四つの福音書による一つのイエス物語109
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
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109
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生まれ育ちを知る者たちには敬われない
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上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
6;1〜6 13;53〜58 4;16〜30 6;41〜42
第六章一〜六節 第一三章五三〜五八節 第四章一六〜三〇節 第六章四一〜四二節
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英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬可傳iケ書第六章
一イエス此を去て故クに到しに其弟子も彼に從ひぬ
二 安息日に及ければ會堂にてをはじむ衆人これを聞て奇み曰けるは如何して此人に斯のごとき事あるか誰より此智慧を授られて如此ふしぎなる事をも其手より行か
三 彼は木匠に非ずやマリアの子ヤコブ ヨセ ユダとシモンの兄弟にして其妹も此に我と共に在に非ずや遂に人彼にけり
四 イエス彼等に曰けるは預言はその故クその親戚その室家の外に於は尊ばれざることなし
五 イエス彼處にて患に手を按た數人を醫し外ふしぎなる事を行こと能ざりき
六 また彼等の信ぜざるを奇み遂にクを經巡てをなせり
馬太傳iケ書第一三章
五三 イエス此譬を言畢て此を去ぬ
五四 其故土にいたり會堂にてしに人奇み曰けるは此人の智慧と異なる能は何處より來るや
五五 これ木匠の子にあらずや其母はマリア其兄弟はヤコブ ヨセ シモン ユダに非ずや
五六 其妹等は皆我と偕に在に非ずや然るに此人の凡て此等の事は何處より來しや
五七 遂に厭て之を棄イエス彼等に曰けるは預言は其故土其家の外に於て尊まれざることなし
五八 彼等が信ずることなきに由て多の異なる能を此に行給はざりき
路加傳iケ書第四章
十六 その長育し所なるナザレに來り常例の如く安息日に會堂に入て聖書を讀んとて立ければ
十七 預言イザヤの書を予しにイエス其書を展て斯錄れたる所を見出せり
十八 主の靈われに在す故に貧音を宣傳ん事を我に膏を沃て任じ心の傷るを醫し又囚人に釋ん事と瞽者に見させん事を示し又壓制らるゝ者を縱ち
十九 主の禧年を宣播んが爲に我を遣せり
二十 イエス書を捲その役に予へて坐しければ會堂に在みな目を注てなせり
二一 イエス彼等に曰けるは此錄れたる事は今日なんぢらの前に應り
二二 衆かれを稱讚その口より出る所の恩惠の言を奇み曰けるは此はヨセフの子に非や
二三 イエス彼等に曰けるは爾曹かならず我に諺を引て醫みづからを醫せ我が聞し所のカペナウンにて行し事を自己の家クなる此土にも行べしと云ん
二四 また曰けるは我まことに爾曹にん預言その家クにては敬重るゝ者に非ず
二五 われ誠を以て爾曹にんエリヤの時三年と六ケ月天とぢて地おほいなる饑饉なりし其時イスラエルの中に多のありしかど
二六 エリヤは其一人へだに遣されず只シドンなるサレパタの一人のに遣されたり
二七 また預言者エリシャの時にイスラエルの中に多の癩ありしかど其一人だに潔られず惟スリヤのナマンのみ潔られたり
二八 會堂に在しこれを聞て大に憤ほり
二九 起てイエスを邑の外に出し投下さんとて其邑の建たる山の崖にまで曳往り
三十 然にイエス彼等の中を徑行て去ぬ
約翰傳iケ書第六章
四一 是に於てユダヤ人等イエスの我は天より降しパンなりと言しことにつき
四二 譏いひけるは彼が父母は我の識ところならずやち彼はヨセフの子イエスに非ずや然るに何ぞ我は天より降しと言や
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日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マルコ傳iケ書第六章
一 斯て其處をいで、己がクに到り給ひしに、弟子たちも從へり。
二 安息日になりて、會堂にてヘへ始め給ひしに、聞きたる多くのもの驚きて言ふ『この人は此等のことを何處より得しぞ、此の人の授けられたる知憲は何ぞ、その手にて爲す斯のごとき能力あるわざは何ぞ。
三 此の人は木匠にして、マリヤの子、またヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ならずや、其の妹も此處に我らと共にをるに非ずや』遂に彼にけり。
四 イエス彼らに言ひたまふ『預言は、おのがク、おのが親族、おのが家の外にて尊ばれざる事なし』
五 彼處にては、何の能力ある業をも行ひ給ふこと能はず、ただ少數の病めるに、手をおきて醫し給ひしのみ。
六 彼らの信仰なきを怪しみ給へり。斯て村を歷巡りてヘヘ給ふ。
マタイ傳iケ書第一三章
五三 イエスこれらの譬を終へて此處を去りたまふ。
五四 己がクにいたり、會堂にてヘへ給へば、人おどろきて言ふ『この人はこの智慧と此等の能力とを何處より得しぞ。
五五 これ木匠の子にあらずや、其の母はマリヤ、其の兄弟はヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダにあらずや。
五六 又その妹も皆われらと共にをるに非ずや。然るに此等のすべての事は何處より得しぞ』
五七 遂に人かれにけり。イエス彼らに言ひたまふ『預言はおのがク、おのが家の外にて尊ばれざる事なし』
五八 彼らの不信仰によりて、其處にては多くの能力ある業を爲し給はざりき。
ルカ傳iケ書第四章
一六 その育てられ給ひし處の、ナザレに到り例のごとく、安息日に會堂に入りて聖書を讀まんとて立ち給ひしに、
一七 預言イザヤの書を與へたれば、其の書をきて、かく錄されたる所を見出し給ふ。
一八 『主の御靈われに在す。これ我に油を注ぎて貧しき音を宣べしめ、我を遣して囚人に赦を得ることと、盲人に見ゆる事とをげしめ、壓へらるるを放ちて自由を與へしめ、
一九 主の喜ばしき年を宣傳へしめ給ふなり』
 イエス書を卷き、係りのに返して坐し給へば、會堂に居るみな之に目を注ぐ。
二一 イエス言ひ出でたまふ『この聖書は今日なんぢらの耳に成就したり』
二二 人みなイエスを譽め、又その口より出づる惠の言を怪しみて言ふ『これヨセフの子ならずや』
二三 イエス言ひ給ふ『なんぢら必ず我に俚諺を引きて「醫よ、みづから己を醫せ、カペナウムにて有りしといふ、我らが聞ける事どもを己がクなる此の地にても爲せ」と言はん』
二四 また言ひ給ふ『われ誠に汝らにぐ、預言は己がクにて喜ぼるることなし。
二五 われ實をもて汝らにぐ、エリヤのとき三年六月、天とぢて、全地大なる饑饉なりしが、イスラエルの中に多くの寡婦ありたれど、
二六 エリヤは其の一人にすら遣されず、唯シドンなるサレブタの一人の寡婦にのみ遣されたり。
二七 また預言エリシヤの時、イスラエルの中に多くの癲病人ありしが、其の一人だに潔められず、唯シリヤのナアマンのみ潔められたり』
二八 會堂にをるみな之を聞きて憤に滿ち、
二九 起ちてイエスを町より逐ひ出し、その町の建ちたる山の崖に引き往きて、投げ落さんとせしに、
 イエスその中を通りて去り給ふ。
ヨハネ傳iケ書第六章
四一 爰にユダヤ人ら、イエスの『われは天より降りしパンなり』と言ひ給ひしにより、
四二 きて言ふ『これはヨセフの子イエスならずや、我等はその父母を知る、何ぞ今「われは天より降れり」と言ふか』
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日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マルコによる福音書第六章
一 イエスはそこを去って、郷里に行かれたが、弟子たちも従って行った。
二 そして、安息日になったので、会堂で教えはじめられた。それを聞いた多くの人々は、驚いて言った、「この人は、これらのことをどこで習ってきたのか。また、この人の授かった知恵はどうだろう。このような力あるわざがその手で行われているのは、どうしてか。
三 この人は大工ではないか。マリヤのむすこで、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではないか。またその姉妹たちも、ここにわたしたちと一緒にいるではないか」。こうして彼らはイエスにつまずいた。
四 イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里、親族、家以外では、どこででも敬われないことはない」。
五 そして、そこでは力あるわざを一つもすることができず、ただ少数の病人に手をおいていやされただけであった。
六 そして、彼らの不信仰を驚き怪しまれた。それからイエスは、附近の村々を巡りあるいて教えられた。
マタイによる福音書第一三章
五三 イエスはこれらの譬を語り終えてから、そこを立ち去られた。
五四 そして郷里に行き、会堂で人々を教えられたところ、彼らは驚いて言った、「この人は、この知恵とこれらの力あるわざとを、どこで習ってきたのか。
五五 この人は大工の子ではないか。母はマリヤといい、兄弟たちは、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。
五六 またその姉妹たちもみな、わたしたちと一緒にいるではないか。こんな数々のことを、いったい、どこで習ってきたのか」。
五七 こうして人々はイエスにつまずいた。しかし、イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里や自分の家以外では、どこででも敬われないことはない」。
五八 そして彼らの不信仰のゆえに、そこでは力あるわざを、あまりなさらなかった。
ルカによる福音書第四章
一六 それからお育ちになったナザレに行き、安息日にいつものように会堂にはいり、聖書を朗読しようとして立たれた。
一七 すると預言者イザヤの書が手渡されたので、その書を開いて、こう書いてある所を出された、
一八 「主の御霊がわたしに宿っている。貧しい人々に福音を宣べ伝えさせるために、わたしを聖別してくださったからである。主はわたしをつかわして、囚人が解放され、盲人の目が開かれることを告げ知らせ、打ちひしがれている者に自由を得させ、
一九 主のめぐみの年を告げ知らせるのである」。
二〇 イエスは聖書を巻いて係りの者に返し、席に着かれると、会堂にいるみんなの者の目がイエスに注がれた。
二一 そこでイエスは、「この聖句は、あなたがたが耳にしたこの日に成就した」と説きはじめられた。
二二 すると、彼らはみなイエスをほめ、またその口から出て来るめぐみの言葉に感嘆して言った、「この人はヨセフの子ではないか」。
二三 そこで彼らに言われた、「あなたがたは、きっと『医者よ、自分自身をいやせ』ということわざを引いて、カペナウムで行われたと聞いていた事を、あなたの郷里のこの地でもしてくれ、と言うであろう」。
二四 それから言われた、「よく言っておく。預言者は、自分の郷里では歓迎されないものである。
二五 よく聞いておきなさい。エリヤの時代に、三年六か月にわたって天が閉じ、イスラエル全土に大ききんがあった際、そこには多くのやもめがいたのに、
二六 エリヤはそのうちのだれにもつかわされないで、ただシドンのサレプタにいるひとりのやもめにだけつかわされた。
二七 また預言者エリシャの時代に、イスラエルには多くの重い皮膚病にかかった多くの人がいたのに、そのうちのひとりもきよめられないで、ただシリヤのナアマンだけがきよめられた」。
二八 会堂にいた者たちはこれを聞いて、みな憤りに満ち、
二九 立ち上がってイエスを町の外へ追い出し、その町が建っている丘のがけまでひっぱって行って、突き落そうとした。
三〇 しかし、イエスは彼らのまん中を通り抜けて、去って行かれた。
ヨハネによる福音書第六章
四一 ユダヤ人らは、イエスが「わたしは天から下ってきたパンである」と言われたので、イエスについてつぶやき始めた。
四二 そして言った、「これはヨセフの子イエスではないか。わたしたちはその父母を知っているではないか。わたしは天から下ってきたと、どうして今いうのか」。
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