四つの福音書による一つのイエス物語138
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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138
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洗わない手で食べることに答える
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
7;1〜13 15;1〜9
第七章一〜一三節 第一五章一〜九節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬可傳iケ書第七章
一 パリサイの人と或學たちエルサレムより來りてイエスの前に集り
二 彼の弟子の中に潔らざる手ざる手にてパンを食するありしを見て之を責めたり
三 蓋パリサイの人とユダヤの人はみな古の人の遺傳を守りて其手を潔あらはざれば食せず
四 市より歸きたりてざれば亦食せず此ほか杯椀鍋および牀を洗など多端の遺傳を受守れり
五 是に於てパリサイの人と學等イエスに問けるは爾の弟子は何ゆゑ古の人の遺傳に遵はずしてざる手を以てパンを食する乎
六 イエス答て彼等に曰けるはイザヤは僞善なる爾曹を指てよく預言せり其錄し言に此民は唇にて我を敬へども其心は我に遠かり
七 人の誡をと爲て徒らに我を拜すと曰り
八 夫爾曹は~の誡を棄て人の遺傳を守れりち鍋杯を洗おほく此の如き事を行ふ
九 また彼等に曰けるは爾曹は實に己の遺傳を守んとて能も~の誡を棄るなり
十 モセ曰けるは爾の父母を敬へ又父あるひは母をは殺るべしと
十一 然ど爾曹は曰もし人父あるひは母に對て爾を養ふべき物はコルバンち禮物なりと曰ば事ずとも可と
十二 而して人の其父あるひは母の爲に何をも行事を爾曹許ず
十三 斯なんぢらは其る所の遺傳をもて~の道を廢うす又おほく此類の事を行ふ
馬太傳iケ書第一五章
一 時にエルサレムの學とパリサイの人イエスに來て曰けるは
二 爾の弟子古の人の遺傳を犯は何故ぞ蓋食する時に其手を洗ざれば也
三 答て彼等に曰けるは爾曹は亦なんぢらの遣傳によりて~の誡を犯は何故で
四 それ~いましめて爾の父母を敬へ又父母をは殺さるべしと宣給へり
五 然るに爾曹は曰て凡て人父母に對なんぢを養ふ可ものは禮物なりと云ば
六 その父母を敬はずとも可とす斯て爾曹遺傳により~の誡を廢くせり
七 僞善よイザヤは能なんぢらに就て預言し
八 此民は口にて我に近き唇にて我を敬へども其心は我に遠かり
九 人の誡をとなして徒らに我を拜すと云り
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マルコ傳iケ書第七章
一 パリサイ人と或る學らとエルサレムより來りてイエスの許に集る。
二 而して、その弟子たちの中に、潔からぬ手、ち洗はぬ手にて食事するのあるを見たり。
三 パリサイ人および凡てのユダヤ人は、古への人の言傳を固く執りて、懇ろに手を洗はねば食はず。
四 また市場より歸りては、まづがざれば食はず。このほか酒杯銅のを濯ぐなど多くの傳を承けて固く執りたり。
五 パリサイ人および學らイエスに問ふ『なにゆゑ汝の弟子たちは、古への人の言傳に遵ひてまず、潔からぬ手にて食事するか』
六 イエス言ひ給ふ『イザヤは汝ら僞善につきて能く預言せり。「この民は口唇にて我を敬ふ、然れど、その心は我に遠ざかる。
七 ただ徒らに我を拜む、人の訓誡をヘとしヘへて」と錄したり。
八 汝らは~の誡命を離れて人の言傳を固く執る』
九 また言ひたまふ『汝等はおのれの言傳を守らんとて、能くも~の誡命を棄つ。
 ちモセは「なんぢの父、なんぢの母を敬へ」といひ「父また母をは、必ず殺さるべし」といへり。
一一 然るに汝らは「人もし父また母にむかひ我が汝に對して負ふ所のものは、コルバンち供物なりと言はば可し」と言ひて、
一二 そののち人をして、父また母に事ふること勿らしむ。
一三 かく汝らの傳へたる言傳によりて、~の言を空しうし、又おはく此の類の事をなしをるなり』
マタイ傳iケ書第一五章
一 爰にパリサイ人ら、エルサレムより來りてイエスに言ふ、
二 『なにゆゑ汝の弟子は、古への人の言傳を犯すか、食事のときに手を洗はぬなり』
三 答へて言ひ給ふ「なにゆゑ汝らは、また汝らの言傳によりて~の誡命を犯すか。
四 ~は「父母を敬へ」と言ひ「父また母を罵るは必ず殺さるべし」と言ひたまへり。
五 然るに汝らは「誰にても父また母に對ひて我が負ふ所のものは、供物となりたりと言はば、
六 父また母を敬ふに及ばず」と言ふ。斯くその言傳によりて~の言を空しうす。
七 僞善よ、宜なる哉イザヤは汝らに就きて能く預言せり。曰く、
八 「この民は口唇にて我を敬ふ、然れど其の心は我に遠ざかる。
九 ただ徒らに我を拜む。人の訓誡をヘとしヘヘて」』
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マルコによる福音書第七章
一 さて、パリサイ人と、ある律法学者たちとが、エルサレムからきて、イエスのもとに集まった。
二 そして弟子たちのうちに、不浄な手、すなわち洗わない手で、パンを食べている者があるのを見た。
三 もともと、パリサイ人をはじめユダヤ人はみな、昔の人の言伝えをかたく守って、念入りに手を洗ってからでないと、食事をしない。
四 また市場から帰ったときには、身を清めてからでないと、食事をせず、なおそのほかにも、杯、鉢、銅器を洗うことなど、昔から受けついでかたく守っている事が、たくさんあった。
五 そこで、パリサイ人と律法学者たちとは、イエスに尋ねた、「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人の言伝えに従って歩まないで、不浄な手でパンを食べるのですか」。
六 イエスは言われた、「イザヤは、あなたがた偽善者について、こう書いているが、それは適切な預言である、『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。
七 人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』。
八 あなたがたは、神のいましめをさしおいて、人間の言伝えを固執している」。
九 また、言われた、「あなたがたは、自分たちの言伝えを守るために、よくも神のいましめを捨てたものだ。
一〇 モーセは言ったではないか、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。
一一 それだのに、あなたがたは、もし人が父または母にむかって、あなたに差上げるはずのこのものはコルバン、すなわち、供え物ですと言えば、それでよいとして、
一二 その人は父母に対して、もう何もしないで済むのだと言っている。
一三 こうしてあなたがたは、自分たちが受けついだ言伝えによって、神の言を無にしている。また、このような事をしばしばおこなっている」。
マタイによる福音書第一五章
一 ときに、パリサイ人と律法学者たちとが、エルサレムからイエスのもとにきて言った、
二 「あなたの弟子たちは、なぜ昔の人々の言伝えを破るのですか。彼らは食事の時に手を洗っていません」。
三 イエスは答えて言われた、「なぜ、あなたがたも自分たちの言伝えによって、神のいましめを破っているのか。
四 神は言われた、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。
五 それだのに、あなたがたは『だれでも父または母にむかって、あなたにさしあげるはずのこのものは供え物です、と言えば、
六 父または母を敬わなくてもよろしい』と言っている。こうしてあなたがたは自分たちの言伝えによって、神の言を無にしている。
七 偽善者たちよ、イザヤがあなたがたについて、こういう適切な預言をしている、
八 『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。
九 人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』」。
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