが自分の神だと言っているのは、そのかたのことである。 |
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五五 爾曹は彼を識ず我は彼をしる我もし彼を識ずと言ば爾曹の如き誑者と爲ん然ど我は彼を識また其言を守るなり |
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五五 然るに汝らは彼を知らず、我は彼を知る。もし彼を知らずと言はば、汝らの如く僞者たるべし。然れど我は彼を知り、且その御言を守る。 |
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五五 あなたがたはその神を知っていないが、わたしは知っている。もしわたしが神を知らないと言うならば、あなたがたと同じような偽り者であろう。しかし、わたしはそのかたを知り、その御言を守っている。 |
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五六 爾曹の先祖アブラハムは我日を見んことを喜び且これを見て樂めり |
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五六 汝らの父アブラハムは、我が日を見んとて樂しみ且これを見て喜べり』 |
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五六 あなたがたの父アブラハムは、わたしのこの日を見ようとして楽しんでいた。そしてそれを見て喜んだ」。 |
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五七 ユダヤ人これに曰けるは爾いまだ五十にも及ざるにアブラハムを見しや |
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五七 ユダヤ人いふ『なんぢ未だ五十歲にもならぬにアブラハムを見しか』 |
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五七 そこでユダヤ人たちはイエスに言った、「あなたはまだ五十にもならないのに、アブラハムを見たのか」。 |
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五八 イエス彼等に曰けるは誠に實に爾曹に吿ん我はアブラハムの有ざりし先より在者なり |
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五八 イエス言ひ給ふ『まことに誠に汝らに吿ぐ、アブラハムの生れいでぬ前より我は在るなり』 |
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五八 イエスは彼らに言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。アブラハムの生れる前からわたしは、いるのである」。 |
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五九 是に於て衆人かれを擊んとて石を取りイエス隱て其中を過り殿を出行り |
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五九 爰に彼ら石をとりてイエスに擲たんと爲たるに、イエス隱れて宮を出で給へり。 |
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五九 そこで彼らは石をとって、イエスに投げつけようとした。しかし、イエスは身を隠して、宮から出て行かれた。 |
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9章 |
一 イエス行とき生來なる瞽を見しが |
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一 イエス途往くとき、生れながらの盲人を見給ひたれば、 |
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一 イエスが道をとおっておられるとき、生れつきの盲人を見られた。 |
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二 その弟子かれに問て曰けるはラビ此人の瞽に生しは誰の罪なるや己に由か又二親に由か |
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二 弟子たち問ひて言ふ『ラビ、この人の盲目にて生れしは、誰の罪によるぞ、己のか、親のか』 |
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二 弟子たちはイエスに尋ねて言った、「先生、この人が生れつき盲人なのは、だれが罪を犯したためですか。本人ですか、それともその両親ですか」。 |
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三 イエス答けるは此人の罪に非ず亦その二親の罪にも非ず彼に由て~の作爲の顯れんため也 |
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三 イエス答へ給ふ『この人の罪にも親の罪にもあらず、ただ彼の上に~の業の顯れん爲なり。 |
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三 イエスは答えられた、「本人が罪を犯したのでもなく、また、その両親が犯したのでもない。ただ神のみわざが、彼の上に現れるためである。 |
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四 晝の問は我かならず我を遣しゝ者の行をなす可なり夜きたらん其とき誰も行をなすこと能はず |
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四 我を遣し給ひし者の業を我ら晝の間になさざる可からず。夜きたらん、その時は誰も働くこと能はず。 |
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四 わたしたちは、わたしをつかわされたかたのわざを、昼の間にしなければならない。夜が来る。すると、だれも働けなくなる。 |
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五 われ世に在時は世の光なり |
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五 われ世にをる間は世の光なり』 |
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五 わたしは、この世にいる間は、世の光である」。 |
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六 此事を言て地に唾し唾にて土を和その泥を瞽者の目に塗 |
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六 かく言ひて地に唾し、唾にて泥をつくり、之を盲人の目にぬりて言ひ給ふ、 |
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六 イエスはそう言って、地につばきをし、そのつばきで、どろをつくり、そのどろを盲人の目に塗って言われた、 |
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七 彼に曰けるはシロアムの池に往て洗へ彼すなはち往て洗ひ目見ことを得て歸れりシロアム之を譯ば遣されし者との義なり |
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七 『ゆきてシロアム(釋けば遣されたる者)の池にて洗へ』乃ちゆきて洗ひたれば、見ゆることを得て歸れり。 |
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七 「シロアム(つかわされた者、の意)の池に行って洗いなさい」。そこで彼は行って洗った。そして見えるようになって、帰って行った。 |
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八 隣の人々および素より彼の乞食なりしを見し者等いひけるは此は坐て物を乞し人ならず乎 |
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八 ここに隣人および前に彼の乞食なるを見し者ども言ふ『この人は坐して物乞ひゐたるにあらずや』 |
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八 近所の人々や、彼がもと、こじきであったのを見知っていた人々が言った、「この人は、すわってこじきをしていた者ではないか」。 |
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九 或人は彼なりと曰ある人は似たる也といふ彼いひけるは我は彼なり |
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九 或人は『夫なり』といひ、或人は『否、ただ似たるなり』といふ。かの者『われは夫なり』と言ひたれば、 |
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九 ある人々は「その人だ」と言い、他の人々は「いや、ただあの人に似ているだけだ」と言った。しかし、本人は「わたしがそれだ」と言った。 |
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十 彼等いひけるは爾の目は如何して啓たるや |
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一〇 人々いふ『さらば汝の目は如何にして開きたるか』 |
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一〇 そこで人々は彼に言った、「では、おまえの目はどうしてあいたのか」。 |
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十一 答て曰けるはイエスといふ人土を和わが目に塗て云シロアムの池に往て洗と我ゆきて洗ければ目見ことを得たり |
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一一 答ふ『イエスといふ人、泥をつくり我が目に塗りて言ふ「シロアムに往きて洗へ」と、乃ち往きて洗ひたれば、物見ることを得たり』 |
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一一 彼は答えた、「イエスというかたが、どろをつくって、わたしの目に塗り、『シロアムに行って洗え』と言われました。それで、行って洗うと、見えるようになりました」。 |
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十二 人々かれに曰けるは彼は何處に在や答て知ずと曰 |
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一二 彼ら『その人は何處に居るか』と言へば『知らず』と答ふ。 |
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一二 人々は彼に言った、「その人はどこにいるのか」。彼は「知りません」と答えた。 |
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十三 彼等この瞽なりし者をパリサイの人の所に携詣れり |
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一三 人々さきに盲目なりし者をパリサイ人らの許に連れきたる。 |
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一三 人々は、もと盲人であったこの人を、パリサイ人たちのところにつれて行った。 |
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十四 土を和てイエス彼が目を啓し日は安息日なりき |
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一四 イエスの泥をつくりて其の人の目をあけし日は安息日なりき。 |
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一四 イエスがどろをつくって彼の目をあけたのは、安息日であった。 |
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十五 パリサイの人も彼に問けるは爾の目は如何して啓たるや答けるは彼泥を我目に置われ其を洗て見ことを得たり |
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一五 パリサイ人らも亦いかにして物見ることを得しかと問ひたれば、彼いふ『かの人わが目に泥をぬり、我これを洗ひて見ゆることを得たり』 |
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一五 パリサイ人たちもまた、「どうして見えるようになったのか」、と彼に尋ねた。彼は答えた、「あのかたがわたしの目にどろを塗り、わたしがそれを洗い、そして見えるようになりました」。 |
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十六 或パリサイの人いひけるは此人安息日を守ざるが故に~より出しに非ず或人いひけるは罪人いかで斯ろ奇跡な行ふことを得んや是に於て彼等あらそひ別たり |
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一六 パリサイ人の中なる或人は『かの人、安息日を守らぬ故に、~より出でし者にあらず』と言ひ、或人は『罪ある人いかで斯る徵をなし得んや』と言ひて互に相爭ひたり。 |
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一六 そこで、あるパリサイ人たちが言った、「その人は神からきた人ではない。安息日を守っていないのだから」。しかし、ほかの人々は言った、「罪のある人が、どうしてそのようなしるしを行うことができようか」。そして彼らの間に分争が生じた。 |
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十七 また瞽者に曰けるは爾の目を啓しにより爾かれの事を何と言や答けるは彼に預言者なり |
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一七 爰にまた盲目なりし人に言ふ『なんぢの目をあけしに因り、汝は彼に就きて如何にいふか』彼いふ『預言者なり』 |
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一七 そこで彼らは、もう一度この盲人に聞いた、「おまえの目をあけてくれたその人を、どう思うか」。「預言者だと思います」と彼は言った。 |
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十八 ユダヤ人かれの瞽者なりしに見得やう爲しことを其二親を呼來るまでは信ぜず卽ち二親を呼來りて |
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一八 ユダヤ人ら彼が盲人なりしに見ゆるやうになりしことを未だ信ぜずして、目の開きたる人の兩親を呼び、 |
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一八 ユダヤ人たちは、彼がもと盲人であったが見えるようになったことを、まだ信じなかった。ついに彼らは、目が見えるようになったこの人の両親を呼んで、 |
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十九 之に問けるは此人は瞽者にて生しと言ところの爾曹の子なるか今いかにして見ことを得たる乎 |
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一九 問ひて言ふ『これは盲目にて生れしと言ふ汝らの子なりや、然らば今いかにして見ゆるか』 |
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一九 尋ねて言った、「これが、生れつき盲人であったと、おまえたちの言っているむすこか。それではどうして、いま目が見えるのか」。 |
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二十 二親かれらに答けるは此は我子なると生來の瞽なるとを知 |
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二〇 兩親こたへて言ふ『かれの我が子なることと盲目にて生れたる事とを知る。 |
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二〇 両親は答えて言った、「これがわたしどものむすこであること、また生れつき盲人であったことは存じています。 |
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二一 然ど今如何して目明に爲しか我儕これを知ず亦その目を啓しは誰なる乎を知ず彼は年長なり彼に問よ彼みづから言べし |
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二一 されど今いかにして見ゆるかを知らず、又その目をあけしは誰なるか、我らは知らず、彼に問へ、年長けたれば自ら己がことを語らん』 |
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二一 しかし、どうしていま見えるようになったのか、それは知りません。また、だれがその目をあけて下さったのかも知りません。あれに聞いて下さい。あれはもうおとなですから、自分のことは自分で話せるでしょう」。 |
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二二 二親の如此いひしはユダヤ人を懼しに因そはイエスをキリストと言明す者あらば會堂より出すべしとユダヤ人たがひに議定たれば也 |
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二二 兩親のかく言ひしは、ユダヤ人を懼れたるなり。ユダヤ人ら相議りて『若しイエスをキリストと言ひ顯す者あらば、除名すべし』と定めたるに因る。 |
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二二 両親はユダヤ人たちを恐れていたので、こう答えたのである。それは、もしイエスをキリストと告白する者があれば、会堂から追い出すことに、ユダヤ人たちが既に決めていたからである。 |
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二三 二親の彼は年長なり彼に問よと言しは此故なり |
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二三 兩親の『かれ年長けたれば彼に問へ』と云へるは、此の故なり。 |
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二三 彼の両親が「おとなですから、あれに聞いて下さい」と言ったのは、そのためであった。 |
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二四 瞽なりし者を復よびて曰けるは榮を~に歸せよ我儕は彼人の罪人なるを知 |
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二四 かれら盲目なりし人を再び呼びて言ふ『~に榮光を歸せよ、我等はかの人の罪人たるを知る』 |
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二四 そこで彼らは、盲人であった人をもう一度呼んで言った、「神に栄光を帰するがよい。あの人が罪人であることは、わたしたちにはわかっている」。 |
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二五 かれ答けるは罪人なるや否われ之を知ず我は瞽者なりしが今目明になれる此一事を知 |
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二五 答ふ『かれ罪人なるか、我は知らず、ただ一つの事をしる、即ち我さきに盲目たりしが、今見ゆることを得たる是なり』 |
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二五 すると彼は言った、「あのかたが罪人であるかどうか、わたしは知りません。ただ一つのことだけ知っています。わたしは盲人であったが、今は見えるということです」。 |
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二六 彼等また曰けるは彼は爾に何を行しや如何して爾の目を啓しや |
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二六 彼ら言ふ『かれは汝に何をなししか、如何にして目をあけしか』 |
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二六 そこで彼らは言った、「その人はおまえに何をしたのか。どんなにしておまえの目をあけたのか」。 |
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二七 答けるは我すでに爾曹に言しに爾曹きかず何故ふたゝび聞んとするか爾曹も其弟子に爲んと欲ふや |
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二七 答ふ『われ旣に汝らに吿げたれど聽かざりき。何ぞまた聽かんとするか、汝らもその弟子とならんことを望むか』 |
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二七 彼は答えた、「そのことはもう話してあげたのに、聞いてくれませんでした。なぜまた聞こうとするのですか。あなたがたも、あの人の弟子になりたいのですか」。 |
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二八 かれら詬り曰けるは爾は其人の弟子われらはモーセの弟子なり |
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二八 かれら罵りて言ふ『なんぢは其の弟子なり、我等はモーセの弟子なり。 |
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二八 そこで彼らは彼をののしって言った、「おまえはあれの弟子だが、わたしたちはモーセの弟子だ。 |
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二九 ~のモーセに語し言は我儕しれり然ど此人の何處より來れる乎を我儕しらず |
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二九 モーセに~の語り給ひしことを知れど、此の人の何處よりかを知らず』 |
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二九 モーセに神が語られたということは知っている。だが、あの人がどこからきた者か、わたしたちは知らぬ」。 |
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三十 其人こたへけるは此は奇き事なり彼すでに我目を啓しに其何處より來れるを爾曹しらずと曰 |
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三〇 答へて言ふ『その何處よりかを知らずとは怪しき事なり、彼わが目をあけしに。 |
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三〇 そこで彼が答えて言った、「わたしの目をあけて下さったのに、そのかたがどこからきたか、ご存じないとは、不思議千万です。 |
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三一 ~は罪人に聽ず然ど~を敬ひて其旨に遵ふ者はて聽たまふと我儕は知 |
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三一 ~は罪人に聽き給はねど、敬虔にして御意をおこなふ人に聽き給ふことを我らは知る。 |
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三一 わたしたちはこのことを知っています。神は罪人の言うことはお聞きいれになりませんが、神を敬い、そのみこころを行う人の言うことは、聞きいれて下さいます。 |
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三二 世の元始より以來うまれつきなる瞽者の目を啓し人あるを聞ず |
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三二 世の太初より、盲目にて生れし者の目をあけし人あるを聞きし事なし。 |
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三二 生れつき盲人であった者の目をあけた人があるということは、世界が始まって以来、聞いたことがありません。 |
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三三 もし此人~より出ずば何事をも行得ざるべし |
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三三 かの人もし~より出でずば、何事をも爲し得ざらん』 |
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三三 もしあのかたが神からきた人でなかったら、何一つできなかったはずです」。 |
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三四 彼等こたへて曰けるは爾は盡く罪孼に生し者なるに反て我儕を教るか遂に彼を逐出せり |
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三四 かれら答へて『なんぢ全く罪のうちに生れながら、我らをヘふるか』と言ひて、遂に彼を迫ひ出せり。 |
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三四 これを聞いて彼らは言った、「おまえは全く罪の中に生れていながら、わたしたちを教えようとするのか」。そして彼を外へ追い出した。 |
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三五 彼等が逐出しゝことを聞イエス尋て之に遇いひけるは爾~の子を信ずる乎 |
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三五 イエスその追ひ出されしことを聞き、彼に逢ひて言ひ給ふ『なんぢ人の子を信ずるか』 |
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三五 イエスは、その人が外へ追い出されたことを聞かれた。そして彼に会って言われた、「あなたは人の子を信じるか」。 |
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三六 答て曰けるは主よ彼として我信ずべき者は誰なるや |
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三六 答へて言ふ『主よ、それは誰なる乎、われ信ぜまほし』 |
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三六 彼は答えて言った、「主よ、それはどなたですか。そのかたを信じたいのですが」。 |
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三七 イエス曰けるは爾すでに彼をみる今なんぢと言者はそれなり |
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三七 イエス言ひ給ふ『なんぢ彼を見たり、汝と語る者は夫なり』 |
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三七 イエスは彼に言われた、「あなたは、もうその人に会っている。今あなたと話しているのが、その人である」。 |
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三八 主よ我信ずと曰て彼を拜せり |
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三八 爰に、かれ『主よ、我は信ず』といひて拜せり。 |
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三八 すると彼は、「主よ、信じます」と言って、イエスを拝した。 |
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三九 イエス曰けるは我審判せん爲に世に臨る即ち見ざる者をしてみえ見る者を反て瞽と爲しむ |
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三九 イエス言ひ給ふ『われ審判の爲にこの世に來れり。見えぬ人は見え、見ゆる人は盲目とならん僞なり』 |
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三九 そこでイエスは言われた、「わたしがこの世にきたのは、さばくためである。すなわち、見えない人たちが見えるようになり、見える人たちが見えないようになるためである」。 |
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四十 イエスと偕に居しパリサイの人この言を聞て彼に曰けるは我儕も瞽なる乎 |
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四〇 パリサイ人の中イエスと共に居りし者、これを聞きて言ふ『我らも盲目なるか』 |
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四〇 そこにイエスと一緒にいたあるパリサイ人たちが、それを聞いてイエスに言った、「それでは、わたしたちも盲人なのでしょうか」。 |
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四一 イエス彼等に曰けるは爾曹もし瞽ならば罪なかるべし然ど今われら見と言しに因て爾曹の罪は存れり |
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四一 イエス言ひ給ふ『もし盲目なりしならば、罪なかりしならん、然れど見ゆと言ふ汝らの罪は遺れり』 |
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四一 イエスは彼らに言われた、「もしあなたがたが盲人であったなら、罪はなかったであろう。しかし、今あなたがたが『見える』と言い張るところに、あなたがたの罪がある。 |
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10章 |
一 誠に實に爾曹に吿ん羊牢に入に門よりせずして他より踰る者は竊賊なり强盜なり |
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一 『まことに誠に汝らに吿ぐ、羊の檻に門より入らずして、他より越ゆる者は、盜人なり、强盜なり。 |
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一 よくよくあなたがたに言っておく。羊の囲いにはいるのに、門からでなく、ほかの所からのりこえて来る者は、盗人であり、強盗である。 |
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二 門より入者は其羊の牧者なり |
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二 門より入る者は、羊の牧者なり。 |
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二 門からはいる者は、羊の羊飼である。 |
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三 門守は彼の爲に啓き羊はその聲を聽かれ己の羊の名を呼て之を引出す |
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三 門守は彼のために開き、羊はその聲をきき、彼は己の羊の名を呼びて牽きいだす。 |
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三 門番は彼のために門を開き、羊は彼の声を聞く。そして彼は自分の羊の名をよんで連れ出す。 |
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四 彼その羊を引出すとき先に行なり羊かれの聲を識て之に從ふ |
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四 悉とく其の羊をいだしし時、これに先だちゆく、羊その聲を知るによりて從ふなり。 |
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四 自分の羊をみな出してしまうと、彼は羊の先頭に立って行く。羊はその声を知っているので、彼について行くのである。 |
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五 羊は別人に從はず反て避そは別人の聲を識ざれば也 |
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五 他の者には從はず、反つて逃ぐ、他の者どもの聲を知らぬ故なり』 |
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五 ほかの人には、ついて行かないで逃げ去る。その人の声を知らないからである」。 |
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六 イエス彼等に此譬を言ど彼等はその語れる所いかなる意かを知ざりき |
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六 イエスこの譬を言ひ給へど、彼らその何事をかたり給ふかを知らざりき。 |
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六 イエスは彼らにこの比喩を話されたが、彼らは自分たちにお話しになっているのが何のことだか、わからなかった。 |
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七 是故にイエス復かれらに曰けるは誠に實に爾曹に吿ん我は即ち羊の門なり |
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七 この故にイエス復いひ給ふ『まことに誠に汝らに吿ぐ、我は羊の門なり。 |
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七 そこで、イエスはまた言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。わたしは羊の門である。 |
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八 凡て我より先に來し者は竊賊なり強?盜なり羊その聲を聽ざりき |
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八 すべて我より前に來りし者は、盜人なり、强盜なり、羊は之に聽かざりき。 |
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八 わたしよりも前にきた人は、みな盗人であり、強盗である。羊は彼らに聞き従わなかった。 |
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九 我は門なり若人われより入ば救れ且出入をなして草を得べし |
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九 我は門なり、おほよそ我によりて入る者は救はれ、かつ出入をなし、草を得べし。 |
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九 わたしは門である。わたしをとおってはいる者は救われ、また出入りし、牧草にありつくであろう。 |
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十 竊賊の來るは盜んとし殺さんとし滅さんとするの他なし我きたるは羊をして生を得かつ豐ならしめん爲なり |
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一〇 盜人のきたるは盜み、殺し、亡さんとするの他なし。わが來るは羊に生命を得しめ、かつ豐に得しめん爲なり。 |
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一〇 盗人が来るのは、盗んだり、殺したり、滅ぼしたりするためにほかならない。わたしがきたのは、羊に命を得させ、豊かに得させるためである。 |
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十一 我は善牧者なり善牧者は羊の爲に命を捐 |
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一一 我は善き牧者なり、善き牧者は羊のために生命を捨つ。 |
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一一 わたしはよい羊飼である。よい羊飼は、羊のために命を捨てる。 |
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十二 牧者にあらず己が羊を有ず只やとはれて羊を守る者は 狼の來るを見れば羊を棄てにぐ狼羊を奪て之を散す |
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一二 牧者ならず、羊も己がものならぬ雇人は、豺狼のきたるを見れば羊を棄てて逃ぐ、ー豺狼は羊をうばひ且ちらすー |
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一二 羊飼ではなく、羊が自分のものでもない雇人は、おおかみが来るのを見ると、羊をすてて逃げ去る。そして、おおかみは羊を奪い、また追い散らす。 |
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十三 雇工の逃るは傭れし者なれば其羊を顧ざるに因てなり |
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一三 彼は雇人にてその羊を顧みぬ故なり。 |
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一三 彼は雇人であって、羊のことを心にかけていないからである。 |
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十四 我は善牧者にて己の羊を識又己の羊に識る |
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一四 我は善き牧者にして、我がものを知り、我がものは我を知る、 |
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一四 わたしはよい羊飼であって、わたしの羊を知り、わたしの羊はまた、わたしを知っている。 |
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十五 父われを識ごとく我も父を識われ羊の爲に命を捐ん |
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一五 父の我を知り、我の父を知るが如し、我は羊のために生命を捨つ。 |
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一五 それはちょうど、父がわたしを知っておられ、わたしが父を知っているのと同じである。そして、わたしは羊のために命を捨てるのである。 |
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十六 我は此牢にあらざる別の羊を有り彼等をも引來らん彼等わが聲を聽ん遂に一の群一の牧者となるべし |
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一六 我には亦この檻のものならぬ他の羊あり、之をも導かざるを得ず、彼らは我が聲をきかん、遂に一つの群ひとりの牧者となるべし。 |
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一六 わたしにはまた、この囲いにいない他の羊がある。わたしは彼らをも導かねばならない。彼らも、わたしの声に聞き従うであろう。そして、ついに一つの群れ、ひとりの羊飼となるであろう。 |
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十七 わが父われを愛す蓋われ再び命を得んが爲に命を捐るが故なり |
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一七 之によりて父は我を愛し給ふ、それは我ふたたび生命を得んために生命を捨つる故なり。 |
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一七 父は、わたしが自分の命を捨てるから、わたしを愛して下さるのである。命を捨てるのは、それを再び得るためである。 |
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十八 我より之を奪ふ者なし我みづから之を捐るなり我これを捐るの權能あり亦よく之を得の權能あり我父より我この命令を受たり |
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一八 人これを我より取るにあらず、我みづから捨つるなり。我は之をすつる權あり、復これを得る權あり、我この命令をわが父より受けたり』 |
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一八 だれかが、わたしからそれを取り去るのではない。わたしが、自分からそれを捨てるのである。わたしには、それを捨てる力があり、またそれを受ける力もある。これはわたしの父から授かった定めである」。 |
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十九 偖この言に因て復ユダヤ人あらそひ別たり |
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一九 これらの言によりて復ユダヤ人のうちに紛爭おこり、 |
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一九 これらの言葉を語られたため、ユダヤ人の間にまたも分争が生じた。 |
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二十 其中なる多の人いひけるは鬼に憑て狂ふ者なるに何ぞ彼に聽や |
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二〇 その中なる多くの者いふ『かれは惡鬼に憑かれて氣狂へり、何ぞ之にきくか』 |
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二〇 そのうちの多くの者が言った、「彼は悪霊に取りつかれて、気が狂っている。どうして、あなたがたはその言うことを聞くのか」。 |
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二一 又或人いひけるは是鬼に憑れし者の言に非ず鬼は瞽者の目を啓ることを能せん乎 |
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二一 他の者ども言ふ『これは惡鬼に憑かれたる者の言にあらず、惡鬼は盲人の目をあけ得んや』 |
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二一 他の人々は言った、「それは悪霊に取りつかれた者の言葉ではない。悪霊は盲人の目をあけることができようか」。 |
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二二 冬のころ修殿節の時 |
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二二 その頃エルサレムに宮潔の祭あり、時は冬なり。 |
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二二 そのころ、エルサレムで宮きよめの祭が行われた。時は冬であった。 |
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二三 イエス殿のソロモンの廓を行きけるに |
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二三 イエス宮の內、ソロモンの廊を歩みたまふに、 |
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二三 イエスは、宮の中にあるソロモンの廊を歩いておられた。 |
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二四 ユダヤ人かれを環圍みて曰けるは我儕を幾時まで疑はするや爾もしキリストならば明かに我儕に吿よ |
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二四 ユダヤ人ら之を取圍みて言ふ『何時まで我らの心を惑はしむるか、汝キリストならば明白に吿げよ』 |
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二四 するとユダヤ人たちが、イエスを取り囲んで言った、「いつまでわたしたちを不安のままにしておくのか。あなたがキリストであるなら、そうとはっきり言っていただきたい」。 |
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二五 イエス答けるは我なんぢらに告しかども爾曹信ぜず父の名に託て我が行ふ事われに就て證するなり |
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二五 イエス答へ給ふ『われ旣に吿げたれど汝ら信ぜず、わが父の名によりて行ふわざは、我に就きて證す。 |
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二五 イエスは彼らに答えられた、「わたしは話したのだが、あなたがたは信じようとしない。わたしの父の名によってしているすべてのわざが、わたしのことをあかししている。 |
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二六 然ざ爾曹信ぜず此は爾曹に言し如く我羊に非ざれば也 |
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二六 されど汝らは信ぜず、我が羊ならぬ故なり。 |
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二六 あなたがたが信じないのは、わたしの羊でないからである。 |
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二七 我羊は我聲を聽われは彼等を識かれら我に從ひ |
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二七 わが羊はわが聲をきき、我は彼らを知り、彼らは我に從ふ。 |
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二七 わたしの羊はわたしの声に聞き従う。わたしは彼らを知っており、彼らはわたしについて来る。 |
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二八 われ奴等に永生を賜ふ彼等いつまでも亡びず亦これを我手より奪ふ者なし |
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二八 我かれらに永遠の生命を與ふれば、彼らは永遠に亡ぶることなく、又かれらを我が手より奪ふ者あらじ。 |
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二八 わたしは、彼らに永遠の命を与える。だから、彼らはいつまでも滅びることがなく、また、彼らをわたしの手から奪い去る者はない。 |
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二九 我に彼等を賜し我父は萬有よりも大なり又わが父の手より之を奪うる者なし |
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二九 彼らを我にあたへ給ひし我が父は、一切のものよりも大なれば、誰にても父の御手よりは奪ふこと能はず。 |
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二九 わたしの父がわたしに下さったものは、すべてにまさるものである。そしてだれも父のみ手から、それを奪い取ることはできない。 |
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三十 我と父とは一なり |
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三〇 我と父とは一つなり』 |
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三〇 わたしと父とは一つである」。 |
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三一 是に於てユダヤ人石をとりて復かれを擊んとせり |
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三一 ユダヤ人また石を取りあげてイエスを擊たんとす。 |
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三一 そこでユダヤ人たちは、イエスを打ち殺そうとして、また石を取りあげた。 |
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三二 イエス彼等に答けるは我父より受て我おほくの善事を爾曹に示しに其うち何の事によりて我を石にて擊んとする乎 |
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三二 イエス答へ給ふ『われは父によりて多くの善き業を汝らに示したり、その孰の業ゆゑに我を石にて擊たんとするか』 |
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三二 するとイエスは彼らに答えられた、「わたしは、父による多くのよいわざを、あなたがたに示した。その中のどのわざのために、わたしを石で打ち殺そうとするのか」。 |
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三三 ユダヤ人こたへて曰けるは石にて擊んとするは善事の爲に非ず爾たゞ褻瀆ことをいひ且なんぢ人なるに己を~となすに因てなり |
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三三 ユダヤ人こたふ『なんぢを石にて擊つは善きわざの故ならず、瀆言の故にして、汝人なるに己を~とする故なり』 |
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三三 ユダヤ人たちは答えた、「あなたを石で殺そうとするのは、よいわざをしたからではなく、神を汚したからである。また、あなたは人間であるのに、自分を神としているからである」。 |
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三四 イエス答けるは爾曹の律法に我いふ爾曹は~なりと錄されしに非ずや |
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三四 イエス答へ給ふ『なんぢらの律法に「われ言ふ、汝らは~なり」と錄されたるに非ずや。 |
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三四 イエスは彼らに答えられた、「あなたがたの律法に、『わたしは言う、あなたがたは神々である』と書いてあるではないか。 |
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三五 聖書は毀る可らず若~の命を奉し者を~と稱んには |
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三五 かく~の言を賜りし人々を~と云へり。聖書は廢るべきにあらず、 |
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三五 神の言を託された人々が、神々といわれておるとすれば、(そして聖書の言は、すたることがあり得ない) |
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三六 父の聖別ちて世に遣しゝ者われは~の子なりと稱ばとて何ぞ之を褻瀆ことをいふと曰べけん乎 |
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三六 然るに父の潔め別ちて世に遣し給ひし者が「われは~の子なり」と言へばとて、何ぞ「瀆言を言ふ」といふか。 |
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三六 父が聖別して、世につかわされた者が、『わたしは神の子である』と言ったからとて、どうして『あなたは神を汚す者だ』と言うのか。 |
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三七 もし我わが父の事を行ずば我を信ずること勿れ |
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三七 我もし我が父のわざを行はずば我を信ずな、 |
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三七 もしわたしが父のわざを行わないとすれば、わたしを信じなくてもよい。 |
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三八 若これを行ば我を信ぜずとも其事を信ぜよ蓋父の我にあり我の父に在ことを爾曹しりて信ぜんが爲なり |
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三八 もし行はば假令われを信ぜずとも、その業を信ぜよ。然らば父の我にをり、我の父に居ることを知りて悟らん』 |
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三八 しかし、もし行っているなら、たといわたしを信じなくても、わたしのわざを信じるがよい。そうすれば、父がわたしにおり、また、わたしが父におることを知って悟るであろう」。 |
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三九 彼等また執んとしたりしがイエスその手を脱て去り |
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三九 かれら復イエスを捕へんとせしが、その手より脫れて去り給へり。 |
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三九 そこで、彼らはまたイエスを捕えようとしたが、イエスは彼らの手をのがれて、去って行かれた。 |
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四十 斯て復ヨルダンの外なるヨハネのバプテスマを施しゝ所に往て彼處に居けるに |
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四〇 斯てイエス復ヨルダンの彼方、ヨハネの最初にバプテスマを施したる處にいたり、其處にとどまり給ひしが、 |
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四〇 さて、イエスはまたヨルダンの向こう岸、すなわち、ヨハネが初めにバプテスマを授けていた所に行き、そこに滞在しておられた。 |
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四一 多の人かれに至り曰けるはヨハネに休徵を行ず然ども此人につきてヨハネのいひし言はみな眞なり |
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四一 多くの人みもとに來りて『ヨハネは何の徵をも行はざりしかど、この人に就きてヨハネの言ひし事は、ことごとく眞なりき』と言ふ。 |
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四一 多くの人々がイエスのところにきて、互に言った、「ヨハネはなんのしるしも行わなかったが、ヨハネがこのかたについて言ったことは、皆ほんとうであった」。 |
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四二 是に於て許多の人かしこにて彼を信ぜり |
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四二 而して多くの人、かしこにてイエスを信じたり。 |
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四二 そして、そこで多くの者がイエスを信じた。 |
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11章 |
一 茲に病者ありラザロと云てベタニヤの人なりベタニヤはマリアと某姊マレタの住る村なり |
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一 爰に病める者あり、ラザロと云ふ、マリヤとその姊妹マルタとの村ベタニヤの人なり。 |
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一 さて、ひとりの病人がいた。ラザロといい、マリヤとその姉妹マルタの村ベタニヤの人であった。 |
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二 マリアは曩に主に香膏をぬり己の頭の髮をもて主の足を拭ひし人にて此病るラザロは彼が兄弟なり |
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二 此のマリヤは主に香油をぬり、頭髪にて御足を拭ひし者にして、病めるラザロはその兄弟なり。 |
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二 このマリヤは主に香油をぬり、自分の髪の毛で、主の足をふいた女であって、病気であったのは、彼女の兄弟ラザロであった。 |
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三 是故にその姊妹イエスの所に主の愛する者病りと言遣せり |
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三 姊妹ら人をイエスに遣して『主、視よ、なんぢの愛し給ふもの病めり』と言はしむ。 |
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三 姉妹たちは人をイエスのもとにつかわして、「主よ、ただ今、あなたが愛しておられる者が病気をしています」と言わせた。 |
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四 イエス之を聞て曰けるは此は死る病に非ず~の榮の爲なり~の子をして之に因て榮を得しめんが爲なり |
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四 之を聞きてイエス言ひ給ふ『この病は死に至らず、~の榮光のため、~の子のこれに由りて榮光を受けんためなり』 |
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四 イエスはそれを聞いて言われた、「この病気は死ぬほどのものではない。それは神の栄光のため、また、神の子がそれによって栄光を受けるためのものである」。 |
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五 夫マルタと其妹およびラザロはイエスの愛する所の者なり |
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五 イエスはマルタと、その姊妹と、ラザロとを愛し給へり。 |
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五 イエスは、マルタとその姉妹とラザロとを愛しておられた。 |
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六 是故にイエスその病るを聞て此處に二日とゞまり |
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六 ラザロの病みたるを聞きて、その居給ひし處になほ二日留り、 |
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六 ラザロが病気であることを聞いてから、なおふつか、そのおられた所に滞在された。 |
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七 其のち弟子に曰けるは我儕またユダヤに往べし |
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七 而してのち弟子たちに言ひ給ふ『われら復ユダヤに往くべし』 |
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七 それから弟子たちに、「もう一度ユダヤに行こう」と言われた。 |
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八 弟子いひけるはラビ ユダヤ人は近來も石をもて爾を擊んとせしに復かしこに往たまふ乎 |
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八 弟子たち言ふ『ラビ、この程もユダヤ人、なんぢを石にて擊たんとせしに、復かしこに往き給ふか』 |
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八 弟子たちは言った、「先生、ユダヤ人らが、さきほどもあなたを石で殺そうとしていましたのに、またそこに行かれるのですか」。 |
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九 イエス答けるは一日の中に十二時あるに非ずや人もし日間あるかば躓くことなし蓋この世の光を見に因てなり |
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九 イエス答へたまふ『一日に十二時あるならずや、人もし晝あるかば、此の世の光を見るゆゑに躓くことなし。 |
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九 イエスは答えられた、「一日には十二時間あるではないか。昼間あるけば、人はつまずくことはない。この世の光を見ているからである。 |
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十 また人もし夜あるかば躓くべし蓋光その人に無が故なり |
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一〇 夜あるかば、光その人になき故に躓くなり』 |
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一〇 しかし、夜あるけば、つまずく。その人のうちに、光がないからである」。 |
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十一 イエス如此いひて後弟子に曰けるは我儕の友ラザロ寢たり我かれを醒さん爲に往べし |
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一一 かく言ひて復その後いひ給ふ『われらの友ラザロ眠れり、されど我よび起さん爲に往くなり』 |
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一一 そう言われたが、それからまた、彼らに言われた、「わたしたちの友ラザロが眠っている。わたしは彼を起しに行く」。 |
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十二 弟子いひけるは主よ彼もし寢しならば愈ん |
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一二 弟子たち言ふ『主よ、眠れるならば瘉ゆべし』 |
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一二 すると弟子たちは言った、「主よ、眠っているのでしたら、助かるでしょう」。 |
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十三 イエスは彼の死しを言るなれど弟子等は寢て臥ることを言るならんと意り |
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一三 イエスは彼が死にたることを言ひ給ひしなれど、弟子たちは寢ねて眠れるを言ひ給ふと思へるなり。 |
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一三 イエスはラザロが死んだことを言われたのであるが、弟子たちは、眠って休んでいることをさして言われたのだと思った。 |
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十四 是故にイエス明かに彼等に吿て曰けるはラザロは死り |
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一四 爰にイエス明白に言ひ給ふ『ラザロは死にたり。 |
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一四 するとイエスは、あからさまに彼らに言われた、「ラザロは死んだのだ。 |
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十五 爾曹をして信ぜしむる爲に我かしこに在ざりしを喜ぶ然どいま彼處に往べし |
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一五 我かしこに居らざりし事を汝等のために喜ぶ、汝等をして信ぜしめんとてなり。然れど我ら今その許に往くべし』 |
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一五 そして、わたしがそこにいあわせなかったことを、あなたがたのために喜ぶ。それは、あなたがたが信じるようになるためである。では、彼のところに行こう」。 |
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十六 デドモと稱るトマス他の弟子等に曰けるは我儕も亦ゆきて彼と偕に死べし |
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一六 デドモと稱ふるトマス、他の弟子たちに言ふ『われらも往きて彼と共に死ぬべし』 |
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一六 するとデドモと呼ばれているトマスが、仲間の弟子たちに言った、「わたしたちも行って、先生と一緒に死のうではないか」。 |
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十七 イエス至てラザロが旣に墓に葬れて四日なるを知り |
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一七 さてイエス來り見給へば、ラザロの墓にあること、旣に四日なりき。 |
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一七 さて、イエスが行ってごらんになると、ラザロはすでに四日間も墓の中に置かれていた。 |
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十八 ベタニヤはエルサレムに近し其距ること約そ廿七丁なり |
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一八 ベタニヤはエルサレムに近くして、二十五丁ばかりの距離なるが、 |
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一八 ベタニヤはエルサレムに近く、二十五丁ばかり離れたところにあった。 |
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十九 多のユダヤ人マルタとマリアを其兄弟の事に因て慰めんとて旣に彼等の所に來りをれり |
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一九 數多のユダヤ人、マルタとマリヤとをその兄弟の事につき慰めんとて來れり。 |
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一九 大ぜいのユダヤ人が、その兄弟のことで、マルタとマリヤとを慰めようとしてきていた。 |
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二十 マルタはイエス來給へりと聞て之を出迎へマリアはなほ室に坐せり |
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二〇 マルタはイエス來給ふと聞きて出で迎へたれど、マリヤはなは家に坐し居たり。 |
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二〇 マルタはイエスがこられたと聞いて、出迎えに行ったが、マリヤは家ですわっていた。 |
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二一 マルタ イエスに曰けるは主よ此に在せしならば我兄弟は死ざりしものを |
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二一 マルタ、イエスに言ふ『主よ、もし此處に在ししならば、我が兄弟は死なざりしものを。 |
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二一 マルタはイエスに言った、「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう。 |
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二二 然ながら假令今にても爾が~に求る所のものは~なんぢに賜ふと知 |
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二二 されど今にても我は知る、何事を~に願ひ給ふとも、~は與へ給はん』 |
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二二 しかし、あなたがどんなことをお願いになっても、神はかなえて下さることを、わたしは今でも存じています」。 |
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二三 イエス曰けるは爾の兄弟は甦るべし |
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二三 イエス言ひ給ふ『なんぢの兄弟は甦へるべし』 |
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二三 イエスはマルタに言われた、「あなたの兄弟はよみがえるであろう」。 |
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二四 マルタ イエスに曰けるは彼が末日の甦るべき時に甦らん事を知なり |
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二四 マルタ言ふ『をはりの日、復活のときに甦へるべきを知る』 |
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二四 マルタは言った、「終りの日のよみがえりの時よみがえることは、存じています」。 |
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二五 イエス彼に曰けるは我は復生なり生命なり我を信ずる者は死るとも生べし |
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二五 イエス言ひ給ふ『我は復活なり、生命なり、我を信ずる者は死ぬとも生きん。 |
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二五 イエスは彼女に言われた、「わたしはよみがえりであり、命である。わたしを信じる者は、たとい死んでも生きる。 |
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二六 凡て生て我を信ずる者は永遠も死ることなし爾これを信ずるや |
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二六 凡そ生きて我を信ずる者は、永遠に死なざるべし。汝これを信ずるか』 |
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二六 また、生きていて、わたしを信じる者は、いつまでも死なない。あなたはこれを信じるか」。 |
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二七 彼イエスに曰けるは主よ然り我なんぢは世に臨るべきキリスト~の子なりと信ず |
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二七 彼いふ『主よ然り、我なんぢは世に來るべきキリスト、~の子なりと信ず』 |
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二七 マルタはイエスに言った、「主よ、信じます。あなたがこの世にきたるべきキリスト、神の御子であると信じております」。 |
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二八 如此いひ竟て潜に其妹マリアをよび師きたりて爾を呼給へりと曰 |
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二八 かく言ひて後ゆきて窃にその姊妹マリヤを呼びて『師きたりて汝を呼びたまふ』と言ふ。 |
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二八 マルタはこう言ってから、帰って姉妹のマリヤを呼び、「先生がおいでになって、あなたを呼んでおられます」と小声で言った。 |
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二九 マリア之をきゝ急ぎ起てイエスの所に往り |
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二九 マリヤ之をきき、急ぎ起ちて御許に往けり。 |
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二九 これを聞いたマリヤはすぐに立ち上がって、イエスのもとに行った。 |
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三十 イエス未だ村に入ず仍マルタの迎し所にをれり |
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三〇 イエスは未だ村に入らず、尙マルタの迎へし處に居給ふ。 |
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三〇 イエスはまだ村に、はいってこられず、マルタがお迎えしたその場所におられた。 |
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三一 マリアを慰めて偕に室に在しユダヤ人マリアが急ぎ起出るを見て彼ほ墓に往て哭ならんと曰つゝ彼に隨へり |
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三一 マリヤと共に家に居いて慰め居たるユダヤ人、その急ぎ立ちて出でゆくを見、かれは歎かんとて墓に往くと思ひて後に隨へり。 |
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三一 マリヤと一緒に家にいて彼女を慰めていたユダヤ人たちは、マリヤが急いで立ち上がって出て行くのを見て、彼女は墓に泣きに行くのであろうと思い、そのあとからついて行った。 |
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三二 マリア イエスの所に來り彼を見て其足下に伏いひけるは主よ若こゝに在せしならば我兄弟は死ざりしものを |
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三二 斯てマリヤ、イエスの居給ふ處にいたり、之を見てその足下に伏し『主よ、もし此處に在ししならば、我が兄弟は死なざりしものを』と言ふ。 |
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三二 マリヤは、イエスのおられる所に行ってお目にかかり、その足もとにひれ伏して言った、「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう」。 |
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三三 イエス マリアの哭と彼と偕に來しユダヤ人の泣を見て心を働しめ身ふるひて |
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三三 イエスかれが泣き居り、共に來りしユダヤ人も泣き居るを見て、心を傷め悲しみて言ひ給ふ、 |
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三三 イエスは、彼女が泣き、また、彼女と一緒にきたユダヤ人たちも泣いているのをごらんになり、激しく感動し、また心を騒がせ、そして言われた、 |
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三四 曰けるは爾曹何處に彼を置しや彼等いひけるは主よ來て觀たまへ |
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三四 『かれを何處に置きしか』彼ら言ふ『主よ、來りて見給へ』 |
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三四 「彼をどこに置いたのか」。彼らはイエスに言った、「主よ、きて、ごらん下さい」。 |
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三五 イエス 涕を流たまへり |
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三五 イエス淚をながし給ふ。 |
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三五 イエスは涙を流された。 |
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三六 是に於てユダヤ人いひけるは見よ如何ばかり彼を愛する者ぞ |
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三六 爰にユダヤ人ら言ふ『視よ、いかばかり彼を愛せしぞや』 |
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三六 するとユダヤ人たちは言った、「ああ、なんと彼を愛しておられたことか」。 |
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三七 その中なる人曰けるは瞽者の目を啓たる此人にして彼を死ざらしむること能ざりし乎 |
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三七 その中の或者ども言ふ『盲人の目をあけし此の人にして、彼を死なざらしむること能はざりしか』 |
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三七 しかし、彼らのある人たちは言った、「あの盲人の目をあけたこの人でも、ラザロを死なせないようには、できなかったのか」。 |
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三八 イエスまた心を慟しめて墓に至る墓は洞にて其口の所に石を置り |
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三八 イエスまた心を傷めつつ墓にいたり給ふ。墓は洞にして石を置きて塞げり。 |
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三八 イエスはまた激しく感動して、墓にはいられた。それは洞穴であって、そこに石がはめてあった。 |
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三九 イエス曰けるは石を去よ死し者の兄弟マルタ曰けるは主よ彼ははや臭し死てより已に四日を經たり |
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三九 イエス言ひ給ふ『石を除けよ』死にし人の姊妹マルタ言ふ『主よ、彼ははや臭し、四日を經たればなり』 |
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三九 イエスは言われた、「石を取りのけなさい」。死んだラザロの姉妹マルタが言った、「主よ、もう臭くなっております。四日もたっていますから」。 |
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四十 イエス彼に曰けるは爾もし信ぜば~の榮を見べしと我なんぢに言しに非ずや |
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四〇 イエス言ひ給ふ『われ汝に、もし信ぜば~の榮光を見んと言ひしにあらずや』 |
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四〇 イエスは彼女に言われた、「もし信じるなら神の栄光を見るであろうと、あなたに言ったではないか」。 |
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四一 遂に其石を死し者を置たる所より移去たりイエス天を仰ぎて曰けるは父よ已に我に聽り我これを爾に謝す |
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四一 ここに人々、石を除けたり。イエス目を擧げて言ひたまふ『父よ、我にきき給ひしを謝す。 |
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四一 人々は石を取りのけた。すると、イエスは目を天にむけて言われた、「父よ、わたしの願いをお聞き下さったことを感謝します。 |
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四二 我なんぢが恒に我に聽ことを知しかるに我かく言は傍に立る人をして爾の我を遣しゝことを信ぜしめんとて也 |
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四二 常にきき給ふを我は知る。然るに斯く言ふは、傍らに立つ群衆の爲にして、汝の我を遣し給ひしことを之に信ぜしめんとてなり』 |
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四二 あなたがいつでもわたしの願いを聞きいれて下さることを、よく知っています。しかし、こう申しますのは、そばに立っている人々に、あなたがわたしをつかわされたことを、信じさせるためであります」。 |
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四三 如此いひて大聲に呼いひけるはラザロよ出よ |
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四三 斯く言ひてのち、聲高く『ラザロよ、出で來たれ』と呼はり給へば、 |
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四三 こう言いながら、大声で「ラザロよ、出てきなさい」と呼ばわれた。 |
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四四 死者布にて手足を縛れ面は手布にて裹れて出イエス彼等に曰けるは彼を釋て行しめよ |
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四四 死にしもの布にて足と手とを卷かれたるまま出で來る、顏も手拭にて包まれたり。イエス『これを解きて往かしめよ』と言ひ給ふ。 |
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四四 すると、死人は手足を布でまかれ、顔も顔おおいで包まれたまま、出てきた。イエスは人々に言われた、「彼をほどいてやって、帰らせなさい」。 |
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四五 マリアと偕に來しユダヤ人イエスの行し事を見て多く彼を信ぜり |
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四五 斯てマリヤの許に來りて、イエスの爲し給ひし事を見たる多くのユダヤ人、かれを信じたりしが、 |
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四五 マリヤのところにきて、イエスのなさったことを見た多くのユダヤ人たちは、イエスを信じた。 |
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四六 然ども其中にパリサイの人に往てイエスの行し事を吿し者あり |
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四六 或者はパリサイ人に往きて、イエスの爲し給ひし事を吿げたり。 |
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四六 しかし、そのうちの数人がパリサイ人たちのところに行って、イエスのされたことを告げた。 |
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四七 是に於て祭司の長等とパリサイの人と議員を召集めて曰けるは我儕如何すべき乎この人多の奇跡を行なり |
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四七 ここに祭司長。パリサイ人ら議會を開きて言ふ『われら如何に爲すべきか、此の人おほくの徵を行ふなり。 |
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四七 そこで、祭司長たちとパリサイ人たちとは、議会を召集して言った、「この人が多くのしるしを行っているのに、お互は何をしているのだ。 |
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四八 もし彼を此まゝに棄置ば人みな彼を信ぜん然ばロマの人きたりて我儕の地をも民をも奪べし |
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四八 もし彼をこのまま捨ておかば、人々みな彼を信ぜん、而してロマ人きたりて、我らの土地と國人とを奪はん』 |
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四八 もしこのままにしておけば、みんなが彼を信じるようになるだろう。そのうえ、ローマ人がやってきて、わたしたちの土地も人民も奪ってしまうであろう」。 |
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四九 其中の一人にて此歲の祭司の長なるカヤパと云る者彼等に曰けるは爾曹何をも知ず |
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四九 その中の一人にて此の年の大祭司なるカヤパ言ふ『なんぢら何をも知らず。 |
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四九 彼らのうちのひとりで、その年の大祭司であったカヤパが、彼らに言った、「あなたがたは、何もわかっていないし、 |
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五十 又民の爲に一人死て擧國ほろびざるは我儕のuたる事をも思ざる也 |
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五〇 ひとりの人、民のために死にて、國人すべての滅びぬは、汝らのuなるを思はぬなり』 |
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五〇 ひとりの人が人民に代って死んで、全国民が滅びないようになるのがわたしたちにとって得だということを、考えてもいない」。 |
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五一 此言は己より出しに非ず此歲の祭司の長なるによりイエスの斯民の爲に死ることを預言せるなり |
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五一 これは己より云へるに非ず、この年の大祭司なれば、イエスの國人のため、 |
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五一 このことは彼が自分から言ったのではない。彼はこの年の大祭司であったので、預言をして、イエスが国民のために、 |
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五二 特に斯民の爲のみならず散たる~の子民等をも一に集んが爲なり |
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五二 又ただに國人の爲のみならず、散りたる~の子らを一つに集めん爲に死に給ふことを預言したるなり。 |
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五二 ただ国民のためだけではなく、また散在している神の子らを一つに集めるために、死ぬことになっていると、言ったのである。 |
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五三 偖この日よりして彼等イエスを殺さんと共に議る |
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五三 彼等この日よりイエスを殺さんと議れり。 |
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五三 彼らはこの日からイエスを殺そうと相談した。 |
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五四 是故にイエス此より顯にユダヤ人の中を行かず其處を去て野に近き所なるエフライムといふ邑に往て弟子と共に留れり |
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五四 されば此の後イエス顯にユダヤ人のなかを歩み給はず、此處を去りて荒野にちかき處なるエフライムといふ町に往き、弟子たちと偕に其處に留りたまふ。 |
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五四 そのためイエスは、もはや公然とユダヤ人の間を歩かないで、そこを出て、荒野に近い地方のエフライムという町に行かれ、そこに弟子たちと一緒に滞在しておられた。 |
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五五 ユダヤ人の逾越の節ちかづきければ人々己を潔んが爲に逾越の節の前にク間よりエルサレムに上り |
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五五 ユダヤ人の過越の祭近づきたれば、多くの人々身を潔めんとて、祭のまへに田舍よりエルサレムに上れり。 |
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五五 さて、ユダヤ人の過越の祭が近づいたので、多くの人々は身をきよめるために、祭の前に、地方からエルサレムへ上った。 |
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五六 イエスを尋ね殿に立て相互に曰けるは如何に意や彼は節筵に來ざる乎 |
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五六 彼らイエスをたづね、宮に立ちて互に言ふ『なんぢら如何に思ふか、彼は祭に來らぬか』 |
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五六 人々はイエスを捜し求め、宮の庭に立って互に言った、「あなたがたはどう思うか。イエスはこの祭にこないのだろうか」。 |
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五七 祭司の長等とパリサイの人と已に令を出して若イエスの所在をしる人あらば吿べしと云こは彼を執んとする也 |
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五七 祭司長・パリサイ人らは、イエスを捕へんとて、その在處を知る者あらば、吿げ出づべく預て命令したりしなり。 |
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五七 祭司長たちとパリサイ人たちとは、イエスを捕えようとして、そのいどころを知っている者があれば申し出よ、という指令を出していた。 |
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12章 |
一 逾越の節の六日前イエス ベタニヤに至る此處は即ち死て甦りしラザロの在所なり |
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一 過超の祭の六日前に、イエス、ベタニヤに來り給ふ、ここは死人の中より甦へらせ給ひしラザロの居る事なり。 |
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一 過越の祭の六日まえに、イエスはベタニヤに行かれた。そこは、イエスが死人の中からよみがえらせたラザロのいた所である。 |
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二 是に於て或人々この處にてイエスに筵席を設くマルタ給仕を爲りラザロもイエスと偕に坐せる者のうちの一人なり |
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二 此處にてイエスのために饗宴を設け、マルタは事へ、ラザロはイエスと共に席に著ける者の中にあり。 |
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二 イエスのためにそこで夕食の用意がされ、マルタは給仕をしていた。イエスと一緒に食卓についていた者のうちに、ラザロも加わっていた。 |
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三 マリアは眞正のナルダなる價たかき香膏一斤を携來てイエスの足に塗また己が頭髮にて其足を拭へり膏のにほひ徧く室内に滿り |
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三 マリヤは價高き混りなきナルドの香油一斤を持ち來りて、イエスの御足にぬり、己が頭髪にて御足を拭ひしに、香油のかをり家に滿ちたり。 |
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三 その時、マリヤは高価で純粋なナルドの香油一斤を持ってきて、イエスの足にぬり、自分の髪の毛でそれをふいた。すると、香油のかおりが家にいっぱいになった。 |
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四 その弟子の一人なるイスカリオテのユダ即ちイエスを賣さんとする者言けるは |
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四 御弟子の一人にてイエスを賣らんとするイスカリオテのユダ言ふ、 |
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四 弟子のひとりで、イエスを裏切ろうとしていたイスカリオテのユダが言った、 |
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五 此香膏を何ぞ銀三百に售て貧者に施さゞる乎 |
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五 『何ぞこの香油を三百デナリに賣りて貧しき者に施さざる』 |
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五 「なぜこの香油を三百デナリに売って、貧しい人たちに、施さなかったのか」。 |
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六 彼が如此いへるは貧者を顧に非ず竊者にて且金囊を帶その中に入たる物を奪ふ者なれば也 |
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六 かく云へるは貧しき者を思ふ故にあらず、おのれ盜人にして財囊を預り、その中に納むる物を掠めゐたればなり。 |
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六 彼がこう言ったのは、貧しい人たちに対する思いやりがあったからではなく、自分が盗人であり、財布を預かっていて、その中身をごまかしていたからであった。 |
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七 イエス曰けるは彼に與る勿わが葬の日の爲に之を貯へたり |
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七 イエス言ひ給ふ『この女の爲すに任せよ、我が葬りの日のために之を貯へたるなり。 |
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七 イエスは言われた、「この女のするままにさせておきなさい。わたしの葬りの日のために、それをとっておいたのだから。 |
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八 貧者は常に爾曹と偕に在ど我は常に爾曹と偕に在ず |
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八 貧しき者は常に汝らと偕に居れども、我は常に居らぬなり』 |
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八 貧しい人たちはいつもあなたがたと共にいるが、わたしはいつも共にいるわけではない」。 |
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九 多のユダヤ人イエスが此に在を知て來る特にイエスの爲のみに非ず亦その死より甦らしゝ所のラザロをも見んと欲るなり |
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九 ユダヤの多くの民ども、イエスの此處に居給ふことを知りて來る、これはイエスの爲のみにあらず、死人の中より甦へらせ給ひしラザロを見んとてなり。 |
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九 大ぜいのユダヤ人たちが、そこにイエスのおられるのを知って、押しよせてきた。それはイエスに会うためだけではなく、イエスが死人のなかから、よみがえらせたラザロを見るためでもあった。 |
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十 祭司の長等ラザロをも殺さんと謀る |
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一〇 斯て祭司長ら、ラザロをも殺さんと議る。 |
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一〇 そこで祭司長たちは、ラザロも殺そうと相談した。 |
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十一 蓋ラザロの故に因て多のユダヤ人ゆきてイエスを信ずるがゆゑ也 |
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一一 彼のために多くのユダヤ人さり往きてイエスを信ぜし故なり。 |
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一一 それは、ラザロのことで、多くのユダヤ人が彼らを離れ去って、イエスを信じるに至ったからである。 |
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十二 明日おほくの人々節筵に來りイエスのエルサレムに來らんとするを聞 |
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一二 明くる日、祭に來りし多くの民ども、イエスのエルサレムに來り給ふをきき、 |
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一二 その翌日、祭にきていた大ぜいの群衆は、イエスがエルサレムにこられると聞いて、 |
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十三 椶櫚の葉を取ゆきて彼を迎ホザナよ主の名に託て來るイスラエルの王はなりと呼れり |
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一三 棕梠の枝をとりて出で迎へ、『ホサナ、讚むべきかな、主の御名によりて來る者」イスラエルの王』と呼はる。 |
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一三 しゅろの枝を手にとり、迎えに出て行った。そして叫んだ、/「ホサナ、/主の御名によってきたる者に祝福あれ、/イスラエルの王に」。 |
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十四 イエス驢馬の子を得て之に乘 |
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一四 イエスは小驢馬を得て之に乘り給ふ。これは錄して、 |
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一四 イエスは、ろばの子を見つけて、その上に乗られた。それは |
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十五 錄してシオンの女よ懼るゝ勿れ視よ爾の王は驢馬の子に乘て來るとあるが如し |
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一五 『シオンの娘よ、懼るな。視よ、なんぢの王は驢馬の子に乘りて來り給ふ』と有るが如し。 |
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一五 「シオンの娘よ、恐れるな。見よ、あなたの王が/ろばの子に乗っておいでになる」/と書いてあるとおりであった。 |
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十六 弟子たち初は此事を曉ざりしがイエス榮を受し後に彼等此事の彼について錄され且その事を人々彼に行ひたりしを憶起せり |
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一六 弟子たちは最初これらの事を悟らざりしが、イエスの榮光を受け給ひし後に、これらの事のイエスに就きて錄されたると、人々が斯く爲ししとを思ひ出せり。 |
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一六 弟子たちは初めにはこのことを悟らなかったが、イエスが栄光を受けられた時に、このことがイエスについて書かれてあり、またそのとおりに、人々がイエスに対してしたのだということを、思い起した。 |
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十七 イエスのラザロを墓より呼出して甦らしゝ時かれと偕に居し者ども證を爲り |
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一七 ラザロを墓より呼び起し、死人の中より甦へらせ給ひし時に、イエスと偕に居りし群衆、證をなせり。 |
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一七 また、イエスがラザロを墓から呼び出して、死人の中からよみがえらせたとき、イエスと一緒にいた群衆が、そのあかしをした。 |
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十八 この休徵を行しことを聞しに因て人々彼を迎たるなり |
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一八 群衆のイエスを迎へたるは、斯る徵を行ひ給ひしことを聞きたるに因りてなり。 |
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一八 群衆がイエスを迎えに出たのは、イエスがこのようなしるしを行われたことを、聞いていたからである。 |
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十九 是に於てパリサイの人たがひに曰けるは爾曹が謀る所のuなきを知ずや見よ世は皆かれに從へり |
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一九 パリサイ人ら互に言ふ『見るべし、汝らの謀ることのuなきを。視よ、世は彼に從へり』 |
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一九 そこで、パリサイ人たちは互に言った、「何をしてもむだだった。世をあげて彼のあとを追って行ったではないか」。 |
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二十 禮拜のため節筵に上れる者の中にギリシヤの人あり |
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二〇 禮拜せんとて祭に上りたる者の中に、ギリシヤ人數人ありしが、 |
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二〇 祭で礼拝するために上ってきた人々のうちに、数人のギリシヤ人がいた。 |
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二一 彼等ガリラヤのベテサイダの人なるピリポに來り求て曰けるは君よ我儕イエスに見えんことを欲ふ |
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二一 ガリラヤなるベツサイダのピリポに來り、請ひて言ふ『君よ、われらイエスに謁えんことを願ふ』 |
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二一 彼らはガリラヤのベツサイダ出であるピリポのところにきて、「君よ、イエスにお目にかかりたいのですが」と言って頼んだ。 |
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二二 ピリポ來てアンデレに吿アンデレ亦ピリポと偕にイエスに吿 |
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二二 ピリポ往きてアンデレに吿げ、アンデレとピリポと共に往きてイエスに吿ぐ。 |
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二二 ピリポはアンデレのところに行ってそのことを話し、アンデレとピリポは、イエスのもとに行って伝えた。 |
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二三 イエス彼等に答て曰けるは人の子榮を受べき時いたれり |
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二三 イエス答へて言ひ給ふ『人の子の榮光を受くべき時きたれり。 |
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二三 すると、イエスは答えて言われた、「人の子が栄光を受ける時がきた。 |
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二四 誠に實に爾曹に吿ん一粒の麥もし地に落て死ずば唯一にて在んもし死ば多の實を結ぶべし |
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二四 誠にまことに汝らに吿ぐ、一粒の麥、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし。 |
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二四 よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。 |
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二五 その生命を惜む者は之を喪ひ其生命を惜ざる者は之を存て永生に至るべし |
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二五 己が生命を愛する者は、これを失ひ、この世にてその生命を憎む者は、之を保ちて永遠の生命に至るべし。 |
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二五 自分の命を愛する者はそれを失い、この世で自分の命を憎む者は、それを保って永遠の命に至るであろう。 |
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二六 人もし我に事んとせば我に從ふべし我に事る者は我をる所に在ん人もし我に事れば我父は之を貴ぶべし |
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二六 人もし我に事へんとせば、我に從へ、わが居る處に我に事ふる者もまた居るべし。人もし我に事ふることをせば、我が父これを貴び給はん。 |
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二六 もしわたしに仕えようとする人があれば、その人はわたしに従って来るがよい。そうすれば、わたしのおる所に、わたしに仕える者もまた、おるであろう。もしわたしに仕えようとする人があれば、その人を父は重んじて下さるであろう。 |
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二七 今わが心憂悼めり何を言んや父よ此時より我を救たまへと言んか否これが爲に我この時に至れるなり |
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二七 今わが心騷ぐ、我なにを言ふべきか。父よ、この時より我を救ひ給へ、されど我この爲にこの時に到れり。 |
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二七 今わたしは心が騒いでいる。わたしはなんと言おうか。父よ、この時からわたしをお救い下さい。しかし、わたしはこのために、この時に至ったのです。 |
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二八 願くは父よ爾の名の榮を顯せ此とき天より聲ありて云われ其榮を既にに顯す再これを顯すべし |
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二八 父よ、御名の榮光をあらはし給へ』爰に天より聲いでて言ふ『われ旣に榮光をあらはしたり、復さらに顯さん』 |
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二八 父よ、み名があがめられますように」。すると天から声があった、「わたしはすでに栄光をあらわした。そして、更にそれをあらわすであろう」。 |
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二九 傍に立る人々これを聞て雷なれりと曰ある人は天の使者かれに語れる也と曰り |
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二九 傍らに立てる群衆これを聞きて『雷霆鳴れり』と言ひ、ある人々は『御使かれに語れるなり』と言ふ。 |
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二九 すると、そこに立っていた群衆がこれを聞いて、「雷がなったのだ」と言い、ほかの人たちは、「御使が彼に話しかけたのだ」と言った。 |
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三十 イエス答て曰けるは此聲は我ために非ず爾曹の爲なり |
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三〇 イエス答へて言ひ給ふ『この聲の來りしは、我が爲にあらず、汝らの爲なり。 |
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三〇 イエスは答えて言われた、「この声があったのは、わたしのためではなく、あなたがたのためである。 |
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三一 斯世はいま審判せらる斯世の主はいま逐出さるべし |
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三一 今この世の審判は來れり、今この世の若は逐ひ出さるべし。 |
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三一 今はこの世がさばかれる時である。今こそこの世の君は追い出されるであろう。 |
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三一 我もし地より擧れなば萬民を引て我に就せん |
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三二 我もし地より擧げられなば、凡ての人をわが許に引きよせん』 |
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三二 そして、わたしがこの地から上げられる時には、すべての人をわたしのところに引きよせるであろう」。 |
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三三 如此イエスの言るは其如何なる狀にて死んとするを示せる也 |
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三三 かく言ひて己が如何なる死にて死ぬるかを示し給へり。 |
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三三 イエスはこう言って、自分がどんな死に方で死のうとしていたかを、お示しになったのである。 |
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三四 人々かれに答て曰けるは我儕律法にてキリストは窮なく存者なりと聞しに爾人の子かならず擧れんと言は何ぞや此人の子とは誰なる乎 |
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三四 群衆こたふ『われら律法によりて、キリストは永遠に存へ給ふと聞きたるに、汝いかなれば人の子は擧げらるべしと言ふか、その人の子とは誰なるか』 |
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三四 すると群衆はイエスにむかって言った、「わたしたちは律法によって、キリストはいつまでも生きておいでになるのだ、と聞いていました。それだのに、どうして人の子は上げられねばならないと、言われるのですか。その人の子とは、だれのことですか」。 |
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三五 イエス彼等に曰けるはなほ片時のあひだ光なんぢらと偕にあり光ある間に行て暗に追及れざるやう爲よ暗に行く者は其行べき方を知ず |
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三五 イエス言ひ給ふ『なほ暫し光は汝らの中にあり、光のある間に歩みて暗Kに追及かれぬやうに爲よ、暗き中を歩む者は往方を知らず。 |
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三五 そこでイエスは彼らに言われた、「もうしばらくの間、光はあなたがたと一緒にここにある。光がある間に歩いて、やみに追いつかれないようにしなさい。やみの中を歩く者は、自分がどこへ行くのかわかっていない。 |
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三六 なんぢら光の子と爲べきために光のある間に光を信ぜよイエス此を言畢り彼等を避て隱たり |
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三六 光の子とならんために光のある間に光を信ぜよ』イエス此等のことを語りてのち、彼らを避けて隱れ給へり。 |
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三六 光のある間に、光の子となるために、光を信じなさい」。イエスはこれらのことを話してから、そこを立ち去って、彼らから身をお隠しになった。 |
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三七 イエス彼等の前に如此おほくの休徵を行たれども尚かれを信ぜざりき |
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三七 かく多くの徵を人々の前におこなひ給ひたれど、なほ彼を肩ぜざりき。 |
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三七 このように多くのしるしを彼らの前でなさったが、彼らはイエスを信じなかった。 |
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三八 此は預言者イザヤがいひし言に我儕の吿し言を信ぜし者に誰ぞや主の手は誰に顯れし乎と有に應へり |
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三八 これ預言者イザヤの言の成就せん爲なり。曰く『主よ、我らに聞きたる言を誰か信ぜし。主の御腕は誰に顯れし』 |
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三八 それは、預言者イザヤの次の言葉が成就するためである、「主よ、わたしたちの説くところを、だれが信じたでしょうか。また、主のみ腕はだれに示されたでしょうか」。 |
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三九四〇 イザヤ復いふ彼等目にて見心にて悟り改めて醫るゝことを得ざらんが爲に彼その目を瞽し其心を頑梗せりと此故に彼等信ずること能ず |
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三九 彼らが信じ得ざりしは此の故なり。即ちイザヤまた云へらく、 |
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三九 こういうわけで、彼らは信じることができなかった。イザヤはまた、こうも言った、 |
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四〇 |
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四〇 『彼らの眼を暗くし、心を頑固にし給へり。これ目にて見、心にて悟り、飜へりて、我に醫さるる事なからん爲なり』 |
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四〇 「神は彼らの目をくらまし、心をかたくなになさった。それは、彼らが目で見ず、心で悟らず、悔い改めていやされることがないためである」。 |
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四一 イザヤは彼の榮を見しにより彼に就て如此は語れるなり |
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四一 イザヤの斯く云へるは、その榮光を見し故にて、イエスに就きて語りしなり。 |
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四一 イザヤがこう言ったのは、イエスの栄光を見たからであって、イエスのことを語ったのである。 |
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四二 然ど有司等の中に多く彼を信ぜし者も有しがパリサイの人を畏て明に信ずると言ざりき其會堂より黜られんことを恐たるに因 |
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四二 されど司たちの中にもイエスを信じたるもの多かりしが、パリサイ人の故によりて言ひ顯すことを爲ざりき、除名せられん事を恐れたるなり。 |
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四二 しかし、役人たちの中にも、イエスを信じた者が多かったが、パリサイ人をはばかって、告白はしなかった。会堂から追い出されるのを恐れていたのである。 |
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四三 これ彼等は~の榮より人の榮を喜るなり |
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四三 彼らは~の譽よりも人の譽を愛でしなり。 |
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四三 彼らは神のほまれよりも、人のほまれを好んだからである。 |
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四四 イエス呼り曰けるは我を信ずる者は我を信ずるに非ず我を遣しゝ者を信ずるなり |
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四四 イエス呼はりて言ひ給ふ『われを信ずる者は我を信ずるにあらず、我を遣し給ひし者を信じ、 |
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四四 イエスは大声で言われた、「わたしを信じる者は、わたしを信じるのではなく、わたしをつかわされたかたを信じるのであり、 |
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四五 又われを見者は我を遣しゝ者を見なり |
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四五 我を見る者は我を遣し給ひし者を見るなり。 |
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四五 また、わたしを見る者は、わたしをつかわされたかたを見るのである。 |
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四六 我は光にして世に臨れり凡て我を信ずる者をして暗に居ざらしめん爲なり |
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四六 我は光として世に來れり、すべて我を信ずる者の暗Kに居らざらん爲なり。 |
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四六 わたしは光としてこの世にきた。それは、わたしを信じる者が、やみのうちにとどまらないようになるためである。 |
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四七 人もし我が言を聞て守らざるとも之をさばかず我來しは世をさばかんために非ず世を救んため也 |
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四七 人たとひ我が言をききて守らずとも、我は之を審かず。夫わが來りしは世を審かん爲にあらず、世を救はん爲なり。 |
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四七 たとい、わたしの言うことを聞いてそれを守らない人があっても、わたしはその人をさばかない。わたしがきたのは、この世をさばくためではなく、この世を救うためである。 |
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四八 我を棄わが言を納ざる者を審判者あり即ち我いひし言をはりの日これを審判すべし |
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四八 我を棄て、我が言を受けぬ者を審く者あり、わが語れる言こそ終の日に之を審くなれ。 |
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四八 わたしを捨てて、わたしの言葉を受けいれない人には、その人をさばくものがある。わたしの語ったその言葉が、終りの日にその人をさばくであろう。 |
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四九 蓋われ己より言に非ず我を遣しゝ父わが言べきこと我かたる可ことを命じ給へる |
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四九 我はおのれに由りて語れるにあらず、我を遣し給ひし父みづから我が言ふべきこと、語るべきことを命じ給ひし故なり。 |
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四九 わたしは自分から語ったのではなく、わたしをつかわされた父ご自身が、わたしの言うべきこと、語るべきことをお命じになったのである。 |
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五十 その命じ給ふ所は即ち永生なるを我しる是故に我いふ所は父の吿給ふまゝに言るなり |
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五〇 我その命令の永遠の生命たるを知る。されば我は語るに、我が父の我に言ひ給ふままを語るなり』 |
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五〇 わたしは、この命令が永遠の命であることを知っている。それゆえに、わたしが語っていることは、わたしの父がわたしに仰せになったことを、そのまま語っているのである」。 |
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13章 |
一 逾越の節の前にイエス此世を去て父に歸るべき時いたれるをしり世に在し己の民を既に愛し終に至るまで之を愛せり |
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一 過越のまつりの前に、イエスこの世を去りて父に往くべき己が時の來れるを知り、世に在る己の者を愛して極まで之を愛し給へり。 |
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一 過越の祭の前に、イエスは、この世を去って父のみもとに行くべき自分の時がきたことを知り、世にいる自分の者たちを愛して、彼らを最後まで愛し通された。 |
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二 時に彼等晩の席につく惡魔はかねてイエスを賣んとする事をシモンの子イスカリオテのユダといふ者の心に發さしめたり |
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二 夕餐のとき惡魔、早くもシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを賣らんとする思を入れたるが、 |
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二 夕食のとき、悪魔はすでにシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを裏切ろうとする思いを入れていたが、 |
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三 イエス己の手に父の萬物を賜しことゝ~より來り~に歸ることゝを知 |
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三 イエス父が萬物をおのが手にゆだね給ひしことと、己の~より出でて~に到ることとを知り、 |
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三 イエスは、父がすべてのものを自分の手にお与えになったこと、また、自分は神から出てきて、神にかえろうとしていることを思い、 |
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四 晩の席を起て上衣をぬぎ手巾を取て腰に束 |
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四 夕餐より起ちて上衣をぬぎ、手巾をとりて腰にまとひ、 |
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四 夕食の席から立ち上がって、上着を脱ぎ、手ぬぐいをとって腰に巻き、 |
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五 而して盤に水をいれ弟子の足を濯その束たる手巾にて拭はじめ |
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五 尋で盥に水をいれて、弟子たちの足をあらひ、纏ひたる手巾にて之を拭ひはじめ給ふ。 |
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五 それから水をたらいに入れて、弟子たちの足を洗い、腰に巻いた手ぬぐいでふき始められた。 |
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六 遂にシモンペテロに及ぶペテロ彼に曰けるは主よ爾わが足を濯ふか |
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六 斯てシモン・ペテロに至り給へば、彼いふ『主よ、汝わが足を洗ひ給ふか』 |
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六 こうして、シモン・ペテロの番になった。すると彼はイエスに、「主よ、あなたがわたしの足をお洗いになるのですか」と言った。 |
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七 イエス答て曰けるは我爲ことを爾いま知ず後これを知べし |
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七 イエス答へて言ひ給ふ『わが爲すことを汝いまは知らず、後に悟るべし』 |
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七 イエスは彼に答えて言われた、「わたしのしていることは今あなたにはわからないが、あとでわかるようになるだろう」。 |
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八 ペテロ彼に曰けるは爾斷て我足を濯べからずイエス答けるは若われ爾を濯ずば爾は我と干渉なし |
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八 ペテロ言ふ『永遠に我が足をあらひ給はざれ』イエス答へ給ふ『我もし汝を洗はずば、汝われと關係なし』 |
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八 ペテロはイエスに言った、「わたしの足を決して洗わないで下さい」。イエスは彼に答えられた、「もしわたしがあなたの足を洗わないなら、あなたはわたしとなんの係わりもなくなる」。 |
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九 シモンペテロ彼に曰けるは主よ止に我足のみならず手と首をも濯たまへ |
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九 シモン・ペテロ言ふ『主よ、わが足のみならず、手をも頭をも』 |
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九 シモン・ペテロはイエスに言った、「主よ、では、足だけではなく、どうぞ、手も頭も」。 |
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十 イエス曰けるは濯たる者は足のほか濯ふに及ず然して全く潔し爾曹は潔し然ども盡くは潔者に非ず |
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一〇 イエス言ひ給ふ『すでに浴したる者は足のほか洗ふを要せず、全身きよきなり。斯く汝らは潔し、されど悉とくは然らず』 |
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一〇 イエスは彼に言われた、「すでにからだを洗った者は、足のほかは洗う必要がない。全身がきれいなのだから。あなたがたはきれいなのだ。しかし、みんながそうなのではない」。 |
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十一 此はイエス己を賣んとする者の誰なるを知ゆえに盡くは潔者に非ずと曰るなり |
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一一 これ己を賣る者の誰なるを知りたまふ故に『ことごとくは潔からず』と言ひ給ひしなり。 |
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一一 イエスは自分を裏切る者を知っておられた。それで、「みんながきれいなのではない」と言われたのである。 |
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十二 彼等の足を濯し後その上衣を取また坐彼等に曰けるは我なんぢらに行し事を知か |
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一二 彼らの足をあらひ、己が上衣をとり、再び席につきて後いひ給ふ『わが汝らに爲したることを知るか。 |
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一二 こうして彼らの足を洗ってから、上着をつけ、ふたたび席にもどって、彼らに言われた、「わたしがあなたがたにしたことがわかるか。 |
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十三 爾曹われを師と呼また主と呼なんぢらの言ところは宜われは誠に是なり |
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一三 なんぢら我を師また主ととなふ、然か言ふは宜なり、我は是なり。 |
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一三 あなたがたはわたしを教師、また主と呼んでいる。そう言うのは正しい。わたしはそのとおりである。 |
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十四 我は爾曹の師また主なるに尚なんぢらの足を濯ふ爾曹も亦たがひに足を濯ふべし |
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一四 我は主また師なるに、尙なんぢらの足を洗ひたれば、汝らも互に足を洗ふべきなり。 |
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一四 しかし、主であり、また教師であるわたしが、あなたがたの足を洗ったからには、あなたがたもまた、互に足を洗い合うべきである。 |
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十五 我なんぢらに例を示せり此は我なんぢらに行し如く爾曹にも行しめんが爲たり |
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一五 われ汝らに模範を示せり、わが爲ししごとく、汝らも爲さんためなり。 |
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一五 わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするように、わたしは手本を示したのだ。 |
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十六 われ誠に實に爾曹に吿ん僕は其主より大ならず又使者は之を遣す者より大ならず |
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一六 誠にまことに汝らに吿ぐ、僕はその主よりも大ならず、遣されたる者は之を遣す者よりも大ならず。 |
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一六 よくよくあなたがたに言っておく。僕はその主人にまさるものではなく、つかわされた者はつかわした者にまさるものではない。 |
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十七 爾曹もし之を知て此の如く行ばなり |
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一七 汝等これらの事を知りて之を行はば幸なり。 |
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一七 もしこれらのことがわかっていて、それを行うなら、あなたがたはさいわいである。 |
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十八 我いひし所は爾曹を凡て指るに非ず我は我選し者をしる然れども聖書に我と偕に食する者われに背て踵を擧しと錄されしに應せん爲なり |
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一八 これ汝ら凡ての者につきて言ふにあらず、我はわが選びたる者どもを知る。されど聖書に「我とともにパンを食ふ者、われに向ひて踵を擧げたり」と云へることは、必ず成就すべきなり。 |
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一八 あなたがた全部の者について、こう言っているのではない。わたしは自分が選んだ人たちを知っている。しかし、『わたしのパンを食べている者が、わたしにむかってそのかかとをあげた』とある聖書は成就されなければならない。 |
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十九 その事の至らん時なんぢら我を信じてキリストとせん爲に其事の至ざる今より之を爾曹に吿 |
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一九 今その事の成らぬ前に之を汝らに吿ぐ、事の成らん時、わが夫なるを汝らの信ぜんためなり。 |
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一九 そのことがまだ起らない今のうちに、あなたがたに言っておく。いよいよ事が起ったとき、わたしがそれであることを、あなたがたが信じるためである。 |
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二十 誠に實に爾曹に吿ん我遣す者を接るは我を接るなり我を接るは我を遣しゝ者を接るなり |
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二〇 誠にまことに汝らに吿ぐ、わが遣す者を受くる者は我をうくるなり。我を受くる者は我を遣し給ひし者を受くるなり』 |
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二〇 よくよくあなたがたに言っておく。わたしがつかわす者を受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。わたしを受けいれる者は、わたしをつかわされたかたを、受けいれるのである」。 |
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二一 イエス此事を言て心に憂へ證して曰けるは誠に實に爾曹に吿ん一人なんぢらの中に我を賣者あり |
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二一 イエス此等のことを言ひ終へて、心さわぎ證をなして言ひ給ふ『まことに誠に汝らに吿ぐ、汝らの中の一人われを賣らん』 |
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二一 イエスがこれらのことを言われた後、その心が騒ぎ、おごそかに言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」。 |
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二二 弟子たち互に面を觀あはせ誰を指て言るなる乎と疑ふ |
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二二 弟子たち互に顏を見合せ、誰につきて言ひ給ふかを訝る。 |
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二二 弟子たちはだれのことを言われたのか察しかねて、互に顔を見合わせた。 |
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二三 イエスの愛する一人の弟子イエスの懷に倚てありしが |
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二三 イエスの愛したまふ一人の弟子、イエスの御胸によりそひ居たれば、 |
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二三 弟子たちのひとりで、イエスの愛しておられた者が、み胸に近く席についていた。 |
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二四 シモンペテロ此は誰を指て言るなる乎を問しめんと首をもて示せり |
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二四 シモン・ペテロ首にて示し『誰のことを言ひ給ふか、吿げよ』といふ。 |
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二四 そこで、シモン・ペテロは彼に合図をして言った、「だれのことをおっしゃったのか、知らせてくれ」。 |
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二五 イエスの懷に倚て在し者イエスに曰けるは主よ誰なるか |
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二五 彼そのまま御胸によりかかりて『主よ、誰なるか』と言ひしに、 |
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二五 その弟子はそのままイエスの胸によりかかって、「主よ、だれのことですか」と尋ねると、 |
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二六 イエス答けるは我一撮の食物に物を濡て予る人は其なりとて遂に一撮の食物に物を濡てシモンの子イスカリオテのユダに予ふ |
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二六 イエス答へ給ふ『わが一撮の食物を浸して與ふる者は夫なり』斯て一撮の食物を浸してシモンの子イスカリオテのユダに與へたまふ。 |
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二六 イエスは答えられた、「わたしが一きれの食物をひたして与える者が、それである」。そして、一きれの食物をひたしてとり上げ、シモンの子イスカリオテのユダにお与えになった。 |
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二七 彼が一撮の物を受し其時サタン彼に入り是に於てイエス彼に曰けるは爾が爲んとする事は速かに爲せ |
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二七 ユダ一撮の食物を受くるや、惡魔かれに入りたり。イエス彼に言ひたまふ『なんぢが爲すことを速かに爲せ』 |
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二七 この一きれの食物を受けるやいなや、サタンがユダにはいった。そこでイエスは彼に言われた、「しようとしていることを、今すぐするがよい」。 |
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二八 彼に何故に如此いひしかを同に席に在者どもの中しる者あらざりき |
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二八 席に著きゐたる者は一人として何故かく言ひ給ふかを知らず。 |
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二八 席を共にしていた者のうち、なぜユダにこう言われたのか、わかっていた者はひとりもなかった。 |
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二九 或人ユダは金囊を職れる故イエス彼をして節筵について用べき物を市しむるならんか亦は貧者に施さしむるならんと意り |
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二九 ある人々はユダが財囊を預るによりて『祭のために要する物を買へ』とイエスの言ひ給へるか、また貧しき者に何か施さしめ給ふならんと思へり。 |
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二九 ある人々は、ユダが金入れをあずかっていたので、イエスが彼に、「祭のために必要なものを買え」と言われたか、あるいは、貧しい者に何か施させようとされたのだと思っていた。 |
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三十 偖かれは一撮の食物を受て直に出たり時は既に夜なりき |
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三〇 ユダ一撮の食物を受くるや、直ちに出づ、時は夜なりき。 |
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三〇 ユダは一きれの食物を受けると、すぐに出て行った。時は夜であった。 |
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三一 彼の出し後イエス曰けるは今人の子榮をうく~また彼に因て榮を受るなり |
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三一 ユダの出でし後、イエス言ひ給ふ『今や人の子、榮光をうく、~も彼によりて榮光をうけ給ふ。 |
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三一 さて、彼が出て行くと、イエスは言われた、「今や人の子は栄光を受けた。神もまた彼によって栄光をお受けになった。 |
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三二 ~もし彼に因て榮を受る時は~も亦みづからの榮の中に彼を榮しむ直に彼を榮しめん |
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三二 ~かれに由りて榮光をうけ給はば、~も己によりて彼に榮光を與へ給はん、直ちに與へ給ふべし。 |
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三二 彼によって栄光をお受けになったのなら、神ご自身も彼に栄光をお授けになるであろう。すぐにもお授けになるであろう。 |
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三三 小子よ我なほ片時なんぢらと偕にあり爾曹われを尋ん我ゆく所は爾曹は至ること能じ前に之をユダヤ人にいふ今また之を爾曹に吿 |
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三三 若子よ、我なほ暫く汝らと偕にあり、汝らは我を尋ねん、然れど曾てユダヤ人に「なんぢらは我が往く處に來ること能はず」と言ひしごとく今、汝らにも然か言ふなり。 |
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三三 子たちよ、わたしはまだしばらく、あなたがたと一緒にいる。あなたがたはわたしを捜すだろうが、すでにユダヤ人たちに言ったとおり、今あなたがたにも言う、『あなたがたはわたしの行く所に来ることはできない』。 |
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三四 われ新誡を爾曹に予ふ即ち爾曹相愛すべしとの是なり我なんぢらを愛する如く爾曹も相愛すべし |
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三四 われ新しき誡命を汝らに與ふ、なんぢら相愛すべし。わが汝らを愛せしごとく、汝らも相愛すべし。 |
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三四 わたしは、新しいいましめをあなたがたに与える、互に愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互に愛し合いなさい。 |
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三五 爾曹もし相愛せば之に因て人々爾曹の我弟子なることを知べし |
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三五 互に相愛する事をせば、之によりて人みな汝らの我が弟子たるを知らん』 |
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三五 互に愛し合うならば、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての者が認めるであろう」。 |
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三六 シモンペテロ彼に曰けるは主いづこへ往給ふやイエス彼に答へけるは我往ところへは爾いま從ふこと能ず後われは從はん |
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三六 シモン・ペテロ言ふ『主よ、何處にゆき給ふか』イエス答へ給ふ『わが往く處に、なんぢ今は從ふこと能はず。されど後に從はん』 |
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三六 シモン・ペテロがイエスに言った、「主よ、どこへおいでになるのですか」。イエスは答えられた、「あなたはわたしの行くところに、今はついて来ることはできない。しかし、あとになってから、ついて来ることになろう」。 |
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三七 ペテロ彼に曰けるは主よ何故に今なんぢに從ふこと能ざるか我は爾の爲に我命を捐ん |
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三七 ペテロ言ふ『主よ、いま從ふこと能はぬは何故ぞ、我は汝のために生命を棄てん』 |
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三七 ペテロはイエスに言った、「主よ、なぜ、今あなたについて行くことができないのですか。あなたのためには、命も捨てます」。 |
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三八 イエス彼に答けるは爾命を我ために捐るや誠に實に爾に吿ん鷄なかざる前に爾三次われを識ずと言ん |
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三八 イエス答へ給ふ『なんぢ我がために生命を棄つるか、誠にまことに汝に吿ぐ、なんぢ三度われを否むまでは、鷄鳴かざるべし』 |
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三八 イエスは答えられた、「わたしのために命を捨てると言うのか。よくよくあなたに言っておく。鶏が鳴く前に、あなたはわたしを三度知らないと言うであろう」。 |
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14章 |
一 なんぢら心に憂ること勿れ~を信じ亦われを信ずべし |
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一 『なんぢら心を騷がすな、~を信じ、また我を信ぜよ。 |
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一 「あなたがたは、心を騒がせないがよい。神を信じ、またわたしを信じなさい。 |
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二 わが父の家には第宅おほし然ずば我預て爾曹に之を吿べきなり我なんぢらの爲に所を備に往 |
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二 わが父の家には住處おほし、然らずば我かねて汝らに吿げしならん。われ汝等のために處を備へに往く。 |
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二 わたしの父の家には、すまいがたくさんある。もしなかったならば、わたしはそう言っておいたであろう。あなたがたのために、場所を用意しに行くのだから。 |
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三 もし往て我なんぢらの爲に所を備ば又きたりて爾曹を我に納べし我をる所に爾曹をも居しめんとて也 |
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三 もし往きて汝らの爲に處を備へば、復きたりて汝らを我がもとに迎へん、わが居るところに汝らも居らん爲なり。 |
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三 そして、行って、場所の用意ができたならば、またきて、あなたがたをわたしのところに迎えよう。わたしのおる所にあなたがたもおらせるためである。 |
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四 爾曹わが往所を知また其途を知 |
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四 汝らは我が往くところに至る道を知る』 |
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四 わたしがどこへ行くのか、その道はあなたがたにわかっている」。 |
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五 トマス曰けるは主よ我儕なんぢの往所を知ず何にして其途を知んや |
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五 トマス言ふ『主よ、何處にゆき給ふかを知らず、爭でその道を知らんや』 |
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五 トマスはイエスに言った、「主よ、どこへおいでになるのか、わたしたちにはわかりません。どうしてその道がわかるでしょう」。 |
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六 イエス彼に曰けるは我は途なり眞なり生命なり人もし我に由ざれば父の所に往こと能ず |
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六 イエス彼に言ひ給ふ『われは道なり、眞理なり、生命なり、我に由らでは誰にても父の御許にいたる者なし。 |
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六 イエスは彼に言われた、「わたしは道であり、真理であり、命である。だれでもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない。 |
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七 若なんぢら我を識ば我父をも識べし今より爾曹かれを識なり已に爾曹彼を見たり |
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七 汝等もし我を知りたらば我が父をも知りしならん。今より汝ら之を知る、旣に之を見たり』 |
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七 もしあなたがたがわたしを知っていたならば、わたしの父をも知ったであろう。しかし、今は父を知っており、またすでに父を見たのである」。 |
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八 ピリポ彼に曰けるは主よ我儕に父を示し給へ然ば足り |
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八 ピリポ言ふ『主よ、父を我らに示し給へ、然らば足れり』 |
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八 ピリポはイエスに言った、「主よ、わたしたちに父を示して下さい。そうして下されば、わたしたちは満足します」。 |
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九 イエス彼に曰けるはピリポ我かく久く爾曹と偕に在しに未だ我を識ざるか我を見し者は父を見しなり何ぞ父を我儕に示せと言や |
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九 イエス言ひ給ふ『ピリポ、我かく久しく汝らと偕に居りしに、我を知らぬか。我を見し者は父を見しなり、如何なれば「我らに父を示せ」と言ふか。 |
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九 イエスは彼に言われた、「ピリポよ、こんなに長くあなたがたと一緒にいるのに、わたしがわかっていないのか。わたしを見た者は、父を見たのである。どうして、わたしたちに父を示してほしいと、言うのか。 |
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十 われ父にをり父の我に在ことを信ぜざる乎われ爾曹に語し言は自ら語しに非ず我にをる父その行をなせる也 |
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一〇 我の父に居り、父の我に居給ふことを信ぜぬか。わが汝等にいふ言は己によりて語るにあらず、父われに在して御業をおこなひ給ふなり。 |
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一〇 わたしが父におり、父がわたしにおられることをあなたは信じないのか。わたしがあなたがたに話している言葉は、自分から話しているのではない。父がわたしのうちにおられて、みわざをなさっているのである。 |
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十一 我は父に在り父われに在と我つげし言を信ぜよ若信ぜずば我事に因て之を信ずべし |
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一一 わが言ふことを信ぜよ、我は父にをり、父は我に居給ふなり。もし信ぜずば、我が業によりて信ぜよ。 |
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一一 わたしが父におり、父がわたしにおられることを信じなさい。もしそれが信じられないならば、わざそのものによって信じなさい。 |
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十二 誠に實に爾曹に吿ん我を信ずる者は我行ところの事を行ん且此より大なる事を行べし蓋われ我父へ往ばなり |
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一二 誠にまことに汝らに吿ぐ、我を信ずる者は我がなす業をなさん、かつ之よりも大なる業をなすべし、われ父に往けばなり。 |
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一二 よくよくあなたがたに言っておく。わたしを信じる者は、またわたしのしているわざをするであろう。そればかりか、もっと大きいわざをするであろう。わたしが父のみもとに行くからである。 |
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十三 爾曹すべて我名に託て求ふ所のことは我すべて之を行ん父の榮の子に因て顯れんが爲なり |
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一三 汝らが我が名によりて願ふことは、我みな之を爲さん、父、子によりて榮光を受け給はんためなり。 |
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一三 わたしの名によって願うことは、なんでもかなえてあげよう。父が子によって栄光をお受けになるためである。 |
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十四 若なんぢら何事にても我名に託て求はゞ我これを行ん |
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一四 何事にても我が名によりて我に願はば、我これを成すべし。 |
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一四 何事でもわたしの名によって願うならば、わたしはそれをかなえてあげよう。 |
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十五 若なんぢら我を愛するならば我誡を守れ |
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一五 汝等もし我を愛せば、我が誡命を守らん。 |
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一五 もしあなたがたがわたしを愛するならば、わたしのいましめを守るべきである。 |
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十六 われ父に求ん父かならず別に慰る者を爾曹に賜て窮なく爾曹と偕に在しむべし |
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一六 われ父に請はん、父は他に助主をあたへて、永遠に汝らと偕に居らしめ給ふべし。 |
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一六 わたしは父にお願いしよう。そうすれば、父は別に助け主を送って、いつまでもあなたがたと共におらせて下さるであろう。 |
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十七 此は即ち眞理の靈なり世これを接ること能ず蓋これを見ず且しらざるに因されど爾曹は之を識そは彼なんぢらと偕に在かつ爾曹の衷に在ばなり |
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一七 これは眞理の御靈なり、世はこれを受くること能はず、これを見ず、また知らぬに因る。なんぢらは之を知る、彼は汝らと偕に居り、また汝らの中に居給ふべければなり。 |
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一七 それは真理の御霊である。この世はそれを見ようともせず、知ろうともしないので、それを受けることができない。あなたがたはそれを知っている。なぜなら、それはあなたがたと共におり、またあなたがたのうちにいるからである。 |
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十八 我なんぢらを捨て孤子とせず再なんぢらに就ん |
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一八 我なんぢらを遺して孤兒とはせず、汝らに來るなり。 |
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一八 わたしはあなたがたを捨てて孤児とはしない。あなたがたのところに帰って来る。 |
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十九 暫せば世われを見ことなし然ど爾曹は我を見われ生れば爾曹も生ん |
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一九 暫くせば世は復われを見ず、されど汝らは我を見る、われ活くれば汝らも活くべければなり。 |
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一九 もうしばらくしたら、世はもはやわたしを見なくなるだろう。しかし、あなたがたはわたしを見る。わたしが生きるので、あなたがたも生きるからである。 |
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二十 その日に爾曹われ吾父に在なんぢら我に在われ爾曹に在ことを知べし |
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二〇 その日には、我わが父に居り、なんぢら我に居り、われ汝らに居ることを汝ら知らん。 |
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二〇 その日には、わたしはわたしの父におり、あなたがたはわたしにおり、また、わたしがあなたがたにおることが、わかるであろう。 |
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二一 我誡を有ちて之を守る者は即ち我を愛するなり我を愛する者は我父に愛せらる我も亦これを愛して彼に自己を示すべし |
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二一 わが誡命を保ちて之を守るものは、即ち我を愛する者なり。我を愛する者は我が父に愛せられん、我も之を愛し、之に己を顯すべし』 |
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二一 わたしのいましめを心にいだいてこれを守る者は、わたしを愛する者である。わたしを愛する者は、わたしの父に愛されるであろう。わたしもその人を愛し、その人にわたし自身をあらわすであろう」。 |
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二二 イスカリオテならざるユダ彼に曰けるは主よ如何して自己を我儕に示し世には示さゞる乎 |
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二二 イスカリオテならぬユダ言ふ『主よ、何故おのれを我らに顯して、世には顯し給はぬか』 |
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二二 イスカリオテでない方のユダがイエスに言った、「主よ、あなたご自身をわたしたちにあらわそうとして、世にはあらわそうとされないのはなぜですか」。 |
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二三 イエス答て彼に曰けるは若人われを愛せば我言を守ん且わが父は之を愛せん我儕きたりて彼と偕に住べし |
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二三 イエス答へて言ひ給ふ『人もし我を愛せば、わが言を守らん、わが父これを愛し、かつ我等その許に來りて住處を之とともに爲ん。 |
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二三 イエスは彼に答えて言われた、「もしだれでもわたしを愛するならば、わたしの言葉を守るであろう。そして、わたしの父はその人を愛し、また、わたしたちはその人のところに行って、その人と一緒に住むであろう。 |
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二四 我を愛せざる者は我言を守らず爾曹の聞ところの言は我言に非ず我を遣しゝ父の言なり |
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二四 我を愛せぬ者は、わが言を守らず。汝らが聞くところの言は、わが言にあらず、我を遣し給ひし父の言なり。 |
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二四 わたしを愛さない者はわたしの言葉を守らない。あなたがたが聞いている言葉は、わたしの言葉ではなく、わたしをつかわされた父の言葉である。 |
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二五 われ爾曹と偕に在て此等のことを爾曹に語ぬ |
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二五 此等のことは我なんぢらと偕にありて語りしが、 |
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二五 これらのことは、あなたがたと一緒にいた時、すでに語ったことである。 |
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二六 わが名に託て父の遣さんとする訓慰師すなはち聖靈は衆理を爾曹に教へ亦わが凡て爾曹に言しことを爾曹に憶起さしむべし |
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二六 助主、即ちわが名によりて父の遣したまふ聖靈は、汝らに萬の事ををしへ、又すべて我が汝らに言ひしことを思ひ出さしむべし。 |
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二六 しかし、助け主、すなわち、父がわたしの名によってつかわされる聖霊は、あなたがたにすべてのことを教え、またわたしが話しておいたことを、ことごとく思い起させるであろう。 |
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二七 われ平安を爾曹に遺す我平安を爾曹に予ふ我あたふる所は世の予る所の如きに非ず爾曹心に 憂る勿れ又懼るゝ勿れ |
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二七 われ平安を汝らに遺す、わが平安を汝らに與ふ。わが與ふるは世の與ふる如くならず、汝ら心を騷がすな、また懼るな。 |
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二七 わたしは平安をあなたがたに残して行く。わたしの平安をあなたがたに与える。わたしが与えるのは、世が与えるようなものとは異なる。あなたがたは心を騒がせるな、またおじけるな。 |
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二八 我ゆきて復なんぢらに來らんと我曰し言を爾曹きけり若われを愛せば父に往と我いへる言を爾曹善ぶ可なり蓋わが父は我より大なれば也 |
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二八 「われ往きて汝らに來るなり」と云ひしを汝ら旣に聞けり。もし我を愛せば父にわが往くを喜ぶべきなり、父は我よりも大なるに因る。 |
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二八 『わたしは去って行くが、またあなたがたのところに帰って来る』と、わたしが言ったのを、あなたがたは聞いている。もしわたしを愛しているなら、わたしが父のもとに行くのを喜んでくれるであろう。父がわたしより大きいかたであるからである。 |
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二九 事いまだ成ず我まづ爾曹につぐ事成んときに爾曹これを信ずべき爲なり |
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二九 今その事の成らぬ前に、これを汝らに吿げたり、事の成らんとき汝らの信ぜんためなり。 |
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二九 今わたしは、そのことが起らない先にあなたがたに語った。それは、事が起った時にあなたがたが信じるためである。 |
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三十 此後われ多の言をもて爾曹に語じ蓋この世の主きたる故なり彼われに與ることなし |
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三〇 今より後われ汝らと多く語らじ、この世の君きたる故なり。彼は我に對して何の權もなし、 |
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三〇 わたしはもはや、あなたがたに、多くを語るまい。この世の君が来るからである。だが、彼はわたしに対して、なんの力もない。 |
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三一 然ど我これを爲は我の父を愛し且その命ぜしことに遵ひて行ふことを世に知しめんが爲なり起よ我儕こゝを去べし |
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三一 されど斯くなるは、我の、父を愛し父の命じ給ふととろに遵ひて行ふことを世の知らん爲なり。起きよ、率ここを去るべし。 |
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三一 しかし、わたしが父を愛していることを世が知るように、わたしは父がお命じになったとおりのことを行うのである。立て。さあ、ここから出かけて行こう。 |
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15章 |
一 我は眞の葡萄樹わが父は農夫なり |
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一 我は眞の葡萄の樹、わが父は農夫なり。 |
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一 わたしはまことのぶどうの木、わたしの父は農夫である。 |
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二 我に在て凡て實を結ざる枝は父これを剪除すべて實をむすぶ枝は之を潔む蓋ますます繁く實を結ばしめん爲なり |
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二 おほよそ我にありて果を結ばぬ枝は、父これを除き、果を結ぶものは、いよいよ果を結ばせん爲に之を潔めたまふ。 |
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二 わたしにつながっている枝で実を結ばないものは、父がすべてこれをとりのぞき、実を結ぶものは、もっと豊かに実らせるために、手入れしてこれをきれいになさるのである。 |
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三 今なんぢら我曰し言によりて潔なれり |
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三 汝らは旣に潔し、わが語りたる言に因りてなり。 |
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三 あなたがたは、わたしが語った言葉によって既にきよくされている。 |
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四 爾曹われに居さらば我また爾曹に居ん枝もし葡萄樹に連らざれば自ら實を結ぶこと能ず爾曹も我に連らざれば亦此の如ならん |
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四 我に居れ、さらば我なんぢらに居らん。枝もし樹に居らずば、自ら果を結ぶこと能はぬごとく、汝らも我に居らずば亦然り。 |
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四 わたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしはあなたがたとつながっていよう。枝がぶどうの木につながっていなければ、自分だけでは実を結ぶことができないように、あなたがたもわたしにつながっていなければ実を結ぶことができない。 |
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五 我は葡萄樹なんぢらは其枝なり人もし我に居われ亦かれに居ば多の實を結ぶべし蓋もし爾曹われを離るゝ時は何事をも行能ざれば也 |
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五 我は葡萄の樹、なんぢらは枝なり。人もし我にをり、我また彼にをらば、多くの果を結ぶべし。汝ら我を離るれば、何事をも爲し能はず。 |
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五 わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である。もし人がわたしにつながっており、またわたしがその人とつながっておれば、その人は実を豊かに結ぶようになる。わたしから離れては、あなたがたは何一つできないからである。 |
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六 人もし我に居ざれば離たる枝の如く外に棄られて枯るなり人これを集め火に投入て焚べし |
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六 人もし我に居らずば、枝のごとく外に棄てられて枯る、人々これを集め火に投入れて燒くなり。 |
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六 人がわたしにつながっていないならば、枝のように外に投げすてられて枯れる。人々はそれをかき集め、火に投げ入れて、焼いてしまうのである。 |
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七 爾曹もし我に居また我いひし言なんぢらに居ば凡て欲ふところ求に從ひて予らるべし |
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七 汝等もし我に居り、わが言なんぢらに居らば、何にても望に隨ひて求めよ、然らば成らん。 |
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七 あなたがたがわたしにつながっており、わたしの言葉があなたがたにとどまっているならば、なんでも望むものを求めるがよい。そうすれば、与えられるであろう。 |
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八 爾曹おほくの實を結ばゞ我父これに由て榮をうく然ば爾曹わが弟子なり |
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八 なんぢら多くの果を結ばば、わが父は榮光を受け給ふべし、而して汝等わが弟子とならん。 |
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八 あなたがたが実を豊かに結び、そしてわたしの弟子となるならば、それによって、わたしの父は栄光をお受けになるであろう。 |
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九 父の我を愛し給ふ如く我なんぢらを愛す爾曹わが愛にをれ |
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九 父の我を愛し給ひしごとく、我も汝らを愛したり、わが愛に居れ。 |
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九 父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛したのである。わたしの愛のうちにいなさい。 |
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十 若なんぢら我誡を守ば我愛に居ん我わが父の誡を守て其愛に居が如し |
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一〇 なんぢら若し、わが誡命をまもらば、我が愛にをらん、我わが父の誡命を守りて、その愛に居るがごとし。 |
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一〇 もしわたしのいましめを守るならば、あなたがたはわたしの愛のうちにおるのである。それはわたしがわたしの父のいましめを守ったので、その愛のうちにおるのと同じである。 |
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十一 我この事を爾曹に語るは我が喜なんぢらに在て爾曹の喜を盈しめんが爲なり |
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一一 我これらの事を語りたるは、我が喜スの汝らに在り、かつ汝らの喜スの滿されん爲なり。 |
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一一 わたしがこれらのことを話したのは、わたしの喜びがあなたがたのうちにも宿るため、また、あなたがたの喜びが満ちあふれるためである。 |
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十二 我なんぢらを愛する如く爾曹も亦たがひに愛すべし是わが誡なり |
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一二 わが誡命は是なり、わが汝らを愛せしごとく互に相愛せよ。 |
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一二 わたしのいましめは、これである。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互に愛し合いなさい。 |
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十三 人その友の爲に己の命を捐るは此より大なる愛はなし |
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一三 人その友のために己の生命を棄つる、之より大なる愛はなし。 |
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一三 人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない。 |
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十四 凡て我なんぢらに命ずる所の事を行はゞ即ち我友なり |
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一四 汝等もし我が命ずる事をおこなはば、我が友なり。 |
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一四 あなたがたにわたしが命じることを行うならば、あなたがたはわたしの友である。 |
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十五 今より後われ爾曹を僕と稱ず蓋僕は其主の行ことを知ざればなり我さきに爾曹を友と呼り我なんぢらに我父より聞し所のことを盡く吿しに緣 |
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一五 今よりのち我なんぢらを僕といはず、僕は主人のなす事を知らざるなり。我なんぢらを友と呼べり、我が父に聽きし凡てのことを汝らに知らせたればなり。 |
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一五 わたしはもう、あなたがたを僕とは呼ばない。僕は主人のしていることを知らないからである。わたしはあなたがたを友と呼んだ。わたしの父から聞いたことを皆、あなたがたに知らせたからである。 |
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十六 なんぢら我を選ず我なんぢらを選べり且爾曹をして往て實を結せ某實を存しめんが爲また爾曹の凡て我名に託て父に求ふ所の者を彼をして爾曹に賜らせんが爲に我なんぢらを立たり |
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一六 汝ら我を選びしにあらず、我なんぢらを選べり。而して汝らの往きて果を結び、且その果の殘らんために、又おほよそ我が名によりて父に求むるものを、父の賜はんために汝らを立てたり。 |
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一六 あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだのである。そして、あなたがたを立てた。それは、あなたがたが行って実をむすび、その実がいつまでも残るためであり、また、あなたがたがわたしの名によって父に求めるものはなんでも、父が与えて下さるためである。 |
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十七 なんぢら互に愛せんがため我これを命ず |
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一七 これらの事を命ずるは、汝らの互に相愛せん爲なり。 |
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一七 これらのことを命じるのは、あなたがたが互に愛し合うためである。 |
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十八 世もし爾曹を惡ときは爾曹よりも先に我を惡と知 |
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一八 世もし汝らを憎まば、汝等より先に我を憎みたることを知れ。 |
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一八 もしこの世があなたがたを憎むならば、あなたがたよりも先にわたしを憎んだことを、知っておくがよい。 |
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十九 爾曹もし世の屬ならば世は己の屬を愛すべし然ど爾曹は世の屬ならず我なんぢらを世より選たり之に因て世なんぢらを惡む |
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一九 汝等もし世のものならば、世は己がものを愛するならん。汝らは世のものならず、我なんぢらを世より選びたり。この故に世は汝らを憎む。 |
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一九 もしあなたがたがこの世から出たものであったなら、この世は、あなたがたを自分のものとして愛したであろう。しかし、あなたがたはこの世のものではない。かえって、わたしがあなたがたをこの世から選び出したのである。だから、この世はあなたがたを憎むのである。 |
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二十 僕は其主より大ならずと我なんぢらに曰し言を心に記よ人もし我を窘迫ば爾曹をも窘迫もし我言を守ば爾曹の言をも守るべし |
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二〇 わが汝らに「僕はその主人より大ならず」と吿げし言をおぼえよ。人もし我を責めしならば、汝等をも責め、わが言を守りしならば、汝らの言をも守らん。 |
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二〇 わたしがあなたがたに『僕はその主人にまさるものではない』と言ったことを、おぼえていなさい。もし人々がわたしを迫害したなら、あなたがたをも迫害するであろう。また、もし彼らがわたしの言葉を守っていたなら、あなたがたの言葉をも守るであろう。 |
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二一 然ど彼等は我を遣しゝ者を識ざるに因わが名の故をもて此等の事を爾曹に加べし |
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二一 すべて此等のことを我が名の故に汝らに爲さん、それは我を遣し給ひし者を知らぬに因る。 |
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二一 彼らはわたしの名のゆえに、あなたがたに対してすべてそれらのことをするであろう。それは、わたしをつかわされたかたを彼らが知らないからである。 |
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二二 我もし來て語ざりしならば彼等罪なからん然ど今は其罪いひひらく可やうなし |
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二二 われ來りて語らざりしならば、彼ら罪なかりしならん。されど今はその罪いひのがるべき樣なし。 |
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二二 もしわたしがきて彼らに語らなかったならば、彼らは罪を犯さないですんだであろう。しかし今となっては、彼らには、その罪について言いのがれる道がない。 |
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二三 我を惡む者は亦わが父をも惡なり |
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二三 我を憎むものは我が父をも憎むなり。 |
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二三 わたしを憎む者は、わたしの父をも憎む。 |
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二四 我もし他の人の行ざりし事を彼等の中に行はざりしならば彼等罪なからん然ど我と吾父とを已に見かつ之を惡めり |
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二四 我もし誰もいまだ行はぬ事を彼らの中に行はざりしならば、彼ら罪なかりしならん。然れど今ははや我をも我が父をも見たり、また憎みたり。 |
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二四 もし、ほかのだれもがしなかったようなわざを、わたしが彼らの間でしなかったならば、彼らは罪を犯さないですんだであろう。しかし事実、彼らはわたしとわたしの父とを見て、憎んだのである。 |
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二五 此の如は彼等の律法に故なくして我を惡めりと錄し言に應せん爲なり |
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二五 これは彼らの律法に「ひとびと故なくして、我を憎めり」と錄したる言の成就せん爲なり。 |
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二五 それは、『彼らは理由なしにわたしを憎んだ』と書いてある彼らの律法の言葉が成就するためである。 |
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二六 われ訓慰師を父より遣らん即ち父より出る眞理の靈なり其きたる時わが爲に證をなすべし |
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二六 父の許より我が遣さんとする助主、即ち父より出づる眞理の御靈のきたらんとき、我歩につきて證せん。 |
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二六 わたしが父のみもとからあなたがたにつかわそうとしている助け主、すなわち、父のみもとから来る真理の御霊が下る時、それはわたしについてあかしをするであろう。 |
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二七 爾曹も亦われと偕に始より在しに因て證を作べし |
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二七 汝等もまた初より我とともに在りたれば證するなり。 |
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二七 あなたがたも、初めからわたしと一緒にいたのであるから、あかしをするのである。 |
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16章 |
一 われ此等の言を爾曹は語れるは爾曹の礙かざらん爲なり |
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一 我これらの事を語りたるは、汝らの躓かざらん爲なり。 |
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一 わたしがこれらのことを語ったのは、あなたがたがつまずくことのないためである。 |
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二 衆人なんぢらを會堂より黜くべし且すべて爾曹を殺す者みづから~に事ると意ふ時至らん |
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二 人なんぢらを除名すべし、然のみならず、汝らを殺す者みな自ら~に事ふと思ふとき來らん。 |
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二 人々はあなたがたを会堂から追い出すであろう。更にあなたがたを殺す者がみな、それによって自分たちは神に仕えているのだと思う時が来るであろう。 |
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三 此等の事を爾曹に行は父と我とを識ざるが故なり |
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三 これらの事をなすは、父と我とを知らぬ故なり。 |
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三 彼らがそのようなことをするのは、父をもわたしをも知らないからである。 |
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四 我これを爾曹に語れるは時いたりて我これを言し事を爾曹の憶起ん爲なり曩に之を爾曹に語ざりしは我なんぢらと偕に在たれば也 |
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四 我これらの事を語りたるは、時いたりて我が斯く言ひしことを汝らの思ひいでん爲なり。初より此等のことを言はぎりしは、我なんぢらと偕に在りし故なり。 |
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四 わたしがあなたがたにこれらのことを言ったのは、彼らの時がきた場合、わたしが彼らについて言ったことを、思い起させるためである。これらのことを初めから言わなかったのは、わたしがあなたがたと一緒にいたからである。 |
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五 我いま我を遣しゝ者に往んとす然ど爾曹の中われに何處へ往と問る者なく |
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五 今われを遣し給ひし者にゆく、然るに汝らの中、たれも我に「何處にゆく」と問ふ者なし。 |
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五 けれども今わたしは、わたしをつかわされたかたのところに行こうとしている。しかし、あなたがたのうち、だれも『どこへ行くのか』と尋ねる者はない。 |
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六 反て我この事を言しに因て憂なんぢらの心に盈り |
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六 唯これらの事を語りしによりて、憂なんぢらの心にみてり。 |
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六 かえって、わたしがこれらのことを言ったために、あなたがたの心は憂いで満たされている。 |
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七 われ眞を爾曹に吿ん我往は爾曹のuなり若ゆかずば訓慰師なんぢらに來じ若ゆかば彼を爾曹に遣らん |
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七 されど、われ實を汝らに吿ぐ、わが去るは汝らのuなり。我さらずば助主なんぢらに來らじ、我ゆかば之を汝らに遣さん。 |
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七 しかし、わたしはほんとうのことをあなたがたに言うが、わたしが去って行くことは、あなたがたの益になるのだ。わたしが去って行かなければ、あなたがたのところに助け主はこないであろう。もし行けば、それをあなたがたにつかわそう。 |
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八 かれ來らんとき罪につき義につき審判につき世をして罪ありと曉しめん |
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八 かれ來らんとき世をして罪につき、義につき、審判につきて、過てるを認めしめん。 |
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八 それがきたら、罪と義とさばきとについて、世の人の目を開くであろう。 |
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九 罪に就てと云るは我を信ぜざるに因てなり |
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九 罪に就きてとは、彼ら我を信ぜぬに因りてなり。 |
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九 罪についてと言ったのは、彼らがわたしを信じないからである。 |
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十 義に就てと云るは我わが父へ往によりて爾曹また我を見ざれば也 |
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一〇 義に就きてとは、われ父にゆき、汝ら今より我を見ぬに因りてなり。 |
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一〇 義についてと言ったのは、わたしが父のみもとに行き、あなたがたは、もはやわたしを見なくなるからである。 |
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十一 審判に就てと云るは斯世の主審判を受ればなり |
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一一 審判に就きてとは、此の世の君さばかるるに因りてなり。 |
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一一 さばきについてと言ったのは、この世の君がさばかれるからである。 |
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十二 我なほ爾曹に多く語る可こと有ども今なんぢら曉ことを得ず |
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一二 我なほ汝らに吿ぐべき事あまたあれど、今なんぢら得耐へず。 |
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一二 わたしには、あなたがたに言うべきことがまだ多くあるが、あなたがたは今はそれに堪えられない。 |
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十三 然ど彼すなはち眞理の靈の來らんとき爾曹を導きて凡の眞理を知しむべし蓋かれ己に由て語に非ず其聞し所の事を爾曹に言また來らんとする事を爾曹に示すべければ也 |
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一三 然れど彼すなはち眞理の御靈きたらん時、なんぢらを導きて眞理をことごとく悟らしめん。かれ己より語るにあらず、凡そ聞くところの事を語り、かつ來らんとする事どもを汝らに示さん。 |
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一三 けれども真理の御霊が来る時には、あなたがたをあらゆる真理に導いてくれるであろう。それは自分から語るのではなく、その聞くところを語り、きたるべき事をあなたがたに知らせるであろう。 |
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十四 彼わが榮を顯さん蓋わが屬を受て爾曹に示せば也 |
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一四 彼はわが榮光を顯さん、それは我がものを受けて汝らに示すべければなり。 |
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一四 御霊はわたしに栄光を得させるであろう。わたしのものを受けて、それをあなたがたに知らせるからである。 |
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十五 凡て父の有給ふものは我屬なり是故に彼わが屬を受て爾曹に示すと曰り |
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一五 すべて父の有ち給ふものは我がものなり、此の故に我がものを受けて汝らに示さんと云へるなり。 |
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一五 父がお持ちになっているものはみな、わたしのものである。御霊はわたしのものを受けて、それをあなたがたに知らせるのだと、わたしが言ったのは、そのためである。 |
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十六 暫せば爾曹われを見じ復しばらくして我を見るべし是われ父へ往なり |
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一六 暫くせば汝ら我を見ず、また暫くして我を見るべし』 |
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一六 しばらくすれば、あなたがたはもうわたしを見なくなる。しかし、またしばらくすれば、わたしに会えるであろう」。 |
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十七 是に於て弟子の中にて或人たがひに曰けるは暫せば爾曹われを見じ復しばらくして我を見べしと言かつ是われは父へ往なりと我儕に言しは何の事ぞや |
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一七 爰に弟子たちのうち或者たがひに言ふ『「暫くせば我を見ず、また暫くして我を見るべし」と言ひ、かつ「父に往くによりて」と言ひ給へるは、如何なることぞ』 |
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一七 そこで、弟子たちのうちのある者は互に言い合った、「『しばらくすれば、わたしを見なくなる。またしばらくすれば、わたしに会えるであろう』と言われ、『わたしの父のところに行く』と言われたのは、いったい、どういうことなのであろう」。 |
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十八 彼等また曰けるは此しばらくと言しは何の事ぞや其言る所を我儕知ず |
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一八 復いふ『この暫くとは如何なることぞ、我等その言ひ給ふところを知らず』 |
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一八 彼らはまた言った、「『しばらくすれば』と言われるのは、どういうことか。わたしたちには、その言葉の意味がわからない」。 |
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十九 イエス彼等が問んとするを知て曰けるは暫せば我を見じ復しばらくして我を見べしと言し此事に因て爾曹たがひに詰あふ乎 |
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一九 イエスその問はんと思へるを知りて言ひ給ふ『なんぢら「暫くせば我を見ず、また暫くして我を見るべし」と我が言ひしを尋ねあふか。 |
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一九 イエスは、彼らが尋ねたがっていることに気がついて、彼らに言われた、「しばらくすればわたしを見なくなる、またしばらくすればわたしに会えるであろうと、わたしが言ったことで、互に論じ合っているのか。 |
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二十 誠に實に我なんぢらに吿ん爾曹は哭き哀み世は喜ぶべし爾曹憂るならん然ど其憂は變て喜びとなるべし |
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二〇 誠にまことに汝らに吿ぐ、なんぢらは泣き悲しみ、世は喜ばん。汝ら憂ふべし、然れどその憂は喜スとならん。 |
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二〇 よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたは泣き悲しむが、この世は喜ぶであろう。あなたがたは憂えているが、その憂いは喜びに変るであろう。 |
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二一 婦子を產んとする時は憂ふ其期いたるに因てなり然ど已に生ば前の苦をわする世に人の生たる喜樂に因てなり |
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二一 をんな產まんとする時は憂あり、その期いたるに因りてなり。子を產みてのちは苦痛をおぼえず、世に人の生れたる喜スによりてなり。 |
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二一 女が子を産む場合には、その時がきたというので、不安を感じる。しかし、子を産んでしまえば、もはやその苦しみをおぼえてはいない。ひとりの人がこの世に生れた、という喜びがあるためである。 |
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二二 此の如く爾曹も今憂ふ然ど我また爾曹を見ん其時なんぢらの心喜ぶべし其喜樂を奪ふ者あらじ |
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二二 斯く汝らも今は憂あり、然れど我ふたたび汝らを見ん、その時なんぢらの心喜ぶべし、その喜スを奪ふ者なし。 |
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二二 このように、あなたがたにも今は不安がある。しかし、わたしは再びあなたがたと会うであろう。そして、あなたがたの心は喜びに満たされるであろう。その喜びをあなたがたから取り去る者はいない。 |
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二三 其日なんぢら我に問ところ無るべし誠に實に爾曹に吿ん凡そ我名に託て父に求る所のもの父これを爾曹に授たまふべし |
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二三 かの日には汝ら何事をも我に問ふまじ。誠にまことに汝らに吿ぐ、汝等のすべて父に求むる物をば、我が名によりて賜ふべし。 |
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二三 その日には、あなたがたがわたしに問うことは、何もないであろう。よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたが父に求めるものはなんでも、わたしの名によって下さるであろう。 |
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二四 なんぢら今まで我名に託て求たることなし求よ然ば受けん而して爾曹の喜び滿べし |
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二四 なんぢら今までは何をも我が名によりて求めたることなし。求めよ、然らば受けん、而して汝らの喜スみたさるべし。 |
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二四 今までは、あなたがたはわたしの名によって求めたことはなかった。求めなさい、そうすれば、与えられるであろう。そして、あなたがたの喜びが満ちあふれるであろう。 |
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二五 譬喩をもて此事を爾曹に語しが譬喩を用ずして爾曹に語り父に就て明かに示す時いたらん |
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二五 我これらの事を譬にて語りたりしが、また譬にて語らず、明白に父のことを汝らに吿ぐるとき來らん。 |
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二五 わたしはこれらのことを比喩で話したが、もはや比喩では話さないで、あからさまに、父のことをあなたがたに話してきかせる時が来るであろう。 |
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二六 其日なんぢら我名に託て求ん我なんぢらの爲に父に求ふと曰ず |
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二六 その日には汝等わが名によりて求めん。我は汝らの爲に父に請ふと言はず、 |
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二六 その日には、あなたがたは、わたしの名によって求めるであろう。わたしは、あなたがたのために父に願ってあげようとは言うまい。 |
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二七 蓋父みづから爾曹を愛すれば也これ爾曹われを愛し且父より我來しことを信ずるに因 |
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二七 父みづから汝らを愛し給へばなり。これ汝等われを愛し、また我の父より出で來りしことを信じたるに因る。 |
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二七 父ご自身があなたがたを愛しておいでになるからである。それは、あなたがたがわたしを愛したため、また、わたしが神のみもとからきたことを信じたためである。 |
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二八 われ父より出て世に臨れり復世を離て父に往ん |
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二八 われ父より出でて世にきたれり、また世を離れて父に往くなり』 |
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二八 わたしは父から出てこの世にきたが、またこの世を去って、父のみもとに行くのである」。 |
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二九 弟子かれに曰けるは爾いま明かに言て讐喩をいはず |
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二九 弟子たち言ふ『視よ、今は明白に語りて聊かも譬をいひ給はず。 |
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二九 弟子たちは言った、「今はあからさまにお話しになって、少しも比喩ではお話しになりません。 |
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三十 我儕いま爾の知ざる所なく且人の爾に問は用なきことを知これに因て我儕~より爾の出來しことを信ず |
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三〇 我ら今なんぢの知り給はぬ所なく、また人の汝に問ふを待ち給はぬことを知る。之によりて汝の~より出できたり給ひしことを信ず』 |
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三〇 あなたはすべてのことをご存じであり、だれもあなたにお尋ねする必要のないことが、今わかりました。このことによって、わたしたちはあなたが神からこられたかたであると信じます」。 |
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三一 イエス彼等に答けるは今なんぢら信ずる乎 |
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三一 イエス答へ給ふ『なんぢら今、信ずるか。 |
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三一 イエスは答えられた、「あなたがたは今信じているのか。 |
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三二 時まさに至ん今いたりぬ爾曹散て各人その屬する所に往たゞ我を一人のこさん然ど我獨をるに非ず父われと偕に在なり |
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三二 視よ、なんぢら散されて各自おのが處にゆき、我をひとり遺すとき到らん、否すでに到れり。然れど我ひとり居るにあらず、父われと偕に在すなり。 |
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三二 見よ、あなたがたは散らされて、それぞれ自分の家に帰り、わたしをひとりだけ残す時が来るであろう。いや、すでにきている。しかし、わたしはひとりでいるのではない。父がわたしと一緒におられるのである。 |
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三三 われ此事を爾曹に語しは爾曹をして我に在て平安を得させんが爲なり爾曹世に在ては患難を受ん然ど懼るゝ勿れ我すでに世に勝り |
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三三 此等のことを汝らに語りたるは、汝ら我に在りて平安を得んが爲なり。なんぢら世にありては患難あり、然れど雄々しかれ。我すでに世に勝てり』 |
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三三 これらのことをあなたがたに話したのは、わたしにあって平安を得るためである。あなたがたは、この世ではなやみがある。しかし、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝っている」。 |
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17章 |
一 イエス此言を語畢て天を仰ぎ曰けるは父よ時いたりぬ爾の子なんぢの榮を顯さんが爲に爾の子の榮を顯し給へ |
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一 イエスこれらの事を語りはて、目を擧げ天を仰ぎて言ひ給ふ『父よ、時來れり、子が汝の榮光を顯さんために、汝の子の榮光を顯したまへ。 |
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一 これらのことを語り終えると、イエスは天を見あげて言われた、「父よ、時がきました。あなたの子があなたの栄光をあらわすように、子の栄光をあらわして下さい。 |
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二 これ爾われに賜し所の者に我永生を予へんがため凡の者を制る權威を我に賜たれば也 |
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二 汝より賜はりし凡ての者に、永遠の生命を與へしめんとて、萬民を治むる權威を子に賜ひたればなり。 |
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二 あなたは、子に賜わったすべての者に、永遠の命を授けさせるため、万民を支配する権威を子にお与えになったのですから。 |
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三 永生とは唯獨の眞~なる爾と其遣しゝイエスキリストをしる是なり |
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三 永遠の生命は、唯一の眞の~に在す汝と汝の遣し給ひしイエス・キリストとを知るにあり。 |
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三 永遠の命とは、唯一の、まことの神でいますあなたと、また、あなたがつかわされたイエス・キリストとを知ることであります。 |
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四 我なんぢの榮を世に顯し爾の我に委し所の行は我これを成り |
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四 我に成さしめんとて汝の賜ひし業を成し遂げて、我は地上に汝の榮光をあらはせり。 |
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四 わたしは、わたしにさせるためにお授けになったわざをなし遂げて、地上であなたの栄光をあらわしました。 |
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五 父よ今我をして爾と偕に榮を得させ給へ即ち創世より先に爾と偕に有し所の榮を得させ給へ |
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五 父よ、まだ世のあらぬ前にわが汝と偕にもちたりし榮光をもて、今御前にて我に榮光あらしめ給へ。 |
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五 父よ、世が造られる前に、わたしがみそばで持っていた栄光で、今み前にわたしを輝かせて下さい。 |
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六 なんぢ世より選て我に賜し人々に我なんぢの名を顯せり彼等は爾の屬にして爾これを已に我に賜ふ彼等また爾の道を守れり |
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六 世の中より我に賜ひし人々に我、御名をあらはせり。彼らは汝の有なるを我に賜へり、而して彼らは汝の言を守りたり。 |
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六 わたしは、あなたが世から選んでわたしに賜わった人々に、み名をあらわしました。彼らはあなたのものでありましたが、わたしに下さいました。そして、彼らはあなたの言葉を守りました。 |
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七 彼等いま爾の我に賜し者は皆爾より出しと知 |
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七 今かれらは、凡て我に賜ひしものの汝より出づるを知る。 |
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七 いま彼らは、わたしに賜わったものはすべて、あなたから出たものであることを知りました。 |
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八 蓋われ爾が我に賜し言を彼等に予たればなり彼等これを受また我爾より出し事を誠に知かつ爾の我を遣しゝことを信じたり |
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八 我は我に賜ひし言を彼らに與へ、彼らは之を受け、わが汝より出でたるを眞に知り、なんぢの我を遣し給ひしことを信じたるなり。 |
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八 なぜなら、わたしはあなたからいただいた言葉を彼らに与え、そして彼らはそれを受け、わたしがあなたから出たものであることをほんとうに知り、また、あなたがわたしをつかわされたことを信じるに至ったからです。 |
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九 我かれらの爲に祈る我祈るは世の爲に非ず爾の我に賜し者の爲なる耳それ彼等は爾の屬なれば也 |
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九 我かれらの爲に願ふ、わが願ふは世のためにあらず、汝の我に賜ひたる者のためなり、彼らは即ち汝のものなり。 |
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九 わたしは彼らのためにお願いします。わたしがお願いするのは、この世のためにではなく、あなたがわたしに賜わった者たちのためです。彼らはあなたのものなのです。 |
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十 凡て我屬は爾の屬なんぢの屬は我屬なり且われ彼等に由て榮を受 |
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一〇 我がものは皆なんぢの有、なんぢの有は我がものなり、我かれらより榮光を受けたり。 |
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一〇 わたしのものは皆あなたのもの、あなたのものはわたしのものです。そして、わたしは彼らによって栄光を受けました。 |
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十一 われ今より世に在ず彼等は世にをり我は爾に就る聖父よ爾の我に賜し者を爾の名に在しめ之を守て我儕の如く彼等をも一になし給へ |
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一一 今より我は世に居らず、彼らは世に居り、我は汝にゆく。聖なる父よ、我に賜ひたる汝の御名の中に彼らを守りたまへ。これ我等のごとく、彼らの一つとならん爲なり。 |
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一一 わたしはもうこの世にはいなくなりますが、彼らはこの世に残っており、わたしはみもとに参ります。聖なる父よ、わたしに賜わった御名によって彼らを守って下さい。それはわたしたちが一つであるように、彼らも一つになるためであります。 |
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十二 我かれらと偕に在し時かれらを爾の名に在しめて之を守たり爾の我に賜し者を我守りしが其中一人だに亡たる者なし唯沈淪の子ほろびたり是聖書に應せん爲なり |
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一二 我かれらと偕にをる間、われに賜ひたる汝の御名の中に彼らを守り、かつ保護したり。其のうち一人だに亡びず、ただ亡の子のみ亡びたり、聖書の成就せん爲なり。 |
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一二 わたしが彼らと一緒にいた間は、あなたからいただいた御名によって彼らを守り、また保護してまいりました。彼らのうち、だれも滅びず、ただ滅びの子だけが滅びました。それは聖書が成就するためでした。 |
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十三 我いま爾に就る我世に在て此事を語れるは我喜樂を彼等に充しめん爲なり |
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一三 今は我なんぢに往く、而して此等のことを世に在りて語るは、我が喜スを彼らに全からしめん爲なり。 |
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一三 今わたしはみもとに参ります。そして世にいる間にこれらのことを語るのは、わたしの喜びが彼らのうちに満ちあふれるためであります。 |
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十四 われ爾の道を彼等に授たり世は彼等を惡む蓋わが世の屬に非ざる如く彼等も世の屬に非ざれば也 |
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一四 我は御言を彼らに與へたり、而して世は彼らを憎めり、我の世のものならぬごとく、彼らも世のものならぬに因りてなり。 |
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一四 わたしは彼らに御言を与えましたが、世は彼らを憎みました。わたしが世のものでないように、彼らも世のものではないからです。 |
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十五 われ爾に彼等を世より取たまへと祈らず惟かれらを守て惡に陷らす勿れと祈る |
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一五 わが願ふは、彼らを世より取り給はんことならず、惡より免らせ給はんことなり。 |
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一五 わたしがお願いするのは、彼らを世から取り去ることではなく、彼らを悪しき者から守って下さることであります。 |
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十六 われ世の屬に非ざる如く彼等も世の屬に非ず |
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一六 我の世のものならぬ如く、彼らも世のものならず。 |
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一六 わたしが世のものでないように、彼らも世のものではありません。 |
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十七 爾の眞理をもて彼等を潔め給へ爾の言は眞理なり |
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一七 眞理にて彼らを潔め別ちたまへ、汝の御言は眞理なり。 |
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一七 真理によって彼らを聖別して下さい。あなたの御言は真理であります。 |
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十八 なんぢ我を世に遣しゝ如く我も彼等を世に遣せり |
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一八 汝われを世に遣し給ひし如く、我も彼らを世に遣せり。 |
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一八 あなたがわたしを世につかわされたように、わたしも彼らを世につかわしました。 |
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十九 我かれらの爲に自己を潔これ眞理に因て彼等の聖られん爲なり |
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一九 また彼等のために我は己を潔めわかつ、これ眞理にて彼らも潔め別たれん爲なり。 |
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一九 また彼らが真理によって聖別されるように、彼らのためわたし自身を聖別いたします。 |
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二十 我たゞ彼等の爲にのみ祈らず彼等の教に因て我を信ずる者の爲にも祈なり |
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二〇 我かれらの爲のみならず、その言によりて我を信ずる者のためにも願ふ。 |
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二〇 わたしは彼らのためばかりではなく、彼らの言葉を聞いてわたしを信じている人々のためにも、お願いいたします。 |
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二一 此はみな一にならん爲なり父よ爾われに在われ亦なんぢに在かくの如く彼等も我儕にをりて一にならん爲かつ世をして爾の我を遣しゝ事を信ぜしめん爲なり |
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二一 これ皆一つとならん爲なり。父よ、なんぢ我に在し、我なんぢに居るごとく、彼らも我らに居らん爲なり、是なんぢの我を遣し給ひしことを世の信ぜん爲なり。 |
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二一 父よ、それは、あなたがわたしのうちにおられ、わたしがあなたのうちにいるように、みんなの者が一つとなるためであります。すなわち、彼らをもわたしたちのうちにおらせるためであり、それによって、あなたがわたしをおつかわしになったことを、世が信じるようになるためであります。 |
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二二 爾の我に賜し榮を我かれらに授たり此は我儕の一なるが如く彼等も互に一にならん爲なり |
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二二 我は汝の我に賜ひし榮光を彼らに與へたり、是われらの一つなる如く、彼らも一つとならん爲なり。 |
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二二 わたしは、あなたからいただいた栄光を彼らにも与えました。それは、わたしたちが一つであるように、彼らも一つになるためであります。 |
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二三 われ彼等に在なんぢ我にをる蓋彼等をして一に全ならしめ且世をして爾の我を遣しゝこと又なんぢ我を愛する如く彼等をも愛することを知しめんとなり |
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二三 即ち我かれらに居り、汝われに在し、彼ら一つとなりて全くせられん爲なり、是なんぢの我を遣し給ひしことと、我を愛し給ふごとく彼等をも愛し給ふこととを、世の知らん爲なり。 |
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二三 わたしが彼らにおり、あなたがわたしにいますのは、彼らが完全に一つとなるためであり、また、あなたがわたしをつかわし、わたしを愛されたように、彼らをお愛しになったことを、世が知るためであります。 |
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二四 父よ爾の我に賜し者の我をる所に我と偕に在て我榮すなはち爾が我に賜し者を見んことを願そは世基を置ざりし先に爾われを愛したれば也 |
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二四 父よ、望むらくは、我に賜ひたる人々の我が居るところに我と偕にをり、世の創の前より我を愛し給ひしによりて、汝の我に賜ひたる我が榮光を見んことを。 |
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二四 父よ、あなたがわたしに賜わった人々が、わたしのいる所に一緒にいるようにして下さい。天地が造られる前からわたしを愛して下さって、わたしに賜わった栄光を、彼らに見させて下さい。 |
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二五 義き父よ世は爾を識ず我は爾を識かれらも爾の我を遣しゝ事を知り |
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二五 正しき父よ、げに世は汝を知らず、然れど我は汝を知り、この者どもも汝の我を遣し給ひしことを知れり。 |
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二五 正しい父よ、この世はあなたを知っていません。しかし、わたしはあなたを知り、また彼らも、あなたがわたしをおつかわしになったことを知っています。 |
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二六 我なんぢの名を彼等に示せり復これを示さん蓋なんぢの我を愛するの愛かれらに在また我かれらに在ん爲なり |
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二六 われ御名を彼らに知らしめたり、復これを知らしめん。これ我を愛し給ひたる愛の、彼らに在りて、我も彼らに居らん爲なり』 |
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二六 そしてわたしは彼らに御名を知らせました。またこれからも知らせましょう。それは、あなたがわたしを愛して下さったその愛が彼らのうちにあり、またわたしも彼らのうちにおるためであります」。 |
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18章 |
一 イエス此事を言て後その弟子と偕に出てケデロンの河を渉その處にある園の中に弟子と偕に入ぬ |
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一 此等のことを言ひ終へて、イエス弟子たちと偕にケデロンの小川の彼方に出でたまふ。彼處に園あり、イエス弟子等とともども入り給ふ。 |
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一 イエスはこれらのことを語り終えて、弟子たちと一緒にケデロンの谷の向こうへ行かれた。そこには園があって、イエスは弟子たちと一緒にその中にはいられた。 |
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二 イエスを賣たるユダ此處を識りイエス屢その弟子と偕に此に集りたれば也 |
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二 ここは弟子たちと屢々あつまり給ふ處なれば、イエスを賣るユダもこの處を知れり。 |
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二 イエスを裏切ったユダは、その所をよく知っていた。イエスと弟子たちとがたびたびそこで集まったことがあるからである。 |
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三 此時ユダ一隊の兵卒と下吏どもを祭司の長等およびパリサイの人よりうけ炬と提灯と兵器を携て此に來れり |
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三 斯てユダは一組の兵隊と祭司長・パリサイ人等よりの下役どもとを受けて、炬火・燈火・武器を携へて此處にきたる。 |
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三 さてユダは、一隊の兵卒と祭司長やパリサイ人たちの送った下役どもを引き連れ、たいまつやあかりや武器を持って、そこへやってきた。 |
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四 イエス事の己に及んとするを悉く知いでゝ彼等に曰けるは誰を尋るか |
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四 イエス己に臨まんとする事をことごとく知り、進みいでて彼らに言ひたまふ『誰を尋ぬるか』 |
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四 しかしイエスは、自分の身に起ろうとすることをことごとく承知しておられ、進み出て彼らに言われた、「だれを捜しているのか」。 |
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五 彼等こたへけるはナザレのイエスなりイエス彼等に曰けるは我は其なりイエスを賣しゝユダ彼等と偕に立り |
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五 答ふ『ナザレのイエスを』イエス言ひたまふ『我はそれなり』イエスを賣るユダも彼らと共に立てり。 |
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五 彼らは「ナザレのイエスを」と答えた。イエスは彼らに言われた、「わたしが、それである」。イエスを裏切ったユダも、彼らと一緒に立っていた。 |
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六 イエス彼等に對て我なりと曰たまへる時かれら退きて地に仆たり |
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六 『我はそれなり』と言ひ給ひし時、かれら後退して地に倒れたり。 |
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六 イエスが彼らに「わたしが、それである」と言われたとき、彼らはうしろに引きさがって地に倒れた。 |
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七 イエス復彼らに誰を尋る乎と問たまひしかば彼等ナザレのイエス也と曰 |
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七 爰に再び『たれを尋ぬるか』と問ひ給へば『ナザレのイエスを』と言ふ。 |
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七 そこでまた彼らに、「だれを捜しているのか」とお尋ねになると、彼らは「ナザレのイエスを」と言った。 |
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八 イエス答けるは我すでに爾曹に我は其なりと曰り若われを尋るならば此輩を容て去しめよ |
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八 イエス答へ給ふ『われは夫なりと旣に吿げたり、我を尋ぬるならば此の人々の去るを容せ』 |
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八 イエスは答えられた、「わたしがそれであると、言ったではないか。わたしを捜しているのなら、この人たちを去らせてもらいたい」。 |
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九 是イエス我に賜し者の中一人だに亡る者なしと云し言に應せん爲なり |
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九 これ曩に『なんぢの我に賜ひし者の中より我一人をも失はず』と言ひ給ひし言の成就せん爲なり。 |
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九 それは、「あなたが与えて下さった人たちの中のひとりも、わたしは失わなかった」とイエスの言われた言葉が、成就するためである。 |
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十 時にシモンペテロ劎を佩たりしが之を拔て祭司の長の僕を擊て其右の耳を削おとせり僕の名はマルコスと云 |
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一〇 シモン・ペテロ劍をもちたるが、之を拔き大祭司の僕を擊ちて、その右の耳を斬り落す、僕の名はマルコスと云ふ。 |
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一〇 シモン・ペテロは剣を持っていたが、それを抜いて、大祭司の僕に切りかかり、その右の耳を切り落した。その僕の名はマルコスであった。 |
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十一 イエス ペテロに曰けるは劒を鞘に鞱よ父の我に賜し杯を我飮ざらん乎 |
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一一 イエス、ペテロに言ひたまふ『劍を鞘に收めよ、父の我に賜ひたる酒杯は、われ飮まざらんや』 |
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一一 すると、イエスはペテロに言われた、「剣をさやに納めなさい。父がわたしに下さった杯は、飲むべきではないか」。 |
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十二 斯て隊の兵卒および其長とユダヤ人の下吏イエスを執へ繫て |
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一二 爰にかの兵隊・千卒長・ユダヤ人の下役ども、イエスを捕へ、縛りて |
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一二 それから一隊の兵卒やその千卒長やユダヤ人の下役どもが、イエスを捕え、縛りあげて、 |
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十三 先これをアンナスの所に曳往かれは此歲の祭司の長カヤパの外舅なるに因てなり |
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一三 先づアンナスの許に曳き往く、アンナスはその年の大祭司なるカヤパの舅なり。 |
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一三 まずアンナスのところに引き連れて行った。彼はその年の大祭司カヤパのしゅうとであった。 |
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十四 ユダヤ人に議て一人民の爲に死るはuなりと言しは此カヤパなりき |
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一四 カヤパは曩にユダヤ人に、一人、民のために死ぬるはuなる事を勸めし者なり。 |
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一四 カヤパは前に、ひとりの人が民のために死ぬのはよいことだと、ユダヤ人に助言した者であった。 |
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十五 シモンペテロと外に一人の弟子イエスに從へり此一人の弟子は祭司の長の識ところの者にてイエスと偕に祭司の長の庭に入 |
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一五 シモン・ペテロ及び他の一人の弟子、イエスに從ふ。この弟子は大祭司に知られたる者なれば、イエスと共に大祭司の庭に入りしが、 |
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一五 シモン・ペテロともうひとりの弟子とが、イエスについて行った。この弟子は大祭司の知り合いであったので、イエスと一緒に大祭司の中庭にはいった。 |
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十六 ペテロは門外に立り祭司の長の識ところの弟子出て門を守る婢に吿てペテロをともなひ入 |
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一六 ペテロは門の外に立てり。ここに大祭司に知られたる彼の弟子いでて、門を守る女に物言ひてペテロを連れ入れしに、 |
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一六 しかし、ペテロは外で戸口に立っていた。すると大祭司の知り合いであるその弟子が、外に出て行って門番の女に話し、ペテロを内に入れてやった。 |
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十七 是に於て門を守る婢ペテロに曰けるは爾も此人の弟子の一人ならず乎ペテロ然ずと曰 |
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一七 門を守る婢女、ペテロに言ふ『なんぢも彼の人の弟子の一人なるか』かれ言ふ『然らず』 |
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一七 すると、この門番の女がペテロに言った、「あなたも、あの人の弟子のひとりではありませんか」。ペテロは「いや、そうではない」と答えた。 |
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十八 僕等と下吏たち寒に因て炭を燒その處に立て煖まるペテロも彼等と偕に立て煖れり |
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一八 時寒くして僕・下役ども炭火を熾し、その傍らに立ちて煖まり居りしに、ペテロも共に立ちて煖まりゐたり。 |
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一八 僕や下役どもは、寒い時であったので、炭火をおこし、そこに立ってあたっていた。ペテロもまた彼らに交じり、立ってあたっていた。 |
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十九 祭司の長イエスに其弟子と其教のことを問ぬ |
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一九 ここに大祭司、イエスにその弟子とそのヘとにつきて問ひたれば、 |
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一九 大祭司はイエスに、弟子たちのことやイエスの教のことを尋ねた。 |
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二十 イエス彼に答けるは我あらはに世に語れり我つねにユダヤ人の平生あつまる所なる會堂および殿にて教誨をなし隱に語れる事なし |
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二〇 イエス答へ給ふ『われ公然に世に語れり、凡てのユダヤ人の相集ふ會堂と宮とにて常にヘへ、密には何をも語りし事なし。 |
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二〇 イエスは答えられた、「わたしはこの世に対して公然と語ってきた。すべてのユダヤ人が集まる会堂や宮で、いつも教えていた。何事も隠れて語ったことはない。 |
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二一 何ぞ我に問る乎われ如何かたりしか聽る者に問よ彼等わが言し所を知り |
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二一 何ゆゑ我に問ふか、我が語れることは聽きたる人々に問へ。視よ、彼らは我が言ひしことを知るなり』 |
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二一 なぜ、わたしに尋ねるのか。わたしが彼らに語ったことは、それを聞いた人々に尋ねるがよい。わたしの言ったことは、彼らが知っているのだから」。 |
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二二 イエス如此いひしに旁に立る一人の下吏掌にて彼を打いひけるは爾祭司の長に答るに此の如か |
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二二 斯く言ひ給ふとき傍らに立つ下役の一人、手掌にてイエスを打ちて言ふ『かくも大祭司に答ふるか』 |
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二二 イエスがこう言われると、そこに立っていた下役のひとりが、「大祭司にむかって、そのような答をするのか」と言って、平手でイエスを打った。 |
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二三 イエス彼に答けるは若わが語しこと善らずば其善らざるを證せよ若し善ば何ぞ我を打や |
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二三 イエス答へ給ふ『わが語りし言、もし惡しくば、その惡しき故を證せよ。善くば何とて打つぞ』 |
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二三 イエスは答えられた、「もしわたしが何か悪いことを言ったのなら、その悪い理由を言いなさい。しかし、正しいことを言ったのなら、なぜわたしを打つのか」。 |
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二四 偖アンナス イエスを繫て祭司の長カヤパの所に遣れり |
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二四 爰にアンナス、イエスを縛りたるままにて、大祭司カヤパの許に送れり。 |
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二四 それからアンナスは、イエスを縛ったまま大祭司カヤパのところへ送った。 |
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二五 シモンペテロ立て煖り居しが或人々いひけるは爾も彼の弟子の一人ならず乎ペテロ承ずして然ずと曰り |
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二五 シモン・ペテロ立ちて煖まり居たるに、人々いふ『なんぢも彼が弟子の一人なるか』否みて言ふ『然らず』 |
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二五 シモン・ペテロは、立って火にあたっていた。すると人々が彼に言った、「あなたも、あの人の弟子のひとりではないか」。彼はそれをうち消して、「いや、そうではない」と言った。 |
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二六 祭司の長の僕の中の一人すなはちペテロに耳を削れし者の親戚いひけるは我なんぢが彼と偕に園に在しを見しに非ずや |
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二六 大祭司の僕の一人にて、ペテロに耳を斬り落されし者の親族なるが言ふ『われ汝が園にて彼と偕なるを見しならずや』 |
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二六 大祭司の僕のひとりで、ペテロに耳を切りおとされた人の親族の者が言った、「あなたが園であの人と一緒にいるのを、わたしは見たではないか」。 |
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二七 ペテロまた承はず頓て鷄なきぬ |
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二七 ペテロまた否む折しも鷄鳴きぬ。 |
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二七 ペテロはまたそれを打ち消した。するとすぐに、鶏が鳴いた。 |
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二八 人々イエスを曳てカヤパより公廳に往り時すでに平旦なりき彼等汚穢を受んことを恐て公廳に入ず蓋踰越の節筵を食せんとすれば也 |
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二八 斯て人々イエスをカヤパの許より官邸にひきゆく、時は夜明なり。彼ら過越の食をなさんために、汚穢を受けじとて己らは官邸に入らず。 |
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二八 それから人々は、イエスをカヤパのところから官邸につれて行った。時は夜明けであった。彼らは、けがれを受けないで過越の食事ができるように、官邸にはいらなかった。 |
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二九 ピラト出て彼等に曰けるは如何なる訟をもて斯人を訟るや |
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二九 爰にピラト彼らの前に出でゆきて言ふ『この人に對して如何なる訴訟をなすか』 |
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二九 そこで、ピラトは彼らのところに出てきて言った、「あなたがたは、この人に対してどんな訴えを起すのか」。 |
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三十 人々こたへけるは彼もし惡を行る者に非ずば爾に解さじ |
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三〇 答へて言ふ『もし惡をなしたる者ならずば汝に付さじ』 |
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三〇 彼らはピラトに答えて言った、「もしこの人が悪事をはたらかなかったなら、あなたに引き渡すようなことはしなかったでしょう」。 |
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三一 ピラト彼等に曰けるは爾曹これを取なんぢらの律法に從ひて審判せよユダヤの人々かれに曰けるは我儕に人を殺すの權なし |
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三一 ピラト言ふ『なんぢら彼を引取り、おのが律法に循ひて審け』ユダヤ人いふ『我らに人を殺す權威なし』 |
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三一 そこでピラトは彼らに言った、「あなたがたは彼を引き取って、自分たちの律法でさばくがよい」。ユダヤ人らは彼に言った、「わたしたちには、人を死刑にする権限がありません」。 |
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三二 是イエスの其死んとする狀を指て語れることに應へり |
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三二 これイエス己が如何なる死にて死ぬるかを示して言ひ給ひし御言の成就せん爲なり。 |
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三二 これは、ご自身がどんな死にかたをしようとしているかを示すために言われたイエスの言葉が、成就するためである。 |
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三三 ピラトまた公廳に入イエスを召て曰けるは爾はユダヤ人の王なるや |
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三三 爰にピラトまた官邸に入り、イエスを呼び出して言ふ『なんぢはユダヤ人の王なるか』 |
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三三 さて、ピラトはまた官邸にはいり、イエスを呼び出して言った、「あなたは、ユダヤ人の王であるか」。 |
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三四 イエス彼に答けるは爾この事を言るは自己に由か我に就て人の吿しに由か |
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三四 イエス答へ給ふ『これは汝おのれより言ふか、將わが事を人の汝に吿げたるか』 |
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三四 イエスは答えられた、「あなたがそう言うのは、自分の考えからか。それともほかの人々が、わたしのことをあなたにそう言ったのか」。 |
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三五 ピラト答けるは我はユダヤ人ならんや爾の國の民と祭司の長と爾を我に解せり爾なにを爲しや |
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三五 ピラト答ふ『我はユダヤ人ならんや、汝の國人・祭司長ら汝を我に付したり、汝なにを爲ししぞ』 |
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三五 ピラトは答えた、「わたしはユダヤ人なのか。あなたの同族や祭司長たちが、あなたをわたしに引き渡したのだ。あなたは、いったい、何をしたのか」。 |
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三六 イエス答けるは我國はこの世の國に非ず若わが國この世の國ならば我僕われをユダヤ人に付さゞる爲に戰ふべし然ど我國は此世の國ならざる也 |
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三六 イエス答へ給ふ『わが國はこの世のものならず、若し我が國この世のものならば、我が僕ら我をユダヤ人に付さじと戰ひしならん。然れど我が國は比の世よりのものならず』 |
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三六 イエスは答えられた、「わたしの国はこの世のものではない。もしわたしの国がこの世のものであれば、わたしに従っている者たちは、わたしをユダヤ人に渡さないように戦ったであろう。しかし事実、わたしの国はこの世のものではない」。 |
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三七 ピラト彼に曰けるは然ば爾は王なるかイエス答けるは爾の言ところの如く我は王なり我これが爲に生これが爲め世に臨れり蓋眞理について證を爲んため也すべて眞理に屬者は我聲を聽 |
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三七 爰にピラト言ふ『されば汝は王なるか』イエス答へ給ふ『われの王たることは汝の言へるごとし。我は之がために生れ、之がために世に來れり、即ち眞理につきて證せん爲なり。凡て眞理に屬する者は我が聲をきく』 |
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三七 そこでピラトはイエスに言った、「それでは、あなたは王なのだな」。イエスは答えられた、「あなたの言うとおり、わたしは王である。わたしは真理についてあかしをするために生れ、また、そのためにこの世にきたのである。だれでも真理につく者は、わたしの声に耳を傾ける」 |
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三八 ピラト彼に曰けるは眞理は如何なる者ぞ此事を言る後また出てユダヤ人に曰けるは我は斯人に罪あるを見ず |
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三八 ピラト言ふ『眞理とは何ぞ』かく言ひて再びユダヤ人の前に出でて言ふ『我この人に何の罪あるをも見ず。 |
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三八 ピラトはイエスに言った、「真理とは何か」。こう言って、彼はまたユダヤ人の所に出て行き、彼らに言った、「わたしには、この人になんの罪も見いだせない。 |
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三九 爰に爾曹に一の例あり我踰越の節に一人の囚人を爾曹に釋す爾曹ユダヤ人の王を釋さん事を欲ふや |
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三九 過越のとき我なんぢらに一人の囚人を赦す例あり、されば汝らユダヤ人の王をわが赦さんことを望むか』 |
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三九 過越の時には、わたしがあなたがたのために、ひとりの人を許してやるのが、あなたがたのしきたりになっている。ついては、あなたがたは、このユダヤ人の王を許してもらいたいのか」。 |
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四十 衆人また喊叫いひけるは斯人に非ずバラバを釋せバラバは盜賊なる也 |
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四〇 彼らまた叫びて『この人ならず、バラバを』と言ふ、バラバは强盜なり。 |
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四〇 すると彼らは、また叫んで「その人ではなく、バラバを」と言った。このバラバは強盗であった。 |
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19章 |
一 其時ピラト イエスを取て鞭つ |
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一 爰にピラト、イエスをとりて鞭つ。 |
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一 そこでピラトは、イエスを捕え、むちで打たせた。 |
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二 兵卒ども棘にて冕を編かれの首に冠しめ又紫の袍を衣せて |
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二 兵卒ども茨にて冠冕をあみ、その首にかむらせ、紫色の上衣をきせ、 |
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二 兵卒たちは、いばらで冠をあんで、イエスの頭にかぶらせ、紫の上着を着せ、 |
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三 曰けるはユダヤ人の王やすかれ斯て掌にて之を打り |
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三 御許に進みて言ふ『ユダヤ人の王やすかれ』而して手掌にて打てり。 |
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三 それから、その前に進み出て、「ユダヤ人の王、ばんざい」と言った。そして平手でイエスを打ちつづけた。 |
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四 ピラトまた外に出て彼等に曰けるは我かれに就て罪あるを見ず之を知せんとて爾曹に曳出せり |
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四 ピラト再び出でて人々にいふ『視よ、この人を汝らに引出す、これは何の罪あるをも我が見ぬことを汝らの知らん爲なり』 |
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四 するとピラトは、また出て行ってユダヤ人たちに言った、「見よ、わたしはこの人をあなたがたの前に引き出すが、それはこの人になんの罪も見いだせないことを、あなたがたに知ってもらうためである」。 |
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五 イエス棘の冕をかぶり紫の袍を衣て外に出ピラト彼等に曰けるは觀よ此その人なり |
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五 爰にイエス茨の冠冕をかむり、紫色の上衣をきて出で給へば、ピラト言ふ『視よ、この人なり』 |
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五 イエスはいばらの冠をかぶり、紫の上着を着たままで外へ出られると、ピラトは彼らに言った、「見よ、この人だ」。 |
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六 祭司の長等と下吏これを見て十字架に釘よ十字架に釘よと喊叫いふピラト彼等に曰けるは爾曹かれを取て十字架に釘よ我かれに就て罪あるを見ざる也 |
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六 祭司長・下役どもイエスを見て叫びいふ『十字架につけよ、十字架につけよ』ピラト言ふ『なんぢら自らとりて十字架につけよ、我は彼に罪あるを見ず』 |
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六 祭司長たちや下役どもはイエスを見ると、叫んで「十字架につけよ、十字架につけよ」と言った。ピラトは彼らに言った、「あなたがたが、この人を引き取って十字架につけるがよい。わたしは、彼にはなんの罪も見いだせない」。 |
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七 ユダヤ人かれに答けるは我儕に律法あり其律法に從へば彼は死べき者なり蓋かれ自己を~の子と爲ばなり |
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七 ユダヤ人こたふ『我らに律法あり、その律法によれば死に當るべき者なり、彼はおのれを~の子となせり』 |
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七 ユダヤ人たちは彼に答えた、「わたしたちには律法があります。その律法によれば、彼は自分を神の子としたのだから、死罪に当る者です」。 |
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八 ピラト此言を聞てu懼る |
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八 ピラトこの言をききて々おそれ、 |
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八 ピラトがこの言葉を聞いたとき、ますますおそれ、 |
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九 また公廳に入てイエスに曰けるは爾何處の者ぞイエス答せざりき |
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九 再び官邸に入りてイエスに言ふ『なんぢは何歲よりぞ』イエス答をなし給はず。 |
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九 もう一度官邸にはいってイエスに言った、「あなたは、もともと、どこからきたのか」。しかし、イエスはなんの答もなさらなかった。 |
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十 ピラト彼に曰けるは我に答ざるか我なんぢを十字架に釘る權威あり亦なんぢを釋す權威あり此事を知ざる乎 |
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一〇 ピラト言ふ『われに語らぬか、我になんぢを赦す權威あり、また十字架につくる權威あるを知らぬか』 |
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一〇 そこでピラトは言った、「何も答えないのか。わたしには、あなたを許す権威があり、また十字架につける権威があることを、知らないのか」。 |
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十一 イエス答けるは爾上より權威を賜らずば我に對て權威ある事なし是故に我を爾に解しゝ者の罪尤も大なり |
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一一 イエス答へ給ふ『なんぢ上より賜はらずば、我に對して何の權威もなし。この故に我をなんぢに付しし者の罪は更に大なり』 |
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一一 イエスは答えられた、「あなたは、上から賜わるのでなければ、わたしに対してなんの権威もない。だから、わたしをあなたに引き渡した者の罪は、もっと大きい」。 |
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十二 此後ピラト彼を釋さんと謀る然どもユダヤ人さけび曰けるは若これを釋さばカイザルに忠臣ならず凡て自己を王となす者はカイザルに叛く者なり |
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一二 斯においてピラト、イエスを赦さんことを力む。然れどユダヤ人さけびて言ふ『なんぢ若しこの人を赦さば、カイザルの忠臣にあらず、凡そおのれを王となす者はカイザルに叛くなり』 |
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一二 これを聞いて、ピラトはイエスを許そうと努めた。しかしユダヤ人たちが叫んで言った、「もしこの人を許したなら、あなたはカイザルの味方ではありません。自分を王とするものはすべて、カイザルにそむく者です」。 |
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十三 ピラト此言を聞てイエスを曳出し鋪石と云る所ヘブルの言にて譯ばガバタと云ところの審判の坐に自ら坐れり |
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一三 ピラトこれらの言をききてイエスを外にひきゆき、敷石(ヘブル語にてガバタ)といふ處にて審判の座につく。 |
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一三 ピラトはこれらの言葉を聞いて、イエスを外へ引き出して行き、敷石(ヘブル語ではガバタ)という場所で裁判の席についた。 |
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十四 其日は踰越節の備日にて時は約そ十二時ごろなりきピラトユダヤ人に曰けるは爾曹の王を見よ |
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一四 この日は過越の準備日にて、時は第六時ごろなりき。ピラト、ユダヤ人にいふ『視よ、なんぢらの王なり』 |
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一四 その日は過越の準備の日であって、時は昼の十二時ころであった。ピラトはユダヤ人らに言った、「見よ、これがあなたがたの王だ」。 |
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十五 かれら喊叫て之を除け之を除け十字架に釘しと曰ピラト彼等に曰けるは我なんぢらの王を十字架に釘べけんや祭司の長等こたへけるはカイザルの他われらに王なし |
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一五 かれら叫びていふ『除け、除け、十字架につけよ』ピラト言ふ『われ汝らの王を十字架につくべけんや』祭司長ら答ふ『カイザルの他われらに王なし』 |
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一五 すると彼らは叫んだ、「殺せ、殺せ、彼を十字架につけよ」。ピラトは彼らに言った、「あなたがたの王を、わたしが十字架につけるのか」。祭司長たちは答えた、「わたしたちには、カイザル以外に王はありません」。 |
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十六 遂にピラト彼を十字架に釘しめんとて彼等に付せり是に於て彼等イエスを取て曳往り |
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一六 爰にピラト、イエスを十字架に釘くるために彼らに付せり。 |
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一六 そこでピラトは、十字架につけさせるために、イエスを彼らに引き渡した。彼らはイエスを引き取った。 |
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十七 イエス十字架を負て髑髏と云る所ヘブルの言にて曰ばゴルゴタといふ所に往り |
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一七 彼らイエスを受取わたれば、イエス己に十字架を負ひて髑髏(ヘブル語にてゴルゴタ)といふ處に出でゆき給ふ。 |
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一七 イエスはみずから十字架を背負って、されこうべ(ヘブル語ではゴルゴタ)という場所に出て行かれた。 |
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十八 此所にて彼を十字架に釘たり別に二人の者かれと偕に十字架に釘らる一人は右一人は左イエス中に居り |
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一八 其處にて彼らイエスを十字架につく。又ほかに二人の者をともに十字架につけ、一人を右に、一人を左に、イエスを眞中に置けり。 |
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一八 彼らはそこで、イエスを十字架につけた。イエスをまん中にして、ほかのふたりの者を両側に、イエスと一緒に十字架につけた。 |
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十九 ピラト罪標を十字架につけ此はユダヤ人の王なるナザレのイエスなりと書たり |
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一九 ピラト罪標を書きて十字架の上に揭ぐ『ユダヤ人の王、ナザレのイエス』と記したり。 |
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一九 ピラトは罪状書きを書いて、十字架の上にかけさせた。それには「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」と書いてあった。 |
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二十 許多のユダヤ人この罪標を讀り蓋イエスを十字架に釘し所は京城に近ければ也其標はヘブル ギリシヤ ロマの言にて書たり |
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二〇 イエスを十字架につけし處はキに近ければ、多くのユダヤ人この標を讀む、標はヘブル、ロマ、ギリシヤの語にて記したり。 |
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二〇 イエスが十字架につけられた場所は都に近かったので、多くのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。それはヘブル、ローマ、ギリシヤの国語で書いてあった。 |
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二一 ユダヤ人の祭司の長等ピラトに曰けるはユダヤ人の王と書す勿れ自らユダヤ人の王なりと言しと書すべし |
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二一 爰にユダヤ人の祭司長らピラトに言ふ『ユダヤ人の王と記さず、我はユダヤ人の王なりと自稱せりと記せ』 |
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二一 ユダヤ人の祭司長たちがピラトに言った、「『ユダヤ人の王』と書かずに、『この人はユダヤ人の王と自称していた』と書いてほしい」。 |
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二二 ピラト答けるは我書しゝ所すでに書たり |
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二二 ピラト答ふ『わが記したることは記したるままに』 |
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二二 ピラトは答えた、「わたしが書いたことは、書いたままにしておけ」。 |
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二三 兵卒どもイエスを十字架に釘し後その上衣をとり四に分て各その一を取また裹衣を取り此裹衣は縫なく上より渾く織るもの也ければ |
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二三 兵卒どもイエスを十字架につけし後、その衣をとりて四つに分け、おのおの其の一つを得たり。また下衣を取りしが、下衣は縫目なく、上より惣て織りたる物なれば、 |
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二三 さて、兵卒たちはイエスを十字架につけてから、その上着をとって四つに分け、おのおの、その一つを取った。また下着を手に取ってみたが、それには縫い目がなく、上の方から全部一つに織ったものであった。 |
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二四 互に曰けるは之を裂ずして誰の屬にならんか鬮にすべし此は聖書に彼等たがひに我衣を分わが裹衣を鬮にすと云しに應せん爲なり兵卒ども已に此事を行り |
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二四 兵卒ども互にいふ『これを裂くな、誰がうるか鬮にすべし』これは聖書の成就せん爲なり。曰く『かれら互にわが衣をわけ、わが衣を鬮にせり』兵卒ども斯くなしたり。 |
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二四 そこで彼らは互に言った、「それを裂かないで、だれのものになるか、くじを引こう」。これは、「彼らは互にわたしの上着を分け合い、わたしの衣をくじ引にした」という聖書が成就するためで、兵卒たちはそのようにしたのである。 |
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二五 偖イエスの母と母の姊妹およびクロパの妻のマリア並マグダラのマリアその十字架の旁に立り |
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二五 さてイエスの十字架の傍らには、その母と母の姊妹と、クロパの妻マリヤとマグダラのマリヤと立てり。 |
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二五 さて、イエスの十字架のそばには、イエスの母と、母の姉妹と、クロパの妻マリヤと、マグダラのマリヤとが、たたずんでいた。 |
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二六 イエス母と愛する所の弟子と旁に立るを見て母に曰けるは婦よ此なんぢの子なり |
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二六 イエスその母とその愛する弟子との近く立てるを見て、母に言ひ給ふ『をんなよ、視よ、なんぢの子なり』 |
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二六 イエスは、その母と愛弟子とがそばに立っているのをごらんになって、母にいわれた、「婦人よ、ごらんなさい。これはあなたの子です」。 |
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二七 また弟子に曰けるは此なんぢの母なり是時その弟子かれを己の家に携往り |
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二七 また弟子に言ひたまふ『視よ、なんぢの母なり』この時より、その弟子かれを己が家に接けたり。 |
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二七 それからこの弟子に言われた、「ごらんなさい。これはあなたの母です」。そのとき以来、この弟子はイエスの母を自分の家に引きとった。 |
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二八 斯てイエスゥの事の已に竟れるをしり聖書に應せん爲に我渴といへり |
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二八 この後イエス萬の事の終りたるを知りてー聖書の全うせられん爲にー『われ渴く』と言ひ給ふ。 |
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二八 そののち、イエスは今や万事が終ったことを知って、「わたしは、かわく」と言われた。それは、聖書が全うされるためであった。 |
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二九 此處に醋の滿たる噐皿ありしかば兵卒ども海絨を醋に漬し牛膝草に束て其口に予ふ |
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二九 ここに酸き葡萄酒の滿ちたる器あり、その葡萄酒のふくみたる海綿をヒソプに著けてイエスの口に差附く。 |
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二九 そこに、酢いぶどう酒がいっぱい入れてある器がおいてあったので、人々は、このぶどう酒を含ませた海綿をヒソプの茎に結びつけて、イエスの口もとにさし出した。 |
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三十 イエス醋を受し後いひけるは事竟ぬ首を俯て靈を付せり |
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三〇 イエスその葡萄酒をうけて後いひ給ふ『事畢りぬ』遂に首をたれて靈をわたし給ふ。 |
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三〇 すると、イエスはそのぶどう酒を受けて、「すべてが終った」と言われ、首をたれて息をひきとられた。 |
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三一 是日は節筵の備日なり此安息日は大なる安息日なれば屍を十字架の上に置ことを欲ざるが故にユダヤ人ピラトに對かれらの脛を折て其屍を取除ことを求へり |
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三一 この日は準備日なれば、ユダヤ人、安息日に屍體を十字架のうへに留めおかじとて(殊にこの度の安息日は大なる日なるにより)ピラトに、彼らの脛ををりて屍體を取除かんことを請ふ。 |
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三一 さてユダヤ人たちは、その日が準備の日であったので、安息日に死体を十字架の上に残しておくまいと、(特にその安息日は大事な日であったから)、ピラトに願って、足を折った上で、死体を取りおろすことにした。 |
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三二 是に於て兵卒等イエスと偕に十字架に釘られし者の一人の脛を先にをり次に亦一人の脛を折 |
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三二 ここに兵卒ども來りて、イエスとともに十字架に釘けられたる第一の者と他のものとの脛を折り、 |
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三二 そこで兵卒らがきて、イエスと一緒に十字架につけられた初めの者と、もうひとりの者との足を折った。 |
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三三 後にイエスに來しに已に死たるを見て其脛を折ざりき |
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三三 而してイエスに來りしに、はや死に給ふを見て、その脛ををらず。 |
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三三 しかし、彼らがイエスのところにきた時、イエスはもう死んでおられたのを見て、その足を折ることはしなかった。 |
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三四 一人の兵卒戈にて其脅を刺ければ直に血と水と流出たり |
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三四 然るに一人の兵卒、鎗にてその脅をつきたれば、直ちに血と水と流れいづ。 |
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三四 しかし、ひとりの兵卒がやりでそのわきを突きさすと、すぐ血と水とが流れ出た。 |
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三五 之を見し者證を立その證は眞なり彼また自ら言ところの眞なるをしる爾曹をして信ぜしめんが爲なり |
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三五 之を見しもの證をなす、其の證は眞なり、彼はその言ふことの眞なるを知る、これ汝等にも信ぜしめん爲なり。 |
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三五 それを見た者があかしをした。そして、そのあかしは真実である。その人は、自分が真実を語っていることを知っている。それは、あなたがたも信ずるようになるためである。 |
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三六 この事成り錄して其骨の一をも摧ざるべしと有に應せん爲なり |
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三六 此等のことの成りたるは『その骨くだかれず』とある聖旬の成就せん爲なり。 |
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三六 これらのことが起ったのは、「その骨はくだかれないであろう」との聖書の言葉が、成就するためである。 |
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三七 また他の書に彼等の刺し者を彼等觀べしと云り |
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三七 また他に『かれら己が刺したる者を見るべし』と云へる聖句あり。 |
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三七 また聖書のほかのところに、「彼らは自分が刺し通した者を見るであろう」とある。 |
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三八 是後アリマタヤのヨセフと云る者にて前にユダヤ人を懼て隱にイエスの弟子となれる者イエスの屍を取んとてピラトに求ピラト之を許しゝに因きたりて其屍を取り |
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三八 この後、アリマタヤのヨセフとてユダヤ人を懼れ、密にイエスの弟子たりし者、イエスの屍體を引取らんことをビラトに請ひたれば、ピラト許せり、乃ち往きてその屍體を引取る。 |
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三八 そののち、ユダヤ人をはばかって、ひそかにイエスの弟子となったアリマタヤのヨセフという人が、イエスの死体を取りおろしたいと、ピラトに願い出た。ピラトはそれを許したので、彼はイエスの死体を取りおろしに行った。 |
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三九 また曩に夜間イエスに就しニコデモといふ人沒藥と蘆薈を和おほよそ百斤ばかり携來る |
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三九 また曾て夜、御許に來りしニコデモも、沒藥・沈香の混和物を百斤ばかり携へて來る。 |
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三九 また、前に、夜、イエスのみもとに行ったニコデモも、没薬と沈香とをまぜたものを百斤ほど持ってきた。 |
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四十 彼等ィェスの屍を取てユダヤ人の葬の例に循ひ之を布と香にて裹り |
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四〇 ここに彼らイエスの屍體をとり、ユダヤ人の葬りの習慣にしたがひて、香料とともに布にて卷けり。 |
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四〇 彼らは、イエスの死体を取りおろし、ユダヤ人の埋葬の習慣にしたがって、香料を入れて亜麻布で巻いた。 |
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四一 さて十字架に釘し其近傍に園あり園の中に未だ人を葬りし事なき新き墓あり |
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四一 イエスの十字架につけられ給ひし處に園あり、園の中にいまだ人を葬りしことなき新しき墓あり。 |
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四一 イエスが十字架にかけられた所には、一つの園があり、そこにはまだだれも葬られたことのない新しい墓があった。 |
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四二 是日はユダヤ人の節筵の備日なり又墓近かりければ其處にイエスを置り |
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四二 ユダヤ人の準備日なれば『この墓の近きままに其處にイエスを納めたり。 |
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四二 その日はユダヤ人の準備の日であったので、その墓が近くにあったため、イエスをそこに納めた。 |
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20章 |
一 一週の首の日の朝いまだ昧うちにマグダラのマリア墓に來て石の墓より取去ありしを見 |
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一 一週のはじめの日、朝まだき暗きうちにマグダラのマリヤ、墓にきたりて墓より石の取除けあるを見る。 |
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一 さて、一週の初めの日に、朝早くまだ暗いうちに、マグダラのマリヤが墓に行くと、墓から石がとりのけてあるのを見た。 |
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二 遂にシモンペテロまたイエスの愛せし所の弟子に趨往て曰けるは墓より主を取し者あり我儕何處に置しや其處を知ず |
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二 乃ち走りゆき、シモン・ペテロとイエスの愛し給ひしかの弟子との許に到りて言ふ『たれか主を墓より取去れり、何處に置きしか我ら知らず』 |
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二 そこで走って、シモン・ペテロとイエスが愛しておられた、もうひとりの弟子のところへ行って、彼らに言った、「だれかが、主を墓から取り去りました。どこへ置いたのか、わかりません」。 |
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三 ペテロと彼一人の弟子いでゝ墓に往 |
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三 ペテロと、かの弟子といでて墓にゆく。 |
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三 そこでペテロともうひとりの弟子は出かけて、墓へむかって行った。 |
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四 二人ともに趨る他の弟子ペテロより疾趨て先に墓に至ぬ |
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四 二人ともに走りたれど、かの弟子ペテロより疾く走りて先に墓にいたり、 |
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四 ふたりは一緒に走り出したが、そのもうひとりの弟子の方が、ペテロよりも早く走って先に墓に着き、 |
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五 俯て屍を裹し布を置るを見たれども入ず |
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五 屈みて布の置きたるを見れど、內には入らず。 |
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五 そして身をかがめてみると、亜麻布がそこに置いてあるのを見たが、中へははいらなかった。 |
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六 シモンペテロ彼に後て來り墓にいり裹し布を置るを見たり |
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六 シモン・ペテロ後れ來り、墓に入りて布の置きたるを視、 |
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六 シモン・ペテロも続いてきて、墓の中にはいった。彼は亜麻布がそこに置いてあるのを見たが、 |
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七 その首を裹し手巾は屍を裹し布と同に置ず離て別の處に疊て置り |
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七 また首を包みし手拭は布とともに在らず、他のところに卷きてあるを見る。 |
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七 イエスの頭に巻いてあった布は亜麻布のそばにはなくて、はなれた別の場所にくるめてあった。 |
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八 是に於て先に墓に來れる他の弟子も入これを見て信ぜり |
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八 先に墓にきたれる彼の弟子もまた入り、之を見て信ず。 |
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八 すると、先に墓に着いたもうひとりの弟子もはいってきて、これを見て信じた。 |
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九 錄してイエスの死より甦るべき事あるを彼等いまだ知ざる也 |
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九 彼らは聖書に錄したる、死人の中よりその甦へり給ふべきことを未だ悟らざりしなり。 |
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九 しかし、彼らは死人のうちからイエスがよみがえるべきことをしるした聖句を、まだ悟っていなかった。 |
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十 斯て弟子は己の宿に歸れり |
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一〇 遂に二人の弟子おのが家にかへれり。 |
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一〇 それから、ふたりの弟子たちは自分の家に帰って行った。 |
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十一 マリアは墓の外に立て哭つゝ墓にむかひ俯て |
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一一 然れどマリヤは墓の外に立ちて泣き居りしが、泣きつつ屈みて、墓の內を見るに、 |
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一一 しかし、マリヤは墓の外に立って泣いていた。そして泣きながら、身をかがめて墓の中をのぞくと、 |
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十二 二人の天使しろき衣を着イエスの屍を置たりし所の首の方に一人足の方に一人坐し居を見たり |
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一二 イエスの屍體の置かれし處に白き衣をきたる二人の御使、首の方にひとり足の方にひとり坐しゐたり。 |
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一二 白い衣を着たふたりの御使が、イエスの死体のおかれていた場所に、ひとりは頭の方に、ひとりは足の方に、すわっているのを見た。 |
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十三 天使かれに曰けるは婦よ何ぞ哭くや彼こたへけるは我主を取し者あり何處に置しかを知ざれば也 |
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一三 而してマリヤに言ふ『をんなよ、何ぞ泣くか』マリヤ言ふ『誰か、わが主を取去れり、何處に置きしか我しらず』 |
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一三 すると、彼らはマリヤに、「女よ、なぜ泣いているのか」と言った。マリヤは彼らに言った、「だれかが、わたしの主を取り去りました。そして、どこに置いたのか、わからないのです」。 |
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十四 如此いひて反顧イエスの立しを見る然どもイエスなることを知ず |
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一四 かく言ひて後に振反れば、イエスの立ち居給ふを見る、然れどイエスたるを知らず。 |
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一四 そう言って、うしろをふり向くと、そこにイエスが立っておられるのを見た。しかし、それがイエスであることに気がつかなかった。 |
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十五 イエス彼に曰けるは婦よ何ぞ哭や誰を尋るかマリア園を守る人ならんと意ひ彼に曰けるは君よ爾もし彼を轉移しゝならば何處に置しか我に吿よ我これを取べし |
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一五 イエス言ひ給ふ『をんなよ、何ぞ泣く、誰を尋ぬるか』マリヤは園守ならんと思ひて言ふ『君よ、汝もし彼を取去りしならば、何處に置きしかを吿げよ、われ引取るべし』 |
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一五 イエスは女に言われた、「女よ、なぜ泣いているのか。だれを捜しているのか」。マリヤは、その人が園の番人だと思って言った、「もしあなたが、あのかたを移したのでしたら、どこへ置いたのか、どうぞ、おっしゃって下さい。わたしがそのかたを引き取ります」。 |
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十六 イエス彼にマリアよといふ婦かへりみて彼にラボニと曰り之を譯ば夫子なり |
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一六 イエス『マリヤよ』と言ひ給ふ。マリヤ振反りて『ラボニ』(釋けば師よ)と言ふ。 |
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一六 イエスは彼女に「マリヤよ」と言われた。マリヤはふり返って、イエスにむかってヘブル語で「ラボニ」と言った。それは、先生という意味である。 |
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十七 イエス彼に曰けるは我に捫こと勿れ我いまだ我父に升ざれば也わが兄弟に往ていへ我は我父すなはち爾曹が父わが~すなはち爾曹が~に升ると |
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一七 イエス言ひ給ふ『われに觸るな、我いまだ父の許に昇らぬ故なり。我が兄弟たちに往きて「我はわが父、即ち汝らの父、わが~、即ち汝らの~に昇る」といへ』 |
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一七 イエスは彼女に言われた、「わたしにさわってはいけない。わたしは、まだ父のみもとに上っていないのだから。ただ、わたしの兄弟たちの所に行って、『わたしは、わたしの父またあなたがたの父であって、わたしの神またあなたがたの神であられるかたのみもとへ上って行く』と、彼らに伝えなさい」。 |
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十八 マグダラのマリア主を見しことと主の如此おのれに言給へるといふ事を弟子等に往て吿 |
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一八 マグダラのマリヤ往きて弟子たちに『われは主を見たり』と吿げ、また云々の事を言ひ給ひしと吿げたり。 |
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一八 マグダラのマリヤは弟子たちのところに行って、自分が主に会ったこと、またイエスがこれこれのことを自分に仰せになったことを、報告した。 |
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十九 此日の暮時すなはち一週の首の日弟子等ユダヤ人を懼るゝに因て集れる所の門を閉おきしがイエス來て其中に立かれらに曰けるは爾曹安かれ |
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一九 この日、即ち一週のはじめの日の夕、弟子たちユダヤ人を懼るるに因りて居るところの戶を閉ぢおきしに、イエスきたり彼らの中に立ちて言ひたまふ『平安なんぢらに在れ』 |
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一九 その日、すなわち、一週の初めの日の夕方、弟子たちはユダヤ人をおそれて、自分たちのおる所の戸をみなしめていると、イエスがはいってきて、彼らの中に立ち、「安かれ」と言われた。 |
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二十 如此いひし後其手と脅を彼等に見す弟子たち主を見て喜べり |
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二〇 斯く言ひてその手と脅とを見せたまふ、弟子たち主を見て喜べり。 |
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二〇 そう言って、手とわきとを、彼らにお見せになった。弟子たちは主を見て喜んだ。 |
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二一 イエスまた彼等に曰けるは爾曹安かれ父の我を遣しゝ如く我も爾曹を遣さん |
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二一 イエスまた言ひたまふ『平安なんぢらに在れ、父の我を遣し給へるごとく、我も亦なんぢらを遣す』 |
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二一 イエスはまた彼らに言われた、「安かれ。父がわたしをおつかわしになったように、わたしもまたあなたがたをつかわす」。 |
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二二 此如いひしのち氣を噓て彼等に曰けるは聖靈を受よ |
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二二 斯く言ひて、息を吹きかけ言ひたまふ『聖靈をうけよ。 |
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二二 そう言って、彼らに息を吹きかけて仰せになった、「聖霊を受けよ。 |
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二三 なんぢら誰の罪を釋すとも其罪ゆるされ誰の罪を定るとも其罪さだめらるべし |
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二三 汝ら誰の罪を赦すとも其の罪ゆるされ、誰の罪を留むるとも其の罪とどめらるべし』 |
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二三 あなたがたがゆるす罪は、だれの罪でもゆるされ、あなたがたがゆるさずにおく罪は、そのまま残るであろう」。 |
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二四 イエス來しとき十二の弟子の一人なるデドモと稱るトマス彼等と偕に在ざりき |
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二四 イエス來り給ひしとき、十二弟子の一人デドモと稱ふるトマスともに居らざりしかば、 |
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二四 十二弟子のひとりで、デドモと呼ばれているトマスは、イエスがこられたとき、彼らと一緒にいなかった。 |
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二五 是故に他の弟子かれに曰けるは我儕主を見たりトマス彼等に曰けるは我もし其手に釘の跡を見わが指を釘の迹に探わが手を其脅に探に非ずば信ぜじ |
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二五 他の弟子これに言ふ『われら主を見たり』トマスいふ『我はその手に釘の痕を見、わが指を釘の痕にさし入れ、わが手をその脅に差入るるにあらずば信ぜじ』 |
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二五 ほかの弟子たちが、彼に「わたしたちは主にお目にかかった」と言うと、トマスは彼らに言った、「わたしは、その手に釘あとを見、わたしの指をその釘あとにさし入れ、また、わたしの手をそのわきにさし入れてみなければ、決して信じない」。 |
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二六 八日を越し後また弟子たち室の內に在けるがトマスも彼等と偕に在り門を閉たるにイエス來て其中に立て曰けるは爾曹安かれ |
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二六 八日ののち弟子等また家にをり、トマスも偕に居りて戶を閉ぢおきしに、イエス來り、彼らの中に立ちて言ひたまふ『平安なんぢらに在れ』 |
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二六 八日ののち、イエスの弟子たちはまた家の内におり、トマスも一緒にいた。戸はみな閉ざされていたが、イエスがはいってこられ、中に立って「安かれ」と言われた。 |
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二七 遂にトマスに曰けるは爾の指を此に伸て我手を見なんぢの手を伸て我脅にさせ信ぜざる勿れ信ぜよ |
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二七 またトマスに言ひ給ふ『なんぢの指をここに伸べて、わが手を見よ、汝の手をのベて、我が脅にさしいれよ、信ぜぬ者とならで信ずる者となれ』 |
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二七 それからトマスに言われた、「あなたの指をここにつけて、わたしの手を見なさい。手をのばしてわたしのわきにさし入れてみなさい。信じない者にならないで、信じる者になりなさい」。 |
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二八 トマス答て彼に曰けるは我主よ我~よ |
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二八 トマス答へて言ふ『わが主よ、わが~よ』 |
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二八 トマスはイエスに答えて言った、「わが主よ、わが神よ」。 |
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二九 イエス彼に曰けるは爾われを見しに因て信ず見ずして信ずる者はなり |
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二九 イエス言ひ給ふ『なんぢ我を見しによりて信じたり、見ずして信ずる者は幸なり』 |
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二九 イエスは彼に言われた、「あなたはわたしを見たので信じたのか。見ないで信ずる者は、さいわいである」。 |
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三十 此書に錄さゞる外なは許多の奇跡をイエス弟子の前にて行り |
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三〇 この書に錄さざる外の多くの徵を、イエス弟子たちの前にて行ひ給へり。 |
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三〇 イエスは、この書に書かれていないしるしを、ほかにも多く、弟子たちの前で行われた。 |
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三一 此書を錄せるは爾曹をしてイエスの~の子キリストなる事を信ぜしめ之を信じ其名に因て生命を得させんが爲なり |
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三一 されど此等の事を錄ししは、汝等をしてイエスの~の子キリストたることを信ぜしめ、信じて御名により生命を得しめんが爲なり。 |
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三一 しかし、これらのことを書いたのは、あなたがたがイエスは神の子キリストであると信じるためであり、また、そう信じて、イエスの名によって命を得るためである。 |
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21章 |
一 此後イエス復テベリアの湖にて弟子等に己を現せり其現せること左の如し |
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一 この後、イエス復テベリヤの海邊にて己を弟子たちに現し給ふ、その現れ給ひしこと左のごとし。 |
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一 そののち、イエスはテベリヤの海べで、ご自身をまた弟子たちにあらわされた。そのあらわされた次第は、こうである。 |
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二 シモンペテロとデドモと云るトマス及ガリラヤのカナのナタナエルとゼベダイの子等また他の二人の弟子ともに在 |
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二 シモン・ペテロ、デドモと稱ふるトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの子ら及びほかの弟子二人もともに居りしに、 |
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二 シモン・ペテロが、デドモと呼ばれているトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの子らや、ほかのふたりの弟子たちと一緒にいた時のことである。 |
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三 シモンペテロ彼等に曰けるは我漁に往ん彼等いひけるは我儕も偕に往ん彼等いでゝ舟に登しが此夜は何の所獲も無りき |
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三 シモン・ペテロ『われ漁獵にゆく』と言へば、彼ら『われらも共に往かん』と言ひ、皆いでて舟に乘りしが、その夜は何をも得ざりき。 |
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三 シモン・ペテロは彼らに「わたしは漁に行くのだ」と言うと、彼らは「わたしたちも一緒に行こう」と言った。彼らは出て行って舟に乗った。しかし、その夜はなんの獲物もなかった。 |
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四 已に夜も明たるにイエス岸に立り然ど弟子等そのイエスなる事を知ず |
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四 夜明の頃イエス岸に立ち給ふに、弟子たち其のイエスなるを知らず。 |
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四 夜が明けたころ、イエスが岸に立っておられた。しかし弟子たちはそれがイエスだとは知らなかった。 |
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五 イエス彼等に曰けるは小子どもよ食物あるや彼等こたへけるは無 |
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五 イエス言ひ給ふ『子どもよ、獲物ありしか』彼ら『なし』と答ふ。 |
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五 イエスは彼らに言われた、「子たちよ、何か食べるものがあるか」。彼らは「ありません」と答えた。 |
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六 イエス彼等に曰けるは網を舟の右に撒ば所獲あらん遂に網をうつ魚おほきに因て曳擧ること能はず |
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六 イエス言ひたまふ『舟の右のかたに網をおろせ、然らば獲物あらん』乃ち網を下したるに、魚夥多しくして、網を曳き上ぐること能はざりしかば、 |
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六 すると、イエスは彼らに言われた、「舟の右の方に網をおろして見なさい。そうすれば、何かとれるだろう」。彼らは網をおろすと、魚が多くとれたので、それを引き上げることができなかった。 |
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七 是に於てイエスの愛せし所の彼弟子ペテロに曰けるは是主なりシモンペテロ主なりと聞て裸なりしが衣をつけ帶して湖に投入ぬ |
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七 イエスの愛し給ひし弟子、ペテロに言ふ『主なり』シモン・ペテロ『主なり』と聞きて、裸なりしを上衣をまとひて海に飛びいれり。 |
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七 イエスの愛しておられた弟子が、ペテロに「あれは主だ」と言った。シモン・ペテロは主であると聞いて、裸になっていたため、上着をまとって海にとびこんだ。 |
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八 他の弟子等は小舟にて魚の入たる網を曳て至れり蓋岸を距こと遠からず五十間許なりければ也 |
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八 他の弟子たちは陸を離るること遠からず、僅に五十間ばかりなりしかば、魚の入りたる網を小舟にて曳き來り、 |
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八 しかし、ほかの弟子たちは舟に乗ったまま、魚のはいっている網を引きながら帰って行った。陸からはあまり遠くない五十間ほどの所にいたからである。 |
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九 岸に着しに炭火と其上に載たる魚およびパンあるを見たり |
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九 陸に上りて見れば、炭火ありてその上に肴あり、又パンあり。 |
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九 彼らが陸に上って見ると、炭火がおこしてあって、その上に魚がのせてあり、またそこにパンがあった。 |
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十 イエス彼等に曰けるは今獲し所の魚を少し携來れ |
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一〇 イエス言ひ給ふ『なんぢらの今とりたる肴を少し持ちきたれ』 |
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一〇 イエスは彼らに言われた、「今とった魚を少し持ってきなさい」。 |
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十一 シモンペテロ舟にゆき網を岸に曳來しに其網の中に大なる魚百五十三尾いりたり如此おほかりけれど網は裂ざりき |
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一一 シモン・ペテロ舟に往きて網を陸に曳き上げしに百五十三尾の大なる魚滿ちたり、斯く多かりしが網は裂けざりき。 |
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一一 シモン・ペテロが行って、網を陸へ引き上げると、百五十三びきの大きな魚でいっぱいになっていた。そんなに多かったが、網はさけないでいた。 |
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十二 イエス彼等に曰けるは來て食せよ弟子たち敢て彼に爾は誰なると問ることをせず此は主なりと知ばなり |
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一二 イエス言ひ給ふ『きたりて食せよ』弟子たちその主なるを知れば『なんぢは誰ぞ』と敢て問ふ者もなし。 |
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一二 イエスは彼らに言われた、「さあ、朝の食事をしなさい」。弟子たちは、主であることがわかっていたので、だれも「あなたはどなたですか」と進んで尋ねる者がなかった。 |
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十三 イエス來てパンを取かれらに予ふ魚をも亦その如せり |
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一三 イエス進みてパンをとり彼らに與へ、肴をも然なし給ふ。 |
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一三 イエスはそこにきて、パンをとり彼らに与え、また魚も同じようにされた。 |
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十四 イエス死より甦りしのち己を弟子等に現せること是三次なり |
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一四 イエス死人の中より甦へりてのち、弟子たちに現れ給ひし事、これにて三度なり。 |
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一四 イエスが死人の中からよみがえったのち、弟子たちにあらわれたのは、これで既に三度目である。 |
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十五 偖かれら食して後イエス シモンペテロに曰けるはヨナの子シモンよ爾これらの者に過て我を愛するや彼いひけるは主よ然わが爾を愛することは爾知りイエス彼に曰けるは我羔を牧 |
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一五 斯て食したる後イエス、シモン・ペテロに言ひ給ふ『ヨハネの子シモンよ、汝この者どもに勝りて我を愛するか』ペテロいふ『主よ、然り、わが汝を愛する事は、なんぢ知り給ふ』イエス言ひ給ふ『わが羔羊を養へ』 |
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一五 彼らが食事をすませると、イエスはシモン・ペテロに言われた、「ヨハネの子シモンよ、あなたはこの人たちが愛する以上に、わたしを愛するか」。ペテロは言った、「主よ、そうです。わたしがあなたを愛することは、あなたがご存じです」。イエスは彼に「わたしの小羊を養いなさい」と言われた。 |
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十六 また二次かれに曰けるはヨナの子シモンよ我を愛する乎かれ曰けるは主よ然わが爾を愛することは爾知りイエス彼に曰けるは 我羊を牧 |
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一六 また二度いひ給ふ『ヨハネの子シモンよ、我を愛するか』ペテロ言ふ『主よ、然り、わが汝を愛する事は、なんぢ知り給ふ』イエス言ひ給ふ『わが羊を牧へ』 |
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一六 またもう一度彼に言われた、「ヨハネの子シモンよ、わたしを愛するか」。彼はイエスに言った、「主よ、そうです。わたしがあなたを愛することは、あなたがご存じです」。イエスは彼に言われた、「わたしの羊を飼いなさい」。 |
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十七 三次かれに曰けるはヨナの手シモンよ我を愛する乎ペテロ三次われを愛する乎と言れしは因て憂ふ斯て答けるは主しらざる所なし我なんぢを愛することは爾知りイエス彼に曰けるは我羊を牧 |
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一七 三度いひ給ふ『ヨハネの子シモンよ、我を愛するか』ペテロ三度『われを愛するか』と言ひ給ふを憂ひて言ふ『主よ、知りたまはぬ所なし、わが汝を愛する事は、なんぢ識りたまふ』イエス言ひ給ふ『わが羊をやしなへ。 |
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一七 イエスは三度目に言われた、「ヨハネの子シモンよ、わたしを愛するか」。ペテロは「わたしを愛するか」とイエスが三度も言われたので、心をいためてイエスに言った、「主よ、あなたはすべてをご存じです。わたしがあなたを愛していることは、おわかりになっています」。イエスは彼に言われた、「わたしの羊を養いなさい。 |
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十八 誠に實に爾に吿ん爾いとけなき時みづから帶し意は任せて遊行ぬ老ては手を伸て人爾を束り意に欲ざる所に曳至らん |
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一八 誠に誠に、なんぢに吿ぐ、なんぢ若かりし時は自ら帶して欲する處を歩めり、されど老いては手を伸べて他の人に帶せられ、汝の欲せぬ處に連れゆかれん』 |
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一八 よくよくあなたに言っておく。あなたが若かった時には、自分で帯をしめて、思いのままに歩きまわっていた。しかし年をとってからは、自分の手をのばすことになろう。そして、ほかの人があなたに帯を結びつけ、行きたくない所へ連れて行くであろう」。 |
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十九 如此いへるは其如何なる死にて~を榮んといふ事を示したるなり此を言て後又彼に曰けるは我に從へ |
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一九 是ペテロが如何なる死にて~の榮光を顯すかを示して言ひ給ひしなり。斯く言ひて後かれに言ひ給ふ『われに從へ』 |
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一九 これは、ペテロがどんな死に方で、神の栄光をあらわすかを示すために、お話しになったのである。こう話してから、「わたしに従ってきなさい」と言われた。 |
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二十 ペテロ反顧イエスの愛せし弟子の從へるを見この弟子は食する時イエスの懷に倚て主を賣す者は誰ぞやと問し弟子なり |
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二〇 ペテロ振反りてイエスの愛したまひし弟子の從ふを見る。これは曩に夕餐のとき御胸に倚りかかりて『主よ、汝をうる者は誰か』と問ひし弟子なり。 |
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二〇 ペテロはふり返ると、イエスの愛しておられた弟子がついて来るのを見た。この弟子は、あの夕食のときイエスの胸近くに寄りかかって、「主よ、あなたを裏切る者は、だれなのですか」と尋ねた人である。 |
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二一 ペテロ之を見てイエスに曰けるは主よ斯人いかに |
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二一 ペテロこの人を見てイエスに言ふ『主よ、この人は如何に』 |
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二一 ペテロはこの弟子を見て、イエスに言った、「主よ、この人はどうなのですか」。 |
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二二 イエス彼に曰けるは我もし彼が存て我來るを待を欲ば爾に何の與あらんや爾は我に從へ |
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二二 イエス言ひ給ふ『よしや我、かれが我の來るまで留るを欲すとも、汝になにの關係あらんや、汝は我に從へ』 |
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二二 イエスは彼に言われた、「たとい、わたしの来る時まで彼が生き残っていることを、わたしが望んだとしても、あなたにはなんの係わりがあるか。あなたは、わたしに従ってきなさい」。 |
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二三 是に於て此言兄弟の中に傳りて此弟子死ずと言り然どもイエス ペテロに彼は死ずと言しに非ず我もし彼が存へて我來るを待を欲ば爾に何の與あらん乎と言しなり |
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二三 爰に兄弟たちの中に、この弟子死なずと云ふ話つたはりたり。然れどイエスは死なずと言ひ給ひしにあらず『よしや我かれが我の來るまで留るを欲すとも、汝になにの關係あらんや』と言ひ給ひしなり。 |
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二三 こういうわけで、この弟子は死ぬことがないといううわさが、兄弟たちの間にひろまった。しかし、イエスは彼が死ぬことはないと言われたのではなく、ただ「たとい、わたしの来る時まで彼が生き残っていることを、わたしが望んだとしても、あなたにはなんの係わりがあるか」と言われただけである。 |
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二四 此等の事について證をなし且これを書しゝ者は其弟子なり我儕その證の眞なる事を知り |
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二四 これらの事につきて證をなし、又これを錄しし者は、この弟子なり、我等はその證の眞なるを知る。 |
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二四 これらの事についてあかしをし、またこれらの事を書いたのは、この弟子である。そして彼のあかしが真実であることを、わたしたちは知っている。 |
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二五 イエスの爲し事は此等の外になほ許多あり若これを一々しるしなば其書この世に載盡すこと能じと意ふ也アメン |
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二五 イエスの行ひ給ひし事は、この外なほ多し、もし一つ一つ錄さば、我おもふに世界もその錄すところの書を載するに耐へざらん。 |
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二五 イエスのなさったことは、このほかにまだ数多くある。もしいちいち書きつけるならば、世界もその書かれた文書を収めきれないであろうと思う。 |
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Office Murakami |