四つの福音書による一つのイエス物語188
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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188
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金持と貧しいラザロの譬を語る
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
16;19〜31
第一六章一九〜三一節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
路加傳iケ書第一六章
十九 爰に富る人あり紫袍と細布を衣て日奢樂めり
二十 亦ラザロと云る貧者あり甚く腫物を患て富る人の門に置れ
二一 其案より落る餘屑にて養はれんと欲へり又犬きたりて其腫物を
二二 貧者死たれば天の使たちに依てアブラハムの懷に送れたり富る人も死て葬られしが
二三 陰府にて痛苦をうけ其目をあげ遙にアブラハムと其懷に在ラザロを見て
二四 喊叫いひけるは父アブラハムよ我を憐みラザロを遣して其指の尖を水にわが舌を凉しめ給へ我この火の中に苦めばなり
二五 アブラハム曰けるは子よ爾は生たりし時に爾のを受またラザロは其苦を受しを憶へ今かれは慰られ爾は苦めらるなり
二六 斯耳ならず此より爾曹にんとするとも得ず彼より我んとするとも亦えざる爲に我と爾曹との間に限おかれたる巨なる淵あり
二七 答けるは然ば父よ願くは我父の家へラザロを遣たまへ
二八 蓋われに五人の兄弟あり亦かれらが此苦の所に來ざる爲にラザロを證據に爲しめよ
二九 アブラハム曰けるは彼等にはモセと預言あれば之に聽べし
三十 答けるは然ず父アブラハムよもし死より彼等に往あらば悔改べし
三一 アブラハム曰けるは若モセと預言者に聽ずばひ死より甦るありとも其勸を受ざるべし
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
ルカ傳iケ書第一六章
一九 或る富める人あり、紫色の衣と細布とをて、日奢り樂しめり。
 又ラザロといふ貧しきあり、腫物にて腫れただれ、富める人の門に置かれ、
二一 その食卓より落つる物にて飽かんと思ふ。而して犬ども來りて其の腫物をれり。
二二 遂にこの貧しきもの死に、御使たちに携へられてアブラハムの懷裏に入れり。富める人もまた死にて葬られしが、
二三 黃泉にて苦惱の中より目を擧げて遙にアブラハムと其の懷裏にをるラザロとを見る。
二四 乃ち呼びて言ふ「父アブラハムよ、我を憫みて、ラザロを遣し、その指のさきを水に浸して我が舌を冷させ給へ、我はこの焰のなかに悶ゆるなり」
二五 アブラハム言ふ「子よ、憶へ、なんぢは生ける間、なんぢの善き物を受け、ラザロは惡しき物を受けたり。今ここにて彼は慰められ、汝は悶ゆるなり。
二六 然のみならず此處より汝らに渡り往かんとすとも得ず、其處より我らに來り得ぬために、我らと汝らとの間に大なる淵定めおかれたり」
二七 富める人また言ふ「さらば父よ、願くは我が父の家にラザロを遣したまへ。
二八 我に五人の兄弟あり、この苦痛のところに來らぬやう、彼らに證せしめ給へ」
二九 アブラハム言ふ「彼等にはモセと預言とあり、之に聽くべし」
 富める人いふ「いな父アブラハムよ、もし死人の中より彼らに往くあらば、悔改めん」
三一 アブラハム言ふ「もしモセと預言とに聽かずば、たとひ死人の中より甦へるありとも、其の勸を納れざるべし』
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
ルカによる福音書第一六章
一九 ある金持がいた。彼は紫の衣や細布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮していた。
二〇 ところが、ラザロという貧しい人が全身でき物でおおわれて、この金持の玄関の前にすわり、
二一 その食卓から落ちるもので飢えをしのごうと望んでいた。その上、犬がきて彼のでき物をなめていた。
二二 この貧しい人がついに死に、御使たちに連れられてアブラハムのふところに送られた。金持も死んで葬られた。
二三 そして黄泉にいて苦しみながら、目をあげると、アブラハムとそのふところにいるラザロとが、はるかに見えた。
二四 そこで声をあげて言った、『父、アブラハムよ、わたしをあわれんでください。ラザロをおつかわしになって、その指先を水でぬらし、わたしの舌を冷やさせてください。わたしはこの火炎の中で苦しみもだえています』。
二五 アブラハムが言った、『子よ、思い出すがよい。あなたは生前よいものを受け、ラザロの方は悪いものを受けた。しかし今ここでは、彼は慰められ、あなたは苦しみもだえている。
二六 そればかりか、わたしたちとあなたがたとの間には大きな淵がおいてあって、こちらからあなたがたの方へ渡ろうと思ってもできないし、そちらからわたしたちの方へ越えて来ることもできない』。
二七 そこで金持が言った、『父よ、ではお願いします。わたしの父の家へラザロをつかわしてください。
二八 わたしに五人の兄弟がいますので、こんな苦しい所へ来ることがないように、彼らに警告していただきたいのです』。
二九 アブラハムは言った、『彼らにはモーセと預言者とがある。それに聞くがよかろう』。
三〇 金持が言った、『いえいえ、父アブラハムよ、もし死人の中からだれかが兄弟たちのところへ行ってくれましたら、彼らは悔い改めるでしょう』。
三一 アブラハムは言った、『もし彼らがモーセと預言者とに耳を傾けないなら、死人の中からよみがえってくる者があっても、彼らはその勧めを聞き入れはしないであろう』」。
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