四つの福音書による一つのイエス物語203
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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203
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マルタとマリアの兄弟ラザロ死ぬ
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
11;1〜16
第一一章一〜一六節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
約翰傳iケ書第一一章
一 に病ありラザロと云てベタニヤの人なりベタニヤはマリアと某マレタの住る村なり
二 マリアはに主に香膏をぬり己の頭の髮をもて主の足を拭ひし人にて此病るラザロは彼が兄弟なり
三 是故にその妹イエスの所に主の愛する病りと言遣せり
四 イエス之を聞て曰けるは此は死る病に非ず~の榮の爲なり~の子をして之に因て榮を得しめんが爲なり
五 夫マルタと其妹およびラザロはイエスの愛する所のなり
六 是故にイエスその病るを聞て此處に二日とまり
七 其のち弟子に曰けるは我またユダヤに往べし
八 弟子いひけるはラビ ユダヤ人は近來も石をもて爾を擊んとせしに復かしこに往たまふ乎
九 イエス答けるは一日の中に十二時あるに非ずや人もし日間あるかばくことなし蓋この世の光を見に因てなり
十 また人もし夜あるかばくべし蓋光その人に無が故なり
十一 イエス如此いひて後弟子に曰けるは我の友ラザロ寢たり我かれを醒さん爲に往べし
十二 弟子いひけるは主よ彼もし寢しならば愈ん
十三 イエスは彼の死しを言るなれど弟子等は寢て臥ることを言るならんと意り
十四 是故にイエス明かに彼等にて曰けるはラザロは死り
十五 爾曹をして信ぜしむる爲に我かしこに在ざりしを喜ぶ然どいま彼處に往べし
十六 デドモと稱るトマス他の弟子等に曰けるは我も亦ゆきて彼と偕に死べし
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
ヨハネ傳iケ書第一一章
一 爰に病めるあり、ラザロと云ふ、マリヤとその妹マルタとの村ベタニヤの人なり。
二 此のマリヤは主に香油をぬり、頭にて御足を拭ひしにして、病めるラザロはその兄弟なり。
三 妹ら人をイエスに遣して『主、よ、なんぢの愛し給ふもの病めり』と言はしむ。
四 之を聞きてイエス言ひ給ふ『この病は死に至らず、~の榮光のため、~の子のこれに由りて榮光を受けんためなり』
五 イエスはマルタと、その妹と、ラザロとを愛し給へり。
六 ラザロの病みたるを聞きて、その居給ひし處になほ二日留り、
七 而してのち弟子たちに言ひ給ふ『われら復ユダヤに往くべし』
八 弟子たち言ふ『ラビ、この程もユダヤ人、なんぢを石にて擊たんとせしに、復かしこに往き給ふか』
九 イエス答へたまふ『一日に十二時あるならずや、人もし晝あるかば、此の世の光を見るゆゑにくことなし。
 夜あるかば、光その人になき故にくなり』
一一 かく言ひて復その後いひ給ふ『われらの友ラザロ眠れり、されど我よび起さん爲に往くなり』
一二 弟子たち言ふ『主よ、眠れるならばゆべし』
一三 イエスは彼が死にたることを言ひ給ひしなれど、弟子たちは寢ねて眠れるを言ひ給ふと思へるなり。
一四 爰にイエス明白に言ひ給ふ『ラザロは死にたり。
一五 我かしこに居らざりし事を汝等のために喜ぶ、汝等をして信ぜしめんとてなり。然れど我ら今その許に往くべし』
一六 デドモと稱ふるトマス、他の弟子たちに言ふ『われらも往きて彼と共に死ぬべし』
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
ヨハネによる福音書第一一章
一 さて、ひとりの病人がいた。ラザロといい、マリヤとその姉妹マルタの村ベタニヤの人であった。
二 このマリヤは主に香油をぬり、自分の髪の毛で、主の足をふいた女であって、病気であったのは、彼女の兄弟ラザロであった。
三 姉妹たちは人をイエスのもとにつかわして、「主よ、ただ今、あなたが愛しておられる者が病気をしています」と言わせた。
四 イエスはそれを聞いて言われた、「この病気は死ぬほどのものではない。それは神の栄光のため、また、神の子がそれによって栄光を受けるためのものである」。
五 イエスは、マルタとその姉妹とラザロとを愛しておられた。
六 ラザロが病気であることを聞いてから、なおふつか、そのおられた所に滞在された。
七 それから弟子たちに、「もう一度ユダヤに行こう」と言われた。
八 弟子たちは言った、「先生、ユダヤ人らが、さきほどもあなたを石で殺そうとしていましたのに、またそこに行かれるのですか」。
九 イエスは答えられた、「一日には十二時間あるではないか。昼間あるけば、人はつまずくことはない。この世の光を見ているからである。
一〇 しかし、夜あるけば、つまずく。その人のうちに、光がないからである」。
一一 そう言われたが、それからまた、彼らに言われた、「わたしたちの友ラザロが眠っている。わたしは彼を起しに行く」。
一二 すると弟子たちは言った、「主よ、眠っているのでしたら、助かるでしょう」。
一三 イエスはラザロが死んだことを言われたのであるが、弟子たちは、眠って休んでいることをさして言われたのだと思った。
一四 するとイエスは、あからさまに彼らに言われた、「ラザロは死んだのだ。
一五 そして、わたしがそこにいあわせなかったことを、あなたがたのために喜ぶ。それは、あなたがたが信じるようになるためである。では、彼のところに行こう」。
一六 するとデドモと呼ばれているトマスが、仲間の弟子たちに言った、「わたしたちも行って、先生と一緒に死のうではないか」。
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