四つの福音書による一つのイエス物語300
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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300
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イエスを知らないとペテロ再び言う
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
14;69〜72 26;71〜75 22;58〜62 18;25〜27
第一四章六九〜七二節 第二六章七一〜七五節 第二二章五八〜六二節 第一八章二五〜二七節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬可傳iケ書第一四章
六九 その婢かれを見て傍に立るに又いひけるは此人もかの黨の一人なり
七十 ペテロまた肯はず少頃して傍に立るまたペテロに曰けるは爾誠に彼の黨の一人なり蓋爾はガリラヤの人なり其方言これに合り
七一 是に於てペテロ誓て我~の崇を受るとも爾曹が曰その人を我は識ざる也と曰しが
七二 此とき鷄二次鳴ければペテロ イエスの鷄二次なく前に三次我を識ずと曰んと言たまひし事を憶起し且これを思反して哭悲めり
馬太傳iケ書第二六章
七一 出て門口に至れる時また他の婢これを見て其處にをるに曰けるは此人もナザレのイエスと偕に在し
七二 ペテロまた肯はずして誓ふ我この人を知ずと
七三 暫くありて旁らに立たる者すみ近てペテロに曰けるは誠に爾もその黨の一人なり蓋なんぢの方言なんぢを顯せり
七四 此に於てペテロり且誓て我その人を知ずと曰しが頓て鷄鳴ぬ
七五 ペテロ イエスの鷄なかざる前なんぢ三次われを知ずといはんと云たまへる言を憶起し外に出て悲み哭り
路加傳iケ書第二二章
五八 頃刻して他の人も亦見て曰けるは爾も彼等の一人なりペテロ曰けるは人よ我は然ず
五九 約そ一時ほど過て復ほかの人力言けるは誠に此人も彼と偕に在し是ガリラヤの人なれば也
六十 ペテロ曰けるは人よ我なんぢの言ところを識ずと言も果ず忽ち鷄鳴ぬ
六一 主身を回てしペテロを見たまへり今日鷄なく前に三次われを識ずと言んと主の曰たまひし言をペテロ憶起し
六二 外へ出て痛く哭り
約翰傳iケ書第一八章
二五 シモンペテロ立て煖り居しが或人いひけるは爾も彼の弟子の一人ならず乎ペテロ承ずして然ずと曰り
二六 祭司の長の僕の中の一人すなはちペテロに耳を削れしの親戚いひけるは我なんぢが彼と偕に園に在しを見しに非ずや
二七 ペテロまた承はず頓て鷄なきぬ
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マルコ傳iケ書第一四章
六九 婢女かれを見て、また傍らに立つどもに『この人は、かの黨與なり』と言ひ出でしに、
 ペテロ重ねて肯はず。暫くしてまた傍らに立つどもペテロに言ふ『なんぢはに、かの黨與なり、汝もガリラヤ人なり』
七一 此の時ペテロ盟ひ、かつ誓ひて『われは汝らの言ふ其の人を知らず』と言ひ出づ。
七二 その折しも、また鷄鳴きぬ。ペテロ『にはとり二度なく前に、なんぢ三度われを否まん』とイエスの言ひ給ひし御言を思ひいだし、思ひ反して泣きたり。
マタイ傳iケ書第二六章
七一 かくて門まで出で往きたるとき他の婢女かれを見て、其處にをるどもに向ひて『この人はナザレ人イエスと偕にゐたり』と言へるに、
七二 重ねて肯はず契ひて『我はその人を知らず』といふ。
七三 暫くして其處に立つども近づきてペテロに言ふ『なんぢもにかの黨與なり、汝の國なんぢを表せり』
七四 爰にペテロ盟ひ、かつ契ひて『我その人を知らず』と言ひ出づるをりしも、鷄鳴をぬ。
七五 ペテロ『にはとり鳴く前に、なんぢ三度われを否まん』とイエスの言ひ給ひし御言を思ひ出し、外に出でて甚く泣けり。
ルカ傳iケ書第二二章
五八 暫くして他のペテロを見て言ふ『なんぢも彼の黨與なり』ペテロ言ふ『人よ、然らず』
五九 一時ばかりして又ほかの男、言ひ張りて言ふ『まさしく此の人も彼とともに在りき、是ガリラヤ人なり』
 ペテロ言ふ『人よ、我なんぢの言ふことを知らず』なほ言ひ終へぬに頓て鳴きぬ。
六一 主、振反りてペテロに目をとめ給ふ。ここにペテロ主の『今日にはとり鳴く前に、なんぢ三度われを否まん』と言ひ給ひし御言を憶ひいだし、
六二 外に出でて甚く泣けり。
ヨハネ傳iケ書第一八章
二五 シモンペテロ立ちて煖まり居たるに、人いふ『なんぢも彼が弟子の一人なるか』否みて言ふ『然らず』
二六 大祭司の僕の一人にて、ペテロに耳を斬り落されしの親族なるが言ふ『われ汝が園にて彼と偕なるを見しならずや』
二七 ペテロまた否む折しも鷄鳴きぬ。
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マルコによる福音書第一四章
六九 ところが、先の女中が彼を見て、そばに立っていた人々に、またもや「この人はあの仲間のひとりです」と言いだした。
七〇 ペテロは再びそれを打ち消した。しばらくして、そばに立っていた人たちがまたペテロに言った、「確かにあなたは彼らの仲間だ。あなたもガリラヤ人だから」。
七一 しかし、彼は、「あなたがたの話しているその人のことは何も知らない」と言い張って、激しく誓いはじめた。
七二 するとすぐ、にわとりが二度目に鳴いた。ペテロは、「にわとりが二度鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、そして思いかえして泣きつづけた。
マタイによる福音書第二六章
七一 そう言って入口の方に出て行くと、ほかの女中が彼を見て、そこにいる人々にむかって、「この人はナザレ人イエスと一緒だった」と言った。
七二 そこで彼は再びそれを打ち消して、「そんな人は知らない」と誓って言った。
七三 しばらくして、そこに立っていた人々が近寄ってきて、ペテロに言った、「確かにあなたも彼らの仲間だ。言葉づかいであなたのことがわかる」。
七四 彼は「その人のことは何も知らない」と言って、激しく誓いはじめた。するとすぐ鶏が鳴いた。
七五 ペテロは「鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、外に出て激しく泣いた。
ルカによる福音書第二二章
五八 しばらくして、ほかの人がペテロを見て言った、「あなたもあの仲間のひとりだ」。するとペテロは言った、「いや、それはちがう」。
五九 約一時間たってから、またほかの者が言い張った、「たしかにこの人もイエスと一緒だった。この人もガリラヤ人なのだから」。
六〇 ペテロは言った、「あなたの言っていることは、わたしにわからない」。すると、彼がまだ言い終らぬうちに、たちまち、鶏が鳴いた。
六一 主は振りむいてペテロを見つめられた。そのときペテロは、「きょう、鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われた主のお言葉を思い出した。
六二 そして外へ出て、激しく泣いた。
ヨハネによる福音書第一八章
二五 シモン・ペテロは、立って火にあたっていた。すると人々が彼に言った、「あなたも、あの人の弟子のひとりではないか」。彼はそれをうち消して、「いや、そうではない」と言った。
二六 大祭司の僕のひとりで、ペテロに耳を切りおとされた人の親族の者が言った、「あなたが園であの人と一緒にいるのを、わたしは見たではないか」。
二七 ペテロはまたそれを打ち消した。するとすぐに、鶏が鳴いた。
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