四つの福音書による一つのイエス物語197
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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197
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葡萄畑に雇われた人たちの譬を語る
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
20;1〜16
第二〇章一〜一六節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬太傳iケ書第二〇章
一 それ天國は朝はやく出て葡萄園に工人を雇ふ主人の如し
二 工人には一日に銀一枚を予んと約束をなし彼等を葡萄園に遣せり
三 また九時ごろ出て街に徒く立るを見て
四 爾曹も葡萄園にゆけ相當の價を予んと彼等に曰ければ則ち往り
五 また十二時と三時ごろ出て前の如く行り
六 五時ごろ出て又ほかの立るに遇て曰けるは何ゆへ終日こに徒く立や
七 之に答て曰けるは我を雇ふなきに因てなり彼等に曰けるは爾曹も葡萄園にゆけ相當の價を得べし
八 日暮るとき葡萄園の主人その家宰に曰けるは勞力たる等を呼て後に雇へるを始とし先のにまで價を給へよ
九 五時ごろに雇はれしども來りて銀一枚づを受たり
十 先のども來りて我は多く受るならんと意ひしに亦銀一枚づを受
十一 これを受て主人を怨つぶやきけるは
十二 この後至の勞力たるは一時ばかりなるに終日くるしみを任あつさに當る我と均しく之をなせり
十三 主人その一人に答て曰けるは友よ我なんぢに不義をせず爾と銀一枚の約束をなしたるに非ずや
十四 爾のものを取て往われ亦この後至にも爾の如く予ふべし
十五 我物を以て我おもふ如く行は宜らず乎わが善に因て爾の目あしき乎
十六 此の如く後のは先に先の者は後になるべし夫よばるゝ者は多しと雖も選るゝ者は少なし
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マタイ傳iケ書第二〇章
一 天國は勞動人を葡萄園に雇ふために、朝早く出でたる主人のごとし。
二 一日、一デナリの約束をなして、勞動人どもを葡萄園に遣す。
三 また九時ごろ出でて市場に空しく立つどもを見て
四 「なんぢらも葡萄園に往け、相當のものを與へん」といへば、彼らも往く。
五 十二時頃と三時頃とに復いでて前のごとくす。
六 五時頃また出でしに、なほ立つ等のあるを見ていふ「何ゆゑ終日ここに空しく立つか」
七 かれら言ふ「たれも我らを雇はぬ故なり」主人いふ「なんぢらも葡萄園に往け」
八 夕になりて葡萄園の主人その家司に言ふ「勞動人を呼びて、後のより始め先のにまで賃銀をはらへ」
九 斯て五時ごろに雇はれしもの來りて、おのおの一デナリを受く。
 先のきたりて、多く受くるならんと思ひしに、之も亦おのおの一デナリを受く。
一一 受けしとき、家主にむかひきて言ふ、
一二 「この後のどもは僅に一時間はたらきたるに、汝は一日の勞と暑さとを忍びたる我らと均しく、之を遇へり」
一三 主人こたへて其の一人に言ふ「友よ、我なんぢに不正をなさず、汝は我と一デナリの約束をせしにあらずや。
一四 己が物を取りて往け、この後のに汝とひとしく與ふるは、我が意なり。
一五 わが物を我が意のままに爲るは可からずや、我よきが故に汝の目あしきか」
一六 斯のごとく後なるは先に、先なるは後になるべし』
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マタイによる福音書第二〇章
一 天国は、ある家の主人が、自分のぶどう園に労働者を雇うために、夜が明けると同時に、出かけて行くようなものである。
二 彼は労働者たちと、一日一デナリの約束をして、彼らをぶどう園に送った。
三 それから九時ごろに出て行って、他の人々が市場で何もせずに立っているのを見た。
四 そして、その人たちに言った、『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい。相当な賃銀を払うから』。
五 そこで、彼らは出かけて行った。主人はまた、十二時ごろと三時ごろとに出て行って、同じようにした。
六 五時ごろまた出て行くと、まだ立っている人々を見たので、彼らに言った、『なぜ、何もしないで、一日中ここに立っていたのか』。
七 彼らが『だれもわたしたちを雇ってくれませんから』と答えたので、その人々に言った、『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい』。
八 さて、夕方になって、ぶどう園の主人は管理人に言った、『労働者たちを呼びなさい。そして、最後にきた人々からはじめて順々に最初にきた人々にわたるように、賃銀を払ってやりなさい』。
九 そこで、五時ごろに雇われた人々がきて、それぞれ一デナリずつもらった。
一〇 ところが、最初の人々がきて、もっと多くもらえるだろうと思っていたのに、彼らも一デナリずつもらっただけであった。
一一 もらったとき、家の主人にむかって不平をもらして
一二 言った、『この最後の者たちは一時間しか働かなかったのに、あなたは一日じゅう、労苦と暑さを辛抱したわたしたちと同じ扱いをなさいました』。
一三 そこで彼はそのひとりに答えて言った、『友よ、わたしはあなたに対して不正をしてはいない。あなたはわたしと一デナリの約束をしたではないか。
一四 自分の賃銀をもらって行きなさい。わたしは、この最後の者にもあなたと同様に払ってやりたいのだ。
一五 自分の物を自分がしたいようにするのは、当りまえではないか。それともわたしが気前よくしているので、ねたましく思うのか』。
一六 このように、あとの者は先になり、先の者はあとになるであろう」。
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