四つの福音書による一つのイエス物語266
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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266
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イエスを捕え殺そうと祭司長たち謀る
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
14;1〜2 26;1〜5 22;1〜2 11;45〜57
第一四章一〜二節 第二六章一〜五節 第二二章一〜二節 第一一章四五〜五七節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬可傳iケ書第一四章
一 さて逾越ち除酵の二日前に祭司の長と學たち詭計を以てイエスを執へ殺さんとし
二 曰けるは祭の日には爲べからず恐くは民の中に亂起らん
馬太傳iケ書第二六章
一 イエスこのの言を言竟りて其弟子に曰けるは
二 二日のち逾越節なるは爾曹が知ところ也それ人の子は十字架に釘られん爲に付さるべし
三 此とき祭司の長および民の長老等カヤパと云る祭司の長の邸の庭に集り
四 詭計をもてイエスを執へ殺さんと共に謀いひけるは
五 祭の日には行べからず恐くは民の中に亂おこらん
路加傳iケ書第二二章
一 逾越と云る除酵近けり
二 祭司の長學たち如何してかイエスを殺さんと窺ふ但民を畏たり
約翰傳iケ書第一一章
四五 マリアと偕に來しユダヤ人イエスの行し事を見て多く彼を信ぜり
四六 然ども其中にパリサイの人に往てイエスの行し事をあり
四七 是に於て祭司の長等とパリサイの人と議員を召集めて曰けるは我如何すべき乎この人多の奇跡を行なり
四八 もし彼を此まに棄置ば人みな彼を信ぜん然ばロマの人きたりて我の地をも民をも奪べし
四九 其中の一人にて此歲の祭司の長なるカヤパと云る彼等に曰けるは爾曹何をも知ず
五十 又民の爲に一人死て擧國ほろびざるは我uたる事をも思ざる也
五一 此言は己より出しに非ず此歲の祭司の長なるによりイエスの斯民の爲に死ることを預言せるなり
五二 特に斯民の爲のみならず散たる~の子民等をも一に集んが爲なり
五三 この日よりして彼等イエスを殺さんと共に議る
五四 是故にイエス此より顯にユダヤ人の中を行かず其處を去て野に近き所なるエフライムといふ邑に往て弟子と共に留れり
五五 ユダヤ人の逾越のちかづきければ人己を潔んが爲に逾越のの前にク間よりエルサレムに上り
五六 イエスを尋ね殿に立て相互に曰けるは如何に意や彼は筵に來ざる乎
五七 祭司の長等とパリサイの人と已に令を出して若イエスの所在をしる人あらばべしと云こは彼を執んとする也
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マルコ傳iケ書第一四章
一 さて過越と除酵との祭の二日前となりぬ。祭司長ら詭計をもてイエスを捕へ、かつ殺さんと企てて言ふ、
二 『祭の間は爲すべからず、恐らくは民の亂あるべし』
マタイ傳iケ書第二六章
一 イエスこれらの言をみな語りをへて、弟子たちに言ひ給ふ、
二 『なんぢらの知るごとく、二日の後は、過越の祭なり、人の子は十字架につけられん爲に賣らるべし』
三 そのとき祭司長民の長老ら、カヤパといふ大祭司の中庭に集り、
四 詭計をもてイエスを捕へ、かつ殺さんと相議りたれど、
五 又いふ『まつりの間は爲すべからず、恐らくは民の中に亂起らん』
ルカ傳iケ書第二二章
一 さて過越といふ除酵祭、近づけり。
二 祭司長。學らイエスを殺さんとし、その手段いかにと求む、民を懼れたればなり。
ヨハネ傳iケ書第一一章
四五 斯てマリヤの許に來りて、イエスの爲し給ひし事を見たる多くのユダヤ人、かれを信じたりしが、
四六 或はパリサイ人に往きて、イエスの爲し給ひし事をげたり。
四七 ここに祭司長。パリサイ人ら議會を開きて言ふ『われら如何に爲すべきか、此の人おほくの徵を行ふなり。
四八 もし彼をこのまま捨ておかば、人みな彼を信ぜん、而してロマ人きたりて、我らの土地と國人とを奪はん』
四九 その中の一人にて此の年の大祭司なるカヤパ言ふ『なんぢら何をも知らず。
 ひとりの人、民のために死にて、國人すべての滅びぬは、汝らのuなるを思はぬなり』
五一 これは己より云へるに非ず、この年の大祭司なれば、イエスの國人のため、
五二 又ただに國人の爲のみならず、散りたる~の子らを一つに集めん爲に死に給ふことを預言したるなり。
五三 彼等この日よりイエスを殺さんと議れり。
五四 されば此の後イエス顯にユダヤ人のなかをみ給はず、此處を去りて荒野にちかき處なるエフライムといふ町に往き、弟子たちと偕に其處に留りたまふ。
五五 ユダヤ人の過越の祭近づきたれば、多くの人身を潔めんとて、祭のまへに田舍よりエルサレムに上れり。
五六 彼らイエスをたづね、宮に立ちて互に言ふ『なんぢら如何に思ふか、彼は祭に來らぬか』
五七 祭司長パリサイ人らは、イエスを捕へんとて、その在處を知るあらば、げ出づべく預て命令したりしなり。
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マルコによる福音書第一四章
一 さて、過越と除酵との祭の二日前になった。祭司長たちや律法学者たちは、策略をもってイエスを捕えたうえ、なんとかして殺そうと計っていた。
二 彼らは、「祭の間はいけない。民衆が騒ぎを起すかも知れない」と言っていた。
マタイによる福音書第二六章
一 イエスはこれらの言葉をすべて語り終えてから、弟子たちに言われた。
二 「あなたがたが知っているとおり、ふつかの後には過越の祭になるが、人の子は十字架につけられるために引き渡される」。
三 そのとき、祭司長たちや民の長老たちが、カヤパという大祭司の中庭に集まり、
四 策略をもってイエスを捕えて殺そうと相談した。
五 しかし彼らは言った、「祭の間はいけない。民衆の中に騒ぎが起るかも知れない」。
ルカによる福音書第二二章
一 さて、過越といわれている除酵祭が近づいた。
二 祭司長たちや律法学者たちは、どうかしてイエスを殺そうと計っていた。民衆を恐れていたからである。
ヨハネによる福音書第一一章
四五 マリヤのところにきて、イエスのなさったことを見た多くのユダヤ人たちは、イエスを信じた。
四六 しかし、そのうちの数人がパリサイ人たちのところに行って、イエスのされたことを告げた。
四七 そこで、祭司長たちとパリサイ人たちとは、議会を召集して言った、「この人が多くのしるしを行っているのに、お互は何をしているのだ。
四八 もしこのままにしておけば、みんなが彼を信じるようになるだろう。そのうえ、ローマ人がやってきて、わたしたちの土地も人民も奪ってしまうであろう」。
四九 彼らのうちのひとりで、その年の大祭司であったカヤパが、彼らに言った、「あなたがたは、何もわかっていないし、
五〇 ひとりの人が人民に代って死んで、全国民が滅びないようになるのがわたしたちにとって得だということを、考えてもいない」。
五一 このことは彼が自分から言ったのではない。彼はこの年の大祭司であったので、預言をして、イエスが国民のために、
五二 ただ国民のためだけではなく、また散在している神の子らを一つに集めるために、死ぬことになっていると、言ったのである。
五三 彼らはこの日からイエスを殺そうと相談した。
五四 そのためイエスは、もはや公然とユダヤ人の間を歩かないで、そこを出て、荒野に近い地方のエフライムという町に行かれ、そこに弟子たちと一緒に滞在しておられた。
五五 さて、ユダヤ人の過越の祭が近づいたので、多くの人々は身をきよめるために、祭の前に、地方からエルサレムへ上った。
五六 人々はイエスを捜し求め、宮の庭に立って互に言った、「あなたがたはどう思うか。イエスはこの祭にこないのだろうか」。
五七 祭司長たちとパリサイ人たちとは、イエスを捕えようとして、そのいどころを知っている者があれば申し出よ、という指令を出していた。
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