四つの福音書による一つのイエス物語236
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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236
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大いなる宴に招いた客の譬を語る
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
22;1〜14 14;15〜24
第二二章一〜一四節 第一四章一五〜二四節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬太傳iケ書第二二章
一 イエス彼等に答てまた譬を語りけるは
二 天國は或王その子の爲に婚筵を設るが如し
三 婚筵に請おけるを迎ん爲に僕たちを遣しかど彼等きたることを好まず
四 又ほかの僕を遣さんとして曰けるは我が筵すでに備れり我が牛また肥畜をも宰りて盡く備りたれば婚筵に來れと請たるに言
五 然ども彼等かへりみずして去ぬ其一人は己の田にゆき一人は己の貿易に往り
六 他の等はその僕を執へ辱しめて殺せり
七 王これを聞て怒り軍勢を遣して其殺せるを亡し又その邑を燒たり
八 是に於てその僕等に曰けるは婚筵すでに備れども請たるは客となるに堪ざるなれば
九 衢に往て遇ほどのを婚筵に請け
十 その僕途に出て善をも惡者をも遇ほどのを悉く集ければ婚筵の客充滿す
十一 王客を見んとて來りけるにに一人の禮服を着ざるあるを見て
十二 之に曰けるは友よ如何なれば禮服を着ずして此處に來る乎かれ默然たり
十三 遂に王僕に曰けるは彼の手足を縛りて外の幽暗に投いだせ基處にて哀哭また切齒すること有ん
十四 それ召る者は多しと雖も選るゝ者は少なし
路加傳iケ書第一四章
十五 同に食せるの一人之を聞てイエスに曰けるは~の國に食するなり
十六 イエス彼に曰けるは或人おほいなる筵を設て多賓を請けり
十七 筵のとき僕を基請たるに遣して百物はや備たれば來るべしと言せけるに
十八 彼等みな同く辭ぬ其始のかれに曰けるは我田地を買たれば往てざるを得ず顧くは我を允し給へ
十九 又一人のいひけるは我五の牛を買たれば之を試むる爲に往ん願くは我を允し給へ
二十 又一人のいひけるは我妻を娶たり是故に往ことを得ざる也
二一 其僕かへりて此事を主人にければ主人怒て其僕に曰けるは速かに邑の衢巷に往て貧者癈疾跛者瞽者などを此に引來れ
二二 僕曰けるは主よ命の如く行り然ざあまりの座あり
二三 主人僕に曰けるは道路や藩籬の邊にゆき强て人を引來り我家に盈しめよ
二四 我なんぢらにん彼まねきたる人は一人だに我餐をなし
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マタイ傳iケ書第二二章
一 イエスまた譬をもて答へて言ひ給ふ、
二 『天國は己が子のために婚筵を設くる王のごとし。
三 婚筵に招きおきたる人を迎へんとて僕どもを遣ししに、來るを肯はず。
四 復ほかの僕どもを遣すとて言ふ「招きたる人げよ、よ、晝餐は旣に備りたり。我が牛も肥えたる畜も屠られて、凡ての物備りたれば婚筵に來れと」
五 然るに人顧みずして、或は己が畑に、或は己が商賣に往けり。
六 また他のは僕どもを執へて、辱しめ、かつ殺したれば、
七 王、怒りて軍勢を遣し、かの兇行を滅して、其の町を燒きたり。
八 斯て僕どもに言ふ「婚筵は旣に備りたれど、招きたるどもは相應しからず。
九 然れば汝ら街に往きて遇ふほどのを婚筵に招け」
 僕ども途に出でて善きも惡しきも遇ふほどのをみな集めたれば、婚禮の席は客にて滿てり。
一一 王、客を見んとて入り來り、一人の禮服をけぬあるを見て、
一二 之に言ふ「友よ、如何なれば禮服をけずして此處に入りたるか」かれ默しゐたり。
一三 ここに王、侍らに言ふ「その手足を縛りて外の暗Kに投げいだせ、其處にて哀哭切齒することあらん」
一四 それ招かるるは多かれど、選ばるるは少し』
ルカ傳iケ書第一四章
一五 同席のの一人これらの事を聞きてイエスに言ふ『おほよそ~の國にて食事するは幸なり』
一六 之に言ひたまふ『或人、盛なる夕餐を設けて、多くの人を招く。
一七 夕餐の時いたりて、招きおきたるの許に僕を遣して「來れ、旣に備りたり」と言はしめたるに、
一八 皆ひとしく辭りはじむ。初のいふ「われ田地を買へり、往きて見ざるを得ず。請ふ、許されんことを」
一九 他のいふ「われ五の牛を買へり、之を驗すために往くなり。請ふ、許されんことを」
 また他のいふ「われ妻を娶れり、此の故に往くこと能はず」
二一 僕かヘりて此等の事をその主人にぐ、家主いかりて僕に言ふ「とく町の大路と小路とに往きて、貪しき者・不具者・盲人などを此處に連れきたれ」
二二 僕いふ「主よ、仰のごとく爲したれど、尙ほ餘の席あり」
二三 主人、僕に言ふ「道や籬の邊にゆき、人を强ひて連れきたり、我が家に充たしめよ。
二四 われ汝らにぐ、かの招きおきたるのうち一人だに、我が夕餐を味ひ得るなし』
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マタイによる福音書第二二章
一 イエスはまた、譬で彼らに語って言われた、
二 「天国は、ひとりの王がその王子のために、婚宴を催すようなものである。
三 王はその僕たちをつかわして、この婚宴に招かれていた人たちを呼ばせたが、その人たちはこようとはしなかった。
四 そこでまた、ほかの僕たちをつかわして言った、『招かれた人たちに言いなさい。食事の用意ができました。牛も肥えた獣もほふられて、すべての用意ができました。さあ、婚宴においでください』。
五 しかし、彼らは知らぬ顔をして、ひとりは自分の畑に、ひとりは自分の商売に出て行き、
六 またほかの人々は、この僕たちをつかまえて侮辱を加えた上、殺してしまった。
七 そこで王は立腹し、軍隊を送ってそれらの人殺しどもを滅ぼし、その町を焼き払った。
八 それから僕たちに言った、『婚宴の用意はできているが、招かれていたのは、ふさわしくない人々であった。
九 だから、町の大通りに出て行って、出会った人はだれでも婚宴に連れてきなさい』。
一〇 そこで、僕たちは道に出て行って、出会う人は、悪人でも善人でもみな集めてきたので、婚宴の席は客でいっぱいになった。
一一 王は客を迎えようとしてはいってきたが、そこに礼服をつけていないひとりの人を見て、
一二 彼に言った、『友よ、どうしてあなたは礼服をつけないで、ここにはいってきたのですか』。しかし、彼は黙っていた。
一三 そこで、王はそばの者たちに言った、『この者の手足をしばって、外の暗やみにほうり出せ。そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう』。
一四 招かれる者は多いが、選ばれる者は少ない」。
ルカによる福音書第一四章
一五 列席者のひとりがこれを聞いてイエスに「神の国で食事をする人は、さいわいです」と言った。
一六 そこでイエスが言われた、「ある人が盛大な晩餐会を催して、大ぜいの人を招いた。
一七 晩餐の時刻になったので、招いておいた人たちのもとに僕を送って、『さあ、おいでください。もう準備ができましたから』と言わせた。
一八 ところが、みんな一様に断りはじめた。最初の人は、『わたしは土地を買いましたので、行って見なければなりません。どうぞ、おゆるしください』と言った。
一九 ほかの人は、『わたしは五対の牛を買いましたので、それをしらべに行くところです。どうぞ、おゆるしください』、
二〇 もうひとりの人は、『わたしは妻をめとりましたので、参ることができません』と言った。
二一 僕は帰ってきて、以上の事を主人に報告した。すると家の主人はおこって僕に言った、『いますぐに、町の大通りや小道へ行って、貧しい人、体の不自由な人、目の見えない人、足の悪い人などを、ここへ連れてきなさい』。
二二 僕は言った、『ご主人様、仰せのとおりにいたしましたが、まだ席がございます』。
二三 主人が僕に言った、『道やかきねのあたりに出て行って、この家がいっぱいになるように、人々を無理やりにひっぱってきなさい。
二四 あなたがたに言って置くが、招かれた人で、わたしの晩餐にあずかる者はひとりもないであろう』」。
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