四つの福音書による一つのイエス物語223
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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223
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姦淫の女を許す
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
8;1〜11
第八章一〜一一節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
約翰傳iケ書第八章
一 イエス橄欖山に往り
二 昧爽また聖殿に入けるが民みな彼に來ければ坐て彼等を
三 爰に姦淫を爲るとき執られし婦ありけるが學とパリサイの人これをイエスの所に曳來り群集の中に置いひけるは
四 師よ此婦は奸淫を爲をる時そのま執られLなり
五 此の如きを石にて擊殺すべしとモセ律法の中に命じたり汝は如何に言や
六 如此いへるはイエスを試て訟の由を引出さんと欲るなりイエス身を屈め指にて地に畵り
七 彼等が切に問によりイエス起て之に曰けるは爾曹のうち罪なきまづ彼を石にて擊べしと曰
八 また身を屈て地に畵り
九 彼等これを聞て其良心に責られ老をはじめ少まで一に出往たイエス一人のこる婦は集の中に立り
十 イエス起て婦に曰けるは婦よ爾を訟しは何處へ往しや爾の罪を定るなきか乎
十一 婦曰けるは主よ誰もなしイエス彼に曰けるは我も爾の罪を定ず往て再び罪を犯す勿れ
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
ヨハネ傳iケ書第八章
一 イエス、オリブ山にゆき給ふ。
二 夜明ごろ、また宮に入りしに、民みな御許に來りたれば、坐してヘへ給ふ。
三 爰に學者・パリサイ人ら、姦淫のとき捕へられたる女を連れきたり、眞中に立ててイエスに言ふ、
四 『師よ、この女は姦淫のをり、そのまま捕へられたるなり。
五 モセは律法に斯るを石にて擊つべき事を我らに命じたるが、汝は如何に言ふか』
六 斯く云へるはイエスを試みて訴ふる種を得んとてなり。イエス身を屈め、指にて地に物書き給ふ。
七 かれら問ひて止まざれば、イエス身を起して「なんぢらの中、罪なきまづ石を擲て』と言ひ、
八 また身を屈めて地に物書きたまふ。
九 彼等これを聞きて良心に責められ、老人をはじめ若きまで一人一人いでゆき、唯イエスと中に立てる女とのみ遺れり。
 イエス身を起して、女のほかに誰も居らぬを見て言ひ給ふ『をんなよ、汝を訴へたるどもは何處にをるぞ、汝を罪するなきか』
一一 女いふ『主よ、誰もなし』イエス言ひ給ふ『われも汝を罪せじ、往け、この後ふたたび罪を犯すな』
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
ヨハネによる福音書第八章
一 イエスはオリブ山に行かれた。
二 朝早くまた宮にはいられると、人々が皆みもとに集まってきたので、イエスはすわって彼らを教えておられた。
三 すると、律法学者たちやパリサイ人たちが、姦淫をしている時につかまえられた女をひっぱってきて、中に立たせた上、イエスに言った、
四 「先生、この女は姦淫の場でつかまえられました。
五 モーセは律法の中で、こういう女を石で打ち殺せと命じましたが、あなたはどう思いますか」。
六 彼らがそう言ったのは、イエスをためして、訴える口実を得るためであった。しかし、イエスは身をかがめて、指で地面に何か書いておられた。
七 彼らが問い続けるので、イエスは身を起して彼らに言われた、「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」。
八 そしてまた身をかがめて、地面に物を書きつづけられた。
九 これを聞くと、彼らは年寄から始めて、ひとりびとり出て行き、ついに、イエスだけになり、女は中にいたまま残された。
一〇 そこでイエスは身を起して女に言われた、「女よ、みんなはどこにいるか。あなたを罰する者はなかったのか」。
一一 女は言った、「主よ、だれもございません」。イエスは言われた、「わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように」。〕
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