四つの福音書による一つのイエス物語141
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
*
141
*
異邦人の女の願いに応じる
*
上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
7;24〜30 15;21〜28
第七章二四〜三〇節 第一五章二一〜二八節
*
英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬可傳iケ書第七章
二四 イエス此を去てツロとシドンの境にゆき家に入て人に知れざらん事を欲しが隱れ得ざりき
二五 そは惡鬼に憑たる幼き女を有る婦イエスの事を聞て來り其足下に伏たるに因てなり
二六 この婦はサイロピニケに生まれしギリシヤのなりしが惡鬼を其女より逐出し給はん事をイエスに求り
二七 イエス彼に曰けるは先兒女に飽しむべし兒女のパンを取て犬に投るは善らず
二八 婦こたへて曰けるは主よ然されど犬も案の下に在て兒女の遺屑を食ふ也
二九 イエス婦に曰けるは此言に困て歸れ惡鬼は爾の女より出たり
三十 婦その家に歸しに惡鬼に出て牀に女の臥たるを見る
馬太傳iケ書第一五章
二一 イエス此を去てツロとシドンの地に往けるに
二二 其地に在るカナンの婦いで呼はり曰けるは主よダビデの裔よ我を憫み給へ我むすめ鬼に憑れて甚く苦めり
二三 イエス一言も彼に答ざりしかば其弟子きたり請て曰けるは我の後より呼はるが故に彼を去せ給へ
二四 答て曰けるはイスラエルの家の迷へる羊の外に我は遣されず
二五 婦きたり拜して曰けるは主よ我を助たまへ
二六 答けるは兒女のパンを取て犬に投與ふるは宜からず
二七 婦いひけるは主よ然されど犬もその主人の膳より落る屑を食なり
二八 遂にイエス答て曰けるは婦よ爾の信仰は大なり願の如く爾に成べし此時より其女いえたり
*
日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マルコ傳iケ書第七章
二四 イエス起ちて此處を去り、ツロの地方に往き、家に入りて人に知られじと爲給ひたれど、隱るること能はざりき。
二五 爰に穢れし靈に憑かれたる稚なき娘をもてる女、直ちにイエスの事をきき、來りて御足の許に平伏す。
二六 この女はギリシヤ人にて、スロフェニキヤの生なり。その娘より惡鬼を逐ひ出し給はんことを請ふ。
二七 イエス言ひ給ふ『まづ子供に飽かしむべし、子供のパンをとりて小狗に投げ與ふるは善からず』
二八 女こたヘて言ふ『然り主よ、食卓の下の小狗も小供の食屑を食ふなり』
二九 イエス言ひ給ふ『なんぢ此の言によりて〔安んじ〕往け、惡鬼は旣に娘より出でたり』
 女、家に歸りて見るに、子は寢臺の上に臥し、惡鬼は旣に出でたり。
マタイ傳iケ書第一五章
二一 イエスここを去りてツロとシドンとの地方に往き給ふ。
二二 よ、カナンの女、その邊より出できたり、叫びて『主よ、ダビデの子よ、我を憫み給へ、わが娘、惡鬼につかれて甚く苦しむ』と言ふ。
二三 されどイエス一言も答へ給はず。弟子たち來り請ひて言ふ『女を歸したまへ、我らの後より叫ぶなり』
二四 答へて言ひたまふ『我はイスラエルの家の失せたる羊のほかに遣されず』
二五 女きたり拜して言ふ『主よ、我を助けたまへ』
二六 答へて言ひたまふ『子供のパンをとりて、小狗に投げ與ふるは善からず』
二七 女いふ『然り、主よ、小狗も主人の食卓よりおつる食屑を食ふなり』
二八 爰にイエス答へて言ひたまふ『をんなよ、汝の信仰は大なるかな、願のごとく汝になれ』娘この時よりえたり。
*
日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マルコによる福音書第七章
二四 さて、イエスは、そこを立ち去って、ツロの地方に行かれた。そして、だれにも知れないように、家の中にはいられたが、隠れていることができなかった。
二五 そして、けがれた霊につかれた幼い娘をもつ女が、イエスのことをすぐ聞きつけてきて、その足もとにひれ伏した。
二六 この女はギリシヤ人で、スロ・フェニキヤの生れであった。そして、娘から悪霊を追い出してくださいとお願いした。
二七 イエスは女に言われた、「まず子供たちに十分食べさすべきである。子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。
二八 すると女は答えて言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、食卓の下にいる小犬も、子供たちのパンくずは、いただきます」。
二九 そこでイエスは言われた、「その言葉で、じゅうぶんである。お帰りなさい。悪霊は娘から出てしまった」。
三〇 そこで、女が家に帰ってみると、その子は床の上に寝ており、悪霊は出てしまっていた。
マタイによる福音書第一五章
二一 さて、イエスはそこを出て、ツロとシドンとの地方へ行かれた。
二二 すると、そこへ、その地方出のカナンの女が出てきて、「主よ、ダビデの子よ、わたしをあわれんでください。娘が悪霊にとりつかれて苦しんでいます」と言って叫びつづけた。
二三 しかし、イエスはひと言もお答えにならなかった。そこで弟子たちがみもとにきて願って言った、「この女を追い払ってください。叫びながらついてきていますから」。
二四 するとイエスは答えて言われた、「わたしは、イスラエルの家の失われた羊以外の者には、つかわされていない」。
二五 しかし、女は近寄りイエスを拝して言った、「主よ、わたしをお助けください」。
二六 イエスは答えて言われた、「子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。
二七 すると女は言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、小犬もその主人の食卓から落ちるパンくずは、いただきます」。
二八 そこでイエスは答えて言われた、「女よ、あなたの信仰は見あげたものである。あなたの願いどおりになるように」。その時に、娘はいやされた。
Office Murakami