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創世記の日本語訳を明治(大正)・昭和の時代に沿って読み比べてみました |
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明治訳は英国聖書會社「舊約全書」(明治三十九年発行)による文語訳です。 |
大正訳は日本聖書協會「舊約聖書」(大正六年)による文語訳です。明治訳と本文は同じです(書名は「出埃及記→出エジプト記」「利未記→レビ記」と変わります) |
昭和訳は日本聖書協会「新約聖書」(昭和二十九年)による口語訳です。 |
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明治(大正)訳は漢字・送り仮名とも明治(大正)時代そのままの形を復刻できるように努めました。シフトJISにない漢字はUnicodeで捜しました。 |
明治(大正)・昭和訳を一節ずつ縦に並べて記すことで時代に沿った訳の変化を読み取れるようにしました。 |
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<創世記>舊約全書(明治訳:文語訳)==== |
<>舊約聖書(大正訳:文語訳) |
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<創世記>新約聖書(昭和訳:口語訳) |
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☞1章 |
1章 |
一 元始に~天地を創造たまへり |
☞2章 |
一 はじめに神は天と地とを創造された。 |
☞3章 |
二 地は定形なく曠空くしてK暗淵の面にあり~の靈水の面を覆たりき |
☞4章 |
二 地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。 |
☞5章 |
三 ~光あれと言たまひければ光ありき |
☞6章 |
三 神は「光あれ」と言われた。すると光があった。 |
☞7章 |
四 ~光を善と觀たまへり~光と暗を分ちたまへり |
☞8章 |
四 神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。 |
☞9章 |
五 ~光を晝と名け暗を夜と名けたまへり夕あり朝ありき是首の日なり |
☞10章 |
五 神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である。 |
☞11章 |
六 ~言たまひけるは水の中に穹蒼ありて水と水とを分つべし |
☞12章 |
六 神はまた言われた、「水の間におおぞらがあって、水と水とを分けよ」。 |
☞13章 |
七 ~穹蒼を作りて穹蒼の下の水と穹蒼の上の水とを判ちたまへり即ち斯なりぬ |
☞14章 |
七 そのようになった。神はおおぞらを造って、おおぞらの下の水とおおぞらの上の水とを分けられた。 |
☞15章 |
八 ~穹蒼を天と名けたまへり夕あり朝ありき是二日なり |
☞16章 |
八 神はそのおおぞらを天と名づけられた。夕となり、また朝となった。第二日である。 |
☞17章 |
九 ~言たまひけるは天の下の水は一處に集りて乾ける土顯べしと即ち斯なりぬ |
☞18章 |
九 神はまた言われた、「天の下の水は一つ所に集まり、かわいた地が現れよ」。そのようになった。 |
☞19章 |
一〇 ~乾ける土を地と名け水の集合るを海と名けたまへり~之を善と觀たまへり |
☞20章 |
一〇 神はそのかわいた地を陸と名づけ、水の集まった所を海と名づけられた。神は見て、良しとされた。 |
☞21章 |
一一 ~言たまひけるは地は草と實蓏を生ずる草蔬と其類に從ひ果を結びみづから核をもつ所の果を結ぶ樹を地に發出すべしと即ち斯なりぬ |
☞22章 |
一一 神はまた言われた、「地は青草と、種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結ぶ果樹とを地の上にはえさせよ」。そのようになった。 |
☞23章 |
一二 地草と其類に從ひ實蓏を生ずる草蔬と其類に從ひ果を結てみづから核をもつ所の樹を發出せり~これを善と觀たまへり |
☞24章 |
一二 地は青草と、種類にしたがって種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結ぶ木とをはえさせた。神は見て、良しとされた。 |
☞25章 |
一三 夕あり朝ありき是三日なり |
☞26章 |
一三 夕となり、また朝となった。第三日である。 |
☞27章 |
一四 ~言たまひけるは天の穹蒼に光明ありて晝と夜とを分ち又天象のため時節のため日のため年のために成べし |
☞28章 |
一四 神はまた言われた、「天のおおぞらに光があって昼と夜とを分け、しるしのため、季節のため、日のため、年のためになり、 |
☞29章 |
一五 又天の穹蒼にありて地を照す光となるべしと即ち斯なりぬ |
☞30章 |
一五 天のおおぞらにあって地を照らす光となれ」。そのようになった。 |
☞31章 |
一六 ~二の巨なる光を造り大なる光に晝を司どらしめ小き光に夜を司どらしめたまふまた星を造りたまへり |
☞32章 |
一六 神は二つの大きな光を造り、大きい光に昼をつかさどらせ、小さい光に夜をつかさどらせ、また星を造られた。 |
☞33章 |
一七 ~これを天の穹蒼に置て地を照さしめ |
☞34章 |
一七 神はこれらを天のおおぞらに置いて地を照らさせ、 |
☞35章 |
一八 晝と夜を司どらしめ光と暗を分たしめたまふ~これを善と觀たまへり |
☞36章 |
一八 昼と夜とをつかさどらせ、光とやみとを分けさせられた。神は見て、良しとされた。 |
☞37章 |
一九 夕あり朝ありき是四日なり |
☞38章 |
一九 夕となり、また朝となった。第四日である。 |
☞39章 |
二〇 ~云たまひけるは水には生物饒に生じ鳥は天の穹蒼の面に地の上に飛べしと |
☞40章 |
二〇 神はまた言われた、「水は生き物の群れで満ち、鳥は地の上、天のおおぞらを飛べ」。 |
☞41章 |
二一 ~巨なる魚と水に饒に生じて動くゥの生物を其類に從ひて創造り又翼あるゥの鳥を其類に從ひて創造りたまへり~之を善と觀たまへり |
☞42章 |
二一 神は海の大いなる獣と、水に群がるすべての動く生き物とを、種類にしたがって創造し、また翼のあるすべての鳥を、種類にしたがって創造された。神は見て、良しとされた。 |
☞43章 |
二二 ~之を祝して曰く生よ繁息よ海の水に充牣よ又禽鳥は地に蕃息よと |
☞44章 |
二二 神はこれらを祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、海の水に満ちよ、また鳥は地にふえよ」。 |
☞45章 |
二三 夕あり朝ありき是五日なり |
☞46章 |
二三 夕となり、また朝となった。第五日である。 |
☞47章 |
二四 ~言給けるは地は生物を其類に從て出し家畜と昆蟲と地の獸を其類に從て出すべしと即ち斯なりぬ |
☞48章 |
二四 神はまた言われた、「地は生き物を種類にしたがっていだせ。家畜と、這うものと、地の獣とを種類にしたがっていだせ」。そのようになった。 |
☞49章 |
二五 ~地の獸を其類に從て造り家畜を其類に從て造り地のゥの昆蟲を其類に從て造り給へり~之を善と觀給へり |
☞50章 |
二五 神は地の獣を種類にしたがい、家畜を種類にしたがい、また地に這うすべての物を種類にしたがって造られた。神は見て、良しとされた。 |
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二六 ~言給けるは我儕に象て我儕の像の如くに我儕人を造り之に海の魚と天空の鳥と家畜と全地と地に匍ふ所のゥの昆蟲を治めんと |
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二六 神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。 |
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二七 ~其像の如くに人を創造たまへり即ち~の像の如くに之を創造之を男と女に創造たまへり |
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二七 神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。 |
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二八 ~彼等を祝し~彼等に言たまひけるは生よ繁殖よ地に滿盈よ之を服從せよ又海の魚と天空の鳥と地に動く所のゥの生物を治めよ |
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二八 神は彼らを祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ」。 |
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二九 ~言たまひけるは視よ我全地の面にある實蓏のなるゥの草蔬と核ある木果の結るゥの樹とを汝等に與ふこれは汝らの糧となるべし |
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二九 神はまた言われた、「わたしは全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたに与える。これはあなたがたの食物となるであろう。 |
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三〇 又地のゥの獸と天空のゥの鳥および地に匍ふゥの物等凡そ生命ある者には我食物としてゥのき草を與ふと即ち斯なりぬ |
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三〇 また地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのもの、すなわち命あるものには、食物としてすべての青草を与える」。そのようになった。 |
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三一 ~其造りたるゥの物を視たまひけるに甚だ善りき夕あり朝ありき是六日なり |
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三一 神が造ったすべての物を見られたところ、それは、はなはだ良かった。夕となり、また朝となった。第六日である。 |
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2章 |
一 斯天地および其衆群悉く成ぬ |
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一 こうして天と地と、その万象とが完成した。 |
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二 第七日に~其造りたる工を竣たまへり即ち其造りたる工を竣て七日に安息たまへり |
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二 神は第七日にその作業を終えられた。すなわち、そのすべての作業を終って第七日に休まれた。 |
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三 ~七日を祝して之を~聖めたまへり其は~其創造爲たまへる工を盡く竣て是日に安息みたまひたればなり |
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三 神はその第七日を祝福して、これを聖別された。神がこの日に、そのすべての創造のわざを終って休まれたからである。 |
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四 ヱホバ~地と天を造りたまへる日に天地の創造られたる其由來は是なり |
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四 これが天地創造の由来である。主なる神が地と天とを造られた時、 |
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五 野のゥの灌木は未だ地にあらず野のゥの草蔬は未生ぜざりき其はヱホバ~雨を地に降せたまはず亦土地を耕す人なかりければなり |
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五 地にはまだ野の木もなく、また野の草もはえていなかった。主なる神が地に雨を降らせず、また土を耕す人もなかったからである。 |
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六 霧地より上りて土地の面を遍く潤したり |
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六 しかし地から泉がわきあがって土の全面を潤していた。 |
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七 ヱホバ~土の塵を以て人を造り生氣を其鼻に噓入たまへり人即ち生靈となりぬ |
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七 主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹きいれられた。そこで人は生きた者となった。 |
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八 ヱホバ~エデンの東の方に園を設て其造りし人を其處に置たまへり |
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八 主なる神は東のかた、エデンに一つの園を設けて、その造った人をそこに置かれた。 |
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九 ヱホバ~觀に美麗く食ふに善き各種の樹を土地より生ぜしめ又園の中に生命の樹および善悪を知の樹を生ぜしめ給へり |
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九 また主なる神は、見て美しく、食べるに良いすべての木を土からはえさせ、更に園の中央に命の木と、善悪を知る木とをはえさせられた。 |
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一〇 河エデンより出て園を潤し彼處より分れて四の源となれり |
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一〇 また一つの川がエデンから流れ出て園を潤し、そこから分れて四つの川となった。 |
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一一 其第一の名はピソンといふ是は金あるハビラの全地を繞る者なり |
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一一 その第一の名はピソンといい、金のあるハビラの全地をめぐるもので、 |
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一二 其地の金は善し又ブドラクと碧玉彼處にあり |
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一二 その地の金は良く、またそこはブドラクと、しまめのうとを産した。 |
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一三 第二の河の名はギホンといふ是はクシの全地を繞る者なり |
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一三 第二の川の名はギホンといい、クシの全地をめぐるもの。 |
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一四 第三の河の名はヒデケルといふ是はアッスリヤの東に流るゝものなり第四の河はユフラテなり |
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一四 第三の川の名はヒデケルといい、アッスリヤの東を流れるもの。第四の川はユフラテである。 |
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一五 ヱホバ~其人を挈て彼をエデンの園に置き之を理め之を守らしめ給へり |
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一五 主なる神は人を連れて行ってエデンの園に置き、これを耕させ、これを守らせられた。 |
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一六 ヱホバ~其人に命じて言たまひけるは園の各種の樹の果は汝意のまゝに食ふことを得 |
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一六 主なる神はその人に命じて言われた、「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。 |
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一七 然ど善惡を知の樹は汝その果を食ふべからず汝之を食ふ日には必ず死べければなり |
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一七 しかし善悪を知る木からは取って食べてはならない。それを取って食べると、きっと死ぬであろう」。 |
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一八 ヱホバ~言たまひけるは人獨なるは善らず我彼に適ふ助者を彼のために造らんと |
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一八 また主なる神は言われた、「人がひとりでいるのは良くない。彼のために、ふさわしい助け手を造ろう」。 |
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一九 ヱホバ~土を以て野のゥの獸と天空のゥの鳥を造りたまひてアダムの之を何と名るかを見んとて之を彼の所に率ゐいたりたまへりアダムが生物に名けたる所は皆其名となりぬ |
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一九 そして主なる神は野のすべての獣と、空のすべての鳥とを土で造り、人のところへ連れてきて、彼がそれにどんな名をつけるかを見られた。人がすべて生き物に与える名は、その名となるのであった。 |
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二〇 アダムゥの家畜と天空の鳥と野のゥの獸に名を與へたり然どアダムには之に適ふ助者みえざりき |
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二〇 それで人は、すべての家畜と、空の鳥と、野のすべての獣とに名をつけたが、人にはふさわしい助け手が見つからなかった。 |
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二一 是に於てヱホバ~アダムを熟く睡らしめ睡りし時其肋骨の一を取り肉をもて其處を塡塞たまへり |
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二一 そこで主なる神は人を深く眠らせ、眠った時に、そのあばら骨の一つを取って、その所を肉でふさがれた。 |
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二二 ヱホバ~アダムより取たる肋骨を以て女を成り之をアダムの所に携きたりたまへり |
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二二 主なる神は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところへ連れてこられた。 |
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二三 アダム言けるは此こそわが骨の骨わが肉の肉なれ此は男より取たる者なれば之を女と名くべしと |
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二三 そのとき、人は言った。「これこそ、ついにわたしの骨の骨、/わたしの肉の肉。男から取ったものだから、/これを女と名づけよう」。 |
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二四 是故に人は其父母を離れて其妻に好合ひ二人一體となるべし |
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二四 それで人はその父と母を離れて、妻と結び合い、一体となるのである。 |
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二五 アダムと其妻は二人俱に裸體にして愧ざりき |
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二五 人とその妻とは、ふたりとも裸であったが、恥ずかしいとは思わなかった。 |
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3章 |
一 ヱホバ~の造りたまひし野の生物の中に蛇最も狡猾し蛇婦に言ひけるは~眞に汝等園のゥの樹の果は食ふべからずと言たまひしや |
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一 さて主なる神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾であった。へびは女に言った、「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか」。 |
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二 婦蛇に言けるは我等園の樹の果を食ふことを得 |
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二 女はへびに言った、「わたしたちは園の木の実を食べることは許されていますが、 |
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三 然ど園の中央に在樹の果實をば~汝等之を食べからず又之に捫るべからず恐は汝等死んと言給へり |
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三 ただ園の中央にある木の実については、これを取って食べるな、これに触れるな、死んではいけないからと、神は言われました」。 |
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四 蛇婦に言けるは汝等必らず死る事あらじ |
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四 へびは女に言った、「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。 |
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五 ~汝等が之を食ふ日には汝等の目開け汝等~の如くなりて善惡を知に至るを知りたまふなりと |
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五 それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」。 |
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六 婦樹を見ば食に善く目に美麗しく且智慧からんが爲に慕はしき樹なるによりて遂に其果實を取て食ひ亦之を己と偕なる夫に與へければ彼食へり |
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六 女がその木を見ると、それは食べるに良く、目には美しく、賢くなるには好ましいと思われたから、その実を取って食べ、また共にいた夫にも与えたので、彼も食べた。 |
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七 是において彼等の目俱に開て彼等其裸體なるを知り乃ち無花果樹の葉を綴て裳を作れり |
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七 すると、ふたりの目が開け、自分たちの裸であることがわかったので、いちじくの葉をつづり合わせて、腰に巻いた。 |
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八 彼等園の中に日のC凉き時分歩みたまふヱホバ~の聲を聞しかばアダムと其妻即ちヱホバ~の面を避て園の樹の間に身を匿せり |
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八 彼らは、日の涼しい風の吹くころ、園の中に主なる神の歩まれる音を聞いた。そこで、人とその妻とは主なる神の顔を避けて、園の木の間に身を隠した。 |
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九 ヱホバ~アダムを召て之に言たまひけるは汝は何處にをるや |
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九 主なる神は人に呼びかけて言われた、「あなたはどこにいるのか」。 |
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一〇 彼いひけるは我園の中に汝の聲を聞き裸體なるにより懼れて身を匿せりと |
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一〇 彼は答えた、「園の中であなたの歩まれる音を聞き、わたしは裸だったので、恐れて身を隠したのです」。 |
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一一 ヱホバ言たまひけるは誰が汝の裸なるを汝に吿しや汝は我が汝に食ふなかれと命じたる樹の果を食ひたりしや |
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一一 神は言われた、「あなたが裸であるのを、だれが知らせたのか。食べるなと、命じておいた木から、あなたは取って食べたのか」。 |
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一二 アダム言けるは汝が與て我と偕ならしめたまひし婦彼其樹の果實を我にあたへたれば我食へりと |
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一二 人は答えた、「わたしと一緒にしてくださったあの女が、木から取ってくれたので、わたしは食べたのです」。 |
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一三 ヱホバ~婦に言たまひけるは汝がなしたる此事は何ぞや婦言けるに蛇我を誘惑して我食へりと |
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一三 そこで主なる神は女に言われた、「あなたは、なんということをしたのです」。女は答えた、「へびがわたしをだましたのです。それでわたしは食べました」。 |
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一四 ヱホバ~蛇に言たまひけるは汝是を爲たるに因て汝はゥの家畜と野のゥの獸よりも勝りて詛はる汝は腹行て一生の間塵を食ふべし |
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一四 主なる神はへびに言われた、/「おまえは、この事を、したので、/すべての家畜、野のすべての獣のうち、/最ものろわれる。おまえは腹で、這いあるき、/一生、ちりを食べるであろう。 |
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一五 又我汝と婦の間および汝の苗裔と婦の苗裔の間に怨恨を置ん彼は汝の頭を碎き汝は彼の踵を碎かん |
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一五 わたしは恨みをおく、/おまえと女とのあいだに、/おまえのすえと女のすえとの間に。彼はおまえのかしらを砕き、/おまえは彼のかかとを砕くであろう」。 |
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一六 又婦に言たまひけるは我大に汝の懷妊の劬勞を揩キべし汝は苦みて子を產ん又汝は夫をしたひ彼は汝を治めん |
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一六 つぎに女に言われた、/「わたしはあなたの産みの苦しみを大いに増す。あなたは苦しんで子を産む。それでもなお、あなたは夫を慕い、/彼はあなたを治めるであろう」。 |
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一七 又アダムに言たまひけるは汝その妻の言を聽て我が汝に命じて食ふべからずと言たる樹の果を食ひしに緣て土は汝のために詛はる汝は一生のあひだ勞苦て其より食を得ん |
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一七 更に人に言われた、「あなたが妻の言葉を聞いて、食べるなと、わたしが命じた木から取って食べたので、/地はあなたのためにのろわれ、/あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。 |
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一八 土は荊棘と薊とを汝のために生ずべしまた汝は野の草蔬を食ふべし |
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一八 地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、/あなたは野の草を食べるであろう。 |
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一九 汝は面に汗して食物を食ひ終に土に歸らん其は其中より汝は取れたればなり汝は塵なれば塵に皈るべきなりと |
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一九 あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、/あなたは土から取られたのだから。あなたは、ちりだから、ちりに帰る」。 |
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二〇 アダム其妻の名をエバと名けたり其は彼は群の生物の母なればなり |
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二〇 さて、人はその妻の名をエバと名づけた。彼女がすべて生きた者の母だからである。 |
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二一 ヱホバ~アダムと其妻のために皮衣を作りて彼等に衣せたまへり |
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二一 主なる神は人とその妻とのために皮の着物を造って、彼らに着せられた。 |
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二二 ヱホバ~曰たまひけるは視よ夫人我等の一の如くなりて善惡を知る然ば恐くは彼其手を舒べ生命の樹の果實をも取りて食ひ無限生んと |
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二二 主なる神は言われた、「見よ、人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知るものとなった。彼は手を伸べ、命の木からも取って食べ、永久に生きるかも知れない」。 |
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二三 ヱホバ~彼をエデンの園よりいだし其取て造られたるところの土を耕さしめたまへり |
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二三 そこで主なる神は彼をエデンの園から追い出して、人が造られたその土を耕させられた。 |
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二四 斯~其人を逐出しエデンの園の東にケルビムと自から旋轉る焰の劍を置て生命の樹の途を保守りたまふ |
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二四 神は人を追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて、命の木の道を守らせられた。 |
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4章 |
一 アダム其妻エバを知る彼孕みてカインを生みて言けるは我ヱホバによりて一個の人を得たりと |
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一 人はその妻エバを知った。彼女はみごもり、カインを産んで言った、「わたしは主によって、ひとりの人を得た」。 |
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二 彼また其弟アベルを生りアベルは羊を牧ふ者力インは土を耕す者なりき |
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二 彼女はまた、その弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 |
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三 日を經て後カイン土より出る果を携來りてヱホバに供物となせり |
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三 日がたって、カインは地の産物を持ってきて、主に供え物とした。 |
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四 アベルもまた其羊の初生と其肥たるものを携來れりヱホバ、アベルと其供物を眷顧みたまひしかども |
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四 アベルもまた、その群れのういごと肥えたものとを持ってきた。主はアベルとその供え物とを顧みられた。 |
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五 カインと其供物をば眷み給はざりしかば力イン甚怒り且其面をふせたり |
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五 しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。 |
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六 ヱホバ、カインに言たまひけるは汝何ぞ怒るや何ぞ面をふするや |
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六 そこで主はカインに言われた、「なぜあなたは憤るのですか、なぜ顔を伏せるのですか。 |
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七 汝若善を行はゞ擧ることをえざらんや若善を行はずば罪門戸に伏す彼は汝を慕ひ汝は彼を治めん |
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七 正しい事をしているのでしたら、顔をあげたらよいでしょう。もし正しい事をしていないのでしたら、罪が門口に待ち伏せています。それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなりません」。 |
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八 カイン其弟アベルに語りぬ彼等野にをりける時カイン其弟アベルに起かゝりて之を殺せり |
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八 カインは弟アベルに言った、「さあ、野原へ行こう」。彼らが野にいたとき、カインは弟アベルに立ちかかって、これを殺した。 |
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九 ヱホバ、力インに言たまひけるは汝の弟アべルは何處にをるや彼言ふ我しらず我あに我弟の守者ならんやと |
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九 主はカインに言われた、「弟アベルは、どこにいますか」。カインは答えた、「知りません。わたしが弟の番人でしょうか」。 |
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一〇 ヱホバ言たまひけるは汝何をなしたるや汝の弟の血の聲地より我に叫べり |
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一〇 主は言われた、「あなたは何をしたのです。あなたの弟の血の声が土の中からわたしに叫んでいます。 |
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一一 されば汝は詛れて此地を離るべし此地其口を啓きて汝の弟の血を汝の手より受たればなり |
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一一 今あなたはのろわれてこの土地を離れなければなりません。この土地が口をあけて、あなたの手から弟の血を受けたからです。 |
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一二 汝地を耕すとも地は再其カを汝に效さじ汝は地に吟行ふ流離子となるべしと |
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一二 あなたが土地を耕しても、土地は、もはやあなたのために実を結びません。あなたは地上の放浪者となるでしょう」。 |
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一三 カイン、エホバに言けるは我が罪は大にして負ふこと能はず |
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一三 カインは主に言った、「わたしの罰は重くて負いきれません。 |
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一四 視よ汝今日斯地の面より我を逐出したまふ我汝の面を覿ることなきにいたらん我地に吟行ふ流離子とならん凡そ我に遇ふ者我を殺さん |
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一四 あなたは、きょう、わたしを地のおもてから追放されました。わたしはあなたを離れて、地上の放浪者とならねばなりません。わたしを見付ける人はだれでもわたしを殺すでしょう」。 |
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一五 ヱホバ彼に言たまひけるは然らず凡そカインを殺す者は七倍の罰を受んとヱホバ、カインに遇ふ者の彼を擊ざるため印誌を彼に與へたまへり |
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一五 主はカインに言われた、「いや、そうではない。だれでもカインを殺す者は七倍の復讐を受けるでしょう」。そして主はカインを見付ける者が、だれも彼を打ち殺すことのないように、彼に一つのしるしをつけられた。 |
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一六 カイン、ヱホバの前を離て出でエデンの東なるノドの地に住り |
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一六 カインは主の前を去って、エデンの東、ノドの地に住んだ。 |
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一七 カイン其妻を知る彼孕みエノクを生りカイン邑を建て其邑の名を其子の名に循ひてエノクと名けたり |
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一七 カインはその妻を知った。彼女はみごもってエノクを産んだ。カインは町を建て、その町の名をその子の名にしたがって、エノクと名づけた。 |
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一八 エノクにイラデ生れたりイラデ、メホヤエルを生みメホヤエル、メトサエルを生みメトサエル、レメクを生り |
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一八 エノクにはイラデが生れた。イラデの子はメホヤエル、メホヤエルの子はメトサエル、メトサエルの子はレメクである。 |
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一九 レメク二人の妻を娶れり一の名はアダと曰ひ一の名はチラと曰り |
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一九 レメクはふたりの妻をめとった。ひとりの名はアダといい、ひとりの名はチラといった。 |
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二〇 アダ、ヤバルを生めり彼は天幕に住て家畜を牧ふ所の者の先祖なり |
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二〇 アダはヤバルを産んだ。彼は天幕に住んで、家畜を飼う者の先祖となった。 |
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二一 其弟の名はユバルと云ふ彼は琴と笛とをとる凡ての者の先祖なり |
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二一 その弟の名はユバルといった。彼は琴や笛を執るすべての者の先祖となった。 |
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二二 亦チラ、トバルカインを生り彼は銅と鐡のゥの刃物を鍛ふ者なりトバルカインの妹をナアマといふ |
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二二 チラもまたトバルカインを産んだ。彼は青銅や鉄のすべての刃物を鍛える者となった。トバルカインの妹をナアマといった。 |
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二三 レメク其妻等に言けるはアダとチラよ我聲を聽けレメクの妻等よわが言を容よ我わが創傷のために人を殺すわが痍のために少年を殺す |
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二三 レメクはその妻たちに言った、/「アダとチラよ、わたしの声を聞け、/レメクの妻たちよ、わたしの言葉に耳を傾けよ。わたしは受ける傷のために、人を殺し、/受ける打ち傷のために、わたしは若者を殺す。 |
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二四 カインのために七倍の罰あればレメクのためには七十七倍の罰あらん |
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二四 カインのための復讐が七倍ならば、/レメクのための復讐は七十七倍」。 |
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二五 アダム復其妻を知て彼男子を生み其名をセツと名けたり其は彼~我にカインの殺したるアベルのかはりに他の子を與へたまへりといひたればなり |
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二五 アダムはまたその妻を知った。彼女は男の子を産み、その名をセツと名づけて言った、「カインがアベルを殺したので、神はアベルの代りに、ひとりの子をわたしに授けられました」。 |
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二六 セツにもまた男子生れたりかれ其名をエノスと名けたり此時人々エホバの名を呼ことをはじめたり |
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二六 セツにもまた男の子が生れた。彼はその名をエノスと名づけた。この時、人々は主の名を呼び始めた。 |
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5章 |
一 アダムの傳の書は是なり~人を創造りたまひし日に~に象て之を造りたまひ |
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一 アダムの系図は次のとおりである。神が人を創造された時、神をかたどって造り、 |
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二 彼等を男女に造りたまへり彼等の創造られし日に~彼等を祝してかれらの名をアダムと名けたまへり |
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二 彼らを男と女とに創造された。彼らが創造された時、神は彼らを祝福して、その名をアダムと名づけられた。 |
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三 アダム百三十歲に及びて其像に循ひ己に象て子を生み其名をセツと名けたり |
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三 アダムは百三十歳になって、自分にかたどり、自分のかたちのような男の子を生み、その名をセツと名づけた。 |
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四 アダムのセツを生し後の齡は八百歲にして男子女子を生り |
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四 アダムがセツを生んで後、生きた年は八百年であって、ほかに男子と女子を生んだ。 |
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五 アダムの生存へたる齡はキ合九百三十歲なりき而して死り |
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五 アダムの生きた年は合わせて九百三十歳であった。そして彼は死んだ。 |
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六 セツ百五歲に及びてエノスを生り |
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六 セツは百五歳になって、エノスを生んだ。 |
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七 セツ、エノスを生し後八百七年生存へて男子女子を生り |
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七 セツはエノスを生んだ後、八百七年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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八 セツの齡はキ合九百十二歲なりき而して死り |
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八 セツの年は合わせて九百十二歳であった。そして彼は死んだ。 |
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九 エノス九十歲におよびてカイナンを生り |
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九 エノスは九十歳になって、カイナンを生んだ。 |
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一〇 エノス、カイナンを生し後八百十五年生存へて男子女子を生り |
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一〇 エノスはカイナンを生んだ後、八百十五年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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一一 エノスの齡はキ合九百五歲なりき而して死り |
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一一 エノスの年は合わせて九百五歳であった。そして彼は死んだ。 |
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一二 カイナン七十歲におよびてマハラレルを生り |
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一二 カイナンは七十歳になって、マハラレルを生んだ。 |
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一三 カイナン、マハラレルを生し後八百四十年生存へて男子女子を生り |
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一三 カイナンはマハラレルを生んだ後、八百四十年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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一四 カイナンの齡はキ合九百十歲なりきしかして死り |
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一四 カイナンの年は合わせて九百十歳であった。そして彼は死んだ。 |
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一五 マハラレル六十五歲に及びてヤレドを生り |
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一五 マハラレルは六十五歳になって、ヤレドを生んだ。 |
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一六 マハラレル、ヤレドを生し後八百三十年生存へて男子女子を生り |
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一六 マハラレルはヤレドを生んだ後、八百三十年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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一七 マハラレルの齡はキ合八百九十五歲なりき而して死り |
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一七 マハラレルの年は合わせて八百九十五歳であった。そして彼は死んだ。 |
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一八 ヤレド百六十二歲に及びてエノクを生り |
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一八 ヤレドは百六十二歳になって、エノクを生んだ。 |
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一九 ヤレド、エノクを生し後八百年生存へて男子女子を生り |
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一九 ヤレドはエノクを生んだ後、八百年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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二〇 ヤレドの齡はキ合九百六十二歲なりき而して死り |
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二〇 ヤレドの年は合わせて九百六十二歳であった。そして彼は死んだ。 |
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二一 エノク六十五歲に及びてメトセラを生り |
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二一 エノクは六十五歳になって、メトセラを生んだ。 |
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二二 エノク、メトセラを生し後三百年~とともに歩み男子女子を生り |
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二二 エノクはメトセラを生んだ後、三百年、神とともに歩み、男子と女子を生んだ。 |
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二三 エノクの齡はキ合三百六十五歲なりき |
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二三 エノクの年は合わせて三百六十五歳であった。 |
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二四 エノク~と偕に歩みしが~かれを取りたまひければをらずなりき |
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二四 エノクは神とともに歩み、神が彼を取られたので、いなくなった。 |
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二五 メトセラ百八十七歲におよびてレメクを生り |
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二五 メトセラは百八十七歳になって、レメクを生んだ。 |
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二六 メトセラ、レメクを生しのち七百八十二年生存へて男子女子を生り |
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二六 メトセラはレメクを生んだ後、七百八十二年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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二七 メトセラの齡はキ合九百六十九歲なりき而して死り |
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二七 メトセラの年は合わせて九百六十九歳であった。そして彼は死んだ。 |
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二八 レメク百八十二歲に及びて男子を生み |
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二八 レメクは百八十二歳になって、男の子を生み、 |
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二九 其名をノアと名けて言けるは此子はヱホバの詛ひたまひし地に由れる我操作と我勞苦とに就て我らを慰めん |
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二九 「この子こそ、主が地をのろわれたため、骨折り働くわれわれを慰めるもの」と言って、その名をノアと名づけた。 |
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三〇 レメク、ノアを生し後五百九十五年生存へて男子女子を生り |
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三〇 レメクはノアを生んだ後、五百九十五年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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三一 レメクの齡はキ合七百七十七歲なりき而して死り |
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三一 レメクの年は合わせて七百七十七歳であった。そして彼は死んだ。 |
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三二 ノア五百歲なりきノア、セム、ハム、ヤペテを生り |
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三二 ノアは五百歳になって、セム、ハム、ヤペテを生んだ。 |
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6章 |
一 人地の面に繁衍はじまりて女子之に生るゝに及べる時 |
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一 人が地のおもてにふえ始めて、娘たちが彼らに生れた時、 |
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二 ~の子等人の女子の美しきを見て其好む所の者を取て妻となせり |
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二 神の子たちは人の娘たちの美しいのを見て、自分の好む者を妻にめとった。 |
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三 ヱホバいひたまひけるは我靈永く人と爭はじ其は彼も肉なればなり然ど彼の日は百二十年なるべし |
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三 そこで主は言われた、「わたしの霊はながく人の中にとどまらない。彼は肉にすぎないのだ。しかし、彼の年は百二十年であろう」。 |
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四 當時地にネピリムありき亦其後~の子輩人の女の所に入りて子女を生しめたりしが其等も勇士にして古昔の名聲ある人なりき |
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四 そのころ、またその後にも、地にネピリムがいた。これは神の子たちが人の娘たちのところにはいって、娘たちに産ませたものである。彼らは昔の勇士であり、有名な人々であった。 |
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五 ヱホバ人の惡の地に大なると其心の思念のキて圖維る所の恒に惟惡きのみなるを見たまへり |
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五 主は人の悪が地にはびこり、すべてその心に思いはかることが、いつも悪い事ばかりであるのを見られた。 |
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六 是に於てヱホバ地の上に人を造りしことを悔いて心こ憂へたまへり |
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六 主は地の上に人を造ったのを悔いて、心を痛め、 |
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七 ヱホバ言たまひけるは我が創造りし人を我地の面より拭去ん人より獸昆蟲天空の鳥にいたるまでほろぼさん其は我之を造りしことを悔ればなりと |
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七 「わたしが創造した人を地のおもてからぬぐい去ろう。人も獣も、這うものも、空の鳥までも。わたしは、これらを造ったことを悔いる」と言われた。 |
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八 されどノアはヱホバの目のまへに恩を得たり |
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八 しかし、ノアは主の前に恵みを得た。 |
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九 ノアの傳は是なりノアは義人にして其世の完全き者なりきノア~と偕に歩めり |
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九 ノアの系図は次のとおりである。ノアはその時代の人々の中で正しく、かつ全き人であった。ノアは神とともに歩んだ。 |
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一〇 ノアはセム、ハム、ヤペテの三人の子を生り |
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一〇 ノアはセム、ハム、ヤペテの三人の子を生んだ。 |
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一一 時に世~のまへに亂れて暴虐世に滿盈ちたりき |
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一一 時に世は神の前に乱れて、暴虐が地に満ちた。 |
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一二 ~世を視たまひけるに視よ亂れたり其は世の人皆其道をみだしたればなり |
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一二 神が地を見られると、それは乱れていた。すべての人が地の上でその道を乱したからである。 |
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一三 ~ノアに言たまひけるはゥの人の末期わが前に近づけり其は彼等のために暴虐世にみつればなり視よ我彼等を世とともに剪滅さん |
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一三 そこで神はノアに言われた、「わたしは、すべての人を絶やそうと決心した。彼らは地を暴虐で満たしたから、わたしは彼らを地とともに滅ぼそう。 |
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一四 汝松木をもて汝のために方舟を造り方舟の中に房を作り瀝をもて其內外を塗るべし |
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一四 あなたは、いとすぎの木で箱舟を造り、箱舟の中にへやを設け、アスファルトでそのうちそとを塗りなさい。 |
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一五 汝かく之を作るべし即ち其方舟の長は三百キユビト其濶は五十キユビト其高は三十キユビト |
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一五 その造り方は次のとおりである。すなわち箱舟の長さは三百キュビト、幅は五十キュビト、高さは三十キュビトとし、 |
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一六 又方舟に導光牖を作り上一キユビトに之を作り終べし又方舟の戸は其傍に設くべし下牀と二階と三階とに之を作るべし |
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一六 箱舟に屋根を造り、上へ一キュビトにそれを仕上げ、また箱舟の戸口をその横に設けて、一階と二階と三階のある箱舟を造りなさい。 |
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一七 視よ我洪水を地に起して凡て生命の氣息ある肉なる者を天下より剪滅し絕ん地にをる者は皆死ぬべし |
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一七 わたしは地の上に洪水を送って、命の息のある肉なるものを、みな天の下から滅ぼし去る。地にあるものは、みな死に絶えるであろう。 |
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一八 然ど汝とは我わが契約をたてん汝は汝の子等と汝の妻および汝の子等の妻とともに其方舟に入るべし |
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一八 ただし、わたしはあなたと契約を結ぼう。あなたは子らと、妻と、子らの妻たちと共に箱舟にはいりなさい。 |
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一九 又ゥの生物總て肉なる者をば汝各其二を方舟に挈へいりて汝とともに其生命を保たしむべし其等は牝牡なるべし |
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一九 またすべての生き物、すべての肉なるものの中から、それぞれ二つずつを箱舟に入れて、あなたと共にその命を保たせなさい。それらは雄と雌とでなければならない。 |
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二〇 鳥其類に從ひ獸其類に從ひ地のゥの昆蟲其類に從ひて各二汝の所に至りて其生命を保つべし |
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二〇 すなわち、鳥はその種類にしたがい獣はその種類にしたがい、また地のすべての這うものも、その種類にしたがって、それぞれ二つずつ、あなたのところに入れて、命を保たせなさい。 |
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二一 汝食はるゝゥの食品を汝の許に取て之を汝の所に集むべし是即ち汝と是等の物の食品となるべし |
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二一 また、すべての食物となるものをとって、あなたのところにたくわえ、あなたとこれらのものとの食物としなさい」。 |
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二二 ノア是爲しキて~の己に命じたまひしごとく然爲せり |
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二二 ノアはすべて神の命じられたようにした。 |
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7章 |
一 エホバ、ノアに言たまひけるは汝と汝の家皆方舟に入べし我汝がこの世の人の中にてわが前に義を視たればなり |
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一 主はノアに言われた、「あなたと家族とはみな箱舟にはいりなさい。あなたがこの時代の人々の中で、わたしの前に正しい人であるとわたしは認めたからである。 |
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二 ゥの潔き獸を牝牡七宛汝の許に取り潔らぬ獸を牝牡二 |
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二 あなたはすべての清い獣の中から雄と雌とを七つずつ取り、清くない獣の中から雄と雌とを二つずつ取り、 |
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三 亦天空の鳥を雌雄七宛取て種を全地の面に生のこらしむべし |
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三 また空の鳥の中から雄と雌とを七つずつ取って、その種類が全地のおもてに生き残るようにしなさい。 |
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四 今七日ありて我四十日四十夜地に雨ふらしめ我造りたる萬有を地の面より拭去ん |
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四 七日の後、わたしは四十日四十夜、地に雨を降らせて、わたしの造ったすべての生き物を、地のおもてからぬぐい去ります」。 |
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五 ノア、ヱホバの凡て己に命じたまひし如くなせり |
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五 ノアはすべて主が命じられたようにした。 |
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六 地に洪水ありける時にノア六百歲なりき |
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六 さて洪水が地に起った時、ノアは六百歳であった。 |
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七 ノア其子等と其妻および其子等の妻と俱に洪水を避て方舟にいりぬ |
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七 ノアは子らと、妻と、子らの妻たちと共に洪水を避けて箱舟にはいった。 |
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八 潔き獸と潔らざる獸と鳥および地に匍ふゥの物 |
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八 また清い獣と、清くない獣と、鳥と、地に這うすべてのものとの、 |
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九 牝牡二宛ノアに來りて方舟にいりぬ~のノアに命じたまへるが如し |
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九 雄と雌とが、二つずつノアのもとにきて、神がノアに命じられたように箱舟にはいった。 |
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一〇 かくて七日の後洪水地に臨めり |
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一〇 こうして七日の後、洪水が地に起った。 |
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一一 ノアの齡の六百歲の二月即ち其月の十七日に當り此日に大淵の源皆潰れ天の戸開けて |
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一一 それはノアの六百歳の二月十七日であって、その日に大いなる淵の源は、ことごとく破れ、天の窓が開けて、 |
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一二 雨四十日四十夜地に注げり |
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一二 雨は四十日四十夜、地に降り注いだ。 |
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一三 此日にノアとノアの子セム、ハム、ヤペテおよびノアの妻と其子等の三人の妻ゥ俱に方舟にいりぬ |
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一三 その同じ日に、ノアと、ノアの子セム、ハム、ヤペテと、ノアの妻と、その子らの三人の妻とは共に箱舟にはいった。 |
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一四 彼等およびゥの獸其類に從ひゥの家畜其類に從ひキて地に匍ふ昆蟲其類に從ひゥの禽即ち各樣の類の鳥皆其類に從ひて入りぬ |
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一四 またすべての種類の獣も、すべての種類の家畜も、地のすべての種類の這うものも、すべての種類の鳥も、すべての翼あるものも、皆はいった。 |
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一五 即ち生命の氣息あるゥの肉なる者二宛ノアに來りて方舟にいりぬ |
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一五 すなわち命の息のあるすべての肉なるものが、二つずつノアのもとにきて、箱舟にはいった。 |
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一六 入たる者はゥの肉なる者の牝牡にして皆いりぬ~の彼に命じたまへるが如しヱホバ乃ち彼を閉置たまへり |
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一六 そのはいったものは、すべて肉なるものの雄と雌とであって、神が彼に命じられたようにはいった。そこで主は彼のうしろの戸を閉ざされた。 |
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一七 洪水四十日地にありき是において水揩オ方舟を浮めて方舟地の上に高くあがれり |
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一七 洪水は四十日のあいだ地上にあった。水が増して箱舟を浮べたので、箱舟は地から高く上がった。 |
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一八 而して水瀰漫りて大に地に揩オぬ方舟は水の面に漂へり |
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一八 また水がみなぎり、地に増したので、箱舟は水のおもてに漂った。 |
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一九 水甚大に地に瀰漫りければ天下の高山皆おほはれたり |
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一九 水はまた、ますます地にみなぎり、天の下の高い山々は皆おおわれた。 |
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二〇 水はびこりて十五キユビトに上りければ山々おほはれたり |
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二〇 水はその上、さらに十五キュビトみなぎって、山々は全くおおわれた。 |
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二一 凡そ地に動く肉なる者鳥家畜獸地に匍ふゥの昆蟲および人皆死り |
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二一 地の上に動くすべて肉なるものは、鳥も家畜も獣も、地に群がるすべての這うものも、すべての人もみな滅びた。 |
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二二 即ち凡そ其鼻に生命の氣息のかよふ者郡て乾土にある者は死り |
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二二 すなわち鼻に命の息のあるすべてのもの、陸にいたすべてのものは死んだ。 |
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二三 斯地の表面にある萬有を人より家畜昆蟲天空の鳥にいたるまで盡く拭去たまへり是等は地より拭去れたり唯ノアおよび彼とともに方舟にありし者のみ存れり |
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二三 地のおもてにいたすべての生き物は、人も家畜も、這うものも、空の鳥もみな地からぬぐい去られて、ただノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 |
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二四 水百五十日のあひだ地にはびこりぬ |
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二四 水は百五十日のあいだ地上にみなぎった。 |
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8章 |
一 ~ノアおよび彼とともに方舟にあるゥの生物とゥの家畜を眷念ひたまひて~乃ち風を地の上に吹しめたまひければ水减りたり |
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一 神はノアと、箱舟の中にいたすべての生き物と、すべての家畜とを心にとめられた。神が風を地の上に吹かせられたので、水は退いた。 |
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二 亦淵の源と天の戸閉塞りて天よりの雨止ぬ |
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二 また淵の源と、天の窓とは閉ざされて、天から雨が降らなくなった。 |
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三 是に於て水次第に地より退き百五十日を經てのち水减り |
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三 それで水はしだいに地の上から引いて、百五十日の後には水が減り、 |
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四 方舟は七月に至り其月の十七日にアララテの山に止りぬ |
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四 箱舟は七月十七日にアララテの山にとどまった。 |
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五 水次第に减て十月に至りしが十月の月朔に山々の巓現れたり |
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五 水はしだいに減って、十月になり、十月一日に山々の頂が現れた。 |
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六 四十日を經てのちノア其方舟に作りし窓を啓て |
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六 四十日たって、ノアはその造った箱舟の窓を開いて、 |
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七 鴉を放出ちけるが水の地に涸るまで往來しをれり |
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七 からすを放ったところ、からすは地の上から水がかわききるまで、あちらこちらへ飛びまわった。 |
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八 彼地の面より水の减少しかを見んとて亦鴿を放出いだしけるが |
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八 ノアはまた地のおもてから、水がひいたかどうかを見ようと、彼の所から、はとを放ったが、 |
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九 鴿其足の跖を止べき處を得ずして彼に還りて方舟に至れり其は水全地の面にありたればなり彼乃ち其手を舒て之を執へ方舟の中におのれの所に接入たり |
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九 はとは足の裏をとどめる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰ってきた。水がまだ全地のおもてにあったからである。彼は手を伸べて、これを捕え、箱舟の中の彼のもとに引き入れた。 |
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一〇 尙又七日待て再び鴿を方舟より放出ちけるが |
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一〇 それから七日待って再びはとを箱舟から放った。 |
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一一 鴿暮におよびて彼に還れり視よ其口に橄欖の新葉ありき是に於てノア地より水の减少しをしれり |
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一一 はとは夕方になって彼のもとに帰ってきた。見ると、そのくちばしには、オリブの若葉があった。ノアは地から水がひいたのを知った。 |
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一二 尙又七日まちて鴿を放出ちけるが再び彼の所に歸らざりき |
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一二 さらに七日待ってまた、はとを放ったところ、もはや彼のもとには帰ってこなかった。 |
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一三 六百一年の一月の月朔に水地に涸たりノア乃ち方舟の葢を撤きて視しに視よ土の面は燥てありぬ |
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一三 六百一歳の一月一日になって、地の上の水はかれた。ノアが箱舟のおおいを取り除いて見ると、土のおもては、かわいていた。 |
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一四 二月の二十七日に至りて地乾きたり |
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一四 二月二十七日になって、地は全くかわいた。 |
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一五 爰に~ノアに語りて言給はく |
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一五 この時、神はノアに言われた、 |
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一六 汝および汝の妻と汝の子等と汝の子等の妻ともに方舟を出べし |
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一六 「あなたは妻と、子らと、子らの妻たちと共に箱舟を出なさい。 |
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一七 汝とともにあるゥの肉なるゥの生物ゥの肉なる者即ち鳥家畜および地に匍ふゥの昆蟲を率いでよ此等は地に饒く生育地の上に生且殖揩キべし |
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一七 あなたは、共にいる肉なるすべての生き物、すなわち鳥と家畜と、地のすべての這うものとを連れて出て、これらのものが地に群がり、地の上にふえ広がるようにしなさい」。 |
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一八 ノアと其子等と共妻および其子等の妻ともに出たり |
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一八 ノアは共にいた子らと、妻と、子らの妻たちとを連れて出た。 |
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一九 ゥの獸ゥの昆蟲およびゥの鳥等凡そ地に動く者種類に從ひて方舟より出たり |
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一九 またすべての獣、すべての這うもの、すべての鳥、すべて地の上に動くものは皆、種類にしたがって箱舟を出た。 |
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二〇 ノア、ヱホバのために壇を築きゥの潔き獸とゥの潔き鳥を取て燔祭を壇の上に献げたり |
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二〇 ノアは主に祭壇を築いて、すべての清い獣と、すべての清い鳥とのうちから取って、燔祭を祭壇の上にささげた。 |
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二一 エホバ其馨き香を聞ぎたまひてヱホバ其意に謂たまひけるは我再び人の故に因て地を詛ふことをせじ其は人の心の圖維るところ其幼少時よりして惡かればなり又我曾て爲たる如く再びゥの生る物を擊ち滅さじ |
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二一 主はその香ばしいかおりをかいで、心に言われた、「わたしはもはや二度と人のゆえに地をのろわない。人が心に思い図ることは、幼い時から悪いからである。わたしは、このたびしたように、もう二度と、すべての生きたものを滅ぼさない。 |
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二二 地のあらん限りは播種時、収穫時、寒熱夏冬および日と夜息ことあらじ |
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二二 地のある限り、種まきの時も、刈入れの時も、暑さ寒さも、夏冬も、昼も夜もやむことはないであろう」。 |
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9章 |
一 ~ノアと其子等を祝して之に曰たまひけるは生よ攝Bよ地に滿よ |
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一 神はノアとその子らとを祝福して彼らに言われた、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ。 |
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二 地のゥの獸畜天空のゥの鳥地に匍ふゥの物海のゥの魚汝等を畏れ汝等に懾かん是等は汝等の手に與へらる |
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二 地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのもの、海のすべての魚は恐れおののいて、あなたがたの支配に服し、 |
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三 凡そ生る動物は汝等の食となるべし菜蔬のごとく我之を皆汝等に與ふ |
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三 すべて生きて動くものはあなたがたの食物となるであろう。さきに青草をあなたがたに与えたように、わたしはこれらのものを皆あなたがたに与える。 |
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四 然ど肉を其生命なる其血のまゝに食ふべからず |
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四 しかし肉を、その命である血のままで、食べてはならない。 |
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五 汝等の生命の血を流すをば我必ず討さん獸之をなすも人これを爲すも我討さん凡そ人の兄弟人の生命を取ば我討すべし |
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五 あなたがたの命の血を流すものには、わたしは必ず報復するであろう。いかなる獣にも報復する。兄弟である人にも、わたしは人の命のために、報復するであろう。 |
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六 凡そ人の血を流す者は人其血を流さん其は~の像のごとくに人を造りたまひたればなり |
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六 人の血を流すものは、人に血を流される、/神が自分のかたちに人を造られたゆえに。 |
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七 汝等生よ攝Bよ地に饒くなりて其中に攝Bよ |
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七 あなたがたは、生めよ、ふえよ、/地に群がり、地の上にふえよ」。 |
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八 ~ノアおよび彼と偕にある其子等に吿て言たまひけるは |
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八 神はノアおよび共にいる子らに言われた、 |
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九 見よ我汝等と汝等の後の子孫 |
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九 「わたしはあなたがた及びあなたがたの後の子孫と契約を立てる。 |
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一〇 および汝等と偕なるゥの生物即ち汝等とともなる鳥家畜および地のゥの獸と契約を立んキて方舟より出たる者より地のゥの獸にまで至らん |
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一〇 またあなたがたと共にいるすべての生き物、あなたがたと共にいる鳥、家畜、地のすべての獣、すなわち、すべて箱舟から出たものは、地のすべての獣にいたるまで、わたしはそれと契約を立てよう。 |
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一一 我汝等と契約を立ん總て肉なる者は再び洪水に絕るゝ事あらじ又地を滅す洪水再びあらざるべし |
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一一 わたしがあなたがたと立てるこの契約により、すべて肉なる者は、もはや洪水によって滅ぼされることはなく、また地を滅ぼす洪水は、再び起らないであろう」。 |
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一二 ~言たまひけるは我が我と汝等および汝等と偕なるゥの生物の間に世々限りなく爲す所の契約の徵は是なり |
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一二 さらに神は言われた、「これはわたしと、あなたがた及びあなたがたと共にいるすべての生き物との間に代々かぎりなく、わたしが立てる契約のしるしである。 |
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一三 我わが虹を雲の中に起さん是我と世との間の契約の徵なるべし |
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一三 すなわち、わたしは雲の中に、にじを置く。これがわたしと地との間の契約のしるしとなる。 |
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一四 即ち我雲を地の上に起す時虹雲の中に現るべし |
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一四 わたしが雲を地の上に起すとき、にじは雲の中に現れる。 |
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一五 我乃ち我と汝等および總て肉なるゥの生物の間のわが契約を記念はん水再びゥの肉なる者を滅す洪水とならじ |
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一五 こうして、わたしは、わたしとあなたがた、及びすべて肉なるあらゆる生き物との間に立てた契約を思いおこすゆえ、水はふたたび、すべて肉なる者を滅ぼす洪水とはならない。 |
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一六 虹雲の中にあらん我之を觀て~と地にあるキて內なるゥの生物との間なる永遠の契約を記念えん |
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一六 にじが雲の中に現れるとき、わたしはこれを見て、神が地上にあるすべて肉なるあらゆる生き物との間に立てた永遠の契約を思いおこすであろう」。 |
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一七 ~ノアに言たまひけるは是は我が我と地にあるゥの肉なる者との間に立たる契約の徵なり |
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一七 そして神はノアに言われた、「これがわたしと地にあるすべて肉なるものとの間に、わたしが立てた契約のしるしである」。 |
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一八 ノアの子等の方舟より出たる者はセム、ハム、ヤペテなりきハムはカナンの父なり |
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一八 箱舟から出たノアの子らはセム、ハム、ヤペテであった。ハムはカナンの父である。 |
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一九 是等はノアの三人の子なり全地の民は是等より出て蔓延れり |
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一九 この三人はノアの子らで、全地の民は彼らから出て、広がったのである。 |
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二〇 爰にノア農夫となりて葡萄園を植ることを始しが |
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二〇 さてノアは農夫となり、ぶどう畑をつくり始めたが、 |
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二一 葡萄酒を飮て醉天幕の中にありて裸になれり |
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二一 彼はぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 |
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二二 カナンの父ハム其父のかくし所を見て外にありし二人の兄弟に吿たり |
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二二 カナンの父ハムは父の裸を見て、外にいるふたりの兄弟に告げた。 |
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二三 セムとヤペテ乃ち衣を取て俱に其肩に負け後向に歩みゆきて其父の裸體を覆へり彼等面を背にして其父の裸體を見ざりき |
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二三 セムとヤペテとは着物を取って、肩にかけ、うしろ向きに歩み寄って、父の裸をおおい、顔をそむけて父の裸を見なかった。 |
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二四 ノア酒さめて其若き子の己に爲たる事を知れり |
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二四 やがてノアは酔いがさめて、末の子が彼にした事を知ったとき、 |
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二五 是に於て彼言けるはカナン詛はれよ彼は僕輩の僕となりて其兄弟に事へん |
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二五 彼は言った、/「カナンはのろわれよ。彼はしもべのしもべとなって、/その兄弟たちに仕える」。 |
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二六 又いひけるはセムの~ヱホバは讃べきかなカナン彼の僕となるべし |
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二六 また言った、/「セムの神、主はほむべきかな、/カナンはそのしもべとなれ。 |
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二七 ~ヤペテを大ならしめたまはん彼はセムの天幕に居住はんカナン其僕となるべし |
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二七 神はヤペテを大いならしめ、/セムの天幕に彼を住まわせられるように。カナンはそのしもべとなれ」。 |
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二八 ノア洪水の後三百五十年生存へたりノアの齡はキて九百五十年なりき而して死り |
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二八 ノアは洪水の後、なお三百五十年生きた。 |
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二九 ノアの年は合わせて九百五十歳であった。そして彼は死んだ。 |
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10章 |
一 ノアの子セム、ハム、ヤペテの傳は是なり洪水の後彼等に子等生れたり |
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一 ノアの子セム、ハム、ヤペテの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに子が生れた。 |
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二 ヤペテの子はゴメル、マゴグ、マデア、ヤワン、トバル、メセク、テラスなり |
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二 ヤペテの子孫はゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メセク、テラスであった。 |
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三 ゴメルの子はアシケナズ、リパテ、トガルマなり |
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三 ゴメルの子孫はアシケナズ、リパテ、トガルマ。 |
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四 ヤワンの子はヱリンヤ、タルシシ、キツテムおよびドダニムなり |
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四 ヤワンの子孫はエリシャ、タルシシ、キッテム、ドダニムであった。 |
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五 是等よりゥ國の洲島の民は派分れ出て各其方言と其宗族と其邦國とに循ひて其地に住り |
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五 これらから海沿いの地の国民が分れて、おのおのその土地におり、その言語にしたがい、その氏族にしたがって、その国々に住んだ。 |
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六 ハムの子はクシ、ミツライム、フテおよびカナンなり |
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六 ハムの子孫はクシ、ミツライム、プテ、カナンであった。 |
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七 クシの子はセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカなりラアマの子はシバおよびデダンなり |
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七 クシの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカであり、ラアマの子孫はシバとデダンであった。 |
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八 クシ、ニムロデを生り彼始めて世の權力ある者となれり |
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八 クシの子はニムロデであって、このニムロデは世の権力者となった最初の人である。 |
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九 彼はヱホバの前にありて權力ある獵夫なりき是故にヱホバの前にある夫權力ある獵夫ニムロデの如しといふ諺あり |
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九 彼は主の前に力ある狩猟者であった。これから「主の前に力ある狩猟者ニムロデのごとし」ということわざが起った。 |
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一〇 彼の國の起初はシナルの地のバベル、ヱレク、アツカデ、及びカルネなりき |
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一〇 彼の国は最初シナルの地にあるバベル、エレク、アカデ、カルネであった。 |
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一一 其地より彼アツスリヤに出でニネベ、レホポテイリ、カラ |
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一一 彼はその地からアッスリヤに出て、ニネベ、レホボテイリ、カラ、 |
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一二 およびニネベとカラの間なるレセンを建たり是は大なる城邑なり |
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一二 およびニネベとカラとの間にある大いなる町レセンを建てた。 |
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一三 ミツライム、ルデ族アナミ族レハビ族ナフト族 |
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一三 ミツライムからルデ族、アナミ族、レハビ族、ナフト族、 |
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一四 パテロス族カスル族およびカフトリ族を生りカスル族よりペリシテ族出たり |
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一四 パテロス族、カスル族、カフトリ族が出た。カフトリ族からペリシテ族が出た。 |
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一五 カナン其冡子シドンおよびへテ |
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一五 カナンからその長子シドンが出て、またヘテが出た。 |
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一六 エブス族アモリ族ギルガシ族 |
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一六 その他エブスびと、アモリびと、ギルガシびと、 |
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一七 ヒビ族アルキ族セニ族 |
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一七 ヒビびと、アルキびと、セニびと、 |
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一八 アルワデ族ゼマリ族ハマテ族を生り後に至りてカナン人の宗族蔓延りぬ |
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一八 アルワデびと、ゼマリびと、ハマテびとが出た。後になってカナンびとの氏族がひろがった。 |
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一九 カナン人の境はシドンよりゲラルを經てガザに至りソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムに沿てレシヤにまで及べり |
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一九 カナンびとの境はシドンからゲラルを経てガザに至り、ソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムを経て、レシャに及んだ。 |
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二〇 是等はハムの子孫にして其宗族と其方言と其土地と其邦國に随ひて居りぬ |
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二〇 これらはハムの子孫であって、その氏族とその言語とにしたがって、その土地と、その国々にいた。 |
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二一 セムはエベルの全の子孫の先祖にしてヤペテの兄なり彼にも子女生れたり |
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二一 セムにも子が生れた。セムはエベルのすべての子孫の先祖であって、ヤペテの兄であった。 |
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二二 セムの子はエラム、アシユル、アルパクサデ、ルデ、アラムなり |
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二二 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクサデ、ルデ、アラムであった。 |
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二三 アラムの子はウヅ、ホル、ゲテル、マシなり |
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二三 アラムの子孫はウヅ、ホル、ゲテル、マシであった。 |
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二四 アルパクサデ、シラを生みシラ、エベルを生り |
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二四 アルパクサデの子はシラ、シラの子はエベルである。 |
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二五 エベルに二人の子生れたり一人の名をペレグ(分れ)といふ其は彼の代に邦國分れたればなり其弟の名をヨクタンと曰ふ |
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二五 エベルにふたりの子が生れた。そのひとりの名をペレグといった。これは彼の代に地の民が分れたからである。その弟の名をヨクタンといった。 |
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二六 ヨクタン、アルモダデ、シヤレフ、ハザルマウテ、ヱラ |
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二六 ヨクタンにアルモダデ、シャレフ、ハザルマウテ、エラ、 |
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二七 ハドラム、ウザル、デクラ |
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二七 ハドラム、ウザル、デクラ、 |
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二八 オバル、アビマエル、シバ |
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二八 オバル、アビマエル、シバ、 |
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二九 オフル、ハビラおよびヨバブを生り是等は皆ヨクタンの子なり |
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二九 オフル、ハビラ、ヨバブが生れた。これらは皆ヨクタンの子であった。 |
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三〇 彼等の居住所はメシヤよりして東方の山セパルにまで至れり |
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三〇 彼らが住んだ所はメシャから東の山地セパルに及んだ。 |
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三一 是等はセムの子孫にして其宗族と其方言と其土地と其邦國とに随ひて居りぬ |
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三一 これらはセムの子孫であって、その氏族とその言語とにしたがって、その土地と、その国々にいた。 |
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三二 是等はノアの子の宗族にして其血統と其邦國に随ひて居りぬ洪水の後是等より地の邦國の民は派分れ出たり |
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三二 これらはノアの子らの氏族であって、血統にしたがって国々に住んでいたが、洪水の後、これらから地上の諸国民が分れたのである。 |
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11章 |
一 全地は一の言語一の音のみなりき |
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一 全地は同じ発音、同じ言葉であった。 |
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二 茲に人衆東に移りてシナルの地に平野を得て其處に居住り |
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二 時に人々は東に移り、シナルの地に平野を得て、そこに住んだ。 |
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三 彼等互に言けるは去來甎石を作り之を善く爇んと遂に石の代に甎石を獲灰沙の代に石漆を獲たり |
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三 彼らは互に言った、「さあ、れんがを造って、よく焼こう」。こうして彼らは石の代りに、れんがを得、しっくいの代りに、アスファルトを得た。 |
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四 又曰けるは去來邑と塔とを建て其塔の頂を天にいたらしめん斯して我等名を揚て全地の表面に散ることを免れんと |
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四 彼らはまた言った、「さあ、町と塔とを建てて、その頂を天に届かせよう。そしてわれわれは名を上げて、全地のおもてに散るのを免れよう」。 |
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五 ヱホバ降臨りて彼人衆の建る邑と塔とを觀たまへり |
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五 時に主は下って、人の子たちの建てる町と塔とを見て、 |
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六 ヱホバ言たまひけるは視よ民は一にして皆一の言語を用ふ今旣に此を爲し始めたり然ば凡て其爲んと圖維る事は禁止め得られざるべし |
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六 言われた、「民は一つで、みな同じ言葉である。彼らはすでにこの事をしはじめた。彼らがしようとする事は、もはや何事もとどめ得ないであろう。 |
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七 去來我等降り彼處にて彼等の言語を淆し互に言語を通ずることを得ざらしめんと |
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七 さあ、われわれは下って行って、そこで彼らの言葉を乱し、互に言葉が通じないようにしよう」。 |
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八 ヱホバ遂に彼等を彼處より全地の表面に散したまひければ彼等邑を建ることを罷たり |
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八 こうして主が彼らをそこから全地のおもてに散らされたので、彼らは町を建てるのをやめた。 |
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九 是故に其名はバベル(淆亂)と呼ばる是はヱホバ彼處に全地の言語を淆したまひしに由てなり彼處よりヱホバ彼等を全地の表に散したまへり |
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九 これによってその町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を乱されたからである。主はそこから彼らを全地のおもてに散らされた。 |
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一〇 セムの傳は是なりセム百歲にして洪水の後の二年にアルパクサデを生り |
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一〇 セムの系図は次のとおりである。セムは百歳になって洪水の二年の後にアルパクサデを生んだ。 |
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一一 セム、アルパクサデを生し後五百年生存へて男子女子を生り |
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一一 セムはアルパクサデを生んで後、五百年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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一二 アルパクサデ三十五歲に及びてシラを生り |
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一二 アルパクサデは三十五歳になってシラを生んだ。 |
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一三 アルパクサデ、シラを生し後四百三年生存へて男子女子を生り |
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一三 アルパクサデはシラを生んで後、四百三年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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一四 シラ三十歲におよびてエベルを生り |
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一四 シラは三十歳になってエベルを生んだ。 |
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一五 シラ、エベルを生し後四百三年生存へて男子女子を生り |
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一五 シラはエベルを生んで後、四百三年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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一六 エベル三十四歲におよびてペレグを生り |
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一六 エベルは三十四歳になってペレグを生んだ。 |
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一七 エベル、ペレグを生し後四百三十年生存へて男子女子を生り |
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一七 エベルはペレグを生んで後、四百三十年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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一八 ペレグ三十歲におよびてリウを生り |
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一八 ペレグは三十歳になってリウを生んだ。 |
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一九 ペレグ、リウを生し後二百九年生存へて男子女子を生り |
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一九 ペレグはリウを生んで後、二百九年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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二〇 リウ三十二歲におよびてセルグを生り |
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二〇 リウは三十二歳になってセルグを生んだ。 |
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二一 リウ、セルグを生し後二百七年生存へて男子女子を生り |
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二一 リウはセルグを生んで後、二百七年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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二二 セルグ三十年におよびてナホルを生り |
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二二 セルグは三十歳になってナホルを生んだ。 |
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二三 セルグ、ナホルを生しのち二百年生存へて男子女子を生り |
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二三 セルグはナホルを生んで後、二百年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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二四 ナホル二十九歲に及びてテラを生り |
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二四 ナホルは二十九歳になってテラを生んだ。 |
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二五 ナホル、テラを生し後百十九年生存へて男子女子を生り |
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二五 ナホルはテラを生んで後、百十九年生きて、男子と女子を生んだ。 |
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二六 テラ七十歲に及びてアブラム、ナホルおよびハランを生り |
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二六 テラは七十歳になってアブラム、ナホルおよびハランを生んだ。 |
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二七 テラの傳は是なりテラ、アブラム、ナホルおよびハランを生ハラン、ロトを生り |
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二七 テラの系図は次のとおりである。テラはアブラム、ナホルおよびハランを生み、ハランはロトを生んだ。 |
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二八 ハランは其父テラに先ちて其生處なるカルデアのウルにて死たり |
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二八 ハランは父テラにさきだって、その生れた地、カルデヤのウルで死んだ。 |
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二九 アブラムとナホルと妻を娶れりアブラムの妻の名をサライと云ナホルの妻の名をミルカと云てハランの女なりハランはミルカの父にして亦イスカの父なりき |
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二九 アブラムとナホルは妻をめとった。アブラムの妻の名はサライといい、ナホルの妻の名はミルカといってハランの娘である。ハランはミルカの父、またイスカの父である。 |
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三〇 サライは石女にして子なかりき |
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三〇 サライはうまずめで、子がなかった。 |
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三一 テラ、カナンの地に往とて其子アブラムとハランの子なる其孫ロト及其子アブラムの妻なる其媳サライをひき挈て俱にカルデアのウルを出たりしがハランに至て其處に住り |
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三一 テラはその子アブラムと、ハランの子である孫ロトと、子アブラムの妻である嫁サライとを連れて、カナンの地へ行こうとカルデヤのウルを出たが、ハランに着いてそこに住んだ。 |
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三二 テラの齡は二百五歲なりきテラはハランにて死り |
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三二 テラの年は二百五歳であった。テラはハランで死んだ。 |
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12章 |
一 爰にヱホバ、アブラムに言たまひけるは汝の國を出で汝の親族に別れ汝の父の家を離れて我が汝に示さん其地に至れ |
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一 時に主はアブラムに言われた、「あなたは国を出て、親族に別れ、父の家を離れ、わたしが示す地に行きなさい。 |
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二 我汝を大なる國民と成し汝を祝み汝の名を大ならしめん汝は祉の基となるべし |
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二 わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大きくしよう。あなたは祝福の基となるであろう。 |
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三 我は汝を祝する者を祝し汝を詛ふ者を詛はん天下のゥの宗族汝によりてを獲と |
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三 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、/あなたをのろう者をわたしはのろう。地のすべてのやからは、/あなたによって祝福される」。 |
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四 アブラム乃ちヱホバの自己に言たまひし言に從て出たりロト彼と共に行りアブラムはハランを出たる時七十五歲なりき |
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四 アブラムは主が言われたようにいで立った。ロトも彼と共に行った。アブラムはハランを出たとき七十五歳であった。 |
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五 アブラム其妻サライと其弟の子ロトおよび其集めたる總の所有とハランにて獲たる人衆を携へてカナンの地に往んとて出で遂にカナンの地に至れり |
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五 アブラムは妻サライと、弟の子ロトと、集めたすべての財産と、ハランで獲た人々とを携えてカナンに行こうとしていで立ち、カナンの地にきた。 |
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六 アブラム其地を經過てシケムの處に及びモレの橡樹に至れり其時にカナン人其地に住り |
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六 アブラムはその地を通ってシケムの所、モレのテレビンの木のもとに着いた。そのころカナンびとがその地にいた。 |
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七 玆にヱホバ、アブラムに顯現れて我汝の苗裔に此地を與へんといひたまへり彼處にて彼己に顯現れたまひしヱホバに壇を築けり |
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七 時に主はアブラムに現れて言われた、「わたしはあなたの子孫にこの地を与えます」。アブラムは彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 |
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八 彼其處よりベテルの東の山に移りて其天幕を張り西にベテル東にアイありき彼處にて彼ヱホバに壇を築きヱホバの名を龥り |
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八 彼はそこからベテルの東の山に移って天幕を張った。西にはベテル、東にはアイがあった。そこに彼は主のために祭壇を築いて、主の名を呼んだ。 |
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九 アブラム尙進て南に遷れり |
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九 アブラムはなお進んでネゲブに移った。 |
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一〇 玆に饑饉其地にありければアブラム、エジプトに寄寓らんとて彼處に下れり其は饑饉其地に甚しかりければなり |
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一〇 さて、その地にききんがあったのでアブラムはエジプトに寄留しようと、そこに下った。ききんがその地に激しかったからである。 |
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一一 彼近く來りてエジプトに入んとする時其妻サライに言けるは視よ我汝を觀て美麗き婦人なるを知る |
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一一 エジプトにはいろうとして、そこに近づいたとき、彼は妻サライに言った、「わたしはあなたが美しい女であるのを知っています。 |
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一二 是故にエジプト人汝を見る時是は彼の妻なりと言て我を殺さん然ど汝をば生存ん |
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一二 それでエジプトびとがあなたを見る時、これは彼の妻であると言ってわたしを殺し、あなたを生かしておくでしょう。 |
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一三 請ふ汝わが妹なりと言へ然ば我汝の故によりて安にしてわが命汝のために生存ん |
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一三 どうかあなたは、わたしの妹だと言ってください。そうすればわたしはあなたのおかげで無事であり、わたしの命はあなたによって助かるでしょう」。 |
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一四 アブラム、エジプトに至りし時エジプト人此婦を見て甚だ美麗となせり |
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一四 アブラムがエジプトにはいった時エジプトびとはこの女を見て、たいそう美しい人であるとし、 |
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一五 またパロの大臣等彼を視て彼をパロの前に譽めければ婦遂にパロの家に召入れられたり |
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一五 またパロの高官たちも彼女を見てパロの前でほめたので、女はパロの家に召し入れられた。 |
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一六 是に於てパロ彼のために厚くアブラムを待ひてアブラム遂に羊牛僕婢牝牡の驢馬および駱駝を多く獲るに至れり |
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一六 パロは彼女のゆえにアブラムを厚くもてなしたので、アブラムは多くの羊、牛、雌雄のろば、男女の奴隷および、らくだを得た。 |
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一七 時にヱホバ、アブラムの妻サライの故によりて大なる災を以てパロと其家を惱したまへり |
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一七 ところで主はアブラムの妻サライのゆえに、激しい疫病をパロとその家に下された。 |
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一八 パロ、アブラムを召て言けるは汝が我になしたる此事は何ぞや汝何故に彼が汝の妻なるを我に吿ざりしや |
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一八 パロはアブラムを召し寄せて言った、「あなたはわたしになんという事をしたのですか。なぜ彼女が妻であるのをわたしに告げなかったのですか。 |
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一九 汝何故に彼はわが妹なりといひしや我幾彼をわが妻にめとらんとせり然ば汝の妻は此にあり挈去るベしと |
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一九 あなたはなぜ、彼女はわたしの妹ですと言ったのですか。わたしは彼女を妻にしようとしていました。さあ、あなたの妻はここにいます。連れて行ってください」。 |
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二〇 パロ即ち彼の事を人々に命じければ彼と其妻および其有るゥの物を送りさらしめたり |
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二〇 パロは彼の事について人々に命じ、彼とその妻およびそのすべての持ち物を送り去らせた。 |
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13章 |
一 アブラム其妻および其有るゥの物と俱にエジブトを出て南の地に上れりロト彼と共にありき |
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一 アブラムは妻とすべての持ち物を携え、エジプトを出て、ネゲブに上った。ロトも彼と共に上った。 |
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二 アブラム甚家畜と金銀に富り |
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二 アブラムは家畜と金銀に非常に富んでいた。 |
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三 彼南の地より其旅路に進てベテルに至りベテルとアイの間なる其以前に天幕を張たる處に至れり |
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三 彼はネゲブから旅路を進めてベテルに向かい、ベテルとアイの間の、さきに天幕を張った所に行った。 |
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四 即ち彼が初に其處に築きたる壇のある處なり彼處にアブラム、ヱホバの名を龥り |
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四 すなわち彼が初めに築いた祭壇の所に行き、その所でアブラムは主の名を呼んだ。 |
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五 アブラムと偕に行しロトも羊牛および天幕を有り |
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五 アブラムと共に行ったロトも羊、牛および天幕を持っていた。 |
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六 其地は彼等を載て俱に居しむること能はざりき彼等は其所有多かりしに緣て俱に居ることを得ぎりしなり |
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六 その地は彼らをささえて共に住ませることができなかった。彼らの財産が多かったため、共に住めなかったのである。 |
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七 斯有かばアブラムの家畜の牧者とロトの家畜の牧者の間に競爭ありきカナン人とペリジ人此時其地に居住り |
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七 アブラムの家畜の牧者たちとロトの家畜の牧者たちの間に争いがあった。そのころカナンびととペリジびとがその地に住んでいた。 |
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八 アブラム、ロトに言けるは我等は兄弟の人なれば請ふ我と汝の間およびわが牧者と汝の牧者の間に競爭あらしむる勿れ |
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八 アブラムはロトに言った、「わたしたちは身内の者です。わたしとあなたの間にも、わたしの牧者たちとあなたの牧者たちの間にも争いがないようにしましょう。 |
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九 地は皆爾の前にあるにあらずや請ふ我を離れよ爾若左にゆかば我右にゆかん又爾右にゆかば我左にゆかんと |
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九 全地はあなたの前にあるではありませんか。どうかわたしと別れてください。あなたが左に行けばわたしは右に行きます。あなたが右に行けばわたしは左に行きましょう」。 |
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一〇 是に於てロト目を擧てヨルダンの凡ての低地を瞻望みけるにヱホバ、ソドムとゴモラとを滅し給はざりし前なりければゾアルに至るまであまねく善く潤澤ひてヱホバの園の如くエジプトの地の如くなりき |
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一〇 ロトが目を上げてヨルダンの低地をあまねく見わたすと、主がソドムとゴモラを滅ぼされる前であったから、ゾアルまで主の園のように、またエジプトの地のように、すみずみまでよく潤っていた。 |
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一一 ロト乃ちヨルダンの低地を盡く撰とりて東に徙れり斯彼等彼此に別たり |
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一一 そこでロトはヨルダンの低地をことごとく選びとって東に移った。こうして彼らは互に別れた。 |
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一二 アブラムはカナンの地に住り又ロトは低地のゥ邑に住み其天幕を遷してソドムに至れり |
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一二 アブラムはカナンの地に住んだが、ロトは低地の町々に住み、天幕をソドムに移した。 |
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一三 ソドムの人は惡くしてヱホバの前に大なる罪人なりき |
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一三 ソドムの人々はわるく、主に対して、はなはだしい罪びとであった。 |
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一四 ロトのアブラムに別れし後ヱホバ、アブラムに言たまひけるは爾の目を擧て爾の居る處より西東北南を瞻望め |
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一四 ロトがアブラムに別れた後に、主はアブラムに言われた、「目をあげてあなたのいる所から北、南、東、西を見わたしなさい。 |
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一五 凡そ汝が觀る所の地は我之を永く爾と爾の裔に與べし |
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一五 すべてあなたが見わたす地は、永久にあなたとあなたの子孫に与えます。 |
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一六 我爾の後裔を地の塵沙の如くなさん若人地の塵沙を數ふることを得ば爾の後裔も數へらるべし |
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一六 わたしはあなたの子孫を地のちりのように多くします。もし人が地のちりを数えることができるなら、あなたの子孫も数えられることができましょう。 |
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一七 爾起て縱に其地を行き巡るべし我之を爾に與へんと |
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一七 あなたは立って、その地をたてよこに行き巡りなさい。わたしはそれをあなたに与えます」。 |
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一八 アブラム遂に天幕を遷して來りヘブロンのマムレの橡林に住み彼處にてヱホバに壇を築けり |
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一八 アブラムは天幕を移してヘブロンにあるマムレのテレビンの木のかたわらに住み、その所で主に祭壇を築いた。 |
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14章 |
一 當時シナルの王アムラペル、ヱラサルの王アリオク、エラムの王ケダラオメルおよびゴイムの王テダル等 |
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一 シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオク、エラムの王ケダラオメルおよびゴイムの王テダルの世に、 |
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二 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシヤ、アデマの王シナブ、ゼボイムの王セメベルおよびベラ(即ち今のゾアル)の王と戰ひをなせり |
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二 これらの王はソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アデマの王シナブ、ゼボイムの王セメベル、およびベラすなわちゾアルの王と戦った。 |
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三 是等の五人の王皆結合てシデムの谷に至れり其處は今の鹽海なり |
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三 これら五人の王はみな同盟してシデムの谷、すなわち塩の海に向かって行った。 |
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四 彼等は十二年ケダラオメルに事へ第十三年に叛けり |
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四 すなわち彼らは十二年の間ケダラオメルに仕えたが、十三年目にそむいたので、 |
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五 第十四年にケダラオメルおよび彼と偕なる王等來りてアシタロテカルナイムのレパイム人、ハムのズジ人、シヤベキリアタイムのエミ人 |
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五 十四年目にケダラオメルは彼と連合した王たちと共にきて、アシタロテ・カルナイムでレパイムびとを、ハムでズジびとを、シャベ・キリアタイムでエミびとを撃ち、 |
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六 およびセイル山のホリ人を擊て曠野の傍なるエルパランに至り |
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六 セイルの山地でホリびとを撃って、荒野のほとりにあるエル・パランに及んだ。 |
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七 彼等歸りてエンミシパテ(即ち今のカデシ)に至りアマレク人の國を盡く擊又ハザゾンタマルに住るアモリ人を擊り |
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七 彼らは引き返してエン・ミシパテすなわちカデシへ行って、アマレクびとの国をことごとく撃ち、またハザゾン・タマルに住むアモリびとをも撃った。 |
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八 爰にソドムの王ゴモラの王アデマの王ゼボイムの王およびベラ(即ち今のゾアル)の王出てシデムの谷にて彼等と戰ひを接たり |
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八 そこでソドムの王、ゴモラの王、アデマの王、ゼボイムの王およびベラすなわちゾアルの王は出てシデムの谷で彼らに向かい、戦いの陣をしいた。 |
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九 即ち彼五人の王等エラムの王ケダラオメル、ゴイムの王テダル、シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオクの四人と戰へり |
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九 すなわちエラムの王ケダラオメル、ゴイムの王テダル、シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオクの四人の王に対する五人の王であった。 |
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一〇 シデムの谷には地瀝の坑多りしがソドムとゴモラの王等遁て其處に陷りぬ其餘の者は山に遁逃たり |
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一〇 シデムの谷にはアスファルトの穴が多かったので、ソドムの王とゴモラの王は逃げてそこに落ちたが、残りの者は山にのがれた。 |
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一一 是に於て彼等ソドムとゴモラのゥの物と其ゥの食料を取て去れり |
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一一 そこで彼らはソドムとゴモラの財産と食料とをことごとく奪って去り、 |
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一二 彼等アブラムの姪ロトと其物を取て去り其は彼ソドムに |
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一二 またソドムに住んでいたアブラムの弟の子ロトとその財産を奪って去った。 |
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一三 玆に遁逃者來りてヘブル人アブラムに之を吿たり時にアブラムはアモリ人マムレの橡林に住りマムレはエシコルの兄弟又アネルの兄弟なり是等はアブラムと契約を結べる者なりき |
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一三 時に、ひとりの人がのがれてきて、ヘブルびとアブラムに告げた。この時アブラムはエシコルの兄弟、またアネルの兄弟であるアモリびとマムレのテレビンの木のかたわらに住んでいた。彼らはアブラムと同盟していた。 |
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一四 アブラム其兄弟の擄にせられしを聞しかば其熟練したる家の子三百十八人を率ゐてダンまで追いたり |
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一四 アブラムは身内の者が捕虜になったのを聞き、訓練した家の子三百十八人を引き連れてダンまで追って行き、 |
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一五 其家臣を分ちて夜に乘じて彼等を攻め彼等を擊破りてダマスコの左なるホバまで彼等を追ゆけり |
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一五 そのしもべたちを分けて、夜かれらを攻め、これを撃ってダマスコの北、ホバまで彼らを追った。 |
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一六 アブラム斯ゥの物を奪囘し亦其兄弟ロトと其物および婦女と人民を取囘せり |
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一六 そして彼はすべての財産を取り返し、また身内の者ロトとその財産および女たちと民とを取り返した。 |
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一七 アブラム、ケダラオメルおよび彼と偕なる王等を擊破りて歸れる時ソドムの王シヤベの谷(即ち今の王の谷)にて彼を迎へたり |
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一七 アブラムがケダラオメルとその連合の王たちを撃ち破って帰った時、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷に出て彼を迎えた。 |
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一八 時にサレムの王メルキゼデク、パンと酒を携出せり彼は至高き~の祭司なりき |
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一八 その時、サレムの王メルキゼデクはパンとぶどう酒とを持ってきた。彼はいと高き神の祭司である。 |
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一九 彼アブラムを祝して言けるは願くは天地の主なる至高~アブラムを祝みたまへ |
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一九 彼はアブラムを祝福して言った、/「願わくは天地の主なるいと高き神が、/アブラムを祝福されるように。 |
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二〇 願はくは汝の敵を汝の手に付したまひし至高~に稱譽あれとアブラム乃ち彼に其ゥの物の什分の一を饋れり |
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二〇 願わくはあなたの敵をあなたの手に渡された/いと高き神があがめられるように」。アブラムは彼にすべての物の十分の一を贈った。 |
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二一 玆にソドムの王アブラムに言けるは人を我に與へ物を汝に取れと |
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二一 時にソドムの王はアブラムに言った、「わたしには人をください。財産はあなたが取りなさい」。 |
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二二 アブラム、ソドムの王に言けるは我天地の主なる至高き~ヱホバを指て言ふ |
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二二 アブラムはソドムの王に言った、「天地の主なるいと高き神、主に手をあげて、わたしは誓います。 |
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二三 一本の絲にても鞋帶にても凡て汝の所屬は我取ざるべし恐くは汝我アブラムを富しめたりと言ん |
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二三 わたしは糸一本でも、くつひも一本でも、あなたのものは何にも受けません。アブラムを富ませたのはわたしだと、あなたが言わないように。 |
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二四 但少者の旣に食ひたる者および我と偕に行し人アネル、エシコルおよびマムレの分を除くべし彼等には彼等の分を取しめよ |
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二四 ただし若者たちがすでに食べた物は別です。そしてわたしと共に行った人々アネルとエシコルとマムレとにはその分を取らせなさい」。 |
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15章 |
一 是等の事の後ヱホバの言異象の中にアブラムに臨て曰くアブラムよ懼るなかれ我は汝の干櫓なり汝の賚は甚大なるべし |
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一 これらの事の後、主の言葉が幻のうちにアブラムに臨んだ、/「アブラムよ恐れてはならない、/わたしはあなたの盾である。あなたの受ける報いは、/はなはだ大きいであろう」。 |
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二 アブラム言けるは主ヱホバよ何を我に與んとしたまふや我は子なくして居り此ダマスコのエリエゼル我が家の相續人なり |
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二 アブラムは言った、「主なる神よ、わたしには子がなく、わたしの家を継ぐ者はダマスコのエリエゼルであるのに、あなたはわたしに何をくださろうとするのですか」。 |
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三 アブラム又言けるは視よ爾子を我にたまはず我の家の子わが嗣子とならんとすと |
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三 アブラムはまた言った、「あなたはわたしに子を賜わらないので、わたしの家に生れたしもべが、あとつぎとなるでしょう」。 |
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四 ヱホバの言彼にのぞみて曰く此者は爾の嗣子となるべからず汝の身より出る者爾の嗣子となるベしと |
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四 この時、主の言葉が彼に臨んだ、「この者はあなたのあとつぎとなるべきではありません。あなたの身から出る者があとつぎとなるべきです」。 |
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五 斯てヱホバ彼を外に携ヘ出して言たまひけるは天を望みて星を數へ得るかを見よと又彼に言たまひけるは汝の子孫は是のごとくなるべしと |
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五 そして主は彼を外に連れ出して言われた、「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみなさい」。また彼に言われた、「あなたの子孫はあのようになるでしょう」。 |
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六 アブラム、ヱホバを信ずヱホバこれを彼の義となしたまへり |
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六 アブラムは主を信じた。主はこれを彼の義と認められた。 |
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七 又彼に言たまひけるは我は此地を汝に與へて之を有たしめんとて汝をカルデアのウルより導き出せるヱホバなり |
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七 また主は彼に言われた、「わたしはこの地をあなたに与えて、これを継がせようと、あなたをカルデヤのウルから導き出した主です」。 |
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八 彼言けるは主ヱホバよ我いかにして我之を有つことを知るべきや |
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八 彼は言った、「主なる神よ、わたしがこれを継ぐのをどうして知ることができますか」。 |
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九 ヱホバ彼に言たまひけるは三歲の牝牛と三歲の牝山羊と三歲の牡羊と山鳩および雛き鴿を我ために取れと |
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九 主は彼に言われた、「三歳の雌牛と、三歳の雌やぎと、三歳の雄羊と、山ばとと、家ばとのひなとをわたしの所に連れてきなさい」。 |
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一〇 彼乃ち是等を皆取て之を中より剖き其剖たる者を各相對はしめて置り但烏は剖ざりき |
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一〇 彼はこれらをみな連れてきて、二つに裂き、裂いたものを互に向かい合わせて置いた。ただし、鳥は裂かなかった。 |
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一一 鷙烏其死體の上に下る時はアブラム之を驅はらへり |
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一一 荒い鳥が死体の上に降りるとき、アブラムはこれを追い払った。 |
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一二 斯て日の沒る頃アブラム酣く睡りしが其大に暗きを覺えて懼れたり |
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一二 日の入るころ、アブラムが深い眠りにおそわれた時、大きな恐ろしい暗やみが彼に臨んだ。 |
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一三 時にヱホバ、アブラムに言たまひけるは爾確に知るべし爾の子孫他人の國に旅人となりて其人々に服事へん彼等四百年のあひだ之を惱さん |
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一三 時に主はアブラムに言われた、「あなたはよく心にとめておきなさい。あなたの子孫は他の国に旅びととなって、その人々に仕え、その人々は彼らを四百年の間、悩ますでしょう。 |
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一四 又其服事たる國民は我之を鞫かん其後彼等は大なる財貨を携へて出ん |
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一四 しかし、わたしは彼らが仕えたその国民をさばきます。その後かれらは多くの財産を携えて出て来るでしょう。 |
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一五 爾は安然に爾の父祖の所にゆかん爾は遐齡に達りて葬らるべし |
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一五 あなたは安らかに先祖のもとに行きます。そして高齢に達して葬られるでしょう。 |
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一六 四代に及びて彼等此に返りきたらん其はアモリ人の惡未だ貫盈ざれば也と |
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一六 四代目になって彼らはここに帰って来るでしょう。アモリびとの悪がまだ満ちないからです」。 |
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一七 斯て日の沒てK暗となりし時烟と火焰の出る爐其切剖たる物の中を通過り |
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一七 やがて日は入り、暗やみになった時、煙の立つかまど、炎の出るたいまつが、裂いたものの間を通り過ぎた。 |
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一八 是日にヱホバ、アブラムと契約をなして言たまひけるは我此地をエジプトの河より彼大河即ちユフラテ河まで爾の子孫に與ふ |
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一八 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた、/「わたしはこの地をあなたの子孫に与える。エジプトの川から、かの大川ユフラテまで。 |
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一九 即ちケニ人ケナズ人カデモニ人 |
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一九 すなわちケニびと、ケニジびと、カドモニびと、 |
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二〇 ヘテ人ペリジ人レパイム人 |
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二〇 ヘテびと、ペリジびと、レパイムびと、 |
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二一 アモリ人力ナン人ギルガシ人ヱブス人の地是なり |
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二一 アモリびと、カナンびと、ギルガシびと、エブスびとの地を与える」。 |
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16章 |
一 アブラムの妻サライ子女を生ざりき彼に一人の侍女ありしがエジプト人にして其名をハガルと曰り |
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一 アブラムの妻サライは子を産まなかった。彼女にひとりのつかえめがあった。エジプトの女で名をハガルといった。 |
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二 サライ、アブラムに言けるは視よヱホバわが子を生むことを禁めたまひたれば請ふ我が侍女の所に入れ我彼よりして子女を得ることあらんとアブラム、サライの言を聽いれたり |
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二 サライはアブラムに言った、「主はわたしに子をお授けになりません。どうぞ、わたしのつかえめの所におはいりください。彼女によってわたしは子をもつことになるでしょう」。アブラムはサライの言葉を聞きいれた。 |
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三 アブラムの妻サライ其侍女なるエジプト人ハガルを取て之を其夫アブラムに與へて妻となさしめたり是はアブラムがカナンの地に十年住みたる後なりき |
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三 アブラムの妻サライはそのつかえめエジプトの女ハガルをとって、夫アブラムに妻として与えた。これはアブラムがカナンの地に十年住んだ後であった。 |
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四 是においてアブラム、ハガルの所に入るハガル遂に孕みければ己の孕めるを見て其女主を藐視たり |
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四 彼はハガルの所にはいり、ハガルは子をはらんだ。彼女は自分のはらんだのを見て、女主人を見下げるようになった。 |
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|
五 サライ、アブラムに言けるはわが蒙れる害は汝に歸すべし我わが侍女を汝の懷に與へたるに彼己の孕るを見て我を藐視ぐ願はヱホバ我と汝の間の事を鞫きたまへ |
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|
|
五 そこでサライはアブラムに言った、「わたしが受けた害はあなたの責任です。わたしのつかえめをあなたのふところに与えたのに、彼女は自分のはらんだのを見て、わたしを見下げます。どうか、主があなたとわたしの間をおさばきになるように」。 |
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|
六 アブラム、サライに言けるは視よ汝の侍女は汝の手の中にあり汝の目に善と見ゆる所を彼に爲すべしサライ乃ち彼を苦めければ彼サライの面を避て逃たり |
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六 アブラムはサライに言った、「あなたのつかえめはあなたの手のうちにある。あなたの好きなように彼女にしなさい」。そしてサライが彼女を苦しめたので、彼女はサライの顔を避けて逃げた。 |
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七 ヱホバの使者曠野の泉の旁即ちシユルの路にある泉の旁にて彼に遭ひて |
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七 主の使は荒野にある泉のほとり、すなわちシュルの道にある泉のほとりで、彼女に会い、 |
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八 言けるはサライの侍女ハガルよ汝何處より來れるや又何處に往や彼言けるは我は女主サライの面をさけて逃るなり |
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八 そして言った、「サライのつかえめハガルよ、あなたはどこからきたのですか、またどこへ行くのですか」。彼女は言った、「わたしは女主人サライの顔を避けて逃げているのです」。 |
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九 ヱホバの使者彼に言けるは汝の女主の許に返り身を其手に任すべし |
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九 主の使は彼女に言った、「あなたは女主人のもとに帰って、その手に身を任せなさい」。 |
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一〇 ヱホバの使者又彼に言ひけるは我大に汝の子孫を揩オ其數を衆多して數ふることあたはざらしめん |
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一〇 主の使はまた彼女に言った、「わたしは大いにあなたの子孫を増して、数えきれないほどに多くしましょう」。 |
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一一 ヱホバの使者又彼に言けるは汝孕めり男子を生まん其名をイシマエル(~聽知)と名くべしヱホバ汝の艱難を聽知したまへばなり |
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一一 主の使はまた彼女に言った、「あなたは、みごもっています。あなたは男の子を産むでしょう。名をイシマエルと名づけなさい。主があなたの苦しみを聞かれたのです。 |
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一二 彼は野驢馬の如き人とならん其手はゥの人に敵しゥの人の手はこれに敵すべし彼は其ゥの兄弟の東に住んと |
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一二 彼は野ろばのような人となり、その手はすべての人に逆らい、すべての人の手は彼に逆らい、彼はすべての兄弟に敵して住むでしょう」。 |
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一三 ハガル己に諭したまへるヱホバの名をアタエルロイ(汝は見たまふ~なり)とよべり彼いふ我視たる後尙生るやと |
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一三 そこで、ハガルは自分に語られた主の名を呼んで、「あなたはエル・ロイです」と言った。彼女が「ここでも、わたしを見ていられるかたのうしろを拝めたのか」と言ったことによる。 |
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一四 是をもて其井はベエルラハイロイ(我を見る活る者の井)と呼ぼる是はカデシとベレデの間にあり |
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一四 それでその井戸は「ベエル・ラハイ・ロイ」と呼ばれた。これはカデシとベレデの間にある。 |
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一五 ハガル、アブラムの男子を生めりアブラム、ハガルの生める其子の名をイシマエルと名づけたり |
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一五 ハガルはアブラムに男の子を産んだ。アブラムはハガルが産んだ子の名をイシマエルと名づけた。 |
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一六 ハガル、イシマエルをアブラムに生める時アブラムは八十六歲なりき |
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一六 ハガルがイシマエルをアブラムに産んだ時、アブラムは八十六歳であった。 |
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17章 |
一 アブラム九十九歲の時ヱホバ、アブラムに顯れて之に言たまひけるは我は全能の~なり汝我前に行みて先全かれよ |
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一 アブラムの九十九歳の時、主はアブラムに現れて言われた、/「わたしは全能の神である。あなたはわたしの前に歩み、全き者であれ。 |
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二 我わが契約を我と汝の間に立て大に汝の子孫を揩 |
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二 わたしはあなたと契約を結び、/大いにあなたの子孫を増すであろう」。 |
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三 アブラム乃ち俯伏たり~又彼に吿て言たまひけるは |
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三 アブラムは、ひれ伏した。神はまた彼に言われた、 |
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四 我汝とわが契約を立つ汝は衆多の國民の父となるべし |
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四 「わたしはあなたと契約を結ぶ。あなたは多くの国民の父となるであろう。 |
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五 汝の名を此後アブラムと呼ぶべからず汝の名をアブラハム(衆多の人の父)とよぶべし其は我汝を衆多の國民の父と爲ばなり |
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五 あなたの名は、もはやアブラムとは言われず、/あなたの名はアブラハムと呼ばれるであろう。わたしはあなたを多くの国民の/父とするからである。 |
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六 我汝をして衆多の子孫を得せしめ國々の民を汝より起さん王等汝より出べし |
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六 わたしはあなたに多くの子孫を得させ、国々の民をあなたから起そう。また、王たちもあなたから出るであろう。 |
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七 我わが契約を我と汝および汝の後の世々の子孫との間に立て永久の契約となし汝および汝の後の子孫の~となるべし |
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七 わたしはあなた及び後の代々の子孫と契約を立てて、永遠の契約とし、あなたと後の子孫との神となるであろう。 |
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八 我汝と汝の後の子孫に此汝が寄寓る地即ちカナンの全地を與ヘて永久の產業となさん而して我彼等の~となるべし |
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八 わたしはあなたと後の子孫とにあなたの宿っているこの地、すなわちカナンの全地を永久の所有として与える。そしてわたしは彼らの神となるであろう」。 |
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九 ~またアブラハムに言たまひけるは然ば汝と汝の後の世々の子孫わが契約を守るべし |
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九 神はまたアブラハムに言われた、「あなたと後の子孫とは共に代々わたしの契約を守らなければならない。あなたがたのうち |
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一〇 汝等の中の男子は咸割禮を受べし是は我と汝等および汝の後の子孫の間の我が契約にして汝等の守るべき者なり |
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一〇 男子はみな割礼をうけなければならない。これはわたしとあなたがた及び後の子孫との間のわたしの契約であって、あなたがたの守るべきものである。 |
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一一 汝等其陽の皮を割べし是我と汝等の間の契約の徵なり |
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一一 あなたがたは前の皮に割礼を受けなければならない。それがわたしとあなたがたとの間の契約のしるしとなるであろう。 |
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一二 汝等の代々の男子は家に生れたる者も異邦人より金にて買たる汝の子孫ならざる者も皆生れて八日に至らば割禮を受べし |
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一二 あなたがたのうちの男子はみな代々、家に生れた者も、また異邦人から銀で買い取った、あなたの子孫でない者も、生れて八日目に割礼を受けなければならない。 |
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一三 汝の家に生れたる者も汝の金にて買たる者も割禮を受ざるベからず斯我契約汝等の身にありて永久の契約となるべし |
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一三 あなたの家に生れた者も、あなたが銀で買い取った者も必ず割礼を受けなければならない。こうしてわたしの契約はあなたがたの身にあって永遠の契約となるであろう。 |
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一四 割禮を受ざる男兒即ち其陽の皮を割ざる者は我契約を破るによりて其人其民の中より絕るべし |
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一四 割礼を受けない男子、すなわち前の皮を切らない者はわたしの契約を破るゆえ、その人は民のうちから断たれるであろう」。 |
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一五 ~又アブラハムに言たまひけるは汝の妻サライは其名をサライと稱ぶべからず其名をサラと爲べし |
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一五 神はまたアブラハムに言われた、「あなたの妻サライは、もはや名をサライといわず、名をサラと言いなさい。 |
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一六 我彼を祝み彼よりして亦汝に一人の男子を授けん我彼を祝み彼をしてゥ邦の民の母とならしむべしゥの民の王等彼より出べし |
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一六 わたしは彼女を祝福し、また彼女によって、あなたにひとりの男の子を授けよう。わたしは彼女を祝福し、彼女を国々の民の母としよう。彼女から、もろもろの民の王たちが出るであろう」。 |
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一七 アブラハム俯伏て哂ひ其心に謂けるは百歲の人に豈で子の生るゝことあらんや又サラは九十歲なれば豈で產ことをなさんやと |
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一七 アブラハムはひれ伏して笑い、心の中で言った、「百歳の者にどうして子が生れよう。サラはまた九十歳にもなって、どうして産むことができようか」。 |
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一八 アブラハム遂に~にむかひて願くはイシマエルの汝のまへに生存へんことをと曰ふ |
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一八 そしてアブラハムは神に言った、「どうかイシマエルがあなたの前に生きながらえますように」。 |
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一九 ~言たまひけるは汝の妻サラ必ず子を生ん汝其名をイサクと名くべし我彼および其後の子孫と契約を立て永久の契約となさん |
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一九 神は言われた、「いや、あなたの妻サラはあなたに男の子を産むでしょう。名をイサクと名づけなさい。わたしは彼と契約を立てて、後の子孫のために永遠の契約としよう。 |
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二〇 又イシマエルの事に關ては我汝の願を聽たり視よ我彼を視みて多衆の子孫を得さしめ大に彼の子孫を揩キべし彼十二の君王を生ん我彼を大なる國民となすベし |
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二〇 またイシマエルについてはあなたの願いを聞いた。わたしは彼を祝福して多くの子孫を得させ、大いにそれを増すであろう。彼は十二人の君たちを生むであろう。わたしは彼を大いなる国民としよう。 |
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二一 然どわが契約は我翌年の今頃サラが汝に生ん所のイサクと之を立べし |
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二一 しかしわたしは来年の今ごろサラがあなたに産むイサクと、わたしの契約を立てるであろう」。 |
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二二 ~アブラハムと言ことを竟へ彼を離れて昇り給へり |
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二二 神はアブラハムと語り終え、彼を離れて、のぼられた。 |
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二三 是に於てアブラハム~の己に言たまへる如く此日其子イシマエルと凡て其家に生れたる者および凡て基金にて買たる者即ちアブラハムの家の人の中なるゥの男を將きたりて其陽の皮を割たり |
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二三 アブラハムは神が自分に言われたように、この日その子イシマエルと、すべて家に生れた者およびすべて銀で買い取った者、すなわちアブラハムの家の人々のうち、すべての男子を連れてきて、前の皮に割礼を施した。 |
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二四 アブラハムは其陽の皮を割れたる時九十九歲 |
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二四 アブラハムが前の皮に割礼を受けた時は九十九歳、 |
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二五 其子イシマエルは其陽の皮を割れたる時十三歲なりき |
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二五 その子イシマエルが前の皮に割礼を受けた時は十三歳であった。 |
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二六 是日アブラハムと其子イシマエル割禮を受たり |
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二六 この日アブラハムとその子イシマエルは割礼を受けた。 |
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二七 又其家の人家に生れたる者も金にて異邦人より買たる者も皆彼とともに割禮を受たり |
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二七 またその家の人々は家に生れた者も、銀で異邦人から買い取った者も皆、彼と共に割礼を受けた。 |
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18章 |
一 ヱホバ、マムレの橡林にてアブラハムに顯現たまへり彼は日の熱き時刻天幕の入口に坐しゐたりしが |
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一 主はマムレのテレビンの木のかたわらでアブラハムに現れられた。それは昼の暑いころで、彼は天幕の入口にすわっていたが、 |
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二 目を擧て見たるに視よ三人の人其前に立り彼見て天幕の入口より趨り行て之を迎へ |
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二 目を上げて見ると、三人の人が彼に向かって立っていた。彼はこれを見て、天幕の入口から走って行って彼らを迎え、地に身をかがめて、 |
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三 身を地に鞠めて言けるは我が主よ我若汝の目のまへに恩を得たるならば請ふ僕を通り過すなかれ |
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三 言った、「わが主よ、もしわたしがあなたの前に恵みを得ているなら、どうぞしもべを通り過ごさないでください。 |
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四 請ふ少許の水を取きたらしめ汝等の足を濯ひて樹の下に休憩たまへ |
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四 水をすこし取ってこさせますから、あなたがたは足を洗って、この木の下でお休みください。 |
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五 我一口のパンを取來らん汝等心を慰めて然る後過ゆくべし汝等僕の所に來ればなり彼等言ふ汝が言るごとく爲せ |
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五 わたしは一口のパンを取ってきます。元気をつけて、それからお出かけください。せっかくしもべの所においでになったのですから」。彼らは言った、「お言葉どおりにしてください」。 |
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六 是においてアブラハム天幕に急ぎいりてサラの許に至りて言けるは速に細麵三セヤを取り揑てパンを作るべしと |
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六 そこでアブラハムは急いで天幕に入り、サラの所に行って言った、「急いで細かい麦粉三セヤをとり、こねてパンを造りなさい」。 |
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七 而してアブラハム牛の群に趨ゆき犢の柔にして善き者を取りきたりて少者に付しければ急ぎて之を調理ふ |
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七 アブラハムは牛の群れに走って行き、柔らかな良い子牛を取って若者に渡したので、急いで調理した。 |
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八 かくてアブラハム牛酪と牛乳および其調理へたる犢を取て彼等のまヘに供へ樹の下にて其側に立り彼等乃ち食へり |
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八 そしてアブラハムは凝乳と牛乳および子牛の調理したものを取って、彼らの前に供え、木の下で彼らのかたわらに立って給仕し、彼らは食事した。 |
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九 彼等アブラハムに言けるは爾の妻サラは何處にあるや彼言ふ天幕にあり |
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九 彼らはアブラハムに言った、「あなたの妻サラはどこにおられますか」。彼は言った、「天幕の中です」。 |
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一〇 其一人言ふ明年の今頃我必ず爾に返るべし汝の妻サラに男子あらんサラ其後なる天幕の入口にありて聞ゐたり |
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一〇 そのひとりが言った、「来年の春、わたしはかならずあなたの所に帰ってきましょう。その時、あなたの妻サラには男の子が生れているでしょう」。サラはうしろの方の天幕の入口で聞いていた。 |
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一一 抑アブラハムとサラは年邁み老たる者にしてサラには婦人の常の經已に息たり |
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一一 さてアブラハムとサラとは年がすすみ、老人となり、サラは女の月のものが、すでに止まっていた。 |
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一二 是故にサラ心に哂ひて言けるは我は老衰へ吾が主も亦老たる後なれば我に樂あるべけんや |
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一二 それでサラは心の中で笑って言った、「わたしは衰え、主人もまた老人であるのに、わたしに楽しみなどありえようか」。 |
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一三 ヱホバ、アブラハムに言たまひけるは何故にサラは哂ひて我老たれば果して子を生ことあらんやと言ふや |
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一三 主はアブラハムに言われた、「なぜサラは、わたしは老人であるのに、どうして子を産むことができようかと言って笑ったのか。 |
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一四 ヱホバに豈爲し難き事あらんや時至らば我定めたる期に爾に歸るべしサラに男子あらんと |
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一四 主にとって不可能なことがありましょうか。来年の春、定めの時に、わたしはあなたの所に帰ってきます。そのときサラには男の子が生れているでしょう」。 |
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一五 サラ懼れたれば承ずして我哂はずと言へりヱホバ言たまひけるは否汝哂へるなり |
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一五 サラは恐れたので、これを打ち消して言った、「わたしは笑いません」。主は言われた、「いや、あなたは笑いました」。 |
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一六 斯て其人々彼處より起てソドムの方を望みければアブラハム彼等を送らんとて俱に行り |
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一六 その人々はそこを立ってソドムの方に向かったので、アブラハムは彼らを見送って共に行った。 |
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一七 ヱホバ言ひ給けるは我爲んとする事をアブラハムに隱すべけんや |
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一七 時に主は言われた、「わたしのしようとする事をアブラハムに隠してよいであろうか。 |
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一八 アブラハムは必ず大なる强き國民となりて天下の民皆彼に由てを獲に至るべきに在ずや |
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一八 アブラハムは必ず大きな強い国民となって、地のすべての民がみな、彼によって祝福を受けるのではないか。 |
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一九 其は我彼をして其後の兒孫と家族とに命じヱホバの道を守りて公義と公道を行しめん爲に彼をしれり是ヱホバ、アブラハムに其曾て彼に就て言し事を行はん爲なり |
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一九 わたしは彼が後の子らと家族とに命じて主の道を守らせ、正義と公道とを行わせるために彼を知ったのである。これは主がかつてアブラハムについて言った事を彼の上に臨ませるためである」。 |
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二〇 ヱホバ又言給ふソドムとゴモラの號呼大なるに因り又其罪甚だ重に因て |
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二〇 主はまた言われた、「ソドムとゴモラの叫びは大きく、またその罪は非常に重いので、 |
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二一 我今下りて其號呼の我に達れる如くかれら全く行ひたりしやを見んとす若しからずば我知るに至らんと |
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二一 わたしはいま下って、わたしに届いた叫びのとおりに、すべて彼らがおこなっているかどうかを見て、それを知ろう」。 |
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二二 其人々其處より身を旋してソドムに赴むけりアブラハムは尙ほヱホバのまヘに立り |
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二二 その人々はそこから身を巡らしてソドムの方に行ったが、アブラハムはなお、主の前に立っていた。 |
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二三 アブラハム近よりて言けるは爾は義者をも惡者と俱に滅ぼし給ふや |
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二三 アブラハムは近寄って言った、「まことにあなたは正しい者を、悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 |
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二四 若邑の中に五十人の義者あるも汝尙ほ其處を滅ぼし其中の五十人の義者のためにこれを恕したまはざるや |
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二四 たとい、あの町に五十人の正しい者があっても、あなたはなお、その所を滅ぼし、その中にいる五十人の正しい者のためにこれをゆるされないのですか。 |
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二五 なんぢ斯の如く爲て義者を惡者と俱に殺すが如きは是あるまじき事なり又義者と惡者を均等するが如きもあるまじき事なり天下を鞫く者は公議を行ふ可にあらずや |
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二五 正しい者と悪い者とを一緒に殺すようなことを、あなたは決してなさらないでしょう。正しい者と悪い者とを同じようにすることも、あなたは決してなさらないでしょう。全地をさばく者は公義を行うべきではありませんか」。 |
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二六 ヱホバ言たまひけるは我若ソドムに於て邑の中に五十人の義者を看ば其人々のために其處を盡く恕さん |
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二六 主は言われた、「もしソドムで町の中に五十人の正しい者があったら、その人々のためにその所をすべてゆるそう」。 |
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二七 アブラハム應へていひけるは我は塵と灰なれども敢て我主に言上す |
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二七 アブラハムは答えて言った、「わたしはちり灰に過ぎませんが、あえてわが主に申します。 |
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二八 若五十人の義者の中五人缺たらんに爾五人の缺たるために邑を盡く滅ぼしたまふやヱホバ言たまひけるは我若彼處に四十五人を看ば滅さゞるべし |
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二八 もし五十人の正しい者のうち五人欠けたなら、その五人欠けたために町を全く滅ぼされますか」。主は言われた、「もしそこに四十五人いたら、滅ぼさないであろう」。 |
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二九 アブラハム又重てヱホバに言上して曰けるは若彼處に四十人看えなば如何ヱホバ言たまふ我四十人のために之をなさじ |
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二九 アブラハムはまた重ねて主に言った、「もしそこに四十人いたら」。主は言われた、「その四十人のために、これをしないであろう」。 |
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三〇 アブラハム曰ひけるは請ふわが主よ怒らずして言しめたまへ若彼處に三十人看えなば如何ヱホバいひたまふ我三十人を彼處に看ば之を爲じ |
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三〇 アブラハムは言った、「わが主よ、どうかお怒りにならぬよう。わたしは申します。もしそこに三十人いたら」。主は言われた、「そこに三十人いたら、これをしないであろう」。 |
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三一 アブラハム言ふ我あへてわが主に言上す若彼處に二十人看えなば如何ヱホバ言たまふ我二十人のためにほろぼさじ |
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三一 アブラハムは言った、「いまわたしはあえてわが主に申します。もしそこに二十人いたら」。主は言われた、「わたしはその二十人のために滅ぼさないであろう」。 |
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三二 アブラハム言ふ請ふわが主怒らずして今一度言しめたまへ若かしこに十人看えなば如何ヱホバ言たまふ我十人のためにほろぼさじ |
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三二 アブラハムは言った、「わが主よ、どうかお怒りにならぬよう。わたしはいま一度申します、もしそこに十人いたら」。主は言われた、「わたしはその十人のために滅ぼさないであろう」。 |
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三三 ヱホバ、アブラハムと言ふことを終てゆきたまへりアブラハムはおのれの所にかヘりぬ |
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三三 主はアブラハムと語り終り、去って行かれた。アブラハムは自分の所に帰った。 |
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19章 |
一 其二個の天使黃昏にソドムに至るロト時にソドムの門に坐し居たりしがこれを視起て迎へ首を地にさげて |
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一 そのふたりのみ使は夕暮にソドムに着いた。そのときロトはソドムの門にすわっていた。ロトは彼らを見て、立って迎え、地に伏して、 |
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二 言けるは我主よ請ふ僕の家に臨み足を濯ひて宿りつとに起て途に遄征たまへ彼等言ふ否我等は街衢に宿らんと |
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二 言った、「わが主よ、どうぞしもべの家に立寄って足を洗い、お泊まりください。そして朝早く起きてお立ちください」。彼らは言った、「いや、われわれは広場で夜を過ごします」。 |
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三 然ど固く强ければ遂に彼の所に臨みて其家に入るロト乃ち彼等のために筵を設け酵いれぬパンを炊て食はしめたり |
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三 しかしロトがしいて勧めたので、彼らはついに彼の所に寄り、家にはいった。ロトは彼らのためにふるまいを設け、種入れぬパンを焼いて食べさせた。 |
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四 斯て未だ寢ざる前に邑の人々即ちソドムの人老たるも若きもゥ共に四方八方より來たれる民皆其家を環み |
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四 ところが彼らの寝ないうちに、ソドムの町の人々は、若い者も老人も、民がみな四方からきて、その家を囲み、 |
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五 ロトを呼て之に言けるは今夕爾に就たる人は何處にをるや彼等を我等の所に携へ出せ我等之を知らん |
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五 ロトに叫んで言った、「今夜おまえの所にきた人々はどこにいるか。それをここに出しなさい。われわれは彼らを知るであろう」。 |
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六 ロト入口に出て其後の戶を閉ぢ彼等の所に至りて |
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六 ロトは入口におる彼らの所に出て行き、うしろの戸を閉じて、 |
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七 言けるは請ふ兄弟よ惡き事を爲すなかれ |
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七 言った、「兄弟たちよ、どうか悪い事はしないでください。 |
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八 我に未だ男知ぬ二人の女あり請ふ我之を携へ出ん爾等の目に善と見ゆる如く之になせよ惟此人等は旣に我家の蔭に入たれば何をも之になすなかれ |
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八 わたしにまだ男を知らない娘がふたりあります。わたしはこれをあなたがたに、さし出しますから、好きなようにしてください。ただ、わたしの屋根の下にはいったこの人たちには、何もしないでください」。 |
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九 彼等曰ふ爾退け又言けるは此人は來り寓れる身なるに恒に士師とならんとす然ば我等彼等に加ふるよりも多くの害を爾に加へんと遂に彼等酷しく其人ロトに逼り前よりて其戶を破んとせしに |
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九 彼らは言った、「退け」。また言った、「この男は渡ってきたよそ者であるのに、いつも、さばきびとになろうとする。それで、われわれは彼らに加えるよりも、おまえに多くの害を加えよう」。彼らはロトの身に激しく迫り、進み寄って戸を破ろうとした。 |
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一〇 彼二人其手を舒しロトを家の內に援いれて其戶を閉ぢ |
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一〇 その時、かのふたりは手を伸べてロトを家の内に引き入れ、戸を閉じた。 |
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一一 家の入口にをる人衆をして大なるも小も俱に目を眩しめければ彼等遂に入口を索ぬるに困憊たり |
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一一 そして家の入口におる人々を、老若の別なく打って目をくらましたので、彼らは入口を捜すのに疲れた。 |
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一二 斯て二人ロトに言けるは外に爾に屬する者ありや汝の婿子女および凡て邑にをりて爾に屬する者を此所より携へ出べし |
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一二 ふたりはロトに言った、「ほかにあなたの身内の者がここにおりますか。あなたのむこ、むすこ、娘およびこの町におるあなたの身内の者を、皆ここから連れ出しなさい。 |
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一三 此處の號呼ヱホバの前に大になりたるに因て我等之を滅さんとすヱホバ我等を遣はして之を滅さしめたまふ |
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一三 われわれがこの所を滅ぼそうとしているからです。人々の叫びが主の前に大きくなり、主はこの所を滅ぼすために、われわれをつかわされたのです」。 |
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一四 ロト出て其女を娶る婿等に吿て言けるはヱホバ邑を滅したまふべければ爾等起て此處を出よと然ど婿等は之を戱言と視爲り |
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一四 そこでロトは出て行って、その娘たちをめとるむこたちに告げて言った、「立ってこの所から出なさい。主がこの町を滅ぼされます」。しかしそれはむこたちには戯むれごとに思えた。 |
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一五 曉に及て天使ロトを促して言けるは起て此なる爾の妻と二人の女を携へよ恐くは爾邑の惡とともに滅されん |
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一五 夜が明けて、み使たちはロトを促して言った 「立って、ここにいるあなたの妻とふたりの娘とを連れ出しなさい。そうしなければ、あなたもこの町の不義のために滅ぼされるでしょう」。 |
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一六 然るに彼遲延ひしかば二人其手と其妻の手と其二人の女の手を執て之を導き出し邑の外に置りヱホバ斯彼に仁慈を加へたまふ |
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一六 彼はためらっていたが、主は彼にあわれみを施されたので、かのふたりは彼の手と、その妻の手と、ふたりの娘の手を取って連れ出し、町の外に置いた。 |
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一七 旣に之を導き出して其一人曰けるは逃遁て汝の生命を救へ後を回顧るなかれ低地の中に止るなかれ山に遁れよ否ずば爾滅されん |
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一七 彼らを外に連れ出した時そのひとりは言った、「のがれて、自分の命を救いなさい。うしろをふりかえって見てはならない。低地にはどこにも立ち止まってはならない。山にのがれなさい。そうしなければ、あなたは滅びます」。 |
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一八 ロト彼等に言けるはわが主よ請ふ斯したまふなかれ |
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一八 ロトは彼らに言った、「わが主よ、どうか、そうさせないでください。 |
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一九 視よ僕爾の目のまへに恩を得たり爾大なる仁慈を吾に施してわが生命を救たまふ吾山に遁る能ず恐くは災害身に及びて死るにいたらん |
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一九 しもべはすでにあなたの前に恵みを得ました。あなたはわたしの命を救って、大いなるいつくしみを施されました。しかしわたしは山まではのがれる事ができません。災が身に追い迫ってわたしは死ぬでしょう。 |
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二〇 視よ此邑は遁ゆくに近くして且小し我をして彼處に遁れしめよしからば吾生命全からん是は小き邑なるにあらずや |
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二〇 あの町をごらんなさい。逃げていくのに近く、また小さい町です。どうかわたしをそこにのがれさせてください。それは小さいではありませんか。そうすればわたしの命は助かるでしょう」。 |
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二一 天使之にいひけるは視よ我此事に關ても亦爾の願を容たれば爾が言ふところの邑を滅さじ |
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二一 み使は彼に言った、「わたしはこの事でもあなたの願いをいれて、あなたの言うその町は滅ぼしません。 |
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二二 急ぎて彼處に遁れよ爾が彼處に至るまでは我何事をも爲を得ずと是に因て其邑の名はゾアル(小し)と稱る |
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二二 急いでそこへのがれなさい。あなたがそこに着くまでは、わたしは何事もすることができません」。これによって、その町の名はゾアルと呼ばれた。 |
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二三 ロト、ゾアルに至れる時日地の上に昇れり |
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二三 ロトがゾアルに着いた時、日は地の上にのぼった。 |
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二四 ヱホバ硫黃と火をヱホバの所より即ち天よりソドムとゴモラに雨しめ |
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二四 主は硫黄と火とを主の所すなわち天からソドムとゴモラの上に降らせて、 |
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二五 其邑と低地と其邑の居民および地に生るところの物を盡く滅したまヘり |
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二五 これらの町と、すべての低地と、その町々のすべての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。 |
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二六 ロトの妻は後を回顧たれば鹽の柱となりぬ |
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二六 しかしロトの妻はうしろを顧みたので塩の柱になった。 |
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二七 アブラハム其朝夙に起て其嘗てヱホバの前に立たる處に至り |
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二七 アブラハムは朝早く起き、さきに主の前に立った所に行って、 |
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二八 ソドム、ゴモラおよび低地の全面を望み見るに其地の烟燄窖の烟のごとくに騰上れり |
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二八 ソドムとゴモラの方、および低地の全面をながめると、その地の煙が、かまどの煙のように立ちのぼっていた。 |
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二九 ~低地の邑を滅したまふ時即ちロトの住る邑を滅したまふ時に當り~アブラハムを眷念て斯其滅亡の中よりロトを出したまへり |
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二九 こうして神が低地の町々をこぼたれた時、すなわちロトの住んでいた町々を滅ぼされた時、神はアブラハムを覚えて、その滅びの中からロトを救い出された。 |
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三〇 斯てロト、ゾアルに居ることを懼れたれば其二人の女と偕にゾアルを出て上りて山に居り其二人の女子とともに巖穴に住り |
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三〇 ロトはゾアルを出て上り、ふたりの娘と共に山に住んだ。ゾアルに住むのを恐れたからである。彼はふたりの娘と共に、ほら穴の中に住んだ。 |
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三一 玆に長女季女にいひけるは我等の父は老いたり又此地には我等に偶て世の道を成す人あらず |
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三一 時に姉が妹に言った、「わたしたちの父は老い、またこの地には世のならわしのように、わたしたちの所に来る男はいません。 |
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三二 然ば我等父に酒を飮せて與に寢ね父に由て子を得んと |
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三二 さあ、父に酒を飲ませ、共に寝て、父によって子を残しましょう」。 |
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三三 遂に其夜父に酒を飮せ長女入て其父と與に寢たり然るにロトは女の起臥を知ざりき |
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三三 彼女たちはその夜、父に酒を飲ませ、姉がはいって父と共に寝た。ロトは娘が寝たのも、起きたのも知らなかった。 |
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三四 翌日長女季女に言けるは我昨夜わが父と寢たり我等此夜又父に酒をのません爾入て與に寢よわれらの父に由て子を得ることをえんと |
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三四 あくる日、姉は妹に言った、「わたしは昨夜、父と寝ました。わたしたちは今夜もまた父に酒を飲ませましょう。そしてあなたがはいって共に寝なさい。わたしたちは父によって子を残しましょう」。 |
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三五 乃ち其夜も亦父に酒をのませ季女起て父と與に寢たりロトまた女の起臥を知ざりき |
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三五 彼らはその夜もまた父に酒を飲ませ、妹が行って父と共に寝た。ロトは娘の寝たのも、起きたのも知らなかった。 |
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三六 斯ロトの二人の女其父によりて孕みたり |
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三六 こうしてロトのふたりの娘たちは父によってはらんだ。 |
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三七 長女子を生み其名をモアブと名く即ち今のモアブ人の先祖なり |
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三七 姉娘は子を産み、その名をモアブと名づけた。これは今のモアブびとの先祖である。 |
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三八 季女も亦子を生み其名をベニアンミと名く即ち今のアンモニ人の先祖なり |
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三八 妹もまた子を産んで、その名をベニアンミと名づけた。これは今のアンモンびとの先祖である。 |
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20章 |
一 アブラハム彼處より徙りて南の地に至りカデシとシユルの間に居りゲラルに寄留り |
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一 アブラハムはそこからネゲブの地に移って、カデシとシュルの間に住んだ。彼がゲラルにとどまっていた時、 |
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二 アブラハム其妻サラを我妹なりと言しかばゲラルの王アビメレク人を遣してサラを召入たり |
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二 アブラハムは妻サラのことを、「これはわたしの妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは、人をつかわしてサラを召し入れた。 |
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三 然るに~夜の夢にアビメレクに臨みて之に言たまひけるは汝は其召入たる婦人のために死るなるべし彼は夫ある者なればなり |
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三 ところが神は夜の夢にアビメレクに臨んで言われた、「あなたは召し入れたあの女のゆえに死なねばならない。彼女は夫のある身である」。 |
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四 アビメレク未だ彼に近づかざりしかば言ふ主よ汝は義き民をも殺したまふや |
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四 アビメレクはまだ彼女に近づいていなかったので言った、「主よ、あなたは正しい民でも殺されるのですか。 |
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五 彼は我に是はわが妹なりと言しにあらずや又婦も自彼はわが兄なりと言たり我全き心と潔き手をもて此をなせり |
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五 彼はわたしに、これはわたしの妹ですと言ったではありませんか。また彼女も自分で、彼はわたしの兄ですと言いました。わたしは心も清く、手もいさぎよく、このことをしました」。 |
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六 ~又夢に之に言たまひけるは然り我汝が全き心をもて之をなせるを知りたれば我も汝を阻めて罪を我に犯さしめざりき彼に觸るを容ざりしは是がためなり |
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六 神はまた夢で彼に言われた、「そうです、あなたが清い心をもってこのことをしたのを知っていたから、わたしもあなたを守って、わたしに対して罪を犯させず、彼女にふれることを許さなかったのです。 |
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七 然ば彼の妻を歸せ彼は預言者なれば汝のために祈り汝をして生命を保しめん汝若歸ずば汝と汝に屬する者皆必死るべきを知るべし |
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七 いま彼の妻を返しなさい。彼は預言者ですから、あなたのために祈って、命を保たせるでしょう。もし返さないなら、あなたも身内の者もみな必ず死ぬと知らなければなりません」。 |
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八 是に於てアビメレク其朝夙に起て臣僕を悉く召し此事を皆語り聞せければ人々甚く懼れたり |
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八 そこでアビメレクは朝早く起き、しもべたちをことごとく召し集めて、これらの事をみな語り聞かせたので、人々は非常に恐れた。 |
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九 斯てアビメレク、アブラハムを召て之に言けるは爾我等に何を爲すや我何の惡き事を爾になしたれば爾大なる罪を我とわが國に蒙らしめんとせしか爾爲べからざる所爲を我に爲したり |
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九 そしてアビメレクはアブラハムを召して言った、「あなたはわれわれに何をするのですか。あなたに対してわたしがどんな罪を犯したために、あなたはわたしとわたしの国とに、大きな罪を負わせるのですか。あなたはしてはならぬことをわたしにしたのです」。 |
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一〇 アビメレク又アブラハムに言けるは爾何を見て此事を爲たるや |
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一〇 アビメレクはまたアブラハムに言った、「あなたはなんと思って、この事をしたのですか」。 |
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一一 アブラハム言けるは我此處はかならず~を畏れざるべければ吾妻のために人我を殺さんと思ひたるなり |
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一一 アブラハムは言った、「この所には神を恐れるということが、まったくないので、わたしの妻のゆえに人々がわたしを殺すと思ったからです。 |
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一二 又彼は誠にわが妹なり彼はわが父の子にしてわが母の子にあらざるが遂に我妻となりたるなり |
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一二 また彼女はほんとうにわたしの妹なのです。わたしの父の娘ですが、母の娘ではありません。そして、わたしの妻になったのです。 |
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一三 ~我をして吾父の家を離れて遊周しめたまへる時に當りて我彼に爾我等が至る處にて我を爾の兄なりと言へ是は爾が我に施す恩なりと言たり |
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一三 神がわたしに父の家を離れて、行き巡らせた時、わたしは彼女に、あなたはわたしたちの行くさきざきでわたしを兄であると言ってください。これはあなたがわたしに施す恵みであると言いました」。 |
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一四 アビメレク乃ち羊牛僕婢を將てアブラハムに與へ其妻サラを之に歸せり |
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一四 そこでアビメレクは羊、牛および男女の奴隷を取ってアブラハムに与え、その妻サラを彼に返した。 |
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一五 而してアビメレク言けるは視よ我地は爾のまへにあり爾の好むところに住め |
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一五 そしてアビメレクは言った、「わたしの地はあなたの前にあります。あなたの好きな所に住みなさい」。 |
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一六 又サラに言けるは視よ我爾の兄に銀千枚を與へたり是は爾およびゥの人にありし事等につきて爾の目を蔽ふ者なり斯爾償贖を得たり |
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一六 またサラに言った、「わたしはあなたの兄に銀千シケルを与えました。これはあなたの身に起ったすべての事について、あなたに償いをするものです。こうしてすべての人にあなたは正しいと認められます」。 |
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一七 是に於てアブラハム~に祈りければ~アビメレクと其妻および婢を醫したまひて彼等子を產むにいたる |
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一七 そこでアブラハムは神に祈った。神はアビメレクとその妻および、はしためたちをいやされたので、彼らは子を産むようになった。 |
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一八 ヱホバさきにはアブラハムの妻サラの故をもてアビメレクの家の者の胎をことごとく閉たまへり |
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一八 これは主がさきにアブラハムの妻サラのゆえに、アビメレクの家のすべての者の胎を、かたく閉ざされたからである。 |
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21章 |
一 ヱホバ其言し如くサラを眷顧みたまふ即ちヱホバ其語しごとくサラに行ひたまひしかば |
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一 主は、さきに言われたようにサラを顧み、告げられたようにサラに行われた。 |
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二 サラ遂に孕み~のアブラハムに語たまひし期日に及びて年老たるアブラハムに男子を生り |
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二 サラはみごもり、神がアブラハムに告げられた時になって、年老いたアブラハムに男の子を産んだ。 |
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三 アブラハム其生れたる子即ちサラが己に生る子の名をイサクと名けたり |
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三 アブラハムは生れた子、サラが産んだ男の子の名をイサクと名づけた。 |
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四 アブラハム~の命じたまひし如く八日に其子イサクに割禮を行へり |
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四 アブラハムは神が命じられたように八日目にその子イサクに割礼を施した。 |
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五 アブラハムは其子イサクの生れたる時百歲なりき |
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五 アブラハムはその子イサクが生れた時百歳であった。 |
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六 サラ言けるは~我を笑はしめたまふ聞く者皆我とともに笑はん |
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六 そしてサラは言った、「神はわたしを笑わせてくださった。聞く者は皆わたしのことで笑うでしょう」。 |
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七 又曰けるは誰かアブラハムにサラ子女に乳を飮しむるにいたらんと言しものあらん然に彼が年老るに及びて男子を生たりと |
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七 また言った、「サラが子に乳を飲ませるだろうと、だれがアブラハムに言い得たであろう。それなのに、わたしは彼が年とってから、子を産んだ」。 |
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八 偖其子長育ちて遂に乳を斷るイサクの乳を斷るゝ日にアブラハム大なる饗宴を設けたり |
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八 さて、おさなごは育って乳離れした。イサクが乳離れした日にアブラハムは盛んなふるまいを設けた。 |
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九 時にサラ、エジプト人ハガルがアブラハムに生たる子の笑ふを見て |
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九 サラはエジプトの女ハガルのアブラハムに産んだ子が、自分の子イサクと遊ぶのを見て、 |
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一〇 アブラハムに言けるは此婢と其子を逐出せ此婢の子は吾子イサクと共に嗣子となるべからざるなりと |
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一〇 アブラハムに言った、「このはしためとその子を追い出してください。このはしための子はわたしの子イサクと共に、世継となるべき者ではありません」。 |
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一一 アブラハム其子のために甚く此事を憂たり |
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一一 この事で、アブラハムはその子のために非常に心配した。 |
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一二 ~アブラハムに言たまひけるは童兒のため又汝の婢のために之を憂るなかれサラが汝に言ところの言は悉く之を聽け其はイサクより出る者汝の裔と稱らるべければなり |
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一二 神はアブラハムに言われた、「あのわらべのため、またあなたのはしためのために心配することはない。サラがあなたに言うことはすべて聞きいれなさい。イサクに生れる者が、あなたの子孫と唱えられるからです。 |
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一三 又婢の子も汝の胤なれば我之を一の國となさん |
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一三 しかし、はしための子もあなたの子ですから、これをも、一つの国民とします」。 |
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一四 アブラハム朝夙に起てパンと水の革囊とを取りハガルに與ヘて之を其肩に負せ其子を携ヘて去しめければ彼往てベエルシバの曠野に躑躅しが |
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一四 そこでアブラハムは明くる朝はやく起きて、パンと水の皮袋とを取り、ハガルに与えて、肩に負わせ、その子を連れて去らせた。ハガルは去ってベエルシバの荒野にさまよった。 |
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一五 革囊の水遂に罄たれば子を灌木の下に置き |
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一五 やがて皮袋の水が尽きたので、彼女はその子を木の下におき、 |
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一六 我子の死るを見るに忍ずといひて遙かに行き箭達を隔てゝ之に對ひ坐しぬ斯相嚮ひて坐し聲をあげて哭く |
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一六 「わたしはこの子の死ぬのを見るに忍びない」と言って、矢の届くほど離れて行き、子供の方に向いてすわった。彼女が子供の方に向いてすわったとき、子供は声をあげて泣いた。 |
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一七 ~其童兒の聲を聞たまふ~の使即ち天よりハガルを呼て之に言けるはハガルよ何事ぞや懼るゝなかれ~彼處にをる童兒の聲を聞たまへり |
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一七 神はわらべの声を聞かれ、神の使は天からハガルを呼んで言った、「ハガルよ、どうしたのか。恐れてはいけない。神はあそこにいるわらべの声を聞かれた。 |
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一八 起て童兒を起し之を汝の手に抱くべし我之を大なる國となさんと |
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一八 立って行き、わらべを取り上げてあなたの手に抱きなさい。わたしは彼を大いなる国民とするであろう」。 |
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一九 ~ハガルの目を開きたまひければ水の井あるを見ゆきて革囊に水を充し童兒に飮しめたり |
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一九 神がハガルの目を開かれたので、彼女は水の井戸のあるのを見た。彼女は行って皮袋に水を満たし、わらべに飲ませた。 |
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二〇 ~童兒と偕に在す彼遂に成長り曠野に居りて射者となり |
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二〇 神はわらべと共にいまし、わらべは成長した。彼は荒野に住んで弓を射る者となった。 |
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二一 パランの曠野に住り其母彼のためにエジプトの國より妻を迎へたり |
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二一 彼はパランの荒野に住んだ。母は彼のためにエジプトの国から妻を迎えた。 |
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二二 當時アビメレクと其軍勢の長ピコル、アブラハムに語て言けるは汝何事を爲にも~汝とともに在す |
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二二 そのころアビメレクとその軍勢の長ピコルはアブラハムに言った、「あなたが何事をなさっても、神はあなたと共におられる。 |
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二三 然ば汝が我とわが子とわが孫に僞をなさゞらんことを今此に~をさして我に誓へ我が厚情をもて汝をあつかふごとく汝我と此汝が寄留る地とに爲べし |
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二三 それゆえ、今ここでわたしをも、わたしの子をも、孫をも欺かないと、神をさしてわたしに誓ってください。わたしがあなたに親切にしたように、あなたもわたしと、このあなたの寄留の地とに、しなければなりません」。 |
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二四 アブラハム言ふ我誓はん |
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二四 アブラハムは言った、「わたしは誓います」。 |
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二五 アブラハム、アビメレクの臣僕等が水の井を奪ひたる事につきてアビメレクを責ければ |
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二五 アブラハムはアビメレクの家来たちが、水の井戸を奪い取ったことについてアビメルクを責めた。 |
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二六 アビメレク言ふ我誰が此事を爲しを知ず汝我に吿しこと无く又我今日まで聞しことなし |
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二六 しかしアビメレクは言った、「だれがこの事をしたかわたしは知りません。あなたもわたしに告げたことはなく、わたしもきょうまで聞きませんでした」。 |
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二七 アブラハム乃ち羊と牛を取て之をアビメレクに與ふ斯て二人契約を結べり |
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二七 そこでアブラハムは羊と牛とを取ってアビメレクに与え、ふたりは契約を結んだ。 |
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二八 アブラハム牝の羔七を分ち置ければ |
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二八 アブラハムが雌の小羊七頭を分けて置いたところ、 |
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二九 アビメレク、アブラハムに言ふ汝此七の牝の羔を分ちおくは何のためなるや |
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二九 アビメレクはアブラハムに言った、「あなたがこれらの雌の小羊七頭を分けて置いたのは、なんのためですか」。 |
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三〇 アブラハム言けるは汝わが手より此七の牝の羔を取りて我が此井を掘たる證據とならしめよと彼等二人彼處に誓ひしによりて |
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三〇 アブラハムは言った、「あなたはわたしの手からこれらの雌の小羊七頭を受け取って、わたしがこの井戸を掘ったことの証拠としてください」。 |
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三一 其處をベエルシバ(盟約の井)と名けたり |
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三一 これによってその所をベエルシバと名づけた。彼らがふたりそこで誓いをしたからである。 |
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三二 斯彼等ベエルシバにて契約を結びアビメレクと其軍勢の長ピコルは起てペリシテ人の國に歸りぬ |
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三二 このように彼らはベエルシバで契約を結び、アビメレクとその軍勢の長ピコルは立ってペリシテの地に帰った。 |
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三三 アブラハム、ベエルシバに柳を植ゑ永遠に在す~ヱホバの名を彼處に龥り |
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三三 アブラハムはベエルシバに一本のぎょりゅうの木を植え、その所で永遠の神、主の名を呼んだ。 |
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三四 斯してアブラハム久くペリシテ人の地に留寄りぬ |
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三四 こうしてアブラハムは長い間ペリシテびとの地にとどまった。 |
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22章 |
一 是等の事の後~アブラハムを試みんとて之をアブラハムよと呼たまふ彼言ふ我此にあり |
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一 これらの事の後、神はアブラハムを試みて彼に言われた、「アブラハムよ」。彼は言った、「ここにおります」。 |
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二 ヱホバ言給ひけるは爾の子爾の愛する獨子即ちイサクを携てモリアの地に到りわが爾に示さんとする彼所の山に於て彼を燔祭として献ぐべし |
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二 神は言われた、「あなたの子、あなたの愛するひとり子イサクを連れてモリヤの地に行き、わたしが示す山で彼を燔祭としてささげなさい」。 |
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三 アブラハム朝夙に起て其驢馬に鞍おき二人の少者と其子イサクを携へ且燔祭の柴薪を劈りて起て~の己に示したまへる處におもむきけるが |
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三 アブラハムは朝はやく起きて、ろばにくらを置き、ふたりの若者と、その子イサクとを連れ、また燔祭のたきぎを割り、立って神が示された所に出かけた。 |
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四 三日におよびてアブラハム目を擧て遙に其處を見たり |
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四 三日目に、アブラハムは目をあげて、はるかにその場所を見た。 |
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五 是に於てアブラハム其少者に言けるは爾等は驢馬とともに此に止れ我と童子は彼處にゆきて崇拜を爲し復爾等に歸ん |
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五 そこでアブラハムは若者たちに言った、「あなたがたは、ろばと一緒にここにいなさい。わたしとわらべは向こうへ行って礼拝し、そののち、あなたがたの所に帰ってきます」。 |
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六 アブラハム乃ち燔祭の柴薪を取て其子イサクに負せ手に火と刀を執て二人ともに往り |
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六 アブラハムは燔祭のたきぎを取って、その子イサクに負わせ、手に火と刃物とを執って、ふたり一緒に行った。 |
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七 イサク父アブラハムに語て父よと曰ふ彼答て子よ我此にありといひければイサク即ち言ふ火と柴薪は有り然ど燔祭の羔は何處にあるや |
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七 やがてイサクは父アブラハムに言った、「父よ」。彼は答えた、「子よ、わたしはここにいます」。イサクは言った、「火とたきぎとはありますが、燔祭の小羊はどこにありますか」。 |
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八 アブラハム言けるは子よ~自ら燔祭の羔を備ヘたまはんと二人偕に進みゆきて |
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八 アブラハムは言った、「子よ、神みずから燔祭の小羊を備えてくださるであろう」。こうしてふたりは一緒に行った。 |
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九 遂に~の彼に示したまへる處に到れり是においてアブラハム彼處に壇を築き柴薪を臚列ベ其子イサクを縛りて之を壇の柴薪の上に置せたり |
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九 彼らが神の示された場所にきたとき、アブラハムはそこに祭壇を築き、たきぎを並べ、その子イサクを縛って祭壇のたきぎの上に載せた。 |
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一〇 斯してアブラハム手を舒べ刀を執りて其子を宰んとす |
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一〇 そしてアブラハムが手を差し伸べ、刃物を執ってその子を殺そうとした時、 |
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一一 時にヱホバの使者天より彼を呼てアブラハムよアブラハムよと言へり彼言ふ我此にあり |
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一一 主の使が天から彼を呼んで言った、「アブラハムよ、アブラハムよ」。彼は答えた、「はい、ここにおります」。 |
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一二 使者言けるは汝の手を童子に按るなかれ亦何をも彼に爲べからず汝の子即ち汝の獨子をも我ために惜まざれば我今汝が~を畏るを知ると |
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一二 み使が言った、「わらべを手にかけてはならない。また何も彼にしてはならない。あなたの子、あなたのひとり子をさえ、わたしのために惜しまないので、あなたが神を恐れる者であることをわたしは今知った」。 |
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一三 玆にアブラハム目を擧て視れば後に牡綿羊ありて其角林叢に繫りたりアブラハム即ち往て其牡綿羊を執へ之を其子の代に燔祭として獻げたり |
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一三 この時アブラハムが目をあげて見ると、うしろに、角をやぶに掛けている一頭の雄羊がいた。アブラハムは行ってその雄羊を捕え、それをその子のかわりに燔祭としてささげた。 |
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一四 アブラハム其處をヱホバヱレ(ヱホバ預備たまはん)と名く是に緣て今日もなほ人々山にヱホバ預備たまはんといふ |
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一四 それでアブラハムはその所の名をアドナイ・エレと呼んだ。これにより、人々は今日もなお「主の山に備えあり」と言う。 |
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一五 ヱホバの使者再天よりアブラハムを呼て |
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一五 主の使は再び天からアブラハムを呼んで、 |
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一六 言けるはヱホバ諭したまふ我己を指て誓ふ汝是事を爲し汝の子即ち汝の獨子を惜まざりしに因て |
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一六 言った、「主は言われた、『わたしは自分をさして誓う。あなたがこの事をし、あなたの子、あなたのひとり子をも惜しまなかったので、 |
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一七 我大に汝を祝み又大に汝の子孫を揩オて天の星の如く濱の沙の如くならしむべし汝の子孫は其敵の門を獲ん |
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一七 わたしは大いにあなたを祝福し、大いにあなたの子孫をふやして、天の星のように、浜べの砂のようにする。あなたの子孫は敵の門を打ち取り、 |
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一八 又汝の子孫によりて天下の民皆祉を得ベし汝わが言に遵ひたるによりてなりと |
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一八 また地のもろもろの国民はあなたの子孫によって祝福を得るであろう。あなたがわたしの言葉に従ったからである』」。 |
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一九 斯てアブラハム其少者の所に歸り皆たちて偕にベエルシバにいたれりアブラハムはベエルシバに住り |
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一九 アブラハムは若者たちの所に帰り、みな立って、共にベエルシバへ行った。そしてアブラハムはベエルシバに住んだ。 |
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二〇 是等の事の後アブラハムに吿る者ありて言ふミルカ亦汝の兄弟ナホルにしたがひて子を生り |
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二〇 これらの事の後、ある人がアブラハムに告げて言った、「ミルカもまたあなたの兄弟ナホルに子どもを産みました。 |
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二一 長子はウヅ其弟はブズ其次はケムエル是はアラムの父なり |
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二一 長男はウヅ、弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、 |
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二二 其次はケセデ、ハゾ、ピルダシ、ヱデラフ、ベトエル |
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二二 次はケセデ、ハゾ、ピルダシ、エデラフ、ベトエルです」。 |
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二三 ベトエルはリベカを生り是八人はミルカがアブラハムの兄弟ナホルに生たる者なり |
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二三 ベトエルの子はリベカであって、これら八人はミルカがアブラハムの兄弟ナホルに産んだのである。 |
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二四 ナホルの妾名はルマといふ者も亦テバ、ガハム、タハシおよびマア力を生り |
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二四 ナホルのそばめで、名をルマという女もまたテバ、ガハム、タハシおよびマアカを産んだ。 |
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23章 |
一 サラ百二十七歲なりき是即ちサラの齡の年なり |
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一 サラの一生は百二十七年であった。これがサラの生きながらえた年である。 |
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二 サラ、キリアテアルバにて死り是はカナンの地のヘブロンなりアブラハム至りてサラのために哀み且哭り |
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二 サラはカナンの地のキリアテ・アルバすなわちヘブロンで死んだ。アブラハムは中にはいってサラのために悲しみ泣いた。 |
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三 斯てアブラハム死人の前より起ち出てヘテの子孫に語りて言けるは |
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三 アブラハムは死人のそばから立って、ヘテの人々に言った、 |
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四 我は汝等の中の賓旅なり寄留者なり請ふ汝等の中にて我に墓地を與へて吾が所有となし我をして吾が死人を出し葬ることを得せしめよ |
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四 「わたしはあなたがたのうちの旅の者で寄留者ですが、わたしの死人を出して葬るため、あなたがたのうちにわたしの所有として一つの墓地をください」。 |
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五 ヘテの子孫アブラハムに應て之に言ふ |
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五 ヘテの人々はアブラハムに答えて言った、 |
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六 我主よ我等に聽たまへ我等の中にありて汝は~の如き君なり我等の墓地の佳者を擇みて汝の死人を葬れ我等の中一人も其墓地を汝にをしみて汝をしてその死人を葬らしめざる者なかるべし |
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六 「わが主よ、お聞きなさい。あなたはわれわれのうちにおられて、神のような主君です。われわれの墓地の最も良い所にあなたの死人を葬りなさい。その墓地を拒んで、あなたにその死人を葬らせない者はわれわれのうちには、ひとりもないでしょう」。 |
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七 是に於てアブラハム起ち其地の民へテの子孫に對て躬を鞠む |
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七 アブラハムは立ちあがり、その地の民ヘテの人々に礼をして、 |
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八 而して彼等と語ひて言けるは若我をしてわが死人を出し葬るを得せしむる事汝等の意ならば請ふ我に聽て吾ためにゾハルの子エフロンに求め |
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八 彼らに言った、「もしわたしの死人を葬るのに同意されるなら、わたしの願いをいれて、わたしのためにゾハルの子エフロンに頼み、 |
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九 彼をして其野の極端に有るマクペラの洞穴を我に與へしめよ彼其十分の値を取て之を我に與へ汝等の中にてわが所有なる基地となさば善し |
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九 彼が持っている畑の端のマクペラのほら穴をじゅうぶんな代価でわたしに与え、あなたがたのうちに墓地を持たせてください」。 |
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一〇 時にエフロン、ヘテの子孫の中に坐しゐたりヘテ人エフロン、ヘテの子孫即ち凡て其邑の門に入る者の聽る前にてアブラハムに應へて言けるは |
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一〇 時にエフロンはヘテの人々のうちにすわっていた。そこでヘテびとエフロンはヘテの人々、すなわちすべてその町の門にはいる人々の聞いているところで、アブラハムに答えて言った、 |
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一一 吾主よ我に聽たまへ其野は我汝に與ふ又其中の洞穴も我之を汝に與ふ我吾民なる衆人の前にて之を汝にあたふ汝の死人を葬れ |
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一一 「いいえ、わが主よ、お聞きなさい。わたしはあの畑をあなたにさしあげます。またその中にあるほら穴もさしあげます。わたしの民の人々の前で、それをさしあげます。あなたの死人を葬りなさい」。 |
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一二 是に於てアブラハム其地の民の前に躬を鞠たり |
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一二 アブラハムはその地の民の前で礼をし、 |
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一三 而して彼其地の民の聽る前にてエフロンに語りて言けるは汝若之を肯はゞ請ふ吾に聽け我其野の値を汝に償はん汝之を吾より取れ我わが死人を彼處に葬らん |
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一三 その地の民の聞いているところでエフロンに言った、「あなたがそれを承諾されるなら、お聞きなさい。わたしはその畑の代価を払います。お受け取りください。わたしの死人をそこに葬りましょう」。 |
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一四 エフロン、アブラハムに答て曰けるは |
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一四 エフロンはアブラハムに答えて言った、 |
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一五 わが主よ我に聽たまへ彼地は銀四百シケルに當る是は我と汝の間に豈道に足んや然ば汝の死人を葬れ |
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一五 「わが主よ、お聞きなさい。あの地は銀四百シケルですが、これはわたしとあなたの間で、なにほどのことでしょう。あなたの死人を葬りなさい」。 |
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一六 アブラハム、エフロンの言に從ひエフロンがヘテの子孫の聽る前にて言たる所の銀を秤り商賈の中の通用銀四百シケルを之に與へたり |
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一六 そこでアブラハムはエフロンの言葉にしたがい、エフロンがヘテの人々の聞いているところで言った銀、すなわち商人の通用銀四百シケルを量ってエフロンに与えた。 |
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一七 マムレの前なるマクペラに在るエフロンの野は野も其中の洞穴も野の中と其四周の堺にある樹も皆 |
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一七 こうしてマムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、畑も、その中のほら穴も、畑の中およびその周囲の境にあるすべての木も皆、 |
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一八 ヘテの子孫の前即ち凡て其邑に入る者の前にてアブラハムの所有と定りぬ |
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一八 ヘテの人々の前、すなわちその町の門にはいるすべての人々の前で、アブラハムの所有と決まった。 |
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一九 厥後アブラハム其妻サラをマムレの前なるマクペラの野の洞穴に葬れり是即ちカナンの地のヘブロンなり |
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一九 その後、アブラハムはその妻サラをカナンの地にあるマムレ、すなわちヘブロンの前のマクペラの畑のほら穴に葬った。 |
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二〇 斯く其野と其中の洞穴はヘテの子孫之をアブラハムの所有なる墓地と定めたり |
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二〇 このように畑とその中にあるほら穴とはヘテの人々によってアブラハムの所有の墓地と定められた。 |
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24章 |
一 アブラハム年邁て老たりヱホバ萬の事に於てアブラハムを祝みたまへり |
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一 アブラハムは年が進んで老人となった。主はすべての事にアブラハムを恵まれた。 |
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二 玆にアブラハム其凡の所有を宰る其家の年邁なる僕に言けるは請ふ爾の手を吾髀の下に置よ |
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二 さてアブラハムは所有のすべてを管理させていた家の年長のしもべに言った、「あなたの手をわたしのももの下に入れなさい。 |
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三 我爾をして天の~地の~ヱホバを指て誓はしめん即ち汝わが偕に居むカナン人の女の中より吾子に妻を娶るなかれ |
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三 わたしはあなたに天地の神、主をさして誓わせる。あなたはわたしが今一緒に住んでいるカナンびとのうちから、娘をわたしの子の妻にめとってはならない。 |
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四 汝わが故國に往き吾親族に到りて吾子イサクのために妻を娶れ |
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四 あなたはわたしの国へ行き、親族の所へ行って、わたしの子イサクのために妻をめとらなければならない」。 |
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五 僕彼に言けるは倘女我に從ひて此地に來ることを好まざる事あらん時は我爾の子を彼汝が出來りし地に導き歸るべきか |
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五 しもべは彼に言った、「もしその女がわたしについてこの地に来ることを好まない時は、わたしはあなたの子をあなたの出身地に連れ帰るべきでしょうか」。 |
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六 アブラハム彼に曰けるは汝愼みて吾子を彼處に携かへるなかれ |
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六 アブラハムは彼に言った、「わたしの子は決して向こうへ連れ帰ってはならない。 |
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七 天の~ヱホバ我を導きて吾父の家とわが親族の地を離れしめ我に語り我に誓ひて汝の子孫に此地を與へんと言たまひし者其使を遣して汝に先たしめたまはん汝彼處より我子に妻を娶るべし |
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七 天の神、主はわたしを父の家、親族の地から導き出してわたしに語り、わたしに誓って、おまえの子孫にこの地を与えると言われた。主は、み使をあなたの前につかわされるであろう。あなたはあそこからわたしの子に妻をめとらねばならない。 |
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八 若女汝に從ひ來る事を好ざる時は汝吾此誓を解るべし唯我子を彼處に携へかへるなかれ |
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八 けれどもその女があなたについて来ることを好まないなら、あなたはこの誓いを解かれる。ただわたしの子を向こうへ連れ帰ってはならない」。 |
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九 是に於て僕手を其主人アブラハムの髀の下に置て此事について彼に誓ヘり |
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九 そこでしもべは手を主人アブラハムのももの下に入れ、この事について彼に誓った。 |
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一〇 斯て僕其主人の駱駝の中より十頭の駱駝を取りて出たてり即ち其主人のゥの佳物を手にとりて起てメソポタミアに往きナホルの邑に至り |
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一〇 しもべは主人のらくだのうちから十頭のらくだを取って出かけた。すなわち主人のさまざまの良い物を携え、立ってアラム・ナハライムにむかい、ナホルの町へ行った。 |
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一一 其駱駝を邑の外にて井の傍に跪伏しめたり其時は黃昏にて婦女等の水汲にいづる時なりき |
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一一 彼はらくだを町の外の、水の井戸のそばに伏させた。時は夕暮で、女たちが水をくみに出る時刻であった。 |
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一二 斯して彼言けるは吾主人アブラハムの~ヱホバよ願くば今日我にその者を逢しめわが主人アブラハムに恩惠を施し給へ |
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一二 彼は言った、「主人アブラハムの神、主よ、どうか、きょう、わたしにしあわせを授け、主人アブラハムに恵みを施してください。 |
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一三 我この水井の傍に立ち邑の人の女等水を汲に出づ |
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一三 わたしは泉のそばに立っています。町の人々の娘たちが水をくみに出てきたとき、 |
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一四 我童女に向ひて請ふ汝の瓶をかたむけて我に飮しめよと言んに彼答へて飮め我また汝の駱駝にも飮しめんと言ば彼は汝が僕イサクの爲に定め給ひし者なるべし然れば我汝の吾主人に恩惠を施し給ふを知らん |
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一四 娘に向かって『お願いです、あなたの水がめを傾けてわたしに飲ませてください』と言い、娘が答えて、『お飲みください。あなたのらくだにも飲ませましょう』と言ったなら、その者こそ、あなたがしもべイサクのために定められた者ということにしてください。わたしはこれによって、あなたがわたしの主人に恵みを施されることを知りましょう」。 |
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一五 彼語ふことを終るまへに視よリベカ瓶を肩にのせて出きたる彼はアブラハムの兄弟ナホルの妻ミルカの子ベトエルに生れたる者なり |
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一五 彼がまだ言い終らないうちに、アブラハムの兄弟ナホルの妻ミルカの子ベトエルの娘リベカが、水がめを肩に載せて出てきた。 |
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一六 其童女は觀に甚だ美しく且處女にして未だ人に適しことあらず彼井に下り其瓶に水を盈て上りしかば |
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一六 その娘は非常に美しく、男を知らぬ処女であった。彼女が泉に降りて、水がめを満たし、上がってきた時、 |
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一七 僕はせゆきて之にあひ請ふ我をして汝の瓶より少許の水を飮しめよといひけるに |
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一七 しもべは走り寄って、彼女に会って言った、「お願いです。あなたの水がめの水を少し飲ませてください」。 |
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一八 彼主よ飮たまへといひて乃ち急ぎ其瓶を手におろして之にのましめたりしが |
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一八 すると彼女は「わが主よ、お飲みください」と言って、急いで水がめを自分の手に取りおろして彼に飲ませた。 |
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一九 飮せをはりて言ふ汝の駱駝のためにも其飮をはるまで水を汲て飽しめん |
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一九 飲ませ終って、彼女は言った、「あなたのらくだもみな飲み終るまで、わたしは水をくみましょう」。 |
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二〇 急ぎて其瓶を水鉢にあけ又汲んとて井にはせゆき其ゥの駱駝のために汲みたり |
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二〇 彼女は急いでかめの水を水ぶねにあけ、再び水をくみに井戸に走って行って、すべてのらくだのために水をくんだ。 |
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二一 其人之を見つめヱホバが其途に幸をくだしたまふや否をしらんとして默し居たり |
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二一 その間その人は主が彼の旅を祝福されるか、どうかを知ろうと、黙って彼女を見つめていた。 |
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二二 玆に駱駝飮をはりしかば其人重半シケルの金の鼻環一箇と重十シケルの金の手釧二箇をとりて |
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二二 らくだが飲み終ったとき、その人は重さ半シケルの金の鼻輪一つと、重さ十シケルの金の腕輪二つを取って、 |
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二三 言けるは汝は誰の女なるや請ふ我に吿よ汝の父の家に我等が宿る隙地ありや |
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二三 言った、「あなたはだれの娘か、わたしに話してください。あなたの父の家にわたしどもの泊まる場所がありましょうか」。 |
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二四 女彼に曰けるは我はミルカがナホルに生みたる子ベトエルの女なり |
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二四 彼女は彼に言った、「わたしはナホルの妻ミルカの子ベトエルの娘です」。 |
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二五 又彼にいひけるは家には藁も飼草も多くあり且宿る隙地もあり |
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二五 また彼に言った、「わたしどもには、わらも、飼葉もたくさんあります。また泊まる場所もあります」。 |
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二六 是に於て其人伏てヱホバを拜み |
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二六 その人は頭を下げ、主を拝して、 |
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二七 言けるは吾主人アブラハムの~ヱホバは讃美べきかなわが主人に慈惠と眞實とを缺きたまはず我途にありしにヱホバ我を吾主人の兄弟の家にみちびきたまへり |
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二七 言った、「主人アブラハムの神、主はほむべきかな。主はわたしの主人にいつくしみと、まこととを惜しまれなかった。そして主は旅にあるわたしを主人の兄弟の家に導かれた」。 |
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二八 玆に童女走行て其母の家に此等の事を吿たり |
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二八 娘は走って行って、母の家のものにこれらの事を告げた。 |
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二九 リベカに一人の兄あり其名をラバンといふラバンはせいで井にゆきて其人の許につく |
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二九 リベカにひとりの兄があって、名をラバンといった。ラバンは泉のそばにいるその人の所へ走って行った。 |
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三〇 すなはち彼鼻環および其妹の手の手釧を見又其妹リベカが共人斯我に語りといふを聞て異人の所に到り見るに井の側らにて駱駝の傍にたちゐたれば |
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三〇 彼は鼻輪と妹の手にある腕輪とを見、また妹リベカが「その人はわたしにこう言った」というのを聞いて、その人の所へ行ってみると、その人は泉のほとりで、らくだのそばに立っていた。 |
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三一 之に言けるは汝ヱホバに祝るゝ者よ請ふ入れ奚ぞ外にたつや我家を備へ且駱駝のために所をそなへたり |
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三一 そこでその人に言った、「主に祝福された人よ、おはいりください。なぜ外に立っておられますか。わたしは家を準備し、らくだのためにも場所を準備しておきました」。 |
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三二 是に於て其人家にいりぬラバン乃ち其駱駝の負を釋き藁と飼草を駱駝にあたへ又水をあたへて其人の足と其從者の足をあらはしめ |
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三二 その人は家にはいった。ラバンはらくだの荷を解いて、わらと飼葉をらくだに与え、また水を与えてその人の足と、その従者たちの足を洗わせた。 |
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三三 斯して彼の前に食をそなヘたるに彼言ふ我はわが事をのぶるまでは食はじとラバン語れといひければ |
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三三 そして彼の前に食物を供えたが、彼は言った、「わたしは用向きを話すまでは食べません」。ラバンは言った、「お話しください」。 |
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三四 彼言ふわれはアブラハムの僕なり |
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三四 そこで彼は言った、「わたしはアブラハムのしもべです。 |
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三五 ヱホバ大にわが主人をめぐみたまひて大なる者とならしめ又羊牛金銀僕婢駱駝驢馬をこれにたまへり |
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三五 主はわたしの主人を大いに祝福して、大いなる者とされました。主はまた彼に羊、牛、銀、金、男女の奴隷、らくだ、ろばを与えられました。 |
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三六 わが主人の妻サラ年老てのちわが主人に男子をうみければ主人其所有を悉く之に與ふ |
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三六 主人の妻サラは年老いてから、主人に男の子を産みました。主人はその所有を皆これに与えました。 |
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三七 わが主人我を誓せて言ふ吾すめるカナンの地の人の女子の中よりわが子に妻を娶るなかれ |
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三七 ところで主人はわたしに誓わせて言いました、『わたしの住んでいる地のカナンびとの娘を、わたしの子の妻にめとってはならない。 |
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三八 汝わが父の家にゆきわが親族にいたりわが子のために妻をめとれと |
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三八 おまえはわたしの父の家、親族の所へ行って、わたしの子に妻をめとらなければならない』。 |
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三九 我わが主人にいひけるは倘女我にしたがひて來ずば如何 |
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三九 わたしは主人に言いました、『もしその女がわたしについてこない時はどういたしましょうか』。 |
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四〇 彼我にいひけるは吾事ふるところのヱホバ其使者を汝とともに遣はして汝の途に幸を降したまはん爾わが親族わが父の家より吾子に妻をめとるべし |
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四〇 主人はわたしに言いました、『わたしの仕えている主は、み使をおまえと一緒につかわして、おまえの旅にさいわいを与えられるであろう。おまえはわたしの親族、わたしの父の家からわたしの子に妻をめとらなければならない。 |
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四一 汝わが親族に到れる時はわが誓を解さるべし若彼等汝にあたへずば汝はわが誓をゆるさるべしと |
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四一 そのとき、おまえはわたしにした誓いから解かれるであろう。またおまえがわたしの親族に行く時、彼らがおまえにその娘を与えないなら、おまえはわたしにした誓いから解かれるであろう』。 |
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四二 我今日井に至りて謂けらくわが主人アブラハムの~ヱホバねがはくはわがゆく途に幸を降したまへ |
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四二 わたしはきょう、泉のところにきて言いました、『主人アブラハムの神、主よ、どうか今わたしのゆく道にさいわいを与えてください。 |
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四三 我はこの井水の傍に立つ水を汲にいづる處女あらん時我彼にむかひて請ふ汝の瓶より少許の水を我にのましめよと言んに |
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四三 わたしはこの泉のそばに立っていますが、水をくみに出てくる娘に向かって、「お願いです。あなたの水がめの水を少し飲ませてください」と言い、 |
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四四 若我に答へて汝飮め我亦汝の駱駝のためにも汲んと言ば是ヱホバがわが主人の子のために定たまひし女なるべし |
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四四 「お飲みください。あなたのらくだのためにも、くみましょう」とわたしに言うなら、その娘こそ、主がわたしの主人の子のために定められた女ということにしてください』。 |
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四五 我心の中に語ふことを終るまへにリベカ其瓶を肩にのせて出來り井にくだりて水を汲みたるにより我彼に請ふ我にのましめよと言ければ |
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四五 わたしが心のうちでそう言い終らないうちに、リベカが水がめを肩に載せて出てきて、水をくみに泉に降りたので、わたしは『お願いです、飲ませてください』と言いますと、 |
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四六 彼急ぎ其瓶を肩よりおろしていひけるは飮めまた汝の駱駝にものましめんと是に於て我飮しが彼また駱駝にものましめたり |
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四六 彼女は急いで水がめを肩からおろし、『お飲みください。わたしはあなたのらくだにも飲ませましょう』と言いました。それでわたしは飲みましたが、彼女はらくだにも飲ませました。 |
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四七 我彼に問て汝は誰の女なるやといひければミルカがナホルに生たる子ベトエルの女なりといふ是に於て我其鼻に環をつけ其手に手釧をつけたり |
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四七 わたしは彼女に尋ねて、『あなたはだれの娘ですか』と言いますと、『ナホルとその妻ミルカの子ベトエルの娘です』と答えました。そこでわたしは彼女の鼻に鼻輪をつけ、手に腕輪をつけました。 |
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四八 而して我伏てヱホバを拜み吾主人アブラハムの~ヱホバを頌美たりヱホバ我を正き途に導きてわが主人の兄弟の女を其子のために娶しめんとしたまへばなり |
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四八 そしてわたしは頭をさげて主を拝し、主人アブラハムの神、主をほめたたえました。主は主人の兄弟の娘を子にめとらせようと、わたしを正しい道に導かれたからです。 |
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四九 されば汝等若わが主人にむかひて慈惠と眞誠をもて事をなさんと思はば我に吿よ然ざるも亦我に吿よ然ば我右か左におもむくをえん |
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四九 あなたがたが、もしわたしの主人にいつくしみと、まことを尽そうと思われるなら、そうとわたしにお話しください。そうでなければ、そうでないとお話しください。それによってわたしは右か左に決めましょう」。 |
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五〇 ラバンとベトエル答て言けるは此事はヱホバより出づ我等汝に善惡を言ふあたはず |
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五〇 ラバンとベトエルは答えて言った、「この事は主から出たことですから、わたしどもはあなたによしあしを言うことができません。 |
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五一 視よリベカ汝の前にをる携へてゆき彼をしてヱホバの言たまひし如く汝の主人の子の妻とならしめよ |
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五一 リベカがここにおりますから連れて行って、主が言われたように、あなたの主人の子の妻にしてください」。 |
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五二 アブラハムの僕彼等の言を聞て地に伏てヱホバを拜めり |
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五二 アブラハムのしもべは彼らの言葉を聞いて、地に伏し、主を拝した。 |
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五三 是に於て僕銀の飾品金の飾品および衣服をとりいだしてリベカに與へ亦其兄と母に寳物をあたへたり |
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五三 そしてしもべは銀の飾りと、金の飾り、および衣服を取り出してリベカに与え、その兄と母とにも価の高い品々を与えた。 |
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五四 是に於て彼および其從者等食飮して宿りしが朝起たる時彼言我をして吾主人に還らしめよ |
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五四 彼と従者たちは飲み食いして宿ったが、あくる朝彼らが起きた時、しもべは言った、「わたしを主人のもとに帰らせてください」。 |
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五五 リベカの兄と母言けるは童女を數日の間少くも十日我等と偕にをらしめよしかるのち彼ゆくべし |
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五五 リベカの兄と母とは言った、「娘は数日、少なくとも十日、わたしどもと共にいて、それから行かせましょう」。 |
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五六 彼人之に言ヱホバ吾途に祉をくだしたまひたるなれば我を阻むるなかれ我を歸してわが主人に往しめよ |
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五六 しもべは彼らに言った、「主はわたしの道にさいわいを与えられましたから、わたしを引きとめずに、主人のもとに帰らせてください」。 |
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五七 彼等いひけるは童女をよびて其言を問んと |
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五七 彼らは言った、「娘を呼んで聞いてみましょう」。 |
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五八 即ちリベカを呼て之に言けるは汝此人と共に往や彼言ふ往ん |
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五八 彼らはリベカを呼んで言った、「あなたはこの人と一緒に行きますか」。彼女は言った、「行きます」。 |
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五九 是に於て彼等妹リベカと其乳媼およびアブラハムの僕と其從者を遣り去しめたり |
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五九 そこで彼らは妹リベカと、そのうばと、アブラハムのしもべと、その従者とを送り去らせた。 |
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六〇 即ち彼等リベカを祝して之にいひけるはわれらの妹よ汝千萬の人の母となれ汝の子孫をして其仇の門を獲しめよ |
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六〇 彼らはリベカを祝福して彼女に言った、/「妹よ、あなたは、ちよろずの人の母となれ。あなたの子孫はその敵の門を打ち取れ」。 |
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六一 是に於てリベカ起て其童女等とともに駱駝にのりて其人にしたがひ往く僕乃ちリベカを導きてさりぬ |
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六一 リベカは立って侍女たちと共にらくだに乗り、その人に従って行った。しもべはリベカを連れて立ち去った。 |
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六二 玆にイサク、ラハイロイの井の路より來れり南の國に住居たればなり |
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六二 さてイサクはベエル・ラハイ・ロイからきて、ネゲブの地に住んでいた。 |
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六三 しかしてイサク黃昏に野に出て默想をなしたりしが目を擧て見しに駱駝の來るあり |
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六三 イサクは夕暮、野に出て歩いていたが、目をあげて、らくだの来るのを見た。 |
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六四 リベカ目をあげてイサクを見駱駝をおりて |
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六四 リベカは目をあげてイサクを見、らくだからおりて、 |
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六五 僕にいひけるは野をあゆみて我等にむかひ來る者は何人なるぞ僕わが主人なりといひければリベカ覆衣をとりて身をおほへり |
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六五 しもべに言った、「わたしたちに向かって、野を歩いて来るあの人はだれでしょう」。しもべは言った、「あれはわたしの主人です」。するとリベカは、被衣で身をおおった。 |
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六六 玆に僕其凡てなしたる事をイサクに吿ぐ |
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六六 しもべは自分がしたことのすべてをイサクに話した。 |
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六七 イサク、リベカを其母サラの天幕に携至りリベカを娶りて其妻となして之を愛したりイサクは母にわかれて後玆に慰藉を得たり |
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六七 イサクはリベカを天幕に連れて行き、リベカをめとって妻とし、彼女を愛した。こうしてイサクは母の死後、慰めを得た。 |
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25章 |
一 アブラハム再妻を娶る其名をケトラといふ |
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一 アブラハムは再び妻をめとった。名をケトラという。 |
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二 彼ジムラン、ヨクシヤン、メダン、ミデアン、イシバク、シユアを生り |
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二 彼女はジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデアン、イシバクおよびシュワを産んだ。 |
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三 ヨクシヤン、シバとデダンを生むデダンの子はアツシユリ族レトシ族リウミ族なり |
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三 ヨクシャンの子はシバとデダン。デダンの子孫はアシュリびと、レトシびと、レウミびとである。 |
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四 ミデアンの子はエパ、エベル、ヘノク、アビダ、エルダアなり是等ば皆ケトラの子孫なり |
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四 ミデアンの子孫はエパ、エペル、ヘノク、アビダ、エルダアであって、これらは皆ケトラの子孫であった。 |
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五 アブラハム其所有を盡くイサクに與へたり |
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五 アブラハムはその所有をことごとくイサクに与えた。 |
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六 アブラハムの妾等の子にはアブラハム其生る間に物をあたへて之をして其子イサクを離れて東にさりて東の國に至らしむ |
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六 またそのそばめたちの子らにもアブラハムは物を与え、なお生きている間に彼らをその子イサクから離して、東の方、東の国に移らせた。 |
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七 アブラハムの生存へたる齡の日は即ち百七十五年なりき |
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七 アブラハムの生きながらえた年は百七十五年である。 |
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八 アブラハム遐齡に及び老人となり年滿て氣たえ死て其民に加る |
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八 アブラハムは高齢に達し、老人となり、年が満ちて息絶え、死んでその民に加えられた。 |
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九 其子イサクとイシマエル之をへテ人ゾハルの子エフロンの野なるマクペラの洞穴に葬れり是はマムレの前にあり |
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九 その子イサクとイシマエルは彼をヘテびとゾハルの子エフロンの畑にあるマクペラのほら穴に葬った。これはマムレの向かいにあり、 |
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一〇 即ちアブラハムがヘテの子孫より買たる野なり彼處にアブラハムと其妻サラ葬らる |
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一〇 アブラハムがヘテの人々から、買い取った畑であって、そこにアブラハムとその妻サラが葬られた。 |
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一一 アブラハムの死たる後~其子イサクを祝みたまふイサクはベエルラハイロイの邊に住り |
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一一 アブラハムが死んだ後、神はその子イサクを祝福された。イサクはベエル・ラハイ・ロイのほとりに住んだ。 |
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一二 サラの侍婢なるエジプト人ハガルがアブラハムに生たる子イシマエルの傳は左のごとし |
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一二 サラのつかえめエジプトびとハガルがアブラハムに産んだアブラハムの子イシマエルの系図は次のとおりである。 |
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一三 イシマエルの子の名は其名氏と其世代に循ひて言ば是のごとしイシマエルの長子はネバヨテなり其次はケダル、アデビエル、ミブサム |
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一三 イシマエルの子らの名を世代にしたがって、その名をいえば次のとおりである。すなわちイシマエルの長子はネバヨテ、次はケダル、アデビエル、ミブサム、 |
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一四 ミシマ、ドマ、マツサ |
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一四 ミシマ、ドマ、マッサ、 |
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一五 ハダデ、テマ、ヱトル、ネフシ、ケデマ |
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一五 ハダデ、テマ、エトル、ネフシ、ケデマ。 |
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一六 是等はイシマエルの子なり是等は其ク黨と其營にしたがひて言る者にして其國に循ひていへば十二の牧伯なり |
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一六 これはイシマエルの子らであり、村と宿営とによる名であって、その氏族による十二人の君たちである。 |
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一七 イシマエルの齡は百三十七歲なりき彼いきたえ死て其民にくははる |
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一七 イシマエルのよわいは百三十七年である。彼は息絶えて死に、その民に加えられた。 |
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一八 イシマエルの子等はハビラよりエジプトの前なるシユルまでの間に居住てアツスリヤまでにおよべりイシマエルは其すべての兄弟等のまヘにすめり |
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一八 イシマエルの子らはハビラからエジプトの東、シュルまでの間に住んで、アシュルに及んだ。イシマエルはすべての兄弟の東に住んだ。 |
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一九 アブラハムの子イサクの傳は左のごとしアブラハム、イサクを生り |
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一九 アブラハムの子イサクの系図は次のとおりである。アブラハムの子はイサクであって、 |
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二〇 イサク四十歲にしてリベカを妻に娶れりリベカはパダンアラムのスリア人ベトエルの女にしてスリア人ラバンの妹なり |
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二〇 イサクは四十歳の時、パダンアラムのアラムびとベトエルの娘で、アラムびとラバンの妹リベカを妻にめとった。 |
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二一 イサク其妻の子なきに因て之がためにヱホバに祈願をたてければヱホバ其ねがひを聽たまへり遂に其妻リベカ孕みしが |
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二一 イサクは妻が子を産まなかったので、妻のために主に祈り願った。主はその願いを聞かれ、妻リベカはみごもった。 |
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二二 其子胎の內に爭そひければ然らば我いかで斯てあるべきと言て往てヱホバに問に |
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二二 ところがその子らが胎内で押し合ったので、リベカは言った、「こんなことでは、わたしはどうなるでしょう」。彼女は行って主に尋ねた。 |
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二三 ヱホバ彼に言たまひけるは二の國民汝の胎にあり二の民汝の腹より出て別れん一の民は一の民よりも强かるべし大は小に事へんと |
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二三 主は彼女に言われた、/「二つの国民があなたの胎内にあり、/二つの民があなたの腹から別れて出る。一つの民は他の民よりも強く、/兄は弟に仕えるであろう」。 |
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二四 かくて臨月みちて見しに胎には孿ありき |
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二四 彼女の出産の日がきたとき、胎内にはふたごがあった。 |
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二五 先に出たる者は赤くして躰中裘の如し其名をエサウと名けたり |
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二五 さきに出たのは赤くて全身毛ごろものようであった。それで名をエサウと名づけた。 |
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二六 其後に弟出たるが其手にエサウの踵を持り其名をヤコブとなづけたりリベカが彼等を生し時イサクは六十歲なりき |
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二六 その後に弟が出た。その手はエサウのかかとをつかんでいた。それで名をヤコブと名づけた。リベカが彼らを産んだ時、イサクは六十歳であった。 |
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二七 玆に童子人となりしがエサウは巧なる獵人にして野の人となりヤコブは質樸なる人にして天幕に居ものとなれり |
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二七 さてその子らは成長し、エサウは巧みな狩猟者となり、野の人となったが、ヤコブは穏やかな人で、天幕に住んでいた。 |
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二八 イサクは麆を嗜によりてエサウを愛したりしがリベカはヤコブを愛したり |
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二八 イサクは、しかの肉が好きだったので、エサウを愛したが、リベカはヤコブを愛した。 |
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二九 玆にヤコブ羮を煑たり時にエサウ野より來りて憊れ居り |
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二九 ある日ヤコブが、あつものを煮ていた時、エサウは飢え疲れて野から帰ってきた。 |
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三〇 エサウ、ヤコブにむかひ我憊れたれば請ふ其紅羮其處にある紅羮を我にのませよといふ是をもて彼の名はエドム(紅)と稱らる |
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三〇 エサウはヤコブに言った、「わたしは飢え疲れた。お願いだ。赤いもの、その赤いものをわたしに食べさせてくれ」。彼が名をエドムと呼ばれたのはこのためである。 |
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三一 ヤコブ言けるは今日汝の家督の權を我に鬻れ |
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三一 ヤコブは言った、「まずあなたの長子の特権をわたしに売りなさい」。 |
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三二 エサウいふ我は死んとして居る此家督の權我に何のuをなさんや |
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三二 エサウは言った、「わたしは死にそうだ。長子の特権などわたしに何になろう」。 |
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三三 ヤコブまた言けるは今日我に誓へと彼すなはち誓て其家督の權をヤコブに鬻ぬ |
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三三 ヤコブはまた言った、「まずわたしに誓いなさい」。彼は誓って長子の特権をヤコブに売った。 |
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三四 是に於てヤコブ、パンと扁豆の羮とをエサウに與へければ食且飮て起て去り斯エサウ家督の權を藐視じたり |
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三四 そこでヤコブはパンとレンズ豆のあつものとをエサウに与えたので、彼は飲み食いして、立ち去った。このようにしてエサウは長子の特権を軽んじた。 |
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26章 |
一 アブラハムの時にありし最初の饑饉の外に又其國に饑饉ありければイサク、ゲラルに往てペリシテ人の王アビメレクの許にいたれり |
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一 アブラハムの時にあった初めのききんのほか、またききんがその国にあったので、イサクはゲラルにいるペリシテびとの王アビメレクの所へ行った。 |
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二 時にヱホバ彼にあらはれて言たまひけるはエジプトに下るなかれ吾汝に示すところの地にをれ |
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二 その時、主は彼に現れて言われた、「エジプトへ下ってはならない。わたしがあなたに示す地にとどまりなさい。 |
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三 汝此地にとどまれ我汝と共にありて汝を祝まん我是等の國を盡く汝および汝の子孫に與へ汝の父アブラハムに誓ひたる誓言を行ふべし |
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三 あなたがこの地にとどまるなら、わたしはあなたと共にいて、あなたを祝福し、これらの国をことごとくあなたと、あなたの子孫とに与え、わたしがあなたの父アブラハムに誓った誓いを果そう。 |
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四 我汝の子孫を揩ト天の星のごとくなし汝の子孫に凡て是等の國を與へん汝の子孫によりて天下の國民皆祉を獲べし |
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四 またわたしはあなたの子孫を増して天の星のようにし、あなたの子孫にこれらの地をみな与えよう。そして地のすべての国民はあなたの子孫によって祝福をえるであろう。 |
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五 是はアブラハムわが言に順ひわが職守とわが誡命とわが憲法とわが律法を守りしに因てなり |
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五 アブラハムがわたしの言葉にしたがってわたしのさとしと、いましめと、さだめと、おきてとを守ったからである」。 |
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六 イサク乃ちゲラルに居しが |
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六 こうしてイサクはゲラルに住んだ。 |
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七 處の人其妻の事をとヘば我妹なりと言ふリベカは觀に美麗かりければ其處の人リベカの故をもて我を殺さんと謂て彼をわが妻と言をおそれたるなり |
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七 その所の人々が彼の妻のことを尋ねたとき、「彼女はわたしの妹です」と彼は言った。リベカは美しかったので、その所の人々がリベカのゆえに自分を殺すかもしれないと思って、「わたしの妻です」と言うのを恐れたからである。 |
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八 イサク久く彼處にをりし後一日ペリシテ人の王アビメレク牖より望みてイサクが其妻リベカと嬉戱るを見たり |
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八 イサクは長らくそこにいたが、ある日ペリシテびとの王アビメレクは窓から外をながめていて、イサクがその妻リベカと戯れているのを見た。 |
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九 是に於てアビメレク、イサクを召て言けるは彼は必ず汝の妻なり汝なんぞ吾妹といひしやイサク彼に言けるは恐くは我彼のために死るならんと思たればなり |
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九 そこでアビメレクはイサクを召して言った、「彼女は確かにあなたの妻です。あなたはどうして『彼女はわたしの妹です』と言われたのですか」。イサクは彼に言った、「わたしは彼女のゆえに殺されるかもしれないと思ったからです」。 |
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一〇 アビメレクいひけるは汝なんぞ此事を我等になすや民の一人もし輕々しく汝の妻と寢ることあらんその時は汝罪を我等に蒙らしめんと |
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一〇 アビメレクは言った、「あなたはどうしてこんな事をわれわれにされたのですか。民のひとりが軽々しくあなたの妻と寝るような事があれば、その時あなたはわれわれに罪を負わせるでしょう」。 |
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一一 アビメレク乃ちすべて民に皆命じて此人と其妻にさはるものは必ず死すべしと言り |
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一一 それでアビメレクはすべての民に命じて言った、「この人、またはその妻にさわる者は必ず死ななければならない」。 |
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一二 イサク彼地に種播て其年に百倍を獲たりヱホバ彼を祝みたまふ |
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一二 イサクはその地に種をまいて、その年に百倍の収穫を得た。このように主が彼を祝福されたので、 |
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一三 其人大になりゆきて進て盛になり遂に甚だ大なる者となれり |
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一三 彼は富み、またますます栄えて非常に裕福になり、 |
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一四 即ち羊と牛と僕從を多く有しかばペリシテ人彼を嫉みたり |
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一四 羊の群れ、牛の群れ及び多くのしもべを持つようになったので、ペリシテびとは彼をねたんだ。 |
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一五 其父アブラハムの世に其父の僕從が掘たるゥの井はペリシテ人之をふさぎて土を之にみてたり |
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一五 またペリシテびとは彼の父アブラハムの時に、父のしもべたちが掘ったすべての井戸をふさぎ、土で埋めた。 |
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一六 玆にアビメレク、イサクに言けるは汝は大に我等よりも强大ければ我等をはなれて去れと |
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一六 アビメレクはイサクに言った、「あなたはわれわれよりも、はるかに強くなられたから、われわれの所を去ってください」。 |
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一七 イサク乃ち彼處をさりてゲラルの谷に天幕を張て其處に住り |
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一七 イサクはそこを去り、ゲラルの谷に天幕を張ってその所に住んだ。 |
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一八 其父アブラハムの世に掘たる水井をイサク玆に復び鑿り其はアブラハムの死たる後ペリシテ人之を塞ぎたればなり斯してイサク其父が之に名けたる名をもて其名となせり |
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一八 そしてイサクは父アブラハムの時に人々の掘った水の井戸を再び掘った。アブラハムの死後、ペリシテびとがふさいだからである。イサクは父がつけた名にしたがってそれらに名をつけた。 |
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一九 イサクの僕谷に掘て其處に泉の湧出る井を得たり |
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一九 しかしイサクのしもべたちが谷の中を掘って、そこにわき出る水の井戸を見つけたとき、 |
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二〇 ゲラルの牧者此水は我儕の所屬なりといひてイサクの僕と爭ひければイサク其井の名をエセク(競爭)と名けたり彼等が己と之を競爭たるによりてなり |
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二〇 ゲラルの羊飼たちは、「この水はわれわれのものだ」と言って、イサクの羊飼たちと争ったので、イサクはその井戸の名をエセクと名づけた。彼らが彼と争ったからである。 |
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二一 是に於て又他の井を鑿しが彼等是をも爭ひければ其名をシテナ(敵)となづけたり |
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二一 彼らはまた一つの井戸を掘ったが、これをも争ったので、名をシテナと名づけた。 |
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二二 イサク乃ち其處より遷りて他の井を鑿けるが彼等之をあらそばざりければ其名をレホボテ(廣場)と名けて言けるは今ヱホバ我等の處所を廣くしたまへり我等斯地に繁衍ん |
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二二 イサクはそこから移ってまた一つの井戸を掘ったが、彼らはこれを争わなかったので、その名をレホボテと名づけて言った、「いま主がわれわれの場所を広げられたから、われわれはこの地にふえるであろう」。 |
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二三 斯て彼其處よりベエルシバにのぼりしが |
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二三 彼はそこからベエルシバに上った。 |
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二四 其夜ヱホバ彼にあらはれて言たまひけるは我は汝の父アブラハムの~なり懼るるなかれ我汝と偕にありて汝を祝み我僕アブラハムのために汝の子孫を揩と |
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二四 その夜、主は彼に現れて言われた、「わたしはあなたの父アブラハムの神である。あなたは恐れてはならない。わたしはあなたと共におって、あなたを祝福し、わたしのしもべアブラハムのゆえにあなたの子孫を増すであろう」。 |
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二五 是に於て彼處に壇を築きてヱホバの名を龥び天幕を彼處に張り彼處にてイサクの僕井を鑿り |
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二五 それで彼はその所に祭壇を築いて、主の名を呼び、そこに天幕を張った。またイサクのしもべたちはそこに一つの井戸を掘った。 |
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二六 玆にアビメレク其友アホザテ及び其軍勢の長ピコルと共にゲラルよりイサクの許に來りければ |
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二六 時にアビメレクがその友アホザテと、軍勢の長ピコルと共にゲラルからイサクのもとにきたので、 |
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二七 イサク彼等に言ふ汝等は我を惡み我をして汝等をはなれて去らしめたるなるに何ぞ我許に來るや |
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二七 イサクは彼らに言った、「あなたがたはわたしを憎んで、あなたがたの中からわたしを追い出されたのに、どうしてわたしの所にこられたのですか」。 |
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二八 彼等いひけるは我等確然にヱホバが汝と偕にあるを見たれば我等の間即ち我等と汝の間に誓詞を立て汝と契約を結ばんと謂へり |
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二八 彼らは言った、「われわれは主があなたと共におられるのを、はっきり見ましたので、いまわれわれの間、すなわちわれわれとあなたとの間に一つの誓いを立てて、あなたと契約を結ぼうと思います。 |
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二九 汝我等に惡事をなすなかれ其は我等は汝を害せず只善事のみを汝になし且汝を安然に去しめたればなり汝はヱホバの祝みたまふ者なり |
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二九 われわれはあなたに害を加えたことはなく、ただ良い事だけをして、安らかに去らせたのですから、あなたはわれわれに悪い事をしてはなりません。まことにあなたは主に祝福されたかたです」。 |
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三〇 イサク乃ち彼等のために酒宴を設けたれば彼等食ひ且飮り |
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三〇 そこでイサクは彼らのためにふるまいを設けた。彼らは飲み食いし、 |
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三一 斯て朝夙に起て互に相誓へり而してイサク彼等を去しめたれば彼等イサクをはなれて安然にかへりぬ |
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三一 あくる朝、はやく起きて互に誓った。こうしてイサクは彼らを去らせたので、彼らはイサクのもとから穏やかに去った。 |
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三二 其日イサクの僕來りて其ほりたる井につきて之に吿て我等水を得たりといヘり |
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三二 その日、イサクのしもべたちがきて、自分たちが掘った井戸について彼に告げて言った、「わたしたちは水を見つけました」。 |
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三三 即ち之をシバとなづく此故に其邑の名は今日までベエルシバ(誓詞の井)といふ |
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三三 イサクはそれをシバと名づけた。これによってその町の名は今日にいたるまでベエルシバといわれている。 |
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三四 エサウ四十歲の時ヘテ人ベエリの女ユデテとヘテ人エロンの女バスマテを妻に娶り |
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三四 エサウは四十歳の時、ヘテびとベエリの娘ユデテとヘテびとエロンの娘バスマテとを妻にめとった。 |
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三五 彼等はイサクとリベカの心の愁煩となれり |
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三五 彼女たちはイサクとリベカにとって心の痛みとなった。 |
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27章 |
一 イサク老て目くもりて見るあたはざるに及びて其長子エサウを召て之に吾子よといひければ答へて我此にありといふ |
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一 イサクは年老い、目がかすんで見えなくなった時、長子エサウを呼んで言った、「子よ」。彼は答えて言った、「ここにおります」。 |
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二 イサクいひけるは視よ我は今老て何時死るやを知ず |
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二 イサクは言った。「わたしは年老いて、いつ死ぬかも知れない。 |
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三 然ば請ふ汝の器汝の弓矢を執て野に出でわがために麆を獵て |
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三 それであなたの武器、弓矢をもって野に出かけ、わたしのために、しかの肉をとってきて、 |
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四 わが好む美味を作り我にもちきたりて食はしめよ我死るまへに心に汝を祝せん |
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四 わたしの好きなおいしい食べ物を作り、持ってきて食べさせよ。わたしは死ぬ前にあなたを祝福しよう」。 |
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五 イサクが其子エサウに語る時にリベカ聞ゐたりエサウは麆を獵て携きたらんとて野に往り |
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五 イサクがその子エサウに語るのをリベカは聞いていた。やがてエサウが、しかの肉を獲ようと野に出かけたとき、 |
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六 是に於てリベカ其子ヤコブに語りていひけるは我聞ゐたるに汝の父汝の兄エサウに語りて言けらく |
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六 リベカはその子ヤコブに言った、「わたしは聞いていましたが、父は兄エサウに、 |
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七 吾ために麆をとりきたり美味を製りて我にくはせよ死るまへに我ヱホバの前にて汝を祝せんと |
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七 『わたしのために、しかの肉をとってきて、おいしい食べ物を作り、わたしに食べさせよ。わたしは死ぬ前に、主の前であなたを祝福しよう』と言いました。 |
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八 然ば吾子よ吾言にしたがひわが汝に命ずるごとくせよ |
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八 それで、子よ、わたしの言葉にしたがい、わたしの言うとおりにしなさい。 |
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九 汝群畜の所にゆきて彼處より山羊の二箇の善き羔を我にとりきたれ我之をもて汝の父のために其好む美味を製らん |
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九 群れの所へ行って、そこからやぎの子の良いのを二頭わたしの所に取ってきなさい。わたしはそれで父のために、父の好きなおいしい食べ物を作りましょう。 |
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一〇 汝之を父にもちゆきて食しめ其死る前に汝を祝せしめよ |
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一〇 あなたはそれを持って行って父に食べさせなさい。父は死ぬ前にあなたを祝福するでしょう」。 |
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一一 ヤコブ其母リベカに言けるは兄エサウは毛深き人にして我は滑澤なる人なり |
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一一 ヤコブは母リベカに言った、「兄エサウは毛深い人ですが、わたしはなめらかです。 |
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一二 恐くは父我に捫ることあらん然らば我は欺く者と父に見えんされば祝をえずして反て呪詛をまねかん |
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一二 おそらく父はわたしにさわってみるでしょう。そうすればわたしは父を欺く者と思われ、祝福を受けず、かえってのろいを受けるでしょう」。 |
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一三 其母彼にいひけるは我子よ汝の詛はるゝ所は我に歸せん只わが言にしたがひ往て取來れと |
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一三 母は彼に言った、「子よ、あなたがうけるのろいはわたしが受けます。ただ、わたしの言葉に従い、行って取ってきなさい」。 |
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一四 是において彼往て取り母の所にもちきたりければ母すなはち父の好むところの美味を製れり |
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一四 そこで彼は行ってやぎの子を取り、母の所に持ってきたので、母は父の好きなおいしい食べ物を作った。 |
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一五 而してリベカ家の中に己の所にある長子エサウの美服をとりて之を季子ヤコブに衣せ |
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一五 リベカは家にあった長子エサウの晴着を取って、弟ヤコブに着せ、 |
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一六 又山羊の羔の皮をもて其手と其頸の滑澤なる處とを掩ひ |
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一六 また子やぎの皮を手と首のなめらかな所とにつけさせ、 |
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一七 其製りたる美味とパンを子ヤコブの手にわたせり |
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一七 彼女が作ったおいしい食べ物とパンとをその子ヤコブの手にわたした。 |
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一八 彼乃ち父の許にいたりて我父よといひければ我此にありわが子よ汝は誰なると曰ふ |
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一八 そこでヤコブは父の所へ行って言った、「父よ」。すると父は言った、「わたしはここにいる。子よ、あなたはだれか」。 |
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一九 ヤコブ父にいひけるは我は汝の長子エサウなり我汝が我に命じたるごとくなせり請ふ起て坐しわが麆の肉をくらひて汝の心に我を祝せよ |
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一九 ヤコブは父に言った、「長子エサウです。あなたがわたしに言われたとおりにいたしました。どうぞ起きて、すわってわたしのしかの肉を食べ、あなたみずからわたしを祝福してください」。 |
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二〇 イサク其子に言けるは吾子よ汝いかにして斯速に獲たるや彼言ふ汝の~ヱホバ之を我にあはせたまひしが故なり |
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二〇 イサクはその子に言った、「子よ、どうしてあなたはこんなに早く手に入れたのか」。彼は言った、「あなたの神、主がわたしにしあわせを授けられたからです」。 |
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二一 イサク、ヤコブにいひけるはわが子よ請ふ近くよれ我汝に捫て汝がまことに吾子エサウなるや否やをしらん |
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二一 イサクはヤコブに言った、「子よ、近寄りなさい。わたしは、さわってみて、あなたが確かにわが子エサウであるかどうかをみよう」。 |
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二二 ヤコブ父イサクに近よりければイサク之にさはりていひけるは聲はヤコブの聲なれども手はエサウの手なりと |
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二二 ヤコブが、父イサクに近寄ったので、イサクは彼にさわってみて言った、「声はヤコブの声だが、手はエサウの手だ」。 |
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二三 彼の手其兄エサウの手のごとく毛深かりしに因て之を辨別へずして遂に之を祝したり |
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二三 ヤコブの手が兄エサウの手のように毛深かったため、イサクはヤコブを見わけることができなかったので、彼を祝福した。 |
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二四 即ちイサクいひけるは汝はまことに吾子エサウなるや彼然りといひければ |
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二四 イサクは言った、「あなたは確かにわが子エサウですか」。彼は言った、「そうです」。 |
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二五 イサクいひけるは我に持きたれ吾子の麆を食ひてわが心に汝を祝せんと是に於てヤコブ彼の許にもちきたりければ食へり又酒をもちきたりければ飮り |
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二五 イサクは言った、「わたしの所へ持ってきなさい。わが子のしかの肉を食べて、わたしみずから、あなたを祝福しよう」。ヤコブがそれを彼の所に持ってきたので、彼は食べた。またぶどう酒を持ってきたので、彼は飲んだ。 |
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二六 かくて父イサク彼にいひけるは吾子よ近くよりて我に接吻せよと |
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二六 そして父イサクは彼に言った、「子よ、さあ、近寄ってわたしに口づけしなさい」。 |
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二七 彼すなはち近よりて之に接吻しければ其衣の馨香をかぎて彼を祝していひけるは鳴呼吾子の香はヱホバの祝たまへる野の馨香のごとし |
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二七 彼が近寄って口づけした時、イサクはその着物のかおりをかぎ、彼を祝福して言った、/「ああ、わが子のかおりは、/主が祝福された野のかおりのようだ。 |
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二八 ねがはくは~天の露と地の腴および饒多の穀と酒を汝にたまへ |
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二八 どうか神が、天の露と、/地の肥えたところと、多くの穀物と、/新しいぶどう酒とをあなたに賜わるように。 |
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二九 ゥの民汝につかへゥの邦汝に躬を鞠ん汝兄弟等の主となり汝の母の子等汝に身をかゞめん汝を詛ふ者はのろはれ汝を祝する者は祝せらるべし |
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二九 もろもろの民はあなたに仕え、/もろもろの国はあなたに身をかがめる。あなたは兄弟たちの主となり、/あなたの母の子らは、/あなたに身をかがめるであろう。あなたをのろう者はのろわれ、/あなたを祝福する者は祝福される」。 |
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三〇 イサク、ヤコブを祝することを終てヤコブ父イサクの前より出さりし時にあたりて兄エサウ獵より歸り來り |
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三〇 イサクがヤコブを祝福し終って、ヤコブが父イサクの前から出て行くとすぐ、兄エサウが狩から帰ってきた。 |
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三一 己も亦美味をつくりて之を其父の許にもちゆき父にいひけるは父よ起て其子の麆を食ひて心に我を祝せよ |
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三一 彼もまたおいしい食べ物を作って、父の所に持ってきて、言った、「父よ、起きてあなたの子のしかの肉を食べ、あなたみずから、わたしを祝福してください」。 |
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三二 父イサク彼にいひけるは汝は誰なるや彼いふ我は汝の子汝の長子エサウなり |
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三二 父イサクは彼に言った、「あなたは、だれか」。彼は言った、「わたしはあなたの子、長子エサウです」。 |
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三三 イサク甚大に戰兢ていひけるは然ば彼麆を獵て之を我にもちきたりし者は誰ぞや我汝がきたるまへにゥの物を食ひて彼を祝したれば彼まことに祝をうべし |
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三三 イサクは激しくふるえて言った、「それでは、あのしかの肉を取って、わたしに持ってきた者はだれか。わたしはあなたが来る前に、みんな食べて彼を祝福した。ゆえに彼が祝福を得るであろう」。 |
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三四 エサウ父の言を聞て大に哭き痛く泣て父にいひけるは父よ我を祝せよ我をも祝せよ |
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三四 エサウは父の言葉を聞いた時、大声をあげ、激しく叫んで、父に言った、「父よ、わたしを、わたしをも祝福してください」。 |
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三五 イサク言けるは汝の弟僞りて來り汝の祝を奪ひたり |
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三五 イサクは言った、「あなたの弟が偽ってやってきて、あなたの祝福を奪ってしまった」。 |
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三六 エサウ曰けるは彼をヤコブ(推除者)となづくるは宜ならずや彼が我をおしのくる事此にて二次なり昔にはわが家督の權を奪ひ今はわが祝を奪ひたり又言ふ汝は祝をわがために殘しおかざりしや |
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三六 エサウは言った、「よくもヤコブと名づけたものだ。彼は二度までもわたしをおしのけた。さきには、わたしの長子の特権を奪い、こんどはわたしの祝福を奪った」。また言った、「あなたはわたしのために祝福を残しておかれませんでしたか」。 |
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三七 イサク對てエサウにいひけるは我彼を汝の主となし其兄弟を悉く僕として彼にあたへたり又穀と酒とを彼に授けたり然ば吾子よ我何を汝になすをえん |
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三七 イサクは答えてエサウに言った、「わたしは彼をあなたの主人とし、兄弟たちを皆しもべとして彼に与え、また穀物とぶどう酒を彼に授けた。わが子よ、今となっては、あなたのために何ができようか」。 |
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三八 エサウ父に言けるは父よ父の祝唯一ならんや父よ我を祝せよ我をも祝せよとエサウ聲をあげて哭ぬ |
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三八 エサウは父に言った、「父よ、あなたの祝福はただ一つだけですか。父よ、わたしを、わたしをも祝福してください」。エサウは声をあげて泣いた。 |
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三九 父イサク答て彼にいひけるは汝の住所は地の膏腴にはなれ上よりの天の露にはなるべし |
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三九 父イサクは答えて彼に言った、/「あなたのすみかは地の肥えた所から離れ、また上なる天の露から離れるであろう。 |
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四〇 汝は劍をもて世をわたり汝の弟に事ん然ど汝繫を離るゝ時は其軛を汝の頸より振ひおとすを得ん |
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四〇 あなたはつるぎをもって世を渡り、/あなたの弟に仕えるであろう。しかし、あなたが勇み立つ時、/首から、そのくびきを振り落すであろう」。 |
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四一 エサウ父のヤコブを祝したる其祝の爲にヤコブを惡めり即ちエサウ心に謂けるは父の喪の日近ければ共時我弟ヤコブを殺さんと |
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四一 こうしてエサウは父がヤコブに与えた祝福のゆえにヤコブを憎んだ。エサウは心の内で言った、「父の喪の日も遠くはないであろう。その時、弟ヤコブを殺そう」。 |
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四二 長子エサウの此言リベカに聞えければ季子ヤコブを呼よせて之に言けるは汝の兄エサウ汝を殺さんとおもひて自ら慰む |
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四二 しかしリベカは長子エサウのこの言葉を人づてに聞いたので、人をやり、弟ヤコブを呼んで言った、「兄エサウはあなたを殺そうと考えて、みずから慰めています。 |
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四三 されば吾子よ我言にしたがひ起てハランにゆきわが兄ラバンの許にのがれ |
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四三 子よ、今わたしの言葉に従って、すぐハランにいるわたしの兄ラバンのもとにのがれ、 |
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四四 汝の兄の怒の釋るまで暫く彼とともに居れ |
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四四 あなたの兄の怒りが解けるまで、しばらく彼の所にいなさい。 |
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四五 汝の兄の鬱憤釋て汝をはなれ汝が彼になしたる事を忘るゝにいたらば我人をやりて汝を彼處よりむかへん我何ぞ一日のうちに汝等二人を喪ふべけんや |
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四五 兄の憤りが解けて、あなたのした事を兄が忘れるようになったならば、わたしは人をやって、あなたをそこから迎えましょう。どうして、わたしは一日のうちにあなたがたふたりを失ってよいでしょうか」。 |
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四六 リベカ、イサクに言けるは我はヘテの女等のために世を厭ふにいたるヤコブ若此地の彼女等の如きへテの女の中より妻を娶らば我身生るも何の利uあらんや |
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四六 リベカはイサクに言った、「わたしはヘテびとの娘どものことで、生きているのがいやになりました。もしヤコブがこの地の、あの娘どものようなヘテびとの娘を妻にめとるなら、わたしは生きていて、何になりましょう」。 |
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28章 |
一 イサク、ヤコブを呼て之を祝し之に命じて言けるは汝カナンの女の中より妻を娶るなかれ |
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一 イサクはヤコブを呼んで、これを祝福し、命じて言った、「あなたはカナンの娘を妻にめとってはならない。 |
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二 起てパダンアラムに往き汝の母の父ベトエルの家にいたり彼處にて汝の母の兄ラバンの女の中より妻を娶れ |
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二 立ってパダンアラムへ行き、あなたの母の父ベトエルの家に行って、そこであなたの母の兄ラバンの娘を妻にめとりなさい。 |
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三 願くは全能の~汝を祝み汝をして子女を多く得せしめ且汝の子孫を揩ト汝をして多衆の民とならしめ |
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三 全能の神が、あなたを祝福し、多くの子を得させ、かつふえさせて、多くの国民とし、 |
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四 又アブラハムに賜んと約束せし祝を汝および汝と共に汝の子孫に賜ひ汝をして~がアブラハムにあたへ給ひし此汝が寄寓る地を持たしめたまはんことをと |
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四 またアブラハムの祝福をあなたと子孫とに与えて、神がアブラハムに授けられたあなたの寄留の地を継がせてくださるように」。 |
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五 斯てイサク、ヤコブを遣しければバダンアラムにゆきてラバンの所にいたれりラバンはスリア人ベトエルの子にしてヤコブとエサウの母なるリベカの兄なり |
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五 こうしてイサクはヤコブを送り出した。ヤコブはパダンアラムに向かい、アラムびとベトエルの子で、ヤコブとエサウとの母リベカの兄ラバンのもとへ行った。 |
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六 エサウはイサクがヤコブを祝して之をパダンアラムにつかはし彼處より妻を娶しめんとしたるを見又之を祝し汝はカナンの女の中より妻をめとるなかれといひて之に命じたることを見 |
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六 さてエサウは、イサクがヤコブを祝福して、パダンアラムにつかわし、そこから妻をめとらせようとしたこと、彼を祝福し、命じて「あなたはカナンの娘を妻にめとってはならない」と言ったこと、 |
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七 又ヤコブが其父母の言に順ひてバダンアラムに往しを見たり |
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七 そしてヤコブが父母の言葉に従って、パダンアラムへ行ったことを知ったとき、 |
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八 エサウまたカナンの女の其父イサクの心にかなはぬを見たり |
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八 彼はカナンの娘が父イサクの心にかなわないのを見た。 |
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九 是においてエサウ、イシマエルの所にゆきて其有る妻の外に又アブラハムの子イシマエルの女ネバヨテの妹マハラテを妻にめとれり |
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九 そこでエサウはイシマエルの所に行き、すでにある妻たちのほかにアブラハムの子イシマエルの娘で、ネバヨテの妹マハラテを妻にめとった。 |
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一〇 玆にヤコブ、ベエルシバより出たちてハランの方におもむきけるが |
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一〇 さてヤコブはベエルシバを立って、ハランへ向かったが、 |
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一一 一處にいたれる時日暮たれば即ち其處に宿り其處の石をとり枕となして其處に臥て寝たり |
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一一 一つの所に着いた時、日が暮れたので、そこに一夜を過ごし、その所の石を取ってまくらとし、そこに伏して寝た。 |
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一二 時に彼夢て梯の地にたちゐて其巓の天に達れるを見又~の使者の其にのぼりくだりするを見たり |
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一二 時に彼は夢をみた。一つのはしごが地の上に立っていて、その頂は天に達し、神の使たちがそれを上り下りしているのを見た。 |
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一三 ヱホバ其上に立て言たまはく我は汝の祖父アブラハムの~イサクの~ヱホバなり汝が偃臥ところの地は我之を汝と汝の子孫に與へん |
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一三 そして主は彼のそばに立って言われた、「わたしはあなたの父アブラハムの神、イサクの神、主である。あなたが伏している地を、あなたと子孫とに与えよう。 |
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一四 汝の子孫は地の塵沙のごとくなりて西東北南に蔓るべし又天下のゥの族汝と汝の子孫によりて祉をえん |
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一四 あなたの子孫は地のちりのように多くなって、西、東、北、南にひろがり、地の諸族はあなたと子孫とによって祝福をうけるであろう。 |
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一五 また我汝とともにありて凡て汝が往ところにて汝をまもり汝を此地に率返るべし我はわが汝にかたりし事を行ふまで汝をはなれざるなり |
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一五 わたしはあなたと共にいて、あなたがどこへ行くにもあなたを守り、あなたをこの地に連れ帰るであろう。わたしは決してあなたを捨てず、あなたに語った事を行うであろう」。 |
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一六 ヤコブ目をさまして言けるは誠にヱホバ此處にいますに我しらざりきと |
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一六 ヤコブは眠りからさめて言った、「まことに主がこの所におられるのに、わたしは知らなかった」。 |
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一七 乃ち惶懼ていひけるは畏るべき哉此處是即ち~の殿の外ならず是天の門なり |
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一七 そして彼は恐れて言った、「これはなんという恐るべき所だろう。これは神の家である。これは天の門だ」。 |
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一八 かくてヤコブ朝夙に起き其枕となしたる石を取り之を立て柱となし膏を其上に沃ぎ |
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一八 ヤコブは朝はやく起きて、まくらとしていた石を取り、それを立てて柱とし、その頂に油を注いで、 |
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一九 其處の名をベテル(~殿)と名けたり其邑の名は初はルズといへり |
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一九 その所の名をベテルと名づけた。その町の名は初めはルズといった。 |
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二〇 ヤコブ乃ち誓をたてゝいひけるは若~我とともにいまし此わがゆく途にて我をまもり食ふパンと衣る衣を我にあたへ |
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二〇 ヤコブは誓いを立てて言った、「神がわたしと共にいまし、わたしの行くこの道でわたしを守り、食べるパンと着る着物を賜い、 |
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二一 我をしてわが父の家に安然に歸ることを得せしめたまはゞヱホバをわが~となさん |
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二一 安らかに父の家に帰らせてくださるなら、主をわたしの神といたしましょう。 |
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二二 又わが柱にたてたる此石を~の家となさん又汝がわれにたまふ者は皆必ず其十分の一を汝にさゝげん |
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二二 またわたしが柱に立てたこの石を神の家といたしましょう。そしてあなたがくださるすべての物の十分の一を、わたしは必ずあなたにささげます」。 |
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29章 |
一 斯てヤコブ其途にすゝみて東の民の地にいたりて |
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一 ヤコブはその旅を続けて東の民の地へ行った。 |
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二 見るに野に井ありて羊の群三其傍に臥ゐたり此井より群に飮ヘばなり大なる石井の口にあり |
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二 見ると野に一つの井戸があって、そのかたわらに羊の三つの群れが伏していた。人々はその井戸から群れに水を飲ませるのであったが、井戸の口には大きな石があった。 |
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三 羊の群皆其處に集る時に井の口より石をまろばして羊に水ひ復故のごとく井の口に石をのせおくなり |
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三 群れが皆そこに集まると、人々は井戸の口から石をころがして羊に水を飲ませ、その石をまた井戸の口の元のところに返しておくのである。 |
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四 ヤコブ人々に言けるは兄弟よ奚よりきたれるや彼等いふ我等はハランより來る |
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四 ヤコブは人々に言った、「兄弟たちよ、あなたがたはどこからこられたのですか」。彼らは言った、「わたしたちはハランからです」。 |
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五 ヤコブ彼等にいひけるは汝等ナホルの子ラバンをしるや彼等識といふ |
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五 ヤコブは彼らに言った、「あなたがたはナホルの子ラバンを知っていますか」。彼らは言った、「知っています」。 |
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六 ヤコブ又かれらにいひけるは彼は安きや彼等いふ安し視よ彼の女ラケル羊と偕に來ると |
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六 ヤコブはまた彼らに言った、「彼は無事ですか」。彼らは言った、「無事です。御覧なさい。彼の娘ラケルはいま羊と一緒にここへきます」。 |
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七 ヤコブ言ふ視よ日尙高し家畜を聚むべき時にあらず羊に飮ひて往て牧せよ |
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七 ヤコブは言った、「日はまだ高いし、家畜を集める時でもない。あなたがたは羊に水を飲ませてから、また行って飼いなさい」。 |
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八 彼等いふ我等しかする能ず群の皆聚るに及て井の口より石をまろばして羊に飮ふべきなり |
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八 彼らは言った、「わたしたちはそれはできないのです。群れがみな集まった上で、井戸の口から石をころがし、それから羊に水を飲ませるのです」。 |
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九 ヤコブ尙彼等と語る時にラケル父の羊とともに來る其は之を牧居たればなり |
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九 ヤコブがなお彼らと語っている時に、ラケルは父の羊と一緒にきた。彼女は羊を飼っていたからである。 |
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一〇 ヤコブ其母の兄ラバンの女ラケルおよび其母の兄ラバンの羊を見しかばヤコブ進みよりて井の口より石をまろばし母の兄ラバンの羊に飮ひたり |
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一〇 ヤコブは母の兄ラバンの娘ラケルと母の兄ラバンの羊とを見た。そしてヤコブは進み寄って井戸の口から石をころがし、母の兄ラバンの羊に水を飲ませた。 |
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一一 而してヤコブ、ラケルに接吻し聲をあげて啼哭ぬ |
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一一 ヤコブはラケルに口づけし、声をあげて泣いた。 |
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一二 即ちヤコブ、ラケルに己はその父の兄弟にしてリベカの子なることを吿ければ彼はしりゆきて父に吿たり |
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一二 ヤコブはラケルに、自分がラケルの父のおいであり、リベカの子であることを告げたので、彼女は走って行って父に話した。 |
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一三 ラバン其妹の子ヤコブの事を聞しかば趨ゆきて之を迎ヘ之を抱きて接吻し之を家に導きいたれりヤコブすなはち此等の事を悉くラバンに述たり |
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一三 ラバンは妹の子ヤコブがきたという知らせを聞くとすぐ、走って行ってヤコブを迎え、これを抱いて口づけし、家に連れてきた。そこでヤコブはすべての事をラバンに話した。 |
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一四 ラバン彼にいひけるは汝は誠にわが骨肉なりとヤコブ一月の間彼とともに居る |
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一四 ラバンは彼に言った、「あなたはほんとうにわたしの骨肉です」。ヤコブは一か月の間彼と共にいた。 |
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一五 玆にラバン、ヤコブにいひけるは汝はわが兄弟なればとて空く我に役事べけんや何の報酬を望むや我に吿よ |
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一五 時にラバンはヤコブに言った、「あなたはわたしのおいだからといって、ただでわたしのために働くこともないでしょう。どんな報酬を望みますか、わたしに言ってください」。 |
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一六 ラバン二人の女子を有り姊の名はレアといひ妹の名はラケルといふ |
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一六 さてラバンにはふたりの娘があった。姉の名はレアといい、妹の名はラケルといった。 |
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一七 レアは目弱かりしがラケルは美くして姝し |
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一七 レアは目が弱かったが、ラケルは美しくて愛らしかった。 |
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一八 ヤコブ、ラケルを愛したれば言ふ我汝の季女ラケルのために七年汝に事ん |
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一八 ヤコブはラケルを愛したので、「わたしは、あなたの妹娘ラケルのために七年あなたに仕えましょう」と言った。 |
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一九 ラバンいひけるは彼を他の人にあたふるよりも汝にあたふるは善し我と偕に居れ |
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一九 ラバンは言った、「彼女を他人にやるよりもあなたにやる方がよい。わたしと一緒にいなさい」。 |
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二〇 ヤコブ七年の間ラケルのために勤たりしが彼を愛するが爲に之を數日の如く見做り |
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二〇 こうして、ヤコブは七年の間ラケルのために働いたが、彼女を愛したので、ただ数日のように思われた。 |
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二一 玆にヤコブ、ラバンに言けるはわが期滿たればわが妻をあたへて我をしてかれの處にいることを得せしめよ |
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二一 ヤコブはラバンに言った、「期日が満ちたから、わたしの妻を与えて、妻の所にはいらせてください」。 |
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二二 是に於てラバン處の人を盡く集めて酒宴を設けたりしが |
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二二 そこでラバンはその所の人々をみな集めて、ふるまいを設けた。 |
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二三 晩に及びて其女レアを携ヘて之をヤコブにつれ來れりヤコブ即ち彼の處にいりぬ |
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二三 夕暮となったとき、娘レアをヤコブのもとに連れてきたので、ヤコブは彼女の所にはいった。 |
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二四 ラバンまた其侍婢ジルバを娘レアに與へて侍婢となさしめたり |
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二四 ラバンはまた自分のつかえめジルパを娘レアにつかえめとして与えた。 |
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二五 朝にいたりて見るにレアなりしかばヤコブ、ラバンに言けるは汝なんぞ此事を我になしたるや我ラケルのために汝に役事しにあらずや汝なんぞ我を欺くや |
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二五 朝になって、見ると、それはレアであったので、ヤコブはラバンに言った、「あなたはどうしてこんな事をわたしにされたのですか。わたしはラケルのために働いたのではありませんか。どうしてあなたはわたしを欺いたのですか」。 |
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二六 ラバンいひけるは姊より先に妹を媳しむる事は我國にて爲ざるところなり |
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二六 ラバンは言った、「妹を姉より先にとつがせる事はわれわれの国ではしません。 |
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二七 其七日を過せ我等是をも汝に與へん然ば汝是がために尙七年我に事へて勤むべし |
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二七 まずこの娘のために一週間を過ごしなさい。そうすればあの娘もあなたにあげよう。あなたは、そのため更に七年わたしに仕えなければならない」。 |
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二八 ヤコブ即ち斯なして其七日をすごせしかばラバン其女ラケルをも之にあたへて妻となさしむ |
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二八 ヤコブはそのとおりにして、その一週間が終ったので、ラバンは娘ラケルをも妻として彼に与えた。 |
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二九 またラバン其侍婢ビルハを女ラケルにあたへて侍婢となさしむ |
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二九 ラバンはまた自分のつかえめビルハを娘ラケルにつかえめとして与えた。 |
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三〇 ヤコブまたラケルの所にいりぬ彼レアよりもラケルを愛し尙七年ラバンに事たり |
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三〇 ヤコブはまたラケルの所にはいった。彼はレアよりもラケルを愛して、更に七年ラバンに仕えた。 |
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三一 ヱホバ、レアの嫌るゝを見て其胎をひらきたまへり然どラケルは姙なきものなりき |
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三一 主はレアがきらわれるのを見て、その胎を開かれたが、ラケルは、みごもらなかった。 |
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三二 レア孕みて子を生み其名をルベンと名けていひけるはヱホバ誠にわが艱苦を顧みたまへりされば今夫我を愛せんと |
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三二 レアは、みごもって子を産み、名をルベンと名づけて、言った、「主がわたしの悩みを顧みられたから、今は夫もわたしを愛するだろう」。 |
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三三 彼ふたゝび孕みて子を產みヱホバわが嫌るゝを聞たまひしによりて我に是をもたまへりと言て其名をシメオンと名けたり |
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三三 彼女はまた、みごもって子を産み、「主はわたしが嫌われるのをお聞きになって、わたしにこの子をも賜わった」と言って、名をシメオンと名づけた。 |
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三四 彼また孕みて子を生み我三人の子を生たれば夫今よりは我に膠漆んといヘり是によりて其名をレビと名けたり |
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三四 彼女はまた、みごもって子を産み、「わたしは彼に三人の子を産んだから、こんどこそは夫もわたしに親しむだろう」と言って、名をレビと名づけた。 |
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三五 彼復姙みて子を生み我今ヱホバを讚美んといへり是によりて其名をユダと名けたり是にいたりて產ことやみぬ |
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三五 彼女はまた、みごもって子を産み、「わたしは今、主をほめたたえる」と言って名をユダと名づけた。そこで彼女の、子を産むことはやんだ。 |
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30章 |
一 ラケル己がヤコブに子を生ざるを見て其姊を妒みヤコブに言けるは我に子を與へよ然らずば我死んと |
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一 ラケルは自分がヤコブに子を産まないのを知った時、姉をねたんでヤコブに言った、「わたしに子どもをください。さもないと、わたしは死にます」。 |
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二 ヤコブ、ラケルにむかひて怒を發して言ふ汝の胎に子をやどらしめざる者は~なり我~に代るをえんや |
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二 ヤコブはラケルに向かい怒って言った、「あなたの胎に子どもをやどらせないのは神です。わたしが神に代ることができようか」。 |
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三 ラケルいふ吾婢ビルハを視よ彼の處に入れ彼子を生てわが膝に置ん然ば我もまた彼によりて子をうるにいたらんと |
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三 ラケルは言った、「わたしのつかえめビルハがいます。彼女の所におはいりなさい。彼女が子を産んで、わたしのひざに置きます。そうすれば、わたしもまた彼女によって子を持つでしょう」。 |
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四 其仕女ビルハを彼にあたへて妻となさしめたりヤコブ即ち彼の處にいる |
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四 ラケルはつかえめビルハを彼に与えて、妻とさせたので、ヤコブは彼女の所にはいった。 |
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五 ビルハ遂にはらみてヤコブに子を生ければ |
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五 ビルハは、みごもってヤコブに子を産んだ。 |
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六 ラケルいひけるは~我を監み亦わが聲を聽いれて吾に子をたまへりと是によりて其名をダンと名けたり |
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六 そこでラケルは、「神はわたしの訴えに答え、またわたしの声を聞いて、わたしに子を賜わった」と言って、名をダンと名づけた。 |
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七 ラケルの仕女ビルハ再び姙みて次の子をヤコブに生ければ |
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七 ラケルのつかえめビルハはまた、みごもって第二の子をヤコブに産んだ。 |
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八 ラケル我~の爭をもて姊と爭ひて勝ぬといひて其名をナフタリと名けたり |
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八 そこでラケルは、「わたしは激しい争いで、姉と争って勝った」と言って、名をナフタリと名づけた。 |
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九 玆にレア產ことの止たるを見しかば其仕女ジルパをとりて之をヤコブにあたへて妻となさしむ |
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九 さてレアは自分が子を産むことのやんだのを見たとき、つかえめジルパを取り、妻としてヤコブに与えた。 |
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一〇 レアの仕女ジルパ、ヤコブに子を產ければ |
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一〇 レアのつかえめジルパはヤコブに子を産んだ。 |
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一一 レア來れりといひて其名をガドと名けたり |
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一一 そこでレアは、「幸運がきた」と言って、名をガドと名づけた。 |
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一二 レアの仕女ジルパ次子をヤコブに生ければ |
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一二 レアのつかえめジルパは第二の子をヤコブに産んだ。 |
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一三 レアいふ我は幸なり女等我を幸なる者となさんと其名をアセルとなづけたり |
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一三 そこでレアは、「わたしは、しあわせです。娘たちはわたしをしあわせな者と言うでしょう」と言って、名をアセルと名づけた。 |
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一四 玆に麥苅の日にルベン出ゆきて野にて戀茄を獲これを母レアの許にもちきたりければラケル、レアにいひけるは請ふ我に汝の子の戀茄をあたへよ |
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一四 さてルベンは麦刈りの日に野に出て、野で恋なすびを見つけ、それを母レアのもとに持ってきた。ラケルはレアに言った、「あなたの子の恋なすびをどうぞわたしにください」。 |
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一五 レア彼にいひけるは汝のわが夫を奪しは微き事ならんや然るに汝またわが子の戀茄をも奪んとするやラケルいふ然ば汝の子の戀茄のために夫是夜汝と寢べし |
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一五 レアはラケルに言った、「あなたがわたしの夫を取ったのは小さな事でしょうか。その上、あなたはまたわたしの子の恋なすびをも取ろうとするのですか」。ラケルは言った、「それではあなたの子の恋なすびに換えて、今夜彼をあなたと共に寝させましょう」。 |
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一六 晩におよびてヤコブ野より來りければレア之をいでむかへて言けるは我誠にわが子の戀茄をもて汝を雇ひたれば汝我の所にいらざるべからずヤコブ即はち其夜彼といねたり |
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一六 夕方になって、ヤコブが野から帰ってきたので、レアは彼を出迎えて言った、「わたしの子の恋なすびをもって、わたしがあなたを雇ったのですから、あなたはわたしの所に、はいらなければなりません」。ヤコブはその夜レアと共に寝た。 |
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一七 ~レアに聽たまひければ彼妊みて第五の子をヤコブに生り |
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一七 神はレアの願いを聞かれたので、彼女はみごもって五番目の子をヤコブに産んだ。 |
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一八 レアいひけるは我わが仕女を夫に與へたれば~我に其値をたまへりと其名をイツサカルと名けたり |
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一八 そこでレアは、「わたしがつかえめを夫に与えたから、神がわたしにその価を賜わったのです」と言って、名をイッサカルと名づけた。 |
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一九 レア復妊みて第六の子をヤコブに生り |
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一九 レアはまた、みごもって六番目の子をヤコブに産んだ。 |
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二〇 レアいひけるは~我に嘉賚を貺ふ我六人の男子を生たれば夫今より我と偕にすまんと其名をゼブルンとなづけたり |
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二〇 そこでレアは、「神はわたしに良い賜物をたまわった。わたしは六人の子を夫に産んだから、今こそ彼はわたしと一緒に住むでしょう」と言って、その名をゼブルンと名づけた。 |
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二一 其後彼女子を生み其名をデナと名けたり |
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二一 その後、彼女はひとりの娘を産んで、名をデナと名づけた。 |
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二二 玆に~ラケルを念ひ~彼に聽て其胎を開きたまひければ |
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二二 次に神はラケルを心にとめられ、彼女の願いを聞き、その胎を開かれたので、 |
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二三 彼妊みて男子を生て曰ふ~わが恥辱を洒ぎたまへりと |
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二三 彼女は、みごもって男の子を産み、「神はわたしの恥をすすいでくださった」と言って、 |
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二四 乃ち其名をヨセフと名けて言ふヱホバ又他の子を我に加へたまはん |
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二四 名をヨセフと名づけ、「主がわたしに、なおひとりの子を加えられるように」と言った。 |
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二五 玆にラケルのヨセフを生むに及びてヤコブ、ラバンに言けるは我を歸して故クに我國に往しめよ |
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二五 ラケルがヨセフを産んだ時、ヤコブはラバンに言った、「わたしを去らせて、わたしの故郷、わたしの国へ行かせてください。 |
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二六 わが汝に事て得たる所の妻子を我に與ヘて我を去しめよわが汝になしたる役事は汝之を知るなり |
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二六 あなたに仕えて得たわたしの妻子を、わたしに与えて行かせてください。わたしがあなたのために働いた骨折りは、あなたがごぞんじです」。 |
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二七 ラバン彼にいひけるは若なんぢの意にかなはゞねがはくは留れ我ヱホバが汝のために我を祝みしを卜ひ得たり |
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二七 ラバンは彼に言った、「もし、あなたの心にかなうなら、とどまってください。わたしは主があなたのゆえに、わたしを恵まれるしるしを見ました」。 |
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二八 又言ふ汝の望む値をのべよ我之を與ふべし |
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二八 また言った、「あなたの報酬を申し出てください。わたしはそれを払います」。 |
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二九 ヤコブ彼にいひけるは汝は如何にわが汝に事しか如何に汝の家畜を牧しかを知る |
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二九 ヤコブは彼に言った、「わたしがどのようにあなたに仕えたか、またどのようにあなたの家畜を飼ったかは、あなたがごぞんじです。 |
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三〇 わが來れる前に汝の有たる者は鮮少なりしが揩ト遂に群をなすに至る吾來りてよりヱホバ汝を祝みたまへり然ども我は何時吾家を成にいたらんや |
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三〇 わたしが来る前には、あなたの持っておられたものはわずかでしたが、ふえて多くなりました。主はわたしの行く所どこでも、あなたを恵まれました。しかし、いつになったらわたしも自分の家を成すようになるでしょうか」。 |
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三一 彼言ふ我何を汝に與へんかヤコブいひけるは汝何物をも我に與ふるに及ばず汝若此事を我になさば我復汝の群を牧守ん |
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三一 彼は言った、「何をあなたにあげようか」。ヤコブは言った、「なにもわたしにくださるに及びません。もしあなたが、わたしのためにこの一つの事をしてくださるなら、わたしは今一度あなたの群れを飼い、守りましょう。 |
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三二 即ち我今日徧く汝の群をゆきめぐりて其中より凡て斑なる者點なる者を移し綿羊の中の凡てKき者を移し山羊の中の點なる者と斑なる者を移さん是わが値なるべし |
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三二 わたしはきょう、あなたの群れをみな回ってみて、その中からすべてぶちとまだらの羊、およびすべて黒い小羊と、やぎの中のまだらのものと、ぶちのものとを移しますが、これをわたしの報酬としましょう。 |
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三三 後に汝來りてわが價値をしらぶる時わが義我にかはりて應をなすべし若わが所に山羊の斑ならざる者點ならざる者あり綿羊のKからざる者あらば皆盜る者となすべし |
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三三 あとで、あなたがきて、あなたの前でわたしの報酬をしらべる時、わたしの正しい事が証明されるでしょう。もしも、やぎの中にぶちのないもの、まだらでないものがあったり、小羊の中に黒くないものがあれば、それはみなわたしが盗んだものとなるでしょう」。 |
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三四 ラパンいふ汝の言の如くなさんことを願ふ |
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三四 ラバンは言った、「よろしい。あなたの言われるとおりにしましょう」。 |
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三五 是に於て彼其日牡山羊の斑入なる者斑點なる者を移し凡て牝山羊の斑駁なる者斑點なる者キて身に白色ある者を移し又綿羊の中の凡てKき者を移して其子等の手に付せり |
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三五 そこでラバンはその日、雄やぎのしまのあるもの、まだらのもの、すべて雌やぎのぶちのもの、まだらのもの、すべて白みをおびているもの、またすべて小羊の中の黒いものを移して子らの手にわたし、 |
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三六 而して彼己とヤコブの間に三日程の隔をたてたり |
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三六 ヤコブとの間に三日路の隔たりを設けた。ヤコブはラバンの残りの群れを飼った。 |
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三七 玆にヤコブ楊柳と楓と桑の枝を執り皮を剝て白紋理を成り枝の白き所をあらはし |
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三七 ヤコブは、はこやなぎと、あめんどうと、すずかけの木のなまの枝を取り、皮をはいでそれに白い筋をつくり、枝の白い所を表わし、 |
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三八 其皮はぎたる枝を群の來りて飮むところの水槽と水鉢に立て群に向はしめ群をして水のみに來る時に孕ましむ |
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三八 皮をはいだ枝を、群れがきて水を飲む鉢、すなわち水ぶねの中に、群れに向かわせて置いた。群れは水を飲みにきた時に、はらんだ。 |
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三九 群すなはち枝の前に孕みて斑入の者斑駁なる者斑點なる者を產しかば |
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三九 すなわち群れは枝の前で、はらんで、しまのあるもの、ぶちのもの、まだらのものを産んだ。 |
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四〇 ヤコブ其羔羊を區分ちラバンの群の面を其群の斑入なる者とKき者に對はしめたりしが己の群をば一所に置てラバンの群の中にいれざりき |
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四〇 ヤコブはその小羊を別においた。彼はまた群れの顔をラバンの群れのしまのあるものと、すべて黒いものとに向かわせた。そして自分の群れを別にまとめておいて、ラバンの群れには、入れなかった。 |
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四一 又家畜の壯健き者孕みたる時はヤコブ水槽の中にて其家畜の目の前に彼枝を置き枝の傍において孕ましむ |
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四一 また群れの強いものが発情した時には、ヤコブは水ぶねの中に、その群れの目の前に、かの枝を置いて、枝の間で、はらませた。 |
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四二 然ど家畜の羸弱かる時は之を置ず是に困て羸弱者はラバンのとなり壯健者はヤコブのとなれり |
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四二 けれども群れの弱いものの時には、それを置かなかった。こうして弱いものはラバンのものとなり、強いものはヤコブのものとなったので、 |
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四三 是に於て其人大に富饒になりて多の家畜と婢僕および駱駝驢馬を有にいたれり |
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四三 この人は大いに富み、多くの群れと、男女の奴隷、およびらくだ、ろばを持つようになった。 |
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31章 |
一 玆にヤコブ、ラバンの子等がヤコブわが父の所有を盡く奪ひ吾父の所有によりて此凡の榮光を獲たりといふを聞り |
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一 さてヤコブはラバンの子らが、「ヤコブはわれわれの父の物をことごとく奪い、父の物によってあのすべての富を獲たのだ」と言っているのを聞いた。 |
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二 亦ヤコブ、ラバンの面を見るに己に對すること疇昔の如くならず |
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二 またヤコブがラバンの顔を見るのに、それは自分に対して以前のようではなかった。 |
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三 時にヱホバ、ヤコブに言たまひけるは汝の父の國にかへり汝の親族に至れ我汝と偕にをらんと |
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三 主はヤコブに言われた、「あなたの先祖の国へ帰り、親族のもとに行きなさい。わたしはあなたと共にいるであろう」。 |
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四 是に於てヤコブ人をやりてラケルとレアを野に招きて群の所に至らしめ |
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四 そこでヤコブは人をやって、ラケルとレアとを、野にいる自分の群れのところに招き、 |
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五 之にいひけるは我汝等の父の面を見るに其我に對すること疇昔の如くならず然どわが父の~は我と偕にいますなり |
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五 彼女らに言った、「わたしがあなたがたの父の顔を見るのに、わたしに対して以前のようではない。しかし、わたしの父の神はわたしと共におられる。 |
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六 汝等がしるごとく我力を竭して汝らの父に事へたるに |
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六 あなたがたが知っているように、わたしは力のかぎり、あなたがたの父に仕えてきた。 |
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七 汝等の父我を欺きて十次もわが値を易たり然ども~彼の我を害するを容したまはず |
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七 しかし、あなたがたの父はわたしを欺いて、十度もわたしの報酬を変えた。けれども神は彼がわたしに害を加えることをお許しにならなかった。 |
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八 彼斑駁なる者は汝の傭値なるべしといへば群の生ところ皆斑駁なり斑入の者は汝の値なるべしといへば群の生ところ皆斑入なり |
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八 もし彼が、『ぶちのものはあなたの報酬だ』と言えば、群れは皆ぶちのものを産んだ。もし彼が、『しまのあるものはあなたの報酬だ』と言えば、群れは皆しまのあるものを産んだ。 |
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九 斯~汝らの父の家畜を奪て我に與へたまへり |
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九 こうして神はあなたがたの父の家畜をとってわたしに与えられた。 |
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一〇 群の孕む時に當りて我夢に目をあげて見しに群の上に乘る牡羊は皆斑入の者斑駁なる者白點なる者なりき |
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一〇 また群れが発情した時、わたしが夢に目をあげて見ると、群れの上に乗っている雄やぎは皆しまのあるもの、ぶちのもの、霜ふりのものであった。 |
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一一 時に~の使者夢の中に我に言ふヤコブよと我此にありと對へければ |
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一一 その時、神の使が夢の中でわたしに言った、『ヤコブよ』。わたしは答えた、『ここにおります』。 |
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一二 乃ち言ふ汝の目をあげて見よ群の上に乘る牡羊は皆斑入の者斑駁なる者白點なる者なり我ラバンが凡て汝に爲すところを鑒みる |
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一二 神の使は言った、『目を上げて見てごらん。群れの上に乗っている雄やぎは皆しまのあるもの、ぶちのもの、霜ふりのものです。わたしはラバンがあなたにしたことをみな見ています。 |
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一三 我はベテルの~なり汝彼處にて柱に膏を沃ぎ彼處にて我に誓を立たり今起て斯地を出て汝の親族の國に歸れと |
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一三 わたしはベテルの神です。かつてあなたはあそこで柱に油を注いで、わたしに誓いを立てましたが、いま立ってこの地を出て、あなたの生れた国へ帰りなさい』」。 |
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一四 ラケルとレア對て彼にいひけるは我等の父の家に尙われらの分あらんや我等の產業あらんや |
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一四 ラケルとレアは答えて言った、「わたしたちの父の家に、なおわたしたちの受くべき分、また嗣業がありましょうか。 |
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一五 我等は父に他人のごとくせらるゝにあらずや其は父我等を賣り亦我等の金を蝕减したればなり |
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一五 わたしたちは父に他人のように思われているではありませんか。彼はわたしたちを売ったばかりでなく、わたしたちのその金をさえ使い果したのです。 |
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一六 ~がわが父より取たまひし財寳は我等とわれらの子女の所屬なり然ばキて~の汝に言たまひし事を爲せ |
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一六 神がわたしたちの父から取りあげられた富は、みなわたしたちとわたしたちの子どものものです。だから何事でも神があなたにお告げになった事をしてください」。 |
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一七 是に於てヤコブ起て子等と妻等を駱駝に乘せ |
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一七 そこでヤコブは立って、子らと妻たちをらくだに乗せ、 |
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一八 其獲たる凡の家畜と凡の所有物即ちパダンアラムにてみづから獲たるところの家畜を携へ去てカナンの地に居所の其父イサクの所におもむけり |
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一八 またすべての家畜、すなわち彼がパダンアラムで獲た家畜と、すべての財産を携えて、カナンの地におる父イサクのもとへ赴いた。 |
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一九 時にラバンは羊の毛を剪んとて往てありラケル其父のもてるテラピムを竊めり |
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一九 その時ラバンは羊の毛を切るために出ていたので、ラケルは父の所有のテラピムを盗み出した。 |
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二〇 ヤコブは其去ことをスリア人ラバンに吿ずして潜に忍びいでたり |
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二〇 またヤコブはアラムびとラバンを欺き、自分の逃げ去るのを彼に告げなかった。 |
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二一 即ち彼その凡の所有を挈へて逃去り起て河を渡りギレアデの山にむかふ |
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二一 こうして彼はすべての持ち物を携えて逃げ、立って川を渡り、ギレアデの山地へ向かった。 |
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二二 ヤコブの逃去しこと三日におよびてラバンに聞えければ |
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二二 三日目になって、ヤコブの逃げ去ったことが、ラバンに聞えたので、 |
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二三 彼兄弟を率てその後を追ひしが七日路をへてギレアデの山にて之に追及ぬ |
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二三 彼は一族を率いて、七日の間そのあとを追い、ギレアデの山地で追いついた。 |
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二四 ~夜の夢にスリア人ラバンに臨みて汝愼みて善も惡もヤコブに道なかれと之に吿たまへり |
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二四 しかし、神は夜の夢にアラムびとラバンに現れて言われた、「あなたは心してヤコブに、よしあしを言ってはなりません」。 |
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二五 ラバン遂にヤコブに追及しがヤコブは山に天幕を張ゐたればラバンもその兄弟と共にギレアデの山に天幕をはれり |
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二五 ラバンはついにヤコブに追いついたが、ヤコブが山に天幕を張っていたので、ラバンも一族と共にギレアデの山に天幕を張った。 |
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二六 而してラバン、ヤコブに言けるは汝我に知しめずして忍びいで吾女等を劍をもて執たる者の如くにひき往り何ぞかゝる事をなすや |
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二六 ラバンはヤコブに言った、「あなたはなんという事をしたのですか。あなたはわたしを欺いてわたしの娘たちをいくさのとりこのように引いて行きました。 |
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二七 何故に汝潜に逃さり我をはなれて忍いで我につげざりしや我歡喜と歌謠と鼗と琴をもて汝を送りしならんを |
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二七 なぜあなたはわたしに告げずに、ひそかに逃げ去ってわたしを欺いたのですか。わたしは手鼓や琴で喜び歌ってあなたを送りだそうとしていたのに。 |
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二八 何ぞ我をしてわが孫と女に接吻するを得ざらしめしや汝愚妄なる事をなせり |
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二八 なぜわたしの孫や娘にわたしが口づけするのを許さなかったのですか。あなたは愚かな事をしました。 |
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二九 汝等に害をくはふるの能わが手にあり然ど汝等の父の~昨夜我に吿て汝つゝしみて善も惡もヤコブに語べからずといへり |
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二九 わたしはあなたがたに害を加える力をもっているが、あなたがたの父の神が昨夜わたしに告げて、『おまえは心して、ヤコブによしあしを言うな』と言われました。 |
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三〇 汝今父の家を甚く戀て歸んと願ふは善れども何ぞわが~を竊みたるや |
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三〇 今あなたが逃げ出したのは父の家が非常に恋しくなったからでしょうが、なぜあなたはわたしの神を盗んだのですか」。 |
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三一 ヤコブ答へてラバンにいひけるは恐くは汝强て女を我より奪ならんと思ひて懼れたればなり |
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三一 ヤコブはラバンに答えた、「たぶんあなたが娘たちをわたしから奪いとるだろうと思ってわたしは恐れたからです。 |
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三二 汝の~を持を者を見ば之を生しおくなかれ我等の兄弟等の前にて汝の何物我の許にあるかをみわけて之を汝に取れと其はヤコブ、ラケルが之を竊しを知ざればなり |
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三二 だれの所にでもあなたの神が見つかったら、その者を生かしてはおきません。何かあなたの物がわたしのところにあるか、われわれの一族の前で、調べてみて、それをお取りください」。ラケルが神を盗んだことをヤコブは知らなかったからである。 |
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三三 是に於てラバン、ヤコブの天幕に入りレアの天幕に入りまた二人の婢の天幕にいりしが視いださゞればレアの天幕を出てラケルの天幕にいる |
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三三 そこでラバンはヤコブの天幕にはいり、またレアの天幕にはいり、更にふたりのはしための天幕にはいってみたが、見つからなかったので、レアの天幕を出てラケルの天幕にはいった。 |
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三四 ラケル已にテラピムを執て之を駱駝の鞍の下にいれて其上に坐しければラバン徧く天幕の中をさぐりたれども見いださゞりき |
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三四 しかし、ラケルはすでにテラピムを取って、らくだのくらの下に入れ、その上にすわっていたので、ラバンは、くまなく天幕の中を捜したが、見つからなかった。 |
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三五 時にラケル父にいひけるは婦女の經の習例の事わが身にあれば父の前に起あたはず願くは主之を怒り給ふなかれと是をもて彼さがしたれども遂にテラピムを見いださざりき |
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三五 その時ラケルは父に言った、「わたしは女の常のことがあって、あなたの前に立ち上がることができません。わが主よ、どうかお怒りにならぬよう」。彼は捜したがテラピムは見つからなかった。 |
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三六 是に於てヤコブ怒てラバンを謫即ちヤコブ應てラバンに言けるは我何の愆あり何の罪ありてか汝火急く我をおふや |
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三六 そこでヤコブは怒ってラバンを責めた。そしてヤコブはラバンに言った、「わたしにどんなあやまちがあり、どんな罪があって、あなたはわたしのあとを激しく追ったのですか。 |
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三七 汝わが物を盡く索たるが汝の家の何物を見いだしたるや此にわが兄弟と汝の兄弟の前に其を置て我等二人の間をさばかしめよ |
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三七 あなたはわたしの物をことごとく探られたが、何かあなたの家の物が見つかりましたか。それを、ここに、わたしの一族と、あなたの一族の前に置いて、われわれふたりの間をさばかせましょう。 |
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三八 我この二十年汝とともにありしが汝の牝綿羊と牝山羊其胎を殰ねしことなし又汝の群の牡綿羊は我食はざりき |
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三八 わたしはこの二十年、あなたと一緒にいましたが、その間あなたの雌羊も雌やぎも子を産みそこねたことはなく、またわたしはあなたの群れの雄羊を食べたこともありませんでした。 |
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三九 又嚙裂れたる者は我これを汝の所に持きたらずして自ら之を補へり又晝竊るるも夜竊るゝも汝わが手より之を要めたり |
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三九 また野獣が、かみ裂いたものは、あなたのもとに持ってこないで、自分でそれを償いました。また昼盗まれたものも、夜盗まれたものも、あなたはわたしにその償いを求められました。 |
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四〇 我は是ありつ晝は暑に夜は寒に犯されて目も寐るの遑なく |
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四〇 わたしのことを言えば、昼は暑さに、夜は寒さに悩まされて、眠ることもできませんでした。 |
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四一 此二十年汝の家にありたり汝の二人の女の爲に十四年汝の群のために六年汝に事たり然に汝は十次もわが値を易たり |
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四一 わたしはこの二十年あなたの家族のひとりでありました。わたしはあなたのふたりの娘のために十四年、またあなたの群れのために六年、あなたに仕えましたが、あなたは十度もわたしの報酬を変えられました。 |
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四二 若わが父の~アブラハムの~イサクの畏む者我とともにいますにあらざれば汝今必ず我を空手にて去しめしならん~わが苦難とわが手の勞苦をかへりみて昨夜汝を責たまへるなり |
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四二 もし、わたしの父の神、アブラハムの神、イサクのかしこむ者がわたしと共におられなかったなら、あなたはきっとわたしを、から手で去らせたでしょう。神はわたしの悩みと、わたしの労苦とを顧みられて昨夜あなたを戒められたのです」。 |
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四三 ラバン應てヤコブに言けるは女等はわが女子等はわが子群はわが群汝が見る者は皆わが所屬なり我今日此わが女等とその生たる子等に何をなすをえんや |
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四三 ラバンは答えてヤコブに言った、「娘たちはわたしの娘、子どもたちはわたしの孫です。また群れはわたしの群れ、あなたの見るものはみなわたしのものです。これらのわたしの娘たちのため、また彼らが産んだ子どもたちのため、きょうわたしは何をすることができましょうか。 |
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四四 然ば來れ我と汝二人契約をむすび之を我と汝の間の證憑となすべし |
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四四 さあ、それではわたしとあなたと契約を結んで、これをわたしとあなたとの間の証拠としましょう」。 |
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四五 是に於てヤコブ石を執りこれを建て柱となせり |
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四五 そこでヤコブは石を取り、それを立てて柱とした。 |
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四六 ヤコブ又その兄弟等に石をあつめよといひければ即ち石をとりて垤を成れり斯て彼等彼處にて垤の上に食す |
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四六 ヤコブはまた一族の者に言った、「石を集めてください」。彼らは石を取って、一つの石塚を造った。こうして彼らはその石塚のかたわらで食事をした。 |
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四七 ラパン之をヱガルサハドタ(證憑の垤)と名けヤコブ之をギレアデ(證憑の垤)と名けたり |
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四七 ラバンはこれをエガル・サハドタと名づけ、ヤコブはこれをガルエドと名づけた。 |
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四八 ラバン此垤今日われとなんぢの間の證憑たりといひしによりて其名はギレアデと稱らる |
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四八 そしてラバンは言った、「この石塚はきょうわたしとあなたとの間の証拠となります」。それでその名はガルエドと呼ばれた。 |
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四九 又ミヅパ(觀望樓)と稱らる其は彼我等が互にわかるゝに及べる時ねがはくはヱホバ我と汝の間を監みたまへといひたればなり |
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四九 またミズパとも呼ばれた。彼がこう言ったからである、「われわれが互に別れたのちも、どうか主がわたしとあなたとの間を見守られるように。 |
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五〇 彼又いふ汝もしわが女をなやまし或はわが女のほかに妻をめとらば人の我らと偕なる者なきも~我と汝のあひだにいまして證をなしたまふ |
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五〇 もしあなたがわたしの娘を虐待したり、わたしの娘のほかに妻をめとることがあれば、たといそこにだれひとりいなくても、神はわたしとあなたとの間の証人でいらせられる」。 |
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五一 ラバン又ヤコブにいふ我われとなんぢの間にたてたる此垤を視よ柱をみよ |
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五一 更にラバンはヤコブに言った、「あなたとわたしとの間にわたしが建てたこの石塚をごらんなさい、この柱をごらんなさい。 |
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五二 此垤證とならん柱證とならん我この垤を越て汝を害せじ汝この垤この柱を越て我を害せざれ |
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五二 この石塚を越えてわたしがあなたに害を加えず、またこの石塚とこの柱を越えてあなたがわたしに害を加えないように、どうかこの石塚があかしとなり、この柱があかしとなるように。 |
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五三 アブラハムの~ナホルの~彼等の父の~われらの間を鞫きたまへとヤコブ乃ちその父イサクの畏む者をさして誓ヘり |
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五三 どうかアブラハムの神、ナホルの神、彼らの父の神がわれわれの間をさばかれるように」。ヤコブは父イサクのかしこむ者によって誓った。 |
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五四 斯てヤコブ山にて犧牲をさゝげその兄弟を招きてパンを食しむ彼等パンを食て山に宿れり |
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五四 そしてヤコブは山で犠牲をささげ、一族を招いて、食事をした。彼らは食事をして山に宿った。 |
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五五 ラバン朝蚤に起き其孫と女に接吻して之を祝せりしかしてラバンゆきて某所にかへりぬ |
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五五 あくる朝ラバンは早く起き、孫と娘たちに口づけして彼らを祝福し、去って家に帰った。 |
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32章 |
一 玆にヤコブその途に進みしが~の使者これにあふ |
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一 さて、ヤコブが旅路に進んだとき、神の使たちが彼に会った。 |
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二 ヤコブこれを見て是は~の陣營なりといひてその處の名をマハナイム(二營)となづけたり |
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二 ヤコブは彼らを見て、「これは神の陣営です」と言って、その所の名をマハナイムと名づけた。 |
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三 かくてヤコブ己より前に使者をつかはしてセイルの地エドムの野にをる其兄エサウの所にいたらしむ |
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三 ヤコブはセイルの地、エドムの野に住む兄エサウのもとに、さきだって使者をつかわした。 |
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四 即ち之に命じて言ふ汝等かくわが主エサウにいふべし汝の僕ヤコブ斯いふ我ラバンの所に寄寓て今までとゞまれり |
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四 すなわちそれに命じて言った、「あなたがたはわたしの主人エサウにこう言いなさい、『あなたのしもべヤコブはこう言いました。わたしはラバンのもとに寄留して今までとどまりました。 |
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五 我牛驢馬羊僕婢あり人をつかはしてわが主に吿ぐ汝の前に恩をえんことを願ふなりと |
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五 わたしは牛、ろば、羊、男女の奴隷を持っています。それでわが主に申し上げて、あなたの前に恵みを得ようと人をつかわしたのです』」。 |
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六 使者ヤコブにかへりて言けるは我等汝の兄エサウの許に至れり彼四百人をしたがへて汝をむかへんとて來ると |
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六 使者はヤコブのもとに帰って言った、「わたしたちはあなたの兄エサウのもとへ行きました。彼もまたあなたを迎えようと四百人を率いてきます」。 |
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七 是によりヤコブ大におそれ且くるしみ己とともにある人衆および羊と牛と駱駝を二隊にわかちて |
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七 そこでヤコブは大いに恐れ、苦しみ、共にいる民および羊、牛、らくだを二つの組に分けて、 |
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八 言けるはエサウもし一の隊に來りて之をうたば遺れるところの一隊逃るべし |
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八 言った、「たとい、エサウがきて、一つの組を撃っても、残りの組はのがれるであろう」。 |
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九 ヤコブまた言けるはわが父アブラハムの~わが父イサクの~ヱホバよ汝甞て我につげて汝の國にかへり汝の親族に到れ我なんぢを善せんといひたまへり |
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九 ヤコブはまた言った、「父アブラハムの神、父イサクの神よ、かつてわたしに『おまえの国へ帰り、おまえの親族に行け。わたしはおまえを恵もう』と言われた主よ、 |
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一〇 我はなんぢが僕にほどこしたまひし恩惠と眞實を一も受るにたらざるなり我わが杖のみを持てこのヨルダンを濟りしが今は二隊とも成にいたれり |
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一〇 あなたがしもべに施されたすべての恵みとまことをわたしは受けるに足りない者です。わたしは、つえのほか何も持たないでこのヨルダンを渡りましたが、今は二つの組にもなりました。 |
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一一 願くはわが兄の手よりエサウの手より我をすくひいだしたまへ我彼をおそる恐くは彼きたりて我をうち母と子とに及ばん |
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一一 どうぞ、兄エサウの手からわたしをお救いください。わたしは彼がきて、わたしを撃ち、母や子供たちにまで及ぶのを恐れます。 |
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一二 汝は甞て我かならず汝を惠み汝の子孫を濱の沙の多して數ふべからざるが如くなさんといひたまへりと |
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一二 あなたは、かつて、『わたしは必ずおまえを恵み、おまえの子孫を海の砂の数えがたいほど多くしよう』と言われました」。 |
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一三 彼その夜彼處に宿りその手にいりし物の中より兄エサウへの禮物をえらべり |
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一三 彼はその夜そこに宿り、持ち物のうちから兄エサウへの贈り物を選んだ。 |
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一四 即ち牝山羊二百牡山羊二十牝羊二百牡羊二十 |
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一四 すなわち雌やぎ二百、雄やぎ二十、雌羊二百、雄羊二十、 |
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一五 乳駱駝と其子三十牝牛四十牡牛十牝の驢馬二十驢馬の子十 |
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一五 乳らくだ三十とその子、雌牛四十、雄牛十、雌ろば二十、雄ろば十。 |
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一六 而して其群と群とをわかちて之を僕の手に授し僕にいひけるは吾に先ちて進み群と群との間を隔おくべし |
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一六 彼はこれらをそれぞれの群れに分けて、しもべたちの手にわたし、しもべたちに言った、「あなたがたはわたしの先に進みなさい、そして群れと群れとの間には隔たりをおきなさい」。 |
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一七 又その前者に命じて言けるはわが兄エサウ汝にあひ汝に問て汝は誰の人にして何處にゆくや是汝のまへなる者は誰の所有なるやといはば |
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一七 また先頭の者に命じて言った、「もし、兄エサウがあなたに会って『だれのしもべで、どこへ行くのか。あなたの前にあるこれらのものはだれの物か』と尋ねたら、 |
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一八 汝の僕ヤコブの所有にしてわが主エサウにたてまつる禮物なり視よ彼もわれらの後にをるといふべしと |
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一八 『あなたのしもべヤコブの物で、わが主エサウにおくる贈り物です。彼もわたしたちのうしろにおります』と言いなさい」。 |
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一九 彼かく第二の者第三の者および凡て群々にしたがひゆく者に命じていふ汝等エサウにあふ時はかくの如く之にいふべし |
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一九 彼は第二の者にも、第三の者にも、また群れ群れについて行くすべての者にも命じて言った、「あなたがたがエサウに会うときは、同じように彼に告げて、 |
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二〇 且汝等いへ視よなんぢの僕ヤコブわれらの後にをるとヤコブおもへらく我わが前におくる禮物をもて彼を和めて然るのち其面を覿ん然ば彼われを接遇ることあらんと |
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二〇 『あなたのしもべヤコブもわれわれのうしろにおります』と言いなさい」。ヤコブは、「わたしがさきに送る贈り物をもってまず彼をなだめ、それから、彼の顔を見よう。そうすれば、彼はわたしを迎えてくれるであろう」と思ったからである。 |
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二一 是によりて禮物かれに先ちて行く彼は其夜陣營の中に宿りしが |
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二一 こうして贈り物は彼に先立って渡り、彼はその夜、宿営にやどった。 |
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二二 其夜おきいでて二人の妻と二人の仕女および十一人の子を導きてヤボクの渡をわたれり |
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二二 彼はその夜起きて、ふたりの妻とふたりのつかえめと十一人の子どもとを連れてヤボクの渡しをわたった。 |
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二三 即ち彼等をみちびきて川を渉らしめ又その有る物を渡せり |
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二三 すなわち彼らを導いて川を渡らせ、また彼の持ち物を渡らせた。 |
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二四 而してヤコブ一人遺りしが人ありて夜の明るまで之と角力す |
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二四 ヤコブはひとりあとに残ったが、ひとりの人が、夜明けまで彼と組打ちした。 |
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二五 其人己のヤコブに勝ざるを見てヤコブの髀の樞骨に觸しかばヤコブの髀の樞骨其人と角力する時挫離たり |
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二五 ところでその人はヤコブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人と組打ちするあいだにはずれた。 |
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二六 其人夜明んとすれば我をさらしめよといひければヤコブいふ汝われを祝せずばさらしめずと |
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二六 その人は言った、「夜が明けるからわたしを去らせてください」。ヤコブは答えた、「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」。 |
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二七 是に於て其人かれにいふ汝の名は何なるや彼いふヤコブなり |
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二七 その人は彼に言った、「あなたの名はなんと言いますか」。彼は答えた、「ヤコブです」。 |
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二八 其人いひけるは汝の名は重てヤコブととなふべからずイスラエルととなふべし共は汝~と人とに力をあらそひて勝たればなりと |
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二八 その人は言った、「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです」。 |
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二九 ヤコブ問て請ふ汝の名を吿よといひければ其人何故にわが名をとふやといひて乃ち其處にて之を祝せり |
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二九 ヤコブは尋ねて言った、「どうかわたしにあなたの名を知らせてください」。するとその人は、「なぜあなたはわたしの名をきくのですか」と言ったが、その所で彼を祝福した。 |
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三〇 是を以てヤコブその處の名をペニエル(~の面)となづけて曰ふ我面と面をあはせて~とあひ見てわが生命なほ存るなりと |
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三〇 そこでヤコブはその所の名をペニエルと名づけて言った、「わたしは顔と顔をあわせて神を見たが、なお生きている」。 |
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三一 斯て彼日のいづる時にペニエルを過たりしが其髀のために歩行はかどらざりき |
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三一 こうして彼がペニエルを過ぎる時、日は彼の上にのぼったが、彼はそのもものゆえに歩くのが不自由になっていた。 |
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三二 是故にイスラエルの子孫は今日にいたるまで髀の樞の巨筋を食はず是彼人がヤコブの髀の巨筋に觸たるによりてなり |
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三二 そのため、イスラエルの子らは今日まで、もものつがいの上にある腰の筋を食べない。かの人がヤコブのもものつがい、すなわち腰の筋にさわったからである。 |
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33章 |
一 爰にヤコブ目をあげて視にエサウ四百人をひきゐて來しかば即ち子等を分ちてレアとラケルと二人の仕女とに付し |
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一 さてヤコブは目をあげ、エサウが四百人を率いて来るのを見た。そこで彼は子供たちを分けてレアとラケルとふたりのつかえめとにわたし、 |
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二 仕女とその子等を前におきレアとその子等を次におきラケルとヨセフを後におきて |
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二 つかえめとその子供たちをまっ先に置き、レアとその子供たちを次に置き、ラケルとヨセフを最後に置いて、 |
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三 自彼等の前に進み七度身を地にかゞめて遂に兄に近づきけるに |
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三 みずから彼らの前に進み、七たび身を地にかがめて、兄に近づいた。 |
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四 エサウ趨てこれを迎へ抱きてその頸をかゝへて之に接吻すしかして二人ともに啼泣り |
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四 するとエサウは走ってきて迎え、彼を抱き、そのくびをかかえて口づけし、共に泣いた。 |
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五 エサウ目をあげて婦人と子等を見ていひけるは是等の汝とともなる者は誰なるやヤコブいひけるは~が僕に授たまひし子なりと |
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五 エサウは目をあげて女と子供たちを見て言った、「あなたと一緒にいるこれらの者はだれですか」。ヤコブは言った、「神がしもべに授けられた子供たちです」。 |
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六 時に仕女等その子とともに近よりて拜し |
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六 そこでつかえめたちはその子供たちと共に近寄ってお辞儀した。 |
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七 レアも亦その子とともに近よりて拜す其後にヨセフとラケルちかよりて拜す |
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七 レアもまたその子供たちと共に近寄ってお辞儀し、それからヨセフとラケルが近寄ってお辞儀した。 |
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八 エサウ又いひけるは我あへる此ゥの群は何のためなるやヤコブいふ主の目の前に恩を獲んがためなり |
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八 するとエサウは言った、「わたしが出会ったあのすべての群れはどうしたのですか」。ヤコブは言った、「わが主の前に恵みを得るためです」。 |
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九 エサウいひけるは弟よわが有ところの者は足り汝の所有は汝自ら之を有てよ |
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九 エサウは言った、「弟よ、わたしはじゅうぶんもっている。あなたの物はあなたのものにしなさい」。 |
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一〇 ヤコブいひけるは否我もし汝の目の前に恩をえたらんには請ふわが手よりこの禮物を受よ我汝の面をみるに~の面をみるがごとくなり汝また我をよろこぶ |
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一〇 ヤコブは言った、「いいえ、もしわたしがあなたの前に恵みを得るなら、どうか、わたしの手から贈り物を受けてください。あなたが喜んでわたしを迎えてくださるので、あなたの顔を見て、神の顔を見るように思います。 |
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一一 ~我をめぐみたまひて我が有ところの者足りされば請ふわが汝にたてまつる禮物を受よと彼に强ければ終に受たり |
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一一 どうかわたしが持ってきた贈り物を受けてください。神がわたしを恵まれたので、わたしはじゅうぶんもっていますから」。こうして彼がしいたので、彼は受け取った。 |
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一二 エサウいひけるは我等いでたちてゆかん我汝にさきだつべし |
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一二 そしてエサウは言った、「さあ、立って行こう。わたしが先に行く」。 |
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一三 ヤコブ彼にいひけるは主のしりたまふごとく子等は幼弱し又子を持る羊と牛と我にしたがふ若一日これを驅すごさば群みな死ん |
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一三 ヤコブは彼に言った、「ごぞんじのように、子供たちは、かよわく、また乳を飲ませている羊や牛をわたしが世話をしています。もし一日でも歩かせ過ぎたら群れはみな死んでしまいます。 |
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一四 請ふわが主僕にさきだちて進みたまへ我はわが前にゆくところの家畜と子女の足にまかせて徐に導きすゝみセイルにてわが主に詣らん |
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一四 わが主よ、どうか、しもべの先においでください。わたしはわたしの前にいる家畜と子供たちの歩みに合わせて、ゆっくり歩いて行き、セイルでわが主と一緒になりましょう」。 |
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一五 エサウいひけるは然ば我わがひきゐる人數人を汝の所にのこさんヤコブいひけるは何ぞ此を須んや我をして主の目のまへに恩を得せしめよ |
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一五 エサウは言った、「それならわたしが連れている者どものうち幾人かをあなたのもとに残しましょう」。ヤコブは言った、「いいえ、それには及びません。わが主の前に恵みを得させてください」。 |
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一六 是に於てエサウは此日その途にしたがひてセイルに還りぬ |
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一六 その日エサウはセイルへの帰途についた。 |
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一七 斯てヤコブ、スコテに進みて己のために家を建て又家畜のために廬を作れり是によりて其處の名をスコテ(廬)といふ |
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一七 ヤコブは立ってスコテに行き、自分のために家を建て、また家畜のために小屋を造った。これによってその所の名はスコテと呼ばれている。 |
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一八 ヤコブ、パダンアラムより來りて恙なくカナンの地にあるシケムの邑に至り邑の前にその天幕を張り |
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一八 こうしてヤコブはパダンアラムからきて、無事カナンの地のシケムの町に着き、町の前に宿営した。 |
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一九 遂に其天幕をはりしところの野をシケムの父ハモルの子等の手より金百枚にて購とり |
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一九 彼は天幕を張った野の一部をシケムの父ハモルの子らの手から百ケシタで買い取り、 |
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二〇 彼處に壇をきづきて之をエル、エロヘ、イスラエル(イスラエルの~なる~)となづけたり |
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二〇 そこに祭壇を建てて、これをエル・エロヘ・イスラエルと名づけた。 |
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34章 |
一 レアのヤコブに生たる女デナその國の婦女を見んとていでゆきしが |
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一 レアがヤコブに産んだ娘デナはその地の女たちに会おうと出かけて行ったが、 |
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二 その國の君主なるヒビ人ハモルの子シケムこれを見て之をひきいれこれと寢てこれを辱しむ |
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二 その地のつかさ、ヒビびとハモルの子シケムが彼女を見て、引き入れ、これと寝てはずかしめた。 |
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三 而してその心ふかくヤコブの女デナを戀ひて彼此女を愛しこの女の心をいひなだむ |
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三 彼は深くヤコブの娘デナを慕い、この娘を愛して、ねんごろに娘に語った。 |
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四 斯てシケムその父ハモルに語り此少き女をわが妻に獲よといへり |
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四 シケムは父ハモルに言った、「この娘をわたしの妻にめとってください」。 |
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五 ヤコブ彼がその女子デナを汚したることを聞しかどもその子等家畜を牧て野にをりしによりて其かへるまでヤコブ默しゐたり |
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五 さてヤコブはシケムが、娘デナを汚したことを聞いたけれども、その子らが家畜を連れて野にいたので、彼らの帰るまで黙っていた。 |
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六 シケムの父ハモル、ヤコブの許にいできたりて之と語らふ |
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六 シケムの父ハモルはヤコブと話し合おうと、ヤコブの所に出てきた。 |
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七 玆にヤコブの子等野より來りしが之を聞しかば其人々憂へかつ甚く怒れり是はシケムがヤコブの女と寢てイスラエルに愚なる事をなしたるに困り是のごとき事はなすべからざる者なればなり |
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七 ヤコブの子らは野から帰り、この事を聞いて、悲しみ、かつ非常に怒った。シケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルに愚かなことをしたためで、こんなことは、してはならぬ事だからである。 |
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八 ハモル彼等に語りていひけるはわが子シケム心になんぢの女を戀ふねがはくは彼をシケムにあたへて妻となさしめよ |
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八 ハモルは彼らと語って言った、「わたしの子シケムはあなたがたの娘を心に慕っています。どうか彼女を彼の妻にください。 |
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九 汝ら我らと婚姻をなし汝らの女を我らにあたへ我らの女を汝らに娶れ |
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九 あなたがたはわたしたちと婚姻し、あなたがたの娘をわたしたちに与え、わたしたちの娘をあなたがたにめとってください。 |
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一〇 かくして汝等われらとともに居るべし地は汝等の前にあり此に住て貿易をなし此にて產業を獲よ |
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一〇 こうしてあなたがたとわたしたちとは一緒に住みましょう。地はあなたがたの前にあります。ここに住んで取引し、ここで財産を獲なさい」。 |
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一一 シケム又デナの父と兄弟等にいひけるは我をして汝等の目のまへに恩を獲せしめよ汝らが我にいふところの者は我あたへん |
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一一 シケムはまたデナの父と兄弟たちとに言った、「あなたがたの前に恵みを得させてください。あなたがたがわたしに言われるものは、なんでもさしあげましょう。 |
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一二 いかに大なる聘物と禮物を要るも汝らがわれに言ふごとくあたへん唯この女を我にあたへて妻となさしめよ |
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一二 たくさんの結納金と贈り物とをお求めになっても、あなたがたの言われるとおりさしあげます。ただこの娘はわたしの妻にください」。 |
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一三 ヤコブの子等シケムとその父ハモルに詭りて答へたり即ちシケムがその妹デナを汚したるによりて |
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一三 しかし、ヤコブの子らはシケムが彼らの妹デナを汚したので、シケムとその父ハモルに偽って答え、 |
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一四 彼等これに語りていひけるは我等この事を爲あたはず割禮をうけざる者にわれらの妹をあたふるあたはず是われらの恥辱なればなり |
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一四 彼らに言った、「われわれは割礼を受けない者に妹をやる事はできません。それはわれわれの恥とするところですから。 |
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一五 然ど斯せば我等汝らに允さん若し汝らの中の男子みな割禮をうけてわれらの如くならば |
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一五 ただ、こうなさればわれわれはあなたがたに同意します。もしあなたがたのうち男子がみな割礼を受けて、われわれのようになるなら、 |
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一六 我等の女子を汝等にあたへ汝らの女子をわれらに娶り汝らと偕にをりて一の民とならん |
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一六 われわれの娘をあなたがたに与え、あなたがたの娘をわれわれにめとりましょう。そしてわれわれはあなたがたと一緒に住んで一つの民となりましょう。 |
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一七 汝等もし我等に聽ずして割禮をうけずば我等女子をとりて去べしと |
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一七 けれども、もしあなたがたがわれわれに聞かず、割礼を受けないなら、われわれは娘を連れて行きます」。 |
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一八 彼等の言ハモルとハモルの子シケムの心にかなへり |
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一八 彼らの言葉がハモルとハモルの子シケムとの心にかなったので、 |
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一九 此若き人ヤコブの女を愛するによりて其事をなすを遲せざりき彼はその父の家の中にて最貴れたる者なり |
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一九 若者は、ためらわずにこの事をした。彼がヤコブの娘を愛したからである。また彼は父の家のうちで一番重んじられた者であった。 |
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二〇 ハモルとその子シケム乃ちその邑の門にいたり邑の人々に語りていひけるは |
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二〇 そこでハモルとその子シケムとは町の門に行き、町の人々に語って言った、 |
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二一 是人々は我等と睦し彼等をして此地に住て此に貿易をなさしめよ地は廣くして彼らを容るにたるなり我ら彼らの女を妻にめとり我らの女をかれらに與へん |
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二一 「この人々はわれわれと親しいから、この地に住まわせて、ここで取引をさせよう。地は広く、彼らをいれるにじゅうぶんである。そしてわれわれは彼らの娘を妻にめとり、われわれの娘を彼らに与えよう。 |
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二二 若唯われらの中の男子みな彼らが割禮をうくるごとく割禮を受なば此人々われらに聽てわれらと偕にをり一の民となるべし |
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二二 彼らが割礼を受けているように、もしわれわれのうちの男子が皆、割礼を受けるなら、ただこの事だけで、この人々はわれわれに同意し、われわれと一緒に住んで一つの民となるのだ。 |
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二三 然ばかれらの家畜と財產と其ゥの畜は我等が所有となるにあらずや只かれらに聽んしからば彼らわれらとともにをるべしと |
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二三 そうすれば彼らの家畜と財産とすべての獣とは、われわれのものとなるではないか。ただわれわれが彼らに同意すれば、彼らはわれわれと一緒に住むであろう」。 |
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二四 邑の門に出入する者みなハモルとその子シケムに聽したがひ邑の門に出入する男子皆割禮を受たり |
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二四 そこで町の門に出入りする者はみなハモルとその子シケムとに聞き従って、町の門に出入りするすべての男子は割礼を受けた。 |
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二五 斯て三日におよび彼等その痛をおぼゆる時ヤコブの子二人即ちデナの兄弟なるシメオンとレビ各劍をとり往て思よらざる時に邑を襲ひ男子を悉く殺し |
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二五 三日目になって彼らが痛みを覚えている時、ヤコブのふたりの子、すなわちデナの兄弟シメオンとレビとは、おのおのつるぎを取って、不意に町を襲い、男子をことごとく殺し、 |
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二六 利刃をもてハモルとその子シケムをころしシケムの家よりデナを携へいでたり |
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二六 またつるぎの刃にかけてハモルとその子シケムとを殺し、シケムの家からデナを連れ出した。 |
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二七 而してヤコブの子等ゆきて其殺されし者を剝ぎ其邑をかすめたり是彼等がその妹を汚したるによりてなり |
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二七 そしてヤコブの子らは殺された人々をはぎ、町をかすめた。彼らが妹を汚したからである。 |
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二八 またその羊と牛と驢馬およびその邑にある者と野にある者 |
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二八 すなわち羊、牛、ろば及び町にあるものと、野にあるもの、 |
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二九 並にそのゥの貨財を奪ひその子女と妻等を悉く擄にし家の中の物を悉く掠めたり |
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二九 並びにすべての貨財を奪い、その子女と妻たちを皆とりこにし、家の中にある物をことごとくかすめた。 |
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三〇 ヤコブ、シメオンとレビに言けるは汝等我を累はし我をして此國の人即ちカナン人とペリジ人の中に避嫌れしむ我は數すくなければ彼ら集りて我をせめ我をころさん然ば我とわが家滅さるべし |
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三〇 そこでヤコブはシメオンとレビとに言った、「あなたがたはわたしをこの地の住民、カナンびととペリジびとに忌みきらわせ、わたしに迷惑をかけた。わたしは、人数が少ないから、彼らが集まってわたしを攻め撃つならば、わたしも家族も滅ぼされるであろう」。 |
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三一 彼等いふ彼豈われらの妹を娼妓のごとくしてよからんや |
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三一 彼らは言った、「わたしたちの妹を遊女のように彼が扱ってよいのですか」。 |
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35章 |
一 玆に~ヤコブに言たまひけるは起てベテルにのぼりて彼處に居り汝が昔に兄エサウの面をさけて逃る時に汝にあらはれし~に彼處にて壇をきづけと |
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一 ときに神はヤコブに言われた、「あなたは立ってベテルに上り、そこに住んで、あなたがさきに兄エサウの顔を避けてのがれる時、あなたに現れた神に祭壇を造りなさい」。 |
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二 ヤコブ乃ちその家人および凡て己とともなる者にいふ汝等の中にある異~を棄て身をCめて衣服を易よ |
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二 ヤコブは、その家族および共にいるすべての者に言った、「あなたがたのうちにある異なる神々を捨て、身を清めて着物を着替えなさい。 |
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三 我等起てベテルにのぼらん彼處にて我わが苦患の日に我に應へわが往ところの途にて我とともに在せし~に壇をきづくべし |
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三 われわれは立ってベテルに上り、その所でわたしの苦難の日にわたしにこたえ、かつわたしの行く道で共におられた神に祭壇を造ろう」。 |
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四 是に於て彼等その手にある異~およびその耳にある耳環を盡くヤコブに與しかばヤコブこれをシケムの邊なる橡樹の下に埋たり |
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四 そこで彼らは持っている異なる神々と、耳につけている耳輪をことごとくヤコブに与えたので、ヤコブはこれをシケムのほとりにあるテレビンの木の下に埋めた。 |
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五 斯て彼等いでたちしが~其四周の邑々をして懼れしめたまひければヤコブの子の後を追ふ者なかりき |
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五 そして彼らは、いで立ったが、大いなる恐れが周囲の町々に起ったので、ヤコブの子らのあとを追う者はなかった。 |
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六 ヤコブ及び之と共なるゥの人遂にカナンの地にあるルズに至る是即ちベテルなり |
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六 こうしてヤコブは共にいたすべての人々と一緒にカナンの地にあるルズ、すなわちベテルにきた。 |
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七 彼かしこに壇をきづき其處をエルベテルと名けたり是は兄の面をさけて逃る時に~此にて己にあらはれ給しによりてなり |
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七 彼はそこに祭壇を築き、その所をエル・ベテルと名づけた。彼が兄の顔を避けてのがれる時、神がそこで彼に現れたからである。 |
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八 時にリベカの乳媼デボラ死たれば之をベテルの下にて橡樹の下に葬れり是によりてその樹の名をアロンバクテ(哀哭の橡)といふ |
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八 時にリベカのうばデボラが死んで、ベテルのしもの、かしの木の下に葬られた。これによってその木の名をアロン・バクテと呼ばれた。 |
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九 ヤコブ、パダンアラムより歸りし時~復これにあらはれて之を祝したまふ |
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九 さてヤコブがパダンアラムから帰ってきた時、神は再び彼に現れて彼を祝福された。 |
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一〇 ~かれに言たまはく汝の名はヤコブといふ汝の名は重てヤコブとよぶべからずイスラエルを汝の名とすべしとその名をイスラエルと稱たまふ |
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一〇 神は彼に言われた、「あなたの名はヤコブである。しかしあなたの名をもはやヤコブと呼んではならない。あなたの名をイスラエルとしなさい」。こうして彼をイスラエルと名づけられた。 |
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一一 ~また彼にいひたまふ我は全能の~なり生よ殖よ國民および多の國民汝よりいで又王等なんぢの腰よりいでん |
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一一 神はまた彼に言われた、/「わたしは全能の神である。あなたは生めよ、またふえよ。一つの国民、また多くの国民があなたから出て、/王たちがあなたの身から出るであろう。 |
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一二 わがアブラハムおよびイサクに與し地は我これを汝にあたへん我なんぢの後の子孫にその地をあたふべしと |
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一二 わたしはアブラハムとイサクとに与えた地を、/あなたに与えよう。またあなたの後の子孫にその地を与えよう」。 |
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一三 ~かれと言たまひし處より彼をはなれて昇りたまふ |
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一三 神は彼と語っておられたその場所から彼を離れてのぼられた。 |
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一四 是に於てヤコブ~の己と言いひたまひし處に柱すなはち石の柱を立て其上に酒を灌ぎまたその上に膏を沃げり |
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一四 そこでヤコブは神が自分と語られたその場所に、一本の石の柱を立て、その上に灌祭をささげ、また油を注いだ。 |
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一五 而してヤコブ~の己とものいひたまひし處の名をベテルとなづけたり |
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一五 そしてヤコブは神が自分と語られたその場所をベテルと名づけた。 |
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一六 かくてヤコブ等ベテルよりいでたちしがエフラタに至るまでは尙路の隔ある處にてラケル產にのぞみその產おもかりき |
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一六 こうして彼らはベテルを立ったが、エフラタに行き着くまでに、なお隔たりのある所でラケルは産気づき、その産は重かった。 |
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一七 彼難產にのぞめる時產婆之にいひけるは懼るなかれ汝また此男の子を得たり |
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一七 その難産に当って、産婆は彼女に言った、「心配することはありません。今度も男の子です」。 |
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一八 彼死にのぞみてその魂さらんとする時その子の名をベノニ(吾苦痛の子)と呼たり然ど其父これをベニヤミン(右手の子)となづけたり |
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一八 彼女は死にのぞみ、魂の去ろうとする時、子の名をベノニと呼んだ。しかし、父はこれをベニヤミンと名づけた。 |
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一九 ラケル死てエフラタの途に葬らる是即ちベテレヘムなり |
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一九 ラケルは死んでエフラタ、すなわちベツレヘムの道に葬られた。 |
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二〇 ヤコブその墓に柱を立たり是はラケルの墓の柱といひて今日まで在り |
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二〇 ヤコブはその墓に柱を立てた。これはラケルの墓の柱であって、今日に至っている。 |
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二一 イスラエル復いでたちてエダルの塔の外にその天幕を張り |
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二一 イスラエルはまた、いで立ってミグダル・エダルの向こうに天幕を張った。 |
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二二 イスラエルかの地に住る時にルベン往て父の妾ビルハと寢たりイスラエルこれを聞く夫ヤコブの子は十二人なり |
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二二 イスラエルがその地に住んでいた時、ルベンは父のそばめビルハのところへ行って、これと寝た。イスラエルはこれを聞いた。さてヤコブの子らは十二人であった。 |
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二三 即ちレアの子はヤコブの長子ルベンおよびシメオン、レビ、ユダ、イツサカル、ゼブルンなり |
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二三 すなわちレアの子らはヤコブの長子ルベンとシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン。 |
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二四 ラケルの子はヨセフとベニヤミンなり |
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二四 ラケルの子らはヨセフとベニヤミン。 |
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二五 ラケルの仕女ビルハの子はダンとナフタリなり |
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二五 ラケルのつかえめビルハの子らはダンとナフタリ。 |
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二六 レアの仕女ジルパの子はガドとアセルなり是等はヤコブの子にしてパダンアラムにて彼に生れたる者なり |
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二六 レアのつかえめジルパの子らはガドとアセル。これらはヤコブの子らであって、パダンアラムで彼に生れた者である。 |
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二七 ヤコブ、キリアテアルバのマムレにゆきてその父イサクに至れり是すなはちヘブロンなり彼處はアブラハムとイサクの寄寓しところなり |
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二七 ヤコブはキリアテ・アルバ、すなわちヘブロンのマムレにいる父イサクのもとへ行った。ここはアブラハムとイサクとが寄留した所である。 |
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二八 イサクの齡は百八十歲なりき |
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二八 イサクの年は百八十歳であった。 |
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二九 イサク老て年滿ち氣息たえ死にて其民にくはゝれりその子エサウとヤコブ之をはうむる |
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二九 イサクは年老い、日満ちて息絶え、死んで、その民に加えられた。その子エサウとヤコブとは、これを葬った。 |
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36章 |
一 エサウの傳はかくのごとしエサウはすなはちエドムなり |
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一 エサウ、すなわちエドムの系図は次のとおりである。 |
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二 エサウ、カナンの女の中より妻をめとれり即ちヘテ人エロンの女アダおよびヒビ人ヂベオンの女なるアナの女アホリバマ是なり |
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二 エサウはカナンの娘たちのうちから妻をめとった。すなわちヘテびとエロンの娘アダと、ヒビびとヂベオンの子アナの娘アホリバマとである。 |
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三 又イシマエルの女ネバヨテの妹バスマテをめとれり |
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三 また、イシマエルの娘ネバヨテの妹バスマテをめとった。 |
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四 アダはエリパズをエサウに生みバスマテはリウエルを生み |
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四 アダはエリパズをエサウに産み、バスマテはリウエルを産み、 |
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五 アホリバマはヱウシ、ヤラムおよびコラを生り是等はエサウの子にしてカナンの地に於て彼に生れたる者なり |
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五 アホリバマはエウシ、ヤラム、コラを産んだ。これらはエサウの子であって、カナンの地で彼に生れた者である。 |
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六 エサウその妻と子女およびその家のゥの人並に家畜とゥの畜類およびそのカナンの地にて獲たるゥの物を挈へて弟ヤコブをはなれて他の地にゆけり |
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六 エサウは妻と子と娘と家のすべての人、家畜とすべての獣、またカナンの地で獲たすべての財産を携え、兄弟ヤコブを離れてほかの地へ行った。 |
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七 其は二人の富有多くして俱にをるあたはざればなり彼らが寄寓しところの地はかれらの家畜のためにかれらを容るをえざりき |
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七 彼らの財産が多くて、一緒にいることができなかったからである。すなわち彼らが寄留した地は彼らの家畜のゆえに、彼らをささえることができなかったのである。 |
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八 是に於てエサウ、セイル山に住りエサウはすなはちエドムなり |
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八 こうしてエサウはセイルの山地に住んだ。エサウはすなわちエドムである。 |
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九 セイル山にをりしエドミ人の先祖エサウの傳はかくのごとし |
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九 セイルの山地におったエドムびとの先祖エサウの系図は次のとおりである。 |
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一〇 エサウの子の名は左のごとしエサウの妻アダの子はエリパズ、エサウの妻バスマテの子はリウエル |
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一〇 エサウの子らの名は次のとおりである。すなわちエサウの妻アダの子はエリパズ。エサウの妻バスマテの子はリウエル。 |
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一一 エリパズの子はテマン、オマル、ゼポ、ガタムおよびケナズなり |
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一一 エリパズの子らはテマン、オマル、ゼポ、ガタム、ケナズである。 |
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一二 テムナはエサウの子エリパズの妾にしてアマレクをエリパズに生り是等はエサウの妻アダの子なり |
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一二 テムナはエサウの子エリパズのそばめで、アマレクをエリパズに産んだ。これらはエサウの妻アダの子らである。 |
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一三 リウエルの子は左のごとしナハテ、ゼラ、シヤンマおよびミザ是等はエサウの妻バスマテの子なり |
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一三 リウエルの子らは次のとおりである。すなわちナハテ、ゼラ、シャンマ、ミザであって、これらはエサウの妻バスマテの子らである。 |
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一四 ヂベオンの女なるアナの女にしてエサウの妻なるアホリバマの子は左のごとし彼ヱウシ、ヤラムおよびコラをエサウに生り |
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一四 ヂベオンの子アナの娘で、エサウの妻アホリバマの子らは次のとおりである。すなわち彼女はエウシ、ヤラム、コラをエサウに産んだ。 |
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一五 エサウの子孫の侯たる者は左のごとしエサウの冢子エリパズの子にはテマン候オマル侯ゼポ侯ケナズ侯 |
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一五 エサウの子らの中で、族長たる者は次のとおりである。すなわちエサウの長子エリパズの子らはテマンの族長、オマルの族長、ゼポの族長、ケナズの族長、 |
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一六 コラ侯ガタム侯アマレク侯是等はエリパズよりいでたる侯にしてエドムの地にありき是等はアダの子なり |
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一六 コラの族長、ガタムの族長、アマレクの族長である。これらはエリパズから出た族長で、エドムの地におった。これらはアダの子らである。 |
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一七 エサウの子リウエルの子は左のごとしナハテ侯ゼラ侯シヤンマ侯ミザ侯是等はリウエルよりいでたる侯にしてエドムの地にありき是等はエサウの妻バスマテの子なり |
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一七 エサウの子リウエルの子らは次のとおりである。すなわちナハテの族長、ゼラの族長、シャンマの族長、ミザの族長。これらはリウエルから出た族長で、エドムの地におった。これらはエサウの妻バスマテの子らである。 |
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一八 エサウの妻アホリバマの子は左のごとしヱウシ侯ヤラム侯コラ侯是等はアナの女にしてエサウの妻なるアホリバマよりいでたる侯なり |
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一八 エサウの妻アホリバマの子らは次のとおりである。すなわちエウシの族長、ヤラムの族長、コラの族長。これらはアナの娘で、エサウの妻アホリバマから出た族長である。 |
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一九 是等はエサウすなはちエドムの子孫にしてその侯たる者なり |
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一九 これらはエサウすなわちエドムの子らで、族長たる者である。 |
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二〇 素より此地に住しホリ人セイルの子は左のごとしロタン、シヨバル、ヂベオン、アナ |
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二〇 この地の住民ホリびとセイルの子らは次のとおりである。すなわちロタン、ショバル、ヂベオン、アナ、 |
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二一 デシヨン、エゼル、デシヤン是等はセイルの子ホリ人の中の侯にしてエドムの地にあり |
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二一 デション、エゼル、デシャン。これらはセイルの子ホリびとから出た族長で、エドムの地におった。 |
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二二 ロタンの子はホリ、ヘマムなりロタンの妹はテムナ |
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二二 ロタンの子らはホリ、ヘマムであり、ロタンの妹はテムナであった。 |
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二三 シヨバルの子は左のごとしアルワン、マナハテ、エバル、シポ、オナム |
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二三 ショバルの子らは次のとおりである。すなわちアルワン、マナハテ、エバル、シポ、オナム。 |
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二四 ヂベオンの子は左のごとし即ちアヤとアナ此アナその父ヂベオンの驢馬を牧をりし時曠野にて溫泉を發見り |
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二四 ヂベオンの子らは次のとおりである。すなわちアヤとアナ。このアナは父ヂベオンのろばを飼っていた時、荒野で温泉を発見した者である。 |
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二五 アナの子は左のごとしデシヨンおよびアホリバマ、アホリバマはアナの女なり |
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二五 アナの子らは次のとおりである。すなわちデションとアホリバマ。アホリバマはアナの娘である。 |
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二六 デシヨンの子は左のごとしヘムダン、エシバン、イテラン、ケラン |
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二六 デションの子らは次のとおりである。すなわちヘムダン、エシバン、イテラン、ケラン。 |
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二七 エゼルの子は左のごとしビルハン、ザワン、ヤカン |
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二七 エゼルの子らは次のとおりである。すなわちビルハン、ザワン、アカン。 |
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二八 デシヤンの子は左のごとしウヅ、アラン |
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二八 デシャンの子らは次のとおりである。すなわちウズとアラン。 |
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二九 ホリ人の侯たる者は左のごとしロタン侯シヨバル侯ヂベオン侯アナ侯 |
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二九 ホリびとから出た族長は次のとおりである。すなわちロタンの族長、ショバルの族長、ヂベオンの族長、アナの族長、 |
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三〇 デシヨン侯エゼル侯デシヤン侯是等はホリ人の侯にしてその所領にしたがひてセイルの地にあり |
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三〇 デションの族長、エゼルの族長、デシャンの族長。これらはホリびとから出た族長であって、その氏族に従ってセイルの地におった者である。 |
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三一 イスラエルの子孫を治むる王いまだあらざる前にエドムの地を治めたる王は左のごとし |
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三一 イスラエルの人々を治める王がまだなかった時、エドムの地を治めた王たちは次のとおりである。 |
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三二 ベオルの子ベラ、エドムに王たりそのキの名はデナバといふ |
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三二 ベオルの子ベラはエドムを治め、その都の名はデナバであった。 |
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三三 ベラ薨てボヅラのゼラの子ヨバブ之にかはりて王となる |
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三三 ベラが死んで、ボズラのゼラの子ヨバブがこれに代って王となった。 |
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三四 ヨバブ薨てテマン人の地のホシヤムこれにかはりて王となる |
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三四 ヨバブが死んで、テマンびとの地のホシャムがこれに代って王となった。 |
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三五 ホシヤム薨てベダデの子ハダデこれに代て王となる彼モアブの野にてミデアン人を擊しことあり其邑の名はアビテといふ |
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三五 ホシャムが死んで、ベダデの子ハダデがこれに代って王となった。彼はモアブの野でミデアンを撃った者である。その都の名はアビテであった。 |
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三六 ハダデ薨てマスレカのサムラこれにかはりて王となる |
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三六 ハダデが死んで、マスレカのサムラがこれに代って王となった。 |
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三七 サムラ薨て河の旁なるレホボテのサウル之にかはりて王となる |
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三七 サムラが死んでユフラテ川のほとりにあるレホボテのサウルがこれに代って王となった。 |
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三八 サウル薨てアクボルの子バアルハナンこれに代りて王となる |
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三八 サウルが死んでアクボルの子バアル・ハナンがこれに代って王となった。 |
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三九 アクボルの子バアルハナン薨てハダル之にかはりて王となる其キの名はパウといふその妻の名はメヘタベルといひてマテレデの女なりマテレデはメザハブの女なり |
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三九 アクボルの子バアル・ハナンが死んで、ハダルがこれに代って王となった。その都の名はパウであった。その妻の名はメヘタベルといって、メザハブの娘マテレデの娘であった。 |
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四〇 エサウよりいでたる侯の名はその宗族と居處と名に循ひていへば左のごとしテムナ侯アルワ侯エテテ侯 |
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四〇 エサウから出た族長の名は、その氏族と住所と名に従って言えば次のとおりである。すなわちテムナの族長、アルワの族長、エテテの族長、 |
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四一 アホリバマ侯エラ侯ピノン侯 |
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四一 アホリバマの族長、エラの族長、ピノンの族長、 |
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四二 ケナズ侯テマン侯ミブザル侯 |
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四二 ケナズの族長、テマンの族長、ミブザルの族長、 |
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四三 マグデエル侯イラム侯是等はエドムの侯にして其領地の居處によりて言る者なりエドミ人の先祖はエサウ是なり |
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四三 マグデエルの族長、イラムの族長。これらはエドムの族長たちであって、その領地内の住所に従っていったものである。エドムびとの先祖はエサウである。 |
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37章 |
一 ヤコブはカナンの地に住り即ちその父が寄寓し地なり |
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一 ヤコブは父の寄留の地、すなわちカナンの地に住んだ。 |
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二 ヤコブの傳は左のごとしヨセフ十七歲にしてその兄弟と偕に羊を牧ふヨセフは童子にしてその父の妻ビルハの子およびジルパの子と侶たりしが彼等の惡き事を父につぐ |
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二 ヤコブの子孫は次のとおりである。ヨセフは十七歳の時、兄弟たちと共に羊の群れを飼っていた。彼はまだ子供で、父の妻たちビルハとジルパとの子らと共にいたが、ヨセフは彼らの悪いうわさを父に告げた。 |
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三 ヨセフは老年子なるが故にイスラエルそのゥの兄弟よりも深くこれを愛しこれがために綵る衣を製れり |
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三 ヨセフは年寄り子であったから、イスラエルは他のどの子よりも彼を愛して、彼のために長そでの着物をつくった。 |
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四 その兄弟等父がそのゥの兄弟よりも深く彼を愛するを見て彼を惡み穩和に彼にものいふことを得せざりき |
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四 兄弟たちは父がどの兄弟よりも彼を愛するのを見て、彼を憎み、穏やかに彼に語ることができなかった。 |
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五 玆にヨセフ夢をみてその兄弟に吿ければ彼等愈これを惡めり |
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五 ある時、ヨセフは夢を見て、それを兄弟たちに話したので、彼らは、ますます彼を憎んだ。 |
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六 ヨセフ彼等にいひけるは請ふわが夢たる此夢を聽け |
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六 ヨセフは彼らに言った、「どうぞわたしが見た夢を聞いてください。 |
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七 我等田の中に禾束をむすび居たるにわが禾束おき且立り而して汝等の禾束環りたちてわが禾束を拜せり |
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七 わたしたちが畑の中で束を結わえていたとき、わたしの束が起きて立つと、あなたがたの束がまわりにきて、わたしの束を拝みました」。 |
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八 その兄弟等之にいひけるは汝眞にわれらの君となるや眞に我等ををさむるにいたるやとその夢とその言のためにuこれを惡めり |
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八 すると兄弟たちは彼に向かって、「あなたはほんとうにわたしたちの王になるのか。あなたは実際わたしたちを治めるのか」と言って、彼の夢とその言葉のゆえにますます彼を憎んだ。 |
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九 ヨセフ又一の夢をみて之をその兄弟に述ていひけるは我また夢をみたるに日と月と十一の星われを拜せりと |
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九 ヨセフはまた一つの夢を見て、それを兄弟たちに語って言った、「わたしはまた夢を見ました。日と月と十一の星とがわたしを拝みました」。 |
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一〇 則ちこれをその父と兄弟に述ければ父かれを戒めて彼にいふ汝が夢しこの夢は何ぞや我と汝の母となんぢの兄弟と實にゆきて地に鞠て汝を拜するにいたらんやと |
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一〇 彼はこれを父と兄弟たちに語ったので、父は彼をとがめて言った、「あなたが見たその夢はどういうのか。ほんとうにわたしとあなたの母と、兄弟たちとが行って地に伏し、あなたを拝むのか」。 |
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一一 斯しかばその兄弟かれを嫉めり然どその父はこの言をおぼえたり |
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一一 兄弟たちは彼をねたんだ。しかし父はこの言葉を心にとめた。 |
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一二 玆にその兄弟等シケムにゆきて父の羊を牧ゐたりしかば |
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一二 さて兄弟たちがシケムに行って、父の羊の群れを飼っていたとき、 |
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一三 イスラエル、ヨセフにいひけるは汝の兄弟はシケムにて羊を牧をるにあらずや來れ汝を彼等につかはさんヨセフ父にいふ我こゝにあり |
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一三 イスラエルはヨセフに言った、「あなたの兄弟たちはシケムで羊を飼っているではないか。さあ、あなたを彼らの所へつかわそう」。ヨセフは父に言った、「はい、行きます」。 |
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一四 父かれにいひけるは請ふ往て汝の兄弟と群の恙なきや否を見てかへりて我につげよと彼をヘブロンの谷より遣はしければ遂にシケムに至る |
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一四 父は彼に言った、「どうか、行って、あなたの兄弟たちは無事であるか、また群れは無事であるか見てきて、わたしに知らせてください」。父が彼をヘブロンの谷からつかわしたので、彼はシケムに行った。 |
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一五 或人かれに遇ふに彼野にさまよひをりしかば其人かれに問て汝何をたづぬるやといひければ |
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一五 ひとりの人が彼に会い、彼が野をさまよっていたので、その人は彼に尋ねて言った、「あなたは何を捜しているのですか」。 |
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一六 彼いふ我はわが兄弟等をたづぬ請ふかれらが羊をかひをる所をわれに吿よ |
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一六 彼は言った、「兄弟たちを捜しているのです。彼らが、どこで羊を飼っているのか、どうぞわたしに知らせてください」。 |
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一七 その人いひけるは彼等は此をされり我かれらがドタンにゆかんといふを聞たりと是に於てヨセフその兄弟の後をおひゆきドタンにて之に遇ふ |
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一七 その人は言った、「彼らはここを去りました。彼らが『ドタンへ行こう』と言うのをわたしは聞きました」。そこでヨセフは兄弟たちのあとを追って行って、ドタンで彼らに会った。 |
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一八 ヨセフの彼等に近かざる前に彼ら之を遙に見てこれを殺さんと謀り |
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一八 ヨセフが彼らに近づかないうちに、彼らははるかにヨセフを見て、これを殺そうと計り、 |
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一九 互にいひけるは視よ作夢者きたる |
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一九 互に言った、「あの夢見る者がやって来る。 |
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二〇 去來彼をころして阱に投いれ或惡き獸これを食たりと言ん而して彼の夢の如何になるかを觀るべし |
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二〇 さあ、彼を殺して穴に投げ入れ、悪い獣が彼を食ったと言おう。そして彼の夢がどうなるか見よう」。 |
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二一 ルベン聞てヨセフを彼等の手より拯ひいださんとして言けるは我等これを殺すべからず |
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二一 ルベンはこれを聞いて、ヨセフを彼らの手から救い出そうとして言った、「われわれは彼の命を取ってはならない」。 |
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二二 ルベンまた彼らにいひけるは血をながすなかれ之を曠野の此阱に投いれて手をこれにつくるなかれと是は之を彼等の手よりすくひいだして父に歸んとてなりき |
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二二 ルベンはまた彼らに言った、「血を流してはいけない。彼を荒野のこの穴に投げ入れよう。彼に手をくだしてはならない」。これはヨセフを彼らの手から救いだして父に返すためであった。 |
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二三 玆にヨセフ兄弟の許に到りければ彼等ヨセフの衣即ちその着たる綵る衣を褫ぎ |
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二三 さて、ヨセフが兄弟たちのもとへ行くと、彼らはヨセフの着物、彼が着ていた長そでの着物をはぎとり、 |
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二四 彼を執て阱に投いれたり阱は空にしてその中に水あらざりき |
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二四 彼を捕えて穴に投げ入れた。その穴はからで、その中に水はなかった。 |
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二五 斯して彼等坐てパンを食ひ目をあげて見しに一群のイシマエル人駱駝に香物と乳香と沒藥をおはせてエジプトにくだりゆかんとてギレアデより來る |
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二五 こうして彼らはすわってパンを食べた。時に彼らが目をあげて見ると、イシマエルびとの隊商が、らくだに香料と、乳香と、もつやくとを負わせてエジプトへ下り行こうとギレアデからやってきた。 |
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二六 ユダその兄弟にいひけるは我儕弟をころしてその血を匿すも何のuかあらん |
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二六 そこでユダは兄弟たちに言った、「われわれが弟を殺し、その血を隠して何の益があろう。 |
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二七 去來彼をイシマエル人に賣ん彼は我儕の兄弟われらの肉なればわれらの手をかれにつくべからずと兄弟等これを善とす |
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二七 さあ、われわれは彼をイシマエルびとに売ろう。彼はわれわれの兄弟、われわれの肉身だから、彼に手を下してはならない」。兄弟たちはこれを聞き入れた。 |
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二八 時にミデアンの商旅經過ければヨセフを阱よりひきあげ銀二十枚にてヨセフをイシマエル人に賣り彼等すなはちヨセフをエジプトにたづさへゆきぬ |
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二八 時にミデアンびとの商人たちが通りかかったので、彼らはヨセフを穴から引き上げ、銀二十シケルでヨセフをイシマエルびとに売った。彼らはヨセフをエジプトへ連れて行った。 |
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二九 玆にルベンかへりて阱にいたり見しにヨセフ阱にをらざりしかばその衣を裂き |
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二九 さてルベンは穴に帰って見たが、ヨセフが穴の中にいなかったので、彼は衣服を裂き、 |
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三〇 兄弟の許にかへりて言ふ童子はをらず嗚呼我何處にゆくべきや |
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三〇 兄弟たちのもとに帰って言った、「あの子はいない。ああ、わたしはどこへ行くことができよう」。 |
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三一 斯てかれらヨセフの衣をとり牡山羊の羔をころしてその衣を血に濡し |
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三一 彼らはヨセフの着物を取り、雄やぎを殺して、着物をその血に浸し、 |
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三二 その綵る衣を父におくり遣していひけるは我等これを得たりなんぢの子の衣なるや否を知れと |
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三二 その長そでの着物を父に持ち帰って言った、「わたしたちはこれを見つけましたが、これはあなたの子の着物か、どうか見さだめてください」。 |
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三三 父これを知りていふわが子の衣なり惡き獸彼をくらへりヨセフはかならずさかれしならんと |
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三三 父はこれを見さだめて言った、「わが子の着物だ。悪い獣が彼を食ったのだ。確かにヨセフはかみ裂かれたのだ」。 |
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三四 ヤコブその衣を裂き麻布を腰にまとひ久くその子のためになげけり |
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三四 そこでヤコブは衣服を裂き、荒布を腰にまとって、長い間その子のために嘆いた。 |
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三五 その子女みな起てかれを慰むれどもその慰藉をうけずして我は哀きつゝ陰府にくだりて我子のもとにゆかんといふ斯その父かれのために哭ぬ |
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三五 子らと娘らとは皆立って彼を慰めようとしたが、彼は慰められるのを拒んで言った、「いや、わたしは嘆きながら陰府に下って、わが子のもとへ行こう」。こうして父は彼のために泣いた。 |
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三六 偖ミデアン人はエジプトにてパロの侍衞の長ポテパルにヨセフを賣り |
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三六 さて、かのミデアンびとらはエジプトでパロの役人、侍衛長ポテパルにヨセフを売った。 |
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38章 |
一 當時ユダ兄弟をはなれて下りアドラム人名はヒラといふ者の近邊に天幕をはりしが |
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一 そのころユダは兄弟たちを離れて下り、アドラムびとで、名をヒラという者の所へ行った。 |
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二 ユダかしこにてカナン人名はシユアといふ者の女子を見これを娶りてその所にいる |
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二 ユダはその所で、名をシュアというカナンびとの娘を見て、これをめとり、その所にはいった。 |
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三 彼はらみて男子を生みければユダその名をエルとなづく |
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三 彼女はみごもって男の子を産んだので、ユダは名をエルと名づけた。 |
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四 彼ふたたび孕みて男子を生みその名をオナンとなづけ |
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四 彼女は再びみごもって男の子を産み、名をオナンと名づけた。 |
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五 またかさねて孕みて男子を生みてその名をシラとなづく此子をうみける時ユダはクジブにありき |
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五 また重ねて、男の子を産み、名をシラと名づけた。彼女はこの男の子を産んだとき、クジブにおった。 |
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六 ユダその長子エルのために妻をむかふその名をタマルといふ |
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六 ユダは長子エルのために、名をタマルという妻を迎えた。 |
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七 ユダの長子エル、ヱホバの前に惡をなしたればヱホバこれを死しめたまふ |
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七 しかしユダの長子エルは主の前に悪い者であったので、主は彼を殺された。 |
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八 玆にユダ、オナンにいひけるは汝の兄の妻の所にいりて之をめとり汝の兄をして子をえせしめよ |
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八 そこでユダはオナンに言った、「兄の妻の所にはいって、彼女をめとり、兄に子供を得させなさい」。 |
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九 オナンその子の己のものとならざるを知たれば兄の妻の所にいりし時兄に子をえせしめざらんために地に洩したり |
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九 しかしオナンはその子が自分のものとならないのを知っていたので、兄の妻の所にはいった時、兄に子を得させないために地に洩らした。 |
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一〇 斯なせし事ヱホバの目に惡かりければヱホバ彼をも死しめたまふ |
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一〇 彼のした事は主の前に悪かったので、主は彼をも殺された。 |
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一一 ユダその媳タマルにいひけるは嫠婦となりて汝の父の家にをりわが子シラの人となるを待てと恐らくはシラも亦その兄弟のごとく死るならんとおもひたればなりタマルすなはち往てその父の家にをる |
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一一 そこでユダはその子の妻タマルに言った、「わたしの子シラが成人するまで、寡婦のままで、あなたの父の家にいなさい」。彼は、シラもまた兄弟たちのように死ぬかもしれないと、思ったからである。それでタマルは行って父の家におった。 |
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一二 日かさなりて後シユアの女ユダの妻死たりユダ慰をいれてその友アドラム人ヒラとともにテムナにのぼりその羊毛を剪る者の所にいたる |
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一二 日がたってシュアの娘ユダの妻は死んだ。その後、ユダは喪を終ってその友アドラムびとヒラと共にテムナに上り、自分の羊の毛を切る者のところへ行った。 |
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一三 玆にタマルにつげて視よなんぢの舅はその羊の毛を剪んとてテムナにのぼるといふ者ありしかば |
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一三 時に、ひとりの人がタマルに告げて、「あなたのしゅうとが羊の毛を切るためにテムナに上って来る」と言ったので、 |
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一四 彼その嫠の服を脫すて被衣をもて身をおほひつゝみテムナの途の側にあるエナイムの入口に坐す其はシラ人となりたれども己これが妻にせられざるを見たればなり |
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一四 彼女は寡婦の衣服を脱ぎすて、被衣で身をおおい隠して、テムナへ行く道のかたわらにあるエナイムの入口にすわっていた。彼女はシラが成人したのに、自分がその妻にされないのを知ったからである。 |
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一五 彼その面を蔽ひゐたりしかばユダこれを見て娼妓ならんとおもひ |
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一五 ユダは彼女を見たとき、彼女が顔をおおっていたため、遊女だと思い、 |
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一六 途の側にて彼に就き請ふ來りて我をして汝の所にいらしめよといふ其はその子の妻なるをしらざればなり彼いひけるは汝何を我にあたへてわが所にいらんとするや |
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一六 道のかたわらで彼女に向かって言った、「さあ、あなたの所にはいらせておくれ」。彼はこの女がわが子の妻であることを知らなかったからである。彼女は言った、「わたしの所にはいるため、何をくださいますか」。 |
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一七 ユダいひけるは我群より山羊の羔をおくらん彼いふ汝其をおくるまで質をあたへんか |
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一七 ユダは言った、「群れのうちのやぎの子をあなたにあげよう」。彼女は言った、「それをくださるまで、しるしをわたしにくださいますか」。 |
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一八 ユダ何の質をなんぢに與ふべきやといふに彼汝の印と綬と汝の手の杖をといひければ則ちこれを與へて彼の所にいりぬ彼ユダに由て妊めり |
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一八 ユダは言った、「どんなしるしをあげようか」。彼女は言った、「あなたの印と紐と、あなたの手にあるつえとを」。彼はこれらを与えて彼女の所にはいった。彼女はユダによってみごもった。 |
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一九 彼起て去りその被衣をぬぎすて嫠婦の服をまとふ |
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一九 彼女は起きて去り、被衣を脱いで寡婦の衣服を着た。 |
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二〇 かくてユダ婦の手より質をとらんとてその友アドラム人の手に托して山羊の羔をおくりけるが彼婦を見ざれば |
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二〇 やがてユダはその女からしるしを取りもどそうと、その友アドラムびとに託してやぎの子を送ったけれども、その女を見いだせなかった。 |
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二一 その處の人に問て途の側なるエナイムの娼妓は何處にをるやといふに此には娼妓なしといひければ |
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二一 そこで彼はその所の人々に尋ねて言った、「エナイムで道のかたわらにいた遊女はどこにいますか」。彼らは言った、「ここには遊女はいません」。 |
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二二 ユダの許にかへりていふ我彼を見いださず亦その處の人此には娼妓なしといへりと |
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二二 彼はユダのもとに帰って言った、「わたしは彼女を見いだせませんでした。またその所の人々は、『ここには遊女はいない』と言いました」。 |
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二三 ユダいひけるは彼にとらせおけ恐くはわれら笑ネとならん我この山羊の羔をおくりたるに汝かれを見ざるなりと |
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二三 そこでユダは言った、「女に持たせておこう。わたしたちは恥をかくといけないから。とにかく、わたしはこのやぎの子を送ったが、あなたは彼女を見いだせなかったのだ」。 |
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二四 三月ばかりありて後ユダに吿る者ありていふ汝の媳タマル姦淫をなせり亦その姦淫によりて妊めりとユダいひけるは彼を曳いだして焚べし |
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二四 ところが三月ほどたって、ひとりの人がユダに言った、「あなたの嫁タマルは姦淫しました。そのうえ、彼女は姦淫によってみごもりました」。ユダは言った、「彼女を引き出して焼いてしまえ」。 |
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二五 彼ひきいだされし時その舅にいひつかはしけるは是をもてる人によりて我は妊りと彼すなはち請ふこの印と綬と杖は誰の所屬なるかを辨別よといふ |
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二五 彼女は引き出された時、そのしゅうとに人をつかわして言った、「わたしはこれをもっている人によって、みごもりました」。彼女はまた言った、「どうか、この印と、紐と、つえとはだれのものか、見定めてください」。 |
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二六 ユダこれを見識ていひけるは彼ね我よりも正しわれ彼をわが子シラにあたへざりしによりてなりと再びこれを知らざりき |
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二六 ユダはこれを見定めて言った、「彼女はわたしよりも正しい。わたしが彼女をわが子シラに与えなかったためである」。彼は再び彼女を知らなかった。 |
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二七 かくて產の時にいたりて見るにその胎に孿あり |
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二七 さて彼女の出産の時がきたが、胎内には、ふたごがあった。 |
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二八 その產時手出しかば產婆是首にいづといひて綘き線をとりてその手にしばりしが |
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二八 出産の時に、ひとりの子が手を出したので、産婆は、「これがさきに出た」と言い、緋の糸を取って、その手に結んだ。 |
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二九 手を引こむるにあたりて兄弟いでたれば汝なんぞ坼いづるやその坼汝に歸せんといへり故にその名はペレヅ(坼)と稱る |
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二九 そして、その子が手をひっこめると、その弟が出たので、「どうしてあなたは自分で破って出るのか」と言った。これによって名はペレヅと呼ばれた。 |
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三〇 その兄弟手に綘線のある者後にいづその名はゼラとよばる |
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三〇 その後、手に緋の糸のある兄が出たので、名はゼラと呼ばれた。 |
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39章 |
一 ヨセフ挈へられてエジプトにくだりしがエジプト人ボテパル、パロの臣侍衞の長なる者彼を其處にたづさへくだれるイシマエル人の手よりこれを買ふ |
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一 さてヨセフは連れられてエジプトに下ったが、パロの役人で侍衛長であったエジプトびとポテパルは、彼をそこに連れ下ったイシマエルびとらの手から買い取った。 |
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二 ヱホバ、ヨセフとともに在す彼亨通者となりてその主人なるエジプト人の家にをる |
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二 主がヨセフと共におられたので、彼は幸運な者となり、その主人エジプトびとの家におった。 |
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三 その主人ヱホバの彼とともにいますを見またヱホバがかれの手の凡てなすところを亨通しめたまふを見たり |
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三 その主人は主が彼とともにおられることと、主が彼の手のすることをすべて栄えさせられるのを見た。 |
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四 是によりてヨセフかれの心にかなひて其近侍となる彼ヨセフにその家を宰どらしめその所有を盡くその手に委たり |
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四 そこで、ヨセフは彼の前に恵みを得、そのそば近く仕えた。彼はヨセフに家をつかさどらせ、持ち物をみな彼の手にゆだねた。 |
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五 彼ヨセフにその家とその有る凡の物をつかさどらせし時よりしてヱホバ、ヨセフのために其エジプト人の家を祝みたまふ即ちエホバの祝かれが家と田に有る凡の物におよぶ |
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五 彼がヨセフに家とすべての持ち物をつかさどらせた時から、主はヨセフのゆえにそのエジプトびとの家を恵まれたので、主の恵みは彼の家と畑とにあるすべての持ち物に及んだ。 |
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六 彼その有る物をことごとくヨセフの手にゆだねその食ふパンの外は何をもかへりみざりき夫ヨセフは容貌麗しくして顏美しかりき |
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六 そこで彼は持ち物をみなヨセフの手にゆだねて、自分が食べる物のほかは、何をも顧みなかった。さてヨセフは姿がよく、顔が美しかった。 |
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七 これらの事の後その主人の妻ヨセフに目をつけて我と寢よといふ |
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七 これらの事の後、主人の妻はヨセフに目をつけて言った、「わたしと寝なさい」。 |
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八 ヨセフ拒みて主人の妻にいひけるは視よわが主人家の中の物をかへりみずその有るものことごとくわが手に委ぬ |
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八 ヨセフは拒んで、主人の妻に言った、「御主人はわたしがいるので家の中の何をも顧みず、その持ち物をみなわたしの手にゆだねられました。 |
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九 この家には我より大なるものなし又主人何をも我に禁ぜず只汝を除くのみ汝はその妻なればなり然ば我いかで此おほいなる惡をなして~に罪ををかすをえんや |
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九 この家にはわたしよりも大いなる者はありません。また御主人はあなたを除いては、何をもわたしに禁じられませんでした。あなたが御主人の妻であるからです。どうしてわたしはこの大きな悪をおこなって、神に罪を犯すことができましょう」。 |
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一〇 彼日々にヨセフに言よりたれどもヨセフきかずして之といねず亦與にをらざりき |
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一〇 彼女は毎日ヨセフに言い寄ったけれども、ヨセフは聞きいれず、彼女と寝なかった。また共にいなかった。 |
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一一 當時ヨセフその職をなさんとて家にいりしが家の人一箇もその內にをらざりき |
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一一 ある日ヨセフが務をするために家にはいった時、家の者がひとりもそこにいなかったので、 |
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一二 時に彼婦その衣を執て我といねよといひければヨセフ衣を彼の手に棄おきて外に遁いでたり |
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一二 彼女はヨセフの着物を捕えて、「わたしと寝なさい」と言った。ヨセフは着物を彼女の手に残して外にのがれ出た。 |
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一三 彼ヨセフがその衣を己の手に棄おきて遁いでしを見て |
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一三 彼女はヨセフが着物を自分の手に残して外にのがれたのを見て、 |
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一四 その家の人々を呼てこれにいふ視よヘブル人を我等の所につれ來て我等にたはむれしむ彼我といねんとて我の所にいり來しかば我大聲によばはれり |
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一四 その家の者どもを呼び、彼らに告げて言った、「主人がわたしたちの所に連れてきたヘブルびとは、わたしたちに戯れます。彼はわたしと寝ようとして、わたしの所にはいったので、わたしは大声で叫びました。 |
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一五 彼わが聲をあげて呼はるを聞しかばその衣をわが許にすておきて外に遁いでたりと |
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一五 彼はわたしが声をあげて叫ぶのを聞くと、着物をわたしの所に残して外にのがれ出ました」。 |
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一六 其衣を傍に置て主人の家に歸るを待つ |
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一六 彼女はその着物をかたわらに置いて、主人の帰って来るのを待った。 |
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一七 かくて彼是言のごとく主人につげていふ汝が我らに携へきたりしヘブルの僕われにたはむれんとて我許にいりきたりしが |
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一七 そして彼女は次のように主人に告げた、「あなたがわたしたちに連れてこられたヘブルのしもべはわたしに戯れようとして、わたしの所にはいってきました。 |
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一八 我聲をあげてよばはりしかばその衣を我許にすておきて遁いでたり |
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一八 わたしが声をあげて叫んだので、彼は着物をわたしの所に残して外にのがれました」。 |
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一九 主人その妻が己につげて汝の僕斯のごとく我になせりといふ言を聞て怒を發せり |
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一九 主人はその妻が「あなたのしもべは、わたしにこんな事をした」と告げる言葉を聞いて、激しく怒った。 |
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二〇 是に於てヨセフの主人彼を執へて獄にいる其獄は王の囚徒を繫ぐ所なりヨセフ彼處にて獄にをりしが |
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二〇 そしてヨセフの主人は彼を捕えて、王の囚人をつなぐ獄屋に投げ入れた。こうしてヨセフは獄屋の中におったが、 |
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二一 ヱホバ、ヨセフとともに在して之に仁慈を加へ典獄の恩顧をこれにえさせたまひければ |
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二一 主はヨセフと共におられて彼にいつくしみを垂れ、獄屋番の恵みをうけさせられた。 |
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二二 典獄獄にある囚人をことごとくヨセフの手に付せたり其處になす所の事は皆ヨセフこれをなすなり |
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二二 獄屋番は獄屋におるすべての囚人をヨセフの手にゆだねたので、彼はそこでするすべての事をおこなった。 |
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二三 典獄そのまかせたる所の事は何をもかへりみざりき其はヱホバ、ヨセフとともにいませばなりヱホバかれのなすところをさかえしめたまふ |
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二三 獄屋番は彼の手にゆだねた事はいっさい顧みなかった。主がヨセフと共におられたからである。主は彼のなす事を栄えさせられた。 |
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40章 |
一 これらの事の後エジプト王の酒人と膳夫その主エジプト王に罪ををかす |
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一 これらの事の後、エジプト王の給仕役と料理役とがその主君エジプト王に罪を犯した。 |
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二 パロその二人の臣すなはち酒人の長と膳夫の長を怒りて |
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二 パロはふたりの役人、すなわち給仕役の長と料理役の長に向かって憤り、 |
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三 之を侍衞の長の家の中なる獄に幽囚ふヨセフが繫れをる所なり |
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三 侍衛長の家の監禁所、すなわちヨセフがつながれている獄屋に入れた。 |
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四 侍衞の長ヨセフをして彼等の側に侍しめたればヨセフ之につかふ彼等幽囚れて日を經たり |
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四 侍衛長はヨセフに命じて彼らと共におらせたので、ヨセフは彼らに仕えた。こうして彼らは監禁所で幾日かを過ごした。 |
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五 玆に獄に繫れたるエジプト王の酒人と膳夫の二人ともに一夜の中に各夢を見たりその夢はおのおのその解明にかなふ |
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五 さて獄屋につながれたエジプト王の給仕役と料理役のふたりは一夜のうちにそれぞれ意味のある夢を見た。 |
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六 ヨセフ朝に及びて彼等の所に入て視るに彼等物憂に見ゆ |
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六 ヨセフが朝、彼らのところへ行って見ると、彼らは悲しみに沈んでいた。 |
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七 是に於てヨセフその主人の家に己とともに幽囚をるパロの臣に問て汝等なにゆゑに今日は顏色あしきやといふに |
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七 そこでヨセフは自分と一緒に主人の家の監禁所にいるパロの役人たちに尋ねて言った、「どうして、きょう、あなたがたの顔色が悪いのですか」。 |
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八 彼等これにいふ我等夢を見たれど之を解く者なしとヨセフ彼等にいひけるは解く事は~によるにあらずや請ふ我に述よ |
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八 彼らは言った、「わたしたちは夢を見ましたが、解いてくれる者がいません」。ヨセフは彼らに言った、「解くことは神によるのではありませんか。どうぞ、わたしに話してください」。 |
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九 酒人の長その夢をヨセフに述て之にいふ我夢の中に見しにわが前に一の葡萄樹あり |
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九 給仕役の長はその夢をヨセフに話して言った、「わたしが見た夢で、わたしの前に一本のぶどうの木がありました。 |
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一〇 その樹に三の枝あり芽いで花ひらきて葡萄なり球をなして熟たるがごとくなりき |
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一〇 そのぶどうの木に三つの枝があって、芽を出し、花が咲き、ぶどうのふさが熟しました。 |
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一一 時にパロの爵わが手にあり我葡萄を摘てこれをパロの爵に搾りその爵をパロの手に奉たり |
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一一 時にわたしの手に、パロの杯があって、わたしはそのぶどうを取り、それをパロの杯にしぼり、その杯をパロの手にささげました」。 |
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一二 ヨセフかれにいひけるはその解明は是のごとし三の枝は三日なり |
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一二 ヨセフは彼に言った、「その解き明かしはこうです。三つの枝は三日です。 |
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一三 今より三日の中にパロなんぢの首を擧げ汝を故の所にかへさん汝は曩に酒人たりし時になせし如くパロの爵をその手に奉ぐるにいたらん |
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一三 今から三日のうちにパロはあなたの頭を上げて、あなたを元の役目に返すでしょう。あなたはさきに給仕役だった時にされたように、パロの手に杯をささげられるでしょう。 |
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一四 然ば請ふ汝善ならん時に我をおもひて我に恩惠をほどこし吾事をパロにのべてこの家よりわれを出せ |
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一四 それで、あなたがしあわせになられたら、わたしを覚えていて、どうかわたしに恵みを施し、わたしの事をパロに話して、この家からわたしを出してください。 |
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一五 我はまことにヘブル人の地より掠れ來しものなればなりまた此にても我は牢にいれらるゝがごとき事はなさざりしなり |
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一五 わたしは、実はヘブルびとの地からさらわれてきた者です。またここでもわたしは地下の獄屋に入れられるような事はしなかったのです」。 |
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一六 玆に膳夫の長その解明の善りしを見てヨセフにいふ我も夢を得て見たるに白きパン三筐わが首にありて |
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一六 料理役の長はその解き明かしの良かったのを見て、ヨセフに言った、「わたしも夢を見たが、白いパンのかごが三つ、わたしの頭の上にあった。 |
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一七 その上の筐には膳夫がパロのために作りたる各種の饌ありしが鳥わが首の筐の中より之をくらへり |
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一七 一番上のかごには料理役がパロのために作ったさまざまの食物があったが、鳥がわたしの頭の上のかごからそれを食べていた」。 |
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一八 ヨセフこたへていひけるはその解明はかくのごとし三の筐は三日なり |
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一八 ヨセフは答えて言った、「その解き明かしはこうです。三つのかごは三日です。 |
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一九 今より三日の中にパロ汝の首を擧はなして汝を木に懸んしかして鳥汝の肉をくらひとるべしと |
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一九 今から三日のうちにパロはあなたの頭を上げ離して、あなたを木に掛けるでしょう。そして鳥があなたの肉を食い取るでしょう」。 |
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二〇 第三日はパロの誕辰なればパロそのゥの臣僕に筵席をなし酒人の長と膳夫の長をして首をその臣僕の中に擧しむ |
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二〇 さて三日目はパロの誕生日であったので、パロはすべての家来のためにふるまいを設け、家来のうちの給仕役の長の頭と、料理役の長の頭を上げた。 |
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二一 即ちバロ酒人の長をその職にかへしければ彼爵をパロの手に奉たり |
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二一 すなわちパロは給仕役の長を給仕役の職に返したので、彼はパロの手に杯をささげた。 |
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二二 されど膳夫の長は木に懸らるヨセフの彼等に解明せるがごとし |
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二二 しかしパロは料理役の長を木に掛けた。ヨセフが彼らに解き明かしたとおりである。 |
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二三 然るに酒人の長ヨセフをおぼえずして之を忘れたり |
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二三 ところが、給仕役の長はヨセフを思い出さず、忘れてしまった。 |
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41章 |
一 二年の後パロ夢ることあり即ち河の濱にたちて |
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一 二年の後パロは夢を見た。夢に、彼はナイル川のほとりに立っていた。 |
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二 視るに七の美しき肥たる牝牛河よりのぼりて葦を食ふ |
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二 すると、その川から美しい、肥え太った七頭の雌牛が上がってきて葦を食っていた。 |
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三 その後また七の醜き瘦たる牛河よりのぼり河の畔にて彼牛の側にたちしが |
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三 その後、また醜い、やせ細った他の七頭の雌牛が川から上がってきて、川の岸にいた雌牛のそばに立ち、 |
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四 その醜き瘦たる牛かの美しき肥たる七の牛を食ひつくせりパロ是にいたりて寤む |
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四 その醜い、やせ細った雌牛が、あの美しい、肥えた七頭の雌牛を食いつくした。ここでパロは目が覚めた。 |
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五 彼また寢て再び夢るに一の莖に七の肥たる佳き穗いできたる |
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五 彼はまた眠って、再び夢を見た。夢に、一本の茎に太った良い七つの穂が出てきた。 |
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六 其のちに又しなびて東風に燒たる七の穗いできたりしが |
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六 その後また、やせて、東風に焼けた七つの穂が出てきて、 |
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七 その七のしなびたる穗かの七の肥實りたる穗を呑盡せりパロ寤て見に夢なりき |
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七 そのやせた穂が、あの太って実った七つの穂をのみつくした。ここでパロは目が覚めたが、それは夢であった。 |
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八 パロ朝におよびてその心安からず人をつかはしてエジプトの法術士とその博士を皆ことごとく召し之にその夢を述たり然ど之をパロに解うる者なかりき |
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八 朝になって、パロは心が騒ぎ、人をつかわして、エジプトのすべての魔術師とすべての知者とを呼び寄せ、彼らに夢を告げたが、これをパロに解き明かしうる者がなかった。 |
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九 時に酒人の長パロに吿ていふ我今日わが過をおもひいづ |
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九 そのとき給仕役の長はパロに告げて言った、「わたしはきょう、自分のあやまちを思い出しました。 |
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一〇 甞てパロその僕を怒て我と膳夫の長を侍衞の長の家に幽囚へたまひし時 |
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一〇 かつてパロがしもべらに向かって憤り、わたしと料理役の長とを侍衛長の家の監禁所にお入れになった時、 |
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一一 我と彼ともに一夜のうちに夢み各その解明にかなふ夢をみたりしが |
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一一 わたしも彼も一夜のうちに夢を見、それぞれ意味のある夢を見ましたが、 |
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一二 彼處に侍衞の長の僕なる若きヘブル人我らと偕にあり我等これにのべたれば彼われらの夢を解その夢にしたがひて各人に解明をなせり |
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一二 そこに侍衛長のしもべで、ひとりの若いヘブルびとがわれわれと共にいたので、彼に話したところ、彼はわれわれの夢を解き明かし、その夢によって、それぞれ解き明かしをしました。 |
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一三 しかして其事かれが解たるごとくなりて我はわが職にかへり彼は木に懸らる |
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一三 そして彼が解き明かしたとおりになって、パロはわたしを職に返し、彼を木に掛けられました」。 |
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一四 是に於てパロ人をやりてヨセフを召しければ急ぎてこれを獄より出せりヨセフすなはち鬚を薙り衣をかへてパロの許にいり來る |
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一四 そこでパロは人をつかわしてヨセフを呼んだ。人々は急いで彼を地下の獄屋から出した。ヨセフは、ひげをそり、着物を着替えてパロのもとに行った。 |
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一五 パロ、ヨセフにいひけるは我夢をみたれど之をとく者なし聞に汝は夢をきゝて之を解くことをうると云ふ |
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一五 パロはヨセフに言った、「わたしは夢を見たが、これを解き明かす者がない。聞くところによると、あなたは夢を聞いて、解き明かしができるそうだ」。 |
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一六 ヨセフ、パロにこたへていひけるは我によるにあらず~パロの平安を吿たまはん |
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一六 ヨセフはパロに答えて言った、「いいえ、わたしではありません。神がパロに平安をお告げになりましょう」。 |
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一七 パロ、ヨセフにいふ我夢に河の岸にたちて見るに |
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一七 パロはヨセフに言った、「夢にわたしは川の岸に立っていた。 |
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一八 河より七の肥たる美しき牝牛のぼりて葦を食ふ |
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一八 その川から肥え太った、美しい七頭の雌牛が上がってきて葦を食っていた。 |
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一九 後また弱く甚だ醜き瘠たる七の牝牛のぼりきたる其惡き事エジプト全國にわが未だ見ざるほどなり |
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一九 その後、弱く、非常に醜い、やせ細った他の七頭の雌牛がまた上がってきた。わたしはエジプト全国で、このような醜いものをまだ見たことがない。 |
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二〇 その瘠たる醜き牛初の七の肥たる牛を食ひつくしたりしが |
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二〇 ところがそのやせた醜い雌牛が、初めの七頭の肥えた雌牛を食いつくしたが、 |
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二一 已に腹にいりても其腹にいりし事しれず尙前のごとく醜かりき我是にいたりて寤めたり |
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二一 腹にはいっても、腹にはいった事が知れず、やはり初めのように醜かった。ここでわたしは目が覚めた。 |
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二二 我また夢に見るに七の實たる佳き穗一の莖にいできたる |
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二二 わたしはまた夢をみた。一本の茎に七つの実った良い穂が出てきた。 |
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二三 その後にまたいぢけ萎びて東風にやけたる七の穗生じたりしが |
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二三 その後、やせ衰えて、東風に焼けた七つの穂が出てきたが、 |
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二四 そのしなびたる穗かの七の佳穗を呑つくせり我これを法術士に吿たれどもわれにこれをしめすものなし |
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二四 そのやせた穂が、あの七つの良い穂をのみつくした。わたしは魔術師に話したが、わたしにそのわけを示しうる者はなかった」。 |
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二五 ヨセフ、パロにいひけるはパロの夢は一なり~その爲んとする所をパロに示したまへるなり |
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二五 ヨセフはパロに言った、「パロの夢は一つです。神がこれからしようとすることをパロに示されたのです。 |
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二六 七の美牝牛は七年七の佳穗も七年にして夢は一なり |
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二六 七頭の良い雌牛は七年です。七つの良い穂も七年で、夢は一つです。 |
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二七 其後にのぼりし七の瘠たる醜き牛は七年にしてその東風にやけたる七の空穗は七年の饑饉なり |
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二七 あとに続いて、上がってきた七頭のやせた醜い雌牛は七年で、東風に焼けた実の入らない七つの穂は七年のききんです。 |
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二八 是はわがパロに申すところなり~そのなさんとするところをパロにしめしたまふ |
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二八 わたしがパロに申し上げたように、神がこれからしようとすることをパロに示されたのです。 |
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二九 エジプトの全地に七年の大なる豐年あるべし |
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二九 エジプト全国に七年の大豊作があり、 |
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三〇 その後に七年の凶年おこらん而してエジプトの地にありし豐作を皆忘るにいたるべし饑饉國を滅さん |
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三〇 その後七年のききんが起り、その豊作はみなエジプトの国で忘れられて、そのききんは国を滅ぼすでしょう。 |
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三一 後にいたるその饑饉はなはだはげしきにより前の豐作國の中に知れざるにいたらん |
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三一 後に来るそのききんが、非常に激しいから、その豊作は国のうちで記憶されなくなるでしょう。 |
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三二 パロのふたゝび夢をかさね見たまひしは~がこの事をさだめて速に之をなさんとしたまふなり |
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三二 パロが二度重ねて夢を見られたのは、この事が神によって定められ、神がすみやかにこれをされるからです。 |
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三三 さればパロ慧く賢き人をえらみて之にエジプトの國を治めしめたまふべし |
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三三 それゆえパロは今、さとく、かつ賢い人を尋ね出してエジプトの国を治めさせなさい。 |
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三四 パロこれをなし國中に官吏を置てその七年の豐年の中にエジプトの國の五分の一を取たまふべし |
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三四 パロはこうして国中に監督を置き、その七年の豊作のうちに、エジプトの国の産物の五分の一を取り、 |
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三五 而して其官吏をして來らんとするその善き年のゥの糧食を斂めてその穀物をパロの手に蓄へしめ糧食を邑々にかこはしめたまふべし |
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三五 続いて来る良い年々のすべての食糧を彼らに集めさせ、穀物を食糧として、パロの手で町々にたくわえ守らせなさい。 |
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三六 その糧食を國のために蓄藏へおきてエジプトの國にのぞむ七年の饑饉に備へ國をして饑饉のために滅ざらしむべし |
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三六 こうすれば食糧は、エジプトの国に臨む七年のききんに備えて、この国のためにたくわえとなり、この国はききんによって滅びることがないでしょう」。 |
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三七 パロとそのゥの臣僕此事を善とす |
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三七 この事はパロとそのすべての家来たちの目にかなった。 |
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三八 是に於てパロその臣僕にいふ我等~の靈のやどれる是のごとき人を看いだすをえんやと |
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三八 そこでパロは家来たちに言った、「われわれは神の霊をもつこのような人を、ほかに見いだし得ようか」。 |
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三九 しかしてパロ、ヨセフにいひけるは~是を盡く汝にしめしたまひたれば汝のごとく慧く賢き者なかるべし |
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三九 またパロはヨセフに言った、「神がこれを皆あなたに示された。あなたのようにさとく賢い者はない。 |
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四〇 汝わが家を宰るべしわが民みな汝の口にしたがはん唯位においてのみ我は汝より大なるべし |
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四〇 あなたはわたしの家を治めてください。わたしの民はみなあなたの言葉に従うでしょう。わたしはただ王の位でだけあなたにまさる」。 |
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四一 パロ、ヨセフにいひけるは視よ我汝をエジプト全國の冢宰となすと |
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四一 パロは更にヨセフに言った、「わたしはあなたをエジプト全国のつかさとする」。 |
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四二 パロすなはち指環をその手より脫して之をヨセフの手にはめ之に白布を衣せ金の索をその項にかけ |
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四二 そしてパロは指輪を手からはずして、ヨセフの手にはめ、亜麻布の衣服を着せ、金の鎖をくびにかけ、 |
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四三 之をして己のもてる次の輅に乘しめ下にゐよと其前に呼しむ是彼をエジプト全國の冢宰となせり |
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四三 自分の第二の車に彼を乗せ、「ひざまずけ」とその前に呼ばわらせ、こうして彼をエジプト全国のつかさとした。 |
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四四 パロ、ヨセフにいひけるは我はパロなりエジプト全國に汝の允准をえずして手足をあぐる者なかるべしと |
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四四 ついでパロはヨセフに言った、「わたしはパロである。あなたの許しがなければエジプト全国で、だれも手足を上げることはできない」。 |
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四五 パロ、ヨセフの名をザフナテパネアと名けまたオンの祭司ポテパルの女アセナテを之にあたへて妻となさしむヨセフいでてエジプトの地をめぐる |
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四五 パロはヨセフの名をザフナテ・パネアと呼び、オンの祭司ポテペラの娘アセナテを妻として彼に与えた。ヨセフはエジプトの国を巡った。 |
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四六 ヨセフはエジプトの王パロのまへに立し時三十歲なりきヨセフ、パロのまへを出て徧くエジプトの地を巡れり |
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四六 ヨセフがエジプトの王パロの前に立った時は三十歳であった。ヨセフはパロの前を出て、エジプト全国をあまねく巡った。 |
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四七 七年の豐年の中に地山なして物を生ず |
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四七 さて七年の豊作のうちに地は豊かに物を産した。 |
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四八 ヨセフすなはちエジプトの地にありしその七年の糧食を斂めてその糧食を邑々に藏む即ち邑の周圍の田圃の糧食を其邑の中に藏む |
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四八 そこでヨセフはエジプトの国にできたその七年間の食糧をことごとく集め、その食糧を町々に納めさせた。すなわち町の周囲にある畑の食糧をその町の中に納めさせた。 |
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四九 ヨセフ海隅の沙のごとく甚だ多く穀物を儲へ遂に數ふることをやむるに至る其は數かぎり無れぼなり |
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四九 ヨセフは穀物を海の砂のように、非常に多くたくわえ、量りきれなくなったので、ついに量ることをやめた。 |
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五〇 饑饉の歲のいたらざる前にヨセフに二人の子うまる是はオンの祭司ポテパルの女アセナテの生たる者なり |
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五〇 ききんの年の来る前にヨセフにふたりの子が生れた。これらはオンの祭司ポテペラの娘アセナテが産んだのである。 |
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五一 ヨセフその冢子の名をマナセ(忘)となづけて言ふ~我をしてわがゥの苦難とわが父の家の凡の事をわすれしめたまふと |
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五一 ヨセフは長子の名をマナセと名づけて言った、「神がわたしにすべての苦難と父の家のすべての事を忘れさせられた」。 |
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五二 又次の子の名をエフライム(多く生る)となづけていふ~われをしてわが艱難の地にて多くの子をえせしめたまふと |
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五二 また次の子の名をエフライムと名づけて言った、「神がわたしを悩みの地で豊かにせられた」。 |
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五三 爰にエジプトの國の七年の豐年をはり |
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五三 エジプトの国にあった七年の豊作が終り、 |
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五四 ヨセフの言しごとく七年の凶年きたりはじむその饑饉はゥの國にあり然どエジプト全國には食物ありき |
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五四 ヨセフの言ったように七年のききんが始まった。そのききんはすべての国にあったが、エジプト全国には食物があった。 |
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五五 エジプト全國饑し時民さけびてバロに食物を乞ふパロ、エジプトのゥの人にいひけるはヨセフに往け彼が汝等にいふところをなせと |
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五五 やがてエジプト全国が飢えた時、民はパロに食物を叫び求めた。そこでパロはすべてのエジプトびとに言った、「ヨセフのもとに行き、彼の言うようにせよ」。 |
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五六 饑饉全地の面にありヨセフすなはちゥの倉廩をひらきてエジプト人に賣わたせり饑饉ますますエジプトの國にはげしくなる |
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五六 ききんが地の全面にあったので、ヨセフはすべての穀倉を開いて、エジプトびとに売った。ききんはますますエジプトの国に激しくなった。 |
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五七 饑饉ゥの國にはげしくなりしかばゥ國の人エジプトにきたりヨセフにいたりて穀物を買ふ |
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五七 ききんが全地に激しくなったので、諸国の人々がエジプトのヨセフのもとに穀物を買うためにきた。 |
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42章 |
一 ヤコブ、エジプトに穀物あるを見しかばその子等にいひけるは汝等なんぞたがひに面を見あはするや |
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一 ヤコブはエジプトに穀物があると知って、むすこたちに言った、「あなたがたはなぜ顔を見合わせているのですか」。 |
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二 ヤコブまたいふ我エジプトに穀物ありと聞り彼處にくだりて彼處より我等のために買きたれ然らばわれら生るを得て死をまぬかれんと |
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二 また言った、「エジプトに穀物があるということだが、あなたがたはそこへ下って行って、そこから、われわれのため穀物を買ってきなさい。そうすれば、われわれは生きながらえて、死を免れるであろう」。 |
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三 ヨセフの十人の兄弟エジプトにて穀物をかはんとて下りゆけり |
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三 そこでヨセフの十人の兄弟は穀物を買うためにエジプトへ下った。 |
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四 されどヨセフの弟ベニヤミンはヤコブこれをその兄弟とともに遣さざりきおそらくは災難かれの身にのぞむことあらんと思たればなり |
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四 しかし、ヤコブはヨセフの弟ベニヤミンを兄弟たちと一緒にやらなかった。彼が災に会うのを恐れたからである。 |
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五 イスラエルの子等穀物を買んとて來る者とともに來る其はカナンの地に饑饉ありたればなり |
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五 こうしてイスラエルの子らは穀物を買おうと人々に交じってやってきた。カナンの地にききんがあったからである。 |
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六 時にヨセフは國の總督にして國の凡の人に賣ことをなせりヨセフの兄弟等來りてその前に地に伏て拜す |
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六 ときにヨセフは国のつかさであって、国のすべての民に穀物を売ることをしていた。ヨセフの兄弟たちはきて、地にひれ伏し、彼を拝した。 |
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七 ヨセフその兄弟を見てこれを知たれども知ざる者のごとくして荒々しく之にものいふ即ち彼等に汝等は何處より來れるやといへば彼等いふ糧食を買んためにカナンの地より來れりと |
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七 ヨセフは兄弟たちを見て、それと知ったが、彼らに向かっては知らぬ者のようにし、荒々しく語った。すなわち彼らに言った、「あなたがたはどこからきたのか」。彼らは答えた、「食糧を買うためにカナンの地からきました」。 |
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八 ヨセフはその兄弟をしりたれども彼等はヨセフをしらざりき |
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八 ヨセフは、兄弟たちであるのを知っていたが、彼らはヨセフとは知らなかった。 |
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九 ヨセフその昔に彼等の事を夢たる夢を憶いだし彼等にいひけるは汝等は間者にして此國の隙を窺んとて來れるなり |
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九 ヨセフはかつて彼らについて見た夢を思い出して、彼らに言った、「あなたがたは回し者で、この国のすきをうかがうためにきたのです」。 |
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一〇 彼等之にいひけるはわが主よ然らず唯糧食をかはんとて僕等は來れるなり |
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一〇 彼らはヨセフに答えた、「いいえ、わが主よ、しもべらはただ食糧を買うためにきたのです。 |
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一一 我等はみな一箇の人の子にして篤實なる者なり僕等は間者にあらず |
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一一 われわれは皆、ひとりの人の子で、真実な者です。しもべらは回し者ではありません」。 |
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一二 ヨセフ彼等にいひけるは否汝等は此地の隙を窺んとて來れるなり |
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一二 ヨセフは彼らに言った、「いや、あなたがたはこの国のすきをうかがうためにきたのです」。 |
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一三 彼等いひけるは僕等は十二人の兄弟にしてカナンの地の一箇の人の子なり季子は今日父とともにをる又一人はをらずなりぬ |
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一三 彼らは言った、「しもべらは十二人兄弟で、カナンの地にいるひとりの人の子です。末の弟は今、父と一緒にいますが、他のひとりはいなくなりました」。 |
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一四 ヨセフかれらにいひけるはわが汝等につげて汝等は間者なりといひしはこの事なり |
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一四 ヨセフは彼らに言った、「わたしが言ったとおり、あなたがたは回し者です。 |
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一五 汝等斯してその眞實をあかすべしパロの生命をさして誓ふ汝等の末弟ここに來るにあらざれば汝等は此をいづるをえじ |
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一五 あなたがたをこうしてためしてみよう。パロのいのちにかけて誓います。末の弟がここにこなければ、あなたがたはここを出ることはできません。 |
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一六 汝等の一人をやりて汝等の弟をつれきたらしめよ汝等をば繫ぎおきて汝等の言をためし汝らの中に眞實あるや否をみんパロの生命をさして誓ふ汝等はかならず間者なりと |
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一六 あなたがたのひとりをやって弟を連れてこさせなさい。それまであなたがたをつないでおいて、あなたがたに誠実があるかどうか、あなたがたの言葉をためしてみよう。パロのいのちにかけて誓います。あなたがたは確かに回し者です」。 |
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一七 彼等を皆ともに三日のあひだ幽囚をけり |
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一七 ヨセフは彼らをみな一緒に三日の間、監禁所に入れた。 |
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一八 三日におよびてヨセフかれらにいひけるは我~を畏る汝等是なして生命をえよ |
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一八 三日目にヨセフは彼らに言った、「こうすればあなたがたは助かるでしょう。わたしは神を恐れます。 |
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一九 汝等もし篤實なる者ならば汝らの兄弟の一人をしてこの獄に繫れしめ汝等は穀物をたづさへゆきてなんぢらの家々の饑をすくへ |
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一九 もしあなたがたが真実な者なら、兄弟のひとりをあなたがたのいる監禁所に残し、あなたがたは穀物を携えて行って、家族の飢えを救いなさい。 |
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二〇 但し汝らの末弟を我につれきたるべしさすればなんぢらの言の眞實あらはれて汝等死をまぬかるべし彼等すなはち斯なせり |
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二〇 そして末の弟をわたしのもとに連れてきなさい。そうすればあなたがたの言葉のほんとうであることがわかって、死を免れるでしょう」。彼らはそのようにした。 |
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二一 玆に彼らたがひに言けるは我等は弟の事によりて信に罪あり我等は彼が我らに只管にねがひし時にその心の苦を見ながら之を聽ざりき故にこの苦われらにのぞめるなり |
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二一 彼らは互に言った、「確かにわれわれは弟の事で罪がある。彼がしきりに願った時、その心の苦しみを見ながら、われわれは聞き入れなかった。それでこの苦しみに会うのだ」。 |
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二二 ルベンかれらに對ていひけるは我なんぢらにいひて童子に罪ををかすなかれといひしにあらずや然るに汝等きかざりき是故に視よ亦彼の血をながせし罪をたゞさると |
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二二 ルベンが彼らに答えて言った、「わたしはあなたがたに、この子供に罪を犯すなと言ったではないか。それにもかかわらず、あなたがたは聞き入れなかった。それで彼の血の報いを受けるのです」。 |
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二三 彼等はヨセフが之を解するをしらざりき其は互に通辯をもちひたればなり |
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二三 彼らはヨセフが聞きわけているのを知らなかった。相互の間に通訳者がいたからである。 |
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二四 ヨセフ彼等を離れゆきて哭き復かれらにかへりて之とかたり遂にシメオンを彼らの中より取りその目のまへにて之を縛れり |
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二四 ヨセフは彼らを離れて行って泣き、また帰ってきて彼らと語り、そのひとりシメオンを捕えて、彼らの目の前で縛った。 |
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二五 而してヨセフ命じてその器に穀物をみたしめ其人々の金を囊に返さしめ又途の食を之にあたへしむヨセフ斯かれらになせり |
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二五 そしてヨセフは人々に命じて、彼らの袋に穀物を満たし、めいめいの銀を袋に返し、道中の食料を与えさせた。ヨセフはこのように彼らにした。 |
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二六 彼等すなはち穀物を驢馬におはせて其處をさりしが |
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二六 彼らは穀物をろばに負わせてそこを去った。 |
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二七 其一人旅邸にて驢馬に糧を與んとて囊をひらき其金を見たり其は囊の口にありければなり |
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二七 そのひとりが宿で、ろばに飼葉をやるため袋をあけて見ると、袋の口に自分の銀があった。 |
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二八 彼その兄弟にいひけるは吾金は返してあり視よ囊の中にありと是において彼等膽を消し懼れてたがひに~の我らになしたまふ此事は何ぞやといへり |
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二八 彼は兄弟たちに言った、「わたしの銀は返してある。しかも見よ、それは袋の中にある」。そこで彼らは非常に驚き、互に震えながら言った、「神がわれわれにされたこのことは何事だろう」。 |
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二九 かくて彼等カナンの地にかへりて父ヤコブの所にいたり其身にありし事等を悉く之につげていひけるは |
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二九 こうして彼らはカナンの地にいる父ヤコブのもとに帰り、その身に起った事をことごとく告げて言った、 |
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三〇 彼國の主荒々しく我等にものいひ我らをもて國を偵ふ者となせり |
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三〇 「あの国の君は、われわれに荒々しく語り、国をうかがう回し者だと言いました。 |
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三一 我ら彼にいふ我等は篤實なる者なり間者にあらず |
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三一 われわれは彼に答えました、『われわれは真実な者であって回し者ではない。 |
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三二 我らは十二人の兄弟にして同じ父の子なり一人はをらずなり季のは今日父とともにカナンの地にありと |
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三二 われわれは十二人兄弟で、同じ父の子である。ひとりはいなくなり、末の弟は今父と共にカナンの地にいる』。 |
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三三 國の主なるその人われらにいひけるは我かくして汝等の篤實なるをしらん汝等の兄弟の一人を吾もとにのこし糧食をたづさへゆきて汝らの家々の饑をすくへ |
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三三 その国の君であるその人はわれわれに言いました、『わたしはこうしてあなたがたの真実な者であるのを知ろう。あなたがたは兄弟のひとりをわたしのもとに残し、穀物を携えて行って、家族の飢えを救いなさい。 |
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三四 而して汝らの季の弟をわが許につれきたれ然れば我なんぢらが間者にあらずして篤實なる者たるをしらん我なんぢらの兄弟を汝等に返し汝等をしてこの國にて交易をなさしむべしと |
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三四 そして末の弟をわたしのもとに連れてきなさい。そうすればあなたがたが回し者ではなく、真実な者であるのを知って、あなたがたの兄弟を返し、この国であなたがたに取引させましょう』」。 |
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三五 玆に彼等その囊を傾たるに視よ各人の金包その囊のなかにあり彼等とその父金包を見ておそれたり |
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三五 彼らが袋のものを出して見ると、めいめいの金包みが袋の中にあったので、彼らも父も金包みを見て恐れた。 |
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三六 その父ヤコブ彼等にいひけるは汝等は我をして子を喪はしむヨセフはをらずなりシメオンもをらずなりたるにまたベニヤミンを取んとす是みなわが身にかゝるなり |
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三六 父ヤコブは彼らに言った、「あなたがたはわたしに子を失わせた。ヨセフはいなくなり、シメオンもいなくなった。今度はベニヤミンをも取り去る。これらはみなわたしの身にふりかかって来るのだ」。 |
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三七 ルベン父に吿ていふ我もし彼を汝につれかへらずば吾ふたりの子を殺せ彼をわが手にわたせ我之をなんぢにつれかへらん |
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三七 ルベンは父に言った、「もしわたしが彼をあなたのもとに連れて帰らなかったら、わたしのふたりの子を殺してください。ただ彼をわたしの手にまかせてください。わたしはきっと、あなたのもとに彼を連れて帰ります」。 |
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三八 ヤコブいひけるはわが子はなんぢらとともに下るべからず彼の兄は死て彼ひとり遺たればなり若なんぢらが行ところの途にて災難かれの身におよばゞ汝等はわが白髪をして悲みて墓にくだらしむるにいたらん |
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三八 ヤコブは言った、「わたしの子はあなたがたと共に下って行ってはならない。彼の兄は死に、ただひとり彼が残っているのだから。もしあなたがたの行く道で彼が災に会えば、あなたがたは、しらがのわたしを悲しんで陰府に下らせるであろう」。 |
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43章 |
一 饑饉その地にはげしかりき |
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一 ききんはその地に激しかった。 |
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二 玆に彼等エジプトよりもちきたりし穀物を食つくせし時父かれらに再びゆきて少許の糧食を買きたれといひけれぽ |
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二 彼らがエジプトから携えてきた穀物を食い尽した時、父は彼らに言った、「また行って、われわれのために少しの食糧を買ってきなさい」。 |
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三 ユダ父にかたりていひけるは彼人かたく我等をいましめていふ汝らの弟汝らとともにあるにあらざれば汝らはわが面をみるべからずと |
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三 ユダは父に答えて言った、「あの人はわれわれをきびしく戒めて、弟が一緒でなければ、わたしの顔を見てはならないと言いました。 |
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四 汝もし弟をわれらとともに遣さば我等下て汝のために糧食を買ふべし |
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四 もしあなたが弟をわれわれと一緒にやってくださるなら、われわれは下って行って、あなたのために食糧を買ってきましょう。 |
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五 されど汝もし彼をつかはさずば我等くだらざるべし其はかの人われらにむかひ汝等の弟なんぢらとともにあるにあらざれば汝ら吾面をみるべからずといひたればなりと |
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五 しかし、もし彼をやられないなら、われわれは下って行きません。あの人がわれわれに、弟が一緒でなければわたしの顔を見てはならないと言ったのですから」。 |
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六 イスラエルいひけるは汝等なにゆゑに汝等に尙弟のあることを彼人につげて我を惡くなすや |
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六 イスラエルは言った、「なぜ、もうひとりの弟があるとあの人に言って、わたしを苦しめるのか」。 |
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七 彼等いふ其人われらの模樣とわれらの親族を問たゞして汝らの父は尙生存へをるや汝等は弟をもつやといひしにより其言の條々にしたがひて彼につげたるなり我等いかでか彼が汝等の弟をつれくだれといふならんとしるをえん |
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七 彼らは言った、「あの人がわれわれと一族とのことを問いただして、父はまだ生きているか、もうひとりの弟があるかと言ったので、問われるままに答えましたが、その人が、弟を連れてこいと言おうとは、どうして知ることができたでしょう」。 |
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八 ユダ父イスラエルにいひけるは童子をわれとともに遣はせ我等たちて往ん然らば我儕と汝およびわれらの子女生ることを得て死をまぬかるべし |
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八 ユダは父イスラエルに言った、「あの子をわたしと一緒にやってくだされば、われわれは立って行きましょう。そしてわれわれもあなたも、われわれの子供らも生きながらえ、死を免れましょう。 |
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九 我彼の身を保はん汝わが手にかれを問へ我もし彼を汝につれかへりて汝のまへに置ずば我永遠に罪をおはん |
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九 わたしが彼の身を請け合います。わたしの手から彼を求めなさい。もしわたしが彼をあなたのもとに連れ帰って、あなたの前に置かなかったら、わたしはあなたに対して永久に罪を負いましょう。 |
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一〇 我儕もし濡滯ことなかりしならば必ずすでにゆきて再びかへりしならん |
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一〇 もしわれわれがこんなにためらわなかったら、今ごろは二度も行ってきたでしょう」。 |
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一一 父イスエテル彼等にいひけるは然ば斯なせ汝等國の名物を器にいれ携へくだりて彼人に禮物とせよ乳香少許、蜜少許、香物、沒藥、胡桃および巴旦杏 |
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一一 父イスラエルは彼らに言った、「それではこうしなさい。この国の名産を器に入れ、携え下ってその人に贈り物にしなさい。すなわち少しの乳香、少しの蜜、香料、もつやく、ふすだしう、あめんどう。 |
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一二 又手に一倍の金を取りゆけ汝等の囊の口に返してありし彼金を再び手にたづさへ行べし恐くは差謬にてありしならん |
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一二 そしてその上に、倍額の銀を手に持って行きなさい。また袋の口に返してあった銀は持って行って返しなさい。たぶんそれは誤りであったのでしょう。 |
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一三 且また汝らの弟を挈へ起てふたゝび其人の所にゆけ |
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一三 弟も連れ、立って、またその人の所へ行きなさい。 |
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一四 ねがはくは全能の~その人のまへにて汝等を矜恤みその人をして汝等の他の兄弟とベニヤミンを放ちかへさしめたまはんことを若われ子に別るべくあらば別れんと |
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一四 どうか全能の神がその人の前であなたがたをあわれみ、もうひとりの兄弟とベニヤミンとを、返させてくださるように。もしわたしが子を失わなければならないのなら、失ってもよい」。 |
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一五 是に於てかの人々その禮物を執り一倍の金を手に執りベニヤミンを携へて起てエジプトにくだりヨセフの前に立つ |
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一五 そこでその人々は贈り物を取り、また倍額の銀を携え、ベニヤミンを連れ、立ってエジプトへ下り、ヨセフの前に立った。 |
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一六 ヨセフ、ベニヤミンの彼らと偕なるを見てその家宰にいひけるはこの人々を家に導き畜を屠て備へよこの人々卓午に我とともに食をなすべければなり |
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一六 ヨセフはベニヤミンが彼らと共にいるのを見て、家づかさに言った、「この人々を家に連れて行き、獣をほふって、したくするように。この人々は昼、わたしと一緒に食事をします」。 |
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一七 其人ヨセフのいひしごとくなし其人この人々をヨセフの家に導けり |
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一七 その人はヨセフの言ったようにして、この人々をヨセフの家へ連れて行った。 |
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一八 人々ヨセフの家に導かれたるによりて懼れいひけるは初めにわれらの囊にかへりてありし金の事のために我等はひきいれらる是われらを抑留へて我等にせまり執へて奴隷となし且われらの驢馬を取んとするなりと |
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一八 ところがこの人々はヨセフの家へ連れて行かれたので恐れて言った、「初めの時に袋に返してあったあの銀のゆえに、われわれを引き入れたのです。そしてわれわれを襲い、攻め、捕えて奴隷とし、われわれのろばをも奪うのです」。 |
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一九 彼等すなはちヨセフの家宰に進みよりて家の入口にて之にかたりて |
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一九 彼らはヨセフの家づかさに近づいて、家の入口で、言った、 |
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二〇 いひけるは主よ我等實に最初くだりて糧食を買たり |
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二〇 「ああ、わが主よ、われわれは最初、食糧を買うために下ってきたのです。 |
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二一 しかるに我等旅邸に至りて囊を啓き見るに各人の金その囊の口にありて其金の量全かりし然ば我等これを手にもちかへれり |
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二一 ところが宿に行って袋をあけて見ると、めいめいの銀は袋の口にあって、銀の重さは元のままでした。それでわれわれはそれを持って参りました。 |
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二二 又糧食を買ふ他の金をも手にもちくだる我等の金を囊にいれたる者は誰なるかわれらは知ざるなり |
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二二 そして食糧を買うために、ほかの銀をも持って下ってきました。われわれの銀を袋に入れた者が、だれであるかは分りません」。 |
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二三 彼いひけるは汝ら安ぜよ懼るなかれ汝らの~汝らの父の~財寳を汝等の囊におきて汝らに賜ひしなり汝らの金は我にとゞけりと遂にシメオンを彼等の所にたづさへいだせり |
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二三 彼は言った、「安心しなさい。恐れてはいけません。その宝はあなたがたの神、あなたがたの父の神が、あなたがたの袋に入れてあなたがたに賜わったのです。あなたがたの銀はわたしが受け取りました」。そして彼はシメオンを彼らの所へ連れてきた。 |
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二四 かくて其人この人々をヨセフの家に導き水をあたへてその足を濯はしめ又その驢馬に草をあたふ |
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二四 こうしてその人はこの人々をヨセフの家へ導き、水を与えて足を洗わせ、また、ろばに飼葉を与えた。 |
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二五 彼等其處にて食をなすなりと聞しかば禮物を調へてヨセフの日午に來るをまつ |
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二五 彼らはその所で食事をするのだと聞き、贈り物を整えて、昼にヨセフの来るのを待った。 |
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二六 玆にヨセフ家にかへりしかば彼等その手の禮物を家にもちきたりてヨセフの許にいたり地に伏てこれを拜す |
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二六 さてヨセフが家に帰ってきたので、彼らはその家に携えてきた贈り物をヨセフにささげ、地に伏して、彼を拝した。 |
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二七 ヨセフかれらの安否をとふていふ汝等の父汝らが初にかたりしその老人は恙なきや尙いきながらへをるや |
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二七 ヨセフは彼らの安否を問うて言った、「あなたがたの父、あなたがたがさきに話していたその老人は無事ですか。なお生きながらえておられますか」。 |
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二八 彼等こたへてわれらの父汝の僕は恙なくしてなほ生ながらへをるといひ身をかゞめ禮をなす |
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二八 彼らは答えた、「あなたのしもべ、われわれの父は無事で、なお生きながらえています」。そして彼らは、頭をさげて拝した。 |
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二九 ヨセフ目をあげてその母の子なる己の弟ベニヤミンを見ていひけるは是は汝らが初に我にかたりし汝らの若き兄弟なるや又いふわが子よ願はくは~汝をめぐみたまはんことをと |
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二九 ヨセフは目をあげて同じ母の子である弟ベニヤミンを見て言った、「これはあなたがたが前にわたしに話した末の弟ですか」。また言った、「わが子よ、どうか神があなたを恵まれるように」。 |
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三〇 ヨセフその弟のために心焚るがごとくなりしかば急ぎてその泣べきところを尋ね室にいりて其處に泣り |
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三〇 ヨセフは弟なつかしさに心がせまり、急いで泣く場所をたずね、へやにはいって泣いた。 |
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三一 而して面をあらひて出で自から抑へて食をそなへよといふ |
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三一 やがて彼は顔を洗って出てきた。そして自分を制して言った、「食事にしよう」。 |
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三二 すなはちヲセフはヨセフ彼等は彼等陪食するエジプト人はエジプト人と別々に之を供ふ是はエジプト人ヘブル人と共に食することをえざるによる其事エジプト人の穢はしとするところなればなり |
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三二 そこでヨセフはヨセフ、彼らは彼ら、陪食のエジプトびとはエジプトびと、と別々に席に着いた。エジプトびとはヘブルびとと共に食事することができなかった。それはエジプトびとの忌むところであったからである。 |
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三三 かくて彼等ヨセフの前に坐るに長子をばその長たるにしたがひて坐らせ若き者をばその幼少にしたがひてすわらせければその人々駭きあへり |
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三三 こうして彼らはヨセフの前に、長子は長子として、弟は弟としてすわらせられたので、その人々は互に驚いた。 |
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三四 ヨセフ己のまへより皿を彼等に供ふベニヤミンの皿は他の人のよりも五倍おほかりきかれら飮てヨセフとともに樂めり |
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三四 またヨセフの前から、めいめいの分が運ばれたが、ベニヤミンの分は他のいずれの者の分よりも五倍多かった。こうして彼らは飲み、ヨセフと共に楽しんだ。 |
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44章 |
一 爰にヨセフその家宰に命じていふこの人々の囊にその負うるほど糧食を充せ各人の金をその囊の口に置れ |
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一 さてヨセフは家づかさに命じて言った、「この人々の袋に、運べるだけ多くの食糧を満たし、めいめいの銀を袋の口に入れておきなさい。 |
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二 またわが杯すなはち銀の杯を彼の少き者の囊の口に置てその穀物の金子とともにあらしめよと彼ヨセフがいひし言のごとくなせり |
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二 またわたしの杯、銀の杯をあの年下の者の袋の口に、穀物の代金と共に入れておきなさい」。家づかさはヨセフの言葉のとおりにした。 |
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三 かくて夜のあくるにおよびてその人々と驢馬をかへしけるが |
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三 夜が明けると、その人々と、ろばとは送り出されたが、 |
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四 かれら城邑をいでてなほ程とほからぬにヨセフ家宰にいひけるは起てかの人々の後を迫ひおひつきし時之にいふべし汝らなんぞ惡をもて善にむくゆるや |
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四 町を出て、まだ遠くへ行かないうちに、ヨセフは家づかさに言った、「立って、あの人々のあとを追いなさい。追いついて、彼らに言いなさい、『あなたがたはなぜ悪をもって善に報いるのですか。なぜわたしの銀の杯を盗んだのですか。 |
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五 其はわが主がもちひて飮み又用ひて常に卜ふ者にあらずや汝らかくなすは惡しと |
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五 これはわたしの主人が飲む時に使い、またいつも占いに用いるものではありませんか。あなたがたのした事は悪いことです』」。 |
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六 是に於て家宰かれらにおひつきてこの言をかれらにいひければ |
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六 家づかさが彼らに追いついて、これらの言葉を彼らに告げたとき、 |
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七 かれら之にいふ主なにゆゑに是事をいひたまふや僕等きはめてこの事をなさず |
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七 彼らは言った、「わが主は、どうしてそのようなことを言われるのですか。しもべらは決してそのようなことはいたしません。 |
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八 視よ我らの囊の口にありし金はカナンの地より汝の所にもちかへれり然ば我等いかで汝の主の家より金銀をぬすまんや |
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八 袋の口で見つけた銀でさえ、カナンの地からあなたの所に持ち帰ったほどです。どうして、われわれは御主人の家から銀や金を盗みましょう。 |
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九 僕等の中誰の手に見あたるも其者は死べし我等またわが主の奴隷となるべし |
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九 しもべらのうちのだれの所でそれが見つかっても、その者は死に、またわれわれはわが主の奴隷となりましょう」。 |
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一〇 彼いひけるはさらば汝らの言のごとくせん其の見あたりし者はわが奴隷となるべし汝等は咎なしと |
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一〇 家づかさは言った、「それではあなたがたの言葉のようにしよう。杯の見つかった者はわたしの奴隷とならなければならない。ほかの者は無罪です」。 |
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一一 是において彼等急ぎて各その囊を地におろし各その囊をひらきしかば |
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一一 そこで彼らは、めいめい急いで袋を地におろし、ひとりひとりその袋を開いた。 |
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一二 彼すなはち索し長者よりはじめて少者にをはるに杯はベニヤミンの囊にありき |
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一二 家づかさは年上から捜し始めて年下に終ったが、杯はベニヤミンの袋の中にあった。 |
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一三 斯有しかば彼等その衣を裂きおのおのその驢馬に荷を負せて邑にかへる |
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一三 そこで彼らは衣服を裂き、おのおの、ろばに荷を負わせて町に引き返した。 |
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一四 しかしてユダとその兄弟等ヨセフの家にいたるにヨセフなほ其處にをりしかばその前に地に伏す |
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一四 ユダと兄弟たちとは、ヨセフの家にはいったが、ヨセフがなおそこにいたので、彼らはその前で地にひれ伏した。 |
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一五 ヨセフかれらにいひけるは汝等がなしたるこの事は何ぞや我のごとき人は善く卜ひうる者なるをしらざるや |
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一五 ヨセフは彼らに言った、「あなたがたのこのしわざは何事ですか。わたしのような人は、必ず占い当てることを知らないのですか」。 |
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一六 ユダいひけるは我等主に何をいはんや何をのべんや如何にしてわれらの正直をあらはさんや~僕等の罪を摘發したまへり然ば我等およびこの杯の見あたりし者俱に主の奴隷となるべし |
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一六 ユダは言った、「われわれはわが主に何を言い、何を述べ得ましょう。どうしてわれわれは身の潔白をあらわし得ましょう。神がしもべらの罪をあばかれました。われわれと、杯を持っていた者とは共にわが主の奴隷となりましょう」。 |
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一七 ヨセフいひけるはきはめて然せじ杯の手に見あたりし人はわが奴隷となるべし汝等は安然に父にかへりのぼるべし |
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一七 ヨセフは言った、「わたしは決してそのようなことはしない。杯を持っている者だけがわたしの奴隷とならなければならない。ほかの者は安全に父のもとへ上って行きなさい」。 |
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一八 時にユダかれに近よりていひけるはわが主よ請ふ僕をして主の耳に一言いふをえせしめよ僕にむかひて怒を發したまふなかれ汝はパロのごとくにいますなり |
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一八 この時ユダは彼に近づいて言った、「ああ、わが主よ、どうぞわが主の耳にひとこと言わせてください。しもべをおこらないでください。あなたはパロのようなかたです。 |
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一九 昔にわが主僕等に問て汝等は父あるや弟あるやといひたまひしかば |
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一九 わが主はしもべらに尋ねて、『父があるか、また弟があるか』と言われたので、 |
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二〇 我等主にいへり我等にわが父あり老人なり又その老年子なる少者ありその兄は死てその母の遺せるは只是のみ故に父これを愛すと |
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二〇 われわれはわが主に言いました、『われわれには老齢の父があり、また年寄り子の弟があります。その兄は死んで、同じ母の子で残っているのは、ただこれだけですから父はこれを愛しています』。 |
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二一 汝また僕等にいひたまはく彼を我許につれくだり我をして之に目をつくることをえせしめよと |
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二一 その時あなたはしもべらに言われました、『その者をわたしの所へ連れてきなさい。わたしはこの目で彼を見よう』。 |
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二二 われら主にいへり童子父を離るをえず若父をはなるゝならば父死べしと |
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二二 われわれはわが主に言いました。『その子供は父を離れることができません。もし父を離れたら父は死ぬでしょう』。 |
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二三 汝また僕等にいひたまはく汝らの季の弟汝等とともに下るにあらざれば汝等ふたゝびわが面を見るべからずと |
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二三 しかし、あなたはしもべらに言われました、『末の弟が一緒に下ってこなければ、おまえたちは再びわたしの顔を見ることはできない』。 |
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二四 我等すなはちなんぢの僕わが父の所にかへりのぼりて主の言をこれに吿たり |
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二四 それであなたのしもべである父のもとに上って、わが主の言葉を彼に告げました。 |
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二五 我らの父再びゆきて小許の糧食を買きたれといひければ |
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二五 ところで、父が『おまえたちは再び行って、われわれのために少しの食糧を買ってくるように』と言ったので、 |
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二六 我らいふ我らくだりゆくことをえずわれらの季の弟われらと共にあらば下りゆくべし其は季の弟われらと共にあるにあらざれば彼人の面をみるをえざればなりと |
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二六 われわれは言いました、『われわれは下って行けません。もし末の弟が一緒であれば行きましょう。末の弟が一緒でなければ、あの人の顔を見ることができません』。 |
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二七 なんぢの僕わが父われらにいふ汝らのしるごとく吾妻われに二人を生しが |
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二七 あなたのしもべである父は言いました、『おまえたちの知っているとおり、妻はわたしにふたりの子を産んだ。 |
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二八 その一人出てわれをはなれたれば必ず裂ころされしならんと思へり我今にいたるまで彼を見ず |
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二八 ひとりは外へ出たが、きっと裂き殺されたのだと思う。わたしは今になっても彼を見ない。 |
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二九 なんぢら是をも我側より取ゆかんに若災害是の身におよぶあらば遂にわが白髪をして悲みて墓にくだらしむるにいたらんと |
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二九 もしおまえたちがこの子をもわたしから取って行って、彼が災に会えば、おまえたちは、しらがのわたしを悲しんで陰府に下らせるであろう』。 |
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三〇 抑父の生命と童子の生命とは相結びてあれば我なんぢの僕わが父に歸りいたらん時に童子もしわれらと共に在ずば如何ぞや |
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三〇 わたしがあなたのしもべである父のもとに帰って行くとき、もしこの子供が一緒にいなかったら、どうなるでしょう。父の魂は子供の魂に結ばれているのです。 |
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三一 父童子の在ざるを見ば死るにいたらん然れば僕等なんぢの僕われらの父の白髪をして悲みて墓にくだらしむるなり |
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三一 この子供がわれわれと一緒にいないのを見たら、父は死ぬでしょう。そうすればしもべらは、あなたのしもべであるしらがの父を悲しんで陰府に下らせることになるでしょう。 |
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三二 僕わが父に童子の事を保ひて我もし是を汝につれかへらずば永久に罪を父に負んといへり |
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三二 しもべは父にこの子供の身を請け合って『もしわたしがこの子をあなたのもとに連れ帰らなかったら、わたしは父に対して永久に罪を負いましょう』と言ったのです。 |
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三三 されば請ふ僕をして童子にかはりをりて主の奴隷とならしめ童子をしてその兄弟とともに歸りのぼらしめたまへ |
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三三 どうか、しもべをこの子供の代りに、わが主の奴隷としてとどまらせ、この子供を兄弟たちと一緒に上り行かせてください、 |
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三四 我いかでか童子を伴はずして父の許に上りゆくべけん恐くは災害の父におよぶを見ん |
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三四 この子供を連れずに、どうしてわたしは父のもとに上り行くことができましょう。父が災に会うのを見るに忍びません」。 |
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45章 |
一 玆にヨセフその側にたてる人々のまへにて自ら禁ぶあたはざるに至りければ人皆われを離ていでよと呼はれり是をもてヨセフが己を兄弟にあかしたる時一人も之とともにたつものなかりき |
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一 そこでヨセフはそばに立っているすべての人の前で、自分を制しきれなくなったので、「人は皆ここから出てください」と呼ばわった。それゆえヨセフが兄弟たちに自分のことを明かした時、ひとりも彼のそばに立っている者はなかった。 |
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二 ヨセフ聲をあげて泣りエジプト人これを聞きパロの家またこれを聞く |
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二 ヨセフは声をあげて泣いた。エジプトびとはこれを聞き、パロの家もこれを聞いた。 |
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三 ヨセフすなはちその兄弟にいひけるは我はヨセフなりわが父はなほ生ながらへをるやと兄弟等その前に愕き懼れて之にこたふるをえざりき |
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三 ヨセフは兄弟たちに言った、「わたしはヨセフです。父はまだ生きながらえていますか」。兄弟たちは答えることができなかった。彼らは驚き恐れたからである。 |
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四 ヨセフ兄弟にいひけるは請ふ我にちかよれとかれらすなはち近よりければ言ふ我はなんぢらの弟ヨセフなんぢらがエジプトにうりたる者なり |
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四 ヨセフは兄弟たちに言った、「わたしに近寄ってください」。彼らが近寄ったので彼は言った、「わたしはあなたがたの弟ヨセフです。あなたがたがエジプトに売った者です。 |
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五 されど汝等我をこゝに賣しをもて憂ふるなかれ身を恨るなかれ~生命をすくはしめんとて我を汝等の前につかはしたまへるなり |
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五 しかしわたしをここに売ったのを嘆くことも、悔むこともいりません。神は命を救うために、あなたがたよりさきにわたしをつかわされたのです。 |
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六 この二年のあひだ饑饉國の中にありしが尙五年の間耕すととも穫こともなかるべし |
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六 この二年の間、国中にききんがあったが、なお五年の間は耕すことも刈り入れることもないでしょう。 |
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七 ~汝等の後を地につたへんため又大なる救をもて汝らの生命を救はんために我を汝等の前に遣したまへり |
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七 神は、あなたがたのすえを地に残すため、また大いなる救をもってあなたがたの命を助けるために、わたしをあなたがたよりさきにつかわされたのです。 |
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八 然ば我を此につかはしたる者は汝等にはあらず~なり~われをもてパロの父となしその全家の主となしエジプト全國の宰となしたまへり |
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八 それゆえわたしをここにつかわしたのはあなたがたではなく、神です。神はわたしをパロの父とし、その全家の主とし、またエジプト全国のつかさとされました。 |
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九 汝等いそぎ父の許にのぼりゆきて之にいへ汝の子ヨセフかく言ふ~われをエジプト全國の主となしたまへりわが所にくだれ遲疑なかれ |
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九 あなたがたは父のもとに急ぎ上って言いなさい、『あなたの子ヨセフが、こう言いました。神がわたしをエジプト全国の主とされたから、ためらわずにわたしの所へ下ってきなさい。 |
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一〇 汝ゴセソの地に住べし斯汝と汝の子と汝の子の子およびなんぢの羊と牛並に汝のすべて有ところの者われの近方にあるべし |
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一〇 あなたはゴセンの地に住み、あなたも、あなたの子らも、孫たちも、羊も牛も、その他のものもみな、わたしの近くにおらせます。 |
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一一 なほ五年の饑饉あるにより我其處にてなんぢを養はん恐くは汝となんぢの家族およびなんぢの凡て有ところの者匱乏ならん |
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一一 ききんはなお五年つづきますから、あなたも、家族も、その他のものも、みな困らないように、わたしはそこで養いましょう』。 |
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一二 汝等の目とわが弟ベニヤミンの目の覩るごとく汝等にこれをいふ者はわが口なり |
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一二 あなたがたと弟ベニヤミンが目に見るとおり、あなたがたに口ずから語っているのはこのわたしです。 |
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一三 汝等わがエジプトにて亨る顯榮となんぢらが見たる所とを皆悉く父につげよ汝ら急ぎて父を此にみちびき下るべし |
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一三 あなたがたはエジプトでの、わたしのいっさいの栄えと、あなたがたが見るいっさいの事をわたしの父に告げ、急いでわたしの父をここへ連れ下りなさい」。 |
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一四 而してヨセフその弟ベニヤミンの頸を抱へて哭にベニヤミンもヨセフの頸をかゝへて哭く |
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一四 そしてヨセフは弟ベニヤミンのくびを抱いて泣き、ベニヤミンも彼のくびを抱いて泣いた。 |
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一五 ヨセフ亦そのゥの兄弟に接吻し之をいだきて哭く是のち兄弟等ヨセフと言ふ |
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一五 またヨセフはすべての兄弟たちに口づけし、彼らを抱いて泣いた。そして後、兄弟たちは彼と語った。 |
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一六 爰にヨセフの兄弟等きたれりといふ聲パロの家にきこえければパロとその臣僕これをスぶ |
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一六 時に、「ヨセフの兄弟たちがきた」と言ううわさがパロの家に聞えたので、パロとその家来たちとは喜んだ。 |
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一七 パロすなはちヨセフにいひけるは汝の兄弟に言べし汝等かく爲せ汝等の畜に物を負せ往てカナンの地に至り |
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一七 パロはヨセフに言った、「兄弟たちに言いなさい、『あなたがたは、こうしなさい。獣に荷を負わせてカナンの地へ行き、 |
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一八 なんぢらの父となんぢらの家族を携へて我にきたれ我なんぢらにエジプトの地の嘉物をあたへん汝等國の膏腴を食ふことをうべしと |
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一八 父と家族とを連れてわたしのもとへきなさい。わたしはあなたがたに、エジプトの地の良い物を与えます。あなたがたは、この国の最も良いものを食べるでしょう』。 |
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一九 今汝命をうく汝等かく爲せ汝等エジプトの地より車を取ゆきてなんぢらの子女と妻等を載せ汝等の父を導きて來れ |
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一九 また彼らに命じなさい、『あなたがたは、こうしなさい。幼な子たちと妻たちのためにエジプトの地から車をもって行き、父を連れてきなさい。 |
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二〇 また汝等の器を惜み視るなかれエジプト全國の嘉物は汝らの所屬なればなり |
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二〇 家財に心を引かれてはなりません。エジプト全国の良い物は、あなたがたのものだからです』」。 |
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二一 イスラエルの子等すなはち斯なせりヨセフ、パロの命にしたがひて彼等に車をあたへかつ途の餱糧をかれらにあたへたり |
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二一 イスラエルの子らはそのようにした。ヨセフはパロの命に従って彼らに車を与え、また途中の食料をも与えた。 |
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二二 又かれらに皆おのおの衣一襲を與へたりしがベニヤミンには銀三百と衣五襲をあたへたり |
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二二 まためいめいに晴着を与えたが、ベニヤミンには銀三百シケルと晴着五着とを与えた。 |
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二三 彼また斯のごとく父に餽れり即ち驢馬十疋にエジプトの嘉物をおはせ牝の驢馬十疋に父の途の用に供ふる糓物と糧と肉をおはせて餽れり |
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二三 また彼は父に次のようなものを贈った。すなわちエジプトの良い物を負わせたろば十頭と、穀物、パン及び父の道中の食料を負わせた雌ろば十頭。 |
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二四 斯して兄弟をかへして去しめ之にいふ汝等途にて相あらそふなかれと |
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二四 こうしてヨセフは兄弟たちを送り去らせ、彼らに言った、「途中で争ってはなりません」。 |
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二五 かれらエジプトより上りてカナンの地にゆきその父ヤコブにいたり |
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二五 彼らはエジプトから上ってカナンの地に入り、父ヤコブのもとへ行って、 |
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二六 之につげてヨセフは尙いきてをりエジプト全國の宰となりをるといふしかるにヤコブの心なは寒冷なりき其はこれを信ぜざればなり |
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二六 彼に言った、「ヨセフはなお生きていてエジプト全国のつかさです」。ヤコブは気が遠くなった。彼らの言うことが信じられなかったからである。 |
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二七 彼等またヨセフの己にいひたる言をことごとく之につげたりその父ヤコブ、ヨセフがおのれを載んとておくりし車をみるにおよびて其氣おのれにかへれり |
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二七 そこで彼らはヨセフが語った言葉を残らず彼に告げた。父ヤコブはヨセフが自分を乗せるために送った車を見て元気づいた。 |
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二八 イスラエルすなはちいふ足りわが子ヨセフなほ生をるわれ死ざるまへに往て之を視ん |
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二八 そしてイスラエルは言った、「満足だ。わが子ヨセフがまだ生きている。わたしは死ぬ前に行って彼を見よう」。 |
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46章 |
一 イスラエルその己につけるゥの者とともに出たちベエルシバにいたりてその父イサクの~に犧牲をさゝぐ |
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一 イスラエルはその持ち物をことごとく携えて旅立ち、ベエルシバに行って、父イサクの神に犠牲をささげた。 |
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二 ~夜の異象にイスラエルにかたりてヤコブよヤコブよといひたまふ |
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二 この時、神は夜の幻のうちにイスラエルに語って言われた、「ヤコブよ、ヤコブよ」。彼は言った、「ここにいます」。 |
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三 ヤコブわれ此にありといひければ~いひたまふ我は~なり汝の父の~なりエジプトにくだることを懼るなかれわれ彼處にて汝を大なる國民となさん |
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三 神は言われた、「わたしは神、あなたの父の神である。エジプトに下るのを恐れてはならない。わたしはあそこであなたを大いなる国民にする。 |
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四 我汝とともにエジプトに下るべし亦かならず汝を導のぼるべしヨセフ手をなんぢの目の上におかんと |
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四 わたしはあなたと一緒にエジプトに下り、また必ずあなたを導き上るであろう。ヨセフが手ずからあなたの目を閉じるであろう」。 |
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五 かくてヤコブ、ベエルシバをたちいでたりイスラエルの子等すなはちパロの載んとておくりたる車に父ヤコブと己の子女と妻等を載せ |
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五 そしてヤコブはベエルシバを立った。イスラエルの子らはヤコブを乗せるためにパロの送った車に、父ヤコブと幼な子たちと妻たちを乗せ、 |
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六 その家畜とカナンの地にてえたる貨財をたづさへ斯してヤコブとその子孫皆ともにエジプトにいたれり |
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六 またその家畜とカナンの地で得た財産を携え、ヤコブとその子孫は皆ともにエジプトへ行った。 |
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七 ヤコブかくその子と子の子およびその女と子の女すなはちその子孫を皆ともなひてエジプトにつれゆけり |
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七 こうしてヤコブはその子と、孫および娘と孫娘などその子孫をみな連れて、エジプトへ行った。 |
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八 イスラエルの子のエジプトにくだれる者の名は左のごとしヤコブとその子等ヤコブの長子はルベン |
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八 イスラエルの子らでエジプトへ行った者の名は次のとおりである。すなわちヤコブとその子らであるが、ヤコブの長子はルベン。 |
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九 ルベンの子はヘノク、パル、ヘヅロン、カルミ |
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九 ルベンの子らはハノク、パル、ヘヅロン、カルミ。 |
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一〇 シメオンの子はヱムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハルおよびカナンの婦のうめる子シヤウル |
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一〇 シメオンの子らはエムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハル及びカナンの女の産んだ子シャウル。 |
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一一 レビの子はゲルシヨン、コハテ、メラリ |
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一一 レビの子らはゲルション、コハテ、メラリ。 |
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一二 ユダの子はエル、オナン、シラ、ペレヅ、ゼラ但しエルとオナンはカナンの地に死たりペレヅの子はヘヅロンおよびハムルなり |
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一二 ユダの子らはエル、オナン、シラ、ペレヅ、ゼラ。エルとオナンはカナンの地で死んだ。ペレヅの子らはヘヅロンとハムル。 |
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一三 イツサカルの子はトラ、プワ、ヨブ、シムロン |
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一三 イッサカルの子らはトラ、プワ、ヨブ、シムロン。 |
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一四 ゼブルンの子はセレデ、エロン、ヤリエルなり |
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一四 ゼブルンの子らはセレデ、エロン、ヤリエル。 |
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一五 是等および女子デナはレアがパダンアラムにてヤコブにうみたる者なりその男子女子あはせて三十三人なりき |
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一五 これらと娘デナとはレアがパダンアラムでヤコブに産んだ子らである。その子らと娘らは合わせて三十三人。 |
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一六 ガドの子はゼポン、ハギ、シユニ、エヅボン、エリ、アロデ、アレリ |
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一六 ガドの子らはゼポン、ハギ、シュニ、エヅボン、エリ、アロデ、アレリ。 |
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一七 アセルの子はヱムナ、イシワ、イスイ、ベリアおよびその妹サラ並にベリアの子ヘベルとマルキエルなり |
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一七 アセルの子らはエムナ、イシワ、イスイ、ベリアおよび妹サラ。ベリアの子らはヘベルとマルキエル。 |
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一八 是等はラバンがその女レアにあたへたるジルパの子なり彼是等をヤコブにうめりキ合十六人 |
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一八 これらはラバンが娘レアに与えたジルパの子らである。彼女はこれらをヤコブに産んだ。合わせて十六人。 |
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一九 ヤコブの妻ラケルの子はヨセフとベニヤミンなり |
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一九 ヤコブの妻ラケルの子らはヨセフとベニヤミンとである。 |
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二〇 エジプトの國にてヨセフにマナセとエフライムうまれたり是はオンの祭司ポテパルの女アセナテが生たる者なり |
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二〇 エジプトの国でヨセフにマナセとエフライムとが生れた。これはオンの祭司ポテペラの娘アセナテが彼に産んだ者である。 |
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二一 ベニヤミンの子はベラ、ベケル、アシベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシ、ムツピム、ホパム、アルデ |
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二一 ベニヤミンの子らはベラ、ベケル、アシベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシ、ムッピム、ホパム、アルデ。 |
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二二 是等はラケルの子にしてヤコブにうまれたる者なりキ合十四人 |
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二二 これらはラケルがヤコブに産んだ子らである。合わせて十四人。 |
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二三 ダンの子はホシム |
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二三 ダンの子はホシム。 |
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二四 ナフタリの子はヤジエル、グニ、ヱゼル、シレム |
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二四 ナフタリの子らはヤジエル、グニ、エゼル、シレム。 |
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二五 是等はラバンがその女ラケルにあたへたるビルハの子なり彼これらをヤコブにうめりキ合七人 |
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二五 これらはラバンが娘ラケルに与えたビルハの子らである。彼女はこれらをヤコブに産んだ。合わせて七人。 |
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二六 ヤコブとともにエジプトにいたりし者はヤコブの子の妻をのぞきて六十六人なりき是皆ヤコブの身よりいでたる者なり |
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二六 ヤコブと共にエジプトへ行ったすべての者、すなわち彼の身から出た者はヤコブの子らの妻をのぞいて、合わせて六十六人であった。 |
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二七 エジプトにてヨセフにうまれたる子二人ありヤコブの家の人のエジプトにいたりし者はあはせて七十人なりき |
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二七 エジプトでヨセフに生れた子がふたりあった。エジプトへ行ったヤコブの家の者は合わせて七十人であった。 |
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二八 ヤコブ預じめユダをヨセフにつかはしおのれをゴセンにみちびかしむ而して皆ゴセンの地にいたる |
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二八 さてヤコブはユダをさきにヨセフにつかわして、ゴセンで会おうと言わせた。そして彼らはゴセンの地へ行った。 |
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二九 ヨセフその車を整へゴセンにのぼりて父イスラエルを迓へ之にまみえてその頸を抱き頸をかゝへて久く啼く |
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二九 ヨセフは車を整えて、父イスラエルを迎えるためにゴセンに上り、父に会い、そのくびを抱き、くびをかかえて久しく泣いた。 |
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三〇 イスラエル、ヨセフにいふ汝なほ生てをり我汝の面を見ることをえたれば今は死るも可しと |
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三〇 時に、イスラエルはヨセフに言った、「あなたがなお生きていて、わたしはあなたの顔を見たので今は死んでもよい」。 |
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三一 ヨセフその兄弟等と父の家族とにいひけるは我のぼりてパロにつげて之にいふべしわが兄弟等とわが父の家族カナンの地にをりし者我のところに來れり |
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三一 ヨセフは兄弟たちと父の家族とに言った、「わたしは上ってパロに言おう、『カナンの地にいたわたしの兄弟たちと父の家族とがわたしの所へきました。 |
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三二 その人々は牧者にして牧畜の人なり彼等をの羊と牛およびその有るゥの物をたづさへ來れりと |
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三二 この者らは羊を飼う者、家畜の牧者で、その羊、牛および持ち物をみな携えてきました』。 |
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三三 パロもし汝等を召て汝等の業は何なるやと問ことあらば |
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三三 もしパロがあなたがたを召して、『あなたがたの職業は何か』と言われたら、 |
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三四 僕等は幼少より今にいたるまで牧畜の人なり我儕も先祖等もともにしかりといへしからばなんぢらゴセンの地にすむことをえん牧者は皆エジプト人の穢はしとするものなればなり |
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三四 『しもべらは幼い時から、ずっと家畜の牧者です。われわれも、われわれの先祖もそうです』と言いなさい。そうすればあなたがたはゴセンの地に住むことができましょう。羊飼はすべて、エジプトびとの忌む者だからです」。 |
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47章 |
一 玆にヨセフゆきてパロにつげていひけるはわが父と兄弟およびその羊と牛とゥの所有物カナンの地よりいたれり彼らはゴセンの地にをると |
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一 ヨセフは行って、パロに言った、「わたしの父と兄弟たち、その羊、牛およびすべての持ち物がカナンの地からきて、今ゴセンの地におります」。 |
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二 その兄弟の中より五人をとりてこれをパロにまみえしむ |
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二 そしてその兄弟のうちの五人を連れて行って、パロに会わせた。 |
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三 パロ、ヨセフの兄弟等にいひけるは汝らの業は何なるか彼等パロにいふ僕等は牧者なりわれらも先祖等もともにしかりと |
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三 パロはヨセフの兄弟たちに言った、「あなたがたの職業は何か」。彼らはパロに言った、「しもべらは羊を飼う者です。われわれも、われわれの先祖もそうです」。 |
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四 かれら又パロにいひけるは此國に寓らんとて我等はきたる其はカナンの地に饑饉はげしくして僕等の群をやしなふ牧場なければなりされば請ふ僕等をしてゴセンの地にすましめたまへ |
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四 彼らはまたパロに言った、「この国に寄留しようとしてきました。カナンの地はききんが激しく、しもべらの群れのための牧草がないのです。どうかしもべらをゴセンの地に住ませてください」。 |
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五 パロ、ヨセフにかたりていふ汝の父と兄弟汝の所にきたれり |
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五 パロはヨセフに言った、「あなたの父と兄弟たちとがあなたのところにきた。 |
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六 エジプトの地はなんぢの前にあり地の善き處に汝の父と兄弟をすましめよすなはちゴセンの地にかれらをすましめよ汝もし彼等の中に才能ある者あるをしらば其人々をしてわが家畜をつかさどらしめよ |
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六 エジプトの地はあなたの前にある。地の最も良い所にあなたの父と兄弟たちとを住ませなさい。ゴセンの地に彼らを住ませなさい。もしあなたが彼らのうちに有能な者があるのを知っているなら、その者にわたしの家畜をつかさどらせなさい」。 |
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七 ヨセフまた父ヤコブを引ていりパロの前にたゝしむヤコブ、パロを祝す |
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七 そこでヨセフは父ヤコブを導いてパロの前に立たせた。ヤコブはパロを祝福した。 |
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八 パロ、ヤコブにいふ汝の齡の日は幾何なるか |
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八 パロはヤコブに言った、「あなたの年はいくつか」。 |
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九 ヤコブ、パロにいひけるはわが旅路の年月は百三十年にいたる我が齡の日は僅少にして且惡かり未だわが先祖等の齡の日と旅路の日にはおよばざるなり |
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九 ヤコブはパロに言った、「わたしの旅路のとしつきは、百三十年です。わたしのよわいの日はわずかで、ふしあわせで、わたしの先祖たちのよわいの日と旅路の日には及びません」。 |
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一〇 ヤコブ、パロを祝しパロのまへよりいでさりぬ |
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一〇 ヤコブはパロを祝福し、パロの前を去った。 |
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一一 ヨセフ、パロの命ぜしごとくその父と兄弟に居所を與へエジプトの國の中の善き地即ちラメセスの地をかれらにあたへて所有となさしむ |
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一一 ヨセフはパロの命じたように、父と兄弟たちとのすまいを定め、彼らにエジプトの国で最も良い地、ラメセスの地を所有として与えた。 |
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一二 ヨセフその父と兄弟と父の全家にその子の數にしたがひて食物をあたへて養へり |
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一二 またヨセフは父と兄弟たちと父の全家とに、家族の数にしたがい、食物を与えて養った。 |
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一三 却說饑饉はなはだはげしくして全國に食物なくエジプトの國とカナンの國饑饉のために弱れり |
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一三 さて、ききんが非常に激しかったので、全地に食物がなく、エジプトの国もカナンの国も、ききんのために衰えた。 |
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一四 ヨセフ糓物を賣あたへてエジプトの地とカナンの地にありし金をことごとく斂む而してヨセフその金をパロの家にもちきたる |
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一四 それでヨセフは人々が買った穀物の代金としてエジプトの国とカナンの国にあった銀をみな集め、その銀をパロの家に納めた。 |
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一五 エジプトの國とカナンの國に金つきたればエジプト人みなヨセフにいたりていふ我等に食物をあたへよ如何ぞなんぢの前に死べけんや金すでにたえたり |
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一五 こうしてエジプトの国とカナンの国に銀が尽きたとき、エジプトびとはみなヨセフのもとにきて言った、「食物をください。銀が尽きたからとて、どうしてあなたの前で死んでよいでしょう」。 |
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一六 ヨセフいひけるは汝等の家畜をいだせ金もしたえたらば我なんぢらの家畜にかへて與ふべしと |
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一六 ヨセフは言った、「あなたがたの家畜を出しなさい。銀が尽きたのなら、あなたがたの家畜と引き替えで食物をわたそう」。 |
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一七 かれら乃ちその家畜をヨセフにひききたりければヨセフその馬と羊の群と牛の群および驢馬にかへて食物をかれらにあたへそのすべての家畜のために其年のあひだ食物をあたへてこれをやしなふ |
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一七 彼らはヨセフの所へ家畜をひいてきたので、ヨセフは馬と羊の群れと牛の群れ及びろばと引き替えで、食物を彼らにわたした。こうして彼はその年、すべての家畜と引き替えた食物で彼らを養った。 |
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一八 かくてその年暮けるが明年にいたりて人衆またヨセフにきたりて之にいふ我等主に隱すところなしわれらの金は竭たりまたわれらの畜の群は主に皈す主のまへにいだすべき者は何ものこりをらず唯われらの身体と田地あるのみ |
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一八 やがてその年は暮れ、次の年、人々はまたヨセフの所へきて言った、「わが主には何事も隠しません。われわれの銀は尽き、獣の群れもわが主のものになって、われわれのからだと田地のほかはわが主の前に何も残っていません。 |
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一九 われらいかんぞわれらの田地とともに汝の目のまへに死亡ぶべけんや我等とわれらの田地を食物に易て買とれ我等田地とともにパロの僕とならんまた我等に種をあたへよ然ばわれら生るをえて死るにいたらず田地も荒蕪にいたらじ |
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一九 われわれはどうして田地と一緒に、あなたの目の前で滅んでよいでしょう。われわれと田地とを食物と引き替えで買ってください。われわれは田地と一緒にパロの奴隷となりましょう。また種をください。そうすればわれわれは生きながらえ、死を免れて、田地も荒れないでしょう」。 |
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二〇 是に於てヨセフ、エジプトの田地をことごとく購とりてパロに納る其はエジプト人饑饉にせまりて各人その田圃を賣たればなり是によりて地はパロの所有となれり |
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二〇 そこでヨセフはエジプトの田地をみなパロのために買い取った。ききんがエジプトびとに、きびしかったので、めいめいその田畑を売ったからである。こうして地はパロのものとなった。 |
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二一 また民はエジプトのこの境の極よりかの境の極の者までヨセフこれを邑々にうつせり |
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二一 そしてヨセフはエジプトの国境のこの端からかの端まで民を奴隷とした。 |
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二二 但祭司の田地は購とらざりき祭司はパロより祿をたまはりをればパロの與る祿を食たるによりてその田地を賣ざればなり |
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二二 ただ祭司の田地は買い取らなかった。祭司にはパロの給与があって、パロが与える給与で生活していたので、その田地を売らなかったからである。 |
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二三 玆にヨセフ民にいひけるは視よ我今日汝等となんぢらの田地をかひてパロに納る視よこの種子を汝らに與ふ地に播べし |
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二三 ヨセフは民に言った、「わたしはきょう、あなたがたとその田地とを買い取って、パロのものとした。あなたがたに種をあげるから地にまきなさい。 |
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二四 しかして收穫の五分の一をパロに輸し四分をなんぢらに取て田圃の種としなんぢらの食としなんぢらの家族と子女の食とせよ |
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二四 収穫の時は、その五分の一をパロに納め、五分の四を自分のものとして田畑の種とし、自分と家族の食糧とし、また子供の食糧としなさい」。 |
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二五 人衆いひけるは汝われらの生命を拯ひたまへりわれら主のまへに恩をえんことをねがふ我等パロの僕となるべしと |
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二五 彼らは言った、「あなたはわれわれの命をお救いくださった。どうかわが主の前に恵みを得させてください。われわれはパロの奴隷になりましょう」。 |
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二六 ヨセフ、エジプトの田地に法をたてその五分の一をパロにをさめしむその事今日にいたる唯祭司の田地のみパロの有とならざりき |
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二六 ヨセフはエジプトの田地について、収穫の五分の一をパロに納めることをおきてとしたが、それは今日に及んでいる。ただし祭司の田地だけはパロのものとならなかった。 |
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二七 イスラエル、エジプトの國に於てゴセンの地にすみ彼處に產業を獲その數揩ト大に殖たり |
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二七 さてイスラエルはエジプトの国でゴセンの地に住み、そこで財産を得、子を生み、大いにふえた。 |
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二八 ヤコブ、エジプトの國に十七年いきながらへたりヤコブの年齒の日は合て百四十七年なりき |
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二八 ヤコブはエジプトの国で十七年生きながらえた。ヤコブのよわいの日は百四十七年であった。 |
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二九 イスラエル死る日ちかよりければその子ヨセフをよびて之にいひけるは我もし汝のまへに恩を得るならば請ふなんぢの手をわが髀の下にいれ懇に眞實をもて我をあつかへ我をエジプトに葬るなかれ |
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二九 イスラエルは死ぬ時が近づいたので、その子ヨセフを呼んで言った、「もしわたしがあなたの前に恵みを得るなら、どうか手をわたしのももの下に入れて誓い、親切と誠実とをもってわたしを取り扱ってください。どうかわたしをエジプトには葬らないでください。 |
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三〇 我は先祖等とともに偃んことをねがふ汝われをエジプトより舁いだして先祖等の墓場にはうむれヨセフいふ我なんぢが言るごとくなすべしと |
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三〇 わたしが先祖たちと共に眠るときには、わたしをエジプトから運び出して先祖たちの墓に葬ってください」。ヨセフは言った、「あなたの言われたようにいたします」。 |
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三一 ヤコブまた我に誓へといひければすなはち誓へりイスラエル床の頭にて拜をなせり |
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三一 ヤコブがまた、「わたしに誓ってください」と言ったので、彼は誓った。イスラエルは床のかしらで拝んだ。 |
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48章 |
一 是等の事の後汝の父病にかゝるとヨセフに吿る者ありければヨセフ二人の子マナセとエフライムをともなひて至る |
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一 これらの事の後に、「あなたの父は、いま病気です」とヨセフに告げる者があったので、彼はふたりの子、マナセとエフライムとを連れて行った。 |
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二 人ヤコブに吿て汝の子ヨセフなんぢの許にきたるといひければイスラエル强て床に坐す |
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二 時に人がヤコブに告げて、「あなたの子ヨセフがあなたのもとにきました」と言ったので、イスラエルは努めて床の上にすわった。 |
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三 しかしてヤコブ、ヨセフにいひけるは昔に全能の~カナンの地のルズにて我にあらはれて我を祝し |
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三 そしてヤコブはヨセフに言った、「先に全能の神がカナンの地ルズでわたしに現れ、わたしを祝福して、 |
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四 我にいひたまひけらく我なんぢをして多く子をえせしめ汝をふやし汝を衆多の民となさん我この地を汝の後の子孫にあたへて永久の所有となさしめんと |
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四 言われた、『わたしはおまえに多くの子を得させ、おまえをふやし、おまえを多くの国民としよう。また、この地をおまえの後の子孫に与えて永久の所有とさせる』。 |
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五 わがエジプトにきたりて汝に就まへにエジプトにて汝に生れたる二人の子エフライムとマナセ是等はわが子となるべしルベンとシメオンのごとく是等はわが子とならん |
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五 エジプトにいるあなたの所にわたしが来る前に、エジプトの国で生れたあなたのふたりの子はいまわたしの子とします。すなわちエフライムとマナセとはルベンとシメオンと同じようにわたしの子とします。 |
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六 是等の後になんぢが得たる子は汝のものとすべし又その產業はその兄弟の名をもて稱らるべし |
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六 ただし彼らの後にあなたに生れた子らはあなたのものとなります。しかし、その嗣業はその兄弟の名で呼ばれるでしょう。 |
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七 我事をいはんに我昔パダンより來れる時ラケル我にしたがひをりて途にてカナンの地に死り其處はエフラタまで尙途の隔あるところなりわれ彼處にてかれをエフラタの途にはうむれり(エフラタはすなはちベテレヘムなり) |
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七 わたしがパダンから帰って来る途中ラケルはカナンの地で死に、わたしは悲しんだ。そこはエフラタに行くまでには、なお隔たりがあった。わたしはエフラタ、すなわちベツレヘムへ行く道のかたわらに彼女を葬った」。 |
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八 斯てイスラエル、ヨセフの子等を見て是等は誰なるやといひければ |
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八 ところで、イスラエルはヨセフの子らを見て言った、「これはだれですか」。 |
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九 ヨセフ父にいふ是は~の此にて我にたまひし子等なりと父すなはちいふ請ふ彼らを我所につれきたれ我これを祝せんと |
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九 ヨセフは父に言った、「神がここでわたしにくださった子どもです」。父は言った、「彼らをわたしの所に連れてきて、わたしに祝福させてください」。 |
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一〇 イスラエルの目は年壽のために眯て見るをえざりしがヨセフかれらをその許につれきたりければ之に接吻してこれを抱けり |
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一〇 イスラエルの目は老齢のゆえに、かすんで見えなかったが、ヨセフが彼らを父の所に近寄らせたので、父は彼らに口づけし、彼らを抱いた。 |
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一一 しかしてイスラエル、ヨセフにいひけるは我なんぢの面を見るあらんとは思はざりしに視よ~なんぢの子をもわれにしめしたまふと |
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一一 そしてイスラエルはヨセフに言った、「あなたの顔が見られようとは思わなかったのに、神はあなたの子らをもわたしに見させてくださった」。 |
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一二 ヨセフかれらをその膝の間よりいだし地に俯て拜せり |
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一二 そこでヨセフは彼らをヤコブのひざの間から取り出し、地に伏して拝した。 |
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一三 しかしてヨセフ、エフライムを右の手に執てヤコブの左の手にむかはしめマナセを左の手に執てヤコブの右の手にむかはしめ二人をみちびきてかれに就ければ |
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一三 ヨセフはエフライムを右の手に取ってイスラエルの左の手に向かわせ、マナセを左の手に取ってイスラエルの右の手に向かわせ、ふたりを近寄らせた。 |
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一四 イスラエル右の手をのべて季子エフライムの頭に按き左の手をのべてマナセの頭におけりマナセは長子なれども故にかくその手をおけるなり |
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一四 すると、イスラエルは右の手を伸べて弟エフライムの頭に置き、左の手をマナセの頭に置いた。マナセは長子であるが、ことさらそのように手を置いたのである。 |
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一五 斯してヨセフを祝していふわが父アブラハム、イサクの事へし~わが生れてより今日まで我をやしなひたまひし~ |
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一五 そしてヨセフを祝福して言った、/「わが先祖アブラハムとイサクの仕えた神、/生れてからきょうまでわたしを養われた神、 |
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一六 我をしてゥの災禍を贖はしめたまひし天使ねがはくは是童子等を祝たまへねがはくは是等の者わが名とわが父アブラハム、イサクの名をもて稱られんことをねがはくは是等地の中に繁殖がるにいたれ |
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一六 すべての災からわたしをあがなわれたみ使よ、/この子供たちを祝福してください。またわが名と先祖アブラハムとイサクの名とが、/彼らによって唱えられますように、/また彼らが地の上にふえひろがりますように」。 |
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一七 ヨセフ父が右の手をエフライムの頭に按るを見てよろこばず父の手をあげてこれをエフライムの頭よりマナセの頭にうつさんとす |
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一七 ヨセフは父が右の手をエフライムの頭に置いているのを見て不満に思い、父の手を取ってエフライムの頭からマナセの頭へ移そうとした。 |
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一八 ヨセフすなはち父にいひけるは然にあらず父よ是長子なれば右の手をその頭に按たまへ |
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一八 そしてヨセフは父に言った、「父よ、そうではありません。こちらが長子です。その頭に右の手を置いてください」。 |
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一九 父こばみていひけるは我知るわが子よわれしる彼も一の民となり彼も大なる者とならん然どもその弟は彼よりも大なる者となりてその子孫は多衆の國民となるべしと |
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一九 父は拒んで言った、「わかっている。子よ、わたしにはわかっている。彼もまた一つの民となり、また大いなる者となるであろう。しかし弟は彼よりも大いなる者となり、その子孫は多くの国民となるであろう」。 |
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二〇 此日彼等を祝していふイスラエル汝を指て人を祝し願くは~汝をしてエフライムのごとくマナセのごとくならしめたまへといふにいたらんとすなはちエフライムをマナセの先にたてたり |
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二〇 こうして彼はこの日、彼らを祝福して言った、/「あなたを指して、イスラエルは、/人を祝福して言うであろう、/『神があなたをエフライムのごとく、/またマナセのごとくにせられるように』」。このように、彼はエフライムをマナセの先に立てた。 |
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二一 イスラエルまたヨセフにいひけるは視よわれは死んされど~なんぢらとともにいまして汝等を先祖等の國にみちびきかへりたまふべし |
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二一 イスラエルはまたヨセフに言った、「わたしはやがて死にます。しかし、神はあなたがたと共におられて、あなたがたを先祖の国に導き返されるであろう。 |
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二二 且われ一の分をなんぢの兄弟よりもおはく汝にあたふ是わが刀と弓を以てアモリ人の手より取たる者なり |
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二二 なおわたしは一つの分を兄弟よりも多くあなたに与える。これはわたしがつるぎと弓とを持ってアモリびとの手から取ったものである」。 |
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49章 |
一 ヤコブその子等を呼ていひけるは汝らあつまれ我後の日に汝らが遇んところの事を汝等につげん |
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一 ヤコブはその子らを呼んで言った、「集まりなさい。後の日に、あなたがたの上に起ることを、告げましょう、 |
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二 汝等つどひて聽けヤコブの子等よ汝らの父イスラエルに聽け |
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二 ヤコブの子らよ、集まって聞け。父イスラエルのことばを聞け。 |
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三 ルベン汝はわが冢子わが勢わが力の始威光の卓越たる者權威の卓越たる者なり |
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三 ルベンよ、あなたはわが長子、/わが勢い、わが力のはじめ、/威光のすぐれた者、権力のすぐれた者。 |
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四 汝は水の沸あがるがごとき者なれば卓越を得ざるべし汝父の床にのぼりて浼したればなり嗚呼彼はわが寢牀にのぼれり |
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四 しかし、沸き立つ水のようだから、/もはや、すぐれた者ではあり得ない。あなたは父の床に上って汚した。ああ、あなたはわが寝床に上った。 |
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五 シメオン、レビは兄弟なりその劍は暴逆の器なり |
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五 シメオンとレビとは兄弟。彼らのつるぎは暴虐の武器。 |
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六 我魂よかれらの席にのぞむなかれ我寳よかれらの集會につらなるなかれ其は彼等その怒にまかせて人をころしその意にまかせて牛を筋截たればなり |
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六 わが魂よ、彼らの会議に臨むな。わが栄えよ、彼らのつどいに連なるな。彼らは怒りに任せて人を殺し、/ほしいままに雄牛の足の筋を切った。 |
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七 その怒は烈かれば詛ふべしその憤は暴あれば詛ふべし我彼らをヤコブの中に分ちイスラエルの中に散さん |
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七 彼らの怒りは、激しいゆえにのろわれ、/彼らの憤りは、はなはだしいゆえにのろわれる。わたしは彼らをヤコブのうちに分け、イスラエルのうちに散らそう。 |
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八 ユダよ汝は兄弟の讚る者なり汝の手はなんぢの敵の頸を抑へんなんぢの父の子等なんぢの前に鞠ん |
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八 ユダよ、兄弟たちはあなたをほめる。あなたの手は敵のくびを押え、/父の子らはあなたの前に身をかがめるであろう。 |
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九 ユダは獅子の子の如しわが子よ汝は所掠物をさきてかへりのぼる彼は牡獅子のごとく伏し牝獅のごとく蹲まる誰か之をおこすことをせん |
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九 ユダは、ししの子。わが子よ、あなたは獲物をもって上って来る。彼は雄じしのようにうずくまり、/雌じしのように身を伏せる。だれがこれを起すことができよう。 |
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一〇 杖ユダを離れず法を立る者その足の間をはなるゝことなくしてシロの來る時にまでおよばん彼にゥの民したがふべし |
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一〇 つえはユダを離れず、/立法者のつえはその足の間を離れることなく、/シロの来る時までに及ぶであろう。もろもろの民は彼に従う。 |
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一一 彼その驢馬を葡萄の樹に繫ぎその牝驢馬の子を葡萄の蔓に繫がん又その衣を酒にあらひ其服を葡萄の汁にあらふべし |
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一一 彼はそのろばの子をぶどうの木につなぎ、/その雌ろばの子を良きぶどうの木につなぐ。彼はその衣服をぶどう酒で洗い、/その着物をぶどうの汁で洗うであろう。 |
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一二 その目は酒によりて紅くその齒は乳によりて白し |
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一二 その目はぶどう酒によって赤く、/その歯は乳によって白い。 |
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一三 ゼブルンは海邊にすみ舟の泊る海邊に住はんその界はシドンにおよぶべし |
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一三 ゼブルンは海べに住み、/舟の泊まる港となって、/その境はシドンに及ぶであろう。 |
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一四 イツサカルは羊の牢の間に伏す健き驢馬の如し |
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一四 イッサカルはたくましいろば、/彼は羊のおりの間に伏している。 |
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一五 彼みて安泰を善としその國を樂とし肩をさげて負ひ租稅をいだして僕となるべし |
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一五 彼は定住の地を見て良しとし、/その国を見て楽しとした。彼はその肩を下げてにない、/奴隷となって追い使われる。 |
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一六 ダンはイスラエルの他の支派の如く其民を鞫かん |
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一六 ダンはおのれの民をさばくであろう、/イスラエルのほかの部族のように。 |
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一七 ダンは路の旁の蛇のごとく途邊にある蝮のごとし馬の踵を嚙てその騎者をして後に落しむ |
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一七 ダンは道のかたわらのへび、/道のほとりのまむし。馬のかかとをかんで、/乗る者をうしろに落すであろう。 |
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一八 ヱホバよわれ汝の拯救を待り |
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一八 主よ、わたしはあなたの救を待ち望む。 |
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一九 ガドは軍勢これにせまらんされど彼反てその後にせまらん |
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一九 ガドには略奪者が迫る。しかし彼はかえって敵のかかとに迫るであろう。 |
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二〇 アセルよりいづる食物は美るべし彼王の食ふ美味をいださん |
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二〇 アセルはその食物がゆたかで、/王の美味をいだすであろう。 |
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二一 ナフタリは釋れたる麀のごとし紋美言をいだすなり |
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二一 ナフタリは放たれた雌じか、/彼は美しい子じかを生むであろう。 |
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二二 ヨセフは實を結ぶ樹の芽のごとし即ち泉の傍にある實をむすぶ樹の芽のごとしその枝つひに垣を踰ゆ |
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二二 ヨセフは実を結ぶ若木、/泉のほとりの実を結ぶ若木。その枝は、かきねを越えるであろう。 |
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二三 射者彼をなやまし彼を射かれを惡めり |
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二三 射る者は彼を激しく攻め、/彼を射、彼をいたく悩ました。 |
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二四 然どかれの弓はなほ勁くあり彼の手の臂は力あり是ヤコブの全能者の手によりてなり某よりイスラエルの磐なる牧者いづ |
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二四 しかし彼の弓はなお強く、/彼の腕は素早い。これはヤコブの全能者の手により、/イスラエルの岩なる牧者の名により、 |
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二五 汝の父の~による彼なんぢを助けん全能者による彼なんぢを祝まん上なる天の、下によこたはる淵の、乳哺の、胎の、汝にきたるべし |
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二五 あなたを助ける父の神により、/また上なる天の祝福、/下に横たわる淵の祝福、/乳ぶさと胎の祝福をもって、/あなたを恵まれる全能者による。 |
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二六 父の汝を祝することはわが父祖の祝したる所に勝て恒久の山の限極にまでおよばん是等の祝はヨセフの首に歸しその兄弟と別になりたる者の頭頂に歸すべし |
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二六 あなたの父の祝福は永遠の山の祝福にまさり、/永久の丘の賜物にまさる。これらの祝福はヨセフのかしらに帰し、/その兄弟たちの君たる者の頭の頂に帰する。 |
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二七 ベニヤミンは物を嚙む狼なり朝にその所掠物を啖ひ夕にその所攫物をわかたん |
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二七 ベニヤミンはかき裂くおおかみ、/朝にその獲物を食らい、/夕にその分捕物を分けるであろう」。 |
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二八 是等はイスラエルの十二の支派なり斯その父彼らに語り彼等を祝せりすなはちその祝すべき所にしたがひて彼等ゥ人を祝せり |
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二八 すべてこれらはイスラエルの十二の部族である。そしてこれは彼らの父が彼らに語り、彼らを祝福したもので、彼は祝福すべきところに従って、彼らおのおのを祝福した。 |
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二九 ヤコブまた彼等に命じて之にいひけるは我はわが民にくはゝらんとすヘテ人エフロンの田にある洞穴にわが先祖等とともに我をはうむれ |
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二九 彼はまた彼らに命じて言った、「わたしはわが民に加えられようとしている。あなたがたはヘテびとエフロンの畑にあるほら穴に、わたしの先祖たちと共にわたしを葬ってください。 |
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三〇 その洞穴はカナンの地にてマムレのまへなるマクペラの田にあり是はアブラハムがヘテ人エフロンより田とともに購て所有の墓所となせし者なり |
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三〇 そのほら穴はカナンの地のマムレの東にあるマクペラの畑にあり、アブラハムがヘテびとエフロンから畑と共に買い取り、所有の墓地としたもので、 |
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三一 アブラハムとその妻サラ彼處にはうむられイサクとその妻リベカ彼處に葬られたり我またかしこにレアを葬れり |
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三一 そこにアブラハムと妻サラとが葬られ、イサクと妻リベカもそこに葬られたが、わたしはまたそこにレアを葬った。 |
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三二 彼田とその中の洞穴はヘテの子孫より購たる者なり |
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三二 あの畑とその中にあるほら穴とはヘテの人々から買ったものです」。 |
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三三 ヤコブその子に命ずることを終し時足を床に斂めて氣たえてその民にくはゝる |
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三三 こうしてヤコブは子らに命じ終って、足を床におさめ、息絶えて、その民に加えられた。 |
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50章 |
一 ヨセフ父の面に俯し之をいだきて哭き之に接吻す |
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一 ヨセフは父の顔に伏して泣き、口づけした。 |
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二 而してヨセラその僕なる醫者に命じてその父に釁らしむ醫者イスラエルに釁れり |
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二 そしてヨセフは彼のしもべである医者たちに、父に薬を塗ることを命じたので、医者たちはイスラエルに薬を塗った。 |
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三 すなはち之がために四十日を用ふ其は尸に釁るにはこの日數を用ふべければなりエジプト人七十日の間之がために哭けり |
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三 このために四十日を費した。薬を塗るにはこれほどの日数を要するのである。エジプトびとは七十日の間、彼のために泣いた。 |
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四 哀哭の日すぎし時ヨセフ、パロの家にかたりていひけるは我もし汝等の前に恩惠を得るならば請ふパロの耳にまうして言へ |
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四 彼のために泣く日が過ぎて、ヨセフはパロの家の者に言った、「今もしわたしがあなたがたの前に恵みを得るなら、どうかパロに伝えてください。 |
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五 わが父我死ばカナンの地にわが掘おきたる墓に我をはうむれといひて我を誓はしめたり然ば請ふわれをして上りて父を葬らしめたまへまた歸りきたらんと |
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五 『わたしの父はわたしに誓わせて言いました「わたしはやがて死にます。カナンの地に、わたしが掘って置いた墓に葬ってください」。それで、どうかわたしを上って行かせ、父を葬らせてください。そうすれば、わたしはまた帰ってきます』」。 |
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六 パロいひけるは汝の父汝をちかはせしごとくのぼりて之を葬るべし |
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六 パロは言った、「あなたの父があなたに誓わせたように上って行って彼を葬りなさい」。 |
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七 是に於てヨセフ父を葬らんとて上るパロのゥの臣パロの家の長老等エジプトの地の長老等 |
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七 そこでヨセフは父を葬るために上って行った。彼と共に上った者はパロのもろもろの家来たち、パロの家の長老たち、エジプトの国のもろもろの長老たち、 |
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八 およびヨセフの全家とその兄弟等および其父の家之とともに上る只その子女と羊と牛はゴセンの地にのこせり |
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八 ヨセフの全家とその兄弟たち及びその父の家族であった。ただ子供と羊と牛はゴセンの地に残した。 |
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九 また車と騎兵ヨセフにしたがひてのぼり其隊はなはだ大なりき |
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九 また戦車と騎兵も彼と共に上ったので、その行列はたいそう盛んであった。 |
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一〇 彼等つひにヨルダンの外なるアタデの禾場に到り彼にて大に泣き痛く哀しむヨセフすなはち七日父のために哭きぬ |
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一〇 彼らはヨルダンの向こうのアタデの打ち場に行き着いて、そこで大いに嘆き、非常に悲しんだ。そしてヨセフは七日の間父のために嘆いた。 |
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一一 その國の居人なるカナン人等アタデの禾場の哀哭を見て是はエジプト人の痛くなげくなりといへり是によりて其處の各をアベルミツライム(エジプト人の哀哭)と稱ふヨルダンの外にあり |
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一一 その地の住民、カナンびとがアタデの打ち場の嘆きを見て、「これはエジプトびとの大いなる嘆きだ」と言ったので、その所の名はアベル・ミツライムと呼ばれた。これはヨルダンの向こうにある。 |
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一二 ヤコブの子等その命ぜられたるごとく之になせり |
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一二 ヤコブの子らは命じられたようにヤコブにおこなった。 |
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一三 すなはちヤコブの子等彼をカナンの地に舁ゆきて之をマクペラの田の洞穴にはうむれり是はアブラハムがヘテ人エフロンより田とともに購とりて所有の墓所となせし者にてマムレの前にあり |
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一三 すなわちその子らは彼をカナンの地へ運んで行って、マクペラの畑のほら穴に葬った。このほら穴はマムレの東にあって、アブラハムがヘテびとエフロンから畑と共に買って、所有の墓地としたものである。 |
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一四 ヨセフ父を葬りてのち其兄弟および凡て己とともにのぼりて父をはうむれる者とともにエジプトにかへりぬ |
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一四 ヨセフは父を葬った後、その兄弟たち及びすべて父を葬るために一緒に上った者と共にエジプトに帰った。 |
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一五 ヨセフの兄弟等その父の死たるを見ていひけるはヨセフあるひはわれらを恨むることあらん又かならずわれらが彼になしたるゥの惡にむくゆるならんと |
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一五 ヨセフの兄弟たちは父の死んだのを見て言った、「ヨセフはことによるとわれわれを憎んで、われわれが彼にしたすべての悪に、仕返しするに違いない」。 |
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一六 すなはちヨセフにいひおくりけるはなんぢの父死るまへに命じて言けらく |
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一六 そこで彼らはことづけしてヨセフに言った、「あなたの父は死ぬ前に命じて言われました、 |
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一七 汝ら斯ヨセフにいふべし汝の兄弟汝に惡をなしたれども冀はくはその罪咎をゆるせと然ば請ふ汝の父の~の僕等の咎をゆるせとヨセフその言を聞て啼泣り |
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一七 『おまえたちはヨセフに言いなさい、「あなたの兄弟たちはあなたに悪をおこなったが、どうかそのとがと罪をゆるしてやってください」』。今どうかあなたの父の神に仕えるしもべらのとがをゆるしてください」。ヨセフはこの言葉を聞いて泣いた。 |
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一八 兄弟等もまた自らきたりヨセフの面のまへに俯し我儕は汝の僕とならんといふ |
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一八 やがて兄弟たちもきて、彼の前に伏して言った、「このとおり、わたしたちはあなたのしもべです」。 |
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一九 ヨセフかれらに曰けるは懼るなかれ我あに~にかはらんや |
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一九 ヨセフは彼らに言った、「恐れることはいりません。わたしが神に代ることができましょうか。 |
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二〇 汝等は我を害せんとおもひたれども~はそれを善にかはらせ今日のごとく多の民の生命を救ふにいたらしめんとおもひたまへり |
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二〇 あなたがたはわたしに対して悪をたくらんだが、神はそれを良きに変らせて、今日のように多くの民の命を救おうと計らわれました。 |
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二一 故に汝らおそるゝなかれ我なんぢらと汝らの子女をやしなはんと彼等をなぐさめ懇に之にかたれり |
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二一 それゆえ恐れることはいりません。わたしはあなたがたとあなたがたの子供たちを養いましょう」。彼は彼らを慰めて、親切に語った。 |
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二二 ヨセフ父の家族とともにエジプトにすめりヨセフは百十歲いきながらへたり |
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二二 このようにしてヨセフは父の家族と共にエジプトに住んだ。そしてヨセフは百十年生きながらえた。 |
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二三 ヨセフ、エフライムの三世の子女をみるにいたれりマナセの子マキルの子女もうまれてヨセフの膝にありき |
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二三 ヨセフはエフライムの三代の子孫を見た。マナセの子マキルの子らも生れてヨセフのひざの上に置かれた。 |
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二四 ヨセフその兄弟等にいひけるは我死ん~がならず汝等を眷顧みなんぢらを此地よりいだしてそのアブラハム、イサク、ヤコブに誓ひし地にいたらしめたまはんと |
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二四 ヨセフは兄弟たちに言った、「わたしはやがて死にます。神は必ずあなたがたを顧みて、この国から連れ出し、アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた地に導き上られるでしょう」。 |
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二五 ヨセフ~かならず汝等をかへりみたまはん汝らわが骨をこゝよりたづさへのぼるべしといひてイスラエルの子孫を誓はしむ |
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二五 さらにヨセフは、「神は必ずあなたがたを顧みられる。その時、あなたがたはわたしの骨をここから携え上りなさい」と言ってイスラエルの子らに誓わせた。 |
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二六 ヨセフ百十歲にして死たれば之に釁りて櫃にをさめてエジプトにおけり |
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二六 こうしてヨセフは百十歳で死んだ。彼らはこれに薬を塗り、棺に納めて、エジプトに置いた。 |
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Office Murakami |