四つの福音書による一つのイエス物語135
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
*
135
*
五千人にパンを食べさせる
*
上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
6;35〜44 14;15〜21 9;10〜17 6;4〜15
第六章三五〜四四節 第一四章一五〜二一節 第九章一〇〜一七節 第六章四〜一五節
*
英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬可傳iケ書第六章
三五 時すでに暮景になりければ其弟子かれに來いひけるは此は寂寞ところにして時も晩し
三六 衆人の食ふべき物なきが故に其自ら四周のク村に往てパンを市んが爲に彼等を去しめ給へ
三七 イエス答けるは爾曹これに食を與よ弟子かれに曰けるは我ゆきて銀二百のパンを市かれらに與て食しむ可か
三八 イエス彼等に曰けるはパンは幾何ある往てよ彼等みて某數をしり五のパンと二の魚ありと答ふ
三九 イエス衆の人を組にして草の上に坐しめよと命じければ
四十 或は百人或は五十人づ列坐せり
四一 イエスその五のパンと二の魚をとり天を仰ぎ謝してパンをわり弟子に與て人の前に陳しむ又二の魚を每人に分與ぬ
四二 衆人みな食て飽
四三 そのパンと魚の餘屑を拾しに十二の筐に盈たり
四四 パンを食たる男およそ五千人なりき
馬太傳iケ書第一四章
十五 日くる時其弟子きたりて曰けるは此は寂寞ところにして時もはや遲し邑に往て自ら食を求させん爲に人を去しめよ
十六 イエス彼等に曰けるは人往ずとも可爾曹之に食を予よ
十七 答けるは我此にた五のパンと二の魚あるのみ
十八 イエス曰けるは其を此に携來れ
十九 遂に衆人に命じて草の上に坐しめ五のパンと二の魚をとり天を仰て謝しパンを擘て弟子にあたふ弟子之を衆人に予ぬ
二十 みな食て飽其餘たる屑を拾しに十二の筐に盈たり
二一 食しは婦と幼童の外凡そ五千人なりき
路加傳iケ書第九章
十 使徒たち歸來りて其行しことをイエスにイエス彼等を携ひてにベテサイダと云る邑の邊なる野に退きしに
十一 衆人しりて從ければ之を接て~の國の事を語かつ醫を求るを醫せり
十二 日くとき十二の弟子きたりてイエスに曰けるは此は野なれば衆人を去せ四圍のク村へゆきて宿をとり食を覓る事を爲たまへ
十三 イエス曰けるは爾曹これに食を予へよ答けるは我五のパンと二の魚ある耳この許多の人の爲に往て買に非ざれば別に食物はなし
十四 此に居し男おほよそ五千人なりきイエス弟子に曰けるは衆人を五十人づ列べ坐せしめよ
十五 弟子その如く行て彼等をみな坐せしめたり
十六 イエス五のパンと二の魚をとり天を仰ぎして之をわり弟子に予へ衆の前に陳しむ
十七 みな食飽て餘の屑を十二の筐に拾たり
約翰傳iケ書第六章
四 時ユダヤ人の踰越のに邇し
五 イエス目を擧て多の人の來れるを見てピリポに曰けるは何慮よりパンを市て彼等に食しむ可か
六 自ら其爲んとする事を知ど彼を試んが爲に如此いへる也
七 ピリポ答けるは銀二百のパンも人ごとに少づつ予てなは足ざるべし
八 弟子の一人卽ちシモンペテロの兄弟アンデレ イエスに曰けるは
九 此に一人の童子あり麥のパン五と小き魚二を有り然どこの許多の人に如何すべきぞ
十 イエス曰けるは人を坐せよ其處に多の草あり約そ五千人ほど坐ぬ
十一 イエス パンをとり謝て弟子に予へ弟子これを坐し人に予ふ又此の如にして小き魚をも人の欲に隨ひて彼等に與たり
十二 みな飽たる後イエス弟子に曰けるは少も廢はざるやうに其餘の屑を拾集めよ
十三 彼等が食せし彼五の麥のパンの餘遺の屑を拾集ければ十二の筐に盈り
十四 人イエスの行し奇跡を見て此は誠に世に臨るべき預言なりと曰
十五 是に於てイエス彼等が來り己を執て王に爲んとするを知た獨にて之を避ふたび山に入たり
*
日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マルコ傳iケ書第六章
三五 時すでに晩くなりたれば、弟子たち御許に來りていふ『ここは寂しき處、はや時も晩し。
三六 人を去らしめ、周圍の里また村に往きて、己がために食物を買はせ給へ』
三七 答へて言ひ給ふ『なんぢら食物を與へよ』弟子たち言ふ『われら往きて二百デナリのパンを買ひ、これに與ヘて食はすべきか』
三八 イエス言ひ給ふ『パン幾つあるか、往きて見よ』彼ら見ていふ『五つ、また魚二つあり』
三九 イエス凡ての人の組となりて、草の上に坐することを命じ給へば、
 或は百人、あるひは五十人、畝のごとく列びて坐す。
四一 斯てイエス五つのパンと二つの魚とを取り、天を仰ぎてしパンをさき、弟子たちに付して人の前に置かしめ、二つの魚をも人每に分け給ふ。
四二 凡ての人、食ひて飽きたれば、
四三 パンの餘、魚の殘を集めしに、十二の筐に滿ちたり。
四四 パンを食ひたる男は五千人なりき。
マタイ傳iケ書第一四章
一五 夕になりたれば、弟子たち御許に來りて言ふ『ここは寂しき處、はや時も晩し、群衆を去らしめ、村に往きて、己が爲に食物を買はせ給へ』
一六 イエス言ひ給ふ『かれら往くに及ばず、汝ら之に食物を與へよ』
一七 弟子たち言ふ『われらが此處にもてるは唯五つのパンと二つの魚とのみ』
一八 イエス言ひ給ふ『それを我に持ちきたれ』
一九 斯て群衆に命じて、草の上に坐せしめ、五つのパンと二つの魚とを取り、天を仰ぎてし、パンを裂きて、弟子たちに與へ給へば、弟子たち之を群衆に與ふ。
 凡ての人、食ひて飽く、裂きたる餘を集めしに十二の筐に滿ちたり。
二一 食ひしは、女と子供とを除きて凡そ五千人なりき。
ルカ傳iケ書第九章
 使徒たち歸りきて、其の爲しし事を具にイエスにぐ。イエス彼らを携へて竊にベツサイダといふ町に退きたまふ。
一一 されど群衆これを知りて從ひ來りたれば、彼らを接けて、~の國の事を語り、かつ治療を要する人を醫したまふ。
一二 日傾きたれば、十二弟子きたりて言ふ『群衆を去らしめ、周圍の村また里にゆき、宿をとりて食物を求めさせ給へ。我らは斯かる寂しき所に居るなり』
一三 イエス言ひ給ふ『なんぢら食物を與へよ』弟子たち言ふ『我らただ五つのパンと二つの魚とあるのみ、此の多くの人のために、往きて買はねば他に食物なし』
一四 男おほよそ五千人ゐたればなり。イエス弟子たちに言ひたまふ『人を組にして五十人づつ坐せしめよ』
一五 彼等その如くなして、人をみな坐せしむ。
一六 かくてイエス五つのパンと二つの魚とを取り、天を仰ぎてし、擘きて弟子たちに付し、群衆のまへに置かしめ給ふ。
一七 彼らは食ひて皆飽く。擘きたる餘を集めしに十二筐ほどありき。
ヨハネ傳iケ書第六章
四 時はユダヤ人の祭なる過越に近し。
五 イエス眼をあげて大なる群衆のきたるを見てピリボに言ひ給ふ『われら何處よりパンを買ひて、此の人に食はすべきか』
六 かく言ひ給ふはピリポを試むるためにて、自ら爲さんとする事を知り給ふなり。
七 ピリポ答へて言ふ『二百デナリのパンありとも、人すこしづづ受くるになほ足らじ』
八 弟子の一人にてシモンペテロの兄弟なるアンデレ言ふ
九 『ここに一人の童子あり、大麥のパン五つと小き肴二つとをもてり、然れど此の多くの人には何にか爲らん』
 イエス言ひたまふ『人を坐せしめよ』その處に多くの草ありて人坐せしが、その數おほよそ五千人なりき。
一一 爰にイエス、パンを取りて謝し、坐したる人に分ちあたへ、また肴をも然なして、その欲するほど與へ給ふ。
一二 人の飽きたるのち弟子たちに言ひたまふ『廢るもののなきやうに擘きたる餘をあつめよ』
一三 乃ち集めたるに、五つの大麥のパンの擘きたるを食ひしものの餘、十二の筐に滿ちたり。
一四 人その爲し給ひし徵を見ていふ『實にこれは世に來るべき預言なり』
一五 イエス彼らが來りて已をとらへ、王となさんとするを知り、復ひとりにて山に遁れたまふ。
*
日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マルコによる福音書第六章
三五 ところが、はや時もおそくなったので、弟子たちはイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。
三六 みんなを解散させ、めいめいで何か食べる物を買いに、まわりの部落や村々へ行かせてください」。
三七 イエスは答えて言われた、「あなたがたの手で食物をやりなさい」。弟子たちは言った、「わたしたちが二百デナリものパンを買ってきて、みんなに食べさせるのですか」。
三八 するとイエスは言われた。「パンは幾つあるか。見てきなさい」。彼らは確かめてきて、「五つあります。それに魚が二ひき」と言った。
三九 そこでイエスは、みんなを組々に分けて、青草の上にすわらせるように命じられた。
四〇 人々は、あるいは百人ずつ、あるいは五十人ずつ、列をつくってすわった。
四一 それから、イエスは五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさき、弟子たちにわたして配らせ、また、二ひきの魚もみんなにお分けになった。
四二 みんなの者は食べて満腹した。
四三 そこで、パンくずや魚の残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。
四四 パンを食べた者は男五千人であった。
マタイによる福音書第一四章
一五 夕方になったので、弟子たちがイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。群衆を解散させ、めいめいで食物を買いに、村々へ行かせてください」。
一六 するとイエスは言われた、「彼らが出かけて行くには及ばない。あなたがたの手で食物をやりなさい」。
一七 弟子たちは言った、「わたしたちはここに、パン五つと魚二ひきしか持っていません」。
一八 イエスは言われた、「それをここに持ってきなさい」。
一九 そして群衆に命じて、草の上にすわらせ、五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさいて弟子たちに渡された。弟子たちはそれを群衆に与えた。
二〇 みんなの者は食べて満腹した。パンくずの残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。
二一 食べた者は、女と子供とを除いて、おおよそ五千人であった。
ルカによる福音書第九章
一〇 使徒たちは帰ってきて、自分たちのしたことをすべてイエスに話した。それからイエスは彼らを連れて、ベツサイダという町へひそかに退かれた。
一一 ところが群衆がそれと知って、ついてきたので、これを迎えて神の国のことを語り聞かせ、また治療を要する人たちをいやされた。
一二 それから日が傾きかけたので、十二弟子がイエスのもとにきて言った、「群衆を解散して、まわりの村々や部落へ行って宿を取り、食物を手にいれるようにさせてください。わたしたちはこんな寂しい所にきているのですから」。
一三 しかしイエスは言われた、「あなたがたの手で食物をやりなさい」。彼らは言った、「わたしたちにはパン五つと魚二ひきしかありません、この大ぜいの人のために食物を買いに行くかしなければ」。
一四 というのは、男が五千人ばかりもいたからである。しかしイエスは弟子たちに言われた、「人々をおおよそ五十人ずつの組にして、すわらせなさい」。
一五 彼らはそのとおりにして、みんなをすわらせた。
一六 イエスは五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福してさき、弟子たちにわたして群衆に配らせた。
一七 みんなの者は食べて満腹した。そして、その余りくずを集めたら、十二かごあった。
ヨハネによる福音書第六章
四 時に、ユダヤ人の祭である過越が間近になっていた。
五 イエスは目をあげ、大ぜいの群衆が自分の方に集まって来るのを見て、ピリポに言われた、「どこからパンを買ってきて、この人々に食べさせようか」。
六 これはピリポをためそうとして言われたのであって、ご自分ではしようとすることを、よくご承知であった。
七 すると、ピリポはイエスに答えた、「二百デナリのパンがあっても、めいめいが少しずついただくにも足りますまい」。
八 弟子のひとり、シモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った、
九 「ここに、大麦のパン五つと、さかな二ひきとを持っている子供がいます。しかし、こんなに大ぜいの人では、それが何になりましょう」。
一〇 イエスは「人々をすわらせなさい」と言われた。その場所には草が多かった。そこにすわった男の数は五千人ほどであった。
一一 そこで、イエスはパンを取り、感謝してから、すわっている人々に分け与え、また、さかなをも同様にして、彼らの望むだけ分け与えられた。
一二 人々がじゅうぶんに食べたのち、イエスは弟子たちに言われた、「少しでもむだにならないように、パンくずのあまりを集めなさい」。
一三 そこで彼らが集めると、五つの大麦のパンを食べて残ったパンくずは、十二のかごにいっぱいになった。
一四 人々はイエスのなさったこのしるしを見て、「ほんとうに、この人こそ世にきたるべき預言者である」と言った。
一五 イエスは人々がきて、自分をとらえて王にしようとしていると知って、ただひとり、また山に退かれた。
Office Murakami