四つの福音書による一つのイエス物語33
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書を一つのイエス物語に纏めました
マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネの順にイエス物語は発展していきます
物語の初めから終りまでを331の話に分け話の一つ一つを四福音書の日本語訳を並べる形で紹介しています
福音書の日本語訳は英国聖書會社「新約全書」(明治三十九年発行)、日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)、日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)を並べて比較できるようにしました
*
033
*
信じる者の求めに応じて病人を癒す
*
上の言葉が四福音書の中でどう記されているか、記されていないか
ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ  ΚΑΤΑ ΜΑΤΘΑΙΟΝ ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΚΑΤΑ ΙΩΑΝΝΗΝ
馬可傳iケ書 馬太傳iケ書 路加傳iケ書 約翰傳iケ書
マルコ傳iケ書 マタイ傳iケ書 ルカ傳iケ書 ヨハネ傳iケ書
マルコによる福音書 マタイによる福音書 ルカによる福音書 ヨハネによる福音書
8;5〜13 7;1〜10 4;43〜54
第八章五〜一三節 第七章一〜一〇節 第四章四三〜五四節
*
英国聖書會社「舊新約全書」(明治三十九年発行)の「新約全書」で見てみましょう
馬太傳iケ書第八章
五 イエス カペナウムに入しとき百夫の長きたり願て曰けるは
六 主よ我僕癱瘋をやみ家に臥ゐて甚だ惱めり
七 イエス曰けるは我ゆきて之を醫すべし
八 百夫の長こたへけるは主よ我なんぢを我が屋下に入奉るは恐れ多し唯一言を出し給は我僕は愈ん
九 蓋われ人の權威の下にあるなるに我下に亦兵卒ありて此に往と曰ばゆき彼に來れと曰ば來る我僕に此を行と曰ばち行が故なり
十 イエスこれを聞て奇み從へる人に曰けるは我まことに爾曹にんイスラエルの中にだに未だ斯る篤信に遇ざる也
十一 われ爾曹にん多の人東より西より來てアブラハム イサク ヤコブと偕に天國に坐し
十二 國の子は外の幽暗に逐出され其處にて哀哭切齒すること有ん
十三 イエス百夫の長に往なんぢが信仰の如く爾に成べしと曰たまへる是時に僕は愈たり
路加傳iケ書第七章
一 イエス此すべての言を民に畢てカペナウンに入しに
二 ある百夫の長その愛する僕やみて死ばかりなりければ
三 イエスの事を聞ユダヤの長老等を遣して來り僕を助け給んことを求り
四 彼等イエスに就り切に勸いひけるは此事を求る人は善人なり
五 我民を愛し我の爲に會堂を建たり
六 イエス彼等と共に往てや其家に近けるとき百夫の長朋友を遣して曰せけるは主よ自己を勞動こと勿れ我が家裏に入奉るは憚多し
七 故に我なんぢの前に出も亦憚あり第一言を發たまは我僕は愈ん
八 蓋われ人の權威の下になるに我下に亦兵卒ありて此に往と命ば往かれに來と命ば來る我僕に之を行と命ばち行が故なり
九 イエス聞て之を奇み從へる人を顧て曰けるは我なんぢらにんイスラエルの中にても未だ斯る篤信に遇ざりき
十 遣されたる家に歸て病たりし僕を見ば已に全快をなせり
約翰傳iケ書第四章
四三 二日すぎてイエス此を去ガリラヤに往り
四四 蓋かれ自ら預言に本土にて尊ばる事なしと言しに因
四五 ガリラヤに至りし時ガリラヤの人彼を接たり蓋さきに筵の時イエスのエルサレムにて行ひし凡の事を彼等もその筵に往て之を見たれば也
四六 イエス復ガリラヤのカナに至る此はに水を酒に爲し處なり時に王の大臣その子病に係てカペナウンに在ければ
四七 イエスのユダヤよりガリラヤに來れる事をきゝ即ちイエスの所に往てカペナウンに下り其子を醫し給はんことを請りそは瀕死なりければ也
四八 イエス彼に曰けるは爾曹休徵と異能を見ずば信ぜじ
四九 彼曰けるは主よ我子の死ざる先に下り給へ
五十 イエス曰けるは往なんぢの子は生るなり其人イエスの曰し言を信じて去ぬ
五一 下る時その僕等かれに遇てけるは爾の子は生るなり
五二 彼その愈はじめし時を彼等に問けれげ答て昨日の晝の一時に熱さめたりと曰
五三 父はイエスの爾が子は生る也と言たまひし時と其時の同きことを知て己と其全家ことごとく皆信ぜり
五四 この第二の奇跡はイエス ユダヤよりガリラヤに至て行るなり
*
日本聖書協會「新約聖書」改譯(大正六年)で見てみましょう
マタイ傳iケ書第八章
五 イエス、カペナウムに入り給ひしとき、百卒長きたり、
六 請ひていふ『主よ、わが僕、中風を病み、家に臥しゐて甚く苦しめり』
七 イエス言ひ給ふ『われ往きて醫さん』
八 百卒長こたヘて言ふ『主よ、我は汝をわが屋根の下に入れ奉るに足らぬなり。ただ御言のみを賜へ、さらば我が僕はいえん。
九 我みづから權威の下にあるなるに、我が下にまた兵卒ありて、此に「ゆけ」と言へば往き、彼に「きたれ」と言へば來り、わが僕に「これを爲せ」といへば爲すなり』
 イエス聞きて怪しみ、從へる人に言ひ給ふ『まことに汝らにぐ、斯る篤き信仰はイスラエルの中の一人にだに見しことなし。
一一 又なんぢらにぐ、多くの人、東より西より來り、アブラハム、イサク、ヤコブとともに天國の宴につき、
一二 御國の子らは外の暗に逐ひ出され、そこにて哀哭切齒することあらん』
一三 イエス百卒長に『ゆけ、汝の信ずるごとく汝になれ』と言ひ給へば、このとき僕いえたり。
ルカ傳iケ書第七章
一 イエス凡て此らの言を民に聞かせ終へて後、カペナウムに入り給ふ。
二 時に或る百卒長、その重んずる僕やみて死ぬばかりなりしかば、
三 イエスの事を聽きて、ユダヤ人の長老たちを遣し、來りて僕を救ひ給はんことを願ふ。
四 彼らイエスの許にいたり、切に請ひて言ふ『かの人は、此の事を爲らるるに相應し。
五 わが國人を愛し、我らのために會堂を建てたり』
六 イエス共に往き給ひて、その家はや程近くなりしとき、百卒長、數人の友を遣して言はしむ『主よ、自らを煩はし給ふな。我は汝をわが屋根の下に入れまつるに足らぬなり。
七 されば御前に出づるにも相應しからずと思へり、ただ御言を賜ひて我が僕をいやし給へ。
八 我みづから權威の下に置かるるなるに、我が下にまた兵卒ありて、此に「往け」と言へば往き、彼に「來れ」と言へば來り、わが僕に「これを爲せ」と言へば爲すなり』
九 イエス聞きて彼を怪しみ振反りて、從ふ群衆に言ひ給ふ『われ汝らにぐ、イスラエルの中にだに斯るあつき信仰は見しことなし』
 遣されたるども家に歸りて、僕を見れば、旣に健康となれり。
ヨハネ傳iケ書第四章
四三 二日の後イエスここを去りてガリラヤに往き給ふ。
四四 イエス自ら證して預言は己がクにて尊ばるる事なしと言ひ給へり。
四五 斯てガリラヤに往き給へば、ガリラヤ人これを迎へたり。前に彼らも祭に上り、その祭の時にエルサレムにて行ひ給ひし事を見たる故なり。
四六 イエス復ガリラヤのカナに往き給ふ、ここは前に水を葡萄酒になし給ひし處なり。時に王の近臣あり、その子カペナウムにて病みゐたれば、
四七 イエスのユダヤよりガリラヤに來り給へるを聞き、御許にゆきてカペナウムに下り、その子を醫し給はんことを請ふ、子は死ぬばかりなりしなり。
四八 爰にイエス言ひ給ふ『なんぢら徵と不思議とを見ずば、信ぜじ』
四九 近臣いふ『主よ、わが子の死なぬ間にくだり給へ』
 イエス言ひ給ふ『かへれ、汝の子は生くるなり』彼はイエスの言ひ給ひしことを信じて歸りしが、
五一 下る途中、僕ども往き遇ひて、その子の生きたることをぐ。
五二 そのえはじめし時を問ひしに『昨日の第七時に熱去れり』といふ。
五三 父その時の、イエスが『なんぢの子は生くるなり』と言ひ給ひし時と同じきを知り、而して己も家のもみな信じたり。
五四 是はイエス、ユダヤよりガリラヤに往きて爲し給へる第二の徵なり。
*
日本聖書協会「新約聖書」口語訳(昭和二十九年)で見てみましょう
マタイによる福音書第八章
五 さて、イエスがカペナウムに帰ってこられたとき、ある百卒長がみもとにきて訴えて言った、
六 「主よ、わたしの僕が中風でひどく苦しんで、家に寝ています」。
七 イエスは彼に、「わたしが行ってなおしてあげよう」と言われた。
八 そこで百卒長は答えて言った、「主よ、わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。ただ、お言葉を下さい。そうすれば僕はなおります。
九 わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。
一〇 イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた人々に言われた、「よく聞きなさい。イスラエル人の中にも、これほどの信仰を見たことがない。
一一 なお、あなたがたに言うが、多くの人が東から西からきて、天国で、アブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席につくが、
一二 この国の子らは外のやみに追い出され、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう」。
一三 それからイエスは百卒長に「行け、あなたの信じたとおりになるように」と言われた。すると、ちょうどその時に、僕はいやされた。
ルカによる福音書第七章
一 イエスはこれらの言葉をことごとく人々に聞かせてしまったのち、カペナウムに帰ってこられた。
二 ところが、ある百卒長の頼みにしていた僕が、病気になって死にかかっていた。
三 この百卒長はイエスのことを聞いて、ユダヤ人の長老たちをイエスのところにつかわし、自分の僕を助けにきてくださるようにと、お願いした。
四 彼らはイエスのところにきて、熱心に願って言った、「あの人はそうしていただくねうちがございます。
五 わたしたちの国民を愛し、わたしたちのために会堂を建ててくれたのです」。
六 そこで、イエスは彼らと連れだってお出かけになった。ところが、その家からほど遠くないあたりまでこられたとき、百卒長は友だちを送ってイエスに言わせた、「主よ、どうぞ、ご足労くださいませんように。わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。
七 それですから、自分でお迎えにあがるねうちさえないと思っていたのです。ただ、お言葉を下さい。そして、わたしの僕をなおしてください。
八 わたしも権威の下に服している者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。
九 イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた群衆の方に振り向いて言われた、「あなたがたに言っておくが、これほどの信仰は、イスラエルの中でも見たことがない」。
一〇 使にきた者たちが家に帰ってみると、僕は元気になっていた。
ヨハネによる福音書第四章
四三 ふつかの後に、イエスはここを去ってガリラヤへ行かれた。
四四 イエスはみずからはっきり、「預言者は自分の故郷では敬われないものだ」と言われたのである。
四五 ガリラヤに着かれると、ガリラヤの人たちはイエスを歓迎した。それは、彼らも祭に行っていたので、その祭の時、イエスがエルサレムでなされたことをことごとく見ていたからである。
四六 イエスは、またガリラヤのカナに行かれた。そこは、かつて水をぶどう酒にかえられた所である。ところが、病気をしているむすこを持つある役人がカペナウムにいた。
四七 この人が、ユダヤからガリラヤにイエスのきておられることを聞き、みもとにきて、カペナウムに下って、彼の子をなおしていただきたいと、願った。その子が死にかかっていたからである。
四八 そこで、イエスは彼に言われた、「あなたがたは、しるしと奇跡とを見ない限り、決して信じないだろう」。
四九 この役人はイエスに言った、「主よ、どうぞ、子供が死なないうちにきて下さい」。
五〇 イエスは彼に言われた、「お帰りなさい。あなたのむすこは助かるのだ」。彼は自分に言われたイエスの言葉を信じて帰って行った。
五一 その下って行く途中、僕たちが彼に出会い、その子が助かったことを告げた。
五二 そこで、彼は僕たちに、そのなおりはじめた時刻を尋ねてみたら、「きのうの午後一時に熱が引きました」と答えた。
五三 それは、イエスが「あなたのむすこは助かるのだ」と言われたのと同じ時刻であったことを、この父は知って、彼自身もその家族一同も信じた。
五四 これは、イエスがユダヤからガリラヤにきてなされた第二のしるしである。
Office Murakami