四つの福音書による一つのイエス物語136
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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136
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湖の上を歩く
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
6;45〜52 14;22〜33 6;16〜21
第六章四五〜五二節 第一四章二二〜三三節 第六章一六〜二一節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬可傳iケ書第六章
四五 直にイエスその弟子を强て舟に乘むかふの岸なるベテサイダへ先わたらしめ己は衆人を歸しむ
四六 衆人を歸しのち禱の爲に山に往り
四七 日暮て舟はの中に在イエスは獨り陸に居り
四八 風逆ふに因て弟子等の舟を掉に勞たるを見ての四時ごろイエスの上を履きたり彼等を過んとせしに
四九 弟子そのを履るを見て變化の物ならんと意ひ叫びたり
五十 蓋弟子みな之を見て懼しが故なりイエス直に彼等に語りて曰けるは心安かれ我なり懼ること勿れ
五一 遂に舟に登しかば風やみぬ彼等心の中に駭き異めること甚だし
五二 是其心の愚頑に因てパンの奇跡をも覺ざりし也
馬太傳iケ書第一四章
二二 頓てイエス衆人を歸さんとして其弟子を强て舟にのせ向の岸へ先に渡しむ
二三 斯て衆人を歸しければ禱せんとて密に山に上り日暮て獨そこに在せり
二四 舟は海中に在て逆風の爲に浪に漂はさる
二五 夜の四時ごろイエスの上をて之に至しに
二六 弟子其の上をるを見て驚き此は變化の物ならんと曰て懼れ叫たり
二七 イエス頓て彼等に曰けるは心安かれ我なり懼る勿れ
二八 ペテロ答て曰けるは主よ若し爾ならば我に命じ水を履て爾の所に至しめよ
二九 來と曰給ひければペテロ舟より下てイエスの所に至んとて浪の上をたれど
三十 風の烈きを見て懼れ沈かりければ主よ我を救たまへと曰
三一 イエス頓て手を伸之を執て曰けるは信仰うすきよ何ぞ疑ふや
三二 偕に舟に登ければ風しづまりぬ
三三 舟に居しちかよりて彼を拜し曰けるは誠に爾は~の子なり
約翰傳iケ書第六章
十六 日の暮るころ弟子に下て
十七 舟に登カペナウンに向て海を濟るに暮けれどもイエス彼等に就ず
十八 狂風ふくに因て漸にあれいだせり
十九 一里十町ばかり漕出せる時イエスのを行み舟に近くを見て弟子たち懼たり
二十 イエス曰けるは我なり懼る勿れ
二一 是に於て弟子喜びて彼をうけ舟に登ければ直に其往んとする所の地に着ぬ
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マルコ傳iケ書第六章
四五 イエス直ちに、弟子たちを强ひて舟に乘らせ、自ら群衆を返す間に、彼方なるベツサイダに先に往かしむ。
四六 群衆に別れてのち、らんとて山にゆき給ふ。
四七 夕になりて、舟はの眞中にあり、イエスはひとり陸に在す。
四八 風逆ふに因りて、弟子たちの漕ぎ煩ふを見て、夜明の四時ごろ、の上をみ、その許に到りて、往慧過ぎんとし給ふ。
四九 弟子たち其のの上をみ給ふを見、變化のならんと思ひて叫ぶ。
 皆これを見て心騷ぎたるに因る。イエス直ちに彼らに語りて言ひ給ふ『心安かれ、我なり、懼るな』
五一 斯て弟子たちの許にゆき、舟に登り給へば、風やみたり。弟子たち心の中にて甚く驚く、
五二 彼らは先のパンの事をさとらず、反つて其の心鈍くなりしなり。
マタイ傳iケ書第一四章
二二 イエス直ちに弟子たちを强ひて舟に乘らせ、自ら群衆をかへす間に、彼方の岸に先に往かしむ。
二三 斯て群衆を去らしめてのち、らんとてに山に登り、夕になりて獨そこにゐ給ふ。
二四 舟ははや陸より數丁はなれ、風逆ふによりて波にされゐたり。
二五 夜明の四時ごろ、イエスの上をみて、彼らに到り給ひしに、
二六 弟子たち其のの上をみ給ふを見て心騷ぎ、變化のなりと言ひて懼れ叫ぶ。
二七 イエス直ちに彼らに語りて言ひたまふ『心安かれ、我なり、懼るな』
二八 ペテロ答へて言ふ『主よ、もし汝ならば我に命じ、水を蹈みて、御許に到らしめ給へ』
二九 『來れ』と言ひ給へば、ペテロ舟より下り、水の上をみてイエスの許に往く。
 然るに風を見て懼れ、沈みかかりければ叫びて言ふ『主よ、我を救ひたまへ』
三一 イエス直ちに御手を伸べ、これを捉へて言ひ給ふ『ああ信仰うすきよ、何ぞ疑ふか』
三二 相共に舟に乘りしとき、風やみたり。
三三 舟に居るどもイエスを拜して言ふ『まことに汝は~の子なり』
ヨハネ傳iケ書第六章
一六 夕になりて弟子たちにくだり、
一七 船にのりを渡りて、カペナウムに往かんとす。旣に暗くなりたるに、イエス未だりたまはず。
一八 大風ふきてややに荒出づ。
一九 かくて四五十丁こざ出でしに、イエスのの上をあゆみ、船に近づき給ふを見て懼れたれば、
 イエス言ひたまふ『我なり、懼るな』
二一 乃ちイエスを船に歡び迎へしに、船は直ちに往かんとする地にけり。
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マルコによる福音書第六章
四五 それからすぐ、イエスは自分で群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸のベツサイダへ先におやりになった。
四六 そして群衆に別れてから、祈るために山へ退かれた。
四七 夕方になったとき、舟は海のまん中に出ており、イエスだけが陸地におられた。
四八 ところが逆風が吹いていたために、弟子たちがこぎ悩んでいるのをごらんになって、夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らに近づき、そのそばを通り過ぎようとされた。
四九 彼らはイエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと思い、大声で叫んだ。
五〇 みんなの者がそれを見て、おじ恐れたからである。しかし、イエスはすぐ彼らに声をかけ、「しっかりするのだ。わたしである。恐れることはない」と言われた。
五一 そして、彼らの舟に乗り込まれると、風はやんだ。彼らは心の中で、非常に驚いた。
五二 先のパンのことを悟らず、その心が鈍くなっていたからである。
マタイによる福音書第一四章
二二 それからすぐ、イエスは群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸へ先におやりになった。
二三 そして群衆を解散させてから、祈るためひそかに山へ登られた。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。
二四 ところが舟は、もうすでに陸から数丁も離れており、逆風が吹いていたために、波に悩まされていた。
二五 イエスは夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らの方へ行かれた。
二六 弟子たちは、イエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと言っておじ惑い、恐怖のあまり叫び声をあげた。
二七 しかし、イエスはすぐに彼らに声をかけて、「しっかりするのだ、わたしである。恐れることはない」と言われた。
二八 するとペテロが答えて言った、「主よ、あなたでしたか。では、わたしに命じて、水の上を渡ってみもとに行かせてください」。
二九 イエスは、「おいでなさい」と言われたので、ペテロは舟からおり、水の上を歩いてイエスのところへ行った。
三〇 しかし、風を見て恐ろしくなり、そしておぼれかけたので、彼は叫んで、「主よ、お助けください」と言った。
三一 イエスはすぐに手を伸ばし、彼をつかまえて言われた、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」。
三二 ふたりが舟に乗り込むと、風はやんでしまった。
三三 舟の中にいた者たちはイエスを拝して、「ほんとうに、あなたは神の子です」と言った。
ヨハネによる福音書第六章
一六 夕方になったとき、弟子たちは海ベに下り、
一七 舟に乗って海を渡り、向こう岸のカペナウムに行きかけた。すでに暗くなっていたのに、イエスはまだ彼らのところにおいでにならなかった。
一八 その上、強い風が吹いてきて、海は荒れ出した。
一九 四、五十丁こぎ出したとき、イエスが海の上を歩いて舟に近づいてこられるのを見て、彼らは恐れた。
二〇 すると、イエスは彼らに言われた、「わたしだ、恐れることはない」。
二一 そこで、彼らは喜んでイエスを舟に迎えようとした。すると舟は、すぐ、彼らが行こうとしていた地に着いた。
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