四つの福音書による一つのイエス物語295
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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295
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捕えられる
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
14;43〜52 26;47〜56 22;47〜53 18;1〜11
第一四章四三〜五二節 第二六章四七〜五六節 第二二章四七〜五三節 第一八章一〜一一節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬可傳iケ書第一四章
四三 斯いへる時たちに十二の一人なるユダ刃と棒とを携たる多の人と共に祭司の長學及び長老の所より來る
四四 イエスを賣かれらに號をなして曰けるは我が接吻するは其なり之を執て愼と曳去よ
四五 ち來りてイエスに近よりラビ、ラビと曰て接吻せり
四六 人手をイエスに措て執ふ
四七 傍に立るの一人刃を拔て祭司の長の僕を擊その耳を削り
四八 イエス答て彼等に曰けるは刃と棒とをもち盜賊を執る如くして我を執に來る乎
四九 われ日なんぢらと共に殿にてしに爾曹われを執ざりき然ど此は聖書に應せんが爲なり
五十 弟子みなイエスを離て奔去ぬ
五一 一少その身にた麻の夜具を蔽てイエスに從ひたりしが逮捕の等これを執ければ
五二 かれ麻の夜具をすて裸にて逃去り
馬太傳iケ書第二六章
四七 如此いへるとき十二の一人たるユダと棒とを持たる多の人と偕に祭司の長と民の長老の所より來る
四八 イエスを賣すかれらに號をなして曰けるは我が接吻するは夫なり之を執へよ
四九 直にイエスに來りラビ安かと曰て彼に接吻す
五十 イエス彼に曰けるは友よ何の爲に來るや遂に彼等すみ來り手をイエスに措て執へぬ
五一 イエスと偕に在しの一人手をのべて祭司の長の僕を擊その耳を削おとせり
五二 イエス彼に曰けるは爾のを故處によ凡てをとるにて亡ぶべし
五三 我いま十二軍餘の天使を吾父に請て受ること能はずと爾曹おもふ乎
五四 もし然せば如此あるべき事を錄し聖書に如何で應はん乎
五五 此時イエス人に曰けるはと棒とを持て盜賊を執ふる如して我を執にきたる乎われ日爾曹と偕に殿に坐して誨しに爾曹われを執ざりし
五六 然ど此の如なるは皆預言の錄たる所に應成せん爲なり遂に弟子等みなイエスを離れて逃去ぬ
路加傳iケ書第二二章
四七 如此いへるとき許多の人きたる又十二の一人なるユダと云る其に先ちてイエスに接吻せんと近よれり
四八 イエス曰けるはユダ爾は接吻をもて人の子を賣す乎
四九 その側に居たる者等事の及んとするを見て曰けるは主よ我刃をもて擊べき乎
五十 其中の一人祭司の長の僕を擊て其右の耳を削落せり
五一 イエス答て之を釋せと曰その耳にて醫したり
五一 イエス此に來し祭司の長殿司および長老等に曰けるは爾曹刃と棒とを持來り强盜に當が如する乎
五三 われ日に爾曹と偕に殿に在し時は我に手を措こと無りき然るに今は爾曹の時かつK暗の勢なり
約翰傳iケ書第一八章
一 イエス此事を言て後その弟子と偕に出てケデロンの河をその處にある園の中に弟子と偕に入ぬ
二 イエスを賣たるユダ此處を識りイエス屢その弟子と偕に此に集りたれば也
三 此時ユダ一隊の兵卒と下吏どもを祭司の長等およびパリサイの人よりうけ炬と提と兵を携て此に來れり
四 イエス事の己に及んとするを悉く知いで彼等に曰けるは誰を尋るか
五 彼等こたへけるはナザレのイエスなりイエス彼等に曰けるは我は其なりイエスを賣しユダ彼等と偕に立り
六 イエス彼等に對て我なりと曰たまへる時かれら退きて地にたり
七 イエス復彼らに誰を尋る乎と問たまひしかば彼等ナザレのイエス也と曰
八 イエス答けるは我すでに爾曹に我は其なりと曰り若われを尋るならば此輩を容て去しめよ
九 是イエス我に賜しの中一人だに亡るなしと云し言に應せん爲なり
十 時にシモンペテロを佩たりしが之を拔て祭司の長の僕を擊て其右の耳を削おとせり僕の名はマルコスと云
十一 イエス ペテロに曰けるは劒をよ父の我に賜し杯を我飮ざらん乎
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マルコ傳iケ書第一四章
四三 なは語りゐ給ふほどに、十二弟子の一人なるユダ、やがて近づき來る、祭司長者・長老らより遣されたる群衆、劒と棒とを持ちて之に伴ふ。
四四 イエスを賣るもの、預じめ合圖を示して言ふ『わが接吻するはそれなり、之を捕へて確と引きゆけ』
四五 斯て來りて直ちに御許に往き『ラビ』と言ひて接吻したれば、
四六 人イエスに手をかけて捕ふ。
四七 傍らに立つのひとり、劒を拔き、大祭司の僕を擊ちて、耳を切り落せり。
四八 イエス人に對ひて言ひ給ふ『なんぢら强盜にむかふ如く劒と棒とを持ち、我を捕へんとて出で來るか。
四九 我は日なんぢらと偕に宮にありてヘへたりしに、我を執へざりき、然れど是は聖書の言の成就せん爲なり』
 其のとき弟子みなイエスを棄てて逃げ去る。
五一 ある若、素肌に亞麻布を纏ひて、イエスに從ひたりしに、人これを捕へければ、
五二 亞麻布を棄て裸にて逃げ去れり。
マタイ傳iケ書第二六章
四七 なほ語り給ふほどに、よ、十二弟子の一人なるユダ來る、祭司長民の長老らより遣されたる大なる群衆、劍と棒とをもちて之に伴ふ。
四八 イエスを賣るもの預じめ合圖を示して言ふ『わが接吻するはそれなり、之を捕へよ』
四九 かくて直ちにイエスに近づき『ラビ、安かれ』といひて接吻したれば、
 イエス言ひたまふ『友よ何とて來る』このとき人すすみてイエスに手をかけて捕ふ。
五一 よ、イエスと偕にありしのひとり手をのべ、劍を拔きて、大祭司の僕をうちて、その耳を切り落せり。
五二 ここにイエス彼に言ひ給ふ『なんぢの劍をもとに收めよ、すべて劍をとるは劍にて亡ぶるなり。
五三 我わが父に請ひて十二軍に餘る御使を今あたへらるること能はずと思ふか。
五四 もし然せば斯くあるべく錄したる聖書はいかで成就すべき』
五五 この時イエス群衆に言ひ給ふ『なんぢら强盜に向ふごとく劍と捧とをもち、我を捕へんとて出で來るか。我は日宮に坐してヘへたりしに、汝ら我を捕へざりき。
五六 されど斯の如くなるは、みな預言たちの書の成就せん爲なり』爰に弟子たち皆イエスを棄てて逃げさりぬ。
ルカ傳iケ書第二二章
四七 なは語りゐ給ふとき、よ、群衆あらはれ、十二の一人なるユダ先だち來り、イエスに接吻せんとて近寄りたれば、
四八 イエス言ひ給ふ『ユダ、なんぢは接吻をもて人の子を賣るか』
四九 御側に居るども事の及ばんとするを見て言ふ『主よ、われら劒をもて擊つべきか』
 その中の一人、大祭司の僕を擊ちて、右の耳を切り落せり。
五一 イエス答へて言ひたまふ『之にてゆるせ』而して僕の耳に手をつけて醫し給ふ。
五二 かくて己に向ひて來れる祭司長宮守頭長老らに言ひ給ふ『なんぢら强盜に向ふごとく劒と棒とを持ちて出できたるか。
五三 我は日なんぢらと共に宮に居りしに我が上に手を伸べざりき。然れど今は汝らの時、また暗Kの權威なり』
ヨハネ傳iケ書第一八章
一 此等のことを言ひ終へて、イエス弟子たちと偕にケデロンの小川の彼方に出でたまふ。彼處に園あり、イエス弟子等とともども入り給ふ。
二 ここは弟子たちと屢あつまり給ふ處なれば、イエスを賣るユダもこの處を知れり。
三 斯てユダは一組の兵隊と祭司長パリサイ人等よりの下役どもとを受けて、炬火燈火を携へて此處にきたる。
四 イエス己に臨まんとする事をことごとく知り、進みいでて彼らに言ひたまふ『誰を尋ぬるか』
五 答ふ『ナザレのイエスを』イエス言ひたまふ『我はそれなり』イエスを賣るユダも彼らと共に立てり。
六 『我はそれなり』と言ひ給ひし時、かれら後退して地に倒れたり。
七 爰に再び『たれを尋ぬるか』と問ひ給へば『ナザレのイエスを』と言ふ。
八 イエス答へ給ふ『われは夫なりと旣にげたり、我を尋ぬるならば此の人の去るを容せ』
九 これに『なんぢの我に賜ひしの中より我一人をも失はず』と言ひ給ひし言の成就せん爲なり。
 シモンペテロ劍をもちたるが、之を拔き大祭司の僕を擊ちて、その右の耳を斬り落す、僕の名はマルコスと云ふ。
一一 イエス、ペテロに言ひたまふ『劍をに收めよ、父の我に賜ひたる酒杯は、われ飮まざらんや』
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マルコによる福音書第一四章
四三 そしてすぐ、イエスがまだ話しておられるうちに、十二弟子のひとりのユダが進みよってきた。また祭司長、律法学者、長老たちから送られた群衆も、剣と棒とを持って彼についてきた。
四四 イエスを裏切る者は、あらかじめ彼らに合図をしておいた、「わたしの接吻する者が、その人だ。その人をつかまえて、まちがいなく引っぱって行け」。
四五 彼は来るとすぐ、イエスに近寄り、「先生」と言って接吻した。
四六 人々はイエスに手をかけてつかまえた。
四七 すると、イエスのそばに立っていた者のひとりが、剣を抜いて大祭司の僕に切りかかり、その片耳を切り落した。
四八 イエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたは強盗にむかうように、剣や棒を持ってわたしを捕えにきたのか。
四九 わたしは毎日あなたがたと一緒に宮にいて教えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。しかし聖書の言葉は成就されねばならない」。
五〇 弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。
五一 ときに、ある若者が身に亜麻布をまとって、イエスのあとについて行ったが、人々が彼をつかまえようとしたので、
五二 その亜麻布を捨てて、裸で逃げて行った。
マタイによる福音書第二六章
四七 そして、イエスがまだ話しておられるうちに、そこに、十二弟子のひとりのユダがきた。また祭司長、民の長老たちから送られた大ぜいの群衆も、剣と棒とを持って彼についてきた。
四八 イエスを裏切った者が、あらかじめ彼らに、「わたしの接吻する者が、その人だ。その人をつかまえろ」と合図をしておいた。
四九 彼はすぐイエスに近寄り、「先生、いかがですか」と言って、イエスに接吻した。
五〇 しかし、イエスは彼に言われた、「友よ、なんのためにきたのか」。このとき、人々は進み寄って、イエスに手をかけてつかまえた。
五一 すると、イエスと一緒にいた者のひとりが、手を伸ばして剣を抜き、そして大祭司の僕に切りかかって、その片耳を切り落した。
五二 そこで、イエスは彼に言われた、「あなたの剣をもとの所におさめなさい。剣をとる者はみな、剣で滅びる。
五三 それとも、わたしが父に願って、天の使たちを十二軍団以上も、今つかわしていただくことができないと、あなたは思うのか。
五四 しかし、それでは、こうならねばならないと書いてある聖書の言葉は、どうして成就されようか」。
五五 そのとき、イエスは群衆に言われた、「あなたがたは強盗にむかうように、剣や棒を持ってわたしを捕えにきたのか。わたしは毎日、宮ですわって教えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。
五六 しかし、すべてこうなったのは、預言者たちの書いたことが、成就するためである」。そのとき、弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。
ルカによる福音書第二二章
四七 イエスがまだそう言っておられるうちに、そこに群衆が現れ、十二弟子のひとりでユダという者が先頭に立って、イエスに接吻しようとして近づいてきた。
四八 そこでイエスは言われた、「ユダ、あなたは接吻をもって人の子を裏切るのか」。
四九 イエスのそばにいた人たちは、事のなりゆきを見て、「主よ、つるぎで切りつけてやりましょうか」と言って、
五〇 そのうちのひとりが、祭司長の僕に切りつけ、その右の耳を切り落した。
五一 イエスはこれに対して言われた、「それだけでやめなさい」。そして、その僕の耳に手を触れて、おいやしになった。
五二 それから、自分にむかって来る祭司長、宮守がしら、長老たちに対して言われた、「あなたがたは、強盗にむかうように剣や棒を持って出てきたのか。
五三 毎日あなたがたと一緒に宮にいた時には、わたしに手をかけなかった。だが、今はあなたがたの時、また、やみの支配の時である」。
ヨハネによる福音書第一八章
一 イエスはこれらのことを語り終えて、弟子たちと一緒にケデロンの谷の向こうへ行かれた。そこには園があって、イエスは弟子たちと一緒にその中にはいられた。
二 イエスを裏切ったユダは、その所をよく知っていた。イエスと弟子たちとがたびたびそこで集まったことがあるからである。
三 さてユダは、一隊の兵卒と祭司長やパリサイ人たちの送った下役どもを引き連れ、たいまつやあかりや武器を持って、そこへやってきた。
四 しかしイエスは、自分の身に起ろうとすることをことごとく承知しておられ、進み出て彼らに言われた、「だれを捜しているのか」。
五 彼らは「ナザレのイエスを」と答えた。イエスは彼らに言われた、「わたしが、それである」。イエスを裏切ったユダも、彼らと一緒に立っていた。
六 イエスが彼らに「わたしが、それである」と言われたとき、彼らはうしろに引きさがって地に倒れた。
七 そこでまた彼らに、「だれを捜しているのか」とお尋ねになると、彼らは「ナザレのイエスを」と言った。
八 イエスは答えられた、「わたしがそれであると、言ったではないか。わたしを捜しているのなら、この人たちを去らせてもらいたい」。
九 それは、「あなたが与えて下さった人たちの中のひとりも、わたしは失わなかった」とイエスの言われた言葉が、成就するためである。
一〇 シモン・ペテロは剣を持っていたが、それを抜いて、大祭司の僕に切りかかり、その右の耳を切り落した。その僕の名はマルコスであった。
一一 すると、イエスはペテロに言われた、「剣をさやに納めなさい。父がわたしに下さった杯は、飲むべきではないか」。
Office Murakami